アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

CD批評:アート・ペッパー

アート・ペッパー / サーフ・ライド4

SURF RIDE-1 近年はこのようなことは少ないと思うが,管理人がジャズを聴き始めた30年前の日本のジャズ・シーンは「黒人至上主義」だった。黒がジャズであって白はジャズではない,という逆アパルトヘイトが絶対的権威を誇っていた。

 しかし,そんなジャズ・シーンの中にあって“別格”扱いされていた白人ジャズメンが数人いた。アルト・サックスアート・ペッパーリー・コニッツテナー・サックススタン・ゲッツ辺りの“インプロバイザー”たちである。

 特に上記の3人に関しては「黒人至上主義」も否定できない,美しいインプロビゼーション。そう。アドリブに黒も白もない。
 あれっ? COOLリー・コニッツスタン・ゲッツは分かるとしてアート・ペッパー? アート・ペッパーってウェスト・コースト派のメロディアスなウェットでしょう?

 バッカモン! アート・ペッパーこそ“稀代の天才”インプロバイザーの大本命! COOLで硬派なアルトを聴け! アート・ペッパーデビュー盤=『SURF RIDE』(以下『サーフ・ライド』)を聴いてからぬかせ! ぐうの音もでないはずである。

( …と『サーフ・ライド』のジャケットを水戸黄門の印籠ばりに取り出して罵倒したいところであるが,これがどうにも『サーフ・ライド』=波乗り=黄色いビキニのお嬢さん。痛たたた。でもこのハレンチなジャケットのイラストが結構好きなんです。いかにもアメリカンしていると思いませんか? 部屋に飾るのは恥ずかしくてできない超・軟派=音楽の中身とは正反対ですけどねっ )

 そう。『サーフ・ライド』の真実とは「アート・ペッパー版・スタン・ゲッツ」! 情感を含ませないCOOLアート・ペッパーを“骨の髄まで”堪能できる代物である。聴き方によっては「アート・ペッパー版・チャーリー・パーカー」とも読み取ることができる!
 とにもかくにも『サーフ・ライド』こそが“インプロバイザーアート・ペッパーの頂点の記録で間違いない。か〜っ,ジャズ史に残る超名盤

 では管理人の,そして多くのジャズ・ファンの愛聴盤かというとそうでもない。その理由は『サーフ・ライド』におけるアート・ペッパーは修行僧のように聴こえるから。
 アート・ペッパーの魅了とは,緩急自在のアドリブで,メロディなり情感なりを一瞬で浮かび上がらせてしまうところにある。だからこそメロディなり情感なりを伴わない『サーフ・ライド』は不完全。ひたすらアドリブだけを吹き込んでいる。

 アート・ペッパー特有のアルトに,男の色気を求めているマニアには大外れ。アドリブの面白さが分から限り,聴いていてこれほど凡庸なアート・ペッパーも他にないであろう。メロディを脇に置いたストイックで締まりのあるアドリブの連続。だから『サーフ・ライド』のアート・ペッパーは修行僧なのだ。

SURF RIDE-2 管理人の結論。『サーフ・ライド批評

 『サーフ・ライド』は『リターン・オブ・アート・ペッパー』や『モダン・アート』での「アドリブ天国」とは異質な「アドリブ地獄」の炸裂集。

 聴き始めは楽しくないかもしれないけど,アート・ペッパーアドリブのクセが“分かれば分かるほど”病み付きになって,やがて一切聴かなくなる。『サーフ・ライド』はそんなアルバムです。

  01. TICKLE TOE
  02. CHILLI PEPPER
  03. SUSIE THE POODLE
  04. BROWN GOLD
  05. HOLIDAY FLIGHT
  06. SURF RIDE
  07. STRAIGHT LIFE
  08. THE WAY YOU LOOK TONIGHT
  09. CINNAMON
  10. NUTMEG
  11. THYME TIME
  12. ART'S OREGANO

(サヴォイ/SAVOY 1952年発売/COCB-50279)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/青木和富)

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アート・ペッパー / ザ・コンプリート・アバシリ・コンサート19814

UNRELEASED ART, VOL.1 THE COMPLETE ABASHIRI CONCERT 1981-1 アート・ペッパーアバシリへ上陸〜。
 えっ? どなたですか? またドラッグで入所したと思われたのは? ローリー・ペッパーさんに謝ってくださ〜い。

 違いますよ。コンサートですよ。お仕事ですよ。アバシリアート・ペッパーが,いい仕事をしているんです。いいや,これは仕事を越えた奉仕活動です。アバシリアート・ペッパーが垢を落として,自らの人生に落とし前をつけているのです。それはすなわち「感謝」という落とし前。

 『UNRELEASED ART,VOL.1 THE COMPLETE ABASHIRI CONCERT』(以下『ザ・コンプリート・アバシリ・コンサート1981』)の演奏が本当にいい。しんみり&しみじみ。

 『ザ・コンプリート・アバシリ・コンサート1981』を前にして,演奏がどうのこうの,音質がどうのこうの,と批評するのは無礼に当たると思ってしまう。(称賛するにしても批判するにしても)言葉などは必要ない。無言でアート・ペッパーと向き合うべき。真っ白な気持ちでアルト・サックスと向き合うべき。
 その結果,ふつふつと湧き上がってくる熱い思いと対峙する。聴き込むにつれ“辛い気持ち”が込み上げてくるのはなぜ?

 『ザ・コンプリート・アバシリ・コンサート1981』でのアルト・サックスは,何か新しいこと,創造的なことを試みたりはしていない。これまでの音楽人生の集大成的な演奏である。
 すなわち,アート・ペッパーからの「感謝」の言葉。遠い日本の最果ての地まで演奏を聴きに集まってくれたファンへの「感謝」の言葉。最高の演奏をサポートしてくれたツアー・メンバーへの「感謝」の言葉。

UNRELEASED ART, VOL.1 THE COMPLETE ABASHIRI CONCERT 1981-2 アート・ペッパーをこよなく愛した日本のファンの面前におけるラストライブ。「時間よ止まれ…」。

 アート・ペッパーの“壮絶”ジャズ人生の最後のヒトコマが,真に幸福なものでよかった。命を削って演奏してくれてありがとう。アート・ペッパーよ,永遠なれ…。

  Disc 1
  01. Landscape
  02. Besame Mucho
  03. Red Car
  04. Goodbye
  05. Straight Life

  Disc 2
  01. Road Waltz
  02. For Freddie (Part One)
  03. For Freddie (Part Two)
  04. Body And Soul
  05. Talking
  06. Rhythm-a-ning
  07. Blues Encore

(ビクター/JVC 2007年発売/VICJ-61501-2)
(CD2枚組)
(ライナーノーツ/岩浪洋三)

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アート・ペッパー / ザ・トリップ5

THE TRIP-1 さて,今夜は何から話しましょうか? 管理人は『THE TRIP』(以下『ザ・トリップ』)について批評する場合,相手が「アート・ペッパーをどのように捉えているか」によって語り口を変える癖がありまして…。

 よくある例題としてはアート・ペッパーの王道「前期絶賛,後期否定」のパターン。ここで例題の模範解答を書くと長くなるので全カット。詳細はバー・カウンターでリアルに語り合いましょう。
 要は『ザ・トリップ批評は“攻めではなく受け”! まずは守りを固めてカウンター勝負。持久戦と瞬発力の論戦なのです。

 しか〜し,今夜は『ザ・トリップ』の分析相手がいない。サッカーで言えば後半ロスタイムで全員攻撃のオーバーラップ。いきなり管理人の“攻め”の時間から突入ということでご了承願います。

 まず,どうしても押さえておいてほしいのは『ザ・トリップ』が“後期”アート・ペッパーの“最高傑作”であるという事実。オリジナル全6トラック+別テイク+1=7トラックが名演であるという事実。しかし,ここから話がややこしくなるのだが『ザ・トリップ』の楽曲は非常にバラエティに富んでいるという事実。

 “後期の王道イメージ・ソング”にして,アート・ペッパーによるジョン・コルトレーンの“生き写し”なモードの権化=【ザ・トリップ】。ファンタスティックでメロディアスで“前期っぽい”【ア・ソング・フォー・リチャード】。この冒頭2トラックの「陰と陽」が『ザ・トリップ』のハイライト!

 そして続くはボサノヴァ調のコード・チェンジが印象的な【スウィート・ラブ・オブ・マイン】。【ザ・トリップ】のトラック批評ジョン・コルトレーンの『至上の愛』を語ったのであれば【スウィート・ラブ・オブ・マイン】ではジャッキー・マクリーン矢野沙織についても語らなければなりません。

 一転してハード・バップでブルースな【ジュニア・キット】の登場。ここが『ザ・トリップ批評の“山場”であり,この山を乗り越えたとしても,トドメにロックな【レッド・カー】が控えている。乗るにしても反るにしても,相手のカウンター戦術にハマル危険性大。

 おおっと,管理人一押しの【ザ・サマー・ノーズ】がスーパー・サブ。【ザ・トリップ】が7回まで無失点で迎えたというのに,敢えて監督・落合博光が「抑えの切り札」として登板させてしまう理不尽さ。【ザ・トリップ】の力投が報われない気分に襲われる。しかも曰くつきの超名演がラスト・イニングの9回ではなく中継ぎエースな8回の場面なのだから…。

 この全7トラックのどれとどれを組み合わせて,こちらのペースに持ち込むかがケース・バイ・ケース。『ザ・トリップ』には無限の可能性が秘められており,それはアート・ペッパー自身の可能性の具現化でもあるのです。ここが『ザ・トリップ』の最小公倍数!
 そして忘れずに絶賛しなければならない(これは義務であり責任です)ジョージ・ケイブルスエルビン・ジョーンズの強烈なバック・アップが『ザ・トリップ』の最大公約数!

THE TRIP-2 『ザ・トリップ』は“甘い”白人のイケ面貴公子だったアート・ペッパーが“渋い”よれよれのアメリカ・インディアン然とした,しわくちゃのCDジャケットが暗示する「年輪」なのであります。

 『ザ・トリップ』は重音の絶叫系なのであります。テナー・サックスのようなアルト・サックスは“マイ・フェイバリット”なケニー・ギャレットの師匠のようであります。音が“こぼれだして”います。胸が“キュン”と締め付けられて苦しくなってしまうのです。

 ああ〜,どうにも長くなる。後半ロスタイムから語り出しても『ザ・トリップ批評は長くなる〜。
 そこで「アムロ行きます」。ドロー狙いの自陣でのパス回し時の決めゼリフ → 管理人の結論。『ザ・トリップ批評

 『ザ・トリップ』での“熱くドロドロとした”アルト・サックスアート・ペッパーの「アナーキーな人生」そのもの。『ザ・トリップ』でのアート・ペッパーは,彼が「渡り歩いた人生」を背負って吹いている。時に吠えまくり,時に祈りを唱えてでもいるかのように…。

  01. THE TRIP-Orig.Take
  02. THE TRIP-Alt.Take
  03. A SONG FOR RICHARD
  04. SWEET LOVE OF MINE
  05. JUNIOR CAT
  06. THE SUMMER KNOWS
  07. RED CAR

(コンテンポラリー/CONTEMPORARY 1976年発売/VDJ-1583)
(ライナーノーツ/岩浪洋三,エド・ミッシェル)

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アート・ペッパー / モダン・アート5

MODERN ART-1 アート・ペッパー名盤MODERN ART』(以下『モダン・アート』)のアドリブが素晴らしい。完璧な出来だと思う。ここまで完璧にコントロールされたアルト・サックスは大袈裟ではなく「他に例を見ない」と言ってもいい。陰影のビブラートで高音域が目まぐるしくチェイスしている。

 アート・ペッパーが追求した“芸術”としてのアドリブ,ここに極めけり! 『モダン・アート』のアート・ペッパーを聴かせれば,アート・ペッパーなんて大した事ない,なんてほざくガキの口を簡単に塞げるというものだ。
 そう。アート・ペッパーこそ,歴代ジャズ・ジャイアンツ「指折りの天才」の一人なのである。

 しか〜し,管理人は『モダン・アート批評の中で,アート・ペッパーの天才,についてなど書かない。この名盤については多くが語り尽くされている。
 ただし,肝心な点が抜けている。抜け落ちている,くたばれジャズ・ジャーナリズム。お前らの耳は「提灯記事」専用なのか?

 『モダン・アート』について真っ先に語らなければならないのは,次の点である。
 “快作”の主役であるはずのアート・ペッパー本人が,ちっとも楽しそうではないのである。それどころか,あろうことか事実はその逆であり『モダン・アート』からは聴こえてくるのはアート・ペッパーの“ジレンマ”ばかり。何でこの点を誰も書かないのだろう。

 アート・ペッパーアルト・サックスでこう語っている。「違う。違う。こんなのは最高傑作でもなんでもない。俺はもっと出来るんだ。だからこんなんで満足などしないでくれ。俺自身が『モダン・アート』のアドリブの出来には全く満足していないんだ」。

 『モダン・アート』は,アート・ペッパーの“苛立ち”で満ちている。表面上,大成功に聴こえたとしても,実際には上手にごまかす技術が身に着いただけ?
 アート・ペッパーの目前には本人にしか見えない「高い壁」がそびえ立っている。この「高い壁」にアート・ペッパーが絶望しているように聴こえる節がある。もっともっと高く。

 行き着くところまで行ったからこそ見えた新たなステージ。もっともっとその先へ。『モダン・アート』はあくまでも通過点。自由自在に飛翔しているように聴こえて,本人は限界ギリギリの狭間で“もがいている”。感情の抑制と解放が同居する“苛立ち”しか聴こえてこない。

 そう。『モダン・アート』でのアート・ペッパーは生々しいほどに人間的。“天才”という称号などかなぐり捨てて,しかし自分の内に秘める妥協できないルールには従っている。決して破綻などしない“気品高き”メロディ主義。

MODERN ART-2 この事実にピアノラス・フリーマンベースベン・タッカードラムチャック・フローレスも気付いている。しかし,スイングする以外に,どうにもアート・ペッパーを励ますことができない。まぁ『モダン・アート』でのアート・ペッパーについていけるサイドメンは地球上にただの一人もいなかったであろう。
 ラス・フリーマントリオのHAPPYな演奏で余計に際立つアート・ペッパーの「耽美主義と孤独」…。切ない→刹那主義…。

 管理人は思う。名盤モダン・アート』を頂点として「前期」アート・ペッパーは燃え尽きたのだ。燃え尽き症候群に襲われたのだ。それゆえの「後期」での別人格なのだと思う。

 そう。アート・ペッパー“最大の苦心作”にして「後期」への誘い水。それが『モダン・アート』の真髄であろう。

  01. BLUES IN
  02. BEWITCHED
  03. WHEN YOU'RE SMILING
  04. COOL BUNNY
  05. DIANNE'S DILEMMA
  06. STOMPIN' AT THE SAVOY
  07. WHAT IS THIS THING CALLED LOVE
  08. BLUES OUT

(イントロ/INTRO 1957年発売/TOCJ-5955)
(ライナーノーツ/小川隆夫,高井信成)

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アート・ペッパー / ノット・ア・スルー・ストリート〜アート・ペッパー・ライヴ・イン山形 '783

NOT A THROUGH STREET〜ART PEPPER LIVE IN YAMAGATA '78-1 アート・ペッパー,そしてバド・パウエルを語る際の“常套句”が「前期」と「後期」。ジャズメンたるものワンパターンであるはずがない。マイルス・デイビスのようなツワモノもいる。

 だから「前期」とか「後期」とかで語るのはナンセンスなのだが,アート・ペッパーバド・パウエルに関しては「前期」と「後期」で語ってOK。なぜならアート・ペッパー本人が「後期」で「前期」を自己否定しているのだから…。

 「前期」アート・ペッパーは,柔らかで「閃き」で勝負する「天才肌」なプレイ・スタイル。滑らかで流麗でショート・カットなアドリブが聴き所。
 「後期」アート・ペッパーは,硬派かつハードで「理知的」なプレイにモデル・チェンジ。エモーショナルでフリーキーでロング・トーンのアドリブが聴き所。

 アート・ペッパーソニー・ロリンズビル・エヴァンス。生真面目でナイーブな人間ほど考え込むものだ。自分の演奏に疑問を感じ,或いは自信を失い,ドラスティックな変化を求める。しかし皮肉なことにそれは必ずしもファンの期待とは一致していない。彼ら本来の優れた個性さえ切り捨ててしまう危険が伴うからだ。

 声量を上げたプレイは得意ではないと自覚しつつも,絶叫系のフル・トーンを身にまといはじめた頃の来日公演・山形ライブ=『NOT A THROUGH STREET〜ART PEPPER LIVE IN YAMAGATA ’78』(以下『ノット・ア・スルー・ストリート〜アート・ペッパー・ライヴ・イン山形 ’78』)の中にアート・ペッパーの典型的な「後期」が詰まっていると思う。

 『ノット・ア・スルー・ストリート〜アート・ペッパー・ライヴ・イン山形 ’78』におけるアート・ペッパーアドリブは「短編小説家」が無理やり「長編小説」を書いているような感じ。起承転結のない,キレのないフレーズが苦い。
 そう。「前期」アート・ペッパーの魅力であった「甘美な節回し」が消し去られ「後期」アート・ペッパーの魅力である「苦味」「渋味」が出ている。これはちょうど“美声家が咽喉を潰してガラガラ声にしたようなもの”と思う。

NOT A THROUGH STREET〜ART PEPPER LIVE IN YAMAGATA '78-2 『ノット・ア・スルー・ストリート〜アート・ペッパー・ライヴ・イン山形 ’78』でのアート・ペッパーこそ“ガラガラ声の咽喉潰し”である。
 アドリブが吹き切れていない。迷いながら吹いている。だから迷いを払拭する行為として“大吠え”している。徹頭徹尾,硬派でハードなブロー。

 「後期」アート・ペッパーの演奏スタイルへの変身は,向き不向きの判断基準ではなく,ジョン・コルトレーン・ライクなスタイルが好きかどうか,なのであろう。アート・ペッパーは「後期」を気に入っている。そこには「前期」を突き詰めていっても絶対に手に入らないスケールの大きさな演奏がある。残りの生涯を賭けてものになるまで頑張ろう,と腹をくくった感がある。

 結果は散々。短距離ランナーが無理矢理マラソンを走ろうとしても記録などでやしない。『ノット・ア・スルー・ストリート〜アート・ペッパー・ライヴ・イン山形 ’78』は多くのジャズ批評家が指摘する「後期」の“悪さ”の詰め合わせ。確かに駄盤であろう。

 しかし,ダミ声で自慢の美声を自己否定してみせる「実演形式の凄み」がある。本物のジャズメンの「ボロボロの凄み」に敬意を表明する。

  DISC ONE
  01. OPHELIA
  02. BESAME MUCHO
  03. MY LAURIE

  DISC TWO
  01. CARAVAN
  02. THE TRIP
  03. THE SUMMER KNOWS (SUMMER OF '42)
  04. RED CAR

(トイズファクトリィレコード/TOY'S FACTORY RECORDS 1990年発売/TFCL-88901-2)
(CD2枚組)
(ライナーノーツ/岩浪洋三,ローリー・ペッパー)

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アート・ペッパー / ゲティン・トゥゲザー5

GETTIN' TOGETHER!-1 アート・ペッパーの一番ゴキゲンなアルバム。それが『GETTIN’ TOGETHER!』(以下『ゲティン・トゥゲザー』)である。

 アート・ペッパーは日常的に余り聴かない管理人だが『ゲティン・トゥゲザー』は“例外”である。とにかく楽しい。何回もまた聴きたくなってしまう。
 ほら見てください。『ゲティン・トゥゲザー』のCDジャケットを。
 アルト・サックスを抱えてはいても,この雰囲気は工事現場のガテン系?な佇まい。アート・ペッパーがこれほど本気で笑っているCDジャケットも珍しい。本人もお気に入りのジャケット写真なのでは?

 内容は勿論,ジャケット写真も“陽気で明るい”『ゲティン・トゥゲザー』こそ,ウエスト・コースト・ジャズの“オーラ満載”盤なのだ〜。『ゲティン・トゥゲザー』こそ,管理人が選ぶアート・ペッパーの愛聴盤なのだ〜。

 巷では『ゲティン・トゥゲザー』と来れば「『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』の二番煎じでしょ?」が模範解答なのであるが,そんな世評の「続編」悪評など気にしてはならない。
 正直,悪評を付けられても致し方ない部分もある。『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』と比較してアート・ペッパーアドリブは劣化している。リズム・セクションの3人も(マイルス・デイビス・バンドの歴史からすると)格落ちであろう。

 でも,だからいいのだ。“神がかり的な”アート・ペッパーアドリブを体験したら寿命が縮む。
 マイルス・デイビス栄光の第1期黄金クインテットの3人ではないにしても,ピアノウイントン・ケリーベースポール・チェンバースドラムジミー・コブピアノ・トリオウェス・モンゴメリーの大名盤ハーフ・ノートのウェス・モンゴメリーとウイントン・ケリー』&『フル・ハウス』でのウイントン・ケリートリオ。「ザ・リズム・セクション」としての“知名度”が小粒なだけで実力は「折り紙つき」なのである。

GETTIN' TOGETHER!-2 そう。『ゲティン・トゥゲザー』の企画としては「『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクションアゲイン」なのだが,実体は「続編」ではなく別物。
 「アート・ペッパー VS マイルス・バンドのザ・リズム・セクション」というフォーマットが同じなだけで,その実,アート・ペッパーのワン・ホーンではないのだから音造りからして「続編」ではなく別物。

 ついでに『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』での,レッド・ガーランドポール・チェンバースフィリー・ジョー・ジョーンズ組とはフォープレイが結成できたが,ポール・チェンバースだけが残留で,ウイントン・ケリージミー・コブでは,ニュー・フォープレイの結成ならず〜が「続編」ではなく別物。

 リマスタリングで聴いているせいなのかもしれないが,アート・ペッパーアルト・サックスの“鳴り”も「続編」ではなく別物。
 レスター・ケーニッヒの狙いである“二番煎じのカムフラージ”トランペットコンテ・カンドリのプッシュを借りて「ウエスト・ミーツ・ザ・イースト」のマイスター=アート・ペッパーが予定調和的に吹き上げていく名人芸。

 …でっ,リラックスした状態で“ひょい”と一捻りしただけの“天才のアドリブ”がニヒルで痛快で快感なんだよなぁ。遅れてきたスイングが気持ちいいんだよなぁ。
 スイングするアート・ペッパーが,たまらんなぁ。

  01. WHIMS OF CHAMBERS
  02. BIJOU THE POODLE
  03. WHY ARE WE AFRAID?
  04. SOFTLY, AS IN A MORNING SUNRISE
  05. RHYTHM-A-NING
  06. DIANE
  07. GETTIN' TOGETHER
  08. GETTIN' TOGETHER (alternate take)
  09. THE WAY YOU LOOK TONIGHT

(コンテンポラリー/CONTEMPORARY 1960年発売/VICJ-60761)
(ライナーノーツ/マーティン・ウイリアムス,久保田高司)
(紙ジャケット仕様)

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アート・ペッパー / アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション5

ART PEPPER MEETS THE RHYTHM SECTION-1 アート・ペッパーの“最高傑作”のみならず,コンテンポラリーを,そしてウエスト・コースト・ジャズをも代表する名盤ART PEPPER MEETS THE RHYTHM SECTION』(以下『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』)。
 このアルバム・タイトルの真意を紐解けば『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』成功の秘訣が見えてくる!

 『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』はアート・ペッパーソロではない。ソロでなければ,一般的に「リズム・セクションが参加している」とわざわざ記す必要性はないと思う。
 しかし『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』の場合は『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』だとリズム・セクションの存在を明記する必要性があった。

 コンテンポラリーが仕掛けたは“当代髄一の”リズム・セクション。定冠詞つきの「ザ・リズム・セクション」と称された3人。ピアノレッド・ガーランドベースポール・チェンバースドラムフィリー・ジョー・ジョーンズ
 そう。マイルス・デイビス栄光の第1期黄金クインテットの3人なのである。

 アート・ペッパーマイルス・デイビスの「ザ・リズム・セクション」の共演は,ウエスト・コースト・ジャズ最高のアルト・サックス・プレイヤーにして,白人最高のアルト・サックス・プレイヤーのアート・ペッパーを売り出すらめの仕掛けである。話題性に富むマイルス・デイビスリズム隊との共演なのだから「ザ・リズム・セクション」をプッシュしたのも当然であろう。

 そんな“下心”で付けられた何の変哲もないアルバム・タイトル。しかし『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』とネーミングされた「ザ・リズム・セクション」との“対等な”共演こそが『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』をアート・ペッパーの“最高傑作”へと押し上げた最大の理由なのである。

 そう。“西の代表”アート・ペッパーの「白さ」と“東の代表”ザ・リズム・セクションの「黒さ」。これぞ「ウエスト・ミーツ・ザ・イースト」の決定盤。後付の偶然にして「意味深」だよなぁ。「名は体を表わす」だったよなぁ。

 ええい,べらんめぇ。ここで暴言覚悟で一言物申す。
 ズバリ「ウエスト・ミーツ・ザ・イースト」の『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』は“50年代のフォープレイ”なのだ。管理人はこれを言いたいのだ。
 フォープレイこそ「ウエスト・ミーツ・ザ・イースト」。「西の代表」リー・リトナーネーサン・イーストハービー・メイソンと「東の代表」ボブ・ジェームス。こんな組み合わせが聴きたかった〜!

 4人対等のチーム・プレイが身上のフォープレイと同じく『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』の4人も対等のチーム・プレイ。“クールで洗練された”アート・ペッパーが“ブルージーな”レッド・ガーランドポール・チェンバースフィリー・ジョー・ジョーンズと音を重ねても全く違和感を感じない。いいや,あたかもレギュラー・グループのような息の合った演奏を展開している。

 この“50年代のフォープレイ”のような名演の副産物が“オーディオ・マニア必携の”高音質盤の誕生へとつながっている。
 アルト・サックスアート・ペッパーピアノレッド・ガーランドに負けない,ベースポール・チェンバースドラムフィリー・ジョー・ジョーンズの明瞭さが際立っている。ベースドラムがバランス・ギリギリまで前に出ている。大音量でクリアな音質のベースドラムこそが高音質盤の秘訣であろう。

 マジで音がいい。XRCDに買い換えて大満足。これぞ大音量で鳴らすに値する超名盤。東のヴァン・ゲルダーと並び称される西海岸を代表する録音技師=ロイ・デュナンの音はとてもクリアでアート・ペッパーの軽やかなアルト・サックスの魅力を伝える驚異の臨場感。いつでも聴きたい,いつまでも持っていたいXRCDである。

ART PEPPER MEETS THE RHYTHM SECTION-2 さて,ここまで『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』を“最高傑作”と連呼してきたが,アート・ペッパーの“アドリブの冴え”は『サーフ・ライド』前後の絶頂期には及ばない。

 『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』の最大の魅力は,アート・ペッパーの“端正でオーソドックスな”ジャズ・サックスの「教則本」のお手本として出てきそうなスマートなアドリブである。陰影の少ない軽やかなアルト・サックスが重量級のリズム・セクションの上を艶やかな音色で飛翔している。

 そう。『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』は「超一流の演奏と聴きやすさが同居した」がゆえの“最高傑作”。ゆえにウエスト・コースト・ジャズの代表盤。言わば「万人向け」の大名盤
 『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』は,マイナー調のメロディ&分かりやすいアドリブ命のジャズ初心者と全てを一巡したジャズ上級者のための大名盤

 暴言覚悟で断言すれば『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』を耳タコになるまで聴き込んだマニアならBGMとして楽しめる。何百回聴いても肩の凝らないBGM。だって“50年代のフォープレイ”なのですから。これ本気で書いています。

 名演にして高音質。あまりにも“ベタな”『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』。
 『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』が苦手な読者の皆さん,あなたはジャズの中級者ではありませんか?

  01. YOU'D BE SO NICE TO COME HOME TO
  02. RED PEPPER BLUES
  03. IMAGINATION
  04. WALTZ ME BLUES
  05. STRAIGHT LIFE
  06. JAZZ ME BLUES
  07. TIN TIN DEO
  08. STAR EYES
  09. BIRKS WORKS
  10. THE MAN I LOVE

(コンテンポラリー/CONTEMPORARY 1957年発売/VICJ-61039)
(ライナーノーツ/レスター・ケーニッヒ,久保田高司)
(☆XRCD24盤仕様)

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アート・ペッパー / リターン・オブ・アート・ペッパー5

THE RETURN OF ART PEPPER-1 アート・ペッパー名盤THE RETURN OF ART PEPPER』(以下『リターン・オブ・アート・ペッパー』)について語る際には“ジャンキー”アート・ペッパーについてのウンチクが必要である。

 香辛料屋のペッパー家でドラッグを扱っていたかどうかは知らないが,アート・ペッパーは麻薬中毒のために演奏活動をたびたび中断した麻薬の常習犯であった。
 そんな“ジャンキー”アート・ペッパーが,2度目のムショ暮らしからシャバへとリターンズ。演奏活動へとリターンズ。それが『リターン・オブ・アート・ペッパー』の真実である。

 覚えておきたいのは『リターン・オブ・アート・ペッパー』は,出所後間もなく録音された演奏を“寄せ集めた”コンピレーション盤だという事実。『リターン・オブ・アート・ペッパー』に明確なコンセプトなどなく,無我夢中にガムシャラに,思いのままに演奏したセッションの記録。
 じっくり聴き込むとアート・ペッパーはまだ本調子とは言えないが,テクニック云々を超越した「復帰への喜び」が伝わってくる。刑務所で書き溜めたオリジナル曲を演奏できる喜び。復帰に賭けるアート・ペッパーの並々ならぬ意気込みと言うか気合と言うか,ハイテンションで創造活動と格闘した気迫がアルト・サックスに乗り移っている。

 いいや,アート・ペッパー「復帰への喜び」に満ちているのは,アート・ペッパー以上にサイドメンの面々!
 トランペットジャック・シェルダンピアノラス・フリーマンベースルロイ・ヴィネガードラムシェリー・マンが“天才”アート・ペッパーの復帰を喜んでいる!

 そう。『リターン・オブ・アート・ペッパー』は,ウェスト・コースト・ジャズオールスターズによる「アート・ペッパー帰還祝い」盤! オールスターズの全員が盛り上がっている!
 しかし,そこはアート・ペッパー投獄中の間に“世界を制した”ウェスト・コースト・ジャズ。盛り上がり方も“明るく爽やか”なハーモニー・マシーン。これで悪いはずがない。

 後期ペッパーの凄みを知るペッパー・ファンとしては,前期ペッパーアルトの音色とフレージングに甘ったるさを感じてしまうのだが,軽やかなアルト・サックスこそが前期ペッパーの聴き所。
 アート・ペッパーは“職人肌の天才”ゆえに,時に情緒的になりすぎてしまうこともあるのだが,ツボにはまった時のアート・ペッパーアルト・サックスは,繊細で表現力豊かな優しい音色で,唯一無二の“情感豊かな”アドリブを吹きまくる〜。

 しかし管理人のツボは,そんな“稀代のインプロバイザー”がアンサンブルに回った瞬間に聴かせる「ちょっと息を抜いた温かさ」! 前期ペッパーは軽いノリで「硬派と軟派が入り交ざる」傾向にあるのだが『リターン・オブ・アート・ペッパー』には,その特長がモロに出ている。

 ウェスト・コースト・ジャズの“売り”であるチェイスが決まっているせいなのだろう。お洒落にアレンジされた心地良いユニゾン&ハーモニー。インプロヴィゼーションのキャッチャーな展開。
 『リターン・オブ・アート・ペッパー』におけるアート・ペッパーアルト・サックスは,とにかく良くコントロールされているのにジャズ特有の躍動感はしっかりとキープされている。素晴らしい。

THE RETURN OF ART PEPPER-2 …と,ここまで『リターン・オブ・アート・ペッパー』を絶賛してきたが,絶賛するのは『リターン・オブ・アート・ペッパー』におけるアート・ペッパーであって,実は管理人は他のアルバムで聴くアート・ペッパーは余り好きではない。
 好きではない理由は,端的に言って「ヤバすぎる」からだ。

 アルト・サックスらしい艶やかで明るいトーンで何とも聴きやすいのに,飛び出してくるアドリブは自己破滅的な精神性丸出しなフレーズ。「硬派と軟派が入り交ざる」このギャップにドッと疲れる。アート・ペッパーチャーリー・パーカーのようなアドリブ一辺倒な天才とは疲労の次元が異なる。とっつきやすいのに目も眩まんばかりの複雑な緩急で集中力が求められるゆえ,聴き終えると「精気が吸い取られた」感覚が“じわり”と残る。

 だから管理人は『リターン・オブ・アート・ペッパー』が好きだ。ノー天気にオールスターセッションを楽しんでいるアート・ペッパーがメロディアス。分かりやすい。同じ理由で『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』も好きだ。「絶叫系」の後期も好きだ。管理人は単純な男・な・の・だ。

 アート・ペッパーは“稀代のインプロバイザー”である前に“ジャズ・サックス・プレイヤー”であった。ユニゾンを9割楽しみ1割の力で“情感豊かな”アドリブを楽しむ天才職人。
 復帰直後でノーコンセプトな『リターン・オブ・アート・ペッパー』が“ジャズメン”アート・ペッパーの素顔を引き出している。
 アート・ペッパーアルト・サックスは,ドラッグをやったから素晴らしいものになったわけではなく,自らの内で止め処もなく湧き上がるアイディアを鎮める目的でドラッグを使用したのだと管理人は思う。

  01. PEPPER RETURNS
  02. BROADWAY
  03. YOU GOT TO MY HEAD
  04. ANGEL WINGS
  05. FUNNY BLUES
  06. FIVE MORE
  07. MINORITY
  08. PATRICIA
  09. MAMBO DE LA PINTA
  10. WALKIN' OUT BLUES

(ジャズ・ウエスト/JAZZ WEST 1956年発売/TOCJ-5956)
(ライナーノーツ/中条省平,高井信成)

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アート・ペッパー / ペッパー・ジャム / OVER THE RAINBOW4

 『PEPPER JAM』の2曲目は【OVER THE RAINBOW】(以下【虹の彼方に】)。


 【虹の彼方に】でのアート・ペッパーが力強い。強い精神性を感じてしまう。うん。説得力が増し加わっている。「黙ってこの名曲を聴いてみろ」と言わんばかりの大迫力である。

 ライブであるにも関わらず,アート・ペッパーが“ガチガチ”に【虹の彼方に】のイメージを創り込んでいる。いや。これぞ“天才”インプロヴァイザーの面目躍如と褒めるべきであろう。
 この音世界,あるいは無類のアート・ペッパー好きにとっては【虹の彼方に】は“たまらない”名演なのだと思う。

 しかし管理人としては“ガチガチ”の【虹の彼方に】は御免被りたい。理由はリスナーが入り込む余地が残されていないから。ほらっ,どんな大好物でも無理矢理口に入れられては食べる気など無くしてしまうでしょ?
 特に中盤から後半にかけてはアルトが吹きすぎているかなぁ。4分21秒からの大絶唱は「凄い」とも思うが,同時に耳が痛い。抑揚の「抑」が“アゲアゲ”では感動などできません。

 それで【虹の彼方に】を聴いていて気付いたことがある。無意識のうちにブッチ・レイシーエレピを耳で追う自分発見である。
 そう。ブッチ・レイシーの“ほんわか”エレピが「虹の癒やし」を与えてくれる。この美しい余韻が,豪腕=アート・ペッパーの“とげとげしさ”を中和してくれている。

ART PEPPER : Alto Sax
HAROLD LAND : Tenor Sax
BUDDY COLLETTE : Tenor Sax
BLUE MITCHELL : Trumpet
BUTCH LACY : Electric Piano
JEFF LITTLETON : Bass
JIM PLANK : Drums

アート・ペッパー / ペッパー・ジャム / MILESTONES4

 『PEPPER JAM』の1曲目は【MILESTONES】(以下【マイルストーンズ】)。


 【マイルストーンズ】の異次元の音世界に入ってしまうと,誰のどのアドリブがどうのこうのは関係ない。モノラル録音特有の“ブレンド”された音の大洪水が“一丸となって”押し寄せてくる。その全てを「受け止められるか否か」である。

 【マイルストーンズ】のド迫力を,正面からまともに受け止められる“強者”が果たしているのだろうか。ヒリヒリする重い音。それが20分を超えて鳴り続ける。管理人はたじろいでしまうのが常である。あぁ。

ART PEPPER : Alto Sax
HAROLD LAND : Tenor Sax
BUDDY COLLETTE : Tenor Sax
BLUE MITCHELL : Trumpet
BUTCH LACY : Electric Piano
JEFF LITTLETON : Bass
JIM PLANK : Drums

アート・ペッパー / ペッパー・ジャム4

PEPPER JAM-1 “ウエスト・コースト最高の”いいや“白人最高の”アルトサックス奏者の呼び声高きアート・ペッパーであるが,その誉れ高い称号は概して1950年代=所謂“前期”の演奏を指してのもの。
 麻薬中毒にあえぎ投獄と療養に費やした60年代を挟み,75年のカムバック以降=所謂“後期”の演奏にはジョン・コルトレーンの影響が色濃く,アルトなのにテナーっぽい“鬼気迫る”スタイルへと変貌を遂げている。

 そう。アート・ペッパーCDには,前期と後期で内容に相当な隔たりがあり,ペッパー好きを公言する“マニア”であっても,後期ペッパーを否定する人さえいる。
 しかしそれは違うのではないか? 『PEPPER JAM』(以下『ペッパー・ジャム』)を聴いてからというもの,その思いが一層強くなってきた。

 『ペッパー・ジャム』は,日本独占販売&世界初登場となるアート・ペッパーの未発表音源! 伝説の復帰作『リヴィング・レジェンド』の半年前に録音されたライブ音源と聞かされれば,ペッパー・マニアなら即買でしょ?

 …と,即買が当然のように書いてはみたが,即買したのは“後期も愛する”ペッパー・マニアだけであろう。
 『ペッパー・ジャム』の正体は,いかにも怪しげな“ブートレグ上がり”のMONO録音盤。後期ペッパーの未発表音源はそう珍しくもないので“世界初登場”と声高に叫ばれたところで,前期ペッパーの信者たちに『ペッパー・ジャム』が見向きされないのも致し方ないと思う。

 実は管理人も興味本位のコレクターズCDとして『ペッパー・ジャム』を購入した。しかし『ペッパー・ジャム』を一聴してすぐ「これはただものではない」と感じてしまった。そう。これぞ“正真正銘の”未発表音源! こんなに“凄んだ”アート・ペッパーなど聴いたことがない!

 『ペッパー・ジャム』でのアート・ペッパーは激しい! 絶叫である! 前期ペッパーの特徴であろう「甘く艶やか+爽やかで瑞々しい音色」など消え失せている。そう。そこにあるのは「重く苦く汚れた音」! アート・ペッパー“その人の音”である。

 これは悪口ではない。アート・ペッパーは常に“素の自分に正直な”ジャズメンだと管理人は考える。前期ペッパーは,ひたすら“軽さ”を追い求めたが,それが前期ペッパーの“地”であっただけのこと。
 「重く苦く汚れた音」への変化は,アート・ペッパーの“地”の変化! そう。60年代の長いムショ暮らしでの挫折の経験と60年代を席巻したジョン・コルトレーンの演奏スタイルが,アート・ペッパーの人間性と音楽性の両面を変化させてしまった。

PEPPER JAM-2 栄光のカムバック演奏でアート・ペッパーが吹いたのが,コルトレーン・ライクな乾いた音色と一切の甘さを極限まで排除したアドリブ! 「もう綺麗になんて吹くものか。俺はただ感じたままに吹く!」。そう言っては,自分が思い描く理想のイメージを懸命に模索しながら“吹きこぼしていく”熱い演奏! 長尺のジャムセッションが“かなりやばい”。

 『ペッパー・ジャム』には,アート・ペッパーの“心臓の拍動”が記録されている。今にも心臓が口元から飛び出してきそうな,魂の全てを搾り出したかのような“心の叫び声”が聞こえてくる。
 管理人は思わずこう呟いた。「アート・ペッパー。もういいよ。もうたくさんだ。本当に分かったから,もうそこまで吹きこぼすのはやめてくれ!」と…。

 前期の「軽く爽やかな」アート・ペッパーも真実。しかし後期の「重く鬼気迫る」アート・ペッパーも真実。アート・ペッパーは後期も良い。

  01. MILESTONES
  02. OVER THE RAINBOW
  03. BLUE'S BLUES

(ポリスター/JAZZBANK 2004年発売/MTCJ-1065)
(ライナーノーツ/柳沢てつや)

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