CD批評:トニー・ウィリアムス

2008年03月07日

トニー・ウィリアムス・ライフタイム / エマージェンシー! / VASHKAR5


 『EMERGENCY!』の4曲目は【VASHKAR】(以下【ヴァシュカー】)。


 【ヴァシュカー】を聴くと「ライフライム」の“縦一列”のサッカー風バンド構成をイメージしてしまう。先頭で暴れまくるFWがジョン・マクラフリン,中央で“バンドの顔”に収まるMFがラリー・ヤング,そして超攻撃的GK=トニー・ウィリアムスの布陣である。

 ドラマティックなテーマの後,55秒から始まるジョン・マクラフリンのハイ・テクニックな“小刻み”アドリブで「リード・リズム・ギター」の妙を披露したかと思えば,4分3秒から4分6秒までのカッティング・フレーズで,時代の最先端を突っ走るジャズ・ギタリストとしての飛び抜けた実力が記録されている。

 【ヴァシュカー】の主役は間違いなくトニー・ウィリアムス! 【ヴァシュカー】でのトニー・ウィリアムスドラミングこそ,パラグアイの「伝説の」GK=チラベルトであろう。
 正確なポジショニング,優れた反射神経,判断力の良さ,積極的な飛び出しなど勇敢なプレーと卓越したリーダーシップでチームを統率するGKであったチラベルトは,守備より攻撃! PKやFKをビシビシ決めていく。
 トニー・ウィリアムスの手数足数の多さと一音一音の粒立ちの良さは奇跡と呼ぶしかない! 最後尾で“プッシュ&プッシュ”したかと思った次の瞬間に,FWを追い越しゴールまで決めてしまう。この“規格外で常識破り”なドラミングは奇跡としか表現のしようがない。トニー・ウィリアムスの天才ぶりが記録されている。

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

THE TONY WILLIAMS LIFETIME
TONY WILLIAMS : Drums, Vocal
JOHN MCLAUGHLIN : Guitar
LARRY YOUNG : Organ


2008年01月16日

トニー・ウィリアムス・ライフタイム / エマージェンシー! / WHERE4

アナログレコード

 『EMERGENCY!』の3曲目は【WHERE】(以下【ホエア】)。


 「どこへ行くの?」のフレーズで始まる【ホエア】こそ「ライフライムよ,どこへ行くの?」である。

 【ホエア】の前半は,ジョン・マクラフリンアドリブこそが聴き所! ジャズとロックをフレーズ毎に“行き来”しながら,誰も踏破したことがない最高到達点へと昇り詰める。この唯一無二なギター・ソロは,ジョン・マクラフリンが切り開いた“新次元な”音世界であろう。

 7分35秒からのトニー・ウィリアムスの大プッシュで一気に【ホエア】の景観が変化する。それまで“ラフ”に弾いていたラリー・ヤングオルガンが,突如ギター寄りに流れ出す!
 2:1となったトニー・ウィリアムスが,そうはさせじと2人を抑えにかかるのだが,ここでのトニーの戦略が素晴らしい! パワーや手数で圧倒しようとするではなく,まるで“メロディを奏でるかのごとく”颯爽と疾駆する!

 残念なのは「ライフライム」の完成度の低さ。“歌う”ドラマートニー・ウィリアムスのメッセージが,マクラフリンヤングの耳に届いたかどうか疑問が残る。
 “歌う”ドラマーを置き去りに,ギターオルガンアドリブで答えようとしている。ここはトニーと同じ言語=インタープレイに徹してほしかった。

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

THE TONY WILLIAMS LIFETIME
TONY WILLIAMS : Drums, Vocal
JOHN MCLAUGHLIN : Guitar
LARRY YOUNG : Organ


Emergency!
ランキングを見てみよう!

2007年10月23日

トニー・ウィリアムス・ライフタイム / エマージェンシー! / BEYOND GAMES3

アナログレコード

 『EMERGENCY!』の2曲目は【BEYOND GAMES】(以下【ビヨンド・ゲームズ】)。


 【ビヨンド・ゲームズ】こそ,1969年を代表する(大失敗)実験作。アーシーでモーダルなギターオルガンが鳴り響くなか,棒読みのトニー・ウィリアムスが“詩吟”を読んでいく。
 【ビヨンド・ゲームズ】という曲名の由来は,この不要で邪魔な言葉遊び? トニー・ウィリアムスの単調な語り口が,熱い演奏を止めてしまうほど,一気に場をシラケさせてしまう。

 “語り部”トニー・ウィリアムスが抜けた演奏には生気が回復している。特にこれと言った特徴のないテーマを3人の“抑揚”だけで,エキサイティングに聴かせてしまう“腕前”は流石である。
 とりわけトニー・ウィリアムスの自由奔放なドラミングは凄い。試しにドラムだけを耳で追いかけてみたが,これは何度聴いても飽きが来ない。名演であろう。

 七変化する名ドラミングに“詩吟”を加えたトニー・ウィリアムスの“八変化”であるが,あの「表情豊かなドラミング」をなぜ「無表情の詩吟」で破壊する必要があるのだろう。
 現代のジャズ・ラップを知ってしまったから余計に,失敗作と感じてしまうのかな? ジャズボイスとの新しい融合を目指す姿勢は評価しなければならないが,結果としては「時期尚早」。最悪のチャレンジとなってしまった。
 【ビヨンド・ゲームズ】は,今後も聴く機会は少ないだろうなぁ。情緒不安定になりそうで,どうしても好きになれません。

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

THE TONY WILLIAMS LIFETIME
TONY WILLIAMS : Drums, Vocal
JOHN MCLAUGHLIN : Guitar
LARRY YOUNG : Organ


Emergency!
ランキングを見てみよう!

2007年10月09日

トニー・ウィリアムス・ライフタイム / エマージェンシー! / EMERGENCY5

アナログレコード

 『EMERGENCY!』の1曲目は【EMERGENCY】(以下【エマージェンシー】)。


 【エマージェンシー】は,非常事態宣言&戒厳令発動中のような不穏なムードと空気感! テーマの響きが情緒不安定へと一気に誘う切れ味である。この重量感が,わずか3人のオルガン・トリオの演奏だとは信じ難い。今聴いても驚異的である。
 
 やっぱりトニー・ウィリアムスのド迫力・ドラミング! ドラムの強烈なプッシュを受けたギターオルガンが極上リズムに絡みつき,これまた“ぶっ飛んでいく”! 基本,トニー・ウィリアムスドラミングの変化に呼応した“アドリブ合戦”が延々繰り広げられている。壮絶な撃ち合いである!

 再度,やっぱりトニー・ウィリアムスのド迫力・ドラミング! イントロのドラム・ロールからわずか数秒でMAXに持っていく肩作りの早さはタイガース・藤川球児並み。そして4分38秒からの,ブレーキの効いた4ビートはレッドソックス・岡島秀樹並み。
 おっと脱線。真面目にジャズフュージョン…。7分後半からの連打は“爆撃機”と称されたデニス・チェンバースと張っている。

 ジョン・マクラフリンのノイジーなフレーズと実際のアンプ・ノイズも最高だし,ラリー・ヤングの控え目だが“ここぞ”という時のアドリブもいい。そう。【エマージェンシー】は「ライフライム」の3人がバンドとして一体となった瞬間のドキュメント!
 きっと読者の皆さんの背筋にも“稲妻”が走りますよっ。

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

THE TONY WILLIAMS LIFETIME
TONY WILLIAMS : Drums, Vocal
JOHN MCLAUGHLIN : Guitar
LARRY YOUNG : Organ


Emergency!
ランキングを見てみよう!

2007年10月07日

トニー・ウィリアムス・ライフタイム / エマージェンシー!4

アナログレコード

 大半のジャズフュージョン・ファンにとって,1969年=『BITCHES BREW』(以下『ビッチェズ・ブリュー』)であろう。そう。言わずと知れた「電化マイルス」の超大作である。
 しかし,ジャズフュージョン・ファンの10人に1人か2人は,1969年=『EMERGENCY!』(以下『エマージェンシー!』)と答える。そう。マイルス・デイビスが「正真正銘の天才」と認めたトニー・ウィリアムスが,そのマイルス・バンド独立直後に録音した「ライフタイム」の名盤である。

 そこで管理人の答えであるが,1969年=『ビッチェズ・ブリュー』&『エマージェンシー!』と答える! 禁じ手とお思いかもしれないが,管理人にとってこの2枚は,偶然ではなく「必然の組曲」! 「マイルス & トニー」が無意識のうちに作り上げた組曲! 一貫性&相互作用がある!
 そう。『ビッチェズ・ブリュー』&『エマージェンシー!』は,同じベクトルの延長線上にある。ジャズフュージョン界にとっての1969年とは「マイルス VS トニー」などではない。これはジャズロックとの戦いであった。そう。同じベクトルの延長線上にあるキーワード,それこそ「打倒!ジミヘン!」なのである。

 ジミヘンことジミー・ヘンドリックスとは“ご存知”ロック・ギタリストのカリスマ! 右利き用ストラトキャスターを逆さまに構えてのレフトハンド&歯で弾いたり,奇抜なファッションでギターに火を放つ姿など,その圧倒的パフォーマンスは余りにも有名。
 所謂,3大ギタリスト(エリック・クラプトン,ジェフ・ベック,ジミー・ペイジ)の一人ではない。それ以上である。エリック・クラプトンが「僕とジェフ・ベックが二人がかりでいっても,ジミにはかなわないだろう」と語ったことがあるように,3大ギタリストを越える“ギターの神様”なのである。
 そしてここが要点であるが,ジミヘンが真に越えたのは「1楽器としてのギターの壁」などではない。「ジャズとロックとの壁」をも越えて,新しいジャズ・ロックフュージョンの誕生に少なからず影響を及ぼしたことである。何と言っても“ジャズの帝王マイルス・デイビスをして「ジミヘンは自分がやりたい事を先にやった」と言わしめているのだから…。

 『ビッチェズ・ブリュー』&『エマージェンシー!』の両方に参加したギタリストジョン・マクラフリンは,録音時に「ジミ・ヘンドリックスのように弾くんだ」と指示されたと語っている。
 そう。マイルス・デイビストニー・ウィリアムスも自分のバンドで“仮想ジミヘン=ジョン・マクラフリン”との共演を望んだ。それが『ビッチェズ・ブリュー』であり『エマージェンシー!』の真実だと思っている。これが「必然の組曲」を語る所以である。

 さて,ここからは『エマージェンシー!』の個別批評
 「トニー・ウィリアムス・ライフタイム」とは“仮想ジミヘン=ジョン・マクラフリン”をメンバーに迎えた,天才ドラマートニー・ウィリアムスのバンドである。そう。あくまでも聴き所はトニー・ウィリアムスドラミングである。ここを押さえて聴いてほしい。

 エレクトリックアコースティックが“目まぐるしく移ろいゆく”のが「トニー・ウィリアムス・ライフタイム」の真骨頂! 「オルガン・トリオ」というジャズの伝統フォーマットでありながら,あくまでもロック・テイストを感じさせる秘訣こそ,トニー・ウィリアムスドラミングなのである。
 同じ8ビートを刻んでいるはずなのに“時に16ビートのような,時に4ビートのような”トラック毎に使い分けた“自由自在なドラミング”! これぞロック風アプローチにジャズ特有のアドリブが加わった“ジャズとロックの融合”フュージョンドラミングの完成形であろう。

 フュージョンが誕生した実り多き1969年。この『エマージェンシー!』の3ヶ月後に『ビッチェズ・ブリュー』が録音され,その同じ月にジミヘンが“伝説”と化した「ウッドストック」が開かれた。
 それまでマイルス・デイビスとジミ・ヘンドリックスに影響されてきた,天才ドラマートニー・ウィリアムスが“先陣を切って”偉大な2人に影響を及ぼしたのかもしれない。そう考えると…。

(1969年録音/POCJ-2538)

ランキングを見てみよう!

Blog times
CubeClock
livedoor プロフィール
記事検索
Jazz/Fusion Links
最新記事
Recent Comments
Archives
Categories
アンケートボード

★当ブログについて望むことは?

アルバム単位で批評してほしい
同じ曲をテイク別に批評してほしい
多くのジャズメンを幅広く批評してほしい
一人のジャズメンを掘り下げて批評してほしい
超有名曲をもらさず批評してほしい
発売直後の新作を批評してほしい
初心者を意識したほんわかサイトにしてほしい
マニアを意識したニッチなサイトにしてほしい
オーディオについて批評してほしい



-Mini Vote-