アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

CD

デクスター・ゴードン / ゴー!5

GO!-1 デクスター・ゴードン自らが公言する“最高傑作”が『GO!』(以下『ゴー!』)である。
 デクスター・ゴードン自らが『ゴー!』を“最高傑作”と公言したくなる理由も理解できる。『ゴー!』こそがデクスター・ゴードンの“ジャズメン・シップ”の生きた証しなのだから…。

 ビ・バップからハード・バップへと移ろう50年代。第一線で活躍していたデクスター・ゴードンジャズ・シーンから突然消えた。よくある麻薬禍である。
 デクスター・ゴードンと同じパターンのジャズ・サックス・プレイヤーにアート・ペッパーがいるのだが,アート・ペッパーの場合は「前期」「後期」と呼ばれるように,麻薬休業の「以前」「以後」では音楽性がガラリと一変した。アート・ペッパーは監獄の中で聴いたジョン・コルトレーンから影響を受けてしまったから…。

 デクスター・ゴードンの場合は,麻薬休業中にハード・バップの洗礼を受けない「ガラパゴス」ジャズメン。ジャズの潮目が変わろうとも,カムバック後のデックスは引退前のデックスと同じ。
 そんな「浦島太郎」的なデックスだったから,時代がデクスター・ゴードンの“ジャズメン・シップ”に追いついた時,他の追随を許さない圧倒的な王者の演奏で輝くことができたのだ。

 基本,デクスター・ゴードンは,誰と共演しようが,ただひたすら自分のスタイルで悠然とプレイする。だからデクスター・ゴードンには,全てを受け止め,あの「ゴツゴツとした」テナーサックスを「丸く転がしてくれる」共演者を必要としている。

 『ゴー!』で共演したピアニストが“ブルーノートの秘蔵っ子”であるソニー・クラークである。主役に優しく寄り添いながらもブリリアントに響くソニー・クラークピアノが,デクスター・ゴードンテナーサックスの響きに立体感と奥行きをもたらしている。暗く“マイナー系”の独特の雰囲気が演奏に適度な粘りと黒さを与える“秀才”である。

 そう。『ゴー!』は“泰然自若”としたデクスター・ゴードンと“マイナー系”ソニー・クラークの「運命の巡り会わせ」無くしては成立することのできなかった大名盤である。
 デクスター・ゴードンが,以前と変わらぬビ・バップ気質を持ち合わせていたがゆえの「時代の巡り会わせ」というものだろう。

 デクスター・ゴードンの代表曲である【CHEESE CAKE】を聴いてほしい。哀愁溢れるマイナー・チューンが,程良くノリのいいテンポで演奏されるから余計に切なさが際立つ“切ない疾走系”の名曲である。
 ソニー・クラークピアノに「気持ち良く乗せられてしまった」デクスター・ゴードンが,軽快に駆け足するビートをバックに得意のやや遅れたタイミングで語りかけるようにブロウする。スピード感のある演奏なのに,たっぷりと息を吹き込んだデクスター・ゴードンの“可憐な”テナーサックスの音色にグッと来る。

GO!-2 デクスター・ゴードンテナーサックスが,いつにも増して朗々と伸びやかに響き渡る。ノン・ビブラートで発せられる力強い音には芯があり“大鳴り”している。

 デクスター・ゴードンの特徴である「後ノリ」が,これ以上遅れるともたついてしまうという“ギリギリの快感”を呼び起こし,一音一音に躍動感とインパクトを与えている。絶妙な「タメ」の存在がフレーズが滑らかに流れ過ぎないアクセントになっている。

 そう。デクスター・ゴードンテナーサックスを耳で追い続けるだけで,ドキドキ&ワクワクの楽しい時間があっという間に過ぎていく。
 アップ・テンポでは『ゴー!』と豪快にブロウし,スロー・テンポでは,微妙に陰りの情感を漂せて“たまらない”気分にさせてくれる大名盤である。

 ズバリ『ゴー!』の聴き所は,時代が一周回ってきた感じの「バップの雰囲気」にある。ソニー・クラーク名演とバップ期のイデオロギーへの揺るぎない確信がデックスの“無双”気分をプッシュしている。

 その実,豪快極まりない演奏なのだが,決して圧倒されることはない。奇をてらわないデクスター・ゴードンの“ジャズメン・シップ”が,これぞモダン・ジャズ的な雰囲気を持っている。大好物! 

  01. CHEESE CAKE
  02. I GUESS I'LL HANG MY TEARS OUT TO DRY
  03. SECOND BALCONY JUMP
  04. LOVE FOR SALE
  05. WHERE ARE YOU
  06. THREE O'CLOCK IN THE MORNING

(ブルーノート/BLUE NOTE 1962年発売/TOCJ-6479)
(ライナーノーツ/アイラ・ギトラー,皸羶成)

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DIMENSION / 294

29-1 2016年10月12日にリリースが決定していたDIMENSIONの『29』の発売日が延期になった。変更後の発売日は2016年10月26日。つまり2週間の延期とのこと。

 SMAPの解散が発表された時,解散は単純に5人だけ,あるいはジャニーズ事務所だけの問題ではなく,SMAP解散による“経済損失”は,直接効果,一次波及効果,二次波及効果を計算すると,たった1年間で636億円だという記事を読んだ。つまりはレコード会社やジャケット写真の撮影などなど,SMAPの周囲で働く何千人もの生活に影響が及ぶという事実。

 SMAPクラスでこの数字なのだから,DIMENSIONCDリリース延期による“経済損出”は1000億オーバー? DIMENSIONの周囲で働く何万人もの生活に影響が及ぶのを覚悟の上で2週間も延期するとは…。なあ〜んてね。

 でも冗談ではなく,一旦決まった発売日を延期するとは一大事である。その理由が公式Webサイトの説明によると「制作上の都合により」と書かれている。
 この文言だけでは何も分からなかったが,10月26日(フラゲした管理人は10月25日)に店頭に到着した『29』を聴いてみて納得。

 DIMENSIONCDはいつだって,練りに練り上げられており,徹底的に作り込まれたものばかりだが『29』に織り込まれた細かい無数のディテールを発見する時,こんな大仕事をよくぞ2週間の延期でまとめたなぁ,という感想しか出ない。作り“込み方”がとにかく凄い!

( 先の公式Webサイトには「楽曲制作にかなりの時間を費やしたとだけあって,今まで以上の練りに練られた極上のサウンドプロダクツに加え,随所に散りばめられた絶妙なメロディラインがアルバム全編を通して聴く者の心を捉えて離しません。聴くたびに新たな発見がある最上級のインストゥルメンタルミュージック...この秋,是非お聴き下さい!」との文言あり。やっぱり『29』のサウンドプロダクツはただごとではない )

 アッパレ! DIMENSION! アッパレ! 増崎孝司! アッパレ! 小野塚晃! アッパレ! 勝田一樹! さすがは『29』次元!

 『LE MANS』『FIRST DIMENSION』から『28』までDIMENSIONは一貫してメロディー良し。アドリブ良し。アレンジ良しの演奏良し。
 そんなDIMENSIONが『29』次元で勝負してきたのは,曲想とかAメロとかBメロとかサビといった大枠ではなく,メロディー自体が難易度の高いテクニカル・メロディーであろう。

 ズバリ『29』の聴き所は,このメロの展開だから放たれたと確信できるアドリブの完成度であろう。
 めまぐるしく展開していくメロディーから垣間見れる美しいアドリブが,何度聴いても新鮮で,何度聴いても「これしかない!」。
 個人的にはかつて本田雅人がそうであったように,何か新しいものが生まれるまでに何回も何回もアドリブを録り直したのではなかろうか?

 増崎孝司のロック・テイスト,小野塚晃ジャズ・テイスト,勝田一樹ファンクネスが,楽曲のカラーに合わせてテクニカルに混ざり合い,DIMENSIONらしい“深い色合い”で見事に表現されている。
 【THE ROAD TO PEACE】〜【3 FOCUS】〜【GROOVOLOGY】〜【THE SECOND PLACE】の流れが『29』の個性を特徴付ける,実にカラフルなアルバム・カラー!

29-2 これは“百戦錬磨”のスタジオ・ミュージシャンにとっては「至難の業」に違いない。
 大枠なんかはとっくに完成していたのだから「生みの苦しみ」とはちょっと違う。最後の最後“残りコンマ1秒のディテール探し”のために制作スケジュールがオーバーするまでに膨大な時間がかかったのだ。納得のいくアドリブが降りてくるまでに膨大な時間がかかったのだ。管理人はそう思う。

 こう考えるようになったのが『29』を聴き始めて3日後のこと。すでに全曲のメロディーが頭に入った状態でテクニカル・メロディーではなくアドリブを聴きまくって丸2日が経過した。その結果がこうである。

 管理人の結論。『29批評

 全ての道はローマに通ず。改め『29』の全ては【BLUE ROOM】に通ず。
 ラストの【BLUE ROOM】1曲を聴かせるがために【BLUE ROOM】前の9曲が伏線を張っている! アドリブの全てが実はハーモニーだった,という“大どんでん返し”!

 いや〜,2017年のノーベル賞はボブ・ディランに続いてDIMENSIONが受賞します。ジャズ通の村上春樹さん,お先にごめんなさい。

PS 逆に言うと“凝りに凝ったイントロダクション”の『29』はお目当て=美メロの少ない星4つ。CDと同じソロLIVEでは弾かないだろうから『29』がLIVEでどう演奏されるかが楽しみでなりません!

  01. The Road To Peace
  02. Night Bird
  03. Timeline
  04. Get Up With It
  05. 3 Focus
  06. Groovology
  07. The Second Place
  08. Hope
  09. Keep Going
  10. Blue Room

(ザイン/ZAIN RECORDS 2016年発売/ZACL-9094)
(☆スリップ・ケース仕様)
(☆BLU−SPEC CD2仕様)

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デクスター・ゴードン / ドゥーイン・オールライト4

DOIN' ALLRIGHT-1 デクスター・ゴードンと言うと“ワンホーン”のイメージが強い。映画「ラウンド・ミッドナイト」での,椅子に腰掛けながらの演奏シーンがイメージとして強く残っているから。
 映画「ラウンド・ミッドナイト」を見ていないデクスター・ゴードン・ファンの中にも,デックス=“ワンホーン”のイメージを抱いているのでなかろうか? なぜならデクスター・ゴードンの代表作である『GO!』や『OUR MAN IN PARIS』が“ワンホーン”だから。

 しかしデクスター・ゴードンについて回る“ワンホーン”のイメージは単純に編成の問題ではない。デクスター・ゴードンは,いつでも,どんな編成で吹いても“ワンホーン”のデックスのままなのである。

 『DOIN’ ALLRIGHT』(以下『ドゥーイン・オールライト』)を聴いてみて,デックス=“ワンホーン”と感じる理由を再認識することができた。
 『ドゥーイン・オールライト』は,デクスター・ゴードンにしては貴重なトランペットフレディ・ハバードとの2管フロント。
 フレディ・ハバードの“パリッ”としたトランペットは超個性的であるが,その隣りで鳴り響く“男性的で野太くゴツゴツとした”デクスター・ゴードンテナーサックスの存在感たるや,王将格のトランペットを「捻りつぶして」しまっている。

 ズバリ『ドゥーイン・オールライト』は事実上,2管ではなくデクスター・ゴードンの“ワンホーン”として楽しむべきアルバムである。
 このように書くとソニー・ロリンズのような“ワンマン”を連想されるかも知れないが,デクスター・ゴードンはそうではない。あくまで“ワンマン”ではなく“ワンホーン”のデックスである。
 デクスター・ゴードンテナーサックスが鳴れば,フレディ・ハバードトランペットでさえハーモニー楽器に成り下がってしまう。

 ソニー・ロリンズのような天才的なアドリブがあるわけではなく,ジョン・コルトレーンのような神々しさも無いのだが,明快で,颯爽としたテナーの胴鳴りを聴いていると「あっ,自分ってテナーサックスに一番ジャズを感じてしまうんだな」と自覚させられてしまう。
 この辺の感覚が“ジャズ・ジャイアント”の一人として,デクスター・ゴードンは「絶対に外せない」と思わせる魅力なのだと思う。

 なんだかフランク・シナトラのようでもあり,一転して演歌歌手のようでもある。ビートに対してほんのわずか遅らせて吹くから,あのゆったりしたノリが出てくる。ディレイがかって聴こえる。そこが何とも言えないデクスター・ゴードン特有の“味”だと思う。

DOIN' ALLRIGHT-2 デクスター・ゴードン特有の“味”に,ピアノホレス・パーランベースジョージ・タッカードラムアル・ヘアウッドが耳をそばだて聴き入っている。
 デクスター・ゴードンの大らかなスケール感がトランペットフレディ・ハバードをも説得し,場の空気を支配していく。

 読者の皆さんにも『ドゥーイン・オールライト』におけるデクスター・ゴードンの「アメとムチ」を聴いてほしい。
 デクスター・ゴードンの,ゆったりと包み込むようにブロウするテナーサックスの“味”にハマってしまうと,ソニー・ロリンズジョン・コルトレーンが繰り出す高速パッセージが,何だか無意味で過剰でせわしなく聴こえてしまうようになる。

 改めて思う。デクスター・ゴードンほど“ワンホーン”が似合う男はいないのではなかろうか? デクスター・ゴードンの,太く豪快にして,ほろりとくるテナーサックスがあれば,余計なものは要らないと思う。

 そう。デクスター・ゴードンテナーサックスの中に“ワンホーン”の醍醐味が全部詰まっている。ずっと聴き続けていたい…。

  01. I WAS DOING ALL RIGHT
  02. YOU'VE CHANGED
  03. FOR REGULARS ONLY
  04. SOCIETY RED
  05. IT'S YOU OR NO ONE

(ブルーノート/BLUE NOTE 1961年発売/TOCJ-4077)
(ライナーノーツ/アイラ・ギトラー,後藤誠,辻昇)

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渡辺 香津美 / MOBO倶楽部5

MOBO CLUB-1 「事件は会議室で起きてるんじゃない! 現場で起きてるんだ!」( by 踊る大捜査線 )と渡辺香津美も考えたのだろう。
 “時代の遥か先を行く音楽”『MOBO』を遠い将来でも近い将来でもなく,今,この現場で鳴らしたい! アメリカではなくここ日本で鳴らしたい!

 そんな渡辺香津美の「日本で,今,この現場で」欲求に駆られて作り上げたのが“セッション三昧”するための「MOBOバンド」。
 そんな「MOBOバンド」の貴重なセッションの記録こそが『MOBO CLUB』(以下『MOBO倶楽部』)である。

 「MOBOバンド」とは『MOBO』の“売り”であったツイン・ベースツイン・ドラム編成を踏襲した,ベースグレッグ・リー渡辺建ドラム村上“ポンタ”秀一パーカッション仙波清彦による“凄腕”純国産での『MOBO』の発展バンド。

 いや〜,ロビー・シェイクスピアスライ・ダンバーのジャマイカ隊とマーカス・ミラーオマー・ハキムのニューヨーク隊も凄かったけど「MOBOバンド」の超重量級リズム隊ももの凄い! 自由闊達,変幻自在,縦 横無尽の超弩級のセッション大会に一発KO!

 個人的にはグレッグ・リーベース・ラインが最高で,このベース・ラインを追いかけていると,いつでもあの頃の「MOBOバンド」。そして「MOBO」にTRIPしてしまう!
 ノリノリで大暴れな“和製”ツイン・ベースの躍動感こそが『MOBO倶楽部』の肝であろう。

 しかし『MOBO倶楽部』を聴いていると『MOBO』以上にカズミ・バンドの『GANAESIA』からの影響を感じてしまう。
 これって“怪人”坂田明アルトサックスヴォイスというよりもラップのせい? 『MOBO』の完成された世界観以上に,混沌と整然が絶妙に同居する抽象性に『GANAESIA』からの影響を感じてしまう。

 ズバリ『MOBO倶楽部』における「MOBOバンド」の真髄とは,面白さと過激さを本気で追求したプログレ・フュージョン
 『MOBO倶楽部』における「MOBOバンド」とは,カズミ・バンドが演奏するキングクリムゾンである。渡辺香津美ギターシンセが,かなり挑戦的というか挑発的というか,アヴァンギャルドで“ぶっ飛んでしまっている”。

 シンプルなペンタトニックの,だけど,どこか壊れたメロディが,グギグギのディストーションで鳴り響く。ノリノリのスケール・オンから瞬間的にアウト・オブ・スケールの強烈なフレーズが攻めてくる。
 本気でヤンチャする渡辺香津美に「向かうところ敵なし」。渡辺香津美に「恐いものなし」。

MOBO CLUB-2 そう。渡辺香津美は『MOBO倶楽部』で完璧にプログレを消化したのだと思う。それが「今,現場で起きている」渡辺香津美のプログレ・フュージョンなのである。
 
 ただし『MOBO倶楽部』の「今」は一晩だけ楽しめる音楽などではない。ジャズを消化しフュージョンを消化しロックとプログレをも消化してきた渡辺香津美だから作ることのできた「連綿と続く構築された快楽」。

 『MOBO』が“時代の遥か先を行く音楽”であったならば『MOBO倶楽部』は“未来永劫鳴り続ける音楽”である。素晴らしい。

  01. 風連
  02. 予感
  03. つるかめひなタンゴ
  04. 危険がいっぱい
  05. 強制接吻
  06. サッちゃん
  07. CIRCADIAN RHYTHM
  08. Σ

(ポリドール/DOMO 1984年発売/UCCJ-4114)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/中原仁,石沢弘治)

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ビル・エヴァンス / ビル・エヴァンス・トリオ・ウィズ・シンフォニー・オーケストラ5

BILL EVANS TRIO WITH SYMPHONY ORCHESTRA-1 リリカルなビル・エヴァンスのバックにシンフォニーオーケストラ。この組み合わせが悪いはずがない。
 ただし,ビル・エヴァンスピアノはかなりの強面ゆえに,このアイディアを実際に具現化するのは思いの外,容易ではない。

 “天才アレンジャー”クラウス・オガーマンの選択肢は,ピアノを前面に押し出して鳴らすべきか? それともオーケストラピアノと対立,あるいは共存させるべきか?

 かくして完成された『BILL EVANS TRIO WITH SYMPHONY ORCHESTRA』(以下『ビル・エヴァンス・トリオ・ウィズ・シンフォニー・オーケストラ』)が何ともスッキリ!

 リリカルなビル・エヴァンスが大好きであれば,ド・ストライクなシンフォニーオーケストラとの共演盤。『ビル・エヴァンス・トリオ・ウィズ・シンフォニー・オーケストラ』を聴かずして,ビル・エヴァンスを語ってはいけない“極上”レベルの共演盤。

 有名クラシック曲の選曲と控えめながら音楽の躍動感を意識させる名アレンジに耳がくすぐられる…。
 ゆえに『ビル・エヴァンス・トリオ・ウィズ・シンフォニー・オーケストラ』の成功の主役はクラウス・オガーマンと思われがちだが,絶対にそうではない。この全てはビル・エヴァンス側の“大仕事”の結果である。

 ズバリ『ビル・エヴァンス・トリオ・ウィズ・シンフォニー・オーケストラ』の構図とは,ビル・エヴァンスクラウス・オガーマンの編曲を“聴き分けた”大名盤である。

  思えばピアノ・トリオの印象が強いビル・エヴァンスであるが,ヴァーヴへの吹き込みは冒険作の方が多く,ヴァーヴビル・エヴァンスと来ればピアニストというよりもジャズメンと呼ぶにふさわしい活動のピークの時期。
 サックスフルートの特徴を引き出すことに成功させていたビル・エヴァンスが,シンフォニーオーケストラが有する“カラフルな甘さ”を見事に引き出している。

 オーケストラの音色をサックスフルートなど,1つの共演楽器に見立てた感じで,いつも通りに“ジャズの言語で”ピアノのバランスを合わせていく。
 ビル・エヴァンスとしては,相手が大物オーケストラであろうと気に留めてやいない。よく聴くとピアノシンフォニーオーケストラがバラバラな時間が随所にある。

BILL EVANS TRIO WITH SYMPHONY ORCHESTRA-2 これを偶然と取るか,必然と取るかは聴き手の判断次第であろうが,交わりそうで交わらない両者が絶妙にシンクロした瞬間が『ビル・エヴァンス・トリオ・ウィズ・シンフォニー・オーケストラ』のハイライト!

 ビル・エヴァンスには自分の個性を薄めて「伴奏役」に徹する気などさらさらない。爽やかなストリングズに溶け込むわけでもなく,対立するわけでもなく,ただシンフォニーオーケストラと同じ時間,同じ場所で,互いの考えを共有しながら,同時に音を発しているだけ…。

 そう。『ビル・エヴァンス・トリオ・ウィズ・シンフォニー・オーケストラ』でのビル・エヴァンスは,いつも通りのビル・エヴァンスである。いつも通りにビル・エヴァンスが超然としている。

 シンフォニーオーケストラと共演しようとも,有名クラシック曲を演奏しようとも,やはりビル・エヴァンスビル・エヴァンスであった。ビル・エヴァンスをなめてはならない。

  01. GRANADAS
  02. VALSE
  03. PRELUDE
  04. TIME REMEMBERED
  05. PAVANE
  06. ELEGIA (ELEGY)
  07. MY BELLS
  08. BLUE INTERLUDE

(ヴァーヴ/VERVE 1966年発売/UCCU-9285)
(ライナーノーツ/ビル・エヴァンス,ルイス・フリードマン,藤本史昭,中山康樹)

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和泉 宏隆 / ビヨンド・ザ・リバー5

BEYOND THE RIVER-1 『BLUE IN RED』で同時期にT−スクェアを退団した本田雅人和泉宏隆だが,2人の卒業に対する印象は真逆…。
 そう。自らの意思ではなく「追い出された」本田雅人と,自らの意思で「飛び出していった」和泉宏隆のイメージがある。事の真相は定かではない(ということにしておこう)…。

 だから和泉宏隆の場合,そこまでして演り始めたピアノ・トリオなのに…。周りに迷惑をかけてまで始めたピアノ・トリオなのに…。これ位の出来だったら何で…。
 そんな思いがあったから,個人的に厳しい態度で和泉宏隆の新作を評価している自分がいた。和泉さん,心無い対応を本当にごめんなさい。

 しかし,そんな謝罪を必要としない大満足なアルバムが出た。和泉宏隆ピアノ・トリオによる『BEYOND THE RIVER』(以下『ビヨンド・ザ・リバー』)である。

 ついに好き嫌いを超えた部分で和泉宏隆名盤に出会えた「喜び」を感じた。「星4つ」で評価していた『LIGHTS IN A DISTANCE』と『A SQUARE SONG BOOK』には,それでも多少,贔屓目の部分があったように思う。

 ただし,名盤ビヨンド・ザ・リバー』にしても,管理人が和泉宏隆に当初期待していたピアノ・トリオ・アルバムとは随分違っていた。
 T−スクェアで得た「栄光と名声と高収入」の全てを振り捨ててまで独立した和泉宏隆に,例えば年棒20億円の提示を蹴ってまで広島東洋カープに復帰した黒田博樹の「男気」のようなものを期待していた。

 一から武者修行に出掛け,一日10時間ピアノを練習し“孤高の人”として,5年後にジャズ・シーンに華々しく再登場してくるような和泉宏隆の姿を想像していた。ここで再び和泉さん,無茶苦茶な想像を本当にごめんなさい。

 ズバリ『ビヨンド・ザ・リバー』で登場した“NEW・和泉宏隆”とは,実に柔らかな“ヒーリング・ピアニスト”であった。
 T−スクェア脱退直後の「気負い」など全く感じられない。それはそれは“清らかなピアノ”が響かせていく。今聴いているピアニストが誰なのかを意識することはない。ただただ気持ち良いピアノの音が流れていく。

BEYOND THE RIVER-2 シンコペーションでフレージングの流れを生み出し,川や風といった移ろうもののイメージを浮かべさせる“ヒーリング・ピアニスト”。
 優しく柔らかくて,流れるようで情緒的で,それでいて一本の筋が通っていて…。目を閉じると白銀の世界。あぁ,切ないほどに美しすぎます。

 これには本当に驚いた。和泉宏隆が弾きたかったピアノが,スーッと身体の奥に沁み渡る…。
 和泉宏隆が目指していたのはメリハリ命の“ジャズ・ピアニスト”ではなかった。浮かんでは消えて無くなるピアノのBGMに,自らの我を押し殺した“NEW・和泉宏隆”の真実を見る。

  01. Heart Land
  02. Northern Island Breeze
  03. GladioluS
  04. Moon Palace
  05. Eyes Of Flora
  06. Prelude
  07. Snow Flower
  08. Spiral Fusion
  09. Golden Land
  10. Time Remembered

(アンドフォレスト・ミュージック/&FOREST MUSIC 2008年発売/NNCJ-1014)

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デューイ・レッドマン〜フィーチャリング・ジョシュア・レッドマン / アフリカン・ヴィーナス4

AFRICAN VENUS-1 管理人にとってデューイ・レッドマンの存在が大きすぎる。
 何と言ってもデューイ・レッドマンは,管理人の愛するキース・ジャレットアメリカン・カルテットテナーサックス・プレイヤー。加えて,これまた管理人の愛するパット・メセニーにとっても『80/81』から推し量るにマイケル・ブレッカーと同格の位置にいる。

 …にも関わらず,世間での評価は余りにも低い。管理人とすればジャズの偉大なサックス奏者の歴史において“絶対に欠かすことのできない存在”であるが,世間的にはそうではないのだ。

 追い込まれた管理人は,デューイ・レッドマンの偉大さを語るために,反則とは知りつつも,オーネット・コールマンの右腕であった事実やジョシュア・レッドマンの父である事実についても伝えるのだが,一向に響かない。
 なぜなのだ。管理人だけがデューイ・レッドマンを「過大評価」しているのか? そうなのかもしれない。

 でもそれでいい。あのキース・ジャレットが自分のレギュラー・バンドでフロントを任せたサックス奏者はデューイ・レッドマンヤン・ガルバレクの2人だけ。個人的にはキース・ジャレットの絶頂期は,間違いなくアメリカン・カルテットでの活動であると信じている。
 だからデューイ・レッドマンなのである。管理人にとってデューイ・レッドマンの存在が大きすぎる。

 『AFRICAN VENUS』(以下『アフリカン・ヴィーナス』)は,デューイ・レッドマン晩年の日本企画盤。
 どうやらこの『アフリカン・ヴィーナス』。純粋にデューイ・レッドマンCDを作ろうとしたわけではなく,当時,話題沸騰中だったジョシュア・レッドマンを引っ張り出すための“バーター”としてのデューイ・レッドマンのリーダー・アルバムだったとは…。

 マジでショックである。デューイ・レッドマンの市場価値とはジョシュア・レッドマンの父としてだけ? なんだかなぁ。

AFRICAN VENUS-2 確かに『アフリカン・ヴィーナス』における,デューイ・レッドマンジョシュア・レッドマンの“親子共演”を聴き比べた限り,音楽的にはデューイ・レッドマンの「大負け」である。
( というか“影の主役”ジョシュア・レッドマンの吹く「王道」が素晴らしすぎる。ここでのジョシュア・レッドマンの「覚醒」ぶりはマイケル・ブレッカー並み! )

 ただし,根っ子の部分では,流石のジョシュア・レッドマンも「偉大なる父」を超えることができていない。これこそがキース・ジャレットが見ていたデューイ・レッドマンの本物であり,パット・メセニーが見ていたデューイ・レッドマンの本物であり,オーネット・コールマンが見ていたデューイ・レッドマンの本物なのであろう。

 ズバリ,デューイ・レッドマンの本物とは「妖しさ」である。どうにも「情緒不安定」なテナーサックスである。何を演りたいのか伝わりにくいユニークなフリー・ブローの“パッション”に持っていかれる。

  01. AFRICAN VENUS
  02. VENUS AND MARS
  03. MR. SANDMAN
  04. ECHO PRAYER
  05. SATIN DOLL
  06. TAKE THE "A" TRAIN
  07. THE TURNE AROUND

(ヴィーナス/VENUS 1993年発売/TKCV-79013)
(ライナーノーツ/大村幸則)

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デオダート / ツァラトゥストラはかく語り5

PRELUDE-1 デオダートの【ツァラトゥストラはかく語りき】を部屋で聴いていると,妻が「なんでこんなの聴いているの?」と尋ねてきた。そう。管理人の家庭では日常的に,ジャズフュージョンか,そうでなければラジオが流れている。
 映画にも関心の薄い妻にとって「2001年宇宙の旅」という言葉は出なかったが【ツァラトゥストラはかく語りき】が有名映画のサウンドトラックであることまでは識別できたのだろう。そうしてポツリとこう言った。「この曲,こんなにカッコ良かったっけ?」。

 そう。それなのだ。【ツァラトゥストラはかく語りき】と来れば「2001年宇宙の旅」ではないのだ。【ツァラトゥストラはかく語りき】の「王道」と来ればCTIなのだ。デオダートの【ツァラトゥストラはかく語りき】こそが最高にカッコイイ!
 ズバリ,本家以上に「宇宙の旅」している交響曲! TOMORINCHAN発進〜! GO(ガオォ)!

 【ツァラトゥストラはかく語りき】について語りたいことも,語らねばならないこともあくさんあるが,とにかくカッコイイ。その一言で全てを言い得てしまう“類まれなる大名演”。
 管理人の【ツァラトゥストラはかく語りき】収録のアルバム・タイトル『PRELUDE』(以下『ツァラトゥストラはかく語りき』)のレビューは以上である。

( ここから先は読んでも読まなくても構わない。ここから先は管理人からジャズフュージョン批評家たちへの反論を記すことにする )

 世評では【ツァラトゥストラはかく語りき】について,やれ「フュージョン以前のクロスオーヴァーの名曲」だの,やれ「ジャズ・アレンジされたクラシックの代表曲」なのだと語られているが,それは違うと思う。

 デオダートの【ツァラトゥストラはかく語りき】とリヒャルト・シュトラウス作曲の交響詩【ツァラトゥストラはかく語りき】を聴き比べてみると分かる。デオダートの【ツァラトゥストラはかく語りき】の中に登場するシュトラウスの【ツァラトゥストラはかく語りき】の原型は,冒頭のキャッチャーな「金管楽器の雄叫び」だけである。
 つまりデオダートは,印象に残る冒頭の部分だけを素材として,後は卓越したアレンジ能力を駆使して,ピッカピカのCTIフュージョンに大変身させているのだった。

 デオダート版【ツァラトゥストラはかく語りき】のアレンジの肝はビリー・コブハムの実にタイトなドラミングである。ビリー・コブハムの“エレクトリック”志向のジャズドラムがあればこそのスタンリー・クラークエレクトリックベースだろうし,ジョン・トロペイのロックなエレクトリック“カッティング”ギターの素晴らしさであろう。

PRELUDE-2 そこへ乗っかる,ラテン・フュージョンデオダートの優雅なエレピと,アイアート・モレイラレイ・バレットパーカッションの“華やかさ”はどうだ?
 加えて,電化マイルスウェザー・リポート,それからマハヴィシュヌ・オーケストラまでもを呑み込んだデオダートが“隠し味”で準備したホーンストリングスによる「オブラート」はどうだ?

 「キタ,キタ,キターッ」な感じで登場するパーカッション,そしてホーンストリングスシンフォニーに,デオダートの中の“荘厳な音絵巻”を強く感じ取る。

 そう。デオダートが『ツァラトゥストラはかく語りき』で見据えていたのは,世評で語られている「ジャズとクラシックの融合」というコマーシャルな側面などではない。
 デオダートのアイディアは他の多くのミュージシャンに盗まれてしまったが,それらのほとんどはイミテーションであり,コピーの域にも達してはいない。

 ズバリ『ツァラトゥストラはかく語りき』の真髄とは,ジャズ,ロック,シンフォニーが「渾然一体」となった快感のサウンドであって,どんな切り口で聴こうとも,とにかく気持ちいい&カッコイイ。
 デオダートのサウンド・マジックよ,永遠なれ!

PS 『ツァラトゥストラはかく語りき批評=軸となる【ツァラトゥストラはかく語りき】のトラック批評となってしまったが,残る5トラックも【ツァラトゥストラはかく語りき】に負けず劣らずの名演集。繰り返すが,全曲がとにかく気持ちいい&カッコイイ。

  01. ALSO SPRACH ZARATHUSTRA (2001)
  02. SPIRIT OF SUMMER
  03. CARLY & CAROLE
  04. BAUBLES, BANGLES AND BEADS
  05. PRELUDE TO AFTERNOON OF A FAUN
  06. SEPTEMBER 13

(CTI/CTI 1973年発売/KICJ-8218)
(ライナーノーツ/豊島としき)

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フライド・プライド / MUSICREAM4

MUSICREAM-1 なんだかんだで『THAT’S MY WAY』で飽きがきて,5thTWO,TOO』をパスしたフライド・プライド
 6thMUSICREAM』では何と!邦楽のカヴァーが入っているとの情報につられてフラゲでGET(でも一番のお目当てはシャカタクの【NIGHTBIRDS】だったりする)。

 ふむふむ。やっぱりフライド・プライドの手にかかれば日本語も英語も区別なし。原曲がジャズでもフュージョンでもJ−POPでも洋楽でもR&Bであろうとも,全てを呑み込む「フライド・プライドオリジナル」の音楽が展開されている。

 『MUSICREAM』も“バッチリ”であった。でも正直,もうお腹一杯な気持ちになる。2,3回聴けばもう十分な気がする。
 振り返れば,現在のフラプラで演れるアイディアは「コンコード三部作」で全て演り尽くしてしまったように感じる。

 『HEAT WAVE』の時点で既に「最小公倍数が最大公約数」的なフラプラ特有の表現の限界にまで達していた。デュオという枠組みの中で,どこまで音楽性を拡げられるのか? 毎日が己(フラプラ)との“消耗戦”だったのだろう。

 フラプラ・ファンとしては,胸が締め付けられる思い出の『MUSICREAM』。
 「唯一無二」の存在であるがゆえに,レコーディングを重ねる度に新鮮味が失われてゆく…。「フライド・プライドオリジナル」の魅力が薄れてゆく…。

 『MUSICREAM』での「カンフル剤」=邦楽カヴァーはもうしばらくは使えない。
 残された道はオリジナル曲ということになるのだが,世界最高峰のカヴァー・アレンジを封印するのは“諸刃の剣”で悩ましい。

MUSICREAM-2 個人的には横田明紀男ギターがメロを弾きすぎていることが気掛かりである。もっとJAZZYにギターを弾きまくってほしい。
 メンタルを鍛え直して?もう一度,音数の多い“多弁な”リーダーに戻ってほしい。

 管理人の好きなフライド・プライドとは「ジャズ・ユニット」として“せめぎ合っている”フライド・プライドである。
 お洒落に聴かせるヴォーカル・ナンバーは『MUSICREAM』で終わりにしてくれたなら…。

 それにしてもSHIHOのドアップのジャケ写の大インパクト! こちらのビューティー路線は嫌いではありません…。

  01. CAN'T TAKE MY EYES OF YOU
  02. リバーサイド・ホテル
  03. 接吻 KISS
  04. Nightbirds
  05. Words With Wings
  06. Get Down To Me
  07. Midas Touch
  08. 永遠に
  09. Higher Ground
  10. La La Means I Love You

(ビクター/JVC 2006年発売/VICJ-61356)

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デヴィッド・T・ウォーカー / ドリーム・キャッチャー5

DREAM CATCHER-1 「なんだかノリに乗っているなぁ。『デヴィ爺』が若い!」。
 これが『DREAM CATCHER』(以下『ドリーム・キャッチャー』)を聴いた管理人のファースト・インプレッションであった。

 デヴィッド・T・ウォーカーの愛称とは「デヴィ爺」であるが“じいさん”呼ばわりするのはデヴィッド・T・ウォーカーが百戦錬磨の“いぶし銀”だから!
 真実のデヴィッド・T・ウォーカーとは“じいさん”とは対極にいる,さながら“永遠のギター・キッズ”! デヴィッド・T・ウォーカーに似つかわしい本来の愛称とは「デヴィ爺」改め「デヴィ造」なのであろう。 ← 造は若造の造。

 『ドリーム・キャッチャー』でのデヴィッド・T・ウォーカーこそが,実に楽し気にギターを弾く「デヴィ造」である。自分の大好きなジャズ系やR&B系,そしてブラック・コンテンポラリーなナンバーを「愉快な仲間たち」と自由気ままに演奏している。
 その意味で『ドリーム・キャッチャー』こそが,デヴィッド・T・ウォーカーにとっての“夢のアルバム”。だから『DREAM CATCHER』なのだろう。

 デヴィッド・T・ウォーカーは,ギター・ピックの角ではなく平らな背の部分を使用する。まるでギターではなくハーブでも奏でているかのような,時に激しくもとことん優しく“ギターを歌わせる”プレイ・スタイルが,デヴィッド・T・ウォーカーの“独特な音空間”を生んでいる。
 物腰柔らかな人柄がそのまんま音として出て来るタイプ。どんだけギターが上手いんじゃい!

 『ドリーム・キャッチャー』は,フュージョンを基本としたファンキー寄りのアルバムであって,デヴィッド・T・ウォーカーの“メロウ”が堪能できるギターフュージョン
 “本家”クルセイダーズのメンバーが脇を固めた前作『...FROM MY HEART』以上に“クルセイダーズっぽく”聴こえるのは,それだけクルセイダーズへの「デヴィ爺」の貢献が顕著な証し。

DREAM CATCHER-2 ズバリ,デヴィッド・T・ウォーカーというギタリストは,ファンキーな歌ものでこそ魅力を最大限に発揮する“心を揺さぶる”セッションギタリスト
 デヴィッド・T・ウォーカーの感情の噴出が,ギターからバンドへ,そしてリスナーへと伝播していく「感動の渦」…。

 デヴィッド・T・ウォーカーの場合も,きっかけはラリー・カールトンと同じ。クルセイダーズ「さまさま」である。
 ある意味,人気ロック・バンドのスーパー・ギタリストとは対極にいたはずの「黒子」のセッションギタリストたちがこれだけの人気を博すとは,いい時代になったものだ。

PS さすがに今ではそう思わないが,メディアにデヴィ夫人が露出し始めた頃のこと,デヴィ夫人の文字を見る度に「デヴィ爺」の夫人を想像してしまってニヤニヤするのが常でした。読者の皆さんの中にも?

  01. HEALING WHEELS
  02. AN-NOOR
  03. DREAM CATCHER
  04. THE BEST I'VE GOT
  05. STORYTELLERS
  06. TIME OF STILLNESS
  07. THE ONE
  08. SPIRITUALLY DRESSED
  09. RADIUS

(江戸屋/EDOYA 1994年発売/BVCM-35166)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/デヴィッド・T・ウォーカー,山岸潤史,ウエヤマシュウジ)

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フライド・プライド / THAT'S MY WAY4

THAT'S MY WAY-1 フライド・プライドとは,ヴォーカルSHIHOギター横田明紀男が組んだ「ジャズ・ユニット」なのだが,実際にはここに3番目のメンバーが加わっている。
 例えば,パーカッションNOGERAMEGUTOMMYシーラE.…。

 しかし,パーカッションが加わろうとも,フライド・プライドはあくまでもフライド・プライドのままである。
 そんなフライド・プライドが「ジャズ・ユニット」から「ジャズ・バンド」へと表現を拡大させて,新たに“世界一”を目指したのが,4thTHAT’S MY WAY』である。

 「ジャズ・ユニット」のフライド・プライドが,ピアノアコーディオンギル・ゴールドスタインヴィブラフォンマイク・マイニエリベースマーカス・ミラー高水健司ドラム村上“ポンタ”秀一等の「世界の猛者」たちの“GROOVE”を迎え撃つ!

 そう。世界最強の“GROOVE”を自らの体内に取り込もうとするのではなく,バンド編成を拒否したかのようなヴォーカルギターが素晴らしい。
 ズバリ『THAT’S MY WAY』の真実とは,フライド・プライドが考える「攻めのジャズ」なのであろう。

 横田明紀男ギターが,いつもの「裏メロ&リズム」の“超絶技巧”から解放されて「滅多に聴けない!」ストレートにSHIHOヴォーカルとユニゾンする場面が多いのが個人的には『THAT’S MY WAY』の大収穫である。

 しか〜し「攻めのジャズ」を志向した『THAT’S MY WAY』では,フライド・プライドフライド・プライドのままであり続ける,のは難しかった。従来の絶妙のバランスを気負いすぎて崩してしまったか?

THAT'S MY WAY-2 ギル・ゴールドスタインの演奏もマイク・マイニエリの演奏もマーカス・ミラーの演奏も高水健司の演奏も村上“ポンタ”秀一の演奏も大好きなのに,肝心要のSHIHOヴォーカル横田明紀男ギターが“空回りして聴こえる”のが残念である。

 管理人の結論。『THAT’S MY WAY批評

 『THAT’S MY WAY』でのバンド編成へのチャレンジは,フライド・プライドの「第二章」への模索だったと思うのだが,どうにも散漫な印象が拭えない。
 いつもの「最小公倍数が最大公約数」的なフラプラ“らしい”演奏での「第二章」を待っている。

  01. That's My Way
  02. Ribbon In The Sky
  03. Every Road Leads To You
  04. Between The Sheets
  05. Magic Eyes
  06. Universality
  07. Unbreakable
  08. Go Away Little Boy
  09. Moonlight
  10. Blackout
  11. Imagine

(ビクター/JVC 2004年発売/VICP-62778)
(ライナーノーツ/皸羶成)

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デヴィッド・T・ウォーカー / フロム・マイ・ハート5

...FROM MY HEART-1 デヴィッド・T・ウォーカーである。彼のファンは愛情を込めて「デヴィ爺」と呼んでいる。今回はそんな「デヴィ爺」についてのお話。

 本当はデヴィッド・T・ウォーカーギターが大好きなのだが,好きなギタリストの名前を聞かれると,いつもパット・メセニーやらジョン・スコフィールドやらビル・フリゼールやらリー・リトナーやらラリー・カールトン辺りのビッグでメジャーなアルバムの話に終始しつつ,最後に付け足し程度でランクインされてしまうのがデヴィッド・T・ウォーカー

 ただし,一旦,デヴィッド・T・ウォーカーの話題になると,そこからが長い。出るわ出るわ,延々と「デヴィ爺」の魅力について仲間内で盛り上がる。そんな不思議なセッションギタリストデヴィッド・T・ウォーカーなのである。

 まぁ,職人なんだよなぁ。いぶし銀なんだよなぁ。そんな魅力が分かる人には分かるし,分からない人にはさっぱりわからない。
 ギター・ヒーロー・タイプではなく,リード・ギターを弾くこともなく,サイド・ギターなのに,その音楽に欠かすことのできない“メロウなギタリスト”。

 そう。管理人がお題として「デヴィ爺」について論戦する場合は,デヴィッド・T・ウォーカーの万華鏡的なギターの魅力を“メロウ”の一言で押し通すことに決めている。
 デヴィッド・T・ウォーカーの特徴は,とにかく空気感にある。空気を切り裂くのではなく,空気を変えるのでもなく,空気に乗ってしまうギターを弾く男。ナチュラルで人肌的な温もりを感じるのだ。そして色気がある“メロウ”。

 『...FROM MY HEART』(以下『フロム・マイ・ハート』)を聴いてみてほしい。管理人の「デヴィ爺」への主張が,ほんのちょっとでも伝わると思うから…。

 『フロム・マイ・ハート』での「デヴィ爺」のギターが“笑顔が伝わってくるような”ギターなのである。軽快なフュージョン・サウンドが原因ではない。とにかく気心の知れた仲間とのセッションが“楽しくてしょうがない”感じのギターなのである。

...FROM MY HEART-2 こんなギターをサイドで弾かれたらたまらないだろうなぁ。ゲスト陣もリラックスして,知らず知らずに自分の全てを出し尽くしたに違いない。
 デヴィッド・T・ウォーカーの独特のタイム感やコードプレイの味が出ている。“メロウ”の味が沁みている。

 凄い小技が効いているのだろう。何だか分からない隠し味が仕込まれているのだろう。聴いていて“感触の残る”ギターである。
 でもそんなの一切気にならない。「この小技は,この隠し味は,この感触は」の話はナシにしよう。四角四面に分析しながら聴くなんて勿体なさすぎる。

 そう。『フロム・マイ・ハート』の聴き所は,デヴィッド・T・ウォーカーの“HEART”である。デヴィッド・T・ウォーカーが“心から捧げた”ギターの優しさを感じてほしい。

  01. THANKS TO YOU
  02. MEMORY AND THE REALITY
  03. A PLACE FOR US
  04. THE SIDEWALK TODAY
  05. EMPATHY SYSTEM
  06. SHARING WALLS
  07. IN LOVE AND LIFE
  08. SPEAK OF BALANCE
  09. FROM MY HEART

(江戸屋/EDOYA 1993年発売/BVCM-35165)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/デヴィッド・T・ウォーカー,吉成伸幸)

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フライド・プライド / ヒート・ウェイヴ5

HEAT WAVE-1 フライド・プライドの“最高傑作”が『HEAT WAVE』(以下『ヒート・ウェイヴ』)である。
 いいや,それだけではない。『ヒート・ウェイヴ』こそが「ヴォーカルギタージャズ・ユニット」の“最高傑作”の1枚でもある。

 タック&パティを取るか,フライド・プライドを取るかは,もはや好みの問題である。そう。『ヒート・ウェイヴ』でフライド・プライドタック&パティの肩を並べている。
 次作『THAT’S MY WAY』で方向転換しなければタック&パティを間違いなく越えていたであろう。

 それ程管理人が入れ込む理由は『ヒート・ウェイヴ』が「ジャズ・ユニット」という枠を越え,ジャンルとしてのジャズも越え,フライド・プライドの輝く個性が鳴っているからである。

 『ヒート・ウェイヴ』の選曲を眺めると,CDショップで敢えてジャズ・コーナーへ置く必要などない。ポップスの売り場にもロックの売り場にも置ける。
 でもでも演奏を聴いてしまうと,絶対にジャズ・コーナーに置いてもらわないといけない。「スゴテク」から来るレパートリーの幅と高さは関係ない。つまりフライド・プライドは「何を演ってもフライド・プライド」になってしまう。これが実感できるのが凄いと思う。

 元来のジャズが持っていた自由な発想,心が欲する最高に気持ち良いアレンジが溢れ出ている。その意味では『ヒート・ウェイヴ』のフライド・プライドは「ジャズ・ユニット」ではなく「2人ジャズ・オーケストラ」している。つまりスケールの大きなジャズ演奏なのである。

 1stFRIED PRIDE』〜2ndSTREET WALKING WOMAN』とコンビネーションを高めてきて,迎えた3rdヒート・ウェイヴ』では,ヴォーカルSHIHOギター横田明紀男が,カッコイイと思うフレーズを互いに“ぶつけ合っている”。
 SHIHO横田明紀男の音楽的な信頼関係があればこその“我の張り合い”がとにもかくにもカッコイイ。

HEAT WAVE-2 SHIHOが「やってみろよコノヤロー!」と横田明紀男に罵声を浴びせれば,横田明紀男SHIHOに「とうとう本性を現しやがったな,この雌狐が!」とぶつかり合っている?

 そう。『ヒート・ウェイヴ』こそがSHIHO横田明紀男の熱き血潮の“最高傑作”。「鉄は鉄によって研がれる」を地で行く,SHIHO横田明紀男の「研ぎ合い」の美しさに「血湧き肉躍る」〜。

 「ヴォーカルギタージャズ・ユニット」としての「シンプルさ」がフライド・プライドの“弱みではなく強み”である。音楽ってこんなにも素晴らしい。

  01. SMOKE ON THE WATERSMOKE ON THE WATER
  02. MY ROMANCE
  03. THE SECOND STAR TO THE RIGHT
  04. COME TOGETHER
  05. MY CHERIE AMOUR
  06. FREE
  07. ALFIE
  08. NOW AND FOREVER
  09. FANTASY
  10. HUSH-A-BYE
  11. YOUR LOVE
  12. YESTERDAY

(コンコード/CONCORD 2003年発売/VICJ-61117)
(ライナーノーツ/皸羶成)

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チャールス・ロイド・カルテット / ドリーム・ウィーヴァー4

DREAM WEAVER-1 ジョン・コルトレーンから出発したチャールス・ロイドテナーサックスが,その当時まだ無名だったピアノキース・ジャレットベースセシル・マクビードラムジャック・デジョネットの個性をまとめてオリジナリティを確立した1枚が『DREAM WEAVER』(以下『ドリーム・ウィーヴァー』)。

 『ドリーム・ウィーヴァー』の決めごとの少ない演奏スタイルは,ジョン・コルトレーンモードジョン・コルトレーンフリージャズジョン・コルトレーンの民族音楽を,キース・ジャレットセシル・マクビージャック・デジョネットに“自由に解釈させるための仕掛け”である。

 これってチャールス・ロイドにとっては,最高に楽しいセッションでもあり,最高に苦しいセッションでもある。
 なぜならば4人4様の考える「コルトレーン・サウンド」は不安定そのもの。チャールス・ロイドカルテットが「卵の殻で海を渡」ろうとした実験作が『ドリーム・ウィーヴァー』の真実なのだと思う。

 『ドリーム・ウィーヴァー』を称して“フリー・ジャズのロック化”という言葉が使われるが,確かにチャールス・ロイドがリードした音楽手法はジャズの本流から距離を置いている。
 内面から迸るアドリブを中心に据えるのではなく,キース・ジャレットセシル・マクビージャック・デジョネットといった新世代のロック感覚を音楽の中心に据えている。

 うん。面白い演奏である。ただし『ドリーム・ウィーヴァー』の本質は「時代の音楽」であって,かつてジョン・コルトレーンが切り開いていた“新しいジャズ”ではない。

 “神童”キース・ジャレットフィーチャリングしたピアノソロの「おおっ!」という驚き。
 キース・ジャレットピアノを聴き漁ってきた耳からすると『ドリーム・ウィーヴァー』のピアノが別種類。ロック・ファンを魅了するアドリブ・ラインはチャールス・ロイドの功績として讃えられるべきであろう。

DREAM WEAVER-2 ただし,ロックに寄ったキース・ジャレットは評価できない。表面的な変化を追いかけるだけでは感動が伝わらない。キース・ジャレットとて「内なる衝動」のないピアノは“お飾りファッション”にすぎないと思う。

 そう。『ドリーム・ウィーヴァー』の真実とは,当時のフラワームーブメントとかヒッピーといった“時代の波に乗っかった!フリー・ジャズのロック化”に違いない。もっと掘れれば歴史的名盤…。

  01. AUTUMN SEQUENCE
     a) AUTUMN PRELUDE
     b) AUTUMN LEAVES
     c) AUTUMN ECHO
  02. DREAM WEAVER
     a) MEDITATION
     b) DERVISH DANCE
  03. BIRD FLIGHT
  04. LOVE SHIP
  05. SOMBRERO SAM

(アトランティック・ジャズ/ATLANTIC JAZZ 1966年発売/WPCR-27030)
(ライナーノーツ/ジョージ・アバキャン,後藤誠)

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フライド・プライド / ストリート・ウォーキング・ウーマン5

STREET WALKING WOMAN-1 1stFRIED PRIDE』のような横田明紀男の「バカテク+SHIHOとのコンビネーション」を期待して買った,フライド・プライド2ndSTREET WALKING WOMAN』(以下『ストリート・ウォーキング・ウーマン』)にヤラレテしまった。

 フライド・プライドの魅力はテクニックではなかった。フライド・プライドの魅力はハートである。ソウルである。感情のアタックである。ガッツである。
 そう。フライド・プライドとは「気合いと根性」の「ジャズ・ユニット」なのである。

 もはやミス・タッチとかはお構いなし。感情の赴くままにヴォーカルギターが“シャウト”している。そして,その横田明紀男SHIHOの“シャウト”のタイミングが,時に同じく,時にバラバラでジャズを感じさせてくれる。
 なんだか突然「ヘタウマ」になった感のあるSHIHOヴォーカルが心に入ってきてヤラレテしまったのだ。

 ジャズ・ファンたるもの,メロディーよりもアドリブ目当てなのだけど,アドリブの楽しさを知るために,知識としての原曲のメロディー,そして歌ものなら歌詞も見聞きする。
 ただし,インスト・ファンにとって歌ものは何度聴いても雰囲気で終わる。細かな歌詞の意味までは気にしていない。サックスピアノが「カッコヨク歌い上げれば」それでいいのである。ジャズ・ファンにとっての元ネタはあくまで「資料」である。

 ゆえにSHIHOに限らず,基本的にジャズ・ヴォーカルとは,管理人にとっては「楽器の1つ」である。声帯を歪ませて“シャウト”する「楽器の1つ」である。
 だからSHIHOの突然の「ヘタウマ化」に戸惑った。いつもは「楽器」として聴いているジャズ・ヴォーカルが,ダイレクトに歌詞を心に届けてきた。

 記憶が定かではないのだが,個人的にライナーノーツの歌詞カードを真剣に読み返したのは『ストリート・ウォーキング・ウーマン』が初めての経験だと思う。

 たくさん聴いてきたはずの【クロス・トゥ・ユー】【イット・ドント・ミーン・ア・シング〜スイングしなけりゃ意味ないね】【エブリシング・ハプンス・トゥー・ミー】【イフ・アイ・ワー・ベル】【マイ・ファニー・バレンタイン】【ムーン・リバー】【ワッツ・ゴーイング・オン】【バーニン・アップ・ザ・カーニバル】って,実はこんな歌だったんだ〜。

STREET WALKING WOMAN-2 とにかくフライド・プライドは“リーダー”横田明紀男のワンマン・ユニットではない。フライド・プライドには“磨けば光る”SHIHOがいる。

 フラプラ贔屓としては,この認識を『ストリート・ウォーキング・ウーマン』の時点で持てたことがあとあと大きい。
 横田明紀男・偏重主義ではフライド・プライドをここまで楽しめない。ジャズ・ヴォーカル・楽器主義ではメロディーを,そしてアドリブをここまで楽しめてはいない。

  01. STREET WALKING WOMAN
  02. CLOSE TO YOU
  03. IT DON'T MEAN A THING
  04. EVERYTHING HAPPENS TO ME
  05. NORWEGIAN WOOD
  06. IF I WERE A BELL
  07. MY FUNNY VALENTINE
  08. ALMAZ
  09. MOON RIVER
  10. SUPERSTITION
  11. WHAT'S GOING ON
  12. BURNIN' UP THE CARNIVAL

(コンコード/CONCORD 2002年発売/VICJ-60965)
(ライナーノーツ/皸羶成)

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チャールス・ミンガス / クンビア&ジャズ・フュージョン5

CUMBIA & JAZZ FUSION-1 フュージョンという音楽は,一般的に「ジャズとロックとの融合」を意味しているが,チャールス・ミンガスの『CUMBIA & JAZZ FUSION』(以下『クンビア&ジャズ・フュージョン』)は「ジャズクンビアとの融合」。すなわち,ジャズとアフロ・アフリカンやトロピカルでネイティヴな音楽との融合を意味する。
 そう。『クンビア&ジャズ・フュージョン』によって,真の「ジャングル・サウンド」が登場したのである。

 個人的には『クンビア&ジャズ・フュージョン』を聴いていると,どうしてもウェザー・リポートの『ブラック・マーケット』を連想してしまう。
 あのチャールス・ミンガスジョー・ザビヌルに影響されている。

 とは言え,そこはチャールス・ミンガス。ただでは終わらない。『クンビア&ジャズ・フュージョン』は『ブラック・マーケット』へのアンサー・アルバムであり,メインストリームをフュージョンに奪われたジャズ・コンボ側からのフュージョン・グループへの回答なのである。

 『クンビア&ジャズ・フュージョン』には,演奏時間27分と22分の2曲の大曲が収録されているのだが,2曲目の【MUSIC FOR“TODO MODO”】はイタリア映画「トド・モード」のテーマ曲ゆえ,本来のテーマ「クンビア」とは無関係である。

 ただし,管理人的には,この2曲が揃っての『クンビア&ジャズ・フュージョン』の“破壊力”なのである。チャールス・ミンガスの音楽実験がトロピカルに向いたのが【CUMBIA & JAZZ FUSION】であって,ロマンティックに向いたのが【MUSIC FOR“TODO MODO”】であって,どちらも同じく「ジャングル・サウンド」していると思う。

 【CUMBIA & JAZZ FUSION】も【MUSIC FOR“TODO MODO”】も共に“長尺になるべくしてなった”長編エンターテイーナー。曲の途中途中で,その前の仕掛けが利いた見事な展開で,全てに無駄がない。
 果たして,チャールス・ミンガスは,ここまで細かな楽譜を準備していたのだろうか? 曲想の変化に合わせて積み重ねられたアドリブが,リスナーを「未曾有のジャングル・サウンド」へと誘っていく。

 そうしてチャールス・ミンガスが最後に辿り着いたのは,音楽のユートピア,音の桃源郷である。まるで“心の故郷”にでも帰って来たかのような,懐かしい感動がある。
 この辺りの快感の種類がウェザー・リポートの『ブラック・マーケット』と同じ系統なのである。

 ジョー・ザビヌルのようにエレクトリック・ジャズへとは向かわずに,それでもなお,新しいジャズの形を追い求めている“孤高の”チャールス・ミンガスが最後に行き着いた音世界は,最高にHAPPYな楽園サウンドであった。

CUMBIA & JAZZ FUSION-2 チャールス・ミンガスの人生は闘争そのものであった。ウッド・ベース一本で黒人差別の世の中と闘ってきた。そんなチャールス・ミンガスが死の目前に作り上げた『クンビア&ジャズ・フュージョン』では,音楽から怒りの感情が消えている。

 『クンビア&ジャズ・フュージョン』からは,怒りではなくチャールス・ミンガスの“静かなる笑い”が聴こえてくる。怒りでも悲しみでもなく,その先にある“達観した笑い”である。
 そう。チャールス・ミンガスの「ジャングル・サウンド」が,ついに目標であったデューク・エリントンを捉えている。

 先に『クンビア&ジャズ・フュージョン』は,ジョー・ザビヌルに対するチャールス・ミンガスからの回答と書いた。この言葉に二言はない。
 しかし『クンビア&ジャズ・フュージョン』の真実とは,チャールス・ミンガスが,どうしても思いを届けられずにいた,敬愛するデューク・エリントンの「ジャングル・サウンド」への回答でもあったと思う。

 チャールス・ミンガスの晩年は幸福であった。管理人はそう思うことにしている。チャールス・ミンガスよ,永遠なれ!

  01. CUMBIA & JAZZ FUSION
  02. MUSIC FOR "TODO MODO"

(アトランティック・ジャズ/ATLANTIC JAZZ 1978年発売/WPCR-27254)
(ライナーノーツ/大村幸則)

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フライド・プライド / FRIED PRIDE4

FRIED PRIDE-1 “類まれなる歌唱力”を持つヴォーカリストSHIHOと“超絶技巧派”ギタリスト横田明紀男による「日本のタック&パティ」ことフライド・プライド
( タック&パティを知らない読者の皆さんはドリカムのようなものと思ってください )

 フライド・プライドのメインは,タック&パティパティ・キャスカートで,ドリームズ・カム・トゥルーが吉田美和であるように,ヴォーカリストSHIHOである。
 とにかく,SHIHOの「尖がっているのにシルキーでソウルフルな」ジャズヴォーカルが素晴らしい。

 でもタック&パティタック・アンドレスで,ドリームズ・カム・トゥルーが中村正人であるように,フライド・プライドの音楽を裏で実際に回しているのは“リーダー”横田明紀男“その人”である。

 そもそも,ヴォーカリストギタリストによるユニットではギタリストの負担が大きい。まだポップスやロック系の弾き語りならまだしもフライド・プライドが演奏するのはジャズである。

 歌伴としてのカッティング,バッキングに,間奏でのギターソロではアドリブまで披露する。基本的にはコード楽器としてリズムをキープしつつ,それでいて歌と絡みつつ,ヴォーカリストよりも前に出ない。
 大所帯のギター・ヒーロー役よりも敷居が高いのが「ジャズ・ユニットのギタリスト」なのだと思う。

 フライド・プライド1stFRIED PRIDE』を聴いていると,横田明紀男の「苦心の跡」が色濃い。
 フライド・プライドの場合,SHIHOの表現力が,2nd3rdと成長するにつれ,横田明紀男ギターがシンプルになっていく。

FRIED PRIDE-2 その意味で『FRIED PRIDE』の横田明紀男が,テクニック的には一番であろう。SHIHOの右へ左へ,SHIHOの前へ後ろへ,大忙し!

 SHIHOヴォーカルを先導する“アクロバティックな”ギターの動きを追いかけていると,SHIHOとの連動というよりはSHIHOを置き去りにする横田明紀男の“超絶技巧”にどうしても耳が行く。
 横田明紀男の突出に「ジャズ・ユニット」というよりも,ヴォーカルギターが別々のブースでレコーディングした雰囲気を感じたりして…。辛口ですみません…。

 とにもかくにも“ジャズ・ギタリスト横田明紀男“その人”を聴きたいのなら『FRIED PRIDE』を聴け〜!
 横田明紀男の多芸ぶりには,ただただ「スゲェー」!

  01. Love For Sale
  02. If
  03. Lately
  04. The Man I Love
  05. 'Round Midnight
  06. Morning Must Come
  07. Louisiana Sunday Afternoon
  08. 'S Wonderful
  09. Jumpin' Jack Flash
  10. Calling You
  11. Paradise

(コンコード/CONCORD 2001年発売/VICJ-60820)
(デジパック仕様)
(ライナーノーツ/悠雅彦)

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デヴィッド・サンボーン / タイム・アンド・ザ・リヴァー4

TIME AND THE RIVER-1 フュージョン時代のデヴィッド・サンボーンが大好きなファンとしては「デヴィッド・サンボーンマーカス・ミラー」の15年振りとなるコラボレーションTIME AND THE RIVER』(以下『タイム・アンド・ザ・リヴァー』)にニンマリ。

 VERVEの2作とDECCAの2作が「シリアス&ヴィンテージ」路線だったから,待望の“売れ線”が聴けるとあって,フラゲでGETしたその日は『タイム・アンド・ザ・リヴァー』を10回連続で聴き続けた。
 デヴィッド・サンボーンの“泣きのブロー”にマーカス・ミラーの“ドンシャリ”なジャズベが最高に似合っている。やっぱりデヴィッド・サンボーンはこうでなくっちゃ…。
 15年振りの“ファンキー・サンボーン”の復活に一人悦に入ったものだ。数日後に『PEARLS』を聴き返してみるまでは…。

 まぁ,昔のデヴィッド・サンボーンを聴きたくなって選んだのが,デヴィッド・サンボーンの中で“一番煌びやかな”『PEARLS』だったのが運のつき。
 『タイム・アンド・ザ・リヴァー』のデヴィッド・サンボーンアルトサックスの音色が『PEARLS』と比べて,くすんでいる。濁っている。荒れている。
 フレージングが“サンボーン節”のままだったから気付かなかったが,これはデヴィッド・サンボーンの枯れではない。「栄枯盛衰」から来たすさみのように感じてしまった。

 そう。『タイム・アンド・ザ・リヴァー』における「デヴィッド・サンボーンマーカス・ミラー」復活の真実とは,デヴィッド・サンボーンマーカス・ミラーに「HELP」を求めたアルバムである。
 この視点でマーカス・ミラーの『AFRODEEZIA』を聴き直してみてほしい。『タイム・アンド・ザ・リヴァー』のサウンド・スケッチは『AFRODEEZIA』のそのまんま〜。

 過去に『INSIDE』で,マーカス・ミラーに主導権を握られたのがきっかけで袂を分けたはずだったのに,あのマーカス・ミラーのサウンドがどうしても忘れらないデヴィッド・サンボーンが,マーカス・ミラーの出した意見を丸呑みしてまで「デヴィッド・サンボーンマーカス・ミラー」の復活にこだわった。そんな流れ?

 デヴィッド・サンボーンにとってはモデル・チェンジを求められた15年であったが,マーカス・ミラーにとっては“天才”に磨きをかけた15年であった。
 
TIME AND THE RIVER-2 ズバリ『タイム・アンド・ザ・リヴァー』は,マーカス・ミラーが『AFRODEEZIA』で追求した「アフリカ路線」の続編である。
 極論を言えば,基本,同じサックス奏者のアレックス・ハンを「デヴィッド・サンボーンに差し替えただけ」である。

 『AFRODEEZIA』でアレックス・ハンが表現できなかったサックスを『タイム・アンド・ザ・リヴァー』でデヴィッド・サンボーンを使って表現している。
 くすんで,濁って,荒れて,すさんだ音を“苦味”としつつ,デヴィッド・サンボーンの体内に残された“旨味”を限界まで引き出している。マーカス・ミラーの「流石の仕事ぶり」である。

 そんなマーカス・ミラーが「山」と問えば,これまたデヴィッド・サンボーン的確に「川」(『TIME AND THE RIVER』)と答えている。
 「デヴィッド・サンボーンマーカス・ミラー」の夢のコラボ・アゲインは,何年間が空いたとしても,一音出した瞬間に“あの頃の2人に”戻れるんだなぁ。
 デヴィッド・サンボーンアルトサックスが「川」の流れのようにマーカス・ミラーの“心のヒダ”に流れていく。

 漢字の「川」を電話等で区別するために発音する→「三本川」→「サンボーン川」→アルバム・ジャケットがオツである。

  01. A LA VERTICALE
  02. ORDINARY PEOPLE
  03. DRIFT
  04. CAN'T GET NEXT TO YOU
  05. OUBLIE MOI
  06. SEVEN DAYS SEVEN NIGHTS
  07. WINDMILLS OF YOUR MIND
  08. SPANISH JOINT
  09. OVERTURE (from The Manchurian Candidate)
  10. DAYDREAMER
  11. LITTLE CHURCH

(ビクター/JVC 2015年発売/VICJ-61711)
(ライナーノーツ/佐藤英輔)

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渡辺 貞夫 / ナチュラリー4

NATURALLY-1 『NATURALLY』(以下『ナチュラリー』)が泣ける。2重の意味で泣ける。

 1つ目の涙は「絶賛の涙」である。
 渡辺貞夫アルトサックスこそが「世界一」である。こんなにも「美しく・優しく・温かい」アルトサックスは世界中を探し回っても見つからない。

 個人的には渡辺貞夫の音楽があれば何があっても生きていける。本気でそう思う。これまでのナベサダのアルバムは全部好きだ。そんな思いを持って聴いた『ナチュラリー』。1曲目の【NATURALLY】を聴いただけで涙が溢れてくる。そしてアルバムを全部聴き終えるまで,ずっと涙が止まらない。

 では読者の皆さんに『ナチュラリー』を奨めたいか,と問われればそうでもない。恐らく,他の音楽ファンの涙腺はゆるくならないかもしれないから。
 管理人と同じ経験ができる人とは,これまでの人生をずっと渡辺貞夫と共に生きてきた人だけなのだと思う。ずっとナベサダと時を過ごしてきたから,一音聴いただけで感動してしまう。渡辺貞夫の“今”が聴こえてくるからだ…。

 まだまだナベサダの体調は良さそうだ。いつもと変わらぬナベサダの音色を確認できて安心する。その上で,今までとは違ったナベサダを打ち出そうとしている姿勢に泣けてくる。
 「貞夫さん,マイペースで大丈夫ですから。そんなに飛ばさなくて大丈夫ですから。もう十分に満足していますし,心から感動しています。感謝しています」。

 2つ目の涙は「悲しみの涙」である。こちらは実際に涙することはないが“心の涙”ということで…。
 渡辺貞夫の老いを初めて,証拠として目のあたりにしてしまった。初めて直視させられてしまった。親の老いた姿を見た時の思い出とと被ることがあって…。

 管理人の知る渡辺貞夫とはオリジナル曲の制作にこだわり続ける男である。勿論,カヴァー曲も演奏する。有名スタンダード曲を取り上げ,自分の感じたままに新鮮なアレンジを施す渡辺貞夫も大好きである。

 それがどうだろう。『ナチュラリー』の【WATER COLORS】と【SPRING】に驚いた。
 何と!【WATER COLORS】は,ほぼ【MY DEAR LIFE】。【SPRING】は,ほぼ【TIMES WE SHARED】。あれ程「オリジナルオリジナル」と連呼してきた渡辺貞夫もついに…。

NATURALLY-2 だから管理人は思う。全てのナベサダ・ファンは『ナチュラリー』を聴くべきだと強く思う。
 『ナチュラリー』には,若い頃のナベサダはいない。でも今のナベサダがいる。老いを自覚し始め「自分の音と懸命に闘っている」ナベサダアルトサックスが記録されている。

 こんなにも「美しく・優しく・温かい」アルトサックス渡辺貞夫の他にはない。渡辺貞夫は命を懸けて,自分の音楽を守っている。自分の音楽を更に発展させようとしてもがいている。

 渾身のバラードSMILE】に,心が震えて止まらない。感動が止まらない。

  01. Naturally
  02. Junto Com Voce
  03. After Years
  04. Bem Agora
  05. Water Colors
  06. Na Lapa
  07. Carinhoso
  08. Bird's Song
  09. Spring
  10. Smile

(ビクター/JVC 2015年発売/VICJ-61742)
(ライナーノーツ/斉藤嘉久)

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デヴィッド・サンボーン / オンリー・エヴリシング4

ONLY EVERYTHING-1 “ニコイチ”のデヴィッド・サンボーンにふさわしく“レイ・チャールズトリビュート”の『HERE & GONE』の続編『ONLY EVERYTHING』(以下『オンリー・エヴリシング』)も“ハンク・クロフォードトリビュート”。

 所謂,デヴィッド・サンボーンの“ニコイチ”と来れば,前作の完成度を高めたものが多かったが,今回の『オンリー・エヴリシング』はいつもの続編ではない。
 『HERE & GONE』のレビジョンアップ,マイナーチェンジではなく,メジャーアップグレートでのバージョンアップ。同じブラスでも“ブラス・ロック”ではなく,R&Bにブラスが加えられた“ブルース”なのである。

 “ブルース”から出発して,カントリー,R&B,ジャズフュージョンファンクで頂点を極めたデヴィッド・サンボーンの「一周回って」演奏するオルガントリオが渋い。いい音だしている。
 ついにデヴィッド・サンボーンキャリアの初頭へ,いいや,デビュー以前の「サックス少年」にまで“原点回帰”。

 デヴィッド・サンボーンサックスを始めたエピソードのは小児麻痺のリハビリのためだが,デヴィッド・サンボーンがプロを志すようになったきっかけは,レイ・チャールズ・バンドでサックスを吹いていたハンク・クロフォードへの“憧れ”にあった。

 ただし,デヴィッド・サンボーンハンク・クロフォードのコピーは絶対にしない。と言うかレイ・チャールズの存在なしに,ハンク・クロフォードに近づくことなど出来やしない。
 ズバリ,デヴィッド・サンボーンが“憧れた”ハンク・クロフォードとは「レイ・チャールズがいてナンボ」のサックス奏者。

 『オンリー・エヴリシング』でデヴィッド・サンボーンが“仮想”レイ・チャールズに仕立て上げたは,ヴォーカルジョス・ストーンジェイムス・テイラーであり,ハモンドオルガンジョーイ・デフランセスコがキーマンである。
 ジョス・ストーンジェイムス・テイラーが歌い,ジョーイ・デフランセスコGROOVEする,レイ・チャールズばりの“ブルース”に触れて,ついに念願の“ハンク・クロフォード越え”を成し遂げている。

ONLY EVERYTHING-2 『オンリー・エヴリシング』はデヴィッド・サンボーンにとって「特別な意味を持つ」1枚になったのだと思う。ある意味,生涯の目標を初めて達成できたアルバムなのだから…。

 4ビート基調のオーセンティックなジャズをベースに,クレバーな“ブルース”が見事に融合している『オンリー・エヴリシング』。
 ジャズフュージョン・ファンの求めるデヴィッド・サンボーンのアルバムではないかもしれない。しかし,オールドスクールなジャズを演奏するデヴィッド・サンボーンを聴き込むのも,長年の“サンボーン・キッズ”にとってはオツである。

  01. THE PEEPER
  02. ONLY EVERYTHING (FOR GENEVIEVE)
  03. HARD TIMES
  04. LET THE GOOD TIMES ROLL
  05. BABY WON'T YOU PLEASE COME HOME
  06. YOU'VE CHANGED
  07. HALLELUJAH, I LOVE HER SO
  08. BLUES IN THE NIGHT
  09. SOMETIMES I FEEL LIKE A MOTHERLESS CHILD
  10. DAVENPORT BLUES

(デッカ/DECCA 2010年発売/UCCU-1262)
(ライナーノーツ/松下佳男)

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渡辺 貞夫 / カム・トゥデイ4

COME TODAY-1 『INTO TOMORROW』から『COME TODAY』(以下『カム・トゥデイ』)へ…。

 たかがアルバム・タイトルであるが,ここに渡辺貞夫の願いであり,祈りが込められている。そう。渡辺貞夫からのメッセージは「TOMORROW(明日)」ではなく「TODAY(今日)」である。

 明日に目を向けることは,今を見つめること以上に価値があると思っている。ただし,未来を見つめることと現実から目を背けることとは意味が違う。もっと言うと渡辺貞夫は,明日から今日を見つめている…。幸せな明日が待っているんだから,今日一日を何とか頑張んだ…。
 苦しみの真っ最中には考えられないかもしれないが,苦しみを乗り越えた先には,あんな日もあった,と笑って話せることだってある…。

 「冬の土の奥に
 芽生えのときを待つ生命があるように,
 悲しみや困難を乗り越えた先には
 希望があります。
 『痛みの度合いは 喜びの深さを知るためにある』
 これはチベットの格言ですが,
 僕のそうした想いを,このアルバムに
 感じてもらえればと願っています」。

 これは『カム・トゥデイ』のライナーノートの中に記されている渡辺貞夫の言葉である。
 ここに直接的な「頑張ろう」といった言葉はない。そうではなく渡辺貞夫は,自分のもう一つの言葉であるアルト・サックスを通じて,慰め,励まそうとしている。

 この姿勢こそが渡辺貞夫そのものだと思う。自分の音楽を通して,人々に笑顔を,人々に感動を,そしてこの度は慰めと励ましを…。
 そう。『カム・トゥデイ』とは渡辺貞夫から届けられた「東日本大震災」へのレクイエムである。渡辺貞夫自身も震災の前に,最愛の妻を亡くしたそうだ。そんな悲しみに暮れた渡辺貞夫だから“寄り添う”ことの出来たレクイエム…。

 さて,このように書くと『カム・トゥデイ』を,重いジャズ,と受け止められてしまいそうだがそうではない。
 『INTO TOMORROW』と同じく,ピアノジェラルド・クレイトンベースベン・ウィリアムスドラムジョナサン・ブレイクのNYの精鋭たちとのセッションにおいて,渡辺貞夫アルト・サックスを吹き鳴らしながら,踊り,跳びはねている。
 この“軽さ”こそが『カム・トゥデイ』の真髄だと思う。あらゆる困難を乗り越えた結果として,ついに手に入れた“軽さ”なのであろう。

COME TODAY-2 『カム・トゥデイ』の聴き所は“丁々発止とレクイエム”である。若手というより実力者の3人とのインタープレイである。
 ジェラルド・クレイトンベン・ウィリアムスジョナサン・ブレイクの演奏が『INTO TOMORROW』と比べて格段に良くなっている。

 この3人の成長の後ろに渡辺貞夫の存在あり。渡辺貞夫ジェラルド・クレイトンベン・ウィリアムスジョナサン・ブレイクの関係性が「凄腕の共演者たち」から「NYの3人の息子たち」へと変化している。
 だから渡辺貞夫アルト・サックスで徹底的に攻めているのに,穏やかな夕凪のような演奏に聴こえるのだろう。聞き流すことがもったいない“ハートフルな”ナベサダ・ミュージック。

 「TOMORROW(明日)」から見た「TODAY(今日)」は,決して悪いことばかりではないはずだ。将来から現在を見つめることができれば,つかの間の患難を忍耐できる。
 そうして忍耐して過ごした今日一日,気持ちが付いてこなくとも,明るい将来の希望を見つめ続けることができますように…。

  01. Come Today
  02. Warm Days Ahead
  03. Airy
  04. What I Should
  05. I Miss You When I Think of You
  06. Gemmation
  07. Vamos Juntos
  08. Simpatico
  09. She's Gone
  10. Lullaby

(ビクター/JVC 2011年発売/VICJ-61655)
(ライナーノーツ/渡辺貞夫,小沼純一)

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デヴィッド・サンボーン / ヒア・アンド・ゴーン

HERE & GONE-1 『TIMEAGAIN』『CLOSER』と変わらぬレコーディング・メンバーを見て「2枚で1セット」の掟を破る,デヴィッド・サンボーン初の「三部作」に突入したかと思ってしまった『HERE & GONE』(以下『ヒア・アンド・ゴーン』)であったが,そこは大丈夫。

 「名門=ヴァーヴ」から「老舗=デッカ」への電撃移籍。馴染みのメンバーを引き連れての移籍であるが,コンテンポラリージャズ路線は,しっかりと『TIMEAGAIN』『CLOSER』で終了させて『ヒア・アンド・ゴーン』では,同じメンバーでも「一味違う」新しい音楽の旅へと繰り出している。

 ズバリ,デッカのキーワードは“ブラス”である。トランペットテナーサックスバリトンサックステナートロンボーンバスクラリネット…。
 ついにブラス・バンドが投入されたデヴィッド・サンボーン流の“ブラス・ロック”なのである。だからゲストにエリック・クラプトン

 そうして『ヒア・アンド・ゴーン』のキーワードは“レイ・チャールズトリビュート”。その実,レイ・チャールズ・バンドのアルトサックス・プレイヤー“ハンク・クロフォードトリビュート”。
 そう。ハンク・クロフォードソウルジャズを鳴らすための“ブラス・ロック”アルバムなのである。

 ジャズ界随一であろう,ギターラッセル・マローンベースクリスチャン・マクブライトドラムスティーヴ・ガットによるエモーショナルにして絶対安定のリズムに乗ったブラス隊が,デヴィッド・サンボーンを前面に押し出していく。

 ブラス・バンドの“主役を張った”デヴィッド・サンボーンが絶好調。バックの細かな音の変化を見逃さず,拾っては膨らませ&拾っては膨らませできたのも,じっくりとブラス隊と向き合った賜物であろう。

 いいや,過去にデヴィッド・サンボーン自身がブラス・バンドの一員として活躍したキャリアからくる“ソロイスト”へのこだわりを感じる。
 結構ストイックなアルトソロを吹いていて,聞き流したいのに聞き流せない“サンボーン節”に「ヒイヒイ」である。

HERE & GONE-2 正直“ファンキー・サンボーン”から“アゲアゲ・サンボーン”までの黄金期が過ぎ去り「ヴィンテージ・ファンク」で延命を図ってきたデヴィッド・サンボーン名盤なんて期待していない。

 新作が出れば惰性で購入する。CDの代金は“サンボーン・キッズ”としてのお布施のようなものである。内容など確認することもなく,死ぬまで新作を買い続けることだろう。

 だから『ヒア・アンド・ゴーン』を聴いて,これが新しい“サンボーン節”なんだ。そう感じられた自分が,ちょっぴりうれしかった。
 もはやデヴィッド・サンボーンは,いい悪い,では判断できない“レジェンド”なのである。

  01. st. louis blues
  02. brother ray (featuring derek trucks)
  03. i'm gonna move to the outskirts of town
  04. basin street blues
  05. stoney lonesome
  06. i believe to my soul (featuring joss stone)
  07. what will i tell my heart
  08. please send me someone to love
  09. i've got news for you (featuring sam moore)

(デッカ/DECCA 2008年発売/UCCU-1179)
(ライナーノーツ/成田正)

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デヴィッド・サンボーン / クローサー4

<br>
CLOSER-1 『A CHANGE OF HEART』からの『CLOSE−UP』然り。『UPFRONT』からの『HEARSAY』然り。
 デヴィッド・サンボーンには前作と同じコンセプト,同じサイドメンで作られた2枚目の続編が存在する。そしてその出来がいい。荒削りのままであった細部が仕上がっている。

 ゆえに『タイムアゲイン』の続編となる『CLOSER』(以下『クローサー』)にも期待した。
 最初は「いいではないか!」と思った。でも聴き込んでいるうちに『CLOSE−UP』や『HEARSAY』では感じなかった不満が募ってきた。

 コンテンポラリージャズはやはりデヴィッド・サンボーンの音楽ではない。デヴィッド・サンボーンならではの“SOMETHING”が感じられない。
 コンテンポラリージャズという形式だけが浮かび上がって,デヴィッド・サンボーンの“SOUL”が聴こえてこない。そういう意味では『タイムアゲイン』の続編にして,遅れてきた『PEARLS』の続編のようでもある。

 要は「幸せボケ」なのだろう。特に苦労せずとも極上のサウンドが手に入る。『PEARLS』の時は「ウィズ・ストリングス」。『タイムアゲイン』『クローサー』の場合はヴァーヴの誇る「ジャズメン・オールスターズ」のバック・サウンドに“身を委ねる”デヴィッド・サンボーンの構図。

 デヴィッド・サンボーンマイ・フェイバリットものばかりを選曲して“悠悠自適に”アルトサックスを吹いている。
 だから<マイク・マイニエリ,STRONG>ラリー・ゴールディングス,ギル・ゴールドスタインラッセル・マローンクリスチャン・マクブライトスティーヴ・ガットが集結しているというのに,ほんま物のジャズではなくイージー・リスニング的なアルトサックスが鳴っている。

CLOSER-2 だから『クローサー』の第一印象は良かったのだ。でも繰り返しの視聴に耐えられる代物ではなかった。
 本来ならキャリアを積むと円熟し深みを増すものであろうが,デヴィッド・サンボーンほどの「成功者」は別のようだ。チャッチャでパッパと一丁上がり〜。

 『CLOSE−UP』と『HEARSAY』には必然性があった。だが『クローサー』には,敢えて続編を作った「大義」が見当たらない。なんとも雑な“手馴れの”2枚目である。
 「デヴィッド・サンボーン有りき」ではない,ジャズ初心者なら大いに楽しめるのではなかろうか…。

  01. Tin Tin Deo
  02. Senor Blues
  03. Don't Let Me Be Lonely Tonight
  04. Smile
  05. Enchantment
  06. Ballad of the Sad Young Men
  07. Another Time, Another Place
  08. Capetown Fringe
  09. Poinciana
  10. You Must Believe in Spring
  11. Sofia

(ヴァーヴ/VERVE 2004年発売/UCCV-1065)
(ライナーノーツ/工藤由美)

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テツジーノ(櫻井 哲夫×日野“JINO”賢二) / ダブル・トラブル5

DOUBLE TROUBLE-1 かつて「ベース・マガジン」誌の発行200号記念として企画されたセッション・バトルの相手として櫻井哲夫が指名したのが日野“JINO”賢二であった。

 その時のオファーの理由は日野賢二が,日野皓正の息子だし,ジャコ・パストリアスの弟子だし,マーカス・ミラーの高校の後輩だし…。
 NO! そんな肩書以上に何よりも日野賢二が「フロム・ニューヨーク」なパンチあるベーシストだったから!
(本当はJINOが,カシオペア時代の櫻井哲夫の大ファンだった,という噂を櫻井哲夫が聞いていたから!)。

 そんなカシオペアつながりの,一度限りのスペシャル・セッションが「TETSUJINO」の結成にまでつながった。ミュージシャンとしうものは,そしてベーシストというものは,一度音を合わせたら相手のことが全て分かるみたい!?
 「TETSUJINO」名義の『DOUBLE TROUBLE』(以下『ダブル・トラブル』)を聴いてそう思った。高いレベルでの相性の良さを感じる。低音楽器=ベーシストとしての相性以上に,意外や意外,中高音での相性の良さが詰まっている。

 櫻井哲夫日野“JINO”賢二の“超絶技巧”ベースデュオが弾きまくりで弾き倒し! 期待通りのベース・バトルゆえ,まずは買って大満足!
 でも管理人はそれだけでは満足しない。“あの”櫻井哲夫と“あの”日野“JINO”賢二デュオなのだから,ベース弾きまくり以外にも仕掛けがあるはず…。

 ズバリ『ダブル・トラブル』の仕掛けとは,ベースを主役とするための「中高音の音使い」である。いや〜,これが聴けて大満足。管理人はこんなベースデュオが聴きたかったのだ。
 櫻井哲夫日野“JINO”賢二ベーシストとしての会話は「低音の密度」に表われている。チョッパーで弾いてもツーフィンガーで弾いても,低い声で「語り合っている」。それも全く違う楽器で会話をしているかのように…。

 そう。違う切り口で相手のセンスが入ってくる。ソロの掛け合いで聴かせる豊富なバリエーションは“超絶技巧”ベーシストであればこそ! ベースばかりなのに“しつこくない”。

 要は相手の良さを引き出す“裏方稼業”のベーシスト。相手のベースを引き立たせるためなら,自分はギタリスト役でもピアニスト役でも務めてみせる。そんな気概がベースの音域を離れた「中高音の音使い」に表われていると思う。

DOUBLE TROUBLE-2 この全ての原動力は日野“JINO”賢二が抱く櫻井哲夫へのリスペクトであろうし,そんな日野“JINO”賢二の「少年の憧れ」を全身で受け止める櫻井哲夫の度量の大きさなのだろう。

 『ダブル・トラブル』の基本は“重戦車”デニス・チェンバースとの即興メロディアス路線のコンセプトであるが,相当に自由度の高いセッション集であって,高速チョッパー好きには「鳥肌モノ」! ベース・バトルってここまで出来ちゃうんだっ!

  01. BROTHA
  02. AALIYAH
  03. SOME SKUNK FUNK
  04. ELEBE-TA-IMU
  05. PHANTOM LADY -INTERLUDE-
  06. U' R SMILE -INTERLUDE-
  07. ETERNAL JOURNEY
  08. S.O.S. PLANET EARTH
  09. YOU MAKE ME FEEL BRAND NEW
  10. FOR THE FOUNDATION
  11. I'M OAN
  12. DIG ET VOUS? -INTERLUDE-
  13. GOODBYE BARON
  14. WANNA SEE U

(セブンシーズ/SEVEN SEAS 2008年発売/KICJ 545)
(ライナーノーツ/坂本信)

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デヴィッド・サンボーン / タイムアゲイン4

TIMEAGAIN-1 どうした“絶対王者”デヴィッド・サンボーン? あのデヴィッド・サンボーンリッキー・ピーターソンの「ヴィンテージ・ファンク」が,ヴァーヴから“刺客”として送り込まれてきた,ヴィブラフォンマイク・マイニエリピアノギル・ゴールドスタインギターラッセル・マローンベースクリスチャン・マクブライトドラムスティーヴ・ガットの「ジャズメン・オールスターズ」に“刺されてしまっている”。

 そう。『TIMEAGAIN』(以下『タイムアゲイン』)の真実とは,ジャズの名門レーベル=ヴァーヴに主導権を握られたコンテンポラリージャズ・アルバムであって,従来のデヴィッド・サンボーンの音楽ではない。

 デヴィッド・サンボーンジャズ・アルバムと来れば『ANOTHER HAND』が連想されるのだが『ANOTHER HAND』には,デヴィッド・サンボーンの“未来”があった。気概を感じたものだった。だから“サンボーン・キッズ”も受け入れることができた。

 対する『タイムアゲイン』には,ヴァーヴの思い描く“未来”がある。ズラリと並んだ有名ヒット・チューンのカヴァーからは,デヴィッド・サンボーンのブランド力で,多くのフュージョン・ファンをコンテンポラリージャズの世界へと引き入れたい,そんなレーベルの計算高さが透けて見える…。
 まぁ,これはこれでいい。管理人は基本ヴァーヴの創るジャズが大好きだし,コンテンポラリージャズも大好きなのだし…。

 でも『タイムアゲイン』は受け入れられない。どうにも納得いかない。
 このモヤモヤとした思いはヴァーヴに対してではない。かってのデヴィッド・サンボーンであれば,自分の意に添わずに仕組まれたコマーシャルなセッティングでも,一音で“ちゃぶ台をひっくり返す”ようなカリスマがあった。

 それが今回はどうだろう。『タイムアゲイン』でのデヴィッド・サンボーンは元気なく&あっけなく「ジャズメン・オールスターズ」に寄り切られている。え〜っ,デヴィッド・サンボーンって病気なのか?

 全世界の“サンボーン・キッズ”はうすうす感じている。『タイムアゲイン』でのデヴィッド・サンボーンモデル・チェンジは,デヴィッド・サンボーン自身が望んだことであろう。
 もはや“イケイケ”では走り続けられないことをデヴィッド・サンボーン自身が一番理解している。ジャズの名門レーベル=ヴァーヴ移籍はそんな自身の衰えを隠すための「隠れ蓑」なのである。ヴァーヴ移籍は悪評は全てヴァーヴのせいにするための戦略なのである。

TIMEAGAIN-2 デヴィッド・サンボーンが『タイムアゲイン』で使った戦略とは,敢えての「盛り上げなし」。じっくりと耳をそばだてながら聴きたくなる落ち着いた演奏である。

 流石のスティーヴ・ガットである。流石のクリスチャン・マクブライトである。こんなにも「間」を聴かせられるデヴィッド・サンボーンのアルバムはこれまでなかった。ゆったりとしたGROOVEに乗った“サンボーン節”がまだまだ第一線で通用することが証明されている…。

 管理人の結論。『タイムアゲイン批評

 『タイムアゲイン』は,アルトサックス奏者=デヴィッド・サンボーンにとっての「人生の曲がり角」。
 本格派から軟投派へ。速球派から変化球投手へ。フュージョンからコンテンポラリージャズへ。

 デヴィッド・サンボーンはまだまだ現役で通用する。ローテーション投手として10勝はできる。なせならバックが凄いから!
 常勝軍団=ヴァーヴ入団へ一言! デヴィッド・サンボーンよ,伝家の宝刀“泣きのブロー”でエースを狙え!

  01. comin' home baby
  02. cristo redentor
  03. harlem nocturne
  04. man from mars
  05. isn't she lovely
  06. suger
  07. tequila
  08. little flower
  09. spider b.
  10. delia

(ヴァーヴ/VERVE 2003年発売/UCCV-1043)
(ライナーノーツ/青木和富,鈴木雄一)

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富樫 雅彦 & J.J.スピリッツ / ソー・ホワット〜ライヴ・アット・新宿ピット・イン5

SO WHAT〜LIVE AT PIT INN SHINJUKU-1 「富樫雅彦 & J.J.スピリッツ」のコンセプトは,フリージャズの名手4人だからアレンジできた,斬新でストレート・アヘッドなスタンダード演奏にある。

 過去においてメロディーを捨てて実験的な演奏活動に没頭してきた名手4人が“一球入魂的な”ハード・バップ・スタイルで美メロを吹き上げていく。恐ろしく洗練されたジャズスタンダードに脱帽である。もはや常人では太刀打ちできないハイ・レベルの演奏が続いている。

 …にも関わらず『SO WHAT〜LIVE AT PIT INN SHINJUKU』(以下『ソー・ホワット〜ライヴ・アット・新宿ピット・イン』)に美メロの印象はない。

 ズバリ『ソー・ホワット〜ライヴ・アット・新宿ピット・イン』とは,もの凄いスイング&もの凄いグルーヴ・アルバムである。
 耳タコなスタンダードのはずなのに「先が読めない」スリリングな演奏の連続に,気が張りつめていく。集中力が増していく。そうして大熱狂してしまう…。

 個人的には「富樫雅彦 & J.J.スピリッツ」を聴くまでは「富樫雅彦=作曲家」のイメージが強かったのだが『ソー・ホワット〜ライヴ・アット・新宿ピット・イン』を聴いてからは「富樫雅彦=「炎のパーカッショニスト」を強く意識するようになった。

 思うに「富樫雅彦 & J.J.スピリッツ」結成の真の目的とは「炎のドラマー」→「炎のパーカッショニスト」としてジャズ界に復活していた富樫雅彦が,再び「炎のドラマー」へと舞い戻るためのプロジェクトだったのではないか? 

 ライブ盤=『ソー・ホワット〜ライヴ・アット・新宿ピット・イン』での,スイングするパーカッショニストを聴いていると,下半身不随事件以前のドラマーとしてのイデオロギーが新しいものへと置き換えられていることが分かる。
 ハイハットとバスドラなしのパーカッション・セットをして,以前のスーパー・ドラマー富樫雅彦を超えてきている。素晴らしい。

SO WHAT〜LIVE AT PIT INN SHINJUKU-2 富樫雅彦パーカッションが,美メロを離れて好き放題にスネアのアクセントを入れていく。拍から解放され,奇数拍偶数拍の表裏,まったくこだわらずにぽんぽんと軽やかにスネアが鳴っている。
 リズム・キープを全うしつつ,繊細かつ自由奔放なスティック捌きがグルーヴをつかんで離さない。和音,リズム等の制約から自由になるフリージャズドラミングが,見事にハード・バップにハマッテいる。

 峰厚介テナーサックス佐藤允彦ピアノ井野信義ベースと,気心の知れた仲間を得て,安心してアクセルを踏み込んでいる。
 富樫雅彦シンバル1つが,3人をコントロールしていく。キメを外しながらもドライブ感する富樫雅彦に引きずられた「J.J.スピリッツ」=「JAPANESE JAZZ魂」な大熱演である。

 『ソー・ホワット〜ライヴ・アット・新宿ピット・イン』は「とにかく凄い,とにかく気合い」という言葉しか見当たらないJ−ジャズ屈指の大名盤! 管理人は体調の良い時にしか聴けません!

  01. Monk's Hat Blues〜Milestone
  02. All The Things You Are
  03. Autumn In New York
  04. It's You Or No On
  05. So What〜Monk's Hat Blues

(ヴィーナス/VENUS 1995年発売/TKCV-35149)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/青木和富)

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デヴィッド・サンボーン / インサイド4

INSIDE-1 『INSIDE』(以下『インサイド』)の発売時点では誰一人として,当のデヴィッド・サンボーンマーカス・ミラーでさえ知る由もなかったが『インサイド』以降『TIME AND THE RIVER』のリリースまでの15年間“蜜月関係”にあった「デヴィッド・サンボーンマーカス・ミラー」という“夢のコラボレーション”が封印されることになる。

 推測するに,その要因とは本来「親分」であるデヴィッド・サンボーンと本来「裏方」であるマーカス・ミラーの関係性が「デヴィッド・サンボーンマーカス・ミラー」から「マーカス・ミラーデヴィッド・サンボーン」へと「マーカス上位」へと変化したからである。

 そう。『インサイド』では「デヴィッド・サンボーンマーカス・ミラー」の黄金のバランスが崩壊している。
 デヴィッド・サンボーン名義のソロ・アルバムで,過去にここまでマーカス・ミラーが前面に出たことはなかったし,デヴィッド・サンボーンはというと“ちょい役”のように登場するばかりである。
 まっ,その“ちょい役”での存在感が半端ないのだけれども…。ここがマーカス・ミラーの“狙い”だったのかもしれないけども…。

 “ちょい役”デヴィッド・サンボーンソロ・アルバム=『インサイド』の参加メンバーは,レギュラー陣であるマーカス・ミラーリッキー・ピーターソンに加えて,テナーサックスマイケル・ブレッカートランペットウォレス・ルーニーキーボードギル・ゴールドスタインギターディーン・ブラウンビル・フリゼールドラムジーン・レイクパーカッションドン・アライアス,そうして!ヴォーカルカサンドラ・ウィルソンエリック・ベネイレイラ・ハサウェイスティング

 この超豪華メンバーから発せられる,深く沈み込んだ“ダーク・ビューティー”なR&Bなど一体誰が想像できようか?
 実際には“先手を打って”アルバム・タイトル=『インサイド』が暗示していたのだが,音楽のベクトルが「内へ内へ」と向かっている。ずしりと重い音楽パンチング。

 主役であるアルトサックスのバックで,マーカス・ミラーフレットレスベースが哀しく響き,バス・クラリネットの渋味が空間を支配するマーカス・ミラー一流のストイックな展開が続いてゆく。
 地味派手な「マーカス・ミラーフィーチャリング“シリアス”サンボーン」の登場である。

INSIDE-2 ただし『ソングス・フロム・ザ・ナイト・ビフォア』に続いて,昼のデヴィッド・サンボーンではなく夜のデヴィッド・サンボーン,夏のデヴィッド・サンボーンではなく秋のデヴィッド・サンボーンを聴かせられると,正直,複雑な思いに駆られてしまう。

 “天才”マーカス・ミラーの大名盤だと『インサイド』を褒めつつも,マーカス・ミラーデヴィッド・サンボーンの「内面を掘った」JAZZYでブラックな“シリアス・サンボーン”の“泣きのブロー”は今までのイメージと違うんだよなぁ。

 デヴィッド・サンボーンにはストリートにとどまっていてほしかった!

  01. Corners (for Herbie)
  02. Daydreaming
  03. Trance
  04. Brother Ray
  05. Lisa
  06. When I'm With You
  07. Naked Moon
  08. Cane
  09. Ain't No Sunshine
  10. Miss You

(エレクトラ/ELEKTRA 1999年発売/AMCY-2967)
(ライナーノーツ/佐藤英輔)

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坂東 慧 / STEP BY STEP!4

STEP BY STEP!-1 坂東慧ソロ・アルバム『STEP BY STEP!』を買った。
 『HAPPY LIFE!』を聴いてみて,坂東慧をもってしても,フュージョン・バンドのソロ・アルバムは「母体を越えられない法則」は破られなかったので,本当に買うつもりはなかったのだが,社交辞令などではなく安藤正容伊東たけしLIVEのMCで心から大絶賛していたので,突然,聴いてみたくなった。

 …で結論。やっぱりフュージョン・バンドのソロ・アルバムは「母体を越えることはできない」の持論に変更なし。ただし,T−スクェアにおける坂東慧の存在の大きさを改めて感じ取ることができたのは大収穫!

 ズバリ『STEP BY STEP!』は,見事に『TREASURE HUNTER』の“外典”しているではないかっ! やっぱり坂東慧こそが「Mr.T−SQUARE」なのであった。

 『STEP BY STEP!』のレコーディングは2セット。「BANDOBAND」の坂東慧の世界観をストレートに伝えるバンド・サウンドと「レジェンド」たちが感じたままに演奏するスクェアメロディーがカップリングされている。

 この2セットの“個性の違い”こそが『STEP BY STEP!』最大の聴き所。2方向を同時に追求する坂東慧の異なるアプローチが最高に面白い。
 坂東慧の作曲も編曲も,スーパー・ドラムソロもリズム・キープも「人が変われば世界も変わる」。同年代とレジェンド,日本人バンドと海外の大物スター,東京とLA,共演者で曲の雰囲気が変わったのか,はたまた共演者に合わせて坂東慧が変わったのか,クレジットを見比べながら聴き込む『STEP BY STEP!』が実に興味深い。

 そう。『STEP BY STEP!』の印象は,先にも書いたがアルバム1枚通して聴くと『TREASURE HUNTER』の“外典”が強いのだが,2セットに分けて聴くと「BANDOBAND」サイドの演奏は,サックス宮崎隆睦ベース田中普吾が入っているせいなのだろう『WONDERFUL DAYS』や『SMILE』といった「T−SQUARE SUPER BAND」をイメージする瞬間がある。

 一方の「レジェンド」サイドの演奏は,サックスエリック・マリエンサルブランドン・フィールズギターマイケル・ランドウキーボードフィリップ・セスという鉄壁の布陣ゆえに『FRIENDSHIP』『BRASIL』『NEW ROAD, OLD WAY』といった「ユニット体制」のスクェアだったり『SOLITUDE』『REFRESHEST』『MISS YOU IN NEW YORK』『T COMES BACK』といった「AND FRIENDS」のスクェアを想起してしまう。

STEP BY STEP!-2 いい曲がある。いい演奏がある。『HAPPY LIFE!』に【BOUNDLESS SKY】があるように『STEP BY STEP!』には【PLAISIR 〜喜び〜】がある。
 でもそれでも坂東慧の『STEP BY STEP!』は,「BANDOBAND」サイドに振れても「レジェンド」サイドに振れても,結局はT−スクェアの“外典”止まり。
 この点で公式に「ニセスクェア」を名乗っている本田雅人ソロ・アルバムとは趣きが決定的に違っている。

 管理人は坂東慧の,才能に胡坐をかかない,生真面目で努力を怠らないフュージョンスピリッツが大好きである。
 だから坂東慧ソロ・アルバムがどうにも物足りない。いっその事,本田雅人バリに“偽物”でもいいのではないかっ。

 次だ次だ。坂東慧よ,次こそはT−スクェア本体を超えて来い! 君なら出来る!

PS1 『STEP BY STEP!』が『TREASURE HUNTER』の“外典”であるならば『LET’S MOVE』は『SMILE』の“外典”なのか? 気になって買ってしまいそうになる今日この頃〜。
PS2 安藤“錦織圭”正容さん,96年振りとなるオリンピックでの銅メダル獲得,おめでとうございます!
PS3 どうせ『STEP BY STEP!』を買うのならスクェアLIVE会場で買って坂東くんのサイン会に参加すればよかった〜。

  DISC 1 <SUPER AUDIO CD HYBRID>
  01. Sunset Blvd.
  02. Headin' to Laguna Beach
  03. Feel So Good!
  04. next season
  05. 旅に出よう!
  06. Pretty Dance
  07. bb Freeway
  08. Step By Step!
  09. Plaisir 〜喜び〜

  DISC 2 <DVD>
  01. Headin' to Laguna Beach ミュージックビデオ
  02. 坂東慧によるライナーノーツコメント

(オレンジレディ/ORANGE LADY 2016年発売/OLCH-10005〜6)
(ライナーノーツ/坂東慧)
★SACDハイブリッド盤+DVD 2枚組
★音匠仕様レーベルコート

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デヴィッド・サンボーン / ソングス・フロム・ザ・ナイト・ビフォア4

SONGS FROM THE NIGHT BEFORE-1 イエーイ! デヴィッド・サンボーン待望のファンキー路線・復活〜!
 しかし,諸手を挙げて喜ぶことなどできない。『SONGS FROM THE NIGHT BEFORE』(以下『ソングス・フロム・ザ・ナイト・ビフォア』)について語ることは好きではない。

 なぜなら『ソングス・フロム・ザ・ナイト・ビフォア』はファンキー・チューンのオンパレードなのだが,聞いていても楽しくない。デヴィッド・サンボーンの様子がどうもおかしい。一言で言えば暗いのだ。

 ノリ一発というよりも渋いファンキー路線であって,思索的な演奏である。デヴィッド・サンボーンの内奥の気持ちが耳に入ってこない。もしかしてスランプなのか? あの大作=『パールズ』で調子を崩してしまったのか?

 まぁ『ソングス・フロム・ザ・ナイト・ビフォア』でデヴィッド・サンボーンが演ろうとした試みは容易に想像がつく。『ソングス・フロム・ザ・ナイト・ビフォア』の狙いは“COOL”なるファンキーであろう。

 きっとデヴィッド・サンボーンは若者受けする“アゲアゲ”の対極として,アダルトなファンキー路線に進出したかったのだと思う。「枯れ」のデヴィッド・サンボーンにも大きな魅力があることを“サンボーン・キッズ”は認めている。

 ただし,腹心の音楽監督=リッキー・ピーターソンが復活させた“ファンキー・サンボーン”は,かっての面影が残らないくらいまで,根こそぎ洗練されている。
 “アゲアゲ”からアダルトへ向けて削るべきマテリアルの中で,削るべきではないデヴィッド・サンボーン特有の“旨味”まで削ってしまっている。その結果,新しいアプローチなのに,どこにでもあるようなファンクフュージョンになってしまっている。

 この点でついに“蜜月関係”を解消したマーカス・ミラーの不在が痛い。デヴィッド・サンボーンの希望とはいえ,リッキー・ピーターソンの打ち込みビートはドライすぎて軽く感じる。

SONGS FROM THE NIGHT BEFORE-2 管理人の結論。『ソングス・フロム・ザ・ナイト・ビフォア批評

 『ソングス・フロム・ザ・ナイト・ビフォア』の黄昏というかセピア色というか,青春を謳歌した後の“ファンキー・サンボーン”のロスタイムの印象で,ついつい淋しさを覚えてしまう…。

 もはや黄金期のように,全力で“ファンキー・サンボーン”できないことを自覚してのモデル・チェンジなのだろう…。淋しい…。
 そう。『ソングス・フロム・ザ・ナイト・ビフォア』の真実とは,デヴィッド・サンボーンの「ヴィンテージ・ファンク」なのである。

  01. RELATIVITY
  02. D.S.P.
  03. RIKKE
  04. LISTEN HERE
  05. SPOOKY
  06. MISSING YOU
  07. RUMPLESTILSKIN
  08. INFANT EYES
  09. SOUTHERN EXPOSURE

(エレクトラ/ELEKTRA 1996年発売/WPCR-858)
(ライナーノーツ/工藤由美)

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カシオペア・サード / I・BU・KI5

I・BU・KI-1 「カシオペア・サード」が「カシオペア・ファースト」とも「カシオペア・セカンド」とも違うのは,一言で言えば「オルガン・サウンド」の導入にある。昨日までそう思っていた。

 野呂一生の活動再開に対する「熱い血潮」がビンビン伝わってきた「3rd1st」=『TA・MA・TE・BOX』。カシオペア「史上最大級」の自由すぎるリズムがビンビン伝わってきた「3rd2nd」=『A・SO・BO』。

 「カシオペア・サード」を聴く最大の楽しみは,向谷実キーボード大高清美キーボードの対比にあった。
 煌びやかなシンセサイザーが消え,ノリが持続するオルガンが加わることで「科学変化を起こした」バンドの新サウンド・カラーが楽しみであった。

 ただし「3rd3rd」となる『I・BU・KI』での変化は『TA・MA・TE・BOX』『A・SO・BO』の比ではない。「サード」での変化は大高清美オルガンだけが原因ではないのだ。

I・BU・KI-2 そう。『I・BU・KI』では,キーボード大高清美が前任の向谷実とチェンジしただけではなく,ギター野呂一生が以前の野呂一生ではなくなり,ベース鳴瀬喜博が以前の鳴瀬喜博ではなくなり,ドラム神保彰が以前の神保彰ではなくなっている。

 ついにメンバーの4人が4人とも「サード」になって,以前とは違った音の表情を見せている! ついに「カシオペア・サード」としての新しいバンド・カラーが「3rd3rd」で芽生えている!
 だから『I・BU・KI』であり【ME・ZA・ME】なのだろう。

( ただし【ME・ZA・ME】はオルガンではなく,かつてのカシオペアを彷彿とさせる,煌びやかなシンセ・サウンド。大高清美向谷実を演じても「ザ・大高清美」に聴こえるところが素晴らしい! )。

I・BU・KI-3 ズバリ『I・BU・KI』の聴き所は,バンド・サウンドの枝葉の部分ではなく幹の部分での大きな変化である。1,2回聴いただけでは体感できないが,10回も聴けば絶対に体感できる,カシオペア・サウンドの“大きなうねり”と“地殻変動”!

 もはや誰にも止められない,野呂一生でさえも止めることのできない“動き始めたバンド・サウンド”! これぞ「息吹き」! カシオペアの『I・BU・KI』!

 野呂一生が『TA・MA・TE・BOX』で“種を蒔き”『A・SO・BO』で“水を注いだ”「カシオペア・サード」のサウンドが『I・BU・KI』で胎動を始めた。急速な成長が始まった。

 より自由度が増したと言うか,年齢的な余裕みたいなものが感じられる。真面目にやっているが遊び心が上手くブレンドされている。

I・BU・KI-4 『I・BU・KI』における「カシオペア・サード」成長の原動力は,神保彰鳴瀬喜博大高清美が抱く野呂一生への“リスペクト”にある。

 『I・BU・KI』で貫かれている野呂一生の揺るぎないロック・スピリッツ。そんな野呂一生に魅了された神保彰鳴瀬喜博大高清美野呂一生が演じるロックを表現している。みんながきちっとロックしている。とことん“カシオペア野呂一生”を表現している。
 そう。「カシオペア・サード」は今,最高に素晴らしい信頼関係で結ばれているバンドの1つであろう。

 そんなメンバーからの絶大な信頼を一身に受けてプレイする野呂一生ギターが物凄くグッと来るんだよなぁ。管理人はそんな野呂一生が大好きなんだよなぁ。
 再び訪れた野呂一生の創作意欲のピーク期に「カシオペア・サード」の黄金期を重ね見る!

  CD
  01. ME・ZA・ME
  02. MOVE BY MOVE
  03. J.K.G.
  04. LIFE LINE
  05. Funk U Very Much☆
  06. PREMEDITATION
  07. LIKE A FLOWER
  08. NATURAL AFFECTION
  09. Flash!
  10. THE SPACE WE ARE
  11. WHITE TICKET

  BONUS DVD
  01. A・O・ZO・RA
  02. MODE TO START
  03. BACKTALK BABE
  04. Making & Interview_1
  05. ORGANIC EVOLUTION
  06. SMASH!
  07. Making & Interview_2
  08. GOOD LUCK!
  09. TAKE ME
  10. EYES OF THE MIND
  11. Making & Interview_3
  12. ASAYAKE
  13. PAL
  14. CATCH THE WIND

(ハッツ・アンリミテッド/HATS UNLIMITED 2016年発売/HUCD-10221/B)
(☆BLU−SPEC CD2+DVD仕様)
(☆スリップ・ケース仕様)
★16Pブックレット
★特典DVD:「LIVE CD Release Premium Live at Billboard Live TOKYO」の14曲の映像を完全収録

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デヴィッド・サンボーン / サンボーン・ベスト!〜ドリーミング・ガール4

SANBORN BEST!〜DREAMING GIRL-1 またまた普段めったと買わないベスト盤のレヴューです。ベスト盤を2枚も所有しているジャズメンは数えるほどなので,管理人がいかにデヴィッド・サンボーンに惚れ込んでいたかが分かっていただけると思います。そこんとこよろしくです。
 まっ,実際は「未発表音源入り」なので買っただけなんですけどね〜っ。

 『SANBORN BEST!〜DREAMING GIRL』(以下『サンボーン・ベスト!〜ドリーミング・ガール』)は,エレクトラ移籍後の4枚『ANOTHER HAND』『UPFRONT』『HEARSAY』『PEARLS』からのセレクション。
 この4枚を1枚にコンパイルして感じるのが,やはり『PEARLS』の“異質”ぶり。

 多分,世間的には,この4枚を並べてみると『PEARLS』ではなく『ANOTHER HAND』なのでしょうが,ストレート・ア・ヘッドジャズ・アルバム『ANOTHER HAND』と“アゲアゲ”ファンクグルーヴな『UPFRONT』『HEARSAY』の“根っこ”は同じ。

 対して『PEARLS』は,甘くロマンティックな歌もの集。描く世界観が全然違う。
 朗々と“美メロを吹き上げる”デヴィッド・サンボーンの命を削るかのような説得力が強烈すぎて『PEARLS』の中に秘められているパンチ力は,もしや『UPFRONT』『HEARSAY』を凌駕している?
 
SANBORN BEST!〜DREAMING GIRL-2 3枚:1枚のジャズファンク時代の構図の中で『サンボーン・ベスト!〜ドリーミング・ガール』のリリースのために新録音された【DREAMING GIRL】が『PEARLS』の援軍に回っている。
 『PEARLS』の“異端”ぶりが山下達郎松嶋菜々子のアシストで救われた〜。

 POPS&ROCK方面の「昔取った杵柄」で山下達郎以上に“歌い上げる”デヴィッド・サンボーンの正体とは,日本独自企画盤の『サンボーン・ベスト!〜ドリーミング・ガール』!

  01. DREAMING GIRL
  02. BANG BANG
  03. EVERYTHING MUST CHANGE
  04. BACK TO MEMPHIS
  05. FIRST SONG
  06. SAVANNA
  07. TRY A LITTLE TENDERNESS
  08. FULL HOUSE
  09. GOT TO GIVE IT UP
  10. SUPERSTAR
  11. HOBBIES
  12. SMOKE GETS IN YOUR EYES
  13. BENNY
  14. GEORGIA ON MY MIND

(エレクトラ/ELEKTRA 1996年発売/WPCR-762)
(ライナーノーツ/小川隆夫)

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デヴィッド・サンボーン / パールズ4

PEARLS-1 ジャズメンにとっての“憧れのフォーマット”が「ウィズ・ストリングス」であろう。
 ジャズ畑出身のデヴィッド・サンボーンなのだから,いつかは「ウィズ・ストリングス」という野望が頭の片隅にあったのかもしれない。

 しかし,ついに登場したデヴィッド・サンボーンの「ウィズ・ストリングス」アルバム『PEARLS』(以下『パールズ』)を聴いて,これはデヴィッド・サンボーンの意思ではなく,周りの人間がデヴィッド・サンボーンにセールス目当てで作らせたアルバムだと感じた。
 管理人の直感が正しかろうと間違っていようと,今となっては関係ない。そう感じてしまったことが全てである。だから『パールズ』の演奏自体は大名演なのだけど,好きという感情以前に「踏み込めない壁」というか「違和感」を感じてしまって…。

 そう。『パールズ』が“ジャズっぽくアウトしまくる”『アナザー・ハンド』の直後であれば,管理人もそれなりに納得できたと思う。しかし『パールズ』は『アップフロント』『ヒアセイ』での“アゲアゲ・サンボーン”の大ヒット直後…。予想外だった…。
 『アップフロント』『ヒアセイ』で“GROOVE”の楽しさを知ってしまったデヴィッド・サンボーンが,今更「ウィズ・ストリングス」に興味を持つとは思えなかった。
 だ〜って,メイシオ・パーカーが「ウィズ・ストリングス」に興味を持つとは思えないでしょ?

 デヴィッド・サンボーンというアルト・サックス・プレイヤーは,オリジナルを吹くにしてもカヴァーを吹くにしても,本質は所謂メロディー吹きである。
 その意味で『パールズ』のような,バラードスタンダードな「ウィズ・ストリングス」と来れば“ピシャリ”であろう。

 そう。『パールズ』が出来すぎている。「ウィズ・ストリングス」が出来すぎている。全ては“超大物”トミー・リピューマの音楽である。『ダブル・ヴィジョン』の頃のトミー・リピューマの音楽が“君臨”している。

 ゆえに『パールズ』のデヴィッド・サンボーンの役所は「一介のアルト・サックス・プレイヤー」にすぎない。“泣きのブロー”で叫べば叫ぶほど,デヴィッド・サンボーンの個性から離れてゆき「ウィズ・ストリングス」の美しさが際立つ算段である。

 ズバリ『パールズ』とは「ムーディーすぎる」バラード集であり,ポップスやジャズスタンダードの「甘すぎる」カヴァー集。
 管理人が『パールズ』に,デヴィッド・サンボーン以外の上からの力,を感じたのは『パールズ』のこのセッティングにある。

PEARLS-2 ではなぜデヴィッド・サンボーンはセールス目当てと分かった上で『パールズ』の企画に乗ったのだろうか?
 それはデヴィッド・サンボーンなしに,この豪華企画は成立しないと感じたからではないだろうか? あるいはこのゴージャスなバック・サウンドを他の誰にも渡したくない,という欲が出たのかもしれない。

 『パールズ』は『ダブル・ヴィジョン』の大成功があっての“渋目のムード・サックス”である。こんなにも美しく豊穣な「ウィズ・ストリングス」はデヴィッド・サンボーンでなければ作れやしない。
 「商業主義」の『パールズ』を認めるのはくやしいけれど『パールズ』は数ある「ウィズ・ストリングス」ものの中でも上位に来るべき優秀作品に違いない。

 管理人の結論。『パールズ批評

 『パールズ』での「ウィズ・ストリングス」は,デヴィッド・サンボーンにとっての「夢のアルバム」ではない。トミー・リピューマにとっての「夢のアルバム」なのである。

 ただし『パールズ』の真実とはトミー・リピューマの先にある。
 つまりはバラードスタンダードな「ウィズ・ストリングス」なんて絶対に演らないだろうと思っていた“サンボーン・キッズ”にとっても,これまた「夢のアルバム」なのである。

  01. WILLOW WEEP FOR ME
  02. TRY A LITTLE TENDERNESS
  03. SMOKE GETS IN YOUR EYES
  04. PEARLS
  05. FOR ALL WE KNOW
  06. COME RAIN OR COME SHINE
  07. THIS MASQUERADE
  08. EVERYTHING MUST CHANGE
  09. SUPERSTAR
  10. NOBODY DOES IT BETTER
  11. THE WATER IS WIDE

(エレクトラ/ELEKTRA 1995年発売/WPCR-215)
(ライナーノーツ/小川隆夫)

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山中 千尋 / ギルティ・プレジャー5

GUILTY PLEASURE-1 『GUILTY PLEASURE』(以下『ギルティ・プレジャー』)はいいアルバムである。山中千尋の趣味の良さがストレートに実感できる。
 ついに山中千尋は,変態度を見せなくても,正攻法だけで勝負できる領域にまで到達してしまったのだと思う。

 管理人にとって山中千尋を聴く楽しみは,変態アレンジに尽きる。多くのジャズメンの「手垢のついた」有名なあんな曲こんな曲が,山中千尋の手にかかると,全く違った曲に生まれ変わる。その特異な才能,自由すぎる発想に強く惹かれてしまう。

 エレクトリック路線の『ABYSS』がそうであり“大人のジャズ・ピアニスト”路線の『BRAVOGUE』がそうであり,オリジナルのブチ壊し路線の『BECAUSE』がそうであった。好きなだけ遊び続けるちーたんに恋をしてきたのだ。

 それがどうだろう…。『ギルティ・プレジャー』の山中千尋は超真面目路線。管理人が期待していた変態チックな要素はないはずなのに,何度も繰り返し聴いてしまう。
 ズバリ『ギルティ・プレジャー』の聴き所は,ジャズ・ピアノを味付けではなく素材の良さで聴かせる,山中千尋「シェフ」の確かな腕前にある。

 メロディーの良さ,リズムの良さ,アドリブの良さ,アンサンブルの良さ,といった管理人がジャズに求める全ての要素が表現されている。
 山中千尋の緻密で繊細な表現手法が重なり合って,かつてない位に豊かな音楽性が表現されているのだ。

 元々「オールランダー」な山中千尋なのだがら『ギルティ・プレジャー』での「ザ・ジャズ・アルバム」なんかは,作ろうと思えば今回に限らずいつでも作ることができたはずである。なぜこのタイミングでの「正統派」路線なのだろうか?

 その答えは,山中千尋トリオが完成のピークに達した自信から来る“挑戦”なのだと思う。
 『ギルティ・プレジャー』のように,全体のバランスが細部までコントロールされたピアノ・トリオの完成には,相当な時間とエネルギーが必要だと思うが,そこはレギュラー・バンドのアドバンテージ!
 日々,山中千尋と“音楽で会話してきた”脇義典ベースジョン・デイヴィスドラムを“89番目と90番目の鍵盤のように”意のままに操り,山中千尋にしか表現することのできない,実にユニークで奥深いジャズ・ピアノを作り上げている。

GUILTY PLEASURE-2 こんなにもバランスの取れたアルバム作りは山中千尋にとっても初めてのことではなかろうか? 攻めでもなく受けでもなく,ひたすらジャズの「王道」で有り続けるために,己の個性と得意技全てを封印してみせたアルバム。
 そう。『ギルティ・プレジャー』は,キャリアのピークを迎えた今だから挑戦できた“左手一本で超真面目ぶった”山中千尋の,要するにいつものお遊びが存分に発揮された,正に真のちーたん・ファンのためのアルバムなのである。

 『ギルティ・プレジャー』からは「ピッカピカ」な輝かしい音が鳴っている。全身黒ずくめのはずの山中千尋が「フルカラー」で鳴っている。はたで聴いただけでは,これが“左手一本”のアルバムだとはにわかに信じられない。凄いぞっ!

 現在の山中千尋トリオは“左手一本”でも,名立たるピアノ・トリオと互角に戦うことができる。次回,山中千尋が右手も使って,あの変態の個性を爆発させる瞬間を想像するだけでヨダレが…。あぁ,ちーたん…。

 管理人の結論。『ギルティ・プレジャー批評
 …というか上原ひろみ山中千尋批評

 ミディアム・テンポ好きとしては上原ひろみではなく山中千尋こそが「日本の宝」なのだと思います!

PS1 『ギルティ・プレジャー』の成功の秘密は五十貝一氏の『EAST BROADWAY RUN DOWN』好きの影響があるのかも?
PS2 『ギルティ・プレジャー』の特典DVDに異議あり。なんでちーたんの顔出しNGなの? 横顔だけとか斜め45度では映像作品としてつまらない!

  DISC 1 CD
  01. CLUE
  02. GUILTY PLEASURE
  03. CAUGHT IN THE RAIN
  04. LIFE GOES ON
  05. THE NEARNESS OF YOU
  06. AT DAWN
  07. HEDGE HOP
  08. MOMENT OF INERTIA
  09. GUILTY PLEASURE REPRISE
  10. MEETING YOU THERE
  11. THANK YOU BABY

  DISC 2 DVD
  01. CAUGHT IN THE RAIN
  02. CLUE
  03. THE NEARNESS OF YOU
  04. AT DAWN
  05. RED DRAGONFLY

(ブルーノート/BLUE NOTE 2016年発売/UCCQ-9027)
★【初回限定盤】 SHM−CD+DVD

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デヴィッド・サンボーン / ベスト・オブ・サンボーン4

THE BEST OF DAVID SANBORN-1 サックス界のスーパー・スターとしては遅すぎる,デヴィッド・サンボーン初のベスト・アルバムが『THE BEST OF DAVID SANBORN』(以下『ベスト・オブ・サンボーン』)。

 「ベスト・アルバムは『無用の長物』。なぜならお気に入りのジャズメンのアルバムはオリジナルを全部集める主義」の管理人が『ベスト・オブ・サンボーン』を買ったのは,当時入手困難であった『夢魔』からの楽曲目的。
 『夢魔』の中から2曲選ばれた【夢魔へ】と【イッツ・ユー】は,以前から楽曲は聴いていたのだが,手元に未所有だったもので,ついつい禁断のベスト・アルバムに…。

 それにしても,なぜこのタイミングで『ベスト・オブ・サンボーン』。ワールド企画なのだが,個人的には日本市場向けのベスト・アルバムに思えて悔しかったかった。
 なぜなら『ベスト・オブ・サンボーン』のリリースが,缶コーヒー「GEORGIA」のTVCMで【ジョージア・オン・マイ・マインド】を吹くデヴィッド・サンボーンが大々的に放映されたジャストのタイミング。「便乗商法」を感じたものだから…。


THE BEST OF DAVID SANBORN-2 そしてこの選曲にも“売れ線”の色眼鏡を感じてしまいまして…。POP寄りでスムーズ系でバラード系が多く選曲された全16曲。
 微糖である。だから「GEORGIA」なのだろう。だから「TASTY」なのだろう。

 『ベスト・オブ・サンボーン』を聴きたくなくて『夢魔』のCDを後日購入させていただきました。

  01. Chicago Song
  02. The Dream
  03. Let's Just Say Goodbye
  04. Slam
  05. Lesley Ann
  06. Carly's Song
  07. Anything You Want
  08. A Tear For Crystal
  09. Over And Over
  10. It's You
  11. Hideaway
  12. Rain On Christmas
  13. Hideaway
  14. Lisa
  15. Neither One Of Us
  16. Lotus Blossom

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1994年発売/WPCR-131)
(ライナーノーツ/熊谷美広)

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お洒落なジャズトリオ & 海道美智恵 / ミッドナイト・ステージ4

MIDNIGHT STAGE-1 2002年11月に熊本県のとあるお店へ,山本英次ソロ・ピアノライブを数人の友人と数時間,車を飛ばして見に行った。
 自由席だったので管理人は山本英次ピアノの真横の座席を陣取った。
 そう。あの日のライブは音響など度外視して“ジャズ・ピアニスト山本英次のスーパー・テクニックを堪能するのが目的であった。

 1m以内の至近距離で観察する山本英次ピアノ・タッチは骨太であった。鍵盤をしっかりと押さえつけていた。ライブの後に山本英次と直接話する機会があったが「ピアノを鳴らしきることが大事」云々と語っていたのが,今でも記憶に残っている。

 …と山本英次の「超高音質」の秘密をのぞき見するために出掛けたソロ・ピアノライブだったのだが,途中からそんなことはどうでもよくなっていた。山本英次は“ジャズ・ピアニスト”だったのだ。

 記憶が定かではないのだが,多分,あれは何曲かをつなげたメドレーではなく,1曲の中の数小節を○○風に演奏するコーナーがあった。ジャズとかラテンとか,ノリをくるくる変えて演奏されていた。ジャズの楽しさを改めて体感して帰ってきた。

 その後の数日間は,山本英次ジャズ・アレンジが頭でくるくる〜。
 所有している『LULLABY OF PIANO MAN』『COFFEE BREAK WITH PIANO MAN』『TO FAZIOLI』のソロ・ピアノ3枚を聴き返してみたが,なんだか違う…。

 「お洒落なジャズトリオ」の『OJT IN KOBE』を聴く。ライブ盤だけあって,頭の中のモヤモヤが取れていく。うんうん。こんな感じのピアノだった。でも,ほんのちょっと違うかな。でも,もう『OJT IN KOBE』でいいや…。
 自分の中では終わった話だった。納得済の話だった。『MIDNIGHT STAGE』(以下『ミッドナイト・ステージ』)を聴くまでは…。

 『ミッドナイト・ステージ』と出会ったのは,管理人のオーディオ仲間でジャズ仲間のT君のお宅でのこと。実はT君。管理人の影響でオーディオにハマリ,ジャズにハマリ,山本英次に大ハマリ。今ではYPMCDコレクターと化している。最近はクラシックに傾倒しているようで,もはや管理人の手に届かない領域のマニアに到達している。

 そんな彼の100万円のオーディオ・システムで聴かされた『ミッドナイト・ステージ』の臨場感に,忘れていたはずの山本英次ソロ・ピアノライブを思い浮かべてしまった。胸を掻きむしられてしまった。
 今度は管理人が自宅に戻って『ミッドナイト・ステージ』をポチリ。

MIDNIGHT STAGE-2 『ミッドナイト・ステージ』の実にリアルな山本英次ピアノ吉田啓二ギター田野重松ベースの音色。この「超高音質」がなぜ無冠なの?
 そして海道美智恵ヴォーカルの生々しさ。肉声の再生能力が素晴らしい。T君のアコースティックで調整されたオーディオ・システムにKOされてしまったのだろう。

 ライブの感動を何度でも味わわせてくれるのが“オーディオの醍醐味”。『OJT IN KOBE』→『ミッドナイト・ステージ』で,山本英次ピアノを真横で聴いた『山本英次 IN 熊本』の感動が甦る。

 あっ,そう言えば『山本英次 IN 熊本』は山本英次ソロ・ピアノライブのはずだったのに,ゲストとして山本英次の息子=山本太郎クラリネットで出演していたよなぁ。
 海道美智恵ヴォーカル山本太郎クラリネットが被ってしまうのはそのせいなのかもしれないなぁ。

  01. 平成月見の舞
  02. サバ・ボサ
  03. シャイニー・ストッキング
  04. マガリバリ
  05. アズ・ロング・アイ・リブ
  06. 星に願いを
  07. バードランドの子守歌
  08. チェンジ・リズム
  09. プランツォ
  10. ミッドナイト・ステージ

(YPM/YPM 2001年発売/YPM-011)

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デヴィッド・サンボーン / ヒアセイ5

HEARSAY-1 デヴィッド・サンボーンは,基本,アルバム毎に異なるコンセプトに挑戦し続けるチャレンジャーである。
 それができるのも,絶対的な個性“泣きのブロー”を持つデヴィッド・サンボーンだからであろう。

 そんなデヴィッド・サンボーンが生涯に2枚だけ,前作と同じコンセプトの続編を制作したことがある。それが“ファンキー・サンボーン”の『A CHANGE OF HEART』を踏襲した『CLOSE−UP』と“アゲアゲ・サンボーン”の『UPFRONT』を踏襲した『HEARSAY』(以下『ヒアセイ』)である。

 この2枚の続編=『CLOSE−UP』と『ヒアセイ』の完成度が著しく高い!
 元ネタである『A CHANGE OF HEART』と『UPFRONT』が,それぞれセールス50万枚以上のゴールド・レコードを獲得した後の「これぞ“ファンキー・サンボーン”の完成版」「これぞ“アゲアゲ・サンボーン”の決定版」的な名演集なのである。素晴らしい。

 『ヒアセイ』にあって『UPFRONT』ないもの。それは「音場の拡がり」であろう。
 『UPFRONT』の“泥臭く土臭い”ジャズファンク路線は,本来のマーカス・ミラーのサウンド・カラーではなかったが『ヒアセイ』の見事なトータル・サウンドの構築力に「デヴィッド・サンボーンマーカス・ミラー」の“復活”を強く感じてしまった。

 そう。『UPFRONT』の魅力が“緩さ”にあったとすれば『ヒアセイ』の魅力は“カッコ良さ”。『ヒアセイ』のデヴィッド・サンボーンが“吹きまくり”で超カッコイイ〜!
 ファンクグルーヴに乗って「俺が主役だ」と主張するデヴィッド・サンボーンアルトサックスが先行し,続編ゆえに追随のレスポンスが上がったマーカス・ミラーが完璧にサポートしてみせる!

 いいや,実際にはマーカス・ミラーが,先の先へと手を打ってデヴィッド・サンボーンファンクグルーヴの「計算されたうねりのうず」へと誘い込んでいる!
 途中でハラハラ・ドキドキさせるリッキー・ピーターソンオルガンによる演出も,最後の最後は「丸くまとまる安心感」が“痛快”である。

HEARSAY-2 管理人の結論。『ヒアセイ批評

 『ヒアセイ』のサウンド・デザインに,どんなにどっぷりと浸かりきっても“目玉”であるファンクグルーヴにやられるのは腰だけ。上半身はいたって“COOL”。
 “アゲアゲ・サンボーン”の“感情大爆発”をこんなにも冷静に楽しめるアルバムは『ヒアセイ』をおいて他にはない。

 「デヴィッド・サンボーンマーカス・ミラー」の比類のないバランス感覚。『ヒアセイ』で極まりけり!

  01. Savanna
  02. The Long Goodbye
  03. Little Face
  04. Got To Give It Up
  05. Jaws
  06. Mirage
  07. Big Foot
  08. Back To Memphis
  09. Ojiji
  10. Georgia On My Mind

(エレクトラ/ELEKTRA 1994年発売/WPCR-12)
(ライナーノーツ/松下佳男)

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お洒落なジャズトリオ / お洒落なジャズトリオ IN 神戸4

OJT IN KOBE-1 またまた「超高音質」の話題で申し訳ない。演奏がダメだということでは決してない。
 しかし,山本英次を,そして「お洒落なジャズトリオ」を語ろうと思うと,音楽の良さとか演奏の良さの前に,どうしても「音の良さ」にフォーカスを当ててしまうことになる。

 「お洒落なジャズトリオ」のライブ盤『OJT IN KOBE』(以下『お洒落なジャズトリオ IN 神戸』)も「STEREO」誌2000年度「最優秀録音第2位」受賞の「超高音質」盤。
 管理人的にはオーディオ・マニアが部屋に遊ぶに来た時の大体の1枚目が『お洒落なジャズトリオ IN 神戸』の存在意義である。

 「お洒落なジャズトリオ」とは,ピアノ山本英次ギター吉田啓二ベース田野重松による,所謂,オールド・ピアノ・トリオ
 ドラムレスゆえ,大人し目のジャズスタンダード集に聴こえるのだが,リズム楽器としてのギタースイング感に与える役割は絶大であって,偶然ではなく,山本英次の「超高音質」ピアノ・トリオにマッチした,必然のオールド・スタイルなのである。

 だ〜って,山本英次こそ「知る人ぞ知る」存在であるが,吉田啓二? 田野重松? それって誰状態の「お洒落なジャズトリオ」なのだから,ライブであってもソロが前面に突出しない,テーマ重視のピアノ・トリオ
 素直に楽器の魅力を,素直に楽曲の魅力を伝えることをモットーとしている節がある。これぞ「超高音質」録音の最適ソースなのだと思う。

 客席のざわめきなど意に介さない,楽器のすぐ隣りにセッティングしているであろうマイクが拾った音源がゾクゾクくる。ピアノの弦,ギターの弦,ベースの弦のこすれ具合がリアルすぎて,これは顕微鏡で拡大したような音である。実物以上に響かせている。

 そう。『お洒落なジャズトリオ IN 神戸』の聴き所は,ピアノの弦,ギターの弦,ベースの弦の“語らい”である。
 きれいに分離した3つの楽器の音が全部ハッキリ聴き取れるから“会話のような演奏”に聞こえてしまう。インタープレイのやり取りが,手探りではなく,手に取るように見えるので,タネ明かしなしの臨場感に溢れたライブならではの迫力を感じる。
 大袈裟に言えば,セッティングされたマイク位置に設けられた,会場の最前列よりも最前列の特別豪華観覧席で生音を聴いているかのような,最高に贅沢な音楽会!

 ノン圧縮,ノンフィルター録音ゆえに,アンプのボリュームを上げて聴くのがとっても楽しい『お洒落なジャズトリオ IN 神戸』。この「超高音質」がオーディオ・マニアの心をくすぐるんだよなぁ。クセのない生音とクセのない演奏を両立させてしまいたくなるんだよなぁ。
 オーディオ・マニアの友人たちは,我が家からの帰り道,早い人で当日中に『お洒落なジャズトリオ IN 神戸』を注文しているんだよなぁ。

OJT IN KOBE-2 そうして自宅でオーディオ・チェックを繰り返しているうちに,友人たちも管理人と同じく「ミイラ取りがミイラになる」経験をしている。
 純粋に「音の良さ」を追い求めていただけだったのに,いつしか「超高音質」ではなく,山本英次の“音楽的なピアノ”に魅了されてしまったが最後,ピアノ中心のチューニングのせいで,全体のバランスが狂い始めてしまう。
 管理人はそれでも,そんな自分にムチ打って頑張って抵抗してきた方だと思う。でも,良い音を追及したい,という自分をついにどこかであきらめてしまった。

 「お洒落なジャズトリオ」のお三方には大変失礼な表現と思うが“個性の薄い”『お洒落なジャズトリオ IN 神戸』と出会って,オーディオ・マニアとしては後退してしまったが,デフォルメされていない“真水の”ジャズスタンダードの面白さが以前よりも分かるようになったと思う。この「心境の変化」に1人大喜び!
 だ〜って,オーディオって,音楽の楽しさを伝えるための道具じゃん!

 なお,紹介が最後になってしまったが,山本英次吉田啓二田野重松の「お洒落なジャズトリオ」は,時にオールド・ピアノ・トリオ・スタイルから,コルネットバンジョーチューバの「“変則”○○トリオ」に変身してしまう(【BASIN STREET BLUES】)。

 このコルネットバンジョーチューバの音色も最高すぎて,本職真っ青のスーパー・オーディオの世界が広がている〜っ。

  01. MILLENNIUM BLUES
  02. GIRL FROM IPANEMA
  03. AUTUMN LEAVES
  04. MISTY
  05. ELEGANT TIME
  06. THE GIFT
  07. FOREVER MORE
  08. HEARTFULL PARTY
  09. BLACK ORPHEUS
  10. BASIN STREET BLUES

(YPM/YPM 2000年発売/YPM-010)

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デヴィッド・サンボーン / アップフロント5

UPFRONT-1 ついに“アゲアゲ・サンボーン”の大登場! 「裏名盤」の『UPFRONT』(以下『アップフロント』)批評である。

 デヴィッド・サンボーンファンクグルーヴのウネリに乗って,硬派なアルトを“下品に”吹き散らかす!
 ただそれだけなのだが,ストリートに潜って,ついついコブシが回ってしまった?粘っこい“サンボーン節”は,メイシオ・パーカーとは対極の位置に座す,別種の頂点に達しているように思う。

 良しにつけ悪しきにつけ『アップフロント』は「泥臭い」。骨太でシンプルなビートとメロディー。感情の高まりをストレートに表現したノリ一発のジャズファンクに腰が動いてしまう。
 デヴィッド・サンボーンが,ひたすらファンクグルーヴを追及した演奏スタイルが強烈すぎて,緻密なバック・サウンドにまで耳が追いつき難いのだが,個人的にはデヴィッド・サンボーンの“アゲアゲ”以上に,NYシティ系の典型であったマーカス・ミラーの音楽性の変化が気になってしまった。

 マーカス・ミラーが“白いファンクネス”なら,リッキー・ピーターソンは“黒いファンクネス”である。黒人なのに「白」のマーカス・ミラーと白人なのに「黒」のリッキー・ピーターソンの共演が,南北横断で和洋折衷っぽい,ファンクグルーヴの魅力である。

 完璧主義者のマーカス・ミラーが理性を失ってしまうほど,リッキー・ピーターソンの“黒いファンクネス”にハマッテしまったのか? スティーヴ・ジョーダンSOULに憑りつかれてしまったのか?
 『アップフロント』には,そんなマーカス・ミラーについて初めて不安を感じていた鮮明な思い出がある。

 そう。マーカス・ミラーの「サラサラ」な血液とリッキー・ピーターソンの「ドロドロ」な血液が入り混じる,キレと粘りの“アゲアゲ・サンボーン”が最強! アクセルを踏みっぱなしだから見ることのできた,デヴィッド・サンボーンの「血潮のたぎり」!
 デヴィッド・サンボーンの,イっちゃった感のあるヒリヒリしたテンションのアルトサックスに,一種の腫れ物的な熱気を感じてしまう。

 小難しいことなど考えずに,ただHIPでPOPな『アップフロント』に身を委ねて聴き続けていると…。これが意外にも硬派で複雑なフレーズで埋め尽くされていることに気付くようになる。そう。いつしか,前作のジャズ・アルバム『ANOTHER HAND』からの影響を感じるようになる。

 本能の赴くままにアルトサックスを吹き散らかしても『ANOTHER HAND』に通じるアドリブの世界を感じてしまう。
 JAZZYなメタルが響き渡ることによって,ダンサブルでロマンティック度の高い『アップフロント』=「メイシオ・パーカーへの切り札」が完成したのではないだろうか?

UPFRONT-2 「蛇使い」なアドリブでヒーヒー言わす【SNAKE】。R&Bのソウルが爆発するバラード・ナンバーの【BENNY】。エリック・クラプトンの【FULL HOUSE】よりもリチャード・ティーコーネル・デュプリーの【SOUL SERENADE】。今や沼澤尚の十八番な【BANG BANG】。オーネット・コールマンの【RAMBLIN’】で跳ねまくる“アゲアゲ・サンボーン”こそが「裏名盤」!

 得意の打ち込みを控えてアナログ・メインなジャズ系の生音を可能にしたのが『アップフロント』におけるマーカス・ミラーの“緩さ”にある。
 普段では決して見せることのない「デヴィッド・サンボーンマーカス・ミラー」の“緩さ”に『アップフロント』の価値がある。

 まっ,そうは言っても,マーカス・ミラーのノー・チョッパーの指弾きベースと組んだスティーヴ・ジョーダンのタイトでジャンプするドラムリッキー・ピーターソンのシンプルなハモンドオルガンの低音ビートが“グイグイ”脳内に入って来ますよ〜!

 『アップフロント』『ヒアセイ』での“アゲアゲ・サンボーン”こそが,聴いていて最高に楽しいデヴィッド・サンボーン〜!

  01. snakes
  02. benny
  03. crossfire
  04. full house
  05. soul serenade
  06. hey
  07. bang bang
  08. alcazar
  09. ramblin'

(エレクトラ/ELEKTRA 1992年発売/WMC5-493)
(ライナーノーツ/寒川光一郎)

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山本 英次 / トゥーファツィオリ5

TO FAZIOLI-1 オーディオ・システムを再び組むことが許されるのなら,アンプマッキントッシュアキュフェーズスピーカーJBLBOSEで悩むことだろう。そしてSACDプレーヤーは…。
 しかしオーディオ・チェック用CDだけは悩まない。山本英次ゴールドCD仕様盤『TO FAZIOLI』(以下『トゥーファツィオリ』)である。

 ズバリ『トゥーファツィオリ』こそが,山本英次の「超高音質盤中の超高音質盤」。ピアノの音色を聴いて,心が震えるほど感動した経験は,後にも先にも『トゥーファツィオリ』の1回きり。
 『トゥーファツィオリ』こそが,管理人の心の中の“良い音の基準”となっている。『トゥーファツィオリ』が良い音で鳴らなければ,それは良いオーディオ・システムではないのだと思う。『トゥーファツィオリ』が「“良い音の基準”のその基準」となっているのだ。

 そんな『トゥーファツィオリ』の“絶対基準”を可能としたのが,ピアニスト山本英次のテクニック,レコーディング・エンジニアの「赤坂工芸音研」の石渡義夫の「匠の技」,そして今回の主役であるイタリアの名器=ファツィオリのフルコンサート・グランド・ピアノ,F278の並外れた能力,その三大要素の「プロフェッショナルすぎる融合」にある。

 ピアノは打楽器である。右手と左手が時に別々に,時に同時に鍵盤を鳴らす。問題となるのは鍵盤を押すタイミングと押す力加減である。
 純粋にピアノの音色が美しいと思う最右翼はミシェル・ペトルチアーニである。こう書けば納得されるだろうが,ハーモニーの是非を瞬時に判断できるのが,神が授けたミシェル・ペトルチアーニの「特殊能力」の1つである。

 ミシェル・ペトルチアーニが“天賦の才”なら,山本英次は“ピアノへの愛”である。
 山本英次ピアノを聴いていると,時折,セロニアス・モンクをイメージしてしまうことがある。セロニアス・モンクは真面目にユニークな音楽を追及した巨人の1人であるが,特にピアノの響きを一日中研究していた,というエピソードが山本英次とダブルことがある。

 こんな風に叩けばこんな音が出る。こんな角度で,こんなタイミングで,こんな強さで…。
 そう。山本英次の“ピアノへの愛”が,ピアノをいかに美しく鳴らすか,のモチベーションなのであろう。ピアノの響きというか,低音だけでなく,高い音を弾いても,低音弦が共鳴してピアノのボディに響く音が伝わってくる。まるで目の前でピアノを弾いてもらっているかのような錯覚に陥る瞬間もしばしば…。
 ただし山本英次が「調律師」で決定的に異なるのは,ピアノの音は音楽となって初めて輝くことをわきまえているからと思う。大好きなジャズを表現するための道具としての「ピアノ職人」。これが“ジャズ・ピアニスト山本英次の真髄なのである。

 山本英次の「きれいなピアノ」の音を録りたい。最高の音質で記録しておきたい。そんな自然の欲求につき動かされた人物が,レコーディング・エンジニア界の「神7」の1人,石渡義夫であった。
 高音質録音といっても,単にクリアーで抜けが良く, 鮮度が高ければ高音質録音であるとは言い切れない。対象は音楽。演奏されているサウンドは最も大切な要素,そして音楽的なバランスも重要だ。アンバランスな要素は音楽を台無しにしてしまう。

 そこで石渡義夫がこだわったのが“ホールの響き”である。石渡義夫は,音の気配,空気感をどれほどに忠実に録音するか,に命を懸けている。
 ピアノという楽器は,発音体に弦と反射板とがあり,直接音は弦から,間接音は反射板から生じる。当然微妙な位相差があり,マイクセッティングによっては濁った音になる。ゆえに,一本一本のマイクの位相を念入りに確認したとのこと。左右の定位だけではなく,前後の定位をも正確に記録することで,彫りの深い音になっていると思う。

 そう。レコーディング・エンジニア=石渡義夫の24BITデジタルHDDレコーディンの“入魂の音”が『トゥーファツィオリ』のソロ・ピアノに記録されているのだ。

TO FAZIOLI-2 そんな山本英次石渡義夫の熱心な仕事ぶりに素直に反応するのが,肝心要なフルコンサート・グランド・ピアノのF278。恐らくは有名なピアノ・コンテストでしかお耳にかかれない超高級ピアノが秘められた能力を大開放。
 チェンバロのように響版に伝わる弦のハーモニーがうまく混ざり合った音色がファツィオリの特長だと思うが,この華麗な響きと余韻の芳醇さの何と豊かなことであろう。いつ果てるとも知れぬ残響にファツィオリのハイ・ポテンシャルを聴いている気分がする。

 またファツィオリの別の特徴として,本当にピアニストや調律師の手に敏感に反応してしまうようでして,15曲目と16曲目の【不思議の国のアリス(テイク1)】【不思議の国のアリス(テイク2)】は,調律だけを変えた全く同じ演奏が録音されているのだが,調律の変化が演奏に与える影響の大きさを感じとれるのも聴いていて面白いと思う。

 『トゥーファツィオリ』の「超高音質」の保証とは「STEREO」誌1998年度「最優秀録音賞」受賞のゴールドCD盤。
 ジャズはやっぱり難しい,と感じている読者の皆さん。どうですか? オーディオからジャズに入ってみませんか?

  01. Softly As In A Morning Sunrise
  02. Am Ha Arets "SUGA"
  03. Summer Time in VENICE
  04. St. Louis Blues
  05. Stella By Starlight
  06. Alice In My Dream
  07. Lullaby Of Bay YOKOHAMA
  08. Autumn Leaves
  09. If I Had You
  10. Someone To Watch Over Me
  11. Mood Indigo
  12. Sweet Georgia Brown
  13. Alice And Flowers
  14. Dinah
  15. Alice In Wonderland (take 1)
  16. Alice In Wonderland (take 2)
  17. To FAZIOLI

(YPM/YPM 1998年発売/YPM-007)
(ゴールドCD仕様)

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デヴィッド・サンボーン / アナザー・ハンド5

ANOTHER HAND-1 『A CHANGE OF HEART』『CLOSE−UP』で“絶頂を極めた”デヴィッド・サンボーン
 “最高傑作”『CLOSE−UP』でデヴィッド・サンボーンは“燃え尽きた”のだと思う。やりたいことを全部やり尽くし,金も名誉も手に入れて,次なるモチベーションが見つからなかったのだと思う。

 そこでデヴィッド・サンボーンワーナー・ブラザーズを辞めて「自分探し」の旅に出た。実に3年間も沈黙した。“サンボーン・キッズ”としては待つのが辛かった。置き土産のような『CLOSE−UP』をよく聴いていたよなぁ。

 そうして,ついに発表された『ANOTHER HAND』(以下『アナザー・ハンド』)は,デヴィッド・サンボーン初のジャズ・アルバム。
 コマーシャルな世界から離れ,内奥の自分を確認するために旅に出たデヴィッド・サンボーンが,自分のルーツであるジャズ・アルバムを携えて帰ってきた。

 これまで「好きだ,好きだ」と公言していたけれども,管理人はデヴィッド・サンボーンをみくびっていたのだと思う。こんなにもジャズに“映える”アルトサックスを吹けるとは思っていなかった。“ジャズメン”デヴィッド・サンボーンを男として見直したのだった。
 へぇ〜,ジャズを演るとこんなにも変わるものなのか? これが管理人の『アナザー・ハンド』の第一印象である。だからタイトルが『アナザー・ハンド』になったのだ…。

 ジャズと言っても『アナザー・ハンド』は,4ビートの純ジャズスタンダード集ではない。激しいアドリブの応酬系でも,フリージャズでもない。
 デヴィッド・サンボーンオリジナルコンテンポラリージャズは,なんと!ECMから発売されてもおかしくないビル・フリゼールチャーリー・ヘイデンジャック・デジョネット等の「重鎮」が集まった“COOLな”ジャズ・ブルースであった。

 そう。デヴィッド・サンボーンのルーツはジャズだけでなくR&B。デヴィッド・サンボーンジャズを演ろうとすると“ブルース魂”が出てきてしまう。

 一般にジャズを演った『アナザー・ハンド』を異色盤と言われているが,管理人にとってデヴィッド・サンボーンの異色盤は『ささやくシルエット』と『パールズ』の2枚であって『アナザー・ハンド』は,後の『アップフロント』『ヒアセイ』へと続く「ジャズファンク路線」への“伏線”となっている。

ANOTHER HAND-2 『アナザー・ハンド』が,どうしてもフォーク調に偏って聴こえてしまうのはチャーリー・ヘイデンの存在にある。『アナザー・ハンド』のは同じベーシストとして“盟友”マーカス・ミラーも参加しているのだが『アナザー・ハンド』のベーシストは,断然,チャーリー・ヘイデンである。

 『アナザー・ハンド』のハイライトはチャーリー・ヘイデンの【FIRST SONG】。パット・メセニーゴンサロ・ルバルカバを魅了した,この名曲の最高バージョンがデヴィッド・サンボーンの【FIRST SONG】。
 ビル・フリゼールギター・サウンドは,パット・メセニーとは一味違うビターなギター。この浮遊感あるビル・フリゼールと相まみれるデヴィッド・サンボーンのトーンを押さえた“泣きのブロー”が大好物なのである。

 ずっとぼけたテンションでジャズっぽくアウトしまくる『アナザー・ハンド』のアルトサックスは,サンボーン嫌いのジャズ・ファンにも,ジャズ嫌いのサンボーン・ファンにとっても必聴盤なのですよっ。

 …と今振り返れば余裕の精神状態で『アナザー・ハンド批評を書いていますが『アナザー・ハンド』発売時点でのデヴィッド・サンボーンの“激変”には,流石の管理人も慌ててしまいました。あのままジャズメインストリームに突き進むことへの期待も当然ありましたが,期待以上に恐れと不安が強かったので『アップフロント』での“アゲアゲ・サンボーン”の登場に,ほっと胸を撫で下ろしたことを思い出します。

 その意味でデヴィッド・サンボーンの『アナザー・ハンド』は本田雅人の『ILLUSION』。これが『アナザー・ハンド批評の結論で〜す。

  01. First song
  02. moniCa jane
  03. come To Me, nina
  04. hObbies
  05. another Hand
  06. Jesus
  07. weirD from one step Beyond
  08. CEE
  09. medley:
    prayers for Charlie from the devil at four O'clock
    The lonely from the Twilight zone
  08. dukes & counts

(エレクトラ/ELEKTRA 1991年発売/WPCR-27468)
(ライナーノーツ/松下佳男)

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山本 英次 / コーヒーブレイク・ウィズ・ピアノマン4

COFFEE BREAK WITH PIANO MAN-1 山本英次は超一流の“ジャズ・ピアニスト”である。そしてボチボチの作曲家であり,一流の編曲家でもある。
 ゆえに『COFFEE BREAK WITH PIANO MAN』(以下『コーヒーブレイク・ウィズ・ピアノマン』)の聴き所は,有名ジャズスタンダードを「どんなアレンジで聴かせてくれるのか」なのだが,山本英次の場合はそれだけでは終わらない。
 山本英次の場合は「曲によってどのピアノで弾くべきか」であり「このピアノに合うのはこんな曲」なのである。

 ズバリ,山本英次を超一流“ジャズ・ピアニスト”にして一流の編曲家足らしめている秘訣が「楽曲とピアノのマッチング」である。演奏とアレンジの要素に「楽曲とピアノのマッチング」の優劣が考えられている。山本英次が“ピアノマン”という愛称で知られているのも納得である。

( 「お洒落なジャズトリオ」の場合,さらに吉田啓二ギター田野重松ベースという要素が加味されている。プロ・ミュージシャンとしては当然の仕事なのかもしれないが,バランスの良さが図抜けている。 )

 『コーヒーブレイク・ウィズ・ピアノマン』で登場するのは2台のピアノ。女性的なベーゼンドルファーと男性的なスタインウェイである。
 【テンダリー】がベーゼンドルファー,【ミスターサンドマン】がベーゼンドルファー,【ハロードーリー】がスタインウェイ,【ワットアディファレントアデイメイト】がベーゼンドルファー,【イグザクトリーライクユー】がスタインウェイ,【星に願いを】がスタインウェイ,【ミスジョーンズ】がベーゼンドルファー,【ハニーサックルローズ】がベーゼンドルファー,【サンデー】がベーゼンドルファー…。

 楽器としての「ピアノ通」の読者の皆さんはどうでしょうか? 管理人はこの「楽曲とピアノのマッチング」が100%大正解の選択肢だったと思っています。

COFFEE BREAK WITH PIANO MAN-2 ベーゼンドルファースタインウェイの「聞き比べ」を可能とする,同じ録音器材,同じマイクロフォン,そしてセッティングも極力同条件でのレコーディング環境が『コーヒーブレイク・ウィズ・ピアノマン』の“売り”である2台のピアノの音色の違いを浮き上がらせている。

 『コーヒーブレイク・ウィズ・ピアノマン批評の最後に「スイングジャーナル」誌96年8月号からの引用を…。
 「これほどピアノと言う楽器の魅力を見事にとらえたジャズ・アルバムを聴いたという記憶はまったくない」。管理人も超高音質の部分については同感である。

 でも,超高音質=山本英次のブランドも,VENUSの「ハイパー・マグナム・サウンド」が出てからは興味なくしてしまったんだよなぁ…。
 そして『コーヒーブレイク・ウィズ・ピアノマン』の主役は,ピアノそのものであってジャズではないんだよなぁ…。コーヒーブレイクのBGMなんだよなぁ…。

  01. バラのささやき
  02. テンダリー
  03. ミスターサンドマン
  04. サンセットウィスパー
  05. お散歩
  06. グリーンヒルラグ
  07. 願い
  08. ハロードーリー
  09. ワットアディファレントアデイメイト
  10. イグザクトリーライクユー
  11. 星に願いを
  12. ミスジョーンズ
  13. ブルースフォーチャーリー
  14. ハニーサックルローズ
  15. 花束とドラ焼き
  16. サンデー
  17. グッドバイピアノマン
  18. グッドバイピアノマン Take 2

(YPM/YPM 1996年発売/YPM-004)

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デヴィッド・サンボーン / チェンジ・オブ・ハート5

A CHANGE OF HEART-1 デヴィッド・サンボーンの『HEART』三部作とは,名盤HEART TO HEART』 → 大名盤STRAIGHT TO THE HEART』 → 超名盤A CHANGE OF HEART』(以下『チェンジ・オブ・ハート』)。
 そう。『チェンジ・オブ・ハート』こそが『HEART』三部作の完結作! …というか(管理人は『CLOSE−UP』派なのですが)『CLOSE−UP』と人気を二分するデヴィッド・サンボーンの“最高傑作”の1枚である!

 どうですか! この豪華すぎるサポート・メンバー。ベースキーボードギターマーカス・ミラーを筆頭に,ギターハイラム・ブロックカルロス・リオスニッキー・モロキベースアンソニー・ジャクソンピアノドン・グロルニックシンセサイザーフィリップ・セスロニー・フォスターマイケル・センベロバーナード・ライトジェイソン・マイルスドラムスティーヴ・ガッドスティーヴ・フェローンジョン・ロビンソンパーカッションポウリーニョ・ダ・コスタミノ・シネルEWIマイケル・ブレッカー…。

 またまたどうですか! マイケル・コリーナマーカス・ミラーロニー・フォスターフィリップ・セスの4人が同時投入された凄腕プロデューサー陣…。

 フュージョン界のオール・スター・キャストを1人で率いるデヴィッド・サンボーン。前作『STRAIGHT TO THE HEART』から3年4か月もファンを待たせてしまうデヴィッド・サンボーン。大物である。スーパー・スターである。

 そう。『チェンジ・オブ・ハート』でのデヴィッド・サンボーンは,フュージョン・サックス・プレイヤーの「枠」を飛び越え,世界一のサックス奏者としての「絶対的な自信」が“音の表情”に表われている。

 要はイケイケで無敵の「絶頂期」のデヴィッド・サンボーン・サウンドである。4人のプロデューサーの個性豊かで「強すぎるバック・サウンド」を“サンボーン節”一発で,自分の音としてまとめ上げる高トルクでハイパワー。毎朝,体内にパワーが漲ってくるのだろう。とにかく若々しく,ギラツイタ,メタルなサックスが超カッコイイ。

A CHANGE OF HEART-2 『CLOSE−UP』の目玉は“ファンキー・サンボーン”の代表曲【CHICAGO SONG】。“夏到来”のテーマ曲【SUMMER】。大バラード曲【THE DREAM】のビッグ3!

 詳しくは書かない。とにもかくにも【CHICAGO SONG】【SUMMER】【THE DREAM】を聴いて,踊り狂い,とめどなく続く感動に大泣きしてほしい。

 『チェンジ・オブ・ハート』からはデヴィッド・サンボーンの「ドヤ顔」が聴こえてくる。そんな愛すべきアルバムである。

  01. Chicago Song
  02. Imogene
  03. High Roller
  04. Tintin
  05. Breaking Point
  06. A Change Of Heart
  07. Summer
  08. The Dream

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1987年発売/32XD-631)
(ライナーノーツ/松下佳男)

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山本 英次 / ララバイ・オブ・ピアノマン4

LULLABY OF PIANO MAN-1 ジャズ好きとはオーディオ好きと同義語である。
 電源にまでこだわるマニアは別として,管理人はオーディオに無関心なジャズ・ファンをジャズ・マニアとは認めていない。

 ブランフォード・マルサリスによれば「ジャズとは繰り返し聴き返されて,2年や3年ではなく25年かけて売れる音楽」。これ名言&至言!
 管理人的には「形として記録されない芸術」としてのライブ演奏こそが,ジャズの醍醐味,だと思うのだが,CDなしのジャズ・ライフなど考えられないし…。つまりは生音を再現するための音質が重要だという主張でご理解を…。

 それで本題! 「きれいなピアノ」と来れば山本英次である。
 山本英次の場合は,オーディオ雑誌の「STEREO」誌や「AUDIO ACCESSORY」誌だけではなく,ジャズ雑誌の「SWING JOURNAL」誌でも「最優秀録音賞」を受賞しているのだから,ピアノに限定せずに「きれいなジャズ」と呼んでも差し支えない。

 山本英次ピアノを聴いていると「心が洗われる」。真に「いい音」を聴いていると(集中の反対としての)リラックスできる。
 …というよりも「最優秀録音賞」のピアノの音色に耳をそばだてようと,真剣にスピーカーなりヘッドフォンなりに向かうのだが,どうしても集中力が切れてしまう。何十回チャレンジしてもアルバム1枚最後まで集中することなどできなかった。これって?

 そう。これこそが山本英次の最大の魅力である。ピアノの音質にではなく,音楽そのものに自然と注意を向けてしまう“ピュアでナチュラルな”ジャズ・ピアノなのである。

 その意味ではジャズというよりも,ピアノ寄りでオーディオ寄りの性質が強い『COFFEE BREAK WITH PIANO MAN』『TO FAZIOLI』は後回しにして,山本英次の1枚目は純粋にムーディーなソロピアノ集として楽しめる『LULLABY OF PIANO MAN』(以下『ララバイ・オブ・ピアノマン』)が良いと思う。

 『ララバイ・オブ・ピアノマン』で,高音質録音が実現した“絶対条件”とは山本英次の“愛情と優しさに満ちた”ピアノ・タッチがあればこそ!

LULLABY OF PIANO MAN-2 こんなにも優しいジャズスタンダードの【二人でお茶を】【この素晴らしき世界】は聴いたことがない。こんなにもお茶目な“変則”【アリス・イン・ワンダーランド】は聴いたことがない。

 そう。山本英次の枕詞は「きれいなピアノ」の前に“ジャズ・ピアニスト”である。ジャズのリズムやハーモニーを突き詰めると“うっとりするほど”美しいものなのだと思う。

PS 音楽的な性質の強い『ララバイ・オブ・ピアノマン』も,そこは山本英次「印」の名録音盤。オーディオ・チェック盤としても評価の高いベーゼンドルファーグランドピアノの重厚な音粒,柔らかくしかも迫力の低音,そして厚みのある中音,また粒だちのある立体的な音像の高音を聴くことができますよっ。

  01. 誓い
    ララバイ・オブ・ピアノマン組曲
  02. Aマイナーセブン
  03. ララバイ・オブ・ピアノマン
  04. アリス・イン・マイ・ドリーム
  05. テイク・イット・イージー
  06. 二人でお茶を(ティーフォートゥー)
  07. 春の日本組曲 蝶々 さくら
  08. この素晴らしき世界
  09. スイート・ロレイン
  10. ノクターン(愛情物語)
  11. 5フィート2インチ
  12. ひきしお
  13. ララバイ・オブ・ピアノマン テイク2

(YPM/YPM 1995年発売/YPM-003)

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デヴィッド・サンボーン / ストレイト・トゥ・ザ・ハート5

STRAIGHT TO THE HEART-1 前回の『BACKSTREET批評で書いたのだが『STRAIGHT TO THE HEART』(以下『ストレイト・トゥ・ザ・ハート』)を,デヴィッド・サンボーンの“総決算”とする世評は間違いである。

 そう。ノリノリで大盛り上がりの『ストレイト・トゥ・ザ・ハート』は,従来の“メローサンボーン”の「集大成」などではなく,新たなる「サンボーン伝説」の始まりを告げるライブ盤であった。
 『HIDEAWAY』寄りではなく『A CHANGE OF HEART』『CLOSE−UP』へと続くデヴィッド・サンボーン「絶頂期」の幕開けを告げるライブ盤なのである。

 『ストレイト・トゥ・ザ・ハート』を“総決算”だと語るサンボーン・ファンは選曲を見てのことだろう。確かに『ストレイト・トゥ・ザ・ハート』は,大人気ヒット・パレード集のライブ盤である。
 しかし『ストレイト・トゥ・ザ・ハート』で披露された新アレンジは,ただただ“FUNKY”!

 ついに『ストレイト・トゥ・ザ・ハート』で“ファンキー・サンボーン”の本質が解放されてしまった! マーカス・ミラーに“ファンキー・サンボーン”の「蛇口をひねられてしまった」!
 ファンキー&ダンサブルで大人気ヒット・パレード集の“上塗り”完了! もはやスタジオ盤のオリジナル・バージョンなど聞かなくてもよい。熱狂的なサンボーン・ファンにそう思い込ませてしまう「伝説」のライブ盤に「頭パッカーン」!

 この全ては“天才”マーカス・ミラーの大仕事である。哀愁のアルトを“白いファンクネス”に乗せてしまっている。
 そう。リッキー・ピーターソンが“黒いファンクネス”ならマーカス・ミラーは“白”。白の理由はマーカス・ミラーの“冷静な”音楽眼にある。
 デヴィッド・サンボーンの“緩急自在のアドリブ”をファンキーでタメの効いたボトムで「理路整然」と固めている。

 【HIDEAWAY】と【RUN FOR COVER】でのマーカス・ミラーベース・ソロは,楽曲をリードするテクニカルなベース・ソロ
 マーカス・ミラーが本気を出せば,現代の“超絶系”ベーシストも“お顔真っ青”なパッツンパッツンの早弾きにして,いつしか「起承転結」なサビが仕掛けられていることに気付いてしまう。超カッコイイ!
 世の「ベース小僧」にこぞってコピーされてきた2フィンガーからの“チョッパーの嵐”に驚喜乱舞! 「パンチラ野郎」のマーカス・ミラーがついに見せた「パンモロ」に大興奮!

 そうして,ここからが管理人が書きたいマーカス・ミラーの“天才”なのだが,あんなに激しいベース・ソロを弾いている間でも,ドラムのタムやギターのカッティングを注意深く聴いていると思える節がある。マーカス・ミラーは「起承転結」のベース・ソロを構築しながらも,常に他のメンバーとの音楽的な調和を忘れてはいない。
 いや〜,凄いぞマーカスマーカス・ミラーが凄すぎる〜!

 大バラードの【STRAIGHT TO THE HEART】におけるマーカス・ミラーベース・ラインを耳で追いかけてほしい。
 序盤はデヴィッド・サンボーンアルトサックスをシンプルのサポートしているだけであるが,デヴィッド・サンボーンが熱くなると同時にマーカス・ミラーチョッパーを繰り出してくる。
 バラードに“煽る”チョッパーがこんなにも合うなんて実にCOOL! デヴィッド・サンボーンの良さが格段と引き立てられた中盤のリフがGROOVY! バラードなのに相当に熱い!

STRAIGHT TO THE HEART-2 ズバリ『ストレイト・トゥ・ザ・ハート』でのマーカス・ミラーベースは「スーパー・チョッパーベーシスト」以上に「プロデューサーのベース・サウンド」として響いている。

 “ファンキー・サンボーン”としての,新たなる「サンボーン伝説」はマーカス・ミラーなしでは成立しない。マーカス・ミラーの不在など考えられない。
 ゆえに(ボブ・ジェームスと共演した『DOUBLE VISION』があるにはあるが)次作『A CHANGE OF HEART』のリリースまでに3年4か月。この空白の理由はマイルス・デイビスによるマーカス・ミラーの「引き抜き」期間そのまんまである。

 ズバリ『TUTU』におけるマイルス・デイビスマーカス・ミラーへの「おんぶにだっこ」は『ストレイト・トゥ・ザ・ハート』の「副産物」。
 マイルス・デイビスの目に留まった『ストレイト・トゥ・ザ・ハート』のマーカス・ミラーは『WE WANT MILES』『STAR PEOPLE』の頃の“最強チョッパー・ベーシスト”していたマーカス・ミラーではなかった。
 “天才”サウンド・クリエイターとしてのマーカス・ミラーなのである。

 それにしてもデヴィッド・サンボーン・クラスのビッグネームのライブ盤が『ストレイト・トゥ・ザ・ハート』1枚のみとはおかしくないのか? “ファンキー・サンボーン”期のライブであれば,最高レベルの音源がゴロゴロしているはずでしょうに…。

 「SELECT LIVE UNDER THE SKY」の88年,90年,91年はマーカス・ミラー名義,92年で計4枚。ワーナーさん。

  01. HIDEAWAY
  02. STRAIGHT TO THE HEART
  03. RUN FOR COVER
  04. SMILE
  05. LISA
  06. LOVE & HAPPINESS
  07. LOTUS BLOSSOM
  08. ONE HUNDRED WAYS

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1984年発売/WPCR-3563)
(ライナーノーツ/松下佳男,谷頭康夫)

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ExhiVision / ExhiVision4

EXHIVISION-1 キーボード難波弘之ギター和田アキラフレットレスベース永井敏己ドラム長谷川浩二が「EXHIVISION」の名のもとに「凄腕集結」。
 ただし「凄腕集結」への思いは「4人4様」であって,残念ながら和田アキラにとって「EXHIVISION」は“エキシビジョン”のまんまであった。

 そう。浅田真央のエキシビジョン・マッチの如く,和田アキラにとって「EXHIVISION」は,公式試合ではなくエキシビジョン・マッチ。過剰な装飾フレーズの多い,ショーアップされた演奏が多いように思う。
 「EXHIVISION」を経験した和田アキラの思いは,改めて「PRISM」一本槍〜。

 ズバリ「EXHIVISION」の真実とは,難波弘之和田アキラによる“双頭”メタル・プログレッシブ・フュージョン・バンドではなく,難波弘之主催の“第3のバンド”である。

 難波弘之と来れば「SENSE OF WONDER」と「野獣王国」であるが,どちらもポップでありロックでありプログレな一面が“売り”であった。
 そう。「EXHIVISION」は,これまでの難波弘之に欠けていたフュージョン系の活動拠点となるべき母体。「EXHIVISION」の音楽性が,基本ポップでロックになるのは難波弘之の音楽性の特徴なのである。
 歌もののメロがプログレ・フュージョンのエレメンツで演奏されるのが「SENSE OF WONDER」や「野獣王国」との違いであろう。その意味で“期待以上でも期待外れでもない”予想通りの「EXHIVISION」の音ってどうなんだろう…。

EXHIVISION-2 尤も,演奏面では和田アキラがガンガン。“プログレ・フュージョンの鬼”のようなラウドするギターである。
 プログレ・フュージョンの模範演奏は和田アキラだけではない。管理人は「EXHIVISION」で,フレットレスベース永井敏己ドラム長谷川浩二を初めて聴いたのだが,永井敏己渡辺建を,長谷川浩二木村万作を聴き重ねてしまった。

 だから,個人的には難波弘之が「PRISM」的なメンバーを集めたのには違和感が残る。
 結局の所,テクニカルな歌ものが欲しいのなら難波弘之和田アキラのように後ろに下がって,細かいフレーズを滑らかに紡ぐ永井敏己フレットレスベースを前面に出した,メロディアスなプログレ・フュージョンを聴いてみたかった。

 とにかく「EXHIVISION」の1st『EXHIVISION』の収穫は永井敏己である。永井敏己渡辺建への“夢を”託したい。

  01. SCENT OF NOVA
  02. DOUBLE DOWN
  03. ICEBOUND
  04. OTHER SIDE
  05. NIGHT VIEW
  06. 百家争鳴
  07. WINDYE
  08. FAERIE TALE
  09. WINDYE
  10. BASCULE BRIDGE

(しおさい/ZIZO 2013年発売/SHCZ-0047)
(紙ジャケット仕様)

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デヴィッド・サンボーン / バックストリート5

BACKSTREET-1 ソロデビュー以降の全アルバムがヒットを記録し,ヒット・チャートの1位を獲得,グラミー賞も受賞して「スター街道」を歩んできたデヴィッド・サンボーン
 そんなデヴィッド・サンボーンが「裏通り」を寄り道してみたのが『BACKSTREET』(以下『バックストリート』)である。

 ただし,デヴィッド・サンボーンの『バックストリート』は“原宿”の「表参道」ではなく「竹下通り」のような“雑踏フュージョン”である。
 つまり「裏通り」は「裏通り」でも実質は「メイン・ストリート」。文化の本当の中心がサブカルであるように「裏通り」の『バックストリート』が「デヴィッド・サンボーンマーカス・ミラー」の「裏の裏」→「王道」なのである。こんな逆転現象が最高に面白い!

 『バックストリート』のベーシック・トラックはマーカス・ミラーの打ち込みである。打ち込みだとバカにするなかれっ。
 マーカス・ミラーが準備した『バックストリート』は並みの打ち込みではない。「裏通り」の“雑踏”をモチーフにしたかのようなグルーヴを感じさせる,スティーヴ・ガッドドラムラルフ・マクドナルドパーカッションハイラム・ブロックバジー・フェイトンのリズム・ギターを取り入れた“生っぽい”打ち込みなのである。

 そう。『ストレイト・トゥ・ザ・ハート』に選曲された人気曲はないけれども『バックストリート』は『ストレイト・トゥ・ザ・ハート』「特需」など不要の大名盤
 『バックストリート』の幅広い音楽性,日陰なのに陽が当たるとカラフルに変化する音楽性こそ「デヴィッド・サンボーンマーカス・ミラー」の「蜜月状態」が生み落とした大名盤! 楽曲も演奏も全てが「裏通り」というテーマにピタッとハマッタ大名盤

 例えば【I TOLD U SO】での重厚なリズムは,都会の路地裏にまでは入り込むタクシーのエンジオン音であるし【BACKSTREET】は,ちょっと危険な夜中にたむろする若者たちの会話のようである。都会の喧騒こそが“サンボーン節”のカッコイイBGM…。
 ライブで取り上げるのは難しいだけ?

BACKSTREET-2 話の流れで脱線してしまうが“地味な”『バックストリート』に続く“派手な”『ストレイト・トゥ・ザ・ハート』が「デヴィッド・サンボーンマーカス・ミラー」の“総決算”として語られることが多いのだが,管理人としては『バックストリート』こそが『ハート・トゥ・ハート』以降のリアル・サンボーンの“総決算”だと断言する。

 『ハート・トゥ・ハート』で“栄光の三段跳び”のスタートラインについた“メローサンボーン”が『ハイダウェイ』でHOP〜『夢魔』でSTEP〜“孤高の”『ささやくシルエット』を飛ばして『バックストリート』で大JUMP!

 ズバリ『バックストリート』こそが,ジャズでもなくフュージョンでもなく,R&BでもAORでもない「デヴィッド・サンボーンマーカス・ミラー」という「ジャンル」の代表作である。間違いない。

  01. I TOLD U SO
  02. WHEN YOU SMILE AT ME
  03. BELIEVER
  04. BACKSTREET
  05. A TEAR FOR CRYSTAL
  06. BUMS CATHEDRAL
  07. BLUE BEACH
  08. NEITHER ONE OF US

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1983年発売/WPCP-3562)
(ライナーノーツ/青木和富,本多俊之)

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ExhiVision / BEYOND THE EARTHBOUND5

BEYOND THE EARTHBOUND-1 難波弘之和田アキラによる“双頭”メタル・プログレッシブ・フュージョン・バンド=「EXHIVISION」のライブ盤が『BEYOND THE EARTHBOUND』。

 管理人が初めて『BEYOND THE EARTHBOUND』を聴いた時,連想したのが「PRISM」の『UNCOVERED』。
 これが本当にライブ盤なのか? 緻密な質感がスタジオ録音を超える圧倒的な演奏力である。もしこの演奏をブラインド・テストで聴かされたら,まずライブ盤とは思わない。

 ただし,よ〜く聴くと,難波弘之の超人的なキーボードソロ和田アキラの超人的なギターソロ永井敏己の超人的なフレットレスベースソロ長谷川浩二の超人的なドラムソロから“殺気”のような緊張感が聴こえてくる。ストイックすぎるソロ廻しが爆発している。

 この緊張感漲るアドリブこそが,バンド・メンバーだけではなく,一音も聴き逃すまい,と集まった観客からのプラスのプレッシャー。『BEYOND THE EARTHBOUND』に記録された「ライブ盤としての証し」であった。

 だから余計に『BEYOND THE EARTHBOUND』の“完璧なるバンド・アンサンブル”に驚愕した。百戦錬磨の強者4人の“丁々発止”が書き譜のように連動している。4人の自由なアドリブのうねりが絡み合い,ついには自由度を失いバンド・サウンド化していく瞬間は“悶絶”ものである。

 特に自分中心の「PRISM」とは勝手が異なる,難波弘之中心の「EXHIVISION」の展開に“押し引きしながら”&“駆け引きしながら”自分のフレーズをねじ込んでいく和田アキラの“武骨なギター”に心を躍らされてしまう。
 一発触発の雰囲気を醸しつつ,きっちりとキーボードを下支えする和田アキラの荒々しいプログレッシブ“ジャズギター! 抑制された状態からの,ためにためた,和田アキラの下剋上に“ロック魂”ここにあり!

BEYOND THE EARTHBOUND-2 そう。「EXHIVISION」の“売りである”バカテク・メロディアスは,超絶までは達しない,余裕のあるスペース展開に秘密がある。

 空いた音空間を埋めるアイディアはメンバーの「意見交換の場」である。思い思いの自分のアイディアを「発言する権利」が与えられている。そこに「バンドの個性」が表われているのだから,自分の意見が取り入れられた“完璧なるバンド・アンサンブル”にも満足できるだろうし,仮に自分の意見がスルーされたとしても,他のメンバーの意見を邪魔しない展開に幸福感を覚えたことだろう。バンドが生み落とす一音一音のクリエイティブな作業に参加している意識があった…。

 こんなにスムーズなライブ演奏も珍しい。バンドの全員がサウンド・クリエイターの意識を持っている。だから実際には後ろに引いている時間も,気持ちの上では前に出ている。いいや,次の出番に備えて裏でパワーを蓄えている。

 『BEYOND THE EARTHBOUND』をステージで演奏していた,難波弘之和田アキラ永井敏己長谷川浩二の頭の中の音楽シナプスは“フル回転”していたに違いない。
 美しさや激しさといった楽曲本来が持つ魅力を充分に引き出した,最高クオリティのプログレッシブ・フュージョンが素晴らしい。

  01. BEYOND THE EARTH
  02. OTHER SIDE
  03. Lilith
  04. DOUBLE DOWN
  05. Touch 419
  06. ICE BOUND
  07. Politician
  08. FAERIE TALE
  09. DEUCE DRIVE -ActII-

(ユニバーサル・ミュージック/UNIVERSAL STRATEGIC MARKETING 2008年発売/UICZ-4184)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/橋雅人,和田アキラ,難波弘之,永井敏己,長谷川浩二)

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デヴィッド・サンボーン / ささやくシルエット5

AS WE SPEAK-1 世界一の“泣きのブロー”を個性とするデヴィッド・サンボーンなのだから,デヴィッド・サンボーンは「何を吹いてもデヴィッド・サンボーン」。
 しか〜し,基本は同じのデヴィッド・サンボーンほど,アルバム毎に違った表情を見せてくれるジャズメンもそうはいない。デヴィッド・サンボーンはチャレンジャーなのだ。

 「スタジオ・ミュージシャンのまんま」な『テイキング・オフ』。ソロ・アーティスとしての「自己主張」作『メロー・サンボーン』。「デヴィッド・サンボーン・バンド」の『流麗なる誓い』。「直球すぎる」アルトサックスの『ハート・トゥ・ハート』。ボーカル「封印」の『ハイダウェイ』。マーカス・ミラーに「引き出しを開けられてしまった」『夢魔』。
 オンリーワンの“サンボーン節”が,こんなにも変化するのだからたまらない!

 で,今夜の主役=『AS WE SPEAK』(以下『ささやくシルエット』)であるが,デヴィッド・サンボーンの全ディスコグラフィ中“孤高”のアルバムである。
 続く『バックストリート』が『ハイダウェイ』〜『夢魔』のラインに舞い戻った感じがするから余計に『ささやくシリエット』の“異質”が際立っている。

 『ささやくシルエット』の“突然変異”の最大要因は,従来のマイケル・コリーナレイ・バーダニマーカス・ミラーの手を離れたロバート・マーグレフによる新プロデュースが大きい。
 『ささやくシルエット』でのロバート・マーグレフの狙いは“サンボーン節”&男性ボーカルの「AOR」であった。

 クルセイダーズランディ・クロフォードと組んで大ヒットした【STREET LIFE】以降,フュージョンと女性ボーカルの組み合わせが試されてきた。デヴィッド・サンボーンもこれまでラニ・グローヴスパティ・オースティン等と共演してきたのだが,ロバート・マーグレフは“サンボーン節”にマイケル・センベロという新たな才能をぶつけてきた。

 このマイケル・センベロこそが,マーカス・ミラーリッキー・ピーターソンに次ぐ,デヴィッド・サンボーンにとっての重要人物。まっ,理由は後の【THE DREAM】なのだから…。
  
 『ささやくシルエット』でのマイケル・センベロが「AOR」。マイケル・センベロギターも弾くが,これがまたマーカス・ミラーオマー・ハキムの鉄壁のリズム隊と相性バツグンのカッティングで,R&B寄りだった“サンボーン節”が一気に「垢ぬけたシティ系」に仕上がっている。

 デヴィッド・サンボーンには珍しくソプラノサックスを多用しているのもロバート・マーグレフ効果なのか,とにかく『ささやくシルエット』が,デヴィッド・サンボーンが一番グローヴァー・ワシントンJR.に近づいたアルバムである。

AS WE SPEAK-2 オープニングの軽快な【ポート・タウン・セレナーデ】に始まり,慌しい都会の動きを表現した【ラッシュ・アワー】。夕暮れが摩天楼に映える【ストレイト・トゥ・ザ・ハート】など「都会的なオシャレ」を凝縮したかのようなアルバム作りで全曲名曲。

 そんなデヴィッド・サンボーン初の“5つ星”名盤=『ささやくシルエット』の中核を成すのが「AOR」の【バック・アゲイン】。【バック・アゲイン】でのマイケル・センベロの活躍なくして“フュージョン・男性ボーカリスト”は誕生していない。

 そう。「何を吹いてもデヴィッド・サンボーン」が『ささやくシルエット』で吹いたのは,あの時代のフュージョン・サックス → これが近未来のスムーズ・ジャズだったのかっ!?
 82年リリースにして,すでにバブリーな『ささやくシルエット』のジャケットでの「逆三角形のいかり肩の肩パット」が“アーバン・ストリーム”の象徴になるのであろう。

  01. PORT OF CALL
  02. BETTER BELIEVE IT
  03. RUSH HOUR
  04. OVER AND OVER
  05. BACK AGAIN
  06. AS WE SPEAK
  07. STRAIGHT TO THE HEART
  08. RAIN ON CHRISTMAS
  09. LOVE WILL COME SOMEDAY

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1982年発売/WPCP-3561)
(ライナーノーツ/岩浪洋三)

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クオシモード / ワンセルフ・ライクネス4

ONESELF-LIKENESS-1 こう書けば“分かる人には分かる”と思うが,クオシモードペズソイルとは違っている。

 管理人も以前は「PE’Z」も「SOIL&“PIMP”SESSIONS」も聴いていた。あれはあれで結構好きだったので,今でも否定的な考えは持っていない。
 ただし,ジャズ・ファンが「PE’Z」や「SOIL」を敬遠したくなる気持ちは理解できる。「PE’Z」や「SOIL」を大音量のステレオで聴くのはどうかと思ってしまうし,ヘッドフォンで聴くのも違う。

 「PE’Z」や「SOIL」はジャズではない。結局,管理人にとっては真剣に耳を傾けるのが難しい「ストリート系・インスト・ミュージック」。だから管理人も全てのコレクションを処分した。自分の趣味ではないと思った。

 …で,クオシモードである。クオシモードの第一印象は“とにかく暴れる”パーカッションクオシモードジャズではなかった。すぐにクオシモードも「中古CD屋行き」の予感がしたのを覚えている。

ONESELF-LIKENESS-2 しかし,クオシモードペズソイルと違っていたのは「PE’Z」や「SOIL」は,最初はいいと思うのだが段々と落ちていく。聞けば聞くほど飽きがくるのに対し,クオシモードは聞けば聞くほど面白い。ウオーッ,クラブ・ジャズっていいではないかっ!

 クオシモードデビューCDONESELF−LIKENESS』(以下『ワンセルフ・ライクネス』)は,4つ打ちのリズムを分解し,アフロ・キューバン的な要素をCOOLに再構築した,クラブ寄りのハードバップ。
 クオシモードの基本は,正統派のピアノ・トリオパーカッションにゲスト参加のホーンなのだが“生き物のような”多彩なパーカッションが楽曲に合わせて変化するので,楽曲を楽しめるかどうかは,聴き手の側がパーカッションの自由度を理解した上で,あるレベルを超えられるかどうか,にかかっている。

ONESELF-LIKENESS-3 …というのも“とにかく暴れる”パーカッションに耳が慣れてきた途端に,今度は平戸祐介の“内へ内へと沈み込む”ジャズ・ピアノの響きが飛び込んでくるようになる。

 平戸祐介のストイックな音使いを追いかけていると,管理人の中のクラブ・ジャズに対するイメージが混乱をきたす。こんなにまとまりのよいメロディーが拝聴されることなくリズムと一緒に聞き流されている…。

 でも,ある瞬間「今のチョー・カッコイイ!」と脳内プレイバックしてしまう。フロアの足が止まる時,平戸祐介のニヒルなニヤリが目に浮かぶ…。

  01. Catch the fact - intro
  02. Down in the village
  03. Giant Black Shadow
  04. 1000 days for spirit
  05. Lucky Luciano
  06. Ipe Amarelo
  07. Skelton Coast
  08. Feelin' Green
  09. oneself - LIKENESS
  10. Catch the fact - outro

(インパートメント/INPARTMAINT 2006年発売/IPM-8007)
(ライナーノーツ/小川充)

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デヴィッド・サンボーン / 夢魔4

VOYEUR-1 デヴィッド・サンボーンと来ればマーカス・ミラーであり,マーカス・ミラーと来れば【RUN FOR COVER】である。
 ゆえに『VOYEUR』(以下『夢魔』)について語ろうと思う時,そんなデヴィッド・サンボーンの代表曲にしてマーカス・ミラーの代表曲でもある【RUN FOR COVER】を外すわけにはいかない。

 しかし『夢魔』は【RUN FOR COVER】のアルバムではない。グラミー受賞曲の【ALL I NEED IS YOU】のためのアルバムなのである。
 事実,管理人が『夢魔』を聴く時,もう何年も【ALL I NEED IS YOU】の1曲だけしか聴いてはいない。

( 【RUN FOR COVER】について語られるべきは『夢魔』ではなく『STRAIGHT TO THE HEART』収録の【RUN FOR COVER】。【RUN FOR COVER】については『STRAIGHT TO THE HEART批評の中でじっくりと…。 )

 『夢魔』でのデヴィッド・サンボーンは,機械的にファンクしつつも,マーカス・ミラーの準備した「きらめくアーバン・グルーヴ」をバックに“くどいくらいにエモーション”することが「自分のアイデンティティ」と考えていたのだろう。
 軽快すぎるオケをバックに,人間味ある「泥臭い」“サンボーン節”の一大ショーケースを披露している。そういう意味では【RUN FOR COVER】であり【LET’S JUST SAY GOODBYE】が『夢魔』のショーケースと言えるだろう。

 最初から最後まで“サンボーン一色”に染め上げられた『夢魔』だったから,逆にボーカルを前面に押し出した【ALL I NEED IS YOU】におけるマーカス・ミラーの“仕掛け”にデヴィッド・サンボーンが惚れ込んだ!

 とことんソフトでメロディアスな“サンボーン節”には,ワンフレーズで曲を“呑み込む”強さがある。それがどうだろう…。

VOYEUR-2 【ALL I NEED IS YOU】での,ボーカルアルトサックスの「まさかのハーモニー」は,もはや掛け合いではなく「デュエット」である。ついに“あの”デヴィッド・サンボーンが「究極の歌伴」を演ったのだ。

 落ち着いたトーンで優しく愛撫されているかのような“エモーショナル・サンボーン”は【ALL I NEED IS YOU】が,管理人の初めての体験であった。

 灰汁が強すぎて,他には使いようのなかった“泣きのブロー”を「透明化&万能細胞化」してしまったマーカス・ミラーの“剛腕ぶり”!
 POPS寄りだったデヴィッド・サンボーンを,R&Bやソウル,ファンクに寄せたフュージョンサックスの流れるようにリズムに乗りきった豊かな音色が“輝いている”!

 そう。フュージョン・サックスの「巨匠」として,いじりようのない存在と思われていたデヴィッド・サンボーンが,未だ新人同然だったマーカス・ミラーに「引き出しを開けられてしまった」のだ。
 これこそがデヴィッド・サンボーンマーカス・ミラー“夢のコラボレーション”の真価であり,後に「哀愁のアルトを白いファンクネスに乗せてしまう」こととなる。

  01. Let's Just Say Goodbye
  02. It's You
  03. Wake Me When It's Over
  04. One In A Million
  05. Run For Cover
  06. All I Need Is You
  07. Just For You

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1981年発売/WPCR-28022)
(ライナーノーツ/松下佳男)

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