アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

CD批評:デューク・ピアソン

デューク・ピアソン / イット・クッド・オンリー・ハプン・ウィズ・ユー5

IT COULD ONLY HAPPEN WITH YOU-1 『HOW INSENSITIVE』のB面から『IT COULD ONLY HAPPEN WITH YOU』(以下『イット・クッド・オンリー・ハプン・ウィズ・ユー』)へと続くブラジリアン・フュージョンの大名演…。

 アイアート・モレイラフローラ・プリムを起用したブラジリアン・フレイバーは,出来上がりこそ異なれど,チック・コリアの「リターン・トゥ・フォーエヴァー」と同じ方向性を見据えていたように思う。

 デューク・ピアソンピアノではなくエレピを中心に据えている。デューク・ピアソンエレピコンビを組むのがエルミート・パスコアールフルートである。
 フローラ・プリムヴォーカルが不安定で「ギャル」しているところも『イット・クッド・オンリー・ハプン・ウィズ・ユー』特有の“味”である。

 『イット・クッド・オンリー・ハプン・ウィズ・ユー』の録音年は1970年。あの『リターン・トゥ・フォーエヴァー』より2年も前のことである。
 『イット・クッド・オンリー・ハプン・ウィズ・ユー』の発売年は1974年。あの『リターン・トゥ・フォーエヴァー』より先にリリースされてさえいれば…。

 デューク・ピアソンは,今では「知る人ぞ知る」存在である。だからマニアックなジャズ・ファンとしては「自分だけの」デューク・ピアソンみたいな感じがして熱狂度が上がるのだと思う。
 だから『イット・クッド・オンリー・ハプン・ウィズ・ユー』の4年間の「遅れ」が惜しまれる。デューク・ピアソンの「地位向上」という意味合いが強いのだが『イット・クッド・オンリー・ハプン・ウィズ・ユー』の4年間の「遅れ」は,ジャズフュージョン界にとっても損失であった。

 『リターン・トゥ・フォーエヴァー』とか『ウェザー・リポート』が,すぐに爆発的なヒット作と成り得たのは,チック・コリアジョー・ザビヌルウェイン・ショーターが「マイルス・スクール」の卒業生だったからだろう。
 その意味で,マイルス絡みではないデューク・ピアソンブラジリアン・フュージョンが「天下」を取ろうものなら,ジャズフュージョン界の動向は,チック・コリアに“先んじた”デューク・ピアソンに大いに影響されていたことであろう。
 ドナルド・バードマイルス・デイビスを押さえて“新・帝王”として君臨していたのかも?

IT COULD ONLY HAPPEN WITH YOU-2 管理人の結論。『イット・クッド・オンリー・ハプン・ウィズ・ユー批評。 

 “SOFTLY”な【IT COULD ONLY HAPPEN WITH YOU】〜【STORMY】〜【EMILY】の3連チャンのジャズヴォッサが艶やかすぎて『リターン・トゥ・フォーエヴァー』の衝撃クラスの快感である。

 単純に気分が良くなるという楽曲ではない。ジャズにブラジルのエッセンス,ジャズボサノヴァのエッセンスというものではなく,ジャズの本質とフュージョンの本質が絶妙に入り混じった,全く新しい音楽の誕生なのである。

  01. GIRA. GIROU (ROUND AND ROUND)
  02. HERMETO
  03. LOST IN THE STARS
  04. IT COULD ONLY HAPPEN WITH YOU
  05. STORMY
  06. EMILY
  07. BOOK'S BOSSA

(ブルーノート/BLUE NOTE 1974年発売/TOCJ-50526)
(ライナーノーツ/高井信成)

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デューク・ピアソン / ハウ・インセンシティヴ5

HOW INSENSITIVE-1 デューク・ピアソン自身が参加し,作り上げたドナルド・バードの超名盤ア・ニュー・パースペクティヴ』から5年。
 『HOW INSENSITIVE』(以下『ハウ・インセンシティヴ』)はデューク・ピアソンが考える『ア・ニュー・パースペクティヴ』のUPDATE作である。

 「VOICES & JAZZ」で“ゴスペルを聴かせるためのエッセンス”としてのジャズが『ア・ニュー・パースペクティヴ』ならば「VOICES & JAZZ」で“ブラジルを聴かせるためのエッセンス”としてのジャズが『ハウ・インセンシティヴ』なのである。

 ブルーノートの看板を背負い,もはや押しも押されぬ大物となったデューク・ピアソンの視線は,この時期,ジャズの枠を広げることに向けられていた。
 そうして見つけた(魅せられた)ブラジリアン・フレイバーで『ア・ニュー・パースペクティヴ』をUPDATEしてみせた。

 ズバリ『ハウ・インセンシティヴ』を聴いて感じるのが,デューク・ピアソンの,そしてジャズという音楽の“奥深さ”である。
 『ア・ニュー・パースペクティヴ』の「完全盤」となる『ハウ・インセンシティヴ』での試みは,楽器でコーラスする,そして楽器でエスコートするというものである。

 『ハウ・インセンシティヴ』の肝はジャズスタンダードの【STELLA BY STARLIGHT】である。
 この超スタンダードデューク・ピアソンは『ア・ニュー・パースペクティヴ』の“売り”であった「ゴスペル・コーラス」で“スピリチュアル”してみせる。優雅さと軽やかさを感じる洒落た「17名のコーラスの波」が絶妙である。

 そう。『ハウ・インセンシティヴ』の聴き所は,デューク・ピアソンの「静物画」である。ほんのりと温かい「静物画」である。【STELLA BY STARLIGHT】がジャズ史上最高に涼しい。清々しい。

HOW INSENSITIVE-2 ただし,世評では『ハウ・インセンシティヴ』と来れば「クラブ・ジャズ」であって【STELLA BY STARLIGHT】以上に【SANDALIA DELA】【LAMENT】の人気が高い。
 特に島田奈央子さんに代表される【SANDALIA DELA】の「女子受け」は抜群のように思う。

 そう。『ハウ・インセンシティヴ』こそが,ジャズの将来を見据えたデューク・ピアソンの「先見の明」。
 デューク・ピアソン自身もアコースティックピアノに加えエレクトリックピアノフリューゲルホーンまでプレイしてみせている。

 ジャズを根っ子に持ちつつ,ジャズに固執せず,新しい音楽やリズムを取り入れ,ジャズに新たな息吹を吹き込み続けたのがデューク・ピアソン“その人”である。
 感度の高いDJたちに最高評価されたジャズメンはデューク・ピアソン以外に存在しない!

  01. STELLA BY STARLIGHT
  02. CLARA
  03. GIVE ME YOUR LOVE
  04. CRISTO REDENTOR
  05. LITTLE SONG
  06. HOW INSENSITIVE
  07. SANDALIA DELA
  08. MY LOVE WAITS (O MEU AMOR ESPERA)
  09. TEARS (RAZAO DE VIVA)
  10. LAMENTO

(ブルーノート/BLUE NOTE 1969年発売/UCCQ-9135)
(ライナーノーツ/ナット・ヘントフ,佐藤英輔)

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デューク・ピアソン / ナウ・ヒア・ジス5

NOW HERE THIS-1  デューク・ピアソンソロ名義になっているが『NOW HERE THIS』(以下『ナウ・ヒア・ジス』)は「デューク・ピアソンビッグ・バンド」の第二弾である。

 前作『INTRODUCING DUKE PEARSON’S BIG BAND』からは「あれもこれもという印象」を受けたが『ナウ・ヒア・ジス』のトータル・サウンドはまとまっている。

 抜きん出た奇抜さなどは感じないが,いわゆる伝統的なビッグ・バンドとは一味違うモーダルな仕上りである。維持費のかかるビッグ・バンドをここまでチューンアップしてくるとは,デューク・ピアソンの本気度を感じないわけにはいかない。

 真にデューク・ピアソンが「本当にやりたいことをやりきったフォーマット」とは「デューク・ピアソンビッグ・バンド」ではなかろうか?
 作曲もそうなのだが,特に編曲の魅力に“憑りつかれた”デューク・ピアソンが“自腹を切ってまで”大盤振る舞いした『ナウ・ヒア・ジス』の“鳴りっぷり”が最高に素晴らしい。

 『ナウ・ヒア・ジス』のメンバーは,トランペットジム・ボッシーランディ・ブレッカーバート・コリンズジョー・シェプリーマービン・スタムトロンボーンガーネット・ブラウンジミー・クリーブランドベニー・パウエルケニー・ラップサックスジェリー・ドジオンアル・ギボンズフランク・フォスタールー・タバキンペッパー・アダムスに,ピアノデューク・ピアソンベースボブ・クランショードラムミッキー・ローカーの17名編成。

 こんな凄腕ジャズメンばかりを起用するとは「デューク・ピアソンビッグ・バンド」は,ブルーノートのプロデューサーとしての立場を私的に利用した,デューク・ピアソンの「職権濫用」の結晶であろう。

 こんなにも重量級の面々なのに軽やかなサウンドが“飛び出してくる”秘訣こそが,ブルーノートのプロデューサーとして数多くのレコーディングに立ち会いながら「こうでもない。ああでもない」と常に自らのビッグ・バンドの構想を練っていたデューク・ピアソンの“粘り勝ち”にあると思う。

NOW HERE THIS-2 惜しむべきは『ナウ・ヒア・ジス』の次が出なかったこと。もう1作出ていたなら,デューク・ピアソンピアノ・トリオではなく,デューク・ピアソンビッグ・バンドになっていた。そう本気で思っている今日この頃の管理人…。

 管理人の結論。『ナウ・ヒア・ジス批評

 デューク・ピアソンが,メンバーを吟味し,アレンジを吟味し,自らの夢を追い続けた「デューク・ピアソンビッグ・バンド」とは「デューク・ピアソンの,デューク・ピアソンによる,デューク・ピアソンのためのビッグ・バンド」。
 『ナウ・ヒア・ジス』は相当いいですよっ!

  01. DISAPPROACHMENT
  02. I'M TIRED CRYIN' OVER YOU
  03. TONES FOR JOAN'S BONES
  04. AMANDA
  05. DAD DIGS MOM (AND MOM DIGS DAD)
  06. MINOR LEAGUE
  07. HERE'S THAT RAINY DAY
  08. MAKE IT GOOD
  09. THE DAYS OF WINE AND ROSES

(ブルーノート/BLUE NOTE 1969年発売/TYCJ-81064)
(ライナーノーツ/マイケル・カスクーナ,岡崎正通)

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デューク・ピアソン / ザ・ファントム5

THE PHANTOM-1 管理人の大好きなデューク・ピアソンが『THE PHANTOM』(以下『ザ・ファントム』)の中にいる。
 『ザ・ファントム』の中に,知的なバランサーという表の顔から見え隠れしている,アヴァンギャルドなデューク・ピアソンの本性がこぼれ落ちている。
 デューク・ピアソンの多面性が1枚のアルバムとしてバランスよくまとまっているのだから,デューク・ピアソンのハイセンスはとんでもない!

 『ザ・ファントム』は,モーダル&スピリチュアルの極みの【THE PHANTOM】と趣味の良いピアノ・トリオな【SAY YOU’RE MINE】の2曲に尽きる。
 この2曲の存在が「陰と陽」的に輝いて『ザ・ファントム』を味わい深い,そして忘れがたいアルバムへと昇華させている。この「足し算と引き算」の塩梅がこそが“天才”デューク・ピアソンの魅力に尽きる。

 ミステリアスなエキゾチック風の【THE PHANTOM】は聴けば聴くほど深みにハマル。管理人には耳タコな1曲であって,ムーディーなフルートが森の中を旋回し,地上ではジャングルの奥地から2台のコンガの音が地鳴りしている。
 なのにビシッと均整の取れたアングルで画角に全体がきれいに収まっている。ふとした瞬間にイマジネーションの世界からスタジオで演奏している現実に引き戻されてしまう。ボビー・ハッチャーソンヴァイブが人工的なのだ。心のヒダにヒリヒリくるのだ。

 そんなモーダルなサウンド・メイキングが何度聴いても快感である。疑似コンクリート・ジャングル・サウンドがたまらなく刺激的である。
 ブラジル有のラテン有のボッサ有の「ブラジリアン・エキゾチック・コラージュ」期の計算されたノリと計算以上のノリ。デューク・ピアソンは『ザ・ファントム』の時点ではすでに「脱・王道」「脱・アメリカ」で世界を見据えている。

 そうして,ジャズの枠を飛び出しそうで,ギリギリで枠内に留まっている。過剰で,贅沢で,誘うようで,悪趣味の直前ぎりぎりで留まってみせる「禁断の果実」に手を伸ばしている。妖しくはない。でもイケナイ音楽を聴いているようで,いつ聴いてもドキマギしてしまう。好きなんだよなぁ。この感じ。

 『ザ・ファントム』のもう一方の雄=【SAY YOU’RE MINE】は,涼しい顔して笑い飛ばす,デューク・ピアソンの哀愁のピアノに心を打たれてしまう。
 悲しみを乗り越えるには可憐さ,すなわち勇気や強さが必要であることを【SAY YOU’RE MINE】を聴く度に思い起こされる。

THE PHANTOM-2 ズバリ【SAY YOU’RE MINE】が,バラードのクセして?自己主張している。遠慮がちというか,自信なさげにというか,でもハッキリと自己主張してくる。普段とは違う何か,に引っ掛かる。
 そう。デューク・ピアソンは悲しみの全てをすでに知っている。でっ,どれだけ伝えるべきか? どこをどう伝えるべきか?だけを迷っているのだ。

 リリカルな演奏だ。感情を抑えた演奏だ。それでもデューク・ピアソン“らしさ”の残るファンキーな演奏だ。悲しみを吹き飛ばしてしまうバラードなのだ。愕然とするノリのバラードに興じるしか道はない。

 【THE PHANTOM】にしても【SAY YOU’RE MINE】にしても,常に時代の先を見つめていたデューク・ピアソンだからこそ作り上げることのできた楽曲である。
 『ザ・ファントム』は,ジワジワと感動が後から押し寄せてくるアルバムである。自分が成長すればそれだけ大きな感動を手に入れることのできるアルバムだと思う。

  01. THE PHANTOM
  02. BLUES FOR ALVINA
  03. BUNDA AMERELA (LITTLE YELLOW STREETCAR)
  04. LOS OJOS ALEGRES (THE HAPPY EYES)
  05. SAY YOU'RE MINE
  06. THE MOANA SURF
  07. THEME FROM ROSEMARY'S BABY

(ブルーノート/BLUE NOTE 1968年発売/UCCQ-5075)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/ナット・ヘントフ,マイケル・カスクーナ,行方均)

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デューク・ピアソン・BIG BAND / イントロデューシング・デューク・ピアソン・BIG BAND4

INTRODUCING DUKE PEARSON'S BIG BAND-1 トリオクインテットセクステットオクテットノネットまでやったデューク・ピアソンの“大編成志向”はまだまだ終わらない。
 ついにデューク・ピアソン念願の&デューク・ピアソン待望の「デューク・ピアソンビッグ・バンド」の誕生である。

 タイトルが良い。『INTRODUCING DUKE PEARSON’S BIG BAND』(以下『イントロデューシング・デューク・ピアソン・BIG BAND』)。
 そう。デューク・ピアソンによる「ビッグ・バンドの紹介」なのである。
 こんな音楽は如何ですか? こんなジャズはどうですか? こんなビッグ・バンドもあるんですよ?

 「デューク・ピアソンビッグ・バンド」の結成はデューク・ピアソン長年の夢であり野望であったことだろう。
 そんな夢であり野望の実現は,ブルーノートの“天才”プロデューサーとして活躍し始めたデューク・ピアソンの頑張りが認められたこともあるだろうが,それ以上に「サド・ジョーンズ=メル・ルイス・ジャズ・オーケストラ」から“火が付いた”ビッグ・バンド再評価の流れと無関係ではないと思う。

 とは言え「デューク・ピアソンビッグ・バンド」は「サド・ジョーンズ=メル・ルイス・ジャズ・オーケストラ」の音とは趣向が違う。
 最大の理由は「サド=メル」がジャズ・ロック的なバンド・サウンドを特徴としているのに対し「デューク・ピアソンビッグ・バンド」は,ほぼデューク・ピアソンの個性そのまんまのサウンドである。

 デューク・ピアソンの頭の中を具現化してくれるビッグ・バンド・サウンドを手に入れて,デューク・ピアソンの“天才”が爆発している。
 自由気ままなリハーサル・オーケストラにして,デューク・ピアソンの特徴であるスマートな音階がバッチリ出ている。デューク・ピアソンのもとに定期的に集まる仲間たちがイメージする,これぞ「真のデューク・ピアソン・ミュージック」なのだと思う。

INTRODUCING DUKE PEARSON'S BIG BAND-2 一方のデューク・ピアソンにしても,様々なタイプの楽曲を準備し,自分のもとに集まったジャズメンたちの特徴を引き出すべくアレンジの才を大いに発揮している。

 『WAHOO』〜『HONEYBUNS』〜『SWEET HONEY BEE』で1度は完結した「デューク・ピアソン・ミュージック」であったが,ダイナミックに“管が鳴り響く”『イントロデューシング・デューク・ピアソン・BIG BAND』こそが「真のデューク・ピアソン・ミュージック」であり,大編成を得意とする類稀なる才能に“聴き耳を立てるべき”ビッグ・バンドの登場である。

 ただし,勢いとまとまりで「サド・ジョーンズ=メル・ルイス・ジャズ・オーケストラ」には追いつけていない。比較すべきでないことは心得ているのだけれど…。

  01. GROUND HOG
  02. NEW GIRL
  03. BEDOUIN
  04. STRAIGHT UP AND DOWN
  05. READY WHEN YOU ARE C.B.
  06. NEW TIME SHUFFLE
  07. MISSISSIPPI DIP
  08. A TASTE OF HONEY
  09. TIME AFTER TIME

(ブルーノート/BLUE NOTE 1968年発売/TOCJ-4276)
(ライナーノーツ/アラン・グラント,上条直之,瀬川昌久)

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デューク・ピアソン / ザ・ライト・タッチ5

THE RIGHT TOUCH-1 トランペットフレディ・ハバードトロンボーンガーネット・ブラウンアルトサックスジェームス・スポールディングフルートアルトサックスジェリー・ドジオンテナーサックススタンリー・タレンタインという,超個性派5管フロントの『THE RIGHT TOUCH』(以下『ザ・ライト・タッチ』)。

 これだけのツワモノが揃った5管編成の『ザ・ライト・タッチ』がシンプルに響く。『ザ・ライト・タッチ』の主役はデューク・ピアソンピアノである。
 それというのも『ザ・ライト・タッチ』で腕を振るったデューク・ピアソンの絶品アレンジは,いつものアンサンブルではなくソロイストのピックアップにある。

 5管フロントがユニゾンするのではなく,5人中1人だけがメロディーを吹き,デューク・ピアソンピアノデュエットしている瞬間がある。
 そう。『ザ・ライト・タッチ』で『プロフィール』と『テンダー・フィーリンズ』で鳴らしたのピアノ・トリオデューク・ピアソンが帰ってきている。かつてなくデューク・ピアソンピアノが前に出ている。

 ズバリ『ザ・ライト・タッチ』でデューク・ピアソンが追求したのは,アンサンブルとソロの対比の中で響くジャズ・ピアノであろう。
 ピアノを効果的に響かせるための,サビでの分厚い5管フロントであり,ピックアップされた5人のソロイストとのハーモニーである。“豪華なのに静かに動く”超個性派5管フロントの「あっさり・タッチ」。
 これぞ『THE LIGHT TOUCH』→『THE RIGHT TOUCH』の真骨頂なのであろう。

 久しぶりに前に出ることにしたデューク・ピアソンピアノが実にスムーズに動く。
 コードはファンキーだがサバサバした運指に聴こえる。部分部分ではリズミックに感じるのだが知的で軽やかにまとめ上げる。出来上がりが上品である。キレイなジャズ・ピアノなのである。

 大編成の中で弾くピアニストは難しい役回りだと思う。肝心要のピアニストが乱れるとセッションっぽく聴こえてしまうし,カチッと譜面通りに弾くわけにもいかない。
 重くもならず軽くもならない。黒いのだが黒すぎない。そんな“ジャズ・ピアニストデューク・ピアソンのハイセンスが実に素晴らしい。

THE RIGHT TOUCH-2 キラー・チューンの【CHILI PEPPERS】収録。【MAKE IT GOOD】〜【MY LOVE WAITS(O MEU AMOR ESPERA)】〜【LOS MALOS HOMBRES】まで一気に引き込まれる。

 惜しむべきは【SCRAP IRON】での落とし方である。それまで『THE RIGHT TOUCH』で推してきた流れが【SCRAP IRON】1曲でアルバム全体が見事に不安定化して聴こえてしまう。

 でも【SCRAP IRON】のハズシを含めての『THE LIGHT TOUCH』→『THE RIGHT TOUCH』。
 この不思議な魅力が耳から離れない愛聴盤なのです。

  01. CHILI PEPPERS
  02. MAKE IT GOOD
  03. MY LOVE WAITS (O MEU AMOR ESPERA)
  04. LOS MALOS HOMBRES
  05. SCRAP IRON
  06. ROTARY

(ブルーノート/BLUE NOTE 1967年発売/TOCJ-9251)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/岡崎正通)

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デューク・ピアソン / スイート・ハニー・ビー5

SWEET HONEY BEE-1 『HONEYBUNS』の次は,同じ『HONEY』でも『SWEET HONEY BEE』(以下『スイート・ハニー・ビー』)。

 『スイート・ハニー・ビー』とは確かに「甘いミツバチ」である。明るくサンサンと,しかし少し色褪せたオレンジとイエローの「ミツバチ」カラーのジャケット写真同様,レトロでお洒落なミツバチのダンス・ミュージックの完成である。
 これぞデューク・ピアソンによる“ピアソン・ハーモニー”そのものである。一度聴いたら忘れられない,歌って踊れるアンサンブル。スマートな演奏がお洒落だと思う。ハッピーだと思う。

 だから『スイート・ハニー・ビー』でのデューク・ピアソンが心底ジャズしていると思うのである。管理人はデューク・ピアソンを聴くと,大抵,一人悦に入っている。だって最高なんだもん。
 
 【SWEET HONEY BEE】における心躍るジャズ・ロック・タッチ系の軽快なビート。フルートが奏でる,浮き立つようなメロディー。これに応える楽しいホーンのアンサンブル。
 これがブルーノートの曲なのか? デューク・ピアソンCTIを先取りしているのだ。

 そう。『スイート・ハニー・ビー』こそが,デューク・ピアソンの“最高傑作”である。
 フレディ・ハバードトランペットジェームス・スポールディングアルトサックスジョー・ヘンダーソンテナーサックスという個性派のアドリブ以上に,デューク・ピアソンメロディー・ラインが打ち勝っている。美メロがアドリブに打ち勝っている。
 どこからどう聴こうとも『スイート・ハニー・ビー』からは“ピアソン・ハーモニー”ばかりが聴こえてくるのだ。

SWEET HONEY BEE-2 『スイート・ハニー・ビー』はとにかく軽くて聴きやすい。その理由は,演者を譜面に落とし込める“ピアソン・ハーモニー”の「支配力」にある。

 デューク・ピアソンは大物に成り損なったかもしれないが,個人的にはベニー・ゴルソンの“ゴルソン・ハーモニー”に対抗できるのは,デューク・ピアソンの“ピアソン・ハーモニー”だけだと思う。
 アルフレッド・ライオンが自分の後釜として,こんなにもデューク・ピアソンを重用した気持ちが良く分かる。

 ハービー・ハンコックの『スピーク・ライク・ア・チャイルド』をプロデュースしたデューク・ピアソンのハイセンスなんかは,今で言うフィリップ・セスのようである。

  01. SWEET HONEY BEE
  02. SUDEL
  03. AFTER THE RAIN
  04. GASLIGHT
  05. BIG BERTHA
  06. EMPATHY
  07. READY RUDY?

(ブルーノート/BLUE NOTE 1967年発売/TOCJ-6591)
(ライナーノーツ/ナット・ヘントフ,杉田宏樹)

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デューク・ピアソン / プレイリー・ドッグ4

PRAIRIE DOG-1 デューク・ピアソン大好き人間として断言しよう。『PRAIRIE DOG』(以下『プレイリー・ドッグ』)でデューク・ピアソンは「一度壊れてしまった」のだと思う。
 『プレイリー・ドッグ』で,初期のデューク・ピアソンが逝っている。『プレイリー・ドッグ』こそが,デューク・ピアソン「バージョン2」の始まりなのである。

 “天才”ゆえの悩みなのか,初めてブチ当たった壁なのか,デューク・ピアソンが“リリカル&ファンキー”路線の「自分の殻を打ち破ろうと」必死にもがいている。

 5拍子と6拍子が交錯する【THE FAKIR】は,なぜに今更な【TAKE FIVE】と【MY FAVORITE THINGS】的なフルートソプラノサックスの,いいとこどりな合作である。

 【PRAIRIE DOG】も,ゴスペルチックなデューク・ピアソンのリバイバル・ソングであって,ギターホーンのアンサンブルが延々続くカントリー・ソング。【PRAIRIE DOG】こそがアメリカン・フォークの「王道」である。

 ブルース調の【SOULIN’】とモーダルな【LITTLE WALTZ】では「新主流派」的な“リリカル&ファンキー”であって,この2トラックがデューク・ピアソンの“らしさ”&“さすが”が“COOL”に伝わってくる。
 他のアルバムに入っていたなら名演として押されたのかもしれないが,個性派揃いの『プレイリー・ドッグ』の中に入っていては,平凡すぎて埋没しているのかなぁ。

 【HUSH−A−BYE】と【ANGEL EYES】は,共にジャズライン時代に取り上げたデューク・ピアソンの愛想曲の再演。
 アレンジを前回から思いっきり変えて,チェレスタデューク・ピアソンベーシストボブ・クランショウとの白眉のデュエット
 美しいオルゴールの世界の後ろでボブ・クランショウの「ブンブン」弾きまくる低音をフィーチャリングしたアイディアが素晴らしいと思う。

PRAIRIE DOG-2 そう。『プレイリー・ドッグ』は,デューク・ピアソンによる「本当にやりたかったいジャズの総決算」的なアルバムである。
 果たして,その出来映えであるが,デューク・ピアソンが自分自身で過去のデューク・ピアソンを否定したかのようなアルバムに聴こえる。

 やりたいことが多すぎて,どうまとめたらよいのか先が見えずに,自分をコントロールできなくなったデューク・ピアソンの“知性派”が初めて乱れている。トータル・イメージが散漫なデューク・ピアソンの“闘争本能”が露わにされている。

 でもそこがたまらなくいいのだ。まとまりなど二の次なのだ。出来は一段落ちる。
 でも「完全に壊れてしまった」デューク・ピアソンが聴ける。これこそが『プレイリー・ドッグ』最大の聴き所なのだ。

 出来の悪い子供こそ「情が移る」というものだ。時間をおいて練り上げられた名盤SWEET HONEY BEE』への初期の制作過程を聴いている気分になれるのも良い。
 だ・か・ら『プレイリー・ドッグ』は聴き飽きない。

  01. THE FAKIR
  02. PRAIRIE DOG
  03. HUSH-A-BYE
  04. SOULIN'
  05. LITTLE WALTZ
  06. ANGEL EYES

(アトランティック・ジャズ/ATLANTIC JAZZ 1966年発売/WPCR-27166)
(ライナーノーツ/ジャック・ショー,岡崎正通)

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デューク・ピアソン / ハニーバンズ5

HONEYBUNS-1 『HONEYBUNS』(以下『ハニーバンズ』)は「デューク・ピアソン・ノネット」名義。デューク・ピアソンをリーダーとする9人編成による6管オーケストラ。中型のコンボと呼んで良いだろう。

 3管ハード・バップの『WAHOO』で芽生えていたデューク・ピアソンの「オーケストレーションの才能」が花開いている。
 『ハニーバンズ』が“ポップなジャズ・ロック調”だからなのだろう。「デューク・ピアソン・ノネット」を聴いていると「サド・ジョーンズ=メル・ルイス・ジャズ・オーケストラ」のイメージと被る瞬間がある。

 そう。「デューク・ピアソン・ノネット」の真髄とはデューク・ピアソンのリハーサル・オーケストラ。デューク・ピアソンとその仲間たちが,思う存分,自分たちで楽しむために集まったジャズ・オーケストラ
 デューク・ピアソン印でスマートにアレンジ演奏された,ファンキーで楽しい演奏がレコーディングされたのはアトランティック・ジャズの実験作=3002番の巡り会わせだったから!

 すなわち『ハニーバンズ』の録音メンバーは,ピアノデューク・ピアソントランペットジョニー・コールズアルトサックスジェームス・スポールディングテナーサックスジョージ・コールマンバリトンサックスペッパー・アダムストロンボーンガーネット・ブラウンフルートレス・スパンベースボブ・クランショウドラムミッキー・ローカーの9名なのだが,本当はここにブルーノート専属ゆえ参加できなかったドナルド・バードハンク・モブレイジャッキー・マクリーンジョー・ヘンダーソン辺りも加わったイメージで「聴いて楽しめる」のがデューク・ピアソンのリハーサル・オーケストラ!

 先に『ハニーバンズ』について“ポップなジャズ・ロック調”と書いてみたが『ハニーバンズ』は,ジャズ・ロックの仮面の裏でデューク・ピアソンと仲間たちが“遊んでいる”のは「新しいモード・ジャズ」である。

 同じ音のメロディーに対してコードが半音ずつ下降する複雑なモチーフが転調しながら繰り返される。このように文章にすると小難しく感じるかもしれないが,実際に音として聴いてみると6管がスインギーに“ねちっこいハーモニー”していて新鮮に響いている。2017年の耳にも新鮮なリリカルが響く。
 やっぱりデューク・ピアソンのハイセンスは凄かった!

HONEYBUNS-2 管理人の結論。『ハニーバンズ批評

 『ハニーバンズ』は『WAHOO』でレコーディングのリハーサルを終えたデューク・ピアソンのリハーサル・オーケストラによる本番セッション。

 「デューク・ピアソン・ノネット」の“夜な夜なの音遊び”は,毎回毎回凄かった。1回1回の演奏が『ハニーバンズ2』『ハニーバンズ3』だったと想像する。

  01. HONEYBUNS
  02. NEW GIRL
  03. YOU KNOW I CARE
  04. IS THAT SO
  05. OUR LOVE
  06. HEAVY LEGS

(アトランティック・ジャズ/ATLANTIC JAZZ 1966年発売/WPCR-27121)
(ライナーノーツ/ナット・ヘントフ,後藤誠)

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デューク・ピアソン / ワフー4

WAHOO-1 『WAHOO』(以下『ワフー』)=『和風』である。これはダジャレでも,もっと言えば『YAHOO』でもない。

 管理人は『ワフー』を聴く度に,自分がなぜにそこまでデューク・ピアソンが大好きなのか,その理由を再確認させられてしまう。
 ズバリ,タイトル・トラック【WAHOO】はデューク・ピアソン版の【リンゴ追分】だと言い切ってしまおう。

 デューク・ピアソンを語る際,デューク・ピアソンが持つ「異国情緒」は外せないのだが,特にデューク・ピアソンは他の外国人ジャズメン以上に日本人的である。
 デューク・ピアソンの楽曲に,雅楽とか三味線が登場してもおかしくない。あるいは演歌が登場してもおかしくない。そんな日本人的なメロディー・ラインに惚れてしまうのだと自己分析している。

 後の「デューク・ピアソンビッグ・バンド」の出発点となる『ワフー』が織りなす3管ハード・バップが,日本の歌番組で歌謡曲を演奏するビッグ・バンド和風』に聴こえてしまう。
 この意見に同意する人は少ないのかもしれないが,偶然,この『ワフー批評を目にした方は,そんな視点で聴いてみてほしい。一度そう思ってしまうとそのように聴こえると思うから…。その方が後々幸福だと思うから…。

( 個人的には「デューク・ピアソンビッグ・バンド」を「NEW HERD」だと思いたい! ただし,デューク・ピアソンは,こればかりではなく正統派のジャズも生涯続けた「二刀流」「三刀流」のハイセンス・マルチ・ミュージシャンの筆頭格。聴けば聴くほど素晴らしい才能にメロメロきます )

 まっ,そういうことで『PROFILE』『TENDER FEELIN’S』と“ジャズ・ピアニスト”としてブルーノートで活動してきたデューク・ピアソンだったが『ワフー』以降は“プレイング・マネージャー”として,アレンジャーやプロデューサーの視点で,非アメリカ的なブルーノートジャズを創造していくことになる。

 興味深いのは,デューク・ピアソンと同時期のブルーノートというレコード会社は,ハービー・ハンコックウェイン・ショーターに代表される「新主流派」のリリース・ラッシュ。
 それなのに,デューク・ピアソンの思うがままに『和風』3管ハード・バップを作らせたアルフレッド・ライオンデューク・ピアソンに対する信頼とは如何許りであろうか?

WAHOO-2 さて,ここまで書いてきてあれなのたが,個人的には『ワフー』は,デューク・ピアソン名盤群からはワンランク落ちる。理由は全体のトーンが落ち着いて重い。
 『ワフー』で,グッと来るのは【FAREWELL MACHELLE】【WAHOO】の2トラックのみ。

 これは『ワフー』の制作を許したブルーノートアルフレッド・ライオンにとっての悲しいお知らせであるが『ワフー』でデューク・ピアソンが取り組んだ“管を鳴らす”アイディアが音楽として完成したのは,後の『INTRODUCING DUKE PEASON’S BIG BAND』ではなく,アトランティック・ジャズからリリースされた『HONEYBUNS』と『PRAIRIE DOG』の方である。

 しかし,そうではあってもデューク・ピアソン・フリークにとって『ワフー』の重要性はやっぱり外せない。
 ドナルド・バードトランペットジェームス・スポールディングアルトサックスジョー・ヘンダーソンテナーサックスを3管アンサンブルとしてではなく,美空ひばりばりのソウルフルなソロイストとしても起用したデューク・ピアソンのハイセンスな音楽眼は聴き逃せない。

  01. AMANDA
  02. BEDOUIN
  03. FAREWELL MACHELLE
  04. WAHOO
  05. ESP(EXTRASENSORY PERCEPTION)
  06. FLY LITTLE BIRD FLY

(ブルーノート/BLUE NOTE 1965年発売/TOCJ-4191)
(ライナーノーツ/レナード・フェザー,上条直之,福山誠)

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デューク・ピアソン / エンジェル・アイズ5

ANGEL EYES-1 デューク・ピアソンの“幻の名盤”というか“幻のレーベル”「JAZZ LINE」の1枚が『ANGEL EYES』(以下『エンジェル・アイズ』)。

 「JAZZ LINE」から正式にカタログとしてリリースされた『ハッシュ!』はまだしも『エンジェル・アイズ』の方は未発表音源のお蔵入り。
 リリースして回収するまでの資金がショートしただけの,内容は完璧&発売目前でのお蔵入り。
 そう。『エンジェル・アイズ』こそが真に“幻の名盤”である。

 『エンジェル・アイズ』は,ピアノデューク・ピアソンベーストーマス・ハワードドラムレックス・ハンフリーズによるピアノ・トリオ作。
 デューク・ピアソンピアノ・トリオと来れば,やはりブルーノートの2枚『PROFILE』と『TENDER FEELIN’S』がいい。いいのだが,ちょっと新感覚すぎるかもしれない。

 その点で『エンジェル・アイズ』でのデューク・ピアソンは,古風で正統派で“センス一本勝負の”ピアノ・スタイル。
 ブルーノート盤のリリカルで色鮮やかなピアノから離れて,何の気負いもなくピアノを楽しみながら弾いているだけなのだが,この心底上品な演奏に心揺さぶられてしまう。
 良く知られたジャズスタンダードを「慈しみながら」デューク・ピアソン流に弾いているのだが,鼻歌まじりのアドリブの美メロが素敵すぎる。メロディーが心に沁み渡ってくる。

 そう。『エンジェル・アイズ』でのデューク・ピアソンのオーソドックスなジャズ・ピアノには雰囲気がある。そして色気がある。

ANGEL EYES-2 管理人の結論。『エンジェル・アイズ批評

 デューク・ピアソンのさりげなく小技を効かせた,あっさり味の「後を引かない」ジャズ・ピアノが聴き流せない。逆に聴けば聴くほどクセになる。

 クライマックスを作らない,自由自在のアドリブメロディーの良さを伝えてくる。これって簡単そうで並みのピアニストには出来ない芸当だと思う。
 デューク・ピアソンの“さらりとした”ジャズ・ピアノが,どうにも心に引っ掛かる。いい演奏である。
 
  01. Bags' Groove
  02. Le Carrousel
  03. Angel Eyes
  04. I'm An Old Cow Hand
  05. Jeannine
  06. Say You're Mine
  07. Exodus
  08. Le Carrousel (alternate take)
  09. I'm An Old Cow Hand (alternate take)
  10. Say You're Mine (alternate take)

(ジャズライン/JAZZLINE 1962年発売/MZCB-1184)
(☆HQCD仕様)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/後藤誠,小川充)

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デューク・ピアソン・クインテット / ハッシュ!5

HUSH!-1 デューク・ピアソンの“幻の名盤”というか“幻のレーベル”「JAZZ LINE」の1枚が『HUSH!』(以下『ハッシュ!』)。

 デューク・ピアソンの才能に目を留めたのはブルーノートの「総裁」アルフレッド・ライオンだけではなかった。パシフィック・ジャズ出身のフレッド・ノースワーシーなる人物である。
 そんなフレッド・ノースワーシーが設立したのが「JAZZ TIME」レーベルであり,後の「JAZZ LINE」レーベルであるが,すぐに倒産してしまった。倒産の理由はフレッド・ノースワーシーの好みのジャズメンがマニアックすぎたから,と言われている。

 そんな玄人好みの「JAZZ TIME」が3枚+「JAZZ LINE」が2枚の合計5枚の貴重なレコーディング・メンバーにデューク・ピアソンが含まれている。
 少量生産の完全なるコレクター・アイテムである。レア品なのである。内容が良くても会社がなくなったのだから陽の目を見ない。だから“幻の名盤”なのである。

 さて,こんな書き出しで紹介した『ハッシュ!』=“幻の名盤”説であるが,管理人は『ハッシュ!』=“幻の名盤”説にはもう1つの意味があると思っている。
 それはデューク・ピアソン名盤群の中で『ハッシュ!』だけが,ツイン・トランペットによる「異色の編成」で制作されている事実。

 そう。デューク・ピアソンのファンが『ハッシュ!』について“幻の名盤”と語る時,それは「JAZZ LINE」だからではなく“管を鳴らす”デューク・ピアソンが手掛けた,唯一のツイン・トランペット編成のことを指すのである。

HUSH!-2 『ハッシュ!』のメンバーは,ピアノデューク・ピアソンベースボブ・クランショウドラムウォルター・パーキンスによるピアノ・トリオに,トランペットドナルド・バードジョニー・コールズ

 ドナルド・バードジョニー・コールズのスタイルが近いせいなのか,ツイン・トランペットならではのホーン・アンサンブルが美味い。同じ音域のトランペットの2台のズレが旨い。
 この辺のアレンジメントがデューク・ピアソンの“らしさ”である。『ハッシュ!』の中に充満している,後年のプロデューサー的な秀逸なバランス感覚にアルフレッド・ライオンフレッド・ノースワーシーも惹かれてしまったのだろう。

 渋い演奏である。それだけではなく温かい演奏である。素朴な旋律のジャズ・ピアノに乗ったツイン・トランペットのライン取りが『ハッシュ!』を,デューク・ピアソン・ファンが選んだ“幻の名盤”へと押し上げた要因である。

  01. Hush!
  02. Child's Play
  03. Angel Eyes
  04. Smoothie
  05. Sudel
  06. Friday's Child
  07. Out Of This World
  08. Hush! (alternate take)
  09. Child's Play (alternate take)
  10. Sudel (alternate take)
  11. Groovin' For Nat' (Unissued take)

(ジャズライン/JAZZLINE 1962年発売/MZCB-1183)
(☆HQCD仕様)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/後藤誠,馬場雅之,原田和典)

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デューク・ピアソン / テンダー・フィーリンズ5

TENDER FEELIN'S-1 『PROFILE』でのデューク・ピアソンが,クラシカルなジャズ・ピアニストであれば『TENDER FEELIN’S』(以下『テンダー・フィーリンズ』)でのデューク・ピアソンは,モダンジャズ・ピアニストである。

 『テンダー・フィーリンズ』を聴いているとデューク・ピアソンが「ピアノ・トリオの枠」を飛び越えてしまったように感じてしまう。ピアノ1台なのに“最先端のモダン・ジャズ”を見事に表現できている。
 それくらいに色彩豊かで,ピアノ以外の楽器がプレイしているような錯覚を感じる“豊かな音場”のピアノ・トリオが素晴らしい。

 デューク・ピアソン名盤群における『テンダー・フィーリンズ』の価値とは,純粋に「ピアノ・トリオ向きのピアニスト」としてのデューク・ピアソンを確認することにある。本当にそう思う。

 しかし『テンダー・フィーリンズ』を聴けば聴くほど,デューク・ピアソンのイメージが“ジャズ・ピアニスト”から離れていく。
 そんな非ピアノ・トリオの個性が,リリカルで小品な『PROFILE』と性格を異にする,と語られる所以であろう。

  きっとデューク・ピアソンには,頭の中にビッグ・バンドの音が聴こえているのだろう。『テンダー・フィーリンズ』の中のデューク・ピアソンは,手元にはピアノ1台しかないはずのに,あたかもビッグ・バンドピアニストの席に座ったかのように,忠実にピアノを演奏している。

 そして,ここが“ジャズ・ピアニストデューク・ピアソンの凄さなのだが,デューク・ピアソンビッグ・バンドの構成楽器のような1台のピアノを聴いていると(現実にはピアノ以外の音は無音なのだが)デューク・ピアソンだけに聴こえているはずのビッグ・バンド・サウンドが,聴き手にもイメージとして伝わってくるのだった。

 そう。デューク・ピアソンの頭の中だけで流れている音楽が,デューク・ピアソンピアノのプレイからこぼれ出している。超ハイセンスなデューク・ピアソンなのだから,こぼれ出す音を拾っていくだけで管理人は大満足。
 デューク・ピアソンにとってピアノという楽器は,お菓子作りをする時の「粉ふるい」のようなものだと管理人は思う。

TENDER FEELIN'S-2 モード・ジャズフリー・ジャズのエッセンスがありつつの,適度にブルージーなフィーリングにクラクラきてしまう。
 デューク・ピアソンは1959年の時点ですでにここまで考えていたんだ。時代にマッチングしつつも一歩先んじたお洒落なジャズ・ピアノ…。

 その類まれなる「総合力」で,徐々にピアニストというよりも,作曲家,編曲家,そしてプロデューサーとして大活躍することになるのだが,デューク・ピアソンの真の凄さは“豊かな音場”のピアノ・トリオにこそ表われると思っている。

 バラエティに富んだ全7曲の『テンダー・フィーリンズ』の極めて高い完成度。オーソドックスなのに最高にサイケなタイム感。
 『テンダー・フィーリンズ』を聴いた夜は,もう何もする気がなくなりその場から動けなくなってしまう。「骨抜きにされる」とはこのような状態を指すのであろう。

  01. BLUEBIRD OF HAPPINESS
  02. I'M A FOOL TO WANT YOU
  03. I LOVE YOU
  04. WHEN SUNNY GETS BLUE
  05. THE GOLDEN STRIKER
  06. ON GREEN DOLPHIN STREET
  07. 3 A.M.

(ブルーノート/BLUE NOTE 1959年発売/TOCJ-7027)
(ライナーノーツ/レナード・フェザー,原田和典)

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デューク・ピアソン / プロフィール5

PROFILE-1 デューク・ピアソンが大好きである。何が好きって,デューク・ピアソンのハイセンスが大好きである。
 作曲家とかアレンジャーとかプロデューサーとか,デューク・ピアソンのハイセンスな活動は幅広いが,デューク・ピアソンの才能をストレートに感じるのは“ジャズ・ピアニスト”としてのデューク・ピアソンが一番である。

 そんな“ジャズ・ピアニスト”としてのデューク・ピアソンプロフィールブルーノートからのデビュー盤『PROFILE』(以下『プロフィール』)にある。

 ドナルド・バードの歴史的なファンキー・ジャズを先頭に立って作り上げてきたデューク・ピアソンであるが,ソロ・アルバム『プロフィール』のページをめくると“リリカルなピアニスト”としての素顔が見え隠れする。

 そう。“ジャズ・ピアニストデューク・ピアソンの魅力とは,見事なバランス感覚というか「音楽」しているフィーリングだと思う。ジャズ・ピアノを聴いている感覚があるし,この演奏好き,という感覚もある。たまらなく満足感がある。

 こんな「好き」の感情を文章で伝えるのは難しい。この全ては管理人の個人的なイメージの優劣に負うところが大きいからだ。
 デューク・ピアソンと前後して活躍した“ジャズ・ピアニスト”たち。例えば,ビル・エヴァンスマッコイ・タイナーハービー・ハンコックチック・コリアキース・ジャレットについて語るのは難しくない。
 この5人は5人とも“ジャズ・ピアニスト”としてのデューク・ピアソンを軽〜く凌駕している。しか〜し,前述の5人にデューク・ピアソンのような魅力を感じるかと問われれば,答えは「NO」である。

 デューク・ピアソンのようにジャズ・ピアノのトーンでピアノを弾ける人は数少ない。甘くストレートでエレガントなのに,ツボを押さえた黒人らしいリズミカルなタッチ。
 デューク・ピアソンの弾くピアノの音が眩しい。ピアノが光輝いている。ピアノの甘さが空間に広がっていく。

PROFILE-2 デューク・ピアソンの弾くピアノのトーンとニュアンスは他の何物にも代え難い。ビル・エヴァンスキース・ジャレットには絶対出せない,意外性がデューク・ピアソンにはあって,時にハッとさせられてしまう。

 自分がビル・エヴァンスキース・ジャレットに求めていたものは,実はデューク・ピアソンが全部持ち合わせていたと思える瞬間が1曲に1度は襲ってくるのだった。

 『プロフィール』のデューク・ピアソンが,とにかく軽快そのもの。軽く軽く,肩の力が抜けたリリカルな響きがハートを射抜いてくる。デューク・ピアソンが粋だよね〜。いなせだね〜。江戸っ子だよね〜。

 管理人はデューク・ピアソン好きだというジャズ・ファンの耳を全面的に信用しています。

  01. LIKE SOMEONE IN LOVE
  02. BLACK COFFEE
  03. TABOO
  04. I'M GLAD THERE IS YOU
  05. GATE CITY BLUES
  06. TWO MILE RUN
  07. WITCHCRAFT

(ブルーノート/BLUE NOTE 1959年発売/TOCJ-7065)
(ライナーノーツ/アイラ・ギトラー,原田和典)

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