アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

JAZZ

桑原 あい トリオ・プロジェクト / フロム・ヒア・トゥ・ゼア5

FROM HERE TO THERE-1 「桑原あいトリオ・プロジェクト」である。「トリオ・プロジェクト」と聴いたら,まずは上原ひろみを連想するものであろう。
 これって上原ひろみと比較させるための桑原あいの戦略なのだろうか? 管理人は桑原あいによる「上原ひろみのフォロワー宣言」だと受け取った。
 そう。桑原あいが溺愛する上原ひろみのスタイルとは,実はピアニストの部分ではなくて,あのアグレッシブでプログレッシブな作編曲能力にある。

 その点で“天才”上原ひろみはギリギリまでいっても破綻しないのだが,桑原あいは途中で飛び立ってから元へ帰って来れない部分がある。いいや,一度破綻してからが“勢い勝負”。若干21歳の女子である。力業でアクロバティックに着地してみせる。若さだよねぇ。聴けば聴くほど面白くなる!

 プロとしての経験を積めば積む程『FROM HERE TO THERE』(以下『フロム・ヒア・トゥ・ゼア』)のような“破天荒な”アルバムは作りにくくなると思う。桑原あい自身も,もう2度と同じものを作ることなどできやしない「幻のお化けアルバム」の誕生であった。
 そう。桑原あいの「アイディアがグッチャグチャ状態の頭の中」がそのまんま音として記録されたのが『フロム・ヒア・トゥ・ゼア』である。

 いや〜,インディーズっていいですね。何の制約もなく本当にやりたい音楽を形にして発売することができる。『フロム・ヒア・トゥ・ゼア』こそが「桑原あい100%」(アキラ100%風)の魅力であろう。
 ただし『フロム・ヒア・トゥ・ゼア』が「桑原あい100%」に聴こえるのは,バンド・リーダーであるベース森田悠介の才能が大きい。

 桑原あいの「アイディアがグッチャグチャ状態の頭の中」を理路整然と形にしている。それも今となっては“確信犯”であろうが,森田悠介の好みのアイディアだけを桑原あいの頭の中ら抜き出している。

 ズバリ「桑原あいトリオ・プロジェクト」の真実とは,桑原あいオリジナル曲を演奏するピアノ・トリオにして,森田悠介が「裏」で桑原あいを回すためのプロジェクトなのである。

FROM HERE TO THERE-2 その意味で管理人は「桑原あいトリオ・プロジェクト」を「ジャズフュージョン界のドリカム」に例えよう。
 桑原あいを語るのなら,比較対象は上原ひろみではなくて吉田美和の方である。裏でガッツリとプロデュースする森田悠介によって,桑原あいが最高の演者として,前面で輝くためのピアノ・トリオなのだと思う。

 森田悠介押しの管理人としては『フロム・ヒア・トゥ・ゼア』の聴き所は,森田悠介の超カッコイイ“変拍子GROOVE”に小躍りする桑原あいのエレガントなピアノであると信じている。

 時にジャズ,時にフュージョン,時にプログレ,そして時にドリカム…。
 桑原あいよ,森田悠介に逆らうな。森田悠介に身を委ね続けよ…。

  01. BET UP
  02. 3=log2(8)
  03. from here to there
  04. Edit typos.
  05. Chronometer
  06. mind blindness
  07. Circuit River
  08. Portrait of an old man
  09. Riverdance
  10. HiCCups!

(イーストワークス・エンタティンメント/EWE 2012年発売/EWCD-0191)

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エリック・アレキサンダー / ザ・セカンド・マイルストーン5

THE SECOND MILESTONE-1 エリック・アレキサンダーの快進撃は『THE SECOND MILESTONE』(以下『ザ・セカンド・マイルストーン』)から始まった。管理人はそう断言しよう。

 デビュー以降のエリック・アレキサンダーの特長とは,難フレーズでもとにかく豪快に吹き切る,無敵のブロウ職人のようなイメージであったが,前作『THE FIRST MILESTONE』から“大人の魅力”開眼のようで,豊かな情感表現が目立つように変化していたと思う。

 しかし『THE FIRST MILESTONE』での大人の音世界は,残念ながらエリック・アレキサンダー主導というよりはパット・マルティーノの個性に引っ張られて出来上がった優良盤であり,エリック・アレキサンダーにとって『THE FIRST MILESTONE』は「過渡期」のアルバムの代表格のように思える。

 それがどうだろう。『ザ・セカンド・マイルストーン』での深い音色と硬派な鳴り。ついに「コルトレーン派・第三グループ」の筆頭格としてエリック・アレキサンダーが自ら追求する音楽性を確立したように思う。

 【MATCHMAKER,MATCHMAKER】の冒頭から流れ出たテナーサックスの衝撃が忘れられない。まるで現代にコルトレーンが舞い戻ってきたかのようなテナーサックスの深い響きに,稲妻に打たれたかのような電気ショックが背中を走った。

 真にゾクゾクした。久しぶりに「ウォーッ」と大声で叫びたくなった。音色にしてもフレージングにしても,一聴してすぐにエリック・アレキサンダーと識別できるコルトレーンのスタイルを完全消化し,オリジナルの音色を確立したエリック・アレキサンダー“その人”がここにいる。

 要は,白人コルトレーン派・伝統の「COOLなハード・バップ」である。しかもDRYなのにノリがめちゃめちゃ重い。ストレイト・アヘッドなスタイルが破壊力満点な「テナー・タイタン」の速射砲に身がよじれてしまう。真に手放しで素晴らしい。

 そう。「コルトレーン派・第三グループ」の筆頭格であるエリック・アレキサンダーの特長とは,インスピレーション豊かに,抑制のきいたトーンで創造的なインプロヴィゼーションを展開する「テナー・タイタン」である。

 そんなエリック・アレキサンダーが,明快なメロディー・ラインを創り出し,卓越したハーモニーを織り込みながら,スイングを発散し続け,完璧な形に仕上げたのが『ザ・セカンド・マイルストーン』なのである。

THE SECOND MILESTONE-2 1年前のアルバムと聴き比べて成長が分かるのだから,当のエリック・アレキサンダーの手応えはいかばかりであろう。腕を上げた。相当大きな自信を掴んだ。そんな勢いのまま臨んだレコーディングだったのだろう。

 ズバリ『ザ・セカンド・マイルストーン』で,エリック・アレキサンダーが一皮剥けた! エリック・アレキサンダーが「期待のニュー・スター」から「テナー・シーンのトップ・アーティスト」へと一気に駆け上った!
 エリック・アレキサンダーの「生きる伝説」は『ザ・セカンド・マイルストーン』から始まったのだ!

  01. matchmaker, matchmaker
  02. the second milestone
  03. moment to moment
  04. the man from hyde park
  05. estate
  06. luna naranja
  07. john neely beautiful people
  08. the cliffs of asturias

(マイルストーン/MILESTONE 2001年発売/VICJ-60745)
(ライナーノーツ/小川隆夫)

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山下 洋輔 / マル・ウォルドロンに捧ぐ4

A TRIBUTE TO MAL WALDRON-1 個人的には「日本のフリージャズ」と来れば,富樫雅彦菊地雅章の印象が強いのだが,恐らくは「日本のフリージャズ」の第一人者は山下洋輔という認識で間違いないと思う。

 管理人は森山威男脱退前の,中村誠一坂田明を擁した山下洋輔トリオのことは全く知らないのだが,なんだか知っているような気分になるほど,周りの先輩たちから山下洋輔にまつわる武勇伝を聞かされたからだろう。
 あの“肘打ち”パフォーマンスは演奏する上で必然性などないのだが,必然性があるように見せてくれる。

 だから山下洋輔セシル・テイラーを好きだと聞いても驚きやしない。しかし山下洋輔マル・ウォルドロンを好きだと聞いて大いに驚いてしまった。本当だろうかとにわかに疑ってしまう。

 山下洋輔からのマル・ウォルドロントリビュートA TRIBUTE TO MAL WALDRON』(以下『マル・ウォルドロンに捧ぐ』)を聴いてみた。
 どうなのだろう。管理人にはやっぱりピンと来なかった。朴訥でパーカッシブなピアノのタッチがマル・ウォルドロンっぽいのか?
 当時の管理人の耳では,どう逆立ちしても山下洋輔と「ブルージーな」マル・ウォルドロンが直接的には結び付かなかった。

 しかし,そんなことはどうでもよい。『マル・ウォルドロンに捧ぐ』は,怒涛の演奏のパワーに,ただ圧倒されるべきアルバムである。
 『マル・ウォルドロンに捧ぐ』は,至極真っ当なフリージャズであり,例の山下洋輔トリオの血が流れている。

 『マル・ウォルドロンに捧ぐ』の山下洋輔トリオのメンバーは,ベース国仲勝男ドラム小山彰太。このリズム隊の名演にシビレてしまう。

 国仲勝男ベースニールス=ヘニング・エルステッド・ペデルセン懸かっている。超絶なのに滑らかにドライブする。骨太なベース・サウンドが鼓動を打つ度に気持ち良い。
 そんなベース・ラインに鋭く反応する小山彰太ドラミングもまた神懸かっている。山下洋輔ピアノが走り出す度にドラムが波打って後追いし続ける。大興奮である。

A TRIBUTE TO MAL WALDRON-2 管理人の結論。『マル・ウォルドロンに捧ぐ批評

 『マル・ウォルドロンに捧ぐ』は,楽曲として“マル・ウォルドロンの曲を演奏する”山下洋輔フリージャズの中の1つのプロジェクトと捉えて何ら問題はない。
 予備知識なしで無心で聴けば,底抜けのフリー山下洋輔トリオの「核」が聴こえている。

 国仲勝男小山彰太と組んだハイテンション・ピアノ・トリオという基本があって,その上でマル・ウォルドロンの「ブルージーな」モニュメントが漏れ出してくる。
 実に味わい深い旋律と和声が次から次へと淀みなく湧き出てくる,そんなトリビュート・アルバムだと思う。

  01. TRANE'S SOUL EYES
  02. ONE-UPMANSHIP
  03. MAL IS BACK IN TOWN
  04. MINOAT

(エンヤ/ENJA 1980年発売/COCB-53616)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/山本隆,瀧口譲司)

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エリック・アレキサンダー・ウィズ・パット・マルティーノ / ザ・ファースト・マイルストーン4

THE FIRST MILESTONE-1 エリック・アレキサンダーが特に素晴らしいのは,エリック・アレキサンダーと同じくジョン・コルトレーンを信奉しているテナーサックスの大物,マイケル・ブレッカーブランフォード・マルサリスの影響をものともしない,自分の信じる「テナー・タイタン」の姿を追いかけているところである。

 つまり,超テクニカルで「シーツ・オブ・サウンド」の現代版を行くマイケル・ブレッカーとも,シリアスなジャズにしてオープンな雑食系であるブランフォード・マルサリスとも違う。
 シカゴというオールド・ジャズの伝統を重んじる閉鎖的なコミュニティで育った“らしさ”を強く感じる。

 直情的でありながら情緒的ブレを起こさない平衡感覚。ロング・トーンによるソロを吹き続けようとも,一瞬たりとも決してバテない精神的なたくましさ。ひたむきにハード・ブローイング一辺倒で,どんな局面でも吹き抜ける“豪快な力業”に,エリック・アレキサンダーの揺るぎない意志を感じてしまう。

 『THE FIRST MILESTONE』(以下『ザ・ファースト・マイルストーン』)は,エリック・アレキサンダーのリーダー作であるが,実はこのアルバム,エリック・アレキサンダーの男気を感じたピアノハロルド・メイバーンギターパット・マルティーノによる,エリック・アレキサンダーの「プッシュ・アルバム」だと思っている。

 『ザ・ファースト・マイルストーン』を初めて聴いた時,エリック・アレキサンダーが“御大2人”にプロデュースされている印象を受けた。
 そう。初めて「吹きすぎない」エリック・アレキサンダーの新境地を聴かせてもらった。パット・マルティーノから教えを請いたエリック・アレキサンダーが抑制美に目覚めている。

 パット・マルティーノ参加の『ザ・ファースト・マイルストーン』に続く,ジム・ロトンディ参加の『セカンド・マイルストーン』,ニコラス・ペイトン参加の『サミット・ミーティング』,ロン・カーター参加の『ナイト・ライフ・イン・トーキョー』の「マイルストーン四部作」は,自重することを覚えた“大人のNEWエリック・アレキサンダー”のテナーサックスが聴き所である。

THE FIRST MILESTONE-2 パット・マルティーノのイマジネイティヴなギター・ユニゾンからこぼれ出すエリック・アレキサンダーの豊かなテナーがメロディック。
 これまでも師匠としてエリック・アレキサンダーをバックから煽り続けて鍛えてきたハロルド・メイバーンパット・マルティーノを迎えてパワー・アップ。ピアノのニュアンスを聞き取ろうとするエリック・アレキサンダーを置いてけぼりに前へ前へと乗り出している。

 そう。ピアノハロルド・メイバーンギターパット・マルティーノによる,バッパー畑の至極のしごきが,エリック・アレキサンダーテナーサックスに“アダルトな響き”を付与している。

  01. STAND PAT
  02. #34 WAS SWEETNESS (FOR WALTER PAYTON)
  03. THE FIRST MILESTONE
  04. THE TOWERING INFERINO
  05. NIGHT SONG
  06. LAST NIGHT WHEN WE WERE YOUNG
  07. THE PHINEAS TRANE
  08. I'M GLAD THERE IS YOU

(マイルストーン/MILESTONE 2000年発売/VICJ-60555)
(ライナーノーツ/成田正)

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渡辺 貞夫 / プレイズ・バッハ4

SADAO PLAYS BACH-1 『ライヴ・イン根室 1977』の39年前の音源リリースに驚かされてから約1年。再び渡辺貞夫の過去音源がリリースされることになった。
 今回は17年前のライブ音源である。『SADAO PLAYS BACH』(以下『プレイズ・バッハ』)である。

 管理人はジャズフュージョン専門であるが,MJQを筆頭にジャズメンが取り上げる題材としてのクラシックに接する機会は幾らかある。
 ゆえに『プレイズ・バッハ』も購入したのだが,その理由は“しょうがなく”ではなく“喜んで”である。

 管理人は渡辺貞夫が大好きだ。特に渡辺貞夫アルトの音色は「世界一美しい」と太鼓判を押す。そんな管理人としては『プレイズ・バッハ』こそが待望の過去音源に違いない。
 期待高まる〜! 聴く前からこんなにワクワクするのは何年振りのことだろう。

 『プレイズ・バッハ』を無心で聴く。流れ出る音楽は「クラシックのバッハそのもの」である。しかし,それ以上に聴こえてくるのは,あの渡辺貞夫の「世界一美しい」アルトの音色である。
 やはり曲とか題材とかは二の次である。ただ渡辺貞夫アルトサックスが鳴っている。それだけで大満足してしまう自分がいる。

 しかし,繰り返し聴いているうちに『プレイズ・バッハ』の印象が変化した。やっぱり面白くはない。ナベサダが緊張でかしこまったクラシックのコンサート録音を聴いている気分がしてしまう。

 『プレイズ・バッハ』は渡辺貞夫アルトサックスの音色目的で聴くには最高の1枚であろう。だが完成されたコンサートからはナベサダの香りは届いてこない。

SADAO PLAYS BACH-2 管理人の結論。『プレイズ・バッハ批評

 『プレイズ・バッハ』は,良く出来たライブ演奏と認めるが,いかんせんライブなのに非ジャズ的な書き譜通りの演奏に終始している。これはこれで有りなのか無しなのか?

 仮に渡辺貞夫が「クラシックのバッハ」ではなく,最近流行りの「バッハジャズ」のアレンジに向き合ったとしても,独唱によるアルトの音色の美しさは損なわれなかったように思えるのだが…。
 まっ,あのナベサダが「バッハジャズ」とは下品すぎて手を出さないのだろうけど…。

  01. FLUTE SONATA IN E MAJOR BWV.1035
  02. FLUTE SONATA IN E FLAT MAJOR BWV.1031
  03. PARTITA FOR FLUTE SOLO IN A MINOR BWV.1013
  04. ORCHESTRAL SUITE NO.2 IN B MINOR BWV.1067
  05. POR TODA A MINHA VIDA
  06. CARINHOSO
  07. FLUTE SONATA IN C MAJOR BWV.1033
  08. FLUTE SONATA IN B MINOR BWV.1030

(ビクター/JVC 2017年発売/VICJ-61768)
(ライナーノーツ/菅原正二,小林道夫)

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スイングジャーナル主催 ジャズ・ディスク大賞 1997年度(第31回)

 「スイングジャーナル」誌が,レコード会社各社の自薦ノミネート作品を基にして,国内で該当年度中に発売されたCDLPビデオを対象に同誌委託の「ジャズ・ディスク大賞選考委員」によって選出される,日本ジャズ界に最も貢献した作品に贈られる「ジャズ・ディスク大賞」。

 今回は1997年度(第31回)の発表です。

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テネシー・ワルツ / Rendezvous★【金賞】.テネシー・ワルツ
カサンドラ・ウィルソン&ジャッキー・テラソン


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ミズーリの空高く★【銀賞】.ミズーリの空高く
チャーリー・ヘイデン&パット・メセニー


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ラヴ・シーンズ★【ボーカル賞】.ラブ・シーンズ
ダイアナ・クラール


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ザ・トリオ★【日本ジャズ賞】.ザ・トリオ
小曽根真


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コンプリート・アトラス・イヤーズ★【編集企画賞】.コンプリート・アトラス・イヤーズ
アート・ペッパー


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アメリカの祈り★【製作企画賞】.アメリカの祈り
マンハッタン・トリニティ+1


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トゥルー・バラード★【録音賞(新緑)】.トゥルー・バラード
 アーチー・シェップ


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アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション [XRCD]★【録音賞(再発)】.XRCDジャズ・シリーズ(全11タイトル)


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インプロヴィゼーション [DVD]★【最優秀ビデオ賞】.インプロヴィゼーション
チャーリー・パーカー他


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テナーズ・エニワン★【最優秀新人賞】.テナーズ・エニワン
ハーリー・アレン


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BEAUTIFUL LOVE★【最優秀新人賞】.ビューティフル・ラブ
ケイコ・リー


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 チャーリー・ヘイデン&パット・メセニーの『ミズーリの空高く』が【銀賞】受賞。

 『ミズーリの空高く』は,20年来の付き合いを持つチャーリー・ヘイデンパット・メセニーが,数年間2人きりで構想について語り合い練り上げてきた,ベースギターだけのアコースティックデュオ
 『ミズーリの空高く』は,ジャズを越え音楽をも越えた“崇高な作品”と呼ばれて然るべき“大傑作”である。

 不要な音を徹底的に削ぎ落とし,本当に必要な一音勝負に出た“音の映像作家”パット・メセニー。そのパット・メセニーの音世界をキャッチし,音のパレットを共有しながら色付けに励むチャーリー・ヘイデン。2人がついに完成させたのが“音の空間美”そして“静寂のハーモニー”である。
 暖かい音色と美しい響きを伴って,静かにゆっくりと音が,時が流れていく。幸福の本質とは何なのかを問いかけながら…。

 ウッド・ベースアコースティック・ギターの音色が,自分では手を伸ばしても決して届かない「心の琴線」にまで達し“優しく撫で回してくる”。うれしい。このままずっと聴き続けていたい。音楽に心の底から感動している肌触りが残る。

 言葉を越えた音楽がある。『ミズーリの空高く』はそんな1枚である。

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エリック・アレキサンダー / ストレイト・アップ4

STRAIGHT UP-1 ジョシュア・レッドマンが“神童”であればエリック・アレキサンダーは“新星”である。
 ジョシュア・レッドマンにはカリスマ性を感じるが,エリック・アレキサンダーには「期待の新人」を強く感じる。

 管理人がそう思うのは多分に,エリック・アレキサンダーデビューCDSTRAIGHT UP』(以下『ストレイト・アップ』)での実にフレッシュな第一印象のイメージが大きい。

 ハロルド・メイバーンピアノ・トリオをバックに,元気ハツラツなテナーサックスが疾走している。エリック・アレキサンダーの太く力強いトーン,豊かなメロディ・ラインがこぼれている。ブローが熱い。バラードは繊細でよく鳴っている。
 とにかく過去のサックス奏者と比べると何もかにもが違っているように感じる。新感覚に襲われた。

 エリック・アレキサンダーはイノベーターではない。エリック・アレキサンダーテナーサックスには,ソニー・ロリンズジョン・コルトレーンソニー・スティットジョー・ヘンダーソンスタンリー・タレンタインジョージ・コールマンからの影響が感じられる。
 にも関わらず,それ以上に勢いを感じる。己の目指す音楽に突き進む“気概”のようなものが先に来ている。これは相当に手強い。

 そう。エリック・アレキサンダーは,伝統に対する知識と愛情を持ち,開かれた感覚を持ち演奏する。
 エリック・アレキサンダーは,その耳で聞き,その心が感じたものを確信をもって,流ちょうに,成熟した音で,スイングしながら,本物のメロディー感覚を奏でる完璧主義者なのであろう。

STRAIGHT UP-2 管理人の結論。『ストレイト・アップ批評

 『ストレイト・アップ』は雰囲気で聴いていては楽しめない。エリック・アレキサンダーアドリブを紡いでいく過程を聴き楽しむアルバムである。
 情熱的なフレージングに茶目っ気たっぷりなエリック・アレキサンダーのユーモアを聴き逃すな!

  01. Straight up
  02. What are you doing the rest of your life
  03. Be my love
  04. Blues waltz
  05. Laura
  06. An Oscar for Tredwell
  07. End of a love affair
  08. Love is a many splendored thing

(デルマーク/DELMARK 1993年発売/PVCP-8164)
(ライナーノーツ/藤原孝弘,ローラ・ロウズナー)

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渡辺 貞夫 / ライヴ・イン根室 19775

LIVE IN NEMURO 1977-1 39年の時を越えてリリースされた『LIVE IN NEMURO 1977』(以下『ライヴ・イン根室 1977』)。
 このような過去音源のリリースは渡辺貞夫にとって初めてのことではなかろうか?

 この理由についてあらぬ憶測をしたものだが,要は渡辺貞夫の衰えから来たものではなく,渡辺貞夫の耳に初めて届けられた秘蔵音源が世に出た,という理由に胸を撫で下ろした( 事の詳細は大川正義氏が執筆したライナーノーツを参照のこと )。

 つまり渡辺貞夫のファンにとって『ライヴ・イン根室 1977』とは,単なる過去音源の発掘として片づけるのではなく,本気で渡辺貞夫の最新作として聴くべきアルバムであり,聴き込めば聴き込むほどにいいアルバムである。

 『ライヴ・イン根室 1977』が,公式録音でなかったという事実は,則ち,毎夜『ライヴ・イン根室 1977』クラスの名ライブが,日常的に演奏されていた証拠である。

 『ライヴ・イン根室 1977』の録音時期は,ちょうど渡辺貞夫が世界に登り詰める途上に当たる。
 『ライヴ・イン根室 1977』の半年前が『MY DEAR LIFE』で2週間後が『AUTUMN BLOW』。ナベサダフュージョンの間と間に行なわれた本格的なジャズライブというスタンスである。

 そう。『ライヴ・イン根室 1977』の真実とは,渡辺貞夫ジャズジャズ・ロック→フュージョンへの過渡期特有の魅力が1枚に詰め込められている。ライブだから,いつも以上に自由にアイディアを試している。

 渡辺貞夫の頭にあったアイディアの中には,アフリカがありボサノヴァがある。そしてアメリカの流行に影響を受けたクロスオーヴァーなジャズがある。

 実はナベサダさん。翌年の『CALIFORNIA SHOWER』の大ヒット以降は,アルバム制作は有名海外ジャズメンとの共演一色。その意味でも日本人で構成されたレギュラー・バンドの良さを堪能できる『ライヴ・イン根室 1977』のクロニカル的な価値は高い。
 
LIVE IN NEMURO 1977-2 とは言え『ライヴ・イン根室 1977』のハイライトは【ON GREEN DOLPHIN STREET】と【RHYTHMANING】のストレートなジャズ・ナンバー。

 オール日本人による渡辺貞夫グループがスピード豊かに疾走している。福村博トロンボーン本田竹広ピアノエレピ岡田勉ベース守新治ドラムのレギュラー・クインテットが一体化して押し寄せてくる。ハーモニーを重ねて楽しむスピリットみたいなものが伝わってくる。

 最高にグルーヴする渡辺貞夫のレギュラー・グループが色褪せていない。逆になんだかこれって新しい!? 『ライヴ・イン根室 1977』は渡辺貞夫・ファンにとっての「温故知新」なのである。

  01. MASSAI TALK
  02. HUNTING WORLD
  03. CHELSEA BRIDGE
  04. ON GREEN DOLPHIN STREET
  05. BOSSA NA PRAIA
  06. RHYTHMANING
  07. MY DEAR LIFE

(JVC/JVC 2016年発売/VICJ-61751)
(ライナーノーツ/小川隆夫,大川正義)

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エリス・マルサリス & 小曽根 真 / ピュア・プレジャー・フォー・ザ・ピアノ5

PURE PLEASURE FOR THE PIANO-1 こんなピアノデュオは初めてである。四角四面な管理人はデュエット・アルバムは2人が対等だと思い込んでいた。
 しかしエリス・マルサリス小曽根真の『PURE PLEASURE FOR THE PIANO』(以下『ピュア・プレジャー・フォー・ザ・ピアノ』)は,ほぼ小曽根真ばかりである。
 エリス・マルサリスの方が先に名前が出て来ているというのに,デュエットの間中,エリス・マルサリス小曽根真の伴奏役を務めている。まっ,このエリス・マルサリスのサポートが素ん晴らしいのであるが…。

 ただし『ピュア・プレジャー・フォー・ザ・ピアノ』におけるエリス・マルサリスの“小曽根推し”は,エリス・マルサリスの計算された演出である。
 ニューオリンズ・ジャズのドンであるエリス・マルサリスは,事あるごとに「とにかくお前ら一回,この真というピアニストの音楽を聴いてみろ」と,ニューオーリンズ・センター・フォー・クリエイティブ・アーツの学生たちに薦めていたというエピソードが残されている。

 そんな小曽根真の良さを知り尽くしたエリス・マルサリスだから『ピュア・プレジャー・フォー・ザ・ピアノ』で,まさかの“小曽根推し”ピアノデュオを成立させることが可能になったのだと思う。
 とは言え『ピュア・プレジャー・フォー・ザ・ピアノ』は,エリス・マルサリス小曽根真ジャズメン・シップで制作されたわけではない。

 『ピュア・プレジャー・フォー・ザ・ピアノ』制作の理由は,小曽根真サイドからの東日本大震災の復興支援のチャリティー・アルバム第2弾となるのだが,エリス・マルサリス・サイドからすれば2005年のハリケーン・カトリーナからのニューオリンズの復興支援チャリティーともなっている。
 『ピュア・プレジャー・フォー・ザ・ピアノ』の収益の全額が「半分は東日本大震災の復興支援へ,もう半分はエリス・マルサリス・センター・フォー・ミュージックという復興支援の中心的建物へ寄付されたようである。

 『ピュア・プレジャー・フォー・ザ・ピアノ』の性質がチャリティー・アルバムゆえ,鎮魂歌的な選曲であるし,ジャズ発祥の地としてのニューオリンズ所縁の選曲も目に付く。
 そう。クリティカルな小曽根真がバッチリ楽しめる仕組み。エリス・マルサリスがプロデュースする,小曽根真の仮想ソロ・アルバムと称して差し支えない。

 エリス・マルサリスの懐の中に小曽根真がクリティカルに飛び込んでいく様は,まるで親子共演のような印象を受ける。これはたまたまなのだろうがエリス・マルサリス小曽根真のお父様=小曽根実は同い年。
 互いにリスペクトしつつも,エリス・マルサリス小曽根真ジャズメン・シップに強い信頼関係と絆が感じられる。

( ちなみに『ピュア・プレジャー・フォー・ザ・ピアノ』にエリス・マルサリスの長男=ブランフォード・マルサリスが【STRUTTIN’ WITH SOME BARBECUE】でゲスト参加。ブランフォード・マルサリスにしては珍しくアルトサックスを吹いている。これぞマルサリス・ファミリーの血の掟!? )

PURE PLEASURE FOR THE PIANO-2 『ピュア・プレジャー・フォー・ザ・ピアノ』における小曽根真は「世界のOZONE」にふさわしい“王者のジャズ・ピアノ”を弾いている。理知的で内省的な演奏が半分,そして半分は悲しいのに底抜けに明るい。
 『ピュア・プレジャー・フォー・ザ・ピアノ』における名演小曽根真のキャリアを代表する1枚になったと思う。素晴らしい。

 一方,エリス・マルサリスジャズ・ピアノは,ある時はメロディー・ラインを流麗に奏で,ある時は小曽根真の才気溢れる挑発に端正なバッキングで応じている。
 ジャズ界のレジェンドの語り口は,ラグタイムのストライド奏法にはじまり,ブルースで泣き,ワルツで踊って,やがてスイングの強烈なグルーヴ感に収斂している。こちらも素晴らしい。

 そう。「攻めの小曽根真と受けのエリス・マルサリス」。2人の長所が絶妙のバランスで混じっている。「小曽根真エリス・マルサリス=8:2」のバランスゆえに光っている。

 いや〜,聴けば聴くほど『ピュア・プレジャー・フォー・ザ・ピアノ』がチャリティー・アルバムとして制作されたとは信じ難い。災害は2度と生じてほしくないが,エリス・マルサリス小曽根真デュエットの続編を大いに期待している。

  01. Confusing Blues
  02. Do You Know What It Means to Miss New Orleans?
  03. Sweet Georgia Brown
  04. Moment Alone
  05. Emily
  06. Longing for the Past
  07. What Is This Thing Called Love
  08. Struttin' With Some Barbecue

(ヴァーヴ/VERVE 2012年発売/UCCJ-2104)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/エリス・マルサリス,小曽根真)

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トッキーニョ & 渡辺 貞夫 / メイド・イン・コラソン5

MADE IN CORACAO-1 渡辺貞夫“最高傑作”は『エリス』である。それは良いとして『エリス』と同日発売の『MADE IN CORACAO』(以下『メイド・イン・コラソン』)とはリリース直後の30年前,人気・実力・扱いともに大きな開きがあったように記憶する。

 渡辺貞夫名義でトッキーニョがゲストとして参加したのが『エリス』であり,トッキーニョ渡辺貞夫の共同名義の『メイド・イン・コラソン』は,トッキーニョソロ名義では売れないからコラボになったとかならなかったとか…。
 事実,良作の『エリス』は,アメリカのジャズ・チャート4週連続の第1位獲得。二卵性双生児ゆえ,どうしても比較される『エリス』と『メイド・イン・コラソン』の評価は9:1で『エリス』の圧勝だったと記憶する。

 あれから21年。リマスタリングされた『エリス』と『メイド・イン・コラソン』の両盤を買い直してみた。そうして聴き直してみると,印象がガラリと変わってしまった。
 管理人の『エリス』=“最高傑作”の評価は揺らがないが『メイド・イン・コラソン』の,ほっこりとした温かな歌心に心が揺さぶられる。一気に『メイド・イン・コラソン』が『エリス』と同じレベルで肩を並べてしまったのだ。

 この全てはトッキーニョのヒューマンな音楽性に尽きる。ハッキリ言えばトッキーニョより上手なヴォーカリストトッキーニョより上手なギタリストは五万といる。
 でもどんなに超一流のヴォーカリストギタリストが集まろうともトッキーニョ1人のヒューマンな音楽性の魅力にはかなわない。渡辺貞夫トッキーニョに惚れ込んでいる理由を管理人も21年かかってようやく理解できた思いである。

 いいや『メイド・イン・コラソン』の真実とは,トッキーニョから捧げられた渡辺貞夫への“賛歌”である。
 『メイド・イン・コラソン』の全10トラック中,渡辺貞夫の楽曲が6曲。つまり『メイド・イン・コラソン』とは「TOQUINHO PLAYS SADAO WATANABE FEATURING SADAO WATANABE」なのである。

 『エリス』で新録された渡辺貞夫の【ELIS】【O QUE PASSOU PASSOU】の2曲にトッキーニョが詩を付けた。それだけではなく【BLUE LOVE LETTER】【MORNING ISLAND】【SERENADE】【STRAY BIRDS】の渡辺貞夫の既発4曲にもトッキーニョが詩を付けた。

MADE IN CORACAO-2 作曲家,メロディー・メイカーとしてつとに評価の高いトッキーニョがここまで渡辺貞夫の曲を歌うことに執着しているのは,2人の友情の証しであるばかりでなく,渡辺貞夫の音楽にブラジル音楽と共通するメロディー・センスを有することの証しでもある。

 そう。渡辺貞夫トッキーニョに惚れ込み,トッキーニョ渡辺貞夫に惚れ込んで制作されたのが「TOQUINHO PLAYS SADAO WATANABE FEATURING SADAO WATANABE」=『メイド・イン・コラソン』。

 いつの日か『メイド・イン・コラソン』が『エリス』を凌駕する日がやってくることを,実はひそかに期待しちゃったりして…。

  01. SAUDADES DE ELIS
  02. MINHA PROFISSAO
  03. MADE IN CORACAO
  04. O QUE PASSOU PASSOU
  05. FILHO MEU
  06. SAMBA DA VOLTA
  07. CARINHOSO
  08. SENTIMENTOS IGUAIS
  09. BONS MOMENTOS
  10. INQUIETO AMOR

(エレクトラ/ELEKTRA 1988年発売/WPCL-10648)
(ライナーノーツ/中原仁)

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エディ・ヒギンズ・トリオ / 美しすぎるあなた4

YOU ARE TOO BEAUTIFUL-1 マイルス・デイビスの『COOKIN’』『WORKIN’』『RELAXIN’』『STEAMIN’』に対応するのがエディ・ヒギンズの『A FINE ROMANCE』『A LOVELY WAY TO SPEND AN EVENING』『SECRET LOVE』『YOU ARE TOO BEAUTIFUL』(以下『美しすぎるあなた』)。
 そう。「ロマンス4部作」とはマイルス・デイビス「マラソン・セッション4部作」のエディ・ヒギンズ版である。

 ただしこのような「4部作」企画が通るのもエディ・ヒギンズだからである。なぜならマイルス・デイビスの「マラソン・セッション4部作」の4枚はその全てが名盤だからである。
 “名盤量産請負人”のエディ・ヒギンズだからこそ許された「ロマンス4部作」。

 (そしてこちらが没テイク)。ビル・エヴァンスの『PORTRAIT IN JAZZ』『WALTZ FOR DEBBY』『EXPLORATIONS』『SUNDAY AT THE VILLAGE VANGUARD』に対応するのがエディ・ヒギンズの『A FINE ROMANCE』『A LOVELY WAY TO SPEND AN EVENING』『SECRET LOVE』『YOU ARE TOO BEAUTIFUL』(以下『美しすぎるあなた』)。
 そう。「ロマンス4部作」とはビル・エヴァンスリバーサイド4部作」のエディ・ヒギンズ版である。

 上記の2案で管理人がエディ・ヒギンズが同じピアニストビル・エヴァンスではなくマイルス・デイビスを選んだのは「ロマンス4部作」のレコーディング時間である。
 マイルス・デイビスの「マラソン・セッション4部作」は1956年5月11日と10月26日の都合二日間で25曲。そのほとんどがワンテイクだった。そしてエディ・ヒギンズの「ロマンス4部作」の場合はマイルス・デイビスの2倍=4日間で50曲。
 ねっ,エヴァンスではなくマイルスに近いでしょ?

 それにしても『美しすぎるあなた』は『秘密の恋』の数倍いい。選曲も有名曲ばかりだしアレンジもこれしかない感じでキッチリと決まっている。
 これって「ロマンス4部作」の最後の最後まで名演を“お取り置き”していた感じ? …って『素敵なロマンス』と『恋に過ごせし宵』は1回も聴いたことがないのだけれど…。

YOU ARE TOO BEAUTIFUL-2 最後に名盤に出会えてよかった。好きなジャズメンの後味が悪くなるのは嫌なので『美しすぎるあなた』を「エディ・ヒギンズの最後」にしたいと思います。今のところですが…。

 最後の最後にプチ情報。エディ・ヒギンズという偉大なジャズメンは,一度録音した曲は二度と録音しない主義のお方です。演奏のクオリティは安定していますので(余りこういうのは好きではないのですが)自分の好きな曲が収録されているかどうかの基準でアルバムを選んでも大丈夫です。
 聴かないのがダメ絶対。騙されたと思って,是非,エディ・ヒギンズを1枚は聴いてみてください。

 「一家に1枚」はエディ・ヒギンズなのですぞ〜。

  01. A Nightingale Sang In Barkeley Square
  02. All The Things You Are
  03. Lover Man
  04. Like Someone In Love
  05. Histria de Una Amour
  06. Anything Goes
  07. In A Sentimental Mood
  08. In The Still Of The Night
  09. Georgia On My Mind
  10. Blue Bossa
  11. You Are Too Beautiful
  12. I'll Be Seeing You

(ヴィーナス/VENUS 2007年発売/TKCV-35413)
(ライナーノーツ/皸羶成)

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エディ・ヒギンズ・トリオ / 秘密の恋4

SECRET LOVE-1 2002年リリースの『DEAR OLD STOCKHOLM』以来なので,5年振りにエディ・ヒギンズCDを買ってしまった。( ← ウソです。本当はその1年後ぐらいに2割引きになった頃に買いました )。

 一度は「エディ・ヒギンズは過去作だけで十分だな」なあんて思っていたはずなのに「ロマンス4部作」の触れ込みには我慢できず,やっぱり新緑を買ってしまった。

 手に取ったのは「ロマンス4部作」の3作目『SECRET LOVE』(以下『秘密の恋』)。1作目の『素敵なロマンス』ではなく2作目の『恋に過ごせし宵』でもなく『秘密の恋』を選択した理由は単純に【ラウンド・ミッドナイト】を聴いてみたい一心であった。
 ロマンスとは対極にある【ラウンド・ミッドナイト】がロマンスする演奏ってどんなものか? 読者の皆さんも怖いもの見たさで?ちょっと惹かれてしまいませんか?

 思うにエディ・ヒギンズという“ジャズ・ピアニスト”はいつだって【ロマンティックが止まらない】( by C-C-B )!
 エディ・ヒギンズの場合は「ロマンス4部作」だけではなく,リーダー・アルバムの全てがロマンスしている。ゆえに暗い哀愁ナンバーにこそ逆に愛着を覚えてしまうもの?

 やったね。エディ・ヒギンズさん。【ラウンド・ミッドナイト】がロマンスしている。肩の凝らないロマンティシズムが漂う【ラウンド・ミッドナイト】である。
 甘すぎない楽曲に,塩味がピリリと効いた「情熱的なオトナ」の【ラウンド・ミッドナイト】がロマンスしている。とってもロジカルなのに耳に優しく広がっていく。快感である。

SECRET LOVE-2 他の11曲のロマンティック・スタンダードも安定の「ヒギンズ節」が中々良い演奏だと思う反面,個人的にはどうしても今までの思い入れが強かっただけに(『DEAR OLD STOCKHOLM』は名演集だったにも関わらず)アンチ商業主義の気持ちが優勢になってしまうため,以前のようにピュアな?気持ちでエディ・ヒギンズを聴くのは難しかった。そのことを再確認できただけでも『秘密の恋』を買って良かったと思っている。

  01. Secret Love
  02. Ghost Of A Chance
  03. Star Eyes
  04. Round Midnight
  05. East Of The Sun
  06. Always
  07. Blue And Sentimental
  08. I Let A Song Go Out Of My Heart
  09. But Beautiful
  10. Cheek To Cheek
  11. But Not For Me
  12. Avalon

(ヴィーナス/VENUS 2007年発売/TKCV-35409)
(ライナーノーツ/皸羶成)

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渡辺 香津美 / KYLYN4

KYLYN-1 管理人は『KYLYN LIVE』を聴いた後に『KYLYN』を聴いた。そのせいなのだろう。『KYLYN』について語ろうと思えば,巷で言われているような名盤評価にはならない。

 『KYLYN LIVE』は真に最高のライブ盤である。ゾクゾクする。しかしあの大興奮を『KYLYN』からは感じられない。
 ズバリ『KYLYNレコーディングの時点では,渡辺香津美坂本龍一,そして日本の音楽界の精鋭たちとのコンビネーションがまだこなれてはいないのだ。

 そう。『KYLYN』の音楽の本質が,あの「青と赤」真っ二つのアルバム・ジャケットに象徴されている。『KYLYN』はLPのA面が渡辺香津美ジャズフュージョン・サイド,B面が坂本龍一のテクノ・ポップ・サイドで構成されている。
 ステージ上の楽器の配置を「青と赤」で表現した『KYLYN LIVE』のアルバム・ジャケットがお見事。「青と赤」が分断されていた『KYLYN』が『KYLYN LIVE』でついに融合したことを絵画的に表現しているように思う。

 さて,そんな渡辺香津美ソロ名義のアルバムを坂本龍一がプロデュースした『KYLYN』であるが,ギターフレットレスベース渡辺香津美フェンダー・ローズピアノシンセサイザー坂本龍一フェンダー・ローズ益田幹夫ピアノキーボードヴォーカル矢野顕子ベース小原礼ドラム村上“ポンタ”秀一ドラム高橋ユキヒロパーカッションペッカートロンボーン向井滋春アルト・サックスソプラノ・サックス本多俊之テナー・サックス清水靖晃という,当時すでに自らのリーダー・アルバムをリリース済メンバーによる「オール・スター・セッション」こそが『KYLYN』の“伝説”である。

 つまり渡辺香津美坂本龍一の『KYLYN』における功績とは,これだけの精鋭たちを集めきった人脈にあるのであって,2人がリードしたフュージョン志向の音楽性は後付けで良い。

 才能豊かなメンバーが同じスタジオに集まって,同じ空気同じ方向性で自由にクリエイトできたからこそ,後刻『KYLYN LIVE』での爆発が生じたのだろう。
 「KYLYN」という名の「オール・スター・セッション」が,やがては「KYLYN BAND」を名乗れるほどに,一体感ある音の交歓に喜びを感じながらメンバー全員が「次なるステージへとステップアップできた時間と場所」としての趣きを感じる。

 ちなみに「KYLYN」というプロジェクト名は,渡辺香津美坂本龍一の双頭バンドという意味合いもあって,Kは渡辺香津美のK。Yは&の意味。Lは「RYUICHI SAKAMOTO」のRをLと表記したもの。Nは仲間のN。

 面白いのは「KYLYN」から後のYMOが誕生し,渡辺香津美もYMOのサポートを務めるようになった事実もあって「KYLYN」の主導権は常に「LYUICHI SAKAMOTO」が握っており,渡辺香津美サイドが坂本龍一サイドに呑み込まれてしまったような印象で聴こえるところである。うん。教授&アッコちゃん!

KYLYN-2 管理人の結論。『KYLYN批評

 『KYLYN』は2つの別々のコンセプトが合体したコンパイル盤にして,それぞれのコンセプトの括りも曖昧で曲想がバラバラな実験作。『KYLYN』は,コンビニ的な凄腕メンバーの才能豊かなソロを楽しむためのアルバムである。

 ただし,この「暗中模索的」な『KYLYNセッションから,後の『KYLYN LIVE』なる大名盤が誕生し『KYLYN LIVE』で発芽した「音の種」が,J−ジャズフュージョン界に満開の花を咲かせる結果につながったのだから「分水嶺的」なアルバムとして(音楽性とは別の分野で)評価されて然るべきだと思っている。

  01. 199X
  02. SONIC BOOM
  03. WATER WAYS FLOW BACKWARD AGAIN
  04. MILESTONES
  05. E-DAY PROJECT
  06. AKASAKA MOON
  07. KYLYN
  08. I'LL BE THERE
  09. MOTHER TERRA

(ベター・デイズ/BETTER DAYS 1979年発売/COCB-53837)
(☆HQCD仕様)
(ライナーノーツ/松下佳男)

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スイングジャーナル主催 ジャズ・ディスク大賞 1996年度(第30回)

 「スイングジャーナル」誌が,レコード会社各社の自薦ノミネート作品を基にして,国内で該当年度中に発売されたCDLPビデオを対象に同誌委託の「ジャズ・ディスク大賞選考委員」によって選出される,日本ジャズ界に最も貢献した作品に贈られる「ジャズ・ディスク大賞」。

 今回は1996年度(第30回)の発表です。

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ザ・ニュー・スタンダード★【金賞】.ザ・ニュー・スタンダード
ハービー・ハンコック


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フォー・シーズンズ★【銀賞】.フォー・シーズンズ
秋吉敏子ジャズ・オーケストラ・フィーチャリング・ルー・タバキン

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ニュー・ムーン・ドーター★【ボーカル賞】.ニュー・ムーン・ドーター
カサンドラ・ウィルソン


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プレイ・ピアノ・プレイ〜大西順子トリオ・イン・ヨーロッパ★【日本ジャズ賞】.プレイ・ピアノ・プレイ
大西順子


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コンプリート・ロンドン・ハウス・セッション★【編集企画賞】.コンプリート・ロンドン・ハウス・セッション
オスカー・ピーターソン

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MILES FAVORITE SONGS★【製作企画賞】.スイングジャーナル・リーダース・プロデュース〜マイルス・フェイバリット・ソングス
ドリーム・セッション'96

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テイルズ・フロム・ザ・ハドソン★【録音賞(新緑)】.テイルズ・フロム・ザ・ハドソン
 マイケル・ブレッカー


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ネフェルティティ★【録音賞(再発)】.マスター・サウンド・ジャズ・シリーズ〜マイルス・デイビス(20タイトル)
マイルス・デイビス

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イン・コンサート Vol.2 [DVD]★【最優秀ビデオ賞】.ロフト・プレゼンツ・ジャズ・イン・ミュンヘン=スタン・ゲッツ・イン・コンサート〜ヒズ・ラスト・レコーディング Vol.1&2スタン・ゲッツ

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オール・フォー・ユー〜ナット・キング・コール・トリオに捧ぐ★【最優秀新人賞】.オール・フォー・ユー〜ナット・キング・コール・トリオに捧ぐ
ダイアナ・クラール

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 ハービー・ハンコックの『ザ・ニュー・スタンダード』が【金賞】受賞。

 いや〜,よ〜く覚えている。『ザ・ニュー・スタンダード』の発売当時は“狂喜乱舞”のジャズ・ライフであったことを…。
 ハービー・ハンコックの目の付け所が素晴らしい。ハービー・ハンコックこそが当世最高のピアニストである。これからはキース・ジャレットでもチック・コリアでもなくハービー・ハンコックと共に生きて行こう。
 まぁ,管理人の「ハービー命」は数年間の寿命であったけど…。
 
 『ザ・ニュー・スタンダード』とは,それこそキース・ジャレットが「スタンダーズトリオ」で演奏するような,古くから途切れることなく演奏され続けてきた定番曲に変わる,新時代のスタンダーズ集。

 ハービー・ハンコックがセレクトした,新時代のスタンダーズ・ソングは,確かに時の風化に耐えうる名曲ばかり。しかもこれが全曲ジャズスタンダーズしているのだからたまらない。

 そう,この手法に覚えがある。かつてマイルス・デイビスマイケル・ジャクソンを試みた時のアレである。マイルス・スクールの首席卒業生=ハービー・ハンコックマイルス・デイビスの遺志を継いで完成させたアルバムが『ザ・ニュー・スタンダード』の真実なのだ。

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エディ・ヒギンズ・トリオ / 懐かしのストックホルム4

DEAR OLD STOCKHOLM-1 『DEAR OLD STOCKHOLM』(以下『懐かしのストックホルム』)が実に悩ましい。
 演奏良しの選曲良し。これぞジャズ・ピアノが長年追い求め続けてきた理想の具現化であろう。

 ただし手放しでは喜べないのだ。エディ・ヒギンズ・クラスなら『懐かしのストックホルム』クラスの名盤を放っておいて演奏できる。
 なのにエディ・ヒギンズがやらされてしまっている。スイングジャーナル誌とヴィーナス・レコードにやらさえてしまったのだ。そこがどうにも歯がゆいのだ。

 そう。『懐かしのストックホルム』とは,スイングジャーナル誌の「エディ・ヒギンズ・トリオで聴きたいスタンダード・ベスト10」から産まれた企画盤である。どうやらVENUSの10周年記念企画盤だとか…。

 VENUSエディ・ヒギンズが「持ちつ持たれつの間柄」であることは周知の事実。ゆえに『懐かしのストックホルム』の制作は当然の成り行きだったのかもしれない。
 しかし『懐かしのストックホルム』の中に,エディ・ヒギンズの魂はあるのか?と問われれば,管理人は「ない」と答えよう。

 管理人には『懐かしのストックホルム』でのエディ・ヒギンズは,どうにも「よそ行き」のジャズ・ピアノに聴こえてしまう。「どこぞのカクテル・ピアニスト」のジャズ・ピアノに聴こえてしまう。

 そう。『懐かしのストックホルム』でのエディ・ヒギンズは,いつもより軽めに鍵盤を弾いている。『HAUNTED HEART』や『AGAIN』の頃の硬めのタッチが消えている。

 管理人は『懐かしのストックホルム』の前作までエディ・ヒギンズをずっと支持してきたが,それは“売れ線”を弾いてはみても,心はずっと硬派なジャズメンのままだったからだ。商業主義とは一線を引いた「カクテル・ピアノ」職人のエディ・ヒギンズが大好きだった。

DEAR OLD STOCKHOLM-2 だからこそ『懐かしのストックホルム』で感じた軽めのピアノ・タッチに嫌悪感を覚えてしまった。エディ・ヒギンズが悪魔に魂を売ってしまった気がして嫌気がさした。
 1番期待していたのに,甘い【NARDIS】という音選びの決定的な失敗が『懐かしのストックホルム』全体の不必要な甘さへとつながったように思う。

 ズバリ,管理人の大好きだった“エヴァンス派”のエディ・ヒギンズは『懐かしのストックホルム』という大名盤を残して死んでしまった。
 『懐かしのストックホルム』は「どこぞのカクテル・ピアニスト」による名演集なのである。

 個人的には『懐かしのストックホルム』以降のエディ・ヒギンズは評価していない。批評の対象としてはどうでもいい。

  01. Moonlight Becomes You
  02. More Than You Know
  03. Nardis
  04. Over The Rainbow
  05. Dear Old Stockholm
  06. I Remember Clifford
  07. You And The Night And The Music
  08. If You Could See Me Now
  09. Again
  10. We Will Be Together Again
  11. Witchcraft
  12. It Never Entered My Mind
  13. Stella By Starlight
  14. Blame It On My Youth

(ヴィーナス/VENUS 2002年発売/VHCD-4077)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/児山紀芳)

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ザ・スフィアーズ / ライヴ・イン大阪3

LIVE IN OSAKA!!-1 「ザ・スフィアーズ」とは山中千尋の“覆面バンド”である。
 「ザ・スフィアーズ」のデビュー盤『LIVE IN OSAKA!!』(以下『ライヴ・イン大阪』)のどこを見渡しても山中千尋の文字はない。アルバム・ジャケットにも,いつもの美形の顔出しなし。
 おいおい,ドル箱の山中千尋ブランドを隠してセールス的には大丈夫なのかぁ〜。

 しか〜し『ライヴ・イン大阪』を聴けばすぐに分かる。「ザ・スフィアーズ」が発する山中千尋特有のジャズ・ピアノの香り。
 これには原因があって,ちーたんのエレピがバランス的に飛び抜けているのは,ダナ・ロスエレクトリックベースカレン・テバーバーグドラムが少々貧弱。
 結果として,いつもの脇義典ウッドベースジョン・デイヴィスドラムとの「山中千尋トリオ」以上に「山中千尋・ワンマン・バンド」と化している。

 つまり『ライヴ・イン大阪』は,山中千尋とその他2名によるライブ盤ゆえクオリティは二段落ちている。山中千尋ピアノにしても,せっかくの「ワンマン・バンド」なのだから,もっと自由に大暴れしても良いのに「ザ・スフィアーズ」全体のまとめ役に徹している感じがする。

 「ザ・スフィアーズ」に不満に感じてしまう最大要因はダナ・ロスエレクトリックベースである。せっかくのエレクトリックベースなのにリズム・キープがほとんどで,エレクトリックベースの代名詞=スラップなどは皆無。

 要するに「ザ・スフィアーズ」は山中千尋の「アコベだけではなくエレベも使ってみました」的な実験作。エレベエレピが乗っているにも関わらず,印象としてはアコベから何にも変化なし。

LIVE IN OSAKA!!-2 管理人はアルバム数枚おきに数曲だけ聴かせてくれる山中千尋の“狂喜のエレピ”が大好きなもので「ザ・スフィアーズエレクトリック・ガールズ・バンド」に大いに期待していたのだが,3回聴いてお蔵入り決定。
 自他共に認めるちーたん・マニアの管理人をして駄盤の烙印を押してしまおう。

 そう。「ザ・スフィアーズエレクトリック・ガールズ・バンド」の看板は偽りであって,聴き所はフェンダー・ローズではなくアコースティックピアノの方であった。
 『ライヴ・イン大阪』は【八木節】の名演1曲に救われているよなぁ。【八木節】ばかりは山中千尋がニッコニコ〜!

  01. RAIN, RAIN AND RAIN
  02. LIVING TIME:EVENT V
  03. YAGIBUSHI
  04. BEMSHA SWING
  05. HIMAWARI MUSUME
  06. TAXI
  07. THE ENTERTAINER
  08. EVIDENCE
  09. INSIGHT FORESIGHT

(ブルーノート/BLUE NOTE 2015年発売/UCCQ-1050)

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エディ・ヒギンズ & スコット・ハミルトン / マイ・フーリッシュ・ハート4

MY FOOLISH HEART-1 『煙が目にしみる』で十分に理解していたはずなのに『MY FOOLISH HEART』(以下『マイ・フーリッシュ・ハート』)で改めてスコット・ハミルトンテナーの響きに速攻でやられてしまった。

 タイトル・チューンにしてオープナーの【MY FOOLISH HEART】のエロいこと。とにもかくにも生々しいタンギングやブレスやビブラートをエロスと表現するしか他にない。ただし清潔感があって潔い「芸術性のエロスの香り」。そこのところを読み間違えないでいただきたい。

 だから管理人としては『マイ・フーリッシュ・ハート』はエディ・ヒギンズスコット・ハミルトンの共演盤とは考えていない。
 『マイ・フーリッシュ・ハート』はスコット・ハミルトンテナーサックスを聴くべきアルバムだと断言しよう。

 ズバリ『マイ・フーリッシュ・ハート』とは,マル・ウォルドロンの『レフト・アローン』と同じ立ち位置に位置するアルバムである。
 マル・ウォルドロンのリーダー作『レフト・アローン』。しかし真の主役はマル・ウォルドロンピアノではなくジャッキー・マクリーンアルトサックスの方である。

 ジャッキー・マクリーンの『レフト・アローン』を聴いている時,そしてスコット・ハミルトンの『マイ・フーリッシュ・ハート』を聴いている時,マル・ウォルドロンピアノエディ・ヒギンズピアノも消えている。
 要は完全にサイドメンとしての伴奏に徹している。

MY FOOLISH HEART-2 マル・ウォルドロンと来ればビリー・ホリデイの伴奏者として余りにも有名である。そしてエディ・ヒギンズも『懐かしのストックホルム』のライナーノーツを読むと,氏のワイフであるメレディス・ダンブロジオを始めとして「私はありとあらゆる歌手の伴奏をやってきた」との記載がある。やっぱり!

 『マイ・フーリッシュ・ハート』はスコット・ハミルトンテナーサックスを聴くべきアルバムであるが,そこには名手=エディ・ヒギンズジャズ・ピアノが常に寄り添っている。

 エディ・ヒギンズスコット・ハミルトンの2枚目の共演盤『マイ・フーリッシュ・ハート』の内容が真に上質。ただし『煙が目にしみる』を聴いた時のようなインパクトは薄い。

 『マイ・フーリッシュ・ハート』は【MY FOOLISH HEART】の超名演を聴いて満足すればそれでよろしい。
 何となく予定調和的な,まぁ,それだけ完璧な出来ということで…。

  01. My Foolish Heart
  02. Russian Lullaby
  03. What Is There To Say
  04. That Old Black Magic
  05. Skylark
  06. Night And Day
  07. Embraceable You
  08. Am I Blue
  09. These Foolish Things
  10. The More I See You
  11. The Song Is You
  12. This Love Of Mine

(ヴィーナス/VENUS 2003年発売/TKCV-35316)
(ライナーノーツ/馬場啓一)

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松武 秀樹,乾 裕樹,渡辺 香津美,深町 純,村上 秀一,岡沢 茂,江夏 健二 / SPACE FANTASY + LIVE SPACE FANTASY4

SPACE FANTASY + LIVE SPACE FANTASY-1 日本のトップ・ミュージシャンが「宇宙」をテーマに「宇宙戦艦ヤマト」「スター・ウォーズ」「未知との遭遇」「火の鳥」「2001年宇宙の旅」のテーマ・ソングを演奏したスタジオ盤+ライブ盤のオムニバスが『SPACE FANTASY + LIVE SPACE FANTASY』である。

 『SPACE FANTASY + LIVE SPACE FANTASY』のリーダーはサウンド・デザインを担当した松武秀樹。アレンジャーは乾裕樹
 松武秀樹乾裕樹シンセサイザーを演奏するのだが,実際の演奏は深町純に任せている。

( ここで後日談。深町純は『SPACE FANTASY + LIVE SPACE FANTASY』のサウンド・デザインやアレンジが気に入らなかったのだろう。自分で『SPACE FANTASY + LIVE SPACE FANTASY』の焼き直しに当たる『宇宙戦艦ヤマト〜シンセサイザー・ファンタジー』なるアルバムを制作している )

 要するに『SPACE FANTASY + LIVE SPACE FANTASY』の時点では,深町純の参加はシンセサイザー・プレイヤーとしての評価であって,音楽全体のイメージは松武秀樹乾裕樹のものだということ。
 個人的にはその方が良い。深町純のファンとしては,迷盤『SPACE FANTASY + LIVE SPACE FANTASY』を深町純の音だと勘違いしたくないから…。

 そういうことでここからは深町純への感情を除いた『SPACE FANTASY + LIVE SPACE FANTASY』の評価について書く。

 そもそも『SPACE FANTASY + LIVE SPACE FANTASY』というアルバムは“シンセサイザー有き”の企画盤である。
 シンセサイザー=宇宙的・未来的なイメージが連想される時代があった。管理人は『SPACE FANTASY + LIVE SPACE FANTASY』のリリース後,数年経過してからYMOの洗礼を受けた世代である。

 とは言え,シンセサイザーを強烈に意識したのはYMOではなく喜多郎である。もっと言えば喜多郎というよりFM東京系「サントリー・サウンド・マーケット」のBGMが全てである。

 「サントリー・サウンド・マーケット」の“天にも昇る感じ”の音イメージはオーケストラシンセサイザーあってのこと! 壮大な未来。すっごいことが起こりそうな未来。今まで聴いたことのないサウンドの広がりはシンセサイザーであればこそ!
 「スター・ウォーズ」が今でも爆発的な人気を拡げている現状と比較すると,現状では,なぜシンセサイザーがここまで廃れてしまったのか不思議である。

SPACE FANTASY + LIVE SPACE FANTASY-2 その答えは『SPACE FANTASY + LIVE SPACE FANTASY』を聴いて感じる「古臭さ」にあるように思う。

 『SPACE FANTASY + LIVE SPACE FANTASY』斬新だったのは「未来志向のシンセサイザー・ミュージック」というカテゴリーだけであって,肝心の音楽自体はクリエイトされていない。

 テクノロジーの実験の場だったから,有名曲をシンセサイザーで演奏するとこんな感じ,で面白かったのだと思う。この企画ものを一番面白がっているのはドラマー村上秀一であろう。ビシビシと決まるリズムが一級品です。

 若き日の野呂一生渡辺香津美の両雄が“エレキ”って感じのギターを弾いています。これもアナログ・シンセのおかげだと思います。

  DISC-1 SPACE FANTASY
  01. 序曲―宇宙戦艦ヤマト
  02. 深夜の追跡
  03. イスカンダル
  04. 白い朝
  05. 真っ赤なスカーフ
  06. 宇宙戦艦ヤマト
  07. 飛行中隊
  08. エンジェルダスト
  09. 未知との遭遇
  10. 明日への希望―夢

  DISC-2 LIVE SPACE FANTACY
  01. プロローグ〜イスカンダル〔宇宙戦艦ヤマト〕
  02. マーメード ブールヴァード
  03. “スターウォーズ”のテーマ
  04. ザ・バランス
  05. “火の鳥”のテーマ
  06. ザ・スカードロン
  07. “2001年宇宙の旅”のテーマ ツァラトストラはかく語りき

(フォーライフレコード/FOR LIFE RECORDS 1978年発売/FLCF5027)
(CD2枚組)
(紙ジャケット仕様)
(☆BLU−SPEC CD仕様仕様)
(ライナーノーツ/松武秀樹)

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20180212 神保彰 LIVE NO.2

 「神保彰ワンマンオーケストラ ドラムからくり全国行脚2018〜」! LIVEレポート2日目の今夜はステージング編です。

 神保彰の“天賦の才”。それは1にドラム,2に作曲,3にパフォーマーンス,そして4にMCである。
 特にMCの素晴らしさは司会屋実が抜けた「CASIOPEA 3rd」のLIVEにおいて,1人異次元のまとまりを聞かせてる。MCもプロっぽい起承転結の構成が滑らかなのに感心してしまう。

 「ワンマンオーケストラ」なのだから,当然ながらステージ上は神保彰ワンマン。MCもワンマン。激しい演奏直後に息をはずませながら,これがまた頭脳明晰な解説付きのMCとキター!って思ったら「カミボ・アキラ(噛み保彰)」がご愛嬌!

 個人的な大収穫は1stセット終了後の休憩タイムに「神保彰ワンマンオーケストラ」の屋台骨=ミッチーさんとお話しできたこと。神保彰の「説明コーナー」を聞いても?だったので,ミッチーさんへ疑問をぶつけてみた。
 答えはこうです。「ドラムソロはセンサー鳴らないという設定。タッチすることでプログラムを変えている。音色を変えている。後ろに戻ることはできないので引き算する。電気ものなので反応しない時もある。そういう時は足し算する」。うん。神保彰のハイパー・ドラミングと同じで,分かるようでよく分からな〜い。ちゃんちゃん。

 そんな「世界の神保」にして,昨年末に共演したのがきっかけで「モノノフ」入りした神保彰の「愛情たっぷりのサイン」がこちらです。 

神保彰 サイン-1神保彰 サイン-2

 「カシオペア神保彰」のファンとしてはアンコールで【ASAYAKE】が聴けて良かった。でも神保彰1人で【ASAYAKE】が完結することをここまで見せつけられてしまうと…。
 神保さん。どんな気持ちで野呂さんのギターソロを後ろから見ているのかなぁ〜。

さて,この記事はLIVEレポートなので,ステージ後半のセットリストを報告しておきます。

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20180212 神保彰 LIVE NO.1

 行ってきました! 2/12「ゲイツ7」の「神保彰ワンマンオーケストラ ドラムからくり全国行脚2018〜」!

 神保彰の魅力とは,カシオペアジンサクインスピリッツでの「超・超絶テクニカル・ドラマー」の代名詞でも十分だと思っているが,そこへ来て「ルンルン・サウンド」の作曲の才能も世界レベルときている。
 しかし,神保彰が「世界の神保」と称されるのは,世界レベルのドラミング&名作曲家としての神保彰に加えて「パフォーマー=神保彰」の魅力があればこそ!

 そんな「パフォーマー」神保彰としてのライフワークが「神保彰ワンマンオーケストラ」である。
 とは言え,管理人は「パフォーマー」神保彰を風のウワサで聞いていたに過ぎない。だって管理人が知る「神保彰ワンマンオーケストラ」とは画面の中の神保彰だけ。
 そう。今回管理人初めての「神保彰ワンマンオーケストラ」生体験だったのです。神保さんが「ワンマンオーケストラ」を始めてもう28年ですって! いや〜,お恥ずかしい。いや〜,勿体なかった( だって管理人は神保さんより櫻井さん派だったんだもん )

 通い慣れた「ゲイツ7」に足を踏み入れ驚いた。これってLIVE当日も九州道が通行止めになった前夜の大雪積雪のせい? 
 なんと!ドラム・セットが会場の真ん中に鎮座しているではありませんか〜! 観客がグルリと360度,神保彰を囲む配置でどこからでも自分の望む角度から神保彰を見ることができる「円形劇場」スタイル!

 でっ,管理人ですか? 神保彰の真正面に決まっているじゃないですか! 整理番号32番にして真っ正面の左卓1列目の後ろ側。つまりは2列目中央の良席で「世界の神保」を楽しめました。
 これにはご一緒させていただいた大大大のカシオペア・ファン=武ちゃんとゆうこりん夫妻のおかげです。「ワンマンオーケストラ」のイロハと美味しいジェラート・アイスもありがとうございました。

 さて,まずは恒例のメンバー紹介から…

 ★ 神保 彰 : Drums

 「神保彰ワンマンオーケストラ」の感想とは「ワンマンオーケストラ」での神保彰ドラマーではなく“音楽家”であるということ。
 一人でオーケストラを演じる神保彰が“歌っている”。リズム&メロディーを同時に制御するための準備万端に,あとはLIVEを人一倍楽しんでいる。神保彰は真のエンターテイーナーであられました。

 実は管理人。「神保彰ワンマンオーケストラ」は神保彰オリジナル曲を中心に演奏するものだと思っていて,自室でせっせと神保彰ソロ・アルバムを聴き直していたのですが,最後の最後まで「ノー・ジャンル&ノー・ジェネレーション」のコンセプト通り,ジャズフュージョン映画音楽クラシック,J−POPの有名曲のヒット・パレード!

 この選曲の振り幅こそが神保彰の音楽性の振り幅なのだろう。だから「世界の神保」なのだろう。

 個人的にうれしかったのは,普段のカシオペアドラム・ソロより時間長めのドラム・ソロを2回も聴けたことと,終演後のサイン会での紳士な対応にニンマリです。
 難曲【LIBERTANGO】のスゴ技にお口ポカーン。【STAR WARS】ではレーザービームまでが聴こえてくる。【アースのメドレー】がカッコ良すぎます。管理人も憧れの神保さんを追いかけてモノノフの道を目指すかも!?

 さて,この記事はLIVEレポートなので,ステージ前半のセットリストを報告しておきます。

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エディ・ヒギンズ / あなたは恋を知らない5

YOU DON'T KNOW WHAT LOVE IS-1 『YOU DON’T KNOW WHAT LOVE IS』(以下『あなたは恋を知らない』)こそが,エディ・ヒギンズの“最高傑作”である。

 『あなたは恋を知らない』は,エディ・ヒギンズ自らソロ・ピアノに合うと選曲した既発表曲の再演集。エディ・ヒギンズ好きとしては,王道のピアノ・トリオとの既発テイクとの聴き比べも楽しみの1つと購入前は思っていたのだが,未だに聴き比べはしていない。

 もう,何て言うか,エディ・ヒギンズの圧倒的に美しい小品集を聴いていると,ピアノ・トリオだから云々,ソロ・ピアノだから云々などは不毛の作業に思えてしまう。
 とにかく,エディ・ヒギンズジャズ・ピアノが“語りかけてくる”。警戒していないと一発で心の中に入ってくる。ハートを盗まれるとは正にこのことだ。

 “手垢のついた”有名スタンダードのオンパレードなのに,これほど素直な魅力に満ちているアルバムは余りないと思う。それは達観したエディ・ヒギンズの愛が込められているから…。← ロマンティック風?
 とにかくイントロからAメロに入るまでが最高で,その後のアドリブの麗しい歌いっぷり! 1つ1つのフレーズが日々の喧騒を忘れさせてくれるような,本当に美しいピアノが頭の中で鳴り響く…。← ロマンティック風2?

 おおっと,つい褒めすぎてしまった。『あなたは恋を知らない』の本質は“大仰な”アルバムなどではないところ。『あなたは恋を知らない』の魅力を文章で表現するなら「子犬のようなかわいらしさ」という感じかなぁ。

 優雅で穏やかに,時折ユーモアを交えたような軽快なタッチもあり,エディ・ヒギンズの“懐の深さ”を感じずにはいられない。シンプルで暖かく優しい音に包まれていく。巧みなピアノで表現される詩的情緒の世界にどっぷりと耽てしまう。
 心に突き刺さる演奏ではないが,これだけは伝えたい,と言うパッションが感じられる。聴けば聴くほどメロメロに魅了されてしまう。思わず小さなガッツポーズをとってしまう。

YOU DON'T KNOW WHAT LOVE IS-2 管理人は「好きなピアニスト・MY TOP10」に入れてしまうくらいに“飾らない”エディ・ヒギンズの演奏が大好きなのだが,それもこれも『あなたは恋を知らない』で完全KOされてしまった経験による。
 正直『あなたは恋を知らない』と出会ってから,熱心にエディ・ヒギンズを聴き直す日々。すなわち「宝探し」に没頭したものだ。

 最近,あんまりエディ・ヒギンズを聴かなくなっていたのだが『あなたは恋を知らない』を聴いてから,久しぶりに“エディ・ヒギンズ漬け”の毎日を送っている今日この頃です。

  01. When You Wish Upon A Star
  02. My Funny Valentine
  03. Detour Ahead
  04. Beautiful Love
  05. Dance Only With Me
  06. Danny Boy
  07. All This And Heaven Too
  08. Yellow Days
  09. Skylark
  10. Again
  11. You Don't Know What Love Is
  12. Over The Rainbow

(ヴィーナス/VENUS 2003年発売/TKGV-1001)
(ライナーノーツ/岩浪洋三)
(☆SACDハイブリッド盤仕様)

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神保 彰 / ジンボ・デ・ジンボ 80's4

JIMBO DE JIMBO 80's-1 結論を書けば,神保彰の『JIMBO DE JIMBO 80’s』(以下『ジンボ・デ・ジンボ 80’s』)も,カシオペアスクェアの多くのカヴァー・アルバム同様,オリジナル・アルバムを超えることはできなかった。

 ただしそんなの関係ない。『ジンボ・デ・ジンボ 80’s』は曲がいいのだ。最初から最後までただ聴き流していれば気分が上がる。そんなカヴァー・アルバムの最右翼である。

 「カヴァー・アルバムには良いものが少ない」説を支持する管理人。そんな中で『ジンボ・デ・ジンボ 80’s』の評価が高いのはオリジナルとフォーマットを変えたのが成功要因としては大きいと思う。
 カシオペア時代はギターキーボードベースドラムで演奏されていたが『ジンボ・デ・ジンボ 80’s』はキーボードベースドラムである。

 つまりはカシオペアからのギター・マイナスワン。ただし単なるギターレスではない。カシオペアのメインはギター1本。野呂一生抜きのカシオペアカシオペアではなくなるのだ。
 この全てを分かった上で神保さんは,いつもの仲良しギタリストアレン・ハインズを外してきた。それが『ジンボ・デ・ジンボ 80’s』の“狙い”であろう。

 オトマロ・ルイーズが“歌う”ためのアレンジは,肝となるメロディーさえも微妙に変えてきている。個人的には【ミッド・マンハッタン】はイジッテほしくなかったなぁ。
 実は目立たないが神保さん。今回リズムをかなりイジッテきている。35年かけて『ジンボ・デ・ジンボ 80’s』のリズムに辿り着いたのだろう。素晴らしいドラミングである。

 特筆すべきはエイブラハム・ラボリエルベースである。『ジンボ・デ・ジンボ 80’s』のオリジナルは全て桜井哲夫が弾いてきた。
 桜井哲夫ベースはメロディアスなのが特徴的だが,エイブラハム・ラボリエルベースはメロディアス+ファンク

JIMBO DE JIMBO 80's-2 神保彰の名曲が,最初にタイトなドラムが耳に入り,次にファンクベースが腰を浮かし,最後に上物メロディーが遅れて入ってくる。
 そうすると「甦る青春」ではなく「青春」が現在進行形している気分でうれしくなる。だから『ジンボ・デ・ジンボ 80’s』は,ただ聴き流しているだけで楽しくなれるのだ。

 35年前の名曲は現在でも名曲であった。神保彰の「ルンルン」系はファンキー・ビートで“爽やかさ”プラス&“爽やかさ”UP!
 『ジンボ・デ・ジンボ 80’s』を聴いた翌日は,新アレンジで鼻歌を歌ってしまいます。

  01. Ripple Dance
  02. Sunnyside Feelin'
  03. Mid Manhattan
  04. Fruit Salad Sunday
  05. Street Performer
  06. After Glow
  07. In the Pocket
  08. Touch the Rainbow
  09. Frou Frou

(エレクトリック・バード/ELECTRIC BIRD 2016年発売/KICJ-746)
(ライナーノーツ/神保彰)

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エディ・ヒギンズ & スコット・ハミルトン / 煙が目にしみる5

SMOKE GETS IN YOUR EYES-1 エディ・ヒギンズと来れば“ピアノ・トリオの人”である。『魅せられし心』〜『アゲイン』〜『愛の語らい〜ジョビン作品集』〜『魅惑のとりこ』と,いずれも趣味の良いピアノ・トリオを引っさげて,VENUSの“看板”として快進撃を続けてきた。

 そんなエディ・ヒギンズが「オハコ」を捨てて,趣向を変えたワンホーン・アルバムが『SMOKE GETS IN YOUR EYES』(以下『煙が目にしみる』)である。
 しかし,主役を管楽器に譲りサイドマンとして音楽の全体を支える『煙が目にしみる』を聴いても,不思議とエディ・ヒギンズの印象は変わらない。自分の音楽が変わらない自信があったがゆえのワンホーン・アルバムの制作だったように思う。

 エディ・ヒギンズが『煙が目にしみる』のホーン奏者として指名したのが,これらも“いぶし銀”のテナーサックス・プレイヤー=スコット・ハミルトンであった。
 スコット・ハミルトンと来れば“スイングテナーの人”としてはなはだ有名な名手。エレガントなエディ・ヒギンズピアノの上にスコット・ハミルトンスイングテナーが“しっとりと鳴った”「オールド・アメリカン・スタイル」再現の音楽性が眩しすぎる。

 そう。エディ・ヒギンズがワンホーンで表現したかったのは,自分の中の別の一面,別の引き出しなどではなく,従来のピアノ・トリオ路線の拡大版である。
 スコット・ハミルトンテナーの響きが最高にゴージャスでエロい。そんなスコット・ハミルトンと音を重ねるエディ・ヒギンズの“小躍りするピアノ”に“いぶし銀”のテナーサックスへの満足感が表われている。

 そう。エディ・ヒギンズの心の機微が手に取るように分かるのも,VENUSが誇る「HYPER MAGNUM SOUND」のおかげである。
 エディ・ヒギンズの鍵盤へのタッチが上品なのが分かる。スコット・ハミルトンの息遣いとタンギングが生々しくリアルである。

 ピアノテナーサックスの絶妙なバランスが心を打つ。有名ジャズ・スタンダードの連続なのにどれも新鮮に響く。
 両者とも控えめに演奏しているものの,所々にジャズメンとしてのプライド,自己主張が垣間見られる。

SMOKE GETS IN YOUR EYES-2 ズバリ『煙が目にしみる』はそこがいいのだ。そこが聴き飽きないのだ。エディ・ヒギンズスコット・ハミルトンも優雅に演奏しているようでいて,沸々とメラメラと闘志を燃やし続けている。
 その対象は互いに向けられているようで,その実,内面の自分自身に向けられている。

 そう言えばエディ・ヒギンズと同じ“ピアノ・トリオの人”であるビル・エヴァンスも「オハコ」から外れた管入りアルバムを何枚も制作しているが,そのどれもが「ザ・ビル・エヴァンス」して聴こえていた。

 ホーンを上手に聴かせるべく表面上はソフト・タッチなのに,自分の音楽の創造といつも以上に格闘していたビル・エヴァンス
 そんな自分の音楽に対するこだわりがエディ・ヒギンズビル・エヴァンスを感じさせる最大の理由なのだと思っている。

  01. Melancholy Rhapsody
  02. It's A Lonesome Old Town
  03. You Don't Know What Love Is
  04. By Myself
  05. Smoke Gets In Yours Eyes
  06. Lullaby Of The Leaves
  07. When The Sun Comes Out
  08. Love Letters
  09. When You Wish Upon A Star
  10. All This And Haven Too
  11. You're My Everything

(ヴィーナス/VENUS 2002年発売/TKCV-35100)
(ライナーノーツ/皸羶成)

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スイングジャーナル主催 ジャズ・ディスク大賞 1995年度(第29回)

 「スイングジャーナル」誌が,レコード会社各社の自薦ノミネート作品を基にして,国内で該当年度中に発売されたCDLPビデオを対象に同誌委託の「ジャズ・ディスク大賞選考委員」によって選出される,日本ジャズ界に最も貢献した作品に贈られる「ジャズ・ディスク大賞」。

 今回は1995年度(第29回)の発表です。

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アコースティック・ブギ★【金賞】.アコースティック・ブギ
日野皓正〜菊地雅章クインテット


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ファースト・ベース★【銀賞】.ファースト・ベース
クリスチャン・マクブライド


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スピリット・オブ・ザ・モーメント〜ライヴ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード★【銀賞】.スピリット・オブ・ザ・モーメント〜ライヴ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード
ジョシュア・レッドマン

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ラヴ&ピース〜トリビュート・トゥ・ホレス・シルヴァー★【ボーカル賞】.ラヴ&ピース〜トリビュート・トゥ・ホレス・シルバー
ディー・ディー・ブリッジウォーター

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ピアノ・クインテット・スイート★【日本ジャズ賞】.ピアノ・クインテット・スイート
大西順子


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オスカー・ピーターソン栄光の軌跡★【最優秀ビデオ賞】.オスカー・ピーターソン栄光の軌跡オスカー・ピーターソン


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ファースト・ベース★【最優秀新人賞】.ファースト・ベース
クリスチャン・マクブライド


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ヒッティン・ザ・スピリット★【最優秀新人賞】.ヒッティン・ザ・スピリット
椎名豊


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NOW JAZZ★【編集企画賞】.NOW JAZZ/ザ・モダン・ジャズ



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黒い炎★【製作企画賞】.黒い炎
 マンハッタン・ジャズ・オーケストラ


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インフィニティ★【最優秀録音賞】.インフィニティ
 マッコイ・タイナー・トリオ・フューチャリング・マイケル・ブレッカー

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A VIEW FROM THE SIDE★【最優秀録音賞】.ア・ヴュー・フロム・ザ・サイド
ザ・ビル・ホルマン・バンド


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 クリスチャン・マクブライドの『ファースト・ベース』が【銀賞】&【最優秀新人賞】のW受賞。

 『ファースト・ベース』)はクリスチャン・マクブライドの考える“ハイセンスなジャズ”を表現するためのベース・アルバム。
 その心は「名コンポーザー=クリスチャン・マクブライド」の存在にある。『ファースト・ベース』の制作のテーマは,クリスチャン・マクブライドのオリジナル曲を如何に聴かせるか!

 クリスチャン・マクブライドの自作曲を,テナーサックスジョシュア・レッドマントランペットロイ・ハーグローブトロンボーンスティーブ・タールピアノサイラス・チェスナットドラムルイス・ナッシュという,クリスチャン・マクブライドの“お耳”にかなった豪華ゲストのジャズメンたちが“入れ替わり立ち替わり”各々の本領を発揮しまくって帰って行く! 演り逃げして帰って行く!
 知ってか知らずか,クリスチャン・マクブライドの自作曲をクリスチャン・マクブライドの狙い通りに,色彩豊かにアレンジしては帰っていく!

 そう。『ファースト・ベース』の真実とは,豪華ゲストの“美味しい”部分だけを抽出して編集された,クリスチャン・マクブライド流の「イントロデューシング・アルバム」である。

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第60回(2017年度)グラミー賞 ジャズ部門-NO.2

 “年に一度の音楽の祭典”第60回(2017年度)のグラミー賞が昨日発表された。

 世間的にはブルーノ・マーズが主要含む6冠受賞。ケンドリック・ラマーが5冠受賞。
 いいや,それ以上に「白いバラ」と「タイムズ・アップ」であろう。ミュージシャンが政治的にも大きな影響力を及ぼすことが証明されたグラミー賞となった。

 ん? ジャズフュージョン以外はどうでもよかったですね。
 早速「アドリブログ」の本丸『JAZZ』の受賞作の発表で〜す。

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Category 31. Best Improvised Jazz Solo


Live at Ronnie Scott's★ Miles BeyondJohn Scofield, soloist
Track from: Live @ Ronnie Scott's (John McLaughlin & The 4th Dimension)

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Category 32. Best Jazz Vocal Album


ドリームス・アンド・ダガーズ★ Dreams And Daggers
Cecile McLorin Salvant


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Category 33. Best Jazz Instrumental Album


Rebirth★ Rebirth
Billy Childs


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Category 34. Best Large Jazz Ensemble Album


ブリンギン・イット★ Bringin' It
Christian McBride Big Band


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Category 35. Best Latin Jazz Album


Jazz Tango★ Jazz Tango
Pablo Ziegler Trio


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 やったね! 増崎さん,小野塚さん,勝田さん。【SE.LE.NE】【JUNGLE DANCER】を20年以上もLIVEでかけ続けた甲斐がありました。「4TH DIMENSION」がグラミー受賞! 

 …て違いましたね。「4TH DIMENSION」はジョンスコさんの「ディメンション」の方でした。
 ジョン・スコフィールドが貫録の3年連続のグラミー受賞! ジャズ界は現在,ジョン・スコフィールドを中心に回っている!

 ただし“花形部門”である「BEST JAZZ INSTRUMENTAL ALBUM」受賞作は『REBIRTH』である。
 やったね! 安藤さん,念願だったパット・メセニーを抑えてのグラミー受賞。聴けば聴くほどスルメな『REBIRTH』。
 スクェア史上最長となる「河野坂東時代」の傑作の誕生です。この先も現行メンバーでの活躍を期待しております。

 …て違いましたね。『REBIRTH』はビリー・チャイルズさんの『REBIRTH』の方でした。
 このビリー・チャイルズさん。恥ずかしながら私,全く知りませんでした。不勉強でした。コメントなどできません。

 ふ〜ん。グラミー賞のご祝儀=“ポチッ”。ビリー・チャイルズさん,これから仲良くお願いしま〜す。

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神保 彰 / ミューニティー4

MUNITY-1 『MUNITY』(以下『ミューニティー』)とは「MUSICUNITY」からなる造語で,音楽を通じて一つになるという意味が込められている。
 正しく『ミューニティー』こそが『ミューニティー』。インストだし,ライトなフュージョンだし『ミューニティー』が流れ出すと,神保彰・ファン,フュージョン・ファンが一つになれる。

 まぁ,そんな大そうなを考えなくとも【CAN’T YOU SEE】を黙って聴けばみんな笑顔になれる。← いいや【CAN’T YOU SEE】を聴けばみんな大泣きしてしまう! 超おセンチ系の大名曲! 管理人の癒しソングの1曲なのです〜。

 『ミューニティー』=音楽を通じて一つになる。そんな音楽を鳴らすことができるのは神保彰と10年共に過ごしてきたベースエイブラハム・ラボリエルピアノキーボードオトマロ・ルイーズ,そして神保彰と7年共に過ごしてきたギターアレン・ハインズとの“阿吽のコンビネーション”にある。

 「チーム・神保」が4人で一体のフュージョンファンク。「MUSICUNITY」改め「JIMBO MUSICUNITY」→『JIMUNITY』が良かったかなぁ。

 レギュラー・メンバーの4人,そこへゲストとして初参加となるリチャード・エリオットテナーサックスソプラノサックスが新鮮な響きを加え「チーム・神保」の“音の広がりと音の深み”が成長している。

MUNITY-2 その成長方向とは,躍動するリズムとエレガントなメロディー・ライン。つまりは空気感にあると思う。
 基本的にはシンプルにサラッと聴き流せる,例の「ルンルン」系。これが結構あとから来る!

 メンバーの自然体の反応が息ぴったりなので,安定したサウンドの中を自由なアドリブが駆け巡っている。神保彰の緩急自在なドラミングを聴き逃すな!

 なお『ミューニティー』と同時発売の『JIMBO DE JIMBO 80’S』のライナーノーツの中で神保彰自身が触れているが,神保彰の作風は35年前の【リップル・ダンス】から思いのほか変わっていない,と管理人も思います。

  01. Blowin' In The Street
  02. Let Me Go
  03. Wind & Cloud
  04. Munity
  05. Standing On The Ground
  06. Beach Walk
  07. Can't You See
  08. Double Rainbow
  09. Pop It!

(エレクトリック・バード/ELECTRIC BIRD 2016年発売/KICJ-745)
(ライナーノーツ/神保彰)

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エディ・ヒギンズ・トリオ / 魅惑のとりこ5

BEWITCHED-1 エディ・ヒギンズビル・エヴァンスを強烈に感じてしまう。逆にエディ・ヒギンズビル・エヴァンスを感じなければモグリだと思う。

 エディ・ヒギンズは大抵,アルバムに数曲ビル・エヴァンスの愛想曲を取り上げてくるのだが,特に『BEWITCH』(以下『魅惑のとりこ』)のラインナップが凄い。
 【DETOUR AHEAD】【YOU MUST BELIEVE IN SPRING】【BEAUTIFUL LOVE】【ALICE IN WONDERLAND】【AUTUMN LEAVES】。
 こんなにも有名楽曲がズライと並ぶ姿が圧巻で,サブタイトルとして「ビル・エヴァンスへ捧ぐ」がついていないのを不思議に思う。

 (演奏曲の薀蓄は脇に置いといて)ブラインド・テストで『魅惑のとりこ』を流していると,本気でビル・エヴァンスピアノだと答える人がごまんといるはず?
 要は,繊細で,軽くスイングしていて,フレーズが甘い。しかし,前のめりで聴き込んでいくと“しっぺ返し”を喰らう感じの硬質なタッチに聴き惚れてしまう。優雅で気高い。それでいて気取った感じは微塵もなく,リラックスした雰囲気に包まれるピアノ・トリオ名盤である。

 さて,ここまで書いてきてあれだが,管理人はエディ・ヒギンズビル・エヴァンスと比較して聴くことはお奨めしない。
 やはりビル・エヴァンスエディ・ヒギンズとは別格の“ジャズ・ジャイアント”に間違いない。同列ではない。

 では何が言いたいのか? それはエディ・ヒギンズが敬愛する「ビル・エヴァンスのここを聴け!」を堪能すべし!である。
 ビル・エヴァンス・マニアのエディ・ヒギンズが“一番美味しいビル・エヴァンス”を提示してくれている。

 だから“本家”ビル・エヴァンスの愛想曲をなぞりつつ,エディ・ヒギンズ一流の再構築を経て完成された「作・演出=ビル・エヴァンス&編集=エディ・ヒギンズ」による“静かに進行する圧倒的なパフォーマンス”が『魅惑のとりこ』の全てである。

 おおっと,聴き所はエヴァンス・ナンバーだけではなかった。
 『魅惑のとりこ』収録の,残る有名ジャズ・スタンダードエディ・ヒギンズ一流のフィルターがかかった再構築が実に見事である。
 美しいメロディーを敢えていじり過ぎないように,良さだけ残して短めに終わる所作も心憎い。

 ビル・エヴァンスよろしく,ベースソロドラムソロも奇を衒うところのないピアノと一体となって演奏されており,ハメを外すようなところのない「大人のジャズ・スタンダード集」として心から楽しめる。

 1000枚,2000枚とコレクションしているジャズ・ファンの立場からすれば,物足りなさを感じる部分も理解できるが,この豊かな旋律表情を聴いていると,胸がキュンと締め付けられる瞬間に出くわすこと多数。じわじわと満足感が全身の隅々にまで達していく…。
 ガツンと来るアルバムではないにしても,リスナー側のハードルを余裕を持ってクリアしてくれる…。

BEWITCHED-2 要するにエディ・ヒギンズは“粋”なのだ。エディ・ヒギンズピアノを弾くと,どれもこれもお洒落に仕上がってしまう。

 そう。エディ・ヒギンズとは,自分のお気に入りの部分を素直にクローズアップできる名うてのジャズ・ピアニスト。美のエッセンスの申し子なのである。

 長い一日を過ごした夜,静かに音楽に浸りたい。あまりホットでなくかといって甘ったるくない音楽。そういう気分の時に良く聴くアルバムの1枚が『魅惑のとりこ』である。

  01. What A Diff'rence A Day Made
  02. Detour Ahead
  03. Bewitched, Bothered, And Bewildered
  04. You Must Believe In Spring
  05. Beautiful Love
  06. Alice In Wonderland
  07. Angel Eyes
  08. The Philanthropist
  09. Estate
  10. Blue Prelude
  11. I Hear A Rhapsody
  12. As Time Goes By
  13. Autumn Leaves

(ヴィーナス/VENUS 2001年発売/TKCV-35093)
(ライナーノーツ/寺島靖国)

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林 栄一,中尾 勘二,関島 岳郎 / フォトン3

PHOTON-1 管理人が林栄一アルトサックスに興味を持ったのは大西順子の影響である。
 大西順子大好き管理人としては林栄一のバンドに大西順子がサイドメンとして参加を志願したとか,大西順子自ら林栄一の自宅へ教えを請いに通ったとかいうエピソードを聴くと,林栄一を聴かないわけにはいかない。

 事実,大西順子の『PIANO QUINTET SUITE』で共演した林栄一の熱演を聴かされれば,上記エピソードの真実味が増すというものである。

 …で,管理人がチョイスした林栄一ソロ・アルバムが『PHOTON』(以下『フォトン』)である。
 正確には『フォトン』は林栄一のリーダー・アルバムではなく,ソプラノサックス中尾勘二チューバ関島岳郎との共作である。

 どうですか! この山下清ばりの妖しげなジャケット写真に喰いついてしまった。ピニストベーシストドラマーもいない編成で林栄一フリーがどう演奏されるのか聴いてみたい! これが『フォトン』の購入理由である。

 管理人の狙い通り『フォトン』は「超アナーキー」なアルバムであった。演奏が3人だけなので多重録音で様々なパートが重ねられているが,基本的にシンプルなアレンジが施されており,力の抜けた楽器の生音が加工されずに,剥き出しで放り込まれた生々しさがある。

PHOTON-2 うーむ。淡々と演奏が進行しては終わっていく。物悲しい雰囲気のメロディーが素朴に響いていく。これが大西順子が憧れた林栄一の音楽なのだろうか…。

 即興のない退屈な音楽である。『PIANO QUINTET SUITE』で主役を張った林栄一は『フォトン』の中にはいない。まるで別人のようである。
 本当の林栄一を探す意欲を失くしてしまった。そのうちに,いつか自然体で出会える日を待つことにしようと思う…。

  01. オーバー・チューン〜ニキシのまだ来ない朝
  02. 1の知らせ
  03. こぶしの踊り(光る人)
  04. 「TATSUYA」より
  05. 反射する道
  06. Em
  07. ハルマゲドン
  08. アジールのマーチ
  09. 耕す者への祈り
  10. ナーダム

(オフノート/OFF NOTE 1999年発売/ON-30)
(ライナーノーツ/神谷一義)

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エディ・ヒギンズ・トリオ / 愛の語らい〜ジョビン作品集4

SPEAKING OF LOVE〜MUSIC OF JOBIM-1 「ジャズ・ピアノの王者」エディ・ヒギンズが「ボサノヴァの王者」アントニオ・カルロス・ジョビンを演奏する。
 普通に考えたら『SPEAKING OF LOVE〜MUSIC OF JOBIM』(以下『愛の語らい〜ジョビン作品集』)はキワモノ企画ものの1枚である。

 しかし,原曲がボサノヴァであることを知らないジャズ・ピアノ・ファンが,いいや,原曲がアントニオ・カルロス・ジョビンであることを知っていたとしても『愛の語らい〜ジョビン作品集』は「王者」のジャズ・ピアノ・アルバムに仕上げられている。キワモノ感など一切感じられない。

 ジョビン・ナンバーはコード進行とハーモニーが美しいと評価されるが,これらがジャズの4ビートに合うとは思えない。特にボサノヴァジャズリズム・セクションではなく,サンバを奏でる本場ブラジルのリズム・セクションにはかなわない。
 にも関わらず,ジョビン・ナンバーがものの見事にジャズしている。あらかじめアントニオ・カルロス・ジョビンが4ビートを意識して書き上げたかのようである。

 この全てこそが“ヒギンズマジック”! エディ・ヒギンズが彼のキャリアの中でも最大限にアグレッシブにピアノを弾いている。
 それでも一音一音に気持ちが込められており,音色は重いがなぜか軽やかで,フレーズもスピーディーだと思ったら,ゆったりと奏で出したりと完全なるジャズ・ピアノ。音色は一つもつぶれていない。エディ・ヒギンズのスタイルはボサノヴァ・チューンを弾こうとも変わっていない。

 『愛の語らい〜ジョビン作品集』に対する管理人の興味はエディ・ヒギンズの「七変化」だったが,いつしか『愛の語らい〜ジョビン作品集』の主役はアントニオ・カルロス・ジョビンだと思うようになった。

 ズバリ『愛の語らい〜ジョビン作品集』のコンセプトは,エディ・ヒギンズが考えるジョビン・ナンバーの「美的センス」の再構築にある。

SPEAKING OF LOVE〜MUSIC OF JOBIM-2 この全てこそが“ヒギンズマジック”パート2! エディ・ヒギンズジャズ・ピアノは決して主旋律を壊すような編曲はしない。美メロを浮かび上がらせる優しくタッチが心に響く。

 『愛の語らい〜ジョビン作品集』には,いつも以上にエディ・ヒギンズの考える「美的センス」が捉えられていると思う。美しい主旋律を細部まで際立たせることのできるジャズ・ピアニスト。それがエディ・ヒギンズ“その人”なのである。

 ここまで到達するまでには相当熟練されてきたのだろう。エディ・ヒギンズに代わるジャズ・ピアニストはそう簡単には登場してこない。

  01. Favela
  02. Esperance Perdida (I Was Just One More For You)
  03. Brigas Nunca Mais (Fight Never More)
  04. Falando De Amor (Speaking Of Love)
  05. Two Kites
  06. Bonita
  07. Voce E Eu (You And I)
  08. Choro
  09. Felicidade
  10. So Tinha De Ser Com Voce (It Had To Be With You)
  11. Caminhos Cruzados
  12. Inutil Paisagem (Useless Landscape)

(ヴィーナス/VENUS 1999年発売/VHCD-4019)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/皸羶成)

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ANDY'S / ANDY'S4

ANDY'S-1 『ANDY’S』とは安藤まさひろTED NAMBA難波正司)と組んだロックギター・ユニットである。

 『ANDY’S』での活動が,後のT−スクェア名盤中の名盤」『GRAVITY』へと繋がることは事実であるが真実ではない。
 ズバリ『ANDY’S』の活動は難波正司が正式メンバーとして参加した『GRAVITY』ではなく,安藤まさひろの「ハードロック・プロジェクト」である「T−スクェア・プラス」名義の『TRUTH 21CENTURY』へと繋がったと思う。

 そう思う理由は発売順を前後して『ANDY’S』を『GRAVITY』の後に聴いてしまったから,というのがあるのかもしれない。
 『GRAVITY』が気に入ったので『GRAVITY』の原石を『ANDY’S』の中に見つけようとした天罰なのかもしれない。

 しかし『ANDY’S』を聴けば聴くほど『GRAVITY』との距離が広がっていったのも事実。自然と『ANDY’S』から手が遠のいていったのも事実。

 『ANDY’S』は駄盤である。ついでに言うと『TRUTH 21CENTURY』『BLOOD MUSIC』『HISTORY』などの「ハードロック・プロジェクト」は全てダメ。

 う〜む。管理人は本来,スクェアの中で安藤まさひろロックギターを弾きまくる曲は大好きなのだ。【PRIME】とか【ARCADIA】とかが流れると,エアギターしてしまう。これは自分でも不思議な現象なのである。

 『ANDY’S』にヴォーカルが入っていたので気付いたことがある。安藤まさひろの“歌もの”に合うのは,伊東たけしなり本田雅人なり宮崎隆睦なりの“歌う”サックスが合うのであって,シャウトするヴォーカルとは相性が悪い。

ANDY'S-2 これは『VOCAL2』の時にも感じたことだが,安藤まさひろの作るメロディー・ラインにはどんな歌詞がつこうとも曲として様になってしまう。
 ただし歌詞がついたからと言って名曲にはならない。

 例えばサックス奏者であれば,曲の世界観を考えてこの曲にはサックスなのか? フルートなのか? EWIなのか? サックスであればアルトなのか? ソプラノなのか? を選択している。
 『ANDY’S』や『VOCAL2』のような,本当の“歌もの”に臨んだ時の失敗は多分に,ヴォーカリストの「声」とか「歌い方」での選択ミスの要因が大きいと思う。

 ロックギターの【MOON OVER THE CASTLE】→EWIの【KNIGHT’S SONG】へと変わってスクェア・ナンバーに昇格した理由は,本田雅人EWIという「声」の選択が〇!

  01. MOON OVER THE CASTLE
  02. SECOND CHANCE
  03. GREEN MONSTER
  04. LIKE THE WIND
  05. A MAN OF THE WORLD
  06. NOBODY
  07. MORE THAN LOVING
  08. FREEDOM TO WIN

(ソニー/SONY 1996年発売/SRCL 3722)

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エディ・ヒギンズ・トリオ / 魅せられし心5

HAUNTED HEART-1 ズバリ,エディ・ヒギンズの快進撃は全てこのアルバムから始まった。そしてエディ・ヒギンズ個人としての快進撃にとどまらず,VENUSというレーベル全体の快進撃は全てこの『HAUNTED HEART』(以下『魅せられし心』)から始まった。
 そう。『魅せられし心』は,言わばエディ・ヒギンズの“出世作”にしてVENUSの“象徴”なのである。
 
 具体的にはジャズスタンダード中心の選曲であり,ジャズの基本であるピアノ・トリオであり,適度にスイング,適度にメロディアスなミディアム〜スロー・テンポの演奏中心である。
 そしてジャケット良し。録音良し。初心者もとっつきやすい間口の広い演奏にしてマニアをも唸らせる「いぶし銀」な演奏と来れば,ジャズ・ファンの間で話題にならないはずがないし,売れないはずがない。

 エディ・ヒギンズを,そしてVENUSを悪く言うジャズ・ファンは本当のジャズ・ファンではない。
 そのような人たちは,ジャズとは4ビートである,ジャズとはアコースティックであるべき,と普段は声高に唱えているにも関わらず,口の根も乾かないうちに,ただオーソドックスすぎるという理由だけでエディ・ヒギンズをけなしている。やっかみである。

 本当のジャズ・ファンはオーソドックスな演奏スタイルの中に,その人の個性を聴き分けられる人たちである。
 『魅せられし心』の素晴らしさとは,全方向志向で派手さがないので上の下ぐらいに感じるから,リラックスして「オール5」に接することができる。『魅せられし心』を聴き込めば,必らずやジャズの何たるかが理解できる“叩き上げの”ファンへと成長できる点であろう。

HAUNTED HEART-2 リリカルで美しく知的でほんの少しセンチメンタル。悪態をつくことのない,いい感じのJAZZY。要するに優等生で万人向けのベタな1枚。崩さなくったって,いいものはいい。
 美メロの一番美しい部分が際立っている。老舗の名店的な“エディ・ヒギンズ特有の味”が沁み出ている。

 聴き馴染みのスタンダードのオンパレードなのに何回も繰り返し聴きたくなる。ベースドラムも自然に鳴らすエディ・ヒギンズの麗しい歌いっぷり! くぅ〜!

  01. My Funny Valentine
  02. Haunted Heart
  03. Stolen Moments/Israel
  04. Lush Life
  05. How My Heart Sings
  06. Someone To Watch Over Me
  07. I Should Care
  08. Lover Come Back To Me
  09. Isn't It Romantic?

(ヴィーナス/VENUS 1997年発売/VHCD-4051)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/寺島靖国)

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MALTA / スパークリング5

SPARKLING-1 管理人の結論。『SPARKLING』(以下『スパークリング』)批評

 『スパークリング』は【SPARKLING FANTASY】【SEXY GALAXY】【SUMMER WAVE】の大ヒット神曲3曲を聴けば星5つ! これにて完結!

 以下はそれでは読み足りない読者のための管理人の雑感である。

 管理人は『スパークリング』をCDで購入したのだが『スパークリング』はLPでの購入を前提に制作されていた。
 『スパークリング』のLP盤はA面が「パワー・サイド」でB面が「クール・サイド」と名付けられている。パワフルで都会的な演奏とゆったりしたリゾート気分の演奏と盤面の個性別に編集されている。

 さて,何でこんなことを書いたかというと『スパークリング』のA面とB面=MALTA自身のA面とB面。すなわち“ジャズフュージョンの両睨み的”なMALTA自身の陽気な性格とつながっている。学生ながらそのように分析?(思い込み?)しながら聴いていたからだ。

 繰り返すが,管理人が聴いていた『スパークリング』はCDメディア。CDにはA面もB面もないし,LPには入っていないボーナス・トラック2曲(【FLASHING GIRL】【OVER THE RAINBOW】)収録。
 そういうわけで,管理人は『スパークリング』を聴いていても「パワー・サイド」と「クール・サイド」の違いを感じない。感じるのはラスト2曲でブチ込んできた【OVER THE RAINBOW】【ALL OF ME】での“JAZZYなMALTA”の存在である。

 MALTAのファンの間では,MALTAフュージョンサックスへの転向時期として『スパークリング』を挙げる人が多数である。

SPARKLING-2 しかし『スパークリング』のMALTAジャズ・サックスを吹いている。
 【OVER THE RAINBOW】【ALL OF ME】の熟成された名演は,フュージョンサックスでは表現できないビブラート・ヴィンテージ・サックス

 ただし,もうMALTAは決心していたのだろう。【OVER THE RAINBOW】【ALL OF ME】の2曲は“ジャズ・サックス・プレイヤー”MALTAとしての最後の青春セッション

 『スパークリング』こそが“ジャズ・サックス・プレイヤー”MALTAとしての最終作。最高の置き土産を残して“フュージョン・サックス・プレイヤー”の王者へ向かって邁進していく…。

  01. SPARKLING FANTASY
  02. SCRAMBLE AVENUE
  03. BAD BOOGIE
  04. SEXY GALAXY
  05. FLASHING GIRL
  06. SUMMER WAVE
  07. COOL SHADOW
  08. FREE BREEZE
  09. MOON FLOWER
  10. OVER THE RAINBOW
  11. ALL OF ME

(ビクター/JVC 1986年発売/VDJ-1030)

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ダスコ・ゴイコヴィッチ / ハンドフル・オブ・ソウル4

A HANDFUL O' SOUL-1 「ダスコ・ゴイコヴィッチインターナショナル・ジャズ・オーケストラ」名義による『A HANDFUL O’ SOUL』(以下『ハンドフル・オブ・ソウル』)を聴いてみて,管理人がダスコ・ゴイコヴィッチになぜにそこまで惹かれてしまうのか,その隠された理由が分かったように思う。

 管理人はダスコ・ゴイコヴィッチの「哀愁漂う美しいトランペット」が大好きだ。しかし,それはダスコ・ゴイコヴィッチの魅力のほんの一面に過ぎない。
 ズバリ,管理人がダスコ・ゴイコヴィッチを愛する理由は,ダスコ・ゴイコヴィッチの“徹底的なセクション・プレイヤー気質”にある。

 「ダスコ・ゴイコヴィッチインターナショナル・ジャズ・オーケストラ」とは,世界10カ国からダスコ・ゴイコヴィッチ自らが人選した18名のジャズメンが結集したビッグ・バンド
 元々,ダスコ・ゴイコヴィッチメイナード・ファーガソンウディ・ハーマンケニー・クラークフランシー・ボラーン等のビッグ・バンドを渡り歩いた経歴を持つ。その後も自身のビッグ・バンドを率いて『バルカン・コネクション』を録音してもいる。

 ビッグ・バンドへの愛着を有し,セルビア大統領の前面バックアップを受け,自ら望むメンバーを選出した“夢のビッグ・バンド”「ダスコ・ゴイコヴィッチインターナショナル・ジャズ・オーケストラ」こそが,ダスコ・ゴイコヴィッチの真骨頂のはずである。

 ゆえに管理人は『ハンドフル・オブ・ソウル』には「哀愁漂う美しいトランペット」とか「バルカン気質」とか,ダスコ・ゴイコヴィッチの代名詞的な演奏が繰り広げられていることを予想していた。が,しかし…。

 『ハンドフル・オブ・ソウル』とは,ストレートなアンサンブル・アルバムであった。「ダスコ・ゴイコヴィッチインターナショナル・ジャズ・オーケストラ」が目指したのは,ジャズ・ファン向けのマニアックなビッグ・バンドではなく,もっと間口の広いPOPなビッグ・バンドである。
 これはいい。ビッグ・バンドを聴く楽しみがいっぱい詰まっている。ソロイストが無理をしていない。素敵なメロディーを奏でることだけ考えている節がある。

 逆に言えば,ダスコ・ゴイコヴィッチの代名詞的な演奏は登場して来ない。最初はそのことに管理人もガッカリした。ダスコ・ゴイコヴィッチがリーダーシップを発揮して,これぞバルカン的でエキゾチックな香りのビッグ・バンドを期待していたからだ。

 でも,それでも『ハンドフル・オブ・ソウル』は「お蔵入り」しなかったんだよなぁ。これがっ! 聴けば聴くほど味が沁み出て来るんだよなぁ。これがっ!
 主役であるダスコ・ゴイコヴィッチソロイストではなく1stトランペッターとして大活躍する。これが「ダスコ・ゴイコヴィッチインターナショナル・ジャズ・オーケストラ」の聴き所なんだよなぁ。これがっ!

A HANDFUL O' SOUL-2 ビッグ・バンドにおける1stトランペッターの役割は2つある。その1つはトランペット・セクションのリード役であり,もう1つはビッグ・バンド全体のリード役である。

 そう。1stトランペッターに求められる資質とは高い音楽性である。1stトランペッターの歌い方ひとつでビッグ・バンド・サウンドががらりと変わってしまう。
 その点でダスコ・ゴイコヴィッチこそが最適任者である。あの哀愁の音色一発でバンド・メンバーの心と唇を鷲掴みできているのだから…。

 「ダスコ・ゴイコヴィッチインターナショナル・ジャズ・オーケストラ」の17名のメンバーがダスコ・ゴイコヴィッチの演奏を聴いている。
 これってダスコ・ゴイコヴィッチが“セクション・プレイヤー”に徹すればこそできること。実に17名がダスコ・ゴイコヴィッチ“っぽい”演奏でまとまっている。

 ズバリ,ダスコ・ゴイコヴィッチジャズメン・シップの響きこそが『ハンドフル・オブ・ソウル』のハイライト。
 正しくダスコ・ゴイコヴィッチの音楽を愛するジャズメンが結集した「心と心の触れ合い」の音が聴こえてくる。

 うん。ここまで書いてきたことは全て真実なのだけど,正直,本音を書くと【I FALL IN LOVE TOO EASILY】におけるダスコ・ゴイコヴィッチミュートトランペットを聴いてしまったが最後,やっぱりダスコ・ゴイコヴィッチは氏のルーツであるビッグ・バンドの“セクション・プレイヤー”としてではなく,ソロイストとして「哀愁漂う美しいトランペット」を吹き鳴らす方が最高だと再認識してしまったのも事実なのです。

  01. A HANDFUL O' SOUL
  02. I FALL IN LOVE TOO EASILY
  03. YUGO BLUES
  04. DON'T GET AROUND MUCH ANYMORE
  05. REMEMBER DIZZY
  06. JEEP'S BLUES
  07. BALKAN BLUE
  08. SUMMERTIME

(エンヤ/ENJA 2005年発売/MZCE-1065)
(ライナーノーツ/都並清史)

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スイングジャーナル主催 ジャズ・ディスク大賞 1994年度(第28回)

 「スイングジャーナル」誌が,レコード会社各社の自薦ノミネート作品を基にして,国内で該当年度中に発売されたCDLPビデオを対象に同誌委託の「ジャズ・ディスク大賞選考委員」によって選出される,日本ジャズ界に最も貢献した作品に贈られる「ジャズ・ディスク大賞」。

 今回は1994年度(第28回)の発表です。

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星影のステラ〜チック・コリア・ソロ・ピアノ★【金賞】.星影のステラ
チック・コリア


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ビレッジ・バンガードの大西順子★【銀賞】.ビレッジ・バンガードの大西順子
大西順子


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ブラウニー〜クリフォード・ブラウンに捧げる★【ボーカル賞】.ブラウニー〜クリフォード・ブラウンに捧げるヘレン・メリル


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DUO★【日本ジャズ賞】.DUO
峰厚介〜菊地雅章


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ラバー・マン★【制作企画賞】.ラバー・マン
ジャッキー・テラソン


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MOODSWING★【最優秀新人賞】.ムード・スウィング
ジョシュア・レッドマン


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サキソフォン・コロッサス (紙ジャケット仕様)★【編集企画賞】.マスターズ・オブ・ジャズ〜20ビットK2ハイ・クオリティーCDシリーズ [全90作]


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ザット・シークレット・プレイス★【録音賞(海外)】.ザット・シークレット・プレイス
 パティ・オースティン


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プレイ・バッハ・トゥデイ★【録音賞(国内)】.プレイ・バッハ・トゥデイ
ジャック・ルーシェ


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JAZZ625ジャズ黄金時代の巨人たち★【最優秀ビデオ賞】.JAZZ625ジャズ黄金時代の巨人たち / ウェス・モンゴメリー


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ジャズ・マスターズに捧ぐ〜VERVE50周年記念カーネギー・ホール・コンサート・ライブ★【最優秀ビデオ賞】.ジャズ・マスターズに捧ぐ〜VERVE50周年記念カーネギー・ホール・コンサート・ライブ


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 大西順子の『ビレッジ・バンガードの大西順子』が【銀賞】受賞。

 “ジャズの殿堂”ビレッジ・バンガードに,日本人として初めてステージに立った大西順子の6日間連続公演のライブ盤である。

 これはジャズ・ファンにとっては「国民的なビッグ・ニュース?」に違いないのだが,いかんせん,新聞のスミで小さく取り上げられたにすぎなかった。
 「大西順子のにとっては小さな一歩だが,日本人ジャズメンにとっては大きな一歩」(by アームストロング風)…と,紹介したいが『ビレッジ・バンガードの大西順子』は単なる歴史のドキュメンタリーなどではない。これぞジャズのドキュメンタリーである。

ビレッジ・バンガードの大西順子』は,ジャズ・ピアニスト大西順子のドキュメンタリーであって,ジャズライブそのものである。

 そう。実力で“ジャズの殿堂入り”を勝ち取った大西順子は「J−ジャズ界の野茂英雄」である。

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第60回(2017年度)グラミー賞 ジャズ部門-NO.1

 大晦日は,アドリブログでも,ジャズフュージョンの総決算!
 2017年,グラミー賞ノミネート作についてレポートします。

 読者の皆さんには,管理人の一押しよりも,この中からジャズフュージョンに接することを(謙虚になって)お奨めいたします。

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Category 31. Best Improvised Jazz Solo


☆ Can't Remember WhySara Caswell, soloist / Track from: Whispers On The Wind (Chuck Owen And The Jazz Surge)
☆ Dance Of ShivaBilly Childs, soloist / Track from: Track from: Rebirth
☆ Whisper NotFred Hersch, soloist / Track from: Open Book
☆ Miles BeyondJohn McLaughlin, soloist / Track from: Live @ Ronnie Scott's (John McLaughlin & The 4th Dimension)
☆ IlimbaChris Potter, soloist / Track from: The Dreamer Is The Dream

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Category 32. Best Jazz Vocal Album


☆ The Journey / The Baylor Project
☆ A Social CallJazzmeia Horn
☆ Bad Ass And BlindRaul Midon
☆ Porter Plays Porter / Randy Porter Trio With Nancy King
☆ Dreams And DaggersCecile McLorin Salvant

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Category 33. Best Jazz Instrumental Album


☆ Uptown, DowntownBill Charlap Trio
☆ RebirthBilly Childs
☆ Project FreedomJoey DeFrancesco & The People
☆ Open BookFred Hersch
☆ The Dreamer Is The DreamChris Potter

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Category 34. Best Large Jazz Ensemble Album


☆ MONK'estra Vol. 2John Beasley
☆ JigsawAlan Ferber Big Band
☆ Bringin' ItChristian McBride Big Band
☆ HomecomingVince Mendoza & WDR Big Band Cologne
☆ Whispers On The WindChuck Owen And The Jazz Surge

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Category 35. Best Latin Jazz Album


☆ Hybrido - From Rio To Wayne ShorterAntonio Adolfo
☆ OddaraJane Bunnett & Maqueque
☆ Outra Coisa - The Music Of Moacir SantosAnat Cohen & Marcello Goncalves
☆ TipicoMiguel Zenon
☆ Jazz TangoPablo Ziegler Trio

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 以上がノミネート一覧なんですが,今年も管理人の趣味・趣向とは相容れませんが,少しはこの結果に納得してもいます。ちょっとは進歩したのかなぁ。
 来年こそは「打倒! ジャズ・ジャーナリズム」を達成すべく(無理は承知で)まずは“自分の耳を鍛え上げなければ”!
 これが来年の(当然ながら再来年以降も)プチ抱負です。

PS 2月に受賞作が決定しましたら(そのCDを所有している場合に限り)レビューしようと思っています。どうぞお楽しみに!

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ボブ・バーグ / サイクル5

CYCLES-1 ジョン・コルトレーン亡き後,メディアはこぞってマイケル・ブレッカーマイケル・ブレッカー,たまにブランフォード・マルサリス…。
 ジャズテナー奏者と来れば「マイケル・ブレッカー1強時代」が存在したように思えるが,それは大きな誤りである。

 “巨星”マイケル・ブレッカーの影に隠れてしまいがちだがマイケル・ブレッカーと同時代のコルトレーン派のテナー奏者は秀逸揃い。
 名前を列挙するならスティーヴ・グロスマンデイヴ・リーブマンボブ・ミンツァートム・スコットゲイリー・トーマス…。

 ただし,上記のテナー奏者は皆マイケル・ブレッカーと比較すると明らかに分が悪い。そんな中,唯一,マイケル・ブレッカーとがっぷり四つで勝負できるテナー奏者がいた。ボブ・バーグである。

 「マイケル・ブレッカー1強時代」なのだから,実力が伯仲しようとも,ボブ・バーグが劣勢である。ボブ・バーグのことをマイケル・ブレッカーのモノマネだと揶揄する不届き者さえ存在する。

 断じてボブ・バーグマイケル・ブレッカーのコピーなどではない。かつてマイケル・ブレッカーボブ・バーグについて語った記事を覚えているが,マイケル・ブレッカーボブ・バーグのスタイルが似ているのは,2人で共に音楽について語り合い,サックスを練習する機会が多かったからだそうだ。
 そう。マイケル・ブレッカーのスタイルもボブ・バーグのスタイルも,自分一人の研究・努力で確立したものではなく,互いが互いに影響し合い構築した結果としての「圧巻の超絶の饒舌」なのであった。

 ボブ・バーグの4枚目のソロ・アルバム『CYCLES』(以下『サイクル』)は,実際にはボブ・バーグテナーサックスというよりもマイク・スターンギターを聴くためのアルバムなのだが(ボブ・バーグがダメなのではなくマイク・スターンが絶好調すぎて凄すぎる!)ちょうどマイケル・ブレッカーのライバルとしてボブ・バーグが注目を集め始めていた時期のアルバムであって,個人的にはボブ・バーグの魅力を聴き漁った時期の思い入れの強い名盤である。

 『サイクル』はとにかく6曲目の【マユミ】である。管理人は【マユミ】だけを100回は聴いているが一向に飽きることはない。
 なぜならばマイク・スターンとのユニゾンで盛り上がり続けるボブ・バーグに,あのブチギレ・マイケル・ブレッカーのド迫力とは違う種類の凄みに打たれて最高に気持ち良くなってしまうのだ。

 特に4分38秒からのクライマックスである。【マユミ】におけるボブ・バーグの凄みは「タネも仕掛けなし」でハッタリなし」のド迫力にこそある。
 ただ単純に一本調子のストレートなのではなく,深い音楽的素養と極めて高度な技術に裏打ちされた“マッスラな”ストレートに心が震わされてしまう。感情が見事に表現されている。この表現力には高い技術力が必要なのである。
 曲の進行と共に感情が高まっていく様がこれほどリアルに伝わってくる秘訣こそがボブ・バーグの「圧巻の超絶の饒舌」なのである。

CYCLES-2 熱く行きつつ,何をそこまでブチギレるのか心配になることもあるマイケル・ブレッカー。しかしマイケル・ブレッカーの強みはいつでも冷静なロボット・タイプでいられるところにある。
 同じ言語表現を持つボブ・バーグなのだがボブ・バーグは曲の世界に完全没入している。ボブ・バーグの強みはいつでも人情味を伝えられるところである。

 そう。ボブ・バーグは,役に入れば一瞬で涙を流せる女優さんのようなテナー奏者なのである。
 マイルス・デイビスチック・コリアマイク・スターンに愛された女優・ボブ・バーグ。その芸名は【マユミ】であった?

  01. BRUZE
  02. BACK HOME
  03. PIPES
  04. THE DIAMOND METHOD
  05. COMPANY B
  06. MAYUMI
  07. SO FAR SO
  08. SOMEONE TO WATCH OVER ME

(デンオン/DENON 1988年発売/32CY-2745)
(ライナーノーツ/中原仁)

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佐藤 允彦 / ダブル・エクスポージャー5

DOUBLE EXPORSURE-1 “ジャズ・ピアニスト”としての佐藤允彦が堪能できる,ベースエディ・ゴメスドラムスティーヴ・ガットとのピアノ・トリオライブ盤が『DOUBLE EXPROSURE』(以下『ダブル・エクスポージャー』)である。

 いや〜,デジタル・リズム・セクションと讃えられる世界指折りのリズム隊に即応し,尚且つ,いなしまくる佐藤允彦のオール・ラウンダーぶりが最高に素晴らしい!
 超絶4ビートに超絶フリージャズオーソドックススタンダードの甘いメロディーの合間に聴こえる,カチカチとキマりまくるスリリングなアドリブに大興奮!

 佐藤允彦の図抜けた構成力,クリーンなピアノ・タッチとグラデーション,どんなリズムにも乗りこなせる幅の広さに唸ってしまう。
 そうして特筆すべきはアドリブ・ラインの滑らかさ。1つのアイディアから次のアイディアへの淀みの無い流れの中で,浮かび上がる一発のフレージングにやられてしまう。スイングするピアノがとにかく分かりやすい。気持ち良い。

 『ダブル・エクスポージャー』のピアニスト佐藤允彦でなければならなかった。佐藤允彦が奏でるピアノ・トリオのハーモニーは他に聴き覚えがない。
 甘いメロディー・ラインを巧みに変化させていく佐藤允彦が,正に必要としたその場所にベースドラムがピンポイントで鳴っている。

 佐藤允彦が思い描く『ダブル・エクスポージャー』の世界観を完成させるには,名うてのデジタル・リズム・セクションが,つまりエディ・ゴメススティーヴ・ガットのリズム隊がどうしても必要とされていたのだ。

 ただし,佐藤允彦エディ・ゴメススティーヴ・ガットに求めていたのは佐藤允彦の意図を汲んだ演奏以上のものであった。
 そう。佐藤允彦の意図を汲んだその上で,しっかりとエディ・ゴメススティーヴ・ガットの「自分の音」を聴かせることだった。

DOUBLE EXPORSURE-2 だからこそ『ダブル・エクスポージャー』=佐藤允彦の「カットマン」の技術が際立つライブ盤へと仕上がったのだ。
 エディ・ゴメスベーススティーヴ・ガットドラムの軽やかでデジタルな動きに重しを置き,終始,自分のペースでアドリブを決めまくる佐藤允彦の大名盤

 ちょっと聴き始めの印象はエレピの音色も手伝ってスピーディーで軽やかな展開。演奏が分かりやすい。しかし2週目以降,しっかりと耳を傾けると実に硬派で,押し倒されてしまう印象を持つ。所々の内角攻めには思わずのけぞってしまう。

 そう。『ダブル・エクスポージャー』は,一発勝負のライブを支配した佐藤允彦の“作戦勝ち”な1枚であろう。

  01. GO NO SEN
  02. ALICE IN WONDERLAND
  03. BAMBOO SHOOTS II
  04. EVENING SNOW
  05. PHODILUS BADIUS
  06. FUMON
  07. THUS THE SONG PASSED
  08. NOUVELLE CUISINE
  09. DUKE'S CALYPSO
  10. ALL BLUES
  11. ST. THOMAS

(エピック・ソニー/EPIC/SONY 1988年発売/28・8H-5051)
(ライナーノーツ/油井正一,清水俊彦,原田充,佐藤允彦)

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チック・コリア+スティーヴ・ガッド・バンド / チャイニーズ・バタフライ5

CHINESE BUTTERFLY-1 世界最高峰のピアニストであるチック・コリアと世界最高峰のドラマーであるスティーヴ・ガッド
 それぞれソロでも大活躍なのだが,多忙なスケジュールの中,過去に幾度も共演しその度に超名盤を量産してきた「旧知の盟友」である。

 互いに「ほぼバンド・メンバーの仲」である2人が,改めて真剣にレギュラー・バンドを組んだと言うのだから驚いた。今更何を〜!?

 その答えは言葉ではなく音にある! 双頭バンドを主張するバンド名「チック・コリア+スティーヴ・ガッド・バンド」の『CHINESE BUTTERFLY』(以下『チャイニーズ・バタフライ』)の中で表現されている!

 ズバリ「チック・コリア+スティーヴ・ガッド・バンド」が目指したのは「新時代のブラジリアン・フュージョン」である。
 チック・コリアスティーヴ・ガッドの過去の共演盤を例として語るなら「チック・コリア+スティーヴ・ガッド・バンド」が目指したは『FRIENDS』の焼き直しであり『FRIENDS』のレギュラー化である。

 個人的にチック・コリアスティーヴ・ガッドと来れば,真っ先に連想してしまうのが『FRIENDS』である。
 チック・コリアの和やかなエレピに,落ち着いたスティーヴ・ガッドのナイスなグルーヴ。やっていることは凄いのに“ほのぼのセッション”のに雰囲気が堪らなく好き。
 チック・コリアエレピ片手に「新時代のブラジリアン・フュージョン」を始めようと決めた時,イメージしたのは『FRIENDS』で間違いないだろう。

 しかし同時に『FRIENDS』と来ればジョー・ファレルであり,ジョー・ファレル,と来れば『RETURN TO FOREVER』の連想ゲームがチック・コリアの脳裏をよぎったのも間違いない。
 なんだかんだで「チック・コリア+スティーヴ・ガッド・バンド」として新曲を数曲レコーディングした過程において,チック・コリアの頭の中に「新時代のブラジリアン・フュージョン」のイメージが固まった!

 そう。「チック・コリア+スティーヴ・ガッド・バンド」の結成理由は「第一期リターン・トゥ・フォーエヴァー」の焼き直しであり「第一期リターン・トゥ・フォーエヴァー」のレギュラー化である。

 それこそがオール新曲のCD1枚分の録音を終えて,なおも性格の異なる2枚目を吹き込んだ理由である。もっと言えば『RETURN TO FOREVER』発表時以来,45年振りにレコーディングされた【RETURN TO FOREVER】再演の理由であろう。

CHINESE BUTTERFLY-2 「チック・コリア+スティーヴ・ガッド・バンド」は,フロント陣担当のチック・コリアとリズム隊担当のスティーヴ・ガッドの分業化がバンド運営の肝であろうが,チック・コリアジョー・ファレルの代わりに見立てたスティーヴ・ウイルソンが見事にハマッテいる。
 スティーヴ・ウイルソンフルートに運ばれたチック・コリアローズピアノが史上最高に響いている。これはオリジナルを越えたかなぁ。

 全曲ライト・フュージョンであり全曲ライト・ブラジルの『チャイニーズ・バタフライ』。
 その後ろに『FRIENDS』と『RETURN TO FOREVER』を感じられるファンにとっては愛聴盤になるに違いない。

 そうではない,過去のバックボーンなしの新規ファンも大いに楽しめるとは思うのだが…。スティーヴ・ガッドさん,最近はちょっとぬるいのかもしれません…。
 今更何を〜!?パート2だけが心配な星5つの新バンドの誕生です。

  CD1
  01. CHICK'S CHUMS
  02. SERENITY
  03. LIKE I WAS SAYIN'
  04. A SPANISH SONG
  05. CHINESE BUTTERFLY

  CD2
  01. RETURN TO FOREVER
  02. WAKE-UP CALL
  03. GADD-ZOOKS

(ストレッチ・レコード/STRETCH RECORDS 2017年発売/UCCJ-3035/6)
(CD2枚組)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/原田和典,チック・コリア,スティーヴ・ガット,リオーネル・ルエケ,スティーヴ・ウィルソン,カリートス・デル・プエルト,ルイシート・キンテーロ)

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DIMENSION / 305

30-1 『30』が好きだ。『30』は「ただ派手だとか,ただカッコ良いとか,ただ楽しいとか」そういうレベルのアルバムではない。

 『30』には,増崎孝司ギターにしても,小野塚晃キーボードにしても,勝田一樹アルトサックスにしても「近未来フュージョンユニット」の過去のDIMENSIONに憧れて作ったような雰囲気を感じる。

 『30』はDIMENSIONの25周年記念盤である。ただし,DIMENSIONとは,1枚1枚のアルバム制作に精魂込めて全力投球するバンドである。
 普段のメンバーのコメントを聴いている限り,キリ番の『30』だからといって「特別なアニバーサリー感」など無いはずである。

 『30』は惜しくも“最高傑作”の更新とはならなかったが,管理人は『30』に特別な地位を付与したい。『30』こそがDIMENSIONのDNAを受け継ぐ「ザ・ディメンション」“象徴”の1枚に違いない。

 つまり『30』こそが,DIMENSIONの最初の1枚にふさわしく,DIMENSIONの最後の1枚にも成り得る要素を備えている。
 DIMENSIONの過去と現在,そして未来を結び合わせる特別な1枚だと思う。

 管理人は考えた。DIMENSION25周年を1枚で網羅する『30』には,今年の4月にリリースされた『BEST OF BEST 25TH ANNIVERSARY』の影響が少なからずあると思う。

 『BEST OF BEST 25TH ANNIVERSARY』の“売り”は,オール・ヒットのベスト盤ではない。『BEST OF BEST 25TH ANNIVERSARY』の“売り”は,リマスタリングであり,音源を差し替えた過去音源のブラッシュアップにある。
 このスタジオ・ワークを行なった影響が『30』で去来する,過去のDIMENSIONへの憧れを生じさせたように思う。

 DIMENSIONとは「超絶であり,メロディアスであり,バラード」である。そのことを再確認したがゆえの「超絶ありの,メロディアスありの,バラードありの」『30』の完成なのだ。
 今の“成熟した”DIMENSIONが,過去の“青二才”のDIMENSIONを演奏してみせた。そんなアルバムだと思う。

30-2 『BEST OF BEST 25TH ANNIVERSARY』のパワーを原動力として,突っ走った『30』の「超絶も,メロディアスも,バラードも」これぞ「ザ・ディメンション」の一級品。

 若い頃のDIMENSIONは,当然カッコ良かったが,歳を重ねた「近未来フュージョンユニット」が超カッコ良い。
 過去のどのDIMENSIONでも表現できなかった「派手さ,カッコ良さ,楽しさ」のレベルが奥深い。25年間,DIMENSIONを続けてきたからこその『30』の完成であろう。

 DIMENSIONにとって『30』とは,いつも通りの年一の1枚に過ぎないのだろう。
 ただし,25年間,DIMENSIONを聴き続けてきたファンにとっては『30』の響きは,間違いなく「特別なアニバーサリー盤」そのものである。

 そう。『30』はDIMENSIONの自然体の大名盤。無意識のうちに作り上げられた“現在進行形”『30』の響きは,ちょっとやそっとでは超えることのできない高みに達している。

  01. Delusion
  02. Alive The Edge
  03. Mystic Eyes
  04. An Empty Dream
  05. Take It Up
  06. Turning Point
  07. Dance The Dance
  08. Fish Story
  09. Shadowy
  10. Unnatural Life

(ザイン/ZAIN RECORDS 2017年発売/ZACL-9097)
(☆スリップ・ケース仕様)
(☆BLU−SPEC CD2仕様)

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e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ) / ヴァイアティカム+ライヴ5

VIATICUM + LIVE IN BERLIN-1 「e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)」の“最高傑作”『VIATICUM』に『LIVE IN BERLIN』をカップリングして新たに再発?されたのが『VIATICUMLIVE IN BERLIN』(以下『ヴァイアティカム+ライヴ』)である。

 『VIATICUM』が素晴らしいのは言うまでもない。そんな大名盤に「e.s.t.」絶頂期のライブ盤がカップリングされたのだから,これ以上何を望めよう。
 管理人は『ヴァイアティカム+ライヴ』リリースの意味とは「e.s.t.」のファン向けという以上に,エスビョルン・スヴェンソン亡き後,喪失感を覚えていたダン・ベルグルンドマグヌス・オストラムを慰めるため,そして2人へ再始動を促すための企画ものだと思っている。

 そんな企画ものの性質上『VIATICUM』については『ヴァイアティカム批評を参照していただくとして,ここでは『LIVE IN BERLIN批評についてのみ記すこととする。

 『LIVE IN BERLIN』を聴いて,まず痛感したのは「e.s.t.」は3ピースのバンドだったという事実だ。
 個人的に「e.s.t.」がバンド・サウンドを前面に押し出してきたのは『SEVEN DAYS OF FALLING』からだと思っているが『LIVE IN BERLIN』の壮絶なライブを聴き終えて,改めて「e.s.t.」が「3つの肉体,6本の腕,1つの頭脳」と称される理由を鑑みる気分がした

 これは『LIVE IN BERLIN』が,キース・ジャレットトリオと同じ,ピアノ・トリオライブ盤だから余計に感じるのだろうが,個性の強い3人のせめぎ合いで芸術性をぐいぐいと高みに持っていこうとするキース・ジャレットに対し,エスビョルン・スヴェンソンは個人の個性以上にバンドとしての個性を追及している。

 「e.s.t.」にあって他のピアノ・トリオに無いもの。それはそれぞれの曲に対し,バンドとしてどうプレイするか,それがメンバー間で合意形成できている点にある。
 その“暗黙の了解”とか“阿吽の呼吸”が蜜だからこそ,アドリブの自由度が高い。毎回の演奏が予定調和で終わらない。いつでもリラックスと緊張感が程よく保たれているように聴こえる。

 その意味で『LIVE IN BERLIN』は,普段と何ら変わらない「e.s.t.」の1回のライブの記録のように思う。
 そう。『LIVE IN BERLIN』は,格段に素晴らしい決定的なライブではない。収録曲4曲,演奏時間も40分。どちらかと言えば単体でリリースしようにもできない「帯に短したすきに長し」的な音源集であって,オフィシャル海賊盤チックなライブ盤だと思っている。

 そんな記録用音源=『LIVE IN BERLIN』でもヤラレテしまうのだから,逆に「e.s.t.」の物凄さが際立っている。
 三者三様,自由な音選びでありながら,このうちの一人でも欠けたら「e.s.t.」の音世界は絶対に存在しなくなる。3つの異なる個性が1つでも2でも,そして3つでも確実にフィットする信頼感とコンビネーションが根底にある。互いに互いの音を聴き,次の音選びを予想することができるのだろう。

VIATICUM + LIVE IN BERLIN-2 ライブのハイライトとはハプニングである。曲が進行する過程で全く新しい曲へと変化していく。『LIVE IN BERLIN』がそのことを証明してくれている。
 だからエスビョルン・スヴェンソンが亡くなった時,ダン・ベルグルンドマグヌス・オストラムにとってメンバー・チェンジなど考えられなかったのだろう。

 エスビョルン・スヴェンソン亡き今「e.s.t.」は完全終了である。『ヴァイアティカム+ライヴ』で「e.s.t.」は完全終了した。

 『ヴァイアティカム+ライヴ』の真実とは「傷心のダン・ベルグルンドマグヌス・オストラムに捧ぐ」なのだと思う。

  Disc 1:Viaticum
  01. Tide Of Trepidation
  02. Eighty-eight Days In My Veins
  03. The Well-wisher
  04. The Unstable Table & The Infamous Fable
  05. Viaticum
  06. In The Tail Of Her Eye
  07. Letter From The Leviathan
  08. A Picture Of Doris Travelling With Boris
  09. What Though The Way May Be Long

  Disc 2:live in Berlin
  01. A Picture Of Doris Travelling With Boris
  02. In The Tail Of Her Eye
  03. The Unstable Table & The Infamous Fable
  04. The Rube Thing
  05. All The Beauty She Left Behind

(ビデオアーツ/ACT 2008年発売/VACG-1003/4)
(CD2枚組)
(ライナーノーツ/廣瀬大輔)

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伊東 たけし / ヴィジョンズ4

VISIONS-1 『VISIONS』(以下『ヴィジョンズ』)は,伊東たけしT−スクェア退団後のソロ第一弾アルバム。

 伊東たけしが本当にやりたかった音楽。その答えが『ヴィジョンズ』にたっぷりと詰まっているはず。
 そう思って聴き込んだ『ヴィジョンズ』の印象は,まさかのフィリップ・セスであった。伊東たけし安藤まさひろの腕から離れフィリップ・セスに抱かれている。

 『ヴィジョンズ』でスクェア・カラーが消された理由は伊東たけしサックスの“先鋭的な鳴り”にある。
 明るく爽やかな“T−スクェアのフロントマン”としての伊東たけしは『ヴィジョンズ』の中にはもはやいない。『ヴィジョンズ』の中にいるのは“HIPでCOOLな”ハイテンション・サックス・プレイヤー。再デビューしたかのような振り幅である。

 では『ヴィジョンズ』は駄盤なのかというとそうではない。『ヴィジョンズ』の最先端NYサウンドを駆け巡る,伊東たけしアルトサックスが相当にカッコ良い。
 アメリカ進出と言う目的でリリースされたスクェアの『WAVE』。その中の【BIG CITY】で痺れたあの感じが押し寄せてくる。

 スクェア・ファンであればあるほど,激変した伊東たけしばかりが耳に付くことと思うが,伊東たけしが目指した『WAVE』の夢の続きは,山下達郎と共演した【BLOW(N.Y.VERSION)】と『NATURAL』収録【HAPPY SONG】の聴き慣れたセルフ・カヴァーにこそ如実に表現されていると思う。

VISIONS-2 伊東たけしの中のアメリカとはLAのラス・フリーマンではなくNYのフィリップ・セスだったのだろう。でもよくよく聴くとフィリップ・セスではなく住友紀人だったりもする。

 伊東たけしとしてはオールド・セルマーへと音色も変えて,サックス一本で勝負していくためのEWIプレイヤー=住友紀人の起用だったと思うが,同じEWIプレイヤーだから分かった住友紀人のNYな才能に徐々に惹かれていくこととなる…。

 「影武者」住友紀人の覚醒は『ヴィジョンズ』におけるフィリップ・セスの音楽眼! 分かるかなぁ〜。

  01. MARBLES
  02. CORE ZONE
  03. VISION
  04. GAIYA
  05. BLOW (N.Y. VERSION)
  06. HAPPY SONG
  07. IN THE DISTANCE
  08. MANKALA

(アトランティック/MMG ATLANTIC 1992年発売/AMCM-4135)

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e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ) / ルーコサイト4

LEUCOCYTE-1 「e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)」最高の実験作にして最大の問題作,改め「冒険作」が『LEUCOCYTE』(以下『ルーコサイト』)である。

 『ルーコサイト』をどう評価するか? それは『ルーコサイト』の次なくしては評価できないように思う。
 ただし,結果的に『ルーコサイト』の次は永遠に聴けなくなってしまった。『ルーコサイト』はエスビョルン・スヴェンソンの遺作である。『ルーコサイト』で「e.s.t.」はジ・エンド。

 確かに『ルーコサイト』が「e.s.t.」の最終作であるのだが,それは結果的に,意図せず最終作になってしまっただけのことで『ルーコサイト』制作時のエスビョルン・スヴェンソンは「e.s.t.」の未来しか見据えていなかった。
 もっと言えば『ルーコサイト』制作時のエスビョルン・スヴェンソンは「e.s.t.」の過去と現在などなかったかのように演奏している。

 そう。『ルーコサイト』には,マイルス・デイビスmそれも“電化マイルス”が放つ「クラッシュ&ビルド」の精神が宿っている。
 おおっと「e.s.t.」の紹介として,キース・ジャレットパット・メセニーマイルス・デイビスの名を挙げているが,これは管理人からのエスビョルン・スヴェンソンに対するリスペクトであって,断じてエスビョルン・スヴェンソンは唯一無二の存在である。「e.s.t.」は独自のオリジナリティを持ったジャズ・バンドである。そこのとこ読み間違えませんように。

 “電化マイルス”の1枚として批評したくなる『ルーコサイト』の野心的なサウンドは,もはやジャズではなく,ポスト・ロックとかミニマル・ミュージックの様相を呈している。
 ズバリ「e.s.t.」が『ルーコサイト』で新しく取り入れたサウンド・エフェクトは“ノイズ”である。当然,単なるノイズではない。これは
,繊細かつエモーショナルなノイズである。そして今を感じさせてくれるノイズである。なんて残酷で,そして美しいノイズ音楽なのだろう。

 飛び交うノイズにエフェクトが分厚くかかっている。どう転んでもジャズとは思えないビートに,時折かぶさる不穏でありながらうっとりするほど繊細なピアノ
 ジャズ・ピアノを思い描くと到底聴ける代物ではないが『ルーコサイト』の美しさは「条件付き」で紛れもない本物である。

 その「条件付き」とはノイズ・ベースで聴けるかどうか? かつてパット・メセニーが『ZERO TOLERANCE FOR SILENCE』で作ったノイズ・サウンドがメセニー・ミュージックの試金石となったのと同じように…。
 ノイズの嵐の中で,ピアノエスビョルン・スヴェンソンベースダン・ベルグルンドドラムマグヌス・オストラムが互いの音を探り合っている様を聴き分けられるかどうかが「e.s.t.」ファンの,そしてノイズ・マニアとしての試金石…。

 1曲目こそエフェクトなしのアコースティック・ピアノ小品になっているが,2曲目からはピアノにディストーションとエコーをかけ,エフェクト/電子音の重要度比率を意図的に上げてきていることが判る。4曲目なんて,正統ジャズに回帰したかと思ったら,逆で電子音だらけのかなり先鋭的なトラック仕上げ…。
 全編エスカレートしていく「変態御用達ノイズ」。『ルーコサイト』は純粋な音楽などではなく,先の『ZERO TOLERANCE FOR SILENCE』と同様に「音響作品」として捉えるべきであろう。

LEUCOCYTE-2 つまりは「e.s.t.」のファンだからではなく「変態御用達ノイズ」を心から愛せるかどうかで『ルーコサイト』の評価は一変する。
 その意味で『ルーコサイト』の管理人の評価は星4つである。中盤までは星6つ気分でノリノリで聴いていたのだが,最後まで過剰なサイケを展開されたら多少ゲンナリ。

 正直,超攻撃型「e.s.t.」の新サウンドに,せめてもう1曲ぐらいは従来のヨーロピアンジャズ・ピアノ・テイストが聴きたくなる。従来の「e.s.t.」が,従来のジャズが,そして従来の音楽が聴きたくなる。

 『SEVEN DAYS OF FALLING』→『VIATICUM』→『TUESDAY WONDERLAND』でのスタイル・チェンジは確かに衝撃的であったが,ある意味「想定の範囲内」で受け入れることが出来た。
 しかし,今回の『ルーコサイト』は「想定外」である。まさかの「変態御用達ノイズ」アルバムの登場である。

 『ルーコサイト』は「e.s.t.」最高の実験作にして最大の問題作というよりも「冒険作」と呼ぶべきであろう。

  01. DECADE
  02. PREMONITION - EARTH
  03. PREMONITION - CONTORTED
  04. JAZZ
  05. STILL
  06. AJAR
  07. LEUCOCYTE - AB INITIO
  08. LEUCOCYTE - AD INTERIM
  09. LEUCOCYTE - AD MORTEM
  10. LEUCOCYTE - AD INFINITUM

(エマーシー/EMARCY 2008年発売/UCCM-1159)
(ライナーノーツ/佐藤英輔)

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スイングジャーナル主催 ジャズ・ディスク大賞 1993年度(第27回)

 「スイングジャーナル」誌が,レコード会社各社の自薦ノミネート作品を基にして,国内で該当年度中に発売されたCDLPビデオを対象に同誌委託の「ジャズ・ディスク大賞選考委員」によって選出される,日本ジャズ界に最も貢献した作品に贈られる「ジャズ・ディスク大賞」。

 今回は1993年度(第27回)の発表です。

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ラプソディア★【金賞】.ラプソディア
ゴンサロ・ルバルカバ


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バイ・バイ・ブラックバード★【銀賞】.バイ・バイ・ブラックバード
キース・ジャレット


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ブルー・ライト・ティル・ダウン★【ボーカル賞】.ブルー・ライト・ティル・ダウン
カサンドラ・ウィルソン


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スタンダーズ・マイ・ウェイ★【日本ボーカル賞】.スタンダーズ・マイ・ウェイ
伊藤君子


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MAJOR TO MINOR★【日本ジャズ賞】.メイジャー・トゥ・マイナー
峰厚介


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ヒア・アイ・アム★【日本ジャズ賞】.WOW
大西順子


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ストレイト・トゥ・ザ・スタンダード★【制作企画賞】.ミュージック・オブ・ギル・エバンス
マンデイ・ナイト・オーケストラ・ライブ・アット・スイート・ベイジル

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デュークへの想い★【録音賞(海外)】.デュークへの想い
 デイブ・グルーシン


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ブルースエット・パート2(紙ジャケット仕様)★【録音賞(国内)】.ブルースエット・パートII
カーティス・フラー


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マイルス・アヘッド [Laser Disc]★【最優秀ビデオ賞】.マイルス・アヘッド
 マイルス・デイビス


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 キース・ジャレットの『バイ・バイ・ブラックバード』が【銀賞】受賞。

 『バイ・バイ・ブラックバード』はマイルス・デイビス他界2週間後に吹き込まれたキース・ジャレットが捧げたマイルス・デイビスへの追悼盤。しかもキース・ジャレットトリオとしてはレアものとなるスタジオ盤。

 しかし,なんだろう。悪くはないが『バイ・バイ・ブラックバード』でのキース・ジャレットの演奏には共感できないし,いつものようにどっぷりとハマルことができない。演奏が薄いのだ。

 薄い理由は1つに選曲が不明瞭。マイルス・デイビスを直接連想させる愛奏曲がない。もう1つはキース・ジャレットが思うほど,ゲイリー・ピーコックジャック・デジョネットマイルス・デイビスの死を悼んでいたのだろうか?

 まっ,キース・ジャレットの大名盤群からすると下の評価となる『バイ・バイ・ブラックバード』であるが,それでも他のピアノ・トリオからすると名盤として評価されるのだろう。
 負け惜しみではなく【銀賞】がちょうどいいのである。

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e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ) / ライヴ・イン・ハンブルク5

LIVE IN HAMBURG-1 「e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)」の2枚の公式ライブ盤のお話。
 『E.S.T. LIVE』が『TRAVELS』なら『LIVE IN HAMBURG』(以下『ライヴ・イン・ハンブルク』)は『THE ROAD TO YOU − RECORDED LIVE IN EUROPE』である。

 おおっと「e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)批評に,突然,パット・メセニーの名前が登場してきたが,今まで書かなかったことをお詫びする。
 「e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)」を絶賛してきたのは管理人の“フェイバリットキース・ジャレットだけではない。管理人もう1人の“フェイバリットパット・メセニーも「e.s.t.」を絶賛し,実際に共演し,DVDまでリリースしている。

 そもそも「先進的音楽の求道者」としてエスビョルン・スヴェンソンパット・メセニーに共通点を感じていたが「e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)」と「パット・メセニーグループPMG)」が,目指す方向性においても表現する手法においても,ついに『ライヴ・イン・ハンブルク』でシンクロしたように思う。

 『ライヴ・イン・ハンブルク』とは『TUESDAY WONDERLAND』のフォロー・ツアーライブ盤なのだが,偶然にも元ネタである『TUESDAY WONDERLAND』のCD帯にはパット・メセニーからの「過去15年間で見たバンドで一番エキサイティングだ」との推薦文が載せられている。

 これって偶然ではない。数年前からエスビョルン・スヴェンソンとすでにシンクロしていたパット・メセニー。そのパット・メセニーの体験が『TUESDAY WONDERLAND』でのエキサイティングなツアーを予見した。
 そしてその推薦文はそのまま『ライヴ・イン・ハンブルク』に当てはまると思う。

 そう。パット・メセニーは『TUESDAY WONDERLAND』の「e.s.t.」に『THE ROAD TO YOU − RECORDED LIVE IN EUROPE』当時の「PMG」を思い重ねていたように思う。パット・メセニー最大のイケイケの絶頂期で,創造性が漲り,何を演っても上手くゆく。大観衆が熱狂する。
 『THE ROAD TO YOU − RECORDED LIVE IN EUROPE』はヨーロッパ・ツアー。「e.s.t.」はヨーロッピアン・ジャズ

 個人的に大好きなのはECMの美しいパット・メセニー。“最高傑作”はノンサッチの『THE WAY UP』のパット・メセニー
 でっ,超人気盤揃いの「ゲフィンは下品」なのだが,あの下品さが“青春のパット・メセニー”に違いない。聴いていて楽しい。

 だ・か・ら『E.S.T. LIVE』が『TRAVELS』。『LIVE IN HAMBURG』が『THE ROAD TO YOU − RECORDED LIVE IN EUROPE』って訳なのだ。
 【DOLORES IN A SHOESTAND】が【BETTER DAYS AHEAD】に対応し【GOLDWRAP】が【THIRD WIND】に対応するのも『LIVE IN HAMBURG』が『THE ROAD TO YOU − RECORDED LIVE IN EUROPE』って訳なのだ。

LIVE IN HAMBURG-2 それにしても『TUESDAY WONDERLAND』と『ライヴ・イン・ハンブルク』では,同じ曲が演奏されているのに印象がかなり異なっている。
 スタジオ盤では陰陽で言えば「陰」の部分が出ているが,ライブ盤では観客の盛り上がりと共に「陽」の部分が光り輝きCD以上の楽曲へと昇華させている。素晴らしい。

 お得意の「電化ジャズ」も増し増しの盛り盛りで,ヘッドフォンで電子音を追い続けているとあっちの世界へ連れ去られそうに感じてしまう。最高のテクノ・ポップである。スタジオ盤とは異なるベクトルの莫大なエネルギーが流れている。
 本来,ピアノエスビョルン・スヴェンソンベースダン・ベルグルンドドラムマグヌス・オストラムは“超絶技巧”のジャズメン。「内ではなく外へ向けられた」超一流のアドリブが最高に素晴らしい。

 『ライヴ・イン・ハンブルク』で,かつてのパット・メセニーがそうだったように「e.s.t.」も“ベーシックなジャズ”の枠を超えてしまった。
 エスビョルン・スヴェンソンは死んで“伝説”となったわけではない。エスビョルン・スヴェンソンは『ライヴ・イン・ハンブルク』で“生きる伝説”となっていたのだった。

 って,すみません。真面目に批評してしまいました。『ライヴ・イン・ハンブルク』は熱く語るアルバムではありませんでした。
 理性を忘れてエキサイティングな演奏にただただ酔いしれるだけ〜。エンターテイメント〜。

  CD1
  01. tuesday wonderland
  02. the rube thing
  03. where we used to live
  04. 800 streets by feet
  05. definition of a dog

  CD2
  01. the goldhearted miner
  02. dolores in a shoestand
  03. sipping on the solid ground
  04. goldwrap
  05. behind the yashmak

(ユニバーサル・ジャズ/UNIVERSAL JAZZ 2007年発売/UCCM-1139/40)
(CD2枚組)
(ライナーノーツ/ジョー・ヒールシャー,ダン,カーステン・ヤンケ,マグヌス,エスビョルン,オキ)

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渡辺 貞夫 / スウィート・ディール4

SWEET DEAL-1 『SWEET DEAL』(以下『スウィート・ディール』)は,LAの3つのスーパー・フュージョン・グループ,ラッセル・フェランテ率いるイエロー・ジャケッツカルロス・ベガ率いるカリズマ,そしてエイブラハム・ラボリエル率いるコイノニアの各メンバーによる混成セッション・アルバムである。

 つまりは「ナベサダフュージョン,ここに極まりけり!」な豪華絢爛な1枚なのであるが,実際に聴いた『スウィート・ディール』の印象はかなりフュージョンからかなり離れて“ジャズっぽい”。

 『スウィート・ディール』録音の時点で,すでにコイノニアは活動を休止し,イエロー・ジャケッツも突然変異なジャズ・ユニットと化していたのだから『スウィート・ディール』が“ジャズっぽい”のも理解できる。管理人はそう思って楽しんでいた。

 『スウィート・ディール』はジャズフュージョンが見事に融合した『フロントシート』の続編に当たる。
しかし『スウィート・ディール』の真実とは『フロントシート』の続編にして『ア・ナイト・ウィズ・ストリングス』の前作にも当たる。

 『ア・ナイト・ウィズ・ストリングス』を聴き終えて「あっ,これだったんだ」と思った経験がある。『ア・ナイト・ウィズ・ストリングス』の中に『スウィート・ディール』のモチーフが残されている。
 『スウィート・ディール』〜『ア・ナイト・ウィズ・ストリングス』へと流れる「ゴキゲン・フュージョンなのに“ジャズっぽい”」アンサンブルのキーマン。それがピーター・アースキンの存在にある。

 ジャズフュージョンの両方で大活躍+ビッグ・バンドとスモール・コンボの両方で大活躍な,ソロ以上に全体のアンサンブルに気を配る“JAZZYな”ドラマーピーター・アースキン“その人”なのであった。

 『スウィート・ディール』のハイライトは【EARLY SPRING】と【CYCLING】である。
 “先頭でリードしつつ後方からも見守っている”ピーター・アースキンドラミングが素晴らしい。そこにジョン・パティトゥッチである。全てはラッセル・フェランテのハイセンスなのである。

SWEET DEAL-2 管理人の結論。『スウィート・ディール批評

 3人のプロデューサーによる『スウィート・ディール』のサウンドメイクは文句のつけようがない。ジャズの良さとフュージョンの良さが高次元で融合した名盤である。

 ただし,本来そこにメインであるはずの渡辺貞夫アルト・サックスがわずかに一歩だけ引っ込んでいる。もしやナベサダ自身が極上のバック・サウンドに惚れ込み,バックの名演をファンのみんなにも聴かせたかったのかなぁ。

  01. Passing By
  02. Sweet Deal
  03. Early Spring
  04. After Goodbye
  05. With The Wind
  06. Catch Me In The Sun
  07. Old Photograph
  08. As You Say
  09. Only Love
  10. Blue On Green
  11. Masai Talk
  12. Cycling

(エレクトラ/ELEKTRA 1991年発売/WPCP-4400)

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e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ) / チューズデイ・ワンダーランド5

TUESDAY WONDERLAND-1 「e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)」とは,ジャズピアノ・トリオというスタイルを周到しつつ,一方で既存のピアノ・トリオのスタイルからの逸脱を目指すという,敢えて自らが課した矛盾をエネルギーに前身してきたバンドである。

 ネタ元はエスビョルン・スヴェンソンのアイドルであるキース・ジャレットセロニアス・モンクでありながら,ロックであり,ポップスであり,クラシックのようでもある。
 JAZZYな演奏で全身をまとってはいても,その音楽性はジャズから遠く離れているように思う。

 そんな「e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)」の音楽性を「ポスト・ロック」と呼ぶのは,実に言い当てて妙である。
 そもそもブラッド・メルドーにしてもエスビョルン・スヴェンソンにしても,彼等の世代は疑うべくもなくロックからの洗礼を受けている。「e.s.t.」が「ロックするピアノ・トリオ」し始めたのは『GOOD MORNING SUSIE SOHO』の頃からだから随分前のことになる。

 しかし「e.s.t.」が明確にジャズ・バンドではなくロック・バンドとしての音造りを打ち出したのは『TUESDAY WONDERLAND』(以下『チューズデイ・ワンダーランド』)以降であろう。
 『チューズデイ・ワンダーランド』での「e.s.t.」は「ロックするピアノ・トリオ」を越えて「インプロヴィゼーションするロック・バンド」と化しているのだ。

 例えば1曲目の【FADING MAID PRELUDIUM】。クラシカルな旋律の静かな美しさと動的もしくは破壊的なテクスチャーとの振れ幅,コントラスト。ピアニシモからフォルテシモへの意表をつく展開。49秒で突然轟然と鳴り響くディストーション・ベースでの「突き放し」はキング・クリムゾンのあれであり,ジミ・ヘンドリックスのそれであろう。
 【DOLORES IN A SHOESTAND】と【GOLDWRAP】のキラー・チューンでもループやリフが多用され,静寂と喧騒,混沌と整合,何だか全てが彼らの予測通りにコントロールされていくような感じ。まんまとハマって何度聴いても快感が走る…。

 『チューズデイ・ワンダーランド』には,いつも以上にピアノベースドラム以外の電子音が入っている。サウンド・マシーンも使われている。でも一向にうるさくは感じない。
 止まったり動いたりする緩急のつけかたはクラブ・ジャズっぽい。すぐに覚えてしまうシンプルで美しいメロディーと難解な変拍子のリズムがクセになる…。

 ズバリ「e.s.t.」は『チューズデイ・ワンダーランド』で,多くのジャズメンがどうしても越えることの出来なかった大きな壁をついに突き破っている。これは大事件である。
 ジャズピアノ・トリオがその基本形を崩すこと無く,ジャズの言語でついにロックン・ロールの本家本元を呑み込んでしまっている。『チューズデイ・ワンダーランド』での「e.s.t.」こそが“ロックの中のロック”しているのである。

TUESDAY WONDERLAND-2 「インプロヴィゼーションするロック・バンド」と化した『チューズデイ・ワンダーランド』が素晴らしい。大好きである。星5つの大名盤である。

 しかし『チューズデイ・ワンダーランド』は一気に「ポスト・ロック」を通りすぎてしまったような印象を受ける。理由は大手のエマーシー移籍と無関係ではないであろう。
 近年,これだけ玄人から絶賛され,素人からも絶賛され,売れまくったジャズ・バンドは他になかった。ロック・バンド並みのセールスが求められたがゆえの,本心ではない部分での非ジャズ…。

 だから管理人は『チューズデイ・ワンダーランド』のフォロー・ツアーライブ盤『LIVE IN HAMBURG』を押しているのです!

  01. fading maid preludium
  02. tuesday wonderland
  03. the goldhearted miner
  04. brewery of beggars
  05. beggar's blanket
  06. dolores in a shoestand
  07. where we used to live
  08. eighthundred streets by feet
  09. goldwrap
  10. sipping on the solid ground
  11. fading maid postludium

(エマーシー/EMARCY 2006年発売/UCCM-1101)
(ライナーノーツ/鯉沼利成,須永辰緒,佐藤英輔)

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MALTA / サマー・ドリーミン4

SUMMER DREAMIN'-1 『SUMMER DREAMIN’』(以下『サマー・ドリーミン』)は『MALTA』『SWEET MAGIC』に続く「お洒落なシティ・ジャズ」路線の3作目である。

 しかし,同じジャズサックス期のMALTAでありながらも『MALTA』『SWEET MAGIC』寄りではなく,フュージョンサックス期の『SPARKLING』にイメージが近い。
 というか「大人のライト・ジャズ」だったMALTAの印象が『サマー・ドリーミン』で一気に若返って「イケイケのジャズ・パワー」を感じるようになった。

 MALTAジャズサックスが甘いのそのままにエネルギッシュに響き出したのが『サマー・ドリーミン』からだと思う。
 その理由を問われれば,以後の重要なキーワードとなる「夏」であろう。波の音で始まり波の音で終わる『サマー・ドリーミン』が,カシオペアスクェア松岡直也高中正義が既に活躍していた「夏」のBGMというビッグなフィールドに繰り出したのだ。

 ただし『サマー・ドリーミン』でのMALTAの「夏」は真っ昼間でもないし,南国の熱帯でもない。そうではなく,朝晩がひんやりとした避暑地での夏,爽やかな朝日と夕陽の夏である。
 佳曲揃いの『サマー・ドリーミン』であるが,個人的には【MORNING FLIGHT】一択である。

 【MORNING FLIGHT】での岡沢章ベース・ラインが最強である。そこに絡む松原正樹のリズム・ギター渡嘉敷祐一JAZZYなドラムがこれまたよい。

 【MORNING FLIGHT】の別口ではMALTAの甘いアルトサックスに絡むJOE STRINGSがこれまた最高で盛り上げる盛り上げる。俄然,ロマンティック・MALTAにメロメロでトロトロ〜。

SUMMER DREAMIN'-2 個人的に「MALTAの1曲は?」と問われれば,並居るJTのスーパーTVCM曲を抑えて【MORNING FLIGHT】を指名する。

 ただし管理人が愛する【MORNING FLIGHT】は『サマー・ドリーミン』の【MORNING FLIGHT】ではなく『MY HIT & RUN』のアンコール曲となった【MORNING FLIGHT II】の方なのです。ちゃんちゃん。

  01. SUMMER DREAMIN'
  02. MORNING FLIGHT
  03. SEA EXPRESS
  04. OCEAN SIDE
  05. SUPER WAVE
  06. ALL THROUGH THE NIGHT
  07. FANCY WALKIN'
  08. SUNSHINE STREET
  09. HAVE A NICE DAY
  10. A LETTER FROM SEPTEMBER
  11. SUMMER DREAMIN' II

(ビクター/JVC 1985年発売/VDJ-1016)

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e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ) / ヴァイアティカム5

VIATICUM-1 『VIATICUM』(以下『ヴァイアティカム』)というアルバムは暗い。そして重い。
 いささか哲学的な思索的な感じが,これまたキース・ジャレットを想起させてもくれる。

 現代最高のピアノ・トリオとして『SEVEN DAYS OF FALLING』で“天下を取った”「e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)」のモチベーションは,更なる世界での高みにではなく,再び自分たち自身の音楽性へと向けられている。
 「e.s.t.」を聴いていてクラシック的な影響を大いに感じてしまったのが『ヴァイアティカム』であった。静寂と調和が完璧で美しいのだ。

 そう。「e.s.t.」が世界的なジャズ・バンドと認められたがゆえに,過去を見つめ,現在を見つめ,未来を見つめ,これから歩むべき道を模索した作業に思えてならない。
 そうして描かれた「深遠な音世界」が『ヴァイアティカム』に見事に凝縮されているように思う。

 正直に語ると『ヴァイアティカム』の最初の印象は薄かった。これぞ北欧ジャズ的な,陰があって色彩感も温度感も低い曲が並んでいる。管理人が次の「e.s.t.」に期待する,ガツンと来るJAMっぽさが希薄であった。
 でも『ヴァイアティカム』がつまらなかったのは,最初に聴いた数回だけだった。『ヴァイアティカム』を聴き込むにつれ,どんどんどんどん曲が姿を変えてくる。

 例えば,ピアノが前に出てきた瞬間のベースドラムの絡み方は,ポップスやロックやクラシックの様々なアプローチが垣間見えてくる。
 ピアノベースを歪ませ,そこにコーラスをかけたりエフェクトを多用するバンドであるが,実は「e.s.t.」の“電化”の真髄とはさりげないリバーブにあるように思う。
 必殺リバーブをピアノ・トリオのフォーマットにこだわり,実験性を前面に押し出すことはなく必要最低限の効果で使っている。『ヴァイアティカム』はそんな音響系の細部の音造りが半端ない。音響の「プロ集団」仕様に仕上がっている。

 その一方で「e.s.t.」のポリシーとは,アドリブにではなくアレンジにある,と何かの雑誌で読んだ記憶があるのだが,意外や意外,一聴して印象に残り難いが,エスビョルン・スヴェンソンは感性を研ぎ澄ました鋭いアドリブを要所要所に織り込んでいる。

 どんなにポップでロックでクラシックして聴かせようとも,エスビョルン・スヴェンソンアドリブは,紛れもなくジャズの“まんま”でうれしくなる。
 エスビョルン・スヴェンソンアドリブこそが,暗く重い『ヴァイアティカム』の中の“希望の光”なのである。

VIATICUM-2 『ヴァイアティカム』におけるエスビョルン・スヴェンソンアドリブを聴いていると,アドリブがすっと心の内に入り込んできては,ここではないどこかに連れ去られるような気分がする。
 具体的などこかの場所でもなく過去でも未来でもない。2次元,3次元ではなく異次元な見知らぬ場所のような気がしている。

 そんな『ヴァイアティカム』が導いた場所の答えが分かったのは,次作『TUESDAY WONDERLAND』を聴いた後のことである。
 『TUESDAY WONDERLAND』で「e.s.t.」は,ジャズ・ピアノからの,そしてピアノ・トリオからの決別を宣言している。

 そう。超絶技巧を抑え,余計な抑揚を抑え,楽曲の調和とアルバム全体の調和を目指した『ヴァイアティカム』は「e.s.t.」という最高峰のピアノ・トリオジャズの世界に存在していたことの記録であり,ジャズの世界に最後に残した「爪痕」である。

 エスビョルン・スヴェンソンの亡き今『ヴァイアティカム』の「爪痕」が『TUESDAY WONDERLAND』『LIVE IN HAMBURG』『LEUCOCYTE』『301』以上に“疼いている”。

  01. Tide Of Trepidation
  02. Eighty-eight Days In My Veins
  03. The Well-wisher
  04. The Unstable Table & The Infamous Fable
  05. Viaticum
  06. In The Tail Of Her Eye
  07. Letter From The Leviathan
  08. A Picture Of Doris Travelling With Boris
  09. What Though The Way May Be Long

(ソニー/SUPER STUDIO GUL 2005年発売/SICP-764)
(ライナーノーツ/児山紀芳)

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ヒューマン・ソウル / ラブ・ベルズ4

LOVE BELLS-1 「ナニワ・エキスプレス」の解散後,ベーシスト清水興ドラマー東原力哉は行動を共にする。
 解散後すぐに「ナニワ・エキスプレス」の後継バンド→「ソウル・エキスプレス」を結成する。ズバリ,歌ものバンドである。

 この流れ,誰かと似ていない? 管理人にはカシオペア脱退後,ベーシスト櫻井哲夫ドラマー神保彰が結成した「シャンバラ」をイメージしてしまう。こちらもズバリ,歌ものバンドなのである。

 …ということで,人気フュージョン・バンドのベーシストドラマーが歌ものをやるという共通項で「ソウル・エキスプレス」と「シャンバラ」に注目し,比較していたのだが…。
 この両グループの活動は離陸間もなく頓挫してしまった。

 櫻井哲夫神保彰の「シャンバラ」の後継バンドは「ジンサク」というフュージョン・ユニットへと流れたが,清水興東原力哉の「ソウル・エキスプレス」の後継バンドが「ヒューマン・ソウル」。
 まさかの歌もの継続なのだが「ヒューマン・ソウル」に東原力哉は不参加。「ヒューマン・ソウル」は清水興のワンマン・バンドとして始動する。

 櫻井哲夫神保彰東原力哉が飽きてしまった?歌ものを継続させた清水興の大選択。
 大方の予想は失敗するとお思いでしょうが個人的には悪くはない。好みかと聞かれれば好みとは言わないが,これはこれでフュージョン名盤に肩を並べていると思う。

 『LOVE BELLS』(以下『ラブ・ベルズ』)が実に上質である。ジェイ&シルキーをヴォーカルに迎えて,甘いファンキー?の百花繚乱である。往年のモータウン・サウンドに似ていると思う。
 日本人がやるソウルとしては最高レベル,という音楽業界の評判にも頷ける。

LOVE BELLS-2 『ラブ・ベルズ』でのお洒落なツイン・ヴォーカルが,ぶつかり合ってハーモニーを生み出し,息を揃えてゴスペル系のコーラスを付けていく。
 「ヒューマン・ソウル」の“売り”である清水興の甘いファンキーグルーヴがブラック・ソウル・モータウン。

 ソウルであろうとフュージョンであろうと音楽はリズムなんだなぁ。リズムがクリエイトする音楽はインストでも歌ものでも面白いんだなぁ。

 櫻井哲夫さん,神保彰さん,東原力哉さん,清水興の音楽眼を侮ってはなりませんよ〜。誰も侮ってはいませんけど〜。

  01. THE CHRISTMAS SHUFFLE
  02. JEALOUS GUY
  03. LUV BELLS
  04. ROSE
  05. BABY, IT'S COLD OUTSIDE
  06. SPECIAL CLIMB

(フォーライフ/FOR LIFE 1993年発売/FLCF-25229)

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e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ) / セヴン・デイズ・オブ・フォーリング5

SEVEN DAYS OF FALLING-1 『FROM GAGARIN’S POINT OF VIEW』→『GOOD MORNING SUSIE SOHO』→『STRANGE PLACE FOR SNOW』の「怒涛の三部作」で“世界を獲った”「e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)」。

 しかし「怒涛の三部作」は,今振り返ると『SEVEN DAYS OF FALLING』(以下『セヴン・デイズ・オブ・フォーリング』)で幕開けする「e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)第二章」の序章にすぎなかった。

 “最後にして最高の”ジャズ・アルバムの『FROM GAGARIN’S POINT OF VIEW』→「ロックするピアノ・トリオ」革命の『GOOD MORNING SUSIE SOHO』→時代の最先端を行く非ジャズ・ピアノの『STRANGE PLACE FOR SNOW』。
 それら「怒涛の三部作」で築き上げた1枚1枚の特長を全ての面で包含し,凌駕している。まさか『セヴン・デイズ・オブ・フォーリング』のようなアルバムが誕生するとは思ってもいなかった。

 そう。『セヴン・デイズ・オブ・フォーリング』における「e.s.t.」UPDATEの要因とは,トリオの中で一人突出していたエスビョルン・スヴェンソンピアノに,ベースダン・ベルグルンドドラムマグヌス・オストラムが追いつき覚醒した,3人が3人とも主役を張れる,バランスの取れたトリオ・ミュージック
 言ってみれば「e.s.t.」がSMAPのようなキャラクターを発揮し始めた新次元のグループ・サウンドへと変化したと思う。

 ただし,多分,事実ではない。ベースダン・ベルグルンドドラムマグヌス・オストラムの素晴らしさは『E.S.T. LIVE』を聴き直せばすぐに分かる。
 単純に「キース・ジャレット命」の管理人がエスビョルン・スヴェンソンだけを偏重してきたにすぎない。

 ダン・ベルグルンドのディストーションをかけたウッドベースはノイジーなロック・ギターのような演奏である。そのくせアルコが抜群に上手で正確無比な音取りは驚異のジャズ・ベースそのものである。
 マグヌス・オストラムドラムは,繊細なジャズであり大胆なテクノでもある。非常にドライで硬いビートを生み出している。

SEVEN DAYS OF FALLING-2 そう。「e.s.t.」の本当の魅力とは「最先端のリズム処理」にある。ベースドラムの演奏の幅の広さと連動性が素晴らしい。
 そのエキサイティングなリズム隊の上に,エスビョルン・スヴェンソンの「詩的でミニマルでアンビエントな」ピアノを重ねるのが「e.s.t.」のアイデンティティなのである。

 『セヴン・デイズ・オブ・フォーリング』を聴けば聴くほど「e.s.t.」のメンバーはこの3人でなければならないと強く思うようになった。
 『セヴン・デイズ・オブ・フォーリング』がきっかけとなり,自分の中の「e.s.t.」への印象が変化したと思う。エスビョルン・スヴェンソンの斬新なピアノを聴くという態度から「e.s.t.」というピアノ・トリオと向き合うようになった。

 ズバリ,管理にとって『セヴン・デイズ・オブ・フォーリング』とは「e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)」の“ピアノ・トリオ”胎動作なのである。

  01. Ballad For The Unborn
  02. Seven Days Of Falling
  03. Mingle In The Mincing-Machine
  04. Evening In Atlantis
  05. Did They Ever Tell Consteau?
  06. Believe Beleft Below
  07. Elevation Of Love
  08. In My Garage
  09. Why She Couldn't Come?
  10. O.D.R.I.P./Love Is Real

(ソニー/SUPER STUDIO GUL 2003年発売/SICP-436)
(ライナーノーツ/渡辺亨)

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