
『ウィスパーズ・アンド・プロミス』でアール・クルーが追求してきた“繊細なアコースティック・フュージョン・ギターのオーケストレーション”が色とりどりに咲き乱れている。
とにかくカラフルなアルバムである。そしてそこにあるべき色調でアコースティック・ギター鳴っている。本当に聴き終わると気分が“うっとり”するのである。
そう。『ウィスパーズ・アンド・プロミス』の印象は,アコースティック・ギター以上に,時代を先取りしたスムーズ・ジャズ・ギターである。
生バンド・スタイルに打ち込みにとリズミックな演奏が続いているはずなのに,静かで美しくメロディアス,そして豪華で煌びやかなメロディックな展開で見事に全体がまとまっている。
全10曲が全く違う曲調なのに“繊細なアコースティック・フュージョン・ギター”というワントーンで統一感あるアルバムに仕上げている。
アール・クルーの柔らかなギター・サウンドと溶け合うビッグ・バンドやストリングスの“淡い音色”が音場の空気を支配している。
『ウィスパーズ・アンド・プロミス』におけるアール・クルーのサウンド・メイキングを冷静に分析してみると,デイブ・グルーシンやボブ・ジェームスのようなアレンジャーにアール・クルーが重用されてきた理由が良く分かる〜。
これって実はアール・クルーを語る上で非常に重要なファクターであって,簡単に言えば,アール・クルーのアコースティック・ギターが様々な音楽ファンにアピールしたのは,アール・クルーが開拓した形式や様式の魅力ではなかったという事実である。
そう。アール・クルーの音楽性の真髄が,アール・クルーの人間性の真髄,つまり非常にヒューマンなレベルで演奏されているということを証ししているのである。
管理人は未だアール・クルー本人以外に“アール・クルーっぽい”ギタリストと出会ったことがない。そんな“ワン・アンド・オンリー”なアール・クルーのミュージシャン・シップが『ウィスパーズ・アンド・プロミス』で,アール・クルーの目指した形に花開いている!

『ウィスパーズ・アンド・プロミス』は幾つもの添え木を使った「盆栽」作品のように思う。アール・クルーがセルフ・プロデュースで完璧に仕上げた「盆栽」の音である。
全体の調和と細部の調和をじっくりと見つめる。やがてアルバムの本質だけに耳が行くようになる。絶対に感動を覚えますよっ。
01. WHAT LOVE CAN DO
02. MASTER OF SUSPENSE
03. WATER SONG
04. STRAWBERRY AVENUE
05. FALL IN LOVE
06. SUMMER NIGHTS
07. JUST YOU AND ME
08. WHISPER AND PROMISES
09. FRISKY BISCUITS
10. TANGO CLASSICO
(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1989年発売/22P2-2714)
(ライナーノーツ/成田正)
(ライナーノーツ/成田正)