
ズバリ,管理人が『セニョール・ブルース』を購入したのは,ホレス・シルヴァーの“売り”である管楽器のアンサンブルを,ピアノ一本で勝負したら,どうなるのか!
極論を言えば,ピアノ・トリオによるホレス・シルヴァー作品集であれば,別にデヴィッド・ヘイゼルタインでなくても良かった。『セニョール・ブルース』のズラリと並べられた曲目を眺めたら,それが名もない新人のアルバムであったとしても聴いてみたいと思ったはずである。
でも,今は違う。『セニョール・ブルース』のピアニストは,デヴィッド・ヘイゼルタインでなければならなかった。
ホレス・シルヴァーの“FUNKY”そのまんまに“現代のグルーヴ”で疾走する痛快な演奏である。“本家”ホレス・シルヴァー以上に“FUNKY”を感じてしまった。
デヴィッド・ヘイゼルタインによる『セニョール・ブルース』での“名解説”によって初めて,ホレス・シルヴァーの“FUNKY”を理解できた気分がした。
これまで雰囲気で聴き続けてきたホレス・シルヴァーが,明晰な分析を経て,現代のジャズ&ファンキーへと再構築されている。
凄いぞ,デヴィッド・ヘイゼルタイン! バークリー音楽大学&ニューヨーク州立大学での音楽講師の経歴は伊達ではない!
『セニョール・ブルース』でデヴィッド・ヘイゼルタインが注目した,ホレス・シルヴァーの一押し,とはリズムであろう。
デヴィッド・ヘイゼルタインが,現代の>ホレス・シルヴァーを念頭に起用したのは,ベースのピーター・ワシントンとドラムのルイス・ヘイズ。このリズム隊が最高に歌っている。
メロディ・ラインはデヴィッド・ヘイゼルタインだけが弾いているものの,美味しいグルーヴ,核となる“FUNKY”はリズム隊がデヴィッド・ヘイゼルタインを“引っ張り上げている”。
ノリノリのビートに親しみやすいテーマが乗っかってくる3段階のリズムに,思わず体がスイングし始める〜。これぞ,ホレス・シルヴァーが晩年に追求していた“洗練されたFUNKY”の醍醐味なのであろう。

管楽器なしで聴く,ホレス・シルヴァーのユニークなメロディ・ラインの面白さが“洗練された”リズムで流されると快感ものである。
こんなに新鮮なアプローチが許されるのもジャズという音楽の特徴の一つである。管理人はデヴィッド・ヘイゼルタインの“リズム押し”を大いに楽しんだ。読者の皆さんにも楽しんでいただきたい。
そうして最後に“泥臭いFUNKY”の常識を「軽快なリズム一発」で打ち破ったデヴィッド・ヘイゼルタインの仕事ぶりを讃えたい。
01. The Back Beat
02. Nica's Dream
03. Peace
04. Senor Blues
05. Horace-Scope
06. Silver Serenade
07. Song For My Father
08. Lonely Woman
09. Sayonara Blues
(ヴィーナス/VENUS 2000年発売/VHCD-4014)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/後藤誠)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/後藤誠)