アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

CD

本多 俊之 / リード・マイ・リップス4

REED MY LIPS-1 デビュー当時は“フュージョンサックス・プレイヤー”として鳴らしていた本田俊之だったが『マルサの女』の大ヒット以来,多国籍音楽のリリースばっかり。
 そんなルーティーンを打ち破って,本田俊之が久々にリリースしたフュージョン・アルバムが『REED MY LIPS』(以下『リード・マイ・リップス』)である。

 しかも『リード・マイ・リップス』は,単なるフュージョン・アルバムではない。真にワールド・クラスのセッション・ミュージシャンが「本田俊之フュージョン」のために集結している。

 ドラムヴィニー・カリウタベースニール・スチューベンハウスギターマイケル・ランドウパーカッションマイケル・フィッシャートランペットジェリー・ヘイトランペットゲイリー・グラントアルトサックスラリー・ウイリアムステナーサックスピート・クリストリーブギター梶原順パーカッション横山達治 ETC

 『リード・マイ・リップス』は,LAフュージョンとJ−フュージョンの2つのセッション・チームに分かれて録音されているのだが,どっちがLAでどっちが国内だとか,そんな切れ目など感じられない。
 そう。『リード・マイ・リップス』の全9曲が,全て「本田俊之フュージョン」としか語れない。

REED MY LIPS-2 『マルサの女』と『リード・マイ・リップス』。音楽の出発点も終着点も雰囲気もまるっきり異なっている。でもそのどちらにも本田俊之サックスが色濃い。

 本田俊之サックスは,ハードに吹いてもソフトに吹いても,まろやかでいつも優しさに包まれる。
 なんだか,あのヴィニー・カリウタマイケル・ランドウでさえ,本田俊之と“笑顔で”セッションしている様子が音から伝わってくる。

  01. CRASH COURSE
  02. LA JOLLA
  03. INASE NIGHT
  04. MIND GAMES
  05. SIESTA
  06. FANCY FREE
  07. COMME CI, COMME CA
  08. HIGH SPEED CHASE
  09. 約束の夏〜Farewell my summer

(東芝EMI/WHO RING 1992年発売/TOCT-6702)

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フレディ・ハバード / ブレイキング・ポイント4

BREAKING POINT-1 フレディ・ハバードジャズ・メッセンジャーズから独立し,自分のグループで活動を始めたのが『BREAKING POINT』(以下『ブレイキング・ポイント』)からである。
 これまでは何だかんだと称賛されても,所詮雇われ稼業。自分の音楽を追及したかったフレディ・ハバードとしては遅咲きのスタートとなった。

 フレディ・ハバードソロとして活動するに当たり,意識したのは作曲であろう。初期のアルバムではさっぱりだったオリジナル曲が,次第にぽつぽつと入って来るようになり,フレディ・ハバードの体内で起きている変化を感じていたわけだが『ブレイキング・ポイント』を聴いて,完全に“作曲家”フレディ・ハバード推しなのが分かる。

 そう。フレディ・ハバードジャズトランペッターとしては超一流の人。コンポーザーとしてもなかなかの一流の人であろう。
 しかし,どうにもフレディ・ハバードには悪い意味での「軽さ」がつきまとう。紛れもない天才でありジャズ・ジャイアントの一人であるのに,いつでも選外。TOP10ではなくTOP20に位置する男。

 『ブレイキング・ポイント』を聴いていつも感じるのはフレディ・ハバードのマイナス面である。フレディ・ハバードは決定的にリーダー・シップが欠けている。
 『ブレイキング・ポイント』を録音していて「上手くいかない感。しっくりいかない感」をフレディ・ハバードは感じたのではなかろうか?
 ジャズ・メッセンジャーズと同レベルのメンバーと楽曲が揃っているのに,思い通りにまとまらない…。

 ここが超一流止まりのフレディ・ハバードと「マイスター」のアート・ブレイキー,あるいはマイルス・デイビスとの「差」なのであろう。
 バンドを締め付けないアート・ブレイキーとバンドを締め上げるマイルス・デイビス。それぞれタイプは真逆であるが強力なリーダーシップでバンドを引っ張り上げる“稀有な”存在感で共通する。
 嘘か誠か,これは真実なのだが,自分が演奏を休んでいる時間にもアート・ブレイキーマイルス・デイビスの音が聴こえるというものだ。

 『ブレイキング・ポイント』におけるフレディ・ハバードはどうだろう? 残念ながら,やっぱり存在が「軽い」。よく表現される実験盤にも達していない「中途半端なカッコ良さ」で終わっている。あと一歩突き抜けそうで突き抜けきれない。
 『ブレイキング・ポイント』を聴いて,これをフレディ・ハバードのアルバムだと認識できる人は少ないことだろう。フレディ・ハバードに欠けているのは,リーダー・シップの1点だけだが,これがジャズメンの資質としては想像以上に大きいのだ。

 だから管理人はメインを張るではなく,サイドメンに回った時のフレディ・ハバードの演奏が好きだ。フレディ・ハバードに関してはリーダー作ではなくゲスト参加のアルバムばかりを聴いてしまう。
 つまりはフレディ・ハバードの天賦の才とは「演奏する人」なのだ。演奏に特化された時のフレディ・ハバードトランペットは間違いなく最強であろう。

BREAKING POINT-2 極論を書けば『ブレイキング・ポイント』の真実とは,フレディ・ハバードが世間で受けそうだと思ったものを寄せ集めてきた「当時の流行最先端」なアルバムである。
 そこにフレディ・ハバードなりの明確なビジョンやコンセプトがあれば大ヒットとなったであろう。しかし『ブレイキング・ポイント』のベースにあるのは,まだまだジャズ・メッセンジャーズのメンバー,フレディ・ハバードとしてのジャズなのだ。

 管理人の結論。『ブレイキング・ポイント批評

 『ブレイキング・ポイント』には良くも悪くも“モーダルなフレディ・ハバード”がそこにいる。
 アート・ブレイキーとは違う“モーダル”を目指したのだろうが,表面上は新しいが根っ子の部分は伝統のジャズに支配されていて振り切れていない。

 一気に音楽性を変える難しさ。そして継続的に新鮮味を打ち出す難しさ。フレディ・ハバードも脱退して初めてアート・ブレイキーの「偉大さ」に気付いたに違いない。

  01. BREAKING POINT
  02. FAR AWAY
  03. BLUE FRENZY
  04. D MINOR MINT
  05. MIRRORS

(ブルーノート/BLUE NOTE 1964年発売/TOCJ-4172)
(ライナーノーツ/レナード・フェザー,原田和典,田原悠)

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富樫 雅彦 / スピリチュアル・ネイチャー5

SPIRITUAL NATURE-1 今では一般の日常語となった「スピリチュアル」という言葉はいつ頃から世間に定着したのだろう。恐らくは美輪明宏のあのTV番組のせいなのだろう。この世は「スピリチュアル」の花盛り。猫も杓子も「スピリチュアル」の文字を見る。

 しかし,巷に「スピリチュアル」がどんなに溢れようとも,管理人的には「スピリチュアル」と来れば『SPIRITUAL NATURE』(以下『スピリチュアル・ネイチャー』)一択! もはや30年以上前から「スピリチュアル」は来ていたのだ!

 そうして『スピリチュアル・ネイチャー』と来れば,次は富樫雅彦と来るのだろうが,管理人の場合は違う。
 確かに『スピリチュアル・ネイチャー』は富樫雅彦のリーダー・アルバムではあるが,このアルバムを「日本のジャズの金字塔」と紹介されることがあるように『スピリチュアル・ネイチャー』は,すでに富樫雅彦の手を離れて,70年代のフリージャズを総括したような1枚に位置にある。

 ズバリ『スピリチュアル・ネイチャー』の真髄とは,組曲にして,真にあらゆる束縛から解放されたジャズ。だからクリエイティブで自由なジャズ。つまりはフリージャズの範疇を超えている。

 専門的な書き方をするとフリージャズと『スピリチュアル・ネイチャー』のようなクリエイティブで自由なジャズとは別物である。
 フリージャズという言葉の響きからか,フリージャズとは「何でもあり」のように思えて,実はそうではない。インプロヴィゼーションとは違うのである。

 そう。『スピリチュアル・ネイチャー』は,フリージャズを出発点としたインプロヴィゼーションの組曲である。
 もう少しフリーに寄ってもインプロに寄っても,これほどまでに“崇高なジャズ”とはならなかったことであろう。難解さなど微塵も感じられない。組曲となる5曲の主旋律は全部,池田芳夫ベースが弾いているのだから…。

 管理人は思う。『スピリチュアル・ネイチャー』が成功したのはフリージャズを出発点としたしたからだと思う。
 富士登山にしても須走ルートとか御殿場ルートとかの登山口がある。勿論,登山口から出発しなくても頂上を目指すことは可能だが実際にはどうなのだろう。途中で下山することばかりであろう。
 それと同じで『スピリチュアル・ネイチャー』のような音楽は,ハード・バップやモード,新主流派から出発しても決して登頂できやしない。これまでジャズはそうやって多くの獣道を作ってきたわけであるが,そのどれもが8合目か9合目まで止まりだった。

 キース・ジャレットにしてもパット・メセニーにしても,そして富樫雅彦にしても,人生の中で一度は本気でフリージャズと格闘したからこそ,その上を経験することができた。9合目の「その先」を見ることができたのだ。

 『スピリチュアル・ネイチャー』のライナーノーツの中に富樫雅彦が見た「その先」についての記述がある。
 「フリー=自由は,演奏する側よりも聴く側にある。そしてその時点で,奏者と聴衆が一体となって創造し,また想像しうるとき,両者の断絶は取り除かれるはず。このことは,すべての音楽の形式を問わず<コミュニケートする>ための一番大切な条件ではないか」。

 うーむ。「聴く側に委ねられる自由」。様々な情報や経験で自分に合うテンプレートに照らして聴くことしか出来ないから,フリージャズを難しく感じてしまうものなのだろう。

SPIRITUAL NATURE-2 富樫雅彦が『スピリチュアル・ネイチャー』で提示したものとは「沈黙」ではなかっただろうか?
 『スピリチュアル・ネイチャー』を聴いていると,自然と想像している自分,黙想している自分に気付くことがある。と同時にライブ盤なのに,無観客のホールで演奏しているような雰囲気とのGAPを意識することがある。

 この異様な無歓声のライブ録音。最初は管理人も編集によるものだと考えていたが,ここ数年あまりは,これって本当に観客全員が静かに座って聴いていた結果なのかも,と思うようになった。
 富樫雅彦の狙い通りの「沈黙」である。「腕組み瞑目して音楽に没頭する」。当時のジャズ・ファンなら有り得なくもない?

 さて,冒頭の「スピリチュアル」ブームに戻る。「スピリチュアルスピリチュアル」って大騒ぎして,結局は自由で自然な精神世界を自分自身で縛っているのでは?

 その意味で「スピリチュアル」ブームはニセモノである。真にあらゆる束縛からの解放は『スピリチュアル・ネイチャー』のインプロヴィゼーションの組曲の中で既に提示されていた。“崇高なジャズ”こそが真に「スピリチュアル」なのである。

  01. THE BEGINNING
  02. MOVING
  03. ON THE FOOTPATH
  04. SPIRITUAL NATURE
  05. EPILOGUE

(イースト・ウィンド/EAST WIND 1975年発売/EJD-3050)
(ライナーノーツ/清水俊彦)

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フレディ・ハバード / ボディ・アンド・ソウル4

THE BODY & THE SOUL-1 『THE BODY & THE SOUL』(以下『ボディ・アンド・ソウル』)の主役はフレディ・ハバードではない。ウェイン・ショーターである。

 そんな主役の2人は共にジャズ・メッセンジャーズの同僚として活動中。共演を重ね,新しいアンサンブルを重ねながらフレディ・ハバードの方からウェイン・ショーターを誘ったのかな? 『ボディ・アンド・ソウル』にはそんな“ウェイン・ショーター印”の音が鳴っている。

 『ボディ・アンド・ソウル』のレコーディング・メンバーは,トランペットフレディ・ハバードテナーサックスウェイン・ショーターアルトサックスエリック・ドルフィートロンボーンカーティス・フラーピアノシダー・ウォルトンベースレジー・ワークマンドラムルイ・ヘイズ

 そう。『ボディ・アンド・ソウル』は,アート・ブレイキー抜きのオール・ジャズ・メッセンジャーズによるスモール・コンボ+拡大されたビッグ・バンド&オーケストラ編成。
 ジャズ・メッセンジャーズの亜流にして,こちらこそが本流と思わせる“HOTな”フレディ・ハバードと“COOLな”ウェイン・ショーターの方向性が一致が名演である。

 『ボディ・アンド・ソウル』の印象を一言で書けば,大編成なのに「全くうるさくない」。フレディ・ハバードにだけは自由に吹かせておいて,バックには抑制を求めているから,音楽全体がなめらかで,知的な響きがする。
 これほどの大物メンバーが個性を抑えてビッグ・バンドのアンサンブル吹きで満足させることができたウェイン・ショーターの“天才”ぶり。ストリングスについても,よくある甘すぎるムードもなく,アーティスティックに鳴らし過ぎることもない。

 “音楽監督”ウェイン・ショーターにとって『ボディ・アンド・ソウル』のようなアレンジ・アルバムの制作は,おおよそ30年後となる『HIGH LIFE』や『ALEGRIA』の登場まで待たなければならない。
 それくらいにウェイン・ショーターにとって『ボディ・アンド・ソウル』は快心の出来だったのだろう。世界指折りのトランペッターフレディ・ハバードがアンサンブルの核を張っているのだから,アレンジ・アルバムは『ボディ・アンド・ソウル』で完結したとしても当然だと思う。

THE BODY & THE SOUL-2 『ボディ・アンド・ソウル』のソロイストフレディ・ハバードエリック・ドルフィーの2人。
 ただし,2人とも編曲の流れを壊さないようなソロであって勿体ない。特にエリック・ドルフィーウェイン・ショーターの共演は,恐らく録音物としては『ボディ・アンド・ソウル』の1作だけだと考えられている。

 その意味で『ボディ・アンド・ソウル』の没テイク。それもエリック・ドルフィーの突飛なソロがオクラの原因となったトラックが残ってはいないのだろうか?

  01. BODY AND SOUL
  02. CARNIVAL (MANHA DE CARNAVAL)
  03. CHOCOLATE SHAKE
  04. DEDICATED TO YOU
  05. CLARENCE'S PLACE
  06. ARIES
  07. SKYLARK
  08. I GOT IT BAD AND THAT AIN'T GOOD
  09. THERMO

(インパルス/IMPULSE! 1963年発売/UCCU-5278)
(ライナーノーツ/小川隆夫)

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松岡 直也 / DANCE UPON A TIME4

DANCE UPON A TIME-1 松岡直也の「音楽活動40周年」祭りのテーマは「東京発ラテン・ダンス・ミュージック」。
 いつものラテン・フュージョンをベースに,ブラスストリングス,さらにはヴォーカルコーラスが加わった“マンボ・ナオヤ”の世界が広がるのが『DANCE UPON A TIME』である。

 『DANCE UPON A TIME』の豪華で豪奢な音が真にスペシャル感漂っている。ダンサブルだがメロディアスで,濃密だが聴きやすい作品へと昇華されている。ジャケットのイラストから連想される『ハートカクテル』に似た,松岡直也のお洒落感覚にも脱帽である。

 『DANCE UPON A TIME』の音が重厚なのに軽快なのには理由がある。
 松岡直也の大編成コンボと来ればWISINGがあるが『DANCE UPON A TIME』ではWISINGの手法を封印させた,王道のビッグ・バンド・チックな「東京発ラテン・ダンス・ミュージック」。

 『DANCE UPON A TIME』の肝は“伝家の宝刀”パーカッション。16ビートでゆったり裏拍を強調するラテン・パーカッションが曲をリードし,そこに美しいコードのピアノが絡み合い,ディストーション・ギターがうねりまくる。
 再録の3曲を含めて選曲はメロディアスなものが多い。パーカッションを前面に出すために,敢えてねっとりと絡みつくような美メロとの対比で上手にバランスをとっている。

 『DANCE UPON A TIME』が狙うは従来のラテン・フュージョン・ファンではなく,お洒落なダンス・ミュージック・ファンである。ただし,それって流行りのユーロでもトランスでもなく(もちろんパラパラでもなく)ダンス・ホールである。

DANCE UPON A TIME-2 なんだか最先端なのに松岡直也の懐古趣味が利いているというか『DANCE UPON A TIME』には“古き良き時代”の郷愁を感じさせるものがある。

 あっ,だから40周年記念盤なわけね〜。昔の松岡直也も良かったと思わせいわけね〜。
 個人的には本田雅人のゲスト参加が最大のハイライト〜。個人的にはペッカー津垣博通のゲスト参加が懐かしい〜。

  01. AMANECER TROPICAL
  02. I'VE GOT MY LOVE TO KEEP ME WARM(Big Band Version)〜
     恋に寒さを忘れ

  03. CANCION DE MAREA
  04. THE CONFESSION
  05. MAMBO NAOYA '92〜マンボ・ナオヤ '92
  06. POOLSIDE LOVE AFFAIR(Big Band Version)
  07. NO TE VAYAS〜とっても好きだから
  08. YOU'VE GOT IT BAD GIRL
  09. LIKE A VOLCANO
  10. LADY IN THE SHADE(Orchestra Version)

(ワーナー・ミュージック・ジャパン/WARNER MUSIC JAPAN 1992年発売/WPCL-678)

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フレディ・ハバード / ハブ・トーンズ5

HUB-TONES-1 『HUB−TONES』(以下『ハブ・トーンズ』)でフレディ・ハバードが一皮むけた。
 『ハブ・トーンズ』でフレディ・ハバードジャズ・ジャイアントの仲間入りを果たした。

 『ハブ・トーンズ』以前のフレディ・ハバードの強みとは「超一流トランペッター」の1点のみ。作曲や編曲やリーダーシップの面ではまだまだであった。
 それがどうだろう。『ハブ・トーンズ』では突進するトランペットも過去最高の出来であるが,作曲も編曲もリーダーシップも含めて全ての面において同世代のトランペッター以上に秀でている。
 ついに『ハブ・トーンズ』でフレディ・ハバードジャズ・シーンの先頭を走るトランペッターとして躍り出たのだ。

 フレディ・ハバードの内面が成長している。具体的にはトランペットから,味気のないフレージングや深みの無い音色が流れることがなくなった。それどころか“情状派”への転身とも取れるトラックが並んでいる。

 例えば【YOU’RE MY EVERYTHING】というジャズスタンダードを,ふくよかな音色で歌心たっぷりに歌いきる。
 そして特筆すべきはミュートではない繊細な表現にある。フレディ・ハバードはテクニカルなトランペッターだあるが,ハイテクニックが嫌みでなく,最良の塩梅に仕上がっていると思う。

 【HUB−TONES】での音響の隅々までなめて踊るよう素晴らしいアドリブに燃え上がる。
 フレディ・ハバードトランペットと来れば「世界一のフィンガリング」であろうが【HUB−TONES】での演奏と来れば,内なる感情表現に「世界一のフィンガリング」でさえ追いついて行けない印象を受ける。それだけ内に秘めたものが圧倒的なのだ。
 あくまで会話をするような調子で,猛烈なインプロヴィゼーションが放出される。それを一瞬でアドリブ構成するセンスが群を抜いて現代的で格好良い。

HUB-TONES-2 【LAMENT FOR BOOKER】では打って変わって,陰影のあるトランペットを聴かせてくれる。クリフォード・ブラウンの死後,彗星のように現われてはブラウニー同様に夭逝した,若き名トランペットブッカー・リトルに捧げたフレディ・ハバードバラード
 誰もが認める【I REMEMBER CLIFFORD】の様な名曲ではないかもしれない。だがどこか幽玄的で灰色な雰囲気を醸し出すこのバラードブッカー・リトルにピッタリの曲調がお見事!

 さて,そんなフレディ・ハバードの“覚醒”請負人がピアノハービー・ハンコック
 『ハブ・トーンズ』で初共演を果たしたフレディ・ハバードハービー・ハンコックのコンビがその後「新主流派」というジャズの歴史を創っていくことを互いにまだ知る由もないのだが,やっぱり相性チリバツ! ハービー・ハンコックのバッキング最高!

  01. YOU'RE MY EVERYTHING
  02. PROPHET JENNINGS
  03. HUB-TONES
  04. LAMENT FOR BOOKER
  05. FOR SPEE'S SAKE

(ブルーノート/BLUE NOTE 1962年発売/TOCJ-4115)
(ライナーノーツ/ジョー・ゴールドバーグ,原田和典,菅原正晴)

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坪口 昌恭 / ANDROGRAFFITI5

ANDROGRAFFITI-1 坪口昌恭というキーボード・プレイヤー。それは「東京ザヴィヌルバッハ」の人であり「DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN(DCPRG)」の人だった。
( 現在では「菊地成孔ダブ・セクステット」の坪口昌恭が一番のお気に入り! )

 「東京ザヴィヌルバッハ」にしても「DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN(DCPRG)」にしても,坪口昌恭は初めから前面に出るタイプではなく,ここぞという時に後ろから横から斜めから攻め上げてくるタイプ。
 サッカーで言えばスーパーサブであって,一度前に出た坪口昌恭をもはや誰も止められない。一番身近な菊地成孔こそが,そんな坪口昌恭の大ファンの1人だと思う。

 菊地成孔は知っている。坪口昌恭の本当の魅力は「キレッキレ」の一発勝負師ではないことを…。坪口昌恭の本当の魅力はバランサーであり全体を見渡せる10番。つまりは司令塔タイプであることを…。
 だからこそ菊地成孔坪口昌恭をスーパーサブではなく先発として,そしてフォワードではなく中盤として毎回起用しているのだろう。

 坪口昌恭についての菊地成孔の見立ては当を得ている。『ANDROGRAFFITI』が坪口昌恭の“バランサー資質”を見事に証明してくれている。

 『ANDROGRAFFITI』は前作『VIGOROUS』と同一録音のセッション音源にオーバーダビングさせた最終完成盤。『VIGOROUS』以上に坪口昌恭ジョー・ザビヌル化して聴こえる。
 サックスパーカッションが入っている曲では,もろザビヌルを想起して“ウェザー・リポートっぽい”音が鳴っている。坪口昌恭ジョー・ザビヌルのように自らシュートを決めに行く。

 しかしそこにトランペットが入った曲では,完全なるバランサーとして鍵盤中心のシフトではあるが,濃厚なファンクネスと即興性が前面に出たポリリズミック電化ジャズが鳴っている。
 『VIGOROUS』に続き『ANDROGRAFFITI』でオラシオ・エルネグロ・エルナンデスドラムを叩く意味とか必然性があるような展開に持ち込んでいる。

ANDROGRAFFITI-2 『ANDROGRAFFITI』の同一にして2つのセッションに色を付けたのは1年がかりで行なわれたオーバーダビングであることを忘れてはならない。これは逆説的な意味である。意識しなければ生演奏に聴こえてしまう。

 オラシオ・エルネグロ・エルナンデスが参加したキューバの路地裏でセッションされていたストリート・ミュージックが,坪口昌恭の手に掛かればNYのスタジオで録音されたかのように聴こえてしまうのだ。

 坪口昌恭の完璧なる補修作業。これこそが『ANDROGRAFFITI』なのだろう。これこそが「アンドロイドの落書き」なのだろう。

  01. M.T. Swallow
  02. Space Mbira
  03. Equator Civilization
  04. Water Moon
  05. Groove Continent
  06. Vanilla Beans
  07. Swinging Weather

(ボディー・エレクトリック・レコーズ/BODY ELECTRIC RECORDS 2006年発売/EWBE-0019)
(紙ジャケット仕様)

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フレディ・ハバード / ハブ・キャップ4

HUB CAP-1 『HUB CAP』(以下『ハブ・キャップ』)自体の出来はイマイチである。
 しかし『ハブ・キャップ』には,ジャズ界のその後,を先取りしたフレディ・ハバードの功績について語られるべきであろう。フレディ・ハバードは一介のトランペッターではない。

 フレディ・ハバードが『ハブ・キャップ』で試みた3管ユニゾン・セクステットが真価を発揮したのは,フレディ・ハバード自身もプレイヤーとして創作に参加した,ウェイン・ショーターを擁するジャズ・メッセンジャーズであった。
 “天才”ウェイン・ショーターの手を借りた『MOSAIC』で,ついにフレディ・ハバードのアイディアが「UPDATE」され花開いた。

 そんなジャズ・メッセンジャーズの『MOSAIC』への「原石セッション」となった『ハブ・キャップ』には,もう1つ,フレディ・ハバードの音楽観が秘められている。
 フレディ・ハバードはこれまで『OPEN SESAME』『GOIN’ UP』と豪華な先輩たちの胸を借りてソロ・アルバムを制作してきたが,第3弾となる『ハブ・キャップ』での大物はフィリー・ジョー・ジョーンズぐらい(まっ,後にみんなBIGになったのだけど)。

 トロンボーンジュリアン・プリースターテナーサックスジミー・ヒース,そして後にジャズ・メッセンジャーズでもコンビを組むこととなるピアノシダー・ウォルトンを迎えたフレディ・ハバードの3管ユニゾン・セクステットの人選は,いつものアルフレッド・ライオンではなくフレディ・ハバード本人であった。

 念願のメンバーで念願の3管ユニゾン。『ハブ・キャップ』こそがフレディ・ハバードが本当に演りたかったジャズだった,と言い切ってしまおう。
 フレディ・ハバードにとって3管とは,自分自身が一番輝く理想の編成である。なぜならばフレディ・ハバードの持ち味であるメタリックなトランペットは言ってみれば「淡泊」。そこへトロンボーンテナーサックストランペットの両隣りで「味わい深い陰影」をつけてくれる。

HUB CAP-2 NO。ここまで啖呵を切ってきたが,思いの外,出来上がった『ハブ・キャップ』の印象は地味である。これってフレディ・ハバードのせいではなくアート・ブレイキーフィリー・ジョー・ジョーンズの実力差?
 フレディ・ハバードトランペットにもジャズ・メッセンジャーズの時のような伸びは小さく,アンサンブルの要を担うというミッションを全うしようとしている印象である。

 それもこれも全ては念願の3管ユニゾン達成のため。アンサンブル・ハーモニーのためである。『OPEN SESAME』『GOIN’ UP』では1曲だけだったオリジナルも『ハブ・キャップ』では4曲作曲。
 そう。『ハブ・キャップ』の録音時にフレディ・ハバードに足りなかったのはアレンジ力の1点だけ! そのアレンジ力も才能の欠如ではない。モードという新しいジャズの言語にまだ馴染めていなかっただけ!

 管理人の結論。『ハブ・キャップ批評

 フレディ・ハバードは従来のハードバップ・スタイルに範を求めながらも『ハブ・キャップ』で確実に新しい時代への布石を打っている。
 フレディ・ハバードの新しい地平を目指そうとする意気込みと発展途上の魅力がたまらない。

  01. HUB CAP
  02. CRY ME NOT
  03. LUANA
  04. OSIE MAE
  05. PLEXUS
  06. EARMON JR.

(ブルーノート/BLUE NOTE 1961年発売/TOCJ-4073)
(ライナーノーツ/レナード・フェザー,後藤誠,小林貢)

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坪口 昌恭 / VIGOROUS5

VIGOROUS-1 『VIGOROUS』を買ったのは東京ザヴィヌルバッハの『A8V(ON THE EARTH)』を買った3日後のことだったことを覚えている。
 『A8V(ON THE EARTH)』にハマッタ。そして坪口昌恭にハマッタ。そしてよく調べもせずにアマゾンで坪口昌恭の最新作だった『VIGOROUS』をポチッ。

 たまたま選んだ『VIGOROUS』が,管理人の東京ザヴィヌルバッハへハマル流れを止めたのは皮肉な結果。だって機械ではなく生身の人間の方が凄いということを再確認出来たから!

 そう。『VIGOROUS』のドラマーとは“あの”オラシオ・エルネグロ・エルナンデス
 これが並みのドラマーだったら「M」の連勝街道一直線だったのかもしれないが,オラシオ・エルネグロ・エルナンデスの爆撃ドラミングの「グルーヴの波」が,坪口昌恭が書いた美メロと「ハモる瞬間の波」が最高に気持ちいい。

 管理人が『VIGOROUS批評で書きたいことは,人力ドラムの優越性,というか,元々,人間と機械を比べてはいけないということ。
 音楽シーンはこの後「ドラムンベース」に流れていったが,JIMSAKUを例に出すまでもなく,音楽のテクニック,もっと言えば音楽の世界でコンピュータが人間を超えるのは遠い先の事であって,個人的に機械は人間を永遠に超えられないと思っている。

 そう感じているのは管理人だけではない。坪口昌恭もまたその中の1人である。
 仮に『VIGOROUS』のリズム隊を「M」で演奏していたなら面白くも何とない音楽で終わっていたように思う。終始正確でそしてプログラミングによって予想だにしないリズムを打ち叩いてくる「M」は本当に凄いと思う。

 しかし,ジャストではない前ノリとか後ノリの感覚。譜面では決して指示出来ないノリを坪口昌恭は『VIGOROUS』で表現している。
 『VIGOROUS』の楽曲はどれもが速攻前のめりテクニカル。こんな楽曲群を演奏するには打ち込み系が向いているのだが,それは坪口昌恭の音楽を理解した機械演奏の話なのだ。

VIGOROUS-2 『VIGOROUS』のハードな演奏は「複雑なメロディ・ライン」にある。キャッチーなメロディではない。テクニックひけらかしでもない。“器楽的に”メロディアスなのだ。

 これである。“器楽的に”メロディアスな表現は人力でしか表現できない。だからドラムオラシオ・エルネグロ・エルナンデスなのである。オラシオ・エルネグロ・エルナンデスの爆撃ドラミングが演奏に“強度と味”を加えている。

 主役である坪口昌恭エレピは終始奥で鳴っている間違った印象操作。
 坪口昌恭が意識的に後ろに下がって弾いているわけではない。よく聴けば主軸は鍵盤にあるのだが,躍動感あるリズムと冷静にグルーヴする鍵盤の対比が不思議なストイックさを醸し出している。

 『VIGOROUS』で耳に付くのは構成の複雑さとたやすく弾きこなすテクニック。個々の演奏の猛烈な確かさと歌心にシビレまくる名盤だと思う。

  01. African Eagle
  02. Southern Cross
  03. Tasogare Boomerang
  04. Power Rose
  05. Nostalgica
  06. Pastel Yogurt

(ボディー・エレクトリック・レコーズ/BODY ELECTRIC RECORDS 2004年発売/EWBE-0012)
(紙ジャケット仕様)

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フレディ・ハバード / ゴーイン・アップ4

GOIN' UP-1 フレディ・ハバードのリーダー・アルバムである。フレディ・ハバードデビュー盤である。なのに“からっきし目立っていなかった”『オープン・セサミ』でのフレディ・ハバード
 ティナ・ブルックスである。マッコイ・タイナーである。当時はまだ無名の2人との共演である。

 ハンク・モブレーである。フィリー・ジョー・ジョーンズである。2ndアルバム『GOIN’ UP』(以下『ゴーイン・アップ』)では前作から一転して「ジャズ界のレジェンドたち」との共演である。

 『ゴーイン・アップ』でのベテラン組との対比によりフレディ・ハバードの“フレッシュさ”が際立って聴こえる。なので個人的には「若き日のフレディ」と来れば『オープン・セサミ』ではなく『ゴーイン・アップ』を連想してしまう。
← ちなみにフレディと聞けば,管理人にはフレディ・マーキュリーではなくフレディ・ハバードのことなのです! 愛輝くん!

 …と,この流れでついでに書けばフレディ・ハバードの場合,年代を遡るにつれ年を取って聴こえてしまうから不思議である。
 管理人の「初めてのフレディ・ハバード」がハービー・ハンコックの『処女航海』だったせいでもあるだろう。『オープン・セサミ』『ゴーイン・アップ』がコテコテのハード・バップだったということもあるだろう。

 NO! フレディ・ハバードの“耳年寄り”の理由とはフレディ・ハバードの“早熟”にある。同じ“早熟のトランペッター”でもリー・モーガンフレディ・ハバードではタイプが異なる。

 フレディ・ハバードの“早熟”の意味とは,圧倒的なテクニックを活かした演奏スタイルのことを指す。『ゴーイン・アップ』の時点ではブリリアントなフレーズは残念ながら出て来ていない。フレディ・ハバードが「ロックの洗礼」を受けたのはもう少し先のことである。
 事実『ゴーイン・アップ』の聴き所はフレディ・ハバードの“ブルース・フィーリング”にある。

 例えば,ケニー・ドーハムの代表曲として名高い【LOTUS BLOSSOM】をフレディ・ハバードは【ASIATIC RAES】という題名でアレンジして演奏しているのだが,これが“本家以上の”大名演仕上げ! 【LOTUS BLOSSOM】の“熱風ブルース・バージョン”の完成であった。

GOIN' UP-2 【ASIATIC RAES】の聴き所は,フィリー・ジョー・ジョーンズの高速パッセージに負けない,フレディ・ハバードの“超絶技巧”高速パッセージによる“ブルース・フィーリング”の交歓にある。

 フィリー・ジョー・ジョーンズの爆裂ドラミングに煽られて疾走するのだが,高速運転中なのに余裕溢れるブルースを吹き上げるフレディ・ハバードのテクニックは流石! 演奏が進行するにつれフィリー・ジョー・ジョーンズドラムが落ち着いていく様がハイライト!

 【BLUES FOR BRENDA】では,野太く重心の低い中低域のトランペットでスタートから攻めていたがフレディ・ハバードが,終盤のハイノートで「天へと昇る」あの甲高い音色が忘れられない!
 旧い時代のバッパーを演じきったハード・バップ・スタイルのトランペットハンク・モブレーのマイルド・テナーを抑えつけた瞬間のカッコ良さが忘れられない!

  01. ASIATIC RAES
  02. THE CHANGING SCENE
  03. KARIOKA
  04. A PECK A SEC
  05. I WISHED I KNEW
  06. BLUES FOR BRENDA

(ブルーノート/BLUE NOTE 1961年発売/TOCJ-6575)
(ライナーノーツ/アイラ・ギトラー,土倉明)

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大槻“KALTA”英宣 / VERTICAL-ENGINE4

VERTICAL-ENGINE-1 “凄腕ドラマー大槻“KALTA”英宣については小沼ようすけ繋がりで追いかけるようになった。
 「TKY」「AQUAPIT」のドラマー大槻“KALTA”英宣以外には務まらなかったと思っている。管理人世代を熱狂させてくれる沼澤尚の次世代を担うJAMドラマーである。

 大槻と来れば「筋肉少女帯」だし,KALTAと来ればカルマだし,大槻“KALTA”英宣が芸名であることを知った時「こんな芸名を付けるとはさぞやイカレたドラマー」だと危険を感じていたものだ。

 しかし,実際の演奏はそうではない。大槻“KALTA”英宣のスタイルはイカレたの正反対であって,楽曲のツボを突きまくる端正なドラミングは理性的に思えた。
 大槻“KALTA”英宣JAM系が最高だと知りつつも,もっとジャズ系に寄ってきてほしい。そう思わせるバックから攻め上ってくる「迫るビート感」が大槻“KALTA”英宣の最大の武器だと思う。

VERTICAL-ENGINE-2 大槻“KALTA”英宣ソロCDVERTICAL−ENGINE』に飛びついてビックリ! 大槻“KALTA”英宣のオリジナルは難曲ばかり! ただし,単に難しいだけではなく,テクニカルなアンサンブルが機能すれば,印象的なリズムとメロディーが浮き上がって来る「二段ロケット」仕掛け!
 その意味で『VERTICAL−ENGINE』は演者を選ぶ(聴き手を選ぶではない。そこが重要!)難度の高いアルバムであった。

 そんな難度高めの『VERTICAL−ENGINE』に大槻“KALTA”英宣が選んだメンバーは,ドラム大槻“KALTA”英宣アルトサックスソプラノサックス太田剣テナーサックス鈴木央紹ギター小沼ようすけ天野清継鈴木よしひさオルガン金子雄太キーボード新澤健一郎ピアノ秋田慎治田中信正ベース鈴木正人鳥越啓介岡田治郎のツワモノたち。一癖もふた癖もある言うことなしの豪華演奏メンバー。

VERTICAL-ENGINE-3 大槻“KALTA”英宣のオリジナルが綺麗に磨き上げられている。だからこそ名演奏が光って聴こえる。楽曲に演奏がシンクロしている。繊細なハーモニーなのに自由で縛りがない感じがする。大きなコンセプトを全員が共有し,全員が他の人の演奏をよく聴いている。

 ズバリ『VERTICAL−ENGINE』には「バンド・リーダー」大槻“KALTA”英宣の“HOTでCOOLな”統率力が刻まれている。

  01. STRATEGY
  02. ALTERNATOR
  03. SNARL (VERSION)
  04. MOON LOST
  05. ARITHMETIC
  06. BACH-LOGY SHIFT
  07. IMAGE
  08. LEGWORK AND CHASE
  09. CLOUD CASTLE
  10. ICON
  11. EPISTROPHY

(JAZZZ/JAZZZ 2008年発売/MAIR-2001)
(☆スリップ・ケース仕様)
(ライナーノーツ/松永誠一郎)

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フレディ・ハバード / オープン・セサミ4

OPEN SESAME-1 ジャズの王者はトランペットである。そんな「王様のトランペッター」を語っていくとフレディ・ハバードの名前は外せない。
 しかし,フレディ・ハバードトランペットが本当に良いのは「新主流派」以降である。加えてフレディ・ハバードトランペットが本当に良いのはサイドメンとしての演奏である。

 だからフレディ・ハバード初期の演奏は聴いても聴かなくてもどちらでもよい。聴かないよりは聴いた方がよいとお奨めしている。
 現に管理人はフレディ・ハバードデビュー盤『OPEN SESAME』(以下『オープン・セサミ』)ではフレディ・ハバードの演奏は聞いてはいない。

 そう。『オープン・セサミ』はフレディ・ハバードトランペットを聴くためのアルバムではなく,ティナ・ブルックステナーサックスマッコイ・タイナーピアノを聴くためのアルバムなのである。

 ズバリ『オープン・セサミ』の主役はティナ・ブルックスである。演奏もそうなのだがアルバムが醸し出す雰囲気はティナ・ブルックスの個性そのものである。
 結局のところ『オープン・セサミ』の顔である【オープン・セサミ】と【ジプシー・ブルー】はティナ・ブルックスあってこそ!

 一聴するとホレス・シルヴァーっぽい曲調だが,元気いっぱいのマイナー調で哀愁してしまうのがティナ・ブルックスの腕前なのである。
 多弁で安定感のあるフレディ・ハバードと朴訥で線が細いけれど黒っぽいティナ・ブルックスの組み合わせが強い印象を残している。ティナ・ブルックスの繊細かつソウルフルな味が絶妙に臭い立ってくる。ティナ・ブルックスが好きだ〜。

OPEN SESAME-2 そうしてマッコイ・タイナーピアノである。マッコイ・タイナーの洗練されたピアノがあるから,ティナ・ブルックスの演歌チックで昭和レトロな雰囲気にドップリ浸れるというものだろう。
 リリカルで小気味良いピアノ・タッチの流ちょうなフレージングが,フレディ・ハバードティナ・ブルックスの両雄を自由に転がしていく。

 『オープン・セサミ』の後もしばらくフレディ・ハバードを支えることになるマッコイ・タイナーフレディ・ハバードの成功は“名脇役”マッコイ・タイナーのサポート抜きには語れない。

  01. OPEN SESAME
  02. BUT BEAUTIFUL
  03. GYPSY BLUE
  04. ALL OR NOTHING AT ALL
  05. ONE MINT JULEP
  06. HUB'S NUB
  07. OPEN SESAME (alternate take)
  08. GYPSY BLUE (alternate take)

(ブルーノート/BLUE NOTE 1960年発売/TOCJ-7075)
(ライナーノーツ/アイラ・ギトラー,原田和典)

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T-SQUARE / HORIZON4

HORIZON-1 『HORIZON』を一聴して強く感じたことは“河野啓三の偉大さ”であった。
 河野啓三の不在が痛い。河野啓三がいないと「伝統のスクェア・サウンド」が成立しないことを思い知らされた気分がした。

 …と言うのも実はこんなエピソードがある。以前にどこかのLIVEのMCで河野啓三が「バンドに貢献できているかどうか分からない」と述べていた。当然そんなことなどない。ファン全員,天に誓って一度たりともそう思った人はいないことだろう。
 でも何だかとても不憫に感じてしまって,あの河野啓三の言葉が今でも管理人の記憶に残っている。河野啓三を擁護したい。応援したい。ただそのことを直接,口に出して伝えたら終わりな訳で…。

 結果,これは本当に残念なことではあったが,河野啓三抜きの『HORIZON』を聴いてみて,河野啓三に自分の存在価値の大きさに自信を持ってほしいと思ってしまった。
 河野啓三の代役は「超大物」のフィリップ・セスである。しかし,あのフィリップ・セスをしても河野啓三の代役など務まっていない。
 そう。『HORIZON』とは“大黒柱”河野啓三が自然な形で証明されてしまったアルバムなのである。

 久しぶりのスクェアフィリップ・セスの組み合わせ。フィリップ・セスの先鋭的なサウンドを求めた伊東たけし坂東慧ソロとは違い「ポップ・インストゥメンタル・バンド」として安藤正容のDNA=「歌うメロディー」が楽器と音色を支配するバンドとの組み合わせ。

 うん。フィリップ・セスの完勝である。河野啓三抜きの『HORIZON』の真実とは「フィーチャリングフィリップ・セススクェア・サウンド」であった。

 『HORIZON』に流れている「伝統のスクェア・サウンド」とは『REBIRTH』『CITY COASTER』のラインではない。
 そうではなくLAから流れる『FRIENDSHIP』『NEW ROAD, OLD WAY』のユニット期のサウンドなのである。

 もしや『HORIZON』はアメリカで発売したら売れるのかもしれない。そんな雰囲気の音楽である。スクェアが「ザ」から「T」へと改名した『WAVE』の頃よりもアメリカに近づいている。

 こんなにもアーバンでLAしててスムーズ・ジャズスクェアは『FRIENDSHIP』以来である。完璧なバックサウンドと要所要所でソロを取るフィリップ・セスキーボードが,2000年頃のドン・グルーシンの煌びやかなキーボードを連想させる。

 河野啓三の大ピンチとは則ちT−スクェアの大ピンチ。こんな大ピンチを救ってくれたフィリップ・セスには感謝しかない。
 しかしフィリップ・セスの良さがT−スクェアの良さと混じり合うのは「音楽監督」河野啓三が率いるT−スクェアであろう。

HORIZON-2 是非是非,フィリップ・セスとは河野啓三が復帰したT−スクェアと再度共演してほしい。きっと凄いことになると思うから。次作では坂東慧河野啓三向きの神曲をきっと準備してくれるはずだから…。
 『HORIZON』は【SKY DRIVE】【HORIZON】【LOVE GAME】の3曲だけだったかなぁ。

 最後に『HORIZON』でうれしかったことがある。
 それは河野啓三T−スクェアのメンバーとしてクレジットされていたこと。そして内ジャケットの中にもメンバー写真として1ページ分写っていたこと。完全に河野啓三の「復帰待ち」スタンバイ体制である。

 T−スクェアキーボード・プレイヤーの椅子は永久欠番って感じの空席扱い? 『HORIZONツアーでは白井アキトの怪演に超期待している自分も正直いる?
 管理人はスクェア・ファミリーの一員として「音楽監督」河野啓三の復帰を(一刻も早く。でも決して無理してほしくない)いつまでも待っております。

  DISC 1
  01. SKY DRIVE
  02. Kasareria
  03. Lonesome George
  04. 追憶の街
  05. Horizon
  06. Love Game
  07. Samba de Bantha
  08. Parallel World
  09. Some Other Time

  DISC 2 DVD
  01. T-SQUARE 84h in Los Angeles

(オレンジレディ/ORANGE LADY 2019年発売/OLCH 10015〜16)
(☆SACDハイブリッド盤仕様)
★【初回生産限定盤】ボーナスDVD付 2枚組
★【初回生産限定盤】三方背BOX仕様
★音匠仕様レーベルコート

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今津 雅仁 / WHAT'S A MELODY?4

WHAT'S A MELODY?-1 デビュー・アルバム『MASATO』で“天下を獲った”今津雅仁! 日本中の全ジャズ・ファンが期待値MAXで迎えた2ndが『WHAT’S A MELODY?』。
( 『MASATO』はスイングジャーナル誌主催「ジャズ・ディスク大賞」【日本ジャズ賞】受賞! )

 演歌系のこぶし廻しというべきか? ブッカー・アービン風の癖というべきか? 今津雅仁テナーサックスは相変わらずのファンキー・サックス全開で『WHAT’S A MELODY?』も親しみやすいジャズ・アルバム仕上げ。
 ただし,結論から書くと『WHAT’S A MELODY?』で今津雅仁が没落した。『MASATO』路線を変更したわけでもないのに,こんなにも響かないのはなぜなのだろう…。

 思うに,何のプレッシャーもなく,自由気ままに,思う存分,自分の演りたいジャズを演奏したのが『MASATO』だとすれば,レコード会社からのオーダーとかプレッシャーとかで,あの「本能的に思いつくがまま」の最良の部分が薄れてしまって,平々凡々の…。
 一気に今津雅仁への関心が薄れてしまった…。

 一応,今津雅仁の名誉のためにフォローしておくと,管理人が『WHAT’S A MELODY?』にハマラなかったのは,アドリブ一発がどうにも事前に考えられていたかのようで気に障るから…。
 『WHAT’S A MELODY?』では,荒削りの部分が整えられて,曲単位での完成度は『MASATO』より上がっている。

 それは今津雅仁テナーサックスだけではなくて,吉岡秀晃ピアノ沼上励ベース屋代邦義ドラムについても当てはまる。

WHAT'S A MELODY?-2 そう。『WHAT’S A MELODY?』は今津雅仁ソロ名義ではなく「今津雅仁 & FUZZ MOTION」なるコンボ名義でのリリースになったのも,全員が自由に演奏するスタイルからアンサンブル指向に舵を切った「大義」なのだと思っている。

 仮に『WHAT’S A MELODY?』にハマッテいたら,アドリブログの一押しは矢野沙織ではなく今津雅仁だったのかもしれない。
 正直,2週間前に『MASATO』を10年振りに聴いて,大興奮して,そう思ってしまったんだもん。くまもん。

  01. But That's Impossible!
  02. Willful Drunkers
  03. Just One Time
  04. Lookin' Around The Bay
  05. Spring Tide
  06. The Girl Of My Heart

(ファンハウス/FUN HOUSE 1990年発売/FHCF-1056)
(ライナーノーツ/市川正二)

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エルモ・ホープ / エルモ・ホープ・トリオ4

ELMO HOPE TRIO-1 エルモ・ホープと来ればバド・パウエルの“バーター”というのが定説である。
 その心は「バド・パウエル崩れ」で語られるよりも「ソニー・クラーク系マイナー崩れ」の方が正しいと思っている。

 『ELMO HOPE TRIO』(以下『エルモ・ホープ・トリオ』)は,一聴すると確かにバド・パウエルっぽい。テンポとか音の間に関しては“もろ”バド・パウエル似で間違いない。

 しかし『エルモ・ホープ・トリオ』を繰り返し聴いて,耳が慣れてくると,聴こえてくるのは,劣化したバド・パウエルなのだが,あるレベルを越えてしまった瞬間,エルモ・ホープのマイナー・ピアノソニー・クラークっぽい。
 要するに日本人好みの“ジャズ・ピアニスト”の一人がエルモ・ホープで間違いない。

 ただし,エルモ・ホープ好きを名乗るのは,ちょっと「天の邪鬼なピアノ・ファン」が多いように思う。
 これには理由があってエルモ・ホープ好きとは前提としてのマイナー・ピアノ好き。マイナー好きの世界ではソニー・クラークが一番手だから,ソニー・クラークを敢えて外した集団がエルモ・ホープ・ファンを構成しているように思う。この世界を理解するのは難しいのだ。

 『エルモ・ホープ・トリオ』でのエルモ・ホープピアノが,なかなかに手強い。エルモ・ホープの中にいるバド・パウエル的な顔とソニー・クラーク的な顔が同居したうえで,エルモ・ホープの個性が出ている。

 パズルのように構築されたフレーズの集積は,非メロディアスというわけではないが,情緒的で甘い砂糖菓子のようなフレーズはほとんど出てこない。
 例えば,スローテンポで演奏される,砂糖菓子のようなメロディーの【LIKE SOMEONE IN LOVE】においても,ピリリと辛口のピアノである。

ELMO HOPE TRIO-2 そう。エルモ・ホープの個性とは「独特の構成能力」にある。あまりに断片かつ,フレーズとフレーズの“つながり感”が希薄ゆえ,演奏の全体像が掴みづらい。だから注意深く聞いていると難解に聞こえるが,サラッと聞き流していると,如何にも“ジャズ・ピアニスト”して聴こえてしまう。

 う〜む。『エルモ・ホープ・トリオ』はなかなかに手強い。上級者向けのピアノ・トリオである。
 平易な語り口で語りかけるので一瞬分かったつもりになってしまうが,エルモ・ホープは意図時にツボを外し核心を隠してくる。まるでリスナーに謎かけでもしているように…。

 エルモ・ホープ好きの中でも『エルモ・ホープ・トリオ』は「天の邪鬼なピアノ・ファン」には堪らないアルバムなのだろうなぁ…。

  01. B'S A-PLENTY
  02. BARFLY
  03. EEJAH
  04. BOA
  05. SOMETHING FOR KENNY
  06. LIKE SOMEONE IN LOVE
  07. MINOR BERTHA
  08. TRANQUILITY

(ハイ・ファイ/HIFI 1959年発売/VDJ-1649)
(ライナーノーツ/小川隆夫)

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今津 雅仁 / MASATO5

MASATO-1 難解なジャズの方が人気が發い里漏里であるが,誰が聴いても分かりやすいジャズこそが「本家本元のジャズ」であろう。底抜けに楽しいアドリブが延々と続くジャズこそが「世界一」楽しい音楽だと思っている。
 最右翼はやっぱりファンキージャズになるのかなぁ?

 管理人がそう思うのは実体験があるからだ。1989年に発売された今津雅仁の『MASATO』の強烈な印象が忘れられないのだ。
 新人と言ってもオッサンだった今津雅仁のセンセーションなデビューに衝撃を受けた。実際に『MASATO』を聴いた後,キャノンボール・アダレイの『THEM DIRTY BLUES』を買ってしまったっけ?
 とにもかくにも「一期一会」のアドリブ一発の魅力にメロメロになった記憶がある。

 今津雅仁はとにかく思いっ切りバリバリとテナーサックスを吹き上げる。そこに理性とか構成とかは感じられない。本能的に思いつくがままにテナーサックスをドライブさせている。
 流暢に言葉をつくすよりも,ぶっきらぼうな言い回しのほうが伝わることがあるように,今津雅仁の「出たとこ勝負」のメロディアスが「瞬間芸術的」で聴いていて気分が高揚してくる。いいフレーズを聴く度に,管理人もガッツ・ポーズしてしまっている。

 今津雅仁テナーサックスは,時折音程を外しているが,それもこれも全てが今津雅仁の“味”である。今津雅仁テナーサックスには“雰囲気”がある。

 これってなんだろう。人を惹き付けてやまない魅力がある。ガッと掴まれては思わず聴きいってしまう魅力がある。何だか今まで聴いたことのない音が聴こえている。調子の悪
い時のソニー・ロリンズといった感じ?

MASATO-2 今津雅仁というテナーマンは日本語でテナーサックスを吹き上げる。極太な音でブルージーに,またユーモアをもって吹き上げる。
 なるほど,使っている楽器,リズム,音階,イントネーションなど語法的にはアメリカの「真似」かもしれないが,今津雅仁の日本語でテナーを聴いていると,そこそこの演奏でも,なんかこう,しっくりくるものがある。「ははあ,なるほど」ってな感じ。

 思うに,優れた日本人ジャズマンの演奏するジャズは「音が日本語」だからなんでしょう。彼らは片言の下手な英語なんかじゃなく,魂のこもった日本語で堂々とジャズを会話している。

 今津雅仁の『MASATO』に説得されてしまった。今津雅仁の日本語テナーの真髄とは“広島弁”あるいは“博多弁”のあれなのである。

  01. FIRE BALL
  02. VIOLET LOVE
  03. ZOOM
  04. SO LONG
  05. LIKE FORREST
  06. BAGDAD
  07. DEAR HANK

(ファンハウス/FUN HOUSE 1989年発売/00FD-7126)
(ライナーノーツ/小川隆夫)

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パコ・デルシア/アル・ディメオラ/ジョン・マクラフリン / THE GUITAR TRIO4

THE GUITAR TRIO-1 世紀の大名盤フライデイ・ナイト・イン・サンフランシスコ〜スーパー・ギター・トリオ・ライヴ!』から15年。アル・ディ・メオラジョン・マクラフリンパコ・デ・ルシアの3人組による「スーパー・ギター・トリオ」が帰ってきてくれた。

 ただし,自分たちが作り上げた『フライデイ・ナイト・イン・サンフランシスコ〜スーパー・ギター・トリオ・ライヴ!』をそう簡単には超えられないことを「スーパー・ギター・トリオ」の3人は理解している。だから新しいアイディアが『THE GUITAR TRIO』という1枚のアルバムになるまでに15年もの年月が必要だったのだ。

← 注:『フライデイ・ナイト・イン・サンフランシスコ〜スーパー・ギター・トリオ・ライヴ!』を,つい2年ほど前に聴いた管理人の感想はリアルに体感したアル・ディ・メオラジョン・マクラフリンパコ・デ・ルシアのファンより熱情が劣っても致し方ありません。残念。

 『THE GUITAR TRIO』の第一印象は,随分と地味な演奏に感じられた。
 ズバリ『THE GUITAR TRIO』の聴き所とは,緻密なアンサンブルを鳴らす手段としてのギター・バトルにある。つまりアドリブ一発のギター・バトルが繰り広げられるものではなく,全てが計算された構成の一部としてギターが登場している。

 要はギターありきではなく音楽ありき。随分と大人なアコースティックギターの掛け合いがじわじわと来る! 奥行きのある構成と3人の共鳴するギターが心地よいバランスで押し寄せてくる!

 『THE GUITAR TRIO』の聴き始めは,とにかく超高速カッティング&ピッキングに耳が奪われる。そして次第に早弾きと早弾きの間を埋める“メロディアスな”バッキングやフレージングに耳が行く。

 そう。『THE GUITAR TRIO』は,アコースティックギター2本だけ,3本だけのジャズギターによるアンサンブル集。
 「スーパー・ギター・トリオ」におけるアル・ディ・メオラジョン・マクラフリンパコ・デ・ルシアの役所とは,アンサンブルの流れに合わせて,自分が主役を張った1秒後に脇役へ回っても,主役並みに光り輝くサイド・ギター・スタイル集。

 ズバリ,自分の陣地に相手を引き込もうというスタイルのアル・ディ・メオラ,逆に相手の陣地に入り込むスタイルのジョン・マクラフリン,そして一番の自信家=パコ・デ・ルシアの「ついて来れるものならついて来い」スタイルの違いが,目まぐるしく交錯しては絡み合う,白熱のアンサンブル「裏バトル」集。

THE GUITAR TRIO-2 管理人の結論。『THE GUITAR TRIO批評

 『THE GUITAR TRIO』は“売り”である,アクロバティックなギターの“名人芸”が聴き所に違いないがハイライトは「上質のジャズ・ギター」に違いない。

 そう。『THE GUITAR TRIO』は,一部のギター・キッズだけが楽しむためのアルバムではない。実に音楽的なジャズ・ギターの“鳴り”に毎回魅了されてしまう。素晴らしい。

  01. LA ESTIBA
  02. BEYOND THE MIRAGE
  03. MIDSUMMER NIGHT
  04. MANHA DE CARNAVAL
  05. LETTER FROM INDIA
  06. ESPIRITU
  07. LE MONASTERE DANS LES MONTAGNES
  08. AZZURA
  09. CARDEOSA

(ヴァーヴ/VERVE 1996年発売/POCJ-1350)
(ライナーノーツ/成田正)

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ノブ・ケイン / NOBU CAINE4

NOBU CAINE-1 角松敏生フュージョンの人である。いつの日か制作されるフュージョン・アルバムを売る目的でまずは歌を歌ってきた人である。

 そんな角松敏生の“本性丸出し”の1つがソロ・アルバムの『SEA IS A LADY』であるとすれば,もう1つがプロデュース・アルバムの『NOBU CAIN』である。
 『SEA IS A LADY』では表現できなかった,角松敏生の考える「もう1つのフュージョンの理想形」が『NOBU CAIN』には色濃い。

 「ノブ・ケイン」とは,パーカッション斎藤ノブを中心に集まった「オール・ジャパン・スタジオ・ミュージシャン・リズム・セクション・バンド」である。
 メンバーはパーカッション斎藤ノブドラム村上“ポンタ”秀一島村英二ツインドラムベース青木智仁,そこにキーボード難波正司小林信吾ギター松原正樹の上物が乗っている。

 そんな「ノブ・ケイン」の『NOBU CAIN』を初めて聴いた時の“ギャップ”が今も忘れられない。
 『NOBU CAIN』聴くまではその当時,世界を席巻していた「HIROSHIMA」的な音楽をイメージしていたのだが,聴いてビックリ! 耳に飛び込んできた音楽のイメージは「角松敏生のインスト」そのまんま!

 「ノブ・ケイン」の基本は“ドンシャリ”である。しかし,単調なリズムがループする後ろで鉄壁のリズム・セクションが「ザ・角松敏生」を表現していることに驚きを隠せなかった。
 あっ,そもそも「ノブ・ケイン」のメンバーとは角松敏生のバック・バンドの面々たちの集合体だったのですね? 自然とカドマツ・ナイズされている!

 管理人は「ノブ・ケイン」について7年間ずっとそのように思ってきた。「ジンサク」の『DISPENSATION』を聴くまでは…。

NOBU CAINE-2 ジンサクの『DISPENSATION』を聴いて初めて「ノブ・ケイン」が理解できたし「ザ・角松敏生」が理解できた。
 そう。角松敏生フュージョンを表現する上でギター以上にベースドラムパーカッションで表現することに長けている。素っ晴らしい才能である。
 あの「ジンサク」がPOPになるくらいだから「ノブ・ケイン」がPOPに振れるのも当然ではなかろうか!?

 管理人の結論。『NOBU CAIN批評

 『NOBU CAIN』は当時流行りのJ−POPのインストである。しかしインストなのに歌っている。これぞフュージョンの人の音楽である。これぞフュージョンの醍醐味である。

 角松敏生フュージョン愛,恐るべし! 角松敏生の才能,恐るべし!

  01. ASIAN WIND
  02. YOU ARE A GREAT GIRL〜interlude 香港の朝市
  03. SAVANNA MOON
  04. BAN-COCK
  05. JESSICA
  06. NIGHT IN KOZA
  07. CARIBBEAN PIRATES
  08. ソバカスのある少女
  09. I'M GONNA FORGET YOU〜BACK TO THE ISLAND

(オーン・レコード/OM RECORDS 1989年発売/M32D-1003)
(ライナーノーツ/小倉エージ)

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フランク・アヴィタビレ / ジャスト・プレイ5

JUST PLAY-1 フランク・アヴィタビレの『JUST PLAY』(以下『ジャスト・プレイ』)とは国府弘子の『PIANO TAPESTRY』〜『PIANO ANNIVERSARY』〜『PIANO VOICES』の続編となるピアノ・ソロ・アルバムである。

 騙されたと思ってこの順番で『ジャスト・プレイ』を聴いてみてほしい。絶対にそう思えるから!? ← 多分,リリース時期が近いせいでそう思ってしまったのかもしれません。

 そう。管理人にとってフランク・アヴィタビレとは「ミシェル・ペトルチアーニな人」ではなく「国府弘子な人」である。
 国府弘子がPOP寄りから本格ジャズを越えてきたように,フランク・アヴィタビレにもジャズ以外の要素の方が耳に残る。

 これがおフランスのせいなのかは定かではないがクラシックに近い感覚があってアメリカン・ジャズではない。しかし不思議とアルバムを1枚聴き終えた後には「これぞジャズ・ピアノ以外の何物でもない」と思ってしまうのだから素晴らしい。
 ジャズ評論の世界ではこれを「ミシェル・ペトルチアーニ直系」と定義するのだろうか?

 それにしても定番のピアノ・トリオではイマイチなのにソロ・ピアノになると表情が一変するピアニストに共通するのは,ジャズを弾こうとしていないことであろう。
 本人はジャズを弾くではなく,ピアノを弾くでもなく,ただ自分の好きなように音楽を奏でている。イマジネーション豊かな鍵盤音楽の世界にドップリである。

 『ジャスト・プレイ』はジャズの方法論で演奏されている。新しさというよりもオーソドックスな伝統を感じる。フランク・アヴィタビレはゼロからのクリエイターなどではない。
 そう考えると『イン・トラディション〜フランク・アヴィタビレ・デビュー』がハービー・ハンコックっぽく仕上がったことにも合点がいくし『ジャスト・プレイ』での国府弘子にも合点がいく。

JUST PLAY-2 ズバリ,フランク・アヴィタビレの魅力とは「美しいものパッケージング」なジャズ・ピアニスト
 『ジャスト・プレイ』にはフランク・アヴィタビレが体験してきた「美」が全部詰まっている。「美」のピアニズムが持つカタルシスを感じてやまない。

 ところで『ボディ・アンド・ソウル批評の中で,長尺が苦手なフランク・アヴィタビレへの不満をちょっとだけ書いてしまったが,その理由も『ジャスト・プレイ』で回収できたことも記しておく。

 フランク・アヴィタビレが長尺が苦手でないことは11分12秒の【AUGUST IN PARIS】が証明してくれた。1曲の演奏時間が総じて短時間なのは,その曲の美しい部分だけにフォーカスした結果なのだと思っている。

  01. RESONANCE
  02. LITTRE A LOISE
  03. MY ROMANCE
  04. AUGUST IN PARIS
  05. MEMORIES
  06. MAGIC MIRROR
  07. SMILE
  08. MOODY PIANO
  09. MORNING STAR
  10. DREAMLAND
  11. ISOPOD
  12. REAL ADDICT
  13. CORPS & AMES
  14. NATURE BOY
  15. POINCIANA
  16. MEDLEY; MISS LAURENCE〜FACIN'UP〜REVERIE〜LOVERS

(ドレフュス・ジャズ/DREYFUS JAZZ 2005年発売/VACR-2072)
(デジパック仕様)
(ライナーノーツ/アルノード・メルリン)

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勝田 一樹 / KAZUKI KATSUTA5

KAZUKI KATSUTA-1 勝田一樹の1st『KAZUKI KATSUTA』を昨年買った。理由はDIMENSIONのニュー・アルバムが出ないと分かったから!
 勝田一樹がなぜこのタイミングでソロ・アルバムと思ったのが2014年のこと。『KAZUKI KATSUTA』のリリースはDIMENSIONのニュー・アルバムが出ない年のための保険だったから!

 だって,あの勝田一樹がこれまでソロ・アルバムを出さなかったこと自体が不思議だったし,勝田一樹DIMENSION以外でやりたい音楽は「JAFROSAX」と「KK JAM」の活動で実現してきたと考えていたから!
 だから何で今更カッコ悪いことをしたのか意味不明だった。でもやっと『KAZUKI KATSUTA』のリリースはDIMENSIONのニュー・アルバムが出ない年のための保険だったことが分かったのだ。

 ズバリ『KAZUKI KATSUTA』はDIMENSIONのニュー・アルバム『31(仮)』だと認識する。それくらいに“ほぼDIMENSION”な極上フュージョン・アルバムであった。

 管理人は勝田一樹の多忙なソロ活動がDIMENSIONのリリース停止の原因だと考えていたが『KAZUKI KATSUTA』=“ほぼDIMENSION”がそれを裏付けた形となった。
( 日本全国のカツオ・ファンの皆さんごめんなさい。こうは書いても管理人はカツオのことが大大好きなのです。信じてください。でも本当にディメの足を引っ張っていると思うから… )。

 過去の勝田一樹ソロ活動に,これほどまでにDIMENSIONを感じたことはなかった。「JAFROSAX」「KK JAM」にDIMENSIONを感じたことはなかった。な・の・に&な・ぜ・に…。

 そう。管理人の不満は小野塚晃増崎孝司が参加しているのに関わらずDIMENSIONのDNAを勝田一樹が“独り占め”している,その一点だけである。
 それと須藤満則竹裕之が参加しているにも関わらずスクェアっぽさを微塵も感じないのも見当違いな不満でもある。グルーヴ・マイスターの川崎哲平が思いっきり目立っている。

KAZUKI KATSUTA-2  『KAZUKI KATSUTA』はフュージョン・アルバムとしてはパーフェクトである。『KAZUKI KATSUTA』はDIMENSIONのアルバムとしてもパーフェクトである。
 しかしそれだけに『KAZUKI KATSUTA』を勝田一樹ソロ・アルバムとして聴くのは難しい。

 ふむふむ。そろそろオチが見えてきましたか? 結論としては「DIMENSION勝田一樹」をかつてここまで感じたアルバムはありません。

 こうなったらDIMENSIONのニュー・アルバムは勝田一樹ソロ・アルバムで聴くしかない!?
 もし今年もし来年。DIMENSIONのニュー・アルバムが出ない場合は勝田一樹の2nd『VISUALIZE』と勝田一樹の3rd『SAXREE』を買おうと思います!

  01. Street Dance
  02. Got It Goin'on
  03. Cross Road
  04. True Heart
  05. Perfect Future
  06. Long Way To Go
  07. W・R・T
  08. Midnight Black
  09. Dr.Jackle
  10. Free

(ザイン/ZAIN 2014年発売/ZACL-9071)

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フランク・アヴィタビレ / ボディ・アンド・ソウル4

BEMSHA SWING-1 ミシェル・ペトルチアーニ直系という触れ込みも『IN TRADITIONAL』でのバド・パウエル集の印象が薄く,結局は“雨後の筍”の一人というのがフランク・アヴィタビレに対する管理人の評価だった。

 だからフランク・アヴィタビレの2nd『RIGHT TIME』はニールス・ベデルセン入りにも関わらず関心なし。
 そして実を言うと今夜紹介する3rdの『BEMSHA SWING』(以下『ボディ・アンド・ソウル』)もパスしてきた。

 『ボディ・アンド・ソウル』を買ったのは,フランク・アヴィタビレ初のピアノ・ソロ作=4th『JUST PLAY』(以下『ジャスト・プレイ』)に衝撃を受けたから。
 『ボディ・アンド・ソウル』は『ジャスト・プレイ』の次に買った。

 …で,管理人の結論。『ボディ・アンド・ソウル批評

 『ボディ・アンド・ソウル』は,やっぱり期待外れだった。なぜだろう? フランク・アヴィタビレは長尺が苦手なのだろうか? 聴かせる演奏がない。音に没頭させるような情感が薄い。
 『IN TRADITIONAL』が14曲で『BEMSHA SWING』も14曲。収録曲数が多いということは1曲の演奏時間が短いということ。長尺に耐えうる構成力に自信がないのか?

 事実『ボディ・アンド・ソウル』のハイライトは本編にはない。余興としてボーナス・トラックに収められたピアノ・ソロでの【フェイシン・アップ】と【レヴリィ】である。

BEMSHA SWING-2 フランク・アヴィタビレというピアニストピアノ・ソロとなると俄然イマジネーションが豊かになり色彩豊かなピアノが流れ出すタイプ。
 この上なく美しいタッチがおフランス・ドンピシャリ。フランク・アヴィタビレの秘められたポテンシャルの高さは個人的には国府弘子を想起する。

 さて,ピアノ・トリオフランク・アヴィタビレ唯一の収穫は【レヴリィ】である。【レヴリィ】が流れ出した瞬間「あっ,ミシェル・ペトルチアーニだ」と感じてしまったのも事実。
 あながちミシェル・ペトルチアーニ直系という評価は間違いではなかった。

  01. REVERIE
  02. FINE-TUNE
  03. CARROUSEL
  04. BODY AND SOUL
  05. 'ROUND THE STEPS
  06. JULY IN PARIS
  07. ALL BLUES
  08. BYE BYE BLACKBIRD
  09. ALEA
  10. BEMSHA SWING
  11. PRELUDE TO A KISS
  12. SECRET SONG
  13. FACIN' UP
  14. REVERIE

(ドレフュス・ジャズ/DREYFUS JAZZ 2002年発売/VACR-2058)
(ライナーノーツ/クロード・キャリエール,杉田宏樹)

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フランク・アヴィタビレ / イン・トラディション〜フランク・アヴィタビレ・デビュー4

IN TRADITION-1 ミシェル・ペトルチアーニフランク・アヴィタビレの関係性はキース・ジャレットブラッド・メルドーのような関係性の中にある。
 しかし現在この4人は対等ではない。フランク・アヴィタビレ1人だけが没落している。

 過去においてミシェル・ペトルチアーニキース・ジャレットブラッド・メルドーバド・パウエルの曲を演奏したことがある。
 しかしそんな超大物3人もフランク・アヴィタビレのように“しなやかに”バド・パウエルの曲を演奏したことはなかった。ミシェル・ペトルチアーニフランク・アヴィタビレが見初められたのも十分に理解できる。
 だからこそフランク・アヴィタビレの『IN TRADITIONAL』(以下『イン・トラディション〜フランク・アヴィタビレ・デビュー』)の“その後”が何とも勿体ないと思うのだ。

 ミシェル・ペトルチアーニがプロデュースしたことが話題先行したフランク・アヴィタビレ。ハッキリ書くと『イン・トラディション〜フランク・アヴィタビレ・デビュー』の主役はミシェル・ペトルチアーニであった。
 ミシェル・ペトルチアーニがどんな人材を発掘し,どのようにプロデュースしたのかに関心が向いた雰囲気があった。フランク・アヴィタビレミシェル・ペトルチアーニのおまけのように扱われていた。

 ミシェル・ペトルチアーニの死によってミシェル・ペトルチアーニのプロデュース作は『イン・トラディション〜フランク・アヴィタビレ・デビュー』のたった1枚で終わったのだから,こんなことになるのならフランク・アヴィタビレは“ひっそりと”デビューした方が良かった? 遅かれ早かれ,絶対にいつかは拍手喝采される“ジャズ・ピアニスト”になっていたはずなのだから…。

 こんなことを書いたのもフランク・アヴィタビレピアノからは「ミシェル・ペトルチアーニの弟子」は飛び出してこない。
 『イン・トラディション〜フランク・アヴィタビレ・デビュー』がバド・パウエル集だったからそう思ってしまうのかもしれないが,思うにフランク・アヴィタビレビル・エヴァンスを聴いてこなかったのだろう。内省的な雰囲気など全く感じない。

IN TRADITION-2 それどころか伝えたいことが分かりやすいという点ではハービー・ハンコックっぽい。そう思って聞いているとハービー・ハンコックの“カメレオン”的なインパクトや端正さがしっかりと刻まれている。

 思えばミシェル・ペトルチアーニキース・ジャレットブラッド・メルドーデビュー作では静かだった。
 フランク・アヴィタビレの“カメレオン”的なインパクトや端正さが花開くのはこれからだ。…と本当にそう思っていた…。

  01. GETTIN' THERE
  02. TEMPUS FUGIT
  03. TOPSY TURVY
  04. TIME WAITS
  05. CELIA
  06. WILLOW GROOVE
  07. TROIS GROS
  08. THERE WILL NEVER BE ANOTHER YOU
  09. AUGUST IN PARIS
  10. BURT COVERS BUD
  11. WAIL
  12. KENNY
  13. BUD'S BUBBLE
  14. SILENCE

(ドレフュス・ジャズ/DREYFUS JAZZ 1998年発売/VACR-2029)
(ライナーノーツ/ミシェル・ペトルチアーニ,アルノー・メーラン)

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DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN / STRUCTURE ET FORCE5

STRUCTURE ET FORCE-1 管理人はリアル・マイルス世代を羨ましく思ってきた。特に電化マイルスを体感した世代が羨ましくてしょうがない。ある日,突然,ジャズの世界が一変する。そんな衝撃をリアルに体験してみたかった。

 でっ「DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN(DCPRG)」である。そして『STRUCTURE ET FORCE』である。
 『STRUCTURE ET FORCE』を聴いた瞬間,現在進行形の電化マイルスを体感したような気分がした。これだこれなのだ。

 「DCPRG」は菊地成孔であり菊地雅章である。分かっている。電化マイルスとは全く別物だということも100%承知している。でもその上で,これだこれなのだ。
 『STRUCTURE ET FORCE』のリリースで,少なくとも管理人のジャズ観が変わった。ジャズとは美メロが命ではない。ジャズの主役はクリエイトしたビートに楽しみがあるのだ。

 管理人がこれだけ言うには訳がある。『STRUCTURE ET FORCE』には聴けるメロディーなど1つもない。リズムについても聴けるリズムなど1つもない。ただ耳に飛び込んでくるリズム。脳内に入ってくるリズムと格闘するアルバムである。
 難度高めなのにポリリズムとは思えないほど聴きやすい音の洪水が快感である。雰囲気だけで盛り上がれるアルバムが『STRUCTURE ET FORCE』なのである。

 そう。『STRUCTURE ET FORCE』こそが菊地成孔流の『ON THE CORNER』。『ON THE CORNER』的なものは“突然変異的”に表われる宿命なのだった。
 だから「DCPRG」に,これ以上『ON THE CORNER』的なものを期待してはいけない。

 事実『STRUCTURE ET FORCE』以降の「DCPRG」は『STRUCTURE ET FORCE』の二番煎じ的なものばかりに聴こえてしまい,急激に関心を失ってしまった。『STRUCTURE ET FORCE』は罪なアルバムなのである。

 おおっと,このように書くと『ON THE CORNER』や『STRUCTURE ET FORCE』は支離滅裂で破綻し続ける即興演奏的なものをイメージするかもしれないので,ここで明確に否定しておく。

 実は『ON THE CORNER』というアルバム。全てが計算づくのアルバムである。そして『STRUCTURE ET FORCE』もまた計算された『構造美』が浮かんでくるアルバムだと思う。複雑な構成を聴きやすくするために完璧に構築した『構造美』が眩しい。

STRUCTURE ET FORCE-2 「DCPRG」のメンバー14人の音が「POPに,そしてダンサブルに」の統一感を持って迫ってくる。
 切ないムードをふんだんに溢れさせる一方で,演奏の不安定さ。そこに隙や崩れたところなどない。さらにジャズの煙った空気やフリーの危うさもない。ソロアドリブの探り合いや弛緩もなければ不穏さも敢えて抜いている。

 ズバリ『STRUCTURE ET FORCE』にあるのは鋭利で整ったビートだけである。3管のブラスがメロディー方面ではなくビート方面に厚みを持たせている。全てがきっちり完璧にまとまっている。ミニマルな整然さがある。

 「DCPRG」のメンバー14人の音が全方位的に鳴っている。踊れる要素をギリギリ残しつつも,異様に多い音数と分散した音の配置,殺人的な譜割によってポリリズムの快楽を追及したリズムの構築。打楽器パートの音に焦点を合わせる度,頭がグラグラと混濁する。

 狂ったリズムに最初はノレナイ居心地の悪さがポリリズムを掴んでくるとどんどん居心地の良さに転換していく。テンポも高速一辺倒ではない。刻むビートと並行する複雑なリズムに慣れるとハマル。グルーヴするポリリズムが超気持ちいい〜。

  01. Structure 1:LA STRUCTURE DE LA MODERNE
  02. Structure 2:LA STRUCTURE DEL' AMERIQUE MEDIEVAL
  03. Structure 3:LA STRUCTURE DU SOLIDE ROTATOIRE ET DE
     LA PROSTITUTION

  04. Structure 4:LA STRUCTURE DU TEMPLE ET PARADIS
  05. Structure 5:LA STRUCTURE DES LIEUX DE PLAISIR ET DU
     PORT

  06. Structure 6:LA STRUCTURE L'EXTRACTION DU D'UNE
     BOUTELILLE DE CHAMPAGNE


(Pヴァイン/P-VINE 2003年発売/PCD-18508)

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フレッド・ジャクソン / フーティン・ン・トゥーティン4

HOOTIN' 'N TOOTIN'-1 『HOOTIN’ ’N TOOTIN’』(以下『フーティン・ン・トゥーティン』)について語る時,第一の枕詞は大抵,フレッド・ジャクソン唯一のリーダー作という言葉であろう。

 それは事実であって事実ではない。なぜなら『フーティン・ン・トゥーティン』のリーダーは,テナーサックスフレッド・ジャクソンではなくアール・ヴァンダイクオルガンだからである。

 アール・ヴァンダイクオルガンテナーサックスをリードしていく。そしてこのダークな音世界こそがアール・ヴァンダイクオルガンの世界そのまんま。
 アール・ヴァンダイクオルガンが「漆黒の闇」に粘着している。べったりと張り付いている。

 しかしそれだけではない。オルガンソロとなれば軽やかにスイングしていく。ブルージーで押してくる。
 そう。モータウンのオルガニストとして活躍していたアール・ヴァンダイクの真骨頂が鳴っている。だから『フーティン・ン・トゥーティン』のリーダーはアール・ヴァンダイクオルガンなのだ。

 ではフレッド・ジャクソンテナーサックスはというとメインとして担がれただけのことはある。男らしいテナーサックスの“らしさ”たっぷりの大ブロー。「漆黒の闇」に粘着しているテナーサックスのイメージ通りな名演である。

 そう。『フーティン・ン・トゥーティン』の第二の枕詞=ブルーノートの「幻の名盤」の所以は2人のリーダー,フレッド・ジャクソンアール・ヴァンダイクの「せめぎ合い」と「譲り合い」の妙にこそある。

 『フーティン・ン・トゥーティン』は,70%がアール・ヴァンダイクオルガンで出来ているが,これぞ『フーティン・ン・トゥーティン』という特有の色を付けているのは,わずか20%フレッド・ジャクソンテナーサックスの方である。
( 残り10%はギターウィリー・ジョーンズドラムウィルバート・ホーガンが奏でるオルガントリオ )

HOOTIN' 'N TOOTIN'-2 うむふむ。この構図。管理人が連想したのはウェザー・リポートにおけるジョー・ザビヌルキーボードウェイン・ショーターテナーサックスとの関係である。
 ウェザー・リポートウェザー・リポートとして聴こえるためには,ジョー・ザビヌルキーボードウェイン・ショーターテナーサックスの両者が揃わなければならない。どちらか一方では絶対にウェザー・リポートの音とはならない。

 『フーティン・ン・トゥーティン』をよくよく聴くと,これが実は先進的なジャズ・アルバムだという気分になってくる。ブルースだがソウルではない。R&B調の展開には重さを削った都会的な新鮮な響きが感じられる。

 もしや,ジョー・ザビヌルウェイン・ショーターウェザー・リポートの1st『WEATHER REPORT』のモチーフとして「せめぎ合い」と「譲り合い」の『フーティン・ン・トゥーティン』をイメージしていたりして?

  01. DIPPIN' IN THE BAG
  02. SOUTHERN EXPOSURE
  03. PREACH BROTHER
  04. HOOTIN' 'N TOOTIN'
  05. EASIN' ON DOWN
  06. THAT'S WHERE IT'S AT
  07. WAY DOWN HOME

(ブルーノート/BLUE NOTE 1962年発売/TOCJ-9034)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/ダドリー・ウィリアムス,原田和典)

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DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN / MUSICAL FROM CHAOS4

MUSICAL FROM CHAOS-1 『REPORT FROM IRON MOUNTAIN』は,1曲を除いてスッキリした楽曲ばかりで結構好きだったのだが,菊地成孔が第二期「DCPRG」が目指すスタイルとして選んだのは,その1曲の嫌いな難曲【CATCH 22】であった。

 『MUSIC FROM CHAOS』は,第一期「DCPRG」の2枚組ベストライブ集であるが,実にそのうちの1枚丸々が【CATCH 22】の5テイク! それくらいにライブで演奏するとこの難曲が豹変する!
 いや〜【CATCH 22】っていい曲だったのですねっ。そしてこの5テイク全てに5通りの楽しみ方がある。菊地成孔にまんまとやられてしまったのだ。

 【CATCH 22】は,メンバー全員がバラバラのリズムを演奏する怒濤のポリリズム・ファンクにして,ライブのたびにテンポやリズム・パターンが現在進行形で変わっていく。
 【CATCH 22】は“変態集団”「DCPRG」にとって格好の素材であって,聴く度に新しさを感じさせる即興演奏がズラリ。全員が違うループ演奏を施すマルチ・ビート1曲の5テイク集なのだが,1×5ではなく1×10のようなパワーに圧倒されてしまう。まるで毎回新曲を演奏しているかのような実験的な演奏集だと思う。

 …とこのように余裕で【CATCH 22】を見直すことができたのは「DISC2 IRON MOUNTAIN MENU」の存在があったから!
 無類の【】好きとしては,正直,DISC1の【CATCH 22】の5連発が【】の5連発だったらよかったのにとも思うのだがDISC2に【】が入っていたので許すことにした?

MUSICAL FROM CHAOS-2 DISC2は【】以外にもアグレッシヴだがPOPな美メロに引っ張られてライブだけど惹かれる演奏集になっている。流石に同じ曲のテイク違いだけではセールス的に勝負できないと考えたのかも?

 『MUSIC FROM CHAOS』の発売当時も【】ばかりを聴いていたが,ある時からマイルス・デイビスの【SPANISH KEY】からのビージーズの【STAIN ALIVE】という『ビッチェズ・ブリュー』からのディスコ・チューンの流れが【】と合っていることに気付いた。そうしたら【ホー・チ・ミン市のミラーボール】と【】も合っていることに気付いた。

 そもそも「DCPRG」とは電化マイルスの『ON THE CORNER』だった訳だし『MUSIC FROM CHAOS』とはライブ盤なのだから,ただただ音を浴びるように聴いて気持ちのよい瞬間を感じられればそれでよい。じわじわと興奮が高まればなおよい。「考えるな,感じろ〜」。

 【SPANISH KEY】〜【STAIN ALIVE】〜【】〜【ホー・チ・ミン市のミラーボール】への怒涛のごった煮ファンクの,しかし計算されたリフ回しがカッコイイと思える瞬間がポツポツ。

  Disc 1 Catch 22
  01. CATCH 22
  02. CATCH 22
  03. CATCH 22
  04. CATCH 22
  05. CATCH 22

  Disc 2 Iron Mountain Menu
  01. PLAYMATE AT HANOI
  02. SPANISH KEY
  03. STAIN ALIVE
  04. CIRCLE/LINE〜HARD CORE PEACE
  05. S
  06. ホー・チ・ミン市のミラーボール

(Pヴァイン/P-VINE 2003年発売/PCD-18506/7)
(CD2枚組)

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デクスター・ゴードン / ダディ・プレイズ・ザ・ホーン5

DADDY PLAYS THE HORN-1 『DADDY PLAYS THE HORN』(以下『ダディ・プレイズ・ザ・ホーン』)と来れば,デクスター・ゴードン・ファン以外にとっては,とってもチャーミングなジャケット写真の名画であろう。管理人もこのジャケット写真が大好きである。

 しか〜し,デックスのマニアにとって『ダディ・プレイズ・ザ・ホーン』と来れば,麻薬禍→仮釈放中のお小遣い稼ぎ→なのに名演→どうなっているの!?であろう。

 それくらい『ダディ・プレイズ・ザ・ホーン』におけるデクスター・ゴードンテナーサックスが強い! 刑務所から出て1・2の3で吹いてこの名演デックスは並みのテナーマンとはレベルが違うのだ。その証明となる1枚なのだ。

 数年前に体操の内村航平が金メダル候補として騒がれていた頃のエピソードを聞いた時,なぜだか頭の中で『ダディ・プレイズ・ザ・ホーン』がシンクロした。
 内村航平が金メダルを取るための練習について「寝起きでも普通と変わらぬ演技ができる」「寝起きでも『6種目やれ』って言われたらできるくらいの安定感」というコメントを聴いて,思わず出所直後に録音されたのに,いつも通りの“威風堂々”デクスター・ゴードンな『ダディ・プレイズ・ザ・ホーン』が脳内の倉庫から飛び出してきたのだ!

 『ダディ・プレイズ・ザ・ホーン』の特徴とは懐の深いスイング感。ゆったりした展開での大ブロウがスケールの大きな音楽を鳴らしているということ。
 こういう音楽は誰かに教えられても出来るのもではなし,真似など出来っこない。デクスター・ゴードンの強烈な個性が鳴っている。そして最高のリズム隊が鳴っている。

 思えばピアノケニー・ドリューベースリロイ・ヴィネガードラムローレンス・マラブルのリズム隊が参加できたのも,仮釈放中ゆえの急造レコーディングが生んだ偶然の結果だと思う。
 『ダディ・プレイズ・ザ・ホーンセッションのためにケニー・ドリューに声がかかった時,ケニー・ドリューはいつも共演していたリロイ・ヴィネガーローレンス・マラブルとのトリオを希望したという。

DADDY PLAYS THE HORN-2 このケニー・ドリューピアノ・トリオデクスター・ゴードンの“味”と相性バツグン。リロイ・ヴィネガーローレンス・マラブルウエストコーストジャズな香りが「パリッ」とした感じで,とぼけた感じのデクスター・ゴードンテナーサックスがブライトに響いて聴こえる要因だと思う。

 『ダディ・プレイズ・ザ・ホーン』のハイライトは【CONFIRMATION】。チャーリー・パーカー得意の高速ナンバーのセオリーを無視して,ややスロー(それでも結構早いと思う)ながらも「山あり谷あり」の見せ場を伴い吹きこなしていく。
 リロイ・ヴィネガーの重いウォーキング・ベースを連れ回す,豪快なブロウにチャーリー・パーカーの面影はないはブランクなど感じさせないはで超カッコイイ系の演奏の一つとして推薦する。

  01. DADDY PLAYS THE HORN
  02. CONFIRMATION
  03. DARN THAT DREAM
  04. NUMBER FOUR
  05. AUTUMN IN NEW YORK
  06. YOU CAN DEPEND ON ME

(ベツレヘム/BETHLEHEM 1955年発売/TOCJ-62026)
(ライナーノーツ/ジョー・ミュランイェン,小川隆夫,岡島豊樹)

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DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN / REPORT FROM IRON MOUNTAIN5

REPORT FROM IRON MOUNTAIN-1 菊地成孔の2つのバンド。すなわち「DUB SEXTET」と「DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN(DCPRG)」は共に電化マイルスを模倣するバンドである。

 ではなぜ菊地成孔は電化マイルスを模倣するバンドを2つも用意する必要があったのだろうか? その答えは「DUB SEXTET」と「DCPRG」との性格の違いにある。
 そう。電化マイルスを高レベルで表現するには性格の異なる2つのバンドを用意する必要がある。この意見に管理人も賛成である。

 「DUB SEXTET」の方は,ウェイン・ショータージョー・ザビヌルからのウェザー・リポート方面,ハービー・ハンコックからのヘッド・ハンターズ方面,チック・コリアからのリターン・トゥ・フォーエヴァージョン・マクラフリンからのマハヴィシュヌ・オーケストラ方面までを網羅する,菊地成孔が惚れ込んだ“カッチョヨイ”電化マイルスの後継バンド。

 一方の「DCPRG」とは電化マイルスの異端作=『ON THE CORNER』の世界を表現するためのバンドだと思う。

 それくらいに『ON THE CORNER』の演奏には代わりが利かない。つぶしが利かない。だから「DCPRG」でのツイン・ドラムを躍らせたポリリズムなのだった。

( ここでブレイク。これは後で知ったことなのだが,菊地成孔が「DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN(DCPRG)」を結成した目的は電化マイルスではなかった。菊地雅章の『SUSTO』収録の超難曲=7拍子と4拍子のポリリズム【CIRCLE/LINE】を再現したかったからだと語っていた。なあんだ菊地雅章だったのか。電化マイルス菊地成孔とは同意語です。『REPORT FROM IRON MOUNTAIN』収録の4曲目で完コピできています )。

 『REPORT FROM IRON MOUNTAIN』のハイライトとは複雑なポリリズムである。ポリリズムを耳で追っていると大好きな『ON THE CORNER』の世界とダブッていく。リズムの多層性で空気を揺らす。しかし難解さは無い。
 いくつものリズムが混ざり合ったり合わなかったりしながら巨大なグルーヴのカオスが生み出されていく。脳が徐々に破壊されては新しい脳として修復されていくような錯覚と快感が素晴らしい。繰り返し聴き込むうちにポリリズムの構造が紐解かれてゆく…。
 そう。『REPORT FROM IRON MOUNTAIN』の聴き所は「混沌と秩序の芸術」なのであろう。

REPORT FROM IRON MOUNTAIN-2 個人的に「DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN(DCPRG)」のアルバムを全部集めてみた時期があったのだが,その幾らかは売り払ってしまったし,新作も長年買ってはいない。
 第一期「DCPRG」の良さは第二期「DCPRG」にではなく「DUB SEXTET」に引き継がれているように思う。

 振り返れば1stの『REPORT FROM IRON MOUNTAIN』が一番バランスが良かったように思う。正直,アルバムが出る度に「DCPRG」の美味しい音世界が崩れていった印象を抱いている。

 『REPORT FROM IRON MOUNTAIN』にはアドリブも含まれてはいるが,かっちり明瞭にコントロールされたアドリブであって危うい即興の破綻や暴走はない。
 と言うよりもJAZZYなポリリズムの上に乗ったメロディーは完全にポップスのあれである。【】の甘さと展開力には感動で涙がこぼれてくる!

  01. CATCH 22
  02. PLAY MATE AT HANOI
  03. S
  04. CIRCLE/LINE〜HARD CORE PEACE
  05. HEY JOE
  06. MIRROR BALLS

(Pヴァイン/P-VINE 2001年発売/PCD-18502)

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ファッツ・ナバロ / ノスタルジア

NOSTALGIA-1 老練なジャズ・ファンから何度も教えられた。「史上最高のトランペッターとはマイルス・デイビスではない。クリフォード・ブラウンである」。しかし先輩方の教えはこれだけでは終わらない。
 続く言葉はこうである。「そのクリフォード・ブラウンに影響を与えたのがファッツ・ナバロである。つまりトランペッターについて語りたいのならファッツ・ナバロを聴け。ファッツ・ナバロは絶対に避けては通れない」。

 至言である。頑固なジャズ・ファンの教えは正しかった。管理人は『NOSTALGIA』(以下『ノスタルジア』)を聴いてそう思った。

 正直『ノスタルジア』の音造りは,聞いていて楽しいものではない。録音は古いし,フレージングの構成や組み立ても難しい。ビ・バップ特有のウネウネとした旋律が耳に残る。でもそれでも“歌っている”ように聞こえる。普通とは「モノが違う」ことぐらいは誰が聞いても分かることと思う。

 それくらいに『ノスタルジア』の主役はファッツ・ナバロトランペット一択。黄金のトランペットの音色が光り輝いている。一聴すると高音が飛び抜けた派手な演奏に思えるが,どうしてどうして…。

 ファッツ・ナバロが“天才”と称される最大の理由は摩天楼を見ているかのような総合芸術。一音一音にインスピレーションを感じさせるが,曲単位で描かれる広大な音世界の完成度は他の追随を許さない。
 ズバリ,ファッツ・ナバロトランペットはエンタメ系ではなくアート系なのだと思う。

NOSTALGIA-2 管理人の結論。『ノスタルジア批評

 『ノスタルジア』に記録されている,哀愁とブリリアントを同時に放つファッツ・ナバロトランペットは,無機質な演奏が多いビ・バップの可能性と幅を広げた名盤だといえよう。

 『ノスタルジア』でのファッツ・ナバロトランペットは,流麗で淀みなく美しい。こういう特質はクリフォード・ブラウンにも確実に受け継がれている。
 そう。ファッツ・ナバロこそがビ・バップからハード・バップへの架け橋を作ったトランペッター。確かにトランペッターファッツ・ナバロ抜きには語れない。

  01. NOSTALGIA
  02. BARRY'S BOP
  03. BE BOP ROMP
  04. FATS BLOWS
  05. DEXTIVITY
  06. DEXTRPSE
  07. DEXTERS MOOD
  08. INDEX
  09. STEALING TRASH
  10. HOLLERIN' & SCREAMIN'
  11. FRACTURE
  12. CALLING DR. JAZZ

(サヴォイ/SAVOY 1958年発売/COCY-9015)
(ライナーノーツ/アラン・ステイン,瀬川昌久)

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ヤヒロトモヒロ & オズ・アマレーロス / オズ・アマレーロス〜黄夢〜4

TOMOHIRO YAHIRO & OS AMARELOS-1 ヤヒロトモヒロのリーダー・バンドなのだから,さぞパーカッションのバカテク全開かと期待して購入したのに,聴いてみたら「歌もの」&前田優子フィーチャリングだった『TOMOHIRO YAHIRO & OS AMARELOS』(以下『オズ・アマレーロス〜黄夢〜』)。

 このように書いたらハズレだったと思いきや,そうではなかった。前田優子とは「ヤヒロトモヒロ & オズ・アマレーロス」が橋渡ししてくれたサプライズ的な出会いとなった。『オズ・アマレーロス〜黄夢〜』がなかったら前田優子とは出会っていないのだ。
 それくらいに前田優子が「ヤヒロトモヒロ & オズ・アマレーロス」の全てだと思う。前田優子ヴォーカルヤヒロトモヒロパーカッションが踊らされている。

 ズバリ,いつもは誰かを躍らせているヤヒロトモヒロが,誰かに踊らされてみたかったのがヤヒロトモヒロのリーダー・バンド結成の一番の理由であろう。
 歌唱力抜群なのは前田優子NORAかと称えられている。前田優子の伸びやかな歌声とスキャットに身体が自然と動き出す。パンチの効いた熱唱を受けてヤヒロトモヒロパーカッションが,ジャズフュージョン寄りではなくロック寄りなのが実に興味深い。

TOMOHIRO YAHIRO & OS AMARELOS-2 さて,事の詳細は分からないのだが,管理人が生で見た初めてのヤヒロトモヒロが「GAIA CUATRO」だったのだが「GAIA CUATRO」は「ヤヒロトモヒロ & オズ・アマレーロス」の前田優子金子飛鳥に置き換えられたバンドのイメージ。
 ヤヒロトモヒロというジャズパーカッションは,渡辺香津美との「RESONANCE VOX」時代からブレテいなかったんだなぁ。

 「ヤヒロトモヒロ & オズ・アマレーロス」のテーマとは,サンバ,ボサノヴァ,ショーロなど多様な音楽文化の宝庫ともいえるブラジリアン・ロックである。
 「オズ・アマレーロス」とは「黄色い人」って意味なのだが,なんてえのかなー,黄色い人がやるからこそのブラジル音楽への愛,リスペクトがさりげなく感じられる隠れ名盤の1枚だと思う。

  01. UPA NEGUINHO
  02. MENINO DO RIO
  03. O TREM AZUL
  04. ODARA
  05. BANANEIRA
  06. EU VOU...
  07. EU VIM DA BAHIA
  08. NO TABULEIRO DA BAIANA
  09. BRASIL PANDEIRO
  10. E DOCE MORRER NO MAR
  11. PRAM
  12. NA BAIXA DO SAPATEIRO
  13. SAMBA DE DESEJO
  14. DESCOBERTA
  15. ROMARIA
  16. BATUQUE PRA MAIA

(オーマガトキ/OMAGATOKI 2005年発売/OMCA-1035)
(デジパック仕様)
(ライナーノーツ/田中勝則)

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フォープレイ / シルヴァー4

SILVER-1 『SILVER』(以下『シルヴァー』)とは,フォープレイ25周年の記念盤。題してフォープレイの「銀婚式」。
 言わば“フォープレイ・ファミリー”勢揃いの「銀婚式」であって,初代ギタリストリー・リトナーと二代目ギタリストラリー・カールトンもゲスト参加でお祝いに駆けつけている。

← リー・リトナーラリー・カールトンの両雄は,バンドを実際に離れて改めて分かった“フォープレイ・サウンド”の素晴らしさに,ドサクサに紛れて自ら共演を懇願したように思えてしまう?

 『シルヴァー』のテーマは『シルヴァー』。『シルヴァー』の楽曲のタイトルを眺めるだけで,どんだけ銀が好きやねん!
 管理人が好きな『シルヴァー』は,重厚な列車がズンズンと迫ってくる感じの【QUICKSILVER】と切々と訴えかけてくる【A SILVER LINING】の2曲だけだったかなぁ。

 『シルヴァー』の不発要因は「銀婚式」に“フォープレイ・ファミリー”以外の関係者を正規ゲストとして迎えてしまった結果だと思う。
 凡人には理解し難いことだが『シルヴァー』にはボブ・ジェームスのサポートとして3人のキーボード・プレイヤーが演奏している。音のぶ厚い多重録音を行なったせいでセッション的要素は限りなく薄められ,せっかくのリー・リトナーチャック・ローブラリー・カールトンチャック・ローブの共演も期待外れで終わっている。
 その一方でテナーサックスカーク・ウェイラムとの共演では,単なる引立て役のバック・バンドで終わっている。この全てが大好きなフォープレイの演奏だと認めたくない。

 そういうことでフォープレイにしては珍しく早々と駄盤が決定した1枚。『シルヴァー』はアルバムの印象が散漫すぎる。コンセプト・アルバムだというのにねぇ。『SNOWBOUND』がそうだったし,もしやフォープレイはコンセプト・アルバムが苦手なの?

 思えばフォープレイとは,一時代を築いたジャズメン4人が,言わばセカンド・キャリア的に始めたバンド活動であったはずなのに,キーボードボブ・ジェームスベースネイサン・イーストドラムハービー・メイソンの3人にとっては,今や気付けばフォープレイとしての活動の方がメインとなってライフ・ワークと化している。音楽性で意気投合したバンドは本当に強い!

SILVER-2 そんな中,ギタリストだけはリー・リトナーラリー・カールトンチャック・ローブへと交代した。そして『シルヴァー』を最後にチャック・ローブも旅立っていった。次の新しいギタリストは誰でしょう?

 誰が務めることになるとしても条件はただ1つ。ボブ・ジェームスネイサン・イーストハービー・メイソンのリズム隊の3人とリー・リトナーラリー・カールトンチャック・ローブのフロントの3人。合計6人の全員が頑なに守り通してきた「フォープレイのバンド・サウンドの伝統」を重んじ守ってくれるギタリスト! その上での個性なのである! 今度こそパット・メセニーを迎えてほしいが,その可能性はゼロであることも承知しております…。

 それにしてもフォープレイは,いいや,ジャズフュージョン界は「至宝の人材」を失った。大損失である。チャック・ローブさん「SEE YOU PARADISE」!

  01. QUICKSILVER
  02. HORACE
  03. STERLING
  04. A SILVER LINING
  05. SILVERADO
  06. MINE
  07. SILVER STREAK
  08. PRECIOUS METAL
  09. ANIVERSARIO
  10. WINDMILL

(ヘッズ・アップ/HEADS UP 2015年発売/UCCO-1160)
(ライナーノーツ/熊谷美広)

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フォープレイ / エスプリ・ド・フォー4

ESPRIT DE FOUR-1 『LET’S TOUCH THE SKY』で「フォープレイ=活動休止中のパット・メセニー・グループ」が擦り込まれてしまった管理人。
 フォープレイパット・メセニー・グループを求めるのは間違いだと分かったはいても,パット・メセニー・グループの新作は出そうにない。パット・メセニー・グループと似たグループと言えば「e.s.t.」ぐらいだったのに,エスビョルン・スヴェンソンの不慮の事故によりこちらも新作のリリースは望みようがない。
 フォープレイパット・メセニー・グループを重ねたくなるこの気持ち〜!

 多分,真っ当なフォープレイ・ファンからは一蹴されて終わるのだろうが,ボブ・ジェームスだけは管理人のこの気持ちを分かってくれた! 『ESPRIT DE FOUR』(以下『エスプリ・ド・フォー』)は,フォープレイが創り上げたパット・メセニー・グループ路線の最新作!

 ECMでの若さと清らかさ,ゲフィンでの派手でやり過ぎた下品さ,ノンサッチでのアーティスト志向がバランス良く顔を出すチャック・ローブPMG
 先代の超大物2人と比べればチャック・ローブは小粒だが,その分灰汁が出ない。こんなにも使い勝手の良いギタリストだったとは管理人的にも新発見である。

 『エスプリ・ド・フォー』では,これまでのお洒落でハイセンスな“フォープレイ・サウンド”に温かさと雄大さが加わりつつ,逆説的だが,俯瞰から眺めて冷静に計算され尽くしているようなアレンジが印象に残る。これほど長く活動してきたバンドであるにも関わらず,明らかに新しいサウンドの息吹き,方向性の模索を感じる取ることができる。
 プロデューサーとしても活躍するチャック・ローブだから,作り込まれた感が強いフォープレイとマニアで有名なパット・メセニー・サウンドにマッチしているのだと思う。

( ここで決して公には出来ない裏事情を書いておくと,フォープレイパット・メセニー・グループして聴こえる一番の理由はパット・メセニーの弟子であるチャック・ローブの参加ではありません。ズバリ,ボブ・ジェームスライル・メイズに意識的に“寄せている”からなのです。その辺りを見誤らないで! )

 さて,管理人がチャック・ローブを評価する理由は“ギタリスト”としてのチャック・ローブだけではない。リー・リトナーラリー・カールトンは持ち合わせていないかった“名コンポーザー”としてのチャック・ローブの存在である。

 フォープレイというグループはメンバーの4人全員が曲を書くことをポリシーとしている。一番の多作家でありバンドの代表曲を書き上げてきたのはボブ・ジェームスであるが,超キャッチーなキラー・チューンはハービー・メイソンの場合が多く,ネイサン・イーストも佳曲をズライと並べてくる。その部分ではリー・リトナーラリー・カールトンはあまり貢献してきたとは言えないであろう。

 そ・こ・で“名コンポーザーチャック・ローブの加入である。チャック・ローブは感動モノの曲を書く。【DECEMBER DREAM】は何度聴いても涙が止まらない。心の震えが止まらない。
 そんな“名コンポーザーチャック・ローブの加入が,他の3人の“名コンポーザー”の創作意欲を大いに刺激したのだろう。『エスプリ・ド・フォー』にはマンネリと謳われたラリー・カールトン期にはなかったヒットパレードのオンパレード。

 これまでのフォープレイは世界最高峰の演奏力でスムーズ・ジャズ界の頂点に君臨してきた。だから管理人のフォープレイに対する一つの夢とは「名曲のカヴァー・アルバム」の制作だった。ジャズっぽいものではなく,コンテンポラリーやAOR系のカヴァー演奏を聞いてみたかった。
 しかし“名コンポーザーチャック・ローブの加入でその夢は必要なくなった。それくらいに捨て曲なし。美メロばかりがザックザク〜!

ESPRIT DE FOUR-2 管理人の結論。『エスプリ・ド・フォー批評

 『エスプリ・ド・フォー』は,演奏の名手にして作曲の名手がついに4人揃った,フォープレイの理想の完成形だと思う。「絆」を表現したであろうジャケット写真通りの快作である。

 『エスプリ・ド・フォー』には【DECEMBER DREAM】【FIREFLY】【LOGIC OF LOVE】【LET’S TOUCH THE SKY】の4曲の神曲が入っている。特に【DECEMBER DREAM】については,チャック・ローブ時代の代表曲として指名する。

 ただし『エスプリ・ド・フォー』の評価は星4つ。その理由は「SEIKO MATSUDA」である。【PUT OUR HEARTS TOGETHER】はアルバム全体と調和した曲なのに【PUT OUR HEARTS TOGETHER(VOCAL TRACK)】となると,どうにも違和感を感じて気持ち悪くなる。これがボーナス・トラックだというのならご愛嬌で済んだのであろうに…。別に管理人は松田聖子のアンチというわけではありませんので…。

  01. DECEMBER DREAM
  02. FIREFLY
  03. VENUS
  04. SONNYMOON
  05. PUT OUR HEARTS TOGETHER
  06. ALL I WANNA DO
  07. LOGIC OF LOVE
  08. ESPRIT DE FOUR
  09. SUGOI
  10. PUT OUR HEARTS TOGETHER (VOCAL TRACK)

(ヘッズ・アップ/HEADS UP 2012年発売/UCCT-1241)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/フォープレイ,成田正)

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本多 俊之 ラジオクラブ / カメレオン4

CHAMELLEON-1 「本多俊之ラジオクラブ」と来れば,テレビ朝日系「ニュースステーション」のオープニング・テーマや,伊丹十三の映画「マルサの女」「ミンボーの女」のテーマ曲を連想してしまう。

 そんな中,管理人が初めて買った「本多俊之ラジオクラブ」のCDは『CHAMELLEON』(以下『カメレオン』)だった。
 『カメレオン』の衝撃たるや,イントロ一発で「本多俊之ラジオクラブ」の“音”が飛び出して来たことを覚えている。

 ズバリ「本多俊之ラジオクラブ」の“音”とは「エキゾチック・ジャズ」である。日本情緒の香りがするジャズを演奏しながらも,大きくとらえて日本もアジアや中東の一部。台湾とか東南アジアとか,当時流行っていた「電波少年」のイメージを持つ。← なんのこっちゃ。

 意味不明の読者の皆さんには【CEREZO ROSA(GOBLIN VERSION)】と【TIME IS DREAM】の2曲を聴いてもらいたい。多分,管理人の気持ちが理解できるから!?

 本多俊之の吹くソプラノサックスが“ヘビ使い”の扱う笛のように聴こえるからか,どうにもアラブとかインドの「アブラカタブラ」のイメージを抱いてしまう。
 その実,本多俊之の吹くソプラノサックスは「絶品中の絶品」であって,中東ではなく都会的なイメージに振れたなら,あのケニー・Gになれるくらいの腕前だと思っている。

CHAMELLEON-2  そんな“ヘビ使い”本多俊之がコブラの入ったザルの中から,ニュキニョキッと取り出したのが,これまた「猛獣」ばかり。以前の「本多俊之ラジオクラブ」のザルの中には,ギター是方博邦ベース鳴瀬善博ドラム東原力哉という「野獣王国」のメンバーが3人も入っていたのだから,本多俊之の“ヘビ使い”の凄さが分かるというものだろう。

 なるほど! だから本多俊之は久米宏や伊丹十三を転がすこともできたのだ。本多俊之の“音”を世間に知らしまるために,もっと「ニュースステーション」が続いたらよかったのにぃ。

 ただし『カメレオン』の時点では「本多俊之ラジオクラブ」の半導体はダイオードからトランジスタへとUPDATE。LAの凄腕ジャズメンが中心メンバーへとUPDATE。
 もはや時代はラジオの時代ではなくなっていた。本多俊之本人も「本多俊之ラジオクラブ」の時代ではなくなっていた。

  01. phantom of the earth
  02. hara-hara
  03. gimmick mask
  04. mosaic city
  05. cerezo rosa (goblin version)
  06. half mirror
  07. quiet jungle
  08. time is dream
  09. the new globe
  10. quit×enter

(東芝EMI/WHO RING 1990年発売/TOCT-5852)
(ライナーノーツ/佐藤英輔)

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フォープレイ / レッツ・タッチ・ザ・スカイ5

LET'S TOUCH THE SKY-1 新作のレコーディングが始まったわけでもないのに,ラリー・カールトンフォープレイから脱退することがアナウンスされた。『ENERGY』の発売から2年後ですよ。唐突すぎやしませんか?

 それからというものフォープレイのことを考え出すと,誰が次のギタリストを務めるのか? 個人的な第一希望&妄想はリー・リトナーの復帰であったのだが…。
 これとない大役を引き受け,のしかかるプレッシャーをはねのけて? いえいえ。こんな大チャンスをジャケット写真ばりに「天を掴んで」ものにしたフォープレイ三代目のJ−SOULギタリスト! その人の名はチャック・ローブ

 チャック・ローブは適任である。リー・リトナーラリー・カールトン・クラスの超大物ではないが,スムーズ・ジャズ界を広く見渡してもチャック・ローブ以上の人材は絶対に見つからない。
 新作を聴く前からすでに大正解のメンバー・チェンジを確信した管理人であったのだが,でもやっぱり新作が気になって気になって…。

 そんなもやもやを吹き飛ばすニュー・アルバム『LET’S TOUCH THE SKY』(以下『レッツ・タッチ・ザ・スカイ』)がついに完成した。
 やっぱりチャック・ローブは「いぶし銀」な仕事人であった。これより音数が多くても少なくてもだめだろうというギター・ワークに魅了されてしまった。どこか浮ついた感じのラリー・カールトンよりもチャック・ローブの方が“しっくりくる”!

 …って,チャック・ローブにしても『レッツ・タッチ・ザ・スカイ』にしても,全て後出しジャンケンだったのだから…。
 そう。チャック・ローブパット・メセニーの弟子ですよっ。『レッツ・タッチ・ザ・スカイ』の【A NIGHT IN RIO】と【ABOVE AND BEYOND】はパット・メセニー・グループ調ですよっ。
 遡れば『』の【EASTERN SKY】の時点から,このシナリオが始まっていたのですよっ。この4年越しの「伏線と回収」のマジックにボブ・ジェームス恐るべし!

( もう一つの勘ぐりの裏話を。フォープレイは2008年に「ヘッズ・アップ」へ移籍したのだが,チャック・ローブも2007人に「ヘッズ・アップ」へ移籍済。これって将来のフォープレイ合流を見据えての事だった? 大人の事情ってジャズフュージョン界にもあるの? )

 おおっと『レッツ・タッチ・ザ・スカイ』で,評価すべきはチャック・ローブでもパット・メセニーでもボブ・ジェームスでもなくフォープレイ。評価軸は“フォープレイ・サウンド”がどうかであろう。

LET'S TOUCH THE SKY-2 管理人の結論。『レッツ・タッチ・ザ・スカイ批評

 フォープレイとは「清く・正しく・美しい」フォープレイなので,革新的な演奏とか超弩級のスリルといった「劇薬」とは無縁である。どこまでもクリアでフォーキーで心地よく,そして非常に落ち着いた大人の音楽である。
 『レッツ・タッチ・ザ・スカイ』においても,土台としての“フォープレイ・サウンド”は健在であって,スタイリッシュなチャック・ローブの個性を見事に飲み込んでいると思う。

 相変わらず相当に完成度が高い。エレガントで美しくて深い。そして新鮮でキャッチーなナンバーが続いている。
 『レッツ・タッチ・ザ・スカイ』を聴き終えてまず感じたのは,活動休止中のパット・メセニー・グループの穴を埋めるのはフォープレイである,という思いであった。
 本来ならチャック・ローブの座った椅子にはパット・メセニー? 今度こそ「4度目の正直」はパット・メセニー

 それはそれとしてチャック・ローブ新加入のキーワードは“アコースティック”である。
 “アコースティックフォープレイ”を牽引するブライトでインテリジェンスなチャック・ローブが渋い!

  01. LET'S TOUCH THE SKY
  02. 3RD DEGREE
  03. MORE THAN A DREAM
  04. PINEAPPLE GETAWAY
  05. I'LL STILL BE LOVIN' YOU
  06. GENTLE GIANT (FOR HANK)
  07. A NIGHT IN RIO
  08. LOVE TKO
  09. ABOVE AND BEYOND
  10. GOLDEN FADERS
  11. YOU'RE MY THRILL
  12. WHEN LOVE BREAKS DOWN

(ヘッズ・アップ/HEADS UP 2010年発売/UCCT-1225)
(☆直輸入盤仕様 ライナーノーツ/原田和典)

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渋さ知らズ / 渋夜旅4

SHIBU-YOTABI-1 管理人はビッグ・バンドを始めとして大編成バンドは苦手である。たくさんの音色が混ざっていて判然としない。個人的な趣向として一つ一つの音をきちんと聴き分けたい願望がある。
 あの人の音色がどうとか,この人のフレージングがどうとか,感想を話し合って仲間内で大いに盛り上がりたいわけなのです。← ただし現実は,ほぼ一人っきりでニヤニヤしながら楽しむ毎日。淋しい〜。

 でっ,そんな管理人が渋さ知らズに手を出したのは,ズバリ,片山広明テナーサックス目当てである。
 あれっ,渋さ知らズとはベーシスト不破大輔の混成ビッグ・バンドだったのでは? それはそうなのだが,その不破大輔をして,片山広明を「渋さで言えば4番バッター」と評している。

 渋さ知らズでは,一度参加したメンバーは以後永久にメンバー扱いになる。その法則で行くと歴代の全メンバーは100名以上に及ぶそうだ。
 その100名の凄腕メンバーの中で「4番バッター」を張る片山広明の実力は「世界レベル」にして「地底レベル」。片山広明テナーサックスは完全に逝っている。

 渋さ知らズのファンの間で『渋夜旅』は不評である。その理由は渋さ知らズの真髄とはライブバンドなのであって,緻密なスタジオ録音の『渋夜旅』は渋さ知らズのお面を被ったニセの渋さ知らズという論法。
 「ニセスクェア」=『MASATO HONDA WITH VOICE OF ELEMENTS』のような感じ?

 渋さ知らズのファンの間で『渋夜旅』は不完全燃焼なアルバムなのかもしれない。しかし『渋夜旅』の購入目的が片山広明テナーサックスにあるファンとしては,これはこれでいい演奏だと満足してしまった。

 渋さ知らズの聴き所である,怒涛の音圧とリズムに圧倒される心地良さの上を走り回る片山広明テナーサックスが超カッコイイ。
 いいや,片山広明テナーサックスに踊らされて,渋さ知らズが『渋夜旅』で「昼顔」を見せていると考えるべきアルバムだと思う。

SHIBU-YOTABI-2 渋さ知らズは基本フリー・ジャズ。メンバー全員が適度なテンポの中でフリーな演奏をかっこよくキメまくっている。ホーンが勢いよく鳴り,ファンキーなリズムは強靭で奇妙な浮遊感がある。
 ただし,片山広明が参加していないトラックは,どこかスカパラっぽくもあり,どこかPE’Zっぽくもあり,確かに渋さ知らズのファンの間で『渋夜旅』が不評なのも理解できる。

 『渋夜旅』を聴き終えて,やっぱり渋さ知らズの「エース」は片山広明を実感。
 (…と書いた舌の根も乾かぬうちに)『渋夜旅』のハイライトは【HYOEI】である。室舘彩のクセのあるヴォーカルを聴いたが最後。1週間は頭の中をぐるぐる回る〜!

  01. DORAGO
  02. GONTASYL
  03. A NIJI-MUSHI IN THE WATER
  04. HYOEI
  05. ISLAND TANGO
  06. WATARI
  07. UKISHIBU
  08. A DAY IN THE LIVE

    ENCORE TRACK
  09. UKISHIBU EPILOGUE
  10. GONTA CHOPPER, PT.1

(プランクトン/PLANKTON 2010年発売/VIVO-103)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/市川正二)

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フォープレイ / エナジー4

ENERGY-1 管理人的にはフォープレイのゴールド・ディスクの中ではイマイチの低評価作『ENERGY』(以下『エナジー』)である。
 『エナジー』は本田雅人の『ACROSS THE GROOVE』直後の1枚。幾分贔屓目に聴いた1枚でもある。

 贔屓目に聴いても数年間は低評価なままだった『エナジー』。何年も『エナジー』の中で好きな曲は【THE WHISTLER】1曲しかなかった。( ただしこの【THE WHISTLER】はフォープレイの全楽曲の中でも相当に大好き! )

 『エナジー』に対する評価は『ACROSS THE GROOVE』に対する評価と一体であった。
 またしても,いつものフォープレイの演奏スタイルに安心する反面,ガッカリもする。大概はそこから入って細かな違いを発見してはニンマリするパターンである。
 フォープレイのアルバムは聴く回数を重ねるごとに良くなっていく。明確に「これだっ」と電流が走ることはないのだが,いつの間にか気がついたらハマっている…。

 『エナジー』の第一印象は「あれっ,ラリー・カールトンが元気ないかな」であった。これって『ACROSS THE GROOVE』で「ラリー・カールトン抜きの4分の3」を聴き込んだせいかと思ったのに…。
← 管理人の悪い予想は良く当たると巷で評判でして…。フォープレイの次作にはラリー・カールトン不在の悪夢。今回の『エナジー批評では詳しくは書きません。

( フォープレイギタリストとしては『エナジー』が最終作になったので,この機会に管理人の考えるラリー・カールトンについて記しておく。ラリー・カールトンの魅力とは,フォープレイの“鉄壁な”アンサンブルが破たんするかどうかのギリギリのラインでギターを弾くところにあった。安定したキーボードベースドラムと不安定なギターがひっついたり離れたりする感じが好きだった。「ちょっとクセになる」と表現するのがピッタリのギター・ワーク。そんなラリー・カールトンの「危険な寸止め」! )。

 『エナジー』の底辺に流れる「ソフト&メロー回帰」。『エナジー』にはフォープレイの新たなチャレンジを発見できずにいたのだが,例えばコード進行1つをとっても『エナジー』を聴けば聴くほど,めちゃめちゃ難しいコードワークを用いていることが分かってくる。当たり前の転調などではない。

 シンプルに聴こえて,その実,この4人でなければ余裕たっぷりに演奏できないことが分かってくる。フォープレイの音楽ってかなりマニアックな理論で出来上がっていることが容易に想像できる。
 渋い。流石は本田雅人のハイパーな譜面をGROOVYに演奏できる訳だ。フォープレイの「物の違い」にKOされて,震えが来て,後は「ハハーッ」とひれ伏すだけ…。

 ズバリ『エナジー』はフォープレイの4人が全員同時に行なった「断捨離」作。
 『エナジー』で,新たなチャレンジングが控え目になった理由こそが,過去リリースされた10枚の新作の録音時に,少しづつながら確実に“フォープレイ・サウンド”のフォーマット上に付着してきた,余分な贅肉の「削ぎ落とし」にある。

 フォープレイドラマーハービー・メイソンと「削ぎ落とし」という言葉で思い出すのが,その昔,カシオペアの『EYES OF THE MIND』をプロデュースしたハービー・メイソンによる神保彰への要求=「余分な音を削ぎ落としてシンプルに」である。
 例の“おあずけ”指示による「シンプルでパワフルなビート」&「タイトでダンサブルなグルーヴ」である。“千手観音”神保彰の“超絶技巧”をスカスカになるまで「削ぎ落とし」たことで世界への道筋を示した功績へと繋がっている。

ENERGY-2 そんなハービー・メイソンの超一流の教えを『エナジー』ではラリー・カールトンが実践したのかも? そして嫌になってしまったのかも? ラリー・カールトンのワイルドでブルージーなギターがどうにも元気がないように聴こえてしまったものでして…。

 大物と呼ばれてるジャズメンの多くは,時が経つにつれて音楽的な自我が肥大化してしまい。何を演奏しても自分の刻印をベタベタと刻みこむようなミュージシャンになってしまう傾向が強い。
 しかし,フォープレイが称賛されて然るべき点は,これだけのメンツが揃いながらもメンバー全員が完璧に「4分1」に徹し,フォープレイのバンド・サウンドを鳴らすために献身的に奉仕している点にある。

 その意味でラリー・カールトンは自己犠牲を払い続けることに疲れてしまったのかなぁ。真意は誰にも分からない。
 ただし『エナジー』でのラリー・カールトンギターには興奮を覚えない。それは恐らくリスナーだけではなく当の本人にしても他の3人のメンバーにしても…。

 ラリー・カールトン様。フォープレイからの卒業おめでとうございます。ラリー・カールトン様。12年間お疲れ様でした。

  01. FORTUNE TELLER
  02. THE WHISTLER
  03. ULTRALIGHT
  04. CAPE TOWN
  05. THE YES CLUB
  06. PRELUDE FOR LOVERS
  07. LOOK BOTH WAYS
  08. ARGENTINA
  09. COMFORT ZONE
  10. SEBASTIAN
  11. BLUES ON THE MOON

(ヘッズ・アップ/HEADS UP 2008年発売/UCCT-1203)
(☆直輸入盤仕様 ライナーノーツ/松下佳男)

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フォープレイ / X5

X-1 『』を初めて聴いた時,ファースト・アルバム『FOURPLAY』に揺り戻ったように感じた。
 それは多分にボブ・ジェームスブラスシンセの影響だと思う。だから『』はフォープレイのいつものスムーズ・ジャズではなく,フォープレイ久々のフュージョンである。

 しかし『』はファースト・アルバム『FOURPLAY』とは明らかに異なる。
 そう。『JOURNEY』を経験したからこその「一周回ったフュージョン・アルバム」『』の誕生なのである。

 そんなフォープレイの第三章の幕開けを告げる『』のサウンドを聴いて驚いた。イメージとしてはパット・メセニー・グループと似ているのだ。【EASTERN SKY】をブラインドで聴かされたならパット・メセニー・グループの新作と間違えること必至であろう。

 そう。フォープレイが『』で「遊んでいる」。とりわけハービー・メイソンが「遊んでいる」。
 ハービー・メイソンドラミングが「擬似」リズム・マシーン化していて,生ドラムで打ち込みにどこまで寄せることができるかを意識している。スッキリとタイトなドラミングが続いている。← カシオペアの『LIGHT AND SHADOWS』風?
 この全てはハービー・メイソンなりの「ボブ・ジェームスブラスシンセフィーチャリング」なのだろう。

 このハービー・メイソンの演出,フォープレイとしての演出ゆえに,派手な音質,派手なメロディー,派手な演奏になっていて,オジサン4人のフォープレイが20歳は若返ったような感覚でPOPで煌びやかに響いている。非常にヴィヴィッドでフレッシュな仕上がりだと思う。

 セールス的制約や,音楽的な縛りとも完全に無縁のフュージョン。もう食うに困らないオジサン4人が若いもんに負けじと頑張っている。「一周回って」また作りたくなったフュージョンが超カッコイイ。
 フォープレイ持ち前の,品の良いインテリジェンス溢れるグルーヴが,徐々にワイルドになって「ライブ・バンド」化してきている。

 『』の成功の背景こそが,音楽を楽しむ余裕が生み出す「遊び心」と過去9作で積み上げてきた“フォープレイ・サウンド”への絶対的な自信の証しにあると思う。
 発想も表現もサラリと自由奔放。本当に今やりたい事を形にしている。リスナーは勘違いしてはいけない。『』は“フォープレイ・サウンド”をメンバー4人の懐の中に届けるためのアルバムである。リスナーの好みなどはほとんど考慮されていない。だから「遊べている」。

X-2 そう。真にフォープレイの音楽とはマンネリとは無縁である。彼ら4人は自分たちの“フォープレイ・サウンド”が好きで好きでたまらないのだ。だから多くの曲を作曲しては“フォープレイ・サウンド”のフォーマット上にかけることを喜びとしている。

 今回のフォープレイ批評をシリーズで書いてきたから発見できたことがある。フォープレイは実は毎回,バンド・サウンドを少しづつ変えてきている。でもいろいろと試した結果として,毎回,一番美味しい“フォープレイ・サウンド”に落ち着いている。
 「前作とほとんど変わらないけど,でもこの部分がちょっと違うよねっ」的な…。レビジョンアップを繰り返したフォープレイは『』で「バージョン3.0」になっている!?

 そんなフォープレイが『』で初めて“フォープレイ・サウンド”から離れて見せた。実験風景を初めて見せてくれた。“フォープレイ・サウンド”が完熟する一歩手前で“もぎ取って”見せた。おおっ。

 『』のリリース時点でフォープレイのオジサン4人は60歳。「もう60歳」って感覚か? でもどっこい『』のフォープレイは「まだ60歳」の感覚有り。
 人生はこれからなのだ。フォープレイの第三章もこれからなのだ。

  01. TURNABOUT
  02. CINNAMON SUGAR
  03. EASTERN SKY
  04. KID ZERO
  05. MY LOVE'S LEAVIN'
  06. SCREENPLAY
  07. TWILIGHT TOUCH
  08. BE MY LOVER
  09. SUNDAY MORNING

(ブルーバード/BLUEBIRD 2006年発売/BVCJ-31044)
(ライナーノーツ/工藤由美)

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フォープレイ / ジャーニー5

JOURNEY-1 フォープレイには問題作が2枚ある。その1枚がリー・リトナーからラリー・カールトンへの交代直後のクリスマス企画盤『スノーバウンド』であり,もう1枚が4人全員が“あばれはっちゃく”となった『JOURNEY』(以下『ジャーニー』)である。

 ただし,同じ問題作であるが『スノーバウンド』と『ジャーニー』では,管理人の評価は真逆である。
 『スノーバウンド』については,こんな演奏聞きたくなかった,とブチ切れた。多分,2度と『スノーバウンド』を買い直すことはない。一方の『ジャーニー』はと言うと,もっとこんなフォープレイを聴いてみたかった,というのが感想である。

 『ジャーニー』でのチャレンジとはフォープレイ初の「ノーゲスト盤」。フォープレイとはボブ・ジェームスネイサン・イーストハービー・メイソンラリー・カールトンの4人にして,実は大物ゲストとの共演が毎回アルバムの話題になっていたのも事実。
 そうして,確かに外野の批判も一理ある。4人だけの演奏ではマンネリ感が漂うのも事実。ゲストの封印はフォープレイにとってのチャレンジだったのだ。

 まっ,演奏面においてはフォープレイの4人だけでも不安など微塵もない。いつでも,どんなスタイルの演奏をさせてもフォープレイは世界最高峰のアンサンブル・ユニットである。酔っぱらおうとも,逆立ちしようとも,平常時と変わらぬレベルで演奏できることだろう。

 フォープレイは『ハートフェルト』でラリー・カールトンの個性を前面に押し出すことにした。これが実に爽快でカッコ良かった。
 ラリー・カールトンを自由に泳がせることができたのは,ボブ・ジェームスネイサン・イーストハービー・メイソンの3人がラリー・カールトンをしっかりと支えることができたからだ。

 『ジャーニー』でのソロイストは誰か? それはラリー・カールトンであり,ボブ・ジェームスであり,ネイサン・イーストであり,ハービー・メイソンである。
 そう。『ハートフェルト』ではラリー・カールトン1人だったソロイストが『ジャーニー』では一気に4人に増えた。

 アンサンブルがありユニゾンがありコーラスがありソロがある。このように書くといつものフォープレイと変わらないように感じるだろうが『ジャーニー』での実験とは,バックに回っても4人が4人とも“自分を主張する”ことにある。
 ボブ・ジェームスが暴れている。ネイサン・イーストが暴れている。ハービー・メイソンが暴れている。ラリー・カールトンが暴れている。

JOURNEY-2 これまでのフォープレイとは「自分を殺して」ではなく「自分を活かして他人も活かす」スーパー・グループだった。それが『ハートフェルト』ではではどうだろう。「他人の音を利用してまでも自分を活かす」スーパー・グループになった感じがする。

 バンドのDNAが「遺伝子操作」されたかのようで,こんなにもワイルドなフォープレイが聴けるのは『ジャーニー』が「最初で最後のアルバム」となった。
 楽曲も従来のフォープレイのイメージからは外れるであろうバラエティ豊かな楽曲ばかりが揃っている。聴けば聴くほど良くなってくる。例のスルメ盤であり,例のアレである。

 管理人の結論。『ジャーニー批評

 『ジャーニー』は今まで隠し続けてきた,燃えに燃える「本気のフォープレイ」が聴ける唯一のアルバムである。
 こんなにも下品なのに,でもやっぱり気品あふれる演奏に収まってしまうのが,悔しいかな,フォープレイフォープレイ足る所以でもある。
 そう。『ジャーニー』とはフォープレイの過去の20年の『旅』であり,またこれから先20年の『旅』なのである。

PS それにしても本日はまさか「嵐」が…。あの大野くんが…。お疲れ様です。「嵐」の5人にもフォープレイを,特に『ジャーニー』を聴かせてあげたいとタイムリーに思ってしまいました…。

  01. FIELDS OF GOLD
  02. PLAY AROUND IT
  03. FROM DAY ONE
  04. JOURNEY
  05. ROZIL
  06. COOL TRAIN
  07. AVALABOP
  08. THE FIREHOUSE CHILL
  09. DEPARTURE
  10. 147 4TH ST.

(ブルーバード/BLUEBIRD 2004年発売/BVCJ-31038)
(ライナーノーツ/工藤由美)

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板橋 文夫 / ザ・ミックス・ダイナマイト 游3

THE MIX DYNAMITE YU-1 管理人にとって板橋文夫は「近くて遠い」存在である。

 その「近い」の真意とは,板橋文夫渡辺貞夫日野皓正森山威男のレギュラー・ピアニストの歴任者。エルヴィン・ジョーンズとも共演している“世界の板橋文夫”その人である。
 事実,板橋文夫の演奏は,FM東京系「渡辺貞夫マイ・ディア・ライフ」のスタジオ・ライブで良く耳にしていた。学生の頃,身近に感じたジャズ・ピアニストの一人であった。

 その「遠い」の真意とは,板橋文夫CDを何枚か聴いてみたが,どうにも良さが分からない。板橋文夫の場合,そのビッグなネーム・バリューで“聴かされている感じ”がする。
 板橋文夫の演奏なのだから悪いはずがない。そう説得されている感じがする。何回聴いてもどうにも良さが分からない。

 例えば『THE MIX DYNAMITE YU』(以下『ザ・ミックス・ダイナマイト 游』)なんかは,購入後すぐに聴かなくなって,時折,チャレンジして聴いてみたりしたのだが,やっぱり楽しいと思ったことはない。
 『ザ・ミックス・ダイナマイト 游』を聴き始めると「あっ,この曲」と思い出すのだが,1カ月もすると「あのアルバムってどんな曲が入ってたっけ?」と思い出すことができない。印象に残る曲が1曲もない。

THE MIX DYNAMITE YU-2 ズバリ『ザ・ミックス・ダイナマイト 游』は駄盤評価なのだが,渡辺貞夫日野皓正森山威男のお耳にかかった板橋文夫をバッサリと切り捨てる勇気もない。
 でも書いちゃう。『ザ・ミックス・ダイナマイト 游』は駄盤である。

 またこの記事で,板橋文夫は遠い存在のままだろうなぁ。もっと遠いところへと管理人との距離が広がったかなぁ。板橋文夫の次のCDを購入することもないだろうなぁ。

 全国の板橋文夫ファンの皆さん,こんなにも耳の貧しい管理人に板橋文夫の御指南を!

  01. DAH DAH DAH
  02. KAMINARIMON
  03. GORI GORI '95
  04. YOU!
  05. TASOGARE
  06. TUKI-NO-WA
  07. KANPYOO
  08. 21
  09. GOSPEL '94
  10. HOME AGAIN, ONCE AGAIN

(オーマガトキ/OMAGATOKI 1995年発売/SC-7110)
(ライナーノーツ/村上寛)

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フォープレイ / ハートフェルト5

HEARTFELT-1 『YES,PLEASE!』で頂点に達してしまったフォープレイ
やるべきことは全てやり尽くしてしまった…。

 …にも関わらずレコード会社からは引き続きセールスの圧力がある。事実『YES,PLEASE!』はグラミー・ノミネーション。続編にも『YES,PLEASE!』路線での好セールスの期待がかかる。
 フォープレイ・ファンの一人として解散という言葉が直感的に脳裏に浮かんだ。もしやボブ・ジェームスの脳裏にも解散の文字が?

 (うれしいことに)フォープレイの4人が選択したのはバンドの解散では継続であった。『REBIRTH』である。そのための手段がレコード会社の移籍である。
 “ウルトラ・スーバー・グループ”フォープレイなのだからレコード会社を移籍するとの噂が立てば引く手あまた。しか〜しフォープレイが選択したのは,大手レコード会社ではなくRCAの子会社に当たる「ブルーバード・レーベル」への移籍である。

 この移籍は素人でも理解できた。よく耳にするメジャーのアーティストがインディーズに行く理由と同じである。そう。フォープレイの第二期とは「本当にやりたい音楽をやる」。ただそれだけなのである。
 キーボードボブ・ジェームスが,ベースネイサン・イーストドラムハービー・メイソンギターラリー・カールトンが,セールス抜きでPOPなスムーズ・ジャズを純粋に演奏したかったがゆえのレコード会社の移籍である。ワォ!

 世界中のフォープレイ・ファン,いいや,純粋にいい音楽のファンのために披露した,第二期フォープレイの始まりを告げる『HEARTFELT』(以下『ハートフェルト』)が素晴らしい。

 とにもかくにも「クラッシュ&ビルド」への意欲が伝わってくる。『ハートフェルト』の売りは「余裕」である。「余裕」があるのは,好きなことを気の向くままに演っても,何を演っても上手くいくという「余裕」。
 この「余裕」こそがフォープレイ10年のバンド活動の賜物。フォープレイの“らしさ”をどんなに壊そうとも,絶対にメンバーが助けてくれるという信頼から生まれる「余裕」があるのだ。

 どんなにアクセルを踏んでも車体の揺れない高級車のような音楽。坂道も楽々と走り続ける大排気量のような音楽。こんなにもフォープレイスムーズ・ジャズがスケールアップしているとは予想していなかった。

HEARTFELT-2 特に毛色が変わったのが“職人仕立てな”ラリー・カールトンギターである。ネイサン・イーストハービー・メイソンの色彩豊かでスカスカなグルーヴの上をラリー・カールトン以外弾けないであろうメロディ・ギターが今まで以上に走りまわっている。
 これまではラリー・カールトンフォープレイに寄せていたのが,第二期フォープレイではフォープレイラリー・カールトンに寄せている感じ。

 そう。第二期フォープレイの真実とは,ブルージーでエモーショナルな「ラリー・カールトン WITH フォープレイ」。懐かしくてベーシックな曲に新しいエッセンスが十二分に盛り込まれている。
 リラックスした雰囲気のなか奏でられる円熟した大人のスムーズ・ジャズ。落ち着いてはいるがきちんと刺激もある。そのシルキーでエモーショナルなサウンドからは,筋肉質にして全身の筋肉が弛緩するような心地良さに満ちている。

 出過ぎず引っ込み過ぎず,相互作用を繰り返しながら曲中で集約されていくフォープレイの真髄はそのままに,ワイドでドラマティックな展開の中,4人がピンポイントで印象的なメロディーをインプロしていく。

 そう。いい曲というより,いいメロディー重視。メジャーにいては決して表現できないミニマルな音楽が『ハートフェルト』にはあると思う。

  01. GALAXIA
  02. THAT'S THE TIME
  03. BREAK IT OUT
  04. ROLLIN'
  05. LET'S MAKE LOVE
  06. HEARTFELT
  07. TALLY HO!
  08. CAFE L'AMOUR
  09. JU-JU
  10. GOIN' BACK HOME
  11. KARMA
  12. MAKING UP
  13. SOFT CARESS

(ブルーバード/BLUEBIRD 2002年発売/BVCJ-31029)
(ライナーノーツ/熊谷美広)

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MALTA / スウィート・マジック4

SWEET MAGIC-1 MALTAの2nd『SWEET MAGIC』(以下『スウィート・マジック』)のレコーディング・メンバーが凄すぎる。

 ギター森園勝敏ギター天野清継ギター山岸潤史ギター松木恒秀ピアノ佐藤允彦キーボード野力奏一キーボード松浦義和ベース岡沢章ベースグレッグ・リードラム村上“ポンタ”秀一ドラム渡嘉敷祐一 ETC

 1st『MALTA』に続き,基本ジャズ屋が演奏するJ−フュージョンの「オールスター・セッション」集の趣きであるが,1st『MALTA』と2nd『スウィート・マジック』では随分と印象が異なる。

 1st『MALTA』は豪華ゲストに支えられてMALTAが1人のアルトサックス・プレイヤーとして参加した感じなのに対して,2nd『スウィート・マジック』では完全にMALTAが音楽の主導権を掌握。ゲストをゲストとして使いこなしている感じがする。

 そう。レコード会社の激推しを受けてMALTAの「自信が確信に変わった瞬間」(by 松坂大輔)が『スウィート・マジック』だと思う。

 【SWEET MAGIC】はMALTA初のメジャー・ヒット曲。この曲からMALTAが街のショッピング・モールのBGMとして流れ始めた記憶がある。
 【WALKING IN THE SKY】と【BECAUSE OF LOVE】の爽やかなイントロが流れて来ると条件反射的に「夏!」と反応してしまうのは管理人だけ?

 それにしても名曲だらけの『スウィート・マジック』の中で,唯一の駄曲【XYZ】の何ともヘンテコなメロディー。最初のうちはこの曲が来ると飛ばしていたのに,今となってはアルバムの代表曲!
 空耳アワーよろしく。あれほど嫌っていたはずなのに【XYZ】を聴かないことには『スウィート・マジック』を聴いた気がしません!

SWEET MAGIC-2 管理人の結論。『スウィート・マジック批評

 『スウィート・マジック』は,ジャズの言語のまま演奏された,ライトなフュージョンを身にまとったジャズ・アルバムである。
 爽やかPOPな楽曲群と,こんなにもキュートでJAZZYな音色は『スウィート・マジック』をおいて他にはない。名盤であろう。

 それにしてもMALTAバラードと来ればアルトではなくソプラノサックスがメイン。いい路線だったのにぃ。

  01. SWEET MAGIC
  02. WALKING IN THE SKY
  03. ALWAYS YOU
  04. XYZ
  05. AUTUMN PLACE
  06. BECAUSE OF LOVE
  07. SUNSET IN MY HEART
  08. MANHATTAN IN BLUE
  09. MIDNIGHT TRAIN
  10. STARDUST

(ビクター/JVC 1984年発売/VDJ-1088)

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フォープレイ / イエス・プリーズ4

YES, PLEASE!-1 『YES,PLEASE!』(以下『イエス・プリーズ』)を初めて聴き終えた時,万感の思いに襲われた。ついにフォープレイデビュー以来,ずっと追及してきた理想のサウンドに到達したように思えた。

 『イエス・プリーズ』は,ボブ・ジェームスにとって記念碑的な1枚になるのだろう。ついにボブ・ジェームスの念願叶ったりである。
 キーボードボブ・ジェームスと活動を共にしてきた,ベースネイサン・イーストドラムハービー・メイソンは勿論,リー・リトナーの後を受けたラリー・カールトンにしても「やるべきことをやりきった」満足感に浸ったように思う。
 特に神曲【FREE RANGE】が最高すぎる。4人の会話を盗み聞きしているような気分でアガル〜。

 まっ,これから「褒め殺し」の苦言を書くのだが,つまり『イエス・プリーズ』はフォープレイというバンド・サウンドの「リビジョンアップ版」としか聴き所はない。
 大枠は「調和」という不変のテーマであって,細かな修正に修正を重ねて,もはや手を加える箇所はない感じ? 「どうぞ美味しく召し上がれ」とボブ・ジェームスにケーキを差し出された感じ?

 もう一つ『イエス・プリーズ』に「完成版」のイメージを持ってしまったのは,ジャケット写真から連想するVENUSレコードのあれである。美女がカメラ目線で前かがみのあれが…。
 つまりは「メロウな売れ線&ロマンティック」→『イエス・プリーズ』をイメージしてしまった。あながち当たっていると思っている。

 この路線の選択は間違いではなかった。恐らくフォープレイの出発点は間違ってはいなかった。穏やかで軽めのリズムに大人のエロティシズムを感じるあのノリ…。上手にパート分けされたソロとアンサンブル…。インストとヴォーカルの組み合わせのハイセンス…。4人のバランスが生む極上のアプローチ…。

 ただし『イエス・プリーズ』を聴いているとフォープレイのアンサンブル・フォーマットの限界が見えてくる。フォープレイの4人はもっと自由に演奏できるはずである。
 なのに『イエス・プリーズ』の演奏は譜面通りのような感じで,自分で決めたルールに自らが縛られて?(自分で自分の首を絞めて?)窮屈そうに感じられる。

YES, PLEASE!-2 だから『イエス・プリーズ』を素晴らしいアルバムとして誰かに推薦することはあるとしても,管理人の趣味には合わない。
 ラリー・カールトンを素晴らしいギタリストとして誰かに推薦することはあるとしても,管理人の趣味には合わない。

 勿論,これはフォープレイギタリストとしてのラリー・カールトンのことであって,他のラリー・カールトンのプロジェクトは大抵大好きです。個人的にはリー・リトナーの明るく前向きなトーンがフォープレイに合っていると思うのですが…。

 ラリー・カールトンフォープレイでの黄金期はブルーバード移籍後の第二期から! 『HEARTFELT』以降のラリー・カールトンは「リー・リトナーからは外れ,フォープレイの枠内で」弾きまくっております。はい。

  01. FREE RANGE
  02. DOUBLE TROUBLE
  03. ONCE UPON A LOVE
  04. ROBO BOP
  05. BLUES FORCE
  06. SAVE SOME LOVE FOR ME
  07. FORTRESS
  08. GO WITH YOUR HEART
  09. POCO A POCO
  10. A LITTLE FOURPLAY
  11. LUCKY
  12. MEOWWW

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 2000年発売/WPCR-10767)
(ライナーノーツ/中川ヨウ)

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渡辺 貞夫 / マイ・ロマンス 〜サダオ・プレイズ・バラッド〜4

MY ROMANCE -SADAO PLAYS BALLADS--1 『MY ROMANCE −SADAO PLAYS BALLADS−』(以下『マイ・ロマンス 〜サダオ・プレイズ・バラッド〜』)での渡辺貞夫の演奏はすでに完成されている。いい演奏に違いない。

 しかしその一方で『マイ・ロマンス 〜サダオ・プレイズ・バラッド〜』のナベサダを“青い”とも感じる。心のどこかがしっくりこない。管理人の愛する渡辺貞夫が“軽い”のだ。

 そう。『マイ・ロマンス 〜サダオ・プレイズ・バラッド〜』の印象はフレッシュで若々しい。『マイ・ロマンス 〜サダオ・プレイズ・バラッド〜』がバラード・アルバムなのだから余計にそう感じるのだろう。

 でもそう感じてしまう自分自身がうれしいのだ。『マイ・ロマンス 〜サダオ・プレイズ・バラッド〜』を聴いていると,アルバムを聴き終える途中で毎回思考が飛んでしまう。それは現在の渡辺貞夫についてである。現在の渡辺貞夫の“円熟ぶり”について喜びを噛みしめる自分がいる。

 ズバリ『マイ・ロマンス 〜サダオ・プレイズ・バラッド〜』の演奏は悪くはないが,どうしても「世界一の音色」を奏でる現在の渡辺貞夫が基準ゆえにバークリーから帰国直後の演奏が劣って聴こえてしまうのだ。

 もはや管理人にとって60年代の渡辺貞夫と80年代以降の渡辺貞夫は別人扱い。それくらい渡辺貞夫の進化が目覚ましいし,「青い&若い」と「スター・オーラ&円熟」がハッキリと識別できる。

MY ROMANCE -SADAO PLAYS BALLADS--2 それにしても「青い」ナベサダがなぜこの時期にバラードなのかというと,当時のタクトナベサダのレコーディング・ラッシュ。
← 『マイ・ロマンス 〜サダオ・プレイズ・バラッド〜』が録音された1967年にはアルバム9枚。

 そりゃ毎月毎月レコーディングしていたらバラードの1枚でも録音したくなるもんです。『マイ・ロマンス 〜サダオ・プレイズ・バラッド〜』は渡辺貞夫の逆・若気の至りかも?

PS 『マイ・ロマンス 〜サダオ・プレイズ・バラッド〜』のジャケット写真を見た妻の一言。「この人,真木蔵人に似ている」。似ている?

  01. THEY SAY IT'S WONDERFUL
  02. MY ROMANCE
  03. SOMETIMES I FEEL LIKE A MOTHERLESS CHILD
  04. ONCE UPON A SUMMERTIME
  05. A NIGHTINGALE SANG IN BARKLEY SQUARE
  06. IT'S EASY TO REMEMBER
  07. HERE'S THAT RAINY DAY
  08. LITTLE GIRL BLUE
  09. MY FOOLISH HEART
  10. THAT'S ALL
  11. SPRING IS HERE
  12. I THOUGHT ABOUT YOU
  13. OLD FOLKS

(タクト/TAKT 1967年発売/COCB-54252)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/野口久光,青木和富)

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フォープレイ / 45

4-1 キーボードボブ・ジェームスギターリー・リトナーベースネイサン・イーストドラムハービー・メイソンからなる盤石の4ピース・バンド=フォープレイ

 そのフォープレイからリー・リトナーが脱退することになった。ボブ・ジェームスの頭の中には,リー・リトナーの代わりが見つからなければフォープレイの解散も選択肢としてあったことだろう。
 なぜならフォープレイの“売り”とは「超大物4人組」。リー・リトナーの代わりは「そこそこレベルの大物」では務まらない。果たして,リー・リトナー・クラスの「超大物」で,2年に1枚のレコーディングに参加できるギタリストが見つかるのかどうか?

 当のリー・リトナーも心配する中,フォープレイの新ギタリストが発表された。発表された後ならば「この人しかいない!」となるのだが,それにしても「まさかのまさか!」な結果である。
 何と!リー・リトナーの後釜ギタリストとはリー・リトナーの「公式ライバル」であるラリー・カールトン“その人”! 名脚本家でも絶対に思いつかない?「夢」のようで「奇跡」のような人選だと思う。

 ラリー・カールトンよ,よくぞ決心してくれた。『』の最高の出来映えを聴き返すにつれ,ラリー・カールトンへの思いが強くなる。ラリー・カールトンが完璧にリー・リトナーの後釜を務め上げている。

 元々スタジオ・ミュージシャンであったリー・リトナーラリー・カールトンだから実現した「スムーズすぎるメンバー・チェンジ」。ただし,リー・リトナーラリー・カールトンでは大いに個性が異なることをリスナーは認識しておくべきだろう。
 そう。『』の最高の出来映えはラリー・カールトンの最高の仕事に1つとして記憶されるべきだと思う。

 リー・リトナーにしても,フォープレイの中でギターを弾くには「没個性」が求められていたのだが,ラリー・カールトンの場合は,フォープレイの中で自分を捨てる,尚且つ,リー・リトナーが創り上げてきたサウンド・カラーに寄せるため,もう一段階自分を捨て去る「没没個性」が求められている。
 ゆえに『』でのラリー・カールトンギターが大人しい。いいや,完璧に「影武者ミッション」を遂行することが“仕事人”ラリー・カールトンなりの自己主張なのだと思う。

 そんなラリー・カールトンの“男気”に,ボブ・ジェームスネイサン・イーストハービー・メイソンの3人が応えないはずがない。
 一歩下がろうとするラリー・カールトンを「前へ前へ」と意識的にプッシュしている。『』でフォープレイが“世界最高のアンサンブル・バンド”になったと思う。

4-2 そう。フォープレイの真髄とは“世界最高のアンサンブル・バンド”! フォープレイとはボブ・ジェームスにとっての“世界最高のアンサンブル・バンド”であり,ラリー・カールトンにとっての“世界最高のアンサンブル・バンド”であり,ネイサン・イーストにとっての“世界最高のアンサンブル・バンド”であり,ハービー・メイソンにとっての“世界最高のアンサンブル・バンド”!

 “明るく爽やかな”リー・リトナーのもと発展してきたバンド・スタイルから“ブルージーで粘り気のある”ラリー・カールトンのもと「自分を活かして他の人も活かす」バンド・スタイルへと進歩を遂げた『』。
 カールトン期のフォープレイソロ・パートでのアドリブリトナー期のフォープレイより熱くなったと思う。

 それにしても【STILL THE ONE】は名曲中の名曲である。フォープレイ存続の危機を救ってくれたラリー・カールトンに捧げるハービー・メイソンからの「ラブ・ソング」だと悦に入って聴いている。

 【STILL THE ONE】1曲の魅力で“気だるさの”ラリー・カールトンを大歓迎している,リー・リトナー派の自分が確かにここにいる。

 それにしてもリトナー期の最高の1曲が1曲目の【BALI RUN】で,カールトン期の最高の1曲が1曲目の【STILL THE ONE】というのも単なる偶然を超えた「永遠のライバル」のインパクト!

  01. Still The One
  02. Little Foxes
  03. Sexual Healing
  04. Charmed, I'm Sure
  05. Someone To Love
  06. Rio Rush
  07. Piece Of My Heart
  08. Slow Slide
  09. Vest Pocket
  10. Swamp Jazz
  11. Out Of Body

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1998年発売/WPCR-1942)
(ライナーノーツ/工藤由美)

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TRIFRAME / 青柳誠トライフレーム4

TRIFRAME-1 青柳誠の1stソロTRIFRAME』(以下『青柳誠トライフレーム』)を聴いて二重の意味で観念してしまった。

 1つはアルバムの出来の良さに観念してしまった。“ジャズ・ピアニスト青柳誠が最高に素晴らしい。個人的に青柳誠と来ればピアノというよりテナーサックスであり,ピアノというよりキーボードである。

 どちらにしてもこんなにも“ふくよかで丸く優しい”音を奏でるピアニストというイメージは抱いていない。青柳誠の一番の代名詞は,あのテナーサックスでの「循環呼吸奏法」である。
 ナニワ・エキスプレスライブを珍しく!TVで放映していたのだが,一番の盛り上がりが青柳誠の「循環呼吸奏法」のシーンであり,それ以外でもバンドのフロントマンとして“猛獣使いの王子様”君臨の印象を持っている。

 ナニワ・エキスプレスでのピアノの出番はメロ弾きとバッキングが多かったのだから(ナニワ・エキスプレスにはナニワ・エキスプレスのメイン鍵盤奏者はキーボード中村建治青柳誠ピアニストの印象は薄い。
 ズバリ『青柳誠トライフレーム』をブラインド・テストで出されたら100人が100人とも撃沈することだろう。

 もう1つは「ああ,これで青柳誠ナニワへの復帰はなくなったなぁ」というあきらめの感情である。ファンとしてはナニワ再始動への淡い期待を抱いていたが,このアルバムを聴いて踏ん切りがついた。もう2度とナニワ・エキスプレスの“完全版”は永遠に見ることが出来なくない,という覚悟が決まった。

 『青柳誠トライフレーム』の優しい音世界はそれくらい,ナニワ・エキスプレスの剛球サウンドとは対極に感じた。1999年の時点で青柳誠ナニワ・エキスプレスのサウンドは「水と油」の位置にある。
 思うに,2003年の再結成盤『LIFE OF MUSIC』の時点で,青柳誠ナニワへの思いはすでに燃え尽きていたのだろう。

 岩見和彦が引き金を引いたナニワ・エキスプレスの解散劇。その後の5人の活躍は目覚ましい。その中で一番ナニワから離れてしまったのが青柳誠ではなかろうか? 「マルチ・サウンド・クリエイター」と名乗るにふさわしい五臓六腑の大活躍である。

 そんな「マルチ・サウンド・クリエイター」が青柳誠が自分の中の“ジャズ・ピアニスト”を表に出してきたのが素晴らしい。“ジャズ・ピアニスト青柳誠の発掘が「マルチ・サウンド・クリエイター」青柳誠の最大の功績である。

TRIFRAME-2 管理人の結論。『青柳誠トライフレーム批評

 『青柳誠トライフレーム』のピアニストは,晩年期のビル・エヴァンスのリリシズムや,一部キース・ジャレットにも影響を受けている。全編を通して叙情的なジャズ・ピアノが様々なスタイルをMIXさせて美しく響いている。
 淡いピアノと淡いリズム。そこに打ち込みでヴァーチャル・ストリングスが被ってくる。モノクロの世界が一気にカラーリングされてくる。とろっとろ。

 ただし管理人はこの後におよんでも「青柳誠ナニワ復活」の奇跡を信じている。その根拠こそがソロ・アルバムの制作に「TRIFRAME」というピアノ・トリオ編成を選んだという事実。

 ピアノ青柳誠ベース水野正敏ドラム池長一美による「TRIFRAME」の名コンビネーション。
 きっといつかはベース清水興ドラム東原力哉での「NANIWA TRIFRAME」!?

  01. Blue One
  02. Circle Beeds
  03. Sleepwood
  04. Enokorogusa
  05. Wives and Lovers
  06. Eclogue
  07. Ill Never Fall in Love Again
  08. Third Scene
  09. Only Tune

(ダイキサウンド/SUBCONSCIOUS 1999年発売/SUB-1011)

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フォープレイ / エリクシール4

ELIXIR-1 『FOURPLAY』&『BETWEEN THE SHEETS』が共に愛聴盤のまま発売を迎えた『ELIXIR』(以下『エリクシール』)。

 ズバリ書くと『エリクシール』にはガッカリした苦い思い出がある。手放すのは後の事になるが,どうしても好きになれなかった『SNOWBOUND』と共に中古CD屋で処分した。今手元にある『エリクシール』は2枚目となる。

 このように書き出すと『エリクシール』は駄盤のように思われたかもしれないが『エリクシール』は紛れもなくリトナー期の名盤の1枚である。
 褒め殺しになるかもしれないが,ボブ・ジェームスリー・リトナーネイサン・イーストハービー・メイソンの4人が完璧にフォープレイを演じている。コツを掴んだかのような上質なアンサンブルが実にお見事。

 しかし,余裕たっぷりに聞こえるせいなのか?フォープレイの4人に「うわ〜」って憧れることが出来なかった。要はエモーショナルではなく“うまさ”を無意識のうちに感じ取ってしまったのだと思う。
 キャッチーさが抜けきったアダルト・コンテンポラリーな『エリクシール』の雰囲気に入れ込めず,思い入れ出来ず,感情移入が難しかった。当時まだ20代半ばの管理人には,随分と背伸びした大人の雰囲気に付いていくことができなかった。

 『エリクシール』を最後にリー・リトナーがバンドを離れる。表向きの理由はリー・リトナーソロ活動が多忙を極めて「フォープレイの一員としてスケジュール調整が出来なくなった」ことになっているが,管理人的にはリー・リトナーの“燃え尽き症候群”のようなものだと思っている。
 リー・リトナーにとってのフォープレイは『エリクシール』を持って完結したのだ。誰が何と言おうと管理人はそのように受け取った。

 ではどうして再び『エリクシール』を買い直したのか? それはラジオで久々に聴いた【THE CLOSER I GET TO YOU】に1年に1度の稲妻が走ってしまったから!

 話がフォープレイから逸れてしまうが【THE CLOSER I GET TO YOU】が大好きなのは「SELECT LIVE UNDER THE SKY’90」での,ジョー・サンプルフィリップ・セスバジー・フェイトンスティーヴ・ガッドレニー・カストロフレディ・ワシントンの「SELECT LIVE SPECIAL BANDフィーチャリングアル・ジャロウミキ・ハワード」による【THE CLOSER I GET TO YOU】の影響が大!  

 『エリクシール』でのパティ・オースティンピーボ・ブライソンの【THE CLOSER I GET TO YOU】は歌であって歌ではない。これぞ“インタープレイの極み”である。
 そう。パティ・オースティンピーボ・ブライソンヴォーカルは一般的なデュエットのレベルを超えている。パティ・オースティンピーボ・ブライソンが譜面,アレンジという非常に狭い限られた空間の中で,互いの声の調子を聞き分けながら会話を楽しんでいるように聴こえてしまう。彼らは本当の恋人なのではないかと錯覚してしまう。

 男女のデュエット曲で個人的に一番好きなのは,亡き父ナット・キング・コールとその娘ナタリー・コールナット・キング・コールの過去音源のオーバーダブと共演を果たした【アンフォゲッタブル】なのだが,その雰囲気に良く似ている。大好き。インタープレイの真髄とは“心の交歓”というのが確かめられる名トラックである。

ELIXIR-2 管理人の結論。『エリクシール批評

 『エリクシール』は綺麗すぎるしアダルトすぎる。ただし【THE CLOSER I GET TO YOU】1曲の魅力で,後に続くフォープレイヴォーカル・ナンバーを楽しめる土壌の塗り替えアルバムとして高く評価したい。

 リトナー期のフォープレイの個性を書く。フュージョンの『FOURPLAY』。スムーズ・ジャズの『BETWEEN THE SHEETS』。ヴォーカル・ナンバー大有りの『ELIXER』。

PS 本文には書きませんでしたが【EAST 2 WEST】でのネイサン・イーストスキャットがこれまた最高なので,ヴォーカル・ナンバーをフィーチャリングするフォープレイの評価確定に『エリクシール』が寄与しております。

  01. Elixir
  02. Dream Come True
  03. Play Lady Play
  04. Why Can't It Wait Till Morning
  05. Magic Carpet Ride
  06. Whisper In My Ear
  07. Fannie Mae
  08. The Closer I Get To You
  09. East 2 West
  10. Licorice
  11. In My Corner
  12. Any Time Of Day

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1995年発売/WPCP-28152)
(ライナーノーツ/中田利樹)

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TRIX / TRICK4

TRICK-1 いや〜,本当にいいアルバムだ。これぞ「タネも仕掛けもない」TRIXのイリュージョン・アルバム『TRICK』。

 『TRICK』でついに熊谷徳明TRIXの“手の内”を明かした。
 そう。熊谷徳明が新ギタリスト菰口雄矢と新キーボード・プレイヤー=AYAKIの持てる才能をついに解禁。優秀な若手の蛇口を捻ってみせた最高のアルバムだと思う。

 『TRICK』でのTRIXの“切り札”は菰口雄矢であり“JOKER”はAYAKIである。
 菰口雄矢AYAKIの『TRICK』は,まるでトリックのような演奏面での華麗なるテクニックではない。菰口雄矢作曲の【FUDGE】とAYAKI作曲の【BLUESY FACTORY】!

 そう。【春爛漫】以来,鳴りを潜めていた管理人待望のキラー・チューンの誕生は熊谷徳明の作曲ではなかったという事実! これが最高に気に入った!
 菰口雄矢AYAKITRIXというバンドの個性に寄せてきたがゆえの名曲誕生なのだったと思う。

 これまで菰口くんとAYAKIくんに,冷たく当たってきた管理人は『TRICK』で猛反省。
 TRIX加入前から次世代のエース格として人気者だった菰口雄矢とバークリー首席卒業のAYAKIが,ついにバンド・サウンドの枠内で持てる実力を発揮してきた。ただそれだけのこと。

 菰口雄矢AYAKIをフィーチャーした音楽性の変化を表現するためには,まずは熊谷徳明須藤満に「TRIXの新境地」を受け入れる度量の大きさが求められる。
 とは言えサウンド面での“若返り”は,新ギタリスト,新キーボード・プレイヤーとして彼ら2人を選んだ時点で期待と覚悟は整っている?

 そんな“菰口雄矢AYAKI推し”の『TRICK』だが『STYLE』クラスの名盤と成り得なかったのは,熊谷徳明須藤満の年長組が,菰口雄矢AYAKIの年少組のイメージにまで追いつけてはいないこと。覚悟を決めることはできてもイマージネーション豊かな表現方法までは共有できてはいないこと。

 なんだか第三期TRIXってジャニーズのV6のカミセンとトニセンが合体した感じに思えます。

TRICK-2 時間を重ねて初めてバンド・サウンドが確立されることを考慮すると,まだこれからの部分が大きいのだが,どうしても管理人は違和感がざらついている。

 それは菰口雄矢の立ち位置なのだが,菰口雄矢ってバンドマンというよりはゲストっぽくない? 雇われっぽくない? だから時間をかけたら何とかなるには疑問が残る。
 まっ,そのバンドとしての「カッチリ感」が薄いだけで,完成した『TRICK』が快作なのだから喜ぶだけですかっ!

 管理人の結論。『TRICK批評

 『TRICK』は,おバカPOPフュージョンから洋楽プログレッシブフュージョンへの転換作である。言い換えるなら平井武士シフトから菰口雄矢シフトへの転換作である。
 硬派フュージョンTRIX! イェイ!

  01. FLASH
  02. Jawa Jawa
  03. ビンゴッ!!
  04. Fudge
  05. Sincerely
  06. Trick or Treat
  07. Bluesy Factory
  08. Out Of Cry
  09. ピュッピュッテレパシー
  10. Clover

(キングレコード/KING RECORD 2014年発売/KICJ-675)

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フォープレイ / ビトゥイーン・ザ・シーツ5

BETWEEN THE SHEETS-1 鉄壁のバンド・アンサンブルを誇るフォープレイの理念が,早くも『BETWEEN THE SHEETS』(以下『ビトゥイーン・ザ・シーツ』)具現化されている。

 4人が意気投合したボブ・ジェームスの『グランド・ピアノ・キャニオン』の香り漂う,フュージョン・タッチのデビュー・アルバム『FOURPLAY』が大好きなのだが“ウルトラ・スーパー・グループ”フォープレイの本質としては『ビトゥイーン・ザ・シーツ』の方に聴き所がある。

 3枚目の『エリクシール』も含めて,三つ巴のリー・リトナー期の名盤の中で,現在の“スムーズ・ジャズの雄”フォープレイのスタイルに一番近いのが『ビトゥイーン・ザ・シーツ』である。

 『ビトゥイーン・ザ・シーツ』から押し寄せてくる快感。それは「際立つグルーヴと深いアンサンブルの妙」。
 『ビトゥイーン・ザ・シーツ』こそがフォープレイの枕詞である「拝聴してもよし。BGMとしてもよし」の最右翼だと断言できる。

 キーボードボブ・ジェームスギターリー・リトナーベースネイサン・イーストドラムハービー・メイソンが,我を殺してメンバーの音に合わせているにも関わらず4人の個性はそのまんま!

 ここがフォープレイの凄業! 4人で機織り改め「音を織りなす」という表現がピッタリするような極上の音絵巻! 互いを傷付けることなく同じイメージを描き,音階・音量・リズムを共有して完璧なアンサンブルを鳴らしている。
 バカテクな演奏や派手で判り易い旋律とは全く無縁。淀み迷いの微塵も無い。ある意味“凄み”を感じさせる演奏だと思う。

BETWEEN THE SHEETS-2 スローな曲にはウットリさせられるし,アップ・テンポなジャンプ・チューンには心踊らされる。フォープレイは大人なのだ。フォープレイはアダルト・コンテンポラリーなのだ。
 『ビトゥイーン・ザ・シーツ』のフォープレイフュージョンではなく,スムーズ・ジャズでもなく,この時点ではAORなのだと思う。

 ネイサン・イーストヴォーカルが心地良い。ヴォーカルと4つの楽器の絡み具合がこの上ない。幻想的な浮遊感が音場を支配している。

 『ビトゥイーン・ザ・シーツ』には,美しく流れるように洗練されたグルーヴがある。どれもが味わい深く気品あふれるグルーヴがある。エンタテイメント性を充足させ,アートの域まで達したグルーヴがある。

  01. Chant
  02. Monterey
  03. Between The Sheets
  04. Li'l Darlin'
  05. Flying East
  06. Once In The A.M.
  07. Gulliver
  08. Amoroso
  09. A Summer Child
  10. Anthem
  11. Song For Somalia
  12. Tokyo Rain

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1993年発売/WPCP-5506)
(ライナーノーツ/熊谷美広)

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TRIX / RE:TRIX3

RE:TRIX-1 盤石を誇っていたTRIXであったが,バタバタとギターキーボードがメンバー・チェンジ。一体TRIXに何が起きたのだろうか?

← TRIXはイマイチ愛されていないのか? カシオペアでのJIMSAKUの脱退とスクェアでの本田雅人の脱退は,あれから20年経った今でも酒の話題に上るっちゅうのに。平井武士の脱退の時はそれなりの波風が立ったが,今回の窪田宏の脱退はどうだろう。それも直近の3作で2作もメンバー・チェンジする異常事態だというのに管理人の周りのTRIXファンの無関心ぶりにちょっぴり気落ちしてしまいました。

 そんなバンドの危機を救うべく熊谷徳明「起死回生」の1枚が『RE:TRIX』。第一期TRIXの名曲を新メンバーで焼き直し〜。
 「新生TRIXはこんなになりました」的なセルフカヴァー・アルバムが『RE:TRIX』。前作『DELUXE』から半年後のリリースゆえに,管理人的には熊谷徳明の危機管理能力の高さを感じた1枚という印象である。

 個人的にセルフカヴァーは鬼門となっている。T−スクェアの『宝曲』〜『夢曲』〜『虹曲』の3連発で,カシオペアの『ASIAN DREAMER』の悪夢から解放されつつある管理人であるが,それでも若干,アルバムを手にすることを躊躇してしまった。アマゾンで発売前から安売りされていたからフラゲした。ただそれだけのこと。

 …でっ『RE:TRIX』。第一声は,安心した&ほっとした,である。つまりアレンジが激変しなかったのが良かった。
 個人的にセルフカヴァーの評価軸が,安心して聴けるかどうか,なのが我ながら淋しいと思うのだが致し方ない。それくらいに『ASIAN DREAMER』がトラウマになったということ。その『ASIAN DREAMER』には尚更!熊谷徳明が参加していたという事実有。

 それで気を許して聴き込み始めた『RE:TRIX』。読者の皆さんが本当に知りたい部分での管理人の本音を書く。
 今度は今度で全くアレンジが変化していない。これではメンバー・チェンジの身も蓋もないというものだ。だから『RE:TRIX』は駄盤である。

 メンバー・チェンジしても同じということは機械が演奏していることと同じだし,それだとカラオケと同じだし…。
 到底,これ以上聴き込む気など起きやしない。タンスの肥やし行きであった。

 熊谷徳明も流石にこれではマズイと考えたのか?ラストの【SMILE.〜GENTLE SUMMER VER.〜】だけは“やっつけ仕事的ながら”ボサノヴァ調にリアレンジされていてお見事! こんなセルフカヴァーなら大歓迎!って,ファン心理も女心と似ているのかも?

RE:TRIX-2 管理人の結論。『RE:TRIX批評

 無理矢理『RE:TRIX』とオリジナル・バージョンとの違いを書くとすると,ソロ・パートでのアドリブが違うこと。でもそれって「LIVEで毎晩同じ演奏はしない」くらいの些細な違い。

 熊ちゃん。セルフカヴァーの『RE:TRIX』を出す意味は,批判を早期に封じ込めるタイミング以外の何かがあったのですか?

  CD
  01. Recollection
  02. FIRE
  03. Double Up
  04. Christmas Flower
  05. サムライ
  06. puma
  07. Malaga
  08. Good Luck!!
  09. Jungle Circuit
  10. Passion
  11. 敦煌
  12. Smile.〜gentle summer ver.〜

  DVD
  01. Tears In The Universe
  02. Synchronizer
  03. 春爛漫

(キングレコード/KING RECORD 2013年発売/KIZC-207/8)
★【初回限定盤】ボーナスDVD付 2枚組

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フォープレイ / FOREPLAY5

FOURPLAY-1 フォープレイが結成されたのは1990年。当時の常識からして“ウルトラ・スーパー・グループ”フォープレイの結成は異例中の異例のことだと記憶している。

 というのも世はバブルの真っ只中で“桜花爛漫”を楽しんでいた時代である。今のようなデフレで尻つぼみのご時世なら幾分理解できるが,例えばBOOWYから氷室京介と布袋寅泰がソロデビューを果たしたように,音楽家足るもの,まずはバンドで売れてからソロで大活躍というのがセオリーであり皆の目標であったと思う。あのマーカス・ミラーマイルス・デイビスのバンドで売れたから今の栄光がある。

 だ・か・ら・すでに全てを手に入れている“売れっ子”の4人。キーボードボブ・ジェームスギターリー・リトナーベースネイサン・イーストドラムハービー・メイソンフォープレイというレギュラー・グループを結成したことに驚愕したのであった。
 絶好調のバブル景気に企業業績も増収増益。なのに合併とか統合する会社がどこにある。起業し独立するチャンスがあるのに敢えて会社に出戻りして過労死する感じ?

 なぜ? どうして? 勿論お金にも困っていないだろうし,名声も十分に獲得しているし,ソロ活動に軸足を置いた方が自分のやりたい音楽がやれるであろうに…。
 バンドを組む理由が見当たらない4人の決意に当惑しつつデビューCDFOURPLAY』を聴いて無言になった。音楽を聴いただけで納得させられてしまった。

 フォープレイはこれなんだ。この4人が集まったフォープレイでなければならないんだ。
 この極上の音楽はボブ・ジェームス1人が,ありったけのお金や時間を費やしても完成させることのできない音楽である。ボブ・ジェームスが全ての私財を投げうってでも手に入れたかった音楽。それが『FOURPLAY』から流れてくる。この上なく素晴らしい。

FOURPLAY-2 ボブ・ジェームスの『グランド・ピアノ・キャニオン』で意気投合してしまった奇跡の4人が,自分を押し殺してグループ・サウンドの一部として機能することだけに徹している。
( 余談ですが,上記の理由で管理人はリー・リトナー時代のフォープレイが一番好きなのです! )

 フォープレイの『FOURPLAY』が大好きだ。書きたいことは山ほどあるが『FOURPLAY批評の誌面上に1つだけ書いておく。それは『FOURPLAY』の時点では,現在のスムーズ・ジャズばかりを演るバンドになるとは思わなかったということ。

 【BALI RUN】の,静寂からの「もうやめて〜」的な猛プッシュの音階上がりに押し倒されてしまったファンたちは皆,管理人と同様の感想を抱いていると思っている…。

  01. BALI RUN
  02. 101 EASTBOUND
  03. FOREPLAY
  04. MOONJOGGER
  05. MAX-O-MAN
  06. AFTER THE DANCE
  07. QUADRILLE
  08. MIDNIGHT STROLL
  09. OCTOBER MORNING
  10. WISH YOU WERE HERE
  11. RAIN FOREST

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1991年発売/WPCP-4463)
(ライナーノーツ/小川隆夫)

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TRIX / DELUXE4

DELUXE-1 新ギタリスト菰口雄矢が加入した『IMPACT』は「NO・IMPACT」。
 そして本作,新キーボード・プレイヤー=AYAKIが加入した『DELUXE』は「NO・DELUXE」。

 2度のメンバー・チェンジを経て管理人が思ったこと。それはカシオペアがいつの時代も野呂一生のバンドであるように,TRIXとは熊谷徳明のバンドだということである。
 「2期」になってもフロント2人がメンバー・チェンジしてもTRIXTRIX熊谷徳明の独特の世界観は健在であった。

 それにしても窪田宏の脱退は痛い。ある意味「バンドの顔」であった平井武士との別れ以上にバンドの窮地を経験したことと思う。
 「バンドの顔」が変わるのは音楽的にも分かりやすい。ただし,今回は「バンドの屋台骨」のキーボードである。サウンド・カラーを最終的に決定付けていた窪田宏の路線を継続するか? それとも別路線を模索するか? どちらにしてもキーボードの変更はギター以上に比重が大きい!
← 野呂一生向谷実脱退後のカシオペア・サード立ち上げ時に,新キーボード・プレイヤーとして向谷実とは正反対のオルガニスト大高清美を後任に選んだ。 

DELUXE-2 その意味で熊谷徳明は,後任にAYAKIを選ぶことによって,窪田宏路線の継続を決めたように思う。というのも『DELUXE』を聴いても,TRIXに大きな変化は感じない。
 『DELUXE』でのAYAKIには,ソツなく窪田宏の役割をこなすミッションが与えられている?

 その狭められた役割の中でAYAKIの個性が輝くのはブラスシンセを多用した音色使い。AYAKIの指からソプラノサックスやらヴァイブの音色が降って来る〜。
 AYAKIのルーツはロックやPOPSではなくジャズフュージョン! 新生TRIXの命運は菰口雄矢の成長次第であるが,もっと深い部分でバンドの寿命はAYAKIの鍵盤が握っているように思う。

 『DELUXE』は「NO・DELUXE」。暴言を書けば“華”がなくなってしまった(失言)。
 テクニカルな菰口雄矢に,テクニカルなAYAKIが加わり,スーパー・プレイが飛び出すのにワクワク感が消えてしまった。硬派でアグレッシブな演奏スタイルに,想定外の“遊び”が無くなってしまったのは個人的に残念である。

DELUXE-3 辛口な『DELUXE批評となってしまったが,純粋に『DELUXE』には久しぶりにいい曲が集まった印象を持つ。
 そんな中,熊谷徳明の提供曲は過去最少の4曲。しかもいつものパターンからすればアルバムのラストを締める【春爛漫】がなぜ3曲目? 熊ちゃん,ご乱心か?

PS TRIXの「お約束」『DELUXE』での“遊び”は内ジャケットのメンバー写真。CDトレイ下のメンバー写真がAKB48と同じキングレコードであって1枚に1人の写真がランダムで挿入されているとのこと(4人全員コンプリートするには4枚買ったぐらいでは無理だと思われます)。「DELUXE-3」は管理人が当たった「熊谷徳明デラックス」( by マツコ・デラックス風 )。

  01. 三国志
  02. インドメタシン
  03. 春爛漫
  04. The Speed Queen
  05. Motivic
  06. Tears In The Universe
  07. Horizon
  08. North
  09. Synchronizer
  10. Anytime, Anywhere

(キングレコード/KING RECORD 2013年発売/KICJ-655)

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