アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

CD批評:KEEP

KEEP / ロックン・ロックド・ロック5

ROCK'N ROCKED ROCK-1 「KEEP」の楽曲単位としての“最高傑作”が【SONATINE】であるなら,アルバム単位としての“最高傑作”が『ROCK’N ROCKED ROCK』(以下『ロックン・ロックド・ロック』)である。

 『ロックン・ロックド・ロック』は問答無用で素晴らしい。本職のロック・バンドではなくフュージョン・バンドの「KEEP」が提示するロックゆえに,色眼鏡で見られてしまうのも致し方なことだろうが,フュージョン・バンドが本気で演奏するロックとは「本家」を超えて,真のロック音楽が目指した「理想の高み」に達しているように思う。

 それくらいに深町純キーボードが,和田アキラギターが,富倉安生ベースが,山木秀夫ドラムが,狂ったようにロックン・ロールしまくっている。ギンギンに跳ねているのだ。

 【SONATINE】のような「美して激しいドラマティック・フュージョン」を聴きたくて『ロックン・ロックド・ロック』を購入した人間とすれば,非フュージョンへの音楽性の変化にガッカリするのかもしれないが『ロックン・ロックド・ロック』の“魂”を前にして,ただただ賛辞の言葉しかなかった。

 ズバリ『ロックン・ロックド・ロック』は,最初の一音から最後の一音まで,怒涛のロックン・ロール・ショー。和田アキラをして,バカテクの早弾きなのにロックギターの境界線に踏みとどまっており,決してプログレフュージョンしてはいない。

 深町純という音楽家はソロ・アルバムを追いかけたファンならお分かりかと思うが,発表するアルバム毎にコンセプトを変えてくるミュージシャンである。
 ただし,その変化はクロスオーヴァーとかフュージョンとか呼ばれるジャンルの中での変化であって,ここまでロックに振られたことは1度もなかった。

 思うに『ロックン・ロックド・ロック』の制作理由は,J−フュージョン黎明期をリードしてきた深町純が,ついに花開いた自分抜きの日本のフュージョン・ブームへの嫉妬かも?
 深町純が追い求めても手に入れられなかった,プリズムカシオペアザ・スクェアの大ヒットを目の当たりにして,それらを全て否定してみたくなった?

 自らが活躍すべく開拓してきたフォーマットだったのに,自分1人だけがフュージョン・ブームに乗り遅れた悲哀。これは自らの手でブチ壊さねば! いざ,ビルド・アンド・クラッシュ!

 そう。『ロックン・ロックド・ロック』の真実とは,軽快なフュージョンをブチ壊すために「KEEP」がフュージョン・シーンに放り込んだ“刺客”なのである。

 ズバリ『ロックン・ロックド・ロック』の音作りは,曲調こそロック的とは言え,メロディーやハーモニーが複雑で音楽の細部のバランスがバカテクの上に成り立っていればこそ!
 弾きまくり&叩きまくりにして,アドリブよりもアレンジで聴かせる展開力こそが,ギター・メインのロック野郎ではなく,複数の楽器で同時にユニゾンするあの快感を味わってきた“フュージョン目線な”ロック・サウンドのハイライトなのである。

ROCK'N ROCKED ROCK-2 お互いを完璧に支えあう主従の切り替え。時にユニゾン。暴走するアドリブの一瞬の隙を突いて切り込むオブリガード。リズム隊の一糸乱れぬフレームワークが最高に素晴らしい。

 『ロックン・ロックド・ロック』を聴いた直後に,軽快なフュージョンを聴くと,あの軽さに嫌悪感を抱いてしまうのでご注意を!
 フュージョン・バンドが本気で演奏するロックとは重い音楽なのである。歌詞不要の「怒涛の音圧」が全てなのである。

  01. Rock'n Rocked Rock
  02. Moonbeam
  03. Modja
  04. Aristocrat bachelor
  05. Ballad

(トリオ/TRIO 1982年発売/CRCD5053)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/深町純)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

KEEP / DG-5815

DG-581-1 「KEEP」の骨格は深町純の細部まで書き込んだ譜面でまず間違いないだろう。
 「KEEP」結成に至るまでの深町純は,本場アメリカの凄腕プレイヤーたちとの交流を深めることによって,自らの思い描くフュージョン・サウンドを追及してきた。

 しかし,出来上がったフュージョン・サウンドは,それが深町純のペンによるものだとしても,どうしても&何回演っても,スタッフブレッカー・ブラザーズっぽさが感じられる「アメリカン・フュージョン・タッチ」。
 当然である。フュージョンの主役は曲ではなく演者の方なのだから…。

 そこで深町純が考えたのが,オール日本人によるフュージョン・バンドの結成である。
 ニューヨーク・オールスターズで“天下を獲った”深町純が欲したのは,世界的にも稀有なミュージシャンがガラパゴス化している「J−フュージョン・オールスターズ」を率いる深町純であった。

 しかし,ここが最高に面白い部分なのだが,深町純の細部まで書き込まれた譜面を,すでにビッグネームとなっていたギター和田アキラベース富倉安生ドラム山木秀夫の3人が「自分ならどう表現しようか」と譜面と格闘しているのが「KEEP」なのである。
 深町純の願いかなわず,深町純の狙いとは真反対に「バンドの力学」が動いている。

 ズバリ,1stである『DG−581』は「KEEP」4人によるセッション・アルバムである。
 互いにけん制しあいながら,どこまで踏み込むべきか“腹の探り合い”の雰囲気がなんとも微笑ましく,それでいて音楽としての完成度がメチャメチャ高い。和田アキラ富倉安生山木秀夫のミュージシャン・シップが深町純の「書き譜の音世界」を大きく越えてしまっている。痛快極まりない!

 『DG−581』について語るなら,テクニカルな演奏に違いないが,それ以上にメロディアスで温かみのあるサウンドが前面に出ていると思う。
 フュージョンを基本としつつ,ジャズっぽくロックっぽくプログレっぽいところもあるが,マニアックな空気は薄く風通しの良い雰囲気に満ちている。

 そう。「KEEP」はバンド・サウンドを目指しながらも,形として最後までバンドになりきることのできなかった“バンド崩れ?”のセッション・バンドである。
 和田アキラは「プリズム」で,富倉安生は「トランザム」で,山木秀夫は「マライア」と「香津美バンド」で,バンド・サウンドを奏でることが出来ているが,唯一,深町純だけが,生涯,バンドの一部となりきれることのなかったセッション・ミュージシャンだと思っている。

 だからこそ「KEEP」が光り輝いている。「KEEP」が最強なのは,メンバー4人が4通りに思い描く音楽イメージが全部放出されている点にある。
 4人が1つのイメージを共有するのがバンドであるなら「KEEP」は4人が4つのイメージを共有している。こういけばこうである。4人が局面を打開するためのアイディアを数多く持っているから,誰かが仕掛けた創造的なアプローチにも,あらかじめ譜面に書かれていたかのように即興で対応できてしまう。そんな感じの演奏が続いている。

DG-581-2 管理人にとっては『DG−581』とは,いいや「KEEP」とは【SONATINE】のことである。この1曲の中に「KEEP」の全てが収められている。

 深町純の“最高傑作”をもってしても,和田アキラの“最高傑作”をもってしても,富倉安生の“最高傑作”をもってしても,山木秀夫の“最高傑作”をもってしても『DG−581』の【SONATINE】には遠く及びやしない。

 【SONATINE】の世界観はソロでは表現できないし,バンドでも表現できない。ウルトラ・スーパー・セッション・バンド=「KEEP」だから表現できたのだと思う。素晴らしい。

  01. OWL FLIGHT
  02. PAN NEO
  03. NEVER ENDING SAD
  04. DANCE OF PARANOIA OPUS 3
  05. SONATINE

(トリオ/TRIO 1981年発売/CRCD5030)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/笠木脩治,福原武志)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)
livedoor プロフィール

セラビー

記事検索
Categories
Keith Jarrett Gallery

キース・ジャレット(真田馨子) おんがく日めくり(c) keiko sanada
Pat Metheny Gallery

パット・メセニー(野々口和仁)
(c) Kazuhito Nonoguchi
ジャズ・アフィリエイト
セラビー厳選CD

パリ・コンサートパリ・コンサート
キース・ジャレット

THE WAY UPTHE WAY UP
パット・メセニー・グループ

イン・ア・サイレント・ウェイイン・ア・サイレント・ウェイ
マイルス・デイビス

HEAVY WEATHERHEAVY WEATHER
ウェザー・リポート

BRAINCOOL STRUTTIN'
ソニー・クラーク

MINT JAMSMINT JAMS
カシオペア

HUMANHUMAN
T-スクェア

LEFT ALONELEFT ALONE
マル・ウォルドロン

フル・ハウスフル・ハウス
ウェス・モンゴメリー

ザ・シーン・チェンジズザ・シーン・チェンジズ
バド・パウエル

セロニアス・モンク・トリオセロニアス・モンク・トリオ
セロニアス・モンク

枯葉枯葉
チェット・ベイカー

MOANIN'MOANIN'
アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ

BLOWIN' THE BLUES AWAYBLOWIN' THE BLUES AWAY
ホレス・シルヴァー

ウィントン・マルサリスの肖像ウイントン・マルサリスの肖像
ウイントン・マルサリス

メイティング・コールMATING CALL
タッド・ダメロン

Blu-spec CD ジャコ・パストリアスの肖像ジャコ・パストリアスの肖像
ジャコ・パストリアス

ザ・キング・イズ・ゴーンザ・キング・イズ・ゴーン
マーカス・ミラー

FIRST MEETINGファースト・ミーティング
テザード・ムーン

スペシャル・エディションSPECIAL EDITION
ジャック・デジョネット

ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリングYOU MUST BELIEVE IN SPRING
ビル・エヴァンス

ヴァイアティカムVIATICUM
e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)

STEP BY STEPSTEP BY STEP
ステップス

2424
DIMENSION

GANAESIAガネシア
渡辺香津美
カズミ・バンド

コンプリート・ピック・ヒッツ・ライヴPICK HITS
ジョン・スコフィールド

ニューポートの追想V.S.O.P.
ハービー・ハンコック

アス・スリーUS THREE
ホレス・パーラン

Manhattan StoryBLUE'S MOODS
ブルー・ミッチェル

AFRICAN PIANOOFF TO THE RACES
ドナルド・バード

AFRICAN PIANOAFRICAN PIANO
ダラー・ブランド

Manhattan StoryMANHATTAN STORY
アキコ・グレース

SPELLBOUNDSPELLBOUND
ジョー・サンプル

ランデヴーRENDEZ-VOUS
木住野佳子

RETURN TO FOREVERRETURN TO FOREVER
チック・コリア

BRAINBRAIN
上原ひろみ

イン・ラインIN LINE
ビル・フリゼール

ザ・サウンド・オブ・サマー・ランニングザ・サウンド・オブ・サマー・ランニング
マーク・ジョンソン

スインギン・マケドニアスインギン・マケドニア
ダスコ・ゴイコビッチ

タイム・スレッドTME THREAD
小曽根真 & ゲイリー・バートン

フルーツケーキFRUITCAKE
フルーツケーキ

THE DROPPERTHE DROPPER
メデスキ,マーチン&ウッド

Doin' SomethingDOIN' SOMETHING
ソウライヴ

SALT IISALT II
塩谷哲

Dance Your HeartDANCE YOUR HEART
Saya

地球は愛で浮かんでいる地球は愛で浮かんでいる
松永貴志
アンケートボードA

★当ブログについて望むことは?
アルバム単位で批評してほしい
同じ曲をテイク別に批評してほしい
多くのジャズメンを幅広く批評してほしい
一人のジャズメンを掘り下げて批評してほしい
超有名曲をもらさず批評してほしい
発売直後の新作を批評してほしい
初心者を意識したほんわかサイトにしてほしい
マニアを意識したニッチなサイトにしてほしい
オーディオについて批評してほしい



-Mini Vote-
アンケートボードB
How Much Is Your Blog Worth?

My blog is worth
$38,953.26

How much is your
blog worth?

最新コメント
Copyright (C) 2005-2018 アドリブログ All Rights Reserved.