アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

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CD批評:グラント・グリーン

グラント・グリーン / フィーリン・ザ・スピリット / SOMETIMES I FEEL LIKE A MOTHERLESS CHILD4


 『FEELIN’ THE SPIRIT』の5曲目は【SOMETIMES I FEEL LIKE A MOTHERLESS CHILD】(以下【時には母のない子のように】。


 【時には母のない子のように】は,タイトル通りの「うら淋しい」夜のブルースである。

 グラント・グリーンの,スナップの効いた強烈なギター・リフが耳に痛い! これがまたネチッコイうえにリズミカルときている! 【時には母のない子のように】のような“ザ・ブルース”は,お腹一杯の時に聴いてはいけない。
 3分15秒からのハービー・ハンコックピアノ・ソロがいい。重厚であるがグラント・グリーンのような満腹感は覚えない。黒い。ただそれだけ。これはライカの黒である。

 【時には母のない子のように】には,グラント・グリーンハービー・ハンコックの他にもう一人主役がいる。それが2人のソロのバックで“時間正しく暴れ出す”ビリー・ヒギンズドラミングが楽しい。
 トラックに耳が慣れてきたなら,読者の皆さんにもビリー・ヒギンズドラムだけを追いかけてみて欲しい。「なるほど。オーネットコールマン」と合点がいくと思う。素晴らしいドラマーである。

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

GRANT GREEN : Guitar
HERBIE HANCOCK : Piano
BUTCH WARREN : Bass
BILLY HIGGINS : Drums
GARVIN MASSEAUX : Tambourine

グラント・グリーン / フィーリン・ザ・スピリット / GO DOWN MOSES4


 『FEELIN’ THE SPIRIT』の4曲目は【GO DOWN MOSES】(以下【ゴー・ダウン・モーゼス】。


 日本の○○節テイストの「♪ジャンジャンジャジャンジャン」が楽しい【ゴー・ダウン・モーゼス】での“黒ノリ”を聴いてほしい。

 アメリカ田舎のド・ファンク夏祭りで「ホーン・ライク」なシングル・トーンで,エッサッサ! 金魚すくいがドジョウすくいへと看板を書き換えていく!
 52秒からのグラント・グリーンギター・ソロは,濱口の「とったど〜」&「どぜうモン」攻撃には「笑う男」である。 ← 分かるかなぁ? 聴いても意味不明かも?

 2分52秒からのハービー・ハンコックピアノ・ソロは“垢抜けて”カッコイイ! ブロック・コード中心に重厚かつどす黒く迫るアドリブの連続が“ジャズ・ロック風”である。

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

GRANT GREEN : Guitar
HERBIE HANCOCK : Piano
BUTCH WARREN : Bass
BILLY HIGGINS : Drums
GARVIN MASSEAUX : Tambourine

グラント・グリーン / フィーリン・ザ・スピリット / NOBODY KNOWS THE TROUBLE I'VE SEEN4


 『FEELIN’ THE SPIRIT』の3曲目は【NOBODY KNOWS THE TROUBLE I’VE SEEN】(以下【ノーバディ・ノウズ・ザ・トラブル・アイヴ・シーン】。


 なぜかソニー・ロリンズの【テネシー・ワルツ】をイメージしてしまう【ノーバディ・ノウズ・ザ・トラブル・アイヴ・シーン】は,しっとりと郷愁を誘う,もろ・グラント・グリーンの音世界に違いないのだが…。
 お叱り覚悟で,ぶっちゃけ,この成功は全てハービー・ハンコックの名演出の賜物である。

 例えば,3分11秒からのグラント・グリーンのリフもハービー・ハンコックピアノがなければ盛り上がらない。4分1秒からの2人のユニゾンもハービー・ハンコックの“音階の上がり具合”が肝である。
 ハービー・ハンコックの“爽やかなスロー・ブルース”は正しく「新主流派前夜の音」である。

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

GRANT GREEN : Guitar
HERBIE HANCOCK : Piano
BUTCH WARREN : Bass
BILLY HIGGINS : Drums
GARVIN MASSEAUX : Tambourine

グラント・グリーン / フィーリン・ザ・スピリット / JUST A CLOSER WALK WITH THEE4


 『FEELIN’ THE SPIRIT』の1曲目は【JUST A CLOSER WALK WITH THEE】(以下【ジャスト・ア・クローサー・ウォーク・ウィズ・ジー】。


 【ジャスト・ア・クローサー・ウォーク・ウィズ・ジー】は,のんびりとしたご機嫌スイング! やけに先行するビリー・ヒギンズの叩き出すリズムに乗せられて,ニグロ・スピリチュアルな『フィーリン・ザ・スピリット』の珍道中の始まり始まり〜!

 【ジャスト・ア・クローサー・ウォーク・ウィズ・ジー】の“目玉”は,ハービー・ハンコックファンキー・ピアノ! グラント・グリーンが黄門様なら,ハービー・ハンコックは助さんである。そう思えるフレーズがあった。
 3分14秒から23秒までのフレーズを聴いてほしい。そう。グラント・グリーン“お得意の”フレーズである。グラント・グリーンに花を持たせたハービー・ハンコックであったが,その後は一人ファンク大会! ファンキーにまみれたアドリブの嵐に大満足である。

 黄門様=グラント・グリーンは,やっぱり“伝家の宝刀”紋所を切ってくる。4分45秒からのリフレインがたまらない。

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GRANT GREEN : Guitar
HERBIE HANCOCK : Piano
BUTCH WARREN : Bass
BILLY HIGGINS : Drums
GARVIN MASSEAUX : Tambourine

グラント・グリーン / フィーリン・ザ・スピリット / JOSHUA FIT DE BATTLE OB JERICHO5


 『FEELIN’ THE SPIRIT』の2曲目は【JOSHUA FIT DE BATTLE OB JERICO】(以下【ジェリコの戦い】。


 “アーシー”なムードに【コンドルは飛んでいく】のメロディが融合した【ジェリコの戦い】のテーマ弾きが,グラント・グリーンの真骨頂! 朴訥なメロディをひたすら繰り返しながらエクスタシーの瞬間へと登り詰めていく!

 管理人の好みは【ジェリコの戦い】のテーマ弾きであるが,聴き所は別物。テーマに挟まれた中盤にこそある。
 2分31秒から3分3秒までの早弾きフレーズを聴けば,3分7秒から3分43秒までが“同じモチーフ上のアドリブ”であることが良くわかる。この展開,変形メロディの思考パターンにグラント・グリーンの個性が現れている。ここが好きなんだよなぁ。

 そしてハービー・ハンコック! 3分47秒からのハービーピアノ連弾は,グラント・グリーンの流れを受けた“ご愛嬌”だろうと思っていたが,4分9秒4分14秒までは“モロ”そうだし,完全にハービー・ハンコックアドリブが“グラント・グリーン化”してしまっている。どうしたハービー? いいえ,これこそグラント・グリーンの底力! ハービー・ハンコックに感化を与え得たジャズメンは「マイルス・デイビスか,グラント・グリーンか」という大袈裟な話? いいんです。グラント・グリーンは“小粒”でいいんです。管理人さえそう信じていれば,いいんですっ!

 5分51秒から6分0秒の“泣きのギター”。6分22秒から6分33秒でまたまた繰り出すリフレイン! シングル・トーンに“じんわり”やられてしまう。歌心あるよなぁ。グラント・グリーンの“魂のギター”を耳にすれば,あのサンタナでも“泣き”が入ったことと思います。

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

GRANT GREEN : Guitar
HERBIE HANCOCK : Piano
BUTCH WARREN : Bass
BILLY HIGGINS : Drums
GARVIN MASSEAUX : Tambourine

グラント・グリーン / フィーリン・ザ・スピリット5


フィーリン・ザ・スピリット グラント・グリーンと出会えたことを幸運に思っている。グラント・グリーンは,ジャズを聴いていなかったら決して出会うことのなかった「B級」ジャズ・ギタリストである。そう。グラント・グリーンを聴く楽しみは,ジャズ好きのみに“許された”特権なのである。

 グラント・グリーンは,決してテクニシャン・タイプではない。むしろ不器用そのものである。悪く言えば「ワン・パターン」に違いない。しかしグラント・グリーンの“誰にでも簡単に弾けそうなフレーズを何度も繰り返し積み上げていく”ギター・スタイルは,実はそう易々と“できそうでできない”代物なのである。紙一重のレベルで“一芸を極めた”グラント・グリーンジャズ・ギターには,ジャズの“酸いも甘いも”を味わってきたものだけが辿り着ける「電化マイルス」以上の価値さえあると思っている。

 全てのジャズ上級者たちよ。『FEELIN’ THE SPIRIT』(以下『フィーリン・ザ・スピリット』)を聴け! グラント・グリーン奏でる,ニグロ・スピリチュアルな『フィーリン・ザ・スピリット』の音世界へ足を踏み入れよ! …って,強気の中山康樹風です。
 ねっ,ズボズボでしょ? グラント・グリーンの禁断の音世界へ一歩足を踏み入れたなら二度と抜け出せなくなるのです。そう。グイグイ足を取られていく,確実に底なし沼へと引きずり込まれる感触が味わえるのです。
 図太い音色で同じフレーズを執拗に繰り返し続ける“一人コール&レスポンス”で,いつしか絶頂へと登り詰めた時の快感! 管理人は,グラント・グリーンの“一人コール&レスポンス”で幻聴体験を迎えるのが常である。(危な〜い)
 幻聴体験とは,すなわち,グラント・グリーンの“声”がCDから聞こえてくる。グラント・グリーンに“語りかけられている”気がしてしょうがないのである。黒人霊歌を甘美なシングルトーンで,時に情熱的に時に哀愁を湛え真摯に語りかけてくる。そして年に一度はグラント・グリーンの“声”が霊界との会話に聞こえてくるから一大事である。(おお危ない危ない)
 そう。グラント・グリーンジャズ・ギターは,ウエス・モンゴメリーとは違う意味での“神業”なのである。

 きっとグラント・グリーンへの評価が「B級」なのは,真似しようとも真似できない,手が届きそうで届かない,掴めそうで掴めない“はがゆさ”ゆえ? 永遠に現実と幻想が交錯する“幻聴のジャズ・ギター”だからに違いない。

(1962年録音/TOCJ-9038)

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