CD批評:アート・ファーマー
2008年05月03日
アート・ファーマー / おもいでの夏 / MANHA DO CARNAVAL
『THE SUMMER KNOWS』の2曲目は【MANHA DO CARNAVAL】(以下【カーニバルの朝〜「黒いオルフェ」】)。
アート・ファーマーの【カーニバルの朝〜「黒いオルフェ」】は,超個性的! ボサノヴァ → ジャズへの早着替えは「モー娘。」もビックリの早技である。
“ボッサ”ピアノ・トリオの演奏に,37秒からアート・ファーマーのフリューゲル・ホーンがフィル・インするのに合わせて,サム・ジョーンズのベースがブレイク! サム・ジョーンズの猛アタックが“ゆったりめ”で入ったアート・ファーマーのアドリブを徐々にヒート・アップ! このフリューゲル・ホーンは,完全なる「トランペッター」の音である。
2分27秒から始まるシダー・ウォルトンのアドリブに合わせて,今度はビリー・ヒギンズのドラムがブレイク! ビリー・ヒギンズのスティックさばきが,シダー・ウォルトンの“ジャズメン魂”に火をつけた。ボサノヴァとジャズを融合させた,シダー渾身のピアノ・ソロが素晴らしい。
5分4秒からはアート・ファーマーの“カデンツァ”も飛び出し,カーニバルの幕は下りていく!
CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から
ART FARMER : Fluegel Horn
CEDAR WALTON : Piano
SAM JONES : Bass
BILLY HIGGINS : Drums
2007年08月10日
アート・ファーマー / おもいでの夏 / ALFIE
『THE SUMMER KNOWS』の3曲目は【ALFIE】(以下【アルフィー】)。
バート・バカラック作,ラブ・バラードの名曲【アルフィー】の中では,ヴァネッサ・ウィリアムスによる歌唱バージョンが大好きであるが,この「アート・ファーマー・フリューゲル・ホーン・バージョン」も“誉れ高き”名演である。
何と言っても,2分25秒からの,シダー・ウォルトンの“極上”ピアノに寄り添う,これまた“極上”サム・ジョーンズのベースがいい。甘〜く甘〜く,二人で産み出すベース・ラインがメロディ・ラインの上空を駆け抜けていく!
この完成された“絵画”の世界へ,アート・ファーマーのフリューゲル・ホーンが,何とも表現し難い“美”を色付けをしていくのだから,もうたまらない! トロトロトロリンと溶けてしまいそう…。
【アルフィー】のような名バラードは,アドリブなしの方がいい。その点,お気に入りは譜面に忠実な,前半のテーマ部にある。
当然,管理人の評価は「五ツ星」なのであるが,後半,3分28秒からのフリューゲル・ホーンが,もっとスローであったなら…。そうであれば“世紀の名演”に成り得たであろうに。ただそこだけが惜しまれる。
CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から
ART FARMER : Fluegel Horn
CEDAR WALTON : Piano
SAM JONES : Bass
BILLY HIGGINS : Drums

おもいでの夏
2005年08月25日
アート・ファーマー / おもいでの夏 / THE SUMMER KNOWS
『THE SUMMER KNOWS』の1曲目は【THE SUMMER KNOWS】(以下【おもいでの夏】)。
【おもいでの夏】で鳴り響く,アート・ファーマーのフリューゲル・ホーンの音色は,秋風! 決して冷たいのではない。時折,夏の暑さも感じさせてくれる“熱風混じり”の“涼しい”風色!
アート・ファーマーの“リリカル”な演奏は,彼の第二の故郷=オーストリアはウィーンの“短い夏”をイメージしてのことでは? そんな“おセンチ”気分に浸りたくなる,全編感傷の音楽世界。
最初の一吹きから,最後の一吹きにいたるまで美しい。マイルス・デイビスのミュートやウイントン・マルサリスのバラードと肩を並べる美しさ。感動的である。
バックのピアノ・トリオも控え目であるが,連動性のあるインタープレイを聴かせてくれる。ただし4分40秒から一瞬であるが,シダー・ウォルトンの“お調子者のピアノ”が登場する。この展開はアンビリーバブル! こういう“意図的な外し”が,火照った身体をクールダウンさせてくれる“秘訣”であるに違いない。
もうこの歳になると,夏全開!は耐え難い。【おもいでの夏】は憔悴しきった日における,16時からのBGM! あっ,山下達郎【さよなら夏の日】もお忘れなく…。
CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から
ART FARMER : Fluegel Horn
CEDAR WALTON : Piano
SAM JONES : Bass
BILLY HIGGINS : Drums

おもいでの夏
2005年08月24日
アート・ファーマー / おもいでの夏
管理人は,頑固に“この道一筋”職人気質のジャズメンが好きなのであるが,マルチな才能溢れるジャズメンにとって,本職以外の楽器にチャレンジしたくなるのも当然であろう。ピアニストやギタリストならアコースティックとエレクトリック。ホーン奏者なら二刀流,例えば,木管奏者であれば,アルト・サックス&ソプラノ・サックス,アルト・サックス&フルート,テナー・サックス&ソプラノ・サックスといったパターン。金管奏者ならトランペット&コルネットかトランペット&フリューゲル・ホーン,と相場は決まっている。
楽器を持ち替えたとしても,そのジャズメン特有のクセ,特徴までは変わらない。音色の変化が表現の幅を広げてくれるに過ぎない。そう。本質的には常に同じはずなのである。
しかし,稀に楽器の持ち替えが“劇薬”になる場合がある。本職の楽器では決して見せない一面を“ここぞ”とばかりに,露わにする。要は持ち替えた楽器の方が,そのジャズメンの個性=本質に“ハマっている”のである。
その代表格が“叙情派”トランペッター,アート・ファーマー奏でるフリューゲル・ホーンであろう。
アート・ファーマーと言えば,ご存知,ハード・バッパー! ただしクリフォード・ブラウン流の“ストレートな”熱演タイプではなく,マイルス・デイビス流の“抑制された”熱演タイプ。
以前に何かの文献で,素の彼も内省的で気が弱かった,と読んだ記憶があるのだが,アドリブにおける語り口からして“叙情派”トランペッターと言うキャッチ・フレーズは伊達ではない。
そんな“叙情派”の本領発揮がフリューゲル・ホーン! フリューゲル・ホーンは,幾分暗めで,輪郭がぼやけた?抽象的な音色。そう。バラードとの相性がチリバツな,甘く・切なく・悲しく響く。全てがまろやかで柔らかく,朴訥にささやくような楽器,と書くと大袈裟?
“いぶし銀”トランペッターであるアート・ファーマーの個性を引き出すために,フリューゲル・ホーンが存在するのか,はたまたフリューゲル・ホーンの個性を引き出すためにアート・ファーマーが必要なのか,これはもう「コロンブスの卵」!
とにかく管理人の中では,アート・ファーマーと言えば,トランペッターではなくフリューゲル・ホーン・プレイヤーなのである。
『THE SUMMER KNOWS』(以下『おもいでの夏』)は,フリューゲル・ホーン・プレイヤーとしてのアート・ファーマーに焦点を当てた,全曲,フリューゲルによるワン・ホーンCD。
このメンバーに,この選曲! 悪かろうはずがない。この“お膳立て”を受けたアート・ファーマーも,期待通りの名演で応える。正に完成された“耽美の世界”である。
バラードとの相性の良さについて先述したので,『おもいでの夏』は全編バラード,とお思いかもしれないが,バラードは6曲中3曲である。
しかしこれぞ選曲の妙! バラードが“秀逸”なのは当然としてバラード以外の3曲の完璧な名演が,かえってフリューゲル・ホーン=バラードではなく,フリューゲル・ホーン=アート・ファーマーを強く印象付けている。
そう。『おもいでの夏』には“いぶし銀”アート・ファーマーの“叙情性”が色濃く記録されている。ハード・バップ・トランペッターとしてのアート・ファーマーしか知らないジャズ・ファンに一聴をお奨めしたい。
(1976年録音/PHCE-2041)
























