アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

FUSION

国府 弘子 / ダイアリー5

DIARY-1 『DIARY』(以下『ダイアリー』)は国府弘子の7ヶ月間のロサンゼルス生活からの帰還報告。
 『ダイアリー』の音楽日記から聴こえてくるのは国府弘子の充実ぶり! 国府弘子が心温まるメロディー・ラインでガンガン押してくる!

 最初に耳が行くのは有名曲4曲のカヴァーであろう。
 国府弘子パトリース・ラッシェン杏里の純POP。ビートルズの手を離れた国府弘子の考える「ザ・ビートルズ」のホーン隊を引き連れたドライブとピアノ・トリオEL&Pの大噴火カヴァー上原ひろみプログレ・パンク・フュージョンに負けない“跳ね具合”にニッコリである。

 その後,このニッコリは国府弘子オリジナル5曲に完全移行する。オリジナルメロディー・ラインがとにかく最高。
 【ゴーイング・ゴーイング・オン】での“COOL”な「国府弘子は決める時は決める」カッコ良さ。心がかき乱された後に落ち着く,一晩中聴いていたい【サンセット・ビーチ】の哀愁バラード。ドラマティックなフルートを“プッシュ”するラテン・ピアノの【アイ・ドゥ・ホワット・アイ・ウォント】。キース・ジャレットケルン・コンサート』ばりの【アプレ・ラムール(ミッシング・ユー)】の甘くロマンティックソロ・ピアノ。【シティ・オブ・エンジェルス】での“せつない系”スムーズ・ジャズ

DIARY-2 『ダイアリー』を実際に手に取るまでは,どうやらロサンゼルス,なにやらアメリカの香りいっぱいなアルバムだろうと予想した。
 しかし,本当の『ダイアリー』は「日本大好き」国府弘子の『ダイアリー』であった。

 国府弘子がロサンゼルスに行って外から自分を見つめ直した?美メロに毎回心を射抜かれてしまう。何度聴いても感動する。ますます感動が深まっていく。
 特に八尋洋一ベース村石雅行ドラムとのコンビネーションが完璧すぎてゾクゾクする。

 あ・れ・れ・っ。セラビーってこんなにも国府弘子が好きだったっけ? もはや国府弘子なしでは生きていけない感じ?
 セラビーは『ダイアリー』以降の国府弘子を一人のクラスメートではなく一人の女性としてハッキリ意識するようになりました。← なんでやねん。

  01. GOING, GOING ON
  02. REMIND ME
  03. DRIVE MY CAR
  04. LUCY IN THE SKY WITH DIAMONDS
  05. TARKUS:ERUPTION〜STONES OF YEARS
  06. SUNSET BEACH
  07. I DO WHAT I WANT
  08. APRES L'AMOUR
  09. CITY OF ANGELS

(ビクター/JVC 1998年発売/VICJ-60210)
(ライナーノーツ/国府弘子)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

デューク・ピアソン・クインテット / ハッシュ!5

HUSH!-1 デューク・ピアソンの“幻の名盤”というか“幻のレーベル”「JAZZ LINE」の1枚が『HUSH!』(以下『ハッシュ!』)。

 デューク・ピアソンの才能に目を留めたのはブルーノートの「総裁」アルフレッド・ライオンだけではなかった。パシフィック・ジャズ出身のフレッド・ノースワーシーなる人物である。
 そんなフレッド・ノースワーシーが設立したのが「JAZZ TIME」レーベルであり,後の「JAZZ LINE」レーベルであるが,すぐに倒産してしまった。倒産の理由はフレッド・ノースワーシーの好みのジャズメンがマニアックすぎたから,と言われている。

 そんな玄人好みの「JAZZ TIME」が3枚+「JAZZ LINE」が2枚の合計5枚の貴重なレコーディング・メンバーにデューク・ピアソンが含まれている。
 少量生産の完全なるコレクター・アイテムである。レア品なのである。内容が良くても会社がなくなったのだから陽の目を見ない。だから“幻の名盤”なのである。

 さて,こんな書き出しで紹介した『ハッシュ!』=“幻の名盤”説であるが,管理人は『ハッシュ!』=“幻の名盤”説にはもう1つの意味があると思っている。
 それはデューク・ピアソン名盤群の中で『ハッシュ!』だけが,ツイン・トランペットによる「異色の編成」で制作されている事実。

 そう。デューク・ピアソンのファンが『ハッシュ!』について“幻の名盤”と語る時,それは「JAZZ LINE」だからではなく“管を鳴らす”デューク・ピアソンが手掛けた,唯一のツイン・トランペット編成のことを指すのである。

HUSH!-2 『ハッシュ!』のメンバーは,ピアノデューク・ピアソンベースボブ・クランショウドラムウォルター・パーキンスによるピアノ・トリオに,トランペットドナルド・バードジョニー・コールズ

 ドナルド・バードジョニー・コールズのスタイルが近いせいなのか,ツイン・トランペットならではのホーン・アンサンブルが美味い。同じ音域のトランペットの2台のズレが旨い。
 この辺のアレンジメントがデューク・ピアソンの“らしさ”である。『ハッシュ!』の中に充満している,後年のプロデューサー的な秀逸なバランス感覚にアルフレッド・ライオンフレッド・ノースワーシーも惹かれてしまったのだろう。

 渋い演奏である。それだけではなく温かい演奏である。素朴な旋律のジャズ・ピアノに乗ったツイン・トランペットのライン取りが『ハッシュ!』を,デューク・ピアソン・ファンが選んだ“幻の名盤”へと押し上げた要因である。

  01. Hush!
  02. Child's Play
  03. Angel Eyes
  04. Smoothie
  05. Sudel
  06. Friday's Child
  07. Out Of This World
  08. Hush! (alternate take)
  09. Child's Play (alternate take)
  10. Sudel (alternate take)
  11. Groovin' For Nat' (Unissued take)

(ジャズライン/JAZZLINE 1962年発売/MZCB-1183)
(☆HQCD仕様)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/後藤誠,馬場雅之,原田和典)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

矢野 顕子×上原 ひろみ / ラーメンな女たち -LIVE IN TOKYO-5

ラーメンな女たち -LIVE IN TOKYO--1 『GET TOGETHER −LIVE IN TOKYO−』は「矢野顕子 & 上原ひろみ」による対等なピアノデュオで間違いないが『ラーメンな女たち −LIVE IN TOKYO−』は「矢野顕子 WITH 上原ひろみ」なピアノデュオである。

 『ラーメンな女たち −LIVE IN TOKYO−』は,力関係として矢野顕子が思いっきり前に出ている。上原ひろみ矢野顕子ピアノを弾かない時の「伴奏者」まで勤め上げている。
 そう。『ラーメンな女たち −LIVE IN TOKYO−』の真実とは,上原ひろみから矢野顕子へ捧げたリスペクトなのである。

 これを上原ひろみの視点から語れば,矢野顕子とのピアノデュオ作『ラーメンな女たち −LIVE IN TOKYO−』はチック・コリアとのピアノデュオ作『DUET』の再来である。

ラーメンな女たち -LIVE IN TOKYO--2 『DUET』での上原ひろみは「チック・コリア大好き」が出まくっていた。上原ひろみチック・コリアに“しがみついて”2人で3台分の“饒舌な”同じ個性のピアノを聴かせてくれた。
 今回の『ラーメンな女たち −LIVE IN TOKYO−』での上原ひろみも「矢野顕子大好き」が出まくっている。今回のは矢野顕子を自分の“懐に抱え込んで”矢野顕子上原ひろみっぽいピアノを弾かせている。

 結果『ラーメンな女たち −LIVE IN TOKYO−』では,2人で4台分のピアノの音が記録されている。その上に矢野顕子の“あの”ヴォーカルが乗っかっている。
 「矢野顕子 WITH 上原ひろみ」の真実とは,上原ひろみが引っ込んだわけでも,矢野顕子が前に出たわけでもない。
 上原ひろみ自身が前に出るために,意図的に矢野顕子を「前に出した」結果なのである。

ラーメンな女たち -LIVE IN TOKYO--3 事実『ラーメンな女たち −LIVE IN TOKYO−』は全曲,上原ひろみ・アレンジング。本気モードの上原ひろみのアレンジが素晴らしい。
 特に前作『GET TOGETHER −LIVE IN TOKYO−』にも収録されていた【ラーメンたべたい】のニュー・バージョンは,面白いでも興味深いでもなく,ただただカッコ良い! 塩・醤油・トンコツ・魚介の全てを食べ尽くした上での創作ラーメンの名店の味がする!?

 ふらっと街を歩いていて,気になったお店に入ったらドンピシャ・ストライクのラーメン食べ歩きの妙! 最初はぶっ飛んだ味がガツンと来て,今まで食べたことのない味だと思っていたのに,食が進むにつれ,なんだか懐かしい味に思えてくる! 最後は「王道」の味へと戻って来る! 「二段仕掛け」のジャズ・ピアノ

 「二段仕掛け」の先発はいつだって矢野顕子である。矢野顕子が未知の音を探しにロケットで発車するが「二段エンジン」役の上原ひろみがバックで巧みに呼び寄せる。どこまで飛んでもちゃんと綺麗に着地する。矢野顕子流ではなく上原ひろみ印で着地を決めていく。

ラーメンな女たち -LIVE IN TOKYO--4 “天才”上原ひろみの「無茶振り」に最高の答えを返す“元祖・天才”の矢野顕子
 矢野顕子上原ひろみの『ラーメンな女たち』の絆は深い。同じラーメン店に入って,別々のラーメンを注文しようとも絆は深い。
 『ラーメンな女たち −LIVE IN TOKYO−』は,そんな画面が見える感じのライブ盤であった。

 管理人も鈴木商店と一風堂のスープを割ったものに一蘭のバリカタ麺をぶっかけてニンニク多めで食べますかっ。智子レストランで!

  CD
  01. 東京は夜の7時
  02. おちゃらかプリンツ (おちゃらかほい〜フットプリンツ)
  03. 真赤なサンシャイン (Ain't No Sunshine〜真赤な太陽)
  04. 飛ばしていくよ
  05. Dreamer
  06. こいのうた
  07. ホームタウン・ブギウギ (東京ブギウギ〜New York, New York)
  08. ラーメンたべたい

  DVD
  01. 飛ばしていくよ (ライヴ・クリップ)
  02. こいのうた (ライヴ・クリップ)

(テラーク/TELARC 2017年発売/UCCO-8011)
★【初回限定盤】 SHM−CD+DVD
★スリーヴ・ケース仕様

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

デューク・ピアソン / テンダー・フィーリンズ5

TENDER FEELIN'S-1 『PROFILE』でのデューク・ピアソンが,クラシカルなジャズ・ピアニストであれば『TENDER FEELIN’S』(以下『テンダー・フィーリンズ』)でのデューク・ピアソンは,モダンジャズ・ピアニストである。

 『テンダー・フィーリンズ』を聴いているとデューク・ピアソンが「ピアノ・トリオの枠」を飛び越えてしまったように感じてしまう。ピアノ1台なのに“最先端のモダン・ジャズ”を見事に表現できている。
 それくらいに色彩豊かで,ピアノ以外の楽器がプレイしているような錯覚を感じる“豊かな音場”のピアノ・トリオが素晴らしい。

 デューク・ピアソン名盤群における『テンダー・フィーリンズ』の価値とは,純粋に「ピアノ・トリオ向きのピアニスト」としてのデューク・ピアソンを確認することにある。本当にそう思う。

 しかし『テンダー・フィーリンズ』を聴けば聴くほど,デューク・ピアソンのイメージが“ジャズ・ピアニスト”から離れていく。
 そんな非ピアノ・トリオの個性が,リリカルで小品な『PROFILE』と性格を異にする,と語られる所以であろう。

  きっとデューク・ピアソンには,頭の中にビッグ・バンドの音が聴こえているのだろう。『テンダー・フィーリンズ』の中のデューク・ピアソンは,手元にはピアノ1台しかないはずのに,あたかもビッグ・バンドピアニストの席に座ったかのように,忠実にピアノを演奏している。

 そして,ここが“ジャズ・ピアニストデューク・ピアソンの凄さなのだが,デューク・ピアソンビッグ・バンドの構成楽器のような1台のピアノを聴いていると(現実にはピアノ以外の音は無音なのだが)デューク・ピアソンだけに聴こえているはずのビッグ・バンド・サウンドが,聴き手にもイメージとして伝わってくるのだった。

 そう。デューク・ピアソンの頭の中だけで流れている音楽が,デューク・ピアソンピアノのプレイからこぼれ出している。超ハイセンスなデューク・ピアソンなのだから,こぼれ出す音を拾っていくだけで管理人は大満足。
 デューク・ピアソンにとってピアノという楽器は,お菓子作りをする時の「粉ふるい」のようなものだと管理人は思う。

TENDER FEELIN'S-2 モード・ジャズフリー・ジャズのエッセンスがありつつの,適度にブルージーなフィーリングにクラクラきてしまう。
 デューク・ピアソンは1959年の時点ですでにここまで考えていたんだ。時代にマッチングしつつも一歩先んじたお洒落なジャズ・ピアノ…。

 その類まれなる「総合力」で,徐々にピアニストというよりも,作曲家,編曲家,そしてプロデューサーとして大活躍することになるのだが,デューク・ピアソンの真の凄さは“豊かな音場”のピアノ・トリオにこそ表われると思っている。

 バラエティに富んだ全7曲の『テンダー・フィーリンズ』の極めて高い完成度。オーソドックスなのに最高にサイケなタイム感。
 『テンダー・フィーリンズ』を聴いた夜は,もう何もする気がなくなりその場から動けなくなってしまう。「骨抜きにされる」とはこのような状態を指すのであろう。

  01. BLUEBIRD OF HAPPINESS
  02. I'M A FOOL TO WANT YOU
  03. I LOVE YOU
  04. WHEN SUNNY GETS BLUE
  05. THE GOLDEN STRIKER
  06. ON GREEN DOLPHIN STREET
  07. 3 A.M.

(ブルーノート/BLUE NOTE 1959年発売/TOCJ-7027)
(ライナーノーツ/レナード・フェザー,原田和典)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

国府 弘子 / ピュア・ハート4

PURE HEART-1 国府弘子自らが公言する“初期の代表作”『PURE HEART』(以下『ピュア・ハート』)を聴いたのは“最高傑作”『PIANO LETTER』を聴いた後のことである。

 『PIANO LETTER』の2大名曲【さくら便り】と【忘れないよ】に,いたく心を打たれて,これは過去作も聴かなければと思い直して,スルーしていた『ピュア・ハート』を購入した。
 だからなのだろう。管理人にとっての『ピュア・ハート』とは,一般的な【スムーズ・ストラッティン】ではなく【ハッピエスト・ユー】のことである。
 【さくら便り】と【忘れないよ】の原型を探していたのだから【ハッピエスト・ユー】にハマッタのも当然の結果である。

 そう。国府弘子というジャズ・ピアニストは,日本人の心の琴線をえぐる曲を書く。しかも陰りがない明るい演奏なのに心に沁みる。
 国府弘子は,身体のどこかに傷を抱えているのかもしれない。パラリンピックのメダリストのような感じをイメージしてしまう。自分の傷など忘れて,ただただジャズ・ピアノに没頭することで,聴く者に勇気を与えてくれる。

 国府弘子のファンだったとしても,誰も国府弘子の苦労話など聞きたいとは思わない。事実『ピュア・ハート』の時点では,まだ本来の国府弘子は出せていない。「元気印」とは「ビタミン」というキーワードで,まだ自分の傷を覆い隠している時期である。

 『ピュア・ハート』のテーマとは「シングル・ガール」への応援歌だそうだ。これって,外で頑張っている国府弘子が,家に帰っては落ち込んでいる,もう1人の国府弘子を励ますための応援歌?
 過去の頑張っていた時の自分の姿に,今の自分が励まされることってしょっちゅうある。『ピュア・ハート』で頑張っていた過去の自分が愛おしく思い,ナニクソ,負けるか,もっと頑張ろう,と思うことがしょっちゅうある。

 最近まで闘病生活を経験していた国府弘子さんへのメッセージ…。
 国府弘子さん,病床で『ピュア・ハート』を聴き直されましたか? 【スムーズ・ストラッティン】のホーン隊のアンサンブルには元気が出ますよね? 【ハッピエスト・ユー】を贈った友人は,今でもきっと幸せな結婚生活を送っておられるのでしょうね?

PURE HEART-2 管理人の結論。『ピュア・ハート批評

 悲しくて泣く。うれしくて泣く。そんなの頑張り具合が『ピュア・ハート』の「ビタミン」な音に出ていると思う。顔で笑って心で泣いている【ハッピエスト・ユー】が,結婚式当日を迎えるまでに乗り越えてきた2人の愛情が音に出ていると思う。

 そ・し・て・『ピュア・ハート』での「独女」している国府弘子さんの黄色・緑色・青色のクレイジー柄のお召し物。巷の評判はよろしくないようですがアメカジ命の管理人は大好きですよっ。

  01. SMOOTH STRUTTIN'
  02. LUCK IN THE RAIN
  03. ANNABELLA
  04. VITAMINA
  05. WEEKEND
  06. CARRY ME WITH THE WIND
  07. BAREFOOT STEPPIN'
  08. IT'S COOL
  09. ONCE AND FOREVER
  10. MRS. ROBINSON
  11. HAPPIEST YOU (FOR YOUR WEDDING)

(ビクター/JVC 1992年発売/VICJ-127)
(ライナーノーツ/国府弘子)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

デューク・ピアソン / プロフィール5

PROFILE-1 デューク・ピアソンが大好きである。何が好きって,デューク・ピアソンのハイセンスが大好きである。
 作曲家とかアレンジャーとかプロデューサーとか,デューク・ピアソンのハイセンスな活動は幅広いが,デューク・ピアソンの才能をストレートに感じるのは“ジャズ・ピアニスト”としてのデューク・ピアソンが一番である。

 そんな“ジャズ・ピアニスト”としてのデューク・ピアソンプロフィールブルーノートからのデビュー盤『PROFILE』(以下『プロフィール』)にある。

 ドナルド・バードの歴史的なファンキー・ジャズを先頭に立って作り上げてきたデューク・ピアソンであるが,ソロ・アルバム『プロフィール』のページをめくると“リリカルなピアニスト”としての素顔が見え隠れする。

 そう。“ジャズ・ピアニストデューク・ピアソンの魅力とは,見事なバランス感覚というか「音楽」しているフィーリングだと思う。ジャズ・ピアノを聴いている感覚があるし,この演奏好き,という感覚もある。たまらなく満足感がある。

 こんな「好き」の感情を文章で伝えるのは難しい。この全ては管理人の個人的なイメージの優劣に負うところが大きいからだ。
 デューク・ピアソンと前後して活躍した“ジャズ・ピアニスト”たち。例えば,ビル・エヴァンスマッコイ・タイナーハービー・ハンコックチック・コリアキース・ジャレットについて語るのは難しくない。
 この5人は5人とも“ジャズ・ピアニスト”としてのデューク・ピアソンを軽〜く凌駕している。しか〜し,前述の5人にデューク・ピアソンのような魅力を感じるかと問われれば,答えは「NO」である。

 デューク・ピアソンのようにジャズ・ピアノのトーンでピアノを弾ける人は数少ない。甘くストレートでエレガントなのに,ツボを押さえた黒人らしいリズミカルなタッチ。
 デューク・ピアソンの弾くピアノの音が眩しい。ピアノが光輝いている。ピアノの甘さが空間に広がっていく。

PROFILE-2 デューク・ピアソンの弾くピアノのトーンとニュアンスは他の何物にも代え難い。ビル・エヴァンスキース・ジャレットには絶対出せない,意外性がデューク・ピアソンにはあって,時にハッとさせられてしまう。

 自分がビル・エヴァンスキース・ジャレットに求めていたものは,実はデューク・ピアソンが全部持ち合わせていたと思える瞬間が1曲に1度は襲ってくるのだった。

 『プロフィール』のデューク・ピアソンが,とにかく軽快そのもの。軽く軽く,肩の力が抜けたリリカルな響きがハートを射抜いてくる。デューク・ピアソンが粋だよね〜。いなせだね〜。江戸っ子だよね〜。

 管理人はデューク・ピアソン好きだというジャズ・ファンの耳を全面的に信用しています。

  01. LIKE SOMEONE IN LOVE
  02. BLACK COFFEE
  03. TABOO
  04. I'M GLAD THERE IS YOU
  05. GATE CITY BLUES
  06. TWO MILE RUN
  07. WITCHCRAFT

(ブルーノート/BLUE NOTE 1959年発売/TOCJ-7065)
(ライナーノーツ/アイラ・ギトラー,原田和典)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

国府 弘子 / ブリッジ4

BRIDGE-1 管理人にとって国府弘子と来れば,どうしても天野清継との『AZURE』であり「天国プロジェクト」での『HEAVEN』『HEAVEN AND BEYOND…』である。この印象が如何せん強烈すぎる。

 まぁ,当時の管理人は「天野清継国府弘子の名コンビ」を「パット・メセニーライル・メイズの日本版」だと本気で思っていた。
 だから国府弘子アメリカデビューすると聞いて本当にワクワクしたことを覚えている。

 そんな国府弘子にドハマリしていた時期に届けられたアメリカデビュー盤の『BRIDGE』(以下『ブリッジ』)に,肩透かしを喰わされた。
 う〜む。天野清継から離れた国府弘子がパッとしない。そう言う意味では国府弘子パット・メセニーから離れたらパットしない?ライル・メイズっぽいという点は当たっている?

 そう。『ブリッジ』での国府弘子は,管理人が恋したハーモニストではなく,フロントに立ってバンド全体をリードするバンド・リーダー。要はアンサンブルで聴かせるピアノフュージョン
 軽快なビートと心温まるメロディー・ラインが,日本とアメリカのピアノフュージョン・ファンを,そして国府弘子とリスナーの心と心を結ぶ架け橋=『ブリッジ』なのだろう。

 国府弘子アメリカで売り出す“名刺代わり”の『ブリッジ』。国府弘子=日本のジャズ・ピアニストを印象付けるは【竹田の子守歌】。
 国府弘子トリオを組むのはベースエイブ・ラボリエルドラムアレックス・アクーニャによる大物アメリカン・リズム隊。日本の心を表現するのは難しいコンビだと思うのだが,これが実に情緒ある奥深い演奏で心を揺さぶってくれる。

BRIDGE-2 管理人の結論。『ブリッジ批評

 『ブリッジ』は国府弘子が一番アメリカに,一番スムーズジャズに寄ったアルバムである。
 基本キャッチーで“売れ線”を狙っているのだが,そこは“やっぱり”国府弘子である。普通では終わらない。国府弘子のファンからすると『ブリッジ』は,国府弘子で一番マニアックなアレンジが施されていて“異色の”アルバムである。

 個人的には『ブリッジ』がヒットしなくてかえって良かった。国府弘子スムーズジャズのカテゴリーに収まるピアニストではない。そのことをビクターも認識できて良かったと思っている。

  01. Catalina Island
  02. Rudy's Dream
  03. Bridge Over the Toubled Water
  04. Lullaby of Takeda
  05. Essence
  06. Lettin' Go
  07. Keep Hope Alive
  08. Baked Potato Man
  09. Innocence of Spring
  10. Our Story
  11. Peranzzetta
  12. Serenata

(ビクター/JVC 1997年発売/VICJ-60071)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

デューク・ジョーダン / フライト・トゥ・ジョーダン4

FLIGHT TO JORDAN-1 デューク・エリントンデューク・ジョーダンデューク・ピアソン。管理人は親しみを込めて,この3人のデュークを“デューク3兄弟”と呼んでいる。
 まっ,いつも友人たちには「何それ〜」と一蹴されておしまいですが…。

 でもね。読者の皆さん。このデューク・エリントンデューク・ジョーダンデューク・ピアソンって“3兄弟”と呼ばれるにふさわしいジャズメンなんですよっ。
 3人揃ってジャズ・ピアニスト。3人揃って名コンポーザー。長男がデューク・エリントン,次男がデューク・ジョーダン,三男がデューク・ピアソンなんです。
 特にジャズ・ピアニストなのに,ピアノの印象以上に管楽器のアンサンブルが印象に残る部分が“デューク3兄弟”の血統なんです。

 そんな“デューク3兄弟”の次男坊=デューク・ジョーダンの“メロディー・メイカー”ぶりが遺憾なく発揮された佳作が『FLIGHT TO JORDAN』(以下『フライト・トゥ・ジョーダン』)である。

 『フライト・トゥ・ジョーダン』におけるデューク・ジョーダンピアノには,朴訥とした翳りのある語り口から発せられるブルージーな歌心と,端正で耽美的で泰然自若としたフレージングにデューク・ジョーダンの控え目な“ジャズメン魂”が込められている。
 
 しかし『フライト・トゥ・ジョーダン』におけるデューク・ジョーダンピアノは“管を鳴らす”ジャズ・ピアノ
 決して美メロというわけではないが,ファンキーで記憶に残るメロディ・ラインをピアノでリードし,ディジー・リーストランペットスタンリー・タレンタインテナーサックスに代弁させている。

 口下手なデューク・ジョーダンが自分で『フライト・トゥ・ジョーダン』を語るよりも,口上なフロントマンに『フライト・トゥ・ジョーダン』に込められた思いの丈を語ってもらう方が何倍も上手くいく。

FLIGHT TO JORDAN-2 管理人の結論。『フライト・トゥ・ジョーダン批評

 “管を鳴らすメロディー・メイカー”デューク・ジョーダンの「叙情性」とディジー・リーススタンリー・タレンタインの「骨太」の組み合わせが産み落とした,枯れたわびさびのジャズ・ピアノが『フライト・トゥ・ジョーダン』。

 日本人好みのマイナー名盤として『フライト・トゥ・ジョーダン』を外せやしないない。

  01. FLIGHT TO JORDAN
  02. STARBRITE
  03. SQUAWKIN'
  04. DEACON JOE
  05. SPLIT QUICK
  06. SI-JOYA
  07. DIAMOND STUD
  08. I SHOULD CARE

(ブルーノート/BLUE NOTE 1959年発売/TOCJ-7038)
(ライナーノーツ/レナード・フェザー,原田和典)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

スイングジャーナル主催 ジャズ・ディスク大賞 1984年度(第18回)

 「スイングジャーナル」誌が,レコード会社各社の自薦ノミネート作品を基にして,国内で該当年度中に発売されたCDLPビデオを対象に同誌委託の「ジャズ・ディスク大賞選考委員」によって選出される,日本ジャズ界に最も貢献した作品に贈られる「ジャズ・ディスク大賞」。

 今回は1984年度(第18回)の発表です。

----------------------------------------------------------------------------

マンハッタン・ジャズ・クインテット★【金賞】.マンハッタン・ジャズ・クインテット
マンハッタン・ジャズ・クインテット


----------------------------------------------------------------------------

スターダスト★【銀賞】.スターダスト
ウイントン・マルサリス


----------------------------------------------------------------------------

シーンズ・イン・ザ・シティ★【最優秀CD賞】.シーンズ・イン・ザ・シティ
ブランフォード・マルサリス


----------------------------------------------------------------------------

Live At Marty's, New York City★【ボーカル賞】.ニューヨーク・マイ・ハート
メル・トーメ&フレンズ


----------------------------------------------------------------------------

MOBO倶楽部★【日本ジャズ賞】.MOBO倶楽部
渡辺香津美


----------------------------------------------------------------------------

マイルス・デイヴィス・オールスターズ Vol.1★【編集企画賞】.ジ・アザー・サイド・オブBLP-1500並びに一連のブルーノート1500番台番号順発売


----------------------------------------------------------------------------

ソウル・ボサ・ノヴァ★【編集企画賞】.マーキュリーV.S.O.P.アルバム並びにクインシー・ジョーンズをはじめとする一連の発掘シリーズ


----------------------------------------------------------------------------

ドリーム★【制作企画賞】.ドリーム
本多俊之


----------------------------------------------------------------------------

FANTASIA★【録音賞】.ファンタジア
ケニー・ドリュー


----------------------------------------------------------------------------

エアリアル・バンダリーズ★【録音賞】.エアリアル・バンダリーズ
 マイケル・ヘッジス


----------------------------------------------------------------------------

 マンハッタン・ジャズ・クインテットデビュー作『MANHATTAN JAZZ QUINTET』が【金賞】受賞。

 『MANHATTAN JAZZ QUINTET』の演奏に不満など毛頭ないのだが,元々マンハッタン・ジャズ・クインテットは「スイングジャーナル」誌とキングレコードの発案によるプロジェクト。
 なのでどうしても【金賞】受賞にうがった見方をしてしまう。癒着とか出来レースとか更なる宣伝&販促とか…。

 トランペットルー・ソロフテナー・サックスジョージ・ヤングベースチャーネット・モフェットドラムスティーヴ・ガッドデヴィッド・マシューズの名アレンジ&ピアノがまとめ上げていく。

 マンハッタン・ジャズ・クインテット。略してMJQモダン・ジャズ・カルテット。略してMJQ
 デヴィッド・マシューズの頭の中にはモダン・ジャズ・カルテットのイメージがよぎったことと思うが,果たして出来上がりは性格の異なるMJQであった。

 モダン・ジャズ・カルテットの活動は長い。マンハッタン・ジャズ・クインテットの活動も長くなった。
 「スイングジャーナル」誌が廃刊となった今,そろそろ大団円を期待したい! デビュー作『MANHATTAN JAZZ QUINTET』のリテイクで!

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

国府 弘子 / ライト・アンド・カラー4

LIGHT AND COLOUR-1 国府弘子の弾くピアノは「ジャズか? フュージョンか?」と問われれば「国府弘子国府弘子。唯一無二の“国府ワールド”」と答えたい。
 それ位に正統派ジャズ・ピアニストの系譜から外れている。突然変異の如く登場してはガラパゴス化で独自路線の成長を続けている。

 ジャズメンたちとの交流も深いし,ストレート・ア・ヘッドな硬派なジャズを志向していることも分かる。
 しかし,どんなにシリアスな譜面であっても国府弘子ピアノを弾けば,一発でエンターテイーナーしてしまう。普段ジャズなんて聞かない,ジャズって難しいと思っている人に受け入れられてしまうのだから,たちが悪いったりゃありゃしない。

 「国府弘子ブラジル」がテーマの『LIGHT AND COLOUR』(以下『ライト・アンド・カラー』)の参加メンバーが凄い!
 アコースティックギターオスカー・カストロネヴィスエレクトリックギターポール・ジャクソンJR.シンセサイザードン・グルーシンエレクトリックピアノジルソン・ペランゼッタベースジャミル・ジョーンズエイブ・ラボリエルドラムテオ・リマアレックス・アクーニャサックスフルートピッコロゲイリー・ハービックパーカッションポーリーニョ・ダコスタヴァーカルイヴァン・リンストランペットジェリー・ヘイ etc
 リオデジャネイロ録音&LA録音にしてブラジルを代表するオールスターセッションである。

 仮に国府弘子が普通のジャズ・ピアニストであったなら,この超豪華メンバーの個性を活かして自分の楽曲を彩付けようとすることだろう。
 しかし『ライト・アンド・カラー』における国府弘子は,ブラジルの大物たちをアーバンジャズの「脇役」として参加させている。

LIGHT AND COLOUR-2 バブル末期の残り香として,本場ブラジルジャズメンが集結しているのに,南米特有の土臭いがないし,情熱的な感じもしない。
 『ライト・アンド・カラー』の雰囲気としては,ブラジルではなくアメリカど真ん中を感じさせる都会的でBGM的な「光と色彩に満ちた」“国府ワールド”の王国が広がっている。

 国府弘子の端正かつリラックスした雰囲気のピアノが『ライト・アンド・カラー』の多彩な楽曲を“春色に染め上げていく”。
 とにかく柔らかで暖かな光線が今の季節に心地良い。春のそよ風にも似た爽やかなサウンドが今の季節に心地良い。唯一無二の“国府ワールド”が心地良い。

  01. MOON ISLAND
  02. PEPINO BEACH
  03. PASSARADA
  04. MY ONLY LOVER
  05. SAMBA DO CAMARAO
  06. TIP-TOP FUNK
  07. THE MOMENT WE SHARE
  08. BLUE LULLABY
  09. BOSSA CALANGO
  10. EL HUMAHUAQUENO
  11. GONE...

(ビクター/JVC 1991年発売/VICJ-61)
(ライナーノーツ/中原仁)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

デューク・エリントン / デューク・エリントン&ジョン・コルトレーン4

DUKE ELLINGTON & JOHN COLTRANE-1 『DUKE ELLINGTON & JOHN COLTRANE』(以下『デューク・エリントン & ジョン・コルトレーン』)。
 ジャズ史に残る,いいや,音楽史に残る“ジャズ・ジャイアント”の2人が自分の仲間を引き連れての大共演だというのに,なんでこうなるの!

 デューク・エリントンが目の前のジョン・コルトレーンを見ずに,デューク・エリントンが頭の中で思い浮かべる“理想の”ジョン・コルトレーンを見ながら演奏している。
 ジョン・コルトレーンが目の前のデューク・エリントンを見ずに,ジョン・コルトレーンが頭の中で思い浮かべる“理想の”デューク・エリントンを見ながら演奏している。
 そう。『デューク・エリントン & ジョン・コルトレーン』の真実とは,同録と言うより別録のアルバムなのである。もっと言えば現実ではなく仮想の録音なのである。

 デューク・エリントンジョン・コルトレーンが,同じ空間にして“すれ違った”最大要因は“嫌いは好きの反対”である。デューク・エリントンジョン・コルトレーンも互いを強烈に意識している。緊張感が伝わってくる。
 しかし互いに“腹の探り合い”で終わっている。思ったことを音楽の言葉で会話できていない。相手からのメッセージが聴こえてこないから,否応なしに自分から発信する。相手を意識しすぎるがゆえに本来の自分さえも見失っている。

 ズバリ,デューク・エリントンピアノにもジョン・コルトレーンサックスにもいつもの“らしさがない”。
 極論を語れば,2人の共演はプラスではなくマイナス。互いに互いの良さを殺してしまっている。なんでこうなるの!アゲイン!

 管理人は思う。デューク・エリントンジョン・コルトレーンも,自身の音楽の特徴としてハーモニーにとことんこだわってきたジャズメンである。
 デューク・エリントンは,自分の楽器はピアノではなくオーケストラ,と語るほど,ビッグバンドの構成楽器の音域の違いにプレイヤーの個性まで考慮して「瞬間の響き」にこだわってきた。そんなデューク・エリントンからすると,音の羅列によってある響きを表現させようとするジョン・コルトレーンの試みは粗雑に感じられたことだろう。
 一方のジョン・コルトレーンからしてみると,デューク・エリントンピアノから発せられる和音の響きや残響は自身の響きを展開する格好の素材であり,音列で埋め尽くしたくてうずうずしていたのではなかろうか?

 “ジャズ・ジャイアント”の2人が2人とも,不完全燃焼のまま『デューク・エリントン & ジョン・コルトレーンセッションが終了したのはなぜだろう?
 管理人はそれこそ「互いへのリスペクト」にあると思う。現実の共演者ではなく仮想の共演者への既成のイメージに固執したまま音を重ね続けた結果である。
 ズバリ,相手の本当の気持ちを汲まず,勝手に歩み寄りすぎた“手探りの音合わせ”の結果である。

DUKE ELLINGTON & JOHN COLTRANE-2 管理人の結論。『デューク・エリントン & ジョン・コルトレーン批評

 2人が2人とも“片思い中の”ジャズである『デューク・エリントン & ジョン・コルトレーン』であるが,これがあのデューク・エリントンなのか? これがあのジョン・コルトレーンなのか? を忘れて普通に聴くと,これはこれでいいアルバムである。
 特に【イン・ア・センチメンタル・ムード】なんかは,数ある【イン・ア・センチメンタル・ムード】の中でも上位に喰い込む名演だと思う。

 『デューク・エリントン & ジョン・コルトレーン』の音の特徴を語るならば,デューク・エリントンの音というより,ジョン・コルトレーンというより,インパルスの音と表現するのが一番当たっているように思う。
 インパルスのコレクターであれば『デューク・エリントン & ジョン・コルトレーン』の音に納得していただけると思う。

  01. IN A SENTIMENTAL MOOD
  02. TAKE THE COLTRANE
  03. BIG NICK
  04. STEVIE
  05. MY LITTLE BROWN BOOK
  06. ANGELICA
  07. THE FEELING OF JAZZ

(インパルス/IMPULSE! 1962年発売/UCCU-6044)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/原田和典)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

櫻井 哲夫 JACOトリビュート・バンド / イッツ・ア・ジャコ・タイム!5

IT'S A JACO TIME!-1 『IT’S A JACO TIME!』(以下『イッツ・ア・ジャコ・タイム!』)を聴いていて,これはジャコ・パストリアスではなく櫻井哲夫の「JACOトリビュート・バンド」の演奏だと何度も確認しなければならなかった。

 そうして自分を言い聞かせないと,本当にジャコ・パストリアスの音源だと思ってしまいそうだったから…。それもジャコ・パストリアスバンドではなくビッグ・バンドでの演奏のようにそうにも聴こえてしまう。いや〜,参った。櫻井さんには参った。
 管理人の2013年最大の衝撃アルバムNO.1が『イッツ・ア・ジャコ・タイム!』だった。何度聴いても櫻井哲夫ベースジャコ・パストリアスベースのように聴こえてしまう。「完コピを超えた完コピ」が「本家を超えてしまった」ように思う。

 正直,櫻井哲夫ジャコ・パストリアスへの傾倒ぶりがこれほどまでだったとは…。
 櫻井哲夫は『イッツ・ア・ジャコ・タイム!』を通して「ジャコ・パストリアスが世界一」を啓蒙しようとしたのではないだろうか? ジャコ・パストリアスの“美味しい部分”を選び抜いてバンド・サウンドにバッチリと仕立て上げてくれている。

 ジャコ・パストリアスジャコパスジャコと「ベース界の革命児」の名前だけは知れ渡っている。しかし,ジャコパスベースの,一体何が「革命」なのかは知られてはいない。

IT'S A JACO TIME!-2 管理の答えは,フレットレスベースなのに,あそこまで芯のあるサウンドで聴かせるところ。聴き方によってはウッドベースのように聴こえるところ。ベースなのにリード楽器役まで担いメロディーまでも高速で奏でてしまうところ。とにかくベースなのに音楽の主導権を握ってしまうところなのだ…。

 ズバリ『イッツ・ア・ジャコ・タイム!』の真髄とは,櫻井哲夫・監修によるジャコ・パストリアスの“躍動するフレットレスベース”であろう。
 「JACOトリビュート・バンド」の施したジャコ・パストリアス曲へのリ・アレンジを細かく聴いていくと,オリジナル通りの展開と,そうではなくメチャメチャ変えている部分との「法則」に気付く。
 概ね変えなかったのはフレットレスベースメロディー・ラインとハーモニー部分。概ね変えたのはフレットレスベースのリズム・ラインとテーマ部分。

 ジャコ・パストリアス“印”の絶対に触れてはならない根幹部分は忠実に再現し,そうではない部分はオリジナルのイメージに合わせてシンプルにしたり,大胆にひねってきたり…。
 テンポやリズムも全体的にアゲアゲ方向シフト。“超絶技巧”な櫻井哲夫だからできた実現できた芸当であろう。

IT'S A JACO TIME!-3 「JACOトリビュート・バンド」のフロントマンは,本多俊之サックスでも,新澤健一郎キーボードでも,菰口雄矢ギターでもなく,櫻井哲夫フレットレスベース
 『イッツ・ア・ジャコ・タイム!』に,櫻井哲夫ベースソロが多いという意味ではない。ベースのフレーズが音楽の主導権を握っている。

 だからこその「JACOトリビュート・バンド」。櫻井哲夫ジャコ・パストリアスの「ミュージシャン・シップ」が宿っている。

PS 「IT'S A JACO TIME!-3」は「HMVオンライン限定」販促用のポストカードです。

  01. INVITATION
  02. LIBERTY CITY
  03. THREE VIEWS OF A SECRET
  04. (USED TO BE A) CHA CHA
  05. PALLADIUM
  06. LAS OLAS
  07. PORTRAIT OF TRACY
  08. CONTINUUM
  09. RIVER PEOPLE
  10. HAVONA

(キングレコード/KING RECORD 2013年発売/KICJ-658)
(ライナーノーツ/松下佳男)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

ジャヴァン / ノヴェーナ4

NOVENA-1 ジャヴァンがどうしてもアルバムにして表現したかった音楽。ジャヴァンがブラジル人にどうしても聴いてもらいたい音楽。それが『NOVENA』(以下『ノヴェーナ』)である。

 「世界で売れてもブラジルで売れなければ意味がない」とでも考えるようになったのだろうか? 『ノヴェーナ』の聴き所は,完全なる土着の小気味良いリズム=フレヴォ,ショッチ,バイオンであり,カラフルなメロディー・ラインのブラジリアン・ポップ。

 『ノヴェーナ』での試みは面白いとは思うが日本人にはちょっとマニアックすぎるかな? そう感じてしまうくらいにメロディーが自然発生的で即興的なフィーリングを醸し出している。
 ブラジルのミュージシャンは本当に演奏が上手であって,ナチュラルな色付はそう簡単には真似できないレベル。その分,くっきりとブラジル色が鮮明で,ブラジル人の基本陽気で,時々繊細で,哀愁のサウダージが浮き出ている。
 『ノヴェーナ』を聴くといつでも「音楽王国=ブラジル」を感じてしまうのだ。

 『ノヴェーナ』でのジャヴァンヴォーカルがしなやかで柔らかに響く。ブラジルっぽくもあるにはあるが,バックで流れるブラジル色に染まるのではなく,どちらかと言えばジャズっぽい雰囲気。
 つまりは楽曲の中でのヴォーカルの自由度がいつもより高く,スキャットっぽい歌い方に耳がゆく。何と表現しようか迷ったが,ここでは「リッチな歌声」だと記しておこう。

 『ノヴェーナ』を聴いていると(一度も訪れたことのないはずなのに)明確にブラジルの田舎の風景が見えてくる。そこでは子供たちと年配者たちが暮らしている。どうやら大人たちは街にはいないようだ。

 古くからのブラジル音楽をおじいさんが近所の子供たちに教えている。子供って気に入ると飽きるまで繰り返すし,音楽よりサッカーに夢中の子供が半分混じっている。音楽でもサッカーでもブラジルはリズム。そんなリズムに乗りこなせる子供たちがジャヴァンのようなワールド・クラスのミュージシャンへと成長する。

 そうなんだ。これまでジャヴァンがアメリカンMPBを演奏してきたのは,いつか『ノヴェーナ』のようなブラジル向けのアルバムを作るため。
 まずは売れる。それが自分の理想の音楽でなかったとしても売れてしまえばファンもレコード会社もジャヴァンが本当にやりたい音楽を認めてくれるのだ。

NOVENA-2 そういう意味で『ノヴェーナ』もいい音楽に違はないが,ジャヴァン・ファンが聴きたいMPBからするとマニアックに行き過ぎたところがあるのかもしれない。
 よく日本人とブラジル人は感性が似ていると言われるけれど,今回の『ノヴェーナ』に関しては,ブラジルの未開の奥地に連れていかれた感覚があって,ついていけなかった。

 ただし,この『ノヴェーナ』こそが,長年ジャヴァンが温めてきた音楽なのである。真にジャヴァンがやりたかった音楽なのである。もはやジャヴァンは昔のフィールドには戻ってこないように思う。

  01. LIMAO
  02. NAO RUAS
  03. ALIAS
  04. SEM SABER
  05. MAR A VISTA
  06. QUERO-QUERO
  07. RENUNCIACAO
  08. LOBISOMEM
  09. SETE COQUEIROS
  10. AGUA DE LUA
  11. AVO

(エピック・ソニー/EPIC/SONY 1994年発売/ESCA-6206)
(ライナーノーツ/緒形典子)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

櫻井 哲夫 / トーキング・ベース5

TALKING BASS-1 ベーシストが自分のベース・サウンドを前面に押し出したアルバムとして,ジャコ・パストリアスには『ジャコ・パストリアスの肖像』が,マーカス・ミラーには『ザ・キング・イズ・ゴーン』があるように,櫻井哲夫には『TALKING BASS』(以下『トーキング・ベース』)がある。

 “スーパー・ベーシスト櫻井哲夫がここまでベース・サウンドを前面に押し出したソロ・アルバムはかつてなかった。
 しかも主役はフレットレスベースと来た。新曲なしのオール・カヴァー集と来た。差別化はされるが容易に比較もされうる大勝負に,得意の“超絶”チョッパーベースを封印してきた。

 ここに管理には櫻井哲夫の“スーパー・ベーシスト”としてのこだわりを感じた。フレッテットでも十二分に勝負できる。“超絶”チョッパーを弾かせたら,ジャコ・パストリアスにもマーカス・ミラーにもガチンコで勝てる自信がある。
 でもそうじゃない。ジャコ・パストリアスマーカス・ミラーが凄いのはテクニックではない。唯一無二の音楽性なのだ。

 そのことを櫻井哲夫が一番知っているから,ベースソロ・アルバムを作るなら,フレットレスベースの“歌もの”で,ジャコ・パストリアスマーカス・ミラーも追い求めた「夢の続き」にチャレンジしたのだ。

 ジャコ・パストリアスマーカス・ミラーも,本当は櫻井哲夫の『トーキング・ベース』みたいなアルバムを作ってみたかったのだと思う。
 そう。『トーキング・ベース』の真髄とは,ベースを自分のヴォイス代わりに歌わせた「ベースでの弾き語り」であり「ベースでのホーモニー」なのであろう。

 なんてったって櫻井哲夫が凄いのは,フレットレスベースメロディーの中心に据えて,物足りない重低音はシンセベースで補うことさえしている。普通のベーシストなら考えつかない荒業である。
 櫻井哲夫は『トーキング・ベース』でバック・サウンドを緻密にアレンジしている。その上でフレットレスベース即興的に被せている。

 フレットレスベースによるジャコ・パストリアスソロ・パフォーマンスは“伝説”と化している。マーカス・ミラーの完璧なバック・サウンドの上を即興で吹き上げるマイルス・デイビスの『TUTU』も“伝説”と化している。
 そんな「ベース界のレジェンド」2人が手がけてきた「夢の続き」を櫻井哲夫が引き受けている。受け継いだのは手法ではなく“スピリッツ”。誰も作り上げたことのないベース・サウンドなのである。

 世界TOPのプロデューサーでもあるマーカス・ミラーベースソロの難しさをトクトクと語っていた記憶がある。マーカス・ミラーの趣旨は「ベースフィーチャーさせると,音楽の完成度を損なう危険をはらむ」ということだったと記憶する。
 この言葉を借りるなら,ついに櫻井哲夫もトータル・ミュージシャンとしてチャレンジできるところまで来たということだろう。そして『トーキング・ベース』の見事な完成度が“アーティスト”櫻井哲夫の成長を証ししている。

TALKING BASS-2 その意味で『トーキング・ベース』の聴き所は,これ以上フレットレスベースを歌わせるとバランスが崩れる,その一歩手前でベースらしさを聴かせる瞬間である。

 フレットレスベースはやっぱりベースであり,低音担当のアンサンブル楽器でありタイム・キーパーなのである。そんな「屋台骨」のベースが,リズムをリードしつつ大いに歌っているのだ。最高に素晴らしい。

 しかもこの音色に,この歌声に癒される。管理には櫻井哲夫フレットレスベースの音色が世界一美しいと信じている。あの柔らかい音色&温かな音色が“艶のある声で”鳴っている。優しく語りかけるようなフレットレスベースが余裕を残して鳴っている。

 ベース一本に人生をかけてきた“スーパー・ベーシスト櫻井哲夫の“最高傑作”として管理人は『トーキング・ベース』を指名する。

  01. The Long And Winding Road
  02. Donna Lee
  03. Butterfly
  04. Sunflower
  05. I Wish
  06. I Can't Help It
  07. Sailing Alone
  08. Alisa
  09. Stardust
  10. 見上げてごらん夜の星を

(キングレコード/KING RECORD 2012年発売/KICJ-641)
(ライナーノーツ/櫻井哲夫)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

ジャヴァン / コイザ・ヂ・アセンデール4

COISA DE ACENDER-1 管理人がジャヴァンを聴くようになったのは,それこそカシオペアの『PLATINUM』収録【ME ESPERE】だったから1987年頃のことである。
 当時は全くジャヴァンのことなど知らなかったが,カシオペアとの共演を通じてジャヴァンというMPBにハマッテいた時代が懐かしい。『SAMURAI】は永遠の名曲だと思っている。

 しかし,次第に耳が遠のいてジャヴァンに対する“マイ・ブーム”が落ち着いた頃に出会った『COISA DE ACENDER』(以下『コイザ・ヂ・アセンデール』)で,管理人の中の“ジャヴァン・ブーム”が再燃した。

 管理人がジャヴァンに追い求めて,結局は見つからず仕舞いであった【ME ESPERE】のジャヴァンが『コイザ・ヂ・アセンデール』の中にいたのである。

 『コイザ・ヂ・アセンデール』は,MPBでもアメリカン・ポップスでもない,アコースティックエレクトリック・サウンドがジャヴァンヴォーカルギターを基軸として,シンプルな音数が,本当に必要な場所だけで鳴っている。
 世界的な大ヒットを放っていた時のゴージャス感が希薄になり,洗練され,落ち着いたサウンドに変化していて,これぞ管理人が追い求めるジャヴァンの“理想郷”とついに巡り会ったような感じがしていた。

 浮遊感のあるメロディー・ラインを,どことなく憂いや翳りのある“飾り気のない歌声”が音楽している。【ME ESPERE】で強く感じた“生命力”が漲っている。
 ジャヴァン本人がライナーノーツで語っているが,もう“売れ線”はやらないのだ。アメリカンナイズドされたMPBはやめたのだ。ワールド・ミュージックではなく“ブラジリアン”としてのジャヴァンのアイデンティティが聞こえてくる。

COISA DE ACENDER-2 今回,本当に久しぶりに『コイザ・ヂ・アセンデール批評のために聴き直してみた。懐かしさと共に,今まで意識することのなかったナベサダとかリチャード・ボナの音世界を想起した。
 そう。ジャヴァンの方がナベサダリチャード・ボナよりも早かったのだ。この事実に驚くと共にジャヴァンの再評価を強く希望する。

 個人的にジャヴァンには,ミルトン・ナシメント級,イヴァン・リンス級の活躍を期待していたのだが,ナベサダ繋がりで行くとジャヴァンにはトッキーニョの後継者へと登り詰めてほしいと思う。

PS そう言えばカシオペア渡辺貞夫も『PHOTOGRAPHS』で繋がっていましたねっ。

  01. A Rota do Individuo (FERRUGEM)
  02. BOA NOITE
  03. SE…
  04. LINHA DO EQUADOR
  05. VIOLEIROS
  06. ANDALUZ
  07. OUTONO
  08. ALIVIO
  09. BAILE

(エピック・ソニー/EPIC/SONY 1992年発売/ESCA-5646)
(ライナーノーツ/中原仁)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

第59回(2016年度)グラミー賞 ジャズ部門-NO.2

 “年に一度の音楽の祭典”第59回(2016年度)のグラミー賞が昨日発表された。

 世間的にはグラミー賞史上初となる,アデルの2012年に続く2度目の主要3部門受賞であろう。あるいは内田光子の日本人初となる2度目の受賞であろう。
 個人的にはストリーミング・サービスでの無料配信のみという形で音楽を発表していたチャンス・ザ・ラッパーがグラミー賞の規定を改訂させた上での,最優秀新人賞を含めた3冠受賞が世界を変えた!

 ん? ジャズフュージョン以外はどうでもよかったですね。
 早速「アドリブログ」の本丸『JAZZ』の受賞作の発表で〜す。

----------------------------------------------------------------------------

Category 31. Best Improvised Jazz Solo


COUNTRY FOR OLD MEN★ I'm So Lonesome I Could Cry
John Scofield, soloist
Track from: Country For Old Men

----------------------------------------------------------------------------

Category 32. Best Jazz Vocal Album


希望へのアレイ★ Take Me To The Alley
Gregory Porter


----------------------------------------------------------------------------

Category 33. Best Jazz Instrumental Album


COUNTRY FOR OLD MEN★ Country For Old Men
John Scofield


----------------------------------------------------------------------------

Category 34. Best Large Jazz Ensemble Album


Presidential Suite★ Presidential Suite: Eight Variations On Freedom
Ted Nash Big Band


----------------------------------------------------------------------------

Category 35. Best Latin Jazz Album


Tribute to Irakere - Live in Marciac★ Tribute To Irakere: Live In Marciac
Chucho Valdes


----------------------------------------------------------------------------

 ジョン・スコフィールドが2年連続のグラミー受賞! しかも今年は「BEST IMPROVISED JAZZ SOLO」と「BEST JAZZ INSTRUMENTAL JAZZ」のW受賞ときた!
 ジャズ界は現在,ジョン・スコフィールドを中心に回っている!

 特に『COUNTRY FOR OLD MEN』は,純ジャズではなくカントリー作品。にもかかわらずジャズ部門で受賞するのだから,どんだけジョン・スコフィールドに注目が集まっているかが分かるというもの。

 まっ,グラミー賞ジョン・スコフィールドに注目するのが遅すぎただけで,マイルス・デイビスの眼は確か! 元々,ジョン・スコフィールドというジャズ・ギタリストはブルースやカントリーを丸呑みしてきたギタリストJAM界の中心人物の1人でもある。

 今回の2年連続受賞&W受賞で風向きが変わるのか? ありがとうインパレス! 頑張れインパレス! 『A GO GO』は1998年−2016年のジョン・スコフィールドジャズ・ライフ

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

チック・コリア,小曽根 真,大西 順子,山中 千尋,ハクエイ・キム / PIANIST〜ワルツ・フォー・ビル・エヴァンス5

PIANIST 〜WALTZ FOR BILL EVANS-1 『PIANIST〜WALTZ FOR BILL EVANS』(以下『PIANIST〜ワルツ・フォー・ビル・エヴァンス』)は,ジャズ・ピアノの金字塔であるビル・エヴァンスの『WALTZ FOR DEBBY』50周年を記念したオムニバス・アルバム。
 『PIANIST〜ワルツ・フォー・ビル・エヴァンス』を,そんじょそこらのオムニバスと思うなかれ! 参加メンバーがとにかく凄い!  

 世界的に活躍するユニバーサル・ジャズ所属の5名のピアニストチック・コリア小曽根真大西順子山中千尋ハクエイ・キムのビッグネームが,1人2曲ずつ新録音なり未発表音源なりを持ち寄ってきた(既発トラックはチック・コリア上原ひろみと共演した1曲のみ! ユニバーサル・ジャズはどうしてもこのラインナップに上原ひろみを入れたかった!?)。

 超豪華メンバーの一員なのに,ドリーム・チームの5人が5人とも,他の共演者の出方など気にも留めない“ビル・エヴァンスの世界観”が最高すぎる。
 やっつけではない「1曲入魂」の大熱演。みんながみんな,自分にとってのビル・エヴァンスの愛想曲を愛情を込めて,慈しみを持って奏でている。

 全10曲の1曲1曲全てがハイライト! “最大の目玉”であろう,チック・コリア/エディ・ゴメス/ポール・モチアンによる【WALTZ FOR DEBBY】は『ファーザー・エクスプロレイションズ〜ビル・エヴァンスに捧ぐ』未収録音源。なんのことはない。没テイクなどではない。『PIANIST〜ワルツ・フォー・ビル・エヴァンス』のための取り分けていたとしか思えない『ファーザー・エクスプロレイションズ〜ビル・エヴァンスに捧ぐ』の中で最高の演奏である。

 小曽根真のこんなにも繊細なソロ・ピアノは久々である。一方,同じソロ・ピアノでも山中千尋の奏でるビル・エヴァンスはスインギー。両者の「静と動」の対比が非常に興味深い。
 今回の5人のメンバーの中では大西順子の強烈なタッチが一番ビル・エヴァンスらしく聴こえたのが意外や意外…。

 そしてハクエイ・キムである。実は管理人。ハクエイ・キムというピアニストを『PIANIST〜ワルツ・フォー・ビル・エヴァンス』で初めて聴いた。
 一人「格落ち」のような気がして心配していたハクエイ・キムだったが「心配無用」のハイ・クオリティ。ピアノ・トリオの白熱のインタープレイと疾走感は間違いなく“エヴァンス派”でした。

PIANIST 〜WALTZ FOR BILL EVANS-2 管理人の結論。『PIANIST〜ワルツ・フォー・ビル・エヴァンス批評

 『PIANIST〜ワルツ・フォー・ビル・エヴァンス』とはチック・コリアのアルバムである。あるいは小曽根真のアルバムである。この2人の“天才”がやはり頭一つ飛び抜けていると思う。ジャズ・マニア必聴の4トラックが輝いている。

 しかし「勝負に勝って試合に負けた」のが大西順子である。ビル・エヴァンストリビュートの真の勝者は大西順子だと思う。

 それにしてもユニバーサル・ジャズさん(現在は契約切れのようですが)なんで木住野佳子さんを呼ばなかったのですか?

  01. HOW MY HEART SINGS
  02. WALTZ FOR DEBBY
  03. ISRAEL
  04. HERE'S THAT RAINY DAY
  05. NEVER LET ME GO
  06. NARDIS
  07. VERY EARLY
  08. YOU AND THE NIGHT AND THE MUSIC
  09. WHAT IS THIS THING CALLED LOVE?
  10. I SHOULD CARE

(ユニバーサル・ジャズ/UNIVERSAL JAZZ 2011年発売/UCCJ-2087)
(ライナーノーツ/原田和典)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

櫻井 哲夫 featuring グレッグ・ハウ&デニス・チェンバース / ヴァイタル・ワールド5

VITAL WORLD-1 『21世紀の扉』〜『ジェントル・ハーツ』〜『GENTLE HEARTS TOUR 2004』〜「TETSUJINO」名義の『ダブル・トラブル』で積み上げてきた櫻井哲夫デニス・チェンバースとのコラボレーション『VITAL WORLD』(以下『ヴァイタル・ワールド』)で極まりけり〜!

 『ヴァイタル・ワールド』で,これまで“紳士”を貫いていた櫻井哲夫が野生の本能を解放し“猛獣使い”へと変身した。『ヴァイタル・ワールド』のサバイバル・チックなジャケット写真そのまんまのテクニカルでハードで「楽器弾きまくり」のセッション大会。

 全曲,櫻井哲夫が作曲した“モチーフ”をデニス・チェンバースドラムで,グレッグ・ハウギターで,縦横無尽の発想で色付けしていく。
 櫻井哲夫デニス・チェンバースグレッグ・ハウ組も,スタジオ盤の『ジェントル・ハーツ』とライブ盤の『GENTLE HEARTS TOUR 2004』で長いセッションを重ねた賜物であろう。『ヴァイタル・ワールド』では過去2作では感じなかった,奥深い音楽表現が鑑みれる域にまで到達している。これは凄いアルバムである。

 櫻井哲夫ベースが抜群であって,明確なベース・ラインで“野獣のドラム”をコントロールしてみせる。爆裂なのである。
 『ジェントル・ハーツ』『GENTLE HEARTS TOUR 2004』では,グレッグ・ハウに主役を譲っていた櫻井哲夫が,グレッグ・ハウを押しのけてメロディーラインを演奏している。

 こんな櫻井哲夫に,デニス・チェンバースグレッグ・ハウが本気を出さないはずがない! 速度計のMAXを振り切れている! 超高速なのに安定する,何てないベース・ラインに,櫻井哲夫の本物が鳴っている!

 最高にキレイ目で洗練された「制御された」ベース・ラインなのに「制御不能な」演奏エネルギーで満ちている。自分の中のボルテージを上げている。
 そう。櫻井哲夫ベースに,デニス・チェンバースドラムに,グレッグ・ハウギターに“思いの丈”をぶつけている!

VITAL WORLD-2 『ヴァイタル・ワールド』を聴いていると,その昔,ジミ・ヘンドリックスギターに火をつけて燃やしている映像が自然と脳裏に浮かんできた。
 そう。『ヴァイタル・ワールド』における櫻井哲夫のテーマは「完全燃焼」。自らの体内にたまっている爆発寸前のマグマを,ジミ・ヘンドリックスのように一気呵成に放出している。

 櫻井哲夫のパワーと感受性の強さを体感するなら『ヴァイタル・ワールド』が一番である。とにかく凄い演奏力である。

  01. Critical Planet
  02. Alien's Feast
  03. A Tear Of The Clown
  04. Are You Ready
  05. Another Kingdom
  06. Triangle Square
  07. Monster Parade
  08. Father

(エレクトリック・バード/ELECTRIC BIRD 2010年発売/KICJ-598)
(ライナーノーツ/櫻井哲夫)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

ドナルド・バード / ブラックジャック5

BLACKJACK-1 無類のトランプ好き?なドナルド・バード。『ROYAL FLUSH』での切り札がハービー・ハンコックなら『BLACKJACK』(以下『ブラックジャック』)での切り札はソニー・レッドである。

 ソニー・レッド主導による,アーシーなジャズ・ファンクがドス黒い。基本ハード・バップにして,ヘヴィーなビートと各自のソロ回しがメチャメチャ渋い,ブルーノート好きには堪らないアルバムである。

 フロントはトランペットドナルド・バードテナーサックスハンク・モブレーアルトサックスソニー・レッドによる3管。
 元来,ドナルド・バードにしてもハンク・モブレーにしても,ジャズの最前列で活躍するというよりも,2列目で活躍の場を与えられたならこの上ない働きをするタイプのジャズメンであろう。
 ゆえに,この3管の組み合わせはアンサンブルというよりも,互いに熱く燃え上がる3管であって,各人のハイテンションな演奏の方が印象に残る。

 このエキサイティングな3管を全て包み込み,受け流し,際立たせるのが「いぶし銀」のシダー・ウォルトンシダー・ウォルトンの抑揚の利いたピアノが,フリーキーでファナーキーなソニー・レッドのブルースに優しくハミングしている。いい。

 『ブラックジャック』には,混沌とした時代を見据えながらも,絶対に変えられないドナルド・バードの“ジャズメン魂”が記録されている。
 時代の流行に合わせた,変わり身の早さもドナルド・バードの持ち味である。必要とあればサイドでも全力でこなすのがドナルド・バードなのである。

BLACKJACK-2 しかし,その一方で,自分のポリシーを曲げてまで時代に迎合しない“頑なさ”がドナルド・バードにはある。
 そう。『ブラックジャック』の真実とは,ソニー・レッドという「金の卵」を見つけて,やり残したハード・バップ&ファンキーのリバイバル。

 この時代に黒々としたジャズ・ファンクをやったドナルド・バードの眼力を称賛したい。恐らく,ソニー・レッドと出会わなければ『ブラックジャック』はやらなかったと思っている。

 いつの時代でも本物は本物。ソニー・レッドの“最高傑作”ソニー・レッドのリーダー・アルバムではなく『ブラックジャック』なのである。

  01. BLACKJACK
  02. WEST OF THE PECOS
  03. LOKI
  04. ELDORADO
  05. BEALE STREET
  06. PENTATONIC

(ブルーノート/BLUE NOTE 1967年発売/TOCJ-4259)
(ライナーノーツ/ナット・ヘントフ,原田和典,佐藤太郎)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

櫻井 哲夫 / マイ・ディア・ミュージックライフ5

MY DEAR MUSICLIFE-1 『TLM20〜LIVE MEMORIES IN 20 YEARS』で「デビュー20周年記念」を飾った櫻井哲夫の「デビュー30周年記念」盤が『MY DEAR MUSICLIFE』(以下『マイ・ディア・ミュージックライフ』)。

 『TLM20〜LIVE MEMORIES IN 20 YEARS』が,真に総決算的なライブ盤であったから,今回の「デビュー30周年記念」盤も,直近の10周年を総括する内容かと思いきや『マイ・ディア・ミュージックライフ』はそうではない。
 そう。10周年とか20周年とか30周年ではなく,実際にはデビュー以前の10年間をも加えた「THE櫻井哲夫」の40周年を総括してみせている。

 “超絶”チョッパーベースものもあれば“歌もの”もあるし,カシオペアジャコ・パストリアスカヴァーもある。“超絶”チョッパーベースのド真ん中であり,J−フュージョンのど真ん中!
 櫻井哲夫の『ミュージックライフ』は真に「やりたい放題」。櫻井哲夫はこうでなくっちゃ!

 櫻井哲夫ソロとなって一番変化したことは,自分の好きな共演者の特徴を“聴かせる”ことで,自分自身の音楽を“聴かせる”ことであろう。要は共演者を「取り込んでしまう」ベーシストへと成長したのだ。
 『マイ・ディア・ミュージックライフ』でも,サックス本田雅人勝田一樹キーボードボブ・ジェームス小野塚晃ギター野呂一生菰口雄矢岡崎倫典ドラム則竹裕之ジーン・ジャクソンパーカッションカルロス菅野の個性的な音を櫻井哲夫の体内へと「取り込んで」いる。

 例えば“目玉”である【DOMINO LINE】のハイライトは“ドミノ倒し”の新アレンジが最高でして,櫻井哲夫ベースソロを確保しつつも,雰囲気としては青木智仁と組んでいた当時の初期DIMENSIONによる【DOMINO LINE】へと見事に仕上がっている。櫻井哲夫がバックを見事に廻しながらの余裕ある“超絶”にウォー!

 櫻井哲夫のアイドルであるジャコ・パストリアスの【TEEN TOWN】と【KURU】であるが,聴いた感じのファースト・インプレッションはマーカス・ミラーによるジャコ・パストリアスカヴァーに似ていると思った。
 つまり変に櫻井哲夫色に塗り変えるのではなく,ジャコ・パストリアスがやろうとしたことを理解した上でのカヴァーを目指している。ジャコ・パストリアスGROOVEを完コピしている。素晴らしい。

 そ〜して迎える【リンゴ追分】での6弦チョッパーによるファンク・ベースの大嵐! 岡崎倫典ギターが「津軽三味線」のようにかき鳴らされる前面でのファンク・ベースがとんでもなくはまっていて超カッコイイ! 美空ひばりベースジャズを熱唱するとこうなるのだろう。“歌もの”の櫻井哲夫が最高に素晴らしい。

MY DEAR MUSICLIFE-2 『TLM20〜LIVE MEMORIES IN 20 YEARS』から『マイ・ディア・ミュージックライフ』の10年間は『GENTLE HEARTS』プロジェクトとブラジル・プロジュクトの2つに注力した10年間であったと思うが,意外にも『マイ・ディア・ミュージックライフ』には,この2つのプロジェクトの跡形など聴こえない。

 『マイ・ディア・ミュージックライフ』から聴こえてくるのは「少年時代」に愛してやまなかった櫻井哲夫の『ミュージックライフ』。
 世界最高峰のベース・テクニックを持ち,総合音楽家として出来上がった櫻井哲夫が奏でるベース・サウンドは,櫻井哲夫の「少年時代」に“頭の中で鳴っていた音楽”の具現化なのだと思う。

 桜ちゃん,おめでとうございます!

  01. REGENERATE
  02. TEEN TOWN
  03. BRIGHT MOMENTS
  04. MELODIA
  05. I WISH U FUNK
  06. DOMINO LINE
  07. MIRAGE
  08. RINGO OIWAKE
  09. KURU
  10. AFTER THE LIFE HAS GONE

(エレクトリック・バード/ELECTRIC BIRD 2009年発売/KICJ-566)
(ライナーノーツ/櫻井哲夫)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

ドナルド・バード / ア・ニュー・パースペクティヴ5

A NEW PERSPECTIVE-1 『A NEW PERSPECTIVE』(以下『ア・ニュー・パースペクティヴ』)は,ドナルド・バード名義のアルバムにしてドナルド・バードソロ・アルバムではない。

 事実『ア・ニュー・パースペクティヴ』のアーティスト名義は「DONALD BYRD BAND & VOICES」。
 そう。ドナルド・バードの手を離れた部分で語られるべき,ゴスペル聖歌隊による“スピリチュアル”な黒人音楽の最高峰に位置するとんでもないアルバムである。

 何はともあれ『ア・ニュー・パースペクティヴ』が,黒人の精神的支柱であったマーティン・ルーサー・キング牧師の葬儀のBGMに使用された,というインパクトがとてつもなく大きい。
 ズバリ『ア・ニュー・パースペクティヴ』の真実とは,ジャズの手法を用いた「黒人霊歌集」である。公民権運動の盛り上がりを背景にした「現代の讃美歌集」なのである。

 『ア・ニュー・パースペクティヴ』のキーマンは,デューク・ピアソンでありハービー・ハンコックであり,ドナルド・バードではない。
 荘厳なコーラスと各楽器のアンサンブルの美しさは「教会音楽のソウル」とも呼ばれるデューク・ピアソンのものであり「新世代ブラック・ファンク」のハービー・ハンコックの独壇場であろう。
 デューク・ピアソンが構築する自由度の高いエモーションなアンサンブルとハービー・ハンコックの独特なリズムのバッキングがモダンジャズの枠を越えている。

 『ア・ニュー・パースペクティヴ』のキーワードは「VOICES & JAZZ」。“ゴスペルを聴かせるためのエッセンス”としてのジャズが演奏されている。
 男女混成コーラスは何処か猥雑な感じが見え隠れする。昔のキャバレー臭さと言うか変なゴージャスさが出てくる。デューク・ピアソンのアプローチを現代風に表現すると「ラウンジ」なのである。

 『ア・ニュー・パースペクティヴ』は“音楽監督”デューク・ピアソンと“三大ピアニストハービー・ハンコックがそろい踏みした,黒人音楽“最高傑作”の「VOICES & JAZZ」。
 すなわち黒人音楽“最高傑作”の「ラウンジ」なのである。

 『ア・ニュー・パースペクティヴ』を注意深く聴いていると,ハンク・モブレーテナーサックスケニー・バレルギタードナルド・ベストヴァイヴハービー・ハンコックピアノベースブッチ・ウォーレンドラムレックス・ハンフリーズが,ドナルド・バードトランペットに合わせるではなくゴスペル聖歌隊による“スピリチュアル”なヴォイスに音を重ねている。

A NEW PERSPECTIVE-2 いつの時代も音楽の中心には「声」があった。“秀才”デューク・ピアソンと“天才”ハービー・ハンコックの考える「声」=ホーン・セクションが『ア・ニュー・パースペクティヴ』なのである。

 『ア・ニュー・パースペクティヴ』のリリースまでブルーノートにはヴォーカリストがいなかった。しかしそれまで多数のホーン奏者がヴォーカリスト代わりを務めていたのである。
 ついに到来した肉声という楽器のストレートな時代が『ア・ニュー・パースペクティヴ』で幕を開けた! ハービー・ハンコックの才能が爆発するヴォコーダーの原点が『ア・ニュー・パースペクティヴ』にある!

  01. ELIJAH
  02. BEAST OF BURDEN
  03. CRISTO REDENTOR
  04. THE BLACK DISCIPLE
  05. CHANT

(ブルーノート/BLUE NOTE 1964年発売/TOCJ-6647)
(ライナーノーツ/ナット・ヘントフ,佐藤英輔)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

スイングジャーナル主催 ジャズ・ディスク大賞 1983年度(第17回)

 「スイングジャーナル」誌が,レコード会社各社の自薦ノミネート作品を基にして,国内で該当年度中に発売されたCDLPビデオを対象に同誌委託の「ジャズ・ディスク大賞選考委員」によって選出される,日本ジャズ界に最も貢献した作品に贈られる「ジャズ・ディスク大賞」。

 今回は1983年度(第17回)の発表です。

----------------------------------------------------------------------------

スター・ピープル★【金賞】.スター・ピープル
マイルス・デイビス


----------------------------------------------------------------------------

STANDARDS, VOL.1★【銀賞】.スタンダーズ VOL.1
キース・ジャレット・トリオ


----------------------------------------------------------------------------

Gershwin Live★【ボーカル賞】.ガーシュイン・ライブ!
サラ・ボーン


----------------------------------------------------------------------------

ON GREEN DOLPHIN STREET★【日本ジャズ賞】.グリーン・ドルフィン
宮沢昭


----------------------------------------------------------------------------

ジャロウ★【録音賞(海外)】.ジャロウ
アル・ジャロウ


----------------------------------------------------------------------------

SHORTY ROGERS & HIS GIANTS RE-ENTRY★【録音賞(国内)】.ショーティ・ロジャース・アンド・ヒズ・ジャイアンツ・リ・エントリー
 ショーティ・ロジャース

----------------------------------------------------------------------------

クリフォード・ブラウン・パーフェクト・コレクション・オン・エマーシー★【編集企画賞】.オリジナル・エマーシー・コレクション11+2
 クリフォード・ブラウン

----------------------------------------------------------------------------

アイル・ビー・ア・ソング(紙ジャケット仕様)★【制作企画賞】.アイル・ビー・ア・ソング
ナンシー・ウイルソン


----------------------------------------------------------------------------

ザ・ララバイ★【特別賞】.一連のベイステイト・レーベルによるケニー・ドリュー自主制作アルバム


----------------------------------------------------------------------------

 大真面目な題材としてのスタンダーズを演奏するために,キース・ジャレット自らが望んだメンバー,ベースゲイリー・ピーコックドラムジャック・デジョネットとによるピアノ・トリオデビュー作『STANDARDS,VOL.1』が【銀賞】受賞。

 それまでキース・ジャレットと来れば,ソロ・ピアノアメリカン・カルテットヨーロピアン・カルテットだった。
 いろいろとやりたいことをやってきた“あの”キース・ジャレットが,ジャズスタンダードを演奏するとは…。

 発売当初から賛否両論。だって『STANDARDS,VOL.1』の選曲は「誰もが知らないスタンダーズ集」。キース・ジャレット・トリオが演奏することで『STANDARDS,VOL.1』は「誰もが知っているスタンダーズ集」へと変化した。

 その結果が【銀賞】受賞である。発売から選考までにもう1年あれば“帝王”マイルス・デイビスマーカス・ミラーの【金賞】を超えてしまったことであろう。

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

櫻井 哲夫 / ブラジル・コネクション VOL.25

BRASIL CONNECTION VOL.2-1 『ブラジル・コネクション VOL.1』の続編である『BRASIL CONNECTION VOL.2』(以下『ブラジル・コネクション VOL.2』)のハイライトはライブ後半戦の大盛り上がり。

 『VOL.1』と『VOL.2』の性格の違いはこうである。『ブラジル・コネクション VOL.1』でのリスナーは会場の椅子に腰掛てしっかりと音楽を聴くライブ盤。『ブラジル・コネクション VOL.2』でのリスナーは総立ちでビートに合わせて踊っているライブ盤。

 櫻井哲夫チョッパーベースが音楽の前面に出ているわけではない。いつものテクニカル・フュージョンベースでもない。
 それなのにライブが進行するにつれ,ブラジリアン・フュージョン独特の緩やかで心地良くグルーヴするベースのウネリが『ブラジル・コネクション VOL.2』の聴き所。

 櫻井哲夫ベースフィロー・マシャードヴォーカルギターセルジオ・マシャードドラム小野塚晃キーボードが,真に一体となってリズムの渦を巻き起こしていく。
 そう。『ブラジル・コネクション VOL.2』には,ライブ当日のステージ上で,4人の意識がバッチリ・ハマッテ登り詰めてゆく過程のドキュメントの記録なのである。

 メンバー4人のコンビネーションが非常に良く,フィーチャリング櫻井哲夫でも,フィーチャリングフィロー・マシャードでもない,一つのバンドと称してもよいまとまりと密度の濃さを感じる。
 櫻井哲夫ベースが他を吸収したのか? それともベースが他に吸収されたのか? バランスの良いチョッパーベースが見事にブラジリアン・フュージョンに溶け込んでいる。
 
 これぞ櫻井哲夫の“ブラジル愛”の賜物である。『ブラジル・コネクション VOL.2』のメロディアスでネイティブなリズムに,郷愁というか哀愁というか“サウダージ”が胸にキュンとくる。

BRASIL CONNECTION VOL.2-2 櫻井哲夫ライブ盤『ブラジル・コネクション VOL.1』『ブラジル・コネクション VOL.2』を聴いていると,ジャズでもなくフュージョンでもなく,この世の音楽はMPBだけで十分のように感じてしまう。
 櫻井哲夫が“生涯のライフワーク”として「ブラジル」を公言する気持ちがうらやましい。

 管理人も(現時点で自分の将来を予想すると)順調であれば,最後の最後はセロニアス・モンクに行き着くはずだが,もしかしたらブラジールかも!?

  01. PASTEL SEA
  02. PERFUME DE CEBOLA
  03. ALISA
  04. JOGRAL
  05. COM A PAZ NO CORACAO
  06. BOCA DE LEAO
  07. RED ZONE

(サウンドバイブレーション/SAKURAVIBE 2006年発売/XQAZ-1002)
(ライナーノーツ/櫻井哲夫)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

ドナルド・バード / ロイヤル・フラッシュ4

ROYAL FLUSH-1 『ROYAL FLUSH』(以下『ロイヤル・フラッシュ』)のジャケット写真で“ほくそ笑む”ドナルド・バードが引き当てた最後のカードはピアニストハービー・ハンコック

 前任者のデューク・ピアソンは“秀才”であった。デューク・ピアソンのハイセンスこそがドナルド・バードの黄金ハード・バップを作り上げた原動力。
 な・の・に・ハービー・ハンコックが1人加入しただけで,ドナルド・バードペッパー・アダムスクインテットの演奏がまるで違う。

 ハービー・ハンコックピアノでバッキングを付けるだけで,サウンドが一気に理知的でモードがかっていく。ハービー・ハンコックの和声の使い方,間合い,ハーモニックセンスはものが違う。
 ドナルド・バードが『ロイヤル・フラッシュ』を完成させるための最後の1枚が“天才”ハービー・ハンコックだったのだ。

 ハービー・ハンコックの上品で黒いピアノ・タッチが繊細に響く。ドナルド・バードペッパー・アダムスのバックでモダンなハーモニーを加えるハービー・ハンコックモードピアノが『ロイヤル・フラッシュ』に対する全体の印象を決定付けている。

 例えば【JORFIE’S】のイントロでミステリアスなテイストを醸し出すジャズ・ピアノには,後年,マイルス・デイビスのグループで発揮するミステリアスな響きの萌芽がすでに認められる。
 この細やかながらピリッと演奏を締める小技を効かせることが出来るハービー・ハンコックのハーモニックセンスこそが,ファンキー・テイストからの脱却を考えていたドナルド・バードペッパー・アダムスが求めていた新しい感覚なのだろう。

 ただし,個人的に『ロイヤル・フラッシュ』は,ドナルド・バードペッパー・アダムスデューク・ピアソン・ラインの名盤群よりも落ちる。

 理由としてはハービー・ハンコックは,すでに「新主流派」的な響きを奏でているのだが,そのハービー・ハンコックピアノに乗るトランぺッターフレディ・ハバードだと「すり込まれて」しまっている。

 元を正せばドナルド・バードフレディ・ハバードも「ポスト・クリフォード・ブラウン」と騒がれたトランぺッター
 系統としては似ているのだろうが,どうにもフレディ・ハバードの“超絶”と比較するとドナルド・バードは分が悪い。だからハービー・ハンコックピアノに乗ったドナルド・バードは分が悪い。

ROYAL FLUSH-2 ハービー・ハンコックの目線で語ろうにも『ロイヤル・フラッシュ』は,ハービー・ハンコックブルーノートの初レコーディング。これからザックザクと名盤が誕生するわけでして…。

 管理人の結論。『ロイヤル・フラッシュ批評

 『ロイヤル・フラッシュ』は「驚異の新人」「早熟の天才」としてのハービー・ハンコックに驚愕するためのアルバムである。

 いいや,驚くのはまだ早い。ドナルド・バードペッパー・アダムスハービー・ハンコック・ラインにデューク・ピアソンがコンポーザー兼アレンジャーとして復帰した『A NEW PERSPECTIVE』で「腰を抜かすための」予習作なのである。

  01. HUSH
  02. I'M A FOOL TO WANT YOU
  03. JORGIE'S
  04. SHANGRI-LA
  05. 6 M'S
  06. REQUIEM

(ブルーノート/BLUE NOTE 1961年発売/TOCJ-4101)
(ライナーノーツ/レナード・フェザー,上田篤,ボブ・ベルデン)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

櫻井 哲夫 / ブラジル・コネクション VOL.14

BRASIL CONNECTION VOL.1-1 櫻井哲夫にはいいブレーンがいないようだ。企画が練られていないようだ。

 『GENTLE HEARTS』の後に『CARTAS DO BRASIL』。『GENTLE HEARTS TOUR 2004』の後に『BRASIL CONNECTION VOL.1』(以下『ブラジル・コネクション VOL.1』)と来た。またかよ〜。
 しかも『ブラジル・コネクション VOL.1』の3カ月後に『ブラジル・コネクション VOL.2』発売と来た。だったら初めから2枚組で発売してよ。値段は5000円でも買うんだから。中途半端だよ〜。

 事実『ブラジル・コネクション VOL.1』『ブラジル・コネクション VOL.2』の主役はフィロー・マシャードヴォーカルである。櫻井哲夫の存在感は希薄である。悔しいかな,櫻井哲夫は脇役でありサポートなのである。

 セットリストも櫻井哲夫のリーダー・アルバムには不釣り合いなオリジナル曲の少なさだし,楽しみだった櫻井哲夫ベース・プレイも2フィンガーばかり。
 櫻井哲夫はサポート・ベーシストでクレジットされるべき。若しくはナベサダみたいにプロデュースだけに専念するとか…。
 どうせなら『ブラジル・コネクション VOL.1』『ブラジル・コネクション VOL.2』は,フィロー・マシャードソロ名義で発売してほしかった…。

 そう思ったのは『ブラジル・コネクション VOL.1』発売後『ブラジル・コネクション VOL.2』発売までの3カ月の感想です。
 真に櫻井哲夫の「ブラジリアン・フュージョン」が爆発するのはライブ後半のお約束。『ブラジル・コネクション VOL.2』を聴いてみて『ブラジル・コネクション VOL.1』に対する印象が変化しました。

BRASIL CONNECTION VOL.1-2 管理人の結論。『ブラジル・コネクション VOL.1批評

 『ブラジル・コネクション VOL.1』は,櫻井哲夫が頭の中でイメージした「ブラジリアン・フュージョン」ではなく,櫻井哲夫がネイティブなブラジル人と同じステージで作り上げた「ブラジリアン・フュージョン」。

 地球の裏側同士の音楽が“混ざりあった”『BRASIL CONNECTION』。櫻井哲夫の“ブラジル愛”が結実した名盤である。

  01. SAUDADE DE VOCE
  02. UPA NEGUINHO
  03. A INDIA E O ATIRADOR DE FACAS
  04. REAL
  05. NAVEGANDO SOZINHO
  06. TERRAS DE MINAS
  07. VESTIDO LONGO

(サウンドバイブレーション/SAKURAVIBE 2006年発売/XQAZ-1001)
(ライナーノーツ/櫻井哲夫)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

ドナルド・バード / ザ・キャット・ウォーク5

THE CAT WALK-1 ドナルド・バードペッパー・アダムスデューク・ピアソン・ラインによる「リリカル・ファンキー路線」の集大成『THE CAT WALK』(以下『ザ・キャット・ウォーク』)が最高である。

 黒いファンキーではない,洗練されたファンキーだと分かっていても,それでもノッテしまうし,ノセられてしまう。ドナルド・バードデューク・ピアソンの共通する資質が気持ちよく融合し,味わい深さが増している。
 その意味でドナルド・バードを代表するファンキー・ジャズの1枚は『フュエゴ』ではなく『ザ・キャット・ウォーク』の方である。

 そう。知的な雰囲気にノセられてしまう,という「矛盾」を解決してくれるのが,フィリー・ジョー・ジョーンズドラミングレックス・ハンフリーズのPOP感覚なドラミングも,ハード・バップではなくファンキーでもない『フュエゴ』にはよく合っている。
 ただし『ザ・キャット・ウォーク』のレベルにまで,ファンキー・ジャズが洗練されてしまった今,フィリー・ジョー・ジョーンズの“豪快な太鼓の鳴り”にトドメを刺されてしまう。

 実はドナルド・バードを(デューク・ピアソンを)聴き続けていると,本当に素晴らしい曲ばかりだし,曲の質の高さに魅了されてしまって,ジャズとは言えど,音楽の楽しみはメロディーにあると思い込んでしまうのだけど『ザ・キャット・ウォーク』を聴き終わる度に「ジャズの醍醐味はリズムにある」ことを毎回思い知らされる…。

 別に管理人はフィリー・ジョー・ジョーンズの大ファンではないのだけれど『ザ・キャット・ウォーク』におけるフィリー・ジョー・ジョーンズドラミングだけは大絶賛。
 ドナルド・バードペッパー・アダムスデューク・ピアソンの絶品フロントを「つまみ喰い」しながら,曲想の端々を縦横無尽に駆け巡る〜。

 チャーミングな楽曲,耳に心地よいアレンジ,まとまりの良いソロ…。綺麗にまとめ上げられたドナルド・バードペッパー・アダムスデューク・ピアソンの専売特許を“豪快な太鼓の鳴り”一発で凌駕するとてつもない原始的なエネルギーの動きを感じ取る。個人の本能的センスが秀才的予定調和の世界を打ち破った瞬間の痛快さで満ちている。

ザ・キャット・ウォーク』のハイライトは,ファンキー・ジャズ史上稀に見る,デューク・ピアソンフィリー・ジョー・ジョーンズによる「知性と本能の対比」にある。

THE CAT WALK-2 基本大大好きなドナルド・バードペッパー・アダムスデューク・ピアソン・ラインだけがアレンジできる楽しさ満点のテーマに魅了された瞬間,スネア一発で土台が揺り動かされるほどの“ダイナミズム”ファンキー

 ドナルド・バードミュートを吹けば吹くほど,ペッパー・アダムスバリトンサックスらしからぬ,流ちょうなテーマを奏でれば奏でるほど,デューク・ピアソンが鍵盤で8小節に区切って,曲全体をまとめればまとめ上げるほど,フィリー・ジョー・ジョーンズドラムがまるで躍動する生き物のように呼吸し,囁き,叫んでいるように聴こえてしまう。

 結果,一周回ってドナルド・バードトランペットに「叙情性」が加えられて聴こえてしまう。(以前ならこう呼ぶのに抵抗があったはずなのに)ドナルド・バードこそがファンキー・ジャズだ,と叫んでしまいたくなる。管理人の愛聴盤の1枚である。

  01. SAY YOU'RE MINE
  02. DUKE'S MIXTURE
  03. EACH TIME I THINK OF YOU
  04. THE CAT WALK
  05. CUTE
  06. HELLO BRIGHT SUNFLOWER

(ブルーノート/BLUE NOTE 1962年発売/TOCJ-7128)
(ライナーノーツ/ナット・ヘントフ,岡崎正通)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

櫻井 哲夫 / GENTLE HEARTS TOUR 20044

GENTLE HEARTS TOUR 2004-1 『CARTAS DO BRASIL』の次に『GENTLE HEARTS TOUR 2004』がリリースされることになった。

 櫻井哲夫の「ブラジル路線」が気に入った後に,イマイチだった『GENTLE HEARTS』のライブ盤を出されても…。しかもフォロー・ツアーとは呼び難い,CD発売4年後にライブ盤を出されても…。

 だから『GENTLE HEARTS TOUR 2004』は,櫻井哲夫ファンとしては初めてとなるスルー。購入したのは翌年となった。
 購入のきっかけは櫻井哲夫ではなくグレッグ・ハウの『EXTRACTION』。『EXTRACTION』とは,ギターグレッグ・ハウドラムデニス・チェンバースベースヴィクター・ウッテンを迎えて制作されたギター・トリオ

 すなわち『GENTLE HEARTS TOUR 2004』は,ベーシストヴィクター・ウッテンから櫻井哲夫に交代したグレッグ・ハウギター・トリオと見立てることもできるわけで(実際にグレッグ・ハウの【EXTRACTION】も演奏されているし)『GENTLE HEARTS TOUR 2004』1枚で,櫻井哲夫ベース・トリオグレッグ・ハウギター・トリオの2枚分を楽しめる!

 聴く前は駄盤と思っていた『GENTLE HEARTS TOUR 2004』が素晴らしい。怒涛のテクニカル・パンク・ハードロック・フュージョン名盤である。
 事実『GENTLE HEARTS TOUR 2004』を聴いた後“本家”『GENTLE HEARTS』を何度,引っ張り出して聴き直したことだろう。

 それまではイマイチだった【SAMURAI FAITH】【BRAIN STORM】【GENTLE HEARTS】【THE INVISIBLE WAY】【WONDERLAND IN THE SKY】が名曲に聴こえる。← 眠りから覚めた今は名うてのセッション・ナンバーだと思っています。

 『GENTLE HEARTS TOUR 2004』の主役は『GENTLE HEARTS』でも主役を張ったグレッグ・ハウギターである。
 早弾きのテクニックはアラン・ホールズワースばりだし,スレーズがアウトする感じはジョン・スコフィールドばり。メタル系なのに明確にジャズ・ギターを意識している。
 『GENTLE HEARTSセッションのために櫻井哲夫本人が熱望したギタリストだけのことはあると思う。

 グレッグ・ハウの脇を固める櫻井哲夫のチョッパー・ベースがメロディアスに歌う。6弦ベースの高音弦でのパンチングは“ベースギター”と呼ばれるにふさわしい。ベースでもありギターでもある。

 デニス・チェンバースの暴走するドラミングは『GENTLE HEARTS』にはなかったライブならではのグルーヴ
 グレッグ・ハウジョン・スコフィールドが乗り移った瞬間,デニス・チェンバースの中の“野獣”が顔を出している。

GENTLE HEARTS TOUR 2004-2 しか〜し『GENTLE HEARTS TOUR 2004批評を記すにあたり,どうしても書いておかねばならないのは,サポートで入った小野塚晃キーボードである。
 グレッグ・ハウギターソロは,手癖が多くて?アドリブが少なめな分,小野塚晃キーボードソロがテンションアップのボタンを押している。流石は“超絶技巧集団”DIMENSION〜。

 『GENTLE HEARTS TOUR 2004』のハイライトは【PAVANE POUR UNE INFANTE DEFUNTE】と【GENTLE HEARTS】のバラード2曲。
 小野塚晃のバッキングが“歌もの”櫻井哲夫の奥深い演奏に色彩を添えている。

 小野塚晃が仕掛けで加わった『GENTLE HEARTS TOUR 2004』は『GENTLE HEARTS』とは別物なのである。

  01. SAMURAI FAITH
  02. THE INVISIBLE WAY
  03. PAVANE POUR UNE INFANTE DEFUNTE
  04. PUNK JAZZ
  05. EXTRACTION
  06. GENTLE HEARTS
  07. BRAIN STORM
  08. WONDERLAND IN THE SKY

(ビクター/JVC 2005年発売/VICJ-61265)
(ライナーノーツ/櫻井哲夫)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

ドナルド・バード / コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.24

AT THE HALF NOTE CAFE VOLUME 2-1 『AT THE HALF NOTE CAFE VOLUME 1批評でも書いたが『AT THE HALF NOTE CAFE VOLUME 2』(以下『コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.2』)の主役は,ドナルド・バードトランペットではなく,ペッパー・アダムスバリトンサックスでもなく,デューク・ピアソンの“ファンキーな”ピアノで間違いない。

 そう。アート・ブレイキーの傍らにベニー・ゴルソンがいたように,ドナルド・バードの傍らにはデューク・ピアソンがいた。
 ドナルド・バードトランペットに絡むペッパー・アダムスバリトンサックスの相性の良さは「鉄板」なのだが,そんな「鉄板」を超えるドナルド・バードデューク・ピアソンの「新定番」が確立されたのが『コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.1』と『コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.2』での2枚のライブ盤なのである。

 『コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.1』と『コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.2』の2枚の違いについて書くとすれば,ライブ前半の1枚目はデューク・ピアソン1人が目立っているが,ライブ後半の2枚目に入ると,ドナルド・バードペッパー・アダムスデューク・ピアソンという感じに3人のコンビネーションが決まってきている。

 1枚目が「デューク・ピアソンファンキー・ジャズ」ならば,2枚目は「ドナルド・バードペッパー・アダムスの双頭コンボのファンキー・ジャズ」。ステージが進むにつれて演奏も会場も盛り上がっていく。
 「知性」と「ファンキー」。「可憐」と「野生味」がデューク・ピアソン一流の“黄金比”でブレンドされている。

 『コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.1』と『コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.2』の2枚で“天下を取った”三人組「ドナルド・バードペッパー・アダムスフィーチャリングデューク・ピアソン」の時代は短い。
 続く『THE CAT WALK』を最後にドナルド・バードの(右腕がペッパー・アダムスであるのなら)左腕であるデューク・ピアソンとの蜜月コラボレーションが突然終了。

 後日,この契約解消はドナルド・バード側の意向と知って更に驚いた。ドナルド・バードも『コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.1』と『コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.2』の2枚を繰り返し聴いて,デューク・ピアソンの真価をもっと評価できたらよかったのにぃ。

 ただし競合相手がハービー・ハンコックだったのだからデューク・ピアソンに勝ち目はなかった。デューク・ピアソンの真価はドナルド・バード以上にアルフレッド・ライオンが高く高く評価しております。

AT THE HALF NOTE CAFE VOLUME 2-2 管理人の結論。『コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.2批評

 デューク・ピアソンが,ドナルド・バードペッパー・アダムスの個性を引き出し描いた相反スケッチ。メンバー全員が突進することなく,それでいて芯があり,演奏にまとまりが感じられる。
 そう。ドナルド・バードの傍らにはデューク・ピアソンがいたのである。

 ライブ盤なのにスタジオ盤のような完璧な演奏に仕上がっている。
 この点をドナルド・バードの資質として素晴らしいと感じるか? ライブ盤っぽくないと残念だと感じるか?で『コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.2』の評価は二分されるように思う。

  01. JEANNINE
  02. PURE D. FUNK
  03. KIMYAS
  04. WHEN SUNNY GETS BLUE
  05. BETWEEN THE DEVIL AND THE DEEP BLUE SEA
  06. THEME FROM MR. LUCKY

(ブルーノート/BLUE NOTE 1960年発売/TOCJ-7109)
(ライナーノーツ/レナード・フェザー,岡崎正通)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

櫻井 哲夫 / カルタス・ド・ブラジル5

CARTAS DO BRASIL-1 櫻井哲夫“生涯のライフワーク”となる「ブラジル大好き」の1作目となる『CARTAS DO BRASIL』(以下『カルタス・ド・ブラジル』)は,櫻井哲夫の既発オリジナル曲をヴォーカル・ナンバーに仕立てたセルフ・カヴァー集。

 カシオペアジンサクへの提供曲がここまでブラジルしてしまうとは! お見事です。MPBど真ん中です。
 『カルタス・ド・ブラジル』のこの感覚はT−スクェアの『ヴォーカル・スクェア』を聴いた時と同じであって,インストのメロディー・ラインに歌詞が乗っても全く違和感がない。

 …と言うよりも元はインストなのに,初めからヴォーカル・ナンバーとして作曲されていたかのような素晴らしい出来映えである。トータルの完成度からすれば『ヴォーカル・スクェア』以上であろう。

 もしや櫻井哲夫の「ブラジル路線」はカシオペア在籍時から始まっていたのか? そう思ってオリジナル音源と聴き比べたりしたものだが,どちらも甲乙付け難い。

 ズバリ『カルタス・ド・ブラジル』で初めて,櫻井哲夫の“歌心”に開眼してしまった。テクニカルなベースを弾きながらも,インストを演奏しながらも,櫻井哲夫はいつも心の中で「歌を歌っていた」のだ。
 超絶技巧のカシオペアのアレンジでは感じなかった,櫻井哲夫の中のMPB。そう言えばカシオペアって,ブラジル公演も行なったよなぁ。

 とにかく『カルタス・ド・ブラジル』は“超絶ベーシスト櫻井哲夫を聴くアルバムではなく櫻井哲夫の“サウダージ”を聴くためのアルバムである。
 極論を書けば,櫻井哲夫は『カルタス・ド・ブラジル』で自らベースを弾かなくてもよかった。現地ブラジルのミュージシャンをコーディネイトと譜面を渡しさえすればすればよかった。もうその時点で『カルタス・ド・ブラジル』は完成したも同然だったから。後はちょちょっと最後の仕上げをするだけで「一丁上がり」!

CARTAS DO BRASIL-2 それくらいの大らかな雰囲気が『カルタス・ド・ブラジル』の中にある。MPBからの大物ゲスト・ヴォーカル陣=イヴァン・リンスジャヴァンフィロー・マシャードホーザ・パッソスタチアーナヴァレリア・オリヴェイラ,そして日本はオルケスタ・デ・ラ・ルスNORAが歌う,櫻井哲夫の“サウダージ”に心癒されてしまう。すごくいい。

 ある日,完全に脇役に徹している櫻井哲夫ベースを追いかけていて気付いたことがある。櫻井哲夫は1曲毎にベースの表情を変えてきている。
 スーパー・ウルトラ・テクニックを封印してもベースにこれほどの手間と時間をかけているのだった。

 櫻井哲夫の「ブラジル大好き」は,本物を超えた本物です!

  01. ELISA
  02. CANCAO DO CORACAO
  03. REAL
  04. VENUS
  05. COM A PAZ NO CORACAO
  06. A ESTRELA NAMORADA
  07. SAUDADE DE VOCE
  08. NAVEGANDO SOZINHO
  09. LA MADRUGADA
  10. SONHO DE VERAO
  11. TEMPLO DA ILUSAO

(ビクター/JVC 2003年発売/VICJ-61127)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

ドナルド・バード / コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.14

AT THE HALF NOTE CAFE VOLUME 1-1 本来ならば『AT THE HALF NOTE CAFE VOLUME 1』(以下『コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.1』)は(契約上の問題で)ドナルド・バードソロ名義ではなくペッパー・アダムスソロ名義になったはずのアルバムなのだから,ドナルド・バードの傍らにはペッパー・アダムスがいた,と書くべきであろう。

 しかし『コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.1』のサウンド・メイキングを聴く限り『コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.1』の主役は,ドナルド・バードトランペットではなく,ペッパー・アダムスバリトンサックスでもなく,デューク・ピアソンの“ファンキーな”ピアノで間違いない。

 そう。アート・ブレイキーの傍らにベニー・ゴルソンがいたように,ドナルド・バードの傍らにはデューク・ピアソンがいた。
 ドナルド・バードトランペットに絡むペッパー・アダムスバリトンサックスの相性の良さは「鉄板」なのだが,そんな「鉄板」を超えるドナルド・バードデューク・ピアソンの「新定番」が確立されたのが『コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.1』と『コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.2』での2枚のライブ盤なのである。

 長年連れ添ってきたドナルド・バードペッパー・アダムスの双頭コンボの蜜月関係に,デューク・ピアソンが初めて割って入ったのが『FUEGO』であったが,この時点でのデューク・ピアソンはまだ駆け出しのサイドメン。

 『FUEGO』『BYRD IN FLIGHT』でベニー・ゴルソン的な役割を果たしてきたデューク・ピアソンが,ついに『コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.1』では,自ら先頭に立って「デューク・ピアソンファンキー・ジャズ」を謳歌している。
 バップ・ラインに捉われない多様なサウンド・メイキングがノリに乗っていく。

 ズバリ『コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.1』におけるドナルド・バードペッパー・アダムスの存在価値とは,デューク・ピアソンの「持ち駒」であろう。
 デューク・ピアソンの指揮棒通りに演じられる,ドナルド・バードペッパー・アダムスのバトルとユニゾンとの塩梅が絶妙であって,結果,ゴリゴリしていない,都会的なファンキー・ジャズ=「デューク・ピアソンファンキー・ジャズ」が完成している。
 「知性」と「ファンキー」。「可憐」と「野生味」がデューク・ピアソン一流の“黄金比”でブレンドされている。

AT THE HALF NOTE CAFE VOLUME 1-2 管理人の結論。『コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.1批評

 デューク・ピアソンが,ドナルド・バードペッパー・アダムスの個性を引き出し描いた相反スケッチ。メンバー全員が突進することなく,それでいて芯があり,演奏にまとまりが感じられる。
 そう。ドナルド・バードの傍らにはデューク・ピアソンがいたのである。

 ライブ盤なのにスタジオ盤のような完璧な演奏に仕上がっている。
 この点をドナルド・バードの資質として素晴らしいと感じるか? ライブ盤っぽくないと残念だと感じるか?で『コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.1』の評価は二分されるように思う。

  01. INTRODUCTION BY RUTH MASON LION
  02. MY GIRL SHIRL
  03. SOULFUL KIDDY
  04. A PORTRAIT OF JENNIE
  05. CECILE
  06. THEME: PURE D. FUNK
  07. CHILD'S PLAY
  08. CHANT

(ブルーノート/BLUE NOTE 1960年発売/TOCJ-7108)
(ライナーノーツ/レナード・フェザー,岡崎正通)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

櫻井 哲夫 / ジェントル・ハーツ4

GENTLE HEARTS-1 “超絶ベーシスト櫻井哲夫が“スーパー・ギタリスト”のグレッグ・ハウと“爆裂ドラマー”のデニス・チェンバースを迎えて制作された「フュージョン+ロック+ファンクの混血セッション大会」が『GENTLE HEARTS』(以下『ジェントル・ハーツ』)である。

 とにかく凄い。凄すぎる。弾きまくりのセッションCDのド迫力に圧倒されてしまう。確かに「パンク・ロック・フュージョン」であろう。
 しかし,冷静に聴けるようになると革新的な「パンク・ロック・フュージョン」の原動力は,櫻井哲夫ではなくグレッグ・ハウだと思ってしまう。

 『ジェントル・ハーツ』はベーシストトリオではなく,ギタリストトリオである。
 完全に櫻井哲夫グレッグ・ハウにリードされてしまっている。デニス・チェンバースの耳もベースではなくギターを聴いている節がある。

 恐らくは櫻井哲夫の紳士的で文字通りの『ジェントル・ハーツ』な人間性が,櫻井カラーを薄めてしまった原因ではなかろうか?
 いいや,カシオペア的なアンサンブルではなく,ジンサク的なアンサンブルでもなく,ジャコ・パストリアス的なアンサンブルを求めた結果,単なる“超絶バトル”で終わってしまった,というのが本音では?

 何はともあれソロ活動開始後,初めてとなる“超絶ベーシスト”としてのアルバムに歓喜したものだ。“音楽家”としての櫻井哲夫を聴き続けたいと願う反面,こうも“超絶ベーシスト”が封印され続けると「思いっきり弾いてくれ〜」とフラストレーションが溜まってしまうものですから…。

 そういう意味では『ジェントル・ハーツ』の本質は,櫻井哲夫にとっても櫻井哲夫のファンにとっても「ガス抜き」である。
 そういう意味では『ジェントル・ハーツ』の続編となる『GENTLE HEARTS TOUR 2004』や『VITAL WORLD』もアウトローな「ガス抜き」である。

GENTLE HEARTS-2 管理人の結論。『ジェントル・ハーツ批評

 「パンク・ロック・フュージョン」路線の『ジェントル・ハーツ』の真価は,メロディーの中でベースをどれだけ「弾き倒すか」で決まるのであって,高度なアンサンブルとか楽曲の完成度までは求めてはならない。

 その意味で『ジェントル・ハーツ』は今一歩。ジャケ裏に書かれた“侍”の大文字の如く,野生の本能の赴くままに感情の発露をベースに乗せてくれたなら…。

PS 【SAMURAI FAITH】を聴く度に,どこぞやにヒット曲を聴いている気分になる。ラジオの「パワープレイ」か何かで繰り返し耳にした曲に似ているだけなのだろうか? 喉元まで出てきているのに最後の最後で出てこない。【SAMURAI FAITH】を聴く度に,どうしても思い出せずに,モヤモヤさまぁ〜ず。

  01. SAMURAI FAITH
  02. BRAIN STORM
  03. PUNK JAZZ
  04. GENTLE HEARTS
  05. THE INVISIBLE WAY
  06. MAXIMUM
  07. WONDERLAND IN THE SKY
  08. DANDELION

(ビクター/JVC 2001年発売/VICJ-60735)
(ライナーノーツ/櫻井哲夫)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

ドナルド・バード / バード・イン・フライト5

BYRD IN FLIGHT-1 『BYRD IN FLIGHT』(以下『バード・イン・フライト』)は,ジャズを聴き始めた頃から,ドナルド・バードを聴き始めた頃からずっと好きだった。

 『バード・イン・フライト』のメンバーは,トランペットドナルド・バードテナーサックスハンク・モブレーアルトサックスジャッキー・マクリーンピアノデューク・ピアソンベースタグ・ワトキンスレジー・ワークマンドラムレックス・ハンフリーズである。悪かろうはずがない。

 「ブルーノートの助さん&格さん」ハンク・モブレージャッキー・マクリーンの色彩豊かなコントラスト。どちらが上でも下でもない。どちらを取っても,サイドに回った時に実力以上の名演を残す「B級の顔」らしい,最高に素晴らしい演奏である。
 オーソドックスなクインテットというのも悪くはないが,惜しむべきはなぜ3管で来なかったのだろう?

 『バード・イン・フライト』の全6トラックは【GHANA】【LITTLE BOY BLUE】【GATE CITY】【LEX】【“BO”】【MY GIRL SHIRL】の佳曲揃い。悪かろうはずがない。

 アフリカと見せかけておいて実はアフロキューバンな【GHANA】の疾走感が最高である。ブルーノートの名曲群の中に必らず名前が挙げられる【MY GIRL SHIRL】のおフランス的なアンニュイな雰囲気が最高である。

 そう。『バード・イン・フライト』は,全ブルーノート好きが選ぶ,そして全ハード・バップ好きが選ぶ,そして全モダン・ジャズ・マニアが選んだ名盤である。管理人の昔からの愛聴盤である。

 しか〜し,管理人が『バード・イン・フライト』を,本気でここまで好きになったのは近年のことである。この好きの感情は別の次元からやってきた。山中千尋である。

 そう。山中千尋ドナルド・バードの「裏名盤」として『バード・イン・フライト』を挙げていたのだ。
 恥ずかしながら管理人には,実はこんな経験がたくさんあって,今回も自分の気になるジャズメンがいいと言うから好きになるパターン。

 今回は山中千尋の発言を取り上げたのだから,ライバルである上原ひろみの発言を例に説明しよう。
 過去に上原ひろみが「私の選ぶ10枚」だったか何かで,管理人の“フェイバリットキース・ジャレットの『スタンダーズ・イン・ノルウェイ』を挙げていた。

BYRD IN FLIGHT-2 管理人はその事実に凄く驚いた。世評における『スタンダーズ・イン・ノルウェイ』の評価はキース・ジャレットトリオの『??』の出涸らし。無論,キース・ジャレットの場合は出涸らしであっても超ド級の一級品に違いはないが,やはりキース・ジャレットの他のアルバムと比較したらワンランク落ちると管理人も思っていた。

 そうして改めて聴いた『スタンダーズ・イン・ノルウェイ』! 上原ひろみよ,あなたは何故にそんなにジャズのことが分かっているのか! 抜群にいいではないか!
 そうして改めて聴いた『バード・イン・フライト』! 山中千尋よ,あなたは何故にそんなにジャズのことが分かっているのか! 抜群にいいではないか!

 だ・か・ら『バード・イン・フライト』が以前よりもっと好きになった! ドナルド・バードが以前よりずっと好きになった! 山中千尋ももっとずっと好きになった!

 ズバリ,山中千尋が教えてくれた『バード・イン・フライト』こそがドナルド・バードの「裏名盤」である。

  01. GHANA
  02. LITTLE BOY BLUE
  03. GATE CITY
  04. LEX
  05. "BO"
  06. MY GIRL SHIRL

(ブルーノート/BLUE NOTE 1960年発売/TOCJ-4048)
(ライナーノーツ/ナット・ヘントフ,原田和典,大西米寛)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

パット・メセニー / ユニティ・セッションズ4

THE UNITY SESSIONS-1 パット・メセニーの「UNITY BAND」 → 「UNITY GROUP」プロジェクトの集大成となるDVDTHE UNITY SESSIONS』(以下『ユニティ・セッションズ』)。

 『ユニティ・セッションズ』の映像から「何もそこまでしなくても」的なパット・メセニーの「濃厚すぎる今!」が伝わってくる。
 ついに「パット・メセニー・グループ」の『THE WAY UP』を超えてきたか?

 当然と言えば当然なのだが,実に素晴らしい演奏である。パット・メセニーが,クリス・ポッターサックスに,アントニオ・サンチェスドラムに,ベン・ウィリアムスベースに“ゾッコン”惚れ込んでいることが画面から(表情から)伝わってくる。

 …で,管理人の結論。『ユニティ・セッションズ批評

 管理人にとってパット・メセニーのイメージと来れば,いつまで経ってもECM時代のパット・メセニーのまんまである。
 『BRIGHT SIZE LIFE』『PAT METHENY GROUP』『AMERICAN GARAGE』『OFFRAMP』『TRAVELS』の時のような,ボーダーシャツにジーンズで髪ぼさぼさなのに音楽だけは絶対に手を抜かない爽やかな好青年だった。

 あれから30年。『ユニティ・セッションズ』は凄いんだけど,聴いていて楽しくはない。音数を詰め込みすぎでアレンジも凝りまくっている。手に汗握る展開が多くリラックスして楽しめない。

 一体,いつ頃からパット・メセニーは「アーティスト気質」のジャズ職人になってしまったのだろうか? フュージョン界でアイドルしていた頃の面影が全く残されていない。
 「ゲフィンは下品」で好きではないのだけど,今のパット・メセニーを聴くんだったらゲフィン時代のパット・メセニーを聴きたいと思う。

 『ユニティ・セッションズ』の内容は最高なんだけど,パット・メセニーの“本物志向”が管理人の求めるパット・メセニーからどんどんどんどんレベルアップしてしまって,こちらが追いつけないというか…。
 もうちょっとだけメセニー・ファンの期待も考慮してほしいと言うか,エンターテイメント性も考慮してほしいと言うか…。
 クリエイティブな中身とは別の分野で不満が募ってしまいます。

THE UNITY SESSIONS-2 実はこの『ユニティ・セッションズ』。パット・メセニーの「ステージ上は最高の客席というだけでなく,共演するミュージシャンの演奏を最も良く聴ける場所」との持論に基づく“鶴の一声”で「視聴者がバンドの視点で演奏を聴く」という録画方法へ変更・制作されたシロモノなのである。
 一度は決まっていた10/10東京公演での撮影シューティングを白紙に戻してまで…。

 『ユニティ・セッションズ』を見て,完璧な演奏に打ちのめされた管理人は,興奮して,しかしこうも思うのだった。
 「これっ,本当は東京で撮影シューティングされる予定だったんだよなぁ。そして管理人と妻も写り込む予定だったんだよなぁ」。

 そう。管理人にとって『ユニティ・セッションズ』とは「新婚旅行のメイン・コンテンツ」。挙式後すぐに旅行にはいかず“敢えて”パット・メセニーのシューティング・ライブの日程に新婚旅行を被せるという裏技。

 でもでも『ユニティ・セッションズ』の,恐ろしい完成度&完璧な仕上りを見せつけられたら,もう愚痴なんてこぼせっこない。好き嫌いを越えた部分で感動が1曲毎に押し寄せる。

  01. GENEALOGY
  02. ON DAY ONE
  03. THIS BELONGS TO YOU
  04. ROOFDOGS
  05. COME AND SEE
  06. KIN
  07. BORN
  08. RISE UP
  09. ADAGIA
  10. SIGN OF THE SEASON
  11. GO GET IT
  12. CHEROKEE
  13. POLICE PEOPLE
  14. TWO FOLK SONGS (#1)
  15. MEDLEY; PHASE DANCE / MINUANO / PRAISE / AS IT IS /
     OMAHA CELEBRATION / ANTONIA / THIS IS NOT AMERICA /
     LAST TRAIN HOME

  16. BONUS INTERVIEW

    PAT METHENY : Electric Guitar, Acoustic Guitar, Guitar Synth,
             Electronics, Orchestrionics

    CHRIS POTTER : Tenor Sax, Soprano Sax, Bass Clarinet, Flute,
             Guitar

    ANTONIO SANCHEZ : Drums, Cajon
    BEN WILLIAMS : Acoustic Bass, Electric Bass
    GIULIO CARMASSI : Piano, Flugelhorn, Whistling, Synth,
               Vocals


(ヤマハミュージックメディア/EAGLE VISION 2015年発売/YMBS-10596)
(ライナーノーツ/パット・メセニー,杉田宏樹)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

櫻井 哲夫 / TLM20〜LIVE MEMORIES IN 20 YEARS4

TLM20〜LIVE MEMORIES IN 20 YEARS-1 “スーパー・ベーシスト櫻井哲夫の「デビュー20周年記念」のライブ盤『TLM20〜LIVE MEMORIES IN 20 YEARS』とは,カシオペアジンサク時代の櫻井哲夫オリジナル集を“演奏しまくる”四部構成のライブ盤である。

 その四部構成の内訳とは…
・第一部は勝田一樹が入った「櫻井哲夫 & 勝田一樹 WITH カシオペア」。
・第二部は「櫻井哲夫 & 神保彰」による【FIREWATER】と【FUNKY PUNCH】でのジンサク100%』復活パート。
・第三部は「カシオペア FEATURING 櫻井哲夫」による【SAILING ALONE】。
・第四部は櫻井哲夫ベース・ソロBASS SOLO 2000】。

 ゆえに『TLM20〜LIVE MEMORIES IN 20 YEARS』のフォーメーションは“スーパー・ベーシスト櫻井哲夫が一人前へ出て,次にドラム神保彰が一人前へ出て,その次にギター野呂一生キーボード向谷実が二人前へ出て,四列目にサックス勝田一樹が控える構図であろう。

 そう。基本的には櫻井哲夫の「デビュー20周年記念」にかこつけた「第一期カシオペア」の復活祭が“狙い”である。危うくばこれを機会にカシオペアに復帰できるかも…。
 櫻井哲夫も,いいや,野呂一生向谷実神保彰も,心のどこかに否定できない“淡い期待”があったと思う。

 しか〜し『TLM20〜LIVE MEMORIES IN 20 YEARS』から飛び出してきた音楽は,どうにもこうにも“カシオペアっぽくない”。
 黄金期のメンバーで演奏しているのに,明らかにあの頃のカシオペアになりきれていない。

TLM20〜LIVE MEMORIES IN 20 YEARS-2 その最大の理由はサックス勝田一樹のブロウにある。
 勝田一樹サックスが鳴れば,バックがカシオペアなのにDIMENSIONに聴こえてしまう。勝田一樹は“物凄い個性”を持っている。

 もはやカシオペアには戻れない。櫻井哲夫本人も(そして野呂一生向谷実神保彰も)自覚したであろう「デビュー20周年記念」のカシオペアからの完全卒業ライブ盤である。

  01. CHAOS
  02. I'M GONNA CATCH YOU
  03. DISPENSATION
  04. ALISA
  05. FIREWATER
  06. FUNKY PUNCH
  07. SAILING ALONE
  08. RED ZONE
  09. BASS SOLO 2000
  10. YOU CAN DO IT!
  11. 45゚C

(ビクター/JVC 2000年発売/VICJ-60644)
(ライナーノーツ/櫻井哲夫)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

ドナルド・バード / フュエゴ5

FUEGO-1 ドナルド・バードの代表作にしてファンキー・ジャズ屈指の名盤と讃えられる『FUEGO』(以下『フュエゴ』)。

 『フュエゴ』の高評価に異論はない。ただし,管理人が評価する『フュエゴ』とは“踊れるハード・バップ”であり“POPなハード・バップ”としての『フュエゴ』である。
 ズバリ,ドナルド・バードファンキー・ジャズとは,アート・ブレイキーホレス・シルヴァーキャノンボール・アダレイからイメージする一般的なファンキー・ジャズとは一線を画している。

 例えば,アート・ブレイキーの【MOANIN’】。ホレス・シルヴァーの【SONG FOR MY FATHER】。キャノンボール・アダレイの【MERCY,MERCY,MERCY】。これらは躊躇せずに踊れる,と言うか本質として乗れる。

 一方,ドナルド・バードの場合はファンキーと言ってもまだまだ品の良さが漂う。
 『フュエゴ』の本質とはドナルド・バードの素朴で歌心のある演奏に,ブルーノート独特の“黒っぽい”サウンドエンジニアリングが相乗して合成されたファンキー・ジャズである。

 ズバリ『フュエゴ』の音楽監督はデューク・ピアソンである。デューク・ピアソンのゴスペル・ピアノが,デューク・ピアソンの“COOL”なソロ名義とは聞き違えるほどに乗っている。
 デューク・ピアソンの“HOTな”ピアノが『フュエゴ』を“踊れるハード・バップ”へと強烈に押し上げている。

 加えて,この流れで書いておかねばならないのは『フュエゴ』の主役は,ドナルド・バードトランペットではなくジャッキー・マクリーンアルトサックスである。
 マイナー・トーンを吹かせたら無双の強さを発揮するジャッキー・マクリーンが『フュエゴ』のアーシーな雰囲気に一役買っている。饒舌さはない。シンプルなロングトーンを多様した何とも情緒的なアルトサックスが延々と鳴り続ける。

 そんなジャッキー・マクリーンに脇役ユニゾンをとらせたテーマだけがドナルド・バードの出番である。ドナルド・バードの力強くもとっつきやすいトランペットがなかなかのもので,確かにドナルド・バードトランペットソロを聴いて「これぞ,ファンキー・ジャズの王道」と誤って思い込んでしまうマニアの気持ちも理解できる。

FUEGO-2 『フュエゴ』の全6曲のメロディー・ラインは耳に残るものばかり。キャッチーで覚えやすいテーマばかり。自然と口ずさめるのはホレス・シルヴァーベニー・ゴルソンの作曲したハーモニー・ラインに乗っている。

 ただし,ドナルド・バードの場合,この全てが天性のノリではなく計算されたノリで出来上がっている。一般的なファンキー・ジャズとの「アザトサのチラミセ」が,ハード・バップでもなくファンキーでもない“孤高の”ファンキー・ジャズたらしめる魅力なのである。

 もしかしたら『フュエゴ』というアルバムは,頭脳明晰なドナルド・バードが,当時のジャズ界の革新であったモードの楽譜を見つめながら,ああではない,こうではない,と演奏したのでは?

 管理人的には『フュエゴ』=ドナルド・バードファンキー・ジャズとして語られる風潮には反対ではありますが,まぁ,正直『フュエゴ』が,ハード・バップであろうとファンキー・ジャズであろうと,別にどっちでもいいんです。

 大切なのは『フュエゴ』を読者の皆さんにも聴くていただきたい,ということ。絶対にジャズが好きになりますよっ。

  01. FUEGO
  02. BUP A LOUP
  03. FUNKY MAMA
  04. LOW LIFE
  05. LAMENT
  06. AMEN

(ブルーノート/BLUE NOTE 1960年発売/TOCJ-7017)
(ライナーノーツ/レナード・フェザー,原田和典)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

スイングジャーナル主催 ジャズ・ディスク大賞 1982年度(第16回)

 「スイングジャーナル」誌が,レコード会社各社の自薦ノミネート作品を基にして,国内で該当年度中に発売されたCDLPビデオを対象に同誌委託の「ジャズ・ディスク大賞選考委員」によって選出される,日本ジャズ界に最も貢献した作品に贈られる「ジャズ・ディスク大賞」。

 今回は1982年度(第16回)の発表です。

----------------------------------------------------------------------------

ウィ・ウォント・マイルス+3★【金賞】.ウィ・ウォント・マイルス
マイルス・デイビス


----------------------------------------------------------------------------

ニューヨーク1980 ギル・エヴァンス・ライブ・アット・ザ・パブリック・シアター★【銀賞】.ニューヨーク1980 ギル・エヴァンス・ライブ・アット・ザ・パブリック・シアター
ギル・エバンス

----------------------------------------------------------------------------

枯葉★【ボーカル賞】.枯葉
サラ・ボーン


----------------------------------------------------------------------------

スピリチュアル・モーメンツ★【日本ジャズ賞】.スピリチュアル・モーメンツ
富樫雅彦


----------------------------------------------------------------------------

ブロッサム★【録音賞(海外)】.ブロッサム
サブラマニアム・ウイズ・ハービー・ハンコック〜ラリー・コリエル

----------------------------------------------------------------------------

Eyewitness★【録音賞(国内)】.目撃者
スティーヴ・カーン


----------------------------------------------------------------------------

RCAスイング・バンド〜レディ・シンガー・コレクション★【制作企画賞】.RCAスイング・バンド〜レディ・シンガー・コレクション (全12枚)


----------------------------------------------------------------------------

★【制作企画賞】.一連のテイチク株式会社自主制作ジャズ・アルバム

----------------------------------------------------------------------------

 『ウィ・ウォント・マイルス』が【金賞】受賞。
 【金賞】受賞をマイルス・デイビスの“完全復活”と読むのが普通の反応なのだろうが,管理人的には「時代がジャコ・パストリアスからマーカス・ミラーへと動いた」と読んでしまう。

 管理人はマーカス・ミラーが大好きでして,当然全てのリーダー・アルバムをフォローしているのだが,実は一番好きなマーカス・ミラーと来れば,デビュー直後のセッションベーシスト時代である。

 フュージョン名盤に「ファースト・コール」で参加していた,あのマーカス・ミラージャズを演奏した。それも“帝王”マイルス・デイビスに見初められての大暴れ!

 『ウィ・ウォント・マイルス』には,マイルス・デイビスが愛した,管理人も愛した,そして全ジャズフュージョン・ファンも愛するであろう,マーカス・ミラー“必殺”の超絶チョッパーが記録されている。

 超絶ベーシストマーカス・ミラーを見逃さない,マイルス・デイビスの“眼力”こそがマイルス・デイビス“完全復活”の証しであろう。

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

第59回(2016年度)グラミー賞 ジャズ部門-NO.1

 大晦日は,アドリブログでも,ジャズフュージョンの総決算!
 2016年,グラミー賞ノミネート作についてレポートします。

 読者の皆さんには,管理人の一押しよりも,この中からジャズフュージョンに接することを(謙虚になって)お奨めいたします。

----------------------------------------------------------------------------

Category 31. Best Improvised Jazz Solo


☆ CountdownJoey Alexander, soloist / Track from: Countdown
☆ In MovementRavi Coltrane, soloist / Track from: In Movement (Jack DeJohnette, Ravi Coltrane & Matthew Garrison)
☆ We SeeFred Hersch, soloist / Track from: Sunday Night At The Vanguard (The Fred Hersch Trio)
☆ I Concentrate On YouBrad Mehldau, soloist / Track from: Blues And Ballads (Brad Mehldau Trio)
☆ I'm So Lonesome I Could CryJohn Scofield, soloist / Track from: Country For Old Men

----------------------------------------------------------------------------

Category 32. Best Jazz Vocal Album


☆ Sound Of RedRene Marie
☆ Upward SpiralBranford Marsalis Quartet With Special Guest Kurt Elling
☆ Take Me To The AlleyGregory Porter
☆ Harlem On My MindCatherine Russell
☆ The Sting VariationsThe Tierney Sutton Band

----------------------------------------------------------------------------

Category 33. Best Jazz Instrumental Album


☆ Book Of IntuitionKenny Barron Trio
☆ Country For Old MenJohn Scofield
☆ Dr. UmPeter Erskine
☆ Sunday Night At The VanguardThe Fred Hersch Trio
☆ NearnessJoshua Redman & Brad Mehldau

----------------------------------------------------------------------------

Category 34. Best Large Jazz Ensemble Album


☆ Real EnemiesDarcy James Argue's Secret Society
☆ MONK'estra, Vol.1John Beasley
☆ Kaleidoscope Eyes: Music Of The BeatlesJohn Daversa
☆ All L.A. BandBob Mintzer
☆ Presidential Suite: Eight Variations On FreedomTed Nash Big Band

----------------------------------------------------------------------------

Category 35. Best Latin Jazz Album


☆ Entre ColegasAndy Gonzalez
☆ Madera Latino: A Latin Jazz Perspective On The Music Of Woody ShawBrian Lynch & Various Artists
☆ Canto AmericaMichael Spiro/Wayne Wallace La Orquesta Sinfonietta
☆ 30Trio Da Paz
☆ Tribute To Irakere: Live In MarciacChucho Valdes

----------------------------------------------------------------------------

 以上がノミネート一覧なんですが,今年も管理人の趣味・趣向とは相容れませんが,少しはこの結果に納得してもいます。ちょっとは進歩したのかなぁ。
 来年こそは「打倒! ジャズ・ジャーナリズム」を達成すべく(無理は承知で)まずは“自分の耳を鍛え上げなければ”!
 これが来年の(当然ながら再来年以降も)プチ抱負です。

PS 2月に受賞作が決定しましたら(そのCDを所有している場合に限り)レビューしようと思っています。どうぞお楽しみに!

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

ドナルド・バード / バード・イン・ハンド5

BYRD IN HAND-1 “最高傑作”『オフ・トゥ・ザ・レイシス』を軸として,一層細かな音楽表現を意識したハード・バップの名盤。それが『BYRD IN HAND』(以下『バード・イン・ハンド』)である。
 『バード・イン・ハンド』の“落ち着き払った”アレンジは,どことなく同じ3管フロント,アート・ファーマーベニー・ゴルソンカーティス・フラーによる「ジャズテット」をイメージしてしまう。

 ドナルド・バードは『バード・イン・ハンド』で,他とは一線を画す“知的なハード・バップ”を訴求していた。美メロと物悲しい音色の絶妙の組み合わせ1。すなわち3管フロントの再編となるテナーサックスの導入である。

 ドナルド・バードの音楽を聴くと,すぐに感じる丁寧に計算されたアンサンブルの妙。管楽器の中で一番高音域のトランペットと木管楽器の中で一番低音域のバリトンサックス。その中間のサックスアルトなのか? それともテナーなのか?

 基本的にはドナルド・バードが『バード・イン・ハンド』で下した選択は正しいと思う。3管フロントが最も輝くのはトランペットバリトンアルトではなくテナーの方だろう。
 チャーリー・ラウズテナーサックスが素晴らしい。マイナー調の曲想とチャーリー・ラウズの老練でダークな持ち味がズバリ。ペッパー・アダムスとの迫力あるユニゾンがきれいにまとめ上げられている。

 しかし“まろやかな渋みのトランペッタードナルド・バードの場合は「アルト OR テナー」の選択ではなく「ジャッキー・マクリーン OR チャーリー・ラウズ」の選択である。
 『オフ・トゥ・ザ・レイシス』の3管と『バード・イン・ハンド』の3管を聴き比べると,ドナルド・バードと相性がいいのはアルトサックスジャッキー・マクリーンの方であろう。

BYRD IN HAND-2 気合い一発系ながらも朴訥なジャッキー・マクリーンアルトサックスドナルド・バードの憂いを湛えたまろやかなトランペットの音色が寄り添うことで,全体の厚みを保ちながら物悲しさを滲ませるという相乗効果を発揮することにつながっている。
 『オフ・トゥ・ザ・レイシス』がジャッキー・マクリーンだし『フュエゴ』もジャッキー・マクリーンだし…。

 おおっと誤解のありませんように! 『バード・イン・ハンド』を『オフ・トゥ・ザ・レイシス』より劣るトーンで,チャーリー・ラウズジャッキー・マクリーンより劣るトーンで書いているが,10回中1回は『オフ・トゥ・ザ・レイシス』よりも『バード・イン・ハンド』が素晴らしい,と思う夜が来る!

 キレイ目ハード・バップの代表的な名盤として『バード・イン・ハンド』をお忘れなく…。

  01. WITCHCRAFT
  02. HERE AM I
  03. DEVIL WHIP
  04. BRONZE DANCE
  05. CLARION CALLS
  06. THE INJUNS

(ブルーノート/BLUE NOTE 1959年発売/TOCJ-9099)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/アイラ・ギトラー,小川隆夫)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

櫻井 哲夫 / 21世紀の扉4

A GATE OF THE 21ST CENTURY-1 カシオペアの脱退〜シャンバラの結成〜ジンサクの結成と,18年間行動を共にしてきた神保彰とのユニット活動が終了。

 晴れてソロ活動に専念することになった櫻井哲夫の13年振りとなるソロ・アルバムが『A GATE OF THE 21ST CENTURY』(以下『21世紀の扉』)である。
( 余談ですが櫻井さん。ジンサク始動前後から名前の漢字表記が桜井哲夫から櫻井哲夫になっております )

 ズバリ『21世紀の扉』の真意は『櫻井哲夫の扉』であって,櫻井哲夫のこれまで閉じられていたゲートをオープンの意!

 そのキーマンとして指名されたのが“爆裂ドラマーデニス・チェンバースであった。「世界の神保彰」と夫婦以上に“連れ添ってきた”櫻井哲夫にしてみれば,神保彰クラスの超大物=デニス・チェンバースとの共演は必然の選択であろう。

 ではデニス・チェンバースの「爆撃型」ドラム櫻井哲夫のスタイルに合うかと言われると,櫻井哲夫デニス・チェンバースの使い方を間違えたと思う。
 “猛獣”デニス・チェンバースを上手に使いこなすには,ジョン・スコフィールドゲイリー・トマスのような「ワイルドさ」がないとねっ。

 『21世紀の扉』では“紳士”を通した櫻井哲夫が“猛獣使い”へと成長するのは『VITAL WORLD』でのことである。『GENTLE HEARTS』もグレッグ・ハウに引っ張られていい感じではあるが,タイトルがまだ“紳士”していますから〜。

A GATE OF THE 21ST CENTURY-2 そう。『21世紀の扉』のハイライトはデニス・チェンバースではなく,やっぱり櫻井哲夫と来れば「歌もの」の【NEVER ENDING WORLD】である。
 何か,いつかどこかTVの主題歌として聞いたことがある感じ? 【NEVER ENDING WORLD】が流れ出すと,管理人,曲の最初から最後まで口ずさんでしまいます! 大好き!

 管理人の結論。『21世紀の扉批評

 ズバリ,デニス・チェンバースとハードなプログレ系リズム隊を組んだ『21世紀の扉』では『櫻井哲夫の扉』は開かなかった。
 ただし『櫻井哲夫の扉』には幾種類もの『』が存在することを確認できたのは収穫である。櫻井哲夫ベースだけ,フュージョンだけではない“総合的なアーティスト”である。

 個人的には『21世紀の扉』の出来のバラツキを聴く限り,櫻井哲夫ソロ活動は,温厚な「ゆるキャラ」路線がお似合いのように思う…。

  01. SHAKE YOUR HIP
  02. VITAL PEOPLE
  03. YOU CAN DO IT!
  04. ANGEL SMILE
  05. NEVER ENDING WORLD
  06. THE SUNSHINE
  07. SILENCE IN THE MOONLIGHT
  08. NOAH'S ARK
  09. A ESTRELA NAMORADA

(ガーデニアン/GARDENIAN 1999年発売/CRCI-20384)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

ドナルド・バード / オフ・トゥ・ザ・レイシス5

OFF TO THE RACES-1 『OFF TO THE RACES』(以下『オフ・トゥ・ザ・レイシス』)こそが,ドナルド・バードの“最高傑作”である。

 ブルーノートには1500番台でのサイドメンも含めてドナルド・バード名演が数多く残されている。セールス的には後年のファンキー路線の方が成功を収めている。
 でも,それでも,管理人にとってドナルド・バードと来れば,問答無用で『オフ・トゥ・ザ・レイシス』なのだ。とにかくカッコ良い。このカッコ良さは「花形」トランペッターとして活動することを許された,わずか数人だけが醸し出すことのできる“味”なのである。

 そんなジャズ・トランペット特有のカッコ良さがギッシリと詰め込まれているアルバムはブルーノートのコレクションを見渡しても,いいや,ハード・バップの歴史的名演を見回しても『オフ・トゥ・ザ・レイシス』以外には見つからない。

 『オフ・トゥ・ザ・レイシス』は,アルトサックスジャッキー・マクリーンバリトンサックスペッパー・アダムスと組んだ3管フロントによる直球ハード・バップ。
 ことに3管,しかもバリトンサックスと来れば“コテコテの分厚いアンサンブル”をイメージするのだが『オフ・トゥ・ザ・レイシス』にはそれがない。3管なのに暑苦しさのかけらもない。
 ホッとできると言うか,小難しいところなんて皆無だし,軽やかにサクサクとアンサンブルが突き進んでいく。

 ズバリ,この独特なアンサンブルこそが“ジャズ・トランペッタードナルド・バード“特有の味”!
 例えば,同じクリフォード・ブラウン直系のリー・モーガンフレディ・ハバードであれば,熱くなると天井知らずのエモーションというか,トランペッターの本能ともいうべき強烈なエゴイズムを感じずにはいられないのだが,ドナルド・バードの場合は,どんなに熱く盛り上がろうとも,常に全体をクールに見つめている。
 まるでマイルス・デイビスのように…。あたかもウェイン・ショーターのように…。

 そう。ハイノートをビシビシとヒットさせるではなく,中音域を中心に組み立てられたメロディアスなフレーズが「金管」トランペットから連発する。
 感情表現だけではない“カラフルな展開と仕掛け”にこそ,ドナルド・バードの唯一無二の個性を強く感じてしまう。

 1曲目の【LOVER COME BACK TO ME】と2曲目の【WHEN YOUR LOVER HAS GONE】も相当に良い。
 しかし『オフ・トゥ・ザ・レイシス』のハイライトは3曲目の【SUDWEST FUNK】である。特に1分8秒からのハイ上がり! そこからさらにハイ上がる6分22秒からのハーモニーこそが,モダン・ジャズ史上「指折り」の“燃え&萌え”! このアンサンブル,カッコヨスギ!

 管理人は『オフ・トゥ・ザ・レイシス』は3曲目から聴き始める。憂鬱な気分も1曲聴き終える頃には吹き飛んでしまっている。
 CD時代には,3曲目から聴き始めてそのまま6曲目までで聴き終えるのが常だった。しかしリッピングを行なうようになってからは1曲目と2曲目も聴くようになった。
 それまでほとんど聴いてこなかったから急速調の【LOVER COME BACK TO ME】と美しい音色のバラードWHEN YOUR LOVER HAS GONE】がめちゃめちゃ楽しい。
 この個人的な不思議体験が『オフ・トゥ・ザ・レイシス』を「1粒で2度おいしい」“特別な1枚”へと押し上げてくれる。

OFF TO THE RACES-2 管理人の結論。『オフ・トゥ・ザ・レイシス批評

 『オフ・トゥ・ザ・レイシス』は絶対名盤である。【SUDWEST FUNK】は絶対名曲である。
 ドナルド・バードを「しゃぶり尽くしたいのなら」そしてジャズ・トランペットに「酔いしれたいのなら」『オフ・トゥ・ザ・レイシス』で決まりである。

 『オフ・トゥ・ザ・レイシス』の真骨頂を味わいたいのなら【SUDWEST FUNK】からアルバム全体を聴き始めることをお奨めする。
 「ジャズ批評家」セラビーの名とプライドをかけて,絶対に満足することをここに保証する。

  01. LOVER COME BACK TO ME
  02. WHEN YOUR LOVER HAS GONE
  03. SUDWEST FUNK
  04. PAUL'S PAL
  05. OFF TO THE RACES
  06. DOWN TEMPO

(ブルーノート/BLUE NOTE 1959年発売/TOCJ-6465)
(ライナーノーツ/ジョー・ゴールドバーグ,高井信成)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

桜井 哲夫 / DEWDROPS5

DEWDROPS-1 『DEWDROPS』については,元カシオペア桜井哲夫ファーストソロと紹介するより,元シャンバラ桜井哲夫ファーストソロと紹介する方がふさわしいと思っている。

 『DEWDROPS』はテクニカルなインスト・メインではない。『DEWDROPS』のメインは歌ものである。ヴォーカルである。
 そう。桜井哲夫シャンバラで目指したのは『DEWDROPS』の“延長拡大バンド”だったと思う。『DEWDROPS』で完成させた“シティ系POPバンド”だったと思う。

 『DEWDROPS』の基本はカシオペアの16ビートではなく非カシオペアの8ビート。しかもバリバリのチョッパー・チューンはラストの1曲のみ。中にはベースを弾いていない曲もある。男女掛け合いのヴォーカル・ナンバーや和太鼓と琴のヘンテコな曲がクセになる?

 アルバムの方向性などはない。カシオペア・ファンが買いそうな内容ではない。いいんです。それでいいんです。
 なぜならば『DEWDROPS』は,桜井哲夫が仕事としてではなく,全くの“個人的な趣味”で作ったアルバムなのだから…。

 『DEWDROPS』のコンセプトは,自作のオリジナル曲を自分が弾いてもらいたい人に自由に弾いてもらう。
 例えばサックス伊東たけしジェイク・H・コンセプション高野正幹ギターシンセサイザー鳥山雄司ギター和田アキラ松下誠吉川忠英キーボード森村献井上鑑ピアノ橋本一子ドラム青山純宮崎全弘パーカッション仙波清彦浜口茂外也トランペット数原晋林研一郎トロンボーン平内保夫,そしてヴォーカリスト楠木勇有行堀口和男山川恵津子大野えりCINDYMARVINKUMI! 正に桜井哲夫の「100%趣味丸出し」なミュージシャン!

 1986年にカシオペアはバンドの充電期間の一環として,メンバー全員のソロ・アルバムをリリースすることになった。
 野呂一生の『SWEET SPHERE』。向谷実の『WELCOME TO THE MINORU’S LAND』。神保彰の『COTTON’』。桜井哲夫の『DEWDROPS』がそれである。

 この4枚「揃い踏み」を聴き比べて,1人桜井哲夫の『DEWDROPS』だけが浮いて聴こえたことを覚えている。
 桜井哲夫だけが,自分の得意技(超絶ベーシスト)を封印し,自分のカテゴラリー(フュージョンあるいはインストルメンタル)からも逸脱し“シティ系”を気取っていたが,当時は分からなかったその理由を今となっては理解できる。桜井哲夫の30年間をずっと追いかけてきたから理解できる。

 とにかく今となっては『DEWDROPS』こそが,桜井哲夫のルーツ,桜井哲夫の全てであった,と断言できる!

DEWDROPS-2 キーワードは作詞にある。当時は歌詞なんて聴いておらずヴォーカルも楽器の一部的な捉え方をしていたのだが,今では俄然,歌詞に耳が行くようになった。
 “スーパー・ベーシスト桜井哲夫が,こんなにも素直に表現していたなんて…。恥ずかしげもなく書いていたなんて…。

 桜井哲夫は「無垢な男」だと思う。桜井哲夫は「真面目な男」だと思う。桜井哲夫の真価は「歌もの」に如実に表われるのである。
 その実,ベース一本で生きていると思わせといて,それは仕事だからであって,素の桜井哲夫という男は一本の万年筆をベースに持ち替えて生きている。

 これほどまでに「歌もの」が好きななのだから,いつの日かまたシャンバラをやってほしいと思う。『DEWDROPS』バンドをやってほしいと思う。心からそう思う。

  01. REFRESH!
  02. IN THE DISTANCE
  03. NIGHT DEW
  04. KIMONO
  05. TENSION
  06. EARTH CALLING SPACE
  07. VENUS
  08. JESTER'S DANCE
  09. PROPHET VOYAGER

(ビクター/JVC 1986年発売/VDR-1181)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

ビル・チャーラップ・トリオ / ディスタント・スター5

'DISTANT STAR-1 ビル・チャーラップビル・シャーラップ。両名とも英語では「BILL CHARLAP」と書く。そう。同一人物である。
 こんなパターンはたくさんあって,思いつくままに書くと,ジャック・デジョネットジャック・ディジョネットとか,デヴィッド・サンボーンデイヴィッド・サンボーンとか,マイルス・デイビスマイルス・デイヴィスとか,その多くはレーベルとかレコード会社が変わると日本語表記が変わったりする。

 まっ,普段は“馴染みの”ビル・チャーラップ表記がビル・シャーラップ表記になっていたとしてもスルーするのだが,今回のビル・シャーラップ名義の『DISTANT STAR』(以下『ディスタント・スター』)はスルーできなかった。
 ビル・チャーラップと同一人物のビル・シャーラップが明らかに別人として響いてしまう。ここでも(よせばいいのに)書いておくとピアノビル・エヴァンスサックスビル・エヴァンスくらいに?別人として響いてしまったのだ。

 そう。ビル・シャーラップ名義の『ディスタント・スター』には,オーソドックスで“趣味の良さ”を直感させるビル・チャーラップの個性的なピアノがいない。
 ビル・シャーラップピアノベースショーン・スミスドラムビル・スチュワートを挑発している。ゆえにリスナーをも挑発している。

 あの「優等生」なビル・チャーラップが,もう1人の自分=ビル・シャーラップと対峙している。「ハードボイルド」なジャズ・ピアノの創造にチャレンジしている。
 ニューヨークトリオビル・チャーラップトリオを聴いてきた耳にはビックリである! ← 管理人のビル・チャーラップの順番はニューヨークトリオビル・チャーラップトリオビル・シャーラップトリオのROUND TRIP。

 こんなにもエキサイトしたビル・チャーラップを聴いたのは初めてである。悠々と拍を伸縮してグルーヴするショーン・スミスベース,チキリチキリとおかずを加えるビル・スチュワートのシャープなドラミングとのインタープレイが最高に素晴らしい。
 ビル・チャーラップのめちゃめちゃタイトなリズム感。そのタイミングでその音を置くのか,としか表現しようのない“ジャスト”タイプの個性炸裂の大名演

DISTANT STAR-2  丁寧なソフト・タッチで美メロを紡ぎあげさせたら当代随一のビル・チャーラップ。本当にこの人の弾くピアノは嫌味がない。
 だ・か・ら・ニューヨークトリオ名演の秘訣は,そしてビル・シャーラップトリオ名演の秘訣は,ひとえにビル・スチュワートの“やり過ぎる”ドラミングとの相性の良さにある。この2人にしか通じ合えない「調和の妙」がお見事である。

 「ソフト」なビル・チャーラップと「ハード」なビル・シャーラップの違いは,ビル・スチュワートドラムを「受けるか,攻めるか」の違いである。
 ジャズメンの個性は1つとは限らないのだから,たまには「硬派」なビル・シャーラップとしての“顔”も見せてほしいと思う。

  01. ALONG THE WAY
  02. WHILE WE'RE YOUNG
  03. LAST NIGHT WHEN WE WERE YOUNG
  04. HERE I'LL STAY
  05. DISTANT STAR
  06. BON AMI
  07. '39 WORLDS FAIR
  08. STARLIGHT
  09. THE HEATHER ON THE HILL

(クリスクロス/CRISS CROSS JAZZ 1997年発売/CRISS 1131 CD)
(☆直輸入盤仕様)
(ライナーノーツ/ビル・チャーラップ)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

マリーン meets 本田 雅人 B.B.Station / ジャズ&アウト4

JAZZ'N OUT-1 管理人的には100%=本田雅人目当てで購入した『JAZZ’N OUT』(以下『ジャズ&アウト』)だったのだが,やっぱり主役はマリーンであった。よって意図せずにサポートに回った本田雅人を聴いたことになる。

 …で,結論。本田雅人本田雅人だよなぁ。本田雅人はサイドで吹いても“存在感有り有り”なのである。

 「本田雅人B.B.STATION」はビッグ・バンドなのだから,本田雅人ソロは少ない。
 ではなぜ管理人が『ジャズ&アウト』に本田雅人を強く意識するかと言えば,このビッグ・バンド・アンサンブルこそが「本田節」の拡大版で響くから!
 そう。本田雅人のいつものフレージングが「本田雅人B.B.STATION」で完璧に表現されている。

( ただし「本田雅人B.B.STATION」名義にして,実際に「B.B.STATION」での演奏は正味5トラックのみ。残る5トラックは所謂,本田バンドでの演奏ですので,ビッグ・バンド目当てのジャズ・ファンはご注意を! )

 いつものように本田雅人一流の“凝りに凝った”アンサンブルで攻めてくると思いきや「B.B.STATION」での本田雅人は,意外にもシンプル仕上げなアンサンブル!
 「B.B.STATION」の音作りは,中低音をパワフルに鳴らす,古き良きスイングビッグ・バンドのスタイルを基本に,洗練でヒネリを効かせた都会的なアレンジなのは言わずもがな!

 なぜならば「本田雅人B.B.STATION」のソロイスト本田雅人唯一人!
 本田雅人がプレイするアルトサックスソプラノサックスフルートクラリネットの木管楽器と,トランペットフリューゲルホーントロンボーンの金管楽器が・映・え・る・か・ら・中低音をパワフルに鳴らす仕掛け。

 でもでもそんな“存在感有り有り”の本田雅人のスーパー・ソロをして,マリーンボーカルに全てを持っていかれている!
 まっ,アルバム・タイトルが『ジャズ&アウト』なのだから,本職のジャズ・ナンバーから兼業?のアウト(つまりポップスとかロック)までを網羅する人気ヒットパレードを歌う“歌姫”マリーンの独壇場!

JAZZ'N OUT-2 個人的には映画「キャバレー」の主題歌の再演となった【LEFT ALONE】と,やっぱりマリーンと来れば!の【IT’S MAGIC】を集中して聴いていたのだが,最終的に『ジャズ&アウト』のお気に入りは【SING SING SING】と【YOU’LL NEVER GET TO HEAVEN】。
 30代後半のある時期,この2曲ばかりを朝から晩までリピートして過ごしていた“メモリー”がある。

 思うに『ジャズ&アウト』の構図とは“歌姫”マリーンの生バンドとしての「本田雅人B.B.STATION」! 何となく,子供の頃見ていた「昭和歌謡の歌番組」を見て(聴いて)いるような気分がする。
 その歌番組のカット割りは7割がマリーン,2割が本田雅人でもう1割が「B.B.STATION」。

 とにかく威風堂々と歌い上げる“ジャズ・ヴォーカリストマリーンを前面に出しているようでいて,実は裏で回している「本田節」が“隠し味”として効いている。

  01. Sing Sing Sing
  02. It's Magic
  03. You'll Never Get To Heaven
  04. Can't Take My Eyes Off Of You
  05. Cafe Style
  06. Tennessee Waltz
  07. Dazzle The Night
  08. Left Alone
  09. I Was Born To Love You
  10. In The Quiet Blue

(BMG/BMG 2007年発売/BVCJ-34032)
(ライナーノーツ/岩浪洋三,佐藤大介)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

ドン・フリードマン / サークル・ワルツ5

CIRCLE WALTZ-1 「エヴァンス派」の代表格とされているドン・フリードマン本人がビル・エヴァンスからの影響を公式に否定しているらしい。ドン・フリードマンのファンなら,ドン・フリードマンの独自性を支持する気持ちも分からなくはないのだが『CIRCLE WALTZ』(以下『サークル・ワルツ』)を聴いてもなおドン・フリードマン=「エヴァンス派」を否定する気持ちは全く理解できない。

 『サークル・ワルツ』のドン・フリードマンに,ビル・エヴァンスピアノが“乗り移っている”。
 出だしの数秒間で「エヴァンス派」だと分かってしまう,知的で繊細でリリシズムの音選び。胸を締めつけられるような美しいテーマ。一転して静かに自分の音を探りにいく展開。確かめるようにゆっくりと弾かれる和音の連鎖。ベースドラムとの対等なインタープレイ…。

 『サークル・ワルツ』のピアノを聴いて,ビル・エヴァンスピアノを想起しないジャズ・ファンがいるとすれば,それこそ“モグリ”であろう。
 仮にブラインド・テストを行なったとしたら,十中八九,ビル・エヴァンスと答えてしまう人が続出するだろう。

 では,なぜにドン・フリードマンは公式に「エヴァンス派」を否定するのだろうか? それはドン・フリードマンビル・エヴァンスに“先んじた点”があるという自負から来ているのだろう。
 『サークル・ワルツ』のベーシストチャック・イスラエル。そう。スコット・ラファロの“後釜”であるチャック・イスラエル“その人”である。

 ここでスコット・ラファロについても補足しておくが,スコット・ラファロも元々はドン・フリードマントリオのレギューラー・ベーシストだったという,2代続けてかっさらいの因縁有。
 そう。スコット・ラファロチャック・イスラエルも,ビル・エヴァンスと共演したことで名声が高まっただけで,元々はドン・フリードマンに見出されたベーシストだった。

 つまりドン・フリードマンが“先んじた”ジャズ・ピアノを“後出し”で完成させたのがビル・エヴァンス,という考え方もできる。
 そう。ビル・エヴァンスのような演奏スタイルは「エヴァンス派」と称されるのではなく「フリードマン派」と称された可能性があったのだ。

 だから似ている。似ていて当然。似ていてもしょうがない。ビル・エヴァンスドン・フリードマンも同じ時代に活動していたわけだから,互いに意識したとしても意識しないとしても,現実には「互いが互いに影響を与え,影響を受けた」ジャズ・ピアニスト…。2人とも分類すると同じカテゴリーに属するジャズ・ピアニスト…。

 さて『サークル・ワルツ』の評価であるが,仮にドン・フリードマンが『サークル・ワルツ』とは別にもう1枚の名盤を録音していれば,世間の目はビル・エヴァンスではなくドン・フリードマンに目を向けたと思うほどの大名盤である。個人的には“衝撃の1枚”にカウントしたい。

CIRCLE WALTZ-2  『サークル・ワルツ』はとにかく「儚い」。『サークル・ワルツ』の「儚さ」加減は,ビル・エヴァンスの「リバーサイド4部作」をも凌駕している。

 ビル・エヴァンスドン・フリードマンは同じレーベルメイトなんだし,リバーサイド側も『サークル・ワルツ』を『ポートレイト・イン・ジャズ』『エクスプロレイションズ』『サンディ・アット・ザ・ビレッジ・バンガード』『ワルツ・フォー・デビイ』と抱き合わせて「リバーサイド5部作」として売り出したら良かったのに…。永遠のライバルではなくWIN&WINの関係になっていたはずなのに…。

 唯一『サークル・ワルツ』の「リバーサイド5部作」を阻む理由はドラマーの違いであろう。後に弁護士に転身したピート・ラロカはさすがに構築的なドラミング
 ズバリ,ドラマーの違いはベーシストの違い以上に大きい。パーカッシブポール・モチアンがいなければ,ビル・エヴァンストリオの「耽美主義」は成立しないのだ。

 ビル・エヴァンスの凶暴性は「帝王亡き後の新帝王」ポール・モチアンでなければコントロールできやしない!

  01. Circle Waltz
  02. Sea's Breeze
  03. I Hear a Rhapsody
  04. In Your Own Sweet Way
  05. Loves Parting
  06. So in Love
  07. Modes Pivoting

(リバーサイド/RIVERSIDE 1962年発売/VICJ-60025)
(ライナーノーツ/ジョー・ゴールドバーグ,野口久光)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

カシオペア / LIVE HISTORY PART-14

LIVE HISTORY PART-1-1 管理人が初めて見たライヴコンサートは上京して間もない18歳のこと。1986年の何月のことだったのからもう忘れてしまったが,中学・高校時代の最大のアイドル=カシオペアであった。
 夢見た東京ライフの楽しみ事は両手にいっぱいあったのだが,多分,最大の楽しみとはカシオペアの生ライヴに行くことだったように思う。ちっちゃ〜。

 入社した某鉄道会社の同期はほぼ年上。本当にみんなが優しくしてくれた。東京採用のお兄さんお姉さんたちが遊び方も教えてくれた。コンサートのチケットは「ぴあ」で取ることも教えてもらった。
 「ぴあ」の存在を知ってからは底なしになってしまって,本当に音楽以外でも毎週土日は東京へ繰り出す生活パターン。仕事は残業月に70時間ぐらいしていたのに,土曜日の午前は昼間で寝ていて起きたらオールナイトで東京見物。バブルだったし。若かったし。週末遊ぶために生活していた。

 話を戻すと,そんな感じで「ぴあ」でチケットを取って初めて出掛けたライヴコンサートカシオペアの『SUN SUN』のフォロー・ツアー。場所は地元の習志野文化ホール(成人式もここ)だった。
 開演時間とか開場時間とか,もうとにかく初めてのコンサート体験だったので,大分早めに到着したのだろう。まだリハーサル終わりぐらいの時間だったのだろう。若さから来る「無鉄砲」は,ここでは全てを書けないが,生の向谷実に「どこかでお会いしましたかね〜」みたいなことを言われた。それ以来,MC中の司会屋実は好きだけど,素の向谷実をちょっぴり嫌いになったりもした。その頃の管理人は“野呂さん命”でしたら〜。

 …で,ここからが本論であるが,初めて見たカシオペアコンサートで,終演後に電話した女友達がいたし,興奮を手紙に書いて送った別の女友人もいたことを覚えているのだが,どこかで冷静に生のカシオペアを見つめる自分がいたことも覚えている。

 なぜならばカシオペアの生ライヴはすでに何度も体験済だったから! 楽器を弾きながら踊りを決めるカシオペアの映像をすでにLDTVで体験していたから,そこまでの衝撃は受けなかったように思う。

 そう。そんな諸悪の元凶?こそがLDリリースされていた『CASIOPEA LIVE』の存在にある。土日は「ぴあ」を片手に東京見物に勤しんでいたのだが,管理人のメインは京成沿線。たまに総武線の津田沼駅。東京と言っても新宿・渋谷より西には足を延ばさないタイプで,しょっちゅう行くのは上野とか秋葉原で,秋葉原の電気街の店頭でよく流れていたのが『CASIOPEA LIVE』のLDだった。

 『CASIOPEA LIVE』が流れていると店頭で足を止めて,食い入るようにみつめていたように思う。だから,あれほど憧れていたカシオペアの生ライヴにも興奮と興ざめ感が同居していたのだろう。

 そんなTVモニター越しに見まくった『CASIOPEA LIVE』と,人生初ライヴの会場違いの全曲収録『CASIOPEA PERFECT LIVE』のLD2枚が「2 IN 1」でDVD化されたのが『CASIOPEA LIVE HISTORY PART−1』! やったね!

LIVE HISTORY PART-1-2 ただし『CASIOPEA LIVE HISTORY PART−1』は購入後1回しか見ていない。
 1回見れば十分。全部次のシーンまで覚えていた。これが5年前なら星5つだったのでしょうねっ。

 正直,30年前の記録映像の感想は,なんて画質が悪いのだろう。そして動く向谷実に違和感が出てきた(ここ3年間見ている「CASIOPEA 3rd」では,向谷さん不在&末梢後の大高さんの独壇場!)。

 管理人はどうせ“動く”カシオペアを見るのなら『CASIOPEA AGAIN』を見ると思います。

 おっと『CASIOPEA LIVE HISTORY PART−1』には「DISC_1」にも「DISC_2」にも,特典映像「野呂一生インタビュー」がありました〜。野呂さんがカシオペアの歴史を熱く語っています〜。
 おおっと『CASIOPEA LIVE HISTORY PART−2』もそろそろ買わなくちゃ〜。

  DISC_1
  01. DOWN UPBEAT
  02. THE CONTINENTAL WAY
  03. FABBY DABBY
  04. TWILIGHT SOLITUDE
  05. MARINE BLUE
  06. LOOKING UP
  07. Drum SOLO
  08. Bass SOLO
  09. EYES OF THE MIND
  10. ASAYAKE
  11. GALACTIC FUNK

  12. 特典映像:野呂一生インタビュー

  DISC_2
  01. OPENING LOGO
  02. CONJUNCTION
  03. LOOKING UP
  04. STREET PERFORMER
  05. ZOOM
  06. DEPARTURE
  07. KEEPERS
  08. SAMBA MANIA
  09. GALACTIC FUNK
  10. SOMETHING WARKING (CHANGE IT)
  11. CHOOSE ME
  12. MI SENORA
  13. SUN
  14. MOTHER EARTH
  15. Drum SOLO
  16. Bass SOLO
  17. MISTY LADY
  18. HALLE
  19. SWEAR
  20. ASAYAKE
  21. DAZZILING
  22. COAST TO COAST

  23. 特典映像:野呂一生インタビュー

    CASIOPEA
    ISSEI NORO : Guitar
    MINORU MUKAIYA : Keyboard
    TETSUO SAKURAI : Bass
    AKIRA JIMBO : Drums

    YUKOH KUSUNOKI : Vocal

(ジェネオン/GENEON 2004年発売/GNBL-1004)
(DVD2枚組)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

ドミニク・ファリナッチ / ラヴァーズ,テイルズ,アンド・ダンス5

LOVERS, TALES & DANCES-1 『LOVERS,TALES & DANCES』(以下『ラヴァーズ,テイルズ,アンド・ダンス』)は,ドミニク・ ファリナッチ初のバラード集である。

 ドミニク・ ファリナッチのような「超正統派」なトランペッターの演奏は,全てが予定調和であって,聴いていて楽しいものではないのだが,その一方で端正な演奏から来る「豊潤な音密度」が楽しくてしょうがない。殊にバラード演奏が楽しくてしょうがない。

 基本,ピアノケニー・バロンベースジェームス・ジーナスマーク・ジョンソンドラムルイス・ナッシュの“いぶし銀”を従えたドミニク・ ファリナッチの,まろやかで,ふくよかで,柔らかいトランペットフリューゲルホーンの音色が,絶妙な甘さのバラード
 ズバリ『ラヴァーズ,テイルズ,アンド・ダンス』の真髄とは,ドミニク・ ファリナッチが歌い上げる「抒情歌」なのである。

 管理人には,こんなロマンティック・バラード集を作れるトランペッターと来れば,現在のところドミニク・ ファリナッチ以外には思い浮かばない。それぐらいイメージ通りのジャズ。トランペットに“ドハマリ”している。
 ドミニク・ ファリナッチの,静かに,でも熱くほとばしるパッションが清々しくて気持ち良い。

 時に“スムーズっぽい”ドミニク・ ファリナッチのワン・ホーンを“ツボを押さえた”ケニー・バロンピアノ・トリオが完璧にサイド役に徹し,テナーサックスジョー・ロバーノヴァイヴジョー・ロックが彩りをつけていく。いい演奏である。

 『ラヴァーズ,テイルズ,アンド・ダンス』を繰り返し聴いているうちに,ふとドミニク・ ファリナッチから意識が離れて,あるトランペッターを聴いているような気分に何度も襲われた。
 そのトランペッターとは,ドミニク・ ファリナッチを見い出したウイントン・マルサリスではなく,ドミニク・ ファリナッチのアイドルであるフレディ・ハバードでもなく,恐らくはドミニク・ ファリナッチとは「正反対の男」チェット・ベイカーであった。

LOVERS, TALES & DANCES-2 同じイケメンにして,ドミニク・ ファリナッチは「インテリな貴公子」キャラ VS チェット・ベイカーは「肉欲を尽くした破滅キャラ」。
 管理人はジャズメンの私生活は「必らず音楽性に表われる派」なのだが,一周回って,どうやっても結び付きそうにない2人が重なって聴こえる瞬間がたまらなく好き!

 最後に日本盤ボーナス・トラック【崖の上のポニョ】について書く。バラード・アルバムとしての統一感からすると不要なのだが,いつしか【ドント・エクスプレイン】と【ロンリー・ウーマン】目当てに聴いていたはずの『ラヴァーズ,テイルズ,アンド・ダンス』を手に取る大目的が【崖の上のポニョ】の存在へと良い意味で変わってしまった。

 管理人の愛妻は女優やアイドルだけはなくポニョにも似ていると言われたから! ですから! ポニョドミニク・ ファリナッチも感謝!?

  01. Don't Explain
  02. Libertango
  03. Estate
  04. Vision
  05. Ne Me Quitte Pas
  06. E Lucevan Le Stelle
  07. Erghen Diago
  08. Silent Cry
  09. Love Dance
  10. Bibo No Aozora
  11. Lonely Woman
  12. The Theme from The Pawnbroker
  13. Gake no Ue no Ponyo

(ビクター/KOCH 2009年発売/VICJ-61586)
(ライナーノーツ/都並清史)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

大坂 昌彦 / ウォーキン・ダウン・レキシントン5

WALKIN' DOWN LEXINGTON-1 管理人的には「マサちゃんズドラマー」である大坂昌彦であるが,世間的には「スイングジャーナル誌読者投票ドラム部門」16年連続第1位!のドラマー
 つまり,大坂昌彦こそが超大物「日本一のジャズドラマー」なのである。

 大坂昌彦の何がそんなに凄いのか? 管理人なら「音楽的なEM>ドラマーだから」と答えよう。
 大坂昌彦の“最高傑作”『WALKIN’ DOWN LEXINGTON』(以下『ウォーキン・ダウン・レキシントン』)は,そんな“音楽的なドラマー”としての資質がよく表現された名盤である。

 『ウォーキン・ダウン・レキシントン』の基本は,ドラム大坂昌彦ピアノマルギュー・ミラーベースクリスチャン・マクドナルドとのピアノ・トリオ
 この超豪華ピアノ・トリオを“回している”のが大坂昌彦の変化に富んだドラミングである。

 ドラマーのリーダー・アルバムゆえ,どこまでドラムが前面に出るかを考えながらの演奏になるのだろうが,バラエティに富んだ楽曲に合わせてコントロールされた「音楽的」なアクセントが多彩で,どんな曲調でも大坂昌彦ドラムが「音楽のど真ん中」にドンと出る。
 それ位,大立ち回りのドラムなのに『ウォーキン・ダウン・レキシントン』の印象とは,大坂昌彦ドラムではなく,大坂昌彦オリジナル曲の方である。

 『ウォーキン・ダウン・レキシントン』にゲスト参加したのは,トランペットフリューゲルホーンダスコ・ゴイコビッチアルトサックスフィル・ウッズソプラノサックスアルトサックスマーク・グロスボーカルキム・ナザリアンという,超ビッグなジャズメンたち。
 マルギュー・ミラークリスチャン・マクドナルドも含めて,ジャズメン足るもの,こんなにも凄腕のメンバーを与えられたら,パーっと打ち上げ花火的な演奏をしたくなるものだろうが大坂昌彦はそうはしない。

 『ウォーキン・ダウン・レキシントン』のポリシーというか縛りとは,演奏ではなくメロディー・ファースト。至ってフォーマルでオーソドックスな演奏に徹している。複雑なコードで曲が進むのだが,全編破綻なく自然な流れがカッコよい。ゆえにこの凄腕メンバーが揃ったということなのだろう。
 ダスコ・ゴイコビッチフィル・ウッズを主にボーカル・ナンバーの間奏として贅沢に使う意味も理解できるというものだ。

WALKIN' DOWN LEXINGTON-2 管理人の結論。『ウォーキン・ダウン・レキシントン批評

 『ウォーキン・ダウン・レキシントン』の聴き所は,大坂昌彦の確かなドラミングとメロディーメイカーの才!

 「日本のキース・ジャレット・トリオ」=「マサちゃんズドラマー」にして「スイングジャーナル誌読者投票ドラム部門」16年連続第1位!という“音楽的なドラマー大坂昌彦のマルチな才能と持ち味が遺憾なく記録されたアルバムだと思う。

  01. CHATTE TROIS COULEURS
  02. WALKIN' DOWN LEXINGTON
  03. THE RIVER FLOWS INTO THE NIGHT
  04. CLOSE TO YOU
  05. AN ENGLISHMAN IN NEW YORK
  06. CHICK-A-DEE
  07. ONCE UPON A SUMMERTIME
  08. L-O-V-E
  09. ONCE UPON A SUMMERTIME
  10. UNCHAINED MELODY

(キングレコード/KING RECORD 1998年発売/KICJ-351)
(ライナーノーツ/小川隆夫)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

ドミニク・ファリナッチ / スマイル4

SMILE-1 ドミニク・ ファリナッチの存在を知ったのは市原ひかりの『SARA SMILE』だった。
 『SARA SMILE』でのドミニク・ ファリナッチはゲスト参加ゆえに,ドミニク・ ファリナッチの演奏は「控え目で端正でストレートな」生真面目なトランペットだった。

 気持ちとしては市原ひかりを立てる“恋女房役”を全うしていた。でもでもドミニク・ ファリナッチの“並外れた実力”は隠せない。サイドメンとして軽く吹いたつもりが剛速球。日本ハムの大谷翔平が軽く投げても140km出す感じ? 他の投手が全力で投げる147kmのストレートをフォーク・ボールで出す感じ? 
 その“並外れた実力”で市原ひかり2ndへと追いやり,リード・トランペットを吹くドミニク・ ファリナッチに一発で惹かれてしまった。

 『SMILE』(以下『スマイル』)を買ってみた。なになに。ライナーノーツを読むと,あのウイントン・マルサリスに「神童」と言わせた“お墨付き”の最高ランクと書かれている。
 やはりそうだった。ドミニク・ ファリナッチは「只者」ではなかった。ドミニク・ ファリナッチウイントン派だったとは,ちょっとイメージとは違ったのだが,とにかく素のドミニク・ ファリナッチとは“音色良しでテクニック良し”な「超正統派の本格派」であった。

 サイドメンでは感じなかった“風格”を感じる。スレート・アヘッドなジャズ・トランペットの世界観が深く,徹頭徹尾ふくよかな美しい音色と端正なフレージングでリスナーを酔わせてしまう&狂わせてしまう,ドミニク・ ファリナッチを絶賛せずにはいられない!
 「CTI時代のフレディ・ハバード」へのオマージュである【COME RAIN OR COME SHINE】が「イナセな」イナタイ8ビート。ヴィブラートの周波数がフレディ・ハバードへのオマージュである。

 サイドメンでは感じなかった“品格”を感じる。スレート・アヘッドなジャズ・トランペットの世界観が深く,こんな感じにアレンジされると「江戸っ子だねぇ。粋だねぇ」とドミニク・ ファリナッチを絶賛せずにはいられない!
 ウイントン派のルーツはクリフォード・ブラウンにあるのだが【I REMEMBER CLIFFORD】での叙情性が「イナセ」である。エレガントなバラードTHE NEARNESS OF YOU】と【SMILE】での歌心が「イナセ」である。

SMILE-2 ドミニク・ ファリナッチのポリシーとは,ギミック排除のウルトラ・オーソドックス。フレージングの個性に頼ろうとしない,さりげなく小粋な佇まいのジャズ・トランペッター

 『スマイル』でのドミニク・ ファリナッチトランペットは相当に「渋い」。クールでまろやかな音色のトランペットが決して熱くならずに美旋律を吹き切っている。

 そう。「神童」ドミニク・ ファリナッチ・クラスともなれば,ガツガツした自己主張など不要なのであろう。
 ただし,ウイントン・マルサリスには食指は伸びるが,ドミニク・ ファリナッチには食指は伸びない。ジャズ・トランペットの世界では「オール5の優等生」でも個性の差異は大きいものなのだ。

  01. WHO CARES
  02. THE NEARNESS OF YOU
  03. ESTATE
  04. JUST ONE OF THOSE THINGS
  05. I REMEMBER CLIFFORD
  06. COME RAIN OR COME SHINE
  07. THE GREY GOOSE
  08. RELAXIN' AT PETER'S
  09. SMILE

(M&I/M&I 2005年発売/MYCJ-30330)
(ライナーノーツ/都並清史)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

渡辺 香津美 / トリコ・ロール4

TRICOROLL-1 ギター渡辺香津美ベースヤネク・グウィズダーラドラムオベド・カルヴェールと,別パターンでドラムオラシオ“エル・ネグロ”エルナンデスと組んだ“2組のNEW・エレクトリックギター・トリオ”が『TRICOROLL』(以下『トリコ・ロール』)である。

 『トリコ・ロール』のタイトルから連想したのが,おフランスの「トリコロール・カラー」(ご丁寧にアルバム・ジャケットトリコロールしている!)だったのだが,これは渡辺香津美お得意のワルふざけのようで『TRICOROLL』のスペルが違う(おフランスの場合は「TRICOLORE」)。

 ズバリ『TRICOROLL』の真意とは「TRIO」+「ROCK’N ROLL」! 『トリコ・ロール』のタイトルに,エレクトリックギター・トリオのノリの良さや躍動感が“ミーニング”されている。

 個人的に『トリコ・ロール』のハイライトは,ベースヤネク・グウィズダーラ名演に尽きる。
 渡辺香津美ギターはいつも通り。曲ごとにインパクトを与えているのがドラムオベド・カルヴェールオラシオ“エル・ネグロ”エルナンデスになるのだが,自然と,知らず知らずのうちにヤネク・グウィズダーラベース・ラインばかりを追いかけてしまう。

 ヤネク・グウィズダーラのプレイ・スタイルが,音色でハッキリした主張するフィンガー・ベースであって,渡辺香津美と共演してきたベーシストでは,ジェフ・バーリンバーニー・ブルネルとイメージが被るから好みなのだと分析する。それにしてもヤネク・グウィズダーラの「キザミ」が凄い。安定したビートから「怪物」が幾度となく登場している。素晴らしい構成力は「バケモノ」である。

 『トリコ・ロール』のもう一つの“目玉”が選曲。『MOBO』収録の再演となる【上海】とYMOのサポートで弾いていた【ライディーン】。
 この2曲が大変興味深いのだが『トリコ・ロール』を【上海】と【ライディーン】目当てで聴いているうちに,その【上海】と【ライディーン】に間に挟まれた【メタボリズム】に完全KO。
 いつしか管理人の『トリコ・ロール』聴きとは【メタボリズム】を聴く行為を指すようになってしまった。

 そうしてヤネク・グウィズダーラジェフ・バーリンバーニー・ブルネルを重ねてしまうように【メタボリズム】を聴いていると,ジェフ・バーリンの『THE SPICE OF LIFE 2』(『THE SPICE OF LIFE』の方ではない)とバーニー・ブルネルの『KILOWATT』の2枚が脳裏に浮かんでくる。

TRICOROLL-2 これって何なんだろう。『トリコ・ロール』で今の渡辺香津美と昔の渡辺香津美が一気に「点ではなく線とか面とかで」つながったような感覚。
 出来としては完全に初演に負けている【上海】と【ライディーン】も,これはこれでイケテしまう感覚。

 『トリコ・ロール』がジワジワと来る。「TRIO」+「ROCK’N ROLL」の「ROLL」が来ている。

 惜しむべきは,渡辺香津美の狙いとしては曲調によって2人のドラマーを使い分けてみたのであろうが,ジワジワと来ている間に,こちらはオベド・カルヴェールではなくてオラシオ“エル・ネグロ”エルナンデスの方が良かった,そしてこっちはオラシオ“エル・ネグロ”エルナンデスではなくてオベド・カルヴェールの方が良かった,との雑念が入ってしまった。

 渡辺香津美にとっては「究極の選択」となったのかもしれないが,個人的にはオラシオ“エル・ネグロ”エルナンデスで通しても良かったかも…。

  01. SHANG-HAI
  02. METABOLISM
  03. RYDEEN
  04. ALGORITHM
  05. SEA DREAM
  06. PERFECT WATER
  07. THE SIDEWINDER
  08. AZIMUTH
  09. MOMENT'S NOTICE

(イーストワークス・エンタティンメント/EWE 2011年発売/EWBS 0184)
(☆BLUE−SPEC CD仕様)
(ライナーノーツ/石沢功治)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

ダラー・ブランド / アフリカン・ピアノ5

AFRICAN PIANO-1 ダラー・ブランドの『AFRICAN PIANO』(以下『アフリカン・ピアノ』)は,できれば紹介したくなかった。
( アドリブログは現在アルファベット順にて紹介中。ABCD…DO )

 願わくばアドリブログの全投稿の最後の記事として紹介したかった。本気でそう思う,管理人「とっておきの一枚」にして,厳選の中の厳選“秘蔵盤”なのである。

 『アフリカン・ピアノ』をまだ聴いたことのない人は「幸せ者」である。知らないのが,正直,うらやましくてたまらない。
 これから先,何千枚とジャズを聴き漁り「もうジャズなんて聴き飽きた」という日が来たとしても,それでも絶対に「脳天をカチ割られるような衝撃」を受けることであろう。

 そう。『アフリカン・ピアノ』の真髄とは「マンネリ打破の1枚」「日常を非日常でリセットしてくれる1枚」「頭の中をクリーンにしてくれる1枚」である。
 『アフリカン・ピアノ』を聴けば,また次の日からジャズが好きになる。昨日よりもっともっとジャズが好きになる。だから「最後の1枚」なのである。

 リスナーは『アフリカン・ピアノ』が流れ出すとすぐに「打楽器」としてのピアノの強さを“嫌と言うほど”思い知らされることになる。
 ダラー・ブランドの左手から繰り出される執拗なアフリカン・ビートの“バケモノ”が音符を踊り喰いしていく。メロディーがリズムに“呑み込まれていく”。メロディーが「現われては消え,現われては消え」てゆく。

 結果『アフリカン・ピアノ』は,いつまでもいつまでも,どこまでもどこまでも,同じ曲想の演奏がまるでDJによるノンストップ・ミックスのようにつながっていくと思わせて,最後の最後だけストンと落とする。突然,大きな穴に落とされてしまう。あの瞬間が「た・ま・ら・な・い・快・感」なのである。

AFRICAN PIANO-2 そう。『アフリカン・ピアノ』の真実とは“音のブラックホール”!

 書きたいことはたくさんあるが,ここから先は是非,自分自身の目で見て,耳で聞いてみてほしい。ブラックホールの中に頭と体を突っ込んでみてほしい。新しい音世界,誰も見たことのない未知の世界,深く黒い穴の中に「吸い込まれる」ことが,いかに「心地良い体験」なのかを味わってみてほしい。

 意識の全てが「失われ,消え,呑み込まれていく」。こんな体験,そう滅多に出来るものではない。これこそが『アフリカン・ピアノ』のハイライトなのである。

  01. bra joe from kilimanjaro
  02. selby that THE ETERNAL SPIRIT IS THE ONLY REALITY
  03. THE MOON
  04. xaba
  05. sunset in blue
  06. kippy
  07. jabulani - easter joy
  08. tintiyana

(ECM/ECM 1973年発売/UCCU-6122)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/杉田宏樹)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)
livedoor プロフィール
記事検索
Categories
Keith Jarrett Gallery

キース・ジャレット(真田馨子) おんがく日めくり(c) keiko sanada
Pat Metheny Gallery

パット・メセニー(野々口和仁)
(c) Kazuhito Nonoguchi
ジャズ・アフィリエイト
セラビー厳選CD

パリ・コンサートパリ・コンサート
キース・ジャレット

THE WAY UPTHE WAY UP
パット・メセニー・グループ

イン・ア・サイレント・ウェイイン・ア・サイレント・ウェイ
マイルス・デイビス

HEAVY WEATHERHEAVY WEATHER
ウェザー・リポート

BRAINCOOL STRUTTIN'
ソニー・クラーク

MINT JAMSMINT JAMS
カシオペア

HUMANHUMAN
T-スクェア

フル・ハウスフル・ハウス
ウェス・モンゴメリー

ザ・シーン・チェンジズザ・シーン・チェンジズ
バド・パウエル

セロニアス・モンク・トリオセロニアス・モンク・トリオ
セロニアス・モンク

枯葉枯葉
チェット・ベイカー

MOANIN'MOANIN'
アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ

BLOWIN' THE BLUES AWAYBLOWIN' THE BLUES AWAY
ホレス・シルヴァー

ウィントン・マルサリスの肖像ウイントン・マルサリスの肖像
ウイントン・マルサリス

メイティング・コールMATING CALL
タッド・ダメロン

Blu-spec CD ジャコ・パストリアスの肖像ジャコ・パストリアスの肖像
ジャコ・パストリアス

ザ・キング・イズ・ゴーンザ・キング・イズ・ゴーン
マーカス・ミラー

FIRST MEETINGファースト・ミーティング
テザード・ムーン

スペシャル・エディションSPECIAL EDITION
ジャック・デジョネット

ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリングYOU MUST BELIEVE IN SPRING
ビル・エヴァンス

STEP BY STEPSTEP BY STEP
ステップス

2424
DIMENSION

GANAESIAガネシア
渡辺香津美
カズミ・バンド

コンプリート・ピック・ヒッツ・ライヴPICK HITS
ジョン・スコフィールド

ニューポートの追想V.S.O.P.
ハービー・ハンコック

アス・スリーUS THREE
ホレス・パーラン

Manhattan StoryBLUE'S MOODS
ブルー・ミッチェル

AFRICAN PIANOOFF TO THE RACES
ドナルド・バード

AFRICAN PIANOAFRICAN PIANO
ダラー・ブランド

Manhattan StoryMANHATTAN STORY
アキコ・グレース

SPELLBOUNDSPELLBOUND
ジョー・サンプル

ランデヴーRENDEZ-VOUS
木住野佳子

RETURN TO FOREVERRETURN TO FOREVER
チック・コリア

BRAINBRAIN
上原ひろみ

イン・ラインIN LINE
ビル・フリゼール

ザ・サウンド・オブ・サマー・ランニングザ・サウンド・オブ・サマー・ランニング
マーク・ジョンソン

スインギン・マケドニアスインギン・マケドニア
ダスコ・ゴイコビッチ

タイム・スレッドTME THREAD
小曽根真 & ゲイリー・バートン

フルーツケーキFRUITCAKE
フルーツケーキ

THE DROPPERTHE DROPPER
メデスキ,マーチン&ウッド

Doin' SomethingDOIN' SOMETHING
ソウライヴ

SALT IISALT II
塩谷哲

Dance Your HeartDANCE YOUR HEART
Saya

地球は愛で浮かんでいる地球は愛で浮かんでいる
松永貴志
アンケートボードA

★当ブログについて望むことは?
アルバム単位で批評してほしい
同じ曲をテイク別に批評してほしい
多くのジャズメンを幅広く批評してほしい
一人のジャズメンを掘り下げて批評してほしい
超有名曲をもらさず批評してほしい
発売直後の新作を批評してほしい
初心者を意識したほんわかサイトにしてほしい
マニアを意識したニッチなサイトにしてほしい
オーディオについて批評してほしい



-Mini Vote-
アンケートボードB
How Much Is Your Blog Worth?

My blog is worth
$38,953.26

How much is your
blog worth?

最新コメント
Copyright (C) 2005-2017 アドリブログ All Rights Reserved.