CD批評:チェット・ベイカー
2008年05月06日
チェット・ベイカー / チェット・ベイカー&クルー / HALEMA
『CHET BAKER & CREW』の3曲目は【HALEMA】(以下【ハレマ】)。
【ハレマ】は“朗々とした”聴かせる演奏に終始している。このソフトなハーモニーが絶品のテーマにベスト・マッチ。明るい哀愁の世界を構築している。
1分31秒からのフィル・アーソのテナー・ソロが“鼻歌”ならば,2分14秒からのボビー・ティモンズのピアノ・ソロは“小粋な”アドリブで見事にスイングしている。
【ハレマ】におけるチェット・ベイカーのトランペットは,概ねマイク替わりの道具である。そう。チェット・ベイカーのフレーズは,もろボーカルそのまんま。絶品のユニゾン・パート以外は歌った方が早かったような…。
CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から
CHET BAKER : Trumpet
PHIL URSO : Tenor Sax
BOBBY TIMMONS : Piano
JIMMY BOND : Bass
PETER LITTMAN : Drums
2008年01月23日
チェット・ベイカー / チェット・ベイカー&クルー / SLIGHTLY ABOVE MODERATE
『CHET BAKER & CREW』の2曲目は【SLIGHTLY ABOVE MODERATE】(以下【スライトリー・アバヴ・モデラート】)。
【スライトリー・アバヴ・モデラート】は,クール・ビューティな「氷の世界」! そこへ5人の“メロウな息吹”が吹き込まれてくるものだから,もうたまらない!
トランペットとテナー・サックスのデュエットで進む,オープニングとエンディングの何と美しいことであろう。中盤,5分54秒から6分22秒までに入る,ユニゾンとカウンター混じりのデュオは“恍惚もの”である。
チェット・ベイカーの“陰り”のトランペットが,いつ消えてなくなるか分からない「氷の世界」と見事にマッチしている。
ただし一つだけ難点がある。1分12秒から約1分間のテナー・ソロだけが笑っている。“KYな”フィル・アーソが,もっと歯を食いしばってくれたなら…。
CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から
CHET BAKER : Trumpet
PHIL URSO : Tenor Sax
BOBBY TIMMONS : Piano
JIMMY BOND : Bass
PETER LITTMAN : Drums

CHET BAKER & CREW
2008年01月22日
チェット・ベイカー / チェット・ベイカー&クルー / TO MICKEY'S MEMORY
『CHET BAKER & CREW』の1曲目は【TO MICKEY’S MEMORY】(以下【トゥ・ミッキーズ・メモリー】)。
【トゥ・ミッキーズ・メモリー】は,ウエスト・コーストの人気者=ミッキーマウスへのメモリー。しばらくカリフォルニアを離れる決意を固めた時,ふと,ディズニーランドが脳裏をよぎったか?
ミッキーマウスとのメモリーは全てが楽しい。そう。【トゥ・ミッキーズ・メモリー】=ゴキゲンのノリノリ・エスニック系である。
クロマティック・ティンパニーが効いている! 3分5秒からのティンパニー・ソロが【トゥ・ミッキーズ・メモリー】のハイライト! チェット・ベイカーがミッキーマウスなら,ビル・ラフブロウはドナルドダック! ラテン・サンバのリズムで踊っている!
また,白人ドラマー=ピーター・リットマンを「サンド」した,ボビー・ティモンズとジミー・ボンドによる「オレオ」なリズム隊が,西海岸でハード・バップしている。このグルーヴはNYには存在しない“新種の”グルーヴである。
そこへウエスト・コースト・ジャズ“そのまんま”のフロントが乗っかってくる。フィル・アーソが爽快にして滑らかな“波乗り”を聴かせれば,チェット・ベイカーは躍動するリズムの波を“かき分けかき分け”ダイナミックに疾走する!
4分27秒からのエンディングでの大合唱は,ハード・バッパーへのモデル・チェンジを試みた,チェット・ベイカーの努力が形として結実した瞬間であろう。いい。
CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から
CHET BAKER : Trumpet
PHIL URSO : Tenor Sax
BOBBY TIMMONS : Piano
JIMMY BOND : Bass
PETER LITTMAN : Drums
BILL LOUGHBROUGH : Chromatic Tympani

CHET BAKER & CREW
2008年01月21日
チェット・ベイカー / チェット・ベイカー&クルー
チェット・ベイカーについて語ろうと思うと,どうしても“ジャズ以外の話題”が先攻してしまう。チェット・ベイカーの“生き様”抜きに,彼の魅力を語り尽くすことなどできやしない。チェット・ベイカーの別名は「ジャズ界のジェームス・ディーン」! チェット・ベイカーこそ,ハリウッドの映画音楽まで担当したジャズ界随一の男前! 白人で女たらしな,ウエスト・コースト・ジャズの“シンボル”なのである。
…と,言わば使い古された“定番”が「チェット・ベイカー=ジェームス・ディーン説」であるが,近年どうも雲行きがあやしい。そう。多くの若者にとって,ジェームス・ディーンってダレ? もはやジェームス・ディーンは死語である。
そこで管理人からの新提言! チェット・ベイカーは「ジャズ界の新庄剛志」である! エ〜ッとドン引きする前に人の話は最後まで聞いてほしい。「チェット・ベイカー=新庄剛志説」は,いきつけのジャズ・バーでは結構評判いいんですから…。
「記録より記憶に残る男」新庄剛志。敬遠球をサヨナラ・ヒットしてみたり,阪神との5年総額12億円の契約を蹴って,年俸20万ドルでニューヨーク・メッツへ移籍したり…。帰国後の北海道日本ハムでの活躍は承知の通り。主に本業以外のパフォーマンスで人気を博した。
しかしSHINJOがパフォーマンスで遊べたのは,プロ野球選手としてしっかり結果を残せたから。そして結果を残せたのは彼の「天性の素質」の良さ。あのノムさんが本気で投手起用を考えていたのだから…。
同様にチェット・ベイカーも本業=トランペッターとしての活躍以上にボーカリストとして人気を博した。
“歌うトランペッター”チェット・ベイカーのラッパの練習時間はいつでも静か。部屋の大鏡の前で“ジェームス・ディーンばりに”ポーズを決めて“どの角度で,どうトランペットを構えたら一番格好良いか?”を研究していた。そう。無類のカッコつけであり「ジーンズが似合わなくなるのがいやだから下半身は鍛えたくない」発言のSHINJOと同じ練習スタイルを持っていた。
ゆえに,チェット・ベイカーのトランペットには,ひどく何かが欠けている。しかし他の誰にもない何かがある。
チェット・ベイカーの特徴と言えば,ブラス・バンド奏者のようなノン・ビブラート。深みは感じないし,あっさりと消え去っていく。しかし1フレーズで“これぞチェット・ベイカー!”と分かってしまう独特のフレージング。
毎日女のケツを追い回し,ほとんど練習していないにも関わらず,この存在感! そう。チェット・ベイカーは「天性の素質」だけでジャズ・ジャイアントと呼ばれるまでに成り上がった。あのチャーリー・パーカーも彼の「天性の素質」を認め褒めていた。
そんなチェット・ベイカーだけに“汗かきかき”の熱演は少ない。ビジュアル=ラッパの構え方が重要なのであって,実力の半分も出せばそれなりの名盤が生まれてしまう。SHINJOの「僕はメジャーでも高校野球でも同じ打率」発言と通じる部分であろう。
そんなパンチラ野郎=チェット・ベイカーの全て,パンモロを何とか拝めないものか? そんな欲求不満の特効薬が『CHET BAKER & CREW』(以下『チェット・ベイカー&クルー』)!
『チェット・ベイカー&クルー』は“珍しく”チェット・ベイカーが本気で吹いている! 歌もの無し,ラッパ一本・ストレート勝負の快作である。ウエスト・コースト・ジャズの範疇に入れてよい演奏ではあるが,西海岸黒人派との共演で,テイストとしてはハード・バップ! 本場・東海岸の“黒々ビート”をバックに“逞しいラッパ”が鳴り響く! ボビー・ティモンズの好サポートで,チェット・ベイカーの「天性の素質」が開花している。
普段はジャケ買いなどしない管理人だが,このCDジャケットに言及しないわけにはいかないだろう。そう。セールから大海原へ身を乗り出し,高らかに出発の合図を吹き鳴らすチェット・ベイカー! 「これからイースト・コーストで一旗挙げてやるぜ!」的な“心意気”が写し出されている。そう。『チェット・ベイカー&クルー』は,チェット・ベイカーによる“脱ウエスト・コースト宣言”の意欲作でもある。
しかし『チェット・ベイカー&クルー』で船出したヨットは,航海途中,酒,女,麻薬の大嵐に見舞われハード・バップには到着できず。このクルーたちとは2作で解散。解散と言えば新庄剛志が昨年末離婚した。新庄剛志の航海も急速にシケだした荒波に呑み込まれなければよいのだが…。
(1956年録音/TOCJ-6824)
























