アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

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CD批評:木住野 佳子

木住野 佳子 / アンソロジー 〜20th アニヴァーサリー4

ANTHOLOGY 〜20TH ANNIVERSARY〜-1 やっぱり触れないわけにはいかないだろう。我が第4?の故郷を襲った熊本地震。管理人は2年間,熊本市民。熊本には友人がたくさんいる。
 物資の支援を2回行なった。メッセージカードも書いた。今日はブログを書こうと思う。

 なぜだろう…。自分の中で震災応援とくれば木住野佳子の『ふるさと −TRIBUTE TO JAPAN−』の印象が強い。
 そういうことで熊本応援ブログレビュー・ネタに選んだのは,木住野佳子の『ANTHOLOGY 〜20TH ANNIVERSARY〜』(以下『アンソロジー 〜20TH アニヴァーサリー』)。

 『アンソロジー 〜20TH アニヴァーサリー』とは木住野佳子デビュー20周年記念アルバム。その中身とは『FAIRY TALE』『PHOTOGRAPH』『RENDEZ−VOUS』『YOU ARE SO BEAUTIFUL』『TENDERNESS』のキャリア初期の5枚のアルバムから,ファン投票によって選ばれた楽曲のセルフ・カヴァー集。
 要は『PORTRAIT − YOSHIKO KISHINO BEST SELECTION』のリ・アレンジ再録集。

 『PORTRAIT − YOSHIKO KISHINO BEST SELECTION』は管理人の青春の1枚。
 だから『ふるさと −TRIBUTE TO JAPAN−』だけではなく,震災とは無関係の『アンソロジー 〜20TH アニヴァーサリー』にも,若かりし頃の活力を思い出しては郷愁を感じてしまうのかな?

 とにかく【DANNY BOY】【TENDERNESS】のいつ聴いてもグッと来る“鉄板”だけではなく『アンソロジー 〜20TH アニヴァーサリー』を聴いているだけで,無性に泣けてくる。そして聴き終えると希望の光がパッと心の中に射し込んでくる。元気が漲って来る。

 『アンソロジー 〜20TH アニヴァーサリー』の選曲は人気投票ゆえ,落選した名曲が多いのも仕方のないことだが,個人的には【PEACE PIECE】が入らなかったことだけが心残り。
 楽しみにしていた【MANHATTAN DAYLIGHT】【WALTZ FOR DEBBY】【JENGA】の激変に20年の時の重みを感じてしまう。

 その代わり「震災や,痛ましい事件,なくなってしまったもの,傷ついてしまったこと,様々なことに直面して,それでも前を向いて進めるように「祈り」を込めて演奏した曲です。皆さんの心にも,温かい祈りが届いたら嬉しいです」の言葉で紹介されいる,新曲【PRAYER】が素晴らしい。やったね,木住野さん,ホームラン!

ANTHOLOGY 〜20TH ANNIVERSARY〜-2 『アンソロジー 〜20TH アニヴァーサリー』における木住野佳子は,ジャズ・ピアニストというよりは“音楽家”である。
 キャッチーでメロディアスなオリジナルはポップ・ソングであるし,スタンダードのアレンジと演奏も唯一無二。内面の温かな人柄がピアノに乗って伝わってくる音楽。

 そう。管理人が木住野佳子を聴く時は,ジャズ・ピアノを聴こうと思ってではなく,木住野佳子を聴こうと思った時である。
 美人だし繊細なピアノ・タッチだし,最初はそう思って聴いていなかったが,いつの間にか,管理人にとって木住野佳子は“癒し系”になって・し・ま・い・ま・し・た。

 世間ではGWの10連休。九州新幹線も九州自動車道も開通した。しかし熊本や大分には,復興,復興と無責任に発言できない現状がある。東北もまだきっとそうなのだろう。
 落ち着いたら『ふるさと −TRIBUTE TO JAPAN−』と『アンソロジー 〜20TH アニヴァーサリー』を聴きながら熊本へ出向こうと思っている。

  01. Manhattan Daylight
  02. Fairy Tale
  03. Vera Cruz
  04. Waltz For Debby
  05. Desert Island
  06. Danny Boy
  07. Beautiful Love
  08. Tenderness
  09. Night And Day
  10. Jenga
  11. Prayer

(GRP/GRP 2015年発売/UCCJ-2128)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/木住野佳子)

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木住野 佳子 / ふるさと -TRIBUTE TO JAPAN-4

FURUSATO -TRIBUTE TO JAPAN--1 東日本大震災から丸5年の日が明日やってくる。今週と来週のメディアは震災関連のニュースばかりとなるのだろう。個人的にもいろいろと感じることはあるのだが,ブログでは震災については一切書かないことに決めている。何を書いても軽薄な自分が嫌になるに決まっているのだから…。

 ただ,決して無関心ではないことだけは知ってほしい。今夜は木住野佳子の『FURUSATO −TRIBUTE TO JAPAN−』(以下『ふるさと −TRIBUTE TO JAPAN−』)批評を書くことにする。

 『ふるさと −TRIBUTE TO JAPAN−』とは,木住野佳子による「美しい日本を賛美するトリビュート・アルバム」である。
 『ふるさと −TRIBUTE TO JAPAN−』を聴いていると,簡単に言えば,美しい日本の記憶を名曲で綴った「童謡集」である。

『子供の頃は,そんなに日本の歌に興味がありませんでした。
 でも大人になって,子供の頃に見た景色を思い出したりしながら,
 だんだんと懐かしい旋律の曲を作るようになりました。
 そして海外にも行くようになって,また改めて
 日本の素晴らしさに気が付いて唱歌を演奏するようになりました。

 そして今では,日本の曲のメロディーを聴いただけで涙が出てしまう大人になりました。
 日本人でよかったな,って思います。

 心を込めて,演奏した13曲。
 ぜひ,ご一緒に口ずさんでください』。

FURUSATO -TRIBUTE TO JAPAN--2 上記,木住野佳子が語ったライナーノーツに感動してしまう。管理人が近年感じていた胸の内を代弁してくれた思いがした。

 音楽って本当に大きな力がある。忘れかけていた昔の記憶を呼び覚まし,お金で買うことのできない幸福な気分で満たしてくれる。管理人は両親に愛されて育った。周りの人々もみな親切だった。日本はいい国だった。いい時代だった。貧しくても豊かな毎日だった。でも幸福は絶頂期に一瞬で失われることもある…。

 『ふるさと −TRIBUTE TO JAPAN−』から聴こえてくる木住野佳子ジャズ・ピアニストではない。
 『ふるさと −TRIBUTE TO JAPAN−』における木住野佳子は「ザ・日本の歌」の専属ピアニストである。

 込み上げてくる悲しみを押し殺し,超一流ジャズ・ピアニストとしてのプライドさえかなぐり捨て,リスナーの注意を「美しい日本」に向けさせるべく,丁寧に「童謡」を弾いている。頑張れ。

  01. 故郷
  02. 上を向いて歩こう
  03. 朧月夜
  04. 浜辺の歌
  05. リンゴ追分
  06. 早春賦
  07. さくらさくら
  08. 赤とんぼ
  09. 冬の夜
  10. ちいさい秋みつけた
  11.
  12. 見上げてごらん夜の星を
  13. かえり道

(ユニバーサル・ジャズ/UNIVERSAL JAZZ 2013年発売/POCS-1103)
(ライナーノーツ/木住野佳子)

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木住野 佳子 / テンダネス4

TENDERNESS-1 『ユー・アー・ソー・ビューティフル』で,ビル・エヴァンスを完全消化し“エヴァンス派”から卒業した木住野佳子

 そんな木住野佳子の次なるテーマは木住野佳子。そう。自分自身である。『TENDERNESS』(以下『テンダネス』)で“内面の本当の自分”と真摯に向き合っている。
 有りのままの自分を見つめ直す行為は時に大変辛いものだろうが,その内省や沈潜の末に産み落とされた“己の内へ内へと向かう”独特なアドリブの魅力は言わずもがな。『テンダネス』での“抒情的な”ジャズ・ピアノはそうめったに聴けやしない“稀代の逸品”である。

 管理人には『テンダネス』を聴いて大泣きする夜がある。悲しい出来事があったわけではないのに涙に誘われる。これはせつない涙? 暖かい涙? “心から涙がこぼれる”感じで,泣き終わると“すっきり”する。
 【DANNY BOY】【TENDERMESS】【THE BLESSED WORLD】が流れ出すと,もうダメ。木住野佳子は一体いくつの恋に破れ,涙してきたのだろう? な〜んて勝手に想像してしまいます。

 木住野佳子自身にとっても,バラード集=『テンダネス』は“癒し”なのだと思う。ピアノが心に染み入ります。限りなくピュアなピアノ
 共演者たちの名演も聴き逃してはならない。演奏者全ての音色が優しく温かく響く。演奏者全員が互いが互いを癒し癒されている。バラードなのに勇気が出る。元気が出る。希望の光で満ち溢れている。

 木住野佳子ジャズ・ピアニストである。ピアノバラードを“歌っている”。
 いや,ピアノだけではない。木住野佳子は,木管で,ストリングスで,ハーモニカで,バラードを“歌っている”。

 『テンダネス』で展開するのは“リリシズム”の世界。木住野佳子は“女神”である。バラード特有の美しいメロディ・ラインをエレガントに語りかけている。透明感ある淑女の色気が漂っている。
 そう。エロスではない。ひたすら美しいのだ。それゆえ管理人は,時に救われ,時にのたうち回ってしまう。手が出せない,指一本ふれてはならない,清純な処女性を強く感じてしまうのだ。

 これは非ジャズである。そう。『テンダネス』はジャズではなく“芸術作品”である。
 大好きなはずなのに,なぜかのめりこめない。BGMとしてはいいのかもしれない。録音がきれい過ぎるのかもしれない。人間は,あるいは人間の心は,そんなにきれいなものではない。罪や悪が抹殺されている。もう少し生々しさがほしい。肉感的な部分がどうしようもなく欠落している。

 この全ては管理人のエゴである。『テンダネス』は泣ける。じわじわと心の琴線に触れてくる。心の奥深くで温かさを感じる。
 何よりも大切な歌心がある。しかしその癒しの歌声は女神の歌声であった。地上にあるものではなく大空から降り注いでいる。美しすぎる。清すぎる。そう思ったとたんに汚してしまいたくなる。ああ無常。

 『テンダネス』は,非ジャズ名盤である。あまりにも健全すぎる。不健康なジャズ好きとしては「微妙に距離を感じる」のである。木住野佳子が相手では,結婚前提でないとお付き合いできそうにない。← 当然です。
 その意味で『テンダネス』はシチュエーションを選ぶ音楽だと思う。人工的に完璧に作り上げられた美しさのBGMとして『テンダネス』以上にマッチするCDも他にないことだろう。

TENDERNESS-2 例えば,夜景の見える大都会の。ホテル最上階のラウンジ。目線の上には満天の星屑。目線の下にも街頭とテールランプ。
 例えば,チャペルでの2人きりの結婚式。永遠の愛を誓っている。美人ピアニストが2人のためだけに弾くビル・エヴァンス。ああ〜。

 さて,最後に“芸術作品”『テンダネス』を鑑賞する男性としての楽しみについて一言…。

 美人ピアニスト木住野佳子の場合,たぶんジャケ買いする人も多いのでは? 『テンダネス』の目を伏せたジャケ写にドッキリ。裏ジャケでのロングドレスと彼女の表情がまた何ともアンニュイ。
 『テンダネス』に限らず,木住野佳子アルバムを全部揃えてニヤついているオヤジたち,結構多いんだろうなぁ。

  01. Danny Boy
  02. By The Sea
  03. Feel Like Making Love
  04. Love Is Here To Stay
  05. Lost In The Dream
  06. Tenderness
  07. Air-Sul G
  08. Love
  09. Lullaby
  10. The Blessed World
  11. Stranger In Paradise

(GRP/GRP 2000年発売/UCCJ-2001)
(ライナーノーツ/木住野佳子)

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木住野 佳子 / ランデヴー5

RENDEZ-VOUS-1 『RENDEZ−VOUS』(以下『ランデヴー』)=GRPアーティスト=木住野佳子の真骨頂! 『ランデヴー』最高〜!
 どんなにヘタレとバカにされようとも,管理人は『ランデヴー』を,そして木住野佳子を支持いたします。

 『ランデヴー』でスムーズ・ジャズのトップ・アーティストへと登りつめた木住野佳子木住野佳子の美メロに“天才”フィリップ・セスは何を感じたことだろう。

 『ランデヴー』を聴く度に「このまま死にそ〜」と思ってしまうくらいに“ゾッコンの惚れ惚れ”なのである。木住野佳子は本当にいい曲を書くし,艶のあるピアノを弾いている。
 フィリップ・セスの才能全開なお洒落で都会的なクールな仕上がりなのに,傍らでそっと弾き語りしてくれているような木住野佳子の女性らしい温もりを感じる。大好き!

RENDEZ-VOUS-2 斯くして管理人は木住野佳子としばし『ランデヴー』する。おやっ,この展開は小曽根真の『スターライト』なのか?
 そう。『ランデヴー』は,カラフルでポップなのに胸キュンJAZZY

 【MANHATTAN DAYLIGHT】と【JENGA】は「世紀の名曲」である。

  01. MANHATTAN DAYLIGHT
  02. RENDEZ-VOUS
  03. VERA CRUZ
  04. AFTER THE RAIN
  05. JENGA
  06. 夕暮れ時
  07. THINGS REMIND ME OF YOU
  08. BLACKBIRD
  09. WHEN YOU WISH UPON A STAR
  10. MESSAGE FROM SNOW
  11. WELCOME HOME

(GRP/GRP 1997年発売/MVCJ-29001)
(ライナーノーツ/吉村浩二)

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木住野 佳子 / フェイス4

FACE-1 『FACE』(以下『フェイス』)のテーマは,顔→素顔→ナチュラルな木住野佳子→12(12曲)の顔を持つ女,である。

 “素”の木住野佳子ジャズ・ピアニストは「ノンジャンルの木住野ワールド」。

FACE-2 『フェイス』は基本=耽美でエレガントなジャズ・ピアノに違いないが,バラエティに富んだ何でもあり。
 ピアノ・トリオストリングス,クラシックに尺八,ビートルズにクイーンにワルツときた。

FACE-3 FACE-1FACE-3ジャケット写真はリバーシブル仕様! お好きな木住野佳子の『フェイス』をどうぞ!

 素顔の木住野佳子は12以上の顔を持つ女であった。

  01. Face
  02. Jealousy
  03. Girl's Waltz
  04. 雪待月
  05. And I Love Her
  06. 極楽鳥
  07. Heat Wave
  08. 凛嶺
  09. Sicilienne Op.78
  10. 地球兄弟
  11. Love Of My Life
  12. 星の贈り物

(ユニバーサル・ジャズ/UNIVERSAL JAZZ 2008年発売/UCCY-10001)
(ライナーノーツ/木住野佳子)

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木住野 佳子 / ボッサ・ノスタルジア4

BOSSA NOSTALGIA-1 『RENDEZ−VOUS』が木住野佳子の表名盤だとすれば,裏名盤は『BOSSA NOSTALGIA』(以下『ボッサ・ノスタルジア』)である。

 え〜っと,表は『YOU ARE SO BEAUTIFUL』か『TENDERNESS』か『PRAHA』だ,という怒号は無視できても,裏が『ボッサ・ノスタルジア』という主張には少々の説明が必要?

 確かに『ボッサ・ノスタルジア』は木住野佳子の人気盤ランキングでは下位に沈むであろうことは管理人も同意する。しかし『ボッサ・ノスタルジア』ほど“糸を引く”CDもない。聴けば聴く程“不思議な味わい”だけが残る。また聴きたくなるのだ。

 『ボッサ・ノスタルジア』は『SIESTA』に続く木住野佳子ボサノヴァ第二集であって,良くも悪くもストリングスがハマリ役の“爽やかな”音世界が描かれている。
 
BOSSA NOSTALGIA-2 しか〜し,ここが木住野佳子の持ち味であろうが,エレガントなボサノヴァが,却ってノスタルジーを誘ってくる。余韻が長続きするように思う。

 正にタイトル通りの『ボッサ・ノスタルジア』である。郷愁のメロディに乗っかってくるボッサのリズムが“ほんのり軽く”ジャズしている。
 くぅ〜。裏名盤である。星5つはあげられないのだけど…。

  01. 夏への扉
  02. bossa libra
  03. double rainbow
  04. 紫陽花
  05. ukiuki
  06. nostalgia
  07. bossa de funk
  08. passarim
  09. お散歩
  10. agua de beber
  11. one note samba
  12. sue ann

(GRP/GRP 2006年発売/UCCJ-2048)
(ライナーノーツ/木住野佳子)

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木住野 佳子 / ハートスケープ−オリジナル4

HEARTSCAPE-1 『HEARTSCAPE』(以下『ハートスケープ−オリジナル』)と『TIMESCAPE』(以下『タイムスケープ−スタンダード』)は,木住野佳子CDデビュー10周年記念特別企画2枚同時リリース盤。

 CD1枚の2枚組ではなく2枚別々同時リリースなのは,コンセプトの異なる「オリジナル集」と「スタンダード集」だから。しかしこの2枚は一対。2枚揃えて初めて“木住野佳子の10周年”を祝うことができる。

 『ハートスケープ−オリジナル』は「心の情景」。木住野佳子の活動歴の中心は,コンポーザーとアレンジャー。同じフォーマットであっても『テンダネス』と『ハートスケープ−オリジナル』では,ストリングスの質が異なる。
 自分の足元をしっかり見据えたバラードを中心としたオリジナルも醸成の度合いを増した“木住野ワールド”をしっかり作り上げている。

HEARTSCAPE-2 【静香風】のアジアと【ANCIENT DREAM】の夢心地と大河ドラマの【風の情景】。
 今までの木住野佳子と,今の木住野佳子と,これからの木住野佳子の「心の情景」が聴こえてくる。

  01. Sketch of Praha
  02. 砂時計
  03. 風に抱かれて
  04. 静香風
  05. Con Passione
  06. Ancient Dream
  07. 風の情景
  08. 月の踊り
  09. The Good Old Times
  10. A Song for My Friend

(GRP/GRP 2004年発売/UCCJ-2035)
(ライナーノーツ/木住野佳子)
★スイングジャーナル誌選定【ゴールドディスク】

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木住野 佳子 / タイムスケープ−スタンダード4

TIMESCAPE-1 『TIMESCAPE』(以下『タイムスケープ−スタンダード』)と『HEARTSCAPE』(以下『ハートスケープ−オリジナル』)は,木住野佳子CDデビュー10周年記念特別企画2枚同時リリース盤。

 CD1枚の2枚組ではなく2枚別々同時リリースなのは,コンセプトの異なる「スタンダード集」と「オリジナル集」だから。しかしこの2枚は一対。2枚揃えて初めて“木住野佳子の10周年”を祝うことができる。

 『タイムスケープ−スタンダード』は「時の情景」。木住野佳子の活動歴の中心は,ピアノ・トリオでのスタンダード。同じフォーマットであっても『フェアリー・テール』と『タイムスケープ−スタンダード』では,ピアノ・トリオの質が異なる。
 ジャズのセンスが増したというよりも,音の選び方が巧妙かつ繊細で“木住野ワールド”をしっかり作り上げている。

TIMESCAPE-2 【WAVE】の軽やかさと【NO MORE BLUES】の貴婦人と【MY FOOLISH HEART】の深さ。
 今までの木住野佳子と,今の木住野佳子と,これからの木住野佳子の「時の情景」が聴こえてくる。

  01. Wave
  02. Come Together
  03. All of You
  04. No More Blues
  05. A Child Is Born
  06. Wives & Lovers
  07. For All We Know
  08. Spring Is Here
  09. When The Saints Go Marching In
  10. My Foolish Heart

(GRP/GRP 2004年発売/UCCJ-2034)
(ライナーノーツ/木住野佳子)
★スイングジャーナル誌選定【ゴールドディスク】

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木住野 佳子 / プラハ5

PRAHA-1 『シエスタ』から始まった,木住野佳子の“外へ外へと発散していく”自分探しの音楽旅行。「ニューヨークのブラジル」に続く2番目の到着地は,チェコ共和国は『PRAHA』(以下『プラハ』)であった。

 音楽旅行の最大の財産は“人との出会い”にある。木住野佳子は『プラハ』で,偉大なるベーシストジョージ・ムラーツと“運命の再会”を果たしている。
 ジョージ・ムラーツベーシストとしての才能についてはここでは書かない。管理人が『プラハ』で書きたいのはジョージ・ムラーツベーシストの“枠を越えた”音楽家としての才能である。

 木住野佳子ジョージ・ムラーツの“運命の再会”には裏話がある。実は『プラハ』の始まりは東京でのこと。木住野佳子が「ストリングスと一緒にアレンジしたい」と話していたら,ジョージ・ムラーツがすかさず「チェコのプラハの弦が素晴らしいから,僕が一緒に」の一言でレコーディングが決定したとか,しないとか?

 音楽のテイストから録音からドラマーストリングスの人選に至るまで『プラハ』には,ジョージ・ムラーツの個性が色濃く表現されている。
 事実,ライナーノーツ木住野佳子自身「このアルバムは,ジョージ・ムラーツの協力なしでは実現しなかった」と書いている。そう。『プラハ』の真実とは,木住野佳子ジョージ・ムラーツの“コラボレーション”なのである。

 …とここまで書いてみたが,当たっているんだが,う〜ん,何か違うかな。
 そう。『プラハ』の個性とはジョージ・ムラーツの個性ではない。この深みのある音はプラハの“街の個性”であろう。

 『プラハ』を聴いていると,プラハという街の“息遣い”が聴こえてくる。美術館のような美しい街並は悲しみを隠すための厚化粧である。中世から歴史に翻弄され,大国の思惑に翻弄され,今なお複雑な紛争に囲まれる東欧の古都プラハは,どこか悲しくノスタルジック。痛んだ人々の心を癒してきたのは,いつも側にあるクラシック音楽。← この史とロマンがジャズにとっては重要だったりする。

 そう。『プラハ』こそ“ヨーロピアン・フレーバー”溢れる,詩情最高のピュア・ピアノ・アルバム。現地の空気感すら伝わってくる名演ノに思いがけなく“吐息が漏れてしまう”。プラハという街の“息遣い”は実に素晴らしい。
 切なく悲しげに響くピアノ。時には肉声に似たその響きに心を鷲掴みされてしまう。

 『プラハ』のハイライトは,木住野佳子のアレンジ力である。
 木住野佳子ピアノジョージ・ムラーツベースストリングスが“呼応”している。木住野アレンジのストリングスは,脇役ながら,単なる脇役以上に素晴らしく主張していてる。深みのある茶色の音色。枯れた音。深い秋の音色が響いている。

 木住野佳子は『テンダネス』でもストリングスと共演していたが『テンダネス』のストリングス
は,奇才デビッド・キャンべルがアレンジを手がけていた。
 『プラハ』での木住野佳子は初の一人三役。つまりアレンジし,指揮し,ピアノを弾いている。ついに姿を現われた“新しい木住野ワールド”。女性的で洗練されたピアノ・タッチと美しい旋律とストリングスとの調和である。この新たな木住野ワールドは,ジャズメンとしてのマチュアリティと未来への期待感を大いに感じさせてくれる。

PRAHA-2 さて管理人の『プラハ批評に,どうしても欠かせないのが「最高の音質」である。「最高の音質」に言及せずに『プラハ批評など成り立たない。成り立つ訳がない。

 『プラハ』は,音の良さにとことんこだわった“アナログ録音”のSACDハイブリッド盤仕様。
 ピアノの王様=ベーゼンドルファー・インペリアルモデルの繊細で深い響き。深く豊かで奥行きと広がりを感じさせる生々しいストリングス,迫力があるが不自然に強調されてはいないベースドラムの軽やかなブラシが,あたかも目の前で演奏されているかのように伝わってくる。
 また単に音の強弱に限らず,演奏家一人一人のタッチ,感性,味わい等,通常デジタル録音では表現されにくい微妙な要素を“音の表情”として忠実に再現している。『プラハ』は,内容は勿論,音の美しさだけで人を感動させる力をも秘めている。
 『プラハ』のアナログ録音は英断だったと思うが,やはりプラハの録音エンジニアのセンスが最高なのだろう。音楽の街『プラハ』は,演奏家だけではなく録音技師たちをも育てる土壌を有している。プラハ,恐るべし!

 最後に,美人ピアニスト木住野佳子“恒例の”ジャケット写真について一言…。
 『プラハ』のジャケット写真は,映画女優のオードリー・ヘップバーン風? 実にお美しい女優さんの肖像写真である。ピアノ・トリオストリングスの『プラハ』が目指すは映画音楽?
 そう。CDを聴き通してみると実感できるが『プラハ』には映画並みの“ストーリ性”がある。ストーリーは主演女優=木住野佳子プラハとの恋物語。
 実際『プラハ』の作りは,ムーディな雰囲気から徐々にジャズ度が高まっている。8曲目【ブルー・イン・グリーン】と9曲目【サム・アザー・タイム】の“エヴァンス・チューン”でピークを迎えた勢いそのまま,ラスト2曲のクラシック・ナンバー【別れの曲】【家路】へ雪崩れ込む。極微量のジャズ・フィーリングが嬉しい木住野ワールド。

 管理人の結論。『プラハ』は木住野佳子作,パット・メセニーシークレット・ストーリー』に並ぶ“超大作”であった。

  01. Forest Rain
  02. モルダウの風
  03. かげろう
  04. Oasis
  05. 足音
  06. Just Before the Light
  07. Oyasumi
  08. Blue in Green
  09. Some Other Time
  10. Etude op.10-3
  11. Going Home

(GRP/GRP 2004年発売/UCGJ-7002)
(☆SACDハイブリッド盤仕様)
(ライナーノーツ/木住野佳子,ジョージ・ムラーツ)

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木住野 佳子 / シエスタ4

SIESTA-1 前作『テンダネス』で,ビル・エヴァンスっぽく言うならば“自己との対話”を果たした木住野佳子
 木住野佳子の次なるステージは“拡散”である。「内へ内へ」から「外へ外へ」…。

 『SIESTA』(以下『シエスタ』)は,木住野佳子の“第二のライフ・ワーク”であるボサノヴァアルバム
 『シエスタ』のイメージカラーは鮮烈な黄色! 木住野佳子がピンクのバラから黄色のひまわりへと一新した。爽快で心地良い“ブラジリアン・リズム”をバックに,どのトラックも軽い仕上がりにアレンジされているが,どうしてどうして…。

 『シエスタ』は,なかなか深い部分で造り込まれている。美しく洗練された音で木住野佳子の繊細でナイーブな感性が明るく鳴っている。音がキラキラと輝いている。これぞ“ジャズボサノヴァの融合作”! 

SIESTA-2 『シエスタ』は,エレガントな都会が似合うボサノヴァアルバムである。

  01. Siesta
  02. The Red Blouse
  03. Primavera
  04. Antonio's Song
  05. So Many Stars
  06. Poco Brazil
  07. Siesta -vocal version-
  08. Norwegian Woods
  09. The Day Will Come
  10. Corcovado
  11. Mas Que Nada
  12. Pray For Them

(GRP/GRP 2002年発売/UCCJ-2021)
(ライナーノーツ/木住野佳子)

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木住野 佳子 / ユー・アー・ソー・ビューティフル / WALTZ FOR DEBBY4

 『YOU ARE SO BEAUTIFUL』の5曲目は【WALTZ FOR DEBBY】(以下【ワルツ・フォー・デビー】)。


 まずは【ワルツ・フォー・デビー】に挑戦した木住野佳子に賛辞を送りたい。木住野佳子が背負うエヴァンス派の第一人者としての押しつぶされそうなプレッシャーを払いのけ,明らかにエヴァンス派の,しかしビル・エヴァンスとは別物の,木住野佳子オリジナル【ワルツ・フォー・デビー】のお披露目である。

 そんな木住野佳子の【ワルツ・フォー・デビー】の主題はピアノ・トリオ! そう。木住野佳子アドリブもいいが,たたみかけるような5拍子の爽快感! 3分22秒で決まる岩瀬立飛の“スコーン”が肝!
 永遠の美メロをチャーミングに…。木住野佳子の【ワルツ・フォー・デビー】もいい。

YOSHIKO KISHINO : Piano
MITSUAKI FURUNO : Bass
TAPPI IWASE : Drums

木住野 佳子 / ユー・アー・ソー・ビューティフル5

YOU ARE SO BEAUTIFUL-1 『YOU ARE SO BEAUTIFUL』(以下『ユー・アー・ソー・ビューティフル』)は“エヴァンス派木住野佳子が捧げるビル・エヴァンスへのオマージュである。

 『ユー・アー・ソー・ビューティフル』は,実際にはビル・エヴァンスの愛奏集というわけではない。木住野佳子ピアノ・トリオは,エヴァンスゆかりのアレンジを覆すほどのオリジナリティに溢れているのである。
 しかし,やはりと言うか,どこをどう聴いてもビル・エヴァンスの香りプンプン。木住野佳子ビル・エヴァンスと真正面から向き合っている。
 そう。『ユー・アー・ソー・ビューティフル』は“内省的な美意識に包まれた”ジャズ・スタンダード集である。

 女性ジャズ・ピアニストは,良きにつけ悪しきにつけ「女性」というだけで色眼鏡にかけられてしまう。静かにピアノを鳴らす人は「女性らしく」と形容され,ピアノを弾き倒す人は「女性なのに」と形容される。それが肯定であっても否定であっても“女性”ジャズ・ピアニストのレッテルから抜け出すのは容易ではない。

 その昔「ビル・エヴァンスは男か女か」と野暮で幼稚な論争が起こった。管理人はズバリ,ビル・エヴァンスは男説。あの強靭なピアノ・タッチは,ハードボイルドな硬派である。
 しかし,ビル・エヴァンス女説を唱える人の気持ちも理解できる。ビル・エヴァンスの演奏はいつもメロディアスで美しい。確かに女性を彷彿とさせられる瞬間がある?

 さて,木住野佳子である。木住野佳子が“エヴァンス派”と呼ばれるのは,ビル・エヴァンス女説の支持理由による。
 木住野佳子ピアノの響きが“美音のイメージ”なのだ。木住野佳子ビル・エヴァンスの特徴を正にそのように捉えている感有り有り。
 『ユー・アー・ソー・ビューティフル』は,全11曲なのに総演奏時間は46分。つまり“美音のイメージ”に無駄な贅肉を削ぎ落とし,エヴァンス流にアドリブも短くまとめられている。
 ビル・エヴァンスが,男であれ女であれ,素晴らしいジャズ・ピアニストに違いないのと同様に,木住野佳子も,女であれ女エヴァンスであれ,素晴らしいジャズ・ピアニストに違いない。

 管理人は『ユー・アー・ソー・ビューティフル』を聴く度に,木住野佳子の本作に対する“強い思い”を感じてしまう。
 敢えてビル・エヴァンスの愛奏曲を取り上げることで,木住野佳子は“エヴァンス派”としての自分と“女性”ジャズ・ピアニストとしての自分から決別しようとしている。「もうビル・エヴァンスみたいには弾かないもん」と言う木住野佳子の心の声が聞こえてくる?
 尤も,木住野佳子へのビル・エヴァンスの影響は墓場まで。どんなに遠くへ離れようともビル・エヴァンスの“磁場”から逃れることなどできやしない?

YOU ARE SO BEAUTIFUL-2 ただし,木住野佳子ビル・エヴァンスを完全に消化済。ビル・エヴァンスの音楽を創造する過程での心理や手法を理解した。単純にビル・エヴァンスの愛奏曲を愛情一杯に演奏した。それなのに,こんなにグッとくるなんて…。
 ビル・エヴァンスのオリジナルと比較して聴くと“エヴァンス派木住野佳子の理解の深さが実感できる。

 もはや“無敵”の木住野佳子GRP御用達の豪華なゲストは必要なし。
 木住野佳子トリオを組むのはライブでの共演経験も多い,古野光昭市原康組と安ヵ川大樹岩瀬立飛組の2組のリズム隊である。

 ビル・エヴァンス・トリオのメンバーであったマーク・ジョンソンエディ・ゴメスポール・モチアンの力を借りずとも,木住野佳子ビル・エヴァンスできる!
 そう。『ユー・アー・ソー・ビューティフル』は,木住野佳子の“エヴァンス派”からの“卒業宣言”である。

  01. Israel
  02. Tenderly
  03. Autumn Leaves
  04. The Days of Wine And Roses
  05. Waltz for Debby
  06. O Grande Amor
  07. Here, There And Everywhere
  08. April in Paris
  09. Here's That Rainy Day
  10. Easy To Love
  11. You Are So Beautiful

(GRP/GRP 1999年発売/MVCJ-29002)
(ライナーノーツ/岩浪洋三)
★スイングジャーナル誌選定【ゴールドディスク】

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木住野 佳子 / フォトグラフ4

PHOTOGRAPH-1 ジャズピアニストとしての志に満ちた,デビューCDフェアリー・テイル』。大注目の2nd『PHOTOGRAPH』(以下『フォトグラフ』)は,一転,肩の力の抜けた“サラリ感”が魅力の名盤である。

 優しく,しなやかなに,一つ一つの音にさりげなく情感をのせて心に響いてくる。エレガントな木住野佳子ジャズ・ピアノに胸キュン。『フォトグラフ』には等身大の木住野佳子が聴こえている。

 『フォトグラフ』は『フェアリー・テイル』同様,スタンダードピアノ・トリオ作であるが,ベースドラムも“前のめりな”セッション・チックな感じがいい。

 マーク・ジョンソンポール・モチアンビル・スチュワートの“プレイズ・ビル・エヴァンス”とロメロ・ルバンボギター入りの“プレイズ・ボサノヴァ”という,木住野佳子の2大ライフ・ワークがブレンドされている。

PHOTOGRAPH-2 『フォトグラフ』での,少し遅れて情感がにじみ出てくる不思議な軽さとしなやかで伸びやかなピアノ・タッチ。感情と感性で織りあげた“七色のメロディ”が素晴らしい。

  01. NIGHT AND DAY
  02. SCARBOROUGH FAIR
  03. DESERT ISLAND
  04. ALL BLUES
  05. LONGING FOR YOU
  06. ALONE TOGETHER
  07. PHOTOGRAPH
  08. ALICE IN WONDERLAND
  09. ON GREEN DOLPHIN STREET
  10. LOVE DANCE
  11. J'S WALTZ
  12. AUTUMN

(GRP/GRP 1996年発売/MVCR-30002)
(ライナーノーツ/木住野佳子)

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木住野 佳子 / フェアリー・テイル / ONLY TRUST YOUR HEART5

 『FAIRY TALE』の7曲目は【ONLY TRUST YOUR HEART】(以下【オンリー・トラスト・ユア・ハート】)。


 【オンリー・トラスト・ユア・ハート】には,木住野佳子の“喜び”が詰まっている。
 ライナーノーツにあるように,この喜びは木住野佳子の「記念すべき初レコーディング」の喜びなのかもしれない。しかし管理人には,それ以上の,ジャズ・ピアニストとして悦に入った瞬間の“喜び”が表現されていると思う。

 これは木住野佳子1人の喜びではない。ベーシストマーク・ジョンソンの喜びでもある。そう。過去にビル・エヴァンス・トリオの一員として登りつめたピアノ・トリオの頂点に,今回は木住野佳子ピーター・アースキンを連れ添って,最高の3人で到達できた満足感!
 【オンリー・トラスト・ユア・ハート】こそ,かのビル・エヴァンスが見つめていた音世界! ついに登ることを許された,凡人には「隠されし」ピアノ・トリオの頂点へ足を踏み入れた喜びを噛みしめている。

 スローなイントロで始まる【オンリー・トラスト・ユア・ハート】が,徐々にリズムを速め,軽快にスイングしていく“変貌の展開”に,ピアノ・トリオの高みを目指す3人の姿を思い重ねることができた。木住野佳子マーク・ジョンソンが放つ“喜びのオーラ”が,聴き手を「幸福感」で包んでくれる。素晴らしい。

YOSHIKO KISHINO : Piano
MARK JOHNSON : Bass
PETER ERSKIN : Drums, Percussion

木住野 佳子 / フェアリー・テイル / THE ISLAND4

 『FAIRY TALE』の3曲目は【THE ISLAND】(以下【ジ・アイランド】)。


 イヴァン・リンスの代表作である【ジ・アイランド】は“垢抜け”したブラジル音楽! 土臭さを残しつつも贅肉?を大胆に削ぎ落とし,実にシャープなリズムの上を“極上”メロディ・ラインが優雅に駆け抜けていく。

 【ジ・アイランド】成功の立役者こそ,ジャズ以外にもマルチな活躍を見せているピーター・アースキンドラミングであろう。細かにリズムを刻むのではなく,波のような大きなうねりの中でリズムを打つ! もっとも彼特有の細かなパーカッションによる“味付け”も聴き所の一つである。  

 このシャープ,かつ大きなリズムの波に乗った木住野佳子ピアノが,自然と盛り上がり自然と消え去っていく…。波打ち際には,美しいメロディ・ラインの“心地良さ”だけが残される。
 この美しいピアノ・タッチに,木住野佳子の【ジ・アイランド】に対する愛情を感じてしまう。

 3分39秒からのマーク・ジョンソンアドリブは,力の入った熱いロング・ソロ。まるで自分の感情をウッド・ベースに叩きつけているかのようである。こちらも表現手法は異なるが【ジ・アイランド】への愛情表現の“発露”であろう。

YOSHIKO KISHINO : Piano
MARK JOHNSON : Bass
PETER ERSKIN : Drums, Percussion

木住野 佳子 / フェアリー・テイル / FAIRY TALE5

 『FAIRY TALE』の2曲目は【FAIRY TALE】(以下【フェアリー・テイル】)。


 「おとぎ話」という意味の【フェアリー・テイル】によって「おとぎの国」=木住野ワールドへの扉が開かれる! そこは実に美しいピアノの「おとぎ話」。雄大な音空間の美であり,ハーモニーの美である。

 ビル・エヴァンスを徹底的に研究してきた木住野佳子と,ビル・エヴァンス・トリオの最後のベーシストマーク・ジョンソン。【フェアリー・テイル】は,木住野佳子を介して実現した,エヴァンスジョンソンの15年振りの“仮想”夢の共演である。

 木住野佳子の繊細なピアノが清々しい。優しく身体に馴染んでくる。この灰汁のない響きこそ木住野佳子の真骨頂である。
 テーマで絡み合いながらも低音で“突き上げてくる”マーク・ジョンソンが流石である。このスコット・ラファロ風=自由な跳ね馬ぶりが好みであるが,一方でピアノ・ソロでのバックで的確にリズムを刻むチャック・イスラエル風の安定したベース・プレイも聴き逃せない。
 
 3分59秒からのマイケル・ブレッカーテナー・ソロこそ「おとぎ話」の美しさ! 【フェアリー・テイル】にゲスト参加で花を添えるつもりが,木住野佳子の快演に一歩も後へ引けなくなったという感じ? 本気で骨太の“マイケル節”が炸裂している。
 ピーター・アースキンロジャー・スキテロの控え目ながらも華やかなドラムパーカッションも存在感たっぷりで素晴らしい。

YOSHIKO KISHINO : Piano
MARK JOHNSON : Bass
PETER ERSKIN : Drums, Percussion
MICHAEL BRECKER : Tenor Saxophone
ROGER SQUITERO : Percussion

木住野 佳子 / フェアリー・テイル / BEAUTIFUL LOVE5

 『FAIRY TALE』の1曲目は【BEAUTIFUL LOVE】(以下【ビューティフル・ラヴ】)。


 【ビューティフル・ラヴ】に漂う緊張感が,心底カッコイイ! この演奏をバトル形式と読むのは簡単であるが,その一言では語り尽くせぬ興奮がある。管理人はこの演奏を“最高のピアノ・トライアングル”と呼ぼうと思う。

 【ビューティフル・ラヴ】について語るには,エディ・ゴメスは外せない。パワフルなヴァーチュオーソ&“ベロ〜ン”ベースを垂れ流す! しかし,その“ベロ〜ン”ベースを囲ってしまうピアノドラム! 木住野佳子ルイス・ナッシュの構成力がエディ・ゴメスを囲いの中で放牧する! この相関図は,長女=木住野佳子,長男=ルイス・ナッシュ,末の次男で暴れん坊のエディ・ゴメスなのである。

 早くもテーマ終わりの48秒からベースピアノの一騎打ちが始まるが,手加減なしにグイグイ押しまくるエディ・ゴメスベースに対し,スピード感と華麗さを兼ね備えたピアノ木住野佳子が応戦する! これぞ「柔よく剛を制す」。木住野佳子が主導権を握っている。
 2分55秒からはベースドラムの一騎打ちが始まるが,こちらも「相手の力を利用して投げる合気道」スタイル! ルイス・ナッシュエディ・ゴメスの垂れ流しのベースを一音一音,ブラシで掬っていく! やっぱりベースがこぼれない。
 最強の末っ子が囲いの中に“しっくり”収まる。“最高のピアノ・トライアングル”がここにある。

YOSHIKO KISHINO : Piano
EDDIE GOMEZ : Bass
LEWIS NASH : Drums

木住野 佳子 / フェアリー・テイル5

FAIRY TALE-1 木住野佳子のデビューCDFAIRY TALE』(以下『フェアリー・テイル』)が素晴らしい。

 軽く聴いても良い。じっくり聴き込んでも良い。書きたいこと,褒めちぎりたいことは山ほどあるが,良いの一言で『フェアリー・テイル批評を終えてしまいたいくらいにいい! 要は『フェアリー・テイル』は“実に出来すぎた”名盤なのである。

 当時まだ無名だったピアニストのデビューCDにして,超一流のピアニストでも“生涯に一度有るか無いか”の考え得る最高に豪華な共演者=ビル・エヴァンス・トリオのベーシストエディ・ゴメスマーク・ジョンソン。そしてルイス・ナッシュピーター・アースキンドラム。とどめはテナー・サックスマイケル・ブレッカーである。

 このGRPからのご祝儀に,足がすくむでもなく実力をいかんなく発揮している。いや,エディ・ゴメスマーク・ジョンソンを従えた“仮想”ビル・エヴァンス・トリオのリーダーとして“風格”さえ漂わせている。
 いや〜,すんごい新人がいたものだ。木住野佳子上原ひろみ以上の“肝っ玉娘”なのであろう。

 『フェアリー・テイル』は,ジャズ・ピアノの王道である。「メロディは美しく,アドリブは激しく,最後はスイング」である。ビル・エヴァンスの音楽に通じる“中身は濃いのに敷居は低い?”の王道である。

 エヴァンス派を自認する木住野佳子だが,それはインタープレイの構築方法やフレーズに関してのお話。
 木住野佳子ピアノは,ビル・エヴァンスという“フィルター”から出力されてはいるのだが,彼女のルーツはロックやポップスである。ビル・エヴァンスにはない,都会的でお洒落で生命感のある非内省的なメロディが,ほんの一瞬顔を出す。女性的な繊細で大甘なタッチなのに,ツンツンと尖がっている。
 木住野佳子は,いつでもどかでも,心の奥底でビル・エヴァンス“している”のだ。

 『フェアリー・テイル』のハイライトは,意外にも?マイケル・ブレッカーとの“静かなバトル”である。
 メラメラと青白い炎が立ち昇っている。実に美しい。2人の心の共鳴はビル・エヴァンススコット・ラファロインタープレイそのものである。

FAIRY TALE-2 『フェアリー・テイル』での木住野佳子は,自分の世界=ビル・エヴァンスの耽美主義に没入している。
 ギラギラしているのにメロディアスで美しい。ブルースファンクグルーヴとは最も遠いところで鳴っている。ジャズを聴き続けている人であっても,この透明感とはなかなか出会えないと思う。

 『フェアリー・テイル』は,最初から最後まで細部に至るまで制作チームの狙い通り。完璧である。木住野佳子が手にした幸運の奇跡に管理人からも感謝を表する。

  01. Beatiful Love
  02. Fairy Tale
  03. The Island
  04. Someday My Prince Will Come
  05. Funkallero
  06. Stella By Starlight
  07. Only Trust Your Heart
  08. You Make Me Feel Brand New
  09. Lafite '82
  10. Gone
  11. With A Little Song

(GRP/GRP 1995年発売/MVCR-30001)
(ライナーノーツ/漆崎丈,木住野佳子)
★スイングジャーナル誌選定【ゴールドディスク】

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木住野 佳子 / PORTRAIT - 木住野佳子 ベスト・セレクション / SCARBOROUGH FAIR4

 PORTRAIT − YOSHIKO KISHINO BEST SELECTIONの5曲目は【SCARBOROUGH FAIR】(以下【スカボロ・フェア】)。


 勝手知ったる,サイモン&ガーファンクルの【スカボロ・フェア】が,こんなにもジャズ・アレンジにマッチするとは,の管理人の新発見トラック。この木住野佳子の演奏を機に【スカボロ・フェア】入りのCDを買い漁ったのは言うまでもない。

 木住野佳子ピアノが「ジャズの語法で」しっとりと歌い上げる! 決して大胆なアドリブは取らないのに,原曲を見事に破壊していく!
 このしっとり感はマーク・ジョンソンポール・モチアンの奏でる“絶品リズム隊”の名演に大いに依存している。このリズムをあてがわれれば木住野佳子もああ弾くしかないのだろう。木住野佳子の【スカボロ・フェア】は,美しく調和の取れた完璧なジャズ・ソングである。

YOSHIKO KISHINO : Piano
MARC JOHNSON : Bass
PAUL MOTIAN : Drums

木住野 佳子 / PORTRAIT - 木住野佳子 ベスト・セレクション / WALTZ FOR DEBBY4

 PORTRAIT − YOSHIKO KISHINO BEST SELECTIONの7曲目は【WALTZ FOR DEBBY】(以下【ワルツ・フォー・デビー】)。


 まずは【ワルツ・フォー・デビー】に挑戦した木住野佳子に賛辞を送りたい。木住野佳子が背負うエヴァンス派の第一人者としての押しつぶされそうなプレッシャーを払いのけ,明らかにエヴァンス派の,しかしビル・エヴァンスとは別物の,木住野佳子オリジナル【ワルツ・フォー・デビー】のお披露目である。

 そんな木住野佳子の【ワルツ・フォー・デビー】の主題はピアノ・トリオ! そう。木住野佳子アドリブもいいが,たたみかけるような5拍子の爽快感! 3分22秒で決まる岩瀬立飛の“スコーン”が肝!
 永遠の美メロをチャーミングに…。木住野佳子の【ワルツ・フォー・デビー】もいい。

YOSHIKO KISHINO : Piano
MITSUAKI FURUNO : Bass
TAPPI IWASE : Drums

木住野 佳子 / PORTRAIT - 木住野佳子 ベスト・セレクション / MANHATTAN DAYLIGHT5

 PORTRAIT − YOSHIKO KISHINO BEST SELECTIONの6曲目は【MANHATTAN DAYLIGHT】(以下【マンハッタン・デイライト】)。


 【マンハッタン・デイライト】は,フュージョン史上屈指の“隠れ名曲”である。管理人は【マンハッタン・デイライト】を聴くと,いつでも,どんな時でも,天から“光が降り注いでくる”ように感じてしまう。パカッと天蓋が開いた感覚に襲われる。聴き終わると同時に湧き上がる充足感。「心が洗われる」とは正にこのことであろう。

 木住野佳子の明るく“キラキラ”したピアノの音色に完全に恋してしまいました。イントロのレイコンマ何秒の音が流れるだけでエレクトしてしまいます。恥ずかしい。
 41秒から59秒までと2分42秒から3分0秒までの主役はアンディ・シュニッツァーの伸びやかなテナー・ソロに違いありませんが,木住野佳子に狂ってからは,アンディ・シュニッツァーテナー・サックスにカウンターを当てる木住野佳子ピアノばかりを追いかけてしまいます。

 しかし,管理人は最近,木住野佳子が“女優”であるのは,フィリップ・セスのおかげであることに気がつきました。【マンハッタン・デイライト】には,木住野佳子を“女優”として聴かせるフィリップ・セスの“マジック”が仕掛けられています。彼の実は相当細かい!
 そう。【マンハッタン・デイライト】で感じる「幸福感」の真犯人はフィリップ・セス! 【マンハッタン・デイライト】は,全ての謎がフィリップ・セスへとつながる短編小説なのです。

PS1 天才の妙技は実際にご自分で聴いてお確かめください。
PS2 例のイントロは実は木住野佳子ではなくフィリップ・セスシンセ音なのか? 謎は深まっていく?

YOSHIKO KISHINO : Piano
MARK JOHNSON : Bass
ABE FOGEL : Drums
CYRO BAPTISTA : Percussion
PHILIPPE SAISSE : Synthesizer
ANDY SNITZER : Tenor Saxophone

木住野 佳子 / PORTRAIT - 木住野佳子 ベスト・セレクション / FAIRY TALE5

 PORTRAIT − YOSHIKO KISHINO BEST SELECTIONの1曲目は【FAIRY TALE】(以下【フェアリー・テイル】)。


 「おとぎ話」という意味の【フェアリー・テイル】によって「おとぎの国」=木住野ワールドへの扉が開かれる! そこは実に美しいピアノの「おとぎ話」。雄大な音空間の美であり,ハーモニーの美である。

 ビル・エヴァンスを徹底的に研究してきた木住野佳子と,ビル・エヴァンス・トリオの最後のベーシストマーク・ジョンソン。【フェアリー・テイル】は,木住野佳子を介して実現した,エヴァンスジョンソンの15年振りの“仮想”夢の共演である。

 木住野佳子の繊細なピアノが清々しい。優しく身体に馴染んでくる。この灰汁のない響きこそ木住野佳子の真骨頂である。
 テーマで絡み合いながらも低音で“突き上げてくる”マーク・ジョンソンが流石である。このスコット・ラファロ風=自由な跳ね馬ぶりが好みであるが,一方でピアノ・ソロでのバックで的確にリズムを刻むチャック・イスラエル風の安定したベース・プレイも聴き逃せない。
 
 3分59秒からのマイケル・ブレッカーテナー・ソロこそ「おとぎ話」の美しさ! 【フェアリー・テイル】にゲスト参加で花を添えるつもりが,木住野佳子の快演に一歩も後へ引けなくなったという感じ? 本気で骨太の“マイケル節”が炸裂している。
 ピーター・アースキンロジャー・スキテロの控え目ながらも華やかなドラムパーカッションも存在感たっぷりで素晴らしい。

YOSHIKO KISHINO : Piano
MARK JOHNSON : Bass
PETER ERSKIN : Drums, Percussion
MICHAEL BRECKER : Tenor Saxophone
ROGER SQUITERO : Percussion

木住野 佳子 / PORTRAIT - 木住野佳子 ベスト・セレクション / BEAUTIFUL LOVE5

 PORTRAIT − YOSHIKO KISHINO BEST SELECTIONの4曲目は【BEAUTIFUL LOVE】(以下【ビューティフル・ラヴ】)。


 【ビューティフル・ラヴ】に漂う緊張感が,心底カッコイイ! この演奏をバトル形式と読むのは簡単であるが,その一言では語り尽くせぬ興奮がある。管理人はこの演奏を“最高のピアノ・トライアングル”と呼ぼうと思う。

 【ビューティフル・ラヴ】について語るには,エディ・ゴメスは外せない。パワフルなヴァーチュオーソ&“ベロ〜ン”ベースを垂れ流す! しかし,その“ベロ〜ン”ベースを囲ってしまうピアノドラム! 木住野佳子ルイス・ナッシュの構成力がエディ・ゴメスを囲いの中で放牧する! この相関図は,長女=木住野佳子,長男=ルイス・ナッシュ,末の次男で暴れん坊のエディ・ゴメスなのである。

 早くもテーマ終わりの48秒からベースピアノの一騎打ちが始まるが,手加減なしにグイグイ押しまくるエディ・ゴメスベースに対し,スピード感と華麗さを兼ね備えたピアノ木住野佳子が応戦する! これぞ「柔よく剛を制す」。木住野佳子が主導権を握っている。
 2分55秒からはベースドラムの一騎打ちが始まるが,こちらも「相手の力を利用して投げる合気道」スタイル! ルイス・ナッシュエディ・ゴメスの垂れ流しのベースを一音一音,ブラシで掬っていく! やっぱりベースがこぼれない。
 最強の末っ子が囲いの中に“しっくり”収まる。“最高のピアノ・トライアングル”がここにある。

YOSHIKO KISHINO : Piano
EDDIE GOMEZ : Bass
LEWIS NASH : Drums

木住野 佳子 / PORTRAIT - 木住野佳子 ベスト・セレクション / ONLY TRUST YOUR HEART5

 PORTRAIT − YOSHIKO KISHINO BEST SELECTIONの3曲目は【ONLY TRUST YOUR HEART】(以下【オンリー・トラスト・ユア・ハート】)。


 【オンリー・トラスト・ユア・ハート】には,木住野佳子の“喜び”が詰まっている。
 ライナーノーツにあるように,この喜びは木住野佳子の「記念すべき初レコーディング」の喜びなのかもしれない。しかし管理人には,それ以上の,ジャズ・ピアニストとして悦に入った瞬間の“喜び”が表現されていると思う。

 これは木住野佳子1人の喜びではない。ベーシストマーク・ジョンソンの喜びでもある。そう。過去にビル・エヴァンス・トリオの一員として登りつめたピアノ・トリオの頂点に,今回は木住野佳子ピーター・アースキンを連れ添って,最高の3人で到達できた満足感!
 【オンリー・トラスト・ユア・ハート】こそ,かのビル・エヴァンスが見つめていた音世界! ついに登ることを許された,凡人には「隠されし」ピアノ・トリオの頂点へ足を踏み入れた喜びを噛みしめている。

 スローなイントロで始まる【オンリー・トラスト・ユア・ハート】が,徐々にリズムを速め,軽快にスイングしていく“変貌の展開”に,ピアノ・トリオの高みを目指す3人の姿を思い重ねることができた。木住野佳子マーク・ジョンソンが放つ“喜びのオーラ”が,聴き手を「幸福感」で包んでくれる。素晴らしい。

YOSHIKO KISHINO : Piano
MARK JOHNSON : Bass
PETER ERSKIN : Drums, Percussion

木住野 佳子 / PORTRAIT - 木住野佳子 ベスト・セレクション / THE ISLAND4

 PORTRAIT − YOSHIKO KISHINO BEST SELECTIONの2曲目は【THE ISLAND】(以下【ジ・アイランド】)。


 イヴァン・リンスの代表作である【ジ・アイランド】は“垢抜け”したブラジル音楽! 土臭さを残しつつも贅肉?を大胆に削ぎ落とし,実にシャープなリズムの上を“極上”メロディ・ラインが優雅に駆け抜けていく。

 【ジ・アイランド】成功の立役者こそ,ジャズ以外にもマルチな活躍を見せているピーター・アースキンドラミングであろう。細かにリズムを刻むのではなく,波のような大きなうねりの中でリズムを打つ! もっとも彼特有の細かなパーカッションによる“味付け”も聴き所の一つである。  

 このシャープ,かつ大きなリズムの波に乗った木住野佳子ピアノが,自然と盛り上がり自然と消え去っていく…。波打ち際には,美しいメロディ・ラインの“心地良さ”だけが残される。
 この美しいピアノ・タッチに,木住野佳子の【ジ・アイランド】に対する愛情を感じてしまう。

 3分39秒からのマーク・ジョンソンアドリブは,力の入った熱いロング・ソロ。まるで自分の感情をウッド・ベースに叩きつけているかのようである。こちらも表現手法は異なるが【ジ・アイランド】への愛情表現の“発露”であろう。

YOSHIKO KISHINO : Piano
MARK JOHNSON : Bass
PETER ERSKIN : Drums, Percussion

木住野 佳子 / PORTRAIT - 木住野佳子 ベスト・セレクション5

PORTRAIT - YOSHIKO KISHINO BEST SELECTION-1 ジャズ・ピアノには2つの大きな系譜がある。それがパウエル派エヴァンス派である。
 このパウエル派エヴァンス派の系譜は,時を越え海を越え形を変え,ここ日本の女性ジャズ・ピアニストたちの歴史にも連綿と受け継がれている。

 「男勝りの力強いタッチ」が特徴のパウエル派の歴史は,秋吉敏子大西順子へ受け継がれ,パウエル派の分家=ピーターソン派アキコ・グレース山中千尋上原ひろみへ受け継がれている。
 一方「女性らしい繊細なタッチ」が特徴のエヴァンス派の歴史は,木住野佳子Sayaへと受け継がれている。

 パウエル派エヴァンス派について語る際,管理人が特に印象深く思い出すのが1990年代後半に繰り広げられた,この2大派閥の日本における代理戦争! そう。「大西順子 VS 木住野佳子」である。

 優勢だったのは大西順子である。やはり「ジャズ・ピアノ=ダイナミックなドライブ感」が謳い文句に違いない! それで大西順子を持ち上げるため? 木住野佳子についた隠語が「ヘタレ」。「木住野佳子を好きだ」とは言い出し難い空気が漂っていた。

 そんなこんなで?“レッテル”に惑わされ続けた管理人が,木住野佳子を初めて真面目に聴いたのは,実にデビューから8年後の2003年のこと。木住野佳子ベスト盤PORTRAIT − YOSHIKO KISHINO BEST SELECTION』(以下『PORTRAIT − 木住野佳子 ベスト・セレクション』)であった。

 時代はすでに大西順子が活動休止中。パウエル派の代表選手も上述の若手3人へと入れ替わっていた。「そろそろいいかなぁ」という気持ちに『PORTRAIT − 木住野佳子 ベスト・セレクション』の「セクシー・ジャケット」が相まって購入意欲を刺激した! そう。期待薄の興味薄。こんな状態で聴いたところで木住野佳子を気に入るわけがない!
 …と思いきや,現在ブレイク中のエドはるみ風に親指立てて「GOO,グ〜」! 「GOO,グ〜」ネタは管理人が最初なんですよ〜?

 さすが『PORTRAIT − 木住野佳子 ベスト・セレクション』はGRPレーベルである。GRPエヴァンス派デイブ・グルーシンである。
 エヴァンス派木住野佳子こそ,日本人初で唯一のGRPアーティスト! 『PORTRAIT − 木住野佳子 ベスト・セレクション』は,全編ビル・エヴァンスへの“オマージュ”で溢れている。

 巷で「ヘタレ」と呼ばれようが,8年もの間,木住野佳子は「女性らしい繊細なタッチ」を保ってきた。これはGRPのカラーではなく,木住野佳子のカラー,木住野佳子の“本質”であろう。

PORTRAIT - YOSHIKO KISHINO BEST SELECTION-2 やはり女性ジャズ・ピアニストには,バド・パウエルではなく「ビル・エヴァンスが好き」と答えてもらいたい。男の“願望”である。

 なお,管理人のように『PORTRAIT − 木住野佳子 ベスト・セレクション』で“開眼”し,速攻で木住野佳子の全CDを“大人買い”してしまったとしても『PORTRAIT − 木住野佳子 ベスト・セレクション』は無用の長物にはならない&ダブらないの親切編集盤。
 『PORTRAIT − 木住野佳子 ベスト・セレクション』は,木住野佳子の全CD未収録の【RED NOTE】【PEACE PIECE】を収録+特典として取り下ろしの最新フォト映像10枚と壁紙3枚収録のエンハンストCD仕様。木住野佳子・ファンなら“見てよし聴いてよし”ですよっ。

  01. Fairy Tale
  02. The Island
  03. Only Trust Your Heart
  04. Beautiful Love
  05. Scaborough Fair
  06. Manhattan Daylight
  07. Waltz For Debby
  08. You Are So Beautiful
  09. By The Sea
  10. Tenderness
  11. Air-Sul G
  12. Danny Boy
  13. Primavera
  14. Red Note
  15. Peace Piece

(GRP/GRP 2003年発売/UCCJ-2023)
(☆フォト・ギャラリー収録 エンハンストCD仕様)
(ライナーノーツ/木住野佳子)

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