アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

CD批評:渡辺 香津美

渡辺 香津美 / トリコ・ロール4

TRICOROLL-1 ギター渡辺香津美ベースヤネク・グウィズダーラドラムオベド・カルヴェールと,別パターンでドラムオラシオ“エル・ネグロ”エルナンデスと組んだ“2組のNEW・エレクトリックギター・トリオ”が『TRICOROLL』(以下『トリコ・ロール』)である。

 『トリコ・ロール』のタイトルから連想したのが,おフランスの「トリコロール・カラー」(ご丁寧にアルバム・ジャケットトリコロールしている!)だったのだが,これは渡辺香津美お得意のワルふざけのようで『TRICOROLL』のスペルが違う(おフランスの場合は「TRICOLORE」)。

 ズバリ『TRICOROLL』の真意とは「TRIO」+「ROCK’N ROLL」! 『トリコ・ロール』のタイトルに,エレクトリックギター・トリオのノリの良さや躍動感が“ミーニング”されている。

 個人的に『トリコ・ロール』のハイライトは,ベースヤネク・グウィズダーラ名演に尽きる。
 渡辺香津美ギターはいつも通り。曲ごとにインパクトを与えているのがドラムオベド・カルヴェールオラシオ“エル・ネグロ”エルナンデスになるのだが,自然と,知らず知らずのうちにヤネク・グウィズダーラベース・ラインばかりを追いかけてしまう。

 ヤネク・グウィズダーラのプレイ・スタイルが,音色でハッキリした主張するフィンガー・ベースであって,渡辺香津美と共演してきたベーシストでは,ジェフ・バーリンバーニー・ブルネルとイメージが被るから好みなのだと分析する。それにしてもヤネク・グウィズダーラの「キザミ」が凄い。安定したビートから「怪物」が幾度となく登場している。素晴らしい構成力は「バケモノ」である。

 『トリコ・ロール』のもう一つの“目玉”が選曲。『MOBO』収録の再演となる【上海】とYMOのサポートで弾いていた【ライディーン】。
 この2曲が大変興味深いのだが『トリコ・ロール』を【上海】と【ライディーン】目当てで聴いているうちに,その【上海】と【ライディーン】に間に挟まれた【メタボリズム】に完全KO。
 いつしか管理人の『トリコ・ロール』聴きとは【メタボリズム】を聴く行為を指すようになってしまった。

 そうしてヤネク・グウィズダーラジェフ・バーリンバーニー・ブルネルを重ねてしまうように【メタボリズム】を聴いていると,ジェフ・バーリンの『THE SPICE OF LIFE 2』(『THE SPICE OF LIFE』の方ではない)とバーニー・ブルネルの『KILOWATT』の2枚が脳裏に浮かんでくる。

TRICOROLL-2 これって何なんだろう。『トリコ・ロール』で今の渡辺香津美と昔の渡辺香津美が一気に「点ではなく線とか面とかで」つながったような感覚。
 出来としては完全に初演に負けている【上海】と【ライディーン】も,これはこれでイケテしまう感覚。

 『トリコ・ロール』がジワジワと来る。「TRIO」+「ROCK’N ROLL」の「ROLL」が来ている。

 惜しむべきは,渡辺香津美の狙いとしては曲調によって2人のドラマーを使い分けてみたのであろうが,ジワジワと来ている間に,こちらはオベド・カルヴェールではなくてオラシオ“エル・ネグロ”エルナンデスの方が良かった,そしてこっちはオラシオ“エル・ネグロ”エルナンデスではなくてオベド・カルヴェールの方が良かった,との雑念が入ってしまった。

 渡辺香津美にとっては「究極の選択」となったのかもしれないが,個人的にはオラシオ“エル・ネグロ”エルナンデスで通しても良かったかも…。

  01. SHANG-HAI
  02. METABOLISM
  03. RYDEEN
  04. ALGORITHM
  05. SEA DREAM
  06. PERFECT WATER
  07. THE SIDEWINDER
  08. AZIMUTH
  09. MOMENT'S NOTICE

(イーストワークス・エンタティンメント/EWE 2011年発売/EWBS 0184)
(☆BLUE−SPEC CD仕様)
(ライナーノーツ/石沢功治)

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渡辺 香津美 / MOBOスプラッシュ4

MOBO SPLASH-1 総勢14名での『桜花爛漫ライブを行なうまでに拡大した「MOBOバンド」。次に渡辺香津美が向かったのは「MOBOバンド」からの“削ぎ落とし”であった。

 具体的にはベースグレッグ・リードラム村上“ポンタ”秀一だけをピックアップした「MOBO」なるギター・トリオを“磨き上げる”ことで「MOBOバンド」とは“毛色の異なる”ダイナミック・サウンドの追求へと動く。

 やはりこの背景にはギター・シンセサイザーの技術的進歩に負うところが大きい。しかしそれ以上にギター・トリオだけで「MOBOバンド」を具現化できるまでに「ザ・渡辺香津美の音楽」が成熟してきたことの方が何倍に大きい。

 「MOBO」で活動していた渡辺香津美の頭の中には,表現したい音楽を幾種類も同時にアウトプットしようと試みた節がある。それこそジャズであり,フュージョンであり,プログレであり,ロックである。そしてそこに無国籍サウンドやハードコア,でも歌謡曲っぽいエンターテイメントにもそそられている。

 ゆえに,フットワークの軽い「MOBO」をベースとして『MOBO SPLASH』(以下『MOBOスプラッシュ』)では,フロントにマイケル・ブレッカーデヴィッド・サンボーンという“超大物”を迎えての“ぶつかり稽古”を敢行!

 マイケル・ブレッカーデヴィッド・サンボーンの「猟奇的な」変態プレイが効いている! マイケル・ブレッカーが「ブチ切れる」と渡辺香津美も「ブチ切れる」! デヴィッド・サンボーンが「荒れ狂う」と渡辺香津美も「荒れ狂う」!
 管理人は『MOBOスプラッシュ』でのトラウマが,後の渡辺香津美の変態プレイに影響を及ぼしたと想像する。

 鍵盤を置かずにギター・シンセサイザーやサンプラーを駆使した「MOBOバンド」と遜色なしの「MOBO」に,マイケル・ブレッカーでもなくデヴィッド・サンボーンでもなく,渡辺香津美の“色付けの個性”が感じられる。

MOBO SPLASH-2 さて,ここまで書いてきてアレなのだが『MOBOスプラッシュ』は楽曲の出来がイマイチ。個人的には【十六夜】と【シナプス】の2曲だけである。
 この2曲がどちらもスロー・ナンバーだという事実に「MOBO」プロジェクトの“終焉”を予感させる星4つ。

 それにしても【十六夜】である。【十六夜】こそが“客演”デヴィッド・サンボーン最大の名バラードである。【ドリーム】と同じくらい大好き!

  01. AFTERNOON IN THE PARK
  02. SPLASH
  03. IZAYOI
  04. SOMETIMES WE SAY MONK
  05. CRISIS III
  06. GOURD-TOP-MOUSE
  07. SYNAPSE
  08. BUSIEST NIGHT

(ポリドール/DOMO 1985年発売/UCCJ-4116)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/池上比沙之,石沢弘治)

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渡辺 香津美 / 桜花爛漫4

OUKARANMAN-1 渡辺香津美が自慢の「MOBOバンド」を組んで,人生を謳歌(桜花)していた頃のライブ盤が『OUKARANMAN』(以下『桜花爛漫』)である。

 とにかく凄い「大宴会」である。『桜花爛漫』に『MOBO』や『MOBO倶楽部』のようなスリリングな演奏を期待してはならない。この雰囲気は「セッション大会」と言う名の「飲み会」なのだ。

 『桜花爛漫』と題された「飲み会」の参加者は,ギター渡辺香津美ベースグレッグ・リー渡辺建ドラム村上“ポンタ”秀一青山純れいち横沢龍太郎ドラムパーカッション仙波清彦キーボードヴォーカル橋本一子アルトサックスソプラニーニョ沢村満アルトサックス坂田明梅津和時テナーサックス片山広明トロンボーン向井滋春の計14名。

 14名の「音の呑み比べ」は「利き酒」なのか? 入り乱れたり分離しては,新しいジャズフュージョンの味を創造する実験の「お祭り」である(実際にステージ上には5台のドラムを支えるために櫓が組まれたそうである)。

 観客席はステージ上で咲き乱れる「満開の音桜」を見て&聴いて,最高の乱痴気騒ぎが行なわれたことであろうと予想する。こんなライブを聴かせられたら「踊らにゃソンソン〜」!

OUKARANMAN-2 …というわけで,自宅のオーディオ・ルームで,踊り狂うわけでもなく,静かにタテノリとヨコノリを堪能している管理人も早めに「お開き」。
 以下は管理人が『桜花爛漫』の打ち上げ会場で語ったであろうツイン・ベース談義…。

 スタジオ録音では違いが分からず,ただ分厚いベース・ラインに“喰いついた”だけの管理人だったが,ライブ録音を聴いてやっとツイン・ベースの意味が分かった〜。
 グレッグ・リーがフレッテッドで“リズムカル”なベース渡辺建がフレットレスで“メロディアス”なベース。全くタイプの異なるベーシストを自由自在に“ハベラカス”渡辺香津美の快感たるやMAXMAX〜!

 ただし一連の「MOBOプロジェクト」の中では,出来が散漫(爛漫)すぎ。渡辺香津美のアグレッシブを語るなら「MOBO」に限る。

  01. INTRODUCTION
  02. AMERICAN SHORT HAIR
  03. Σ
  04. 危険がいっぱい
  05. GOOD VIBRATION
  06. 遠州つばめ返し
  07. UNICORN
  08. 上海
  09. 風連

(ポリドール/DOMO 1985年発売/UCCJ-4115)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/青木誠,石沢弘治)

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渡辺 香津美 / MOBO倶楽部5

MOBO CLUB-1 「事件は会議室で起きてるんじゃない! 現場で起きてるんだ!」( by 踊る大捜査線 )と渡辺香津美も考えたのだろう。
 “時代の遥か先を行く音楽”『MOBO』を遠い将来でも近い将来でもなく,今,この現場で鳴らしたい! アメリカではなくここ日本で鳴らしたい!

 そんな渡辺香津美の「日本で,今,この現場で」欲求に駆られて作り上げたのが“セッション三昧”するための「MOBOバンド」。
 そんな「MOBOバンド」の貴重なセッションの記録こそが『MOBO CLUB』(以下『MOBO倶楽部』)である。

 「MOBOバンド」とは『MOBO』の“売り”であったツイン・ベースツイン・ドラム編成を踏襲した,ベースグレッグ・リー渡辺建ドラム村上“ポンタ”秀一パーカッション仙波清彦による“凄腕”純国産での『MOBO』の発展バンド。

 いや〜,ロビー・シェイクスピアスライ・ダンバーのジャマイカ隊とマーカス・ミラーオマー・ハキムのニューヨーク隊も凄かったけど「MOBOバンド」の超重量級リズム隊ももの凄い! 自由闊達,変幻自在,縦 横無尽の超弩級のセッション大会に一発KO!

 個人的にはグレッグ・リーベース・ラインが最高で,このベース・ラインを追いかけていると,いつでもあの頃の「MOBOバンド」。そして「MOBO」にTRIPしてしまう!
 ノリノリで大暴れな“和製”ツイン・ベースの躍動感こそが『MOBO倶楽部』の肝であろう。

 しかし『MOBO倶楽部』を聴いていると『MOBO』以上にカズミ・バンドの『GANAESIA』からの影響を感じてしまう。
 これって“怪人”坂田明アルトサックスヴォイスというよりもラップのせい? 『MOBO』の完成された世界観以上に,混沌と整然が絶妙に同居する抽象性に『GANAESIA』からの影響を感じてしまう。

 ズバリ『MOBO倶楽部』における「MOBOバンド」の真髄とは,面白さと過激さを本気で追求したプログレ・フュージョン
 『MOBO倶楽部』における「MOBOバンド」とは,カズミ・バンドが演奏するキングクリムゾンである。渡辺香津美ギターシンセが,かなり挑戦的というか挑発的というか,アヴァンギャルドで“ぶっ飛んでしまっている”。

 シンプルなペンタトニックの,だけど,どこか壊れたメロディが,グギグギのディストーションで鳴り響く。ノリノリのスケール・オンから瞬間的にアウト・オブ・スケールの強烈なフレーズが攻めてくる。
 本気でヤンチャする渡辺香津美に「向かうところ敵なし」。渡辺香津美に「恐いものなし」。

MOBO CLUB-2 そう。渡辺香津美は『MOBO倶楽部』で完璧にプログレを消化したのだと思う。それが「今,現場で起きている」渡辺香津美のプログレ・フュージョンなのである。
 
 ただし『MOBO倶楽部』の「今」は一晩だけ楽しめる音楽などではない。ジャズを消化しフュージョンを消化しロックとプログレをも消化してきた渡辺香津美だから作ることのできた「連綿と続く構築された快楽」。

 『MOBO』が“時代の遥か先を行く音楽”であったならば『MOBO倶楽部』は“未来永劫鳴り続ける音楽”である。素晴らしい。

  01. 風連
  02. 予感
  03. つるかめひなタンゴ
  04. 危険がいっぱい
  05. 強制接吻
  06. サッちゃん
  07. CIRCADIAN RHYTHM
  08. Σ

(ポリドール/DOMO 1984年発売/UCCJ-4114)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/中原仁,石沢弘治)

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渡辺 香津美 / スピニング・グローブ5

SPINNING GLOBE-1 『THE SPICE OF LIFE 2』以来となる,渡辺香津美ジェフ・バーリンとの25年振りの共演盤。『SPINNING GLOBE』(以下『スピニング・グローブ』)に「甦る青春」を思い重ねた。

 しか〜し『スピニング・グローブ』は,とんでもないアルバムであった。『スピニング・グローブ』に,懐かしさを求めていたが,とんでもない返り討ちにあってしまった。素晴らしい演奏である。素晴らしい楽曲である。

 …と書き出したが,この感想は反則技であることを告白する。なぜなら『スピニング・グローブ』は,アルバムのリリース前に「渡辺香津美 × ジェフ・バーリン × ヴァージル・ドナティ」のジャパン・ツアーを観劇して感激!
 「渡辺香津美 × ジェフ・バーリン × ヴァージル・ドナティ」のLIVEこそが2013年のハイライト! つまりは『スピニング・グローブ』には,聴く前から“大名盤”との偏見持ち〜。

 しか〜し,すでに買いかぶり状態で接した『スピニング・グローブ』の初見がアレレノレ? こんな感じだったかなぁ…。
 ズバリ『スピニング・グローブ』の真髄は「音の万華鏡」である。全体像を掴めそうで掴みきれない,ムズガユイ感覚。音に接すれば接するだけ印象が変化していく。聴き込む度に音楽が変化して聴こえる。
 『THE SPICE OF LIFE』がキレキレだっただけに『スピニング・グローブ』のヌルヌルに戸惑いを感じて,一瞬焦ってしまった。

 『スピニング・グローブ』はジワジワと来る。「音の万華鏡」である『スピニング・グローブ』は,タイトル通りの「回る地球」→「丸い球体」→「柔らかなボール」→「変形スライム」のようなギター・フュージョンである。
 一定の聴き込み回数を境に『スピニング・グローブ』の“まろやかなスベスベした音楽”を安定して掴めるようになると,あの日のLIVEで聴いた『スピニング・グローブ』が自宅のステレオから鳴り出し始める。ヤッター。ヤッター。ヤッターマンの渡辺香津美〜。

 渡辺香津美の超絶ギターが「弾きすぎていない」。ジェフ・バーリンの超絶ベースが「弾きすぎていない」。ヴァージル・ドナティの超絶ドラムが「叩きすぎていない」。
 3人が3人とも特段難解なことは演っていない。トンガッテはいないのだ。この辺りのニュアンスの変化に,キレキレだった『THE SPICE OF LIFEトリオからの25年の歳月を実感する。“大人な”渡辺香津美フュージョンギターを実感する。

 ジェフ・バーリンベースが本当にいい。こんなにGROOVEするコーラス付のベース・ラインを弾けるロック系のベーシストも世界に数えるほどしかいないと思う。
 ヴァージル・ドナティドラムアラン・ホールズワース仕込みの「手数王」系なのに,変幻自在なアース・ビートにしてやられる。

 所謂ロック系ゆえシンプルな演奏なのだが,ジェフ・バーリンヴァージル・ドナティも,王道のロック系から外れたバカテクのオカズ自慢。それでいてゴチャゴチャしていないのが能力の高さなのであろう。
 非常にタイトでスッキリとまとまったリズムに乗って,渡辺香津美1人が前後左右に飛び出すことができている。

SPINNING GLOBE-2 そう。「音の万華鏡」である『スピニング・グローブ』は,アクセント重視のジェフ・バーリンヴァージル・ドナティ組だから実現できた「超絶を超えた超絶系」=「超絶遅攻な」ギター・トリオ
 テクニックのヒケラカシを殺した“COOLな”スーパー・プレイの連続にただ酔いしれるだけ。頭ガーンの頭ボーで「オールOK」なのでございりまする〜。

 それにしても2013バージョンの【JFK】を耳にした瞬間の胸の高まりはどうして? これって恋なの? もしかすると25年前の【JFK】以上に好きになってしまったかも?

 管理人の結論。『スピニング・グローブ批評

 管理人にとって『スピニング・グローブ』は『THE SPICE OF LIFE 3』ではなく『SPINNING GLOBE 1』である。「甦る青春」改め「青春真っただ中」な名盤である。
 20XXバージョンの【JFK】の再々演を含む『SPINNING GLOBE 2』のリリースを強く熱望する。

  01. SPINNING GLOBE
  02. SECRET OF TOKYO
  03. DURESS CODE
  04. OWED TO JOY
  05. THE USER
  06. REFLECTION OF PARIS
  07. KOKORO
  08. I WILL
  09. JFK

(ワーナーミュージック・ジャパン/WARNER MUSIC JAPAN 2013年発売/WPCR-15377)
(ライナーノーツ/渡辺香津美)

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渡辺 香津美,ユージン・パオ,ジャック・リー / エイジアン・スーパー・ギター・プロジェクト〜ギター三国志4

ASIAN SUPER GUITAR PROJECT - GUITAR SAM GUK JI-1 アコースティック・ギターの名手3人が集い「世界指向(アジア指向)」を掲げて挑戦した渡辺香津美の新しい企画盤。それが『ASIAN SUPER GUITAR PROJECT―GUITAR SAM GUK JI』(以下『エイジアン・スーパー・ギター・プロジェクト〜ギター三国志』)である。

 「本家」=ジョン・マクラフリンアル・ディメオラパコ・デ・ルシアによるスーパー・ギター・プロジェクトのコンセプトを丁寧に煮詰めたもんだ。
 日本では無名のユージン・パオジャック・リーの両ギタリストであるが,渡辺香津美クラスのスーパー・ギタリストであることを見せつけられた。しかし今回のレコーディングでは“アコースティック・ギター弾き”に徹した渡辺香津美に「一日の長」有りも明白。スチール弦とナイロン弦を巧みに使い分け“扇の要”の役割を果たしている。

 …と『エイジアン・スーパー・ギター・プロジェクト〜ギター三国志』の聴き所は,超絶技巧を誇る3人のスーパー・ギタリスト“夢の競演”にあるのだろうが,真の聴き所はテクニックにあらず。

 『エイジアン・スーパー・ギター・プロジェクト〜ギター三国志』のハイライトは,3人の素晴らしい音楽性である。「アジア指向」の文字が躍る割にはアジアの雰囲気は希薄。『エイジアン・スーパー・ギター・プロジェクト〜ギター三国志』のプロジェクト名は『ヨーロピアン・スーパー・ギター・プロジェクト〜ギター三銃士』とか『アメリカン・スーパー・ギター・プロジェクト〜ギター・インディアン』のネーミングでも十分にいける。
 管理人は『エイジアン・スーパー・ギター・プロジェクト〜ギター三国志』にECMを感じてしまった。

ASIAN SUPER GUITAR PROJECT - GUITAR SAM GUK JI-2 『エイジアン・スーパー・ギター・プロジェクト〜ギター三国志』のハイライト曲=【サムホエア・イン・タイム】が泣ける。

 こんなにも悲しいマイナー調は「ギター3本だからできた」ジャック・リーのアレンジの賜物。いいや,ジャック・リーのアレンジの才を超える渡辺香津美ユージン・パオのアンサンブルとインタープレイ

 エレクトリック・ギターでメロウな哀愁を弾き続けるジャック・リー。ナイロン弦ギターで歌心溢れるフレーズを紡ぎ出す渡辺香津美。スチール弦ギターによるシャープな音色のユージン・パオのハーモニーに酔いしれる。

  01. For The Children
  02. Asian Triangle
  03. Made In France
  04. Waiting In Rain
  05. Off Side
  06. Azimuth
  07. Libertango
  08. Spanish Fried Rice
  09. Somewhere In Time

(ビデオアーツ/VIDEOARTS 2006年発売/VACM-1291)
(ライナーノーツ/石沢功治)

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渡辺 香津美 / ビヨンド・ザ・インフィニット4

BEYOND THE INFINITE-1 『INFINITE』でデビューした渡辺香津美の30周年記念盤のタイトルは『BEYOND THE INFINITE』(以下『ビヨンド・ザ・インフィニット』)。
 そう。「無限大」から「無限大の彼方,その先,その向こう側」である。渡辺香津美の創作意欲は湧き上がる一方。誰も知らない「ブラックホールの反対側」に突入しようとしていた。

 渡辺香津美は『ビヨンド・ザ・インフィニット』で“ギター組曲”へと着手した。それだけでも凄いのだが,サブタイトルが「『2001年宇宙の旅』スタンリー・キューブリックに捧ぐ」と来た。SF。宇宙。スペクタクル。モチーフが壮大すぎる〜。
 CDを聴く前から,待ち受けているであろう音楽のスケールに圧倒されて“恐れおののいてしまう”自分がいた。

 管理人の『ビヨンド・ザ・インフィニット』の第一声は「いや〜参った。凄い。凄すぎる」。確かに2種類の組曲=1−7の「惑星」シリーズと8,9の「ネコビタンX」シリーズは両方共に「ブラックホールの反対側」であった。
 『ビヨンド・ザ・インフィニット』での渡辺香津美ジャズでもなければクラシックでもない。プログレである。プログレの「KAZUMI」リターンズである。
 相当な緊張感を強いられる複雑なスコアでありながらも,音楽の感触自体はソフトである。“前のめりで”トリップできる。実にシンフォニックなプログレ・ギター組曲に“拍手喝さい”である。

 渡辺香津美のプログレ・ギターの,厳密さと曖昧さ,クールとホット,冷静と激情というような相反する音楽要素の作用で,思いがけない複雑な宇宙空間にトリップさせられてしまう。厳格な構成を有しながらもインプロヴィゼーションもあればインタープレイもある。「いや〜参った。凄い。凄すぎる」。

 しかし…。管理人の心の中で,憧れや称賛の気持ちと共に渦巻く不安は何なのだろう。多分,あきらめ。もうついて行けないと思った。これ以上,渡辺香津美にはついて行けない。
 『ビヨンド・ザ・インフィニット』で,渡辺香津美の凄さは感じたが「だから何が言いたいの〜」と思ってしまった。ストレートに渡辺香津美の“言葉”が入ってこない。感動が伝わってこない。

BEYOND THE INFINITE-2 『ビヨンド・ザ・インフィニット』は,音楽のレベルからすれば,渡辺香津美の言葉通り「自分の全てを投入した」“最高傑作”なのだろうと思う。フォローなしに「大作」の太鼓判を押印できる。
 だから『ビヨンド・ザ・インフィニット』を絶賛している渡辺香津美ファンの気持ちも素直に受け入れられる。反論しようなどという気はゼロである。事実『ビヨンド・ザ・インフィニット』のトラック批評が始まれば,大方,星五つと予想するこの矛盾…。はぁ。

 管理人は『ビヨンド・ザ・インフィニット』の決定的な弱点に目をつぶることはできない。
 そう。『ビヨンド・ザ・インフィニット』には渡辺香津美のリスナーがいない。これぞインテリSF。「素人無視の玄人路線」のギター組曲に“絶望感”だけがこだましてしまう。
 なんで。なんで。なんで。香津美さん。どうして。どうして。どうして。「ブラックホールの反対側」ではなくて「リスナーの反対側」に行っちゃったの??

 『ビヨンド・ザ・インフィニット』で管理人は渡辺香津美から離れました。いいや,正確には『ビヨンド・ザ・インフィニット』で渡辺香津美が管理人から離れて行きました。

 香津美さん,今までのお付き合いありがとうございました。これからは香津美さんとの思い出を胸に刻みつつ,小沼ようすけくんと共に「ジャズ・ギター道」を渡り歩く所存です。
 いつか,どこかで,また偶然の再会を楽しみにしつつ…。

  01. MOON
  02. MARS
  03. MERCURY
  04. JUPITER
  05. VENUS
  06. SATURN
  07. SUN
  08. NEKOVITAN X - Red Pill
  09. NEKOVITAN X - Blue Pill

(ユニバーサル・ジャズ/DOZO 2001年発売/UCCJ-2014)

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渡辺 香津美 with オーケストラ / DEAR TOKYO4

DEAR TOKYO-1 渡辺香津美のニュー・アルバム『DEAR TOKYO』のリリースについて知った時,胸がときめいた。
 管理人の大好きな『GANAESIA』の「KAZUMI BAND」の復活&これまた『GANAESIA』とは対極にあるアンサンブルな大名盤ROMANESQUE』路線の第2弾。二つの旨みがシャッフルされた“美味しいとこどり”のコラボレーション。こんなビッグ・ニュースに興奮しないでいられますか〜!

 しかし,しかし,期待が高かった分,ダメージも大きく,即お蔵入り〜。多分,4,5回聴いて放置プレイ。だって笹路正徳高水健司山木秀夫主導のオーケストラ入りなんですよ。そこそこ普通の名盤では認められないでしょうが〜。
 笹路正徳のアレンジは本当に素晴らしいと思います。でもなんとなく『DEAR TOKYO』の雰囲気がCTIに思えてしまう瞬間が…。
 一旦そう思ってしまうと渡辺香津美がCTI絶頂期のウェス・モンゴメリー・ライクに聴こえてしまうのです。『DEAR TOKYO』が,イージー・リスニング・ジャズ・ギターに聴こえてしまったのです。やっぱりウェス・モンゴメリーを聴くのなら「ヴァーヴ時代のジャズ・ギターに限る」派なもので…。

 しかし,多くの時間が管理人の耳を『DEAR TOKYO』仕様に育ててくれていました。(大袈裟に言えば)10年振りに聴いた『DEAR TOKYO』に腰を抜かしそうになってしまった。いい。
 駄盤の評価から名盤へと評価が一転。こんなことって,たまにありますよねっ。

 『DEAR TOKYO』は,10年振りに聴いてもCTIしていることに変わりはないが,10年ぶりの印象はドン・セベスキーよりもクラウス・オガーマン
 笹路正徳の“強め”のオーケストレーションが「ウィズ・ストリングス」だったら出なかったであろう渡辺香津美の特徴を引き出している。

 渡辺香津美ギターは相手がオーケストラであっても負けることはない。笹路正徳の用意した“ギターが気持ち良く鳴る絶品スペース”の空間を泳いでいる。音楽の編成は大きくとも等身大の演奏に仕上がっている。
 ただし,笹路正徳ピアノ高水健司ベース山木秀夫ドラムは脇役に徹した演奏なのでご注意を…。

DEAR TOKYO-2 【CAVATINA】でのアコースティックギターは,決して派手ではないジャズのアプローチで描く「心象風景」が涙もの。
 お目当ての【LONESOME CAT】超渋め。硬質でノスタルジックな演奏に“心が揺さぶれられる”。聴き込むにつれ味わいが増す。
 『DEAR TOKYO』の他の7曲もそれぞれ独特な音世界。選曲もバラエティに富んでいるが渡辺香津美ギター・プレイもバラエティに富んでいる。スルメである。

 駄盤と思った『DEAR TOKYO』が,こんなにも“心掻き乱される”CDだったとは…。
 こりゃCDラックの「棚卸し」をやり直さないといけないなぁ…。

  01. CAVATINA
  02. GOODBYE PORK PIE HAT
  03. A MAGIC LAND
  04. LONESOME CAT
  05. ONE LESS BELL TO ANSWER
  06. ELI'S COMIN'
  07. BON APPETIT
  08. DESCENTE
  09. FOR TOKYO

(日本コロムビア/MAGIC NOTES 2001年発売/COCB-31371)
(ライナーノーツ/笹路正徳,成田正)

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渡辺 香津美 / ワン・フォー・オール4

ONE FOR ALL-1 ジャズメンとは常に前進し,変貌し,疾走して行くもの。しかし,たまにはクリエイティブの手を休め,多くの音楽仲間やファンと共に,ただただこれまでのハイライトを分かち合う。
 渡辺香津美の『ONE FOR ALL』(以下『ワン・フォー・オール』)は,正しく「喜びに浸るためのライブ」。こんなに“リラックスしたライブ”もいいものだと思う。

 『ワン・フォー・オール』は渡辺香津美の「音楽生活30周年記念」のライブ盤。“世界のKAZUMI”にふさわしく場所はNY。ワールドクラスの音楽仲間と世界中のファンが一同に会した“再会セッション”である。
 そう。『ワン・フォー・オール』の演奏は“並みの”フュージョン。真剣勝負な“ガチンコ”ジャズを期待すると肩透かしを喰らってしまう。でもこんな普段着の演奏だからこそ表現できた,あの瞬間にしか味わえない喜びの新発見がGOO。

 『ワン・フォー・オール』の聴き所は,気心知れた仲間とのインタープレイ渡辺香津美ピアノ矢野顕子ビブラフォンマイク・マイニエリギターラリー・コリエルベースジョン・パティトゥッチパーカッションミノ・シネルの超豪華メンバー5人と順番にアンサンブルを重ねていく。

 『ワン・フォー・オール』の前作が『DANDYISM』で良かったと思った。『DANDYISM』で小曽根真に“寄り添った”経験が『ワン・フォー・オール』での演奏に生かされていると思った。
 そう。『ワン・フォー・オール』の真実は『ONE FOR ALL,ALL FOR ONE』(「一人はみんなのために,みんなは一人のために」 by スクール☆ウォーズ)。ジャズの言語で翻訳すると「過ぎ去った時間はこの一瞬のために。この一瞬はこれからの時間の為に」…。

 矢野顕子マイク・マイニエリラリー・コリエルジョン・パティトゥッチミノ・シネルの豪華共演者が渡辺香津美のためだけにステージに上がり,渡辺香津美はゲストを立てる。自分と相手の良さを消さないインタープレイ渡辺香津美ギターを主役とすべく,一瞬で見事に反応してみせる。

ONE FOR ALL-2 ただし4人との“再会セッション”進行中の中,唯一,渡辺香津美とは初レコーディングのジョン・パティトゥッチが突き進む。
 “スーパー・ベーシストジョン・パティトゥッチはあれでも“手加減”したのかもしれないが,格の違いは隠せない。渡辺香津美の超絶ギターベースを合わせる瞬間のジョン・パティトゥッチベースは“2番目の”超絶ギター然。うお〜。

 個人的には『ワン・フォー・オール』をこんなにもリラックスして楽しめるのは矢野顕子の存在に負うところが大きい。ジャズ・ピアニストに専念した【WATER WAYS FLOW BACKWARD AGAIN】は,永遠の天才少女”あっこちゃん”100%!

  01. HAVANA
  02. WATER WAYS FLOW BACKWARD AGAIN
  03. LIBERTANGO
  04. SOMEWHERE
  05. AFRO BLUE
  06. ONE FOR ALL
  07. MILESTONES

(ポリドール/DOMO 1999年発売/POCJ-1451)

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渡辺 香津美 DUO with 小曽根 真 / ダンディズム4

DANDYISM-1 渡辺香津美小曽根真。日本を代表するジャズギタリストジャズピアニスト
 そんな2人のデュエットCDが『DANDYISM』(以下『ダンディズム』)である。

 『ダンディズム』のコンセプトは,ギターピアノの“ガチンコ”DUO。とりわけギターピアノは同じコード楽器が背負う宿命ゆえに合わせるのが難しいとされている。事実『ダンディズム』にはジャズ特有のノリや遊びが少ない。
 そう。『ダンディズム』の真髄は,テンション高めでスリリングな演奏の応酬である。「生真面目な日本人らしさが漂っている」と表現したらよいのだろう。キッチリと音を積み重ねていく過程に一切「手抜き」はない。

 このように書くと『ダンディズム』は「渡辺香津美 VS 小曽根真」のように伝わってしまうかもしれないが,実際はその逆である。2人が音を重ね合わせるために苦心している。全身全霊で互いの音を聴こうとしている様子が伝わってくる。こんなに共演者に“歩み寄る”渡辺香津美は初めてである。

 『ダンディズム』の素晴らしさはジャズの初心者には??だと思う。ジャズの“酸いも甘いも”を聴き分けてきた「音のテイスティング」ができる上級者だけが楽しめる,実にハイレベルな“大人のデュオ”。ジャズの言語の巧みな使い手である渡辺香津美小曽根真が,ちょっと気取った言葉で語り合っている。豊富なボキャブラリィで“専門用語が飛び交う”会話に引き込まれていく。面白いと思ってしまう。
 『ダンディズム』のキャッチ・コピー=「男の嗜(たしなみ),音のテイスティング,ダンディズム」は『ダンディズム』を見事に言い当てている。

DANDYISM-2 ただし『ダンディズム』は「渡辺香津美 DUO with 小曽根真」な渡辺香津美ソロ名義作。
 小曽根真が対等扱いでないのはなぜ? 引っ掛かりながら聴き始めたが最後まで引っ掛かりが取れなかった。

 渡辺香津美ピアニストとのデュオと来れば『おやつ』でセッションした山下洋輔との【CLEOPATRA’S DREAM】。
 あの名演よろしく,渡辺香津美は相手が強大であればある程,実力を発揮するタイプのジャズメン。自分がリードするよりリードされるくらいのセッションがちょうどいい。
 そういう意味で小曽根真は適任であっただけに渡辺香津美の「ソロ名義仕様」だけが悔やまれる。

  01. SPAIN
  02. BABI'S BOSSA
  03. AZIMUTH
  04. SOMEDAY MY PRINCE WILL COME
  05. PRAY
  06. PASSIONATE SNOW
  07. TOMORROW〜MAYBE FROM "ANNIE"
  08. DANDYISM

(ポリドール/DOMO 1998年発売/POCJ-1412)

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渡辺 香津美 / エスプリ4

ESPRIT-1 『おやつ』『おやつ◆ ̄鸞』を「消化」し“マルチ”ギター・プレイヤーへと「昇華」した渡辺香津美の頂点が『ESPRIT』(以下『エスプリ』)にある。

 『おやつ』『おやつ◆ ̄鸞』の制作を通じて,アコースティックギターの可能性と全面対峙した渡辺香津美。そんなの渡辺香津美が下した結論は「エレクトリックギターも実はアコースティックギター」。
 そう。渡辺香津美が『エスプリ』で目指すは「エレキを生ギター・ライクに!」。こんな芸当“マルチ”ギター・プレイヤー=渡辺香津美でなければできっこない。

 うん。確かに「エレクトリックギターも実はアコースティックギター」。渡辺香津美の主張がよ〜く分かる。
 ニュアンスとしては“弾く”というよりは“奏でる”。ギンギンの「クィ〜ン」の伸びではなく,伸びやかの伸び。エレキの音色の装飾を生かしつつも,基本,自由奔放なアドリブで「エレキを生ギター・ライクに!」“奏でて”いる。

 『エスプリ』は,エレクトリックアコースティックの単純な「和洋折衷」ではない。『エスプリ』の『エス』はエスニックETHNIC→「民族の」の意。『エスプリ』の『プリ』はPRIMITIVE→「原始の」の意。
 そう。『エスプリ』は,世界の共通民族にして原始から現代までを複雑に「和洋折衷」したギター・トリオ名演集。

 ズバリ,渡辺香津美は『エスプリ』で「ギター演奏の極意」を掴み取ったのではなかろうか? これはギター奏法の超絶テクニックだけではない。ギターは元来,ヨーロッパの“民族楽器”。ヨーロッパの長い歴史が人間という民族の歴史。渡辺香津美の“マルチ”なギターが歌っている。
 そう。“マルチ”ギター・プレイヤー=渡辺香津美が,ギターで人間という民族の「喜怒哀楽」を歌にしたためる。「ギター演奏の極意」を掴み取ってしまった。もはや渡辺香津美ギターの組み合わせは「鬼に金棒」状態に達している。

 全ては“ニュアンス”。渡辺香津美ミノ・シネルパーカッションドラミングを包み込み,スクーリー・スヴェリッソンベースの“旨み”をも引き出している。
 ミノ・シネルの一発のアタックで世界が“モノクロからカラーへと”変わる瞬間の衝撃ダイナマイト。スクーリー・スヴェリッソンのとても音域の広い6弦ベースがメロディアス。うなるベースは風のうなりのようである。
 ダイナマイトと風のうなりを受け止めた,渡辺香津美の“マルチ”なギターが,オブラート役となってギター・トリオを導いていく。 

ESPRIT-2 管理人の結論。『エスプリ批評

 『エスプリ』は,渡辺香津美の「エレクトリックにしてアコースティック・タッチな」ギタリストとしての頂点の記録。
 『エスプリ』は,ジャズフュージョン通,あるいはギター通に奨めることはできても,ジャズフュージョンの入門者,ましてや渡辺香津美の入門者にはアウトだと思う。「エレキを生ギター・ライクに!」のコンセプトは小難しい。
 『エスプリ』を楽しむためにはエレクトリックギターアコースティックギターの両方についての造詣を必要とする。そう。『エスプリ』はリスナーを選ぶ。リスナー側から発言すると「好みが分かれる」ことと思う。

 正直,管理人は好みではない。『エスプリ』をあるレベルまで聴き込むと「アコースティックにしてエレクトリック・タッチな」逆『エスプリ』を聴いてみたいと思うようになる。『エスプリ』=思わせぶりな欲求不満作。

 最後にCDタイトル『エスプリ』の管理人の新解釈。『ESPRIT』とはETHNICPRIMITIVEの造語ではなく『E−SPRIT』=『いいスピリット』の意だと思っている。これ,当たってない?

  01. Havana
  02. Tinkle
  03. La Lune
  04. Desperado
  05. Tears
  06. Cascade
  07. Puzzle Ring
  08. Astral Flakes〜Axis
  09. Morocco
  10. Kara Kara
  11. Lately

(ポリドール/DOMO 1996年発売/POCJ-1346)
(ライナーノーツ/渡辺香津美)

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渡辺 香津美 / おやつ 遠足4

OYATSU 2 ENSOKU-1 『おやつ』でアコースティックギターの魔力に取り憑かれた香津美“少年”が,アコースティックギター片手に遠足へ出かけた際の道中記。それが『おやつ◆ ̄鸞』の真髄である。

 遠足の目的地はアジア遠足のパートナーはアジアの民族楽器奏者。そう。『おやつ◆ ̄鸞』のテーマは「東方見聞録」な演奏ツアー。このスケールの大きさは「遠足」というより「遠征」な感じである。

 『おやつ』をレコーディングして渡辺香津美自身で感じた結果であろうが『おやつ◆ ̄鸞』では『おやつ』以上に渡辺香津美ギター・ソロの出番が減少。
 しかし,アコースティックギターソロのインパクトでは『おやつ◆ ̄鸞』が『おやつ』を上回っている。

 【ダニー・ボーイ】改め【ロンドンデリの歌】と【早春賦】で感じるアコースティックギターのダイナミックレンジの広さ。そして【マイ・ワン・アンド・オンリー・ラブ】と【ブルー・イン・グリーン】で感じるアコースティックギターのイマジネイティブな表現力。
 前作『おやつ』は“生々しすぎる”生音で録音されていたが『おやつ◆ ̄鸞』ではマイクの距離がちょうどいい。心地良い響きなのに凝視にも耐えられる。

 このアコースティックギターの特徴を生かしきったアレンジ,技巧,録音の3拍子が合わさって『おやつ◆ ̄鸞』は渡辺香津美アコースティックギターソロ“印”!

 ただし『おやつ◆ ̄鸞』のハイライトは【サヒール】。渡辺香津美のオリジナルにして想像するに「バングラしている」。まるで目の前でバングラの民族舞踏会が開かれているかのよう。妖艶で神秘的,そして一部の狂いもない音世界。これは凄いぞ〜。

OYATSU 2 ENSOKU-2 管理人の結論。『おやつ◆ ̄鸞批評

 『おやつ◆ ̄鸞』での収穫は,上述したアコースティックギターソロ“印”以上に「東方見聞録」であろう。渡辺香津美の興味が『おやつ◆ ̄鸞』以降,俄然カテゴリー6を越えてきた。
 渡辺香津美の音楽は,アコースティックエレクトリックの垣根を越え,ジャズフュージョンの枠内をも越えてきた。
 もはやジャズ・ギターの範疇で批評などできやしない。

 そう。『おやつ◆ ̄鸞』で渡辺香津美が“マルチ”ギター・プレイヤーの能書きを襲名した!

  01. Londonderry Air
  02. SAHIR
  03. My One And Only Love
  04. Island
  05. Han-Bon-Do
  06. 彩蝶追月
  07. 早春賦
  08. もつけ
  09. モスラの歌
  10. Blue In Green
  11. 月の美しゃ
  12. こきりこ節
  13. As Time Goes By〜亀の恩返し

(ポリドール/DOMO 1995年発売/POCJ-1312)
(ライナーノーツ/渡辺香津美)

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渡辺 香津美 / おやつ4

OYATSU-1 『おやつ』。このタイトルはが意味深である。王道な解釈は「主食ではなくおつまみ」。

 渡辺香津美のメイン1はエレクトリックギター。だからアコースティックギターは『おやつ』。
 渡辺香津美のメイン2はジャズフュージョン。だからクラシックや映画音楽やビートルズや坂本九は『おやつ』。

 はは〜ん。『おやつ』は渡辺香津美の趣味なるお遊び盤。10年間フュージョンを究め続けた疲労回復な息抜き盤。「Let’s リラックス〜」。湯船で鼻歌ランランラン♪ なんたってCDジャケットのかえるのイラストがかわいいじゃありませんか〜。

 そう思ったあなたは怪我をする。事実,管理人は『おやつ』で大ヤケドしました。
 『おやつ』は渡辺香津美の大真面目なジャズCD渡辺香津美が,本能のおもむむままに,がむしゃらに,発狂しながらギターを弾きまくっている。それでいて完成度の高いジャズ・ギター
 破綻しそうで破綻しないギリギリのライン。真剣勝負の緊張感が生々しく響いている。アコースティックギターって,こんなにパワフルな楽器だったのか…。もう絶句。大好き。

 ただし管理人の『おやつ』に対する評価は星4つ。理由は『おやつ』の聴き所は,渡辺香津美ギター・ソロではなくゲスト・ミュージシャン5人とのデュエット6トラックだから。

 ピアノ山下洋輔との【CLEOPATRA’S DREAM】における名バッキングが鳥肌もの。
 ベース井野信義との【I’LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN】の間奏におけるフリー・ジャズからメジャーの戻る瞬間のため息。
 サックス井上敬三との【NUOVO CINEMA PARADISO】における“泣きのユニゾン”の何と甘美なこと。
 ボーカル桑名晴子との【上を向いて歩こう】における,でしゃばらず気取らない演奏が,メロディの良さを引き立てている。この音使いはやっぱり天才だと思う。
 同じギターラリー・コリエルとの【NEKOVITAN X】は高速ギター・バトルであり【BLUE STAR】は加山雄三の【君といつまでも】のギター協奏曲である。大好き。

 他方,渡辺香津美ギター独奏10トラックでは,超絶技巧が素晴らしいのであるが,元来のギター・ソロの目的であろう「
自由なイマジネーション」を聴けずじまい。選曲がいずれも手垢のついたスタンダード系統である分を差し引いても,ちょっとアイディアが足りなかったのでは?

OYATSU-2 とはいえ『おやつ』の制作は,確実に渡辺香津美にプラスの効果を与えている。
 『おやつ』『おやつ◆ ̄鸞』以後の渡辺香津美の演奏にはエレクトリックギターであってもアコースティックギター弾きの“節回し”が色濃い。

 渡辺香津美にとってアコースティックギターで『おやつ』の気軽なツマミ食いのはずが,主食を忘れてポテチ三昧の様相。ポテチ職人に開眼した「パティシエ・香津美」の誕生作。もはや『おやつ』が1日10食。完全なる主食の偏食期到来。

 管理人の結論。『おやつ批評

 『おやつ』は,和食の料理人が洋食のコックへと転向したくらいの変わり映えであり,渡辺香津美フリークの間では必ず論議の的となる渡辺香津美最大の問題作。
 エレクトリックギターの申し子が,アコースティックギターの魔力に“取り憑かれてゆく”瞬間の記録を聴き逃すな!

  01. PRELUDE IN CHORDS
  02. TO CHI KA
  03. NUAGES
  04. CLEOPATRA'S DREAM
  05. SAMBA DE ASTRONAUTA
  06. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN
  07. CANTO DELS OSELLS
  08. DIANA
  09. MISSION ST.XAVIER
  10. NUOVO CINEMA PARADISO
  11. ワーニャ伯父さん
  12. THE FOOL ON THE HILL
  13. 上を向いて歩こう
  14. ST.THOMAS
  15. NEKOVITAN X
  16. BLUE STAR

(ポリドール/DOMO 1993年発売/POCH-1426)

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レゾナンス・ヴォックス / RESONANCE VOX4

RESONANCE VOX-1 管理人は「レゾナンス・ヴォックス」自らのバンド名を冠した3rd『RESONANCE VOX』を聴いて,渡辺香津美にバンドのギタリストを求めるのはやめることにした。求めても無理なものは無理なのである。

 渡辺香津美の進む道は得意の“セッションギタリスト”方面。渡辺香津美には「孤高のギタリスト」が似合うのであり,渡辺香津美和田アキラ野呂一生安藤まさひろにはなれないことが分かったのだ。

 誤解しないでほしい。『RESONANCE VOX』で展開されるフュージョン・ミュージックは最高レベルである。『RESONANCE VOX』は「レゾナンス・ヴォックス」としての3作目。ついにこなれたバンド・サウンドが展開されている。
 そう。『RESONANCE VOX』は一聴するとポップで聴きやすい。次の瞬間何が起こるか分からなかった『PANDORA』や多数のアイディアが具現化された『0−X−0』と比較すると,じっくりと腰を据えて耳を傾けられる安心感がある。

 しかし,だからこそ大いに物足りない。これが渡辺香津美自慢のバンド・サウンドなのかと。渡辺香津美がリクエストしたメンバー3人を擁してもピリッとしない。これが新バンドの到達点だったのかと。苦しい。+αが感じられない。
 事実『RESONANCE VOX』が「レゾナンス・ヴォックス」のスタジオ録音最終作。+1のライブ盤『自業自得』が自業自得。お祭りライブを最後に「レゾナンス・ヴォックス」は散ってしまった。

 原因がある。理由がある。渡辺香津美は日本一の“超絶テクニック系”ギタリストである。ゆえに自らの技巧に溺れてしまった。いや,プロとしてとことんテクニックを追求してしまった。そう。ここが落とし穴。つまり「リスナー不在でリスナー無視な」“音楽の大家”を目指してしまった。

 『RESONANCE VOX』のシンプルで無駄や遊びのない計算しつくされた音世界。遊びとか,無駄とか,余分な贅肉とか,装飾とか,音楽の骨格以外の要素が全部削ぎ落としされた「無骨でストイック剥き出しの音」。この音造りはまるでアスリートのようである。
 そう。『RESONANCE VOX』の4人が,夢中になって,ただただ高くジャンプする。どこまで自分たちの理想に近づけるかを実験している。「この音造りについてこれるヤツだけついてくればいい。ついてこれないヤツは置いて行く〜」。

 そう。「レゾナンス・ヴォックス」は渡辺香津美の玄人路線。流行やリスナーに媚びない“無骨なフュージョン”大展開。鼻からバンド・サウンドなど目指してはいない。目指すは“音楽の大家”なのだから…。
 渡辺香津美に“連れ回された”バガボン鈴木東原力哉八尋知洋は最高にエキサイティングしたことだろう。

RESONANCE VOX-2 管理人の結論。『RESONANCE VOX批評

 『RESONANCE VOX』は渡辺香津美の“究極”フュージョン。『RESONANCE VOX』が渡辺香津美フュージョンの限界。
 『RESONANCE VOX』の真髄は「種も仕掛けも一切ない」高度なフュージョン。野性を知性でコントロールすると,アンチ・バンドなセッション集団=「レゾナンス・ヴォックス」へと行き着いたのだった。

 そういう訳で次は『おやつ』『おやつ◆ ̄鸞』でのアコースティックギターソロへと一直線。もうフュージョン・バンドは腹一杯のゲップですよね,香津美さん?

  01. 雨の水曜日
  02. BARONG
  03. Partido Forte
  04. No Money, No Girl, No Business, -But We Still Have
     Music!

  05. Pona Pela
  06. Karula
  07. Glory's Stomp
  08. On The Beach
  09. Iron Claw
  10. Merci Brice
  11. Flor

(ポリドール/DOMO 1993年発売/POCH-1250)
(デジパック仕様)

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レゾナンス・ヴォックス / O-X-O4

O-X-O-1 『PANDORA』で“ホトバシッタ”アイディアを具現化した「THIS IS ザ・渡辺香津美レゾナンス・ヴォックス」な音。それが『0−X−0』である。

 事実『0−X−0』以降「レゾナンス・ヴォックス」は「渡辺香津美レゾナンス・ヴォックス」から「渡辺香津美」の看板を下ろしてしまう。これぞ4人対等な「バンド宣言」なのだ。
 いいや「レゾナンス・ヴォックス」は4人対等ではない。4人が「小競り合い」しながらの「四人五脚」なチームワーク。バンド内コンテストの結果は『PANDORA』では東原力哉が1位だったが『0−X−0』の1位はバガボン鈴木

 ベーシストバガボン鈴木のアーティスト名はバガボンであってバカボンではないのだが,今回ばかりはバカボン鈴木と呼んでしまおう。そう。バガボン鈴木は“天才”バカボン。日本にまだこんな「天才」ベーシストが埋もれていたとは…。

 管理人は『0−X−0』でバガボン鈴木にロックオン。レゾナンス・ヴォックス以前のバガボン鈴木の演奏は知らない。しょうがないので『PANDORA』でのプレイを聴き直してみるのだが,これが全然目立っていない。耳にスッと入ってこない。
 なのに『0−X−0』ではバガボン鈴木ベースしか耳に入ってこないから不思議でならない。

 渡辺香津美ギターが最高だ。【DREAM INVADER】での【LIM−POO】を想起させるアドリブが大好物。
 東原力哉ドラムが最高だ。片やワイルドでファンキーな【0−X−0】。片や【WISE UP】【YA TOKOT YA】でのシーケンシー。東原力哉の七変化のドラミングこそが「無国籍」バンドのトレードマーク。
 八尋知洋パーカッションが最高だ。【AMAPOLA NEGRA】のハイライトは渡辺香津美ギター小林靖宏アコーディオンの間を切り裂く八尋知洋パーカッションである。

O-X-O-2 でもでも,そんな3人の名演奏は全てバガボン鈴木の引き立て役。バガボン鈴木チョッパー・ベースフレットレス・ベースがビッグ・ウェーブ。自由自在に大波・小波をノリまくる。
 そう。『0−X−0』の聴き所は1点。バガボン鈴木の“生命感あるリズム”に尽きる。

 詰め込めるだけ詰め込んだ重量級の『PANDORA』から,煌びやかな「原色系」サウンドへと飛翔した『0−X−0』への進化は「フィーチャリングバガボン鈴木」色の“突出”にある。

 管理人の結論。『0−X−0批評

 (ジャケット写真のチェス参照)『0−X−0』でバガボン鈴木渡辺香津美をチェックメイト。結果「渡辺香津美レゾナンス・ヴォックス」が「レゾナンス・ヴォックス」を名乗るとしてもバンド・サウンドには至っていない。2作連続こなれていないセッション・バンドのままはなぜ?

  01. Unlucky Heaven
  02. Dream Invader
  03. Wise Up
  04. Renu
  05. Saicoro
  06. O-X-O
  07. Amapola Negra
  08. Ya tokot Ya
  09. Cyber Pipeline
  10. 牡丹の花

(ポリドール/DOMO 1992年発売/POCH-1142)
(デジパック仕様)

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渡辺 香津美 レゾナンス・ヴォックス / パンドラ4

PANDORA-1 「渡辺香津美レゾナンス・ヴォックス」のような,不思議で力強くて既成概念を払拭したフュージョン・バンドはそう多くない。

 「渡辺香津美レゾナンス・ヴォックス」の音の醍醐味は,次に何が飛び出してくるか分からない痛快さ&恐ろしさ。フュージョンについて回るイメージをことごとく裏切り続ける。そんな期待感を常に抱かせてくれる“テンション高めな”新バンドの大登場。リキを入れずにユーモアが入っている。狙うは何かのパロディ・ミュージックなのか?(特にYMOの【FIRE CRACKER】)。

 「渡辺香津美レゾナンス・ヴォックス」のメンバーは4人。リーダーでギター渡辺香津美に,ベースバガボン鈴木ドラム東原力哉パーカッション八尋知洋
 OH!よくぞこれだけ個性溢れるメンバーを集めてくれました。知性派と野性派が合体したメンバー構成が「渡辺香津美レゾナンス・ヴォックス」のツボ。「渡辺香津美レゾナンス・ヴォックス」は,何が飛び出してくるか“一か八かの”「禁断の音の玉手箱」。
 そんな「渡辺香津美レゾナンス・ヴォックス」がデビューCD=『PANDORA』(以下『パンドラ』)で「禁断の音の玉手箱」=「パンドラの箱」を開けてしまった。

 『パンドラ』で開いた「パンドラの箱」。音の中身は「パンドラ」発祥の地,ギリシャ・トルコ方面の東西融和のオリエンタル・フュージョン。要は“無国籍”なフュージョン・ミュージック。
 「胆はロック,精神はジャズ,ファンクな心に頭ブラジル」。このバンドに付けられたキャッチコピーが「渡辺香津美レゾナンス・ヴォックス」の全てを言い当てている。

 『パンドラ』には曲のイメージに合わせた5人+MAMBO BOYSのゲスト入り。でもでもやっぱり…。
 ゲストにキーボード・プレイヤーがいない。理由は「世界一」のギター・シンセサイザー・プレイヤー「渡辺香津美フィーチャリング」。ここにギター・トリオでホームラン3連発をかっとばした渡辺香津美の「こ・だ・わ・り」を見る。でもでもやっぱり2…。

 ヴァイオリンアコーディオンはメロディアスだが中途半端。バンドの音が“こなれていない”中でのごちゃごちゃ感有り。渡辺香津美の意識がゲストの音に集中しすぎて?3人のリズム隊とのコンビネーションが今ひとつの感有り。
 目指せ「無国籍」ゆえのアイディア&アドレナリンが出まくっている『パンドラ』だけは,渡辺香津美ギターの演奏に集中できる,鍵盤入りが最善の選択肢だったような…。
 まっ,そんな欠点が『パンドラ』の魅力でもありますが…。

PANDORA-2 管理人の結論。『パンドラ批評

 「渡辺香津美レゾナンス・ヴォックス」の真髄は“一か八かの”「禁断の無国籍」。メンバー4人の圧倒的な演奏は素晴らしい。それだけに多彩なゲストを事前のアレンジ通りに演奏させた『パンドラ』が煮え切らない。

 渡辺香津美が「渡辺香津美レゾナンス・ヴォックス」で舵を切ったは,例えるなら「コードからモードへの変化」。全員に高度な音楽性が求められるだけに,もう少しだけ消化し熟成させる時間が必要だったかなぁ。

  01. Pandora
  02. Peking Doll
  03. Vega
  04. Ashita Tenki Ni
  05. Passy Home
  06. Dr. Mambo X.
  07. Fire Cracker
  08. Kumpoo Manman
  09. Arashi No Yoru Kimi Ni Tsugu
  10. Django 1953

(ポリドール/DOMO 1991年発売/POCH-1089)
(デジパック仕様)

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渡辺 香津美 / ロマネスク5

ROMANESQUE-1 『KYLYN』でスタートした渡辺香津美フュージョン路線。1980年代の10年間にリリースしたアルバム11枚はオール・フュージョン。もはや渡辺香津美と来れば“フュージョン・ギタリスト”の代表格として認知されていた。

 そこへ来て,突然の“ジャズ回帰作”『ROMANESQUE』(以下『ロマネスク』)。
 世評的に『ロマネスク』はブーイング。とりわく直近の3作はギター・トリオ。大編成の「KYLYN BAND」からスタートして,ついに3人でも濃密な音楽を奏でる極意を究めたはず。なのに,またなぜビッグ・バンドなのかと。ごもっともである。

 しかし管理人は(渡辺香津美のファンなら)『ロマネスク』の発表に特に驚くことはなかった。むしろ「やっと来たか!」な感じがした。
 ズバリ,渡辺香津美は「生粋のジャズ・ギタリスト」。フュージョンにハマロウとも,バックが何を演ろうとも,心の中にはいつでもジャズスピリッツを感じている。そんな演奏ばかりであった。

 別所哲也が「ハムの人」なら渡辺香津美は「ジャズの人」。1980年代の11枚のお歳暮も「フュージョンのラッピングで包まれた基本ジャズ」の贈り物。あのアドリブもあのバッキングもジャズのフィーリングをまとっていた。
 そう。『ロマネスク』は“ジャズ・ギタリスト渡辺香津美10年間の軌跡。地下で脈々と流れ続けていたジャズスピリッツ10年間の噴火作。これは懐古趣味では決してない。

 事実『ロマネスク』には“伏線”があった。フュージョン真っ只中の活動中に届けられた,渡辺香津美と『ロマネスク』の指揮者=松本治との共演は2回あった。野外ジャズフェスでのステージとFM東京系「サウンド・マーケット」での「渡辺香津美・プレイズ・ジャンゴ」でのレコーディング・セッション
 時期としては『スパイス・オブ・ライフ 2』の発売以降『キロワット』の発売前。そう。渡辺香津美自身の中での順番としては『スパイス・オブ・ライフ 2』〜『キロワット』〜『ロマネスク』ではなく『スパイス・オブ・ライフ 2』〜『ロマネスク』〜『キロワット』。
 このように時系列で眺めてみれば,管理人が熱望した『キロワット 2』が作られなかった理由も見えてくる? 『キロワット 2』はもうあきらめました〜。

 そういう意味ではジャズ寄りの演奏が続いている渡辺香津美であるが,ジャズスピリッツ同様,渡辺香津美の体内ではフュージョンの生き血が脈々と流れ続けている。いつかきっとフュージョンスピリッツの噴火作が聴けるものと期待している。

 さて,そんな渦中の『ロマネスク』。聴き所はアンサンブル。またしてもアンサンブルであって「万年2番手」渡辺香津美の熱演がアクセント。
 決してジャズとは言い切れないジャンゴ・ラインハルトの名曲を松本治が見事に操っていく。そう。松本治が組み立てる「ギター協奏曲」に渡辺香津美が“客演”としてギターを弾いている。ただそれだけのことが,純粋に“ジャズ・ギタリスト”としての役割に徹した渡辺香津美の潔さを際立たせている! く〜っ,これぞ「世界のKAZUMI」な名演である。上手い。

ROMANESQUE-2 渡辺香津美ジャズ・ギターがツボを突いてくる。ジャンゴ・ラインハルトは,こう弾いてほしい,というツボを押してくれる。ゆったりとブルージーな時間の快感。小粋でオシャレでノスタルジックなスイング・ジャズ
 輪廻転生は悪であるが「ジャンゴ・ラインハルトが亡くなったのが1953年。渡辺香津美が生まれたのが1953年」を理由に“自称”「ジャンゴ・ラインハルトの生まれ変わり」な渡辺香津美の面目躍如作。

 管理人の結論。『ロマネスク批評

 『ロマネスク』は渡辺香津美の“ジャズ回帰作”ではなく“ジャズ継続”な“ジャズ加速作”。「万年2番手」なジャズ・ギターのツボ最高峰。ジャズ・ギターの楽しみ方を教えてくれる名盤である。

 最後に『ロマネスク批評の番外編=渡辺香津美の「男を上げる新しい発見」について一言。
 アンサンブルな『ロマネスク』を聴いて渡辺香津美が「万年2番手」な理由が分かった。それは渡辺香津美が実力不足で「2番手」なのではなくギターという楽器の特性が「2番手」向きなだけである。ギターはコード。ギターはリズム。
 2012/4/28現在,アドリブログ主宰「ジャズ/フュージョンの花形楽器とは?」のアンケートでギターが最下位に沈んでいる理由がよ〜く分かる?

  01. TROUBLANT BOLERO
  02. BELLEVILLE
  03. MINOR SWING
  04. STOMPIN' AT THE SAVOY
  05. PRELUDE TO A KISS
  06. BLACK BEAUTY
  07. I DIDN'T KNOW ABOUT YOU
  08. IT DON'T MEAN A THING
  09. SOLITUDE
  10. THINGS AIN'T WHAT THEY USED TO BE
  11. CARAVAN
  12. TAKE THE "A" TRAIN
  13. IN A SENTIMENTAL MOOD

(ポリドール/DOMO 1990年発売/HOOP20376)
(ライナーノーツ/渡辺香津美,青木和富)

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渡辺 香津美 / キロワット5

KILOWATT-1 『スパイス・オブ・ライフ』『スパイス・オブ・ライフ 2』ときた渡辺香津美ギター・トリオ第3弾が『KILOWATT』(以下『キロワット』)。

 しかし『キロワット』ではメンバーが一新され,ベースジェフ・バーリンからバーニー・ブルネルへ,ドラムビル・ブラッフォードからジョン・ワッカーマンへと交代した。サウンドの傾向としては『スパイス・オブ・ライフ 2』の続編っぽいのだが,いや〜,どうしてどうして。メンバーの違いでサウンドが激変!
 ネーム・リューでは少々劣るがテクニックはほぼ互角。ワイルドなイメージがあったジェフ・バーリンビル・ブラッフォード組の硬いサウンドから,バーニー・ブルネルジョン・ワッカーマン組の何ともエレガントで柔軟な対応力へと大変貌! これぞギター・トリオの“奥深さ”であろう。

 バーニー・ブルネルフレットレス・ベースを弾くせいなのか,それともジョン・ワッカーマンが電気ドラムを叩いたせいか知らないが,とにかく明るい! とにかく軽快!
 超絶重低音から超絶低音へと乗り換えた渡辺香津美ギター・シンセが,前へ前へと突き進む。全体の印象としては『ト・チ・カ』の頃の瑞々しさに溢れた感じ。これはいい。

 そう。「ギター・ヒーロー」渡辺香津美が『スパイス・オブ・ライフ』→『スパイス・オブ・ライフ 2』で目指した音は『スパイス・オブ・ライフ 2』では到達せずに『キロワット』で結実したと思っている。ゆえに管理人の中で『キロワット』は,別名『スパイス・オブ・ライフ 3』なのである。

 思うに『キロワット』は渡辺香津美の自信作。だって『KILOWATT』のジャケットに浮かぶ『KW』の文字は渡辺香津美のイニシャル『KW』。「これぞ自分の音」の自己紹介。
 “理想のギター・トリオ”の完成に加えてビッグ・ゲスト3人入り! ビル・ブラッフォードつながり?でキーボードパトリック・モラーツ,そして何と!元ウェザー・リポートからサックスウェイン・ショーターパーカッションアレックス・アクーニャ。やっぱりショーターはハズサナイよなぁ。
 ズバリ,この陣営は渡辺香津美“理想のギター・カルテット”を名乗っても申し分ない。カズミ・バンドと甲乙付け難い。でも…。

KILOWATT-2 「ねえ,神様,教えて〜。『スパイス・オブ・ライフ』には『スパイス・オブ・ライフ 2』があるのに,どうして『キロワット』には『キロワット 2』がないの?」ってな感じでメルヘンの一つもしたくなる,渡辺香津美の新・ギター・トリオなのです。
 この質問に対する神様からの回答は聞かなくても分かります。「それはねぇ。『キロワット』が『スパイス・オブ・ライフ』の時のように売れなかったからだよ」。ちゃんちゃん。

 名盤の拳を振り上げてしまったのに世間的にはサッパリ盤。OH!NO! この後,渡辺香津美と管理人は一体どうすればいいんだ? ねえねえ,教えて神様〜。

  01. 1000 Mega
  02. Capri
  03. No One
  04. Jive
  05. Papyrus
  06. Sunspin
  07. Pretty Soon
  08. Bernard
  09. Dolphin Dance
  10. Good Night Machines

(ポリドール/DOMO 1989年発売/HOOP20348)

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渡辺 香津美 / スパイス・オブ・ライフ 25

THE SPICE OF LIFE 2-1 ズバリ『スパイス・オブ・ライフ』と『THE SPICE OF LIFE 2』(以下『スパイス・オブ・ライフ 2』の2枚のアルバムは渡辺香津美のアルバムにして「非・渡辺香津美な」アルバムである。
 そう。「マニアックなジャズ・ギタリスト気質」の抜けた,広く大衆へアピールすることを意識したジャズ・ロック。ロックのスピリッツジャズ即興演奏で奏でられた美メロの玉手箱なのだ。

 そんな『スパイス・オブ・ライフ』の続編である『スパイス・オブ・ライフ 2』の製作意図は“夢のギター・トリオ・リターンズ”ではない。大ヒット記念の「2匹目のドジョウ」ではない。『スパイス・オブ・ライフ 2』の製作意図は“夢のギター・トリオ・リベンジ”なのである。

 『スパイス・オブ・ライフ』は渡辺香津美の狙い通りにプログレ・ファンを取り込む大好評。それはそれで大成功。しか〜し,渡辺香津美が広く大衆へアピールしようと思った動機は“己のギター・シンセサイザー”!
 その意味で『スパイス・オブ・ライフ』は不発。プログレ畑で渡辺香津美の評価は上がったが,同様にジャズフュージョン畑ではビル・ブラッフォードの評価がウナギノボリ! あれ〜,またしても気付けば「バンド内2番手」?
 当世NO.1のビル・ブラッフォードジェフ・バーリンのリズム隊を「踏み台」にするはずが,逆に「踏み台」にされている? よっしゃ〜,リベンジだ〜。今度は“サポート・キーボードピーター・ヴェテッシを掌握して臨む「真の格闘技セッション」第2章〜。

 結果『スパイス・オブ・ライフ』では3人の力関係が拮抗していたが『スパイス・オブ・ライフ 2』では見事にビル・ブラッフォードジェフ・バーリンの“頭を押さえている”。コード・ワークはピーター・ヴェテッシに任せ,ひたすら“己のギター・シンセサイザー”を歌わせる。「ギター・ヒーロー」渡辺香津美ここに有り〜!
 殊に【アンドレ】【スモール・ワンダー】が超・超・カッコイイ!

 そう。『スパイス・オブ・ライフ 2』は“夢のギター・トリオ”が夢の途中で解体した「渡辺香津美・ウィズ・ビル・ブラッフォードジェフ・バーリン+サポート・キーボード」。
 渡辺香津美ギター・シンセが前面に出すぎたために,ビル・ブラッフォードジェフ・バーリンがこじんまり。リズム隊も結構複雑なことを演ってる割りには,なぜだか地味に聴こえてしまう。
 ギター・トリオ特有の,抑揚の振れ幅が小さいというか,破天荒な感じが無く,妙に小奇麗にまとまって感アリアリ。ジャズ・ロックであるがゆえ「ワクワク」「ドキドキ」「トキメキ」が希薄。うん。いい音楽なんだけど…。

THE SPICE OF LIFE 2-2 管理人の結論。『スパイス・オブ・ライフ 2批評

 「プログレ界のドン」ビル・ブラッフォードを“自分色に染め上げた”「スーパー・ギタリスト」としてのプライドを取り戻した渡辺香津美は『スパイス・オブ・ライフ』よりも『スパイス・オブ・ライフ 2』の完成に思い入れがあるように思うが,管理人的には「容赦なしのぶつかり合いで」完成した『スパイス・オブ・ライフ』の方が好みだなぁ。

 (ここからはおまけ)渡辺香津美の「その人?」批評
 渡辺香津美の最大の魅力は「ソロで飛び出す瞬発力」! 【マイルストーン】【風連】しかり,渡辺香津美というギタリストは,常時前に出続けるマラソン走者ではなく“一発KO型”短距離走者の特性に格別な才能を見い出せる。
 その意味で惜しむべきはマイルス・デイビス。もしあの時,マイルスの誘いに応じていたなら,今でもジョン・スコフィードの地位にはいたであろうに…。「世界のWATANABE」と来ればあの渡辺貞夫を引き離し「KAZUMI」一人を指すようになっていたであろうに…。無論,マイ・フェイバリットナベサダは偉大です〜。

  01. ANDRE
  02. WE PLANET
  03. FU BU KI
  04. RAIN
  05. SMALL WONDER
  06. CONCRETE COW
  07. KAIMON
  08. MEN AND ANGELS

(ポリドール/DOMO 1988年発売/UCCJ-9096)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/成田正)

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渡辺 香津美 / スパイス・オブ・ライフ5

THE SPICE OF LIFE-1 ズバリ『THE SPICE OF LIFE』(以下『スパイス・オブ・ライフ』)と『スパイス・オブ・ライフ 2』の2枚のアルバムは渡辺香津美のアルバムにして「非・渡辺香津美な」アルバムである。

 『スパイス・オブ・ライフ』以前の渡辺香津美は,常に時代の最先端,もっと言えば時代のかなり先を走っていた。要は前衛指向のギタリスト。そんな渡辺香津美が初めて「時代とバイブレーション(←古い)」している。
 繰り返すが,この全ては「時代が渡辺香津美に追いついてきた」のではない。敢えて渡辺香津美が「時代の中心に舞い降りてきた」結果である。これが『スパイス・オブ・ライフ』での“夢のギター・トリオ”の誕生秘話であろう。大袈裟に語れば,時代が渡辺香津美に「プログレ界のドン」ビル・ブラッフォードジェフ・バーリンとの共演を“求めた”結果である。

 渡辺香津美にとってビル・ブラッフォードと「同時代バイブレーション」できたのは何とも幸運なことだったと思う。しかもビル・ブラッフォードが“泣く子も黙る”超大物で,プログレ以外にジャズもできて,ジェフ・バーリンとのコンビもチリバツで。
 渡辺香津美自身としても,もはや“世界のKAZUMI”となり,お世辞抜きにギター・シンセ弾きの第一人者の名声獲得。ギター・シンセという強烈な武器が渡辺香津美に「ここは山から世に降りて,いっちょ,大暴れしてやろうか」と思わせた? そう。『スパイス・オブ・ライフ』の渡辺香津美は完全なる「ギター・ヒーロー」としての登場だったのだ。

 勿論『スパイス・オブ・ライフ』以前の渡辺香津美も「ギター・ヒーロー」であった。しかし実際には,ギター小僧の大半は野呂一生を,あるいは高中正義をコピーした。理由は単純に渡辺香津美ギターよりも野呂一生高中正義の弾くギターの方がカッコよかったからだ。

 そして渡辺香津美には失礼な話で申し訳ないが,渡辺香津美CDを聴く目的は渡辺香津美ではなかったりする。
 「KYLYN BAND」での坂本龍一矢野顕子小原礼村上“ポンタ”秀一ペッカー向井滋春本多俊之益田幹夫高橋ユキヒロ伊東毅
 「KAZUMI BAND」での笹路正徳清水靖晃ベース高水健司山木秀夫
 「MOBO」におけるロビー・シェイクスピアスライ・ダンバーマーカス・ミラーオマー・ハキムスティーブ・ジューダンマイケル・ブレッカーケイ赤城橋本一子グレッグ・リー渡辺建仙波清彦坂田明梅津和時青山純デヴィッド・サンボーン…。
 特に『MOBO』における渡辺香津美のスポットライトは名バッキング。渡辺香津美のリーダー作を購入する時,いつも心のどこかに別のお目当てがいて,そのお目当てのサイドメンの名演を期待する自分がいた。

 しかし時代はギター・シンセ渡辺香津美ギター・シンセ野呂一生高中正義よりカッコよい。他の共演者の誰でもなく,間違いなく渡辺香津美ギター・シンセを聴こうと思った。

THE SPICE OF LIFE-2 ここに渡辺香津美の歴史がある。
 表向きは“天才”と讃えられるもバンドでの指定席は「万年2番手」。そんな苦汁を「KYLYN BAND」〜「KAZUMI BAND」〜「MOBO」で味わってきた。
 だからこそ,今だからこそ“夢のギター・トリオ”。『スパイス・オブ・ライフ』での共演者はビッグであればビッグである方が良い。それゆえ「プログレ界のドン」ビル・ブラッフォードジェフ・バーリン。今度こそ「真の格闘技セッション」の開幕なのだ。

 当世NO.1のビル・ブラッフォードジェフ・バーリンのリズム隊を「踏み台?」として“自ら時代に寄りかかった”渡辺香津美ギター・シンセの何と彩り豊かなことだろう。「手を替え品を替え」フロントを一人で受け持っている。
 『スパイス・オブ・ライフ』は「KAZUMI BAND」でプログレ・フュージョンを経験し「MOBO」でギター・フュージョンを経験した渡辺香津美の考えるジャズ・ロック
 そう。『スパイス・オブ・ライフ』は,ロックのスピリッツジャズ即興演奏で奏でられた美メロの玉手箱なのだ。だ・か・ら・「非・渡辺香津美な」アルバム。でしょ?

 ジャズフュージョン・ファンよりもプログレ・ファンに支持された『スパイス・オブ・ライフ』。演奏・楽曲ともに最高にど真ん中な5ツ星。文句なしの大名盤
 ただし,時代の流行ど真ん中すぎて,昔大興奮→今となっては古臭い。『スパイス・オブ・ライフ』での「同時代バイブレーション」は賞味期限が短かったかなぁ。スルメ盤ではなかったなぁ。

  01. MELANCHO
  02. HIPER K
  03. CITY
  04. PERIOD
  05. UNT
  06. NA STAROVIA
  07. LIM-POO
  08. J.F.K.
  09. RAGE IN

(ポリドール/DOMO 1987年発売/UCCJ-9095)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/成田正)

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渡辺 香津美 / MOBO5

MOBO-1 時代の遥か先を行く音楽。『MOBO』には渡辺香津美の「狂気の才能」が記録されている。
 渡辺香津美の『MOBO』の衝撃度は,オーネット・コールマンの『FREE JAZZ』にひけをとらない。

 そう。『MOBO』と『FREE JAZZ』の“売り”とは,ツイン・ベースツイン・ドラム
 このフォーマットを採用したジャズメンはゴマンといるが,永遠のジャズ史に記録されるツイン・ベースツイン・ドラムの「猛獣使い」はオーネット・コールマン渡辺香津美の2人だけなのである。

 『MOBO』のツイン・ベースツイン・ドラムのメンバーは,大御所=スライ&ロビーベーシストロビー・シェイクスピアドラマースライ・ダンバー,そして当時は売り出し中,今や超大御所,ベーシストマーカス・ミラードラマーオマー・ハキム
 ジャマイカ隊とニューヨーク隊。この性格の異なる2つの超重量級リズム隊を渡辺香津美が好き勝手にハベラセテいる。

 4人全員が凄いのだがマーカス・ミラー命の管理人としては,これ程ベースを“弾きまくる”マーカス・ミラーはそう聴けやしない。マーカス・ミラーのリーダー作『THE SUN DON’T LIE』を除いてはマイルス・デイビスSTAR PEOPLE』ぐらいなもの。マーカス・フリーク必聴なチョッパー大収録。

 いいや,マーカス・ミラーがスパークすればするほど,逆にロビー・シェイクスピアの一糸乱れぬベースの音にかぶりつく。マーカス・ミラーロビーが隣りにいたからこそ(安心して)ここまで「大暴れの完全燃焼」できたのだろう。凄まじい。恐ろしい。

 その一方で,渡辺香津美ギター・シンセは超クール。彼らに連られてワッと行きそうな瞬間でも溜めている。必ずしも轟音弾きまくりではなく,悟りを開いた禅師のようなギター・フュージョンが展開されている。この名司令塔ぶりが「オーネット・コールマンか,渡辺香津美か」の真意なのである。
 そう。『MOBO』における渡辺香津美ギター・シンセの露出度は抑え目。管理人が『MOBO』で開眼した渡辺香津美の「狂気の才能」。それがバッキングである。

 『MOBO』には渡辺香津美のバッキングが幾重にも重ね録りされている。渡辺香津美のバッキングが4人のリズム隊を自分のフィールドへと誘い出す。しっかりと自分の土俵上で4人のリズム隊を囲み込んでいる。
 自分の空間で駆け巡る渡辺香津美ギター・シンセの何と饒舌なことだろう。美しい。サウンドの輪郭がとにかく硬くて鋭くて,手で触ると切れてしまいそうなぐらいにシャープなアドリブ。そう。渡辺香津美のリリカルな面とアヴァンギャルドな面がバッキングを軸として見事に表現されている。

 この渡辺香津美のバッキングの才能は坂本龍一矢野顕子が“陰の主役”だった「KYLYN BAND」時代の所産である。
 そして切れ味鋭いアドリブは「KAZUMI BAND」譲り。この点の音楽変遷の過程もオーネット・コールマンを想起させる…。

MOBO-2 そう。オーネット・コールマン渡辺香津美の作り出した,時代の遥か先を行く音楽。『MOBO』のような“成熟した音楽”は一朝一夕では生まれない。多くの場合,アイディアはあっても音として具現化すると「やれ難解だ,頭でっかちだ」と批判されて終わりであろう。

 『MOBO』のような成功例は稀有。ジャズ・ジャーナリズムの言い掛かり?に耐え抜き,今も聴く者を興奮のルツボに陥れる。今の耳で聴いても新鮮な驚きがあり,新しい衝撃が襲ってくる。要は「モダン」なのだろう。

 「モダン」。それこそ『MOBO』のキーワード。聞けば『MOBO』とは大正時代のモダン・ボーイのことだそうだ。そう言われると青写真のギター・ケースを開いたらとんでもない楽曲が飛び出してくる? “凛とした佇まい”の渡辺香津美ジャケット写真が“古くて新しい”『MOBO』の全てを物語っているようでして…。

 さて,時代は大正(モダン・ボーイ)〜昭和(『MOBOセッション)〜平成となって『MOBO』来襲の大事件。『MOBO』がCD化されるにあたって「完全オリジナル版」へと生まれ変わりました。
 LPでは収録時間の都合でカットされていたオリジナル演奏を完全収録。(かつて『MOBO』を所有していた人もこれから『MOBO』を聴こうとする人も)『MOBO』の“全貌”を「完全オリジナル版」で聴いてみてくださ〜い。

PS でもどうせ「完全オリジナル版」に再編集するのなら,短めにカットされた曲の演奏時間を元に戻すより,没テイク扱いの?【MOBO#4】を加えてほしかったなぁ。

  DISC 1
  01. SHANG-HI (MOBO#1)
  02. YATOKESA (MOBO#3)
  03. ALICIA
  04. VOYAGE
  05. HALF BLOOD
  06. YENSHU TUBAME GAESHI

  DISC 2
  01. AMERICAN SHORT HAIR
  02. MOBO#2
  03. WALK, DON'T RUN
  04. ALL BEETS ARE COMING (MOBO#5)

(ポリドール/DOMO 1983年発売/POCJ-2426/7)
(CD2枚組)
(ライナーノーツ/渡辺香津美,串田和美)

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渡辺 香津美 KAZUMI BAND / ガネシア5

GANAESIA-1 日本のプログレ・フュージョンプリズムではない。カズミ・バンドである。その答えが『GANAESIA』(以下『ガネシア』)にある。

 カズミ・バンドとは,NYの精鋭を起用した『ト・チ・カ』の日本人バンド・ヴァージョン。メンバーはギター渡辺香津美に,キーボード笹路正徳テナー・サックス清水靖晃ベース高水健司ドラム山木秀夫
 そう。カズミ・バンドの真実は渡辺香津美マライアマライアの面々が放つ吹き矢が渡辺香津美のハートを射抜き,渡辺香津美の全身に毒が回っている。そう思わざるを得ない位に,ハーモニーに心酔しのたうち回ったアドリブ・ラッシュの渡辺香津美“一世一代の”大名演

 カズミ・バンドを経験し,もはや毒なしでは演奏できない体になってしまった渡辺香津美。続くMOBOビル・ブラッフォードレゾナンス・ヴォックスアコースティックやらストリングスやらクラシックやらの“自滅の人生”は,カズミ・バンドを超える“毒探しの旅”に思える。
 今の渡辺香津美に必要なのは毒である。答えは明白=カズミ・バンドの再結成だと思うのだが…。

 いいや,今の渡辺香津美に必要なのは猛毒である。答えは明白=「世界のプログレ・ドラマービル・ブラッフォード・リターンズ(仮想でOK)であろう。
 『ガネシア』で花開いた「バカテク・変態・変拍子」こそビル・ブラッフォードの代名詞。カズミ・バンドが5人がかりで「世界のプログレ・ドラマー」と対峙している。そのようにして日本のプログレ・フュージョンが誕生した。
 ドラマー山木秀夫が強烈な甲高いスネアのリズムで打ち抜いてゆくのは勿論だが,渡辺香津美のディストーションなギター・サウンドと他の3人の重心が下がった音造り。そう。カズミ・バンドの各人が考える,5人5流のビル・ブラッフォード・ライクなプログレ・フュージョン

GANAESIA-2 ここまで読んで,なぜ『ガネシア』なのか? ビル・ブラッフォードなら『スパイス・オブ・ライフ』だろうし,ギター・フュージョンの過激さなら『MOBO』という手もある。
 確かにその通り。しかし管理人には『ガネシア』なのだ。『ガネシア』の魅力は“熟れる寸前の”魅力。実験作なのに完成されている。完成されているのにまだまだ頂上を探っている。

 一音たりとも聴き逃せない超硬派な【リボージ】。泣きの【ムーン・ドロップス】。人を喰ったかのような【カゴのニュアンス】。
 この振り幅は要するに過渡期。『ガネシア』前・『ガネシア』後がない唯一無二のプログレ・フュージョン。混沌と整然が絶妙に同居する抽象性。適当にやったはずが全てピシャリ。この快感は他に類例がない。

 管理人の結論! 『ガネシア』こそ,渡辺香津美J−フュージョンの飛び抜けた大傑作である!

PS 『ガネシア』の先進性は音楽だけではありません。色違いのジャケット3種類はジャニーズ・ハロプロ・AKB商法の元祖でした。

  01. RIBOJ
  02. RETURN OF THE BOLIVIAN SOONG SOONG MAN
  03. GANAESIA
  04. MOON DROPS
  05. RACOON ROLL
  06. MOENEGA
  07. JAZOO
  08. カゴのニュアンス

(ポリドール/DOMO 1982年発売/POCJ-2425)

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渡辺 香津美 / KYLYN LIVE4

KYLYN LIVE-1 ジャズの真髄はライブゆえ“伝説のライブ”と呼ばれるライブ盤はごまんとある。マイルス・デイビス絡みだけでも数十枚あるという事実。少々,乱発気味!?
 真に一夜のライブが“伝説のライブ”であるためには,必要十分条件が揃っていなければならない。管理人が思う必要十分条件。それは一期一会のメンバーの豪華さとその夜のライブが後のターニング・ポイントに数えられること。

 その点で,チャーリー・パーカーディジー・ガレスビーバド・パウエルチャールス・ミンガスマックス・ローチの「モダンジャズジャイアントの再会セッション」『ジャズ・アット・マッセイ・ホール』や,アート・ブレイキークリフォード・ブラウンルー・ドナルドソンホレス・シルヴァーカーリー・ラッセルの「ハード・バップの夜明けを告げる」『バードランドの夜』は文句なし。

 ではJ−ジャズフュージョンにおける“伝説のライブ”の筆頭格『KYLYN LIVE』はどうだろう?
 管理人の答えはNO。一期一会の豪華メンバーは認めるが『KYLYN LIVE』は“お祭り”盤に過ぎない。

 1970年代後半の日本のフュージョン黎明期はフュージョン・バンドのギタリストがリードしていた。プリズム和田アキラカシオペア野呂一生ザ・スクェア安藤まさひろ…。
 すでに“天才ジャズ・ギタリスト”としての名声を得ていた渡辺香津美に,世のフュージョン・ブームの荒波が押し寄せてきた。渡辺香津美にも「フュージョン・バンドのギタリスト」の座を…。

 こうして結成された渡辺香津美率いる「KYLYN BAND」は超豪華メンバー。
 ギター渡辺香津美キーボード坂本龍一キーボードヴォーカル矢野顕子ベース小原礼ドラム村上“ポンタ”秀一パーカッションペッカートロンボーン向井滋春アルト・サックスソプラノ・サックス本多俊之テナー・サックス清水靖晃からなる9人編成。(加えてゲスト参加でキーボード益田幹夫ドラム高橋ユキヒロテナー・サックス高橋知己アルト・サックス伊東毅(なんと!)のクレジット有り)。

 「KYLYN BAND」の特長は,渡辺香津美坂本龍一という2本の縦糸に,当時の日本のトップ・プレイヤーが横糸を絡めて織り成す「新しいジャズフュージョン」。目指すしたのは「クリエイティブ度の高い洗練されたインスト」である。
 「KYLYN BAND」の主導権は坂本龍一坂本龍一が先頭に立って“フュージョン・ギタリスト”としての渡辺香津美フィーチャリングしている。
 ゆえに渡辺香津美がリードできない「KYLYN BAND」は,和田アキラ野呂一生安藤まさひろフュージョン・バンドとは異なっている。メンバー構成を見ても松岡直也の「ウィシング」の発展形にすぎない。

 そう。「KYLYN BAND」の真実は,日本の一流どころを上手にまとめた非ジャズフュージョン! 『KYLYN LIVE』のハイライトは「フィーチャリング矢野顕子」な【リヴァー・マスト・フロウ】【在広東少年】【アイル・ビー・ゼア】!
 ズバリ「KYLYN BAND」の“陰の主役”は坂本龍一矢野顕子の元ご夫婦だと思っている。
 
KYLYN LIVE-2 事実“お祭り”盤『KYLYN LIVE』での渡辺香津美フュージョン・ギタリスト。素晴らしいプレイヤーの一人として神業級のアドリブを披露し坂本龍一矢野顕子の“音のピース役”を務めている。「火の出るような」アドリブとは【マイルストーン】での“ブチギレ”のことである。超・超カッコイイ〜!

 そう。管理人が渡辺香津美に苦言を呈したのは,プリズムカシオペアザ・スクェア等との“フュージョン・バンドとしての完成度”の話であって「KYLYN BAND」の音楽性はいいですよ。
 管理人以外は“伝説のライブ”と呼んでいるわけですし「KYLYN BAND」の没リーダーシップの失敗があってこその「KAZUMI BAND」での大成功が待っていたわけですし…。

 最後に『KYLYN LIVE』を聴いて管理人がいつも思うこと。「坂本龍一矢野顕子があのままフュージョン路線を走っていたならなぁ〜」。

  Disc 1
  01. INNER WIND
  02. SNAP DRAGON
  03. MILKY SHADE
  04. MILESTONES

  Disc 2
  01. THE RIVER MUST FLOW
  02. 在広東少年
  03. I'LL BE THERE
  04. BLACKSTONE
  05. WALK TAIL

(ベター・デイズ/BETTER DAYS 1979年発売/COCB-53334-5)
(CD2枚組)
(ライナーノーツ/松下佳男)
(紙ジャケット仕様)

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渡辺 香津美 / パーフェクト・リリース / 林風5

 『PERFECT RELEASE』の3曲目は【LIM−POO】(以下 【林風】)。


 【林風】というタイトルが【東風】をイメージさせたのか【林風】は渡辺香津美・プレイズ・YMO! そう。最強KYLYNメンバー=坂本龍一へのオマージュである。

 ノスタルジックな曲想の【林風】に誘い出されれば,そこは中国! 50秒から1分33秒までの渡辺香津美ギター・シンセが中国している。余談であるが,矢野沙織の「ASIENCE」も坂本龍一作曲だったよなぁ。

 【林風】の代名詞であろう,3分41秒からのサビのリフレインが超好き! こんなメロディを作れるのは,やはり渡辺香津美坂本龍一しかいない。このメロディ・ラインに付けられた,さりげないギター・シンセのコーラスがたまらない! 管理人が「悦に入る」瞬間です。

 しかしサビ終わりからは徐々に,ハードなブリティッシュ・ロック風【林風】が出現する。ジェフ・バーリンの低音の最深部で“うごめく”ベース・ラインビル・ブラフォードの産み出すドラムの“グルーヴ”は,日本と同じ島国・イギリスのビートである。大陸へのあこがれは島国の人間でないと分からない?

KAZUMI WATANABE : Guitar, Guitar-Synthesizer
JEFF BERLIN : Electric Bass
BILL BRUFORD : Electric Drums, Drums, Percussion

渡辺 香津美 / パーフェクト・リリース / シティ4

 『PERFECT RELEASE』の4曲目は【シティ】。


 【シティ】の圧倒的な“グルーヴの渦”に今夜も呑み込まれてしまった。まただ。【シティ】はフュージョンの枠を完全に越えてしまっている。ではビル・ブラフォードジェフ・バーリンの畑=プログレかと言うとそうでもない。前衛的ではあるが難解ではない。う〜ん。やっぱり“グルーヴ”と呼ぶのが一番ふさわしいと思う。

 イントロとアウトロでの“決め”以外は,渡辺香津美がシャープなカッティングなのにプログレ・フレーズで豪快にアドリブを決めていく! レビューに書き起こすとすれば膨大な量に膨れ上がるであろう細かな表情の変化が複合的に進展するのだが,この全てがメロディアス! 印象としては“スッキリ”とした一本の有機的なギター・ラインが“お見事”である。 

 そしてこのギター・ラインに輪をかけて絡みつくベース・ライン! これは16ビートのアンサンブルである。8ビートを叩き出しているはずのドラムでさえ16ビートに感じてしまう。
 そう。【シティ】は,ギター・トリオの完璧なる16ビートのアンサンブル! う〜ん。イッツ“グルーヴ”!

KAZUMI WATANABE : Guitar, Guitar-Synthesizer
JEFF BERLIN : Electric Bass
BILL BRUFORD : Electric Drums, Drums, Percussion

渡辺 香津美 / パーフェクト・リリース / メランコ4

 『PERFECT RELEASE』の1曲目は【MELANCHO】(以下 【メランコ】)。


 その昔12インチ・シングルでも発売され“聴き倒した”懐かしの【メランコ】! 当時高校生だった管理人は「メランコ→ブランコ」をイメージしてしまい“揺れに揺れる”トラックとして脳裏に“ブランコ画像”が刷り込まれてしまった。あぁ情けない。

 しかし【メランコ】“揺れに揺れる”トラックとしてのイメージは「メランコ→ブランコ」だけではなく,イントロでの渡辺香津美の“アコースティック・ギター・シーケンス”の影響も大である。
 あの細かい左右への“うねり”が“揺れに揺れる〜”ってか?

 NO! 【メランコ】で感じる“揺れ”の原因は,ビル・ブラフォードジェフ・バーリンによる“縦揺れ・ロック・ビート”にある。
 2分13秒から,渡辺香津美ギター・シンセによるアドリブが始まると同時に,ジェフ・バーリンベースが加速し始め,ビル・ブラフォードバスドラスネアで“鞭を入れた”3分9秒で姿を現わす,幻のポリリズム
 この3者が“拍の一致しないリズム”を同時に繰り出し,リズムの隙間を埋めまくる様は,もろ“プログレ”である。

 さて,高校時代に“文字通り”レコードの溝がすり減るまで聴いた【メランコ】であったが『PERFECT RELEASE』を聴いたからこそ“実感できた”発見があった。
 『PERFECT RELEASE』=「MOBO」! 『スパイス・オブ・ライフ』からの選曲はどうか,といぶかっていたのだが【メランコ】が,CDのオープニングを“しっくり”と飾っている。
 この収まりの良さに,たった2人で「MOBO」オールスターズと同等の活躍を見せた,ビル・ブラフォードジェフ・バーリンに改めて“惚れ直した”管理人です。でも正直聴き飽きたかなぁ…。

KAZUMI WATANABE : Guitar, Guitar-Synthesizer
JEFF BERLIN : Electric Bass
BILL BRUFORD : Electric Drums, Drums, Percussion

渡辺 香津美 / パーフェクト・リリース / 風連5

 『PERFECT RELEASE』の11曲目は【風連】。


 【風連】には,最高の賛辞を贈りたい。全てのフュージョン・ファンに捧げたい“世紀の名演”である。凄い! 凄すぎる〜! 超カッコイイ!
 【風連】一曲で100人中99人は渡辺香津美の“虜”になってしまうのでは? 事実,管理人の友人は100%=KOされて帰宅しています。はい。

 【風連】の聴き所は,徐々にリズムとメロディが“シンクロ”していく快感にある。村上ポンタドラミングが凄い,ツイン・ベースが凄い,と褒め所は多数あるのだが,やっぱり渡辺香津美ギター・フュージョンで決まりでしょう。
 3分34秒からのギター・シンセが圧巻! 4分6秒からの夢のようなフレーズが躍動し,5分22秒からは完全にイッテしまう。
 6分9秒から再スタート後は,エッジの効いた立ち振る舞いで「バッサ,バッサ」と切り倒していく。“地団駄を踏みならしながら行進する”ラストでリズムとメロディが“完全同期”して完結!

PS 4分20秒のフレーズが一日中ループすることがあって困っています。冗談ではなく真面目な悩みです。

KAZUMI WATANABE : Guitar, Guitar-Synthesizer
ICHIKO HASHIMOTO : Piano, Keyboards, Vocal
GREGG LEE : Electric Bass
KEN WATANABE : Electric Bass
SHUICHI MURAKAMI : Drums
KIYOHIKO SENBA : Percussion
MITSURU SAWAMURA : Sax
AKIRA SAKATA : Alto Sax, Vocal

渡辺 香津美 / パーフェクト・リリース5

PERFECT RELEASE-1 日本が世界に誇る「W渡辺」の一人,渡辺香津美は“スーパー・ギタリスト”である。
 あのピカソ・ギターを自由自在に弾きまくるパット・メセニーをして「香津美がニューヨークに来たら,みんな仕事がなくなっちゃうよ」と言わしめた実力は,正真正銘・世界のトップ・ギタリスト! 海外の一流ジャズメンを“子分扱い”して“自分色に従える”ことができるのは,ナベサダヒノテルと「KAZUMI」ぐらいなものであろう。

 そんな世界の「KAZUMI」への成功への階段は「DOMO」+「MOBO」にあった!
 「DOMO」とは渡辺香津美のパーソナル・レーベル。ギタリストの枠を超え,例えば『ガネシア』を,ジャニーズやハロプロ的手法の元祖=色違いのジャケット3種類で発売したりと,プロデューサーとしても力量を発揮したトータル・フュージョンギタリストKAZUMI」の全てが記録されている。 ← 注)『ト・チ・カ』を除く。

 「MOBO」=ギター・フュージョン! フュージョン・ファンにとって,ギター・シンセの代名詞と言えばパット・メセニーであろうが,管理人には渡辺香津美! フュージョン全盛のあの時代,ギター・シンセの習熟度に関してはパット・メセニーより渡辺香津美の方が上だったと思う。パット・メセニー渡辺香津美をリスペクトしたのも“摩天楼”ギター・シンセの腕前にあったのでは?

 あの日本的でアジア的なノスタルジックな楽曲をテンション高めに刻んでいく“予測不能なキレキレの大爆発”こそギター・シンセの真骨頂! ジャズ・フレーズをハード・ロック&プログレのギタリストが演奏したような稀に見る“爽快感”! 毎回異なるフォーマットで「うわぁ,こう来たか?」と興奮させられたものである。

 そこで『PERFECT RELEASE』(以下『パーフェクト・リリース』)!
 『パーフェクト・リリース』は「MOBO」時代のベスト盤。6枚のCD(『ガネシア』『Mobo』『Mobo倶楽部』『桜花爛漫』『Moboスプラッシュ』『スパイス・オブ・ライフ』)からの黄金の選曲こそがJ−フュージョンの金字塔! 正真正銘『パーフェクト・リリース』そのものである。

 それぞれ6枚のアルバムは学生時代にカセット・テープで所有していたが,上京を機にCDへとお買い換え。6枚とも買い直すお金がないので,とりあえずベスト盤で急場をしのぐつもりであったが,これがハマッタ!
 この曲順で聴くあの名曲が超新鮮&大好きなトラックばかりが高音質で流れ続ける。“夢のCD”の登場であった。現在ではCD−Rという手があるが,これは20年前のお話。『パーフェクト・リリース』を聴く度にベスト盤の存在に感激していた“あの頃”を懐かしく思い出してしまう。
 ちなみに『パーフェクト・リリース』は現在廃盤である。「MOBO」時代の渡辺香津美は1枚1枚買い揃えるべし!

 さて,これだけ絶賛しておいてなんだが,近年の渡辺香津美は一体どうしたのだろう? 正直「迷走中」である。聴いていてつまらない。おもしろくない。感動しない。
 その原因を管理人なりに考えてみると,パット・メセニーでさえ絶賛した“超絶技巧”にあるのではなかろうか? そう。渡辺香津美の最大の武器が最大の弱点と化している。

 「変にテクニックがあるものだから…」。この言葉は使い古されたジャズ批評の常套句! 近年の渡辺香津美批評する言葉として,まさかこの言葉を使うとは思いもしなかった。
 世界トップレベルの“超絶技巧”を持て余していれば,クラシックやバレエの難曲・大作に挑戦してみたくなる気持ちも分からなくはないが,自己満足の“超絶技巧”を披露されても,そこにリスナーが置き去りでは感動できるはずがない。

PERFECT RELEASE-2 ここは初心に返るつもりで「MOBO」時代の“予測不能なキレキレの大爆発”を披露してほしい! フュージョンに再チャレンジしてほしい!
 次作こそ2007年版『パーフェクト・リリース』! 管理人一同“トータル・フュージョンギタリスト”「KAZUMI」の帰りを待っている!

  DISC 1
  01. MELANCHO
  02. AMERICAN SHORT HAIR
  03. SHANG-HI (MOBO#1)
  04. CITY
  05. HIPER K
  06. RIBOJ
  07. AFTERNOON IN THE PARK
  08. 十六夜
  09. HALF BLOOD
  10. UNT
  11. 風連

  DISC 2
  01. 予感
  02. 危険がいっぱい
  03. LIM-POO
  04. 瓢簟こまねずみ
  05. WALK DON'T RUN
  06. 遠州つばめ返し
  07. RACOON ROLL
  08. サッちゃん
  09. つるかめひなタンゴ
  10.
  11. J.F.K.
  12. 師走はさすがに忙しい

(ポリドール/DOMO 1987年発売/H50P20211/2)
(CD2枚組)

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