アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

CD批評:上原 ひろみ

上原 ひろみ×エドマール・カスタネーダ / ライヴ・イン・モントリオール5

LIVE IN MONTREAL-1 ちょっとした予備知識はあったのだが『LIVE IN MONTREAL』(以下『ライヴ・イン・モントリオール』)を初めて聴いて「あれっ,これってデュエットではなくバンドだったんだ」と思ってしまった。

 実は管理人と同じような経験をした上原ひろみ・ファンは多いのではないだろうか? 素直に『ライヴ・イン・モントリオール』を「音から入る」と,エドマール・カスタネーダハーブの他に,ギタリストとのベーシストが参加しているように聴こえてしまう。

 こんな体験が出来るのが『ライヴ・イン・モントリオール』の醍醐味である。南米のハーブ奏者=エドマール・カスタネーダ名演に何度驚かされてしまったことだろう。
 そうして,そんなエドマール・カスタネーダと新しい音楽を創造する喜びを感じている上原ひろみがこれまた凄い! 『ライヴ・イン・モントリオール』の大胆にして細やかな丁々発止は,まさしく新鮮にして超ジャンルな広がりと甚大な訴求力を持っている!

 そう。上原ひろみとしては,音の響きが珍しい。ピアノハーブとのデュエットにチャレンジしたというよりは,エドマール・カスタネーダというジャズマンとのデュエットにチャレンジしたのだと思う。

 エドマール・カスタネーダの“超絶技巧”の音楽性,リズムの取り方も個性的だし,アドリブやハーモニーの付け方が真に素晴らしい。上原ひろみエドマール・カスタネーダにメロメロになったのはこの部分なんだろうなぁ。管理人も上原ひろみ同様にメロメロになってしまいましたとさっ。

LIVE IN MONTREAL-2 過去にチック・コリア矢野顕子との(近年はタップダンスの熊谷和徳とも)名盤を残したデュエットの名手=上原ひろみ

 しかし,エドマール・カスタネーダとのデュエットは,過去の3枚のデュエット作とはテイストが異なる。
 ズバリ『ライヴ・イン・モントリオール』における,上原ひろみエドマール・カスタネーダデュエットの真髄は「同時代バイブレーション」にある。

 これまでは,どうしても敬愛の気持ちが溢れたデュエットであって「追いつけ追い越せ」の上原ひろみと「私だって,ほら,ここまでできるんですよ」的な上原ひろみの“ミテミテ病”が入っていたように思う。

 その意味では「胸を借りる」ではなく「胸を貸す」立場になって初めてのデュエットである『ライヴ・イン・モントリオール』における上原ひろみの変化は,相手の一挙手一投足をこれまで以上に観察していること。つまりはリターンを得意とする上原ひろみの新カットマン・スタイル。

LIVE IN MONTREAL-3 自分自身が前に出るだけではなく,エドマール・カスタネーダを前に押し出す意識が,これまでのデュエット・アルバムの何倍も強い。

 そう。『ライヴ・イン・モントリオール』はデュエット・アルバムのお手本のようなアルバムである。
 あっ,上原ひろみのお師匠さん=チック・コリアにもゲイリー・バートンとのデュエット・アルバムのお手本のようなアルバムがありましたねっ。

PS 「LIVE IN MONTREAL-3」は販促用のボールペンです。

  CD
  01. HARP IN NEW YORK
  02. FOR JACO
  03. MOONLIGHT SUNSHINE
  04. CANTINA BAND
    THE ELEMENTS
  05. AIR
  06. EARTH
  07. WATER
  08. FIRE
  09. LIBERTANGO

  DVD
  01. THE ELEMENTS "FIRE" - LIVE CLIP
  02. HAZE - LIVE CLIP
  03. CANADIAN TOUR DOCUMENTARY AND INTERVIEWS

(テラーク/TELARC 2017年発売/UCCO-8018)
★【初回限定盤】 SHM−CD+DVD
★スリーヴ・ケース仕様
★8Pブックレット

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上原 ひろみ / SPARK4

SPARK-1 『SPARK』は『ALIVE』の続編である。つまり『SPARK』は,上原ひろみの「等身大の魅力」と「普通っぽさ」を感じる,新たなるスロー路線の新作である。

 上原ひろみピアノアンソニー・ジャクソンベースサイモン・フィリップスドラムで組んだ,上原ひろみの2代目ピアノ・トリオも『SPARK』で4作目を数える。
 正直,4作目は不要だったかな。「ザ・トリオ・プロジェクト」も賞味期限切れなのかな。次作で綻びが出る前に『SPARK』で幕引きとしてほしいな。

 そう。『SPARK』に,上原ひろみの代名詞“衝撃”を感じない。確かに「人間技を超えた」凄い演奏の連続なのだが『VOICE』『MOVE』を聴きまくった耳からすると「あれっ,この展開って,確か以前にも」と思ってしまうマンネリズムが襲ってくるのだ。

 ゆえに『SPARK』のハイライトは,過去3作を越えてやろう,と意気込んだ超絶プログレ系ではなく,肩の力の抜けたスローなJAZZY系に偏っている。
 感じたことを素直に音で会話している。分かりやすさとか平易さという部分を非常に重視した演奏に“成熟”というか「妙な安心感」を抱いてしまったりして…。
 これって『ALIVE』の聴き疲れなのか?

 安定志向の『SPARK』において「ザ・トリオ・プロジェクト」での“チェンジ”は,サイモン・フィリップスドラムである。これってピアノ・トリオと呼ぶよりもドラムトリオと呼ぶべき音楽であろう。

 あの上原ひろみサイモン・フィリップスの“受け”に回っている。ドラムを聴かせるためのグルーヴィーピアノを弾いている。
 しかし,そんなサイモン・フィリップスの“シゴキ”に耐えた上原ひろみの,更なる才能の開花が【WAKE UP AND DREAM】におけるソロ・ピアノ

 【WAKE UP AND DREAM】における,ピアニッシモとフォルテッシモを駆使した「艶やかな表現力」に,サイモン・フィリップスによる“特訓”の成果が表われている。
 人生の起伏や流れを載せた壮大な時の流れを紡いでいくような美メロが「煌びやかな夢」をイメージさせてくれる。こんなソロ・ピアノを弾けるのは,世界中で上原ひろみだけであろう。

SPARK-2 ズバリ「ザ・トリオ・プロジェクト」は“ジャズ・ピアニスト上原ひろみにとっての「虎の穴」である。
 その意味では「ザ・トリオ・プロジェクト」で,まだまだもがくつもりなのか? そうであれば5作目もありだが,そうでなければ修業は『SPARK』で終了でよいと思う。

 『SPARK』は,プログレッシブ・ジャズの世界で“一時代を築き上げた”上原ひろみアンソニー・ジャクソンサイモン・フィリップスの“置き土産”として,今後数年かけて楽しもうと思っている。

 その意味で『SPARK』のジャパン・ツアーはプライナ・チケットになる予感。上原ひろみアンソニー・ジャクソンサイモン・フィリップスによるプログレッシブ・ジャズの見納めとなるかも?

 来るべきラストライブの予習として『SPARK』の「特典DVD」を見ていると「絶対に終わらないでくれ〜。マンネリでも終わらないでくれ〜。悪い予感よ,ハズレてくれ〜」と懺悔したくなりました。

    CD
  01. SPARK
  02. IN A TRANCE
  03. TAKE ME AWAY
  04. WONDERLAND
  05. INDULGENCE
  06. DILEMMA
  07. WHAT WILL BE, WILL BE
  08. WAKE UP AND DREAM
  09. ALL'S WELL

    DVD
  01. SPARK
  02. WANDERER
  03. ALIVE

(テラーク/TELARC 2016年発売/UCCO-9998)
(☆直輸入盤仕様 ライナーノーツ/上原ひろみ,川口美穂)
★【初回限定盤】 SHM−CD+DVD
★豪華スリップ・ケース仕様
★8P別冊ブックレット

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上原 ひろみ / ALIVE4

ALIVE-1 管理人にとって上原ひろみは,真のアーティストであり,ラーメンを食べること以外は音楽に人生の全てを捧げる,常人を超えた“雲の上の人”。
 だから上原ひろみのアルバムはいつでも「とっつきにくい」。トリッキーで芸術的なアクロバティック・ミュージックなのだから,リスナーとしては毎回,時間をかけてとことん攻略するのみなのだ。

 そんな勝手に“戦闘モード”で聴き始めた『ALIVE』に「エエッ」。
 『ALIVE』には,いつもとは逆の意味で驚かされた。上原ひろみの「普段着」というか「等身大の魅力」を『ALIVE』で初めて感じることができたのだ。

 『ALIVE』の一発目【ALIVE】で聴こえる,16分の27拍子(← すみません。こんなの聞き取れるわけありません。??秦のインタビュー記事からの情報です)の「ザ・トリオ・プロジェクト史上最難曲」の超・変拍子が流れた時は,キターッ!って感じだったのに,アルバムが進行するにつれ,身体に馴染んでくるヌーディー・ジーンズを穿いている感覚が芽生えてくる?

 うん。相変わらず「ザ・トリオ・プロジェクト」が超・超カッコイイ。上原ひろみピアノアンソニー・ジャクソンベースサイモン・フィリップスドラム。個々のレベルを超越した「ザ・トリオ・プロジェクト」としての成熟が一段と進んでいることが感じられる名演である。

 『ALIVE』の真実とは『A・LIVE』。『ALIVE』から,強烈なLIVE感と音楽の持つ生命力が伝わってくる。
 「ザ・トリオ・プロジェクト」の3人だからこそ産み落とせる,豊かなGROOVEの波に身を委ねる至福。誰にとっても懐かしい普遍的な場所に連れていかれる感覚の至福。

 超絶を感じさせない位のハイ・レベルでの楽曲理解の共有化で,とにかく音が柔らかくなった。事実,上原ひろみのクレジットから史上初めて「キーボード」の文字が消えている!

 しかし『ALIVE』に関しては,そんなことはどうでもいい。音楽制作のプロセスなど抜きにして,完成品を「ドドドのドーン!」。
 年に1枚のペースで新作を作り続けてきた上原ひろみが『ALIVE』の制作に2年も費やした理由に納得なのです。

 そうなんです。『ALIVE批評は“擬音”なのです。『ALIVE』を言葉で表現するのは“ヤボ”なのです。
 6曲目の後半から7曲目,8曲目と続くスローな流れがジャストであり,1曲目から6曲目前半の超絶系を凌駕しているのです。

ALIVE-2 『ALIVE』は「ザ・トリオ・プロジェクト」の3枚目。
 上原ひろみにとってのキース・ジャレットで例えればアメリカンカルテットの『残氓』的な『SPIRAL』が3枚目。
 きっと「ザ・トリオ・プロジェクト」もアルバム3枚で解散すると管理人は勝手に思っていた。

 『ALIVE』から始まった?上原ひろみの新たなるスロー路線。『ALIVE』の「普通っぽさ」を感じる限り「次もまたある」と勝手に解釈してしまった。
 いいや「普通っぽく」聴こえることこそ「ザ・トリオ・プロジェクト」最大の成果なのである。

  01. ALIVE
  02. WANDERER
  03. DREAMER
  04. SEEKER
  05. PLAYER
  06. WARRIOR
  07. FIREFLY
  08. SPIRIT
  09. LIFE GOES ON

(テラーク/TELARC 2014年発売/UCCT-9029)
(☆直輸入盤仕様 ライナーノーツ/上原ひろみ,川口美穂)
★【初回限定盤】 SHM−CD+DVD
★ボーナスDVD:【ファイヤーフライ】ライヴ映像+【スピリット】ライヴ映像+メンバー・インタビュー&レコーディング・メイキング映像収録
★豪華スリップ・ケース仕様
★8Pブックレット

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上原 ひろみ / ビヨンド・スタンダード〜ツアー・エディション4

BEYOND STANDARD -TOUR EDITION-1 『BEYOND STANDARD〜TOUR EDITION』(以下『ビヨンド・スタンダード〜ツアー・エディション』)は『ビヨンド・スタンダード』のマニア盤!

 『ビヨンド・スタンダード〜ツアー・エディション』の売り=DVD盤=上原ひろみの溢れ出る才能を“ライヴ映像”でも堪能可。
 【朝日の如くさわやかに 】におけるライブ・パフォーマンスは実に感動的である。

 CD盤『ビヨンド・スタンダード』を聴き終えて感じる確かな手応えが,今の今まで持続する。こんなに深い音楽表現ができるとは,やはり上原ひろみは“掛け値なしの天才”である。

BEYOND STANDARD -TOUR EDITION-2 『ビヨンド・スタンダード』は,上原ひろみ初のカヴァー・アルバム。テーマはズバリ,ジャズスタンダード
 ついに待望の「正統派ジャズ・アルバム」の発表か?と期待したのだが…。

 フュージョン大好き管理人をしても,ここまでフュージョン寄りだと,逆にガッカリ。
 『ビヨンド・スタンダード』は,一見ジャズ寄りに思えるが『ビヨンド・スタンダード』の真実は,上原ひろみの全ディスコグラフィの中で“一番ジャズから遠い”アルバムである。

BEYOND STANDARD -TOUR EDITION-3 管理人の結論。『ビヨンド・スタンダード批評

 ジャズスタンダードへのアプローチ,アレンジもアドリブも超一流ではあるが,上原ひろみオリジナルに限る!
 もっとも「HIROMI’S SONICBLOOM」演奏力は素晴らしいです。完全にバンド・サウンドに仕上がりました。デヴィッド・フュージンスキー以上にトニー・グレイの6弦ベースがフィーチャリングされています。

  01. INTRO: SOFTLY AS IN A MORNING SUNRISE
  02. SOFTLY AS IN A MORNING SUNRISE
  03. CLAIR DE LUNE
  04. CARAVAN
  05. UE WO MUITE ARUKO
  06. MY FAVORITE THINGS
  07. LED BOOTS
  08. XYG
  09. I'VE GOT RHYTHM
  10. RETURN OF KUNG-FU WORLD CHAMPION

(テラーク/TELARC 2008年発売/UCCT-9009)
(☆直輸入盤仕様 ライナーノーツ/神館和典)
★【初回限定盤】 CD+DVD
★ボーナスDVD:【XYG】【朝日の如くさわやかに】のライヴ映像収録
★豪華スリップ・ケース仕様
★8Pブックレット
★第50回日本レコード大賞【優秀アルバム賞】受賞
★2008年度ジャズ・ディスク大賞【金賞】受賞
★2008年度日本ゴールドディスク大賞【ジャズ・アルバム・オブ・ザ・イヤー】受賞

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上原 ひろみ / MOVE4

MOVE-1 上原ひろみの『MOVE』を購入後の1年間,事あるごとに聴き通してきた。悔しいことに『MOVE批評がまとまらなかったからだ。

 『MOVE』は決して難解なアルバムではない。懐が深いのは『VOICE』の方である。『MOVE』はどちらかと言えば浅い。
 『MOVE』には上原ひろみのやりたいことが手で掬えるかのように浮かび上がって見えている。しかし,掬えそうでどうしても掬えない。

 金魚を掬うために投入した水を含んだ「ふ」のような感覚…。何だろう『MOVE』のこの独特の感覚…。
 ある日には芸術音楽の頂点でもあるかのようにスケール豊かに聴こえるのだけれども,次の日には煮詰まった過去の音楽のようにしか聴こえない…。予定調和でないのは分かるが,はみ出し具合が予定調和の範疇か否か…。

 大袈裟ではなく,今や世界広しと言えど,こんなにも“超カッコイイ”演奏が出来るのは「上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト フィーチャリング・アンソニー・ジャクソン & サイモン・フィリップス」だけだと思う。
 レベルがズバ抜けている。上原ひろみピアノアンソニー・ジャクソンベースサイモン・フィリップスドラム。個々のレベルを超越した「ザ・トリオ・プロジェクト」としての成熟である。
 上原ひろみ有する“カリスマ”のリーダーシップの全てが上手く行っている。3人の関係性が育っている。でも,しかし…。

 しかし,感動が持続しないのだ。『MOVE』を聴いている瞬間。それはもう感動の嵐。だけどふと日常に戻ると現実と『MOVE』がリンクしない。
 キース・ジャレットパット・メセニーが代表する管理人の“フェイバリットジャズフュージョンにそんなことはない。CDプレイヤーの再生ボタンを停止した後も「感動の音楽」が頭の中で鳴り続ける。音楽が現実とリンクする。

 『VOICE』はそんな愛聴盤だった。でも『MOVE』は違う。感動が鳴り続けないのだ。感動がブツ切りなのだ。
 だから『MOVE』に「リアリティ」を感じない。上原ひろみに「会いに行けるアイドル」を感じないのだ?

 なんてことを書いているのだろう。明日にはこれと真逆のことを書く可能性を秘めていることを承知しているはずなのに…。
 うん。もういいのだ。ここ数週間で評価が固定されてきた。『MOVE』は残念ながら星4つ。評価を徐々に落としてきた。スルメ盤になると希望して聴き込んできたが,結果『MOVE』は聴き始めて1週間後が一番良かったのかも…。

MOVE-2 管理人の結論。『MOVE批評

 『MOVE』に『TIME CONTROL』を感じた日は駄盤であり『MOVE』に『VOICE』を感じた日は最高傑作!

 個人的な1年間の統計によれば『MOVE』に『VOICE』を感じるかどうかは,キラー・チューンの【MOVE】【BRAND NEW DAY】【FANTASY】【MARGARITA!】ではなく【ENDEVOR】と【IN BETWEEN】のサビ部分。

 そう。「働く。人は生きるために働くのか,働くために生きるのか」「幻想と現実のはざまに揺れ,惑いながら,生きる」の術。

 読者の皆さんに1年間かけて導き出した感想を“象形文字”でお答えいたしました。上記“象形文字”でご納得いただけなければそれまでです。

  01. MOVE
  02. BRAND NEW DAY
  03. ENDEAVOR
  04. RAINMAKER
     SUITE ESCAPISM
  05. REALITY
  06. FANTASY
  07. IN BETWEEN
  08. MARGARITA!
  09. 11:49 PM

(テラーク/TELARC 2012年発売/UCCT-9027)
(☆直輸入盤仕様 ライナーノーツ/上原ひろみ,川口美穂)
★【初回限定盤】 SHM−CD+DVD
★ボーナスDVD:各メンバーのインタビュー映像【MOVE−INSIDE THE RECORDING SESSION】+【HAZE】ライヴ映像収録
★豪華スリップ・ケース仕様
★8Pブックレット

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上原 ひろみ / タイム・コントロール4

TIME CONTROL-1 上原ひろみは,チック・コリアの後継者である。
 音楽性もそうであろうが,自分の内に湧き上がるアイディアを抑えきることができない“チック・コリアな”ジャズメンである。

 『SPIRAL』で“行き着くところまで行ってしまった”トニー・グレイマーティン・ヴァリホラとによるピアノ・トリオを『TIME CONTROL』(以下『タイム・コントロール』)で,そして「HIROMI’S SONICBLOOM」で,トドメのデヴィッド・フュージンスキーで実に見事に解体した!
 そう。上原ひろみにとってジャズとはチャレンジなのである。

TIME CONTROL-2 「時間」がテーマの『タイム・コントロール』は,コンセプトCDらしい“楽曲のまとまり”が感じられる。

 上原ひろみの「時をかけるピアノ」に導かれる,74分間のタイムトラヴェルが心地良いのだが,自然と頭の中でチック・コリアが流れ出す。「銀河シリーズ」の時期の「リターン・トゥ・フォーエヴァー」である。
 デヴィッド・フュージンスキーアル・ディメオラを想起する。

  01. Time Difference
  02. Time Out
  03. Time Travel
  04. Deep into the Night
  05. Real Clock vs. Body Clock = Jet Lag
  06. Time and Space
  07. Time Control, or Controlled by Time
  08. Time Flies
  09. Time's Up
  10. Note from the Past

(テラーク/TELARC 2007年発売/UCCT-1181)
(☆直輸入盤仕様 ライナーノーツ/上原ひろみ,内本順一)
★豪華スリップ・ケース仕様
★8Pブックレット
★スイングジャーナル誌選定【ゴールドディスク】
★第20回日本ミュージックペンクラブ【ポピュラー部門/作品賞】受賞

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上原 ひろみ / スパイラル〜ツアー・エディション

SPIRAL -TOUR EDITION-1 『SPIRAL〜TOUR EDITION』(以下『スパイラル〜ツアー・エディション』)は,名盤スパイラル』のマニア盤!

 『スパイラル〜ツアー・エディション』の売り=DVD盤=上原ひろみの溢れ出る才能を“ライヴ映像”でも堪能可。
 【古城,川のほとり,深い森の中】におけるライブ・パフォーマンスは実に感動的である。

 CD盤『スパイラル』を聴き終えて感じる確かな手応えが,今の今まで持続する。こんなに深い音楽表現ができるとは,やはり上原ひろみは“掛け値なしの天才”である。

SPIRAL -TOUR EDITION-2 上原ひろみも確かな手応えを感じたのであろう。『スパイラル』でピアノ・トリオ・フォーマットは一旦終了。次なる「HIROMI’S SONICBLOOM」で更なる高みを目指すことになる。

 もう一作くらい,トニー・グレイマーティン・ヴァリホラとによるピアノ・トリオを聴いてみたい気もするが,何度チャレンジしても『スパイラル』以上の快作は制作できないのでは?

SPIRAL -TOUR EDITION-3 あっ,管理人は『スパイラル』よりも『ブレイン』が好きなのですが…。

 さぁ,読者の皆さんもご一緒に。せ〜の。『ブレイン』よりも“均整の取れた”『スパイラル』で「HIROMI SPIRAL」!

  01. Spiral
   Music for Three-Piece-Orchestra
  02. Open Door - Tuning - Prologue
  03. Deja Vu
  04. Reverse
  05. Edge
  06. Old Castle, by the river, in the middle of a forest
  07. Love and Laughter
  08. Return of Kung-Fu World Champion
  09. Big Chill

(テラーク/TELARC 2005年発売/UCCT-9004)
(☆直輸入盤仕様 ライナーノーツ/上原ひろみ,神館和典)
★【初回限定盤】 CD+DVD
★ボーナスDVD:【古城,川のほとり,深い森の中】【ラヴ・アンド・ラフター】のライヴ映像収録
★豪華スリップ・ケース仕様
★8Pブックレット
★スイングジャーナル誌選定【ゴールドディスク】
★2005年度ジャズ・ディスク大賞【日本ジャズ賞】受賞
★2005年度読者人気投票【ジャズマン・オブ・ザ・イヤー】受賞
★2005年度読者人気投票【アルバム・オブ・ザ・イヤー】受賞
★2005年度読者人気投票【ピアノ・オブ・ザ・イヤー】受賞

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上原 ひろみ / ヴォイス5

VOICE-1 上原ひろみが再び始めたニューピアノ・トリオ
 ベーストニー・グレイドラムマーティン・ヴァリホラと組んだピアノ・トリオは行き着くとこまで行き着いた。それゆえの解散に残念ではあったが納得できた。
 キース・ジャレットが“あの”アメリカン・カルテットを惜しげもなく解散させた時のように…。

 だから上原ひろみが再び違うメンバーでピアノ・トリオを始めたことに驚いたりはしない。ただし,このベーシストドラマーである。上原ひろみの人選に“ニヤリ”としたものだ。
 ベースアンソニー・ジャクソンドラムサイモン・フィリップス。そう。ジャズフュージョン・シーンの“スーパー・セッションベーシスト”と,現代のハイテクニック・ドラマーの憧れ“手数王”であった。

 管理人はてっきり,2011年型の新ピアノ・トリオは,超大物に「胸を借りるつもりで」始めたものと思っていた。
 トニー・グレイマーティン・ヴァリホラとの「二等辺三角形」なピアノ・トリオアゲインにならないための楔として「正三角形」のピアノ・トリオを目指しての超大物の起用だと思っていた。
 なんてったって上原ひろみの新ピアノ・トリオの名称は「THE TRIO PROJECT」であり,別名「FEATURING ANTHONY JACKSON AND SIMON PHILLIPS」を名乗っているのだから…。

 「上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト フィーチャリング・アンソニー・ジャクソン & サイモン・フィリップス」のデビューCD=『VOICE』(以下『ヴォイス』)を聴くまでは…。

 「THE TRIO PROJECT」における上原ひろみの“はしゃぎっぷり”が素晴らしい。本人の公言通り,ますますピアノが上手くなっている。この上手い=テクニックではなく,上手い=楽器表現の意。ピアノに“大仰”に語らせる達人の域。「平均律の呪縛」から解き放たれた上原ひろみピアノが「最大音域の自由」を手に入れている。一皮も二皮も剥けた“アーティスト”上原ひろみの誕生である。

 上原ひろみのハイ・テンションを支えた要因こそが,どんなに煽ろうとも決してブレないアンソニー・ジャクソンの安定感であり,強烈なプッショのサイモン・フィリップスの存在にある。

 上原ひろみの“猛プッシュ”を方や「受け止め」方や「跳ね返す」。そう。『ヴォイス』の真髄とは「THE TRIO PROJECT」の真髄とは「音のラリー」にあると思う。
 どんなにスマッシュを打ち込んでも必ず拾われてしまう。時には強烈なスマッシュが打ち返されてくる。その様子に観客も大興奮する。そんな満員のアットホームな会場でアクロバティックにプレーする3人の喜びは計り知れない快感であろう。

VOICE-2 あれっ,よ〜く見るとコート上は1対2。左のコートには上原ひろみがシングルス。右側のコートにはアンソニー・ジャクソンサイモン・フィリップスのダブルス。

 そう。「上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト フィーチャリング・アンソニー・ジャクソン & サイモン・フィリップス」=上原ひろみ主導のピアノ・トリオ。完全に上原ひろみが仕切っている&押している。またしても上原ひろみを頂点とする「二等辺三角形」なピアノ・トリオがスタートした。

 『ヴォイス』は『スパイラル』を越えきれていない。ただしアンソニー・ジャクソンサイモン・フィリップスがこれで終わるはずがない。トニー・グレイマーティン・ヴァリホラも『ブレイン』どの共演があっての『スパイラル』だったわけだし…。そう簡単に超大物に終わってもらっては困るのだ〜。

 いつの日か訪れる上原ひろみの(仮想)骨折の日。その日に「トニー・グレイマーティン・ヴァリホラ」組との初代ピアノ・トリオが「THE TRIO PROJECT」の手によって落城する!

PS 上原ひろみの【VOICE】と山中千尋の【WHAT A DIFFRENCE A DAY MADE】を聴き比べてみてください。きっと「興味深い」と感じるはずです。「ヘェ〜」な答えは『ヴォイス』のトラック批評をカミング・スーン!

  01. Voice
  02. Flashback
  03. Now or Never
  04. Temptation
  05. Labyrinth
  06. Desire
  07. Haze
  08. Delusion
  09. Beethoven's Piano Sonata No. 8, Pathetique

(テラーク/TELARC 2011年発売/UCCT-9015)
(☆直輸入盤仕様 ライナーノーツ/上原ひろみ,棚橋和博)
★【初回限定盤】 CD+DVD
★ボーナスDVD:各メンバーのインタビュー映像【メイキング・オブ・ヴォイス】+【ナウ・オア・ネヴァー】のスタジオ・ライヴ映像収録
★豪華スリップ・ケース仕様
★8Pブックレット

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上原 ひろみ / アナザー・マインド5

ANOTHER MIND-1 『ANOTHER MIND』(以下『アナザー・マインド』)程,管理人の評価が激変したCDも珍しい。

 上原ひろみのデビューCDアナザー・マインド』を評して「これはジャズではない。前衛だ。プログレだ」とバッサリやっていたものだ。これは昔のお話。

ANOTHER MIND-2 「強烈なタッチと夢見るようなリリシズム。想像をはるかに超えた新しい感性が見事に開花した,鮮烈な全米デビュー・アルバム」。
 『アナザー・マインド』の真実は,このユニヴァーサルのキャッチ・コピー通りだと思っている。これが今のお話。
 大嫌いだったのに,今や大好き『アナザー・マインド』!

ANOTHER MIND-3 「ヒロミは音楽の景色を変えている。彼女の音楽,魅力,そしてスピリッツが我々には想像もつかなぬほどの高さへと昇華しているのだ。素晴らしいと言うほかない」とのアーマッド・ジャマルのコメントに100%同意する。

  01. XYZ
  02. Double Personality
  03. Summer Rain
  04. Joy
  05. 010101 (binary system)
  06. Truth and Lies
  07. Dancando No Paraiso
  08. Another Mind
  09. The Tom and Jerry Show

(テラーク/TELARC 2003年発売/UCCT-1077)
(☆直輸入盤仕様 ライナーノーツ/上原ひろみ,アーマッド・ジャマル)
(デジパック仕様)
★2003年度ゴールド・ディスク大賞【ジャズ・アルバム・オブ・ザ・イヤー】受賞

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上原 ひろみ / プレイス・トゥ・ビー5

PLACE TO BE-1 『PLACE TO BE』(以下『プレイス・トゥ・ビー』)は,上原ひろみ“待望の”ソロ・ピアノCD

 『プレイス・トゥ・ビー』は,世界中を演奏旅行で駆け巡る上原ひろみの感性が“その土地の音”として届けらている。要は上原ひろみ版のキース・ジャレットサンベア・コンサート』である。

 ソロ・ピアノは誤魔化しがきかない。素の上原ひろみは実に素晴らしいピアニストであった。
 各方面から絶賛されるテクニックにも改めて舌を巻いたが,ピアノ一台で奥深い情景描写がお見事!
 しかしそれ以上に,時折聴こえる“唸り声”に“彼女もか?”が真っ先の感想である。

 素の上原ひろみは実に素晴らしい作曲家でもあった。ソロ・ピアノにありがちな「自己満足&一本調子」ではなく,十分聴き手のイマジネイションを掻き立ててくれる!
 20代の記念碑として30代を迎える5日前に録音された『プレイス・トゥ・ビー』には,20代特有の感性が“ギュッ”と凝縮されている。

PLACE TO BE-2 それにしてもタイトル・トラック=【プレイス・トゥ・ビー】は“世紀の名曲”である。
 ボーナスDVDでの“半泣き”の上原ひろみを是非,生で見てみたい。
 ソロ・ピアノの次は,上原ひろみの「ライブ盤」を待ち設ける。

  01. BQE
  02. CHOUX A LA CREME
  03. SICILIAN BLUE
  04. BERNE, BABY, BERNE!
  05. SOMEWHERE
  06. CAPE COD CHIPS
  07. ISLANDS AZORES
  08. PACHELBEL'S CANON
    VIVA! VEGAS
  09. SHOW CITY, SHOW GIRL
  10. DAYTIME IN LAS VEGAS
  11. THE GAMBLER
  12. PLACE TO BE
  13. GREEN TEA FARM

(テラーク/TELARC 2009年発売/UCCT-9012)
(☆直輸入盤仕様 ライナーノーツ/上原ひろみ,神館和典)
★【初回限定盤】 CD+DVD
★ボーナスDVD:【プレイス・トゥ・ビー】のライヴ映像+特典映像収録
★豪華スリップ・ケース仕様
★8Pブックレット
★2009年度ジャズ・ディスク大賞【金賞】受賞

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上原 ひろみ / ブレイン / LEGEND OF THE PURPLE VALLEY5

 『BRAIN』の8曲目は【LEGEND OF THE PURPLE VALLEY】(以下【レジェンド・オブ・ザ・パープル・ヴァレー】)。


 【レジェンド・オブ・ザ・パープル・ヴァレー】には,作曲家=上原ひろみの個性が色濃く表現されている。上原ひろみは「稀代の長編作家」である。

 【レジェンド・オブ・ザ・パープル・ヴァレー】の聴き所は,時代を越え国境や人種の壁を越える,普遍性である。良いものはいつ聴いてもどこで聴いても良い。【レジェンド・オブ・ザ・パープル・ヴァレー】には,ジャズフュージョンというジャンルをも越える訴求力がある。そう。全ての音楽ファンに捧げる,作曲家=上原ひろみからの贈り物なのである。
 いつ聴いても何度聴いても唸ってしまう。聴けば聴く程,完成度の高さに感心させられてしまう。10分47秒もの時間をかけて細部のディテールまで描き出した長編大作である。これぞバークリー「作編曲科卒」の成せる業! いいや,これぞ上原ひろみの「有り余る才能」の発露である! 正真正銘の名曲である。

 【レジェンド・オブ・ザ・パープル・ヴァレー】は,最初に提示される27秒から30秒までのピアノのテーマがピアノ・トリオでリフレインされていくのだが,1分4秒から7秒,9分46秒から49秒,10分22秒から10分25秒でのアンソニー・ジャクソンベースによる“語り口”が一番説得力を持っている。脚本を超えた名演技(作曲を超えた名演)・恐るべし,世界のアンソニー・ジャクソン

HIROMI UEHARA : Piano, Keyboards
ANTHONY JACKSON : Bass
MARTIN VALIHORA : Drums

上原 ひろみ / ブレイン / DESERT ON THE MOON5

 『BRAIN』の5曲目は【DESERT ON THE MOON】(以下【ブレイン】)。


 【デザート・オン・ザ・ムーン】は,上原ひろみ作・月の砂漠! ラクダに乗った王子様とお姫様が月下の砂漠を往くあの童謡である。

 千葉の御宿海岸には毎年何度も出向いていたが,繊細なイントロのタッチが砂丘を歩いていく。これぞまさしく砂の音である。しかし弱いタッチで“粒立った音”をかき鳴らす上原ひろみはさすがである。ピアニストとしての技量の高さが証明されている。

 4分後半からのアタック開始が,21世紀型・月の砂漠である。ラクダに乗った王子様とお姫様がロケットで飛び立っていく! ここからのアンソニー・ジャクソンベースマーティン・ヴァリホラドラムとのアンサンブルがあってこそ,4分51秒からの大サビが生きる生きる! 
 途中,ストップ・モーション的演出を経て,一気にロケットが発射される。もうここは月面宇宙。星屑でのステージが美しい。

HIROMI UEHARA : Piano, Keyboards
ANTHONY JACKSON : Bass
MARTIN VALIHORA : Drums

上原 ひろみ / ブレイン / BRAIN4

 『BRAIN』の4曲目は【BRAIN】(以下【ブレイン】)。


 【ブレイン】は,上原ひろみ作曲“荘厳な組曲”である。テーマは「迸る感情と冷徹な理性とのせめぎあい」である。

 イントロでの“おもちゃっぽい”シンセ・サウンドに面喰った読者の皆さんは,きっと【ブレイン】好きだと思う。この後に続く,まさかの裏切りの展開,に欠かせない“計算されつくした機械音”。この機械音があとあと,じんわり,効いてくる。

 1分30秒から始まるピアノによるテーマが重い。いきなり眼前に表われた高くそびえ立つ音の大壁がクラシック的な“荘厳な組曲”の理由である。上原ひろみピアノに合わせ,徐々に激しく大地が揺れ動いていく。
 その音の大壁を2分47秒からのシンセサイザーが,する~り,すり抜けると,辿り着いたは“地上のパラダイス”。全てが平安ムードに包まれた音楽のユートピアであった。

 しかし,3分47秒から【ブレイン】のテーマが再び流れ出す。今度の波動はさらに大きい。辺り一面暴風雨で音の高波が襲ってくる。そう。作曲家の鎧を脱ぎ捨てた“ジャズ・ピアニスト上原ひろみアドリブの世界である。
 上原ひろみ・ファンとしては,このピアノのソロ・パートだけは事前に書き上げられたものでなかったことを願う。そう。【ブレイン】は“荘厳な組曲”であって,そこには上原ひろみの予想を超えた,トニー・グレイベースマーティン・ヴァリホラドラムによる見事な熱演が加味されている。管理人が口にする「迸る感情と冷徹な理性とのせめぎあい」とは,上原ひろみの内と外に存在する「ピアノ・トリオに課せられた自由度の幅」のことである。トリオはいつも考える。もっと自由に,いや,完璧に書き上げられた楽曲どおりに…。

 上原ひろみが抱える高尚な内面の葛藤は,アウトロでの“壊れかかったおもちゃ”サウンドで現実の世界へと引き戻される。

HIROMI UEHARA : Piano, Keyboards
TONY GREY : Bass
MARTIN VALIHORA : Drums

上原 ひろみ / ブレイン / KEYTALK4

 『BRAIN』の7曲目は【KEYTALK】(以下【キートーク】)。


 【キートーク】とは“楽器たちの会話”である。特に“上原家”の鍵盤たちの何と感情の豊かなこと! 時に笑い,時にブツブツ文句を言っている。
 さてさて(AVANTI風に)そんな楽器たちの会話に聞き耳を…。

 イントロのピアノで飛び出す,左指でのスイング感! さぁ【キートーク】を始めよう。「Are you ready?」
 すぐにベースドラムが相槌を打ち始め,36秒から「会話の主役」であるキーボードの「ずーずー弁」が聞こえ出す。「ずーずー,がーがー」のガマガエル・トーク炸裂である。
 1分46秒から「標準語」のピアノが話し始めるが,長くは続かず,すぐに「ずーずー弁」に会話を独占されてしまう。あれれ? 「ずーずー弁」だったキーボードの訛りが徐々に消え去り,5分30秒からはYMOを彷彿させる大都会のテクノ・サウンドへと大変身! カッコイイ!
 6分20秒からはピアノキーボードのクロストークはデュオっぽい。ベースドラムは,キーボードよりもピアノの会話に聞き入っているようだ。7分後半からラストまでは“ヴァリホラ家”のドラムが一人バックで大声出して踊っている!
 ラストは3人一斉に自分の部屋の扉を閉じた。今夜の【キートーク】はこれにて終了。明日はどんな“楽器たちの会話”が…。

HIROMI UEHARA : Piano, Keyboards
TONY GREY : Bass
MARTIN VALIHORA : Drums

上原 ひろみ / ブレイン / WIND SONG4

 『BRAIN』の3曲目は【WIND SONG】(以下【ウインド・ソング】)。


 【ウインド・ソング】には“ひろみメロディ”が詰まっている。“ひろみメロディ”とは,上原ひろみが音楽理論抜きに語る“感情の言葉”のことである。

 バークリー音楽院で作編曲を学んだ上原ひろみは,頭の中で完璧な音楽を創造できる。言葉以上に音符の方が自分の気持ちを伝えやすいのではなかろうか?
 しかし上原ひろみの音楽表現の本質は,彼女の感情表現そのものである。音符を越えた感情,音符になる直前にピアノから飛び出すフレーズにこそ,上原ひろみの“感情の言葉”が詰まっている。

 1分55秒から数秒間のテーマの再演を聴いてほしい。ここでのフレーズは整然と音符化されたイントロからのテーマとは異なる。作曲時のインスピレーションそのままに手が動いている! その流れで続くアドリブでの飛翔感! これが羽毛のように“ふわふわと”軽く優しく舞い上がる!
 空高く舞い上がった羽毛が引力により落下する様子を捉えたのが【ウインド・ソング】の聴き所! 一枚一枚,風に吹かれて表情を変化させる“ピアノの羽毛”が実にお見事! 読者の皆さんにも“ひろみメロディ”=オセンチ・バラードの“感情の言葉”にどっぷりと浸かってみてほしい。きっと泣けると思います。

HIROMI UEHARA : Piano, Keyboards
TONY GREY : Bass
MARTIN VALIHORA : Drums

上原 ひろみ / ブレイン / KUNG-FU WORLD CHAMPION3

 『BRAIN』の1曲目は【KUNG-FU WORLD CHAMPION】(以下【カンフー・ワールド・チャンピオン】)。


 上原ひろみによる,ブルース・リーとジャッキー・チェンへのオマージュである【カンフー・ワールド・チャンピオン】は,愛用のシンセサイザー「ノードリード」を駆使した,テクノポップ・ジャズ
 このスピード感は,確かに【カンフー・ワールド・チャンピオン】にふさわしい。ただし惜しまれるのはアレンジである。

 【カンフー・ワールド・チャンピオン】が持つスピード感を“強調するためだけに”シンセを使用しているとしたら残念でならない。上原ひろみほどのテクニシャンであるならば,生ピアノ一台でも十分に緩急利かせた演奏ができるに違いないのに…。
 そう。敢えてシンセを使う意図が見えてこないのだ。管理人が『アナザー・マインド』で挫折した原因ともつながるが,どうも上原ひろみのエレクトリック・サウンドとは相性が良くない。何度聴いてもレーシング・ゲーム用のBGMに聴こえてしまう。大好きな上原さん,今回は辛口批評でごめんなさいねっ。 

 管理人同様,電化ひろみの挫折体験を持つ読者の皆さんに,老婆心で攻略法を一つ伝授しよう。
 【カンフー・ワールド・チャンピオン】は,6分22秒からの徐々にテンポ・アップするラストのワン・フレーズを繰り返し聴き込むべし。メロディ・ラインのツボを覚えてしまうと,レーシング・ゲームのBGMを越えた“カンフー・ワールド・チャンピオン”ゲームのBGMに変化する!?

 それにしても必死に上原ひろみに喰らいつく,超絶ベーシストアンソニー・ジャクソントニー・グレイの頑張りが素晴らしい。

HIROMI UEHARA : Piano, Keyboards
TONY GREY : Bass
MARTIN VALIHORA : Drums

上原 ひろみ / ブレイン / GREEN TEA FARM5

 『BRAIN』の6曲目は【GREEN TEA FARM】(以下【グリーン・ティー・ファーム】)。


 【グリーン・ティー・ファーム】を,作曲し演奏した上原ひろみを「いとおしく」思う。一体,彼女はどんな気持ちでこのトラックを吹き込んだのだろう。何を思い浮かべながら…。泣いちゃったのかなぁ。辛いことがあったのかなぁ。
 録音スタジオから帰宅した彼女を,理由を何も聞かずに,ただ優しく“そっと抱きしめてあげたい”と思った。全てを受け止めてあげたいと思った。

 【グリーン・ティー・ファーム】のモチーフは,上原ひろみの実家=お茶の産地=静岡・浜松。上原ひろみが,ふるさとの良さ,家族のありがたさを噛みしめながら弾いている。きっとお茶畑とたくさんの家族愛に囲まれて成長したのだろう。
 懐かしいふるさとへの想いの全てが,3分7秒のピアノ・タッチの瞬間に凝縮されているように思う。このピアノ・タッチは,押しつけの重く感じる愛情表現ではなく,利他的な感謝の念に溢れている。しみじみと聴き入ってしまう。

 恐らく上原ひろみの作品では初めてであろう,自作曲以外のフレーズが飛び出す。そう。ラストの1フレーズ。4分6秒から「夏も近づく八十八夜♪」。【茶摘み】である。“あの”上原ひろみが,である。郷愁を誘う。感動してしまう。名曲である。

 【グリーン・ティー・ファーム】を聴いていると「心が暖かくなる」「心が満たされる」自分を感じ取れる。たまには実家に電話してみようかな…。

HIROMI UEHARA : Piano, Keyboards

上原 ひろみ / ブレイン / IF...5

 『BRAIN』の2曲目は【IF...】(以下【イフ…】)。


 【イフ…】は“涙ちょちょぎれる”ほどに,ドラマチックでセンチメンタル! いつまでも深〜く印象に残る感動の名曲である。

 イントロと同時に7回鳴り続けるマーティン・ヴァリホラドラミングが耳に残る。バックで“優しく語りかける”上原ひろみピアノとの見事なデュエット! リズムをキープしながらもドラムが歌っている。うわぁ〜。

 38秒と1分2秒で鳴り始める「透明感ある音色」。この音はピアノ? キーボード? 話は逸れるが,映像で見る上原ひろみの指先って,メッチャ綺麗! 手モデルならぬ“指モデル”NO.1!
 あの指先の美しさが「透明感ある音色」に現われている。心からそう思っている。ここが管理人の“いけない”妄想癖である。

 さて【イフ…】のハイライトも,管理人のもう一つの妄想話と重なるのであるが,24秒から30秒までと,48秒から52秒までのピアノを聴き比べてほしい。後者では“揺らぐ”テーマ部が聴こえてくる。

 何となく「天才」つながりで,上原ひろみ=宇多田ヒカルと被ってしまう存在なのだが,有名な宇多田ヒカルの「1/Fの揺らぎ」とは,実はこの部分のことなのでは?
 …と自分勝手に理解しています。根拠などありませぬが,話のネタにでもどうぞ。

HIROMI UEHARA : Piano, Keyboards
ANTHONY JACKSON : Bass
MARTIN VALIHORA : Drums

上原 ひろみ / ブレイン5

BRAIN-1 今月一日,上原ひろみさんがご結婚されました。おめでとうございます。心からお祝い申し上げます。
 “隠れ”上原ひろみファンとしては,いささかショックではありますが,本命ではなかったので…。なんてねっ。(強がっているのか,オレ)

 それで今回は管理人からの祝電として,上原ひろみの絶賛レビューをお届けしようと思います。
 あっ,先に断わっておきますが,ご祝儀でのリップサービスではありません。本音で語っても,上原ひろみの「元気がでるピアノ」が好きなんです。ただし“好き”と言えるようになるまでには紆余曲折がありました。
 まずはその辺の“揺れる”ファン心理から書き綴ってみようと思います。心情を吐露することで気持ちの整理を…。なんてねっ。

 さて,上原ひろみJ−ジャズ界の“時の人”として,ちまたで騒がれ始めてもう4年になるが,上記,結婚報道を目にしたのは,あの「ヤフー・ニュース」のTOP記事! もはや一ジャズ・ピアニストの域を超えてしまっている。いやあ,真にビッグになったものである。

 4年前の上原ひろみの大ブレイクは“正統派”ジャズ・ファンの間で物議を醸し出したものだ。当時の管理人と言えば,こちらもこれまた大ブレイク中のアキコ・グレースに肩入れしていたこともあり,アンチ上原ひろみ派に所属していた。
 デビューCDアナザー・マインド』の「非ジャズ的」な音造りが,おもしろくなかった。嫌いだった。不快に聴こえた。
 嘘ではなく,実際にCDラックで“お蔵入り”。上原ひろみと完全に「決別」するつもりで批評していた。未来永劫,二度と聴くつもりもなかった。

 ただし,このアンチ上原活動の本当の理由は(自分でも気付いていたのだが)アキコ・グレースを守るための本能! 追いかけてくる上原ひろみに「天才」「本物」だけが持つ“怖さ”を感じ取っていたからなのだと思う。
 “良くも悪くも”ピアノで自己主張してくる。訴えかけてくる。表情豊かな「表現者」の音世界に恐れをなしていた。

 そしてその脅威が管理人の中で現実のものとなった。きっかけはFMラジオ! 二度と聴くまい,と決めていた管理人の耳が奪われた。『BRAIN』(以下『ブレイン』)の特集だった。

 『ブレイン』で感じた“瑞々しさ”。これぞ従来のジャズの「殻」を打ち破って出現した,新時代のジャズ・ピアノジャズの伝統フレーズを聴かせてくれたと感じた次の瞬間に,前言を撤回させられてしまう。そう。異次元の音世界。これが真にジャズ・ピアノの「再創造」なのだと思う。

BRAIN-2 『ブレイン』からは,上原ひろみのチャレンジ精神がほとばしっている! ただしその圧倒的パワー,エネルギーは“内へ内へ”と向かっている。繰り返し聴き込むリスナーだけが,一歩一歩“ベールを剥がすかのごとく”核心部分に迫ることができる。ついに上原ひろみの“熱狂”と対面できる。

 これが“あの”上原ひろみなのか? 素晴らしい。前衛などではなかった。クリエイティブな王道ジャズ・ピアノ! 一人ラジオの前で“手を叩いて”絶賛してしまった。これぞ大傑作!
 もう抵抗する力など残っていなかった。あの圧倒的な音力に,変な意地を張っていた自分が途端にアホらしく思えた。管理人の中で何かが崩れ去った。上原ひろみ“開眼”の瞬間であった。どちらも応援しよう。いや,これからは上原ひろみを応援しよう。

 こうして強引?に(ただし自らの意志で)アンチ→熱烈ファンへと変貌させられたわけであるが,アンチの頃の後遺症が残っている。管理人の中で上原ひろみへの「好き」は,アキコ・グレースへの「好き」とは趣きが異なっている。
 そう。アキコ・グレースへの好きは「LOVE」であり,上原ひろみへの好きは「LIKE」であり「INTERESTING」なのである。

 そう。上原ひろみは「好き」と言うより「凄い!」と言うピアニスト。ニュアンス的には(単なる偶然だと思うが)上原ひろみと関係の深いチック・コリアの延長線上にある。
 チック・コリアも正直「好き」というよりは「気になる」ピアニストである。小学生時代の恋心よろしく,気になる気になるは「好き」の裏返しなのだと思う。

 これからも上原ひろみを毎晩聴くことはないだろうが,新作が出る度に買いたくなる,妙に気になり買わずにはいられない,ジャズメンの一人となるに違いない。
 うん。結婚されても応援しますよ。旦那さんとはもちろんのこと,管理人とも末永いお付き合いをお願いします。今でも愛しのひろみ嬢…。

  01. KUNG-FU WORLD CHAMPION
  02. IF...
  03. WIND SONG
  04. BRAIN
  05. DESERT ON THE MOON
  06. GREEN TEA FARM
  07. KEYTALK
  08. LEGEND OF THE PUROLE VALLEY
  09. ANOTHER MIND

(テラーク/TELARC 2004年発売/UCCT-1090)
(☆直輸入盤仕様 ライナーノーツ/上原ひろみ,児山紀芳)
★2004年度ジャズ・ディスク大賞【ニュー・スター賞】受賞
★2004年度読者人気投票【アルバム・オブ・ザ・イヤー】受賞
★2005年度ジャズ・ライフ ディスク・グランプリ【ゴールド・アルバム】受賞
★第17回日本ミュージックペンクラブ【ポピュラー部門/作品賞】受賞

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