アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

CD批評:寺井 尚子

寺井 尚子 / ライムライト5

LIMELIGHT-1 『LIMELITE』(以下『ライムライト』)を聴いて強く感じることがある。
 それは『ジェラシー』以降で変貌した“ギターレス”寺井尚子カルテットの「大人の音」。

 “イケイケの尚子さま〜”も今や昔。『ジェラシー』以降のアダルト路線は,よりエッセンシャルでパッショネイト。聴き込めば聴き込む程,味わい深い音色のとりこ。
 勿論,寺井尚子アドリブはデビュー以来一貫して熱い。ポイントは,リスナーを簡単にノセてしまう,激情的でアグレッシブなナンバーが陰を潜めた事で“ジャズ・ヴァイオリニスト寺井尚子の音楽性が浮かび上がってきたことにある。

 寺井尚子の音楽性とは何か? それこそ,決して原曲の美しさを破壊することのないアドリブである。そして寺井尚子特有の音世界にアレンジされた原曲が,綺麗に化粧を施され,一層輝きを増すのである。
 そう。寺井尚子は実に素晴らしいアレンジャーであり,コンポーザーであり,ヴァイオリニストであり,ジャズメンなのである。

 『ライムライト』のテーマは,誰もが耳なじみのあるクラシックと映画音楽。ギターレス・カルテットに踏み切ることにより手に入れた“細身のアレンジ”がクラシックと映画音楽にあうあう。
 この“豊かな表現力”は,現寺井尚子・グループであればこそ。レコーディングでもライブでも,言葉ではなく楽器で意志を通わせてきたレギュラー・メンバー4人。この一体感は多くの時間を共有すればこそ。
 『ライムライト』でついに完成した「濃密な大人のトータル・サウンド」は,ヴァイオリン寺井尚子のみならず,ピアノ北島直樹ドラム中沢剛ベース店網邦雄4人の“誇り”であろう。

 そう。『ライムライト』は,寺井尚子・グループの“誇り”。それは「ジャズ・ヴァイオリン道・一直線」な「ぶれない音楽性」に対する4人の“誇り”でもある。
 大衆的な人気を得るとジャズから離れていくミュージシャンも多いが,寺井尚子・グループは「ジャズ・ヴァイオリン道・一直線」。選曲のジャンルを広げることはあっても演奏のジャンルは決して広げない“轍の掟”を守っている。
 クラシックと映画音楽を演奏しようとも『ライムライト』は,紛れもないジャズCD。これぞ,寺井尚子ジャズ・ヴァイオリンそのものなのである。
 「大人の音」な“渋い深み”の『ライムライト』に聴き惚れる。聴いていて惚れ惚れする。これは感動ものである。

 ドラマティック・レインな【愛のプレリュード】。ヴァイオリン音楽の金字塔【シャコンヌ】。甘美で重音でスローな【ゴッドファーザー 愛のテーマ】。悲しみの中にあるやさしさと温かさの【チャップリン・メドレー:テリーのテーマ〜スマイル】。北島直樹のおフランスな【メリー・ゴー・ラウンド】。出た〜,必殺のイケイケ&「元祖ドドスコ?(by 楽しんご)」中沢剛の【シング・シング・シング】。

 そしてラスト2曲のボーナス・トラックにしてタイアップ=【夢の旅路】(BS−TBS「気ままにディレクターズカット」テーマ曲)と【サマー・ファンタジー】(KINCHO蚊取線香2011年CM曲)がこれまたいいんだよなぁ。美メロです。もうほのぼのとしてきてニヤケてしまっちゃう〜。一日中聴いていたくなる=朝には絶対NG曲の名演であろう。

LIMELIGHT-2 さて,寺井尚子・ファンとしては『ライムライト』での「経費削減?」に一言物申す。
 『ライムライト』で『ジャズ・ワルツ』以降続いてきた,ファン・サービスの特典映像=CD−EXTRA仕様がついに終了してしまった。これは時代の流れ? ユーチューブ最強?
( これはCD試聴サイトの管理人にあってはならないオフレコであるが,アドリブ職人たちのジャズフュージョンであっても,音ではなく映像から入るほうが分かりやすい! )

 NO! CD−EXTRA仕様の廃止は音一本で勝負する『ライムライト』のハイライト=寺井尚子版【展覧会の絵】が理由である。このポップすぎるアレンジは「クライズラー&カンパニー」時代の葉加瀬太郎を意識したのでは?
 でもでも,管理人は【展覧会の絵】の静止画ではなく,尚子様の動画をもっともっと見たいです。

 …と,ここまで書いて気付いたがCD−EXTRA仕様が終了したのは『ライムライト』ではなく,前作『マイ・ソング』でした。管理人の寺井尚子唯一の未聴作です。
 読者の皆さん,暑いですね。夏バテなどしておられませんか? 管理人は訂正するのが面倒なので原文通りを故意にUPいたします。罪。

  01. Prelude in E minor
  02. Chaconne
  03. Love Theme from The Godfather
  04. El Choclo
  05. Terry's Theme〜Smile
  06. Pictures At An Exhibition
  07. Merry-Go-Round
  08. Somewhere from “West Side Story”
  09. Sing, Sing, Sing
  10. Ave Maria
  11. Travel In Dream
  12. Summer Fantasy

(東芝EMI/SOMETHIN'ELSE 2011年発売/TOCJ-68093)
(ライナーノーツ/高井信成)

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寺井 尚子 / アダージョ4

ADAGIO-1 『ドリームダンシング』で決心した,寺井尚子の極意「トラック買い」。

 『ADAGIO』(以下『アダージョ』)のお目当ては【サムタイム・アゴー〜ラ・フィエスタ】。【ホワット・ゲーム・シャル・ウィ・プレイ・トゥデイ】に続く『リターン・トゥ・フォーエヴァー』からのチック・コリアの大名曲。
 …と,いつもなら書き始めるところであるが…。

 『ジェラシー』『小さな花〜アマポーラ』で感じた“NEW”寺井尚子・サウンドを『アダージョ』で確信した。
 『アダージョ』は,もはや“寺井ワールド”と称するしか他にない,圧倒的な存在感で満ちている。

 寺井尚子のニュー・サウンドは「何を演っても同じ」→「トラック買い」ではなくなった。アルバム全体で1つの音楽作品。トラック毎のブツ切り,ではなく,アルバムとしての連続性・起承転結を有する音楽物語へと昇華しているように思う。

 ズバリ『アダージョ』のテーマはヨーロッパ。寺井尚子カルテットの有する“豊かな音楽性”で,クラシカルなヨーロッパの名曲を,原曲のイメージを損なうことなく,現代ジャズの名曲へとメンバー全員で仕上げている。

 【タイム・トゥ・セイ・グッバイ】【アルビノーニのアダージョ】【ニュー・シネマ・パラダイス 〜愛のテーマ〜】のカヴァー3トラックはイタリアゆかりの名曲。
 一方,フランス語で「初恋」を意味する【プルミエ・ラムール】。パリのアンティーク街【クリニャンクール】とオリジナルはフランスゆかりの佳曲。
 他にも【ラ・フィエスタ】はスペインしているし【ラスト・ワルツ】は全英NO.1ヒット。どうですか,この寺井尚子のヨーロッパづくし!
 そう。『アダージョ』は,寺井尚子流・ヨーロッパの「押し寿司」である。← ここが「ちらし」でないところがポイント!?

 選曲だけではない。ヨーロッパを代表する楽器としてのヴァイオリンが,過去最高に“ヨーロッパっぽく”鳴っている。
 例えば『アダージョ』の目玉であろう【アルビノーニのアダージョ】。【アルビノーニのアダージョ】が,こんな感じの4ビートにアレンジされるとは想定外の大収穫。緩やかな曲調の中にも漂う緊張感が心地良い。
 パッショネイトなアドリブの終わりに流れる例のテーマ。例のテーマが流れてくると,もうここはヨーロッパの香り。さっきまでのジャズ・ヴァイオリンが嘘のような“ヨーロッパの”ヴァイオリン然。いや〜,衝撃的な展開である。

ADAGIO-2 『アダージョ』の一押し【タイム・トゥ・セイ・グッバイ】を是非聴いてほしい。
 ジャズ・ヴァイオリン界の“七色の歌声”を有する寺井尚子が,情感タップリに歌い上げ,寺井色に染め上げる。
 この歌声はもはやオペラ歌手。寺井尚子ジャズ・ヴァイオリンが,肉声を越え,サラ・ブライトマンを越え,パヴァロッティとなった。

 ぬくもりのある木製楽器の音の魅力。時に繊細で時に野太く時にリッチで時に潤いのあるヴァイオリンの音色。
 【タイム・トゥ・セイ・グッバイ】における寺井“パヴァロッティ”尚子ジャズ・ヴァイオリンの音色を聴いていると,寺井尚子の「ヴァイオリンは肉声に一番近い楽器」という名言(迷言?)が浮かんでくる。説得力あるよなぁ。

  01. Time To Say Goodbye
  02. Adagio
  03. Premier Amour
  04. Nuovo Cinema Paradiso
  05. Sometime Ago〜La Fiesta
  06. Clignancourt
  07. The Key Of The Heart
  08. The Last Waltz
  09. In The Breeze
  10. Little Cry For Him
  11. Only Blue

(東芝EMI/SOMETHIN'ELSE 2009年発売/TOCJ-68084)
(ライナーノーツ/高井信成)
CD−EXTRA仕様:【アルビノーニのアダージョ(ライヴ映像)】

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寺井 尚子 / 小さな花〜アマポーラ5

PETITE FLEUR〜AMAPOLA-1 『ドリームダンシング』で決心した,寺井尚子の極意「トラック買い」。

 『PETITE FLEUR〜AMAPOLA』(以下『小さな花〜アマポーラ』)のお目当ては【マイ・フェイヴァリット・シングス】。
 ジョン・コルトレーン名演が有名すぎる【マイ・フェイヴァリット・シングス】だが,管理人の全ディスコグラフィから推測するに優に三桁のジャズメンが演奏している大スタンダードには,管楽器や鍵盤楽器の名演が目白押し。ここは寺井尚子に弦楽器の「決定的名演」を期待したい?

 そんな【マイ・フェイヴァリット・シングス】が良かった。寺井尚子ヴァイオリンも素晴らしいが,管理人がベタボメしたくなったのは寺井尚子のバンド・サウンド。
 北島直樹ピアノ中沢剛ドラムが抜群である。邪魔せず&引っ込まずの,もうこの2人は寺井尚子の身体の一部と化している。

 『ジェラシー』で感じた“コンパクトなのに雄大な”アダルト路線が進化し深化している。こんなにバランスの取れた【マイ・フェイヴァリット・シングス】は1年前では想像できなかった。
 寺井尚子が彼女独特のメロディを紡ぎ出す瞬間,ここが聴き所だとさりげなくアピールし挑発してくる北島直樹。いや〜,謎が解けた瞬間の“気分爽快”アドレナリンの大放出である。この成熟ぶりは恐ろしい。

 『小さな花〜アマポーラ』は,叙情的でロマンティックで,朝に聞いたら「骨抜き」にされそうで仕事にならない。このままうっとりと聴き惚れていたい。寺井尚子ヴァイオリンにマジ“癒し”を求めてしまう。
 『小さな花〜アマポーラ』の寺井尚子は灰汁が抜かれている。まろやかなヴァイオリンの音色が胸に染み渡っていく。あぁ〜。

 なんと!ジャズ以外の演奏に関心のない管理人が“不覚にも”【アマポーラ】と【トリステーザ】で感動してしまった。
 自分でも何なのかよく分からない感情。何なの? 悶々としながら流れるラスト2トラックの【パーディド】と【アマポーラ(ショート・ヴァージョン)】で元気が出る。何なの? いつもの寺井尚子よりおとなしめの演奏なのに内蔵に来る新感覚。一体何なの?

 管理人は考えた。そして今はこう思う。寺井尚子を追いかけて5年。ついに管理人も寺井尚子の家来になれた。
 北島直樹中沢剛には到底及ばない。しかしこの距離感は寺井尚子のすぐ側にいて,彼女の鼓動や息遣いを感じているかのよう…。( ちょっとしたホラーですね。すみません )

PETITE FLEUR〜AMAPOLA-2 これからは管理人も“女王蜂”寺井尚子に奉仕いたします。尚子様が出演中の「キンチョウ蚊取り線香」のごとく末永くお供させていただきます。
 寺井尚子随一の“しっとり&うっとり”『小さな花〜アマポーラ』の甘い媚薬に“ボロボロ”にされてしまいました。寺井尚子の病魔に冒されてしまいした。お蔭様で毎日がハッピーです!

  01. AMAPOLA
  02. MY FAVORITE THINGS
  03. THE MAN WHO INVENTED JAZZ
  04. SPLEEN
  05. TRISTEZA
  06. PETITE FLEUR
  07. GOOD LUCK
  08. TWILIGHT
  09. PENT UP HOUSE
  10. I REMEMBER MONTPARNASSE
  11. TERRA
  12. PERDIDO
  13. AMAPOLA (short version)

(東芝EMI/SOMETHIN'ELSE 2008年発売/TOCJ-68077)
(ライナーノーツ/藤本史昭)
CD−EXTRA仕様:【アマポーラ(ライヴ映像)】

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寺井 尚子 / ジェラシー4

JEALOUSY-1 『ドリームダンシング』で決心した,寺井尚子の極意「トラック買い」。

 『JEALOUSY』(以下『ジェラシー』)のお目当ては,ジョン・コルトレーンの【アフロ・ブルー】とチック・コリアの【ホワット・ゲーム・シャル・ウィ・プレイ・トゥデイ】。

 【アフロ・ブルー】には,コルトレーンばり“激情派”の寺井尚子の復活を願い【ホワット・ゲーム・シャル・ウィ・プレイ・トゥデイ】には,現・甘くも爽やかな“清純派”の寺井尚子を期待してのジャズ・ヴァイオリン鑑賞目的。この2トラックは大成功!

 ただし他の8トラックの印象は『ドリームダンシング』へと逆戻り。これは「音楽的には素晴らしくまとまっている=管理人の大好きな寺井尚子は薄い」の意。『ジェラシー』のレベルに達すると批評は聴き手の好みの問題だと思っている。

 『ジェラシー』で寺井尚子は大きな決断を下している。ギターレスの寺井尚子カルテットでの始動である。このギターレス編成が予想以上に大きな変化を与えている。リズムとサウンドの色彩感が激変した。
 こうして新たな寺井尚子のグループ・サウンズを聴いてみると,従来の寺井尚子クインテットの鮮やかな音を過小評価していた事実を反省する。愛しの尚子様,お許しを〜。

 『ジェラシー』での寺井尚子がエレガント。ギターレスで“引き締まった”バンド・サウンドが“マダム尚子”の大登場。そう。寺井尚子は『ジェラシー』で「女王様からマダムへ」イメチェンした。
 「クインテットからカルテットへ」「女王様からマダムへ」とシフトした寺井尚子の『ジェラシー』。つまりは“縛りの弱い”バンド・サウンドなのに一枚岩に固まった印象を受ける。なぜだろう?

 これは管理人の推測に過ぎないのだが,女王様への専従から解放された家来たちの自由意志。もはや強いられてではなく自分から進んで尚子様へ仕えている。尚子様への奉仕に喜びを見い出している。
 そう。寺井尚子の真実とは「女王様→マダム→女王蜂」! こんな寺井尚子がたまらんなぁ。

 ジャズ・コンボへ客演するヴァイオリニストは少なくないが,ジャズ・ヴァイオリニストとしてレギュラー・グループを率いて活動するヴァイオリニスト寺井尚子オンリー。
 『ジェラシー』の,適度にこなされた合わせを経て,スタジオで瞬間的に昇華するジャズ・ヴァイオリンこそ,レギュラー・グループの真骨頂。

 寺井尚子のレギュラー・グループのモットーは「一心同体の運命共同体」。リハーサル〜レコーディング〜ツアーまでを固定メンバーで過ごす音造りの積み重ねの賜物。テンポやキーやイントロのあるなしなどの決め事を言葉ではなく音で会話できる。
 この濃密なインタープレイは一朝一夕にはできやしない。もはやコロニー並みの以心伝心?

JEALOUSY-2 勿論,問題もある。それは家来たちの間での嫉妬=それがアルバム・タイトル由来の『ジェラシー』? 寺井尚子一番のお気に入り=北島直樹ピアノヴァイオリンの絡みに嫉妬するのがドラム中沢剛。「中沢剛って,こんなに手数が多かったっけ?」状態である。
 同じバンド・メンバーの演奏に『ジェラシー』を覚えるほどに,ギターレス・カルテットが寺井尚子に心酔している。

 『ジェラシー』の秘訣は寺井尚子の“女王蜂”としてのリーダー・シップである。
 そう。寺井尚子の音楽的ヴィジョンに“前のめりで”共感している。寺井尚子のアレンジ力や音を描くモチーフや微妙なグラデーションに魅せられている。イメージの明確な共有であろう。

 『ジェラシー』ほど明確な音楽コンセプトが伝わってくるジャズCDは数少ない。

  01. JEALOUSY
  02. AFRO BLUE
  03. BLUE BOLERO
  04. CRESCENT MOON
  05. DAY AND DAY
  06. AMAZING GRACE
  07. HAPPY DIXIELAND
  08. HUSH-A-BYE
  09. ME, MY FRIEND
  10. WHAT GAME SHALL WE PLAY TODAY

(東芝EMI/SOMETHIN'ELSE 2007年発売/TOCJ-68074)
(ライナーノーツ/藤本史昭)
CD−EXTRA仕様:【ジェラシー(スタジオ・ライヴ映像)】

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寺井 尚子 / 夜間飛行4

NIGHT FLIGHT-1 『ドリームダンシング』で決心した,寺井尚子の極意「トラック買い」。

 『NIGHT FLIGHT』(以下『夜間飛行』)のお目当ては,ウェザー・リポートの【バードランド】。
 もしや寺井尚子の「一人五役?」も予想したが【バードランド】での寺井尚子ウェイン・シューター仕様での大登場。
 「へぇ〜,ジョー・ザビヌルではないんだ」が正直な第一印象。まっ,ジョー・ザビヌル役には北島直樹が控えているので当然と言えば当然なのだ。
 ではジャコパスアレックス・アクーニャはどうかというと,こちらも磐石の成重幸紀中沢剛が控えている。そしてマノロ・バドレーナパーカッションの代役は細野よしひこギターである。なかなかである。

 そう。寺井尚子の追い求める“理想のバンド・サウンド”が【バードランド】で完成している。続く全11曲を聴き比べても,これまでの寺井尚子の突出は感じられない。
 この理由こそ【バードランド】でのウェイン・シューター専従にある。ともすると弾きすぎる傾向のある寺井尚子ののジャズ・ヴァイオリン。要は色気が多いのだ。

 しかし【バードランド】での寺井尚子は弾きすぎない。欲望抑え目のウェイン・シューター専従に徹している(もといザビヌル・パートも結構弾いているのだが,印象として!)。
 ゆえに,バンド・メンバーが生きている。元々,バック4人は(若手の中沢剛も含めて)熟練の名手たち。寺井尚子北島直樹細野よしひこの3人ユニゾンまで入っている。凄い。これは寺井尚子・サウンドの“革命”である。

 まっ,ここだけの話,バンドが「上等なジャズの仕立て屋さん」になったってこと。『夜間飛行』にも東芝EMI移籍後の“恒例”スタンダード・ナンバーが選曲されているのだが『ドリームダンシング』につきまとう「イージー・リスニング風味」が薄れ,何を演っても「ジャズの響き」が聴こえてくる。凄い。これぞ寺井尚子・サウンドの“革命”である。

 どうやら管理人の見切りは早かったようだ。
 『夜間飛行』での“NEW”寺井尚子・グループの5人は対等の関係にある。寺井尚子がバンドの一フロントとして“馴染んでいる”。寺井尚子が『夜間飛行』で“抑制美”をついに覚えた。というかバンドの枠内に初めて“丸く収まっちゃった”って感じかな? 寺井尚子特有のカドやデッパリや抵抗が消えている。

 その“象徴”が,CD−EXTRA仕様:【ラ・クンパルシータ(ライヴ映像)】。官能的なタンゴを演っているのにスイングしている。

NIGHT FLIGHT-2 ついにオリジナル偏重のアレンジ重視から離れ,ジャズ・ヴァイオリンの演奏そのものでジャズの本質を表現する手法へシフトしてきた。しかもソロイストとしてではなくバンドとしてグループとしてユニットとしてトータル・サウンドとして…。

 そうは言っても寺井尚子の音楽は,ジャズというジャンルやヴァイオリンという楽器の枠内からかなり“はみ出している”。でもその“はみ出し感”が寺井尚子最大の魅力だと思う。

 惜しむべきは,ああ,神のいたずら。一度切れた愛情を取り戻すのは難しい。なんで『ドリームダンシング』の前に『夜間飛行』に出会わなかったのだろう。なんで●野●子の前に○野○子に出会わなかったのだろう。
 管理人は『夜間飛行』で寺井尚子とやり直そうと思いました。

  01. BIRDLAND
  02. A NIGHT IN GALICIA
  03. POMPON BLANC PARFAIT
  04. LA CUMPARSITA
  05. AND HERE YOU ARE
  06. NIGHT FLIGHT
  07. LAZY ANGEL
  08. JOY OF SINGING
  09. IN MY CHILDHOOD
  10. SONG FROM THE OLD COUNTRY
  11. FROM NAUGHT

(東芝EMI/SOMETHIN'ELSE 2006年発売/TOCJ-68072)
(ライナーノーツ/藤本史昭)
CD−EXTRA仕様:【ラ・クンパルシータ(ライヴ映像)】

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寺井 尚子 / ドリームダンシング4

DREAMDANCING-1 前作『ジャズ・ワルツ』で,J−ジャズの頂点へと登りつめた寺井尚子。続く本作『DREAMDANCING』(以下『ドリームダンシング』)は,大ヒットした『ジャズ・ワルツ』の2匹目のドジョウ(『ジャズ・ワルツ』も『アンセム』の2匹目のドジョウだったけどね)。

 この『アンセム』『ジャズ・ワルツ』『ドリームダンシング』の3作を聴いてみて,管理人は寺井尚子の極意を究めた。
 寺井尚子のアルバム選びは,もう好きな曲を演っているかどうかで選べばいい。もう演奏の基本形は変わりそうもない。残念&スッキリ。
 ただし,完全に心が離れたにもかかわらず,実際には『ドリームダンシング』の後も切れ目なく『夜間飛行』『ジェラシー』『小さな花〜アマポーラ』を購入させた寺井尚子はなかなか。どうにも「後ろ髪」を引かれてしまった。

 さて,管理人に寺井尚子の「満腹感」を感じさせた『ドリームダンシング』は,ますますジャズ度が薄まっている。
 ジャズを名乗れるは3曲。ジャンゴグラッペリの【マイナー・スイング】。ヴィクター・ヤングの【ゴールデン・イヤリングス】。エリントンの【ムード・インディゴ】であるが,刺激的なのは【ムード・インディゴ】のみ。
 そう。『ドリームダンシング』のハイライトはラストの2曲。シナトラの【マイ・ウェイ】とディズニーの【星に願いを】なのである。

 『ドリームダンシング』へ駄盤の落印を押しかけたのをとどめた【マイ・ウェイ】が素晴らしい。圧巻の寺井尚子の説得力はシナトラ以上である。いいや,寺井尚子ヴァイオリンシナトラではなく演歌歌手のよう。こぶしをきかせた,寺井尚子にしか表現できないジャズ・ヴァイオリンに“ゾクゾク”する。

 【星に願いを】は寺井尚子ヴァイオリン北島直樹ピアノデュエット。この温かで感傷的なロマンティズムにやられてしまう。アドリブを排除した美メロのヴァイオリンが感動もの。

 残りの8トラックの評価は,読者の皆さん自身で実際に聴いて判断してほしいと思っている。
 前々から繰り返し書いているのだが,東芝EMI移籍後の寺井尚子のバンド・サウンドは質が上がっている。まとまっているし外さない。
 これがBGM風なムード音楽・映画音楽,もっと言えばクラシックやポピュラー畑のヴァイオリニストなら『ドリームダンシング』こそ最上級の演奏であろう。

 しかし管理人は,寺井尚子には寺井尚子にしか表現できないジャズ・ヴァイオリンの世界を知っている。
 『ピュア・モーメント』『プリンセスT』『ライヴ』と来て,とどめの『オール・フォー・ユー』。この4枚に『オール・フォー・ユー』を含めたビデオアーツ時代の寺井尚子は,ヴァイオリニストではなくトランペッターだったとしてもギタリストだったとしても,他のどんな楽器を演奏していたとしてもジャズメン=寺井尚子ここにあり〜。

 しかし『ドリームダンシング』での寺井尚子は,ヴァイオリニストの枠内に収まっている。ジャズ・ヴァイオリニストとも違えばトランペッターでもギタリストでもない。もはやジャズメンとは認められない。葉加瀬太郎や宮本笑里と同列のヴァイオリニスト
 「大衆迎合路線」の寺井尚子はもうたくさん。『ドリームダンシング』でゲップを覚えた。しばしのお別れ,尚子様。

DREAMDANCING-2 「良質のインストゥルメンタル・アルバム」=『ドリームダンシング』。酷評したのは全て“期待の表われ”“愛情の裏返し”である。

 管理人はジャズメン=寺井尚子を知っている。寺井尚子の実力と熱いハートを知っている。管理人はビデオアーツ時代の寺井尚子を全面的に支持する。あの時代の寺井尚子J−ジャズ界の“女王様”。上原ひろみ矢野沙織などまだ青い。

 幸い,CD−EXTRA仕様:【ハバネラ(ライヴ映像)】には,ジャズメン=寺井尚子の姿が収められている。そう。ジャズの醍醐味=ライブにおいては,ジャズメン=寺井尚子はまだ死んではいない。カルメンを演っているのにスイングしている。
 帰っておいで。ジャズメン=寺井尚子。カムバック,愛しの尚子さま〜。

  01. MINOR SWING
  02. HABANERA
  03. UNDER PARIS SKIES
  04. BROKEN BLOSSOMS
  05. THOSE HAPPY SUNDAYS
  06. GOLDEN EARRINGS
  07. WHEN LOVE IS SHINNING
  08. MOOD INDIGO
  09. DREAMDANCING
  10. MY WAY
  11. WHEN YOU WISH UPON A STAR

(東芝EMI/SOMETHIN'ELSE 2005年発売/TOCJ-68064)
(ライナーノーツ/川井龍介,高井信成)
CD−EXTRA仕様:【ハバネラ(ライヴ映像)】

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寺井 尚子 / ジャズ・ワルツ4

JAZZ WALTZ-1 前作『アンセム』で,ジャズ・スピリッツから離れることを決断した寺井尚子。続く本作『JAZZ WALTZ』(以下『ジャズ・ワルツ』)も,東芝EMIの描く「大衆迎合路線」の拡大作となった。

 人気のポピュラー・ソングと北島直樹の名曲を“脱”ジャズ・ヴァイオリンで演奏した『ジャズ・ワルツ』が“狙い通りの”大ヒット。
 そう。『ジャズ・ワルツ』こそ,寺井尚子の代表作にしてJ−ジャズの代表作。あの「スイング・ジャーナル・日本ジャズ賞まで受賞した。関係者的には「めでたしめだたし」の結果である。

 しかし待ってくれよ〜。折からの寺井尚子・ファンを置いてけぼりにしないでくれよ〜。『ジャズ・ワルツ』の大ヒットを手放しでは喜べない「複雑なファン心理」をどうにかしてくれよ〜。

 特にビデオアーツ時代を懐かしんでしまうのが“優等生すぎる”アレンジとアドリブ
 『ジャズ・ワルツ』は,ジャズ入門者向けに?聴き所が分かりやすいアレンジが施されている。主役である寺井尚子ジャズ・ヴァイオリンが美しい。うっとりしてしまう。聴き惚れてしまう。
 当然ながらアドリブもあるが時間的に短め。すぐにピアノギターがカウンター気味に寄り添ってくる。時にクラシカルで時にスパニッシュ。終始予定調和的なソロ回しがインパクトに欠ける。

 そう。大ヒットCDジャズ・ワルツ』の最大の不満は「超・安定志向」。
 これまで寺井尚子は“遅咲き”のデビューを取り戻すべく果敢に攻め続けてきた。前人未到のジャズ・ヴァイオリンの可能性を追い求めてきた。しかし『ジャズ・ワルツ』には寺井尚子の新境地は見い出せない。チャレンジャー精神を捨てた『アンセム』の延長作。まとまってはいるのだがマンネリズムの走りか?
 ハッキリ言って『アンセム』と『ジャズ・ワルツ』の違いは演奏曲の違い。テンションや雰囲気に明確な“個性の違い”を打ち出せていない。

 そういうわけで管理人の『ジャズ・ワルツ批評はトラック批評

 情熱の【APPASSIONATA】〜木住野佳子名演と肩を並べる【DANNY BOY】〜ラグスイングIN THE MOOD FOR RAG】〜「肌はやり直せる」のTVCM曲【FASCINATION】の4連投は,正にJ−ジャズの代表作にふさわしい瞬間。まばゆすぎるまゆゆは5位?

JAZZ WALTZ-2 なお『ジャズ・ワルツ』以降,寺井尚子CDCD−EXTRA仕様。この点だけは東芝EMIに感謝している。

 『ジャズ・ワルツ』には【アパッショナータ〜情熱】のスタジオ・ライブ映像を収録。初めて見る動く寺井尚子は,やっぱり“女王様”だった。
 寺井尚子ジャズ・ヴァイオリンはヒーローである。躍動するジャズ・ヴァイオリンジャズの花形楽器。ヴァイオリンアルト・サックスへ置き換わる。
← この文面の意味については当ブログの左下「アンケートボードB:ジャズ/フュージョンの花形楽器とは?」の投票結果をご覧ください。

  01. JAZZ WALTZ
  02. APPASSIONATA
  03. DANNY BOY
  04. IN THE MOOD FOR RAG
  05. FASCINATION
  06. LADY'S TANGO
  07. FLYING IN THE WIND
  08. MEMORIES IN THE SAND
  09. HIT AND AWAY
  10. I ME MINE
  11. CHILDREN

(東芝EMI/SOMETHIN'ELSE 2003年発売/TOCJ-68060)
(ライナーノーツ/馬場啓一)
CD−EXTRA仕様:【アパッショナータ〜情熱】

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寺井 尚子 / アンセム4

ANTHEM-1 寺井尚子の音楽性は東芝EMIへ移籍して,俄然,成熟した。それはより“密な”バンド・サウンド指向である。

 そう。ピアノ北島直樹ギター細野義彦ベースジャンボ小野ドラム中沢剛による“NEW”寺井尚子・バンド=寺井尚子クインテットの始動である。
 特に北島直樹の加入は大きく,北島直樹ピアノ・タッチと作曲の才が,その後の寺井尚子の音楽性とも絡みつき,もはや北島直樹単独での評価は不能であろう。うらやましい蜜月ぶりが二人三脚=音楽上の“パートナー”の感アリアリ。

 東芝EMIへ移籍して寺井尚子が挑戦したのは“脱”ジャズ・ヴァイオリン
 しかし,寺井尚子は“超一流の”ジャズメンである。寺井尚子にしかできない,寺井尚子でないとできないジャズがある。ジャズ・ヴァイオリンを完全に手放したわけでもない。

 矛盾でしょうか? いいや,もう少し言葉を付け加えよう。東芝EMIというレコード会社はメジャーである。メジャー在籍とは売れる音楽家である。ターゲットは“ニッチな”ジャズ・ファン中心に違いないが,ライトなファンも獲得するため,多額の広告宣伝費がかけられている。ゆえに“脱”ジャズ・ヴァイオリン路線。

 ズバリ,東芝EMI移籍第一弾の『ANTHEM』(以下『アンセム』)は「良質のインストゥルメンタル・アルバム」である。
 硬派なジャズには抵抗がある,と感じるライト・リスナーには,これくらいが飛びつきやすいに違いない。ジャズの門戸をかなり広げた「良質のインストゥルメンタル・アルバム」としてお奨めできる。
 ジャズのフォームにとらわれない“メロウで叙情的,ドラマティックで哀愁の”ヴァイオリンが美しい。

 しか〜し,次の点を管理人は主張したいのであるが『アンセム』には,寺井尚子にしか作れない,寺井尚子独特のジャズが鳴っている。
 耳当たりのよいメロディについ引っ張られてしまうのだが,聴き込むにつれ表出してくる,紛れもないジャズの香りが充満する。
 そう。寺井尚子は演奏姿勢において,思いっきりジャズしている。定番のジャズスタイルから離れてはいようと,寺井尚子ヴァイオリンスイングしている。おお〜。

 【THOSE FOOLISH DAYS】の扇情的なヴァイオリンハード・バップを超えた寺井尚子サウンド。【HYMN A L’AMOUR】の官能的なヴァイオリンがシャンソンを超えた寺井尚子サウンド。『アンセム』の全11トラックが,唯一無二の寺井尚子・サウンドのオンパレード。

ANTHEM-2 “脱”ジャズ・ヴァイオリンな“NEW”寺井尚子・バンド。多くの人を魅了するべく,聴き所が分かりやすくアレンジされた“ヒップでポップでバップな”『アンセム』。
 しかし,従来のジャズ・ヴァイオリニスト寺井尚子のファンにとっては“背信の”『アンセム』。『アンセム』以降,ジャズマン=寺井尚子アドリブの出番がめっきり減らされている。う〜む。

 東芝EMIの求める明確なサウンド・コンセプトが“密な”バンド・サウンドを産み,全ては“寺井尚子色”にリアレンジされている。格段に完成度は上がっているのだが,聴いて興奮するポイント,共感するポイントが見つけにくくなったかな〜。

  01. THOSE FOOLISH DAYS
  02. LOVE IS A MANY SPLENDORED THING
  03. ONCE UPON A DREAM
  04. HYMN A L'AMOUR
  05. TEN-GALLON SHOES
  06. STRAIGHT FLASH
  07. I AM HERE FOR YOU
  08. MILONGA IN SORROW
  09. LOVE ON THE BREEZE
  10. WHERE DOES OUR LOVE GO?
  11. SOMEWHERE SOMETIME

(東芝EMI/SOMETHIN'ELSE 2003年発売/TOCJ-68057)
(ライナーノーツ/藤本史昭)

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寺井 尚子 / オール・フォー・ユー5

ALL FOR YOU-1 『ALL FOR YOU』(以下『オール・フォー・ユー』)こそ,寺井尚子の最高傑作である。

 出来としては『オール・フォー・ユー』以上に,EMIレーベル移籍後の諸作に軍配が上がる。しかし『オール・フォー・ユー』が感じる“サムシング”を“綺麗な”演奏の探求では決して越えられないと思う。
 それこそジャズの真髄であり,ハプニングである。設計図などあってないような演奏なのに,出来上がってみれば設計図通りに“ピシャリ”のヴァージョン・アップ。興奮に満ちた寺井尚子ジャズ・ヴァイオリンが痛快である。

 『オール・フォー・ユー』の成功の秘訣は2つ。
 1つには,セッション・アーティスト=寺井尚子の本領発揮の大物ゲスト・リシャール・ガリアーノの存在にある。リシャール・ガリアーノの懐に深さに“手加減なし”で寺井尚子がブチ込んでいく。
 差しつ差されつの丁丁発止。素晴らしい鍔迫り合いから産み落とされたギリギリの調和。無意識のうちにヴァイオリンアコーディオンの美しい音色が重なり合う瞬間の奇跡が凄すぎる。

 もう1つは,セルフ・プロデュサー=寺井尚子の存在にある。予定調和などクソ喰らえ。「事件は会議室で起きてるんじゃない。現場で起きてるんだ」的な演奏が可能になったのも,セルフ・プロデュサー=寺井尚子のOKサインの功績であろう。

 『オール・フォー・ユー』で感じる,緻密なスタジオ・ワークと瑞々しいライブ感の両立。ん? このフレーズはカシオペアの『ミント・ジャムス』?
 そうかっ『オール・フォー・ユー』は寺井尚子の『ミント・ジャムス』なのだった。ちゃんちゃん。

ALL FOR YOU-2 『オール・フォー・ユー』については,徹夜覚悟で詳細レヴューするはずだったのに〜。

 管理人の結論。『オール・フォー・ユー』は寺井尚子の『ミント・ジャムス』である。この時期の寺井尚子はカッコよかった〜。なぜこの路線をやめたのだ〜。うらめしや〜。

PS 『オール・フォー・ユー』のジャケット写真井川遥に似ていませんか? この時期の寺井尚子は美しかった〜。

  01. A Gua De Beber
  02. Be Bop
  03. あなたがわたしをさがすとき
  04. Libertango
  05. All For You
  06. La Valse A Margaux
  07. Au Clair De Lune
  08. Scirocco
  09. Sunflowe

(ビデオアーツ/VIDEOARTS 2001年発売/VACV-1041)
(ライナーノーツ/寺井尚子,馬場啓一)

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寺井 尚子 / ライヴ5

NAOKO LIVE-1 寺井尚子のレコーディングは基本ワン・テイクの一発録り。それは演奏の生気を失わないためだと語っている。
 しかし,その後のミックス・ダウンなのかマスタリングなのかしらないが,肝心の生気が奪われていく。“綺麗な”演奏へと修正されていくように思えるのだ。

 しかし,この“綺麗な”音造りは当の寺井尚子が望んでのこと。この点を意外に思うのだが,寺井尚子は,理想のバンド・サウンドのためならば,ジャズ・ヴァイオリニスト寺井尚子を殺すことができる。全体のバランスが良くなるのであれば,自分のソロが退くことにやぶさかではない。そう。寺井尚子は大人なのだ。

 でもでも…。管理人の愛する寺井尚子はイケイケ=我を忘れて渾身のアドリブを繰り出す“女帝”寺井尚子である。そんなジャズ・ヴァイオリニスト寺井尚子が聴けないものか…。
 そんな管理人の願いを叶えてくれるCDがある。『NAOKO LIVE』(以下『ライヴ』)である。

 『ライヴ』には,寺井尚子の“オレがオレが”な気性が出ている。“女帝”寺井尚子の演奏が痛快&爽快。この“じゃじゃ馬”なジャズ・ヴァイオリニストに親近感を覚えてしまうのだ。

 『ライヴ』は前作『プリンセスT』のフォロー・ツアーの録音盤。ギターリー・リトナードラムハーヴィー・メイソンピアノアラン・パスクァベースデイヴ・カーペンタープログラマーヨーカム・バン・デル・ザークの超大物集団をバックに,寺井尚子ヴァイオリンが躍動する。

 これぞライブの臨場感。スタジオであれば没テイクとなるミス・タッチもお構いなし。とにかく勢いのゴリ押し。
 『シンキング・オブ・ユー』の2倍速で突っ走る【SPAIN】での激しいインプロヴィゼーションは「お姫様アイドル」のイメージで売っているスタジオ録音盤では“めったに聴けない”ライブの醍醐味である。この“自己主張の強さ”がハイライトであろう。

 加えて『ライヴ』には,スタジオ盤には少ない,バック・ミュージシャンのソロにもスポットライトが当てられている。
 やはりリー・リトナーは“世界の”リー・リトナーであった。ヴァイオリンのバックで刻むリズムを聴き拾っていくだけで驚嘆するしソロで前面に出てのアドリブが実に楽しい。いや〜,リー・リトナーは「最高の共演者キラー」だと改めて再認識させられる。

NAOKO LIVE-2 あっという間に9トラックが流れ,ラストで迎える【THINKING OF YOU】。
 これまでの熱狂は全て,静寂の【THINKING OF YOU】のためにあった。そう思わずにはいられない“白眉の”出来である。

 実に美しい。甘くメロウなヴァイオリンの調べがリー・リトナーアコギと溶け合っていく。このシンクロを体感した寺井尚子の感動の涙声。もう声になっていない。随分とセッションで鳴らしてきた寺井尚子にして「異次元の手応え」を感じたのだろう。

 【THINKING OF YOU】での「異次元の手応え」は,ライブ終了後も,寺井尚子の身体の中にしっかりと残っている。そう。【THINKING OF YOU】は,寺井尚子の“ブレイクスルー”の記録である。

  01. spain
  02. stolen moments
  03. black market
  04. beijos
  05. lagrima
  06. shadow play
  07. cantaloupe island
  08. tokyo-la jam
  09. rio funk
  10. thinking of you

(ビデオアーツ/VIDEOARTS 2001年発売/VACV-1039)
(ライナーノーツ/寺井尚子,リー・リトナー)

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寺井 尚子 / プリンセスT5

PRINCESS T-1 寺井尚子唯一のフュージョン作。それが『PRINCESS T』(以下『プリンセスT』)である。

 『プリンセスT』は,フュージョン・ギターのスーパー・スター=リー・リトナー・プロデュース。寺井尚子が一気に華やいで聞こえる。上質なジャズ・ヴァイオリンとLAのフュージョン・サウンドの融合が非常に聴きやすい。

 寺井尚子の立ち位置が痛快である。超大物のリー・リトナー。同じ弦楽器のリー・リトナー。名前でも音量でも負けてしまう。たとえ自分のリーダー作であったとしても競演したら負けてしまう。
 そう。『プリンセスT』で寺井尚子が目指したのは共演である。相手の懐に飛び込んで人のまわしで相撲をとるのだ。

 『プリンセスT』で寺井尚子は“ジャズ・ヴァイオリニスト”の肩書きを封印している。とにかく爽やかに。そして華やかに。時にシリアスに…。
 完全にリトナー・グループのゲストになりきってみせる。ただしゲストが主役である。そう。『プリンセスT』で寺井尚子は“ジャズ・ヴォーカリスト”として自分の歌を歌ってみせる。いや〜,これがいい。寺井尚子が最高に輝いている。寺井尚子の美のピークを迎えていたと思う。

 『プリンセスT』の楽曲はバラエティに富んでいる。ブラジールな【BEIJOS(KISSES)】。100%リー・リトナーな【VENICE AVE.】。ジャズの【ST.THOMAS】。フュージョンの【BLACK MARKET】。ブラック・ファンクな【CANTALOUP ISLAND】。そしてクラシックの原形をとどめない【PRINCESS T】と【MYSTIQUE】。
 素晴らしい。もう何を演っても上手くいく。完璧である。『プリンセスT』で表出した,ツボを決して外さない“卓越した表現力”こそが,寺井尚子最大の魅力である。ここにジャズメン=寺井尚子の実力を垣間見た思いがする。

 寺井尚子・オリジナルなバンド・サウンドも良い。しかし,管理人は寺井尚子はセッション・タイプのジャズメンだと思っている。それも相手が大物であればある程,実力以上のものを発揮するタイプである。
 『プリンセスT』とそのフォロー・ツアーのライブ録音『ライヴ』を聴いてそう思う。寺井尚子リトナー・グループとのセッションで“覚醒”している。アドレナリン出まくりのフレージングの大連発。しかも一発一発が意外に重くて鮮烈なのだ。
 もはやかなわぬ夢となったが“勝気な性格”の寺井尚子マイルス・バンドと共演するのを一度聴いて見たかった〜。きっと天井知らずの伸び代で「マリリン・マズール2世」の名を襲名したであろうに?

PRINCESS T-2 いいや,襲名したのは『プリンセスT』→『プリンセス・T=テンコウではなく寺井』→『女王寺井』→『“女帝”尚子様』。

 ああ,いとしの尚子様〜。管理人を快楽の泉へとどこまででも連れてってくださ〜い。
 管理人は『プリンセスT』で尚子様のアリ地獄へドップリとハマッテしまいました。

  01. Beijos (Kisses)
  02. Princess T - based on Maurice Ravel's “Pavane For
     A Dead Princess”

  03. Black Market
  04. Shadow Play
  05. Venice Ave.
  06. St. Thomas
  07. The Child Within
  08. Cantaloupe Island
  09. Mystique - based on Erik Satie's “Gymnopedie No.1”
  10. Bango Tango
  11. True Blue

(ビデオアーツ/VIDEOARTS 2000年発売/VACV-1037)

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寺井 尚子 / ピュア・モーメント5

PURE MOMENT-1 『THINKING OF YOU』が“男勝りな”寺井尚子なら『PURE MOMENT』(以下『ピュア・モーメント』)は“女盛りな”寺井尚子

 硬派から軟派へ…。『ピュア・モーメント』は,肩肘張らない,しかし芯の強さは変わらない,寺井尚子本来のしなやかで優雅な華のある演奏集。『ピュア・モーメント』の音造りは『シンキング・オブ・ユー』の副産物である。『シンキング・オブ・ユー』が売れて良かったなぁ。

 『ピュア・モーメント』こそ,寺井尚子“待望の”「寺井尚子・グループ」のデビュー盤。
 ピアノ奥山勝ベース池田達也ドラム藤井摂によるライブでのレギュラー・メンバーなのが大成功。
 成功の秘訣は寺井尚子の“豊かな”音楽性にある。寺井尚子ヴァイオリニストの前にジャズメンであり音楽家である。
 寺井尚子ジャズ・ヴァイオリニストとして“超一流の”テクニックを有している。同じ音符を弾くとしても,寺井尚子は一音一音,曲調に応じて弾き分けている。素晴らしい演奏力であり表現力である。正しくレインボー=七色の表情で光輝いている。
 しかしそれにも増して素晴らしいのは,甘く切なく骨太なグルーヴ。これである。このグルーヴ感に,多くのジャズ・ファンはKOされまくる。

 寺井尚子アドリブがスパークするや,もはや誰にも止められない。リスナーが想像も出来ない場所まで一気に連れ去ってくれる。
 この点でバンド・メンバーの果たす役割が非常に大きい。唐突にスイングするヴァイオリンピアノベースドラムが見事に追随し音を合わせている。まるで初めからもアドリブの目的地を知らされていたかのように…。
 素晴らしいコミュニケーション。素晴らしいバンド・サウンド=イメージの共有である。

PURE MOMENT-2 哀愁の【アディオス・ノニーノ】〜純愛の【ピュア・モーメント】の流れから一転,超アグレッシブで「フィーチャリング池田達也」な【サマー・タイム】に(いい意味で)打ちのめされてしまう。
 管理人はこの出だしの3曲で放心状態。大好きな【スペイン】なのにスロー・テンポなのが頭に入らない。再びスイッチが入るのが『ピュア・モーメント』のハイライト=宇多田ヒカルの【ファースト・ラヴ】〜アール・クルーの【ドリーム・カム・トゥルー】。大胆なのに繊細で,泣きたいくらいの歓喜に包まれていく。この“センチメンタルなリリシズム”に“女盛りな”寺井尚子を感じてしまう。

 東芝EMI移籍後の寺井尚子のクオリティは高い。寺井尚子・サウンドが完成している。文句のつけようがない。その点『ピュア・モーメント』には“粗さ”がある。まだ自分自身では抑制できない“感情の起伏”がある。エロスがある。

 『ピュア・モーメント』の“じゃじゃ馬なのにお嬢様育ち”のギャップ。管理人の愛聴盤である。

  01. Adios Nonino
  02. Pure Moment
  03. Summertime
  04. Fragile
  05. Spain
  06. Estate
  07. First Love
  08. Dream Come True

(ビデオアーツ/VIDEOARTS 1999年発売/VACV-1033)
(ライナーノーツ/青木和富,中西俊博)

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寺井 尚子 / シンキング・オブ・ユー5

THINKING OF YOU-1 寺井尚子は“遅咲きの”ジャズメンである。20歳でプロになりCDデビューまで10数年のセッション活動。矢野沙織寺久保エレナの“早熟”女子高生ジャズメンとは完成度が異なる。
 “未完の大器”を応援してファンみんなで育て上げるのが好みなのだが,いつまでも青田買いを続ける程ウブじゃない。要は“本物の新人”を聴きたいだけなのだ。

 寺井尚子のデビューCDTHINKING OF YOU』(以下『シンキング・オブ・ユー』)は“圧巻”である。管理人の寺井尚子歴は後追いなので,後追いだからこそ感じる,同時体験では書けない「寺井尚子のデビュー評」が書ける?
 そう。「鮭の川上り」でトリップしても変らないテイスト。これはCDを大人買いして,一日で全ディスコグラフィを聴き漁った者にしか分からないテイスト。逆回転して辿り着いた『シンキング・オブ・ユー』に唸ってしまったのだ。

 『シンキング・オブ・ユー』の“ディープな”ジャズ・ヴァイオリンの世界。これには寺井尚子の“遅咲きの”デビューが影響しているのかもしれない。
 「もしかしたら最初で最後のアルバム。自分の全てを出し切ろう」。同じく“遅咲きの”綾戸智絵と同様の危機感と狂喜の陰影の世界が“一曲入魂”の濃密な演奏集となっている。
 特にオープニング=寺井尚子お披露目の1曲目として【STOLEN MOMENTS】をセレクトしたあたりに気合と気概を感じてしまう。

 これは寺井尚子が公言していることだが,寺井尚子はソロ・ヴァイオリニストにしてバンド指向。織り重なるバンド・サウンドが鳴った上でのソロなのである。ゆえに寺井尚子CDは全てが上手にまとまっている。
 しかしそのほとんどがリハーサルをこなした上での一発録り。これぞジャズ,これぞスイングである。ヴァイオリンの弦がはじけ飛び,髪を振り乱してながら白熱していくアドリブ。この全てを生かす「寺井尚子のバンド・サウンド」が素晴らしい。

 ピアノ野力奏一ベース坂井紅介ドラム日野元彦が,共演しながら本気で寺井尚子に心酔している。名手3人が最高の技巧をもって寺井尚子に合わせていく。
 寺井尚子のバンド・サウンドが本格的に始動するのは次作『ピュア・モーメント』以降だが,どうしてどうして…。寺井尚子が望んでいた,野力奏一坂井紅介日野元彦の4人でのバンド・サウンドが十分「寺井尚子・グループ」の音している。

THINKING OF YOU-2 伸びやかで生きの良い【STOLEN MOMENTS】。一転して哀愁ソングな【出会い】。チャーリー・パーカーアルト・サックスからヴァイオリンへと持ち替えたかのような【DONNA LEE】。これぞジャズ・ヴァイオリンバラードI LOVE YOU, PORGY】。4人が燃え上がる【PACHIRA】。寺井尚子坂井紅介デュオUN PAJARO】。軽快なスインギー【DA−DA】。癒しの王様【HIGHWAY AT MIDNIGHT】。チック・コリアキース・ジャレット寺井尚子な【SUMMER NIGHT】。日野元彦を乗りこなす寺井尚子の【STRAIGHT NO CHASER】。幸福で無上の喜び=美メロの王様【THINKING OF YOU】。ビシビシくる〜【LITTLE SUNFLOWER】。ラストはラテン・バラードな【UN CHICO EN LA PLAYA】。

 全ディスコグラフィを「鮭の川上り」して最後に巡り合う“運命の”デビュー・アルバム。逆回転して最新作としても通用する“運命の”デビュー・アルバム。『シンキング・オブ・ユー』は寺井尚子の出発点にして到達点。
 大名盤シンキング・オブ・ユー』超えという「苦しみの杭」を背負って,寺井尚子の新たなる挑戦が始まった。

  01. Stolen Moments
  02. 出会い
  03. Donna Lee
  04. I Loves You, Porgy
  05. Pachira
  06. Un Pajaro
  07. Da-Da
  08. Highway At Midnight
  09. Summer Night
  10. Straight No Chaser
  11. Thinking Of You
  12. Little Sunflower
  12. Un Chico En La Playa

(ビデオアーツ/VIDEOARTS 1998年発売/VACV-1031)
(ライナーノーツ/児山紀芳,内田修)

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寺井 尚子 / BEST / STOLEN MOMENTS5

 『BEST』の9曲目は【STOLEN MOMENTS】(以下【ストールン・モーメンツ】)。


 寺井尚子の【ストールン・モーメンツ】は,同トラック数ある名演の中でも“ダントツ”のカッコよさ!
 オリバー・ネルソンの作曲のイメージに,寺井尚子ヴァイオリンほどマッチする楽器もないと思う。オリバー・ネルソン自身のサックス以上の相性である。

 マイナー・ブルースのテーマを流麗なユニゾンで示してから,寺井尚子ヴァイオリン野力奏一ピアノ坂井紅介ベースによる各ソロに入ってゆくのだが,このオーソドックスなユニゾンとアドリブの対比が肝!

 テーマで聴かせる寺井尚子の重音! 【ストールン・モーメンツ】はフロントの3管ユニゾンであるが,寺井尚子の【ストールン・モーメンツ】は,ヴァイオリンの一人二役! この重音がジャズ史上,現れたどんなフロント陣をも凌駕する美しさ! 軽やかに&しなやかに…。尚子さまぁ〜。

NAOKO TERAI : Violin
SOICHI NORIKI : Piano, Synthesizer
BENISUKE SAKAI : Bass
MOTOHIKO HINO : Drums

寺井 尚子 / BEST / LIBERTANGO5

 『BEST』の1曲目は【LIBERTANGO】(以下【リベルタンゴ】)。


 寺井尚子タンゴが凄い! このノリと気迫が寺井尚子の真骨頂である。
 【リベルタンゴ】の売りは,アコーディオンの名手=リシャール・ガリアーノ寺井尚子の共演にある。共演のセオリーからすれば,ゲストに花を持たせて「攻めさせて」レギュラー・グループがそれを「受ける」構図であろう。

 ところがどっこい【リベルタンゴ】は寺井尚子が攻める・攻める・攻めている! それでリシャール・ガリアーノが必死に受けている。そう。【リベルタンゴ】のホームは,リシャール・ガリアーノの方なのだ。
  
 この理解の元に【リベルタンゴ】を楽しもう。これが痛快の大傑作! フルスロットルのヴァイオリンアコーディオンが激しくぶつかり合いながら融合していく。美しい音色が重なり合う瞬間の奇跡! 凄すぎる!

NAOKO TERAI : Violin
MASARU OKUYAMA : Piano, Synthesizer
TATSUYA IKEDA : Bass
SETSU FUJII : Drums
HIROKI MIYANO : Guitar
RICHARD GALLIANO : Accordion

寺井 尚子 / BEST / PURE MOMENT5

 『BEST』の6曲目は【PURE MOMENT】(以下【ピュア・モーメント】)。


 【ピュア・モーメント】の美しさは,ヴァイオリンでないと表現できない,という批評はまっとうである。しかし【ピュア・モーメント】の真実は「寺井尚子でなければ表現できない」である。

 この優雅で上質な美しさにため息がこぼれる。もう何も手につかない。このままずっと【ピュア・モーメント】の優しさに包まれていたい。すなわち尚子さまに抱かれていたい,である。

 管理人には【ピュア・モーメント】を奏でる,尚子さまの心臓の鼓動が聴こえる。“ピュアな”心が透けて見える。ここにいるのは白い衣に身をまとった天使そのものである。

 奥山勝ピアノシンセサイザーが,天界への帰還を導いていく。時が来た。寺井尚子が“美のヴァイオリン”で地球への別れを告げていく。
 4分54秒で最高潮を迎えたヴァイオリンに,寺井尚子が恥らっている。しかしどんなに恥らおうとも6分0秒でついに昇天してしまう。管理人は尚子さまの白い着衣を離さないように今も両手で握り締めている。

NAOKO TERAI : Violin
MASARU OKUYAMA : Piano, Synthesizer
TATSUYA IKEDA : Bass
SETSU FUJII : Drums

寺井 尚子 / BEST / FIRST LOVE5

 『BEST』の7曲目は【FIRST LOVE】(以下【ファースト・ラヴ】)。


 宇多田ヒカルの名曲【ファースト・ラヴ】は,原曲も好きだったし,サンボーン・フリークとしては【FIRST LOVE(フィーチャリング・デヴィッド・サンボーン) 】まである。ウソ偽りなく【ファースト・ラヴ】は,管理人が一番聴いたJ−POPの1曲である。
 そこへもってきて寺井尚子の【ファースト・ラヴ】! これがハマッタ! 数あるツワモノの【ファースト・ラヴ】史上,文句なしのベスト・テイクである。

 【ファースト・ラヴ】を演奏している寺井尚子は一体誰を思い浮かべて弾いているのか? これをどんな表情で演奏しているのか?
 寺井尚子の人間性にまで惹かれてゆく。天にまで舞い上がろうかというヴァイオリンの調べに身も心も“トロトロに”溶けてしまいそう…。

 2分26秒からの寺井尚子アドリブが美旋律。3分32秒以降の高揚感が“もう堪らない”【ファースト・ラヴ】ハイライトである。3分53秒以降のヴァイオリンの“歌いっぷり”に意識が遠のいていく…。ああ…。

 加えてこれだけは書いておきたい。【ファースト・ラヴ】は,寺井尚子奥山勝によるデュエットだと思っている。
 寺井尚子の美しいヴァイオリンのロング・トーンのバックで,奥山勝ピアノが“コロコロ”と絶妙のハーモニーを付けていく。
 【ファースト・ラヴ】の“白眉の美しさ”の秘密は,太陽光である奥山勝に(ここは敢えて逆光ではなく)順光で照らされた,尚子様の「まっぱ」である。

NAOKO TERAI : Violin
MASARU OKUYAMA : Piano, Synthesizer
TATSUYA IKEDA : Bass
SETSU FUJII : Drums

寺井 尚子 / BEST5

BEST-1 管理人は寺井尚子に感謝している。正直,寺井尚子に何度も救われてきた。
 管理人はジャズを拝聴する。たとえライトなフュージョンであってもBGMとして「流し聞き」するのが苦手である。それで時に問題が生じる。ジャズ好きとしては情けない話だが,黒々ハード・バップの殺気に満ちたCDを続けざまに聴いていると,時に息苦しさを感じてしまうのだ。

 さて,そこでどうするか? 管理人には奥の手がある。とっておきの“女王様”ジャズ・ヴァイオリニスト寺井尚子の大登場である。寺井尚子ヴァイオリン片手に耳元へ駆けつけた瞬間,場の空気が一変する。そう。寺井尚子は管理人にとって「癒しの女神」なのである。

 あの麗しいヴァイオリンの調べ! 正直,クラシック音楽の“象徴”であるヴァイオリンを,ジャズフュージョン・マニアが“こんなにも”愛するようになろうとは…。周りから「喰わず嫌いだ」と言われ続けたが,正にその通りだった。実際,管理人と寺井尚子のファースト・コンタクトは“流行遅れ”であった。

 きっかけは,寺井尚子J−ジャズ界の“女王様”への階段を登り始めた,メジャー移籍後(東芝EMI)に発売された,インディーズ(ビデオアーツ)時代のベスト盤BEST』(以下『ベスト』)であった。
 ( 余談であるが管理人の中では「女王」と来れば上原ひろみ「クイーン」と来れば矢野沙織であるが「女王様」と来れば寺井尚子であ〜る! 尚子さまぁ〜! ) 

 とりあえずの1枚。軽い気持ちで初めて聴いた寺井尚子に驚いた。このノリはヴァイオリンの形をとった管楽器のノリである。
 寺井尚子ヴァイオリンの全てを知り尽くしている。ヴァイオリンの美しい音色が生きる演奏を土台としつつ,ヴァイオリンだけが挑戦権を持つ“ジャズ的表現”の世界! アグレッシブかつニュアンス“たっぷりな”ずば抜けたな演奏力!

 要はジャズメンはジャズメン。寺井尚子は何をやってもジャズになる。ヴァイオリングルーヴする! ヴァイオリンサックス・フレーズを奏でるアドリブ
 そう。寺井尚子は唯一無二のジャズ・ヴァイオリニスト! 寺井尚子ジャズ・ヴァイオリンは“スペシャル”な存在なのだ。

 前述した『ベスト』が当たった。というのも寺井尚子ジャズ・ヴァイオリンは徐々に大人に,徐々にムーディに,徐々に成熟へと向かっている。最初に『ジェラシー』を聴いていたら印象が違ったかもしれない。(あっ,誤解のないように。『ジェラシー』は名盤です)。音楽性の変化の是非はおいといて,ビデオアーツ時代には管理人好みの“イケイケ調”が多かったのは確かである。要は意表を突かれ→ツボを突かれてしまったのだ。
 そして『ベスト』は『ベスト』である。寺井尚子の『ベスト』の演奏集である。悪かろうはずがない。すっかりやられてしまった。

BEST-2 これも余談であるが,管理人は通常,ベスト盤は「買わない主義」である。尤も買うこともある。ただしそれは新録音や未発表テイクが収められている場合に限られる。だって全てのオリジナル・アルバムをコンプリートしてしまえば,ベスト盤など重複品の不用品。もっと言えば「レコード会社が選んで焼いたCD−R」だと思っている。 ← 関係者の皆様,暴言をお許しください。

 幸いなことに,寺井尚子ベスト盤には一曲の未発表曲【暑い眼差し】が含まれているので,売り飛ばすさずに済みそうである。しかし仮に未発表曲が含まれていなくとも,今回は管理人の中の“掟”を破ってでも最後まで手元に置いておく事だろう。
 そう。『ベスト』は,管理人と寺井尚子の記念すべき出会いの1枚なのだから…。

  01. Libertango
  02. Thinking Of You
  03. Beijos (Kisses)
  04. Shadow Play
  05. Spain
  06. Pure Moment
  07. First Love
  08. Donna Lee
  09. Stolen Moments
  10. La Valse a Margaux
  11. All For You
  12. Will Someone Ever Look at Me That Way

(ビデオアーツ/VIDEOARTS 2003年発売/VACV-1043)

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ハービー・ハンコック

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ザ・サウンド・オブ・サマー・ランニングザ・サウンド・オブ・サマー・ランニング
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