アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

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CD批評:スタン・ゲッツ

スタン・ゲッツ & ジョアン・ジルベルト / ゲッツ/ジルベルト / DESAFINADO


 『GETZ/GILBERTO FEATURING ANTONIO CARLOS JOBIM』の4曲目は【DESAFINADO】(以下【デサフィナード】)。


 アントニオ・カルロス・ジョビンの代表曲との誉れ高い【デサフィナード】は,やっぱり名曲であった。
 インパクトでは『ゲッツ/ジルベルト』収録の【イパネマの娘】や【コルコヴァード】【ソ・ダンソ・サンバ】にはかなわないが,ボサノヴァの魅力を“噛み締めたい”のなら【デサフィナード】であろう。

 【デサフィナード】の聴き所は,アントニオ・カルロス・ジョビンピアノジョアン・ジルベルトギターが産み出すボッサのリズムと,その上を“漂う”脱力系のサックスボーカルのマッチングにある。
 全員が無理なく思うがままに“心情表現”しているのだが,それをリードするのが名作曲家=アントニオ・カルロス・ジョビンのペンである。旅の目的地と行程を知らせるメロディ・ラインが,メンバー全員のハートをがっちり掴んで離さない。

 【デサフィナード】を真に名曲としたのは,ラスト,3分48秒でのスタン・ゲッツジョアン・ジルベルトがクロスした時点での即時フェード・アウト! あの最高の共演が長く続くと名曲ではなく名演となってしまう。
 マニアとしてはエンディングの続きを聴いてみたいものであるが,きっと聴かない方がいいに決まっている! あのエンディングがあってこその,アントニオ・カルロス・ジョビンの代表曲=【デサフィナード】である。

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

STAN GETZ : Tenor Sax
ANTONIO CARLOS JOBIM : Piano
JOAO GILBERTO : Guitar, Vocal
TOMMY WILLIAMS : Bass
MILTON BANANA : Drums
ASTRUD GILBERTO : Vocal

スタン・ゲッツ & ジョアン・ジルベルト / ゲッツ/ジルベルト / P'RA MACHUCAR MEU CORACAO5


 『GETZ/GILBERTO FEATURING ANTONIO CARLOS JOBIM』の3曲目は【P’RA MACHUCAR MEU CORACAO】(以下【プラ・マシュカー・メウ・コラソン】)。


 ジョアン・ジルベルトをして「ブラジル音楽史における傑出した存在」と言わしめた,アリ・バホーゾ作【プラ・マシュカー・メウ・コラソン】の「決定的名演」である。

 イントロから全編鳴り続けるジョアン・ジルベルトの“朴訥”のギターを軸に,ジルベルトの歌声とジョビンピアノインタープレイで“輪唱”している。
 そして主役はスタン・ゲッツ! 2分7秒からラスト近くまで続くテナー・ソロが,ムーディかつ悲しげに鳴り響く。ああ,今年の夏も【プラ・マシュカー・メウ・コラソン】と共に過ぎ去っていく…。

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STAN GETZ : Tenor Sax
ANTONIO CARLOS JOBIM : Piano
JOAO GILBERTO : Guitar, Vocal
TOMMY WILLIAMS : Bass
MILTON BANANA : Drums

スタン・ゲッツ & ジョアン・ジルベルト / ゲッツ/ジルベルト / DORALICE4


 『GETZ/GILBERTO FEATURING ANTONIO CARLOS JOBIM』の2曲目は【DORALICE】(以下【ドラリセ】)。


 『ゲッツ/ジルベルト』の中では人気薄の【ドラリセ】であるが,この地味さ加減がジャズ・ファンにはかえって大受けである。そう。管理人も多分に洩れず,スタン・ゲッツの“ジャズ・サンバ”を堪能したい時には,迷わず【ドラリセ】を選曲してしまう。

 1分25秒から1分強のアドリブが最高にスイングしている! スタン・ゲッツクール・テナーに,ミルトン・バナナジョアン・ジルベルトが創り出すボッサの“乾いた”リズムが“ほんのり”遠くで鳴り続ける。この“阿吽の”距離感がスタン・ゲッツをいつになく本気にさせている。

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STAN GETZ : Tenor Sax
ANTONIO CARLOS JOBIM : Piano
JOAO GILBERTO : Guitar, Vocal
TOMMY WILLIAMS : Bass
MILTON BANANA : Drums
ASTRUD GILBERTO : Vocal

スタン・ゲッツ & ジョアン・ジルベルト / ゲッツ/ジルベルト / THE GIRL FROM IPANEMA5

アナログレコード

 『GETZ/GILBERTO FEATURING ANTONIO CARLOS JOBIM』の1曲目は【THE GIRL FROM IPANEMA】(以下【イパネマの娘】)。


 「世界で最も多く演奏された楽曲ランキング・第5位!(1位から4位まではビートルズ)。
 「世界で最も多くのアーティストに録音された楽曲ランキング・第2位!(1位はビートルズの【イエスタディ】)。
 「世界で最も多くの回数ラジオでかかり,カヴァーされた楽曲」ランキング・堂々の第1位!
 それが永遠の名曲イパネマの娘】! そんな【イパネマの娘】ゆえ,語らねばならないスーパートリビアも多いのだが,ここはもう十分でしょう?

 「カヴァーNO.1」の【イパネマの娘】ゆえ『ゲッツ/ジルベルト』以外の名演も多いはずだが,やっぱり【イパネマの娘】と言えば『ゲッツ/ジルベルト』での名演で大決定! 『ゲッツ/ジルベルト』以外の演奏を思い浮かべる人の気が知れない…。

 ジョアン・ジルベルトアストラッド・ジルベルトスタン・ゲッツアントニオ・カルロス・ジョビンへのソロ回し全てが有機的結合のパーフェクト! 気負いが感じられない&ルンルンルン…。 

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STAN GETZ : Tenor Sax
ANTONIO CARLOS JOBIM : Piano
JOAO GILBERTO : Guitar, Vocal
TOMMY WILLIAMS : Bass
MILTON BANANA : Drums
ASTRUD GILBERTO : Vocal


ゲッツ/ジルベルト
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スタン・ゲッツ & ジョアン・ジルベルト / ゲッツ/ジルベルト5

アナログレコード

 アントニオ・カルロス・ジョビンジョアン・ジルベルトボサノヴァの「生みの親」であるならばスタン・ゲッツは「育ての親」! そして,この3人の奇才が奇跡の共演を果たした『GETZ/GILBERTO FEATURING ANTONIO CARLOS JOBIM』(以下『ゲッツ/ジルベルト』)こそ,ボサノヴァ界の「秘蔵っ子」であった。
 そう。『ゲッツ/ジルベルト』=ボサノヴァの将来を背負った広告塔! 『ゲッツ/ジルベルト』=「THIS IS BOSSA NOVA」! 『ゲッツ/ジルベルト』=元祖20世紀のワールド・ミュージック=ボサノヴァ“そのもの”であった。

 さて,ここまで読んで,不覚にもうなずいてしまったあなたは,もしや“ボサノヴァ好き”ではないのでは? 管理人の経験上“ツウ”たるもの,ボサノヴァの紹介として『ゲッツ/ジルベルト』を切り口として語られることを恐ろしく嫌う。ついつい過敏に反応して「だってスタン・ゲッツなんて,いてもいなくても関係ない。い〜や,スタン・ゲッツなんて邪魔なだけ。不要なのよ…」。

 そんな世界中の“ボサノヴァ好き”を敵に回したくはないのだがここで管理人からの宣言がある! 『ゲッツ/ジルベルト』は,アントニオ・カルロス・ジョビンでもジョアン・ジルベルトでもなく(ついでにアストラッド・ジルベルトでもなく)スタン・ゲッツ名義の名盤である。そう。『ゲッツ/ジルベルト』の真のリーダーはスタン・ゲッツスタン・ゲッツがこの世紀の大ヒット作&グラミー受賞作を牽引している。
 その証拠に『ゲッツ/ジルベルト』から,スタン・ゲッツ抜きの音を想像できますか? 管理人にはできません。
 これがアントニオ・カルロス・ジョビン抜き,またはジョアン・ジルベルト抜きなら,何となく想像できてしまうのだが…。

 ( 誤解のないように補足しておきます。上記宣言は『ゲッツ/ジルベルト』限定のお話。スタン・ゲッツの“手を離れた後の”ボサノヴァ界の発展は,アントニオ・カルロス・ジョビンジョアン・ジルベルトの両雄の“手塩”であるに違いありません。 )

 この良くも悪くもスタン・ゲッツの“圧倒的存在感”が,他のボサノヴァCDにはない『ゲッツ/ジルベルト』の強みでもあり,弱みでもある。
 そもそもボサノヴァの美学たるもの“余計なソロなど必要としない”メロディ・ラインの完成度の高さにあると思っている。それなのに,スタン・ゲッツが饒舌なアドリブを決めまくっている! 『ゲッツ/ジルベルト』で生じた状況を(ボサノヴァがブラジル音楽であるだけに)本場サッカーに例えてセルジオ越後風に解説するならば,ボサノヴァ本来のプレー・スタイルとは,組織重視のヨーロッパ・サッカーであるべきだ。個人技で局面を打開しようとする南米育ちのテクニシャンは,ジーコには好まれるかもしれないがトルシエには嫌われる。
 そう。スタン・ゲッツボサノヴァという“枠”からはみ出た異端児である。しかしどうだろう。世界の最先端と称されるオシム・サッカーが求めているのはスタン・ゲッツのようなストライカーなのでは? 最後の最後は“個人技の高さ”がものを言うのである。ただしここが諸刃の剣! ワンマン・プレーのスタン・ゲッツに批判の声が多いのも事実である。 

 管理人も『ゲッツ/ジルベルト』が,スタン・ゲッツの代表作などとは思っちゃいない。世評正しく,スタン・ゲッツは「クール・テナーの巨人」である。いいや,モダン・ジャズ史上「指折りのテナーマン」に違いない。しかしスタン・ゲッツを1枚聴こうと思うと,真っ先に『ゲッツ/ジルベルト』に手が伸びてしまう。
 なぜか? それはスタン・ゲッツクール・テナーは,気分で聴くのには向かない。少々敷居が高い音楽だからである。ここでは簡単に述べるが,本物のクール・ジャズとは難解な音楽である。演奏レベルが高いことはすぐにでも分かる。ただ,どこがどうレベルが高いかと問われると説明するのが小難しい。そう。雰囲気だけでは聴けない骨太のジャズ,自ずと敬遠し手が出しにくいジャズ,それがスタン・ゲッツクール・ジャズである。

 その点で『ゲッツ/ジルベルト』は都合がよい! スタン・ゲッツの天下一品のアドリブが1フレーズに,短時間に凝縮されている! まるでバルセロナのメッシのように,スーパーサブとして後半の勝負所で登場しては得点を決めていく! そう。スタン・ゲッツの演奏にしては珍しく,努力を払わなくとも(手っ取り早く)すがすがしい気分に浸ることができるのだ。正直,これはこれで素晴らしいことだと思っている。 

 無論,大名盤ゲッツ/ジルベルト』には,ボサノヴァ本来の魅力も満ちている。ナイロン弦・アコースティック・ギターバチーダと呼ばれる独特の奏法で“ささやくように”歌う,ジョアン・ジルベルトの弾き語りであるとか,天才作曲家=アントニオ・カルロス・ジョビンによる,美しさと意外性を併せ持つコード進行の妙であるとか,俗に言う“ヘタウマ”なアストラッド・ジルベルトの癒やしのボーカルだとか…。
 そう。人それぞれに感じる聴き方がある。ワンマン・プレーのスタン・ゲッツが,邪魔で不要で耳障りに感じる人もいると思う。でも“劇薬”スタン・ゲッツが加入して,初めて成立し確立されたボサノヴァが『ゲッツ/ジルベルト』。
 何度聴いても新鮮さを失わない。飽きない。極めて豊かな音楽性はスタン・ゲッツの“功績”に違いない,と固く信じている。

(1963年録音/UCGU-7031)

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