CD批評:ケニー・ドーハム
2007年07月07日
ケニー・ドーハム / トランペット・トッカータ / TROMPETA TOCCATA
『TROMPETA TOCCATA』の1曲目は【TROMPETA TOCCATA】(以下【トランペット・トッカータ】)。
管理人は【トランペット・トッカータ】のイントロだけで“身震い”する。“ブワ〜っと”吹ききるケニー・ドーハムの圧倒的・存在感! 途中で“巻き舌”さえも絡めてくる! 46秒からと57秒からの一吹きで“武者震い”してしまう。
そう。ケニー・ドーハムが“張っている”! ノドを嗄らして,これだけは聴いておくれ,と叫んでいる!
ただし,これはバックの4人による「フューチャリング・ケニー・ドーハム」の“演出”である。
実に素晴らしいサポートぶりで,彼らの職人芸がなければケニー・ドーハムも一人虚しく大絶唱。さぞ落ち込んだことであろう。このナイス・フォローが,劇薬を産む秘密である。
1分18秒からは一転,アフロ・ラテン・ロック! テーマをなぞりながらも“スキを見ては”アドリブが自在に飛び出すこの快感こそ,ジャズの醍醐味=ワクワクドキドキ! これぞ名演である。
6分19秒からは,トミーフラナガン・トリオの演奏に変わるが,トミーフラナガンのピアノは“お飾り”であって,7分45秒から始まるリチャード・デイビスのベースとアルバート・ヒースのドラムによる“デュオ”こそ聴き所!
弦を叩きつけて鳴らす,リチャード・デイビスの起伏有るベースに構わず,アルバート・ヒースはシャカシャカ鳴らす。この対比の鮮やかさが【トランペット・トッカータ】の“隠れテーマ”であろう。
さて,ここで一つトリビア…。このCDのマスター・テープは「音移り」している。14秒,28秒,36秒,45秒,57秒,1分9秒でかすかに聴こえる,ケニー・ドーハムのトランペットがその証し。大音量で確認してほしい。
CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から
KENNY DORHAM : Trumpet
JOE HENDERSON : Tenor Sax
TOMMY FLANAGAN : Piano
RICHARD DAVIS : Bass
ALBERT HEATH : Drums

Trompeta Toccata
2007年07月06日
ケニー・ドーハム / トランペット・トッカータ
近年,男の子の人気スポーツはサッカーであろうが,管理人が子供の頃は“猫も杓子も”野球,皆甲子園を目指していた。しかし少年野球→中学野球→高校野球へと進むにつれ,野球部人口は減少していく。大きな壁に幾度もぶち当たり夢が遠のいていく?そう。高校野球はスポーツ・アスリート集団。運動の出来る男子の集団。当然,激しいチーム内の競争にさらされる。中学時代はエースで4番のヒーローも,名門野球部ではライパチくんに成り下がる。かつての速球派も変化球投手へとスタイルを変える。
競争を勝ち抜くには,時として自分のプライド・こだわりを捨て,自分が生き残れる得意分野に専念すべきことを悟りつつ,大人へと成長していくのであろう。
さて,ジャズの花形楽器はトランペットである。そう。トランペット界こそ,ジャズ界一の激戦区! エース級のジャズ・エリートが集結する,言わば“腕自慢のための楽器”である。
とりわけハード・バップ全盛期には,マイルス・デイビス,クリフォード・ブラウンと言う両エースが壁としてそびえ立つ。挑み続けてその壁を越えるか,両エースと競合しない独自路線を確立するしか道はない。
ケニー・ドーハムはそんな独自路線の代表格! 恐らくケニー・ドーハムは自ら好んで彼独自の演奏スタイルを身に着けたわけではないのでは? 2人のカリスマの絶頂期に活動を共にしたからこそ,もがき苦しみ,葛藤し,時代に揉まれ磨き上げられてきたオリジナリティ!
そう。ケニー・ドーハムこそ「時代の寵児」であり,トランペット界随一の個性派! 努力の末に手に入れた“哀愁を帯びた味わい深い音色”が彼の勝負球! それで管理人は“ここぞ”という夜には決まって,ケニー・ドーハムのCDに手が伸びてしまう。目的は,魂に勇気を注入するためである。
そう。勇気を注入する! 一般にはケニー・ドーハム=代表作『静かなるケニー』での“静かな叙情性”をイメージしやすい。しかし実際のケニー・ドーハムの演奏は相当熱い。エネルギッシュでアグレッシブな演奏が持ち味である。
「マイルスに負けるな! ブラウニーを追い越せ!」で生き残ってきた,一流トランペッターとしてのプライドが,管理人に勇気を与えてくれる。あのアーティキュレーションを聴いていると「俺の方がマイルスの何倍も練習している」と言いたげな,彼の自負が見え隠れする。
ケニー・ドーハムの最終作『TROMPETA TOCCATA』(以下『トランペット・トッカータ』)は,最後まで時代に揉まれ磨き上げられてきた彼の“個性の結晶”である。
時代は既にモードやフリーに向かっており,生粋のハード・バッパーであったケニー・ドーハムにとっては,再度モデル・チェンジの必要に迫られていた時期のCDである。
しかしケニー・ドーハムは自分の演奏スタイルを変えることはしなかった。ここに彼のプライドが感じられる。彼の主張はこうである。「俺の音色を越えられるヤツが誰かいるのか!」。
時代が変わりジャズも進化した。『トランペット・トッカータ』での共演者は,皆モデル・チェンジ中である。しかし周りの音がどう変わろうともドーハムはドーハム!
『トランペット・トッカータ』には,内に秘めたる熱情を“静かな叙情性”で表現した「信念の人」=ケニー・ドーハムの全てが記録されている。
PS ガンバレ松坂世代の個性派,和田,杉内。負けるなハンカチ世代のマーくん。
(1964年録音/TOCJ-6636)


























