アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

FUSION

エディ・ヒギンズ & スコット・ハミルトン / マイ・フーリッシュ・ハート4

MY FOOLISH HEART-1 『煙が目にしみる』で十分に理解していたはずなのに『MY FOOLISH HEART』(以下『マイ・フーリッシュ・ハート』)で改めてスコット・ハミルトンテナーの響きに速攻でやられてしまった。

 タイトル・チューンにしてオープナーの【MY FOOLISH HEART】のエロいこと。とにもかくにも生々しいタンギングやブレスやビブラートをエロスと表現するしか他にない。ただし清潔感があって潔い「芸術性のエロスの香り」。そこのところを読み間違えないでいただきたい。

 だから管理人としては『マイ・フーリッシュ・ハート』はエディ・ヒギンズスコット・ハミルトンの共演盤とは考えていない。
 『マイ・フーリッシュ・ハート』はスコット・ハミルトンテナーサックスを聴くべきアルバムだと断言しよう。

 ズバリ『マイ・フーリッシュ・ハート』とは,マル・ウォルドロンの『レフト・アローン』と同じ立ち位置に位置するアルバムである。
 マル・ウォルドロンのリーダー作『レフト・アローン』。しかし真の主役はマル・ウォルドロンピアノではなくジャッキー・マクリーンアルトサックスの方である。

 ジャッキー・マクリーンの『レフト・アローン』を聴いている時,そしてスコット・ハミルトンの『マイ・フーリッシュ・ハート』を聴いている時,マル・ウォルドロンピアノエディ・ヒギンズピアノも消えている。
 要は完全にサイドメンとしての伴奏に徹している。

MY FOOLISH HEART-2 マル・ウォルドロンと来ればビリー・ホリデイの伴奏者として余りにも有名である。そしてエディ・ヒギンズも『DEAR OLD STOCKHOLM』のライナーノーツを読むと,氏のワイフであるメレディス・ダンブロジオを始めとして「私はありとあらゆる歌手の伴奏をやってきた」との記載がある。やっぱり!

 『マイ・フーリッシュ・ハート』はスコット・ハミルトンテナーサックスを聴くべきアルバムであるが,そこには名手=エディ・ヒギンズジャズ・ピアノが常に寄り添っている。

 エディ・ヒギンズスコット・ハミルトンの2枚目の共演盤『マイ・フーリッシュ・ハート』の内容が真に上質。ただし『煙が目にしみる』を聴いた時のようなインパクトは薄い。

 『マイ・フーリッシュ・ハート』は【MY FOOLISH HEART】の超名演を聴いて満足すればそれでよろしい。
 何となく予定調和的な,まぁ,それだけ完璧な出来ということで…。

  01. My Foolish Heart
  02. Russian Lullaby
  03. What Is There To Say
  04. That Old Black Magic
  05. Skylark
  06. Night And Day
  07. Embraceable You
  08. Am I Blue
  09. These Foolish Things
  10. The More I See You
  11. The Song Is You
  12. This Love Of Mine

(ヴィーナス/VENUS 2003年発売/TKCV-35316)
(ライナーノーツ/馬場啓一)

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松武 秀樹,乾 裕樹,渡辺 香津美,深町 純,村上 秀一,岡沢 茂,江夏 健二 / SPACE FANTASY + LIVE SPACE FANTASY4

SPACE FANTASY + LIVE SPACE FANTASY-1 日本のトップ・ミュージシャンが「宇宙」をテーマに「宇宙戦艦ヤマト」「スター・ウォーズ」「未知との遭遇」「火の鳥」「2001年宇宙の旅」のテーマ・ソングを演奏したスタジオ盤+ライブ盤のオムニバスが『SPACE FANTASY + LIVE SPACE FANTASY』である。

 『SPACE FANTASY + LIVE SPACE FANTASY』のリーダーはサウンド・デザインを担当した松武秀樹。アレンジャーは乾裕樹
 松武秀樹乾裕樹シンセサイザーを演奏するのだが,実際の演奏は深町純に任せている。

( ここで後日談。深町純は『SPACE FANTASY + LIVE SPACE FANTASY』のサウンド・デザインやアレンジが気に入らなかったのだろう。自分で『SPACE FANTASY + LIVE SPACE FANTASY』の焼き直しに当たる『宇宙戦艦ヤマト〜シンセサイザー・ファンタジー』なるアルバムを制作している )

 要するに『SPACE FANTASY + LIVE SPACE FANTASY』の時点では,深町純の参加はシンセサイザー・プレイヤーとしての評価であって,音楽全体のイメージは松武秀樹乾裕樹のものだということ。
 個人的にはその方が良い。深町純のファンとしては,迷盤『SPACE FANTASY + LIVE SPACE FANTASY』を深町純の音だと勘違いしたくないから…。

 そういうことでここからは深町純への感情を除いた『SPACE FANTASY + LIVE SPACE FANTASY』の評価について書く。

 そもそも『SPACE FANTASY + LIVE SPACE FANTASY』というアルバムは“シンセサイザー有き”の企画盤である。
 シンセサイザー=宇宙的・未来的なイメージが連想される時代があった。管理人は『SPACE FANTASY + LIVE SPACE FANTASY』のリリース後,数年経過してからYMOの洗礼を受けた世代である。

 とは言え,シンセサイザーを強烈に意識したのはYMOではなく喜多郎である。もっと言えば喜多郎というよりFM東京系「サントリー・サウンド・マーケット」のBGMが全てである。

 「サントリー・サウンド・マーケット」の“天にも昇る感じ”の音イメージはオーケストラシンセサイザーあってのこと! 壮大な未来。すっごいことが起こりそうな未来。今まで聴いたことのないサウンドの広がりはシンセサイザーであればこそ!
 「スター・ウォーズ」が今でも爆発的な人気を拡げている現状と比較すると,現状では,なぜシンセサイザーがここまで廃れてしまったのか不思議である。

SPACE FANTASY + LIVE SPACE FANTASY-2 その答えは『SPACE FANTASY + LIVE SPACE FANTASY』を聴いて感じる「古臭さ」にあるように思う。

 『SPACE FANTASY + LIVE SPACE FANTASY』斬新だったのは「未来志向のシンセサイザー・ミュージック」というカテゴリーだけであって,肝心の音楽自体はクリエイトされていない。

 テクノロジーの実験の場だったから,有名曲をシンセサイザーで演奏するとこんな感じ,で面白かったのだと思う。この企画ものを一番面白がっているのはドラマー村上秀一であろう。ビシビシと決まるリズムが一級品です。

 若き日の野呂一生渡辺香津美の両雄が“エレキ”って感じのギターを弾いています。これもアナログ・シンセのおかげだと思います。

  DISC-1 SPACE FANTASY
  01. 序曲―宇宙戦艦ヤマト
  02. 深夜の追跡
  03. イスカンダル
  04. 白い朝
  05. 真っ赤なスカーフ
  06. 宇宙戦艦ヤマト
  07. 飛行中隊
  08. エンジェルダスト
  09. 未知との遭遇
  10. 明日への希望―夢

  DISC-2 LIVE SPACE FANTACY
  01. プロローグ〜イスカンダル〔宇宙戦艦ヤマト〕
  02. マーメード ブールヴァード
  03. “スターウォーズ”のテーマ
  04. ザ・バランス
  05. “火の鳥”のテーマ
  06. ザ・スカードロン
  07. “2001年宇宙の旅”のテーマ ツァラトストラはかく語りき

(フォーライフレコード/FOR LIFE RECORDS 1978年発売/FLCF5027)
(CD2枚組)
(紙ジャケット仕様)
(☆BLU−SPEC CD仕様仕様)
(ライナーノーツ/松武秀樹)

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20180212 神保彰 LIVE NO.2

 「神保彰ワンマンオーケストラ ドラムからくり全国行脚2018〜」! LIVEレポート2日目の今夜はステージング編です。

 神保彰の“天賦の才”。それは1にドラム,2に作曲,3にパフォーマーンス,そして4にMCである。
 特にMCの素晴らしさは司会屋実が抜けた「CASIOPEA 3rd」のLIVEにおいて,1人異次元のまとまりを聞かせてる。MCもプロっぽい起承転結の構成が滑らかなのに感心してしまう。

 「ワンマンオーケストラ」なのだから,当然ながらステージ上は神保彰ワンマン。MCもワンマン。激しい演奏直後に息をはずませながら,これがまた頭脳明晰な解説付きのMCとキター!って思ったら「カミボ・アキラ(噛み保彰)」がご愛嬌!

 個人的な大収穫は1stセット終了後の休憩タイムに「神保彰ワンマンオーケストラ」の屋台骨=ミッチーさんとお話しできたこと。神保彰の「説明コーナー」を聞いても?だったので,ミッチーさんへ疑問をぶつけてみた。
 答えはこうです。「ドラムソロはセンサー鳴らないという設定。タッチすることでプログラムを変えている。音色を変えている。後ろに戻ることはできないので引き算する。電気ものなので反応しない時もある。そういう時は足し算する」。うん。神保彰のハイパー・ドラミングと同じで,分かるようでよく分からな〜い。ちゃんちゃん。

 そんな「世界の神保」にして,昨年末に共演したのがきっかけで「モノノフ」入りした神保彰の「愛情たっぷりのサイン」がこちらです。 

神保彰 サイン-1神保彰 サイン-2

 「カシオペア神保彰」のファンとしてはアンコールで【ASAYAKE】が聴けて良かった。でも神保彰1人で【ASAYAKE】が完結することをここまで見せつけられてしまうと…。
 神保さん。どんな気持ちで野呂さんのギターソロを後ろから見ているのかなぁ〜。

さて,この記事はLIVEレポートなので,ステージ後半のセットリストを報告しておきます。

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20180212 神保彰 LIVE NO.1

 行ってきました! 2/12「ゲイツ7」の「神保彰ワンマンオーケストラ ドラムからくり全国行脚2018〜」!

 神保彰の魅力とは,カシオペアジンサクインスピリッツでの「超・超絶テクニカル・ドラマー」の代名詞でも十分だと思っているが,そこへ来て「ルンルン・サウンド」の作曲の才能も世界レベルときている。
 しかし,神保彰が「世界の神保」と称されるのは,世界レベルのドラミング&名作曲家としての神保彰に加えて「パフォーマー=神保彰」の魅力があればこそ!

 そんな「パフォーマー」神保彰としてのライフワークが「神保彰ワンマンオーケストラ」である。
 とは言え,管理人は「パフォーマー」神保彰を風のウワサで聞いていたに過ぎない。だって管理人が知る「神保彰ワンマンオーケストラ」とは画面の中の神保彰だけ。
 そう。今回管理人初めての「神保彰ワンマンオーケストラ」生体験だったのです。神保さんが「ワンマンオーケストラ」を始めてもう28年ですって! いや〜,お恥ずかしい。いや〜,勿体なかった( だって管理人は神保さんより櫻井さん派だったんだもん )

 通い慣れた「ゲイツ7」に足を踏み入れ驚いた。これって九州道も通行止めになった前夜の大雪積雪のせい? 
 なんと!ドラム・セットが会場の真ん中に鎮座しているではありませんか〜! 観客がグルリと360度,神保彰を囲む配置でどこからでも自分の望む角度から神保彰を見ることができる「円形劇場」スタイル!

 でっ,管理人ですか? 神保彰の真正面に決まっているじゃないですか! 整理番号32番にして真っ正面の左卓1列目の後ろ側。つまりは2列目中央の良席で「世界の神保」を楽しめました。
 これにはご一緒させていただいた大大大のカシオペア・ファン=武ちゃんとゆうこりん夫妻のおかげです。「ワンマンオーケストラ」のイロハと美味しいジェラート・アイスもありがとうございました。

 さて,まずは恒例のメンバー紹介から…

 ★ 神保 彰 : Drums

 「神保彰ワンマンオーケストラ」の感想とは「ワンマンオーケストラ」での神保彰ドラマーではなく“音楽家”であるということ。
 一人でオーケストラを演じる神保彰が“歌っている”。リズム&メロディーを同時に制御するための準備万端に,あとはLIVEを人一倍楽しんでいる。神保彰は真のエンターテイーナーであられました。

 実は管理人。「神保彰ワンマンオーケストラ」は神保彰オリジナル曲を中心に演奏するものだと思っていて,自室でせっせと神保彰ソロ・アルバムを聴き直していたのですが,最後の最後まで「ノー・ジャンル&ノー・ジェネレーション」のコンセプト通り,ジャズフュージョン映画音楽クラシック,J−POPの有名曲のヒット・パレード!

 この選曲の振り幅こそが神保彰の音楽性の振り幅なのだろう。だから「世界の神保」なのだろう。

 個人的にうれしかったのは,普段のカシオペアドラム・ソロより時間長めのドラム・ソロを2回も聴けたことと,終演後のサイン会での紳士な対応にニンマリです。
 難曲【LIBERTANGO】のスゴ技にお口ポカーン。【STAR WARS】ではレーザービームまでが聴こえてくる。【アースのメドレー】がカッコ良すぎます。管理人も憧れの神保さんを追いかけてモノノフの道を目指すかも!?

 さて,この記事はLIVEレポートなので,ステージ前半のセットリストを報告しておきます。

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エディ・ヒギンズ / あなたは恋を知らない5

YOU DON'T KNOW WHAT LOVE IS-1 『YOU DON’T KNOW WHAT LOVE IS』(以下『あなたは恋を知らない』)こそが,エディ・ヒギンズの“最高傑作”である。

 『あなたは恋を知らない』は,エディ・ヒギンズ自らソロ・ピアノに合うと選曲した既発表曲の再演集。エディ・ヒギンズ好きとしては,王道のピアノ・トリオとの既発テイクとの聴き比べも楽しみの1つと購入前は思っていたのだが,未だに聴き比べはしていない。

 もう,何て言うか,エディ・ヒギンズの圧倒的に美しい小品集を聴いていると,ピアノ・トリオだから云々,ソロ・ピアノだから云々などは不毛の作業に思えてしまう。
 とにかく,エディ・ヒギンズジャズ・ピアノが“語りかけてくる”。警戒していないと一発で心の中に入ってくる。ハートを盗まれるとは正にこのことだ。

 “手垢のついた”有名スタンダードのオンパレードなのに,これほど素直な魅力に満ちているアルバムは余りないと思う。それは達観したエディ・ヒギンズの愛が込められているから…。← ロマンティック風?
 とにかくイントロからAメロに入るまでが最高で,その後のアドリブの麗しい歌いっぷり! 1つ1つのフレーズが日々の喧騒を忘れさせてくれるような,本当に美しいピアノが頭の中で鳴り響く…。← ロマンティック風2?

 おおっと,つい褒めすぎてしまった。『あなたは恋を知らない』の本質は“大仰な”アルバムなどではないところ。『あなたは恋を知らない』の魅力を文章で表現するなら「子犬のようなかわいらしさ」という感じかなぁ。

 優雅で穏やかに,時折ユーモアを交えたような軽快なタッチもあり,エディ・ヒギンズの“懐の深さ”を感じずにはいられない。シンプルで暖かく優しい音に包まれていく。巧みなピアノで表現される詩的情緒の世界にどっぷりと耽てしまう。
 心に突き刺さる演奏ではないが,これだけは伝えたい,と言うパッションが感じられる。聴けば聴くほどメロメロに魅了されてしまう。思わず小さなガッツポーズをとってしまう。

YOU DON'T KNOW WHAT LOVE IS-2 管理人は「好きなピアニスト・MY TOP10」に入れてしまうくらいに“飾らない”エディ・ヒギンズの演奏が大好きなのだが,それもこれも『あなたは恋を知らない』で完全KOされてしまった経験による。
 正直『あなたは恋を知らない』と出会ってから,熱心にエディ・ヒギンズを聴き直す日々。すなわち「宝探し」に没頭したものだ。

 最近,あんまりエディ・ヒギンズを聴かなくなっていたのだが『あなたは恋を知らない』を聴いてから,久しぶりに“エディ・ヒギンズ漬け”の毎日を送っている今日この頃です。

  01. When You Wish Upon A Star
  02. My Funny Valentine
  03. Detour Ahead
  04. Beautiful Love
  05. Dance Only With Me
  06. Danny Boy
  07. All This And Heaven Too
  08. Yellow Days
  09. Skylark
  10. Again
  11. You Don't Know What Love Is
  12. Over The Rainbow

(ヴィーナス/VENUS 2003年発売/TKGV-1001)
(ライナーノーツ/岩浪洋三)
(☆SACDハイブリッド盤仕様)

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神保 彰 / ジンボ・デ・ジンボ 80's4

JIMBO DE JIMBO 80's-1 結論を書けば,神保彰の『JIMBO DE JIMBO 80’s』(以下『ジンボ・デ・ジンボ 80’s』)も,カシオペアスクェアの多くのカヴァー・アルバム同様,オリジナル・アルバムを超えることはできなかった。

 ただしそんなの関係ない。『ジンボ・デ・ジンボ 80’s』は曲がいいのだ。最初から最後までただ聴き流していれば気分が上がる。そんなカヴァー・アルバムの最右翼である。

 「カヴァー・アルバムには良いものが少ない」説を支持する管理人。そんな中で『ジンボ・デ・ジンボ 80’s』の評価が高いのはオリジナルとフォーマットを変えたのが成功要因としては大きいと思う。
 カシオペア時代はギターキーボードベースドラムで演奏されていたが『ジンボ・デ・ジンボ 80’s』はキーボードベースドラムである。

 つまりはカシオペアからのギター・マイナスワン。ただし単なるギターレスではない。カシオペアのメインはギター1本。野呂一生抜きのカシオペアカシオペアではなくなるのだ。
 この全てを分かった上で神保さんは,いつもの仲良しギタリストアレン・ハインズを外してきた。それが『ジンボ・デ・ジンボ 80’s』の“狙い”であろう。

 オトマロ・ルイーズが“歌う”ためのアレンジは,肝となるメロディーさえも微妙に変えてきている。個人的には【ミッド・マンハッタン】はイジッテほしくなかったなぁ。
 実は目立たないが神保さん。今回リズムをかなりイジッテきている。35年かけて『ジンボ・デ・ジンボ 80’s』のリズムに辿り着いたのだろう。素晴らしいドラミングである。

 特筆すべきはエイブラハム・ラボリエルベースである。『ジンボ・デ・ジンボ 80’s』のオリジナルは全て桜井哲夫が弾いてきた。
 桜井哲夫ベースはメロディアスなのが特徴的だが,エイブラハム・ラボリエルベースはメロディアス+ファンク

JIMBO DE JIMBO 80's-2 神保彰の名曲が,最初にタイトなドラムが耳に入り,次にファンクベースが腰を浮かし,最後に上物メロディーが遅れて入ってくる。
 そうすると「甦る青春」ではなく「青春」が現在進行形している気分でうれしくなる。だから『ジンボ・デ・ジンボ 80’s』は,ただ聴き流しているだけで楽しくなれるのだ。

 35年前の名曲は現在でも名曲であった。神保彰の「ルンルン」系はファンキー・ビートで“爽やかさ”プラス&“爽やかさ”UP!
 『ジンボ・デ・ジンボ 80’s』を聴いた翌日は,新アレンジで鼻歌を歌ってしまいます。

  01. Ripple Dance
  02. Sunnyside Feelin'
  03. Mid Manhattan
  04. Fruit Salad Sunday
  05. Street Performer
  06. After Glow
  07. In the Pocket
  08. Touch the Rainbow
  09. Frou Frou

(エレクトリック・バード/ELECTRIC BIRD 2016年発売/KICJ-746)
(ライナーノーツ/神保彰)

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エディ・ヒギンズ & スコット・ハミルトン / 煙が目にしみる5

SMOKE GETS IN YOUR EYES-1 エディ・ヒギンズと来れば“ピアノ・トリオの人”である。『魅せられし心』〜『アゲイン』〜『愛の語らい〜ジョビン作品集』〜『魅惑のとりこ』と,いずれも趣味の良いピアノ・トリオを引っさげて,VENUSの“看板”として快進撃を続けてきた。

 そんなエディ・ヒギンズが「オハコ」を捨てて,趣向を変えたワンホーン・アルバムが『SMOKE GETS IN YOUR EYES』(以下『煙が目にしみる』)である。
 しかし,主役を管楽器に譲りサイドマンとして音楽の全体を支える『煙が目にしみる』を聴いても,不思議とエディ・ヒギンズの印象は変わらない。自分の音楽が変わらない自信があったがゆえのワンホーン・アルバムの制作だったように思う。

 エディ・ヒギンズが『煙が目にしみる』のホーン奏者として指名したのが,これらも“いぶし銀”のテナーサックス・プレイヤー=スコット・ハミルトンであった。
 スコット・ハミルトンと来れば“スイングテナーの人”としてはなはだ有名な名手。エレガントなエディ・ヒギンズピアノの上にスコット・ハミルトンスイングテナーが“しっとりと鳴った”「オールド・アメリカン・スタイル」再現の音楽性が眩しすぎる。

 そう。エディ・ヒギンズがワンホーンで表現したかったのは,自分の中の別の一面,別の引き出しなどではなく,従来のピアノ・トリオ路線の拡大版である。
 スコット・ハミルトンテナーの響きが最高にゴージャスでエロい。そんなスコット・ハミルトンと音を重ねるエディ・ヒギンズの“小躍りするピアノ”に“いぶし銀”のテナーサックスへの満足感が表われている。

 そう。エディ・ヒギンズの心の機微が手に取るように分かるのも,VENUSが誇る「HYPER MAGNUM SOUND」のおかげである。
 エディ・ヒギンズの鍵盤へのタッチが上品なのが分かる。スコット・ハミルトンの息遣いとタンギングが生々しくリアルである。

 ピアノテナーサックスの絶妙なバランスが心を打つ。有名ジャズ・スタンダードの連続なのにどれも新鮮に響く。
 両者とも控えめに演奏しているものの,所々にジャズメンとしてのプライド,自己主張が垣間見られる。

SMOKE GETS IN YOUR EYES-2 ズバリ『煙が目にしみる』はそこがいいのだ。そこが聴き飽きないのだ。エディ・ヒギンズスコット・ハミルトンも優雅に演奏しているようでいて,沸々とメラメラと闘志を燃やし続けている。
 その対象は互いに向けられているようで,その実,内面の自分自身に向けられている。

 そう言えばエディ・ヒギンズと同じ“ピアノ・トリオの人”であるビル・エヴァンスも「オハコ」から外れた管入りアルバムを何枚も制作しているが,そのどれもが「ザ・ビル・エヴァンス」して聴こえていた。

 ホーンを上手に聴かせるべく表面上はソフト・タッチなのに,自分の音楽の創造といつも以上に格闘していたビル・エヴァンス
 そんな自分の音楽に対するこだわりがエディ・ヒギンズビル・エヴァンスを感じさせる最大の理由なのだと思っている。

  01. Melancholy Rhapsody
  02. It's A Lonesome Old Town
  03. You Don't Know What Love Is
  04. By Myself
  05. Smoke Gets In Yours Eyes
  06. Lullaby Of The Leaves
  07. When The Sun Comes Out
  08. Love Letters
  09. When You Wish Upon A Star
  10. All This And Haven Too
  11. You're My Everything

(ヴィーナス/VENUS 2002年発売/TKCV-35100)
(ライナーノーツ/皸羶成)

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スイングジャーナル主催 ジャズ・ディスク大賞 1995年度(第29回)

 「スイングジャーナル」誌が,レコード会社各社の自薦ノミネート作品を基にして,国内で該当年度中に発売されたCDLPビデオを対象に同誌委託の「ジャズ・ディスク大賞選考委員」によって選出される,日本ジャズ界に最も貢献した作品に贈られる「ジャズ・ディスク大賞」。

 今回は1995年度(第29回)の発表です。

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アコースティック・ブギ★【金賞】.アコースティック・ブギ
日野皓正〜菊地雅章クインテット


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ファースト・ベース★【銀賞】.ファースト・ベース
クリスチャン・マクブライド


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スピリット・オブ・ザ・モーメント〜ライヴ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード★【銀賞】.スピリット・オブ・ザ・モーメント〜ライヴ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード
ジョシュア・レッドマン

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ラヴ&ピース〜トリビュート・トゥ・ホレス・シルヴァー★【ボーカル賞】.ラヴ&ピース〜トリビュート・トゥ・ホレス・シルバー
ディー・ディー・ブリッジウォーター

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ピアノ・クインテット・スイート★【日本ジャズ賞】.ピアノ・クインテット・スイート
大西順子


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オスカー・ピーターソン栄光の軌跡★【最優秀ビデオ賞】.オスカー・ピーターソン栄光の軌跡オスカー・ピーターソン


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ファースト・ベース★【最優秀新人賞】.ファースト・ベース
クリスチャン・マクブライド


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ヒッティン・ザ・スピリット★【最優秀新人賞】.ヒッティン・ザ・スピリット
椎名豊


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NOW JAZZ★【編集企画賞】.NOW JAZZ/ザ・モダン・ジャズ



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黒い炎★【製作企画賞】.黒い炎
 マンハッタン・ジャズ・オーケストラ


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インフィニティ★【最優秀録音賞】.インフィニティ
 マッコイ・タイナー・トリオ・フューチャリング・マイケル・ブレッカー

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A VIEW FROM THE SIDE★【最優秀録音賞】.ア・ヴュー・フロム・ザ・サイド
ザ・ビル・ホルマン・バンド


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 クリスチャン・マクブライドの『ファースト・ベース』が【銀賞】&【最優秀新人賞】のW受賞。

 『ファースト・ベース』)はクリスチャン・マクブライドの考える“ハイセンスなジャズ”を表現するためのベース・アルバム。
 その心は「名コンポーザー=クリスチャン・マクブライド」の存在にある。『ファースト・ベース』の制作のテーマは,クリスチャン・マクブライドのオリジナル曲を如何に聴かせるか!

 クリスチャン・マクブライドの自作曲を,テナーサックスジョシュア・レッドマントランペットロイ・ハーグローブトロンボーンスティーブ・タールピアノサイラス・チェスナットドラムルイス・ナッシュという,クリスチャン・マクブライドの“お耳”にかなった豪華ゲストのジャズメンたちが“入れ替わり立ち替わり”各々の本領を発揮しまくって帰って行く! 演り逃げして帰って行く!
 知ってか知らずか,クリスチャン・マクブライドの自作曲をクリスチャン・マクブライドの狙い通りに,色彩豊かにアレンジしては帰っていく!

 そう。『ファースト・ベース』の真実とは,豪華ゲストの“美味しい”部分だけを抽出して編集された,クリスチャン・マクブライド流の「イントロデューシング・アルバム」である。

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第60回(2017年度)グラミー賞 ジャズ部門-NO.2

 “年に一度の音楽の祭典”第60回(2017年度)のグラミー賞が昨日発表された。

 世間的にはブルーノ・マーズが主要含む6冠受賞。ケンドリック・ラマーが5冠受賞。
 いいや,それ以上に「白いバラ」と「タイムズ・アップ」であろう。ミュージシャンが政治的にも大きな影響力を及ぼすことが証明されたグラミー賞となった。

 ん? ジャズフュージョン以外はどうでもよかったですね。
 早速「アドリブログ」の本丸『JAZZ』の受賞作の発表で〜す。

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Category 31. Best Improvised Jazz Solo


Live at Ronnie Scott's★ Miles BeyondJohn Scofield, soloist
Track from: Live @ Ronnie Scott's (John McLaughlin & The 4th Dimension)

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Category 32. Best Jazz Vocal Album


ドリームス・アンド・ダガーズ★ Dreams And Daggers
Cecile McLorin Salvant


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Category 33. Best Jazz Instrumental Album


Rebirth★ Rebirth
Billy Childs


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Category 34. Best Large Jazz Ensemble Album


ブリンギン・イット★ Bringin' It
Christian McBride Big Band


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Category 35. Best Latin Jazz Album


Jazz Tango★ Jazz Tango
Pablo Ziegler Trio


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 やったね! 増崎さん,小野塚さん,勝田さん。【SE.LE.NE】【JUNGLE DANCER】を20年以上もLIVEでかけ続けた甲斐がありました。「4TH DIMENSION」がグラミー受賞! 

 …て違いましたね。「4TH DIMENSION」はジョンスコさんの「ディメンション」の方でした。
 ジョン・スコフィールドが貫録の3年連続のグラミー受賞! ジャズ界は現在,ジョン・スコフィールドを中心に回っている!

 ただし“花形部門”である「BEST JAZZ INSTRUMENTAL ALBUM」受賞作は『REBIRTH』である。
 やったね! 安藤さん,念願だったパット・メセニーを抑えてのグラミー受賞。聴けば聴くほどスルメな『REBIRTH』。
 スクェア史上最長となる「河野坂東時代」の傑作の誕生です。この先も現行メンバーでの活躍を期待しております。

 …て違いましたね。『REBIRTH』はビリー・チャイルズさんの『REBIRTH』の方でした。
 このビリー・チャイルズさん。恥ずかしながら私,全く知りませんでした。不勉強でした。コメントなどできません。

 ふ〜ん。グラミー賞のご祝儀=“ポチッ”。ビリー・チャイルズさん,これから仲良くお願いしま〜す。

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神保 彰 / ミューニティー4

MUNITY-1 『MUNITY』(以下『ミューニティー』)とは「MUSICUNITY」からなる造語で,音楽を通じて一つになるという意味が込められている。
 正しく『ミューニティー』こそが『ミューニティー』。インストだし,ライトなフュージョンだし『ミューニティー』が流れ出すと,神保彰・ファン,フュージョン・ファンが一つになれる。

 まぁ,そんな大そうなを考えなくとも【CAN’T YOU SEE】を黙って聴けばみんな笑顔になれる。← いいや【CAN’T YOU SEE】を聴けばみんな大泣きしてしまう! 超おセンチ系の大名曲! 管理人の癒しソングの1曲なのです〜。

 『ミューニティー』=音楽を通じて一つになる。そんな音楽を鳴らすことができるのは神保彰と10年共に過ごしてきたベースエイブラハム・ラボリエルピアノキーボードオトマロ・ルイーズ,そして神保彰と7年共に過ごしてきたギターアレン・ハインズとの“阿吽のコンビネーション”にある。

 「チーム・神保」が4人で一体のフュージョンファンク。「MUSICUNITY」改め「JIMBO MUSICUNITY」→『JIMUNITY』が良かったかなぁ。

 レギュラー・メンバーの4人,そこへゲストとして初参加となるリチャード・エリオットテナーサックスソプラノサックスが新鮮な響きを加え「チーム・神保」の“音の広がりと音の深み”が成長している。

MUNITY-2 その成長方向とは,躍動するリズムとエレガントなメロディー・ライン。つまりは空気感にあると思う。
 基本的にはシンプルにサラッと聴き流せる,例の「ルンルン」系。これが結構あとから来る!

 メンバーの自然体の反応が息ぴったりなので,安定したサウンドの中を自由なアドリブが駆け巡っている。神保彰の緩急自在なドラミングを聴き逃すな!

 なお『ミューニティー』と同時発売の『JIMBO DE JIMBO 80’S』のライナーノーツの中で神保彰自身が触れているが,神保彰の作風は35年前の【リップル・ダンス】から思いのほか変わっていない,と管理人も思います。

  01. Blowin' In The Street
  02. Let Me Go
  03. Wind & Cloud
  04. Munity
  05. Standing On The Ground
  06. Beach Walk
  07. Can't You See
  08. Double Rainbow
  09. Pop It!

(エレクトリック・バード/ELECTRIC BIRD 2016年発売/KICJ-745)
(ライナーノーツ/神保彰)

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エディ・ヒギンズ / 魅惑のとりこ5

BEWITCHED-1 エディ・ヒギンズビル・エヴァンスを強烈に感じてしまう。逆にエディ・ヒギンズビル・エヴァンスを感じなければモグリだと思う。

 エディ・ヒギンズは大抵,アルバムに数曲ビル・エヴァンスの愛想曲を取り上げてくるのだが,特に『BEWITCH』(以下『魅惑のとりこ』)のラインナップが凄い。
 【DETOUR AHEAD】【YOU MUST BELIEVE IN SPRING】【BEAUTIFUL LOVE】【ALICE IN WONDERLAND】【AUTUMN LEAVES】。
 こんなにも有名楽曲がズライと並ぶ姿が圧巻で,サブタイトルとして「ビル・エヴァンスへ捧ぐ」がついていないのを不思議に思う。

 (演奏曲の薀蓄は脇に置いといて)ブラインド・テストで『魅惑のとりこ』を流していると,本気でビル・エヴァンスピアノだと答える人がごまんといるはず?
 要は,繊細で,軽くスイングしていて,フレーズが甘い。しかし,前のめりで聴き込んでいくと“しっぺ返し”を喰らう感じの硬質なタッチに聴き惚れてしまう。優雅で気高い。それでいて気取った感じは微塵もなく,リラックスした雰囲気に包まれるピアノ・トリオ名盤である。

 さて,ここまで書いてきてあれだが,管理人はエディ・ヒギンズビル・エヴァンスと比較して聴くことはお奨めしない。
 やはりビル・エヴァンスエディ・ヒギンズとは別格の“ジャズ・ジャイアント”に間違いない。同列ではない。

 では何が言いたいのか? それはエディ・ヒギンズが敬愛する「ビル・エヴァンスのここを聴け!」を堪能すべし!である。
 ビル・エヴァンス・マニアのエディ・ヒギンズが“一番美味しいビル・エヴァンス”を提示してくれている。

 だから“本家”ビル・エヴァンスの愛想曲をなぞりつつ,エディ・ヒギンズ一流の再構築を経て完成された「作・演出=ビル・エヴァンス&編集=エディ・ヒギンズ」による“静かに進行する圧倒的なパフォーマンス”が『魅惑のとりこ』の全てである。

 おおっと,聴き所はエヴァンス・ナンバーだけではなかった。
 『魅惑のとりこ』収録の,残る有名ジャズ・スタンダードエディ・ヒギンズ一流のフィルターがかかった再構築が実に見事である。
 美しいメロディーを敢えていじり過ぎないように,良さだけ残して短めに終わる所作も心憎い。

 ビル・エヴァンスよろしく,ベースソロドラムソロも奇を衒うところのないピアノと一体となって演奏されており,ハメを外すようなところのない「大人のジャズ・スタンダード集」として心から楽しめる。

 1000枚,2000枚とコレクションしているジャズ・ファンの立場からすれば,物足りなさを感じる部分も理解できるが,この豊かな旋律表情を聴いていると,胸がキュンと締め付けられる瞬間に出くわすこと多数。じわじわと満足感が全身の隅々にまで達していく…。
 ガツンと来るアルバムではないにしても,リスナー側のハードルを余裕を持ってクリアしてくれる…。

BEWITCHED-2 要するにエディ・ヒギンズは“粋”なのだ。エディ・ヒギンズピアノを弾くと,どれもこれもお洒落に仕上がってしまう。

 そう。エディ・ヒギンズとは,自分のお気に入りの部分を素直にクローズアップできる名うてのジャズ・ピアニスト。美のエッセンスの申し子なのである。

 長い一日を過ごした夜,静かに音楽に浸りたい。あまりホットでなくかといって甘ったるくない音楽。そういう気分の時に良く聴くアルバムの1枚が『魅惑のとりこ』である。

  01. What A Diff'rence A Day Made
  02. Detour Ahead
  03. Bewitched, Bothered, And Bewildered
  04. You Must Believe In Spring
  05. Beautiful Love
  06. Alice In Wonderland
  07. Angel Eyes
  08. The Philanthropist
  09. Estate
  10. Blue Prelude
  11. I Hear A Rhapsody
  12. As Time Goes By
  13. Autumn Leaves

(ヴィーナス/VENUS 2001年発売/TKCV-35093)
(ライナーノーツ/寺島靖国)

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林 栄一,中尾 勘二,関島 岳郎 / フォトン3

PHOTON-1 管理人が林栄一アルトサックスに興味を持ったのは大西順子の影響である。
 大西順子大好き管理人としては林栄一のバンドに大西順子がサイドメンとして参加を志願したとか,大西順子自ら林栄一の自宅へ教えを請いに通ったとかいうエピソードを聴くと,林栄一を聴かないわけにはいかない。

 事実,大西順子の『PIANO QUINTET SUITE』で共演した林栄一の熱演を聴かされれば,上記エピソードの真実味が増すというものである。

 …で,管理人がチョイスした林栄一ソロ・アルバムが『PHOTON』(以下『フォトン』)である。
 正確には『フォトン』は林栄一のリーダー・アルバムではなく,ソプラノサックス中尾勘二チューバ関島岳郎との共作である。

 どうですか! この山下清ばりの妖しげなジャケット写真に喰いついてしまった。ピニストベーシストドラマーもいない編成で林栄一フリーがどう演奏されるのか聴いてみたい! これが『フォトン』の購入理由である。

 管理人の狙い通り『フォトン』は「超アナーキー」なアルバムであった。演奏が3人だけなので多重録音で様々なパートが重ねられているが,基本的にシンプルなアレンジが施されており,力の抜けた楽器の生音が加工されずに,剥き出しで放り込まれた生々しさがある。

PHOTON-2 うーむ。淡々と演奏が進行しては終わっていく。物悲しい雰囲気のメロディーが素朴に響いていく。これが大西順子が憧れた林栄一の音楽なのだろうか…。

 即興のない退屈な音楽である。『PIANO QUINTET SUITE』で主役を張った林栄一は『フォトン』の中にはいない。まるで別人のようである。
 本当の林栄一を探す意欲を失くしてしまった。そのうちに,いつか自然体で出会える日を待つことにしようと思う…。

  01. オーバー・チューン〜ニキシのまだ来ない朝
  02. 1の知らせ
  03. こぶしの踊り(光る人)
  04. 「TATSUYA」より
  05. 反射する道
  06. Em
  07. ハルマゲドン
  08. アジールのマーチ
  09. 耕す者への祈り
  10. ナーダム

(オフノート/OFF NOTE 1999年発売/ON-30)
(ライナーノーツ/神谷一義)

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エディ・ヒギンズ / 愛の語らい〜ジョビン作品集4

SPEAKING OF LOVE〜MUSIC OF JOBIM-1 「ジャズ・ピアノの王者」エディ・ヒギンズが「ボサノヴァの王者」アントニオ・カルロス・ジョビンを演奏する。
 普通に考えたら『SPEAKING OF LOVE〜MUSIC OF JOBIM』(以下『愛の語らい〜ジョビン作品集』)はキワモノ企画ものの1枚である。

 しかし,原曲がボサノヴァであることを知らないジャズ・ピアノ・ファンが,いいや,原曲がアントニオ・カルロス・ジョビンであることを知っていたとしても『愛の語らい〜ジョビン作品集』は「王者」のジャズ・ピアノ・アルバムに仕上げられている。キワモノ感など一切感じられない。

 ジョビン・ナンバーはコード進行とハーモニーが美しいと評価されるが,これらがジャズの4ビートに合うとは思えない。特にボサノヴァジャズリズム・セクションではなく,サンバを奏でる本場ブラジルのリズム・セクションにはかなわない。
 にも関わらず,ジョビン・ナンバーがものの見事にジャズしている。あらかじめアントニオ・カルロス・ジョビンが4ビートを意識して書き上げたかのようである。

 この全てこそが“ヒギンズマジック”! エディ・ヒギンズが彼のキャリアの中でも最大限にアグレッシブにピアノを弾いている。
 それでも一音一音に気持ちが込められており,音色は重いがなぜか軽やかで,フレーズもスピーディーだと思ったら,ゆったりと奏で出したりと完全なるジャズ・ピアノ。音色は一つもつぶれていない。エディ・ヒギンズのスタイルはボサノヴァ・チューンを弾こうとも変わっていない。

 『愛の語らい〜ジョビン作品集』に対する管理人の興味はエディ・ヒギンズの「七変化」だったが,いつしか『愛の語らい〜ジョビン作品集』の主役はアントニオ・カルロス・ジョビンだと思うようになった。

 ズバリ『愛の語らい〜ジョビン作品集』のコンセプトは,エディ・ヒギンズが考えるジョビン・ナンバーの「美的センス」の再構築にある。

SPEAKING OF LOVE〜MUSIC OF JOBIM-2 この全てこそが“ヒギンズマジック”パート2! エディ・ヒギンズジャズ・ピアノは決して主旋律を壊すような編曲はしない。美メロを浮かび上がらせる優しくタッチが心に響く。

 『愛の語らい〜ジョビン作品集』には,いつも以上にエディ・ヒギンズの考える「美的センス」が捉えられていると思う。美しい主旋律を細部まで際立たせることのできるジャズ・ピアニスト。それがエディ・ヒギンズ“その人”なのである。

 ここまで到達するまでには相当熟練されてきたのだろう。エディ・ヒギンズに代わるジャズ・ピアニストはそう簡単には登場してこない。

  01. Favela
  02. Esperance Perdida (I Was Just One More For You)
  03. Brigas Nunca Mais (Fight Never More)
  04. Falando De Amor (Speaking Of Love)
  05. Two Kites
  06. Bonita
  07. Voce E Eu (You And I)
  08. Choro
  09. Felicidade
  10. So Tinha De Ser Com Voce (It Had To Be With You)
  11. Caminhos Cruzados
  12. Inutil Paisagem (Useless Landscape)

(ヴィーナス/VENUS 1999年発売/VHCD-4019)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/皸羶成)

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ANDY'S / ANDY'S4

ANDY'S-1 『ANDY’S』とは安藤まさひろTED NAMBA難波正司)と組んだロックギター・ユニットである。

 『ANDY’S』での活動が,後のT−スクェア名盤中の名盤」『GRAVITY』へと繋がることは事実であるが真実ではない。
 ズバリ『ANDY’S』の活動は難波正司が正式メンバーとして参加した『GRAVITY』ではなく,安藤まさひろの「ハードロック・プロジェクト」である「T−スクェア・プラス」名義の『TRUTH 21CENTURY』へと繋がったと思う。

 そう思う理由は発売順を前後して『ANDY’S』を『GRAVITY』の後に聴いてしまったから,というのがあるのかもしれない。
 『GRAVITY』が気に入ったので『GRAVITY』の原石を『ANDY’S』の中に見つけようとした天罰なのかもしれない。

 しかし『ANDY’S』を聴けば聴くほど『GRAVITY』との距離が広がっていったのも事実。自然と『ANDY’S』から手が遠のいていったのも事実。

 『ANDY’S』は駄盤である。ついでに言うと『TRUTH 21CENTURY』『BLOOD MUSIC』『HISTORY』などの「ハードロック・プロジェクト」は全てダメ。

 う〜む。管理人は本来,スクェアの中で安藤まさひろロックギターを弾きまくる曲は大好きなのだ。【PRIME】とか【ARCADIA】とかが流れると,エアギターしてしまう。これは自分でも不思議な現象なのである。

 『ANDY’S』にヴォーカルが入っていたので気付いたことがある。安藤まさひろの“歌もの”に合うのは,伊東たけしなり本田雅人なり宮崎隆睦なりの“歌う”サックスが合うのであって,シャウトするヴォーカルとは相性が悪い。

ANDY'S-2 これは『VOCAL2』の時にも感じたことだが,安藤まさひろの作るメロディー・ラインにはどんな歌詞がつこうとも曲として様になってしまう。
 ただし歌詞がついたからと言って名曲にはならない。

 例えばサックス奏者であれば,曲の世界観を考えてこの曲にはサックスなのか? フルートなのか? EWIなのか? サックスであればアルトなのか? ソプラノなのか? を選択している。
 『ANDY’S』や『VOCAL2』のような,本当の“歌もの”に臨んだ時の失敗は多分に,ヴォーカリストの「声」とか「歌い方」での選択ミスの要因が大きいと思う。

 ロックギターの【MOON OVER THE CASTLE】→EWIの【KNIGHT’S SONG】へと変わってスクェア・ナンバーに昇格した理由は,本田雅人EWIという「声」の選択が〇!

  01. MOON OVER THE CASTLE
  02. SECOND CHANCE
  03. GREEN MONSTER
  04. LIKE THE WIND
  05. A MAN OF THE WORLD
  06. NOBODY
  07. MORE THAN LOVING
  08. FREEDOM TO WIN

(ソニー/SONY 1996年発売/SRCL 3722)

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エディ・ヒギンズ・トリオ / 魅せられし心5

HAUNTED HEART-1 ズバリ,エディ・ヒギンズの快進撃は全てこのアルバムから始まった。そしてエディ・ヒギンズ個人としての快進撃にとどまらず,VENUSというレーベル全体の快進撃は全てこの『HAUNTED HEART』(以下『魅せられし心』)から始まった。
 そう。『魅せられし心』は,言わばエディ・ヒギンズの“出世作”にしてVENUSの“象徴”なのである。
 
 具体的にはジャズスタンダード中心の選曲であり,ジャズの基本であるピアノ・トリオであり,適度にスイング,適度にメロディアスなミディアム〜スロー・テンポの演奏中心である。
 そしてジャケット良し。録音良し。初心者もとっつきやすい間口の広い演奏にしてマニアをも唸らせる「いぶし銀」な演奏と来れば,ジャズ・ファンの間で話題にならないはずがないし,売れないはずがない。

 エディ・ヒギンズを,そしてVENUSを悪く言うジャズ・ファンは本当のジャズ・ファンではない。
 そのような人たちは,ジャズとは4ビートである,ジャズとはアコースティックであるべき,と普段は声高に唱えているにも関わらず,口の根も乾かないうちに,ただオーソドックスすぎるという理由だけでエディ・ヒギンズをけなしている。やっかみである。

 本当のジャズ・ファンはオーソドックスな演奏スタイルの中に,その人の個性を聴き分けられる人たちである。
 『魅せられし心』の素晴らしさとは,全方向志向で派手さがないので上の下ぐらいに感じるから,リラックスして「オール5」に接することができる。『魅せられし心』を聴き込めば,必らずやジャズの何たるかが理解できる“叩き上げの”ファンへと成長できる点であろう。

HAUNTED HEART-2 リリカルで美しく知的でほんの少しセンチメンタル。悪態をつくことのない,いい感じのJAZZY。要するに優等生で万人向けのベタな1枚。崩さなくったって,いいものはいい。
 美メロの一番美しい部分が際立っている。老舗の名店的な“エディ・ヒギンズ特有の味”が沁み出ている。

 聴き馴染みのスタンダードのオンパレードなのに何回も繰り返し聴きたくなる。ベースドラムも自然に鳴らすエディ・ヒギンズの麗しい歌いっぷり! くぅ〜!

  01. My Funny Valentine
  02. Haunted Heart
  03. Stolen Moments/Israel
  04. Lush Life
  05. How My Heart Sings
  06. Someone To Watch Over Me
  07. I Should Care
  08. Lover Come Back To Me
  09. Isn't It Romantic?

(ヴィーナス/VENUS 1997年発売/VHCD-4051)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/寺島靖国)

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MALTA / スパークリング5

SPARKLING-1 管理人の結論。『SPARKLING』(以下『スパークリング』)批評

 『スパークリング』は【SPARKLING FANTASY】【SEXY GALAXY】【SUMMER WAVE】の大ヒット神曲3曲を聴けば星5つ! これにて完結!

 以下はそれでは読み足りない読者のための管理人の雑感である。

 管理人は『スパークリング』をCDで購入したのだが『スパークリング』はLPでの購入を前提に制作されていた。
 『スパークリング』のLP盤はA面が「パワー・サイド」でB面が「クール・サイド」と名付けられている。パワフルで都会的な演奏とゆったりしたリゾート気分の演奏と盤面の個性別に編集されている。

 さて,何でこんなことを書いたかというと『スパークリング』のA面とB面=MALTA自身のA面とB面。すなわち“ジャズフュージョンの両睨み的”なMALTA自身の陽気な性格とつながっている。学生ながらそのように分析?(思い込み?)しながら聴いていたからだ。

 繰り返すが,管理人が聴いていた『スパークリング』はCDメディア。CDにはA面もB面もないし,LPには入っていないボーナス・トラック2曲(【FLASHING GIRL】【OVER THE RAINBOW】)収録。
 そういうわけで,管理人は『スパークリング』を聴いていても「パワー・サイド」と「クール・サイド」の違いを感じない。感じるのはラスト2曲でブチ込んできた【OVER THE RAINBOW】【ALL OF ME】での“JAZZYなMALTA”の存在である。

 MALTAのファンの間では,MALTAフュージョンサックスへの転向時期として『スパークリング』を挙げる人が多数である。

SPARKLING-2 しかし『スパークリング』のMALTAジャズ・サックスを吹いている。
 【OVER THE RAINBOW】【ALL OF ME】の熟成された名演は,フュージョンサックスでは表現できないビブラート・ヴィンテージ・サックス

 ただし,もうMALTAは決心していたのだろう。【OVER THE RAINBOW】【ALL OF ME】の2曲は“ジャズ・サックス・プレイヤー”MALTAとしての最後の青春セッション

 『スパークリング』こそが“ジャズ・サックス・プレイヤー”MALTAとしての最終作。最高の置き土産を残して“フュージョン・サックス・プレイヤー”の王者へ向かって邁進していく…。

  01. SPARKLING FANTASY
  02. SCRAMBLE AVENUE
  03. BAD BOOGIE
  04. SEXY GALAXY
  05. FLASHING GIRL
  06. SUMMER WAVE
  07. COOL SHADOW
  08. FREE BREEZE
  09. MOON FLOWER
  10. OVER THE RAINBOW
  11. ALL OF ME

(ビクター/JVC 1986年発売/VDJ-1030)

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ダスコ・ゴイコヴィッチ / ハンドフル・オブ・ソウル4

A HANDFUL O' SOUL-1 「ダスコ・ゴイコヴィッチインターナショナル・ジャズ・オーケストラ」名義による『A HANDFUL O’ SOUL』(以下『ハンドフル・オブ・ソウル』)を聴いてみて,管理人がダスコ・ゴイコヴィッチになぜにそこまで惹かれてしまうのか,その隠された理由が分かったように思う。

 管理人はダスコ・ゴイコヴィッチの「哀愁漂う美しいトランペット」が大好きだ。しかし,それはダスコ・ゴイコヴィッチの魅力のほんの一面に過ぎない。
 ズバリ,管理人がダスコ・ゴイコヴィッチを愛する理由は,ダスコ・ゴイコヴィッチの“徹底的なセクション・プレイヤー気質”にある。

 「ダスコ・ゴイコヴィッチインターナショナル・ジャズ・オーケストラ」とは,世界10カ国からダスコ・ゴイコヴィッチ自らが人選した18名のジャズメンが結集したビッグ・バンド
 元々,ダスコ・ゴイコヴィッチメイナード・ファーガソンウディ・ハーマンケニー・クラークフランシー・ボラーン等のビッグ・バンドを渡り歩いた経歴を持つ。その後も自身のビッグ・バンドを率いて『バルカン・コネクション』を録音してもいる。

 ビッグ・バンドへの愛着を有し,セルビア大統領の前面バックアップを受け,自ら望むメンバーを選出した“夢のビッグ・バンド”「ダスコ・ゴイコヴィッチインターナショナル・ジャズ・オーケストラ」こそが,ダスコ・ゴイコヴィッチの真骨頂のはずである。

 ゆえに管理人は『ハンドフル・オブ・ソウル』には「哀愁漂う美しいトランペット」とか「バルカン気質」とか,ダスコ・ゴイコヴィッチの代名詞的な演奏が繰り広げられていることを予想していた。が,しかし…。

 『ハンドフル・オブ・ソウル』とは,ストレートなアンサンブル・アルバムであった。「ダスコ・ゴイコヴィッチインターナショナル・ジャズ・オーケストラ」が目指したのは,ジャズ・ファン向けのマニアックなビッグ・バンドではなく,もっと間口の広いPOPなビッグ・バンドである。
 これはいい。ビッグ・バンドを聴く楽しみがいっぱい詰まっている。ソロイストが無理をしていない。素敵なメロディーを奏でることだけ考えている節がある。

 逆に言えば,ダスコ・ゴイコヴィッチの代名詞的な演奏は登場して来ない。最初はそのことに管理人もガッカリした。ダスコ・ゴイコヴィッチがリーダーシップを発揮して,これぞバルカン的でエキゾチックな香りのビッグ・バンドを期待していたからだ。

 でも,それでも『ハンドフル・オブ・ソウル』は「お蔵入り」しなかったんだよなぁ。これがっ! 聴けば聴くほど味が沁み出て来るんだよなぁ。これがっ!
 主役であるダスコ・ゴイコヴィッチソロイストではなく1stトランペッターとして大活躍する。これが「ダスコ・ゴイコヴィッチインターナショナル・ジャズ・オーケストラ」の聴き所なんだよなぁ。これがっ!

A HANDFUL O' SOUL-2 ビッグ・バンドにおける1stトランペッターの役割は2つある。その1つはトランペット・セクションのリード役であり,もう1つはビッグ・バンド全体のリード役である。

 そう。1stトランペッターに求められる資質とは高い音楽性である。1stトランペッターの歌い方ひとつでビッグ・バンド・サウンドががらりと変わってしまう。
 その点でダスコ・ゴイコヴィッチこそが最適任者である。あの哀愁の音色一発でバンド・メンバーの心と唇を鷲掴みできているのだから…。

 「ダスコ・ゴイコヴィッチインターナショナル・ジャズ・オーケストラ」の17名のメンバーがダスコ・ゴイコヴィッチの演奏を聴いている。
 これってダスコ・ゴイコヴィッチが“セクション・プレイヤー”に徹すればこそできること。実に17名がダスコ・ゴイコヴィッチ“っぽい”演奏でまとまっている。

 ズバリ,ダスコ・ゴイコヴィッチジャズメン・シップの響きこそが『ハンドフル・オブ・ソウル』のハイライト。
 正しくダスコ・ゴイコヴィッチの音楽を愛するジャズメンが結集した「心と心の触れ合い」の音が聴こえてくる。

 うん。ここまで書いてきたことは全て真実なのだけど,正直,本音を書くと【I FALL IN LOVE TOO EASILY】におけるダスコ・ゴイコヴィッチミュートトランペットを聴いてしまったが最後,やっぱりダスコ・ゴイコヴィッチは氏のルーツであるビッグ・バンドの“セクション・プレイヤー”としてではなく,ソロイストとして「哀愁漂う美しいトランペット」を吹き鳴らす方が最高だと再認識してしまったのも事実なのです。

  01. A HANDFUL O' SOUL
  02. I FALL IN LOVE TOO EASILY
  03. YUGO BLUES
  04. DON'T GET AROUND MUCH ANYMORE
  05. REMEMBER DIZZY
  06. JEEP'S BLUES
  07. BALKAN BLUE
  08. SUMMERTIME

(エンヤ/ENJA 2005年発売/MZCE-1065)
(ライナーノーツ/都並清史)

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スイングジャーナル主催 ジャズ・ディスク大賞 1994年度(第28回)

 「スイングジャーナル」誌が,レコード会社各社の自薦ノミネート作品を基にして,国内で該当年度中に発売されたCDLPビデオを対象に同誌委託の「ジャズ・ディスク大賞選考委員」によって選出される,日本ジャズ界に最も貢献した作品に贈られる「ジャズ・ディスク大賞」。

 今回は1994年度(第28回)の発表です。

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星影のステラ〜チック・コリア・ソロ・ピアノ★【金賞】.星影のステラ
チック・コリア


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ビレッジ・バンガードの大西順子★【銀賞】.ビレッジ・バンガードの大西順子
大西順子


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ブラウニー〜クリフォード・ブラウンに捧げる★【ボーカル賞】.ブラウニー〜クリフォード・ブラウンに捧げるヘレン・メリル


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DUO★【日本ジャズ賞】.DUO
峰厚介〜菊地雅章


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ラバー・マン★【制作企画賞】.ラバー・マン
ジャッキー・テラソン


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MOODSWING★【最優秀新人賞】.ムード・スウィング
ジョシュア・レッドマン


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サキソフォン・コロッサス (紙ジャケット仕様)★【編集企画賞】.マスターズ・オブ・ジャズ〜20ビットK2ハイ・クオリティーCDシリーズ [全90作]


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ザット・シークレット・プレイス★【録音賞(海外)】.ザット・シークレット・プレイス
 パティ・オースティン


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プレイ・バッハ・トゥデイ★【録音賞(国内)】.プレイ・バッハ・トゥデイ
ジャック・ルーシェ


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JAZZ625ジャズ黄金時代の巨人たち★【最優秀ビデオ賞】.JAZZ625ジャズ黄金時代の巨人たち / ウェス・モンゴメリー


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ジャズ・マスターズに捧ぐ〜VERVE50周年記念カーネギー・ホール・コンサート・ライブ★【最優秀ビデオ賞】.ジャズ・マスターズに捧ぐ〜VERVE50周年記念カーネギー・ホール・コンサート・ライブ


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 大西順子の『ビレッジ・バンガードの大西順子』が【銀賞】受賞。

 “ジャズの殿堂”ビレッジ・バンガードに,日本人として初めてステージに立った大西順子の6日間連続公演のライブ盤である。

 これはジャズ・ファンにとっては「国民的なビッグ・ニュース?」に違いないのだが,いかんせん,新聞のスミで小さく取り上げられたにすぎなかった。
 「大西順子のにとっては小さな一歩だが,日本人ジャズメンにとっては大きな一歩」(by アームストロング風)…と,紹介したいが『ビレッジ・バンガードの大西順子』は単なる歴史のドキュメンタリーなどではない。これぞジャズのドキュメンタリーである。

ビレッジ・バンガードの大西順子』は,ジャズ・ピアニスト大西順子のドキュメンタリーであって,ジャズライブそのものである。

 そう。実力で“ジャズの殿堂入り”を勝ち取った大西順子は「J−ジャズ界の野茂英雄」である。

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第60回(2017年度)グラミー賞 ジャズ部門-NO.1

 大晦日は,アドリブログでも,ジャズフュージョンの総決算!
 2017年,グラミー賞ノミネート作についてレポートします。

 読者の皆さんには,管理人の一押しよりも,この中からジャズフュージョンに接することを(謙虚になって)お奨めいたします。

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Category 31. Best Improvised Jazz Solo


☆ Can't Remember WhySara Caswell, soloist / Track from: Whispers On The Wind (Chuck Owen And The Jazz Surge)
☆ Dance Of ShivaBilly Childs, soloist / Track from: Track from: Rebirth
☆ Whisper NotFred Hersch, soloist / Track from: Open Book
☆ Miles BeyondJohn McLaughlin, soloist / Track from: Live @ Ronnie Scott's (John McLaughlin & The 4th Dimension)
☆ IlimbaChris Potter, soloist / Track from: The Dreamer Is The Dream

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Category 32. Best Jazz Vocal Album


☆ The Journey / The Baylor Project
☆ A Social CallJazzmeia Horn
☆ Bad Ass And BlindRaul Midon
☆ Porter Plays Porter / Randy Porter Trio With Nancy King
☆ Dreams And DaggersCecile McLorin Salvant

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Category 33. Best Jazz Instrumental Album


☆ Uptown, DowntownBill Charlap Trio
☆ RebirthBilly Childs
☆ Project FreedomJoey DeFrancesco & The People
☆ Open BookFred Hersch
☆ The Dreamer Is The DreamChris Potter

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Category 34. Best Large Jazz Ensemble Album


☆ MONK'estra Vol. 2John Beasley
☆ JigsawAlan Ferber Big Band
☆ Bringin' ItChristian McBride Big Band
☆ HomecomingVince Mendoza & WDR Big Band Cologne
☆ Whispers On The WindChuck Owen And The Jazz Surge

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Category 35. Best Latin Jazz Album


☆ Hybrido - From Rio To Wayne ShorterAntonio Adolfo
☆ OddaraJane Bunnett & Maqueque
☆ Outra Coisa - The Music Of Moacir SantosAnat Cohen & Marcello Goncalves
☆ TipicoMiguel Zenon
☆ Jazz TangoPablo Ziegler Trio

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 以上がノミネート一覧なんですが,今年も管理人の趣味・趣向とは相容れませんが,少しはこの結果に納得してもいます。ちょっとは進歩したのかなぁ。
 来年こそは「打倒! ジャズ・ジャーナリズム」を達成すべく(無理は承知で)まずは“自分の耳を鍛え上げなければ”!
 これが来年の(当然ながら再来年以降も)プチ抱負です。

PS 2月に受賞作が決定しましたら(そのCDを所有している場合に限り)レビューしようと思っています。どうぞお楽しみに!

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ボブ・バーグ / サイクル5

CYCLES-1 ジョン・コルトレーン亡き後,メディアはこぞってマイケル・ブレッカーマイケル・ブレッカー,たまにブランフォード・マルサリス…。
 ジャズテナー奏者と来れば「マイケル・ブレッカー1強時代」が存在したように思えるが,それは大きな誤りである。

 “巨星”マイケル・ブレッカーの影に隠れてしまいがちだがマイケル・ブレッカーと同時代のコルトレーン派のテナー奏者は秀逸揃い。
 名前を列挙するならスティーヴ・グロスマンデイヴ・リーブマンボブ・ミンツァートム・スコットゲイリー・トーマス…。

 ただし,上記のテナー奏者は皆マイケル・ブレッカーと比較すると明らかに分が悪い。そんな中,唯一,マイケル・ブレッカーとがっぷり四つで勝負できるテナー奏者がいた。ボブ・バーグである。

 「マイケル・ブレッカー1強時代」なのだから,実力が伯仲しようとも,ボブ・バーグが劣勢である。ボブ・バーグのことをマイケル・ブレッカーのモノマネだと揶揄する不届き者さえ存在する。

 断じてボブ・バーグマイケル・ブレッカーのコピーなどではない。かつてマイケル・ブレッカーボブ・バーグについて語った記事を覚えているが,マイケル・ブレッカーボブ・バーグのスタイルが似ているのは,2人で共に音楽について語り合い,サックスを練習する機会が多かったからだそうだ。
 そう。マイケル・ブレッカーのスタイルもボブ・バーグのスタイルも,自分一人の研究・努力で確立したものではなく,互いが互いに影響し合い構築した結果としての「圧巻の超絶の饒舌」なのであった。

 ボブ・バーグの4枚目のソロ・アルバム『CYCLES』(以下『サイクル』)は,実際にはボブ・バーグテナーサックスというよりもマイク・スターンギターを聴くためのアルバムなのだが(ボブ・バーグがダメなのではなくマイク・スターンが絶好調すぎて凄すぎる!)ちょうどマイケル・ブレッカーのライバルとしてボブ・バーグが注目を集め始めていた時期のアルバムであって,個人的にはボブ・バーグの魅力を聴き漁った時期の思い入れの強い名盤である。

 『サイクル』はとにかく6曲目の【マユミ】である。管理人は【マユミ】だけを100回は聴いているが一向に飽きることはない。
 なぜならばマイク・スターンとのユニゾンで盛り上がり続けるボブ・バーグに,あのブチギレ・マイケル・ブレッカーのド迫力とは違う種類の凄みに打たれて最高に気持ち良くなってしまうのだ。

 特に4分38秒からのクライマックスである。【マユミ】におけるボブ・バーグの凄みは「タネも仕掛けなし」でハッタリなし」のド迫力にこそある。
 ただ単純に一本調子のストレートなのではなく,深い音楽的素養と極めて高度な技術に裏打ちされた“マッスラな”ストレートに心が震わされてしまう。感情が見事に表現されている。この表現力には高い技術力が必要なのである。
 曲の進行と共に感情が高まっていく様がこれほどリアルに伝わってくる秘訣こそがボブ・バーグの「圧巻の超絶の饒舌」なのである。

CYCLES-2 熱く行きつつ,何をそこまでブチギレるのか心配になることもあるマイケル・ブレッカー。しかしマイケル・ブレッカーの強みはいつでも冷静なロボット・タイプでいられるところにある。
 同じ言語表現を持つボブ・バーグなのだがボブ・バーグは曲の世界に完全没入している。ボブ・バーグの強みはいつでも人情味を伝えられるところである。

 そう。ボブ・バーグは,役に入れば一瞬で涙を流せる女優さんのようなテナー奏者なのである。
 マイルス・デイビスチック・コリアマイク・スターンに愛された女優・ボブ・バーグ。その芸名は【マユミ】であった?

  01. BRUZE
  02. BACK HOME
  03. PIPES
  04. THE DIAMOND METHOD
  05. COMPANY B
  06. MAYUMI
  07. SO FAR SO
  08. SOMEONE TO WATCH OVER ME

(デンオン/DENON 1988年発売/32CY-2745)
(ライナーノーツ/中原仁)

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佐藤 允彦 / ダブル・エクスポージャー5

DOUBLE EXPORSURE-1 “ジャズ・ピアニスト”としての佐藤允彦が堪能できる,ベースエディ・ゴメスドラムスティーヴ・ガットとのピアノ・トリオライブ盤が『DOUBLE EXPROSURE』(以下『ダブル・エクスポージャー』)である。

 いや〜,デジタル・リズム・セクションと讃えられる世界指折りのリズム隊に即応し,尚且つ,いなしまくる佐藤允彦のオール・ラウンダーぶりが最高に素晴らしい!
 超絶4ビートに超絶フリージャズオーソドックススタンダードの甘いメロディーの合間に聴こえる,カチカチとキマりまくるスリリングなアドリブに大興奮!

 佐藤允彦の図抜けた構成力,クリーンなピアノ・タッチとグラデーション,どんなリズムにも乗りこなせる幅の広さに唸ってしまう。
 そうして特筆すべきはアドリブ・ラインの滑らかさ。1つのアイディアから次のアイディアへの淀みの無い流れの中で,浮かび上がる一発のフレージングにやられてしまう。スイングするピアノがとにかく分かりやすい。気持ち良い。

 『ダブル・エクスポージャー』のピアニスト佐藤允彦でなければならなかった。佐藤允彦が奏でるピアノ・トリオのハーモニーは他に聴き覚えがない。
 甘いメロディー・ラインを巧みに変化させていく佐藤允彦が,正に必要としたその場所にベースドラムがピンポイントで鳴っている。

 佐藤允彦が思い描く『ダブル・エクスポージャー』の世界観を完成させるには,名うてのデジタル・リズム・セクションが,つまりエディ・ゴメススティーヴ・ガットのリズム隊がどうしても必要とされていたのだ。

 ただし,佐藤允彦エディ・ゴメススティーヴ・ガットに求めていたのは佐藤允彦の意図を汲んだ演奏以上のものであった。
 そう。佐藤允彦の意図を汲んだその上で,しっかりとエディ・ゴメススティーヴ・ガットの「自分の音」を聴かせることだった。

DOUBLE EXPORSURE-2 だからこそ『ダブル・エクスポージャー』=佐藤允彦の「カットマン」の技術が際立つライブ盤へと仕上がったのだ。
 エディ・ゴメスベーススティーヴ・ガットドラムの軽やかでデジタルな動きに重しを置き,終始,自分のペースでアドリブを決めまくる佐藤允彦の大名盤

 ちょっと聴き始めの印象はエレピの音色も手伝ってスピーディーで軽やかな展開。演奏が分かりやすい。しかし2週目以降,しっかりと耳を傾けると実に硬派で,押し倒されてしまう印象を持つ。所々の内角攻めには思わずのけぞってしまう。

 そう。『ダブル・エクスポージャー』は,一発勝負のライブを支配した佐藤允彦の“作戦勝ち”な1枚であろう。

  01. GO NO SEN
  02. ALICE IN WONDERLAND
  03. BAMBOO SHOOTS II
  04. EVENING SNOW
  05. PHODILUS BADIUS
  06. FUMON
  07. THUS THE SONG PASSED
  08. NOUVELLE CUISINE
  09. DUKE'S CALYPSO
  10. ALL BLUES
  11. ST. THOMAS

(エピック・ソニー/EPIC/SONY 1988年発売/28・8H-5051)
(ライナーノーツ/油井正一,清水俊彦,原田充,佐藤允彦)

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チック・コリア+スティーヴ・ガッド・バンド / チャイニーズ・バタフライ5

CHINESE BUTTERFLY-1 世界最高峰のピアニストであるチック・コリアと世界最高峰のドラマーであるスティーヴ・ガッド
 それぞれソロでも大活躍なのだが,多忙なスケジュールの中,過去に幾度も共演しその度に超名盤を量産してきた「旧知の盟友」である。

 互いに「ほぼバンド・メンバーの仲」である2人が,改めて真剣にレギュラー・バンドを組んだと言うのだから驚いた。今更何を〜!?

 その答えは言葉ではなく音にある! 双頭バンドを主張するバンド名「チック・コリア+スティーヴ・ガッド・バンド」の『CHINESE BUTTERFLY』(以下『チャイニーズ・バタフライ』)の中で表現されている!

 ズバリ「チック・コリア+スティーヴ・ガッド・バンド」が目指したのは「新時代のブラジリアン・フュージョン」である。
 チック・コリアスティーヴ・ガッドの過去の共演盤を例として語るなら「チック・コリア+スティーヴ・ガッド・バンド」が目指したは『FRIENDS』の焼き直しであり『FRIENDS』のレギュラー化である。

 個人的にチック・コリアスティーヴ・ガッドと来れば,真っ先に連想してしまうのが『FRIENDS』である。
 チック・コリアの和やかなエレピに,落ち着いたスティーヴ・ガッドのナイスなグルーヴ。やっていることは凄いのに“ほのぼのセッション”のに雰囲気が堪らなく好き。
 チック・コリアエレピ片手に「新時代のブラジリアン・フュージョン」を始めようと決めた時,イメージしたのは『FRIENDS』で間違いないだろう。

 しかし同時に『FRIENDS』と来ればジョー・ファレルであり,ジョー・ファレル,と来れば『RETURN TO FOREVER』の連想ゲームがチック・コリアの脳裏をよぎったのも間違いない。
 なんだかんだで「チック・コリア+スティーヴ・ガッド・バンド」として新曲を数曲レコーディングした過程において,チック・コリアの頭の中に「新時代のブラジリアン・フュージョン」のイメージが固まった!

 そう。「チック・コリア+スティーヴ・ガッド・バンド」の結成理由は「第一期リターン・トゥ・フォーエヴァー」の焼き直しであり「第一期リターン・トゥ・フォーエヴァー」のレギュラー化である。

 それこそがオール新曲のCD1枚分の録音を終えて,なおも性格の異なる2枚目を吹き込んだ理由である。もっと言えば『RETURN TO FOREVER』発表時以来,45年振りにレコーディングされた【RETURN TO FOREVER】再演の理由であろう。

CHINESE BUTTERFLY-2 「チック・コリア+スティーヴ・ガッド・バンド」は,フロント陣担当のチック・コリアとリズム隊担当のスティーヴ・ガッドの分業化がバンド運営の肝であろうが,チック・コリアジョー・ファレルの代わりに見立てたスティーヴ・ウイルソンが見事にハマッテいる。
 スティーヴ・ウイルソンフルートに運ばれたチック・コリアローズピアノが史上最高に響いている。これはオリジナルを越えたかなぁ。

 全曲ライト・フュージョンであり全曲ライト・ブラジルの『チャイニーズ・バタフライ』。
 その後ろに『FRIENDS』と『RETURN TO FOREVER』を感じられるファンにとっては愛聴盤になるに違いない。

 そうではない,過去のバックボーンなしの新規ファンも大いに楽しめるとは思うのだが…。スティーヴ・ガッドさん,最近はちょっとぬるいのかもしれません…。
 今更何を〜!?パート2だけが心配な星5つの新バンドの誕生です。

  CD1
  01. CHICK'S CHUMS
  02. SERENITY
  03. LIKE I WAS SAYIN'
  04. A SPANISH SONG
  05. CHINESE BUTTERFLY

  CD2
  01. RETURN TO FOREVER
  02. WAKE-UP CALL
  03. GADD-ZOOKS

(ストレッチ・レコード/STRETCH RECORDS 2017年発売/UCCJ-3035/6)
(CD2枚組)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/原田和典,チック・コリア,スティーヴ・ガット,リオーネル・ルエケ,スティーヴ・ウィルソン,カリートス・デル・プエルト,ルイシート・キンテーロ)

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DIMENSION / 305

30-1 『30』が好きだ。『30』は「ただ派手だとか,ただカッコ良いとか,ただ楽しいとか」そういうレベルのアルバムではない。

 『30』には,増崎孝司ギターにしても,小野塚晃キーボードにしても,勝田一樹アルトサックスにしても「近未来フュージョンユニット」の過去のDIMENSIONに憧れて作ったような雰囲気を感じる。

 『30』はDIMENSIONの25周年記念盤である。ただし,DIMENSIONとは,1枚1枚のアルバム制作に精魂込めて全力投球するバンドである。
 普段のメンバーのコメントを聴いている限り,キリ番の『30』だからといって「特別なアニバーサリー感」など無いはずである。

 『30』は惜しくも“最高傑作”の更新とはならなかったが,管理人は『30』に特別な地位を付与したい。『30』こそがDIMENSIONのDNAを受け継ぐ「ザ・ディメンション」“象徴”の1枚に違いない。

 つまり『30』こそが,DIMENSIONの最初の1枚にふさわしく,DIMENSIONの最後の1枚にも成り得る要素を備えている。
 DIMENSIONの過去と現在,そして未来を結び合わせる特別な1枚だと思う。

 管理人は考えた。DIMENSION25周年を1枚で網羅する『30』には,今年の4月にリリースされた『BEST OF BEST 25TH ANNIVERSARY』の影響が少なからずあると思う。

 『BEST OF BEST 25TH ANNIVERSARY』の“売り”は,オール・ヒットのベスト盤ではない。『BEST OF BEST 25TH ANNIVERSARY』の“売り”は,リマスタリングであり,音源を差し替えた過去音源のブラッシュアップにある。
 このスタジオ・ワークを行なった影響が『30』で去来する,過去のDIMENSIONへの憧れを生じさせたように思う。

 DIMENSIONとは「超絶であり,メロディアスであり,バラード」である。そのことを再確認したがゆえの「超絶ありの,メロディアスありの,バラードありの」『30』の完成なのだ。
 今の“成熟した”DIMENSIONが,過去の“青二才”のDIMENSIONを演奏してみせた。そんなアルバムだと思う。

30-2 『BEST OF BEST 25TH ANNIVERSARY』のパワーを原動力として,突っ走った『30』の「超絶も,メロディアスも,バラードも」これぞ「ザ・ディメンション」の一級品。

 若い頃のDIMENSIONは,当然カッコ良かったが,歳を重ねた「近未来フュージョンユニット」が超カッコ良い。
 過去のどのDIMENSIONでも表現できなかった「派手さ,カッコ良さ,楽しさ」のレベルが奥深い。25年間,DIMENSIONを続けてきたからこその『30』の完成であろう。

 DIMENSIONにとって『30』とは,いつも通りの年一の1枚に過ぎないのだろう。
 ただし,25年間,DIMENSIONを聴き続けてきたファンにとっては『30』の響きは,間違いなく「特別なアニバーサリー盤」そのものである。

 そう。『30』はDIMENSIONの自然体の大名盤。無意識のうちに作り上げられた“現在進行形”『30』の響きは,ちょっとやそっとでは超えることのできない高みに達している。

  01. Delusion
  02. Alive The Edge
  03. Mystic Eyes
  04. An Empty Dream
  05. Take It Up
  06. Turning Point
  07. Dance The Dance
  08. Fish Story
  09. Shadowy
  10. Unnatural Life

(ザイン/ZAIN RECORDS 2017年発売/ZACL-9097)
(☆スリップ・ケース仕様)
(☆BLU−SPEC CD2仕様)

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e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ) / ヴァイアティカム+ライヴ5

VIATICUM + LIVE IN BERLIN-1 「e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)」の“最高傑作”『VIATICUM』に『LIVE IN BERLIN』をカップリングして新たに再発?されたのが『VIATICUMLIVE IN BERLIN』(以下『ヴァイアティカム+ライヴ』)である。

 『VIATICUM』が素晴らしいのは言うまでもない。そんな大名盤に「e.s.t.」絶頂期のライブ盤がカップリングされたのだから,これ以上何を望めよう。
 管理人は『ヴァイアティカム+ライヴ』リリースの意味とは「e.s.t.」のファン向けという以上に,エスビョルン・スヴェンソン亡き後,喪失感を覚えていたダン・ベルグルンドマグヌス・オストラムを慰めるため,そして2人へ再始動を促すための企画ものだと思っている。

 そんな企画ものの性質上『VIATICUM』については『ヴァイアティカム批評を参照していただくとして,ここでは『LIVE IN BERLIN批評についてのみ記すこととする。

 『LIVE IN BERLIN』を聴いて,まず痛感したのは「e.s.t.」は3ピースのバンドだったという事実だ。
 個人的に「e.s.t.」がバンド・サウンドを前面に押し出してきたのは『SEVEN DAYS OF FALLING』からだと思っているが『LIVE IN BERLIN』の壮絶なライブを聴き終えて,改めて「e.s.t.」が「3つの肉体,6本の腕,1つの頭脳」と称される理由を鑑みる気分がした

 これは『LIVE IN BERLIN』が,キース・ジャレットトリオと同じ,ピアノ・トリオライブ盤だから余計に感じるのだろうが,個性の強い3人のせめぎ合いで芸術性をぐいぐいと高みに持っていこうとするキース・ジャレットに対し,エスビョルン・スヴェンソンは個人の個性以上にバンドとしての個性を追及している。

 「e.s.t.」にあって他のピアノ・トリオに無いもの。それはそれぞれの曲に対し,バンドとしてどうプレイするか,それがメンバー間で合意形成できている点にある。
 その“暗黙の了解”とか“阿吽の呼吸”が蜜だからこそ,アドリブの自由度が高い。毎回の演奏が予定調和で終わらない。いつでもリラックスと緊張感が程よく保たれているように聴こえる。

 その意味で『LIVE IN BERLIN』は,普段と何ら変わらない「e.s.t.」の1回のライブの記録のように思う。
 そう。『LIVE IN BERLIN』は,格段に素晴らしい決定的なライブではない。収録曲4曲,演奏時間も40分。どちらかと言えば単体でリリースしようにもできない「帯に短したすきに長し」的な音源集であって,オフィシャル海賊盤チックなライブ盤だと思っている。

 そんな記録用音源=『LIVE IN BERLIN』でもヤラレテしまうのだから,逆に「e.s.t.」の物凄さが際立っている。
 三者三様,自由な音選びでありながら,このうちの一人でも欠けたら「e.s.t.」の音世界は絶対に存在しなくなる。3つの異なる個性が1つでも2でも,そして3つでも確実にフィットする信頼感とコンビネーションが根底にある。互いに互いの音を聴き,次の音選びを予想することができるのだろう。

VIATICUM + LIVE IN BERLIN-2 ライブのハイライトとはハプニングである。曲が進行する過程で全く新しい曲へと変化していく。『LIVE IN BERLIN』がそのことを証明してくれている。
 だからエスビョルン・スヴェンソンが亡くなった時,ダン・ベルグルンドマグヌス・オストラムにとってメンバー・チェンジなど考えられなかったのだろう。

 エスビョルン・スヴェンソン亡き今「e.s.t.」は完全終了である。『ヴァイアティカム+ライヴ』で「e.s.t.」は完全終了した。

 『ヴァイアティカム+ライヴ』の真実とは「傷心のダン・ベルグルンドマグヌス・オストラムに捧ぐ」なのだと思う。

  Disc 1:Viaticum
  01. Tide Of Trepidation
  02. Eighty-eight Days In My Veins
  03. The Well-wisher
  04. The Unstable Table & The Infamous Fable
  05. Viaticum
  06. In The Tail Of Her Eye
  07. Letter From The Leviathan
  08. A Picture Of Doris Travelling With Boris
  09. What Though The Way May Be Long

  Disc 2:live in Berlin
  01. A Picture Of Doris Travelling With Boris
  02. In The Tail Of Her Eye
  03. The Unstable Table & The Infamous Fable
  04. The Rube Thing
  05. All The Beauty She Left Behind

(ビデオアーツ/ACT 2008年発売/VACG-1003/4)
(CD2枚組)
(ライナーノーツ/廣瀬大輔)

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伊東 たけし / ヴィジョンズ4

VISIONS-1 『VISIONS』(以下『ヴィジョンズ』)は,伊東たけしT−スクェア退団後のソロ第一弾アルバム。

 伊東たけしが本当にやりたかった音楽。その答えが『ヴィジョンズ』にたっぷりと詰まっているはず。
 そう思って聴き込んだ『ヴィジョンズ』の印象は,まさかのフィリップ・セスであった。伊東たけし安藤まさひろの腕から離れフィリップ・セスに抱かれている。

 『ヴィジョンズ』でスクェア・カラーが消された理由は伊東たけしサックスの“先鋭的な鳴り”にある。
 明るく爽やかな“T−スクェアのフロントマン”としての伊東たけしは『ヴィジョンズ』の中にはもはやいない。『ヴィジョンズ』の中にいるのは“HIPでCOOLな”ハイテンション・サックス・プレイヤー。再デビューしたかのような振り幅である。

 では『ヴィジョンズ』は駄盤なのかというとそうではない。『ヴィジョンズ』の最先端NYサウンドを駆け巡る,伊東たけしアルトサックスが相当にカッコ良い。
 アメリカ進出と言う目的でリリースされたスクェアの『WAVE』。その中の【BIG CITY】で痺れたあの感じが押し寄せてくる。

 スクェア・ファンであればあるほど,激変した伊東たけしばかりが耳に付くことと思うが,伊東たけしが目指した『WAVE』の夢の続きは,山下達郎と共演した【BLOW(N.Y.VERSION)】と『NATURAL』収録【HAPPY SONG】の聴き慣れたセルフ・カヴァーにこそ如実に表現されていると思う。

VISIONS-2 伊東たけしの中のアメリカとはLAのラス・フリーマンではなくNYのフィリップ・セスだったのだろう。でもよくよく聴くとフィリップ・セスではなく住友紀人だったりもする。

 伊東たけしとしてはオールド・セルマーへと音色も変えて,サックス一本で勝負していくためのEWIプレイヤー=住友紀人の起用だったと思うが,同じEWIプレイヤーだから分かった住友紀人のNYな才能に徐々に惹かれていくこととなる…。

 「影武者」住友紀人の覚醒は『ヴィジョンズ』におけるフィリップ・セスの音楽眼! 分かるかなぁ〜。

  01. MARBLES
  02. CORE ZONE
  03. VISION
  04. GAIYA
  05. BLOW (N.Y. VERSION)
  06. HAPPY SONG
  07. IN THE DISTANCE
  08. MANKALA

(アトランティック/MMG ATLANTIC 1992年発売/AMCM-4135)

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e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ) / ルーコサイト4

LEUCOCYTE-1 「e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)」最高の実験作にして最大の問題作,改め「冒険作」が『LEUCOCYTE』(以下『ルーコサイト』)である。

 『ルーコサイト』をどう評価するか? それは『ルーコサイト』の次なくしては評価できないように思う。
 ただし,結果的に『ルーコサイト』の次は永遠に聴けなくなってしまった。『ルーコサイト』はエスビョルン・スヴェンソンの遺作である。『ルーコサイト』で「e.s.t.」はジ・エンド。

 確かに『ルーコサイト』が「e.s.t.」の最終作であるのだが,それは結果的に,意図せず最終作になってしまっただけのことで『ルーコサイト』制作時のエスビョルン・スヴェンソンは「e.s.t.」の未来しか見据えていなかった。
 もっと言えば『ルーコサイト』制作時のエスビョルン・スヴェンソンは「e.s.t.」の過去と現在などなかったかのように演奏している。

 そう。『ルーコサイト』には,マイルス・デイビスmそれも“電化マイルス”が放つ「クラッシュ&ビルド」の精神が宿っている。
 おおっと「e.s.t.」の紹介として,キース・ジャレットパット・メセニーマイルス・デイビスの名を挙げているが,これは管理人からのエスビョルン・スヴェンソンに対するリスペクトであって,断じてエスビョルン・スヴェンソンは唯一無二の存在である。「e.s.t.」は独自のオリジナリティを持ったジャズ・バンドである。そこのとこ読み間違えませんように。

 “電化マイルス”の1枚として批評したくなる『ルーコサイト』の野心的なサウンドは,もはやジャズではなく,ポスト・ロックとかミニマル・ミュージックの様相を呈している。
 ズバリ「e.s.t.」が『ルーコサイト』で新しく取り入れたサウンド・エフェクトは“ノイズ”である。当然,単なるノイズではない。これは
,繊細かつエモーショナルなノイズである。そして今を感じさせてくれるノイズである。なんて残酷で,そして美しいノイズ音楽なのだろう。

 飛び交うノイズにエフェクトが分厚くかかっている。どう転んでもジャズとは思えないビートに,時折かぶさる不穏でありながらうっとりするほど繊細なピアノ
 ジャズ・ピアノを思い描くと到底聴ける代物ではないが『ルーコサイト』の美しさは「条件付き」で紛れもない本物である。

 その「条件付き」とはノイズ・ベースで聴けるかどうか? かつてパット・メセニーが『ZERO TOLERANCE FOR SILENCE』で作ったノイズ・サウンドがメセニー・ミュージックの試金石となったのと同じように…。
 ノイズの嵐の中で,ピアノエスビョルン・スヴェンソンベースダン・ベルグルンドドラムマグヌス・オストラムが互いの音を探り合っている様を聴き分けられるかどうかが「e.s.t.」ファンの,そしてノイズ・マニアとしての試金石…。

 1曲目こそエフェクトなしのアコースティック・ピアノ小品になっているが,2曲目からはピアノにディストーションとエコーをかけ,エフェクト/電子音の重要度比率を意図的に上げてきていることが判る。4曲目なんて,正統ジャズに回帰したかと思ったら,逆で電子音だらけのかなり先鋭的なトラック仕上げ…。
 全編エスカレートしていく「変態御用達ノイズ」。『ルーコサイト』は純粋な音楽などではなく,先の『ZERO TOLERANCE FOR SILENCE』と同様に「音響作品」として捉えるべきであろう。

LEUCOCYTE-2 つまりは「e.s.t.」のファンだからではなく「変態御用達ノイズ」を心から愛せるかどうかで『ルーコサイト』の評価は一変する。
 その意味で『ルーコサイト』の管理人の評価は星4つである。中盤までは星6つ気分でノリノリで聴いていたのだが,最後まで過剰なサイケを展開されたら多少ゲンナリ。

 正直,超攻撃型「e.s.t.」の新サウンドに,せめてもう1曲ぐらいは従来のヨーロピアンジャズ・ピアノ・テイストが聴きたくなる。従来の「e.s.t.」が,従来のジャズが,そして従来の音楽が聴きたくなる。

 『SEVEN DAYS OF FALLING』→『VIATICUM』→『TUESDAY WONDERLAND』でのスタイル・チェンジは確かに衝撃的であったが,ある意味「想定の範囲内」で受け入れることが出来た。
 しかし,今回の『ルーコサイト』は「想定外」である。まさかの「変態御用達ノイズ」アルバムの登場である。

 『ルーコサイト』は「e.s.t.」最高の実験作にして最大の問題作というよりも「冒険作」と呼ぶべきであろう。

  01. DECADE
  02. PREMONITION - EARTH
  03. PREMONITION - CONTORTED
  04. JAZZ
  05. STILL
  06. AJAR
  07. LEUCOCYTE - AB INITIO
  08. LEUCOCYTE - AD INTERIM
  09. LEUCOCYTE - AD MORTEM
  10. LEUCOCYTE - AD INFINITUM

(エマーシー/EMARCY 2008年発売/UCCM-1159)
(ライナーノーツ/佐藤英輔)

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スイングジャーナル主催 ジャズ・ディスク大賞 1993年度(第27回)

 「スイングジャーナル」誌が,レコード会社各社の自薦ノミネート作品を基にして,国内で該当年度中に発売されたCDLPビデオを対象に同誌委託の「ジャズ・ディスク大賞選考委員」によって選出される,日本ジャズ界に最も貢献した作品に贈られる「ジャズ・ディスク大賞」。

 今回は1993年度(第27回)の発表です。

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ラプソディア★【金賞】.ラプソディア
ゴンサロ・ルバルカバ


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バイ・バイ・ブラックバード★【銀賞】.バイ・バイ・ブラックバード
キース・ジャレット


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ブルー・ライト・ティル・ダウン★【ボーカル賞】.ブルー・ライト・ティル・ダウン
カサンドラ・ウィルソン


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スタンダーズ・マイ・ウェイ★【日本ボーカル賞】.スタンダーズ・マイ・ウェイ
伊藤君子


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MAJOR TO MINOR★【日本ジャズ賞】.メイジャー・トゥ・マイナー
峰厚介


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ヒア・アイ・アム★【日本ジャズ賞】.WOW
大西順子


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ストレイト・トゥ・ザ・スタンダード★【制作企画賞】.ミュージック・オブ・ギル・エバンス
マンデイ・ナイト・オーケストラ・ライブ・アット・スイート・ベイジル

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デュークへの想い★【録音賞(海外)】.デュークへの想い
 デイブ・グルーシン


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ブルースエット・パート2(紙ジャケット仕様)★【録音賞(国内)】.ブルースエット・パートII
カーティス・フラー


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マイルス・アヘッド [Laser Disc]★【最優秀ビデオ賞】.マイルス・アヘッド
 マイルス・デイビス


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 キース・ジャレットの『バイ・バイ・ブラックバード』が【銀賞】受賞。

 『バイ・バイ・ブラックバード』はマイルス・デイビス他界2週間後に吹き込まれたキース・ジャレットが捧げたマイルス・デイビスへの追悼盤。しかもキース・ジャレットトリオとしてはレアものとなるスタジオ盤。

 しかし,なんだろう。悪くはないが『バイ・バイ・ブラックバード』でのキース・ジャレットの演奏には共感できないし,いつものようにどっぷりとハマルことができない。演奏が薄いのだ。

 薄い理由は1つに選曲が不明瞭。マイルス・デイビスを直接連想させる愛奏曲がない。もう1つはキース・ジャレットが思うほど,ゲイリー・ピーコックジャック・デジョネットマイルス・デイビスの死を悼んでいたのだろうか?

 まっ,キース・ジャレットの大名盤群からすると下の評価となる『バイ・バイ・ブラックバード』であるが,それでも他のピアノ・トリオからすると名盤として評価されるのだろう。
 負け惜しみではなく【銀賞】がちょうどいいのである。

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e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ) / ライヴ・イン・ハンブルク5

LIVE IN HAMBURG-1 「e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)」の2枚の公式ライブ盤のお話。
 『E.S.T. LIVE』が『TRAVELS』なら『LIVE IN HAMBURG』(以下『ライヴ・イン・ハンブルク』)は『THE ROAD TO YOU − RECORDED LIVE IN EUROPE』である。

 おおっと「e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)批評に,突然,パット・メセニーの名前が登場してきたが,今まで書かなかったことをお詫びする。
 「e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)」を絶賛してきたのは管理人の“フェイバリットキース・ジャレットだけではない。管理人もう1人の“フェイバリットパット・メセニーも「e.s.t.」を絶賛し,実際に共演し,DVDまでリリースしている。

 そもそも「先進的音楽の求道者」としてエスビョルン・スヴェンソンパット・メセニーに共通点を感じていたが「e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)」と「パット・メセニーグループPMG)」が,目指す方向性においても表現する手法においても,ついに『ライヴ・イン・ハンブルク』でシンクロしたように思う。

 『ライヴ・イン・ハンブルク』とは『TUESDAY WONDERLAND』のフォロー・ツアーライブ盤なのだが,偶然にも元ネタである『TUESDAY WONDERLAND』のCD帯にはパット・メセニーからの「過去15年間で見たバンドで一番エキサイティングだ」との推薦文が載せられている。

 これって偶然ではない。数年前からエスビョルン・スヴェンソンとすでにシンクロしていたパット・メセニー。そのパット・メセニーの体験が『TUESDAY WONDERLAND』でのエキサイティングなツアーを予見した。
 そしてその推薦文はそのまま『ライヴ・イン・ハンブルク』に当てはまると思う。

 そう。パット・メセニーは『TUESDAY WONDERLAND』の「e.s.t.」に『THE ROAD TO YOU − RECORDED LIVE IN EUROPE』当時の「PMG」を思い重ねていたように思う。パット・メセニー最大のイケイケの絶頂期で,創造性が漲り,何を演っても上手くゆく。大観衆が熱狂する。
 『THE ROAD TO YOU − RECORDED LIVE IN EUROPE』はヨーロッパ・ツアー。「e.s.t.」はヨーロッピアン・ジャズ

 個人的に大好きなのはECMの美しいパット・メセニー。“最高傑作”はノンサッチの『THE WAY UP』のパット・メセニー
 でっ,超人気盤揃いの「ゲフィンは下品」なのだが,あの下品さが“青春のパット・メセニー”に違いない。聴いていて楽しい。

 だ・か・ら『E.S.T. LIVE』が『TRAVELS』。『LIVE IN HAMBURG』が『THE ROAD TO YOU − RECORDED LIVE IN EUROPE』って訳なのだ。
 【DOLORES IN A SHOESTAND】が【BETTER DAYS AHEAD】に対応し【GOLDWRAP】が【THIRD WIND】に対応するのも『LIVE IN HAMBURG』が『THE ROAD TO YOU − RECORDED LIVE IN EUROPE』って訳なのだ。

LIVE IN HAMBURG-2 それにしても『TUESDAY WONDERLAND』と『ライヴ・イン・ハンブルク』では,同じ曲が演奏されているのに印象がかなり異なっている。
 スタジオ盤では陰陽で言えば「陰」の部分が出ているが,ライブ盤では観客の盛り上がりと共に「陽」の部分が光り輝きCD以上の楽曲へと昇華させている。素晴らしい。

 お得意の「電化ジャズ」も増し増しの盛り盛りで,ヘッドフォンで電子音を追い続けているとあっちの世界へ連れ去られそうに感じてしまう。最高のテクノ・ポップである。スタジオ盤とは異なるベクトルの莫大なエネルギーが流れている。
 本来,ピアノエスビョルン・スヴェンソンベースダン・ベルグルンドドラムマグヌス・オストラムは“超絶技巧”のジャズメン。「内ではなく外へ向けられた」超一流のアドリブが最高に素晴らしい。

 『ライヴ・イン・ハンブルク』で,かつてのパット・メセニーがそうだったように「e.s.t.」も“ベーシックなジャズ”の枠を超えてしまった。
 エスビョルン・スヴェンソンは死んで“伝説”となったわけではない。エスビョルン・スヴェンソンは『ライヴ・イン・ハンブルク』で“生きる伝説”となっていたのだった。

 って,すみません。真面目に批評してしまいました。『ライヴ・イン・ハンブルク』は熱く語るアルバムではありませんでした。
 理性を忘れてエキサイティングな演奏にただただ酔いしれるだけ〜。エンターテイメント〜。

  CD1
  01. tuesday wonderland
  02. the rube thing
  03. where we used to live
  04. 800 streets by feet
  05. definition of a dog

  CD2
  01. the goldhearted miner
  02. dolores in a shoestand
  03. sipping on the solid ground
  04. goldwrap
  05. behind the yashmak

(ユニバーサル・ジャズ/UNIVERSAL JAZZ 2007年発売/UCCM-1139/40)
(CD2枚組)
(ライナーノーツ/ジョー・ヒールシャー,ダン,カーステン・ヤンケ,マグヌス,エスビョルン,オキ)

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渡辺 貞夫 / スウィート・ディール4

SWEET DEAL-1 『SWEET DEAL』(以下『スウィート・ディール』)は,LAの3つのスーパー・フュージョン・グループ,ラッセル・フェランテ率いるイエロー・ジャケッツカルロス・ベガ率いるカリズマ,そしてエイブラハム・ラボリエル率いるコイノニアの各メンバーによる混成セッション・アルバムである。

 つまりは「ナベサダフュージョン,ここに極まりけり!」な豪華絢爛な1枚なのであるが,実際に聴いた『スウィート・ディール』の印象はかなりフュージョンからかなり離れて“ジャズっぽい”。

 『スウィート・ディール』録音の時点で,すでにコイノニアは活動を休止し,イエロー・ジャケッツも突然変異なジャズ・ユニットと化していたのだから『スウィート・ディール』が“ジャズっぽい”のも理解できる。管理人はそう思って楽しんでいた。

 『スウィート・ディール』はジャズフュージョンが見事に融合した『フロントシート』の続編に当たる。
しかし『スウィート・ディール』の真実とは『フロントシート』の続編にして『ア・ナイト・ウィズ・ストリングス』の前作にも当たる。

 『ア・ナイト・ウィズ・ストリングス』を聴き終えて「あっ,これだったんだ」と思った経験がある。『ア・ナイト・ウィズ・ストリングス』の中に『スウィート・ディール』のモチーフが残されている。
 『スウィート・ディール』〜『ア・ナイト・ウィズ・ストリングス』へと流れる「ゴキゲン・フュージョンなのに“ジャズっぽい”」アンサンブルのキーマン。それがピーター・アースキンの存在にある。

 ジャズフュージョンの両方で大活躍+ビッグ・バンドとスモール・コンボの両方で大活躍な,ソロ以上に全体のアンサンブルに気を配る“JAZZYな”ドラマーピーター・アースキン“その人”なのであった。

 『スウィート・ディール』のハイライトは【EARLY SPRING】と【CYCLING】である。
 “先頭でリードしつつ後方からも見守っている”ピーター・アースキンドラミングが素晴らしい。そこにジョン・パティトゥッチである。全てはラッセル・フェランテのハイセンスなのである。

SWEET DEAL-2 管理人の結論。『スウィート・ディール批評

 3人のプロデューサーによる『スウィート・ディール』のサウンドメイクは文句のつけようがない。ジャズの良さとフュージョンの良さが高次元で融合した名盤である。

 ただし,本来そこにメインであるはずの渡辺貞夫アルト・サックスがわずかに一歩だけ引っ込んでいる。もしやナベサダ自身が極上のバック・サウンドに惚れ込み,バックの名演をファンのみんなにも聴かせたかったのかなぁ。

  01. Passing By
  02. Sweet Deal
  03. Early Spring
  04. After Goodbye
  05. With The Wind
  06. Catch Me In The Sun
  07. Old Photograph
  08. As You Say
  09. Only Love
  10. Blue On Green
  11. Masai Talk
  12. Cycling

(エレクトラ/ELEKTRA 1991年発売/WPCP-4400)

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e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ) / チューズデイ・ワンダーランド5

TUESDAY WONDERLAND-1 「e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)」とは,ジャズピアノ・トリオというスタイルを周到しつつ,一方で既存のピアノ・トリオのスタイルからの逸脱を目指すという,敢えて自らが課した矛盾をエネルギーに前身してきたバンドである。

 ネタ元はエスビョルン・スヴェンソンのアイドルであるキース・ジャレットセロニアス・モンクでありながら,ロックであり,ポップスであり,クラシックのようでもある。
 JAZZYな演奏で全身をまとってはいても,その音楽性はジャズから遠く離れているように思う。

 そんな「e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)」の音楽性を「ポスト・ロック」と呼ぶのは,実に言い当てて妙である。
 そもそもブラッド・メルドーにしてもエスビョルン・スヴェンソンにしても,彼等の世代は疑うべくもなくロックからの洗礼を受けている。「e.s.t.」が「ロックするピアノ・トリオ」し始めたのは『GOOD MORNING SUSIE SOHO』の頃からだから随分前のことになる。

 しかし「e.s.t.」が明確にジャズ・バンドではなくロック・バンドとしての音造りを打ち出したのは『TUESDAY WONDERLAND』(以下『チューズデイ・ワンダーランド』)以降であろう。
 『チューズデイ・ワンダーランド』での「e.s.t.」は「ロックするピアノ・トリオ」を越えて「インプロヴィゼーションするロック・バンド」と化しているのだ。

 例えば1曲目の【FADING MAID PRELUDIUM】。クラシカルな旋律の静かな美しさと動的もしくは破壊的なテクスチャーとの振れ幅,コントラスト。ピアニシモからフォルテシモへの意表をつく展開。49秒で突然轟然と鳴り響くディストーション・ベースでの「突き放し」はキング・クリムゾンのあれであり,ジミ・ヘンドリックスのそれであろう。
 【DOLORES IN A SHOESTAND】と【GOLDWRAP】のキラー・チューンでもループやリフが多用され,静寂と喧騒,混沌と整合,何だか全てが彼らの予測通りにコントロールされていくような感じ。まんまとハマって何度聴いても快感が走る…。

 『チューズデイ・ワンダーランド』には,いつも以上にピアノベースドラム以外の電子音が入っている。サウンド・マシーンも使われている。でも一向にうるさくは感じない。
 止まったり動いたりする緩急のつけかたはクラブ・ジャズっぽい。すぐに覚えてしまうシンプルで美しいメロディーと難解な変拍子のリズムがクセになる…。

 ズバリ「e.s.t.」は『チューズデイ・ワンダーランド』で,多くのジャズメンがどうしても越えることの出来なかった大きな壁をついに突き破っている。これは大事件である。
 ジャズピアノ・トリオがその基本形を崩すこと無く,ジャズの言語でついにロックン・ロールの本家本元を呑み込んでしまっている。『チューズデイ・ワンダーランド』での「e.s.t.」こそが“ロックの中のロック”しているのである。

TUESDAY WONDERLAND-2 「インプロヴィゼーションするロック・バンド」と化した『チューズデイ・ワンダーランド』が素晴らしい。大好きである。星5つの大名盤である。

 しかし『チューズデイ・ワンダーランド』は一気に「ポスト・ロック」を通りすぎてしまったような印象を受ける。理由は大手のエマーシー移籍と無関係ではないであろう。
 近年,これだけ玄人から絶賛され,素人からも絶賛され,売れまくったジャズ・バンドは他になかった。ロック・バンド並みのセールスが求められたがゆえの,本心ではない部分での非ジャズ…。

 だから管理人は『チューズデイ・ワンダーランド』のフォロー・ツアーライブ盤『LIVE IN HAMBURG』を押しているのです!

  01. fading maid preludium
  02. tuesday wonderland
  03. the goldhearted miner
  04. brewery of beggars
  05. beggar's blanket
  06. dolores in a shoestand
  07. where we used to live
  08. eighthundred streets by feet
  09. goldwrap
  10. sipping on the solid ground
  11. fading maid postludium

(エマーシー/EMARCY 2006年発売/UCCM-1101)
(ライナーノーツ/鯉沼利成,須永辰緒,佐藤英輔)

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MALTA / サマー・ドリーミン4

SUMMER DREAMIN'-1 『SUMMER DREAMIN’』(以下『サマー・ドリーミン』)は『MALTA』『SWEET MAGIC』に続く「お洒落なシティ・ジャズ」路線の3作目である。

 しかし,同じジャズサックス期のMALTAでありながらも『MALTA』『SWEET MAGIC』寄りではなく,フュージョンサックス期の『SPARKLING』にイメージが近い。
 というか「大人のライト・ジャズ」だったMALTAの印象が『サマー・ドリーミン』で一気に若返って「イケイケのジャズ・パワー」を感じるようになった。

 MALTAジャズサックスが甘いのそのままにエネルギッシュに響き出したのが『サマー・ドリーミン』からだと思う。
 その理由を問われれば,以後の重要なキーワードとなる「夏」であろう。波の音で始まり波の音で終わる『サマー・ドリーミン』が,カシオペアスクェア松岡直也高中正義が既に活躍していた「夏」のBGMというビッグなフィールドに繰り出したのだ。

 ただし『サマー・ドリーミン』でのMALTAの「夏」は真っ昼間でもないし,南国の熱帯でもない。そうではなく,朝晩がひんやりとした避暑地での夏,爽やかな朝日と夕陽の夏である。
 佳曲揃いの『サマー・ドリーミン』であるが,個人的には【MORNING FLIGHT】一択である。

 【MORNING FLIGHT】での岡沢章ベース・ラインが最強である。そこに絡む松原正樹のリズム・ギター渡嘉敷祐一JAZZYなドラムがこれまたよい。

 【MORNING FLIGHT】の別口ではMALTAの甘いアルトサックスに絡むJOE STRINGSがこれまた最高で盛り上げる盛り上げる。俄然,ロマンティック・MALTAにメロメロでトロトロ〜。

SUMMER DREAMIN'-2 個人的に「MALTAの1曲は?」と問われれば,並居るJTのスーパーTVCM曲を抑えて【MORNING FLIGHT】を指名する。

 ただし管理人が愛する【MORNING FLIGHT】は『サマー・ドリーミン』の【MORNING FLIGHT】ではなく『MY HIT & RUN』のアンコール曲となった【MORNING FLIGHT II】の方なのです。ちゃんちゃん。

  01. SUMMER DREAMIN'
  02. MORNING FLIGHT
  03. SEA EXPRESS
  04. OCEAN SIDE
  05. SUPER WAVE
  06. ALL THROUGH THE NIGHT
  07. FANCY WALKIN'
  08. SUNSHINE STREET
  09. HAVE A NICE DAY
  10. A LETTER FROM SEPTEMBER
  11. SUMMER DREAMIN' II

(ビクター/JVC 1985年発売/VDJ-1016)

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e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ) / ヴァイアティカム5

VIATICUM-1 『VIATICUM』(以下『ヴァイアティカム』)というアルバムは暗い。そして重い。
 いささか哲学的な思索的な感じが,これまたキース・ジャレットを想起させてもくれる。

 現代最高のピアノ・トリオとして『SEVEN DAYS OF FALLING』で“天下を取った”「e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)」のモチベーションは,更なる世界での高みにではなく,再び自分たち自身の音楽性へと向けられている。
 「e.s.t.」を聴いていてクラシック的な影響を大いに感じてしまったのが『ヴァイアティカム』であった。静寂と調和が完璧で美しいのだ。

 そう。「e.s.t.」が世界的なジャズ・バンドと認められたがゆえに,過去を見つめ,現在を見つめ,未来を見つめ,これから歩むべき道を模索した作業に思えてならない。
 そうして描かれた「深遠な音世界」が『ヴァイアティカム』に見事に凝縮されているように思う。

 正直に語ると『ヴァイアティカム』の最初の印象は薄かった。これぞ北欧ジャズ的な,陰があって色彩感も温度感も低い曲が並んでいる。管理人が次の「e.s.t.」に期待する,ガツンと来るJAMっぽさが希薄であった。
 でも『ヴァイアティカム』がつまらなかったのは,最初に聴いた数回だけだった。『ヴァイアティカム』を聴き込むにつれ,どんどんどんどん曲が姿を変えてくる。

 例えば,ピアノが前に出てきた瞬間のベースドラムの絡み方は,ポップスやロックやクラシックの様々なアプローチが垣間見えてくる。
 ピアノベースを歪ませ,そこにコーラスをかけたりエフェクトを多用するバンドであるが,実は「e.s.t.」の“電化”の真髄とはさりげないリバーブにあるように思う。
 必殺リバーブをピアノ・トリオのフォーマットにこだわり,実験性を前面に押し出すことはなく必要最低限の効果で使っている。『ヴァイアティカム』はそんな音響系の細部の音造りが半端ない。音響の「プロ集団」仕様に仕上がっている。

 その一方で「e.s.t.」のポリシーとは,アドリブにではなくアレンジにある,と何かの雑誌で読んだ記憶があるのだが,意外や意外,一聴して印象に残り難いが,エスビョルン・スヴェンソンは感性を研ぎ澄ました鋭いアドリブを要所要所に織り込んでいる。

 どんなにポップでロックでクラシックして聴かせようとも,エスビョルン・スヴェンソンアドリブは,紛れもなくジャズの“まんま”でうれしくなる。
 エスビョルン・スヴェンソンアドリブこそが,暗く重い『ヴァイアティカム』の中の“希望の光”なのである。

VIATICUM-2 『ヴァイアティカム』におけるエスビョルン・スヴェンソンアドリブを聴いていると,アドリブがすっと心の内に入り込んできては,ここではないどこかに連れ去られるような気分がする。
 具体的などこかの場所でもなく過去でも未来でもない。2次元,3次元ではなく異次元な見知らぬ場所のような気がしている。

 そんな『ヴァイアティカム』が導いた場所の答えが分かったのは,次作『TUESDAY WONDERLAND』を聴いた後のことである。
 『TUESDAY WONDERLAND』で「e.s.t.」は,ジャズ・ピアノからの,そしてピアノ・トリオからの決別を宣言している。

 そう。超絶技巧を抑え,余計な抑揚を抑え,楽曲の調和とアルバム全体の調和を目指した『ヴァイアティカム』は「e.s.t.」という最高峰のピアノ・トリオジャズの世界に存在していたことの記録であり,ジャズの世界に最後に残した「爪痕」である。

 エスビョルン・スヴェンソンの亡き今『ヴァイアティカム』の「爪痕」が『TUESDAY WONDERLAND』『LIVE IN HAMBURG』『LEUCOCYTE』『301』以上に“疼いている”。

  01. Tide Of Trepidation
  02. Eighty-eight Days In My Veins
  03. The Well-wisher
  04. The Unstable Table & The Infamous Fable
  05. Viaticum
  06. In The Tail Of Her Eye
  07. Letter From The Leviathan
  08. A Picture Of Doris Travelling With Boris
  09. What Though The Way May Be Long

(ソニー/SUPER STUDIO GUL 2005年発売/SICP-764)
(ライナーノーツ/児山紀芳)

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ヒューマン・ソウル / ラブ・ベルズ4

LOVE BELLS-1 「ナニワ・エキスプレス」の解散後,ベーシスト清水興ドラマー東原力哉は行動を共にする。
 解散後すぐに「ナニワ・エキスプレス」の後継バンド→「ソウル・エキスプレス」を結成する。ズバリ,歌ものバンドである。

 この流れ,誰かと似ていない? 管理人にはカシオペア脱退後,ベーシスト櫻井哲夫ドラマー神保彰が結成した「シャンバラ」をイメージしてしまう。こちらもズバリ,歌ものバンドなのである。

 …ということで,人気フュージョン・バンドのベーシストドラマーが歌ものをやるという共通項で「ソウル・エキスプレス」と「シャンバラ」に注目し,比較していたのだが…。
 この両グループの活動は離陸間もなく頓挫してしまった。

 櫻井哲夫神保彰の「シャンバラ」の後継バンドは「ジンサク」というフュージョン・ユニットへと流れたが,清水興東原力哉の「ソウル・エキスプレス」の後継バンドが「ヒューマン・ソウル」。
 まさかの歌もの継続なのだが「ヒューマン・ソウル」に東原力哉は不参加。「ヒューマン・ソウル」は清水興のワンマン・バンドとして始動する。

 櫻井哲夫神保彰東原力哉が飽きてしまった?歌ものを継続させた清水興の大選択。
 大方の予想は失敗するとお思いでしょうが個人的には悪くはない。好みかと聞かれれば好みとは言わないが,これはこれでフュージョン名盤に肩を並べていると思う。

 『LOVE BELLS』(以下『ラブ・ベルズ』)が実に上質である。ジェイ&シルキーをヴォーカルに迎えて,甘いファンキー?の百花繚乱である。往年のモータウン・サウンドに似ていると思う。
 日本人がやるソウルとしては最高レベル,という音楽業界の評判にも頷ける。

LOVE BELLS-2 『ラブ・ベルズ』でのお洒落なツイン・ヴォーカルが,ぶつかり合ってハーモニーを生み出し,息を揃えてゴスペル系のコーラスを付けていく。
 「ヒューマン・ソウル」の“売り”である清水興の甘いファンキーグルーヴがブラック・ソウル・モータウン。

 ソウルであろうとフュージョンであろうと音楽はリズムなんだなぁ。リズムがクリエイトする音楽はインストでも歌ものでも面白いんだなぁ。

 櫻井哲夫さん,神保彰さん,東原力哉さん,清水興の音楽眼を侮ってはなりませんよ〜。誰も侮ってはいませんけど〜。

  01. THE CHRISTMAS SHUFFLE
  02. JEALOUS GUY
  03. LUV BELLS
  04. ROSE
  05. BABY, IT'S COLD OUTSIDE
  06. SPECIAL CLIMB

(フォーライフ/FOR LIFE 1993年発売/FLCF-25229)

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e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ) / セヴン・デイズ・オブ・フォーリング5

SEVEN DAYS OF FALLING-1 『FROM GAGARIN’S POINT OF VIEW』→『GOOD MORNING SUSIE SOHO』→『STRANGE PLACE FOR SNOW』の「怒涛の三部作」で“世界を獲った”「e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)」。

 しかし「怒涛の三部作」は,今振り返ると『SEVEN DAYS OF FALLING』(以下『セヴン・デイズ・オブ・フォーリング』)で幕開けする「e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)第二章」の序章にすぎなかった。

 “最後にして最高の”ジャズ・アルバムの『FROM GAGARIN’S POINT OF VIEW』→「ロックするピアノ・トリオ」革命の『GOOD MORNING SUSIE SOHO』→時代の最先端を行く非ジャズ・ピアノの『STRANGE PLACE FOR SNOW』。
 それら「怒涛の三部作」で築き上げた1枚1枚の特長を全ての面で包含し,凌駕している。まさか『セヴン・デイズ・オブ・フォーリング』のようなアルバムが誕生するとは思ってもいなかった。

 そう。『セヴン・デイズ・オブ・フォーリング』における「e.s.t.」UPDATEの要因とは,トリオの中で一人突出していたエスビョルン・スヴェンソンピアノに,ベースダン・ベルグルンドドラムマグヌス・オストラムが追いつき覚醒した,3人が3人とも主役を張れる,バランスの取れたトリオ・ミュージック
 言ってみれば「e.s.t.」がSMAPのようなキャラクターを発揮し始めた新次元のグループ・サウンドへと変化したと思う。

 ただし,多分,事実ではない。ベースダン・ベルグルンドドラムマグヌス・オストラムの素晴らしさは『E.S.T. LIVE』を聴き直せばすぐに分かる。
 単純に「キース・ジャレット命」の管理人がエスビョルン・スヴェンソンだけを偏重してきたにすぎない。

 ダン・ベルグルンドのディストーションをかけたウッドベースはノイジーなロック・ギターのような演奏である。そのくせアルコが抜群に上手で正確無比な音取りは驚異のジャズ・ベースそのものである。
 マグヌス・オストラムドラムは,繊細なジャズであり大胆なテクノでもある。非常にドライで硬いビートを生み出している。

SEVEN DAYS OF FALLING-2 そう。「e.s.t.」の本当の魅力とは「最先端のリズム処理」にある。ベースドラムの演奏の幅の広さと連動性が素晴らしい。
 そのエキサイティングなリズム隊の上に,エスビョルン・スヴェンソンの「詩的でミニマルでアンビエントな」ピアノを重ねるのが「e.s.t.」のアイデンティティなのである。

 『セヴン・デイズ・オブ・フォーリング』を聴けば聴くほど「e.s.t.」のメンバーはこの3人でなければならないと強く思うようになった。
 『セヴン・デイズ・オブ・フォーリング』がきっかけとなり,自分の中の「e.s.t.」への印象が変化したと思う。エスビョルン・スヴェンソンの斬新なピアノを聴くという態度から「e.s.t.」というピアノ・トリオと向き合うようになった。

 ズバリ,管理にとって『セヴン・デイズ・オブ・フォーリング』とは「e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)」の“ピアノ・トリオ”胎動作なのである。

  01. Ballad For The Unborn
  02. Seven Days Of Falling
  03. Mingle In The Mincing-Machine
  04. Evening In Atlantis
  05. Did They Ever Tell Consteau?
  06. Believe Beleft Below
  07. Elevation Of Love
  08. In My Garage
  09. Why She Couldn't Come?
  10. O.D.R.I.P./Love Is Real

(ソニー/SUPER STUDIO GUL 2003年発売/SICP-436)
(ライナーノーツ/渡辺亨)

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20171105 DIMENSION LIVE NO.2

 「LIVE DIMENSIONAL−2017 〜30〜」! LIVEレポート2日目の今夜はステージング編です。

 OPENINGでの勝田一樹の登場時,キャーという黄色い声援ではなく笑いが起こった。ミュージシャンではなく芸人登場のあれだった。
 「LIVE DIMENSIONAL−2017 〜30〜」福岡公演のハイライトは「勝田一樹のトークショー」。これである。

 サックスも絶好調であったわけだが,明らかに小野塚晃が「カツオどうした!」と突っ込んだのは,明らかにトークの切れっ切れ。
 マスヤン側から見るカツオの背中は「しゃべりたい」であった。

 勝田一樹もトークが止まらない自分に「肝心のサックスがぜえぜえしちゃう」宣言。何でそこまでトークが滑らかなのか?
 その理由とは勝田さん(福岡へ3日前から前ノリしていたのですが)3日間黙っていたから! だから話を聞いて! → 「今日は勝田さんの話を聞いてくれる人ばっかり」(by 小野塚晃)!
 「ダイレクトにおはよう」と言われた(by 増崎孝司) → 「オンステージのメンバーに会えてうれしい」(by 勝田一樹)。

 『30』発売で増崎孝司に印税が入る。ゲイツビルごと買い取っていただいて「ゲイツ7」ではなくて「マスザキタカシ」の表札 → 「えっ,今日どこでLIVE? マスザキタカシ」 → 「マツモトキヨシかマスザキタカシ」 → 何で博多はこうなるんだろうね?

 「25年やって30枚目を作って,大抵,いろんなバンドっていうのは節目節目に入っていくじゃないですか。僕ら節目ないです。いらないです。最後までやるって決めた以上は。こういうお客様の顔を見たら32枚目ぐらいまでしか出来ないです」。
 「例え,僕たちの人気が「ウナギ下がり」になってしまってもですよ。最後のお客さんが一人しか来なくてもですよ。僕らはいつも同じような演奏していますからね」 → 「違うな。もの凄い手抜きで」 → 「ハッシュタグ・ウナギ下がり」。

 そんな冷や汗で汗だくのMCと涼しい顔して演奏するギャップ!なDIMENSIONの「愛情たっぷりのサイン」がこちらです。ライブ終了後に行なわれたサイン会で握手もしていただきました。
( 「LIVE DIMENSIONAL−2017 〜BEST OF BEST TOUR〜」のツアーグッズ=25周年記念の「缶バッヂ」。今回の『30』の「缶バッヂ」を買った人には「則竹さんのハグが付く〜」をしっかりと覚えていた小野塚さんのMCに感心しました。なお今回は特別にマスヤンのハグも付きました!? )

DIMENSION サイン-8

 とにもかくにも管理人は世界中の音楽ファンへ向けて声を大にしてこう叫びたい! 「DIMENSIONは世界最高峰のライブ・バンドである」!

 アンコールの終わりでMC・カツオが「本日は特別に最後の一言をマイクを通してですね。一言ずついただきたいと思います」。
則竹裕之 → 「帰らない」→ 「でました」
小野塚晃 → 「博多の子になる」 → 「養子縁組から」
二家本亮介 → 「僕も今日から福岡出身のテイで行く」 → 「よろしくお願いします」
増崎孝司 → 「いやもう最高ばい。今日,みんなで飲もうで!」 → 「事務所経費で落とさせていただきます」

 「九州の大地が育んだスーパー・スター」川崎哲平は今回は不参加でしたが(有名人の仕事しか受けないらしい)しっかりと「メンバーいじり」のMCに登場してくれました。
 勝田一樹が名古屋公演中にココイチを2回食べた話(福岡公演当日もココイチ食べたとのこと)からココイチ→川崎哲平いじりがスタート。
 「博多出身のベーシストは忙しくて,なかなかスケジュールを空けてくれない」 → 「ご両親はいらっしゃってます」(管理人の左隣りの卓で楽しんでおられました)。

 地元で講演会をしたらしい → 「語りですよ。成功者が語るみたいな」。
 来年も一本講演が決まっている哲平くん,もうベース弾かなくてもいいらしいですよっ。

 さて,この記事はLIVEレポートなので,ステージ後半のセットリストを報告しておきます。

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20171105 DIMENSION LIVE NO.1

 行ってきました! 11/5「Gate’s7」の「LIVE DIMENSIONAL−2017 〜30〜」!

 「LIVE DIMENSIONAL−2017 〜30〜」のツアー2本目にして早くもハイライトを迎える福岡公演。福岡公演が毎年一番盛り上がる。福岡公演では「値段以上の演奏をしている」の自覚有り。

 なぜなら小野塚さんが「騒ぎたい気分満々」だったから。カツオが「3日前から福岡へ前ノリしていた」から。1人でいけすのイカを3杯食べたから。LIVE当日も6時起きで6時半からホテルの朝食バイキングでフレッシュな健康食だけを食べてきたから。

 NO。「ゲイツ7」には,昨日日本一を決めたヤフオクドームの5倍ぐらいのお客さんが入っていたから? DIMENSIONはソフトバンクの優勝なんかに負けていません。
 最後は「胴上げ」はあるは,最後の最後に金のクズが落ちてくるは,アンコールでカツオが客席にダイブするは…。カツオのダイブはマイケル・ジャクソン並みでしたよっ。

 ただし,今回の福岡公演の入場順は14番。諸事情により例年よりもチケット入手が遅れてしまった。だから鼻からいつものスミイチの指定席はあきらめ,ステージ全体を見渡すべく中央ブロックの前から3卓目の数えで5列目。
 「胴上げ」前で「金クズ」前で「ダイブ」前の,管理人熱狂の証拠写真が clubdimension
 今回は熊本のディメ仲間Sさんとご一緒させていただきました〜。

CLUBDIMENSION-1

 さて,まずは恒例のメンバー紹介から…

 ★ 増崎 孝司 : Guitar
 ★ 小野塚 晃 : Keyboard
 ★ 勝田 一樹 : Alto Saxophone
 ☆ 二家本 亮介 : Bass
 ☆ 則竹 裕之 : Drums

 DIMENSIONライブこそが真のツンデレ。演奏のカッコ良さとMCの漫談とのギャップが大きすぎる〜。MCについては明日のLIVEレポートで書くとして,やはりDIMENSIONは“超絶技巧集団”を再認識。

 恐らくはDIMENSION史上最難解であろう『30』の超高速で目まぐるしく展開が変わっていくサウンド・アレンジに,LIVEでは再現不可能か?と思ってしまったが,そんな心配など無用の息をもつかせぬ“超絶技巧”! 世界最高の演奏であった。

 特に増崎孝司側から離れ,小野塚晃側からも離れた,勝田一樹の正面から見て聴いたDIMENSIONの音&音!
 増崎孝司の至近距離から離れて増崎孝司の偉大さを知ったものだが,今回は4年振りに小野塚晃から至近距離から離れて小野塚晃の偉大さを痛感させられた。
 4年振りに小野塚晃の正面からの表情を見ながら聴いた【AN EMPTY DREAM】でのキーボードソロ。何であんなにも心を打つのでしょう。涙出そうになって必死に我慢しました。

 要所要所で前に出て,瞬時にサウンド全体をコントロールしまとめ上げていく小野塚晃に寄り掛かれるから,増崎孝司が「いつも4速ぐらいで走っているところを25速で走っている」し,勝田一樹が「4回転半ジャンプ〜5回転半ジャンプ」を決めまくる! 超カッコ良かった! 

 そうして途中でステージ上からのオーダー通りに音を作れないローディーに切れる勝田一樹を初めて見た。プロなんだなぁ。しゃべりのプロではなくてサックスのプロなんだなぁ。
 いいや,アンコールの最後の【BRIGHTNESS OF THE MORNING SUN】の最後,予定外の長尺で「会場練り歩き」を一人続ける勝田一樹がプロのエンターテイナー。マスヤンの「帰ってこい」のアクションを振り切って会場一周を続けるカツオこそがプロのエンターテイナー。

 そう言えば,先日の名古屋公演で「時間通りに始めて時間通りに終わる」プロとして,サックスソロで「腕時計を見ちゃった」のが勝田一樹。「手を抜いたわけじゃないです。時間が限られちゃってるんで。ストップ・ウォッチ入れてんだけどなぁ〜」。

 さて,この記事はLIVEレポートなので,ステージ前半のセットリストを報告しておきます。

30-1
30
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e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ) / ストレンジ・プレイス・フォー・スノウ5

STRANGE PLACE FOR SNOW-1 管理人が初めて「e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)」を聴いたのは「怒涛の三部作」の第一作『STRANGE PLACE FOR SNOW』(以下『ストレンジ・プレイス・フォー・スノウ』)であった。

 エスビョルン・スヴェンソンピアノが,一般的なジャズ・ピアノとは言い難く,ロックやポップスの心地よいラップトップ・サウンドを聴いているような感じがした。
 理由は主にうっすらとバックで流れているキーボードが大インパクト。サンプリングされているようでいて“生っぽい”アコースティックキーボードの“鳴り”にジャズピアニストとしての“誇り”を感じてしまう。

 軽い衝撃が持続する中『ストレンジ・プレイス・フォー・スノウ』を聴き続けたある日のこと,ふとジャズ弾きでもフュージョン弾きでもない,エスビョルン・スヴェンソンの中のキース・ジャレットとつながった。

 今となっては信じられないかもしれないが,キース・ジャレットはかつてフォーク・ロックを積極的に採り入れたポップかつ前衛的な演奏をしていたことがある。ジャズ・ピアノに当時の流行を取り入れ,ジャズ・ピアノの新たな表現に挑戦したのだった。

 エスビョルン・スヴェンソンキーボードでエレクトロニックを,ドラムンベースでクラブ系を表現する「ジャズを越えていくための実験的な試み」は,かつてのキース・ジャレットが探求していた,新しいジャズ・ピアノの模索と同じなのでは?

 そう。キース・ジャレット・フォロワーを公言するエスビョルン・スヴェンソンは,新しいジャズ・ピアノの探求,その音楽性の実験という意味において,キース・ジャレットの精神性を継承したジャズピアニストなのである。

 『ストレンジ・プレイス・フォー・スノウ』の時点で完成を迎えた「e.s.t.」の先進的なリズム・アプローチ,メロディックで多彩な曲調が“生っぽい”アコースティックキーボードで際立っている。
 『ストレンジ・プレイス・フォー・スノウ』を聴いて,ピアノ・トリオの既成概念が幾らか崩されたと思う。初めは嫌いだった上原ひろみが好きになったのも『ストレンジ・プレイス・フォー・スノウ』と同時期だったかなぁ。

 かつて,ピアノエスビョルン・スヴェンソンベースダン・ベルグルンドドラムマグヌス・オストラムの3人は「e.s.t.」について「『e.s.t.』はジャズ・バンドではなく,ジャズも演奏するポップ・バンドだ」と述べたことがある。

 管理人が『ストレンジ・プレイス・フォー・スノウ』を聴いて感じた,非ジャズ・ピアノのニュアンスは当たっていたことになる。「ポピュラー音楽としてのジャズ」が,北欧のパラレルな視線でシームレスなジャズを照射している。

STRANGE PLACE FOR SNOW-2 しかしながら「e.s.t.」の考えるポップ・バンドとは,一般的なポップ・バンドではない。アルコとエレクトロックが映える複雑なリズムに,これ以上ないぐらいに見事なプリペアード・ピアノを織り交ぜたリリシズムが織りなす,奥深さに光り輝く新しいジャズ・ピアノに他ならない。

 『ストレンジ・プレイス・フォー・スノウ』から始まる「e.s.t.」の新しいジャズ・ピアノは,様々な音楽を聴き続けている人だけが辿り着ける「オアシス」のような音楽だと思う。サウンドに込められたエモーションを拾い出して聴くことのできる人だけが,多くの愉しみを得ることができる音楽だと思う。

 プログレッシヴと評される通り,まさに時代の最先端を行くジャズ・ピアノ。単純にエスビョルン・スヴェンソンのヨーロッパ的で詩的なメロディ・センスだけが突出しているわけではない。
 3人の織りなすインタープレイジャズ以外の様々な要素を取り入れたグルーヴ,エフェクティヴな仕掛けの全てが時代の最先端を行く非ジャズ・ピアノを示している。「鳥肌もの」の思い出の1枚である。

  01. The Message
  02. Serenade For The Renegade
  03. Strange Place For Snow
  04. Behind The Yashmak
  05. Bound For The Beauty Of The South
  06. Years Of Yearning
  07. When God Created The Coffeebreak
  08. Spunky Sprawl
  09. Carcrash - September

(ソニー/SUPER STUDIO GUL 2002年発売/SICP-159)
(ライナーノーツ/岩浪洋三)

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スイングジャーナル主催 ジャズ・ディスク大賞 1992年度(第26回)

 「スイングジャーナル」誌が,レコード会社各社の自薦ノミネート作品を基にして,国内で該当年度中に発売されたCDLPビデオを対象に同誌委託の「ジャズ・ディスク大賞選考委員」によって選出される,日本ジャズ界に最も貢献した作品に贈られる「ジャズ・ディスク大賞」。

 今回は1992年度(第26回)の発表です。

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ロマンティック★【金賞】.ロマンティック
ゴンサロ・ルバルカバ


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Spirits of Our Ancestors★【銀賞】.アフリカ(われらが祖先のスピリッツ)
ランディ・ウエストン


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Here's to Life★【ボーカル賞】.ヒアズ・トゥ・ライフ
シャーリー・ホーン・ウイズ・ストリングス


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クルディッシュ・ダンス★【日本ジャズ賞】.クルディッシュ・ダンス
山下洋輔


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ヒア・アイ・アム★【日本ボーカル賞】.ヒア・アイ・アム
伊藤君子


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ビンテージ・トラックス・オブ・フュージョン〜ザ・ヒストリー・オブ・JVC’Sワークス★【編集企画賞】.ビンテージ・トラックス・オブ・フュージョン〜ザ・ヒストリー・オブ・JVC’Sワークス(JVC)


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ストレイト・トゥ・ザ・スタンダード★【制作企画賞】.ストレイト・トゥ・ザ・スタンダード
ザ・ジャズ・ネットワークス


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トライアングル★【制作企画賞】.トライアングル
テザード・ムーン


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Rachelle Ferrell★【録音賞(海外)】.ポートレイト
 ラシェル・フェレル


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酒とバラの日々★【録音賞(国内)】.酒とバラの日々
サイラス・チェスナット


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AN ALL-STAR TRIBUTE TO THE JAZZ MASTER [LaserDisc]★【最優秀ビデオ賞】.セレブレーション!
 ディジー・ガレスピー・バースディ・コンサート



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 「テザード・ムーン」の『トライングル』が【制作企画賞】受賞!
 キース・ジャレットトリオに“肩を並べる”の菊地雅章の新ピアノ・トリオの始動は,確かに【制作企画賞】ものであろう。

 なぜって? 管理人がもう一度聴きたいキース・ジャレットトリオは,ベースゲイリー・ピーコックドラムポール・モチアンと組んだ『AT THE DEER HEAD INNアゲイン
 キース・ジャレットトリオの編成からドラマーが1人交代しただけで,こうも変わるものなのか!?

 「テザード・ムーン」の『トライングル』を聴いた感想は,キース・ジャレットトリオの編成からピアニストが1人交代するだけで,こうも変わるものなのか!?
 菊地雅章が“唸りまくる”「テザード・ムーン」の『トライングル』は,確かに【制作企画賞】ものであろう。

 いいや,プーさんに【制作企画賞】なんて評価低すぎ〜。【日本ジャズ賞】→【銀賞】→【金賞】にも相応しい。素晴らしい。

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e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ) / グッド・モーニング・スージー・ソーホー5

GOOD MORNING SUSIE SOHO-1 『ストレンジ・プレイス・フォー・スノウ』が大好き過ぎて「輸入盤が購入しない。なぜなら本当に良いものならば,日本盤も待てば出るのだから」という(恐らくは的外れを自覚している)自らに課した「縛り」を解いてまでも,エスビョルン・スヴェンソンの過去作を聴きたい衝動を我慢して手に入れた,日本盤同日発売の2枚が『フロム・ガガーリンズ・ポイント・オブ・ヴュー』と『GOOD MORNING SUSIE SOHO』(以下『グッド・モーニング・スージー・ソーホー』)。

 この2枚の性格は異なる。『フロム・ガガーリンズ・ポイント・オブ・ヴュー』は,すんなりと受け入れることが出来た。『ストレンジ・プレイス・フォー・スノウ』以前の「未知のジャズ・ピアノ」として,例えるなら「スター・ウォーズ」の「エピソード4」から楽しむ「エピソード1・2・3」の気分がしたものだ。

 一方の『グッド・モーニング・スージー・ソーホー』が引っ掛かる。キャッチーなメロディー・ラインは【GOOD MORNING SUSIE SOHO】と【SPAM−BOO−LIMBO】ぐらいであるが,聴き終わった後にもう一度再生ボタンを押したくなる。そんな空気感のアルバムだった。

 『グッド・モーニング・スージー・ソーホー』を聴いていると「静と動」が交互に押し寄せてくるのを感じる。気分が上がってそのまま激しく突っ走ってほしいところで,抑え目で少しダークな世界観が浮かび上がってくる。
 これがクラシック大国に囲まれた「北欧ジャズ」の特徴なのだろうが,澄んだ空気の曇り空のような音風景…。

 そう。『グッド・モーニング・スージー・ソーホー』で初体験した不思議サウンド。カラフルで万華鏡のようで,エモーショナルでアグレッシヴで,詩的で繊細にしてダーク…。そんな相反するような言葉のどれもが当てはまる不思議サウンド…。

 いつしか,大人しめで落ち着いたサウンドの『グッド・モーニング・スージー・ソーホー』を一日に一度は聴かないとこちらが落ち着かなくなってしまった。
 ヨーロピアンジャズならではの耽美的なメロディーを紡ぎながらも,ドラムンベースのグルーヴ感を強調し,エフェクターを効果的に駆使した「プログレッシヴなピアノ・トリオ」が『グッド・モーニング・スージー・ソーホー』の中で鳴っていたのだった。

 この時点ではまだ大声では言えなかったが『グッド・モーニング・スージー・ソーホー』のサウンド・メイキングは真に「ジャズ・ピアノの革命の1枚」で間違いない。

GOOD MORNING SUSIE SOHO-2 オーソドックスなピアノ・トリオでありながら,リリカルにして凶暴なエスビョルン・スヴェンソンが繰り出す“ポスト・ロック的な”音楽表現が実に多彩である。
 控え目にエフェクトを使用し音色面での幅の広さをベースに,音楽性そのものも雑多なジャンルを消化・吸収し,自分たちの陰影あるカラーで再構築してアウトプットしてみせる。「ロックするピアノ・トリオ」が完成されている。 

 こう書きながらも「e.s.t.」の軸足は,いかにも白人的な音楽性というか「北欧ジャズ」らしい純粋培養な美しさで満ちている。
 基本的にはアコースティックで美しく,エレクトロニックで装飾し,時にラジカルでアグレッシブになるが,それこそ今息づいている“ジャズ表現そのもの”なのである。

 ジャズの中でユニークな開拓をやってのけるのは並大抵の事ではない。その大仕事を北欧スウェーデンの3人の若者たち,ピアノエスビョルン・スヴェンソンベースダン・ベルグルンドドラムマグヌス・オストラムがやってのけたのだ。

 「e.s.t.」の挑戦的な姿勢が素晴らしい。洗練されているのにそれでも相当に斬新なのだ。「e.s.t.」の独創的な創造性は称賛に値すると管理人は思う。

  01. SOMEWHERE ELSE BEFORE
  02. DO THE JANGLE
  03. SERENITY
  04. THE WRAITH
  05. LAST LETTER FROM LITHUANIA
  06. GOOD MORNING SUSIE SOHO
  07. PROVIDENCE
  08. PAVANE - THOUGHTS OF A SEPTUAGENARIAN
  09. SPAM-BOO-LIMBO
  10. THE FACE OF LOVE
  11. REMINISCENCE OF A SOUL 〜 (Hidden Track) UNTITLED

(ソニー/SUPER STUDIO GUL 2000年発売/SICP-349)
(ライナーノーツ/青木啓)

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安藤 まさひろ / メロディ・ゴー・ラウンド4

MELODY GO ROUND-1 “メロディー・メーカー”安藤まさひろ2ndMELODY GO ROUND』(以下『メロディ・ゴー・ラウンド』)は“スクェアそのまんま”なソロ・アルバムである。

 1stメロディー・ブック』に続く「スクェアの外典」をソロ・アルバムで作り続ける意味はあるのだろうか?
 その答えが【湖の恐竜】にあるように思う。【湖の恐竜】とは則ち【SNOWBIRD】のことである。

 T−スクェアの『NATURAL』収録の【SNOWBIRD】は『NATURAL−U.S.VERSION』にも収録済。つまり公式には3番目の【SNOWBIRD】が【湖の恐竜】なのである。

 【SNOWBIRD】のメロディは美しい。これはギターで弾くから“様になる”名バラードである。
 しかし【SNOWBIRD】が真価を発揮するにはカッティング・ギターがどうしても必要だった。そのことを作者である安藤まさひろが十分心得ているがゆえの再演であろう。
 客演は“あの”山下達郎山下達郎って,実は有名なギター職人なのであ〜る。

 そう。安藤まさひろソロ・アルバムで「スクェアの外典」を作り続ける意味とは「理想とするスクェア・サウンドの追求」なのだと思う。
 言うまでもなくT−スクェアはバンドである。安藤まさひろT−スクェアのリーダーではあるが独裁者ではない。自分の意見が通らないこともあるだろう。例えば【SNOWBIRD】のガス抜きが【湖の恐竜】で形になったのだと思う。

 こう考えると全てがつながる。『メロディ・ゴー・ラウンド』が“スクェアそのまんま”なのは,もしかしたら『NATURAL』用に準備した没テイク? だから『NATURAL』発売の半年後に『メロディ・ゴー・ラウンド』をリリースできた?

MELODY GO ROUND-2 個人的に『メロディ・ゴー・ラウンド』は楽曲が暗いイメージ(いいえ,アダルトなだけでした)。ただし,スクェア恒例の選考会でボツになった理由はアダルト路線のせいではなく,単純にギターソロが長かっただけ!
 『メロディ・ゴー・ラウンド』の功績の1つは,安藤まさひろがこんなにも表情豊かなギタリストであったとは…という「新鮮な驚き」にある。

 “メロディー・メーカー”安藤まさひろは当然ながらギター・メインの曲を書くが,サックスEWIキーボード・メインの曲も書く。
 サックスEWIキーボード・メインの曲ならば,バンドの話し合いで決まったアレンジで妥協することも許せるであろう。
 しかしギター・メインの楽曲で譲るのは「顔で笑って心で泣いて」なのかもしれない…。

  01. Tonight's the night
  02. 三月のライオン
  03. Blackeyed Susan
  04. 湖の恐竜
  05. Mystery
  06. Knock on the door, Look for happiness
  07. Mr. Moon
  08. Cool
  09. 摩天楼の殺人者
  10. Good-bye blue wind

(CBSソニー/CBS/SONY 1990年発売/CSCL-1545)

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e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ) / フロム・ガガーリンズ・ポイント・オブ・ヴュー5

FROM GAGARIN'S POINT OF VIEW-1 「e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)」こそが,解散後,誰にも受け継がれることのなかった,キース・ジャレットアメリカン・カルテットの後継バンドと認識する。
 同じピアノ・トリオキース・ジャレット・トリオでもなく,同じ北欧出身のヨーロピアン・カルテットでもなく,絶対にアメリカン・カルテットであると認識する。

 その確信の根拠を問われれば『FROM GAGARIN’S POINT OF VIEW』(以下『フロム・ガガーリンズ・ポイント・オブ・ヴュー』)を聴いてほしい,と答えることにしている。
 (全曲いいのだが)【DEFINITION OF DOG】を聴いてほしい。『フロム・ガガーリンズ・ポイント・オブ・ヴュー』は【DEFINITION OF DOG】の1曲に億千万の価値がある。

 なぜならば【DEFINITION OF DOG】こそが,キース・ジャレットアメリカン・カルテットの『SHADES』収録【SOUTHERN SMILES】の変奏曲。
 つまりはエスビョルン・スヴェンソンによるキース・ジャレットへ捧げたオマージェの発露であり,誰も継承することのできなかったアメリカン・カルテットの後継バンド宣言に思えるからだ。

 一般にアメリカン・カルテットと来れば,土臭くアバンギャルドで濃厚な演奏をイメージしてしまい,人気の点でヨーロピアン・カルテットの後塵を拝しているようだが,オリジナリティー,洗練度,斬新さ,美しさの点で他のプロジェクトを凌駕しているように思う。
 ほぼ全てのアルバムが「オール5」のキース・ジャレット名盤群の中にあって,異質な美しさが頭一つ抜きん出ている。

 聞けばエスビョルン・スヴェンソンキース・ジャレット好きを公言しているようだ。
 でもそんな言葉など必要ない。管理人のようなキース・ジャレットの大ファンなら【SOUTHERN SMILES】“一発”でエスビョルン・スヴェンソンの中に宿っているキース・ジャレットの音楽観を聴き取れるものと思っている。

 切れ目なく3曲一気に疾走する,リリカルなミディアム・テンポの【DATING】【PICNIC】【CHAPEL】が管理人の大好物! スタートから一気に惹き込まれる。エスビョルン・スヴェンソンによる16分音符の息の長いパッセージを昇降するピアノが最高にクリティカル!
 そうして地ならしされた後に登場するキラー・チューン=4曲目【DODGE THE DODO】の新録バージョンが最高に“COOL”なジャム・ポップ。ドラムン・ベース炸裂のシャウト感がたまらない! 素晴らしい仕掛けであろう。
 5曲目【FROM GAGARIN’S POINT OF VIEW】で,静かに流れ出す美旋律バラードは,深い藍色を呈するバルト海をゆっくり遊覧する豪華客船から眺めるフィヨルドを想起させてくれる。

( 6曲目【THE RETURN OF MOHAMMED】の緩やかに浮遊する優しいメロディーは,これまた管理人の鉄板=パット・メセニー・グループを連想させてくれる。余談だが「e.s.t.」と“相思相愛”なのはキース・ジャレットだけではない。何を隠そうパット・メセニーも「e.s.t.」を大絶賛していた。キース・ジャレットパット・メセニーなのだから管理人が“のぼせる”気持ちも分かるでしょ? )

FROM GAGARIN'S POINT OF VIEW-2 そう。『フロム・ガガーリンズ・ポイント・オブ・ヴュー』での「e.s.t.」がワイルドなのに美しい。とにかく異次元の美しさを感じる。とにかく最初の一音から最後の一音までが感動する。
 『フロム・ガガーリンズ・ポイント・オブ・ヴュー』を耳にして,ずっとこんなアルバムを聴きたいと願っていたことを思い出した。キース・ジャレットアメリカン・カルテットのような音楽を探していた。そしてついに巡り会えたのだ。この管理人の喜びを理解していただけますか?

 管理人の結論。『フロム・ガガーリンズ・ポイント・オブ・ヴュー批評

 「e.s.t.」の真髄とは『GOOD MORNING SUSIE SOHO』以降の「ロックするピアノ・トリオ」で間違いない。
 その意味でエフェクター,ディストーション,ディレイにリズムマシンまでも駆使したアコースティック楽器の電気武装以前 → アコースティックの鳴りそのまんまな『フロム・ガガーリンズ・ポイント・オブ・ヴュー』は「e.s.t.」の“最後にして最高の”ジャズ・アルバムである。

  01. Dating
  02. Picnic
  03. Chapel
  04. Dodge The Dodo
  05. From Gagarin's Point Of View
  06. The Return Of Mohammed
  07. Cornette
  08. In The Face Of Day
  09. Subway
  10. Definition Of Dog
  11. Southwest Loner

(ソニー/SUPER STUDIO GUL 1999年発売/SICP-348)
(ライナーノーツ/杉田宏樹)

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難波 弘之 / ゴールデン☆ベスト 難波 弘之 WORKS4

HIROYUKI NAMBA WORKS GOLDEN☆BEST-1 『ゴールデン☆ベスト』シリーズで所有しているのは『HIROYUKI NAMBA WORKS GOLDEN☆BEST』(以下『ゴールデン☆ベスト 難波弘之 WORKS』)と『JUN FUKAMACHI GOLDEN☆BEST』の2枚だけである。

 本当は『ゴールデン☆ベスト 難波弘之 WORKS』を欲しかったわけではなかったのだが,唯一「EXHIVISION」の未発表曲を聴きたかったので購入した。

 お目当ての【NEVERMORE】は期待通りの名演であった。雰囲気としては【DIMENSION TRAVELLER】に似ているかなぁ。
 “超絶技巧”の難波弘之和田アキラ永井敏己長谷川浩二がメロディアス。譜面通りなのに譜面以上の快演である。素晴らしい。

 でもでも,そんな「EXHIVISION」としての難波弘之は『ゴールデン☆ベスト 難波弘之 WORKS』の名曲群を前にしたら,多彩な活動のほんの一面に過ぎないことがよ〜く理解できた。

 個人的に難波弘之と来れば“プログレフュージョンの人”であって,これまで「SENSE OF WONDER」の難波弘之と「野獣王国」の難波弘之と「EXHIVISION」の難波弘之としか接してこなかった。
( あっ,難波弘之との一番の思い出は,NHK教育で見ていた「ベストサウンド」であって,ドラムそうる透の講義が好きだった! )

 ゆえに『ゴールデン☆ベスト 難波弘之 WORKS』で,初めて「MARI & BUX BUNNY」の難波弘之に「NUOVO IMMIGRATO」の難波弘之に「A.P.J.」の難波弘之に「VIBES」の難波弘之に接して,氏のロック志向を理解できた気分である。

HIROYUKI NAMBA WORKS GOLDEN☆BEST-2 そう。難波弘之がいつも凄い演奏に没頭できるのは「予防線としての歌える楽曲作り」に端を発している。
 どんなに演奏で熱くなったとしても“歌もの”の意識が離れないからアドリブが破たんすることはない。曲作りの段階から事前にそういうガードを張っていることが,年代順に編集された『ゴールデン☆ベスト 難波弘之 WORKS』から伝わってくる。

 ただし,難波弘之の“ロックの人”が理解できたからといって,深町純のように過去作を掘り続けようとは思いません。
 管理人の大好きな難波弘之とは“ロックの人”ではなく“プログレフュージョンの人”難波弘之なのです。

  01. 化石の街
  02. 空中の音楽
  03. 碧い星で
  04. DIMENSION TRAVELER
  05. Fly Away
  06. SKELETON CREW
  07. Labyrinthos
  08. いつか,青空のように…
  09. Voice
  10. Little mermaid 〜星に願いを〜
  11. Metal Snow
  12. Nevermore

(ユニバーサル・ミュージック/UNIVERSAL MUSIC 2008年発売/UPCY-6485)
(ライナーノーツ/難波弘之)

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e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ) / E.S.T. ライヴ5

E.S.T. LIVE-1 管理人は「e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)」が大好きである。現代最高のピアノ・トリオの1つで間違いない。

 こう書いてはいるが実は管理人「e.s.t.」に惹かれたのは,エスビョルン・スヴェンソンピアノというよりも,歪んだ電子音のキーボードがきっかけであった。
 正統派なアコースティック・ピアノの後ろで,随分と変態チックなキーボードが被さっている。そのキーボードが絶対にピアノの前に出ない所にエスビョルン・スヴェンソンのポリシーを感じて大好きになった。
 キーボードっていうところが,現代のジャズ・ピアノの「革新」のように思う部分があったからだ。

 だから『STRANGE PLACE FOR SNOW』→『FROM GAGARIN’S POINT OF VIEW』→『GOOD MORNING SUSIE SOHO』(日本盤リリース順)の次に買った『E.S.T. LIVE』(以下『E.S.T. ライブ』)に「怒涛の三部作」以上の衝撃を受けた。
 「エスビョルン・スヴェンソンという人は,ピアノを弾くサウンド・クリエイターなどではなく,超一流のジャズ・ピアニストだったんだ…」。

 そう。だからこそエスビョルン・スヴェンソンというジャズ・ピアニストに,ピアノだけでなくソプラノサックスパーカッションを演奏していた,アメリカン・カルテット活動時のキース・ジャレットを重ね見るようになった。
 キース・ジャレットの後継者としてよく名前が挙がるのはブラッド・メルドーであるが,個人的にはキース・ジャレットの真の後継者はエスビョルン・スヴェンソンの方だと思っている。

 …ということはエスビョルン・スヴェンソンが没した今,もはやキース・ジャレットの後継者は現れることはない。こうなりゃ,一心不乱に「e.s.t.」を聴き込むのみ!

 エスビョルン・スヴェンソンキース・ジャレットと同様,唸るんだよなぁ。エスビョルン・スヴェンソンの唸りは『GOOD MORNING SUSIE SOHO』で確認済であったが,ライブ盤である『E.S.T. ライブ』を聴いて確信へと変わった。

E.S.T. LIVE-2 管理人の結論。『E.S.T. ライブ批評

 【SAY HELLO TO MR.D(TO MR.S)】【THE RUBE THING】【MR.&MRS.HANDKERCHIEF】【DODGE THE DODO】の4トラックが最高にCOOL!
 ロック的なリフやゴスペル的響き,エスビョルン・スヴェンソンのメロディックなアドリブは「e.s.t.」だけのものであろう。

 『E.S.T. ライブ』は『FROM GAGARIN’S POINT OF VIEW』以前の,未だジャズの範疇にいた「e.s.t.」の貴重な記録である。
 オーソドックスなジャズからスタートして,未知の音楽を切り開いた「e.s.t.」の偉大さを,今,俯瞰的に知ることができる。

 ピアノだけに専念するエスビョルン・スヴェンソン。いいですよっ。

  01. Say Hello To Mr.D (to Mr.S)
  02. The Rube Thing
  03. Happy Heads And Crazy Feds
  04. The Day After (leaving)
  05. Like Wash It Or Something
  06. Breadbasket
  07. What Did You Buy Today
  08. Hymn Of The River Brown
  09. Same As Before
  10. Mr.&Mrs. Handkerchief
  11. Dodge The Dodo

(アクト/ACT 2002年発売/DICT-24018)
(ライナーノーツ/多田雅範)

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上原 ひろみ×エドマール・カスタネーダ / ライヴ・イン・モントリオール5

LIVE IN MONTREAL-1 ちょっとした予備知識はあったのだが『LIVE IN MONTREAL』(以下『ライヴ・イン・モントリオール』)を初めて聴いて「あれっ,これってデュエットではなくバンドだったんだ」と思ってしまった。

 実は管理人と同じような経験をした上原ひろみ・ファンは多いのではないだろうか? 素直に『ライヴ・イン・モントリオール』を「音から入る」と,エドマール・カスタネーダハーブの他に,ギタリストとのベーシストが参加しているように聴こえてしまう。

 こんな体験が出来るのが『ライヴ・イン・モントリオール』の醍醐味である。南米のハーブ奏者=エドマール・カスタネーダ名演に何度驚かされてしまったことだろう。
 そうして,そんなエドマール・カスタネーダと新しい音楽を創造する喜びを感じている上原ひろみがこれまた凄い! 『ライヴ・イン・モントリオール』の大胆にして細やかな丁々発止は,まさしく新鮮にして超ジャンルな広がりと甚大な訴求力を持っている!

 そう。上原ひろみとしては,音の響きが珍しい。ピアノハーブとのデュエットにチャレンジしたというよりは,エドマール・カスタネーダというジャズマンとのデュエットにチャレンジしたのだと思う。

 エドマール・カスタネーダの“超絶技巧”の音楽性,リズムの取り方も個性的だし,アドリブやハーモニーの付け方が真に素晴らしい。上原ひろみエドマール・カスタネーダにメロメロになったのはこの部分なんだろうなぁ。管理人も上原ひろみ同様にメロメロになってしまいましたとさっ。

LIVE IN MONTREAL-2 過去にチック・コリア矢野顕子との(近年はタップダンスの熊谷和徳とも)名盤を残したデュエットの名手=上原ひろみ

 しかし,エドマール・カスタネーダとのデュエットは,過去の3枚のデュエット作とはテイストが異なる。
 ズバリ『ライヴ・イン・モントリオール』における,上原ひろみエドマール・カスタネーダデュエットの真髄は「同時代バイブレーション」にある。

 これまでは,どうしても敬愛の気持ちが溢れたデュエットであって「追いつけ追い越せ」の上原ひろみと「私だって,ほら,ここまでできるんですよ」的な上原ひろみの“ミテミテ病”が入っていたように思う。

 その意味では「胸を借りる」ではなく「胸を貸す」立場になって初めてのデュエットである『ライヴ・イン・モントリオール』における上原ひろみの変化は,相手の一挙手一投足をこれまで以上に観察していること。つまりはリターンを得意とする上原ひろみの新カットマン・スタイル。

LIVE IN MONTREAL-3 自分自身が前に出るだけではなく,エドマール・カスタネーダを前に押し出す意識が,これまでのデュエット・アルバムの何倍も強い。

 そう。『ライヴ・イン・モントリオール』はデュエット・アルバムのお手本のようなアルバムである。
 あっ,上原ひろみのお師匠さん=チック・コリアにもゲイリー・バートンとのデュエット・アルバムのお手本のようなアルバムがありましたねっ。

PS 「LIVE IN MONTREAL-3」は販促用のボールペンです。

  CD
  01. HARP IN NEW YORK
  02. FOR JACO
  03. MOONLIGHT SUNSHINE
  04. CANTINA BAND
    THE ELEMENTS
  05. AIR
  06. EARTH
  07. WATER
  08. FIRE
  09. LIBERTANGO

  DVD
  01. THE ELEMENTS "FIRE" - LIVE CLIP
  02. HAZE - LIVE CLIP
  03. CANADIAN TOUR DOCUMENTARY AND INTERVIEWS

(テラーク/TELARC 2017年発売/UCCO-8018)
★【初回限定盤】 SHM−CD+DVD
★スリーヴ・ケース仕様
★8Pブックレット

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チャーリー・ヘイデン & ハンク・ジョーンズ / スピリチュアル5

STEAL AWAY-1 テンポの遅いデュエットを演らせたら,やはりチャーリー・ヘイデンが一番手であろう。とにかく軒並み出来が良い。
 キース・ジャレットパット・メセニーから始まって,ケニー・バロンしかり,ジム・ホールしかり,エグベルト・ジスモンチしかり…。

 そんな中,管理人がチャーリー・ヘイデンデュエット“最高傑作”として推すのが,ピアノの“御大”ハンク・ジョーンズとのデュエットSTEAL AWAY』(以下『スピリチュアル』)である。

 ハンク・ジョーンズの,リリカルで,それでいて万人受けするストレートなフレージングの説得力が,チャーリー・ヘイデンの朴訥で,斜に構えがちな重いフレージングとの絶大なる「相性の良さ」を感じさせる。
( チャーリー・ヘイデンハンク・ジョーンズによる続編『カム・サンデイ』はハンク・ジョーンズの遺作である。ハンク・ジョーンズにとっても特別だった? )

 同じピアニストであってもくすみがちの美しさのキース・ジャレットとストレートに煌びやかなハンク・ジョーンズでは全然違う。
 しかし,キース・ジャレットにしてもハンク・ジョーンズにしても,チャーリー・ヘイデンデュエットしている間は,類まれなる個性を捨てて,どちらも一介のジャズ・ピアニストに戻っている。

 ここにチャーリー・ヘイデンの個性が聴こえる。チャーリー・ヘイデンはまず共演者の音楽をじっくりと聴いている。そしてそのジャズメンの本音が聴こえ出すまで待つことができる人である。
 そうしてついに本音が聴こえ出した瞬間に共演者の意図を汲み取り,その場にふさわしい最高の音を選択する名手。表に出ようと裏に回ろうとも,いつでも音楽全体を優しく包み込み,自慢のベースをいつでも意識的に消すことができる。

 そう。チャーリー・ヘイデンは音楽の土台を支えるベーシストにして,共演者がどんなアドリブで弾けようとも,最後にはちゃんと帰って来る受け皿を準備している。
 デュエット中の共演者は,チャーリー・ヘイデンと2人でシーソーにでも乗ったかのような楽しい気分になるのだと思う。要するにチャーリー・ヘイデンとはバランサーなのだ。

 チャーリー・ヘイデンハンク・ジョーンズが『スピリチュアル』で選んだテーマは,古くから歌われてきた黒人霊歌や教会の賛美歌である。
 黒人音楽への敬意,普通の暮らしへの敬意,普通に生きている人々の日々の営みへの敬意,そういう暮らしを繰り返してきた先人たちへの敬意がアルバム全体に貫かれている。ここにアドリブは要らない。新しいアレンジも要らない。

STEAL AWAY-2 ズバリ『スピリチュアル』の聴き所は,円熟とも枯れとも何とも形容し難い,音数の少ないベースピアノの“エイジングされた”静かな語らいにある。

 チャーリー・ヘイデンベースが丸みを帯びている。ただ丸いだけではない。長い年月を経て熟成されて角がとれてきたような丸み,と書けばよいのだろうか,芯の部分では強い意思を保っていて,それが深いコクとまろやかさのある極上の味わいになっている。
 ハンク・ジョーンズピアノには,既に心に刻まれている,お馴染のメロディーをただなぞっただけの雰囲気がある。シンプルに,そしてたんたんと,リラックスした演奏が進行していく…。

 本を片手にぼんやりと『スピリチュアル』に向き合う幸福感がたまらない。ながら聴きの最中に,ふと音楽に耳を傾けたその瞬間,まるでシャッターで切り取られたかのような,極上のメロディーが耳に飛び込んでくる…。
 教会の机の木の香り,ひんやりとした空気,ステンドグラスの不思議な色合い,その向こうに見えた大きな木に揺れる緑の葉っぱ,薄い水色の高い空。そんなことを思い出す。ぼんやりとした記憶…。けれどもはっきりとした記憶…。

  01. IT'S ME, O LORD (STANDIN' IN THE NEED OF PRAYER)
  02. NOBODY KNOWS THE TROUBLE I'VE SEEN
  03. SPIRITUAL
  04. WADE IN THE WATER
  05. SWING LOW, SWEET CHARIOT
  06. SOMETIMES I FEEL LIKE A MOTHERLESS CHILD
  07. L'AMOUR DE MOY
  08. DANNY BOY
  09. I'VE GOT A ROBE, YOU GOT A ROBE (GOIN' TO SHOUT ALL
     OVER GOD'S HEAV'N)

  10. STEAL AWAY
  11. WE SHALL OVERCOME
  12. GO DOWN, MOSES
  13. MY LORD, WHAT A MORNIN'
  14. HYMN MEDLEY;
    ABIDE WITH ME
    JUST AS I AM WITHOUT ONE PLEA
    WHAT A FRIEND WE HAVE IN JESUS
    AMAZING GRACE

(ヴァーヴ/VERVE 1995年発売/POCJ-1273)
(ライナーノーツ/モーリス・ジャクソン,チャーリー・ヘイデン,アビー・リンカーン)

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MALTA / MALTA4

MALTA-1 管理人がMALTAを初めて聴いたのは,NHK−FM「SESSION’84」だったと記憶する。
 その日は特別MALTAを聴こう!と思ったわけではなく,ただ毎週の習慣でNHK−FM「SESSION〇〇」を聴いていた。だからMALTAについての予備知識など一切なしに,あの音色に直面した時の何とも言えない喜びの感情を覚えている。

 デビュー当時のMALTAのサウンドは,日本っぽくもあり日本っぽくない,そしてジャズっぽくもありジャズっぽくない,フュージョンっぽくもありフュージョンっぽくない「お洒落なシティ・ジャズ」だと思った。

 今思えば,あの時感じた「お洒落なシティ・ジャズ」とは,MALTAのオリジナリティであって褒め言葉になるのだろうが,正直,中学生には退屈なジャズであった。
 だから逆説的に,管理人にとってのMALTAとは,美しいサックス吹き,ただそれだけである。

 それゆえMALTAデビュー・アルバム『MALTA』を買って,ライナーノーツのクレジットを見て驚いてしまった。
 『MALTA』のサイドメンとして参加したのは,ピアノキーボード深町純野力奏一佐藤允彦ギターエリック・ゲイル松原正樹今剛ベース岡沢章ドラム渡嘉敷裕一山木秀夫。えっ,えっ,え〜!

 この豪華すぎるサイドメンのラインナップは渡辺貞夫と同格である。無名の新人と思って聴いていたMALTAは,ただの美しいサックス吹きではなかったのだ。

 しかし,管理人にとってMALTAの『MALTA』の印象は,何度聴いてもやっぱり「お洒落なシティ・ジャズ」止まり。
 こんなに豪華なサイドメンが揃っているのに,肝心のメロディーが頭の中に全く入って来ないし,お気に入りのアドリブもついに見つけることはできなかった。
 バブル期のJVCはジャパン・マネーの垂れ流し〜 ← 管理人はMALTA国府弘子も後追いの再評価組なのです。

( ジャズフュージョンを定期的に行き来するのがMALTAの音楽性の特長であるのは百も承知であるが「フュージョン8割:ジャズ2割」のMALTAが,そして「サックスジャズ,バック・サウンドはフュージョン」のMALTAこそが最高の仕上りだと思っている )

MALTA-2 管理人の結論。『MALTA批評

 MALTAの『MALTA』は「お洒落なシティ・ジャズ」アルバム。
 今でも聴いているのは,キュートなフュージョン系の【SHINY LADY】と絶品バラードの【EVENING CALM】の2トラックだけである。

 いいや,本気で聴いているのはアルトサックスの甘美な音色である。← MALTAアルトの音色はこの後メタリックへと徐々に変化していきます。真にアルトサックスの甘美な音色が聴けるのは『MALTA』と『SWEET MAGIC』の最初期の2枚だけ!

  01. SHINY LADY
  02. AMONG THE CLOUDS
  03. DANCE AFTER DANCE
  04. IN YOUR DREAM
  05. BRIGHT SILVER MOON
  06. NIGHT MAGIC
  07. EVENING CALM
  08. WHAT'S UP
  09. CRYSTAL RAINDROPS
  10. BE MINE

(ビクター/JVC 1984年発売/VDP-7)
(ライナーノーツ/波野未来)

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エルダー・ジャンギロフ / エルダー4

ELDAR-1 管理人にとって「新世代の天才」の称号にふさわしいのは“ジャズ・ピアニストエルダー・ジャンギロフが最後のように思う。
 実に10年以上,10代の「天才」ジャズメンが出現していない,という事実。ちょうどあの頃,エルダー・ジャンギロフ松永貴志上原ひろみ(ついでに矢野沙織ちゃん)がバンバン台頭していた時代の勢いが懐かしいもあり淋しくもあり…。

 でも多分そうではない。ここ10年,現代のジャズ・シーンにはきっと何人もの「新世代のスター」たちがデビュー飾っているはずである。
 そうであっても,管理人にはエルダー・ジャンギロフが最後の「新世代の天才」なのである。実に10年以上,時間がエルダー・ジャンギロフで止まっている。
 その理由は明白である。未だエルダー・ジャンギロフの『ELDAR』(以下『エルダー』)を超える“衝撃作”と出会えていない。ただそれだけのことであろう。 

 思うにこれが真実の理由であるのなら,もうしばらくエルダー・ジャンギロフに続く「新世代の天才」は現われないように思う。
 矢野沙織の場合がそうであったが,お〜っと,ジャズ・ピアニストを例に出した方が早いのかっ。ゴンサロ・ルバルカバの場合がそうであったが「新人」とか「10代」というキーワード抜きに音だけを聴いたら,もはや熟練のジャズ・ピアニストとウソの紹介をされても信じ込んでしまう。“天才”は若い頃から老いてもなお“天才”なのだから…。

 エルダー・ジャンギロフの“天才”の所以が『エルダー』の中にたっぷり濃縮。それは“超絶技巧”と“名作曲家”の2面にある。
 “ジャズ・ピアニスト”としてのエルダー・ジャンギロフのスゴ技は,正確無比な早弾きであろう。1曲目の【SWEET GEORGIA BROWN】で脳天かち割られてしまった後,マイケル・ブレッカーとの【SWEET GEORGIA BROWN】でのがっぷりヨツからの高速【MAIDEN VOYAGE】とダンシング【WATERMELON ISLAND】でのハービー・ハンコック祭りが素晴らしい。
 こう書くと“COOL”な演奏を思い浮かべるかもしれないが,実際は“HOT”で情感が乗っている。「オスカー・ピーターソンがインテリしている感じ」で良いと思う。

 もう1つの“名作曲家”としてのエルダー・ジャンギロフの“才”にも惚れ惚れする。この辺りのエルダー・ジャンギロフの“文才”が松永貴志上原ひろみと同列で比較される要因だと思うが,ジャズスタンダードのアレンジを聴く限り,既存曲を完全消化できたエルダー・ジャンギロフだから,スタンダードとは全く異なる“新しいもの”が出て来た感じでワクワクする。
 うん。『エルダー』は名盤である。「平成の怪物」盤の1枚に数えて良いと思う。

ELDAR-2 ただし,管理人は『エルダー』をもう10年は聴いていない。
 『エルダー批評の執筆のため,久しぶりに聴いてみたが,恐らく最後に『エルダー』を聴いた時10年前の感想と印象に変化はない。きっとこれからも『エルダー』を聴く機会は少ないことだろう。

 なぜなら『エルダー』を初めて聴いた瞬間の,あの“衝撃”が薄れる感じがする。聴き込めば聴き込むほどに,あの日の感動の“衝撃”が弱くなっていく…。
 あの日には感じなかったエルダー・ジャンギロフの「独りよがり」に気付いてしまった。例えば“超絶技巧”ベーシストジョン・パティトゥッチを置いてけぼりにする「我関せず」風の高速ドライブに,名手同士だけに許された絡みの楽しさを奪われたように感じてしまったから…。

 だ・か・ら・エルダー・ジャンギロフは『エルダー』以降は購入していない。きっとエルダー・ジャンギロフ自身が『エルダー』の“衝撃”を超えきれていないから…。
 だ・か・ら・エルダー・ジャンギロフに続く「新世代の天才」が現われない。敵はエルダー・ジャンギロフというジャズメンではなく『エルダー』という「平成の怪物」盤なのだから…。

  01. SWEET GEORGIA BROWN
  02. NATURE BOY
  03. MOANIN'
  04. POINT OF VIEW
  05. RAINDROPS
  06. LADY WICKS
  07. MAIDEN VOYAGE
  08. 'ROUND MIDNIGHT
  09. ASK ME NOW
  10. WATERMELON ISLAND
  11. FLY ME TO THE MOON

(ソニー/SONY 2005年発売/SICP 802)
(ライナーノーツ/ビリー・テイラー,小川隆夫)

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スイングジャーナル主催 ジャズ・ディスク大賞 1991年度(第25回)

 「スイングジャーナル」誌が,レコード会社各社の自薦ノミネート作品を基にして,国内で該当年度中に発売されたCDLPビデオを対象に同誌委託の「ジャズ・ディスク大賞選考委員」によって選出される,日本ジャズ界に最も貢献した作品に贈られる「ジャズ・ディスク大賞」。

 今回は1991年度(第25回)の発表です。

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アース・ウォーク★【金賞】.アース・ウォーク
ジャック・デジョネット・スペシャル・エディション


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ウェルカム・トゥ・ラブ★【銀賞】.ウエルカム・トゥ・ラブ
ファラオ・サンダース


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ユ−・ガッタ・ペイ・ザ・バンド★【ボーカル賞】.ユー・ガッタ・ペイ・ザ・バンド
アビー・リンカーン・ウイズ・スタン・ゲッツ


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プレイズ・ビバップ Vol.1★【日本ジャズ賞】.プレイズ・ビ・バップ Vol.1
富樫雅彦 & J.J.スピリッツ


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ヴォイス★【日本ボーカル賞】.ヴォイス
中本マリ


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シャキルの戦士★【制作企画賞】.シャキルの戦士
デビッド・マレイ〜ドン・プーレン〜スタンリー・フランクス〜アンドリュー・シリル

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日本ジャズ体系★【編集企画賞】.日本ジャズ体系 (King)



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ドン・キホーテ★【録音賞(海外)】.ドン・キホーテ
 チャールス・ファンブロー


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アース・ウォーク★【録音賞(国内)】.アース・ウォーク
ジャック・デジョネット・スペシャル・エディション


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ジョン・コルトレーンの世界 [DVD]★【最優秀ビデオ賞】.ジョン・コルトレーンの世界
 ジョン・コルトレーン



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 ジャック・デジョネット・スペシャル・エディションの『アース・ウォーク』が【金賞】受賞。
 出すアルバムが全て絶賛されてきたジャック・デジョネットの「スペシャル・エディション」。そんな「スペシャル・エディション」が,史上最高のアルバムを作ったのだから【金賞】受賞も当然だと思う。

 アルバム毎にほぼメンバーが入れ替わってきた「スペシャル・エディション」。『アース・ウォーク』のフロントは,ゲイリー・トーマスグレッグ・オズビーツインサックスに,新加入のマイケル・ケインキーボード

 ゲイリー・トーマスグレッグ・オズビーがクリエイティブ。そんな2人の熱演をスケール豊かに包み込み,最終的な音の表情を作り上げるマイケル・ケインが八面六臂の大活躍。

 トンガリ系でぶっ飛び系なのに,最新テクノロジー化された手作りの音がそこはかとなく温かい。ジャック・デジョネット=素晴らしいセンスの“音楽家”爆発アルバムである。

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チック・コリア・アコースティック・バンド / ライヴ・フロム・ザ・ブルーノート東京5

LIVE FROM THE BLUE NOTE TOKYO-1 移り気なチック・コリアの膨大なプロジェクトの中にあっても“瓢箪から駒”の「アコースティック・バンド」。
 だからデイブ・ウェックルのトラとしてヴィニー・カリウタが参加したと聞いてはいても「気が動転する」ようなことはなかった。

 でも『LIVE FROM THE BLUE NOTE TOKYO』(以下『ライヴ・フロム・ザ・ブルーノート東京』)を実際に耳にしたとき「気が動転して」しまった。

 なんだかこれまでチック・コリアを聴いて時を過ごしてきた様々な思い出,その時々の感情,そしてチック・コリアに関連して貯め込んできた知識がフラッシュバックの如く頭の中を一気に駆け巡ったことをよく覚えている。

 チック・コリアドラマーと来れば,スティーヴ・ガッドデイブ・ウェックルにような「正確無比」なバカテク・フュージョン系のドラマーの名前を真っ先にイメージしてしまうのだが,例えばジャズ系のロイ・ヘインズジェフ・バラード,ロック系のレニー・ホワイトと共演した時のチック・コリアも一興である。
 そう。チック・コリアベーシストの変更以上にドラマーの個性に感化されるタイプだと思う。

 その意味で「“NEW”AKOUSTIC BAND」とクレジットされたヴィニー・カリウタドラミングに,チック・コリアがこれまでになく創造力を刺激された演奏を聞くにつれ,デイブ・ウェックルのことが気になるし,ジョン・パティトゥッチの心情も気になってくる。
 音楽以外の事で「胸騒ぎを覚える」。『ライヴ・フロム・ザ・ブルーノート東京』はそんなアルバムであった。

 ズバリ『ライヴ・フロム・ザ・ブルーノート東京』のハイライトは,これまでのデイブ・ウェックルとの蜜月を吹き飛ばす,ヴィニー・カリウタの譜面上から“飛び出す”ドラミングに尽きる!

LIVE FROM THE BLUE NOTE TOKYO-2 ヴィニー・カリウタシンバルバスドラの「乱れ打ち」に驚愕してしまう。しなやかなのに大きくウネリながらポリリズムばりに4ビートで疾走するドラミングに狂喜乱舞してしまう。
 そう。『ライヴ・フロム・ザ・ブルーノート東京』とは,ヴィニー・カリウタチック・コリアを“吹き飛ばした”瞬間の記録である。

 チック・コリアヴィニー・カリウタが良く言うと「ユニゾン」している。まっ,普通に語ると「音が被って」いる。結果,ぶつかり合ったピアノドラムではドラムが優勢となっている。
 素晴らしいのは『ライヴ・フロム・ザ・ブルーノート東京』でのアドリブ合戦の全てが全て,音楽的である。そのことに尽きる。

 チック・コリアヴィニー・カリウタが共に“歌っている”。2人の作曲家が「ブルーノート東京」のステージ上で共作を産み落としていく。
 そしてジョン・パティトゥッチのコンテンポラリー系のベースが,抜群の対応力がいつも以上に素晴らしい。ウッドベース1本なのに「AKOUSTIC」にも「ELEKTRICK」にも“七変化”しつつスイングしている。鬼の職人の仕事ぶりだと思う。

 とにもかくにも,ここまでチック・コリアが押されるアルバムはそう滅多に聴けやしない。
 ヴィニー・カリウタに,自身の体内に宿る,新しい音楽のツボを押されたチック・コリアは,メンバーを一新して「チック・コリア・エレクトリック・バンド」へと舞い戻る〜!

LIVE FROM THE BLUE NOTE TOKYO-3 う〜む。ヴィニー・カリウタを擁する「“NEW”AKOUSTIC BAND」がその後も継続していたら…。夢は膨らむ…。管理人の妄想も膨らむ…。

 チック・コリアヴィニー・カリウタが再演した「FIVE PEACE BAND」でのスーパー・ライブは,ジョン・マクラフリンヴィニー・カリウタ以上に共演を“待ち設けていた”ケニー・ギャレットへの思い入れがめちゃめちゃ強く「ケニー・ギャレット一色」になってしまったわけだが,落ち着いて繰り返し聴いてみると“ヴィニー・カリウタ祭り”の匂いがプンプン!

 チック・コリアさん(ヴィニー・カリウタのギャラが高額だとしても)もう一度,ヴィニー・カリウタとの再演を!
 もう一度,ヴィニー・カリウタさんへの「夢や憧れ」を「形として」現実化してくださ〜い。

  01. HUMPTY DUMPTY
  02. NEW WALTSE
  03. WITH A SONG IN MY HEART
  04. CHASIN' THE TRAIN
  05. SUMMER NIGHT
  06. TUMBA
  07. AUTUMN LEAVES

(ストレッチ・レコード/STRETCH RECORDS 1996年発売/MVCR-240)
(ライナーノーツ/成田正)

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高中 正義 / SUPER TAKANAKA BEST4

SUPER TAKANAKA BEST-1 何度も書いているが,管理人はベスト盤は買わない主義。なぜならオリジナル・アルバムをコンプリートすればベスト盤は「無用の長物」となってしまうから! 管理人は気に入ったジャズメンは全部買い集める主義なのだ。

 その上で書く。高中正義については既にキティ時代のベスト盤『TAKANAKA’S COCKTAIL』を購入済。
 な・の・に・高中正義2枚目のベスト盤『SUPER TAKANAKA BEST』を買ってしまった。

 一番の理由は(未だに検索キーワード:「レコードショップ・まさ」で訪問者がある)閉店セールで,新品CD50%OFFだったからなのだが,選曲を見て心動かされてしまったのも事実。
 【黒船(嘉永六年六月四日)】である。サディスティック・ミカ・バンド・オリジナルの【黒船(嘉永六年六月四日)】である。これが欲しかったのだ〜。

 この理論は今までのセオリーと矛盾しない。“ジャズフュージョンくくり”において,サディスティック・ミカ・バンドを1枚も購入することはないのだから…。

 でっ,個人的には『SUPER TAKANAKA BEST』は,未所有のトラックと【黒船(嘉永六年六月四日)】だけを聴いていたのだが,今回の『SUPER TAKANAKA BEST批評に合わせて,久方ぶりに頭から聴き通してみた。

 でっ,感想。高中正義には3回のピークが存在する。1回目の山がキティ時代の永遠に色褪せない「夏ソング」の名曲群。2回目の山が東芝EMI移籍後ダッシュの『TRAUMATIC 極東探偵団』と『JUNGLE JANE』の2枚組。3回目の山が東芝後期の「TAKANAKA・AOR」時代である。
 どちらにしても「夏音」なのだが,3回のピークがそれぞれ表情の異なる「夏音」が奏でられていて聴き比べが興味深い。 

SUPER TAKANAKA BEST-2 管理人の結論。『SUPER TAKANAKA BEST批評

 『SUPER TAKANAKA BEST』に「MASAYOSHI TAKANAKA」の歴史あり!

 「スーパーベスト盤」なので星5つに値するのだが,やっぱり【MALIBU】と【JUMPING TAKE OFF】が選外なので,イマイチ気持ちが入らない。星4つ。

  01. OH! TENGO SUERTE
  02. READY TO FLY
  03. BLUE LAGOON
  04. ALONE
  05. SAUDADE
  06. 渚・モデラート
  07. SHAKE IT
  08. THE PARTY'S JUST BEGUN
  09. SAY YOU'RE MY BABY
  10. MY LOVE
  11. BLUE STRIPE
  12. ANOTHER SUMMER DAY
  13. GUITAR WONDER
  14. INTO THE SKY
  15. 黒船(嘉永六年六月四日)

(エキスプレス/EXPRESS 1997年発売/TOCT-10150)

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