アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

CD批評:アート・ファーマー

アート・ファーマー / 処女航海5

MAIDEN VOYAGE-1 『MAIDEN VOYAGE』(以下『処女航海』)は“叙情派”フリューゲル・ホーンの第一人者=アート・ファーマーによる「ウィズ・ストリングス」アルバムにしてスタンダード・アルバム。

 この企画が成立した瞬間に「名盤誕生」が保証されたも同然であったが,さらなるフラッグ・シップを目指して,ベーシストロン・カータードラマージャック・デジョネットピアニストとアレンジャーに佐藤允彦を起用。鉄壁で隙のない超豪華布陣が“ゆったりしたスイング”を聴かせてくれる。

 何ともゴージャス。何ともデリシャス。実に高度な音楽性で描かれた“柔らかな音空間”にまどろんでしまう。『処女航海』のタイトルよろしく豪華客船で大海原を世界一周。要はリッチな「クロスオーヴァーウィズ・ストリングス」の出帆であった。

 『処女航海』の主役は佐藤允彦である。佐藤允彦が,あのアート・ファーマーを,あのロン・カーターを,あのジャック・デジョネットを,意のままに操っている。
 有名ジャズスタンダードがスローで,しかし複雑で凝りに凝った“モダンな”アレンジで新たなる息吹を感じる。音に表情があるウィズ・ストリングスが最高に素晴らしい。この音は生きている!

 『処女航海』での“ゲスト”プレイヤーっぽいアート・ファーマーの「リリカルな」フレーズにストリングスがシンクロした瞬間の“美と創造の”フリューゲル・ホーン。ハミングしている!
 この音使いは反則である。ツボを突いてくる,というかツボしか攻撃してこない。快楽しか感じなくなる。この音は生きている!

MAIDEN VOYAGE-2 ジャズでもフュージョンでもなくコンテンポラリーでもなく映画音楽でもない,クロスオーヴァーウィズ・ストリングスの『処女航海』。果たしてこの音楽は佐藤允彦の「快楽の音楽」なのであろう。

 大衆音楽ではなく上品な貴族が嗜むウィズ・ストリングス。西洋の王族ではなく日本の大奥テイストな佐藤允彦のアバンチュール。そう。豪華客船で大海原を世界一周するには四十八手を超える快楽の仕込みが不可欠なのである。『処女航海』に“世界一の”浮世絵や漆塗りの元禄文化を思い見る。

 是非『処女航海』は読書しながら聴いてみてください。文面から潮の香りが匂い,文面から汽笛が聞こえてきた瞬間の快楽。読書こそ最高の快楽。オシャレな男の嗜みである。そんな自分に船酔いしてしまう!?

  01. NICA'S DREAM
  02. RUBY MY DEAR
  03. BLUE BOSSA
  04. GOODBYE PORK PIE HAT
  05. BLUE IN GREEN
  06. MAIDEN VOYAGE
  07. NAIMA

(インターフェイス/INTERFACE 1983年発売/COCB-53476)
(ライナーノーツ/高井信成)
(紙ジャケット仕様)

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アート・ファーマー / スエーデンに愛をこめて5

TO SWEDEN WITH LOVE-1 パソコンを買い換えました。NEC製ノートPC。Corei7のWindows7です。
 きっかけはWindows8Proへの優待購入プログラム&決算前の最安値狙い。
 実は管理人,サラリーマンを辞めてボランティア活動をメインとした生活を始めた時に数ヶ月でしたがLAOXのパソコン・フロアーでアルバイトをしていました。それで9月末なのです。

 でっ,選考過程は省略して,結局のところ決算値引きとは関係ない最新の高性能モデルをGET! アドリブログの読者にとってこんな話はどうでもいい? この記事ではアート・ファーマーの大傑作『TO SWEDEN WITH LOVE』(以下『スエーデンに愛をこめて』)批評を読みたいだけ?
 いいや『スエーデンに愛をこめて批評の真髄を語るには,LAOXでのアルバイト経験のエピソードが必要なのです。

 パソコンの七不思議の1つ。それが「相性」である。
 スペック上,動くはずのパーツが動かない。カタログ上,全く同じスペックのパーツでも違うメーカーのものなら快適に動く。う〜ん。開封して動かしてみないと分からない。その結果,開封品でも返品可能。それがパソコンの「相性」。
 PCは実に人間的な機械である。機械なのに人間的。だからパソコン作りはやめられないのだ。← 管理人の3大趣味の1つは今でもPCの自作なのです。ベンチマーク命。

 ここからが本題です。ジャズを聴く楽しみの1つが「相性」なのです。共演する相手によって演奏が良くも悪くも変わってしまう。それで大好きなジャズメン同士の共演盤があると聞けば,いてもたってもいられなくなり,ネットサーフィン+中古CD屋を歩き回る。その結果,落ち込むこともあるのだが,それはそれでいいのです。「水と油」と思われたジャズメン同士の覚醒の喜び。だからやめられないのです。

 ここで例題。ダークなのにマイルドな“いぶし銀”同士が共演したらどうなるのか? その模範解答が『スエーデンに愛をこめて』の音にある。
 アート・ファーマーフリューゲル・ホーンジム・ホールギターの音がとろけていく。混じりあっていく。見たことも聴いたこともないジャズの出現である。
 これぞ理論では説明不能な「相性」。「相性」って絶対にある。「柏木家のバナマヨパン」の如く?アート・ファーマーのリリシズムを支える哀愁のジム・ホールが結構深いハーモニーをつけている。さりげなく全編アドリブをぶち込んでいる。なのにアート・ファーマーがこれまたいい感じに「中和して調和して」…。

 この2人の最高の関係性に『スエーデンに愛をこめて』のテーマである「スエーデン民謡」が絡んでいる。
 マイナー調で【ディア・オールド・ストックホルム】ばりの清らかで美しい民謡ばかりなのだが,もう完全なるジャズスタンダード。甘いメロディに溺れることのない生真面目な演奏に大抵の日本人ならツボを押されてしまう“浮世”なジャズ民謡。儚く切なく美しい粉雪が舞うフリューゲル・ホーン。これも「相性」なのです。

TO SWEDEN WITH LOVE-2 続く「相性」。これは時間的なタイミング。アート・ファーマージャズテットの解散を経験し,実験ではない“固い人選”の上でのジム・ホールとの新たなるジャズの模索のタイミング。そこに有望新人=スティーヴ・スワローピート・ラロカとのカルテット

 最後にジャケットの「相性」。これだけは「美女と野獣(アート・ファーマー)」ゆえ不釣合い〜。
 アート・ファーマーのお似合いは美女ではなくジム・ホール。「ファーマーホール」の名コンビこそ「相性」の都市伝説を現実の理論へと具現化する。

  01. VA DA DU? (WAS IT YOU?)
  02. DE SALDE SINA HEMMAN (THEY SOLD THEIR HOMESTEAD)
  03. DEN MOTSTRAVIGE BRUDGUMMEN (THE RELUCTANT GROOM)
  04. OCH HOR DU UNGA DORA (AND LISTEN YOUNG DORA)
  05. KRISTALLEN DEN FINA (THE FINE CRYSTAL)
  06. VISA VID MIDSOMMARTID (MIDSUMMER SONG)

(アトランティック・ジャズ/ATLANTIC JAZZ 1964年発売/AMCY-1016)
(ライナーノーツ/柳沢てつや)

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アート・ファーマー / モダン・アート4

MODERN ART-1 ジャズ名盤MODERN ART』(以下『モダン・アート』)には2枚ある。
 その1枚はアルト・サックス・プレイヤー=アート・ペッパーの『モダン・アート』であり,もう1枚がトランペッターアート・ファーマーの『モダン・アート』である。

 どちらもペッパーファーマーを語る際に“外せない”名盤であるゆえに,アート・ペッパーアート・ファーマーのどちらの『モダン・アート』が好きなのか聞くのは愚問である。
 しかし,これが多々聞かれる質問であることから管理人は業を煮やして,えいのや〜。アート・ファーマーの『モダン・アート』と答えることになっている。

 それはなぜか? その理由は『モダン・アート』に記録されている“素顔の”アート・ファーマーが大好きだからである。その真面目さと押しの弱さゆえか「主役なのに主役になりきれない」感じがたまらなく愛おしくなる。“花形なのに花形ではない”「トランペッター時代の最高傑作」。そんなアート・ファーマーの立ち位置が大好きなのである。

 『モダン・アート』はアート・ファーマーの「ジャズテット」での“盟友”ベニー・ゴルソンとの本格コラボレーション盤。ベニー・ゴルソンのディレクションにより“2管なのに3管のような”ダイナミックで力強いハーモニーが最高に素晴らしい。

 ただし『モダン・アート』の“目玉”ビル・エヴァンスだけはベニー・ゴルソンに合っていない。でもこの不協和音がクセになるから音楽って面白い。「リリカルなエヴァンス」目当てで『モダン・アート』を聴くエヴァンス初心者には奨めないが,ビル・エヴァンスの中毒者にとっては,こんなにノレていないビル・エヴァンスを聴くのがたいそう面白い。

 そう。管理人がアート・ペッパーではなくアート・ファーマーの『モダン・アート』を取る理由は“個性派”ベニー・ゴルソンビル・エヴァンスと共存する“叙情派”アート・ファーマーフリューゲル・ホーン以前=「トランペッター時代の最高傑作」だと思うからだ。勢いはあるのに柔らかく哀感漂う風情を醸し出している。

 『モダン・アート』を,同時期に吹き込まれたアート・ファーマーの“裏・代表作”ソニー・クラークの『クール・ストラッティン』を比較してみる。
 ソニー・クラークピアノが主役な『クール・ストラッティン』とビル・エヴァンスが堅実なピアノアート・ファーマーをひき立てる『モダン・アート』の「静と動」。ジャッキー・マクリーンの“大吠え”するアルト・サックスの『クール・ストラッティン』とベニー・ゴルソンの“もこもこ”するテナー・サックスの『モダン・アート』の「ホットとクール」。

 そして音楽の“やや”中心にいる,不動の本質“叙情派”アート・ファーマー。この2枚はフリューゲル・ホーンではなくトランペットで大正解。“花形なのに花形ではない”アート・ファーマーにハマリすぎている!

MODERN ART-2 最後に,ハマリすぎていると言えば『モダン・アート』のジャケット写真。これはマフィア? フレディ・マーキュリー? この不適なツラ構えこそが,フリューゲル・ホーンではなくトランペッターしている。

 アート・ペッパーの『モダン・アート』も見ようによってはヤクザ映画だが,アート・ファーマーの「素顔のドアップ」の絶大なインパクト。アート・ファーマーのイケメンぶりが,モダンな“アート”(絵画)そのものであろう。

  01. MOX NIX
  02. FAIR WEATHER
  03. DARN THAT DREAM
  04. THE TOUCH OF YOUR LIPS
  05. JUBILATION
  06. LIKE SOMEONE IN LOVE
  07. I LOVE YOU
  08. COLD BREEZE

(ユナイテッド・アーチスツ/UNITED ARTISTS 1958年発売/TOCJ-5305)
(ライナーノーツ/ナット・ヘントフ,小川隆夫)

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アート・ファーマー / おもいでの夏 / I SHOULD CARE4

 『THE SUMMER KNOWS』の6曲目は【I SHOULD CARE】(以下【アイ・シュッド・ケア】)。


 【アイ・シュッド・ケア】の名演は多いがピアノものばかり? このトラックでもシダー・ウォルトンが大活躍している。しかし“本命のテーマ”はアート・ファーマーが奏でている。
 うん。フリューゲル・ホーンで聴く【アイ・シュッド・ケア】に俄然惹かれてしまった。

 アート・ファーマーシダー・ウォルトンのテンションの異なること! イントロから全力で飛ばすシダー・ウォルトンピアノは,他の【アイ・シュッド・ケア】の名演を意識したもの? 完全に自分の世界に没入し,過去のピアニストたちとの「力比べ」を聴かされているようで…。 

 アート・ファーマーはと言うと,シダー・ウォルトンの熱演など意に介さず,マイペースの“鼻歌チック”な小唄を歌っている。これがいい〜。やっぱり【アイ・シュッド・ケア】は,軽くさわやかな演奏がいい〜。

 3分16秒からのサム・ジョーンズのピチカート・ソロは,アート・ファーマーシダー・ウォルトンとはまた別の意味で聴き応えがありますよっ。こちらも名手ですよね〜。

ART FARMER : Fluegel Horn
CEDAR WALTON : Piano
SAM JONES : Bass
BILLY HIGGINS : Drums

アート・ファーマー / おもいでの夏 / DITTY4

 『THE SUMMER KNOWS』の5曲目は【DITTY】(以下【ディティ】)。


 “少女漫画路線”の『おもいでの夏』にあって唯一の異色作,モーダル・ブルースの【ディティ】に萌える! アート・ファーマーが,日本でもヨーロッパでもなく,思いっきり“アメリカン・ジャズ”しているのが楽しい。

 ベース・ラインの明るいテーマとは対照的に“テンション張った演奏”の連続である。この要因はビリー・ヒギンズドラミングにある! ビートを刻みつつも「そこでいけ!」と,メンバーのアドリブを先導していく。細かく聴くとビリー・ヒギンズ自身も“あの手この手”のテクニックのテンコ盛り! ドラマーがこうだとこうなる? 

 ビリー・ヒギンズに“お膳立てされた”フリューゲル・ホーンソロが饒舌である。1分11秒で聴こえる“一発の吹き上げ”こそ,イージー・リスニング・ジャズ奏者には徹しきれなかった,アート・ファーマー流「照れ隠し」である。

ART FARMER : Fluegel Horn
CEDAR WALTON : Piano
SAM JONES : Bass
BILLY HIGGINS : Drums

アート・ファーマー / おもいでの夏 / WHEN I FALL IN LOVE4

 『THE SUMMER KNOWS』の4曲目は【WHEN I FALL IN LOVE】(以下【ウェン・アイ・フォール・イン・ラブ】)。


 “ムーディ”なアート・ファーマーフリューゲル・ホーンソロで始まる名バラード=【ウェン・アイ・フォール・イン・ラブ】であるが,徐々に「熱いセッション」へと変貌を遂げ,ラストは圧巻の大迫力がパワー・オブ・ラブ! こんな【ウェン・アイ・フォール・イン・ラブ】も珍しい。

 やはりアート・ファーマーフリューゲル・ホーンの名手である。【ウェン・アイ・フォール・イン・ラブ】の美メロをフリューゲル・ホーンでなぞれば,そこは「おとぎの国」。アート・ファーマーは“フリューゲル・ホーンの王子様”である。

 しかし,シダー・ウォルトンの“夢見るピアノソロ”の後,再登場した“フリューゲル・ホーンの王子様”はマントを脱ぎ捨て“ジャズメン魂”を露わにする。本性むき出しのアセンディング・スケールが熱い! 息切れしそうなところから更にグイグイ上昇していく!
 そこへ間髪入れず,サム・ジョーンズビリー・ヒギンズがプッシュを入れるものだから…。あぁ…。

ART FARMER : Fluegel Horn
CEDAR WALTON : Piano
SAM JONES : Bass
BILLY HIGGINS : Drums

アート・ファーマー / おもいでの夏 / MANHA DO CARNAVAL4

 『THE SUMMER KNOWS』の2曲目は【MANHA DO CARNAVAL】(以下【カーニバルの朝〜「黒いオルフェ」】)。


 アート・ファーマーの【カーニバルの朝〜「黒いオルフェ」】は超個性的! ボサノヴァ → ジャズへの早着替えは「モー娘。」もビックリの早技である。

 “ボッサピアノ・トリオの演奏に,37秒からアート・ファーマーフリューゲル・ホーンがフィル・インするのに合わせてサム・ジョーンズベースがブレイク!
 サム・ジョーンズの猛アタックが“ゆったりめ”で入ったアート・ファーマーアドリブを徐々にヒート・アップ! このフリューゲル・ホーンは,完全なる「トランペッター」の音である。

 2分27秒から始まるシダー・ウォルトンアドリブに合わせて,今度はビリー・ヒギンズドラムがブレイク!
 ビリー・ヒギンズのスティックさばきが,シダー・ウォルトンの“ジャズメン魂”に火をつけた。ボサノヴァジャズを融合させた,シダー・ウォルトン渾身のピアノソロが素晴らしい。

 5分4秒からはアート・ファーマーの“カデンツァ”も飛び出し,カーニバルの幕は下りていく!

ART FARMER : Fluegel Horn
CEDAR WALTON : Piano
SAM JONES : Bass
BILLY HIGGINS : Drums

アート・ファーマー / おもいでの夏 / ALFIE5

 『THE SUMMER KNOWS』の3曲目は【ALFIE】(以下【アルフィー】)。


 バート・バカラック作,ラブ・バラードの名曲【アルフィー】の中では,バネッサ・ウィリアムスによる歌唱バージョンが大好きであるが,この「アート・ファーマーフリューゲル・ホーンバージョン」も“誉れ高き”名演である。

 何と言っても,2分25秒からの,シダー・ウォルトンの“極上”ピアノに寄り添う,これまた“極上”サム・ジョーンズベースがいい。甘〜く甘〜く,二人で産み出すベース・ラインがメロディ・ラインの上空を駆け抜けていく!
 
 この完成された“絵画”の世界へ,アート・ファーマーフリューゲル・ホーンが,何とも表現し難い“美”を色付けをしていくのだから,もうたまらない! トロトロトロリンと溶けてしまいそう…。

 【アルフィー】のような名バラードアドリブなしの方がいい。その点,お気に入りは譜面に忠実な前半のテーマ部にある。
 当然,管理人の評価は「五ツ星」なのであるが,後半山場,3分28秒からのフリューゲル・ホーンが,もっとスローであったなら…。そうであれば“世紀の名演”に成り得たであろうに…。

ART FARMER : Fluegel Horn
CEDAR WALTON : Piano
SAM JONES : Bass
BILLY HIGGINS : Drums

アート・ファーマー / おもいでの夏 / THE SUMMER KNOWS5

 『THE SUMMER KNOWS』の1曲目は【THE SUMMER KNOWS】(以下【おもいでの夏】)。


 【おもいでの夏】で鳴り響く,アート・ファーマーフリューゲル・ホーンの音色は,秋風! 決して冷たいのではない。時折,の暑さも感じさせてくれる“熱風混じり”の“涼しい”風色!

 アート・ファーマーの“リリカル”な演奏は,彼の第二の故郷=オーストリアはウィーンの“短い”をイメージしてのことでは? そんな“おセンチ”気分に浸りたくなる,全編感傷の音楽世界。
 最初の一吹きから,最後の一吹きにいたるまで美しい。マイルス・デイビスミュートウイントン・マルサリスバラードと肩を並べる美しさ。感動的である。

 バックのピアノ・トリオも控え目であるが,連動性のあるインタープレイを聴かせてくれる。ただし4分40秒から一瞬であるが,シダー・ウォルトンの“お調子者のピアノ”が登場する。この展開はアンビリーバブル!
 こういう“意図的な外し”が,火照った身体をクールダウンさせてくれる“秘訣”であるに違いない。

 もうこの歳になると,夏全開!は耐え難い。【おもいでの夏】は憔悴しきった日における,16時からのBGM! あっ,山下達郎【さよならの日】もお忘れなく…。

ART FARMER : Fluegel Horn
CEDAR WALTON : Piano
SAM JONES : Bass
BILLY HIGGINS : Drums

アート・ファーマー / おもいでの夏5

THE SUMMER KNOWS-1 管理人は,頑固に“この道一筋”職人気質のジャズメンが好きなのであるが,マルチな才能溢れるジャズメンにとって,本職以外の楽器にチャレンジしたくなるのも当然であろう。
 ピアニストギタリストならアコースティックエレクトリック。ホーン奏者なら二刀流,例えば,木管奏者であればアルト・サックスフルートテナー・サックスソプラノ・サックスといったパターン。金管奏者ならトランペットコルネットトランペットフリューゲル・ホーン,と相場は決まっている。

 楽器を持ち替えたとしても,そのジャズメン特有のクセ,特徴までは変わらない。音色の変化が表現の幅を広げてくれるに過ぎない。そう。本質的には常に同じはずなのである。
 しかし,稀に楽器の持ち替えが“劇薬”になる場合がある。本職の楽器では決して見せない一面を“ここぞ”とばかりに,露わにする。要は持ち替えた楽器の方が,そのジャズメンの個性=本質に“ハマっている”のである。

 その代表格が“叙情派”トランペッターアート・ファーマー奏でるフリューゲル・ホーンであろう。
 アート・ファーマーと言えば,ご存知,ハード・バップ・トランペッター。ただしクリフォード・ブラウン流の“ストレートな”熱演タイプではなく,マイルス・デイビス流の“抑制された”熱演タイプ。
 以前に何かの文献で,素の彼も内省的で気が弱かった,と読んだ記憶があるのだが,アドリブにおける語り口からして“叙情派”トランペッターと言うキャッチ・フレーズは伊達ではない。

 そんな“叙情派”の本領発揮がフリューゲル・ホーン! フリューゲル・ホーンは幾分暗めで輪郭がぼやけた?抽象的な音色。そう。バラードとの相性がチリバツな,甘く・切なく・悲しく響く。全てがまろやかで柔らかく,朴訥にささやくような楽器,と書くと大袈裟?

 “いぶし銀”トランペッターであるアート・ファーマーの個性を引き出すために,フリューゲル・ホーンが存在するのか,はたまたフリューゲル・ホーンの個性を引き出すためにアート・ファーマーが必要なのか,これはもう「コロンブスの卵」!
 とにかく管理人の中では,アート・ファーマーと来ればトランペッターではなくフリューゲル・ホーン・プレイヤーなのである。

 『THE SUMMER KNOWS』(以下『おもいでの夏』)は,フリューゲル・ホーン・プレイヤーとしてのアート・ファーマーに焦点を当てた,全曲,フリューゲルによるワン・ホーンCD
 ピアノシダー・ウォルトンベースサム・ジョーンズドラムビリー・ヒギンズ,そして奏でられるスタンダード
 そう。このメンバーにこの選曲。悪かろうはずがない。この“お膳立て”を受けたアート・ファーマーも期待通りの名演で応える。正に完成された黄金比の“リリシズム”なのである。

THE SUMMER KNOWS-2 バラードとの「相性」の良さについて先述したので『おもいでの夏』は全編バラード,とお思いかもしれないが,バラードは全6曲中3曲である。

 しかしこれぞ選曲の妙! バラードが“秀逸”なのは当然としてバラード以外の3曲の「爆発するパッセージ」の名演が,かえってフリューゲル・ホーン・プレイヤー=アート・ファーマーを強く印象付けている。

 そう。『おもいでの夏』には“いぶし銀”アート・ファーマーの“叙情性”が色濃く記録されている。ハード・バップ・トランペッターとしてのアート・ファーマーしか知らないジャズ・ファンに一聴をお奨めしたい。

  01. THE SUMMER KNOWS
  02. MANHA DO CARNAVAL
  03. ALFIE
  04. WHEN I FALL IN LOVE
  05. DITTY
  06. I SHOULD CARE

(イースト・ウィンド/EAST WIND 1977年発売/PHCE-2041)
(ライナーノーツ/牧芳雄)
(紙ジャケット仕様)

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