CD批評:上原 ひろみ

2008年03月28日

上原 ひろみ / ブレイン / KUNG-FU WORLD CHAMPION3


 『BRAIN』の1曲目は【KUNG−FU WORLD CHAMPION】(以下【カンフー・ワールド・チャンピオン】)。


 上原ひろみによる,ブルース・リーとジャッキー・チェンへのオマージュである【カンフー・ワールド・チャンピオン】は,愛用のシンセサイザー「ノードリード」を駆使した,テクノポップ・ジャズ
 このスピード感は,確かに【カンフー・ワールド・チャンピオン】にふさわしい。ただし惜しまれるのはアレンジである。

 【カンフー・ワールド・チャンピオン】が持つスピード感を“強調するためだけに”シンセを使用しているとしたら残念でならない。上原ひろみほどのテクニシャンであるならば,生ピアノ一台でも十分に緩急利かせた演奏ができるに違いないのに…。
 そう。敢えてシンセを使う意図が見えてこないのだ。管理人が『アナザー・マインド』で挫折した原因ともつながるが,どうも上原ひろみのエレクトリック・サウンドとは相性が良くない。何度聴いてもレーシング・ゲーム用のBGMに聴こえてしまう。大好きな上原さん,今回は辛口批評でごめんなさいねっ。 

 管理人同様,電化ひろみの挫折体験を持つ読者の皆さんに,老婆心で攻略法を一つ伝授しよう。
 【カンフー・ワールド・チャンピオン】は,6分22秒からの徐々にテンポ・アップするラストのワン・フレーズを繰り返し聴き込むべし。メロディ・ラインのツボを覚えてしまうと,レーシング・ゲームのBGMを越えた“カンフー・ワールド・チャンピオン”ゲームのBGMに変化する!?

 それにしても必死に上原ひろみに喰らいつく,超絶ベーシストアンソニー・ジャクソントニー・グレイの頑張りが素晴らしい。

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

HIROMI UEHARA : Piano, Keyboards
TONY GREY : Bass
MARTIN VALIHORA : Drums


2007年11月06日

上原 ひろみ / ブレイン / GREEN TEA FARM5

アナログレコード

 『BRAIN』の6曲目は【GREEN TEA FARM】(以下【グリーン・ティー・ファーム】)。


 【グリーン・ティー・ファーム】を,作曲し演奏した上原ひろみを「いとおしく」思う。一体,彼女はどんな気持ちでこのトラックを吹き込んだのだろう。何を思い浮かべながら…。泣いちゃったのかなぁ。辛いことがあったのかなぁ。
 録音スタジオから帰宅した彼女を,理由を何も聞かずに,ただ優しく“そっと抱きしめてあげたい”と思った。全てを受け止めてあげたいと思った。

 【グリーン・ティー・ファーム】のモチーフは,上原ひろみの実家=お茶の産地=静岡・浜松。上原ひろみが,ふるさとの良さ,家族のありがたさを噛みしめながら弾いている。きっとお茶畑とたくさんの家族愛に囲まれて成長したのだろう。
 懐かしいふるさとへの想いの全てが,3分7秒のピアノ・タッチの瞬間に凝縮されているように思う。このピアノ・タッチは,押しつけの重く感じる愛情表現ではなく,利他的な感謝の念に溢れている。しみじみと聴き入ってしまう。

 恐らく上原ひろみの作品では初めてであろう,自作曲以外のフレーズが飛び出す。そう。ラストの1フレーズ。4分6秒から「夏も近づく八十八夜♪」。【茶摘み】である。“あの”上原ひろみが,である。郷愁を誘う。感動してしまう。名曲である。

 【グリーン・ティー・ファーム】を聴いていると「心が暖かくなる」「心が満たされる」自分を感じ取れる。たまには実家に電話してみようかな…。

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

HIROMI UEHARA : Piano, Keyboards


ブレイン
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2007年09月07日

上原 ひろみ / ブレイン / IF…5

アナログレコード

 『BRAIN』の2曲目は【IF…】(以下【イフ…】)。


 【イフ…】は“涙ちょちょぎれる”ほどに,ドラマチックでセンチメンタル! いつまでも深〜く印象に残る感動の名曲である。

 イントロと同時に7回鳴り続けるマーティン・ヴァリホラドラミングが耳に残る。バックで“優しく語りかける”上原ひろみピアノとの見事なデュエット! リズムをキープしながらもドラムが歌っている。うわぁ〜。

 38秒と1分2秒で鳴り始める「透明感ある音色」。この音はピアノ? キーボード? 話は逸れるが,映像で見る上原ひろみの指先って,メッチャ綺麗! 手モデルならぬ“指モデル”NO.1!
 あの指先の美しさが「透明感ある音色」に現われている。心からそう思っている。ここが管理人の“いけない”妄想癖である。

 さて【イフ…】のハイライトも,管理人のもう一つの妄想話と重なるのであるが,まずは24秒から30秒までと,48秒から52秒までのピアノを聴き比べてほしい。後者では“揺らぐ”テーマ部が聴こえてくる。
 何となく「天才」つながりで,上原ひろみ=宇多田ヒカルと被ってしまう存在なのだが,有名な宇多田ヒカルの「1/Fの揺らぎ」とは,実はこの部分のことなのでは?
 …と自分勝手に理解しています。根拠などありませぬが,話のネタにでもどうぞ。

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

HIROMI UEHARA : Piano, Keyboards
ANTHONY JACKSON : Bass
MARTIN VALIHORA : Drums


ブレイン
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2007年09月05日

上原 ひろみ / ブレイン5

アナログレコード

 今月一日,上原ひろみさんがご結婚されました。おめでとうございます。心からお祝い申し上げます。
 “隠れ”上原ひろみファンとしては,いささかショックではありますが,本命ではなかったので…。なんてねっ。(強がっているのか,オレ)

 それで今回は管理人からの祝電として,上原ひろみの絶賛レビューをお届けしようと思います。
 あっ,先に断わっておきますが,ご祝儀でのリップサービスではありません。本音で語っても,上原ひろみの「元気がでるピアノ」が好きなんです。ただし“好き”と言えるようになるまでには紆余曲折がありました。
 まずはその辺の“揺れる”ファン心理から書き綴ってみようと思います。心情を吐露することで気持ちの整理を…。なんてねっ。

 さて,上原ひろみJ−ジャズ界の“時の人”として,ちまたで騒がれ始めてもう4年になるが,上記,結婚報道を目にしたのは,あの「ヤフー・ニュース」のTOP記事! もはや一ジャズ・ピアニストの域を超えてしまっている。いやあ,真にビッグになったものである。

 4年前の上原ひろみの大ブレイクは“正統派”ジャズ・ファンの間で物議を醸し出したものだ。当時の管理人と言えば,こちらもこれまた大ブレイク中のアキコ・グレースに肩入れしていたこともあり,アンチ上原ひろみ派に所属していた。
 デビューCDアナザー・マインド』を評して「これはジャズではない。前衛だ。プログレだ」とバッサリやっていたものだ。上原ひろみピアノ発する「非ジャズ的」な音造りが,おもしろくなかった。嫌いだった。不快に聴こえた。
 嘘ではなく,実際にCDラックで“お蔵入り”。上原ひろみと完全に「決別」するつもりで批評していた。未来永劫,二度と聴くつもりもなかった。

 ただし,このアンチ上原活動の本当の理由は(自分でも気付いていたのだが)アキコ・グレースを守るための本能! 追いかけてくる上原ひろみに「天才」「本物」だけが持つ“怖さ”を感じ取っていたからなのだと思う。“良くも悪くも”ピアノで自己主張してくる。訴えかけてくる。表情豊かな「表現者」の音世界に恐れをなしていた。
 そしてその脅威が管理人の中で現実のものとなった。きっかけはFMラジオ! 二度と聴くまい,と決めていた管理人の耳が奪われた。『BRAIN』(以下『ブレイン』)の特集だった。

 『ブレイン』で感じた“瑞々しさ”。これぞ従来のジャズの「殻」を打ち破って出現した,新時代のジャズ・ピアノ! ジャズの伝統フレーズを聴かせてくれたと感じた次の瞬間に,前言を撤回させられてしまう。そう。異次元の音世界。これが真にジャズ・ピアノの「再創造」なのだと思う。
 『ブレイン』からは,上原ひろみのチャレンジ精神がほとばしっている! ただしその圧倒的パワー,エネルギーは“内へ内へ”と向かっている。繰り返し聴き込むリスナーだけが,一歩一歩“ベールを剥がすかのごとく”核心部分に迫ることができる。ついに上原ひろみの“熱狂”と対面できる。

 これが“あの”上原ひろみなのか? 素晴らしい。前衛などではなかった。クリエイティブな王道ジャズ・ピアノ! 一人ラジオの前で“手を叩いて”絶賛してしまった。これぞ大傑作!
 もう抵抗する力など残っていなかった。あの圧倒的な音力に,変な意地を張っていた自分が途端にアホらしく思えた。管理人の中で何かが崩れ去った。上原ひろみ“開眼”の瞬間であった。どちらも応援しよう。いや,これからは上原ひろみを応援しよう。

 こうして強引?に(ただし自らの意志で)アンチ→熱烈ファンへと変貌させられたわけであるが,アンチの頃の後遺症が残っている。管理人の中で上原ひろみへの「好き」は,アキコ・グレースへの「好き」とは趣きが異なっている。アキコ・グレースへの好きは「LOVE」であり,上原ひろみへの好きは「LIKE」であり「INTERESTING」なのである。
 そう。上原ひろみは「好き」と言うより「凄い!」と言うピアニスト。ニュアンス的には(単なる偶然だと思うが)上原ひろみと関係の深いチック・コリアの延長線上にある。
 チック・コリアも正直「好き」というよりは「気になる」ピアニストである。小学生時代の恋心よろしく,気になる気になるは「好き」の裏返しなのだと思う。
 これからも上原ひろみを毎晩聴くことはないだろうが,新作が出る度に買いたくなる,妙に気になり買わずにはいられない,ジャズメンの一人となるに違いない。うん。結婚されても応援しますよ。旦那さんとはもちろんのこと,管理人とも末永いお付き合いをお願いしますね。今でも愛しのひろみ嬢…。

(2003年録音/UCCT-1090)

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