アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

CD批評:CHICK COREA AKOUSTIC BAND

チック・コリア・アコースティック・バンド / ラウンド・ミッドナイト5

ALIVE-1 誤解しないでほしい。有名ジャズスタンダードが演奏されているからといって,あるいはアコースティック楽器で演奏されているからといって,それがすなわちジャズとは限らない。フォーマットとしてのジャズと演奏としてのジャズは必ずしも一致しない。
 エレクトリックジャズもあれば,アコースティックフュージョンもあるのだ。

 「チック・コリアアコースティック・バンド」の『ALIVE』(以下『ラウンド・ミッドナイト』)を聴いてみてほしい。
 「アコースティック・バンド」のフォーマットは,ピアノウッド・ベースドラムから成るアコースティック編成のピアノ・トリオ
 「アコースティック・バンド」特有のコアな芸術性とは対極にある“コンテンポラリーなピアノ・トリオ”から流れ出てくる音楽は,控え目に述べてもジャズではない。

 ズバリ『ラウンド・ミッドナイト』での「アコースティック・バンド」は「禁じ手」としての“アコースティックフュージョン”!
 『ラウンド・ミッドナイト』における超絶技巧のオンパレードは「エレクトリック・バンド」名義であっても十分に通用する。

 思えばチック・コリアの「アコースティック・バンド」は「ライブ・バンド」として結成された“小回りの利く「エレクトリック・バンド」”であった。
 チック・コリアとしたら“待望の”ライブ盤『ラウンド・ミッドナイト』で「ライブ・バンド」のベールを脱いで見せただけのことだったのかもしれないが,リスナーとしては度胆を抜かれた。心を射抜かれてしまった。メガトン級の衝撃を受けてしまった。

 そう。チック・コリアは「アコースティック・バンド」で「ELEKTRICK」で「AKOUSTIC」な「エレクトリック・バンド」の“発展型”を追及してみせたのだ。

 管理人の「アコースティック・バンド」に対する認識が甘かった。チック・コリアの「アコースティック・バンド」に対するスタンスは,あくまでも副業であり余興であり,チック・コリアお得意の“ヒラメキを形にしてみました”的な企画ものだと思っていた。

 「アコースティック・バンド」の前作『CHICK COREA AKOUSTIC BAND』は,まあまあ,であった。「エレクトリック・バンド」の前作『INSIDE OUT』での“エレクトリックジャズ”に「アコースティック・バンド」からの影響を感じた。所詮「アコースティック・バンド」は“派生バンド”。それで十分だと思った。

ALIVE-2 しかし,しかし違っていた。いや〜,凄い。『ラウンド・ミッドナイト』のような,ガンガン弾きまくりで叩きまくりで“ロックするスタンダード集”は「前代未聞」の大事件である。

 ジャズの歴史を紐解けば『ラウンド・ミッドナイト』以上に早弾きのスタンダード集もあったことだろう。ただし,ここまで徹底的にオメメパッチリでキメまくりな“スタンダード集”は管理人の記憶にない。
 陰影など全く気にしない,超絶技巧なピアノ・トリオの“口八丁手八丁”のエンターテイメント・ショーの独壇場である。

 “ラテンの血が騒ぐ”チック・コリアのファンタスティックなピアノがロックンロール! “ウォーキング”するジョン・パティトゥッチのキャラ立ちベースがコンテンポラリー! “おかず大好き”デイブ・ウェックルの爆発的なドラミングがプログレッシブ!

 そう。「ライブ・バンド」の「アコースティック・バンド」が,一発勝負の大舞台で「エレクトリック・バンド」の,薄化粧なのにバッチリなアイラインを“本家以上に”再現している!

 「ELEKTRICK」で「AKOUSTIC」=「AKOUSTIC」でも「ELEKTRICK」!

PS 上原ひろみのアルバム・タイトル『ALIVE』は「アコースティック・バンド」の『ALIVE』を意識したの?

  01. ON GREEN DOLPHIN STREET
  02. HOW DEEP IS THE OCEAN?
  03. HUMPTY DUMPTY
  04. SOPHISTICATED LADY
  05. U.M.M.G.
  06. 'ROUND MIDNIGHT
  07. HACKENSACK
  08. MORNING SPRITE
  09. LA FIESTA

(GRP/GRP 1991年発売/UCCU-9275)
(ライナーノーツ/油井正一)
(紙ジャケット仕様)

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チック・コリア・アコースティック・バンド / スタンダーズ・アンド・モア4

CHICK COREA AKOUSTIC BAND-1 チック・コリアの「アコースティック・バンド」とは,ピアノチック・コリアベースジョン・パティトゥッチドラムデイブ・ウェックルから成るピアノ・トリオ
 そう。チック・コリアの「アコースティック・バンド」とは「エレクトリック・バンド」あっての“派生バンド”である。

 “電化まみれ”な「エレクトリック・バンド」の機材は,それ相当のもの,であって大きな会場でしかライブが行なえない。これがチック・コリアのジレンマであった。チック・コリア“自慢”のバンド・サウンドを,もっとライブでも聴いてほしい。
 そう。「アコースティック・バンド」の真髄とは“小回りの利く「エレクトリック・バンド」”なのである。

 ここで『EYE OF THE BEHOLDER』の登場である。「電化キーボードと生ピアノの融合」を試みた『EYE OF THE BEHOLDER』のフォロー・ツアーに,チック・コリアシンセサイザーの山と共にグランド・ピアノを持ち込んだ。
 このグランド・ピアノのアタック音にチック・コリア自身が“しびれてしまった”のであろう。「エレクトリック・バンド」の単なる縮小版ではなく,もっともっとグランド・ピアノを〜! チック・コリアはいつでも“即決即断”の人だった〜!

 そういう経緯で?「アコースティック・バンド」のレパートリーは,思いっきり“グランド・ピアノを弾き倒す”ためのスタンダード・アンド・モア! 「アコースティック・バンド」のデビュー・アルバム『CHICK COREA AKOUSTIC BAND』の邦題は『スタンダード・アンド・モア』!

 「棚ボタ」で産まれたチック・コリアの“新たなスタンダード集”とは“ロックするスイング集”のことであった。
 『スタンダード・アンド・モア』の聴き所は,チック・コリアが“全てを仕切った”ジョン・パティトゥッチのウォーキング・ベースデイブ・ウェックルのパーカッシブなドラミングであろう。

 同じチック・コリアピアノ・トリオではあるが,シリアスなジャズ一本で押した『ナウ・ヒー・シングス・ナウ・ヒー・ソブス』とコンテンポラリージャズを追及した『スタンダード・アンド・モア』には“月とすっぽん”ほどの開きがある。

 『スタンダード・アンド・モア』におけるチック・コリアは,ちょうどアンコールで披露するかのような,エンターテイメントで芯を固めたピアノを弾いている。
 一聴するとジョン・パティトゥッチベースデイブ・ウェックルドラムに“煽られて”いるかのように感じてしまう。

CHICK COREA AKOUSTIC BAND-2 しか〜し,この全ては“百戦錬磨”なチック・コリアの「戦略」である。チック・コリアがどこまで行っても,受けに回って,いなし続けることによって,ジョン・パティトゥッチデイブ・ウェックルの“眠れる引き出し”をどんどん開けていく!
 “小回りの利く「エレクトリック・バンド」”そのまんま,長めのインプロビゼーションの前後で,ビシバシ&キメ! これが超カッコイイ!

 この“神業連発”リズム・セクションの能力を最大限に引き出した所で,チック・コリアのリターン・エースが決まりまくる! チック・コリアは常に“冷静沈着な”演奏であって,一音一音が「インテリ」っぽい雰囲気と書いたら伝わるのだろうか?

 リズム・セクションの爆発が事前に織り込み済みであったかのような,メロディアスなアプローチが「ELEKTRICK」で「AKOUSTIC」!

  01. BESSIE'S BLUES
  02. MY ONE & ONLY LOVE
  03. SO IN LOVE
  04. SOPHISTICATED LADY
  05. AUTUMN LEAVES
  06. SOMEDAY MY PRINCE WILL COME
  07. MORNING SPRITE
  08. T.B.C. (TERMINAL BAGGAGE CLAIM)
  09. CIRCLES
  10. SPAIN

(GRP/GRP 1989年発売/VDJ-1190)
(ライナーノーツ/小川隆夫)

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