アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

CD批評:チェット・ベイカー

チェット・ベイカー / オー・ユー・クレイジー・ムーン〜ザ・レガシー VOL.44

OH YOU CRAZY MOON-1 “廃人”チェット・ベイカーの晩年については語りたくない。
 管理人の本音はチェット・ベイカーのプライベートだけではなく“ジャズトランペッター”としてのチェット・ベイカーのについてである。

 チェット・ベイカーの晩年のCDは手元には1枚もない。全てがお払い箱行き。そんな中での『OH YOU CRAZY MOON』(以下『オー・ユー・クレイジー・ムーン〜ザ・レガシー VOL.4』)の購入には訳がある。

 それこそ副題=『ザ・レガシー』シリーズにある。そう。『オー・ユー・クレイジー・ムーン〜ザ・レガシー VOL.4』はエンヤが誇る発掘音源集。
 チェット・ベイカーの『ザ・レガシー』シリーズには『VOL.1』から『VOL.4』まで4枚あるが,1枚だけを(【ラヴ・フォー・セール】と【マイ・ファニー・ヴァレンタイン】が聴きたいという選曲の理由で)購入してみた次第である。

 『オー・ユー・クレイジー・ムーン〜ザ・レガシー VOL.4』は録音された1978年頃のチェット・ベイカーは「下り坂」に当たる。トランペットはすでに劣化が始まっている。
 当然,チェット・ベイカーにはその自覚があったことだろう。しかしチェット・ベイカーは,自身の「下り坂」を隠そうとはしていない。“廃人”ゆえに予想できることとして,劣化を止める努力はしなかったのだろう。ダメダメである。しかし…。

OH YOU CRAZY MOON-2 このダメダメの剥き出しが恐ろしい。チェット・ベイカーはここまで落ちてもなんとかなる。いいや,この「枯れ具合」が好みの仕上りなのだ。ビンテージ・ジーンズのような「色落ち」なのだ。雨や風にさらされて小石で削られヒゲが出来る。そんな風合いのトランペットが絶妙であって,この「色落ち」はチェット・ベイカーならでの味。パッと出の天才では絶対に表現できない“色”があるのだ。

 人生,何かを失いながら美しくなっていく。油が抜けてカサカサになったからこそ感じる素材感がある。失って初めて得られる美しさがあるのだ。
 そう。人生はビンテージ…。ジャズはビンテージ…。「色落ち」のジャズは美しい…。

  01. THE TOUCH OF YOUR LIPS
  02. BEAUTIFUL BLACK EYES
  03. OH YOU CRAZY MOON
  04. LOVE FOR SALE
  05. ONCE UPON A SUMMERTIME
  06. MY FUNNY VALENTINE

(エンヤ/ENJA 2003年発売/GQCP-59037)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/キャロル・ベイカー,田中英俊)

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チェット・ベイカー / ラヴ・ソング4

LOVE SONG-1 チェット・ベイカー“晩年の代表作”である『LOVE SONG』(以下『ラヴ・ソング』)。

 このように紹介してしまうと,枯れというか円熟というか哀愁というか,ベテランのいぶし銀的なニュアンスを欲してしまうものなのだが,チェット・ベイカーの場合は残念ながらそうではない。チェット・ベイカージャズ・トランペットは,いつ,どこで吹こうとも余り変化しないのだ。
 チェット・ベイカーの基本はワン・パターン。多少,ピッチが速くなるか,遅くなるかの差であって,遅くなる場合は運指がついていけないだけ?

 そう。晩年のチェット・ベイカーの魅力は「衰退」である。どんどんどんどん壊れていく。才能の枯渇を感じてしまう。指だけではなく頭の回転も遅れがちなのだろう。でもでも,これだけは言っておきたい。チェット・ベイカーほど,老いれば老いるほど“ジャズメン”を強烈に感じさせる男はいない。

 思うにチェット・ベイカーにとって,ジャズとは仕事であって,それ以上でもそれ以下でもなかったのではなかろうか? チェット・ベイカージャズを,ただ吹き流している。も吹くがそれは彼にとって“お遊び”であり,仕事上の“手抜き”であったように思う。
 チェット・ベイカーは自らの音楽に魂を吹き込んだりはしなかった。ジャズという音楽に媚びることがなかったのだ。

 そう。だからこそチェット・ベイカーに「瞬間芸術」であるジャズを強烈に,そして猛烈に感じてしまう。の冴えが衰え,余分なものが削ぎ落とされた結果,多用された“手癖”にジャズの“伝統芸能”を聞く思いが募ってしまう。

LOVE SONG-2 古典中の古典である【ROUND MIDNIGHT】が素晴らしい。全ジャズ史における【ROUND MIDNIGHT】の“指折りの名演”である。

 このストレートな解釈にこそ【ROUND MIDNIGHT】の魂がある。無心で奏でた【ROUND MIDNIGHT】にチェット・ベイカーの「失われた歴史」が詰まっている。才能を食いつぶした「灰の体」に“ジャズメン魂”だけが残されている。こうなるまでにはそれなりの時間を浪費する必要があったのだ。

 チェット・ベイカー“晩年の代表作”『ラヴ・ソング』の評価に異論などない。

  01. I'M A FOOL TO WANT YOU
  02. YOU AND THE NIGHT AND THE MUSIC
  03. ROUND MIDNIGHT
  04. AS TIME GOES BY
  05. YOU'D BE SO NICE TO COME HOME TO
  06. ANGEL EYES
  07. CARAVELLE

(ベイステイト/BAYSTATE 1987年発売/BVCJ-37548)
(ライナーノーツ/油井正一)

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チェット・ベイカー / 枯葉5

SHE WAS TOO GOOD TO ME-1 大方のジャズ・ファンにとって【枯葉】と来ればマイルス・デイビスであろう(ここをキャノンボール・アダレイ名義と呼ぶ人は真のジャズ・ファンとは認められない!)。
 しかし10人中7,8人はマイルス・デイビスであったとしても,残る2,3人にとって【枯葉】と来れば,ビル・エヴァンスであり,キース・ジャレットであり,ウィントン・ケリーである。【枯葉】はジャズの大スタンダードなのだから,至極当然の話…。

 …で,管理人にとっての【枯葉】とは? この答えが難しい。というのは日替わりで好きな【枯葉】が変わっていくのだから…。
 …で,本日取り上げる【枯葉】はチェット・ベイカーの【枯葉】。チェット・ベイカーの【枯葉】はトラック単体でも素晴らしいが,一枚のアルバムとして聴き通しても素晴らしい。
 ズバリ,チェット・ベイカーの【枯葉】の『枯葉』こそ,チェット・ベイカーの“最高傑作”であり,CTIレーベルを代表する“名盤中の名盤”である。

 ECMブルーノートには及ばないがCTIという言葉を聞くだけで胸を躍らせてしまう管理人。CTIには本当にいいアルバムが多い。イージー・リスニング調の「売れ線ジャズ」でありながらマニアをも納得させる上質のジャズフュージョンを堪能できる。その意味で『枯葉』こそがCTIの全てだと言い切ってもよいと思う。

 チェット・ベイカーが“フュージョンもどき”の【枯葉】を吹いているのだが,甘く暖かな音色の中にも枯淡の響きを持つトランペットを“盛り上げる”スティーブ・ガッドジャック・デジョネットの攻撃的な“うるさ型”ドラミングボブ・ジェームスの控え目なのに華やかなエレピロン・カーターの脈打つベースを従えた,チェット・ベイカーと同じまろやか方面のポール・デスモンドアルトサックスが「死にゆく葉っぱ」を埋葬している。ありそうでなかったこのアイディアを完璧に具現化したCTIサウンドが素晴らしい。

 テクニカルなのにズバッとハマッタ【枯葉】の大名演ジャズスタンダードフュージョンの新曲であるかのように新鮮に聞こえてしまう。今もって新鮮味が衰えない真の大名演
 思うに,引退と復帰を繰り返し,何度目かのカムバックを果たした自分自身の人生と,売れ線のフュージョンという時代とCTIドン・セベスキーとの出会い等,名演を生み出す幾つものタイミングが全てマッチしたのだろう。

 やっぱりチェット・ベイカーは「スター」だよなぁ。チェット・ベイカーこそが「千両役者」なんだよなぁ。クリード・テイラーがお膳立てした,後は吹くだけ,の大仕事をキッチリとこなした結果だと思う。打つべきところで打ってくれる「3番打者」長嶋茂雄的な名演だと思う。

SHE WAS TOO GOOD TO ME-2 しかし,この大名演の【枯葉】を抑えた『枯葉』本来のタイトル・トラック【シー・ワズ・トゥー・グッド・トゥ・ミー】が「4番打者」王貞治的な大名演である。

 管理人なんかは【シー・ワズ・トゥー・グッド・トゥ・ミー】のメロウなオーケストラ調のイントロが流れてくるだけで,もう涙ウルウル〜。70年代以降のチェット・ベイカーボーカルフランク・シナトラ・チックに流麗な盛り上がりを聴かせていくのだが,そのクライマックスへ来ての“可憐でキュートで甘美すぎる”間奏でのトランペットソロに,涙チョチョギレ〜。
 加えてストリングスエレピがオルゴール調でハーモニーを付けてくるのだから,た・ま・ら・な・い〜。

 悲しみの歌なのに,愛と希望そして勇気のメッセージ・シングに思えてしまって心の奥底から感動してしまう。シビれる。もうどうにでもよくなってしまう美しすぎる絶品バラード

 管理人はこの【シー・ワズ・トゥー・グッド・トゥ・ミー】を聴き続けて,ついに結婚することを決めました。はい。「人生この一曲」なのであります。
 お相手もこれまた『枯葉』のジャケット写真のような少女のようなお方です。決定的な出来事が1つと準決定的な幾つもの出来事が同時期に重なり合い10年越しの運命を感じました。こそっと?読者の皆さんへご報告させていただきます。
 独身主義の管理人。友人の皆さんは多分信じてくれない? 後日,改めて個人的にご報告させていただきます。それまではそっとしておいてくださいませ。

  01. AUTUMN LEAVES
  02. SHE WAS TOO GOOD TO ME
  03. FUNK IN DEEP FREEZE
  04. TANGERINE
  05. WITH A SONG IN MY HEART
  06. WHAT'LL I DO
  07. IT'S YOU OR NO ONE

(CTI/CTI 1975年発売/KICJ-9003)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/ダグ・ラムゼイ)

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チェット・ベイカー / マイ・ファニー・ヴァレンタイン〜チェット・ベイカー・ウィズ・ストリングス3

CHET BAKER WITH FIFTY ITALIAN STRINGS-1 チェット・ベイカーの「ウィズ・ストリングス」。絶対に大当たり企画だと思っていたのに…。

 ハズレだハズレ。『CHET BAKER WITH FIFTY ITALIAN STRINGS』(以下『マイ・ファニー・ヴァレンタイン〜チェット・ベイカー・ウィズ・ストリングス』)は大ハズレ。これってジャズではなくイージー・リスニング?

 「ウィズ・ストリングス」に加えての木管群とホーン隊までが加わった?ゴージャスでムーディーなスタンダード集。しかし同じトランペット奏者の『クリフォード・ブラウン・ウィズ・ストリングス』とのテイストとは真逆な“軟弱”チェット・ベイカーが登場している。

 これほど甘々なものはそうはあるまい。『マイ・ファニー・ヴァレンタイン〜チェット・ベイカー・ウィズ・ストリングス』の甘ったるさは,幾ら“甘党の”ジャズ・ファンであったとしても受け入れ難いものがある。

 そう。『マイ・ファニー・ヴァレンタイン〜チェット・ベイカー・ウィズ・ストリングス』のハイライトは,チェット・ベイカーのイージー・リスニング調トランペットではなく,チェット・ベイカーの退廃感を増したボーカルにある。

 バックが甘々であるがため,普段は受け入れ難い,チェット・ベイカーの“退廃感”が丁度良い塩梅。
 『マイ・ファニー・ヴァレンタイン〜チェット・ベイカー・ウィズ・ストリングス』の“目玉”である【MY FUNNY VALENTINE】が秀逸である。定番である『CHET BAKER SINGS』収録の【MY FUNNY VALENTINE】における中性的な魅力に,今回はロマンチシズムがプラスされ“ゲテモノ”を卒業した素晴らしいジャズ・ボーカルだと思う。

 【ANGEL EYES】【FORGETFUL】【DEEP IN A DREAM】のボーカル・ナンバーも同様に“退廃感”のあるボーカルが“甘いストリングス”で中和されたジャズ・ボーカルへと昇華されている。
 特に【FORGETFUL】におけるトランペットともボーカルとも区別がつかない器楽的なアーティキュレイションはジャズ・ボーカリストのそれである。

CHET BAKER WITH FIFTY ITALIAN STRINGS-2 管理人の結論。『マイ・ファニー・ヴァレンタイン〜チェット・ベイカー・ウィズ・ストリングス批評

 『マイ・ファニー・ヴァレンタイン〜チェット・ベイカー・ウィズ・ストリングス』は,ロマンティックという“甘味料入れすぎ”のゴージャスでムーディーなスタンダード集。ゆえにそのままで聴いたらイージー・リスニング・ジャズの「外道」であって,廃棄処分は間違いない。
 ただしトランペット抜きに“ジャズ・ボーカリストチェット・ベイカーのアルバムとして評価するなら,これはこれでアリかもしれない。

 “甘味料入れすぎ”な『マイ・ファニー・ヴァレンタイン〜チェット・ベイカー・ウィズ・ストリングス』はブラック・コーヒーを飲みながら聴いていただきたい。アルコールではダメなのです。

  01. MY FUNNY VALENTINE
  02. I SHOULD CARE
  03. VIOLETS FOR YOUR FURS
  04. THE SONG IS YOU
  05. WHEN I FALL IN LOVE
  06. GOODBYE
  07. AUTUMN IN NEW YORK
  08. ANGEL EYES
  09. STREET OF DREAMS
  10. FORGETFUL
  11. DEEP IN A DREAM

(ジャズランド/JAZZLAND 1959年発売/VICJ-2183)
(ライナーノーツ/小川隆夫)

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チェット・ベイカー / チェット・ベイカー・プレイズ・ラーナー&ロウ5

CHET BAKER PLAYS THE BEST OF LERNER AND LOEWE-1 『CHET BAKER PLAYS THE BEST OF LERNER AND LOEWE』(以下『チェット・ベイカー・プレイズ・ラーナー&ロウ』)こそが,管理人の「愛聴盤」である。チェット・ベイカーの「裏名盤」だと思っている。

 バラードを紡いだ『チェット』の姉妹盤であり,ミュージカルのソング・ブックを紡いだ『チェット・ベイカー・プレイズ・ラーナー&ロウ』は,天性の才能だけで“成り上がってきた”チェット・ベイカーが辿り着いた「ザ・リラックス」。

 『チェット』に参加していたバリトンサックスペッパー・アダムスフルートハービー・マンピアノビル・エヴァンスに加えて,アルトサックステナーサックスズート・シムズの「超VIP」級のフロント陣とピアノビル・コーウィンベースアール・メイドラムクリフォード・ジュアーヴィスの「B級」リズム隊。
 この“頭デッカチ”な異色の編成が『チェット・ベイカー・プレイズ・ラーナー&ロウ』成功のミソである。

 そう。全ては「ラーナー&ロウ」の名曲をメロディアスにプレイするための布陣。リズム隊に気兼ねすることなく“朗々と”ブローする。名曲を演奏する音楽家としての幸福。ロマンティックでリラックスな“メロメロ系”の大名演である。

 「大名演だ。愛聴盤だ。裏名盤だ」。そう大声を張り上げるのがバカバカしく感じる。
 チェット・ベイカーのファンなら同じだと思うのだが『チェット・ベイカー・プレイズ・ラーナー&ロウ』は,あまり人に知られてほしくはない。メディアからの取材は「ノー・サンキュー」。

 ズバリ『チェット・ベイカー・プレイズ・ラーナー&ロウ』は“大人のくつろぎ”な音楽であり,大人の音楽ファンだけが一生聞き続けるであろう大事な大事な宝物の1枚なのである。

CHET BAKER PLAYS THE BEST OF LERNER AND LOEWE-2 淡々と力の抜けた演奏なのに,チェット・ベイカーらしい“華”のあるトランペットは,エコーのかけすぎで「風呂場での鼻歌?」のようである。ひたすら上下からも左右からも前後からも“甘いささやき”が響いて来る。リリカルでメロディに忠実な演奏は(風呂場だけに)「水を得た魚」のようでもある。
 チェット・ベイカーの“まろやか音色”がロマンチシズム。“繊細な優しいトーン”がリリシズム。全てを忘れてジャズに無心で「酔いしれる」のみである。

 そう。『チェット・ベイカー・プレイズ・ラーナー&ロウ』は,チェット・ベイカー・ファンだけの「隠れ家」。ジャズ・ファンだけの「隠れ家」。通だけが知っている秘密の「隠れ家」なのである。

  01. I'VE GROWN ACCUSTOMED TO HER FACE
  02. I COULD HAVE DANCED ALL NIGHT
  03. THE HEATHER ON THE HILL
  04. ON THE STREET WHERE YOU LIVE
  05. ALMOST LIKE BEING IN LOVE
  06. THANK HEAVEN FOR LITTLE GIRLS
  07. I TALK TO THE TREES
  08. SHOW ME

(リバーサイド/RIVERSIDE 1959年発売/VICJ-2205)
(ライナーノーツ/オリン・キープニュース,岡崎正通)

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チェット・ベイカー・ウィズ・ビル・エヴァンス / チェット5

CHET-1 トランペットチェット・ベイカーピアノビル・エヴァンス“夢の共演盤”が『CHET』(以下『チェット』)。

 『チェット批評チェット・ベイカービル・エヴァンスの“化学反応”を軸にレヴューするのが筋なのだが『チェット』を聴いた感想は『チェット』=チェット・ベイカーの「リーダー名義」。「ソロCD」と称しても過言ではない。
 それくらいに『チェット』におけるチェット・ベイカートランペットが突出している。この一点でピアノビル・エヴァンスとの共演が大成功だったということだ。

 ソフトでまろやかで吹奏楽っぽいのに,これぞジャズ!としか言いようのないチェット・ベイカートランペット。この魅力をビル・エヴァンスリリシズムが見事に引き出している。
 ジム・ホールといい,キャノンボール・アダレイといい,チェット・ベイカーといい,スタンゲッツといい,トニー・ベネットといい,エディ・ゴメスといい,ビル・エヴァンスデュエット作はその全てがジャズ史に残る名盤である。
 …ということで管理人はビル・エヴァンスチェット・ベイカーと共演した『チェット』も(デュオ作ではないが)名盤に認定する。

 『チェット』は,チェット・ベイカービル・エヴァンスデュオ名義となっているが,本当はデュエット作ではない。
 トランペットチェット・ベイカーバリトンサックスペッパー・アダムスフルートハービー・マンピアノビル・エヴァンスギターケニー・バレルベースポール・チェンバースドラムフィーリー・ジョー・ジョーンズドラムコニー・ケイの超豪華メンバー。

 しかしこのクセ者の豪華メンバーが集結した『チェット』が,紛れもなくチェット・ベイカーの「ソロCD」に聴こえてしまう。他の共演者を「完全掌握」したビル・エヴァンスの“黒子役”が見事に機能しているからだ。

 ジャケット写真そのものの,王道バラード集=『チェット』ゆえビル・エヴァンスピアノリリカルにお膳立てしてからのトランペットの“入魂のテーマ”が淀みなく鳴り響く。
 バリトンサックスフルートもテーマを吹くが時間はほんの1コーラス。つまりはチェット・ベイカートランペットによる“疑似ワン・ホーン・アルバム”な音造り。この上でビル・エヴァンスピアノが“消える瞬間”が演出されている。

CHET-2 ズバリ『チェット』の聴き所は,トランペットベースドラムトランペットトリオ
 しかしこのトランペットトリオのエッセンスがビル・エヴァンス流。

 スムーズなチェット・ベイカートランペットが鳴り響く中,消えたピアノにハッキリと感じるビル・エヴァンスの陰。ビル・エヴァンスピアノを弾かずともチェット・ベイカーと共演してみせている。

  01. ALONE TOGETHER
  02. HOW HIGH THE MOON
  03. IT NEVER ENTERED MY MIND
  04. 'TIS AUTUMN
  05. IF YOU COULD SEE ME NOW
  06. SEPTEMBER SONG
  07. YOU'D BE SO NICE TO COME HOME TO
  08. TIME ON MY HANDS (YOU IN MY ARMS)
  09. YOU AND THE NIGHT AND THE MUSIC
  10. EARLY MORNING MOOD

(リバーサイド/RIVERSIDE 1959年発売/VICJ-60340)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/オリン・キープニュース,市川正二)

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チェット・ベイカー / チェット・ベイカー・イン・ニューヨーク4

CHET BAKER IN NEW YORK-1 ウエスト・コーストジャズのトップスターであったチェット・ベイカーがイースト・コーストへ…。
 日本風に言えば「上京」した理由は,大阪芸人の東京進出よろしく「全国区を目指す」的なニュアンスに思えるのだが,その真実は悲しい。音楽的な理由ではなく単純に“麻薬からの逃亡”であった。 百歩譲って音楽的な理由を探そうにも“衰退していくウエスト・コーストジャズからの逃亡”のように思う。沈みゆく泥船から逃げ出せ〜,が“廃人”チェット・ベイカーらしく思える。

 そう。売人との縁切りと警察に逮捕される恐れ,そして仕事を失う恐れから物理的に逃れる手段としての“後ろ向きな”イースト・コースト進出なのだから,イースト・コーストのチェット・ベイカーが最高,などというレビューを読むとちゃんちゃらおかしくなってしまう。
 環境の変化がチェット・ベイカートランペットに影響を与えたことは確かであろうが,それを語るのであれば“ハードバップの洗礼”であり“共演者の交代”と述べてほしい。
 事実“大志なき”イースト・コーストのチェット・ベイカーの音楽的な変化は一過性のものであり,時間の経過と共に以前のスタイルに戻ってしまったのだから…。

 そんな「逃げの」チェット・ベイカーの真実を知らずして誉めたたえている「にわかファン」の絶賛盤が『CHET BAKER IN NEW YORK』(以下『チェット・ベイカー・イン・ニューヨーク』)。
 「にわかファン」絶賛の理由は概ね,ゴリゴリのバッパーに扮したチェット・ベイカーの迫力,の類である。

 『チェット・ベイカー・イン・ニューヨーク』の聴き所は,表面上耳に残るであろう“硬派な”チェット・ベイカーの迫力ではない。チェット・ベイカートランペットを強く吹こうとすると粗さが目立ってしまうように思う。ヒーローはジョニー・グリフィンの方である。
 チェット・ベイカーの聴き所はその逆であって,繊細なメロディ・ラインで紡いだアドリブ・ライン。西と東の“いい感じのブレンド感”がチェット・ベイカーのソフトな本質を浮かび上がらせている。

 『チェット・ベイカー・イン・ニューヨーク』における“硬派な”チェット・ベイカーの響きは,新しい種類の音楽に面して新しい自分が出た,とか,対応しきれずに素の自分が出た,でだろう。
 今までの協調指向はそのままに対応しきれず吹きまくった“汗かき”の結果なのだと思う。
 
CHET BAKER IN NEW YORK-2 『チェット・ベイカー・イン・ニューヨーク』は名盤である。しかし名盤として取り上げられる際の世評の理由は誤りである。

 チェット・ベイカーが一皮むけたわけではない。対応しきれなかったのが吉と出ただけだ。
 『チェット・ベイカー・イン・ニューヨーク』は,バランス感覚に秀でた音楽センスと天賦の才能を持て余していたチェット・ベイカーの本質を露わにした“結果オーライ”な名盤だと思っている。

  01. FAIR WEATHER
  02. POLKA DOTS AND MOONBEAMS
  03. HOTEL 49
  04. SOLAR
  05. BLUE THOUGHTS
  06. WHEN LIGHTS ARE LOW
  07. SOFT WINDS

(リバーサイド/RIVERSIDE 1958年発売/VICJ-60494)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/オリン・キープニュース,岡崎正通)

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チェット・ベイカー / イット・クッド・ハプン・トゥ・ユー〜チェット・ベイカー・シングス4

IT COULD HAPPEN TO YOU:CHET BAKER SINGS-1 『CHET BAKER & CREW』で“脱ウエスト・コースト宣言”を予告したチェット・ベイカーが,予告通りに活動の拠点を東へと移した一発目の『IT COULD HAPPEN TO YOU:CHET BAKER SINGS』(以下『イット・クッド・ハプン・トゥ・ユー〜チェット・ベイカー・シングス』)。

 パシフィック・ジャズからリバーサイドへの移籍一発目は,レコード会社主導の『チェット・ベイカー・シングス』シリーズ・パート3でもあるかのような歌ものであった。
 しかもこの売り方がエグイ。この耳馴染みの選曲にしてこの月光メリーゴーランド風のジャケット写真。完全なる“アイドル歌手”としてのニューヨーク上陸であった。

 ズバリ『イット・クッド・ハプン・トゥ・ユー〜チェット・ベイカー・シングス』は“ポップな”スタンダード集。“ポップな”スタンダード集にふさわしく,いつもの「青白い」歌声が「甘い」歌声に押し切られている。

 そうなった最大の理由はバック・サウンドの変化にある。ピアノケニー・ドリューベースジョージ・モロウサム・ジョーンズドラムフィリー・ジョー・ジョーンズダニー・リッチモンドによる「本物のハード・バップ」にバックでこれだけ歌われてしまえば「青白い」歌声だけでは対応できない。アドリブばりのスキャットで乗り切ろう〜?

IT COULD HAPPEN TO YOU:CHET BAKER SINGS-2 『イット・クッド・ハプン・トゥ・ユー〜チェット・ベイカー・シングス』におけるチェット・ベイカーの変化はボーカルだけにとどまらずトランペットの演奏にも如実。ハードでエモーショナルなフレーズが間奏で織り交ぜられている。

 ジャズメンとしては小粒なのに“強烈な個性”で輝き続けるチェット・ベイカー。管理人はどちらかと言えば西海岸のチェット・ベイカーが好きなのだが,東海岸のチェット・ベイカーを体験したからこその「西海岸の良さ」なのである。

 ゆえにチェット・ベイカーの『シングス』シリーズを聴くお奨めのアルバム順は『チェット・ベイカー・シングス』からの『イット・クッド・ハプン・トゥ・ユー〜チェット・ベイカー・シングス』からの『チェット・ベイカー・シングス・アンド・プレイズ』! 「青白い」歌声からの「甘い」歌声からの最後はストリングス締め!

  01. DO IT THE HARD WAY
  02. I'M OLD FASHIONED
  03. YOU'RE DRIVING ME CRAZY
  04. IT COULD HAPPEN TO YOU
  05. MY HEART STOOD STILL
  06. THE MORE I SEE YOU
  07. EVERYTHING HAPPENS TO ME
  08. DANCING ON THE CEILING
  09. HOW LONG HAS THIS BEEN GOING ON?
  10. OLD DEVIL MOON
  11. WHILE MY LADY SLEEPS (take 10)
  12. YOU MAKE ME FEEL SO YOUNG (take 5)

(リバーサイド/RIVERSIDE 1958年発売/VICJ-23589)
(ライナーノーツ/オリン・キープニュース,佐藤秀樹)

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チェット・ベイカー / チェット・ベイカー=ラス・フリーマン・カルテット4

QUARTET RUSS FREEMAN AND CHET BAKER-1 『QUARTET RUSS FREEMAN AND CHET BAKER』(以下『チェット・ベイカー=ラス・フリーマン・カルテット』)におけるチェット・ベイカートランペットが“異質”である。“らしくない”のである。

 普段はふくよかな木管的な響きなのに,このアルバムだけはなぜだかカラッとした金管の音を出している。おまけにミュートまで吹いている。一体何があったのだろう?
 答えはチェット・ベイカーと“同格”へと成長したラス・フリーマンピアノ,と書けば単純なのだけど…。

 さて,なぜにトランペットの音色のことを書いているかと言うと,管理人がチェット・ベイカーのことを語る場合,大抵,彼の音色の話をしているから。
 チェット・ベイカートランペットの特徴と来れば,イチにもニにもあの音色。肩の力の抜けた「フッ」と吹き鳴らすスムーズなトランペット。大袈裟に言えばジャズとは最も遠いトランペット

 しか〜し,吹奏楽的で素直すぎるトランペットなはずなのに“強烈に”ジャズを感じさせてくれる。これって一体何だろう? チェット・ベイカートランペットの音色には,あの音色が聴こえてくるだけで“強烈に”ジャズを感じさせてくれるエモーショナルが含まれている。

 だ・か・ら,チェット・ベイカーの普段のトランペットが鳴っていない『チェット・ベイカー=ラス・フリーマン・カルテット』に“違和感”を感じ取ってしまう。
 チェット・ベイカーが“ムキムキ・マッチョ”に変貌してトランペットを吹き鳴らしている。「中性的」なイメージのチェット・ベイカーだが,こんなにも“男”だったのかっ!

QUARTET RUSS FREEMAN AND CHET BAKER-2 基本“COOLな”ウエスト・コースト・ジャズであり,ハード・バップも吹いたけど,それでもいつでも「チェット・ベイカーチェット・ベイカー」であった。
 しかし,生涯で唯一“らしさ”を捨てた『チェット・ベイカー=ラス・フリーマン・カルテット』における“異質”なトランペット

 曲もいい。演奏もいい。だけど,味の変わったラーメン屋へは自然と足を運ばなくなるように『チェット・ベイカー=ラス・フリーマン・カルテット』の素晴らしさを認めつつも,自然と手が遠のいてしまっていた。
 久しぶりに聴いた『チェット・ベイカー=ラス・フリーマン・カルテット』は,ラス・フリーマン名義の大名盤であった。

 誤解のありませんように。『チェット・ベイカー=ラス・フリーマン・カルテット』の演奏レベルはチェット・ベイカー史上最高レベルです。個人的に“ハードボイルド”な音色のチェット・ベイカーには関心がない人間なものでして…。

  01. LOVE NEST
  02. FAN TAN
  03. SUMMER SKETCH
  04. AN AFTERNOON AT HOME
  05. SAY WHEN
  06. LUSH LIFE
  07. AMBLIN'
  08. HUGO HURWHEY

(パシフィック・ジャズ/PACIFIC JAZZ 1957年発売/TOCJ-6872)
(ライナーノーツ/小川隆夫)

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チェット・ベイカー / チェット・ベイカー・シングス4

CHET BAKER SINGS-1 “歌うトランペッター”としてのチェット・ベイカーが格別である。なぜならボーカルが独特であり,尚且つトランペットも独特な「唯一無二」なジャズそのものを演奏しているからである。

 いいや,もう一つ書かなければならない。チェット・ベイカーボーカルトランペットを吹くように聞こえ,チェット・ベイカートランペットボーカルを歌うように聞こえる。もはや“楽器と声が一体化している”ように感じてしまう瞬間に何度も襲われてしまう。

 この「唯一無二」なジャズ体験が,チェット・ベイカーボーカルが「中性的」と表現される理由なのだろう(管理人的には「中性的」ではなく「青白い」と呼んでいる!)。
 チェット・ベイカーボーカル=「青白い」の呼称はこれから来ると思っているが?一般論の「中性的」の世評は“楽器と声が一体化している”の言葉足らずの結果生まれたものだと分析する。

 そんな“歌うトランペッター”の多重録音盤にして,ボーカルに軸足を置いたアルバムが『CHET BAKER SINGS』(以下『チェット・ベイカー・シングス』)である。
 “ヘタウマ”なボーカルで見事に感情を表現している! トランペットなしでも十分に“サムシング”が伝わってくる! 

CHET BAKER SINGS-2 『チェット・ベイカー・シングス・アンド・プレイズ』と『チェット・ベイカー・シングス』は姉妹盤であるのだが『チェット・ベイカー・シングス』にあって『チェット・ベイカー・シングス・アンド・プレイズ』にないもの,それは「閉鎖的な空間」である。

 どうにもレンジの狭い音作りがチェット・ベイカーの意識を「内へ内へ」と向かわせている。その結果,退廃的で気怠い雰囲気のボーカルが耳元でささやいてくる。

 チェット・ベイカー“生涯の代表曲”【MY FUNNY VALENTINE】における,原曲を崩すことなく歌い込む無表情で無機質で世紀末的なジャズボーカル。マイクへ向かったあの瞬間のチェット・ベイカーの胸中は如何ばかり…。

  01. THAT OLD FEELING
  02. IT'S ALWAYS YOU
  03. LIKE SOMEONE IN LOVE
  04. MY IDEAL
  05. I'VE NEVER BEEN IN LOVE BEFORE
  06. MY BUDDY
  07. BUT NOT FOR ME
  08. TIME AFTER TIME
  09. I GET ALONG WITHOUT YOU VERY WELL
  10. MY FUNNY VALENTINE
  11. THERE WILL NEVER BE ANOTHER YOU
  12. THE THRILL IS GONE
  13. I FALL IN LOVE TOO EASILY
  14. LOOK FOR THE SILVER LINING

(パシフィック・ジャズ/PACIFIC JAZZ 1956年発売/TOCJ-6802)
(ライナーノーツ/岡崎正通)

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チェット・ベイカー / チェット・ベイカー・シングス・アンド・プレイズ4

CHET BAKER SINGS AND PLAYS-1 “歌うトランペッター”としてのチェット・ベイカーが格別である。なぜならボーカルが独特であり,尚且つトランペットも独特な「唯一無二」なジャズそのものを演奏しているからである。

 いいや,もう一つ書かなければならない。チェット・ベイカーボーカルトランペットを吹くように聞こえ,チェット・ベイカートランペットボーカルを歌うように聞こえる。もはや“楽器と声が一体化している”ように感じてしまう瞬間に何度も襲われてしまう。

 この「唯一無二」なジャズ体験が,チェット・ベイカーボーカルが「中性的」と表現される理由なのだろう(管理人的には「中性的」ではなく「青白い」と呼んでいる!)。
 チェット・ベイカーボーカル=「青白い」の呼称はこれから来ると思っているが?一般論の「中性的」の世評は“楽器と声が一体化している”の言葉足らずの結果生まれたものだと分析する。

 そんな“歌うトランペッター”の多重録音盤にして,トランペットに軸足を置いたアルバムが『CHET BAKER SINGS AND PLAYS』(以下『チェット・ベイカー・シングス・アンド・プレイズ』)である。
 “ヘタウマ”なトランペットで見事に感情を表現している! 歌なしでも十分に“サムシング”が伝わってくる!

CHET BAKER SINGS AND PLAYS-2 『チェット・ベイカー・シングス・アンド・プレイズ』と『チェット・ベイカー・シングス』は姉妹盤であるのだが『チェット・ベイカー・シングス・アンド・プレイズ』にあって『チェット・ベイカー・シングス』にないもの,それは4曲でストリングスが入っているところ。

 ストリングスが入ると違うよなぁ。一気にスタジオを飛び出し,コンサートホールでチェット・ベイカーが歌っているような華やかさが感じられる。

 甘さと儚さが隣り合わせな【LET’S GET LOST】の世紀末的な退廃感は,チェット・ベイカーのドキュメンタリー映画「レッツ・ゲット・ロスト」の主題歌にふさわしい“怪演”である。

  01. LET'S GET LOST
  02. THIS IS ALWAYS
  03. LONG AGO AND FAR AWAY
  04. SOMEONE TO WATCH OVER ME
  05. JUST FRIENDS
  06. I WISH I KNEW
  07. DAYBREAK
  08. YOU DON'T KNOW WHAT LOVE IS
  09. GREY DECEMBER
  10. I REMEMBER YOU

(パシフィック・ジャズ/PACIFIC JAZZ 1955年発売/TOCJ-6811)
(ライナーノーツ/小川隆夫)

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チェット・ベイカー / ジャズ・アット・アン・アーバー5

JAZZ AT ANN ARBOR-1 アメリカはアン・アーバー大学におけるチェット・ベイカーの貴重なレギュラー・コンボ編成でのライブ盤が『JAZZ AT ANN ARBOR』(以下『ジャズ・アット・アン・アーバー』)。

 「レコードライブは別物」とよく評される。“天賦の才能の持ち主”ゆえ,いつでも余力を残している感じの,絶対に全力ではやらない感じのチェット・ベイカーであるが,ライブになるともしや豹変するのではないか,との淡い期待を抱いて聴いた『ジャズ・アット・アン・アーバー』。
 果たして,チェット・ベイカーの真実とは如何に?

 ズバリ,チェット・ベイカーは,あくまでも「己の道を突き進む」ラッパ吹きであった。真に“アンニュイな”ラッパ吹きであった。
 そう。チェット・ベイカートランペッターではなく“ラッパ吹き”。このニュアンスの違いを理解していただけるのであれば,ここから先の『ジャズ・アット・アン・アーバー批評を読む必要はない。おやすみなさい。

 チェット・ベイカーは,喉を潰すかの如くハイノート一発で観客を魅了させようとするトランペッターたちとは一番遠い場所に位置している。要は“手抜き”のトランペットなのだ。
 まったりしたMCの曲紹介&メンバー紹介。緊張感のない&熱演しないライブ演奏。最初から最後までハイライトなしの「巡航速度」での演奏が続いている。でもなぜなんだろう? 小さく吹き流されたフレージングが後々まで耳に残る。あの緩さがクセになる。不思議である。

 アスリートが最高のパフォーマンスを発揮するにはリラックスすることが不可欠。もしや“手抜き”のチェット・ベイカーは最高のジャズ・アスリートなのではないか? それができるがゆえの“天才”なのではないか?
 『ジャズ・アット・アン・アーバー』におけるチェット・ベイカーラッパを聴いていると,こんな考えなくてもいいことを考えてしまいたくなるのだから不思議である。

JAZZ AT ANN ARBOR-2 管理人の結論。『ジャズ・アット・アン・アーバー批評

 『ジャズ・アット・アン・アーバー』は,本人も多少は気をよくしていたであろう人気絶頂時のライブ盤ゆえ,いつものあきらめ気分とか退廃気分の薄い“危険ではない”チェット・ベイカーをお探しのジャズ入門者へのお奨め盤の最右翼である。
 アツアツの熱風ではなく温風ヒーター的なトランペットが気持ち良いと思いますよっ。

 最後に『ジャズ・アット・アン・アーバー』と来れば,やっぱりラス・フリーマンピアノに触れないわけにはいきません。「名参謀にして名サイドメン」なラス・フリーマン抜きに『ジャズ・アット・アン・アーバー』の成功は語れません。

  01. LINE FOR LYONS
  02. LOVER MAN
  03. MY FUNNY VALENTINE
  04. MAID IN MEXICO
  05. STELLA BY STARLIGHT
  06. MY OLD FLAME
  07. HEADLINE
  08. RUSS JOB

(パシフィック・ジャズ/PACIFIC JAZZ 1955年発売/TOCJ-6372)
(ライナーノーツ/都並清史)

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チェット・ベイカー / トランペットの芸術4

THE TRUMPET ARTISTRY OF CHET BAKER-1 管理人の持論であるが(と言ってもこれはMALTAの受け売りなのだが)音楽には,殊に管楽器は「人間性が音に出る」。
 この持論は揺るがない。管理人個人の所有データと経験値をこれまで幾度となく試してきた。だから「人間性は音楽を裏切らない」し,その逆もしかり…。

 と言うことになると“破滅型人間”チェット・ベイカーには自然と足が遠のいてしまう。だから人並みには聴いているがチェット・ベイカーを殊更愛聴してはいない。

 だが,そんな聴き方をしているから,たまに聴くと「エラクイイ」と思う瞬間にブチ当たる。
 『THE TRUMPET ARTISTRY OF CHET BAKER』(以下『トランペットの芸術』)の場合がそうであった。

 『トランペットの芸術』は,チェット・ベイカーウエストコーストジャズの「スター街道」を歩み始めた頃の「寄せ集め作品集」である。
 “天才”と未来を嘱望されていた時代のチェット・ベイカーは意外にもハイノート連発のトランペットであり,中低域中心のまろやかなトランペットの印象からは外れる演奏であって,これをブラインドで聞かされたらチェット・ベイカーだとは分からない。外す自信満々である?

 それくらい,いつもの印象とは異なる『トランペットの芸術』を聴いて「人間性が音に出る」「人間性は音楽を裏切らない」を改めて実感した。
 チェット・ベイカーは「廃人」である。しかし,チェット・ベイカーのディスコグラフィには,彼が「廃人」になる以前の“天才”の音楽も多く残されている。

THE TRUMPET ARTISTRY OF CHET BAKER-2 初期「パシフィックジャズ」レーベルのアルバムはどれも好きだ。チャーリー・パーカーマイルス・デイビスが絶賛した時代のチェット・ベイカートランペットには,かなり惹かれるものがある。

 『トランペットの芸術』は,こじつけではなく『トランペットの芸術』だと思う。

  01. I'M GLAD THERE IS YOU
  02. MOON LOVE
  03. MOONLIGHT BECOMES YOU
  04. IMAGINATION
  05. LITTLE MAN YOU'VE HAD A BUSY DAY
  06. GOODBYE
  07. ALL THE THINGS YOU ARE
  08. NO TIES
  09. HAPPY LITTLE SUNBEAM
  10. BEA'S FLAT
  11. RUSS JOB
  12. TOMMY HAWK

(パシフィック・ジャズ/PACIFIC JAZZ 1955年発売/TOCJ-6371)
(ライナーノーツ/都並清史)

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チェット・ベイカー / チェット・ベイカー&クルー / MEDIUM ROCK5

 『CHET BAKER & CREW』の8曲目は【MEDIUM ROCK】(以下【ミディアム・ロック】)。


 【ミディアム・ロック】の別名は【ミディアムソロ回し】である。ミディアム・テンポでの全員のソロ回しは,アドリブというよりもアレンジである。
 そう。メンバー全員が“流れ”を意識して「ジャズ・ロック」をクリエイトしている。

 ソロの解説に触れる前に,これだけは言っておこう。【ミディアム・ロック】のテーマは絶品である。ズバリ「おとぎの国のファンタジー」なのだが,ルンルンのない大人の遊園地の世界観である。この「夢と現実のイリュージョン」があるからこそ,各人のアドリブが生きる生きる! 以下,一言批評

 57秒からのフィル・アーソテナーソロは流暢なのに雄弁である。
 1分52秒からのチェット・ベイカートランペットソロは貫禄を感じさせる。個性豊かだな〜。
 2分47秒からのボビー・ティモンズピアノソロは軽やか。ボビー・ティモンズが黒くないでらしくない。こんなボビー・ティモンズが貴重である。
 3分41秒からのジミー・ボンドベースソロは重低音。意識する以上の重低音。
 4分8秒で突如フィル・インしてくるピーター・リットマンドラムソロだけが異質である。一人「ジャズ・ロック」ではなく「ロックン・ロール」にかぶれている。

CHET BAKER : Trumpet
PHIL URSO : Tenor Sax
BOBBY TIMMONS : Piano
JIMMY BOND : Bass
PETER LITTMAN : Drums

チェット・ベイカー / チェット・ベイカー&クルー / WORRYING THE LIFE OUT OF ME5

 『CHET BAKER & CREW』の7曲目は【WORRYING THE LIFE OUT OF ME】(以下【ウォリング・ザ・ライフ・アウト・オブ・ミー】)。


 【ウォリング・ザ・ライフ・アウト・オブ・ミー】は,スタンダードをトランペットで歌い上げる“ジャズ・ボーカリストチェット・ベイカートランペットに尽きる。
 “歌うトランペッターチェット・ベイカーが好きな人にとっては(当然,管理人にとっても)「大切な宝物」の一つであろう。

 やはりチェット・ベイカーは,根っからの“歌うトランペッター”である。【ウォリング・ザ・ライフ・アウト・オブ・ミー】のような歌物の解釈が素晴らしい。「歌うようにトランペットを吹く」とは,このことである。

 カウンターとハーモニーでチェット・ベイカーと共演するフィル・アーソがまたいい。トランペットを支えるテナーサックスがあればこその名演である。

CHET BAKER : Trumpet
PHIL URSO : Tenor Sax
BOBBY TIMMONS : Piano
JIMMY BOND : Bass
PETER LITTMAN : Drums

チェット・ベイカー / チェット・ベイカー&クルー / LUCIUS LU4

 『CHET BAKER & CREW』の6曲目は【LUCIUS LU】(以下【ルシアス・ルー】)。


 【ルシアス・ルー】は,肩肘張らない“ほんわか”の名演であろう。ゆるゆるの“脱力系”かな?
 あっ,誤解のないように! ゆるゆるはだるだるではありません。全力投球の抑えではなく,先発投手があれよあれよと9回まで完投してしまうような…。

 3人のリズム隊がグルーヴィ! ボビー・ティモンズピアノがファンキー! ジミー・ボンドの重いベースがウォーキング! ピーター・リットマンドラムが“かっとばしている”! 

 …であるのに,フロントの2人がテーマを奏でている間は,3人笑顔で箸休め。演奏中なのを忘れて横を向き雑談話のタイム・キープ。
 そう。【ルシアス・ルー】は,ウエスト・コースト・ジャズきっての「雨天コールド・ゲーム」である。

CHET BAKER : Trumpet
PHIL URSO : Tenor Sax
BOBBY TIMMONS : Piano
JIMMY BOND : Bass
PETER LITTMAN : Drums

チェット・ベイカー / チェット・ベイカー&クルー / SOMETHING FOR LIZA5

 『CHET BAKER & CREW』の5曲目は【SOMETHING FOR LIZA】(以下【サムシング・フォー・ライザ】)。


 【サムシング・フォー・ライザ】は,ウエスト・コースト・ジャズの地を行く,イケイケなのにスマート? 実に楽しげな演奏である。

 フィル・アーソが“田舎臭い”のはご愛嬌。このスイング・サックスが目立たないのは,白人ドラマーピーター・リットマンの大爆発するドラミングにある!
 キメとタメを織り成すドラミングフィル・アーソテナーサックスとシンクロするは,都合4回のバースで聴かせるドラムソロでは前面に出てフロントの2人をぐいぐい締め付けていく!

 例えば,1分35秒からと2分50秒からのチェット・ベイカーアドリブを聴き比べてみてほしい。単調だったトランペットが,人が変わったように一気に鳴り出している。
 これぞピーター・リットマンの“触媒効果”! これだからジャズ・ファンはやめられない!

CHET BAKER : Trumpet
PHIL URSO : Tenor Sax
BOBBY TIMMONS : Piano
JIMMY BOND : Bass
PETER LITTMAN : Drums

チェット・ベイカー / チェット・ベイカー&クルー / REVELATION4

 『CHET BAKER & CREW』の4曲目は【REVELATION】(以下【レヴェレーション】)。


 【レヴェレーション】は,ハード・バップの黒リズムに絶品メロディ! “クセになる”ブルースである。

 フィル・アーソテナーサックスが明るく響き,ノリノリ・テーマに華を添えていく。対照的にチェット・ベイカートランペットは,クールに抑えた“重石”のような存在感。

 このフロントが光り輝く要因こそ,ボビー・ティモンズ! ピアノソロも聴き所応えがあるが,何と言ってもゴスペル調のバッキング! ボビー・ティモンズピアノが“フロントの抑揚”を演出している。
 そしてもう一人。ピーター・リットマンが最後尾からあおるあおる! 2分50秒以降と3分14秒以降での2回のドラムソロが超ダイナミック。ここが【レヴェレーション】!

CHET BAKER : Trumpet
PHIL URSO : Tenor Sax
BOBBY TIMMONS : Piano
JIMMY BOND : Bass
PETER LITTMAN : Drums

チェット・ベイカー / チェット・ベイカー&クルー / HALEMA4

 『CHET BAKER & CREW』の3曲目は【HALEMA】(以下【ハレマ】)。


 【ハレマ】は“朗々とした”聴かせる演奏に終始している。このソフトなハーモニーが絶品のテーマにベスト・マッチ。明るい哀愁の世界を構築している。

 1分31秒からのフィル・アーソテナーソロが“鼻歌”ならば,2分14秒からのボビー・ティモンズピアノソロは“小粋な”アドリブで見事にスイングしている。

 【ハレマ】におけるチェット・ベイカートランペットは,概ねマイク替わりの道具である。
 チェット・ベイカーのフレーズは,もろボーカルそのまんま。絶品のユニゾン・パート以外は歌った方が早かったような…。

CHET BAKER : Trumpet
PHIL URSO : Tenor Sax
BOBBY TIMMONS : Piano
JIMMY BOND : Bass
PETER LITTMAN : Drums

チェット・ベイカー / チェット・ベイカー&クルー / SLIGHTLY ABOVE MODERATE4

 『CHET BAKER & CREW』の2曲目は【SLIGHTLY ABOVE MODERATE】(以下【スライトリー・アバヴ・モデラート】)。


 【スライトリー・アバヴ・モデラート】は,クール・ビューティな「氷の世界」! そこへ5人の“メロウな息吹”が吹き込まれてくるものだから,もうたまらない!

 トランペットテナーサックスデュエットで進む,オープニングとエンディングの何と美しいことであろう。
 中盤,5分54秒から6分22秒までに入る,ユニゾンとカウンター混じりのデュエットは“恍惚もの”である。
 チェット・ベイカーの“陰り”のトランペットが,いつ消えてなくなるか分からない「氷の世界」と見事にマッチしている。

 ただし一つだけ難点がある。1分12秒から約1分間のテナーソロだけが笑っている。“KYな”フィル・アーソが,もっと歯を食いしばってくれたなら…。

CHET BAKER : Trumpet
PHIL URSO : Tenor Sax
BOBBY TIMMONS : Piano
JIMMY BOND : Bass
PETER LITTMAN : Drums

チェット・ベイカー / チェット・ベイカー&クルー / TO MICKEY'S MEMORY5

 『CHET BAKER & CREW』の1曲目は【TO MICKEY’S MEMORY】(以下【トゥ・ミッキーズ・メモリー】)。


 【トゥ・ミッキーズ・メモリー】は,ウエスト・コーストの人気者=ミッキーマウスへのメモリー。しばらくカリフォルニアを離れる決意を固めた時,ふと,ディズニーランドが脳裏をよぎったか?
 ミッキーマウスとのメモリーは全てが楽しい。そう。【トゥ・ミッキーズ・メモリー】=ゴキゲンのノリノリ・エスニック系である。

 クロマティック・ティンパニーが効いている! 3分5秒からのティンパニーソロが【トゥ・ミッキーズ・メモリー】のハイライト!
 チェット・ベイカーがミッキーマウスなら,ビル・ラフブロウはドナルドダック! ラテン・サンバのリズムで踊っている!

 白人ドラマーピーター・リットマンを「サンド」した,ボビー・ティモンズジミー・ボンドによる「オレオ」なリズム隊が,西海岸でハード・バップしている! このリズムはNYには存在しない“新種の”グルーヴである。

 そこへウエスト・コースト・ジャズ“そのまんま”のフロントが乗っかってくる! フィル・アーソが爽快にして滑らかな“波乗り”を聴かせれば,チェット・ベイカーは躍動するリズムの波を“かき分けかき分け”ダイナミックに疾走する!
 4分27秒からのエンディングでの大合唱は,ハード・バッパーへのモデル・チェンジを試みた,チェット・ベイカーの努力が形として結実した瞬間であろう。

CHET BAKER : Trumpet
PHIL URSO : Tenor Sax
BOBBY TIMMONS : Piano
JIMMY BOND : Bass
PETER LITTMAN : Drums
BILL LOUGHBROUGH : Chromatic Tympani

チェット・ベイカー / チェット・ベイカー&クルー5

CHET BAKER & CREW-1 チェット・ベイカーについて語ろうと思うと,どうしても“ジャズ以外の話題”が先攻してしまう。チェット・ベイカーの“生き様”抜きに,彼の魅力を語り尽くすことなどできやしない。

 チェット・ベイカーの別名は「ジャズ界のジェームス・ディーン」! チェット・ベイカーこそ,ハリウッドの映画音楽まで担当したジャズ界随一の男前! 白人で女たらしな,ウエスト・コースト・ジャズの“シンボル”なのである。

 …と,言わば使い古された“定番”が「チェット・ベイカー=ジェームス・ディーン説」であるが,近年どうも雲行きがあやしい。そう。多くの若者にとって,ジェームス・ディーンってダレ? もはやジェームス・ディーンは死語である。
 そこで管理人からの新提言! チェット・ベイカーは「ジャズ界の新庄剛志」である! エ〜ッとドン引きする前に人の話は最後まで聞いてほしい。「チェット・ベイカー=新庄剛志説」は,いきつけのジャズ・バーでは結構評判いいんですから…。

 「記録より記憶に残る男」新庄剛志。敬遠球をサヨナラ・ヒットしてみたり,阪神との5年総額12億円の契約を蹴って,年俸20万ドルでニューヨーク・メッツへ移籍したり…。帰国後の北海道日本ハムでの活躍は承知の通り。主に本業以外のパフォーマンスで人気を博した。
 しかしSHINJOがパフォーマンスで遊べたのは,プロ野球選手としてしっかり結果を残せたから。そして結果を残せたのは彼の「天性の素質」の良さ。あのノムさんが本気で投手起用を考えていたのだから…。

 同様にチェット・ベイカーも本業=トランペッターとしての活躍以上にボーカリストとして人気を博した。
 “歌うトランペッターチェット・ベイカーラッパの練習時間はいつでも静か。部屋の大鏡の前で“ジェームス・ディーンばりに”ポーズを決めて“どの角度で,どうトランペットを構えたら一番格好良いか?”を研究していた。そう。無類のカッコつけであり「ジーンズが似合わなくなるのがいやだから下半身は鍛えたくない」発言のSHINJOと同じ練習スタイルを持っていた?

 ゆえに,チェット・ベイカートランペットには,ひどく何かが欠けている。しかし他の誰にもない何かがある。
 チェット・ベイカーの特徴と言えば,ブラス・バンド奏者のようなノン・ビブラート。深みは感じないし,あっさりと消え去っていく。しかし1フレーズで“これぞチェット・ベイカー!”と分かってしまう独特のフレージング! 毎日女のケツを追い回し,ほとんど練習していないにも関わらず,この存在感!
 そう。チェット・ベイカーは「天性の素質」だけでジャズ・ジャイアントと呼ばれるまでに成り上がった。あのチャーリー・パーカーマイルス・デイビスチェット・ベイカーの「天性の素質」を認め褒めていたのだ。

 そんなチェット・ベイカーだけに“汗かきかき”の熱演は少ない。ビジュアル=ラッパの構え方が重要なのであって,実力の半分も出せばそれなりの名盤が生まれてしまう。SHINJOの「僕はメジャーでも高校野球でも同じ打率」発言と通じる部分であろう。

 そんなパンチラ野郎=チェット・ベイカーの全て,パンモロを何とか拝めないものか? そんな欲求不満の特効薬が『CHET BAKER & CREW』(以下『チェット・ベイカー&クルー』)!

CHET BAKER & CREW-2 『チェット・ベイカー&クルー』は“珍しく”チェット・ベイカーが本気で吹いている! 歌もの無し,トランペット一本・ストレート勝負の快作である。
 ウエスト・コースト・ジャズの範疇に入れてよい演奏ではあるが,西海岸黒人派との共演で,テイストとしてはハード・バップ! 本場・東海岸の“黒々ビート”をバックに“逞しいラッパ”が鳴り響く! ボビー・ティモンズの好サポートで,チェット・ベイカーの「天性の素質」が明確な形として花開いている。

 さて,普段はジャケ買いなどしないし,お奨めもしない管理人だが『チェット・ベイカー&クルー』のCDジャケットに言及しないわけにはいかないだろう。
 セールから大海原へ身を乗り出し,高らかに出発の合図を吹き鳴らすチェット・ベイカーの姿に「これからイースト・コーストで一旗挙げてやるぜ!」的な“心意気”が写し出されている。
 そう。『チェット・ベイカー&クルー』は,チェット・ベイカーによる“脱ウエスト・コースト宣言”の意欲作でもある。

 しかし『チェット・ベイカー&クルー』で船出したヨットは,航海途中,酒,女,麻薬の大嵐に見舞われハード・バップには到着できず。このクルーたちとは2作で解散。解散と言えば新庄剛志が昨年末離婚した。新庄剛志の航海も急速にシケだした荒波に呑み込まれなければよいのだが…。

  01. TO MICKEY'S MEMORY
  02. SLIGHTLY ABOVE MODERATE
  03. HALEMA
  04. REVELATION
  05. SOMETHING FOR LIZA
  06. LUCIUS LU
  07. WORRYING THE LIFE OUT OF ME
  08. MEDIUM ROCK

(パシフィック・ジャズ/PACIFIC JAZZ 1956年発売/TOCJ-6824)
(ライナーノーツ/大村幸則)

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