アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

CD批評:CHICK COREA ELEKTRIC BAND

チック・コリア・エレクトリック・バンド / ライヴ・フロム・エラリオズ5

LIVE FROM ELARIO'S-1 「エレクトリック・バンド」が解散しても,管理人にとってチック・コリアと来れば「エレクトリック・バンド」のことであった。
 現在進行形のチック・コリアをフォローしつつも,特に『THE CHICK COREA ELEKTRICK BAND』『EYE OF THE BEHOLDER』『BENEATH THE MASK』の3枚を聴き続けていた。

 そんな折に届けられた「エレクトリック・バンド」の“アーカイブ音源”『LIVE FROM ELARIO’S』(以下『ライヴ・フロム・エラリオズ』)が,管理人の「エレクトリック・バンド」好きに「トドメ」を刺した! 心に突き刺さってきた! 決定的な大名演に,あ〜,出会えて良かった!

 もはや帰っては来ない「エレクトリック・バンド」との美しい思い出が『ライヴ・フロム・エラリオズ』の登場で,日に日に美化されていった。「エレクトリック・バンド」が神格化されていった。とにかくシビレた。とにかくカッコイイ。

 『ライヴ・フロム・エラリオズ』は,キーボードチック・コリアベースジョン・パティトゥッチドラムデイブ・ウェックルの3人による「エレクトリック・バンド」結成直後のファースト・ギグ!
 エレクトリックピアノトリオの「無限大の可能性」が音として現われた瞬間が記録された超・名盤である。

LIVE FROM ELARIO'S-2 こんなにも“エキサイティング”なチック・コリアキーボード・プレイは「エレクトリック・バンド」名義の緒作だけではなくチック・コリアの全ディスコグラフィを見渡しても,他に類を見ない。
 その全ては“驚異の新人”ジョン・パティトゥッチデイブ・ウェックル組みの“機械体操チックな”リズム隊に行き着く。

 ここまで正確なリズムで暴れまくるリズムにしてタイトなリズム隊も前例がない。大袈裟に表現すれば,ジョン・パティトゥッチは「ジャコパス以来の革命児」であり,デイブ・ウェックルは「スティーヴ・ガッド以来の革命児」であろう。

 「エレクトリック・バンド」登場以前のベーシストドラマーとは明らかに違う“傍若無人”なクオリティ!
 どこでどう突然変異してきたのか,正体不明の新人リズム隊に“刺激されまくった”チック・コリアの“高揚感”がモロに伝わってくる! “電化ピアノトリオ”が踊り狂っている!

LIVE FROM ELARIO'S-3 チック・コリアの“目の玉”が飛び出さんばかりの光景が目に映る! 額に汗して手に汗してエレクトリックピアノと格闘している! 世界一のキーボード・プレイヤーとしての自分自身と格闘している!

 そう。『ライヴ・フロム・エラリオズ』のハイライトは,チック・コリアの“悶絶”である! チック・コリアが,嬉々とした表情で嬉々とした声を発している!
 こんなにもフレッシュで生々しいキーボードでのアドリブは『RETURN TO FOREVER』以来の大事件なのである!

 『ライヴ・フロム・エラリオズ』の素晴らしさを語ろうにも,もはや擬音しか出てこない! くぅ〜! うっひょ〜! か〜っ!

PS 『ライヴ・フロム・エラリオズ』のおかげで,エレクトリックジャズがあんましだった『INSIDE OUT』も好きになりました。

  01. TWEEK
  02. A JAPANESE WALTSE
  03. GINKAKUJI (SILVER TEMPLE)
  04. MALLORCA
  05. MARIMBALA
  06. WHAT IS IT?
  07. MALAGUENA
  08. FUSION BLUES (GOT A MATCH?)

(ストレッチ・レコード/STRETCH RECORDS 1996年発売/MVCR-239)
(ライナーノーツ/チック・コリア,小川隆夫)

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チック・コリア・エレクトリック・バンド / ペイント・ザ・ワールド5

PAINT THE WORLD-1 自分の頭の中で鳴る音楽を,自分の手となり足とり,想像以上の形に変えてくれる。チック・コリア“自慢の”「チック・コリア・エレクトリック・バンド」。

 『BENEATH THE MASK』の“完成されたバンド・サウンド”にチック・コリア自身も満足していたことと思う。
 幾ら大金を積まれたとしても,ベースジョン・パティトゥッチドラムデイブ・ウェックルサックスエリック・マリエンサルギターフランク・ギャンバレのうち,たった1人でさえ手放すことなど考えもしなかったことであろう。

 しかし,そんな「エレクトリック・バンド」が“最高傑作”『BENEATH THE MASK』を置き土産に解散した。
 『BENEATH THE MASK』で“燃え尽きてしまった”わけではない。事の本質とは,解散ではなく“卒業”なのだ。

 メンバー全員が「エレクトリック・バンド」の活動を通じて「BIG」になってしまった。ジョン・パティトゥッチを皮切りにメンバー全員がソロ活動の注力し始めた。もはや「エレクトリック・バンド」の活動に縛ることができなくなったがゆえの“卒業”なのだった。

 幸い,サックスエリック・マリエンサルは留年。ジョン・パティトゥッチデイブ・ウェックルフランク・ギャンバレの卒業を認めたとなれば,チック・コリアの次なるお仕事は「新人発掘」。
 チック・コリアが「発掘」したのは,ベースジミー・アールドラムゲイリー・ノヴァックギターマイク・ミラーの腕達者。

 そうして名付けられた新バンド名は,なんとも!「チック・コリア・エレクトリック・バンド」!?
 そんでもってコンセプトまで新しくなって「チック・コリア・エレクトリック・バンド」+「チック・コリア・アコースティック・バンド」=「チック・コリア・エレクトリック・バンド」!?

 しかし,すでに「エレクトリック・バンド」と「アコースティック・バンド」は,例えば『INSIDE OUT』での“エレクトリックジャズ”と『ALIVE』での“アコースティックフュージョン”とで,すでに2つのバンドは融合していたようなものだったから…。あちゃちゃ〜。

 そんな,上記,紆余曲折を得て“フライング気味”に活動を開始した「チック・コリア・エレクトリック・バンド」だから『PAINT THE WORLD』(以下『ペイント・ザ・ワールド』)ただ一作を残してあっさりと解散してしまう。チック・コリアの「黒歴史」の一つであろう。

PAINT THE WORLD-2 しか〜し『ペイント・ザ・ワールド』に関する管理人の評価は五つ星! …と言うか,この状況こそが“ひらめきで生きる男”チック・コリアの真骨頂! 『ペイント・ザ・ワールド』における“打ち上げ花火”に見事にハマッタ口であった。

 “カッチリ系”だった「エレクトリック・バンド」から“しなやかな系”の「エレクトリック・バンド」への変化が気に入った。
 ジミー・アールゲイリー・ノヴァックが生み出すリズムはソリッドであるが,それ以上に「余地としての空間」がある。ライブ感に溢れ,ある意味レイドバックしていた。

 それでいてフロントが切れていた。エリック・マリエンサルの激しいブロー。マイク・ミラーのディープなカッティング。そして何よりもチック・コリアキーボードがいかにも即興的に挟み込む効果的なサウンドによって「エレクトリック・バンド」のアンサンブルがドラマティックな動きを示す。軽やかで奥深いインタープレイが最高である。

 ズバリ『ペイント・ザ・ワールド』は,バンドの成り立ちといい音楽性といい「第3期」リターン・トゥ・フォーエヴァーの『ミュージックマジック』との類似点が多い。“短命”に終わったのはなんとも!チック・コリアらしい。
 でも,そうであれば「エレクトリック・バンド」の『ザ・コンプリート・コンサート』も聴いてみたいよなぁ。

  01. PAINT THE WORLD
  02. BLUE MILES
  03. TONE POEM
  04. CTA
  05. SILHOUETTE
  06. SPACE
  07. THE ANT & THE ELEPHANT
  08. TUMBA ISLAND
  09. RITUAL
  10. ISHED
  11. SPANISH SKETCH
  12. FINAL FRONTIER
  13. REPRISE

(GRP/GRP 1993年発売/MVCR-148)
(ライナーノーツ/チック・コリア,青木和富)

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チック・コリア・エレクトリック・バンド / ビニース・ザ・マスク5

BENEATH THE MASK-1 “テクニカル・フュージョン”の『BENEATH THE MASK』(以下『ビニース・ザ・マスク』)こそが「エレクトリック・バンド」名義の“最高傑作”である。

 『ビニース・ザ・マスク』の真の問題点は,それこそ「熱心なチック・コリア・マニア」からの低評価にある。気持ちは分かる。“超絶技巧の突出”を過大評価したくない気持ちは分かる。

 転調や変拍子でさえ,打ち込みでプログラムされた自動演奏のような超高速で正確無比な運指から放たれる一音一音は,その全てが恐ろしく粒立っており,最先端のテクノロジーでも“絶対に手が届かないレベルの”完成された“超絶技巧の突出”。
 バカテクが余りにも凄すぎて,超絶なのにいとも簡単にプレイしているようにさえ感じさせる。涼しげで余裕でゆとりの“超絶技巧の突出”に,もはやため息しか漏れやしない。

 もはや譜面通りにコピーすることなど至難の業。いいや,もしかしたら譜面通りにコピーすることは可能なのかもしれない。しかし,果たしてこれだけの“GROOVE”が出せるのだろうか?

 それは恐らくジョン・パティトゥッチのように,デイブ・ウェックルのように,エリック・マリエンサルのように,フランク・ギャンバレのように,チック・コリアの音楽,を感じることができなければ到底不可能なことであろう。

 そう。「エレクトリック・バンド」とは,譜面ではなく,チック・コリアの音楽,を感じながらプレイするバンドである。
 チック・コリアへの尊敬の念,チック・コリアとの共有とか共感といった崇敬の念があればこそ,あそこまで弾きまくっているのに弾きすぎる嫌いが全くない。

 行き着くところまで行き着いた感のある『ビニース・ザ・マスク』での“テクニカル・フュージョン”を軽く見てはならない。
 「熱心なチック・コリア・マニア」であればこそ,逆に高く評価すべき,高速走行性能の安定性は異次元の音世界である。チック・コリア史上最高の演奏集なのである。 

 「エレクトリック・バンド」の超絶技巧に日本のテクニカルなフュージョン・バンドは,カシオペアにしてもプリズムにしてもDIMENSIONにしても敵わない。束になっても敵わない。「エレクトリック・バンド」こそが“楽器小僧”のバイブルであろう。

 しか〜し,管理人が『ビニース・ザ・マスク』を「エレクトリック・バンド」名義の“最高傑作”と評価するのは,上記“超絶技巧の突出”だけが理由ではない。
 『ビニース・ザ・マスク』を聴き続け,アルバム作りの全体像が見通せるようになったある日のこと。「あれっ,これって,あのアルバムの「エレクトリック・バンド」っぽい」を感じるようになった。

 そう。『ビニース・ザ・マスク』には“ド派手な”プログレフュージョンの『ザ・チック・コリア・エレクトリック・バンド』。“スムーズ・ジャズ”の『ライト・イヤーズ』。“叙情詩”の『アイ・オブ・ザ・ビホルダー』。“エレクトリックジャズ”の『インサイド・アウト』の要素が全て顔を出しているではないかっ!

BENEATH THE MASK-2 「エレクトリック・バンド」の過去の4作品も完成されたアルバムであった。しかし『ビニース・ザ・マスク』を聴いていると,過去のアルバムにはまだ発展の余地が残されていたことが理解できる。
 『ビニース・ザ・マスク』の「以前と以後」とでは,完成度に歴然とした違いがある。

 この事実に気付いてからはもう大変! 軽く聞き流していても,音のベールの裏側を丹念に調べても,どこからどう聴いてみても「THIS IS CHICK COREA」な音楽が流れてくる!
 POPでキャッチーな間口の広さに,長年の蓄積から来る“メロディーの妙”が隠されている! これほどまでに高度な音楽性で組み上げられているのに,シンプルなサウンドに回帰したかのような見事なバランス!

 『ビニース・ザ・マスク』の真実とは“テクニカル・フュージョン”という仮面を被った(だからアルバム・タイトル『ビニース・ザ・マスク』?)「ELEKTRICK BAND」の「集大成」→「ELEKTRICK BAND」の「洗練」なのである。

  01. BENEATH THE MASK
  02. LITTLE THINGS THAT COUNT
  03. ONE OF US IS OVER 40.
  04. A WAVE GOODBYE
  05. LIFESCAPE
  06. JAMMIN E. CRICKET
  07. CHARGED PARTICLES
  08. FREE STEP
  09. 99 FLAVORS
  10. ILLUSIONS

(GRP/GRP 1991年発売/MVCR-8)
(ライナーノーツ/坂本信)

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チック・コリア・エレクトリック・バンド / インサイド・アウト4

INSIDE OUT-1 “所構わず移り気する”チック・コリアの“音楽性の縮図”である「エレクトリック・バンド」の第4作『INSIDE OUT』(以下『インサイド・アウト』)の真髄は“エレクトリックジャズ”!

 とにかく厚いテンションコードの連続で音密度が“濃厚”なのである。『インサイド・アウト』のこのヨコノリはフュージョンのものではなくジャズのものである。

 「エレクトリック・バンド」から「アコースティック・バンド」への変化は“音の削減”がテーマであったが「アコースティック・バンド」を経験し,再起動した「エレクトリック・バンド」でのテーマは「アコースティック・バンド」のテンションはそのままに“電飾する”ことにあった。
 チック・コリアMIDIシンセが“エレクトリック一辺倒”にはなっていない。チック・コリアの中ではエレクトリックアコースティックとの“垣根”がとっぱらわれてしまったような感じ。

 そう。『インサイド・アウト』における電飾の“塩梅”が絶妙であって,いかにも「アコースティック・バンド」を体験した者たちによる「通過儀式」のように感じてしまうのだ。

 曲想もそうである。『インサイド・アウト』には【MAKE A WISH】【STRETCH IT】【TALE OF DARING】と題する「組曲」が3つも入っている。ゆえにテーマが複雑ではっきりしない。正直,何を演奏しているのか分からなくなるくだりが多い。
 アヴァンギャルドな長尺で超絶なソロ廻しが増えている。この辺りのフリーアドリブ・スペースでの硬派なフレーズ全開が“エレクトリックジャズ”している所以なのだ。

 そんな“エレクトリックジャズ”の文脈から飛び出してきたのが最高にPOPでキャッチーなタイトル・チューンの【INSIDE OUT】。【INSIDE OUT】だけは『LIGHT YEARS』に収録されるべき“スムーズ・ジャズ”な1曲であるが,この曲での「エレクトリック・バンド」が大好きで【INSIDE OUT】を聴きたいがために『インサイド・アウト』を聴く管理人がそこにいる。

INSIDE OUT-2 実にメロディアスなのに淋しさを感じる【INSIDE OUT】。ジョン・パティトゥッチベースデイブ・ウェックルドラムが流れるだけでスイッチが入ってしまう。エリック・マリエンサルサックスが最高に歌っている。
 そうしてチック・コリアピアノソロと,その後に続くシンセでのバッキングのセンスが素晴らしい。こんなにシリアスな雰囲気を感じさせるチック・コリアを意識したのは【INSIDE OUT】が初めての経験。【INSIDE OUT】を聴いてからというものチック・コリアへの印象が変化した。チック・コリアピアノに“耳ダンボ”になってしまった。【INSIDE OUT】は,そんなチック・コリアの“忘れられない”名演の1つとなった。
 ラストのフランク・ギャンバレギターソロが“カッコよく盛り上げるだけ盛り上げて”はい,終了〜。
 ええ〜っ,もっと聴きた〜い。寸止め感がヘビロテへと誘う…。

 ただし,このヘビロテの先には“テクニカル・フュージョン”な『BENEATH THE MASK』ではなく“エレクトリックピアノトリオ”の『LIVE FROM ELARIO’S』が見えている!

  01. INSIDE OUT
  02. MAKE A WISH - PART 1
  03. MAKE A WISH - PART 2
  04. STRETCH IT - PART 1
  05. STRETCH IT - PART 2
  06. KICKER
  07. CHILD'S PLAY
  08. TALE OF DARING - CHAPTER 1
  09. TALE OF DARING - CHAPTER 2
  10. TALE OF DARING - CHAPTER 3
  11. TALE OF DARING - CHAPTER 4

(GRP/GRP 1990年発売/VICJ-5)
(ライナーノーツ/チック,悠雅彦)

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チック・コリア・エレクトリック・バンド / アイ・オブ・ザ・ビホルダー5

EYE OF THE BEHOLDER-1 管理人がチック・コリアジャズフュージョンを聴いて涙したのは,後にも先にも「エレクトリック・バンド」の第3作『EYE OF THE BEHOLDER』(以下『アイ・オブ・ザ・ビホルダー』)だけである。

 『アイ・オブ・ザ・ビホルダー』を聴いてもいないのに,聴こうと思っただけで泣けてくる。『アイ・オブ・ザ・ビホルダー』のアルバム・タイトルを耳にしただけで無性に泣けてくる。『アイ・オブ・ザ・ビホルダー』の“孤高の世界観”がツボなのだ。

 『アイ・オブ・ザ・ビホルダー』のストーリーテラーが“悲しげ”である。重厚かつ荘厳な編曲が施されている。全体が暗い影で覆われており,雰囲気が哀愁のヨーロピアンでクラシカルに振れている。陽気なスパニッシュもあるのだが,明るさの裏に“陰り”が伴なっている。「濃密な音楽詩情」が展開されている。
 そう。『アイ・オブ・ザ・ビホルダー』とはチック・コリアが意図的に狙った“叙情詩”なのである。

 『アイ・オブ・ザ・ビホルダー』は,もはや「エレクトリック・バンド」の枠を飛び出している。その最大の要因はチック・コリアの身に生じた「電化キーボードと生ピアノの融合」にある。
 ついに『アイ・オブ・ザ・ビホルダー』で「エレクトリック・バンド」への「アコースティックの導入」が始まったのだ。

 もともと「エレクトリック・バンド」の表記は「ELEKTRICK BAND」であって「ELECTRICK」の意ではない。バンドが安定してきたら生ピアノを投入することが事前に宣言されていた。
 チック・コリアとしたら,ついにその時が来ただけ,のことなのであろうが,リスナー側のニュアンスとしては,機が熟したからではなく『ライト・イヤーズ』の制作を通じて“電化オンリーの限界”を感じたように思ってしまう。

 そう。『アイ・オブ・ザ・ビホルダー』は「エレクトリック・バンド」の並びにはない。「エレクトリック・バンド」名義の他のアルバムとは分けて考えるべき作品である。
 どちらかと言えばチック・コリアソロ名義の扱いに近い。しかしこの論理にも無理がある。
 ズバリ『アイ・オブ・ザ・ビホルダー』は,チック・コリアソロにも「エレクトリック・バンド」にも属さない“孤高の異色盤”である。

 チック・コリアを独創的な音楽へと向かわせるモチベーションは,いつでもイマジネーション豊かなコンセプトとスパニッシュなのであるが,思索的なストーリー・テラーの『アイ・オブ・ザ・ビホルダー』は,チック・コリアの「冒険の旅」の結晶であろう。
 詳しい説明は省略するが,ニュアンスとしては『タッチストーン』の延長線上に位置している。『タッチストーン』での“やり残し”を『アイ・オブ・ザ・ビホルダー』で完結させているような感じで…。

EYE OF THE BEHOLDER-2 さて『ライト・イヤーズ』から『アイ・オブ・ザ・ビホルダー』に至る「エレクトリック・バンド」の大きな変化は,一般に語られる「アコースティックの導入」以上に「エリック・マリエンサルフランク・ギャンバレの導入」のインパクトの方が何倍も大きいと思っている。

 幻想的なシンセ・オーケストレーションと“対立する”エリック・マリエンサルサックスフランク・ギャンバレギターインプロビゼーションが実に素晴らしい。チック・コリアの生ピアノと相まって,曲の深みがぐっと出てドラマチックな味わいが加わっている。

 この絶妙なバランス感覚は「エレクトリック・バンド」特有の音。他の誰かが狙ってもチック・コリアだけにしか造り出すことのできない“稀有な味”である。
 目玉である「アコースティックの導入」にしても,実は頑なにトーンは暗め一辺倒であって,色彩効果は限定的である。チック・コリアエレクトリックアコースティックのバランスに「音の美学」が溢れ出ている。

 そう。『アイ・オブ・ザ・ビホルダー』は,チック・コリア唯一の“内へ内へ”の耽美主義! チック・コリアが“全身全霊”で「内面の自分」をさらけ出している!
 しかし,それだけではないのだ。『アイ・オブ・ザ・ビホルダー』には,リリシズムからのチェンジが記録されているのだ。
 リリシズムへの反動の如く流れ出す【TRANCE DANCE】と【EYE OF THE BEHOLDER】の,破竹の勢いで前進し続ける“歓喜の絶唱”に悶えてしまう!

 チック・コリアのアルバムには,彼のユニークな人柄を感じさせる部分が多分にあるのだが『アイ・オブ・ザ・ビホルダー』には「トータル・サウンドの完成」を優先させたチック・コリアの“生真面目”でロマンティックな一面が随所に感じられる。

 だ・か・ら“叙情詩”『アイ・オブ・ザ・ビホルダー』の「表と裏」に泣けてくる。エレクトリック・サウンドの中で鳴り響くチック・コリアの“心の震え”が今の今でも聴こえてくる。

  01. HOME UNIVERSE
  02. ETERNAL CHILD
  03. FORGOTTEN PAST
  04. PASSAGE
  05. BEAUTY
  06. CASCADE-PART I
  07. CASCADE-PART II
  08. TRANCE DANCE
  09. EYE OF THE BEHOLDER
  10. EZINDA
  11. AMNESIA

(GRP/GRP 1988年発売/VDJ-1146)
(ライナーノーツ/小川隆夫,市川正二,青木和富,成田正)

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チック・コリア・エレクトリック・バンド / ライト・イヤーズ4

LIGHT YEARS-1 管理人にとってチック・コリアと来れば「エレクトリック・バンド」である。
 その理由は「エレクトリック・バンド」のアルバムを立て続けに聴いてみれば誰にだって分かる,これが同じバンドなのか?と思えるほどのスタイル・チェンジ。
 そう。“所構わず移り気する”チック・コリアの音楽性が「エレクトリック・バンド」を聴き通すだけで体感できる。そして,それがチック・コリアの音楽スタイルそのものなのだ。

 “ド派手な”プログレフュージョンの『THE CHICK COREA ELEKTRICK BAND』からわずかに1年の出来事である。あの「リターン・トゥ・フォーエヴァー」の解散から7年。満を持して発足させた「ザ・エレクトリック・バンド」から「定冠詞」を外してきた。

 そんな「エレクトリック・バンド」の第2作が,そのものズバリの『LIGHT YEARS』(以下『ライト・イヤーズ』)! とにかくライト! とにかく軽い!
 売れに売れまくった『THE CHICK COREA ELEKTRICK BAND』のセールスでは飽き足らず?更なる“売れ線”で勝負に出た〜!

 言ってみれば『ライト・イヤーズ』はチック・コリア一流の“スムーズ・ジャズ”である。「ポップスと一緒にラジオでかけてもらえそうな曲」を意識した結果としての“スムーズ・ジャズ”である。

 “スムーズ・ジャズ”自体が悪いわけでも嫌いでもないのだが,あの「エレクトリック・バンド」が“スムーズ・ジャズ”を演る意味はないように思った。
 これが,かの「リターン・トゥ・フォーエヴァー」を超えるための「エレクトリック・バンド」なのか? 超絶技巧を意識的に減速させて“まとまりの良い演奏”に終始している。演奏のダイナミズムが失われている。

 ベースジョン・パティトゥッチドラムデイブ・ウェックルとのトリオとしてスタートした「エレクトリック・バンド」であったが,デビュー・アルバムではトラック別にギタリストカルロス・リオススコット・ヘンダーソンが加入した。
 『ライト・イヤーズ』では,レギュラー・ギタリストとしてのフランク・ギャンバレサックス奏者のエリック・マリエンサルが加入して,ついに「エレクトリック・バンド」のメンバー5人が固定する。

 しかし,この“むやむや”が分かるかな〜。この“もやもや”が伝わるかな〜。『ライト・イヤーズ』の音造りを分析する限り,フランク・ギャンバレギターエリック・マリエンサルサックスに必然性は感じられない。
 チック・コリアのデジタル・シンセの無機質な音を,まろやかに聴かせるための役回りに徹しておりして「エレクトリック・バンド」のバンド・アンサンブルの中に神妙に収まってしまっている。

LIGHT YEARS-2 バンド・サウンドの“隠し味”的なギターサックスの地味な使い方が,かえって主役であるチック・コリアキーボードの魅力を薄めてしまった。超過激サウンド「エレクトリック・バンド」のバンドの味を薄めてしまった。

 『ライト・イヤーズ』は“薄味の”「エレクトリック・バンド」。管理人は『ライト・イヤーズ』をほとんど聴かない。
 あれ程のバンド・サウンドを持っていたはずなのに…。どうしてここまで“スムーズ・ジャズ”なのだ…。どうしてそこまして“売れ線”なのだ…。理解に苦しむ…。

 ただし,この『ライト・イヤーズ』。LP時代の産物でありCD版には3トラック多めに収録されている。【VIEW FROM THE OUTSAIDE】から続くプログレチックな展開に「おお,これぞチック・コリアフュージョン全開!」なのである。管理人は「エレクトリック・バンド」にこんなハードな演奏を求めていた。アドレナリンの迸りっぷりが素晴らしい。最後に持ち直した。星4つ〜。

 まっ,チック・コリアにとってフュージョン・バンドの2作目は“魔の2nd”。駄盤『ライト・イヤーズ』は恒例行事なだけ!

  01. LIGHT YEARS
  02. SECOND SIGHT
  03. FLAMINGO
  04. PRISM
  05. TIME TRACK
  06. STARLIGHT
  07. YOUR EYES
  08. THE DRAGON
  09. VIEW FROM THE OUTSIDE
  10. SMOKESCREEN
  11. HYMN OF THE HEART
  12. KALEIDOSCOPE

(GRP/GRP 1987年発売/VDJ-1090)
(ライナーノーツ/青木和富,久野耕一郎)

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チック・コリア・エレクトリック・バンド / ザ・チック・コリア・エレクトリック・バンド5

THE CHICK COREA ELEKTRIC BAND-1 初めにお断りしておく。『THE CHICK COREA ELEKTRICK BAND』(以下『ザ・チック・コリア・エレクトリック・バンド』)について語りたいことは山ほどある。腐るほどある。掃いて捨てるほどある。

 管理人にとってチック・コリアと来れば“良くも悪くも(←ここが重要!)”「エレクトリック・バンド」のことである。
 …というのも「エレクトリック・バンド」のチック・コリアが,管理人にとって“リアル・チック・コリア”の始まりであったから…。

 「エレクトリック・バンド」の名盤と来れば,第一候補は『ビニース・ザ・マスク』であるが,時々は『ザ・チック・コリア・エレクトリック・バンド』であったりもする。
( “孤高の異色盤”『アイ・オブ・ザ・ビホルダー』は「エレクトリック・バンド」名義としてカウントされていませんからっ! )

 そして『ザ・チック・コリア・エレクトリック・バンド』と来れば,第一候補は【RUMBLE】であり,次に【GOT A MATCH?】である。

 そうして【RUMBLE】と来れば,JOQR「西村知美/今夜はパジャマ気分」のテーマ曲であり,西村知美と来れば“バブル”である。管理人の“青春”である。“一つの時代”の音楽である。

 事実,チック・コリアライナーノーツの中で「エレクトリック・バンド」としたバンド名について,次のように書いている。
 「電気楽器主体だけど,だからエレクトリック・バンドとしたわけではない。エレクトリックというのは,現代を象徴しての言葉なんだ。ぼくたちは言ってみればエレクトリック・シティに住んでいる。都会というのはエレクトリック・シティそのものだと思う」。

 ゆえに「エレクトリック・バンド」の表記は「ELEKTRICK BAND」であって「ELECTRICK」の意ではない。
 ただし,整合性に欠ける「AKOUSTIC BAND」を登場させて,さぁ,困ったぞ,チック・コリア

THE CHICK COREA ELEKTRIC BAND-2 そう。『ザ・チック・コリア・エレクトリック・バンド』は,バブリーな時代のヘヴィー・メタル・エレクトリック・ミュージック。
 だから『ザ・チック・コリア・エレクトリック・バンド』は,管理人の脳裏から永遠に色褪せたりはしない!

 そう。『ザ・チック・コリア・エレクトリック・バンド』は,ド派手なデジタル楽器で身をまとった,実際の中身は「ヒューマンでアナログチック」なプログレフュージョン・ミュージック。
 だから『ザ・チック・コリア・エレクトリック・バンド』は,管理人の脳裏から永遠に色褪せたりはしない!

  01. CITY GATE
  02. RUMBLE
  03. SIDE WALK
  04. COOL WEASEL BOOGIE
  05. GOT A MATCH?
  06. ELEKTRIC CITY
  07. NO ZONE
  08. KING COCKROACH
  09. INDIA TOWN
  10. ALL LOVE
  11. SILVER TEMPLE

(GRP/GRP 1986年発売/MVCR-12)
(ライナーノーツ/小川隆夫,林信介)

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チック・コリア・エレクトリック・バンド / トゥ・ザ・スターズ・ツアー・エディション / PORT VIEW 33

 『TO THE STARS TOUR EDITION/DISC 1』の7曲目は【PORT VIEW 3】(以下【ポート・ヴュー 3】)。


 3トラック目ともなれば【ポート・ヴュー】シリーズにも耳が慣れてくるはずだが,ここでもチック・コリアは素晴らしい。

 【ポート・ヴュー 2】とは別の宇宙空間をイメージさせてくれる。実際の宇宙は無音であるにも関わらず,きっとこんな音を出して惑星は運行しているのではなかろうか,とイメージを膨らませてくれるトラック。

CHICK COREA ELEKTRIC BAND
CHICK COREA : Keyboards, Piano

チック・コリア・エレクトリック・バンド / トゥ・ザ・スターズ・ツアー・エディション / PORT VIEW 63

 『TO THE STARS TOUR EDITION/DISC 1』の13曲目は【PORT VIEW 6】(以下【ポート・ヴュー 6】)。


 【ポート・ヴュー 6】は,シンセサイザーの小刻みな振動によって,超高速(光速)での宇宙の旅を表現している。

 ラスト,1分30秒での一音は“ヴィブラホン”のような響きである。

CHICK COREA ELEKTRIC BAND
CHICK COREA : Keyboards, Piano

チック・コリア・エレクトリック・バンド / トゥ・ザ・スターズ・ツアー・エディション / THE LONG PASSAGE4

 『TO THE STARS TOUR EDITION/DISC 1』の12曲目は【THE LONG PASSAGE】(以下【ザ・ロング・パッセージ】)。


 【ザ・ロング・パッセージ】は,何ともイメージが掴みにくい一曲である。リズムもテーマもことごとく変化する。しかし“なんでもあり”には聴こえない“凄い”一曲である。

 ちなみに曲の構成を分解して記録してみると…。
 イントロから33秒までのテーマ ぃ械管辰ら46秒までのピアノ,47秒から55秒までのリフ,56秒から2分7秒までのSFテーマ,2分8秒からのユニゾンテーマ ぃ格18秒からのピアノ・ソロ+ユニゾン◆帖
 あー疲れる。全部分析しようと思ってはみたが,延々と曲想が変化するので,この位でやめさせてもらいます。すみません。
 読者の皆さんにも実際に一聴していただければ,途中でやめることにした管理人の“もやもやした気持ち”も少しは理解していただけるかと思っております。はい。

 好みかどうかは別にして,この1曲を分割して10曲ぐらいは作曲できそうな,とにかく“凄い”一曲。【ザ・ロング・パッセージ】とのネーミングはお見事である。
 全体のまとまりに欠けるのは管理人の文章力であり,チック・コリアではありませんから,どうぞご安心を。

CHICK COREA ELEKTRIC BAND
CHICK COREA : Keyboards, Piano
FRANK GAMBALE : Guitar
ERIC MARIENTHAL : Sax
JOHN PATITUCCI : Bass
DAVE WECKL : Drums

チック・コリア・エレクトリック・バンド / トゥ・ザ・スターズ・ツアー・エディション / CHECK BLAST4

 『TO THE STARS TOUR EDITION/DISC 1』の1曲目は【CHECK BLAST】(以下【チェック・ブラスト】)。


 【チェック・ブラスト】をもって,新生チック・コリア・エレクトリック・バンドがスタートするということもあり,全員の気合いの入ったプレイが楽しめる。
 1分31秒から始まるソロ回しが入っているのは,メンバー全員の自己紹介を兼ねてのことであろう。

 とは言え【チェック・ブラスト】の聴き所は「バンド」として息のあったユニゾンにある。ソロ回し直後から始まる,2分19秒以降の演奏は「バンド」としての彼らからの自己紹介である。

CHICK COREA ELEKTRIC BAND
CHICK COREA : Keyboards, Piano
FRANK GAMBALE : Guitar
ERIC MARIENTHAL : Sax
JOHN PATITUCCI : Bass
DAVE WECKL : Drums

チック・コリア・エレクトリック・バンド / トゥ・ザ・スターズ・ツアー・エディション / CAPTAIN JOCELYN - A TRIBUTE BY HIS CREW4

 『TO THE STARS TOUR EDITION/DISC 1』の16曲目は【CAPTAIN JOCELYN−A TRIBUTE BY HIS CREW】(以下【キャプテン・ジョスリン−ア・トリビュート・バイ・ヒズ・クルー】)。


 【キャプテン・ジョスリン−ア・トリビュート・バイ・ヒズ・クルー】は,続く【キャプテン・ジョスリン−ザ・ピアニスト】との組曲=別アレンジ。
 この2トラックからして,キャプテン・ジョスリンチック・コリアであり,ヒズ・クルーCCEBメンバーを指しているのだろう。【キャプテン・ジョスリン−ア・トリビュート・バイ・ヒズ・クルー】では,チック・コリアの是認を受けた4人のクルーが「チック・コリア抜きのエレクトリック・バンド」を表現している。

 特筆すべきは「チック・コリア・アコースティック・バンド」時代を思い起こさせる,デイヴ・ウェックルジャズドラミング
 イントロからアウトロまで“スケール感豊かな”デイヴ・ウェックルドラミングが,80年代のチック・コリアの「サウンド・カラー」そのものである。

CHICK COREA ELEKTRIC BAND
CHICK COREA : Keyboards, Piano
FRANK GAMBALE : Guitar
ERIC MARIENTHAL : Sax
JOHN PATITUCCI : Bass
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チック・コリア・エレクトリック・バンド / トゥ・ザ・スターズ・ツアー・エディション / JOCELYN - THE COMMANDER4

 『TO THE STARS TOUR EDITION/DISC 1』の14曲目は【JOCELYN−THE COMMANDER】(以下【ジョスリン−ザ・コマンダー】)。


 マイナー調でありながら“キャッチーな”響きがロールする【ジョスリン−ザ・コマンダー】は,チック・コリアならではの,ピアノシンセの“二刀流” VS チック・コリア抜きのエレクトリック・バンドとの“静かなるバトル”が聴き所である。

 1分7秒からのエリック・マリエンサルソプラノ・サックスとの絡みが【ジョスリン−ザ・コマンダー】の全体のトーンを決定づけている。“怪しげで不気味な”ソプラノ・サックスの響きがやけに印象に残る。

 1分58秒からのカラフルで動的なピアノシンセに対するは,2分35秒からの“冷めた”ギターフランク・ギャンバレギターが,エリック・マリエンサルソプラノ・サックスへと大化けする。

 4分6秒からの煌びやかなキーボードジョン・パティトゥッチベースとのデュオが,ジョー・ザビヌルビクター・ベイリーの後期ウェザー・リポートを彷彿とさせる。

CHICK COREA ELEKTRIC BAND
CHICK COREA : Keyboards, Piano
FRANK GAMBALE : Guitar
ERIC MARIENTHAL : Sax
JOHN PATITUCCI : Bass
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チック・コリア・エレクトリック・バンド / トゥ・ザ・スターズ・ツアー・エディション / ETERNAL CHILD5

 『TO THE STARS TOUR EDITION/DISC 2』の2曲目は【ETERNAL CHILD】(以下【エターナル・チャイルド】)。


 【エターナル・チャイルド】を,初めて耳にした時のインパクトが忘れられない。「ほ〜っ,そう来たか」正直,にやついた。この大胆なアレンジの変更に,チック・コリアの新生チック・コリア・エレクトリック・バンドへの思いを“見透かした”気がしたものだ。

 『EYES OF THE BEHOLDER』での【エターナル・チャイルド】には,あのジャケット少女の(裏ジャケの大正ロマン風のポートレイトも)影響かもしれないが,中世貴族の「おとぎの国」をイメージしていたが,ニューアレンジで一気にジャズ・ナンバーへと生まれ変わった!
 抽象絵画から精密写真のような解像度の変化で,クリアな輪郭線が浮かび上がる! 聴き慣れないうちは,見え過ぎちゃって困ったものだが,元々【エターナル・チャイルド】の魅力はメロディ・ラインではない。チック・コリアのロマンチシズムである!

 ニューアレンジの【エターナル・チャイルド】からは,チック・コリアのロマンチシズムが消えている。その代わりにジャズの雰囲気が香っている。
 チックが“エッジを立てて”ピアノをかき鳴らす! 「おとぎの国」から解き放たれたジャズ・スピリッツ! アドリブ勝負の「ジャズの国」へと舞い戻った,ハイテク即興集団の熱演が楽しい。

CHICK COREA ELEKTRIC BAND
CHICK COREA : Keyboards, Piano
FRANK GAMBALE : Guitar
ERIC MARIENTHAL : Sax
JOHN PATITUCCI : Bass
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チック・コリア・エレクトリック・バンド / トゥ・ザ・スターズ・ツアー・エディション / HOUND OF HEAVEN4

 『TO THE STARS TOUR EDITION/DISC 1』の10曲目は【HOUND OF HEAVEN】(以下【ハウンド・オブ・ヘヴン】)。


 【ハウンド・オブ・ヘヴン】は,ゴキゲンな“ガマガエル”ナンバー! ゲロゲロの輪唱の中,カリプソ・タッチのリズム隊が大活躍。うねるうねる!

 2分6秒からのチック・コリアエレピ・ソロでは,南国の爽やかな風がそよぐ! 続く2管サックスエリック・マリエンサルスティーヴ・ウィルソンアドリブまでは,どことなく高中正義を彷彿とさせる雰囲気が漂っている。
 しかし高中正義と同じギタリストフランク・ギャンバレのソロが入ると,やっぱり宇宙へと飛び立ってしまう。冷たい音色の高速アドリブが,田園風景〜南国リゾートを吹っ飛ばし,SFの世界へと連れて行ってくれる。 

 と,書いたように【ハウンド・オブ・ヘヴン】での4人のフロント陣は“いけている”! にもかかわらず,その名演が霞んでしまうほど,ジョン・パティトゥッチベースデイヴ・ウェックルドラムがさらに上を行っている。超強烈!
 ミディアム・ナンバーでのこのグルーヴは規約違反ではないのか? 規格外のスゴテクは,やらせすぎではないのか?
 【ハウンド・オブ・ヘヴン】は「オーバー・ファンク」ならぬ「オーバー・カリプソ?」である。

CHICK COREA ELEKTRIC BAND
CHICK COREA : Keyboards, Piano
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チック・コリア・エレクトリック・バンド / トゥ・ザ・スターズ・ツアー・エディション / BLUE MILES5

 『TO THE STARS TOUR EDITION/DISC 2』の4曲目は【BLUE MILES】(以下【ブルー・マイルス(マイルスへ捧ぐ)】)。


 【ブルー・マイルス(マイルスへ捧ぐ)】は,チック・コリアからマイルス・デイビスへ捧げたレクイエム!
 レクイエムには,切々と迫るバラード・タッチの曲調が多い中,チック・コリアは“ブルース”をチョイスした。個人的には,この“ブルース”という選択が,非常に興味深い。

 【ブルー・マイルス(マイルスへ捧ぐ)】は,チック・コリアとメンバーとのデュオを軸に,各メンバーのアドリブにも多くの時間が割かれている。
 元々【ブルー・マイルス(マイルスへ捧ぐ)】は“フュージョンの枠内でJAZZYに”を試みた,チック・コリア・エレクトリック・バンド時代の作品ゆえ,俄然即興性が高い。そこへツアー前のリハーサルときた。斬新なアドリブの大連発が“ブルース”調! この演奏はもの凄い!
 さらに驚愕の事実は,完璧なユニゾン! どんなに自由にアドリブを奏でていても,テーマが鳴り出すと他のメンバーから強制連行されてしまう。そう。完璧な“バンド・サウンド”に仕上がっている。

 12分13秒からの最後の大鳴きは圧巻! これこそチック・コリア・エレクトリック・バンド

CHICK COREA ELEKTRIC BAND
CHICK COREA : Keyboards, Piano
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チック・コリア・エレクトリック・バンド / トゥ・ザ・スターズ・ツアー・エディション / CTA5

 『TO THE STARS TOUR EDITION/DISC 2』の1曲目は【CTA】)。


 【CTA】は,新生チック・コリア・エレクトリック・バンドで完成した,CCEB時代の代表曲。
 やはり,ジョン・パティトゥッチデイヴ・ウェックルの“鉄壁リズム隊”が加わると,曲の印象が“倍速”に変化する。
 流れるようなビートのうねりの中,フロント3人が“クールなブロー”を決めまくる!

 緻密なエレクトリック・ミュージックではあるが,プログラムされた機械音とは対極にある“生音”を感じさせてくれる。これがチック・コリアがイメージした,真の【CTA】の全貌であろう。

 ハイライトは,他のメンバーのソロのバックに回っても“手加減無し”で,パルスを送り続けるデイヴ・ウェックルドラミング! 6分台以降で聴かせる4人とのインタープレイで,アドリブを終始リードするタイトなドラミングは,コンテンポラリー・ジャズフュージョン系の最高峰!

CHICK COREA ELEKTRIC BAND
CHICK COREA : Keyboards, Piano
FRANK GAMBALE : Guitar
ERIC MARIENTHAL : Sax
JOHN PATITUCCI : Bass
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チック・コリア・エレクトリック・バンド / トゥ・ザ・スターズ・ツアー・エディション / PORT VIEW 73

 『TO THE STARS TOUR EDITION/DISC 1』の15曲目は【PORT VIEW 7】(以下【ポート・ヴュー 7】)。


 【ポート・ヴュー 7】の季節感は晩秋。荒涼とした宇宙空間にあって,冬支度を始める人肌の“ぬくもり”が感じられる。
 NO! これは人肌ではなく,宝石のように輝く地球へ感嘆の叫び声を上げる天使たちの肌触り! 天使の“ささやき”が記録されているかのよう…。

 と,ここまでイメージが膨らむとは我ながら上出来?
 NO! ここまでインスピレーションを与え続ける,チック・コリアが素晴らしいだけのことである。

CHICK COREA ELEKTRIC BAND
CHICK COREA : Keyboards, Piano

チック・コリア・エレクトリック・バンド / トゥ・ザ・スターズ・ツアー・エディション / GOT A MATCH?5

 『TO THE STARS TOUR EDITION/DISC 2』の3曲目は【GOT A MATCH?】(以下【ゴット・ア・マッチ?】)。


 【ゴット・ア・マッチ?】は,管理人が“死ぬほど聴いた”1曲の一つであるが,今回の【ゴット・ア・マッチ?】の出来には感服させられた。
 あれほど聴いたはずなのに…。目が点になる,驚異のアドリブが実に新鮮だ! 初めて聴いた時に感じたと同じ,いやそれ以上の衝撃! これがライブ前のリハーサル演奏とは,にわかに信じられない。

 曲は超カッコイイし,ユニゾンでの早弾きには,思わず声を上げてしまう。
 同様の感想のトラックは,チック・コリア・エレクトリック・バンドには多いものだが【ゴット・ア・マッチ?】はその中でも別格である。

 とにかく全員がすごすぎる。余りのハイテクぶりに“賞賛を通り越して”ため息さえもれてしまう。擬音ばかり出てしまい紹介にならない。
 何分何秒批評など無意味。立ち止まる必要など一切ない。あっという間の14分46秒。一気に聴き通せる。その全てが聴き所。管理人ウソつかない。 ← インディアン風。

CHICK COREA ELEKTRIC BAND
CHICK COREA : Keyboards, Piano
FRANK GAMBALE : Guitar
ERIC MARIENTHAL : Sax
JOHN PATITUCCI : Bass
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チック・コリア・エレクトリック・バンド / トゥ・ザ・スターズ・ツアー・エディション / CAPTAIN JOCELYN - THE PIANIST4

 『TO THE STARS TOUR EDITION/DISC 1』の17曲目は【CAPTAIN JOCELYN−THE PIANIST】(以下【キャプテン・ジョスリン−ザ・ピアニスト】)。


 【キャプテン・ジョスリン−ザ・ピアニスト】は,チック・コリアによる【キャプテン・ジョスリン】のソロ演奏。

 “キャプテンチック・コリアの本性は【ザ・ピアニスト】! しかし最新鋭のピアノキーボードを操るピアニストであった。
 チック・コリアの電化ピアノが“揺れる”。アコースティックなのにエレクトリック! いいや,エレクトリックなのにアコースティック
 そう。“キャプテンチック・コリアの本性が「エレクトリック・バンド」の本性である。

CHICK COREA ELEKTRIC BAND
CHICK COREA : Keyboards, Piano

チック・コリア・エレクトリック・バンド / トゥ・ザ・スターズ・ツアー・エディション / PORT VIEW 53

 『TO THE STARS TOUR EDITION/DISC 1』の11曲目は【PORT VIEW 5】(以下【ポート・ヴュー 5】)。


 【ポート・ヴュー 5】は【ハウンド・オブ・ヘヴン】の軽快な流れを受け止めつつも,スペース・ジャングル・サウンドへの方向転換。

 エコーを効かせたパーカッションが,連打から徐々にスローモション。頭を“真っ白”に整えて,続くハイライト曲=【ザ・ロング・パッセージ】への流れを構築している。

CHICK COREA ELEKTRIC BAND
CHICK COREA : Keyboards, Piano

チック・コリア・エレクトリック・バンド / トゥ・ザ・スターズ・ツアー・エディション / PORT VIEW 44

 『TO THE STARS TOUR EDITION/DISC 1』の9曲目は【PORT VIEW 4】(以下【ポート・ヴュー 4】)。


 【ポート・ヴュー 4】は【ポート・ヴュー】シリーズ中“白眉”の出来! これは間奏曲のレベルを超えている。ドラマティック・トゥナイト!

 右に左に展開する,音のうねり。バックのボイスも印象的。1分27秒のシンセがSFしている。

CHICK COREA ELEKTRIC BAND
CHICK COREA : Keyboards, Piano

チック・コリア・エレクトリック・バンド / トゥ・ザ・スターズ・ツアー・エディション / ALAN CORDY5

 『TO THE STARS TOUR EDITION/DISC 1』の8曲目は【ALAN CORDAY】(以下【アラン・コーデイ】)。


 【アラン・コーデイ】は,チック・コリアの「スペイン嗜好&アコースティック指向」が入り交じった大作である。
 全体的には落ち着いたトーンの“聴かせる”ナンバーであるのだが,フラメンコ風“キメッ”のテーマがアクセントとして随所に登場! その瞬間にトリップしてしまう。

 10年程前に一世を風靡した,懐かしい「アンプラグド」な世界に,スペインの“情熱”が織り込まれたテーマに心奪われてしまう。アドリブとユニゾンの“波”が交互に押し寄せては消えてゆく。刹那的な美しさが全編を支配する。

 4人のソロが“揃いに揃って”全員饒舌! しかし饒舌すぎることはない。いいところで,全ては流れるように消え去ってゆく…。
 2分35秒からのチック・コリアピアノ・ソロは珍しく音数が多く,しっかりと鍵盤上を転げ回る。“ピアニストチック・コリアを久々に聴ける。
 3分24秒からのフランク・ギャンバレギター・ソロが【アラン・コーデイ】のハイライト! 早弾きなのにムーディなアコギは,これ見よがしにテクニックをひけらかさない,エレクトリック・バンドの“ポリシー”を代弁した快演である。

 個人的には6分7秒から15秒までのユニゾンが「帰ってきた,チック・コリア・エレクトリック・バンド!」を感じて,ついつい熱狂してしまう。

CHICK COREA ELEKTRIC BAND
CHICK COREA : Keyboards, Piano
FRANK GAMBALE : Guitar
ERIC MARIENTHAL : Sax
JOHN PATITUCCI : Bass
DAVE WECKL : Drums
 

チック・コリア・エレクトリック・バンド / トゥ・ザ・スターズ・ツアー・エディション / JOHNNY'S LANDING4

 『TO THE STARS TOUR EDITION/DISC 1』の6曲目は【JOHNNY’S LANDING】(以下【ジョニーズ・ランディング】)。


 【ジョニーズ・ランディング】こそ,チック・コリア・エレクトリック・バンド(以下,CCEB)の真骨頂! 曲想が好みでない点も含めて,管理人は“この”CCEBを待っていた。このトラックを持って“完全復活”を素直に喜びたいと思う。

 【ジョニーズ・ランディング】の最大の魅力は,一人一人のアドリブが“数珠つなぎ”となり全体で曲を構成している点にある。
 これが前任者のソロをタスキでつないだかのような“駅伝スタイル”! 一人一人がチック・コリアの描いた,恐らくはチック・コリアにしか理解できないであろう“起承転結”を意識したソロ&ユニゾンを,忠実かつ意外性をプラスして聴かせてくれている。

 特に4分5秒から突如フィル・インし,夜闇を切り裂くフランク・ギャンバレのエキセントリックなギター・ソロ! 次いで,その間鳴りを潜めていたエリック・マリエンサルサックスが,5分55秒から徐々に“唸り声”を上げていくクダリ。
 ついに7分13秒で二人一緒にチック・コリアへタスキを渡す! 締めは8分9秒からのデイブ・ウェックルドラム・ソロ! この展開に絶句してしまう。

 管理人とチック・コリア個人との相性は昔から余り良くないが,RTFやCCEBとなると話は別。駄作を名演へと変える“魔法のスパイス”に,本能的に惹かれてしまうのだ。
 情けないやら,うれしいやら…。チック・コリアとの“腐れ縁”はどうやら生涯続きそうである。

CHICK COREA ELEKTRIC BAND
CHICK COREA : Keyboards, Piano
FRANK GAMBALE : Guitar
ERIC MARIENTHAL : Sax
JOHN PATITUCCI : Bass
DAVE WECKL : Drums

チック・コリア・エレクトリック・バンド / トゥ・ザ・スターズ・ツアー・エディション / PORT VIEW 23

 『TO THE STARS TOUR EDITION/DISC 1』の5曲目は【PORT VIEW 2】(以下【ポート・ヴュー 2】)。


 【ポート・ヴュー 2】はクジラの鳴き声? 宇宙空間と言うより,深海に迷い込んだ感じ。
 海洋生物と“戯れる”チック・コリアの世界をご堪能あれ!

CHICK COREA ELEKTRIC BAND
CHICK COREA : Keyboards, Piano

チック・コリア・エレクトリック・バンド / トゥ・ザ・スターズ・ツアー・エディション / MISTRESS LUCK-THE PARTY4

 『TO THE STARS TOUR EDITION/DISC 1』の4曲目は【MISTRESS LUCK−THE PARTY】(以下【ミストレス・ラック−ザ・パーティ】)。


 【ミストレス・ラック−ザ・パーティ】は,3曲目から一転“ラテン系”! サルサ?のリズムで艶やかに“お色直し”!
 とにかく全員ノリにノッテいる! レッツ・ダンシング!のウネウネ・ビートは“ザ・パーティ”そのものだ。

 チック・コリアピアノがバッキングにまわり,エリック・マリエンサルフランク・ギャンバレを後ろからあおりまくっている!
 久々にチック・コリアの“スパニッシュ”なピアノの味を堪能できて,ヒデキカンゲキ( ← 分かるかなぁ )っと,フランク・ギャンバレが感傷ギャグに浸ったかは定かではないが,彼のエレキ・ギターチック・コリアから発せられる“刺激&指令”にダイナミックに反応している。
 最初から最後までレッド・ゾーン入りっぱなしなのであるが,1分52秒からの“節回し”こそフランク・ギャンバレの専売特許。気分爽快のジャズギターである。

 【ミストレス・ラック−ア・ポートレート】の1.5倍速?で繰り広げられるアドリブの応酬は聴き応え十分! やはり【−ア・ポートレート】が“抑えめ”の好演であったことが,結果よく分かる。

CHICK COREA ELEKTRIC BAND
CHICK COREA : Keyboards, Piano
FRANK GAMBALE : Guitar
ERIC MARIENTHAL : Sax
JOHN PATITUCCI : Bass
DAVE WECKL : Drums

チック・コリア・エレクトリック・バンド / トゥ・ザ・スターズ・ツアー・エディション / MISTRESS LUCK-A PORTRAIT4

 『TO THE STARS TOUR EDITION/DISC 1』の3曲目は【MISTRESS LUCK−A PORTRAIT】(以下【ミストレス・ラック−ア・ポートレート】)。


 【ミストレス・ラック−ア・ポートレート】は,ゆったりと“情感たっぷり”に歌い上げていく!
 と,書けばエリック・マリエンサルのことと思うなかれ。もちろんエリックアルト・サックスが歌っているのも事実だが,チック・コリア・エレクトリック・バンドとしての表現力が“買い”なのである。
 特に終盤のユニゾンはフロントとリズム隊の全く異なるアプローチが違和感なく融合している! 互いの長所を引出し合う,ジャズ・コンボの一種の“理想型”であろう。

 勿論「個」の力量もすさまじい。ミディアム・ナンバーで“音を間引く”演奏はなかなかできるものではないのだが“空間に残響が響くアドリブ”と言ったら,分かる人には分かるだろう。これこそ抽象的な曲想を追い求めるチック・コリアの狙いでもある。

 1分8秒からのチック・コリアピアノソロと,3分10秒からのエリック・マリエンサルサックスソロもいいが,その間に挟まれ“ドンと構えた”ジョン・パティトゥッチアドリブが“歌心満点”だ。
 ん? よ〜く耳を澄ますとデイヴ・ウェックルのハッピーなドラムが効いている! やはり“リード・ベースの陰に名ドラム有り”は真実である。

CHICK COREA ELEKTRIC BAND
CHICK COREA : Keyboards, Piano
FRANK GAMBALE : Guitar
ERIC MARIENTHAL : Sax
JOHN PATITUCCI : Bass
DAVE WECKL : Drums

チック・コリア・エレクトリック・バンド / トゥ・ザ・スターズ・ツアー・エディション / PORT VIEW 13

 『TO THE STARS TOUR EDITION/DISC 1』の2曲目は【PORT VIEW 1】(以下【ポート・ヴュー 1】)。


 【ポート・ヴュー 1】は,これから続く,長〜い宇宙旅行に出かけることへの「期待と不安」をチック・コリアなりに表現した,と見たがいかがなものか?
 まだ宇宙船は船出したばかりで,母なる地球への哀愁が強まってきた時にバックで流れる音だ。 ← ナンノコッチャ。

CHICK COREA ELEKTRIC BAND
CHICK COREA : Keyboards, Piano

チック・コリア・エレクトリック・バンド / トゥ・ザ・スターズ・ツアー・エディション4

TO THE STARS TOUR EDITION-1 「チック・コリア・エレクトリック・バンド」が,12年という時空間を越えて,ジャズフュージョン・ファンのもとに舞い戻って来てくれた。
 タイトルはズバリ『TO THE STARS』(以下『トゥ・ザ・スターズ』)! 「チック・コリア・エレクトリック・バンド」の新作にふさわしいタイトルである。

 確かに,キーボードチック・コリアに,ベースジョン・パティトゥッチドラムデイブ・ウェックルサックスエリック・マリエンサルギターフランク・ギャンバレと,5人のオリジナル・メンバーが全員揃った「チック・コリア・エレクトリック・バンド」の再結成は,はったりなしで“2004年最高の話題作”であった。

 う〜ん。残念ながら『トゥ・ザ・スターズ』は文字通り“最高の話題作”止まりかな?
 お〜っと,誤解がないように念押ししておくが,演奏の“質”そのものは最高! 「よくもまあ」という表現がピッタリの,最高のテクニック,ユニゾン,アドリブを披露してくれている。またまた腕を上げている。演奏に対する不満など“微塵”も感じさせない。

 では何が不満なのかと言うと『トゥ・ザ・スターズ』の“完全なるコンセプト・アルバム”仕立てが鼻につく。
 リーダーであるチック・コリアでさえ黒子に徹した「主役不在・オール脇役」風なBGMに聴こえてならないからである。

 チック・コリアのSF作家=L・ロン・ハバード好きは余りにも有名であるが,とりわけ『トゥ・ザ・スターズ』の一番の愛読者を公言している。
 そんなチック・コリアが“話題をかっさらうに決まっている”「チック・コリア・エレクトリック・バンド」再結成のタイミングで(ついにと言うか,念願のと言うか)『トゥ・ザ・スターズ』を勝手に?サントラ化してきたのである。
 『トゥ・ザ・スターズ』のライナーノーツには,ご丁寧にもチック・コリア自身による,本家『トゥ・ザ・スターズ』の解説書まで付いているではないか! この“熱の入れ具合”はただ事ではない。

 このような前置き抜きに一聴しても,すぐにそれと分かる抽象的な音! アルバム全般にチック・コリアのSFイメージが散りばめられている。
 間奏にあたるであろう【PORT VIEW】がその最たる特徴となっている。そういう意味では“狙い通りの大成功”なのであろう。ハマル人にはハマル! そんなアルバムなのだと思う。

 もし読者の皆さんの中に,SF好き,あるいはチック・コリア大好き人間がいるのなら,その人にとって『トゥ・ザ・スターズ』はかなりの“お奨め”なのかもしれない。
 しかしチック・コリアを聴くのが目的ではない,単なる“ジャズフュージョン好き”には…?である。

 ただし「エレクトリック・バンド」の“至福の音”が聴ける! この事実をどう評価するかが肝であろうが,個人的には大満足!
 チック・コリアさまさま。新生「エレクトリック・バンド」の再結成を・あ・り・が・と・う!

 なお『トゥ・ザ・スターズ』には,ボーナスCD付きの『TO THE STARS TOUR EDITION』(以下『トゥ・ザ・スターズ・ツアー・エディション』)なる「後出し」新バージョンが存在する。カモである管理人は即買い直し〜!

 『ツアー・エディション』とは『トゥ・ザ・スターズ』本編のレコーディング前に行なわれた“指慣らし”目的のスタジオ・ライブ音源。
 選ばれた4曲は過去の「エレクトリック・バンド」2曲+「エレクトリック・バンド」2曲からのレパートリーだから『トゥ・ザ・スターズ』のフォロー・ツアーを見据えた“軽めのセッション”気分なのだろうが,これが凄い&もの凄い!

TO THE STARS TOUR EDITION-2 顔合わせで音合わせ的な長尺の演奏は,たっぷりと時間を取り分けた全メンバーのソロ廻しに“悶絶”。リアレンジされた【GOT A MATCH?】と【ETERNAL CHILD】が「エレクトリック・バンド」史上最高の大名演
 【CTA】と【BLUE MILES】に至っては「エレクトリック・バンド」名義のオリジナルとは似ても似つかぬ“豹変ぶり”!

 なんたってエリック・マリエンサルからして大変身してしまっている。ジョン・パティトゥッチデイブ・ウェックルが加入すると,こんな感じに変わるんだ〜。フランク・ギャンバレが大物になって帰ってきたんだな〜。

 管理人の結論。『トゥ・ザ・スターズ・ツアー・エディション批評

 『トゥ・ザ・スターズ』本編は,チック・コリア・ファンのための“コレクターズ・アイテム”であって往年の「エレクトリック・バンド」ファンが買うべきアルバムではない。

 「エレクトリック・バンド」ファンが購入すべきは,断然『ツアー・エディション』!
 管理人は専らボーナスCDばかりを愛聴しています。『ツアー・エディション』は,往年の「エレクトリック・バンド」ファンにとっても「涙もの」の“コレクターズ・アイテム”ですよっ。

  DISC 1
  01. CHECK BLAST
  02. Port View 1
  03. MISTRESS LUCK - A PORTRAIT
  04. MISTRESS LUCK - THE PARTY
  05. Port View 2
  06. JOHNNY'S LANDING
  07. Port View 3
  08. ALAN CORDAY
  09. Port View 4
  10. HOUND OF HEAVEN
  11. Port View 5
  12. THE LONG PASSAGE
  13. Port View 6
  14. JOCELYN - THE COMMANDER
  15. Port View 7
  16. CAPTAIN JOCELYN - A TRIBUTE BY HIS CREW
  17. CAPTAIN JOCELYN - THE PIANIST

  DISC 2 (Bonus CD)
  01. CTA
  02. ETERNAL CHILD
  03. GOT A MATCH?
  04. BLUE MILES

(ストレッチ・レコード/STRETCH RECORDS 2005年発売/UCCJ-9073)
(ライナーノーツ/チック・コリア,小川隆夫)
(CD2枚組)

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セロニアス・モンク

枯葉枯葉
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ウィントン・マルサリスの肖像ウイントン・マルサリスの肖像
ウイントン・マルサリス

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Blu-spec CD ジャコ・パストリアスの肖像ジャコ・パストリアスの肖像
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FIRST MEETINGファースト・ミーティング
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