アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

CD批評:塩谷 哲

塩谷 哲 / SALT5

SALT-1 塩谷哲の音楽はとにかく“スケールのデカイ”ワールドワイドなボーダレス。どうしたらこんなに“間口の広い”ジャズ・ピアノを奏でられるものなのか?
 満足のいく答えは塩谷哲=全方向型の天才=「オール・ジャンルOKな作曲家,編曲家,ピアニストなプロデュサー」となるのだろう。

 『SALT』は,塩谷哲が,世界のサルサ・バンド「オルケスタ・デ・ラ・ルス」在籍時のソロ・デビューCD
 要はデ・ラ・ルス・メンバーであるNORAカルロス菅野に加え“超スペシャル”なパキート・デリヴェラまでもが参加したラテンジャズCDにして,出る音出る音『SALT』の全てが塩谷哲の内部発信!

 デビューCDにして“驚愕のセルフ・プロデュース”作(ついでに全米発売作。ついでにキャリア随一の超大作)。キャッチーさを感じさせない大人のメロディをセンス抜群のアドリブで見事にまとめ上げてしまう視界の広さと技術の高さ。
 う〜ん。聴き込めば聴き込む程に“塩谷哲の凄さ”を実感する。

SALT-2 【THE PALE MOON】は後世に残る名曲だと思う。【LIFE WITH YOU】はNHK大河ドラマにすぐ使える。

 ライナーノーツNORAがこう語っている。「ソルトはねぇ こころの音を弾いてくれる真のミュージシャンなのよ」。同感である。読者の皆さんも?

  01. Melting Pot Harmony
  02. Liberty City
  03. The Pale Moon
  04. Fruitful Days
  05. People Make The World Go Round
  06. Echoes Of The Colors
  07. Street Full Of Lights
  08. Life With You
  09. Keep Smiling!

(BMGビクター/BMG VICTOR 1993年発売/BVCR-615)
(ライナーノーツ/NORA)

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塩谷 哲 / ソロ・ピアノ=ソロ・ソルト5

SOLO PIANO=SOLO SALT-1 正に“機が熟した”ということだろう。“ジャズ・ピアニスト塩谷哲ソロ・デビューから16周年,通算11枚目のオリジナルにして初のソロ・ピアノCD。それが『SOLO PIANO=SOLO SALT』(以下『ソロ・ピアノ=ソロ・ソルト』)である。

 この16年,塩谷哲は,ジャズ,ラテン,J−POPを“同時進行でワープする”ピアニスト兼コンポーザー兼アレンジャー兼プロデューサーとして,SALT BANDSALT & SUGARデュエットトリオの多様なフォーマットで八面六臂で活動してきた。
 そんな“オールラウンダー”塩谷哲の意外にも初めてとなるソロ・ピアノCDの録音に,管理人は“これまでのキャリアの集大成”の意味合いが込められているように感じた。
 そう。『ソロ・ピアノ=ソロ・ソルト』というCDタイトルは,つまり“ピアノが自分自身。ピアノは分身であり運命共同体”という塩谷哲の「ザ・ピアニスト」宣言なのであろう。

 『ソロ・ピアノ=ソロ・ソルト』で“丸裸の自分を露わにする”ための“踏ん切りをつける”までに16年もの時間が必要だった。常に感じてきた不安を打ち砕く自信と確信。今だったらピアノ一台で勝負できる。今だったらピアノと自然体で対峙できる。16年目の勇気。正に“機が熟した”のだ。

 そう。『ソロ・ピアノ=ソロ・ソルト』の真髄は,塩谷哲の完全ソロCDにして,塩谷哲ピアノによる“二人三脚”のデュエットCD
 SALTピアノが一体となって疾走する。これは例えるなら塩谷哲の乗馬(乗ピアノ?)である。操る&操られるを越えた人馬一体ならぬ人鍵一体の妙。SALTピアノを弾いているのか,ピアノSALTが弾かされているのか…。
 もはやピアノSALTにとって体の一部。そう思える瞬間がある。『ソロ・ピアノ=ソロ・ソルト』でのSALTの演奏に“リアリティ”を感じてしまう。

 尤も,SALTソロ・ピアノは,大抵ソロ・アルバムに1曲程度は入っていた。特段物珍しいわけではない。
 ただしソロ・アルバムで即興のごとく披露してきたソロ・ピアノと,アルバム1枚丸ごとソロ・ピアノとでは次元が違う。これまでは「アルバムの目線を変える,流れを変える,アクセントとしてのソロ・ピアノ」で良かったが『ソロ・ピアノ=ソロ・ソルト』では,もうその手法は使えない。

 そこでSALTが考えたアプローチは“ピアノ三昧”! ピアノ一台で聴く人を魅了するために,SALTの持つテクニックやハーモニー感覚の全てを投入のフル活用。ピアノの多彩な音色と幅広い表現力の“てんこ盛り”。ピアノ好きとしては,一音一音に多彩な表情が付けられているゆえ,音を耳で追いかけているだけで楽しくなってしまう。これぞ「SALTピアニズム」である。

 管理人にとってのソロ・ピアノとはキース・ジャレットによる“完全即興”のイメージが強い。しかし塩谷哲が選択したのは“譜面に落として練り込まれた”ソロ・ピアノ・スタイルである。
 インプロヴィゼーションも得意なはずの塩谷哲が,更に得意にしている大胆さと繊細さが共存するアレンジ能力の大爆発。SALTの表現したい,ピアノ・タッチに音色にニュアンスにハーモニー。結果,凄腕ピアニストとしての“表の”SALTとコンポーザー兼アレンジャー兼プロデューサーとしての“裏の”SALTがバランス良く顔を出している。

 ピアノ一台って実に奥深いフォーマット! そのピアニストの実力を“剥き出し”にしてしまう。管理人が『ソロ・ピアノ=ソロ・ソルト』で新発見した“剥き出し”のSALTの魅力にリズム感がある。
 元々,サルサのデ・ラ・ルス出身なのだからリズム感がいいのは当然なのだが『ソロ・ピアノ=ソロ・ソルト』を聴いて初めて感じたリズム感の良さ。柔らかなピアノ・タッチを支えているのがパーカッシブなリズムであった。このSALTの足を踏み鳴らす瞬間の音&音! やっぱりピアノは打楽器なんだよなぁ。

 『ソロ・ピアノ=ソロ・ソルト』の聴き所は,7トラックで合計1曲のオリジナル【組曲「工場長の小さな憂鬱」】。
 「前世はパリジャン」と自称するSALTのヨーロッパ指向が良く出た組曲で,フランス近代のピアノ曲のようなクラシカルでエスプリ溢れる佇まい。表情豊かで起伏に富んだ楽曲群は,あたかも1曲の中に四季を織り交ぜた印象派の絵のように,カラフルで美しい音風景が広がっていく。
 IIの【森に棲む妖精たちのラベル貼り】なんかは,もろラヴェルのような曲想である。

SOLO PIANO=SOLO SALT-2 『ソロ・ピアノ=ソロ・ソルト』のハイライトは,組曲の流れで登場する【プレシャスネス】。組曲の一部としても聴ける【プレシャスネス】の高貴なメロディ・ライン。静かで素朴で,音楽の神へと捧げられた賛歌のような&祈りのような美メロが心の琴線に触れてくる。
 【プレシャスネス】の持つシンプルなメロディ・ラインを,いかに情感を込め,しかもベタつかず,粘りすぎず,綺麗に弾けるかが,ジャズメンの腕の見せ所(聴かせ所)。この表現力はジャズメンにとってテクニック以上に“音楽への情熱”が重要になるのではなかろうか?

 楽器=その人の音=人間性 → 『ソロ・ピアノ=ソロ・ソルト』=ピアノ塩谷哲
 『ソロ・ピアノ=ソロ・ソルト』は“ジャズ・ピアニスト塩谷哲の自己紹介であり“ピアノが語る”塩谷哲の他己紹介でもある。
 読者の皆さんにも聞こえませんか? 【ドント・ノウ・ホワイ】【ウォーク・アローン】【ミスター・マドンナ】でのピアノの(塩谷哲の)息遣いが…。

  01. Three Views Of A Secret
  02. Don't Know Why
  03. Two Menuets
  04. Walk Alone
  05. Mr. Madonna
  06. Invention I
  07. I 純白の野心(組曲「工場長の小さな憂鬱」)
  08. II 森に棲む妖精たちのラベル貼り(組曲「工場長の小さな
     憂鬱」)

  09. III かそけきものたちの声(組曲「工場長の小さな憂鬱」)
  10. IV 慈愛(組曲「工場長の小さな憂鬱」)
  11. V うつつと夢(組曲「工場長の小さな憂鬱」)
  12. VI ニンフの囁き(組曲「工場長の小さな憂鬱」)
  13. VII 彩られる明日へ(組曲「工場長の小さな憂鬱」)
  14. Preciousness

(ビクター/JVC 2009年発売/VICJ-61590)

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塩谷 哲 トリオ / アーセオリー4

EARTHEORY-1 『WHEELIN’ AHEAD!』のツアーを最後に吉野弘志を擁した「第一次・塩谷哲トリオ」をリセットし,新ベーシスト井上陽介を迎え入れた「第二次・塩谷哲トリオ」の『EARTHEORY』(以下『アーセオリー』)。

 いい感じに“新生”塩谷哲トリオが仕上がっている。塩谷哲の目指す方向性が,新しくトリオを組むメンバー3人の共通意識として明確になった,ということだろう。
 SALTの無駄な力の抜けた“気負いのなさ”に「第二次・塩谷哲トリオ」への絶対の自信を感じる。

 そう。『アーセオリー』の特徴は“ナチュラル・グルーヴ”。
 井上陽介新加入の理由は,陰のバンマス=山木秀夫ドラミングとの相性の良さ。ジャズ的な重い音色を伴った井上陽介山木秀夫の躍動的な動くリズムがアバンギャルド。

 “新生”塩谷哲トリオの真骨頂が,後にakikoの【LADIES LOVE MERCEDES】へとつながる【LADIES IN MERCEDES】。ポップスの美しさと楽しさをジャズ・ピアノで歌い上げた名演である。
 小曽根真とのデュエットの再演となった【SPANISH WALTZ】は今回のトリオ・ヴァージョンの“違う味付け”が面白い。

EARTHEORY-2 『アーセオリー』のバラードと来れば,オープナーの【MORNING BLISS】であろうが,管理人には【TO BE STARS】。「キラキラ輝く」SALTジャズ・ピアノが正しく「星の輝き」のようである。
 管理人は名ベーシストとしてだけではなく名コンポーザーとしての井上陽介のロマンチシズムにも入れ込んでいる。

  01. Morning Bliss
  02. Eartheory
  03. In A Driving Rain
  04. So Danco Samba (Jazz Samba)
  05. Deep Affection
  06. Beat-n-Feat
  07. Ladies In Mercedes
  08. Hard Cookie Dance
  09. Spanish Waltz
  10. To Be Stars

(ビクター/JVC 2007年発売/VICJ-61444)

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塩谷 哲 / グイードの手5

HANDS OF GUIDO-1 『グイードの手』は,塩谷哲5年ぶりのソロ名義作。
 コンセプトは塩谷哲が切り開く“フューチャー・ジャズ”。塩谷哲との共同プロデュースにクラブ系の田中義人を迎え,ヒップホップ,ラテンなど多彩な音楽要素を取り入れたポップ・センスあふれるサウンドとSALTピアノとのアート感覚が融合している。

 正直,こんな感じの塩谷哲が聴けるとは夢にも思わなかった。田中義人に“フューチャー・ピアニスト塩谷哲が発掘されている。新鮮味に溢れたピアノの響きが充満している。SALTピアノ田中義人ギターのディストーションとシンクロする瞬間の快感がたまらない。

 『グイードの手』は,打ち込みを多用した“フューチャー・ジャズ”狙いなのに,ベースだけはエレキではなく全編ウッド・ベース。ただし“そんじょそこらの”ウッド・ベースとは思うなかれ。
 平石カツミの倍音ウッドが曲者。エレキ並みの生命力。この平石カツミの倍音ウッドが『グイードの手』で感じる,最先端のクラブ・サウンドのはずなのにアコーステイックの香りが残る“ミステリアスな響き”の秘密。

 【INTRODUCTION】→【ACCORDING TO LA METEO】での「静から動」へ振れ具合が最高にエキサイティングで悶えてしまう。【MR.TAP−MAN】のファンキーグルーヴライブに悶えてしまう。【YESTERDAY】の斬新過ぎる名アレンジに悶えてしまう。
 …と思えばラスト4曲のスロー・ナンバーで感じる,何とも柔らかな肌触り。心の底から和んでしまう。

HANDS OF GUIDO-2 ズバリ,管理人にとっての『グイードの手』とはSALTの“萌え系”である。 ← “萌え”の印象は当時の流行語とのオーヴァーラップのせい?

  01. Introduction
  02. According to la meteo
  03. Doodle I
  04. Mr. Tap-man
  05. Yesterday
  06. Evening Haze
  07. Doodle II
  08. Skinny-Dipper
  09. Parkside Street
  10. Azami
  11. Enharmonie
  12. 4→0→10→5
  13. Calm

(ビクター/JVC 2006年発売/VICJ-61347)

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塩谷 哲 トリオ / WHEELIN' AHEAD!4

WHEELIN' AHEAD!-1 “ジャズ・ピアニスト塩谷哲アコースティック・ジャズ・トリオの第2作=『WHEELIN’ AHEAD!』。
 『WHEEL』=車輪。『ING+AHEAD!』=止まることなく前方へ回転の意。そう。『WHEELIN’ AHEAD!』は,前人未到のピアノ・トリオの世界を目指し,3人が乗り込んだ塩谷哲トリオ名義のスポーツカー。

 大排気量の山木秀夫ドラムをエンジンに,緩急自在の吉野弘志ベースをアクセルとして,テクニシャン・ドライバーのSALTピアノがハンドルを握っていく。いい感じに塩谷哲トリオが仕上がっている。

 ありきたりのジャズにはない3人の関係性から生まれる音世界は塩谷哲トリオならではの華やかさ。時にロック,時にクラシカルへと変貌するのは“司令塔”の山木秀夫ドラミング
 そう。塩谷哲トリオは,塩谷哲が“初めて他人に身を委ねた”ユニット。ゆえにプレイヤーとしての比重がいつになく高く“ジャズ・ピアニスト塩谷哲の“しなやかな”ピアノ・タッチが堪能できる。

 ただしその悪影響なのか,名作曲家としてのキラー・チューンは【FUN EXPRESS】1曲のみ。名編曲家としての顔も【TEEN TOWN】1曲のみ。

WHEELIN' AHEAD!-2 管理人の結論=『WHEELIN’ AHEAD!』は,超一流のジャズメン3人のぶつかり合いと3人の高次元の融合の両立が素晴らしいのだが,見事にまんべんなくまとまった全項目オール4の演奏。
 一項目3でもいいから一項目で5が欲しかった。もっとハミダソウヨ。 

  01. What a Wonderful World
  02. Teen Town
  03. Fun Express
  04. Mingle Jingle
  05. Another Tale of a Star
  06. Mr.D.F.
  07. Nighthawk
  08. La pluie
  09. Heat of Mind
  10. Mr.D.F. (refrain)
  11. Here, There and Everywhere

(ビクター/JVC 2004年発売/VICJ-61176)

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塩谷 哲 / トリオっ!5

3!-1 “ジャズ・ピアニスト塩谷哲初のアコースティック・ジャズ・トリオ作が『3!』(以下『トリオっ!』)。

 SALTの同じピアノ・トリオでも『トリオっ!』は,続く「塩谷哲トリオ」名義の『WHEELIN’ AHEAD!』『EARTHEORY』とは骨組みが異なっている。

 『トリオっ!』は,ピアノ・トリオ・フォーマットを導入してはいるものの,そこは塩谷哲のソロ名義CD。「ソロ制作の一環としてピアノ・トリオを導入してみました〜」的な,ベーシスト吉野弘志ドラマー山木秀夫との「第一次・塩谷哲トリオ」の結成である。
 そう。名手2人を従えた“王様”としての炸裂ぶりに,ありのままの塩谷哲ピアノが顔を出している。

 『トリオっ!』でのピアノ・トリオ・フォーマットへの挑戦は【PASSAGE】で実を結んでいる。
 ん? 【PASSAGE】は『トリオっ!』全13曲中唯一のピアノ・ソロ・トラック。ピアノ・トリオへのチャレンジがSALTソロ・ピアノに影響を与えている。
 SALTピアノを“鳴らしている”。これ程奥深いピアノは以前のSALTにはなかった表情だ。覚醒である。SALTは“ジャズ・ピアニスト”として【PASSAGE】で“一皮剥けた”と思っている。

 「SALT BAND」として,そして「FOUR OF A KIND」としての成功体験を“シンプルにして究極のフォーマット”と称されるピアノ・トリオで表現してみたい。
 そう。『トリオっ!』は“ジャズ・ピアニスト塩谷哲としての胸の高鳴り=自然の欲求がモチベーションとして突き抜けている。

 塩谷哲トリオの結成。そこで悩むはベーシストドラマーの人選。塩谷哲のお眼鏡にかなったのが吉野弘志山木秀夫である。
 『トリオっ!』は,塩谷哲塩谷哲であるためのピアノ・トリオ吉野弘志山木秀夫のサポートを受けたSALTピアノは“水を得た魚”。

 スケール無限大の塩谷哲トリオの音楽を“リードする”のが吉野弘志吉野弘志の“雄大なベース・サウンド”が時にクリティカルなピアノの響きをジャズ・ピアノの音世界へと先導する。
 ソロイストとしての吉野弘志の力量が圧倒的。管理人はひそかに,塩谷哲吉野弘志ベースに“嫉妬”を覚えたのではないか,と思っている。【SPEAK OUR LANGUAGE?】【OVERJOYED】でのベース・ソロが秀逸である。

 スケール無限大の塩谷哲トリオの音楽を“後押しする”のが山木秀夫山木秀夫の“生きたドラム・サウンド”が時にクリティカルなピアノの響きをジャズ・ピアノの音世界へと引き戻す。
 ソロイストとしての山木秀夫の力量が圧倒的。管理人はひそかに,塩谷哲山木秀夫ドラムに“嫉妬”を覚えたのではないか,と思っている。【AFTERSCENT】【STORM FRONT】でのドラム・ソロが秀逸である。

3!-2 “王様のサポーター”としての吉野弘志山木秀夫名演を引き出したのが,名プロデューサーにして名アレンジャーの塩谷哲である。
 塩谷哲のオールラウンダーとしての才能が,あくまでもソロイストとしてのSALTの個性を生かす選曲と構築美として聴き分ける事ができる。
 そう。ベーシスト井上陽介を迎えて“トライアングルなユニットとしての塩谷哲トリオ”を追求した「第二次・塩谷哲トリオ」と比較して,塩谷哲ソロ名義の『トリオっ!』に面白みと愛着を感じる。

PS1 アルバム・タイトル『トリオっ!』の『っ!』の部分に塩谷哲の意気込みが表現されている!?
PS2 『トリオっ!』のCDジャケットのハイセンス。塩谷哲のマルチな才能は音楽を超えたアートなのか!?

  01. Speak Our Language?
  02. Afterscent
  03. Running an Errand
  04. Overjoyed
  05. Do You Still Care?
  06. Ruby Baby
  07. Running More Errands
  08. Storm Front
  09. Sicilienne
  10. Flying Shoes
  11. Passage
  12. Afterscent Dub-Mix
  13. Puff the Magic Dragon

(ビクター/JVC 2003年発売/VICJ-61026)

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塩谷 哲 WITH SALT BAND / LIVE! LIVE! LIVE!5

LIVE! LIVE! LIVE!-1 『LIVE! LIVE! LIVE!』は「塩谷哲 WITH SALT BAND」初のライブCDにして裏ベスト

 この演奏にこの選曲。SALTファンは,これ以上の高望みをしてはいけない。もう少し長いツアーを行なえばコンビネーションは更に進化することだろう。でも果物だって女性だっておいしいのは「熟れる直前」でしょう? これ以上成熟したところでおいしさ=面白さが失われてしまう。

 塩谷哲のソロ・レコーディング参加メンバーにしてツアー・メンバーが集まった「SALT BAND」。不定期な活動具合が「セッション以上バンド未満」な“こなれる”一歩手前のいい感じ。集合一発“せ〜の”で音出しするライブ感と同時に,どこかでオリジナルの再演を意識した譜面通りの完成度が“せめぎあっている”。
 『LIVE! LIVE! LIVE!』なライブCDは,聴きたくてもそうめったに聴けるものではありません。ジョウモノはシロモノです。

 『LIVE! LIVE! LIVE!』を最後に「SALT BAND」は解散。
 『LIVE! LIVE! LIVE!』のプレイバックで塩谷哲を襲った“強烈な満腹感”。ステージと客席が一体化した最高のパフォーマンスに,もはや「SALT BAND」に発展の余地を見い出すことができなくなったのだろう。これぞおいしさ=面白さのピーク。これぞ“天才”ジャズメン自身が認めた名演集なのである。

 塩谷哲ジャズ・ピアノが,浅野祥之ギター松原秀樹ベース沼澤尚ドラム大儀見元パーカッションの名手4人を“覚醒”させている。4人を“SALT”と同化させている。

 そう。「塩谷哲 WITH SALT BAND」は,塩谷哲が弾いたであろうメロディ・ライン&ベース・ラインを,塩谷哲以上の“SALT色”で表現してみせる。
 カラフルなフュージョンなのにジャズ特有の緊張感が同居している。イレギュラー・バンドの“手探り感”が,リハを超え,前日を超え,1STセットを超えていく。

 【あこがれのリオデジャネイロ】における後半のアドリブの大盛り上がり! 大儀見元に煽られた塩谷哲の強打が圧巻! SALTの叩きまくったピアノが打楽器! ミディアムにして,こんなSALT初めて聴いた〜。
 オリジナルでは不発だった【THAT’S THE WAY LIFE GOES】のしなやかさと【TRANS CAFE】での鬼のようなグルーヴ。この3トラックが『LIVE! LIVE! LIVE!』のハイライトであろう。

 このハイレベルな“擬似SALT”のアプローチ中に垣間見える4人の個性。一音一音のクオリティ。この「SALT BAND」の音の交歓が素晴らしい。
 浅野“ブッチャー”祥之が,松原秀樹が,沼澤尚が,大儀見元塩谷哲してみせれば,塩谷哲浅野“ブッチャー”祥之に,松原秀樹に,沼澤尚に,大儀見元になった瞬間がある。そう。真の“SALT色”とは“SALT BAND色”なのだ。

 さて,管理人の選ぶ塩谷哲のフェイバリットは『SALT II』なのだが,塩谷哲最初の1枚は,塩谷哲が一番“フュージョンしている”『LIVE! LIVE! LIVE!』をお奨めしている。

LIVE! LIVE! LIVE!-2 『SALT II』の濃厚な奥深さ。インテリ然とした緻密な計算の上に作リ上げられた複雑な構築美がたまらない。しかし『SALT II』は,塩谷哲ジャズ・ピアノが好きになって初めて広がる音世界。SALTの音楽の楽しみ方は“漆塗り”の楽しみ方に近いと思っている。見えない部分で確かに感じる手間暇かけた音造り。

 それに比べて『LIVE! LIVE! LIVE!』は,とっつきやすい。ライブゆえのその場のノリが親しみやすい。「SALT BAND」も演奏するのが楽しそうだし,観客を楽しませようとサービスしてくれている。ビール片手に盛り上がれる。
 そう。『LIVE! LIVE! LIVE!』には“フレンドリーな”塩谷哲ジャズ・ピアノが流れている。見える部分で確かに感じる手間暇かけた音造り。

 なお『LIVE! LIVE! LIVE!』の「初回生産限定盤」には「PREMIUM SINGLE」の【SHADOW OF LIGHT】【HURRY! HURRY!】の2トラックの特典付。正に「プレミアム」な演奏は本編と差し替えても見劣りなしの遜色なし。
 『LIVE! LIVE! LIVE!』を購入するなら「初回生産限定盤」を強くお奨めする。

  01. ARE WE SMOKIN' YET?
  02. SIDE BY SIDE (WE GO)
  03. MAGIC, DREAM, OR TRUE LOVE?
  04. 88+∞
  05. THE DEW OF LIFE
  06. THAT'S THE WAY LIFE GOES
  07. TRANS CAFE
  08. IN SEARCH OF YOU
  09. あこがれのリオデジャネイロ
  10. KEEP SMILING!

  Premium single
  01. SHADOW OF LIGHT
  02. HURRY! HURRY!

(ビクター/JVC 2002年発売/VICJ-61017)
★【初回生産限定盤】8cm PREMIUM SINGLE CD付 CD2枚組

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塩谷 哲 / ピアニズミックス4

PIANIZMIX-1 2度目のレコード会社移籍&初の外部プロデューサーとの共同プロデュース。『PIANIZMIX』(以下『ピアニズミックス』)は塩谷哲の変身願望の意欲作。

 『ピアニズミックス』とは『PIANIZM(ピアニズム,ピアノ演奏技術,ピアノのための編曲)』+『MIX(混合する,交配する,結びつける)』の意。そう。目的は「フィーチャリングピアニスト塩谷哲」。

 敢えてトータル・ミュージシャンとして全体を見渡す眼力を閉じ,一人のピアニストとしてピアノと真摯に向かい合いピアノだけにフォーカスを合わせるプレイヤーとしての塩谷哲を前面に押し出している。

 森俊之プロデュースの効果は大きいと思う。第三者目線で作られた塩谷哲の音楽性が新鮮に響いている。眠っていた“ポップでヒップな”塩谷哲の魅力が溢れ出している。

 『ピアニズミックス』は,流行のクラブ系でありテクノでありジャズ・ピアノのラグタイムであり宇宙への発射である。ただし少々サイケでケバイのがヤバイ。

PIANIZMIX-2 「SALT BAND」での危険なテンション充満のトンガッタ演奏が延々続き,ラストの2曲【TENDER EYES】【KEEP SMILING】で解放される。ここが快感。

  01. Trans Cafe
  02. Cab Talk
  03. Avenue 21
  04. GENOM
  05. Strolling Bob
  06. Shadow of Light
  07. Aero-Train
  08. Cat Dance
  09. Tender Eyes
  10. Keep Smiling

(ビクター/JVC 2001年発売/VICJ-60739)

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塩谷 哲 / WISHING WELL5

WISHING WELL-1 『88+∞(EIGHTY−EIGHT PLUS INFINITY)』の発売から4ヶ月,早くも塩谷哲の新作『WISHING WELL』が届けられた。
 ついに来た。『WISHING WELL』は,SALTファン待望のバラードCDである。

 “天才”塩谷哲の描くバラードの音世界。『WISHING WELL』の情景は「冬の夜」であった。凛とした無音の世界に静かで柔らかい滋養の音がしんしんと降り注ぐ。手の平に落ちては消え去る粉雪がいつの間にか地表へ,そして心へと積もっていく。
 このメロディ,このハーモニー,ドラマティックなストリングス塩谷哲の『グイードの手』が世界中の教会の鐘を打ち鳴らしながら響き渡る。涙がこぼれそうになる。いや,幾度も涙がこぼれ落ちてしまった。

 塩谷哲は稀代のオールラウンダーである。ハードにもソフトにも,最新にも古典にも,ジャズフュージョンにもラテンにも…。
 そして『WISHING WELL』で顔を見せるはクラシックである。ウィズ・ストリングスである。イメージしたのは小曽根真の『WALK ALONE』であった。
 当時は“畑違いの”小曽根真を連想したのは『DUET』で現実となった「予知夢」だったとして,塩谷哲は将来,クラシックの大曲へも傾倒するであろう(こちらはまだ実現していない「予知夢」として記しておく)。

 基本,塩谷哲の書く楽曲はインテリジェンス。聴き込む時間と集中力を要求する。しかし,一度紐解き,曲の構成を掴んでしまえば一気に分かりやすくなる。
 SALT本人は気付いていないかもしれないが,管理人は「自称・前世はパリジャン」なSALTは,クラシックの現代音楽や「組曲」も書ける長編作家だと思っている。

 例えば【WISHING WELL】。荘厳な音,神秘的な音,重厚なストリングスであるが,いたって透明な音である。湖面を揺らめく水の音である。透明な水の粒がメロディになって浮き上がって消えていく。しかし水は指では掬えない。指の間からこぼれ落ちた水が連なる波の輪となり向こう岸まで広がっていく。

 例えば【PRAY】。【PRAY】は,聴く度に毎回違うドラマを見せてくれる。切ない思い。クライマックス。ある時はハッピー・エンド。またある時はやりきれない思い。ストリングスの盛り上がりと連動して,感動が心に突き刺さる。真に美しいものを見た時に覚える痛みが伴う。

 そう。塩谷哲バラードは,ピアノで情景を,ピアノで物語を紡いでいく。甘いメロディがオーケストラな響きを有している。クラシック調の展開に懐かしさを感じるのはなぜだろう?

WISHING WELL-2 『WISHING WELL』のハイライトは,イヴァン・リンスの【SETEMBRO(BRAZILIAN WEDDING SONG)】。
 ピアノパーカッションによる塩谷哲の一人多重録音のハイセンスは,越えることのできないオリジナルを越えた数少ない大名演。世界的名曲の“シンプルすぎる”カヴァーにSALTの“天才”ぶりが遺憾なく発揮されていると思う。

 それにしても,アグレッシブな「SALT BAND」の『88+∞(EIGHTY−EIGHT PLUS INFINITY)』とウィズ・ストリングスバラードの『WISHING WELL』とのギャップの大きさ。
 完全なる別物を同時進行的に制作した塩谷哲の力量と切替の早さに舌を巻く。

 “天才”塩谷哲の引き出しの大きさ,その引き出しの1つ1つの底の深みに,かつてキース・ジャレットが,アメリカン・カルテットヨーロピアン・カルテットソロ・コンサート,クラシックの4本同時進行で走り抜けた姿を想起させられる。

  01. WISHING WELL
  02. THE DEW OF LIFE
  03. ENGLISHMAN IN NEW YORK
  04. SETEMBRO (BRAZILIAN WEDDING SONG)
  05. NORWEGIAN WOOD
  06. WISHING WELL ---RAP---
  07. BELLA NOTTE (PERFORMED BY SALT & SUGAR)
  08. PRAY
  09. 星の夜
  10. WISHING WELL ---RAP---

(ファンハウス/FUN HOUSE 1998年発売/FHCF-2446)

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塩谷 哲 / 88+∞(EIGHTY-EIGHT PLUS INFINITY)5

88+∞(EIGHTY-EIGHT PLUS INFINITY)-1 『88+∞(EIGHTY−EIGHT PLUS INFINITY)』の『88(EIGHTY−EIGHT)』とはピアノの鍵盤の数。そこへ『+∞(PLUS INFINITY)』。
 そう。『88+∞(EIGHTY−EIGHT PLUS INFINITY)』というタイトルは「一つ一つの鍵盤だけでは表わせないものも表現していく」という塩谷哲の意気込みの表われ。

 鉄壁に仕上がった「SALT BAND」を軸に,敢えて88の鍵盤だけでどこまで表現できるかにチャレンジしている。積極的に塩谷哲自身で動いている。
 結果,どうしてもピアノの音が耳に飛び込んでくる。

 その時感じた“作曲家”塩谷哲の物凄さ。塩谷哲の自虐ネタの1つに「東京芸大作曲科を優秀な成績で中退」というものがあるが,芸大で作曲を勉強したにふさわしく,塩谷哲の作る楽曲の完成度は半端ない。
 聴いたこともない難解なコードをガンガンぶつけてくるのだが,それらが全て音楽的に調和している。気軽に口ずさめるものは少ないはずなのに,自然と歌える構成となっているのが素晴らしい。

88+∞(EIGHTY-EIGHT PLUS INFINITY)-2 これが塩谷哲の代表曲“軽快なラテン・フュージョン”【あこがれのリオデジャネイロ】の誕生秘話?
 【MAGIC,DREAM,OR TRUE LOVE】【88+∞(EIGHTY−EIGHT PLUS INFINITY)】もお忘れなく。 

  01. SALT PEANUTS, Reborn -album peanuts-
  02. Watch Your Step!
  03. Magic, dream, or true love?
  04. 88+∞ (Intermezzo)
  05. あこがれのリオデジャネイロ
  06. Home-bound Train
  07. A Man in Paris (Intermezzo)
  08. Scent of Rain
  09. That's the Way Life Goes
  10. A Tree's Dream

(ファンハウス/FUN HOUSE 1998年発売/FHCF-2429)

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塩谷 哲 / SALT III5

SAIL III-1 「オルケスタ・デ・ラ・ルス」のピアニストとして語られることの多かった塩谷哲が“ジャズ・ピアニスト”として認知されるようになったのは『SALT III』からではなかろうか?
 『SALT III』で“天才”塩谷哲がついに独立。「SALT BAND」を結成しソロ活動を開始する。

 管理人も実は『SALT III』で“ジャズ・ピアニスト塩谷哲を認知した。きっかけは,起床〜通勤電車で,柴田玲目当てで聴いていた?TOKYO−FM「立花裕人のMORNING FREEWAY」。その番組のBGMとして毎朝流れる【HAPPY−GO−LUCKY】が,裏番組=BayFM「TOKYO BAY MORNING」のオープニングで流れるMALTAの【SEA WIND】と同様,その曲を聴かなければ1日のリズムが狂ってしまうほどのお気に入りに。

 【HAPPY−GO−LUCKY】。いや〜,誰の何という曲なのか調べに調べた。今のようにネットが普及しているわけではない。CDショップの店頭や音楽雑誌を頼りにスムーズ・ジャズを中心に…。海外ジャズメンを中心に…。

 そうして見つけた塩谷哲! そうして見つけた『SALT III』!
 【HAPPY−GO−LUCKY】も聴いたが,次第に【HAPPY−GO−LUCKY】“そっちのけ”で【SIDE BY SIDE】【BRAZILIAN RHYME】【ARE WE SMOKIN’ YET?】にハマッテしまった。

 塩谷哲は素ん晴らしいメロディ・メーカーである。
 【SIDE BY SIDE】の,きっちり出来上がっているにも関わらず心から歌い上げるような自然体が“天才作曲家”の証し! 好きだ〜。

 塩谷哲は素ん晴らしいアレンジャーである。
 EW&Fの大名曲【BRAZILIAN RHYME】を,最新グルーヴ・チューンに持っていく。自然と腰にくるのが“天才編曲家”の証し! カッコイイ〜。

 塩谷哲は素ん晴らしいジャズ・ピアニストである。
 【ARE WE SMOKIN’ YET?】での塩谷哲ジャズ・ピアノが「SALT BAND」=浅野“ブッチャー”祥之松原秀樹沼澤尚J&B大儀見元をリードする。ハイ・テクニックをさらりと交えたアドリブが“天才ジャズ・ピアニスト”の証し! SALT〜。

 塩谷哲自身も“有り余る才能”をどう上手にまとめあげるかにチャレンジした『SALT』三部作。バラエティに富んだノン・ジャンルの楽曲が見事にちゃんぽんされているのがSALT流である。
 そうして完成された『SALT III』の11曲が1枚のCDにブレンドされたら,もうこれはフュージョンとしか呼べそうにない不思議な統一感に目を丸くする。

SAIL III-2 『SALT III』は『SALT』三部作の中で,一番自由なのに一番隙がない。すっきりしたごちゃごちゃ感なのにピアノが主役としてきちんと前に出ている。
 『SALT III』で“SALT塩谷哲の個性が確立されたと思う。

 管理人にとって『SALT』三部作を『SALT III』から聴けたのは幸運であった。やっぱり【HAPPY−GO−LUCKY】だった。
 なぜって? 理由は「スター・ウォーズ」と同じである。先に大人として成長した姿を見せておいて,エピソードの新シリーズで遡る,幼少時代の奮闘記。
 『SALT III』で“スーパー・スター”となった塩谷哲の,爆発的才能を堪能できる『SALT II』と『SALT』。楽しみは後にとっておくものだ。

  01. JACK-IN-THE-BOX
  02. BRAZILIAN RHYME [Album Mix]
  03. HAPPY-GO-LUCKY
  04. ARE WE SMOKIN' YET?
  05. SIDE BY SIDE (WE GO)
  06. HURRY! HURRY!
  07. LOS TOREROS
  08. FOREST
  09. CHASE FOR TRUTH
  10. BOLERO
  11. A LITTLE LULLABY

(ファンハウス/FUN HOUSE 1997年発売/FHCF-2394)

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塩谷 哲 / SALT II5

SALT -1 塩谷哲は,やりたいことが山ほどたまっている,に違いない。『SALT 』を聴いてそう感じる。

 超カッコイイ【SHUFFLIN’ CITY】はラス・フリーマン系。アコギな【ON A DAY LIKE THIS】はデヴィッド・ベノア系。リズミカルな【SHE KNOCKS ME OUT】はジョー・サンプル系とスタートの3曲からしてスムーズ・ジャズCDと思えた。

 しかし続く3曲,トゥーツ・シールマンスの【FOR MY LADY】でのソロSALT & SUGARの【LET LOVE LEAD ME】のデュオ。混沌の美しさ=表現不能の大名演REFLECTIONS】のイメージが強烈で頭を整理できなくなる。“塩谷哲の凄さ”に思考が停止する。

 そして残すラスト4曲は『SALT』路線の延長で凝ったアレンジの大作続き。塩谷哲としては,自分の内に溜まったものを(全体の構成を考えずに)アウトプットしただけだろうが,1曲1曲のクオリティが恐ろしく高いのでトラック別に様々な世界に誘われてしまう。小難しいが難解ではない。もう全てを口ずさめるようになった。でもどうにも何回聴いても消化不良の感アリアリ。

SALT -2 ズバリ『SALT 』の本質は,完成と発展,安定とチャレンジ,難解とポップの“コンフュージョン”である。管理人自慢のコレクション中,指折りの大・大・愛聴盤である。

  01. SHUFFLIN' CITY
  02. ON A DAY LIKE THIS
  03. SHE KNOCKS ME OUT
  04. FOR MY LADY
  05. LET LOVE LEAD ME
  06. REFLECTIONS
  07. IN SEARCH OF YOU
  08. 凪 (NA-GI)
  09. TOGETHER AGAIN
  10. EARTH BEAT 〜 大地の鼓動

(BMGビクター/BMG VICTOR 1995年発売/BVCR-725)

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塩谷 哲 & 小曽根 真 / デュエット / HOME5

 『DUET WITH MAKOTO OZONE』の5曲目は【HOME − SATORU SHIONOYA SOLO】。


 塩谷哲が選んだ“小曽根真の一曲”は【ホーム】。仮にタイトルを知らずにこのトラックを聴いたとしても,自然と“家族団らん”の映像が浮かび上がってくるような“心の琴線”に触れるメロディ。【ホーム】は真に名曲である。

 塩谷哲ソロ・ピアノで奏でられる【ホーム】は,優しさで満ちている。こぼれんばかりの涙を溜めて自室へ一直線に帰宅。涙を拭き取った跡がありありの顔を見て,何も聞かずに,ただ抱きしめてくれる。そんな家族。6人家族。そこが【ホーム】。自分の帰る場所がある。

 小曽根真の演奏以上に塩谷哲ピアノにやすらぎを感じる。ゆったりと時間を掛けてサビへと向かう塩谷哲ピアノの音色が心の奥底に染み渡る。リリカルでセンチメンタルなアドリブがいい。
 私生活では一度【ホーム】作りに失敗したソルトも,今やお父さんである。小曽根真のスイート・ホーム → ソルト待望のスイート・ホーム → 独身の管理人にはいつスイート・ホームが訪れるのでしょうか?

SATORU SHIONOYA : Piano

塩谷 哲 & 小曽根 真 / デュエット4

DUET WITH MAKOTO OZONE-1 『DUET WITH MAKOTO OZONE』(以下『デュエット』)は,J−ジャズ界を代表する2人のピアニストソルト塩谷哲と“お兄”小曽根真によるピアノ・デュオ名盤である。

 ラテン〜ポップス〜クラシックなどを背景に“ジャズも演っている”塩谷哲と“ジャズ一筋”の小曽根真。そう。5歳の年齢差以上に2人の経歴には大きな開きがある。
 塩谷哲小曽根真は,ある意味,ジャズ・ファンが連想する“対極”の代表格であろう。熱心なジャズ・ファンであればある程,2人の立ち位置は“離れ離れで”ジャズ・ピアノの“対岸”で暮らしているかのようなイメージを持っていると思う。およそ世の終わりが到来しても共演しそうになかった『デュエット』のリリースに正直,戸惑いを覚えた。

 しかし『デュエット』の最初の一音を聴いて不安が完全に吹き飛んだ! この絶品の相性は何? 2人は天才という“共通項”で遠い昔から結ばれていたに違いない。そうとしか思えない見事な調和ぶりである。

 『デュエット』には,ピアノ・デュオに期待される連弾のくだりはない。
 予想通り?塩谷哲小曽根真のフレーズは全くシンクロしていない。それぞれが自分のスタイルを最後まで貫き通している。

 しかしそれでも音楽が混沌としていないのは,2人の天才が操る“オーケストレーション”に秘密がある。要はピアノの持つ特性を最大限に活用しているのだ。そう。塩谷哲小曽根真は,ピアノの持つ“最大音域の自由”という共通言語で会話している。
 例えるならこうだ。フランス人とブラジル人が英語を使って会話をする。話題が共通の趣味に関することなので,母国語の違いなど問題ではない。言葉の壁にはボディーランゲージがある。

 塩谷哲小曽根真の『デュエット』は,音楽の交歓である。音楽さえあれば2人の間に壁など存在しなくなる。いや,2人が“長年の連れ”に聴こえてくる。
 アプローチは異なれど,塩谷哲小曽根真の間には,共通する“音のモチーフ”が確実に存在している。

 『デュエット』で,塩谷哲小曽根真は“ピアノの義兄弟”の契り?を交わしている。
 “お兄”の小曽根ソルトを上手にリードすれば,すぐにソルトがタッグを組もうと歩み寄る。当の2人はどこまで登り詰められるかを,遊びのごとく感じ,楽しんでいる。一方がアドリブに走った時の,もう一方の伴奏がスリリング。アンサンブルにも様々なパターンが織り込まれている。

 切磋琢磨の繰り返しにより,互いのジャズ・ピアノ度が高まっている。そして時に2台のピアノが1台のピアノに“合体”する時の美しさ…。聴いてこれ程“面白い”ピアノ・デュオはそう多くない。これぞ“プロ中のプロの音遊び”であろう。

 『デュエット』のハイライトは,2人の息詰まるバトルではなく,相手の曲を自分のソロで演奏したトラックである。心からリスペクトする互いの名曲を,作曲した本人の目の前で演奏するのが,もう楽しくてしょうがない様子が音の表情に表われている。
 これらのトラックを聴くにつれ,普段はピアニストとしてもコンポーザーとしても良きライバルである2人が,互いにジャズメンとして最大の敬意を抱いていることが良く分かる。素晴らしい。

 なお,今回の『デュエット』は「塩谷哲名義のビクター盤」と「小曽根真名義のユニバーサル盤」の変則2枚同時リリース。レコード会社の壁を越えた“夢の共同プロジェクト”である。

 仮想2枚組みのCDは,内容からジャケット写真&ブックレットに至るまで『デュエット』の精神が貫かれた作りとなっている。
 選曲は2枚でクロスすることのない親切設計。2枚のCDジャケットを並べると1枚の絵になる芸術設計。2枚ともCDの3曲目に【ヴァルス】ラストに【ミスティ】を配し,チャンネルもレフトが小曽根,ライトがソルトと統一されたのが大殊勲!
 ただし,小曽根盤はSACDハイブリッド盤なのにソルト盤はCD音質なのだが…。

DUET WITH MAKOTO OZONE-2 さて,ソルト盤と小曽根盤の2枚の『デュエット』であるが,これは2枚組ではリリースできない。これが同じステージの音源とは思えないくらい個性が異なっている。

 ソルト盤は“エンジョイ”している。ソルト盤では“ジャズを愛する”塩谷哲小曽根真が楽しめる。ピアノの動きに注意を集中すると,2人がジャズの文法で,でも自分の言語で会話していることがよ〜く分かる。

 最後に,管理人の結論=『デュエット批評

 名盤デュエット』成功の秘訣は,ライブ・レコーディングにある。『デュエット』は,塩谷哲小曽根真2人きりの『デュエット』に違いないのだが,実は隠された大勢の共演者が存在する。

 そう。ピアノ・デュオの極意を知るオーディエンスが,耳を澄ませば,時に聞き入り,時に拍手喝さいを送っている。その聴衆の反応が塩谷哲小曽根真アドリブをさえ導いている。完全なる“触媒役”を果たしている。
 仮に『デュエット』が,同じ選曲でスタジオで録音されたとしても,ここまでエキサイティングなピアノ・デュオとはならなかったことと思う。

 『デュエット』の真意は,演奏者と演奏者の『デュエット』であると同時に,演奏者と観客との『デュエット』でもあった。一心同体と化した2人のピアニストが観客と一体となって『デュエット』する。この“2重構造”が塩谷哲小曽根真の『デュエット』である。

  01. Bienvenidos Al Mundo
  02. Do You Still Care?
  03. Valse
  04. あこがれのリオネジャネイロ - Makoto Ozone Solo
  05. Home - Satoru Shionoya Solo
  06. Lazy Uncle
  07. Spanish Waltz
  08. Misty

(ビクター/JVC 2005年発売/VICJ-61303)
(デジパック仕様)
(ライナーノーツ/小曽根真)

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