アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

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CD批評:市原 ひかり

市原 ひかり / JOY5

JOY-1 『JOY』とは実にピッタリのネーミングである。『JOY』の真実は『JOY』である。
 上手いとか凄いとか抜きにしてただただ楽しい演奏である。ウキウキ・ワクワク。ジャズを,トランペットを,仲間と演奏する楽しさが素直に伝わってくる。

 そう。表現は悪いが『JOY』の真髄は「吹奏楽ジャズ」。学生時代に舞い戻った市原ひかりの“若さハツラツ”ジャズ
 ジャズメンたちの“笑顔がこぼれる”管理人の超タイプな名盤である。

 【JOY】がいい。【大きな古時計】が来ている。【みつけた2008】での大爆発と【HOME】での哀愁。【スプリングフィールド】の何とも上品でゴージャスなレトロ・サウンド。く〜っ。
 “スター・ソロイスト”市原ひかりフィーチャリングしてみせる“バンマス”村田陽一の名アレンジ。これは日本一の吹奏楽団である。

JOY-2 それにしても市原ひかりは“ドエライ”名曲を書くもんだ。初めて聴いたはずなのに,あの日あの空の下で聴いたことのある,スーッと耳に入って感覚。
 大袈裟に思われると困るのだが,マジで「これからのJ−ジャズスタンダード」として繰り返し演奏されるにふさわしい名曲群。
 その証拠に【MY FUNNY VALENTINE】【MY CHERIE AMOUR】【SUMMER KNOWS】のジャズ・スタンダード・ナンバーをコンパイルしての違和感なしの遜色なし。いいや,名曲3曲を喰ってしまっている! 素ん晴らしい〜!

  01. JOY
  02. 大きな古時計
  03. みつけた2008
  04. Home
  05. スプリングフィールド
  06. My Funny Valentine
  07. My Cherie Amour
  08. Summer Knows
  09.
  10. Beginning
  11. Rub-a-dub

(ポニー・キャニオン/AFTER BEAT 2008年発売/PCCY-60008)
(☆SACDハイブリッド盤仕様)
(ライナーノーツ/都並清史,市原ひかり)

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市原 ひかり / スターダスト4

STARDUST-1 前作『SARA SMILE』に続くニューヨーク録音による『STARDUST』(以下『スターダスト』)。
 同じニューヨーク録音でも『SARA SMILE』と『スターダスト』のトランペットの音造りは大きく異なる。
 この違いは市原ひかりの目指した着地点の違いであり,全体を広く見渡せるようになったアレンジ・センスの賜物である。

 温かい音色&柔らかいフレージング。一言で言えば“まろやかな”トランペットが,ストレートに飛び込んでくる。
 『スターダスト』の第一印象は「随分と大人びたなぁ」であった。成長というか成熟というか,トランペッターとしての自信と余裕が聴こえてくる。

 手垢のついたジャズ・スタンダードに斬新なアレンジで息を吹きかけるのだが,これが「気負いのない自然体」なのだ。「ねぇ,聞いて&聞いてよ」も「お涙頂戴」も一切なし。
 力まず,ひるまず,おごらずの「地にどっしりと足の着いた」演奏スタイルなのに,なぜか“ふわふわした”浮遊感を伴う市原ひかりトランペット

STARDUST-2 市原ひかりの放つ持つ独特の浮遊感が豪華な共演者の演奏をも包んでいる。心穏やかに心優しくなれる“大人な”市原ひかりジャズ・スタンダード

 3管なのに小品っぽい。トランペットサックスっぽい。『スターダスト』に市原ひかりの“控えめな”でも確かな色気への記録がある。

  01. Blue minor
  02. Stardust
  03. When you wish upon a star (星に願いを)
  04. Skylark
  05. 走馬灯
  06. I'll wait for you (シェルブールの雨傘)
  07. Smile
  08. I remember Clifford
  09. And they lived happily ever after

(ポニー・キャニオン/AFTER BEAT 2007年発売/PCCY-60006)
(☆SACDハイブリッド盤仕様)
(ライナーノーツ/中川ヨウ)

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市原 ひかり / SARA SMILE / I'VE GOT IT4

 『SARA SMILE』の5曲目は【I’VE GOT IT】。


 【I’VE GOT IT】は,キャッチーなメロディーと実直な演奏力が共存する“ザ・市原ひかり”な名演である。

 ブルージーなメジャー調のテーマが端正に演奏されていくが,ビートの効いたリズム隊が“渋め”のアクセントをつけていく。
 一転,1分22秒からの市原ひかりドミニク・ファリナッチによる,ツイン・トランペットのハーモニーが美しい。このサビは管理人の“ツボ”である。

 中盤は,2分15秒からのピーター・ワシントンベース・ソロこそ,フィーチャリングI’VE GOT IT】だし,
3分35秒からの市原ひかりトランペットソロ〜5分11秒からのアダム・バーンバウムピアノソロの流れは,即興演奏も作曲と捉える,コンポーザー兼アレンジャーとしての市原ひかりの才能であろう。

HIKARI ICHIHARA : Trumpet, Flugelhorn
ADAM BIRNBAUM : Piano
PETER WASHINGTON : Bass
LEWIS NASH : Drums
DOMINICK FARINACCI : Trumpet

市原 ひかり / SARA SMILE / IT COULD HAPPEN TO YOU4

 『SARA SMILE』の4曲目は【IT COULD HAPPEN TO YOU】。


 【IT COULD HAPPEN TO YOU】は“豪奢な”名演である。バックで“暴れ回る”ピアノ・トリオの前面でフリューゲル・ホーン・ソロを奏でる市原ひかりは“スター”である。

 アダム・バーンバウムの強烈なバック・スピンを華麗に返す市原ひかりはお蝶夫人? いや,宗方コーチ改めルイス・ナッシュの猛特訓を受けて急成長中の岡ひろみであろう。そう。合言葉は「ひかりよ,エースをねらえ!」だ。

 1分58秒から3分38秒までのロング・ソロもいいが,市原ひかりの「ショート・リリーフ」が大好きな管理人は,4分3秒から6秒までの,ほんのわずかな首元への一吹きに感じてしまう。

HIKARI ICHIHARA : Trumpet, Flugelhorn
ADAM BIRNBAUM : Piano
PETER WASHINGTON : Bass
LEWIS NASH : Drums

市原 ひかり / SARA SMILE / BLUE PRELUDE4

 『SARA SMILE』の3曲目は【BLUE PRELUDE】。


 【BLUE PRELUDE】は,真夜中への行進曲! 市原ひかりドミニク・ファリナッチが【BLUE】へと誘う【PRELUDE】! 元来はビング・グロスビーの歌ものであるが,管理人にとって【BLUE PRELUDE】とは【ラウンド・ミッドナイト】! そう。モンクマイルスの“アレ”である。

 イントロのベースとオープン・トランペットデュエットの感じがモンク臭いが,ドミニク・ファリナッチのミュートが滑り込んできた瞬間からマイルスの世界へと変化する。
 同様に,1分50秒からの市原ひかりアドリブモンク版【ラウンド・ミッドナイト】を想起させるが,3分42秒からのドミニク・ファリナッチのミュート音が甲高いアドリブマイルス版【ラウンド・ミッドナイト】を思い起こさせてくれる。

 そんな“仮想”モンクマイルス市原ひかりドミニク・ファリナッチが一瞬交錯する,何とも贅沢な音&音!
 くう〜。今夜も今から【BLUE PRELUDE】! でも朝帰りは身体に堪える〇〇歳である。

HIKARI ICHIHARA : Trumpet, Flugelhorn
ADAM BIRNBAUM : Piano
PETER WASHINGTON : Bass
LEWIS NASH : Drums
DOMINICK FARINACCI : Trumpet

市原 ひかり / SARA SMILE / FRAGILE4

 『SARA SMILE』の2曲目は【FRAGILE】。


 【FRAGILE】で,スティングスイング!? 切ないバラードにもかかわらず,グイグイ迫る緊張感。身も心も躍ってしまう。

 市原ひかりフリューゲル・ホーンに“重み”が足りないのはご愛敬。しかし,得意の中高音のビブラートには,重み以上に“心を動かす”パワーがある。
 そう。市原ひかりの【FRAGILE】への“ひたむきな愛情”が伝わってくる。管理人にはここがうれしくてたまらない。

 このプレイとこのアレンジが,かなり練り上げられているように思える。そんな市原ひかりの【FRAGILE】愛が,メンバー全員にも伝染した見事な名演市原ひかりを盛り上げる。
 特にピアニストアダム・バーンバウムのイントロとソロでの演奏が(ひかり以上に)ひかっている。

HIKARI ICHIHARA : Trumpet, Flugelhorn
ADAM BIRNBAUM : Piano
PETER WASHINGTON : Bass
LEWIS NASH : Drums
DOMINICK FARINACCI : Trumpet

市原 ひかり / SARA SMILE / CLEOPATRA'S DREAM4

 『SARA SMILE』の1曲目は【CLEOPATRA’S DREAM】。


 市原ひかりの【CLEOPATRA’S DREAM】は若干スロー。リズムがスイングしていることから,これは丁寧に2管フロントを聴かせる“演出”なのだろう。バド・パウエル風のアダム・バーンバウムピアノを2管フロントで抑え込んでいる。

 先発するグラント・スチュアートテナー・サックスが,伸びる伸びる! 雄大で懐の大きなうねりを生み出すアドリブの音空間がリスナーを早々とエジプトへと誘ってくれる。
 2分7秒からの市原ひかりトランペットソロがハイライト! 2分43秒からの高速アドリブ連打からの“つなぎ”のアイディアに“初々しさと熟練”が同居している。いい。

HIKARI ICHIHARA : Trumpe, Flugelhorn
ADAM BIRNBAUM : Piano
PETER WASHINGTON : Bass
LEWIS NASH : Drums
GRANT STEWART : Tenor Saxophone

市原 ひかり / SARA SMILE4

SARA SMILE-1 “帝王”マイルス・デイビスミュートを自身の演奏の中心に据えたのには訳がある。言うなれば「禍を転じて福と成す」! ミュートが生み出す“抑制されたリリシズム”は前向きの理由ではなく後向き=生き残るスベであった。
 マイルス・デイビスとしては(願いがかなうことなら)ディジー・ガレスピーファッツ・ナバロのような“バップ・トランペッター”になりたかった。そう。高らかに力強くブローする“花形”トランペッターである。
 この点でマイルス・デイビスは挫折した。パワフルなアドリブは強靱な肉体があってこそ。マイルスの“小柄な”身長が一発大ブロー勝負を許さなかった。マイルスミュートへの転身は,ピンチをチャンスへと変える“逆転の発想”によるものである。

 さて,市原ひかりである。市原ひかりは女性である。しかも女性の中でもとりわけ華奢なタイプ=小動物系である。そんな“かよわい”市原ひかりが大男の揃うトランペット界にあって,俄然人気を博しているのには訳がある。
 そう。マイルス同様,市原ひかりも自分を活かすスベを知っている。市原ひかりの最大の武器,それこそ“歌心”である。

 上記肉体的なハンディを意識してのことか,あるいは無意識の本能なのかは不明だが,市原ひかりアドリブの使い方が変わっている。市原ひかりアドリブは,ジャズメンの大好物=原曲のメロディ・ラインを必ず避けて通る。おいしい部分を決して崩そうとはしないのだ。
 そう。長々と奇をてらったアドリブをとるのは市原ひかりのスタイルではない。彼女は「どうすればトランペットで歌えるか」の大命題に命を削っている。作曲者を“欺く”無意味なアドリブなど一切なし。言わば原曲の魅力を引き出すためだけの“隠し味”程度のアドリブなのである。
 興味深いことに,この“歌重視”の市原ひかりのスタンスが,かえってジャズ・マニアを熱狂させている。そう。彼女のアドリブ・パートは少ない。しかしその短いアドリブに必然性を感じさせてくれるのだ。ここぞ,というパートでバッチリ決めてくれる! アドリブの量ではなく“質の高さ”に狂気するのである。

 『SARA SMILE』は,市原ひかり初の本格ジャズCD。NYの豪華なサイドメンに囲まれての演奏である。マイルス・デイビス同様,派手なブローは出てこない。音色としてはソフト&メロー系。「繊細に+しなやかに+優しく+柔らかく」=素の彼女そのままに?清らかな音色である。印象としてはクラシック的優等生の音であり,正直,ジャズトランペッターとしての個性は薄い。
 しかし,である。こう書くと矛盾しているように感じるかもしれないが『SARA SMILE』の何の変哲もないストレートなド・ジャズを聴くにつれ,彼女の存在感を強く感じる。“演奏の中心に”いつでも市原ひかりを感じてしまうのだ。

SARA SMILE-2 この感覚はマイルスのそれと良く似ている。たった一音を発する,ただそれだけのために全体を意のままに操り,自分の存在感を誇示し続けたマイルス・デイビス。そんなマイルスの“一撃必殺”の演奏スタイルと市原ひかりが“かぶって”聴こえる瞬間が何度もあった。
 そう。市原ひかりの本質は,ただのジャズトランペッターではない。トランペッターの枠を越えたトータルなジャズメンなのである。今後,彼女の成長と共に,マイルス同様,音楽表現の幅がぐっと広がってくることだろう。その時にどんな立ち回りを務めるのか?

 現在の市原ひかりの課題は,次々と沸き上がる表現衝動を具現化するテクニックであろう。既に最高度の歌心を身に着けているのだから,あとはそのアイディアを“鼻歌を歌うかのように”を自由自在に表現出来さえすれば…。
 そう。『SARA SMILE』のリーダーは市原ひかりであるが,残念ながらリード・トランペッタードミニク・ファリナッチである。ワンポイントだけでなく,ロングリリーフもこなせるようになった時,市原ひかりは“女性版”マイルス・デイビスの足跡を歩き始めることであろう。

  01. Cleopatra's Dream
  02. Fragile
  03. Blue Prelude
  04. It Could Happen To You
  05. I've Got It
  06. Sara Smile
  07. Golden Earrings
  08. Intro
  09. Close to You

(ポニー・キャニオン/LEAFAGE JAZZ 2006年発売/PCCY-60003)
(☆SACDハイブリッド盤仕様)
(ライナーノーツ/高木信哉)

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