CD批評:アート・ブレイキー
2007年10月17日
アート・ブレイキー & ザ・ジャズ・メッセンジャーズ / モーニン / ARE YOU REAL?
『MOANIN’』の3曲目は【ARE YOU REAL?】(以下【アー・ユー・リアル?】)。
【アー・ユー・リアル?】は,典型的なハード・バップ・ナンバー。アート・ブレイキー奏でる“ミディアム・ファーストの4ビート”に心も身体も揺さぶられてしまう。
テーマは所謂「ゴルソン・ハーモニー」で満開である。そう。テナー・サックスとトランペットの「輪唱&コーラス」! これぞ「ジャズ・メッセンジャーズ!」というキメ・フレーズであるが,特筆すべきは2コーラス目に逆循環コードを4小節加えたパート。
逆循環と言えば“名手”マイルス・デイビスのミュートが有名であるが,大抵はソロのつなぎ役。逆循環をテーマ自体に付け足したのは「ベニー・ゴルソン・オリジナル」の才能であろう。
テーマを離れたベニー・ゴルソンとリー・モーガンのアドリブも実に熱い! 2人のハード・バッパーとは対照的に,ファンキー・ジャズ・ピアニスト=ボビー・ティモンズのアドリブの,何と上品なことなのでしょう。
ボビー・ティモンズの上品なピアノ・ソロに引っ張られる形で,テナー・サックスとトランペットが囁くようにサポートした,2分22秒から2分31秒までの“穏やかな”ムードが大好きである。
CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から
ART BLAKEY AND THE JAZZ MESSENGERS
LEE MORGAN : Trumpet
BENNY GOLSON : Tenor Sax
BOBBY TIMMONS : Piano
JYMIE MERRITT : Bass
ART BLAKEY : Drums

MOANIN'
2007年02月22日
アート・ブレイキー & ザ・ジャズ・メッセンジャーズ / モーニン / MOANIN'
『MOANIN’』の2曲目は【MOANIN’】(以下【モーニン】)。
【モーニン】を知らないジャズ・ファンは“モグリ”である! なんたって「ソバ屋の出前持ちまでが口笛で吹いた」という伝説?が残っているくらい,当時の音楽界を“席巻”した超有名曲なのだから…。
テーマの親しみやすさ+マイナー調&ゴスペル風+ピアノとホーンによるコール&レスポンス! とくれば,ヒットしない方がおかしい?
しかし,あのテーマ以外は,典型的なハード・バップである。そう。【モーニン】ヒットの要因は,ボビー・ティモンズの作曲能力にあるのではなく“曲を形にした”ジャズ・メッセンジャーズの確かな“名演”にある。
59秒から始まるリー・モーガンのトランペット・ソロは「落雷」のように痛烈である。このラッパの音が全世界を駆け巡り,ついに時代を突き破ってしまった。
しかしそのリー・モーガンも,ベニー・ゴルソンの手にかかると「かよわく&おとなしく」聴こえてしまうのだから,ジャズって不思議な音楽である。
ユニゾンでのベニー・ゴルソンのテナーの重低音が超強烈! リー・モーガンの最高の高域をも完全に押しのけている! 3分4秒からのアドリブ・タイムが“吠えまくり”! ベニー・ゴルソン特有の“暑苦しい”テナー・サックスが“ファンキー・ブーム”の到来を伝えている!
NO! 【モーニン】のハイライトは,5分3秒からのボビー・ティモンズのピアノ・ソロ! 正しく“ファンク&ファンク”! 時にリズミカル,時に流ちょう,時に力業が交差する“魅惑のピアノ”を聴かされれば,誰でも“身体が反応してしまう”というもの。
【モーニン】こそが,ハード・バップ&ファンキーの“永遠”の定番ソング。指定席は変わらない。
CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から
ART BLAKEY AND THE JAZZ MESSENGERS
LEE MORGAN : Trumpet
BENNY GOLSON : Tenor Sax
BOBBY TIMMONS : Piano
JYMIE MERRITT : Bass
ART BLAKEY : Drums

MOANIN'
2007年02月21日
アート・ブレイキー & ザ・ジャズ・メッセンジャーズ / モーニン / WARM UP AND DIALOGUE BETWEEN LEE AND RUDY
『MOANIN’』の1曲目は【WARM UP AND DIALOGUE BETWEEN LEE AND RUDY】(以下【ウォーム・アップ・アンド・ダイアローグ(リー・モーガン&ルディ・ヴァン・ゲルダー)】)。
【ウォーム・アップ・アンド・ダイアローグ(リー・モーガン&ルディ・ヴァン・ゲルダー)】は,本番前のウォーム・アップ! 実に短い! これがジャズメンたちのウォーム・アップ!
リー・モーガンとルディ・ヴァン・ゲルダーとの短い会話も収録されている。音楽的価値はないが歴史的価値はあるのだろう。
実を言うと管理人もそこに“釣られて”買ってしまった…。聴いて“ガッカリ”していますけど…。
当然,国内盤の『モーニン』は既に持っていましたが,2006年に東芝EMIより「RVGリマスター(Importヴァージョン)」なるものが発売され『モーニン』には,これまで輸入盤にしか収録されていなかった【ウォーム・アップ・アンド・ダイアローグ(リー・モーガン&ルディ・ヴァン・ゲルダー)】が国内盤に初めて追加されることとなった。
ただの“リハーサル風景”が加わっただけなのに,コレクターとしての“悪いクセ”が出て“やっぱり”買ってしまったのです。正にレコード会社の思うツボ,完全にカモられています。
全く何回失敗すれば懲りるのでしょうね。もうほとんど病気です。ビル・エヴァンスの『ワルツ・フォー・デビイ』に至っては3枚も所持しておりますが,なにか?
さて,音楽的価値?についても触れておこう。33秒からのアート・ブレイキーのカウントで,このトラックは幕を閉じ,そのままの流れで名曲【モーニン】へと続く…。
CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から
ART BLAKEY AND THE JAZZ MESSENGERS
LEE MORGAN : Trumpet
BENNY GOLSON : Tenor Sax
BOBBY TIMMONS : Piano
JYMIE MERRITT : Bass
ART BLAKEY : Drums

MOANIN'
2007年02月19日
アート・ブレイキー & ザ・ジャズ・メッセンジャーズ / モーニン
ジャズ界には“名伯楽”が二人いる。マイルス・デイビスとアート・ブレイキーである。勿論,二人ともプレイヤーとしても超一流ゆえ,正確には“名伯楽”とは呼べないが,優れたジャズメンを嗅ぎ分ける「嗅覚」は他のジャズ・ジャイアントの追随を許さない程,秀でたものがいる。
「マイルス・スクール卒」&「ジャズ・メッセンジャーズ卒」のビッグ・ネームを数え挙げると切りがない。マイルス・デイビスとアート・ブレイキーのバンドがリニューアルされる度に「またドエライ新人を連れてきたもんだなぁ」と,二人の“人材発掘能力”にしばしば感心させられたものである。
しかしマイルス・デイビスとアート・ブレイキーの“スカウト”の手法には大きな違いがある。
マイルス・デイビスのコンボはいつでも“オールスター軍団”! 野球で言えば巨人軍! そう。FAで完成品をかっさらう!
一方,アート・ブレイキーのコンボは広島カープ! 有望新人を自前で叩き上げる! 現場でトコトン鍛え抜く“ど根性軍団”!
( マイルス・ファン,並びに巨人ファンの読者の皆さん,悪く言おうとする意図などありませんが,傷付けてしまったのでしたら,心から謝罪いたします。正確には,マイルス・デイビスも“無名の新人”をたくさん発掘してきましたし,アート・ブレイキーも“大物”を登用した時代がありました。目くじらを立てずに,おおまか・大体の違いってことで,サラリと読み流していただければ助かります。お許しを…。)
さて,アート・ブレイキーの最高傑作であると同時に,ファンキー・ジャズの“不朽の名盤”『MOANIN’』(以下『モーニン』)が録音される前年(1957年)のジャズ・メッセンジャーズには,才能豊かな“後の大物”たちが多数在籍していた。
ざっと紹介してみると(手持ちの資料が正しければ)ジャッキー・マクリーン,ドナルド・バード,ルー・ドナルドソン,ハンク・モブレー,ジミー・スミス,ジョニー・グリフィン,ジョン・コルトレーン,ウォルター・ビショップ・ジュニアといった“驚異の面々”がズラリと並んでいる。
ジャズ・メッセンジャーズがすでに人気コンボだったことを考えると誠に不思議であるが『モーニン』録音時には上記“大物”メンバーは一人も在籍していない。
『モーニン』の録音メンバーは,全員テナー・サックスのベニー・ゴルソン“繋がり”。ピアノ=ボビー・ティモンズ。トランペット=リー・モーガン。ベース=ジミー・メリット。そう。ベニー・ゴルソン以外は,当時“まだ”無名の面々である。
しかし“名伯楽”アート・ブレイキーの目に狂いはなかった! すでに“ファンキー”を求める土壌を見て取ったアート・ブレイキーは,新・音楽監督にベニー・ゴルソンを任命した。ファンキー・ジャズは,ベニー・ゴルソンが引き連れてきた,この新メンバーだからこそ,音を“具現化”できたのである。
ここでは簡単に触れておくが,ファンキー・ジャズと言うのは,ジャズのルーツであるブルースやゴスペルの持つ“アーシー”な感覚を意識的に取り入れたハード・バップのこと。そう。ファンキー・ジャズの完成には“アーシー”を頭ではなく身体で理解できる「黒い」ジャズメンが必要不可欠。
この新メンバーは全員,東海岸フィラデルフィアの出身。幼少の頃からジャズはもとより,ブルースやゴスペルと共に育ってきたジャズメンなのだ。 ついに“機は熟した”! ファンキーを求める時代の波とメンバーの高い資質がアート・ブレイキーに“理想の”ファンキー・ジャズの誕生を告げていた! その後の世界的大ブームについては,改めて説明するまでもないだろう。
ファンキー・ジャズの“不朽の名盤”『モーニン』の陰に“名伯楽”あり! アート・ブレイキーなくして,ファンキー・ジャズは語れない!
(1958年録音/TOCJ-66404)


























