アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

CD批評:デヴィッド・サンボーン

デヴィッド・サンボーン / タイム・アンド・ザ・リヴァー4

TIME AND THE RIVER-1 フュージョン時代のデヴィッド・サンボーンが大好きなファンとしては「デヴィッド・サンボーンマーカス・ミラー」の15年振りとなるコラボレーションTIME AND THE RIVER』(以下『タイム・アンド・ザ・リヴァー』)にニンマリ。

 VERVEの2作とDECCAの2作が「シリアス&ヴィンテージ」路線だったから,待望の“売れ線”が聴けるとあって,フラゲでGETしたその日は『タイム・アンド・ザ・リヴァー』を10回連続で聴き続けた。
 デヴィッド・サンボーンの“泣きのブロー”にマーカス・ミラーの“ドンシャリ”なジャズベが最高に似合っている。やっぱりデヴィッド・サンボーンはこうでなくっちゃ…。
 15年振りの“ファンキー・サンボーン”の復活に一人悦に入ったものだ。数日後に『PEARLS』を聴き返してみるまでは…。

 まぁ,昔のデヴィッド・サンボーンを聴きたくなって選んだのが,デヴィッド・サンボーンの中で“一番煌びやかな”『PEARLS』だったのが運のつき。
 『タイム・アンド・ザ・リヴァー』のデヴィッド・サンボーンアルトサックスの音色が『PEARLS』と比べて,くすんでいる。濁っている。荒れている。
 フレージングが“サンボーン節”のままだったから気付かなかったが,これはデヴィッド・サンボーンの枯れではない。「栄枯盛衰」から来たすさみのように感じてしまった。

 そう。『タイム・アンド・ザ・リヴァー』における「デヴィッド・サンボーンマーカス・ミラー」復活の真実とは,デヴィッド・サンボーンマーカス・ミラーに「HELP」を求めたアルバムである。
 この視点でマーカス・ミラーの『AFRODEEZIA』を聴き直してみてほしい。『タイム・アンド・ザ・リヴァー』のサウンド・スケッチは『AFRODEEZIA』のそのまんま〜。

 過去に『INSIDE』で,マーカス・ミラーに主導権を握られたのがきっかけで袂を分けたはずだったのに,あのマーカス・ミラーのサウンドがどうしても忘れらないデヴィッド・サンボーンが,マーカス・ミラーの出した意見を丸呑みしてまで「デヴィッド・サンボーンマーカス・ミラー」の復活にこだわった。そんな流れ?

 デヴィッド・サンボーンにとってはモデル・チェンジを求められた15年であったが,マーカス・ミラーにとっては“天才”に磨きをかけた15年であった。
 
TIME AND THE RIVER-2 ズバリ『タイム・アンド・ザ・リヴァー』は,マーカス・ミラーが『AFRODEEZIA』で追求した「アフリカ路線」の続編である。
 極論を言えば,基本,同じサックス奏者のアレックス・ハンを「デヴィッド・サンボーンに差し替えただけ」である。

 『AFRODEEZIA』でアレックス・ハンが表現できなかったサックスを『タイム・アンド・ザ・リヴァー』でデヴィッド・サンボーンを使って表現している。
 くすんで,濁って,荒れて,すさんだ音を“苦味”としつつ,デヴィッド・サンボーンの体内に残された“旨味”を限界まで引き出している。マーカス・ミラーの「流石の仕事ぶり」である。

 そんなマーカス・ミラーが「山」と問えば,これまたデヴィッド・サンボーン的確に「川」(『TIME AND THE RIVER』)と答えている。
 「デヴィッド・サンボーンマーカス・ミラー」の夢のコラボ・アゲインは,何年間が空いたとしても,一音出した瞬間に“あの頃の2人に”戻れるんだなぁ。
 デヴィッド・サンボーンアルトサックスが「川」の流れのようにマーカス・ミラーの“心のヒダ”に流れていく。

 漢字の「川」を電話等で区別するために発音する→「三本川」→「サンボーン川」→アルバム・ジャケットがオツである。

  01. A LA VERTICALE
  02. ORDINARY PEOPLE
  03. DRIFT
  04. CAN'T GET NEXT TO YOU
  05. OUBLIE MOI
  06. SEVEN DAYS SEVEN NIGHTS
  07. WINDMILLS OF YOUR MIND
  08. SPANISH JOINT
  09. OVERTURE (from The Manchurian Candidate)
  10. DAYDREAMER
  11. LITTLE CHURCH

(ビクター/JVC 2015年発売/VICJ-61711)
(ライナーノーツ/佐藤英輔)

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デヴィッド・サンボーン / オンリー・エヴリシング4

ONLY EVERYTHING-1 “ニコイチ”のデヴィッド・サンボーンにふさわしく“レイ・チャールズトリビュート”の『HERE & GONE』の続編『ONLY EVERYTHING』(以下『オンリー・エヴリシング』)も“ハンク・クロフォードトリビュート”。

 所謂,デヴィッド・サンボーンの“ニコイチ”と来れば,前作の完成度を高めたものが多かったが,今回の『オンリー・エヴリシング』はいつもの続編ではない。
 『HERE & GONE』のレビジョンアップ,マイナーチェンジではなく,メジャーアップグレートでのバージョンアップ。同じブラスでも“ブラス・ロック”ではなく,R&Bにブラスが加えられた“ブルース”なのである。

 “ブルース”から出発して,カントリー,R&B,ジャズフュージョンファンクで頂点を極めたデヴィッド・サンボーンの「一周回って」演奏するオルガントリオが渋い。いい音だしている。
 ついにデヴィッド・サンボーンキャリアの初頭へ,いいや,デビュー以前の「サックス少年」にまで“原点回帰”。

 デヴィッド・サンボーンサックスを始めたエピソードのは小児麻痺のリハビリのためだが,デヴィッド・サンボーンがプロを志すようになったきっかけは,レイ・チャールズ・バンドでサックスを吹いていたハンク・クロフォードへの“憧れ”にあった。

 ただし,デヴィッド・サンボーンハンク・クロフォードのコピーは絶対にしない。と言うかレイ・チャールズの存在なしに,ハンク・クロフォードに近づくことなど出来やしない。
 ズバリ,デヴィッド・サンボーンが“憧れた”ハンク・クロフォードとは「レイ・チャールズがいてナンボ」のサックス奏者。

 『オンリー・エヴリシング』でデヴィッド・サンボーンが“仮想”レイ・チャールズに仕立て上げたは,ヴォーカルジョス・ストーンジェイムス・テイラーであり,ハモンドオルガンジョーイ・デフランセスコがキーマンである。
 ジョス・ストーンジェイムス・テイラーが歌い,ジョーイ・デフランセスコGROOVEする,レイ・チャールズばりの“ブルース”に触れて,ついに念願の“ハンク・クロフォード越え”を成し遂げている。

ONLY EVERYTHING-2 『オンリー・エヴリシング』はデヴィッド・サンボーンにとって「特別な意味を持つ」1枚になったのだと思う。ある意味,生涯の目標を初めて達成できたアルバムなのだから…。

 4ビート基調のオーセンティックなジャズをベースに,クレバーな“ブルース”が見事に融合している『オンリー・エヴリシング』。
 ジャズフュージョン・ファンの求めるデヴィッド・サンボーンのアルバムではないかもしれない。しかし,オールドスクールなジャズを演奏するデヴィッド・サンボーンを聴き込むのも,長年の“サンボーン・キッズ”にとってはオツである。

  01. THE PEEPER
  02. ONLY EVERYTHING (FOR GENEVIEVE)
  03. HARD TIMES
  04. LET THE GOOD TIMES ROLL
  05. BABY WON'T YOU PLEASE COME HOME
  06. YOU'VE CHANGED
  07. HALLELUJAH, I LOVE HER SO
  08. BLUES IN THE NIGHT
  09. SOMETIMES I FEEL LIKE A MOTHERLESS CHILD
  10. DAVENPORT BLUES

(デッカ/DECCA 2010年発売/UCCU-1262)
(ライナーノーツ/松下佳男)

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デヴィッド・サンボーン / ヒア・アンド・ゴーン

HERE & GONE-1 『TIMEAGAIN』『CLOSER』と変わらぬレコーディング・メンバーを見て「2枚で1セット」の掟を破る,デヴィッド・サンボーン初の「三部作」に突入したかと思ってしまった『HERE & GONE』(以下『ヒア・アンド・ゴーン』)であったが,そこは大丈夫。

 「名門=ヴァーヴ」から「老舗=デッカ」への電撃移籍。馴染みのメンバーを引き連れての移籍であるが,コンテンポラリージャズ路線は,しっかりと『TIMEAGAIN』『CLOSER』で終了させて『ヒア・アンド・ゴーン』では,同じメンバーでも「一味違う」新しい音楽の旅へと繰り出している。

 ズバリ,デッカのキーワードは“ブラス”である。トランペットテナーサックスバリトンサックステナートロンボーンバスクラリネット…。
 ついにブラス・バンドが投入されたデヴィッド・サンボーン流の“ブラス・ロック”なのである。だからゲストにエリック・クラプトン

 そうして『ヒア・アンド・ゴーン』のキーワードは“レイ・チャールズトリビュート”。その実,レイ・チャールズ・バンドのアルトサックス・プレイヤー“ハンク・クロフォードトリビュート”。
 そう。ハンク・クロフォードソウルジャズを鳴らすための“ブラス・ロック”アルバムなのである。

 ジャズ界随一であろう,ギターラッセル・マローンベースクリスチャン・マクブライトドラムスティーヴ・ガットによるエモーショナルにして絶対安定のリズムに乗ったブラス隊が,デヴィッド・サンボーンを前面に押し出していく。

 ブラス・バンドの“主役を張った”デヴィッド・サンボーンが絶好調。バックの細かな音の変化を見逃さず,拾っては膨らませ&拾っては膨らませできたのも,じっくりとブラス隊と向き合った賜物であろう。

 いいや,過去にデヴィッド・サンボーン自身がブラス・バンドの一員として活躍したキャリアからくる“ソロイスト”へのこだわりを感じる。
 結構ストイックなアルトソロを吹いていて,聞き流したいのに聞き流せない“サンボーン節”に「ヒイヒイ」である。

HERE & GONE-2 正直“ファンキー・サンボーン”から“アゲアゲ・サンボーン”までの黄金期が過ぎ去り「ヴィンテージ・ファンク」で延命を図ってきたデヴィッド・サンボーン名盤なんて期待していない。

 新作が出れば惰性で購入する。CDの代金は“サンボーン・キッズ”としてのお布施のようなものである。内容など確認することもなく,死ぬまで新作を買い続けることだろう。

 だから『ヒア・アンド・ゴーン』を聴いて,これが新しい“サンボーン節”なんだ。そう感じられた自分が,ちょっぴりうれしかった。
 もはやデヴィッド・サンボーンは,いい悪い,では判断できない“レジェンド”なのである。

  01. st. louis blues
  02. brother ray (featuring derek trucks)
  03. i'm gonna move to the outskirts of town
  04. basin street blues
  05. stoney lonesome
  06. i believe to my soul (featuring joss stone)
  07. what will i tell my heart
  08. please send me someone to love
  09. i've got news for you (featuring sam moore)

(デッカ/DECCA 2008年発売/UCCU-1179)
(ライナーノーツ/成田正)

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デヴィッド・サンボーン / クローサー4

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CLOSER-1 『A CHANGE OF HEART』からの『CLOSE−UP』然り。『UPFRONT』からの『HEARSAY』然り。
 デヴィッド・サンボーンには前作と同じコンセプト,同じサイドメンで作られた2枚目の続編が存在する。そしてその出来がいい。荒削りのままであった細部が仕上がっている。

 ゆえに『タイムアゲイン』の続編となる『CLOSER』(以下『クローサー』)にも期待した。
 最初は「いいではないか!」と思った。でも聴き込んでいるうちに『CLOSE−UP』や『HEARSAY』では感じなかった不満が募ってきた。

 コンテンポラリージャズはやはりデヴィッド・サンボーンの音楽ではない。デヴィッド・サンボーンならではの“SOMETHING”が感じられない。
 コンテンポラリージャズという形式だけが浮かび上がって,デヴィッド・サンボーンの“SOUL”が聴こえてこない。そういう意味では『タイムアゲイン』の続編にして,遅れてきた『PEARLS』の続編のようでもある。

 要は「幸せボケ」なのだろう。特に苦労せずとも極上のサウンドが手に入る。『PEARLS』の時は「ウィズ・ストリングス」。『タイムアゲイン』『クローサー』の場合はヴァーヴの誇る「ジャズメン・オールスターズ」のバック・サウンドに“身を委ねる”デヴィッド・サンボーンの構図。

 デヴィッド・サンボーンマイ・フェイバリットものばかりを選曲して“悠悠自適に”アルトサックスを吹いている。
 だから<マイク・マイニエリ,STRONG>ラリー・ゴールディングス,ギル・ゴールドスタインラッセル・マローンクリスチャン・マクブライトスティーヴ・ガットが集結しているというのに,ほんま物のジャズではなくイージー・リスニング的なアルトサックスが鳴っている。

CLOSER-2 だから『クローサー』の第一印象は良かったのだ。でも繰り返しの視聴に耐えられる代物ではなかった。
 本来ならキャリアを積むと円熟し深みを増すものであろうが,デヴィッド・サンボーンほどの「成功者」は別のようだ。チャッチャでパッパと一丁上がり〜。

 『CLOSE−UP』と『HEARSAY』には必然性があった。だが『クローサー』には,敢えて続編を作った「大義」が見当たらない。なんとも雑な“手馴れの”2枚目である。
 「デヴィッド・サンボーン有りき」ではない,ジャズ初心者なら大いに楽しめるのではなかろうか…。

  01. Tin Tin Deo
  02. Senor Blues
  03. Don't Let Me Be Lonely Tonight
  04. Smile
  05. Enchantment
  06. Ballad of the Sad Young Men
  07. Another Time, Another Place
  08. Capetown Fringe
  09. Poinciana
  10. You Must Believe in Spring
  11. Sofia

(ヴァーヴ/VERVE 2004年発売/UCCV-1065)
(ライナーノーツ/工藤由美)

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デヴィッド・サンボーン / タイムアゲイン4

TIMEAGAIN-1 どうした“絶対王者”デヴィッド・サンボーン? あのデヴィッド・サンボーンリッキー・ピーターソンの「ヴィンテージ・ファンク」が,ヴァーヴから“刺客”として送り込まれてきた,ヴィブラフォンマイク・マイニエリピアノギル・ゴールドスタインギターラッセル・マローンベースクリスチャン・マクブライトドラムスティーヴ・ガットの「ジャズメン・オールスターズ」に“刺されてしまっている”。

 そう。『TIMEAGAIN』(以下『タイムアゲイン』)の真実とは,ジャズの名門レーベル=ヴァーヴに主導権を握られたコンテンポラリージャズ・アルバムであって,従来のデヴィッド・サンボーンの音楽ではない。

 デヴィッド・サンボーンジャズ・アルバムと来れば『ANOTHER HAND』が連想されるのだが『ANOTHER HAND』には,デヴィッド・サンボーンの“未来”があった。気概を感じたものだった。だから“サンボーン・キッズ”も受け入れることができた。

 対する『タイムアゲイン』には,ヴァーヴの思い描く“未来”がある。ズラリと並んだ有名ヒット・チューンのカヴァーからは,デヴィッド・サンボーンのブランド力で,多くのフュージョン・ファンをコンテンポラリージャズの世界へと引き入れたい,そんなレーベルの計算高さが透けて見える…。
 まぁ,これはこれでいい。管理人は基本ヴァーヴの創るジャズが大好きだし,コンテンポラリージャズも大好きなのだし…。

 でも『タイムアゲイン』は受け入れられない。どうにも納得いかない。
 このモヤモヤとした思いはヴァーヴに対してではない。かってのデヴィッド・サンボーンであれば,自分の意に添わずに仕組まれたコマーシャルなセッティングでも,一音で“ちゃぶ台をひっくり返す”ようなカリスマがあった。

 それが今回はどうだろう。『タイムアゲイン』でのデヴィッド・サンボーンは元気なく&あっけなく「ジャズメン・オールスターズ」に寄り切られている。え〜っ,デヴィッド・サンボーンって病気なのか?

 全世界の“サンボーン・キッズ”はうすうす感じている。『タイムアゲイン』でのデヴィッド・サンボーンモデル・チェンジは,デヴィッド・サンボーン自身が望んだことであろう。
 もはや“イケイケ”では走り続けられないことをデヴィッド・サンボーン自身が一番理解している。ジャズの名門レーベル=ヴァーヴ移籍はそんな自身の衰えを隠すための「隠れ蓑」なのである。ヴァーヴ移籍は悪評は全てヴァーヴのせいにするための戦略なのである。

TIMEAGAIN-2 デヴィッド・サンボーンが『タイムアゲイン』で使った戦略とは,敢えての「盛り上げなし」。じっくりと耳をそばだてながら聴きたくなる落ち着いた演奏である。

 流石のスティーヴ・ガットである。流石のクリスチャン・マクブライトである。こんなにも「間」を聴かせられるデヴィッド・サンボーンのアルバムはこれまでなかった。ゆったりとしたGROOVEに乗った“サンボーン節”がまだまだ第一線で通用することが証明されている…。

 管理人の結論。『タイムアゲイン批評

 『タイムアゲイン』は,アルトサックス奏者=デヴィッド・サンボーンにとっての「人生の曲がり角」。
 本格派から軟投派へ。速球派から変化球投手へ。フュージョンからコンテンポラリージャズへ。

 デヴィッド・サンボーンはまだまだ現役で通用する。ローテーション投手として10勝はできる。なせならバックが凄いから!
 常勝軍団=ヴァーヴ入団へ一言! デヴィッド・サンボーンよ,伝家の宝刀“泣きのブロー”でエースを狙え!

  01. comin' home baby
  02. cristo redentor
  03. harlem nocturne
  04. man from mars
  05. isn't she lovely
  06. suger
  07. tequila
  08. little flower
  09. spider b.
  10. delia

(ヴァーヴ/VERVE 2003年発売/UCCV-1043)
(ライナーノーツ/青木和富,鈴木雄一)

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デヴィッド・サンボーン / インサイド4

INSIDE-1 『INSIDE』(以下『インサイド』)の発売時点では誰一人として,当のデヴィッド・サンボーンマーカス・ミラーでさえ知る由もなかったが『インサイド』以降『TIME AND THE RIVER』のリリースまでの15年間“蜜月関係”にあった「デヴィッド・サンボーンマーカス・ミラー」という“夢のコラボレーション”が封印されることになる。

 推測するに,その要因とは本来「親分」であるデヴィッド・サンボーンと本来「裏方」であるマーカス・ミラーの関係性が「デヴィッド・サンボーンマーカス・ミラー」から「マーカス・ミラーデヴィッド・サンボーン」へと「マーカス上位」へと変化したからである。

 そう。『インサイド』では「デヴィッド・サンボーンマーカス・ミラー」の黄金のバランスが崩壊している。
 デヴィッド・サンボーン名義のソロ・アルバムで,過去にここまでマーカス・ミラーが前面に出たことはなかったし,デヴィッド・サンボーンはというと“ちょい役”のように登場するばかりである。
 まっ,その“ちょい役”での存在感が半端ないのだけれども…。ここがマーカス・ミラーの“狙い”だったのかもしれないけども…。

 “ちょい役”デヴィッド・サンボーンソロ・アルバム=『インサイド』の参加メンバーは,レギュラー陣であるマーカス・ミラーリッキー・ピーターソンに加えて,テナーサックスマイケル・ブレッカートランペットウォレス・ルーニーキーボードギル・ゴールドスタインギターディーン・ブラウンビル・フリゼールドラムジーン・レイクパーカッションドン・アライアス,そうして!ヴォーカルカサンドラ・ウィルソンエリック・ベネイレイラ・ハサウェイスティング

 この超豪華メンバーから発せられる,深く沈み込んだ“ダーク・ビューティー”なR&Bなど一体誰が想像できようか?
 実際には“先手を打って”アルバム・タイトル=『インサイド』が暗示していたのだが,音楽のベクトルが「内へ内へ」と向かっている。ずしりと重い音楽パンチング。

 主役であるアルトサックスのバックで,マーカス・ミラーフレットレスベースが哀しく響き,バス・クラリネットの渋味が空間を支配するマーカス・ミラー一流のストイックな展開が続いてゆく。
 地味派手な「マーカス・ミラーフィーチャリング“シリアス”サンボーン」の登場である。

INSIDE-2 ただし『ソングス・フロム・ザ・ナイト・ビフォア』に続いて,昼のデヴィッド・サンボーンではなく夜のデヴィッド・サンボーン,夏のデヴィッド・サンボーンではなく秋のデヴィッド・サンボーンを聴かせられると,正直,複雑な思いに駆られてしまう。

 “天才”マーカス・ミラーの大名盤だと『インサイド』を褒めつつも,マーカス・ミラーデヴィッド・サンボーンの「内面を掘った」JAZZYでブラックな“シリアス・サンボーン”の“泣きのブロー”は今までのイメージと違うんだよなぁ。

 デヴィッド・サンボーンにはストリートにとどまっていてほしかった!

  01. Corners (for Herbie)
  02. Daydreaming
  03. Trance
  04. Brother Ray
  05. Lisa
  06. When I'm With You
  07. Naked Moon
  08. Cane
  09. Ain't No Sunshine
  10. Miss You

(エレクトラ/ELEKTRA 1999年発売/AMCY-2967)
(ライナーノーツ/佐藤英輔)

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デヴィッド・サンボーン / ソングス・フロム・ザ・ナイト・ビフォア4

SONGS FROM THE NIGHT BEFORE-1 イエーイ! デヴィッド・サンボーン待望のファンキー路線・復活〜!
 しかし,諸手を挙げて喜ぶことなどできない。『SONGS FROM THE NIGHT BEFORE』(以下『ソングス・フロム・ザ・ナイト・ビフォア』)について語ることは好きではない。

 なぜなら『ソングス・フロム・ザ・ナイト・ビフォア』はファンキー・チューンのオンパレードなのだが,聞いていても楽しくない。デヴィッド・サンボーンの様子がどうもおかしい。一言で言えば暗いのだ。

 ノリ一発というよりも渋いファンキー路線であって,思索的な演奏である。デヴィッド・サンボーンの内奥の気持ちが耳に入ってこない。もしかしてスランプなのか? あの大作=『パールズ』で調子を崩してしまったのか?

 まぁ『ソングス・フロム・ザ・ナイト・ビフォア』でデヴィッド・サンボーンが演ろうとした試みは容易に想像がつく。『ソングス・フロム・ザ・ナイト・ビフォア』の狙いは“COOL”なるファンキーであろう。

 きっとデヴィッド・サンボーンは若者受けする“アゲアゲ”の対極として,アダルトなファンキー路線に進出したかったのだと思う。「枯れ」のデヴィッド・サンボーンにも大きな魅力があることを“サンボーン・キッズ”は認めている。

 ただし,腹心の音楽監督=リッキー・ピーターソンが復活させた“ファンキー・サンボーン”は,かっての面影が残らないくらいまで,根こそぎ洗練されている。
 “アゲアゲ”からアダルトへ向けて削るべきマテリアルの中で,削るべきではないデヴィッド・サンボーン特有の“旨味”まで削ってしまっている。その結果,新しいアプローチなのに,どこにでもあるようなファンクフュージョンになってしまっている。

 この点でついに“蜜月関係”を解消したマーカス・ミラーの不在が痛い。デヴィッド・サンボーンの希望とはいえ,リッキー・ピーターソンの打ち込みビートはドライすぎて軽く感じる。

SONGS FROM THE NIGHT BEFORE-2 管理人の結論。『ソングス・フロム・ザ・ナイト・ビフォア批評

 『ソングス・フロム・ザ・ナイト・ビフォア』の黄昏というかセピア色というか,青春を謳歌した後の“ファンキー・サンボーン”のロスタイムの印象で,ついつい淋しさを覚えてしまう…。

 もはや黄金期のように,全力で“ファンキー・サンボーン”できないことを自覚してのモデル・チェンジなのだろう…。淋しい…。
 そう。『ソングス・フロム・ザ・ナイト・ビフォア』の真実とは,デヴィッド・サンボーンの「ヴィンテージ・ファンク」なのである。

  01. RELATIVITY
  02. D.S.P.
  03. RIKKE
  04. LISTEN HERE
  05. SPOOKY
  06. MISSING YOU
  07. RUMPLESTILSKIN
  08. INFANT EYES
  09. SOUTHERN EXPOSURE

(エレクトラ/ELEKTRA 1996年発売/WPCR-858)
(ライナーノーツ/工藤由美)

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デヴィッド・サンボーン / サンボーン・ベスト!〜ドリーミング・ガール4

SANBORN BEST!〜DREAMING GIRL-1 またまた普段めったと買わないベスト盤のレヴューです。ベスト盤を2枚も所有しているジャズメンは数えるほどなので,管理人がいかにデヴィッド・サンボーンに惚れ込んでいたかが分かっていただけると思います。そこんとこよろしくです。
 まっ,実際は「未発表音源入り」なので買っただけなんですけどね〜っ。

 『SANBORN BEST!〜DREAMING GIRL』(以下『サンボーン・ベスト!〜ドリーミング・ガール』)は,エレクトラ移籍後の4枚『ANOTHER HAND』『UPFRONT』『HEARSAY』『PEARLS』からのセレクション。
 この4枚を1枚にコンパイルして感じるのが,やはり『PEARLS』の“異質”ぶり。

 多分,世間的には,この4枚を並べてみると『PEARLS』ではなく『ANOTHER HAND』なのでしょうが,ストレート・ア・ヘッドジャズ・アルバム『ANOTHER HAND』と“アゲアゲ”ファンクグルーヴな『UPFRONT』『HEARSAY』の“根っこ”は同じ。

 対して『PEARLS』は,甘くロマンティックな歌もの集。描く世界観が全然違う。
 朗々と“美メロを吹き上げる”デヴィッド・サンボーンの命を削るかのような説得力が強烈すぎて『PEARLS』の中に秘められているパンチ力は,もしや『UPFRONT』『HEARSAY』を凌駕している?
 
SANBORN BEST!〜DREAMING GIRL-2 3枚:1枚のジャズファンク時代の構図の中で『サンボーン・ベスト!〜ドリーミング・ガール』のリリースのために新録音された【DREAMING GIRL】が『PEARLS』の援軍に回っている。
 『PEARLS』の“異端”ぶりが山下達郎松嶋菜々子のアシストで救われた〜。

 POPS&ROCK方面の「昔取った杵柄」で山下達郎以上に“歌い上げる”デヴィッド・サンボーンの正体とは,日本独自企画盤の『サンボーン・ベスト!〜ドリーミング・ガール』!

  01. DREAMING GIRL
  02. BANG BANG
  03. EVERYTHING MUST CHANGE
  04. BACK TO MEMPHIS
  05. FIRST SONG
  06. SAVANNA
  07. TRY A LITTLE TENDERNESS
  08. FULL HOUSE
  09. GOT TO GIVE IT UP
  10. SUPERSTAR
  11. HOBBIES
  12. SMOKE GETS IN YOUR EYES
  13. BENNY
  14. GEORGIA ON MY MIND

(エレクトラ/ELEKTRA 1996年発売/WPCR-762)
(ライナーノーツ/小川隆夫)

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デヴィッド・サンボーン / パールズ4

PEARLS-1 ジャズメンにとっての“憧れのフォーマット”が「ウィズ・ストリングス」であろう。
 ジャズ畑出身のデヴィッド・サンボーンなのだから,いつかは「ウィズ・ストリングス」という野望が頭の片隅にあったのかもしれない。

 しかし,ついに登場したデヴィッド・サンボーンの「ウィズ・ストリングス」アルバム『PEARLS』(以下『パールズ』)を聴いて,これはデヴィッド・サンボーンの意思ではなく,周りの人間がデヴィッド・サンボーンにセールス目当てで作らせたアルバムだと感じた。
 管理人の直感が正しかろうと間違っていようと,今となっては関係ない。そう感じてしまったことが全てである。だから『パールズ』の演奏自体は大名演なのだけど,好きという感情以前に「踏み込めない壁」というか「違和感」を感じてしまって…。

 そう。『パールズ』が“ジャズっぽくアウトしまくる”『アナザー・ハンド』の直後であれば,管理人もそれなりに納得できたと思う。しかし『パールズ』は『アップフロント』『ヒアセイ』での“アゲアゲ・サンボーン”の大ヒット直後…。予想外だった…。
 『アップフロント』『ヒアセイ』で“GROOVE”の楽しさを知ってしまったデヴィッド・サンボーンが,今更「ウィズ・ストリングス」に興味を持つとは思えなかった。
 だ〜って,メイシオ・パーカーが「ウィズ・ストリングス」に興味を持つとは思えないでしょ?

 デヴィッド・サンボーンというアルト・サックス・プレイヤーは,オリジナルを吹くにしてもカヴァーを吹くにしても,本質は所謂メロディー吹きである。
 その意味で『パールズ』のような,バラードスタンダードな「ウィズ・ストリングス」と来れば“ピシャリ”であろう。

 そう。『パールズ』が出来すぎている。「ウィズ・ストリングス」が出来すぎている。全ては“超大物”トミー・リピューマの音楽である。『ダブル・ヴィジョン』の頃のトミー・リピューマの音楽が“君臨”している。

 ゆえに『パールズ』のデヴィッド・サンボーンの役所は「一介のアルト・サックス・プレイヤー」にすぎない。“泣きのブロー”で叫べば叫ぶほど,デヴィッド・サンボーンの個性から離れてゆき「ウィズ・ストリングス」の美しさが際立つ算段である。

 ズバリ『パールズ』とは「ムーディーすぎる」バラード集であり,ポップスやジャズスタンダードの「甘すぎる」カヴァー集。
 管理人が『パールズ』に,デヴィッド・サンボーン以外の上からの力,を感じたのは『パールズ』のこのセッティングにある。

PEARLS-2 ではなぜデヴィッド・サンボーンはセールス目当てと分かった上で『パールズ』の企画に乗ったのだろうか?
 それはデヴィッド・サンボーンなしに,この豪華企画は成立しないと感じたからではないだろうか? あるいはこのゴージャスなバック・サウンドを他の誰にも渡したくない,という欲が出たのかもしれない。

 『パールズ』は『ダブル・ヴィジョン』の大成功があっての“渋目のムード・サックス”である。こんなにも美しく豊穣な「ウィズ・ストリングス」はデヴィッド・サンボーンでなければ作れやしない。
 「商業主義」の『パールズ』を認めるのはくやしいけれど『パールズ』は数ある「ウィズ・ストリングス」ものの中でも上位に来るべき優秀作品に違いない。

 管理人の結論。『パールズ批評

 『パールズ』での「ウィズ・ストリングス」は,デヴィッド・サンボーンにとっての「夢のアルバム」ではない。トミー・リピューマにとっての「夢のアルバム」なのである。

 ただし『パールズ』の真実とはトミー・リピューマの先にある。
 つまりはバラードスタンダードな「ウィズ・ストリングス」なんて絶対に演らないだろうと思っていた“サンボーン・キッズ”にとっても,これまた「夢のアルバム」なのである。

  01. WILLOW WEEP FOR ME
  02. TRY A LITTLE TENDERNESS
  03. SMOKE GETS IN YOUR EYES
  04. PEARLS
  05. FOR ALL WE KNOW
  06. COME RAIN OR COME SHINE
  07. THIS MASQUERADE
  08. EVERYTHING MUST CHANGE
  09. SUPERSTAR
  10. NOBODY DOES IT BETTER
  11. THE WATER IS WIDE

(エレクトラ/ELEKTRA 1995年発売/WPCR-215)
(ライナーノーツ/小川隆夫)

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デヴィッド・サンボーン / ベスト・オブ・サンボーン4

THE BEST OF DAVID SANBORN-1 サックス界のスーパー・スターとしては遅すぎる,デヴィッド・サンボーン初のベスト・アルバムが『THE BEST OF DAVID SANBORN』(以下『ベスト・オブ・サンボーン』)。

 「ベスト・アルバムは『無用の長物』。なぜならお気に入りのジャズメンのアルバムはオリジナルを全部集める主義」の管理人が『ベスト・オブ・サンボーン』を買ったのは,当時入手困難であった『夢魔』からの楽曲目的。
 『夢魔』の中から2曲選ばれた【夢魔へ】と【イッツ・ユー】は,以前から楽曲は聴いていたのだが,手元に未所有だったもので,ついつい禁断のベスト・アルバムに…。

 それにしても,なぜこのタイミングで『ベスト・オブ・サンボーン』。ワールド企画なのだが,個人的には日本市場向けのベスト・アルバムに思えて悔しかったかった。
 なぜなら『ベスト・オブ・サンボーン』のリリースが,缶コーヒー「GEORGIA」のTVCMで【ジョージア・オン・マイ・マインド】を吹くデヴィッド・サンボーンが大々的に放映されたジャストのタイミング。「便乗商法」を感じたものだから…。


THE BEST OF DAVID SANBORN-2 そしてこの選曲にも“売れ線”の色眼鏡を感じてしまいまして…。POP寄りでスムーズ系でバラード系が多く選曲された全16曲。
 微糖である。だから「GEORGIA」なのだろう。だから「TASTY」なのだろう。

 『ベスト・オブ・サンボーン』を聴きたくなくて『夢魔』のCDを後日購入させていただきました。

  01. Chicago Song
  02. The Dream
  03. Let's Just Say Goodbye
  04. Slam
  05. Lesley Ann
  06. Carly's Song
  07. Anything You Want
  08. A Tear For Crystal
  09. Over And Over
  10. It's You
  11. Hideaway
  12. Rain On Christmas
  13. Hideaway
  14. Lisa
  15. Neither One Of Us
  16. Lotus Blossom

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1994年発売/WPCR-131)
(ライナーノーツ/熊谷美広)

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デヴィッド・サンボーン / ヒアセイ5

HEARSAY-1 デヴィッド・サンボーンは,基本,アルバム毎に異なるコンセプトに挑戦し続けるチャレンジャーである。
 それができるのも,絶対的な個性“泣きのブロー”を持つデヴィッド・サンボーンだからであろう。

 そんなデヴィッド・サンボーンが生涯に2枚だけ,前作と同じコンセプトの続編を制作したことがある。それが“ファンキー・サンボーン”の『A CHANGE OF HEART』を踏襲した『CLOSE−UP』と“アゲアゲ・サンボーン”の『UPFRONT』を踏襲した『HEARSAY』(以下『ヒアセイ』)である。

 この2枚の続編=『CLOSE−UP』と『ヒアセイ』の完成度が著しく高い!
 元ネタである『A CHANGE OF HEART』と『UPFRONT』が,それぞれセールス50万枚以上のゴールド・レコードを獲得した後の「これぞ“ファンキー・サンボーン”の完成版」「これぞ“アゲアゲ・サンボーン”の決定版」的な名演集なのである。素晴らしい。

 『ヒアセイ』にあって『UPFRONT』ないもの。それは「音場の拡がり」であろう。
 『UPFRONT』の“泥臭く土臭い”ジャズファンク路線は,本来のマーカス・ミラーのサウンド・カラーではなかったが『ヒアセイ』の見事なトータル・サウンドの構築力に「デヴィッド・サンボーンマーカス・ミラー」の“復活”を強く感じてしまった。

 そう。『UPFRONT』の魅力が“緩さ”にあったとすれば『ヒアセイ』の魅力は“カッコ良さ”。『ヒアセイ』のデヴィッド・サンボーンが“吹きまくり”で超カッコイイ〜!
 ファンクグルーヴに乗って「俺が主役だ」と主張するデヴィッド・サンボーンアルトサックスが先行し,続編ゆえに追随のレスポンスが上がったマーカス・ミラーが完璧にサポートしてみせる!

 いいや,実際にはマーカス・ミラーが,先の先へと手を打ってデヴィッド・サンボーンファンクグルーヴの「計算されたうねりのうず」へと誘い込んでいる!
 途中でハラハラ・ドキドキさせるリッキー・ピーターソンオルガンによる演出も,最後の最後は「丸くまとまる安心感」が“痛快”である。

HEARSAY-2 管理人の結論。『ヒアセイ批評

 『ヒアセイ』のサウンド・デザインに,どんなにどっぷりと浸かりきっても“目玉”であるファンクグルーヴにやられるのは腰だけ。上半身はいたって“COOL”。
 “アゲアゲ・サンボーン”の“感情大爆発”をこんなにも冷静に楽しめるアルバムは『ヒアセイ』をおいて他にはない。

 「デヴィッド・サンボーンマーカス・ミラー」の比類のないバランス感覚。『ヒアセイ』で極まりけり!

  01. Savanna
  02. The Long Goodbye
  03. Little Face
  04. Got To Give It Up
  05. Jaws
  06. Mirage
  07. Big Foot
  08. Back To Memphis
  09. Ojiji
  10. Georgia On My Mind

(エレクトラ/ELEKTRA 1994年発売/WPCR-12)
(ライナーノーツ/松下佳男)

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デヴィッド・サンボーン / アップフロント5

UPFRONT-1 ついに“アゲアゲ・サンボーン”の大登場! 「裏名盤」の『UPFRONT』(以下『アップフロント』)批評である。

 デヴィッド・サンボーンファンクグルーヴのウネリに乗って,硬派なアルトを“下品に”吹き散らかす!
 ただそれだけなのだが,ストリートに潜って,ついついコブシが回ってしまった?粘っこい“サンボーン節”は,メイシオ・パーカーとは対極の位置に座す,別種の頂点に達しているように思う。

 良しにつけ悪しきにつけ『アップフロント』は「泥臭い」。骨太でシンプルなビートとメロディー。感情の高まりをストレートに表現したノリ一発のジャズファンクに腰が動いてしまう。
 デヴィッド・サンボーンが,ひたすらファンクグルーヴを追及した演奏スタイルが強烈すぎて,緻密なバック・サウンドにまで耳が追いつき難いのだが,個人的にはデヴィッド・サンボーンの“アゲアゲ”以上に,NYシティ系の典型であったマーカス・ミラーの音楽性の変化が気になってしまった。

 マーカス・ミラーが“白いファンクネス”なら,リッキー・ピーターソンは“黒いファンクネス”である。黒人なのに「白」のマーカス・ミラーと白人なのに「黒」のリッキー・ピーターソンの共演が,南北横断で和洋折衷っぽい,ファンクグルーヴの魅力である。

 完璧主義者のマーカス・ミラーが理性を失ってしまうほど,リッキー・ピーターソンの“黒いファンクネス”にハマッテしまったのか? スティーヴ・ジョーダンSOULに憑りつかれてしまったのか?
 『アップフロント』には,そんなマーカス・ミラーについて初めて不安を感じていた鮮明な思い出がある。

 そう。マーカス・ミラーの「サラサラ」な血液とリッキー・ピーターソンの「ドロドロ」な血液が入り混じる,キレと粘りの“アゲアゲ・サンボーン”が最強! アクセルを踏みっぱなしだから見ることのできた,デヴィッド・サンボーンの「血潮のたぎり」!
 デヴィッド・サンボーンの,イっちゃった感のあるヒリヒリしたテンションのアルトサックスに,一種の腫れ物的な熱気を感じてしまう。

 小難しいことなど考えずに,ただHIPでPOPな『アップフロント』に身を委ねて聴き続けていると…。これが意外にも硬派で複雑なフレーズで埋め尽くされていることに気付くようになる。そう。いつしか,前作のジャズ・アルバム『ANOTHER HAND』からの影響を感じるようになる。

 本能の赴くままにアルトサックスを吹き散らかしても『ANOTHER HAND』に通じるアドリブの世界を感じてしまう。
 JAZZYなメタルが響き渡ることによって,ダンサブルでロマンティック度の高い『アップフロント』=「メイシオ・パーカーへの切り札」が完成したのではないだろうか?

UPFRONT-2 「蛇使い」なアドリブでヒーヒー言わす【SNAKE】。R&Bのソウルが爆発するバラード・ナンバーの【BENNY】。エリック・クラプトンの【FULL HOUSE】よりもリチャード・ティーコーネル・デュプリーの【SOUL SERENADE】。今や沼澤尚の十八番な【BANG BANG】。オーネット・コールマンの【RAMBLIN’】で跳ねまくる“アゲアゲ・サンボーン”こそが「裏名盤」!

 得意の打ち込みを控えてアナログ・メインなジャズ系の生音を可能にしたのが『アップフロント』におけるマーカス・ミラーの“緩さ”にある。
 普段では決して見せることのない「デヴィッド・サンボーンマーカス・ミラー」の“緩さ”に『アップフロント』の価値がある。

 まっ,そうは言っても,マーカス・ミラーのノー・チョッパーの指弾きベースと組んだスティーヴ・ジョーダンのタイトでジャンプするドラムリッキー・ピーターソンのシンプルなハモンドオルガンの低音ビートが“グイグイ”脳内に入って来ますよ〜!

 『アップフロント』『ヒアセイ』での“アゲアゲ・サンボーン”こそが,聴いていて最高に楽しいデヴィッド・サンボーン〜!

  01. snakes
  02. benny
  03. crossfire
  04. full house
  05. soul serenade
  06. hey
  07. bang bang
  08. alcazar
  09. ramblin'

(エレクトラ/ELEKTRA 1992年発売/WMC5-493)
(ライナーノーツ/寒川光一郎)

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デヴィッド・サンボーン / アナザー・ハンド5

ANOTHER HAND-1 『A CHANGE OF HEART』『CLOSE−UP』で“絶頂を極めた”デヴィッド・サンボーン
 “最高傑作”『CLOSE−UP』でデヴィッド・サンボーンは“燃え尽きた”のだと思う。やりたいことを全部やり尽くし,金も名誉も手に入れて,次なるモチベーションが見つからなかったのだと思う。

 そこでデヴィッド・サンボーンワーナー・ブラザーズを辞めて「自分探し」の旅に出た。実に3年間も沈黙した。“サンボーン・キッズ”としては待つのが辛かった。置き土産のような『CLOSE−UP』をよく聴いていたよなぁ。

 そうして,ついに発表された『ANOTHER HAND』(以下『アナザー・ハンド』)は,デヴィッド・サンボーン初のジャズ・アルバム。
 コマーシャルな世界から離れ,内奥の自分を確認するために旅に出たデヴィッド・サンボーンが,自分のルーツであるジャズ・アルバムを携えて帰ってきた。

 これまで「好きだ,好きだ」と公言していたけれども,管理人はデヴィッド・サンボーンをみくびっていたのだと思う。こんなにもジャズに“映える”アルトサックスを吹けるとは思っていなかった。“ジャズメン”デヴィッド・サンボーンを男として見直したのだった。
 へぇ〜,ジャズを演るとこんなにも変わるものなのか? これが管理人の『アナザー・ハンド』の第一印象である。だからタイトルが『アナザー・ハンド』になったのだ…。

 ジャズと言っても『アナザー・ハンド』は,4ビートの純ジャズスタンダード集ではない。激しいアドリブの応酬系でも,フリージャズでもない。
 デヴィッド・サンボーンオリジナルコンテンポラリージャズは,なんと!ECMから発売されてもおかしくないビル・フリゼールチャーリー・ヘイデンジャック・デジョネット等の「重鎮」が集まった“COOLな”ジャズ・ブルースであった。

 そう。デヴィッド・サンボーンのルーツはジャズだけでなくR&B。デヴィッド・サンボーンジャズを演ろうとすると“ブルース魂”が出てきてしまう。

 一般にジャズを演った『アナザー・ハンド』を異色盤と言われているが,管理人にとってデヴィッド・サンボーンの異色盤は『ささやくシルエット』と『パールズ』の2枚であって『アナザー・ハンド』は,後の『アップフロント』『ヒアセイ』へと続く「ジャズファンク路線」への“伏線”となっている。

ANOTHER HAND-2 『アナザー・ハンド』が,どうしてもフォーク調に偏って聴こえてしまうのはチャーリー・ヘイデンの存在にある。『アナザー・ハンド』のは同じベーシストとして“盟友”マーカス・ミラーも参加しているのだが『アナザー・ハンド』のベーシストは,断然,チャーリー・ヘイデンである。

 『アナザー・ハンド』のハイライトはチャーリー・ヘイデンの【FIRST SONG】。パット・メセニーゴンサロ・ルバルカバを魅了した,この名曲の最高バージョンがデヴィッド・サンボーンの【FIRST SONG】。
 ビル・フリゼールギター・サウンドは,パット・メセニーとは一味違うビターなギター。この浮遊感あるビル・フリゼールと相まみれるデヴィッド・サンボーンのトーンを押さえた“泣きのブロー”が大好物なのである。

 ずっとぼけたテンションでジャズっぽくアウトしまくる『アナザー・ハンド』のアルトサックスは,サンボーン嫌いのジャズ・ファンにも,ジャズ嫌いのサンボーン・ファンにとっても必聴盤なのですよっ。

 …と今振り返れば余裕の精神状態で『アナザー・ハンド批評を書いていますが『アナザー・ハンド』発売時点でのデヴィッド・サンボーンの“激変”には,流石の管理人も慌ててしまいました。あのままジャズメインストリームに突き進むことへの期待も当然ありましたが,期待以上に恐れと不安が強かったので『アップフロント』での“アゲアゲ・サンボーン”の登場に,ほっと胸を撫で下ろしたことを思い出します。

 その意味でデヴィッド・サンボーンの『アナザー・ハンド』は本田雅人の『ILLUSION』。これが『アナザー・ハンド批評の結論で〜す。

  01. First song
  02. moniCa jane
  03. come To Me, nina
  04. hObbies
  05. another Hand
  06. Jesus
  07. weirD from one step Beyond
  08. CEE
  09. medley:
    prayers for Charlie from the devil at four O'clock
    The lonely from the Twilight zone
  08. dukes & counts

(エレクトラ/ELEKTRA 1991年発売/WPCR-27468)
(ライナーノーツ/松下佳男)

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デヴィッド・サンボーン / チェンジ・オブ・ハート5

A CHANGE OF HEART-1 デヴィッド・サンボーンの『HEART』三部作とは,名盤HEART TO HEART』 → 大名盤STRAIGHT TO THE HEART』 → 超名盤A CHANGE OF HEART』(以下『チェンジ・オブ・ハート』)。
 そう。『チェンジ・オブ・ハート』こそが『HEART』三部作の完結作! …というか(管理人は『CLOSE−UP』派なのですが)『CLOSE−UP』と人気を二分するデヴィッド・サンボーンの“最高傑作”の1枚である!

 どうですか! この豪華すぎるサポート・メンバー。ベースキーボードギターマーカス・ミラーを筆頭に,ギターハイラム・ブロックカルロス・リオスニッキー・モロキベースアンソニー・ジャクソンピアノドン・グロルニックシンセサイザーフィリップ・セスロニー・フォスターマイケル・センベロバーナード・ライトジェイソン・マイルスドラムスティーヴ・ガッドスティーヴ・フェローンジョン・ロビンソンパーカッションポウリーニョ・ダ・コスタミノ・シネルEWIマイケル・ブレッカー…。

 またまたどうですか! マイケル・コリーナマーカス・ミラーロニー・フォスターフィリップ・セスの4人が同時投入された凄腕プロデューサー陣…。

 フュージョン界のオール・スター・キャストを1人で率いるデヴィッド・サンボーン。前作『STRAIGHT TO THE HEART』から3年4か月もファンを待たせてしまうデヴィッド・サンボーン。大物である。スーパー・スターである。

 そう。『チェンジ・オブ・ハート』でのデヴィッド・サンボーンは,フュージョン・サックス・プレイヤーの「枠」を飛び越え,世界一のサックス奏者としての「絶対的な自信」が“音の表情”に表われている。

 要はイケイケで無敵の「絶頂期」のデヴィッド・サンボーン・サウンドである。4人のプロデューサーの個性豊かで「強すぎるバック・サウンド」を“サンボーン節”一発で,自分の音としてまとめ上げる高トルクでハイパワー。毎朝,体内にパワーが漲ってくるのだろう。とにかく若々しく,ギラツイタ,メタルなサックスが超カッコイイ。

A CHANGE OF HEART-2 『CLOSE−UP』の目玉は“ファンキー・サンボーン”の代表曲【CHICAGO SONG】。“夏到来”のテーマ曲【SUMMER】。大バラード曲【THE DREAM】のビッグ3!

 詳しくは書かない。とにもかくにも【CHICAGO SONG】【SUMMER】【THE DREAM】を聴いて,踊り狂い,とめどなく続く感動に大泣きしてほしい。

 『チェンジ・オブ・ハート』からはデヴィッド・サンボーンの「ドヤ顔」が聴こえてくる。そんな愛すべきアルバムである。

  01. Chicago Song
  02. Imogene
  03. High Roller
  04. Tintin
  05. Breaking Point
  06. A Change Of Heart
  07. Summer
  08. The Dream

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1987年発売/32XD-631)
(ライナーノーツ/松下佳男)

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デヴィッド・サンボーン / ストレイト・トゥ・ザ・ハート5

STRAIGHT TO THE HEART-1 前回の『BACKSTREET批評で書いたのだが『STRAIGHT TO THE HEART』(以下『ストレイト・トゥ・ザ・ハート』)を,デヴィッド・サンボーンの“総決算”とする世評は間違いである。

 そう。ノリノリで大盛り上がりの『ストレイト・トゥ・ザ・ハート』は,従来の“メローサンボーン”の「集大成」などではなく,新たなる「サンボーン伝説」の始まりを告げるライブ盤であった。
 『HIDEAWAY』寄りではなく『A CHANGE OF HEART』『CLOSE−UP』へと続くデヴィッド・サンボーン「絶頂期」の幕開けを告げるライブ盤なのである。

 『ストレイト・トゥ・ザ・ハート』を“総決算”だと語るサンボーン・ファンは選曲を見てのことだろう。確かに『ストレイト・トゥ・ザ・ハート』は,大人気ヒット・パレード集のライブ盤である。
 しかし『ストレイト・トゥ・ザ・ハート』で披露された新アレンジは,ただただ“FUNKY”!

 ついに『ストレイト・トゥ・ザ・ハート』で“ファンキー・サンボーン”の本質が解放されてしまった! マーカス・ミラーに“ファンキー・サンボーン”の「蛇口をひねられてしまった」!
 ファンキー&ダンサブルで大人気ヒット・パレード集の“上塗り”完了! もはやスタジオ盤のオリジナル・バージョンなど聞かなくてもよい。熱狂的なサンボーン・ファンにそう思い込ませてしまう「伝説」のライブ盤に「頭パッカーン」!

 この全ては“天才”マーカス・ミラーの大仕事である。哀愁のアルトを“白いファンクネス”に乗せてしまっている。
 そう。リッキー・ピーターソンが“黒いファンクネス”ならマーカス・ミラーは“白”。白の理由はマーカス・ミラーの“冷静な”音楽眼にある。
 デヴィッド・サンボーンの“緩急自在のアドリブ”をファンキーでタメの効いたボトムで「理路整然」と固めている。

 【HIDEAWAY】と【RUN FOR COVER】でのマーカス・ミラーベース・ソロは,楽曲をリードするテクニカルなベース・ソロ
 マーカス・ミラーが本気を出せば,現代の“超絶系”ベーシストも“お顔真っ青”なパッツンパッツンの早弾きにして,いつしか「起承転結」なサビが仕掛けられていることに気付いてしまう。超カッコイイ!
 世の「ベース小僧」にこぞってコピーされてきた2フィンガーからの“チョッパーの嵐”に驚喜乱舞! 「パンチラ野郎」のマーカス・ミラーがついに見せた「パンモロ」に大興奮!

 そうして,ここからが管理人が書きたいマーカス・ミラーの“天才”なのだが,あんなに激しいベース・ソロを弾いている間でも,ドラムのタムやギターのカッティングを注意深く聴いていると思える節がある。マーカス・ミラーは「起承転結」のベース・ソロを構築しながらも,常に他のメンバーとの音楽的な調和を忘れてはいない。
 いや〜,凄いぞマーカスマーカス・ミラーが凄すぎる〜!

 大バラードの【STRAIGHT TO THE HEART】におけるマーカス・ミラーベース・ラインを耳で追いかけてほしい。
 序盤はデヴィッド・サンボーンアルトサックスをシンプルのサポートしているだけであるが,デヴィッド・サンボーンが熱くなると同時にマーカス・ミラーチョッパーを繰り出してくる。
 バラードに“煽る”チョッパーがこんなにも合うなんて実にCOOL! デヴィッド・サンボーンの良さが格段と引き立てられた中盤のリフがGROOVY! バラードなのに相当に熱い!

STRAIGHT TO THE HEART-2 ズバリ『ストレイト・トゥ・ザ・ハート』でのマーカス・ミラーベースは「スーパー・チョッパーベーシスト」以上に「プロデューサーのベース・サウンド」として響いている。

 “ファンキー・サンボーン”としての,新たなる「サンボーン伝説」はマーカス・ミラーなしでは成立しない。マーカス・ミラーの不在など考えられない。
 ゆえに(ボブ・ジェームスと共演した『DOUBLE VISION』があるにはあるが)次作『A CHANGE OF HEART』のリリースまでに3年4か月。この空白の理由はマイルス・デイビスによるマーカス・ミラーの「引き抜き」期間そのまんまである。

 ズバリ『TUTU』におけるマイルス・デイビスマーカス・ミラーへの「おんぶにだっこ」は『ストレイト・トゥ・ザ・ハート』の「副産物」。
 マイルス・デイビスの目に留まった『ストレイト・トゥ・ザ・ハート』のマーカス・ミラーは『WE WANT MILES』『STAR PEOPLE』の頃の“最強チョッパー・ベーシスト”していたマーカス・ミラーではなかった。
 “天才”サウンド・クリエイターとしてのマーカス・ミラーなのである。

 それにしてもデヴィッド・サンボーン・クラスのビッグネームのライブ盤が『ストレイト・トゥ・ザ・ハート』1枚のみとはおかしくないのか? “ファンキー・サンボーン”期のライブであれば,最高レベルの音源がゴロゴロしているはずでしょうに…。

 「SELECT LIVE UNDER THE SKY」の88年,90年,91年はマーカス・ミラー名義,92年で計4枚。ワーナーさん。

  01. HIDEAWAY
  02. STRAIGHT TO THE HEART
  03. RUN FOR COVER
  04. SMILE
  05. LISA
  06. LOVE & HAPPINESS
  07. LOTUS BLOSSOM
  08. ONE HUNDRED WAYS

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1984年発売/WPCR-3563)
(ライナーノーツ/松下佳男,谷頭康夫)

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デヴィッド・サンボーン / バックストリート5

BACKSTREET-1 ソロデビュー以降の全アルバムがヒットを記録し,ヒット・チャートの1位を獲得,グラミー賞も受賞して「スター街道」を歩んできたデヴィッド・サンボーン
 そんなデヴィッド・サンボーンが「裏通り」を寄り道してみたのが『BACKSTREET』(以下『バックストリート』)である。

 ただし,デヴィッド・サンボーンの『バックストリート』は“原宿”の「表参道」ではなく「竹下通り」のような“雑踏フュージョン”である。
 つまり「裏通り」は「裏通り」でも実質は「メイン・ストリート」。文化の本当の中心がサブカルであるように「裏通り」の『バックストリート』が「デヴィッド・サンボーンマーカス・ミラー」の「裏の裏」→「王道」なのである。こんな逆転現象が最高に面白い!

 『バックストリート』のベーシック・トラックはマーカス・ミラーの打ち込みである。打ち込みだとバカにするなかれっ。
 マーカス・ミラーが準備した『バックストリート』は並みの打ち込みではない。「裏通り」の“雑踏”をモチーフにしたかのようなグルーヴを感じさせる,スティーヴ・ガッドドラムラルフ・マクドナルドパーカッションハイラム・ブロックバジー・フェイトンのリズム・ギターを取り入れた“生っぽい”打ち込みなのである。

 そう。『ストレイト・トゥ・ザ・ハート』に選曲された人気曲はないけれども『バックストリート』は『ストレイト・トゥ・ザ・ハート』「特需」など不要の大名盤
 『バックストリート』の幅広い音楽性,日陰なのに陽が当たるとカラフルに変化する音楽性こそ「デヴィッド・サンボーンマーカス・ミラー」の「蜜月状態」が生み落とした大名盤! 楽曲も演奏も全てが「裏通り」というテーマにピタッとハマッタ大名盤

 例えば【I TOLD U SO】での重厚なリズムは,都会の路地裏にまでは入り込むタクシーのエンジオン音であるし【BACKSTREET】は,ちょっと危険な夜中にたむろする若者たちの会話のようである。都会の喧騒こそが“サンボーン節”のカッコイイBGM…。
 ライブで取り上げるのは難しいだけ?

BACKSTREET-2 話の流れで脱線してしまうが“地味な”『バックストリート』に続く“派手な”『ストレイト・トゥ・ザ・ハート』が「デヴィッド・サンボーンマーカス・ミラー」の“総決算”として語られることが多いのだが,管理人としては『バックストリート』こそが『ハート・トゥ・ハート』以降のリアル・サンボーンの“総決算”だと断言する。

 『ハート・トゥ・ハート』で“栄光の三段跳び”のスタートラインについた“メローサンボーン”が『ハイダウェイ』でHOP〜『夢魔』でSTEP〜“孤高の”『ささやくシルエット』を飛ばして『バックストリート』で大JUMP!

 ズバリ『バックストリート』こそが,ジャズでもなくフュージョンでもなく,R&BでもAORでもない「デヴィッド・サンボーンマーカス・ミラー」という「ジャンル」の代表作である。間違いない。

  01. I TOLD U SO
  02. WHEN YOU SMILE AT ME
  03. BELIEVER
  04. BACKSTREET
  05. A TEAR FOR CRYSTAL
  06. BUMS CATHEDRAL
  07. BLUE BEACH
  08. NEITHER ONE OF US

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1983年発売/WPCP-3562)
(ライナーノーツ/青木和富,本多俊之)

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デヴィッド・サンボーン / ささやくシルエット5

AS WE SPEAK-1 世界一の“泣きのブロー”を個性とするデヴィッド・サンボーンなのだから,デヴィッド・サンボーンは「何を吹いてもデヴィッド・サンボーン」。
 しか〜し,基本は同じのデヴィッド・サンボーンほど,アルバム毎に違った表情を見せてくれるジャズメンもそうはいない。デヴィッド・サンボーンはチャレンジャーなのだ。

 「スタジオ・ミュージシャンのまんま」な『テイキング・オフ』。ソロ・アーティスとしての「自己主張」作『メロー・サンボーン』。「デヴィッド・サンボーン・バンド」の『流麗なる誓い』。「直球すぎる」アルトサックスの『ハート・トゥ・ハート』。ボーカル「封印」の『ハイダウェイ』。マーカス・ミラーに「引き出しを開けられてしまった」『夢魔』。
 オンリーワンの“サンボーン節”が,こんなにも変化するのだからたまらない!

 で,今夜の主役=『AS WE SPEAK』(以下『ささやくシルエット』)であるが,デヴィッド・サンボーンの全ディスコグラフィ中“孤高”のアルバムである。
 続く『バックストリート』が『ハイダウェイ』〜『夢魔』のラインに舞い戻った感じがするから余計に『ささやくシリエット』の“異質”が際立っている。

 『ささやくシルエット』の“突然変異”の最大要因は,従来のマイケル・コリーナレイ・バーダニマーカス・ミラーの手を離れたロバート・マーグレフによる新プロデュースが大きい。
 『ささやくシルエット』でのロバート・マーグレフの狙いは“サンボーン節”&男性ボーカルの「AOR」であった。

 クルセイダーズランディ・クロフォードと組んで大ヒットした【STREET LIFE】以降,フュージョンと女性ボーカルの組み合わせが試されてきた。デヴィッド・サンボーンもこれまでラニ・グローヴスパティ・オースティン等と共演してきたのだが,ロバート・マーグレフは“サンボーン節”にマイケル・センベロという新たな才能をぶつけてきた。

 このマイケル・センベロこそが,マーカス・ミラーリッキー・ピーターソンに次ぐ,デヴィッド・サンボーンにとっての重要人物。まっ,理由は後の【THE DREAM】なのだから…。
  
 『ささやくシルエット』でのマイケル・センベロが「AOR」。マイケル・センベロギターも弾くが,これがまたマーカス・ミラーオマー・ハキムの鉄壁のリズム隊と相性バツグンのカッティングで,R&B寄りだった“サンボーン節”が一気に「垢ぬけたシティ系」に仕上がっている。

 デヴィッド・サンボーンには珍しくソプラノサックスを多用しているのもロバート・マーグレフ効果なのか,とにかく『ささやくシルエット』が,デヴィッド・サンボーンが一番グローヴァー・ワシントンJR.に近づいたアルバムである。

AS WE SPEAK-2 オープニングの軽快な【ポート・タウン・セレナーデ】に始まり,慌しい都会の動きを表現した【ラッシュ・アワー】。夕暮れが摩天楼に映える【ストレイト・トゥ・ザ・ハート】など「都会的なオシャレ」を凝縮したかのようなアルバム作りで全曲名曲。

 そんなデヴィッド・サンボーン初の“5つ星”名盤=『ささやくシルエット』の中核を成すのが「AOR」の【バック・アゲイン】。【バック・アゲイン】でのマイケル・センベロの活躍なくして“フュージョン・男性ボーカリスト”は誕生していない。

 そう。「何を吹いてもデヴィッド・サンボーン」が『ささやくシルエット』で吹いたのは,あの時代のフュージョン・サックス → これが近未来のスムーズ・ジャズだったのかっ!?
 82年リリースにして,すでにバブリーな『ささやくシルエット』のジャケットでの「逆三角形のいかり肩の肩パット」が“アーバン・ストリーム”の象徴になるのであろう。

  01. PORT OF CALL
  02. BETTER BELIEVE IT
  03. RUSH HOUR
  04. OVER AND OVER
  05. BACK AGAIN
  06. AS WE SPEAK
  07. STRAIGHT TO THE HEART
  08. RAIN ON CHRISTMAS
  09. LOVE WILL COME SOMEDAY

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1982年発売/WPCP-3561)
(ライナーノーツ/岩浪洋三)

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デヴィッド・サンボーン / 夢魔4

VOYEUR-1 デヴィッド・サンボーンと来ればマーカス・ミラーであり,マーカス・ミラーと来れば【RUN FOR COVER】である。
 ゆえに『VOYEUR』(以下『夢魔』)について語ろうと思う時,そんなデヴィッド・サンボーンの代表曲にしてマーカス・ミラーの代表曲でもある【RUN FOR COVER】を外すわけにはいかない。

 しかし『夢魔』は【RUN FOR COVER】のアルバムではない。グラミー受賞曲の【ALL I NEED IS YOU】のためのアルバムなのである。
 事実,管理人が『夢魔』を聴く時,もう何年も【ALL I NEED IS YOU】の1曲だけしか聴いてはいない。

( 【RUN FOR COVER】について語られるべきは『夢魔』ではなく『STRAIGHT TO THE HEART』収録の【RUN FOR COVER】。【RUN FOR COVER】については『STRAIGHT TO THE HEART批評の中でじっくりと…。 )

 『夢魔』でのデヴィッド・サンボーンは,機械的にファンクしつつも,マーカス・ミラーの準備した「きらめくアーバン・グルーヴ」をバックに“くどいくらいにエモーション”することが「自分のアイデンティティ」と考えていたのだろう。
 軽快すぎるオケをバックに,人間味ある「泥臭い」“サンボーン節”の一大ショーケースを披露している。そういう意味では【RUN FOR COVER】であり【LET’S JUST SAY GOODBYE】が『夢魔』のショーケースと言えるだろう。

 最初から最後まで“サンボーン一色”に染め上げられた『夢魔』だったから,逆にボーカルを前面に押し出した【ALL I NEED IS YOU】におけるマーカス・ミラーの“仕掛け”にデヴィッド・サンボーンが惚れ込んだ!

 とことんソフトでメロディアスな“サンボーン節”には,ワンフレーズで曲を“呑み込む”強さがある。それがどうだろう…。

VOYEUR-2 【ALL I NEED IS YOU】での,ボーカルアルトサックスの「まさかのハーモニー」は,もはや掛け合いではなく「デュエット」である。ついに“あの”デヴィッド・サンボーンが「究極の歌伴」を演ったのだ。

 落ち着いたトーンで優しく愛撫されているかのような“エモーショナル・サンボーン”は【ALL I NEED IS YOU】が,管理人の初めての体験であった。

 灰汁が強すぎて,他には使いようのなかった“泣きのブロー”を「透明化&万能細胞化」してしまったマーカス・ミラーの“剛腕ぶり”!
 POPS寄りだったデヴィッド・サンボーンを,R&Bやソウル,ファンクに寄せたフュージョンサックスの流れるようにリズムに乗りきった豊かな音色が“輝いている”!

 そう。フュージョン・サックスの「巨匠」として,いじりようのない存在と思われていたデヴィッド・サンボーンが,未だ新人同然だったマーカス・ミラーに「引き出しを開けられてしまった」のだ。
 これこそがデヴィッド・サンボーンマーカス・ミラー“夢のコラボレーション”の真価であり,後に「哀愁のアルトを白いファンクネスに乗せてしまう」こととなる。

  01. Let's Just Say Goodbye
  02. It's You
  03. Wake Me When It's Over
  04. One In A Million
  05. Run For Cover
  06. All I Need Is You
  07. Just For You

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1981年発売/WPCR-28022)
(ライナーノーツ/松下佳男)

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デヴィッド・サンボーン / ハイダウェイ4

HIDEAWAY-1 『HEART TO HEART』で「自分の音」「自分の個性」を確立させたデヴィッド・サンボーンが『HIDEAWAY』(以下『ハイダウェイ』)では「メローメロディーメーカーとしての自分」を確立させたと思っている。

 『HEART TO HEART』のデヴィッド・サンボーンは,ランディ・ブレッカーマイケル・ブレッカーブレッカー・ブラザーズとセットで組んで「技巧派」の領域で人気を得てきた。
 しかし『ハイダウェイ』を聴くと,そんな「技巧派」としてのデヴィッド・サンボーンの面影はどこにも見当たらない。ファズトーンも数カ所で聴き取れるが,それはそこに必要な音だったから。つまりは必要がなければ「完全封印」。

 バッキバキでキメキメ・テクニシャンとしてしてスタジオで活躍していた,従来のセッション中心のスタイルとは“決別”してみせている。
 マイケル・ブレッカーが「STEPS」で,エレクトリックジャズの革新を試みた流れとは正反対の「メロディーを紡ぐ」スタイルへと変化してきている。

 “サンボーン・キッズ”の間で『ハイダウェイ』=「重要作」と語られている理由がここにある。デヴィッド・サンボーンにとって『ハイダウェイ』での“第二の決別”。それがボーカル・ナンバーとの決別である。

 個人的に『ハイダウェイ』のハイライトは,ソフト&メローで感情の起伏が情感豊かに表現されている【CARLY’S SONG】【THE SEDUCTION(LOVE THEME)】【LISA】【IF YOU WOULD BE MINE】の4曲なのだが,一般的に名高いのは,ドゥービー・ブラザーズボーカリストマイケル・マクドナルドと共作した【ANYTHING YOU WANT】と【AGAIN AN AGAIN】の方であろう。

 『HEART TO HEART』で,様々な情感を多彩に醸し出した“泣きのサンボーン”が完成されていたのだから,今更,ボーカルなしでも不思議ではないのだが,管理人は『SANBORN』『PROMISE ME THE MOON』で,アルトサックスと同等にフィーチャリングしてきた,得意とするボーカル・ナンバーを「封印」した事実に『ハイダウェイ』=「重要作」の意味を見る。
 マイケル・マクドナルドのネーム・バリューで,POPSやR&B方面にまで,自分が得意とするボーカルに“絡みつく”アドリブを披露する“せっかくの機会”だったというのに…。

HIDEAWAY-2 そう。『ハイダウェイ』以降,ボーカリストは“俺1人だ”と言うデヴィッド・サンボーンの「胸の内」が表現されている。
 『ハイダウェイ』以降,使われ始めたアルトサックスの多重録音と深いエコー処理に“ボーカリストデヴィッド・サンボーンの「自己主張」が伝わってくる。

 まっ,デヴィッド・サンボーンはその後,ボーカルと完全に縁が切れてしまったわけではないけれども『ハイダウェイ』の,以前以後,ではボーカルへの依存度が薄まっている。ボーカリストは2人も要らない。

 デヴィッド・サンボーンが「メローメロディーメーカーとしての自分」を確立させた『ハイダウェイ』。
 アルトサックスボーカルに見立てた“サンボーン節”の言葉以上の説得力が素晴らしい。洗練された“サンボーン節”は他の誰とも“被らない”。

PS 記事本文の中で触れる必要性もないので書かなかったが,読み返して『ハイダウェイ』が「重要作」とされる“もう一つの理由”についても意見を述べなければないだろうっと。『ハイダウェイ』は「デヴィッド・サンボーン批評」を語る上で外せないマーカス・ミラーとの初共演盤。そうはいってもマーカス・ミラーが参加したのは『ハイダウェイ』の全8トラック中1トラックのみ。しかも全く目立っていない。にも関わらずマーカス・ミラーを次作【VOYEUR】で起用したデヴィッド・サンボーンに元セッションメンとしての「嗅覚」が感じられる。

  01. Hideaway
  02. Carly's Song
  03. Anything You Want
  04. The Seduction (Love Theme)
  05. Lisa
  06. If You Would Be Mine
  07. Creeper
  08. Again An Again

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1980年発売/WPCP-3559)
(ライナーノーツ/青木誠)

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デヴィッド・サンボーン / ハート・トゥ・ハート4

HEART TO HEART-1 アルトサックス奏者足るもの,絶対に避けて通ることのできない「2人の巨匠」がいる。ジャズを志す者にとってのチャーリ・パーカーフュージョンを志す者にとってのデヴィッド・サンボーンである。

 ジャズサックスを吹こうと思えば,どうしてもチャーリ・パーカーに似てしまうし,フュージョンサックスを吹こうと思えば,どうしてもデヴィッド・サンボーンに似てしまう。
 チャーリ・パーカーからいかに離れられるか,デヴィッド・サンボーンからどうやったら逃れられるか,これがプロのアルトサックス奏者に課せられた“宿命”となっている。

( 注: デヴィッド・サンボーンは『HEART TO HEART』で客演も務めた「ギル・エヴァンス楽団」在籍中に名を挙げたジャズ畑出身のジャズメン。なのにデヴィッド・サンボーンにはチャーリ・パーカーの影響が感じられないのが「新巨匠」の証し )

 そんな「巨匠」デヴィッド・サンボーンの「孤高の個性」は,一夜にて完成されたわけではなかった。愛するがゆえの暴言を記せば『TAKING OFF』『SANBORN』『PROMISE ME THE MOON』までのデヴィッド・サンボーンは,流行りのファッションみたいなフュージョンであった。
 「デヴィッド・サンボーンを聴いている」=「カッコイイ自分」を気取っているようなものだった。

 『PROMISE ME THE MOON』のリリースを終えて,デヴィッド・サンボーンのレギュラー・バンドは解散した。
 ソロ活動に専念するにあたり,流行で終わらないための「試行錯誤」を重ねたのだろう。“売れ線”にどっぷりと浸かりながらも,ソロ・アーティストとしての「自分の音楽」を真面目に追及したのだろう。
 『HEART TO HEART』(以下『ハート・トゥ・ハート』)は「お洒落なBGM」では終わらない。カフェで読書の「ながら聞き」などできやしない。WOWWOWWOO。

 『ハート・トゥ・ハート』を聴いた瞬間,管理人の背筋を“パーカー・ショック”ならぬ“サンボーン・ショック”が突き抜けた。
 『ハート・トゥ・ハート』で,ついに管理人の大好きなデヴィッド・サンボーンが登場してきた。そう。『ハート・トゥ・ハート』で,デヴィッド・サンボーンの「孤高の個性」=様々な情感を多彩に醸し出した“泣きのサンボーン”が完成されていたのだ。

 ミディアム・ナンバーやスロー・バラードだけでなく,ファンキーグルーヴにも乗っかりツッカカル,あの「メタルの音色」の“サンボーン節”が,どうにもこうにも耳について,一度聴いたら頭から離れなくなる。

HEART TO HEART-2 「デヴィッド・サンボーン・バンド」解散後の特権であるが『ハート・トゥ・ハート』のベーシック・トラックは,スタッフからエレピリチャード・ティードラムスティーヴ・ガッドトランペットランディ・ブレッカーテナーサックスマイケル・ブレッカーによるブレッカー・ブラザーズピアノドン・グロルニックパーカッションラルフ・マクドナルドベースアンソニー・ジャクソンヴァイヴマイク・マイニエリギターハイラム・ブロックデヴィッド・スピノザ等,フュージョン界の精鋭たちが完璧な演奏とアレンジで作り上げた“極上サウンド”!

 そこへソウルフルでエモーショナルでハートフルに“歌う”デヴィッド・サンボーンの「直球すぎる」アルトサックスが流れる瞬間の“恍惚感”が世界一!
 「スーパー・スター」デヴィッド・サンボーンアルトソロに入ると同時に,音場の空気が変わるのが実感できる。

 これだ,これなんだ! “サンボーン・キッズ”が憧れる“泣きのブロー”が『ハート・トゥ・ハート』で,急激に鳴りまくっている!

 『ハート・トゥ・ハート』から「永遠のスーパー・ヒーロー」デヴィッド・サンボーンの快進撃が始まった!

  01. SOLO
  02. SHORT VISIT
  03. THEME FROM “LOVE IS NOT ENOUGH”
  04. LOTUS BLOSSOM
  05. HEBA
  06. SUNRISE GOSPEL
  07. ANYWHERE I WANDER

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1978年発売/WPCP-3550)
(ライナーノーツ/青木啓)

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デヴィッド・サンボーン / 流麗なる誓い4

PROMISE ME THE MOON-1 一般的なデヴィッド・サンボーン好きには「何かが違う」と思われがちだが,濃いデヴィッド・サンボーン・マニアには,諸手を挙げて歓迎される人気盤。それが『PROMISE ME THE MOON』(以下『流麗なる誓い』)である。

 『流麗なる誓い』におけるデヴィッド・サンボーンは,フュージョンサックスなど吹いていない。『流麗なる誓い』でデヴィッド・サンボーンが吹いているのは「POPでロックでAORな」アルトサックス
 なぜなら『流麗なる誓い』は,デヴィッド・サンボーンの全ディスコグラフィ中,唯一の「デヴィッド・サンボーン・バンド」名義のアルバムなのである。

 そう。『流麗なる誓い』におけるデヴィッド・サンボーンは,バンドのフロントマン。デヴィッド・サンボーンのメインの仕事は「歌うこと」である。
 “御大”デヴィッド・サンボーンなのだから,今となっては貴重すぎて,お宝的な1枚になったが『流麗なる誓い』では,ヴォーカルを披露しソプラニーニョで“天下を取っている”。
 アルトサックスも吹いてはいるが,デヴィッド・サンボーンのそれは,アルトを鳴らす感じではない。これはコーラスである。曲にコーラスを付けている。流石は「スタジオ・ミュージシャン上がり」な“絶妙すぎる”仕上りである。

 どうにもこうにもデヴィッド・サンボーン“らしさの薄い”『流麗なる誓い』であるが,聴き誤ってはならない。『流麗なる誓い』の最大の魅力は,デヴィッド・サンボーンの考える“バンド・サウンド”にある。

 「デヴィッド・サンボーン・バンド」のメンバーは,アルトサックスソプラニーニョリリコンヴォーカルデヴィッド・サンボーンキーボードロザリンダ・デレオンギターヴォーカルハイラム・ブロックベースに「パット・メセニー・グループ加入前の!」マーク・イーガンドラムヴィクター・ルイスパーカッションジュマ・サントスに4人のゲスト・ヴォーカル入りという大所帯。

 ゆえにデヴィッド・サンボーン以外のバンド・メンバーの出番が多いのだが,不思議なことに出来上がった音楽は,そのどれもがデヴィッド・サンボーン印を感じてしまう。
 いいや『流麗なる誓い』は,デヴィッド・サンボーンの他のソロ・アルバム以上に,デヴィッド・サンボーンを感じてしまう。

 『流麗なる誓い』からは,POPを演奏する“サンボーン節”が聴こえてくる。ロックを演奏する“サンボーン節”が聴こえてくる。AORを演奏する“サンボーン節”が聴こえてくる。
 そう。ジャンルなんて関係ない。何を吹いてもデヴィッド・サンボーンの個性がメインで聴こえてくるのだ。

PROMISE ME THE MOON-2 はは〜ん。これって本田雅人デヴィッド・サンボーン・バージョンじゃん!
 つまり,管理人が「本田雅人の中の本田雅人」を一番感じるのは「本田バンドで演奏する本田雅人」である。

 本田雅人がアルバムに合わせて曲に合わせて,つまり自分が一番生きる仕方で選んだサポートと組んだ録音よりも,ガッツリと音をブツけ,被せて重ねてユニゾンしている,バンドのフロントとして演奏した時の本田雅人に一番「THE 本田雅人」を感じてしまうのと同じ…。

 うん。本当に好きなのはマーカス・ミラーと組んだ,ファンキーでフュージョンサックスの“泣きのサンボーン”なので『流麗なる誓い』をデヴィッド・サンボーンの愛聴盤として挙げるつもりはない。

 でも,通常より出番の少ない“挿し色”的でワン・ポイントなアルトサックスが案外好きなんだよなぁ…。
 でも,曲の盛り上がりでアクセントをつけさせたら“世界一”のデヴィッド・サンボーンが案外好きなんだよなぁ…。
 願わくば「デヴィッド・サンボーン・バンド」名義でもう1枚,聴いてみたかったなぁ…。

  01. PROMISE ME THE MOON
  02. BENJAMIN
  03. STRANGER'S ARMS
  04. HEART LAKE
  05. THE REV.
  06. WE FOOL OURSELVES
  07. MORNING SALSA
  08. THE LEGEND OF CHEOPS

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1977年発売/WPCR-28020)
(ライナーノーツ/熊谷美広)

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デヴィッド・サンボーン / メロー・サンボーン4

SANBORN-1 “サンボーン・キッズ”だからこそ,全世界に向けて公言したい事柄がある。
 ズバリ,デヴィッド・サンボーンの事実上のファーストソロは『SANBORN』(以下『メロー・サンボーン』)である(英文原題も『SANBORN』なのだし,実はワーナー・ブラザーズもそのつもりだったりする?)。
 この「中年の主張」を,これからフュージョンを聴いてみよう,これからデヴィッド・サンボーンを聴いてみようと思う皆さんには,是非とも真剣に受け止めてほしいのだ。

 別に“公式”デビューCDである『テイキング・オフ』の出来が悪いわけではない。
 ただ純粋に『テイキング・オフ』を聴いて,あれがデヴィッド・サンボーンの音楽のルーツだと誤解してほしくはないだけ…。管理人の愛するデヴィッド・サンボーンを共に楽しんでほしいだけ…。

 こう力説してしまいたくなるくらいに『テイキング・オフ』と『メロー・サンボーン』の間には大きな隔たりがある。それこそ,デヴィッド・サンボーン「人形」と「生身」のデヴィッド・サンボーンぐらいの違いある。「雲泥の差」があるのだ。

 『テイキング・オフ』は「借りてきた猫」であった。つまりデヴィッド・サンボーン自身の意思など制作会議では通してもらえず,用意されたコンセプトの一部として機能するために,あの“サンボーン節”だけが詰め込まれていた感じ。
 それがどうだろう? 2ndである『メロー・サンボーン』からは「こうしたい」という“サンボーンらしさ”がビシビシと伝わってくる。

 そんなデヴィッド・サンボーンが「自分で仕切った」『メロー・サンボーン』は,やったね,デヴィッド・サンボーンのワン・ホーン編成。しかもサイドメンは旧知のセッション仲間で固められている。
 そう。『メロー・サンボーン』からは「楽器で歌いたい」「こう表現したい」というデヴィッド・サンボーン自身の言葉がアルトサックスから漏れ出している。

SANBORN-2 『メロー・サンボーン』の音楽の中身は「メロウ」などではない。ダイナミックで,ファンクネスで,パワフルで,ダンサブル!
 アップ・テンポでノリノリのアルトサックスが,白人ファンクでR&Bに跳ねまくる“サンボーン節”は流石である。

 これである。ストレートなブローで,ブラスの響きを煌めかせていた『テイキング・オフ』は「スタジオ・ミュージシャンのまんま」なデヴィッド・サンボーンであって,ソロ・アーティスト=デヴィッド・サンボーンのアルバムには非ず。
 まっ,泣きっぷりとか洗練度で言えば「まだまだ」ではありますが『メロー・サンボーン』で,ついに,ソロ・アーティスト=デヴィッド・サンボーンが世界デビュー

 非常にメリハリの効いた,いい意味でよくコントロールされたダンシング!こそが“泣きのブロー”完成以前のデヴィッド・サンボーンの“味”である。

  01. Indio
  02. Smile
  03. Mamacita
  04. Herbs
  05. Concrete Boogie
  06. I Do It For Your Love
  07. Sophisticated Squaw
  08. 7th Ave.

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1976年発売/WPCP-3548)
(ライナーノーツ/上田力)

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デヴィッド・サンボーン / テイキング・オフ4

TAKING OFF-1 管理人は趣味でアルトサックスを吹くのだが,気分はいつだって“サンボーン・キッズ”。
 そう。管理人のアイドルの1人がデヴィッド・サンボーンマーカス・ミラーとタッグを組んだ「絶頂期」を体感したフュージョン・マニアにとって,デヴィッド・サンボーンこそが「永遠のスーパー・ヒーロー」に違いない。

 そう思ったが最後,世の男性の常=デヴィッド・サンボーンの全演奏のコレクションへと突っ走る。管理人もCDや雑誌にデヴィッド・サンボーンの文字を目にするや,片っ端から聴き漁った青春時代が懐かしい。

 でも,結局のところ,デヴィッド・サンボーンを追いかけていくとマイケル・ブレッカーへと行き当たる。デヴィッド・サンボーンもいいんだけど,デヴィッド・サンボーンの隣りで猛然とプレイしているマイケル・ブレッカーへと自然と耳が向いていくんだよなぁ。
 同じアルトサックス・プレイヤーならケニー・ギャレットの方が断然上なわけで…。

 そ,そそそ,そうなんです。管理人は“サンボーン・キッズ”なのですが,初期のデヴィッド・サンボーンはスタジオ・ミュージシャンしているし,後期のデヴィッド・サンボーンは腑抜けなジャズをかじっているわで,現時点では大抵の興味を失っていまっています。

 こんなテンションでデヴィッド・サンボーン批評に取り組む管理人のモチベーションは,デヴィッド・サンボーンの新発見!
 これまで相当に聴いてきて,マーカス時代以外はマジで聴き飽きてしまって,すでに名盤&普通&駄盤の評価が定まっているアルバムを聴き直すのは苦痛の作業。
 ブログの記事を書くために数十年振りに聴き直す“サンボーン節”に新発見があるといいなぁ〜。

 そういう訳でデヴィッド・サンボーンファーストソロである『TAKING OFF』(以下『テイキング・オフ』)を10年以上振りに聴き直してみたが,特に語ることはない。

 “売れっ子”スタジオ・ミュージシャンとして,徐々に頭角を現わしてきた時期の演奏であって,それ以上でもそれ以下でもない。他人の曲を他人のアレンジで,カッコイイ感じに吹き鳴らして終わっている。サイドメンとして参加して,長めにソロをもらった感じ?
 全てのお膳立てが出来上がった状態で,舞台に上げられ,プロデューサー集団のオーダー通りにアルトサックスを吹き上げる。そんな“舞台俳優”のような印象を受けてしまう。

TAKING OFF-2 「借りてきた猫」。これが管理人の『テイキング・オフ』に対する評価である。アルバム自体はいい感じだと認めるのにヤブサカではないが,個人的にこのアルバムは好きではない。

 この時期のデヴィッド・サンボーンを聴くのなら『テイキング・オフ』ではなくて,サイドメンとして,ランディマイケルブレッカー兄弟と3人で組んだホーン・アンサンブルの独特な切れ味が数倍楽しい。

 『テイキング・オフ』はフュージョンと呼ぶよりもクロスオーヴァーとかAORとかの「耳当たりの良いアルトサックス」な音造りで,あの“泣きのブロー”は完成途上。ただし,あの“音色”はこの時点で完成されています。

 まぁいいんじゃない。管理人の最大のアイドル=キース・ジャレットファーストソロも同じようなものなんだし…。

  01. BUTTERFAT
  02. 'WAY 'CROSS GEORGIA
  03. DUCK ANKLES
  04. FUNKY BANANA
  05. THE WHISPERER
  06. IT TOOK A LONG TIME
  07. BLACK LIGHT
  08. BLUE NIGHT
  09. FLIGHT

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1975年発売/WPCP-3547)
(ライナーノーツ/熊谷美広)

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デヴィッド・サンボーン / クローズ・アップ / PYRAMID4

 『CLOSE−UP』の6曲目は【PYRAMID】(以下【ピラミッド】)。


 【ピラミッド】は,逆円柱型の【ピラミッド】である。後半に行けば行く程分厚い“グルーヴ”で覆われていく。

 マーカス・ミラーによる打ち込みとウイリアム・ジュジュ・ハウスの生ドラムに,ベースギターキーボードが絡みつくイントロでの“グルーヴ”は,ファラオのアクビであろうが,管理人にはマイルス・デイビスの“例の囁き”に聞こえてしょうがない。
 逆円柱型の【ピラミッド】の頂点に君臨するのがデヴィッド・サンボーン! 泣きのアルト・サックスが“グルーヴ”に乗った定番のフュージョン・サウンドで一気に場が安定していく!

 4分27秒からのリッキー・ピーターソンエレピ・ソロは音色といいタッチといい,渡辺貞夫と共演するデイヴ・グルーシンを連想してしまう。

DAVID SANBORN : Alto Sax
MARCUS MILLER : Bass, Keyboards, Percussion Programming
RICKY PETERSON : Electric Piano Solo, Additional Keyboards
WILLIAM JU JU HOUSE : Drums
PAUL JACKSON JR. : Guitar

デヴィッド・サンボーン / クローズ・アップ / SAME GIRL4

 『CLOSE−UP』の5曲目は【SAME GIRL】(以下【セイム・ガール】)。


 【セイム・ガール】は,とにかく悲しい。涙の出ない,質の異なる悲哀を感じる。このトラックを聴いていると大抵もの思いにふけってしまう。

 デヴィッド・サンボーンアルト・サックスの響きが“雅楽”している。雅楽→武家社会→○尊○卑→【セイム・ガール】?
 ああ,悲しい運命。それでも女性は(いつの時代も)優しく美しい。真に女性は男性に愛されるべきである。

 そう。【セイム・ガール】は,デヴィッド・サンボーンが捧げる,世の女性たちへの哀悼歌,また賛美歌である。

DAVID SANBORN : Alto Sax
MARCUS MILLER : Piano, Keybords

デヴィッド・サンボーン / クローズ・アップ / LESLEY ANN5

 『CLOSE−UP』の3曲目は【LESLEY ANN】(以下【レスリー・アン】)。


 【レスリー・アン】は“ザ・ドラマティック”! 幻想的なリッキー・ピーターソンエレピが,静かな静かな“寒色系”の音世界を描き出し,そこへ“暖色系”のビビットな色彩が入り混じっていく。これが全て水彩画の柔らかさ!
 サンボーンをフューチャーするハーモニーがついて回るが,サンボーン色を打ち消す,重ね塗りの重厚感など微塵もない。

 デヴィッド・サンボーンリッキー・ピーターソンも素晴らしいのだが,寒色系〜暖色系の“ザ・ドラマティック”仕掛けは,全てマーカス・ミラー・プロデュースの賜物! 要所要所でフィルインする,ジェフ・ミロノフアコースティック・ギターに,こころ・ときめいてしまう。 → かたやハイラム・ブロックエレキ・ギターは何処? 

 プロデューサー=マーカス・ミラーが起用した,トータルで超絶なベーシストマーカス・ミラーベース・ワークが効いている! サビ入りでの「せーの」の掛け声もそうだが,何よりもカウンターのベース・ラインが素晴らしい!  ハイテクについては,3分35秒,3分50秒での早弾き&スラップが聴き所である。

 サビにおけるデヴィッド・サンボーンの独唱は1番のみ。2番〜4番はマイケル・ラフとの大競演! 1+1=3になった瞬間が記録されている。名演である。

DAVID SANBORN : Alto Sax
MARCUS MILLER : Bass, Keybords
RICKY PETERSON : Electric Piano
VINNIE COLAIUTA : Drums
JEFF MIRONOV : Acoustic Guitar
HIRAM BULLOCK : Electric Guitar
PAULINHO DA COSTA : Percussion
MICKAEL RUFF : Vocals

デヴィッド・サンボーン / クローズ・アップ / GOODBYE4

 『CLOSE−UP』の4曲目は【GOODBYE】(以下【グッドバイ】)。


 【グッドバイ】の聴き所は“センチメンタルでノスタルジックでエモーショナルな”デヴィッド・サンボーンアルト・サックスに違いない! しかしある一線を越えた所で,聴き込めば聴き込む程「ザ・マーカス・ミラー」な作りである。
 そう。【グッドバイ】は,デヴィッド・サンボーンの全てを知り尽くしたマーカス・ミラーだから作れた,渾身のバラードなのである。

 印象的なイントロからバラードゆえ甘く入ると思いきや,ガツンと一発,デヴィッド・サンボーンが吹き上げる。豪快な展開に軽く脳しんとうを起こし,気付けばテーマでサンボーンが泣いている。以降,その繰り返しである。

 例えば,3分27秒からのアルト・ソロでのサンボーンは“ブリルハート”である。しかしバックと溶けあう4分2秒でテーマに変わった瞬間“デュコフ”で泣き始める! この変化がいい! ← このクダリ,何人の読者が意味分かるかなぁ?

 「泣かぬなら泣かせてみようサンボーン」。ここぞという聴かせ所で最高に泣かせてみせるマーカス・ミラーは“サル”である。おっと失礼,豊臣秀吉である。

DAVID SANBORN : Alto Sax
MARCUS MILLER : Bass, Keybords
RICKY PETERSON : Electric Piano
VINNIE COLAIUTA : Drums
JEFF MIRONOV : Acoustic Guitar
G.E.SMITH : Lead Guitar
PAULINHO DA COSTA : Percussion

デヴィッド・サンボーン / クローズ・アップ / SO FAR AWAY4

 『CLOSE−UP』の8曲目は【SO FAR AWAY】(以下【ソー・ファー・アウェイ】)。


 管理人にとって【ソー・ファー・アウェイ】は「TOKYO FM 交通情報」! それ以上でもそれ以下でもない。正確には,そうさせられてしまった…。

 なにも【ソー・ファー・アウェイ】に限ったことではないが,ジャズフュージョンという音楽は,TV・ラジオ・デパート等で,様々なBGMとして使われることが多い。
 ただし多くのメディアは週一番組なので,そこまでの影響を感じることはないが,ラジオ番組での交通情報は毎日,しかも数時間おきに何度も流れる。完全に刷り込まれてしまう。
 それで【ソー・ファー・アウェイ】を「交通情報抜き」に聴いていた時の印象など覚えていない。完全に“上書き”されてしまった。

 無理を承知で(交通情報を忘れて)【ソー・ファー・アウェイ】を聴いてみた。うん。デヴィッド・サンボーンがいい! 実にメロー! こんなにノリがいいと,ハンドル操作もアクセル操作もつい…。

 ノリノリの交通情報と交通事故との因果関係は? 「読者の皆さん,【ソー・ファー・アウェイ】は,自宅のリスニング・ルームで聴きましょう。以上,道路交通情報センターのセラビーがお伝えしました」。

DAVID SANBORN : Alto Sax
MARCUS MILLER : Bass, Keybords, Guitar
RICKY PETERSON : Electric Piano
VINNIE COLAIUTA : Drums
PAULINHO DA COSTA : Congas, Percussion
G.E.SMITH : Guitar
PAUL JACKSON, JR. : Guitar

デヴィッド・サンボーン / クローズ・アップ / J.T.5

 『CLOSE−UP』の2曲目は【J.T.】)。


 トラック名の由来は,ポップ・シンガー=ジェームス・テイラー? と思いつつも,イントロで“和”を感じた管理人の脳裏には【J.T.】→日本たばこ産業→ライブ・アンダー・ザ・スカイ! とシナプスが連結しているようで…。
 そう。【J.T.】は,マーカス・ミラーリッキー・ピーターソンのWプロデューサーが「ワビサビ」を意識した超名曲! この甘いメロディ・ラインと“サンボーン節”が見事にマッチしている。

 【J.T.】は,決してバラード調ではないのだが,イントロでの,キーボードパーカッションフレットレス・ベースだけで,管理人はすでに“瞳ウルウル”の少女マンガの主人公。
 そこへ,待ち焦がれたハンカチ王子ならぬ,サックス王子=デヴィッド・サンボーンの一音! とたんにシビレが回ってしまう。

 シビレてしまったせいだろうか? 100%デヴィッド・サンボーンの音なのに,どうもいつもと違っている。いつもは“泣き虫”のくせに【J.T.】では,徐々に盛り上がってくるバックと相まって“クール”に歌い上げてしまっている。そう。“枯れた”フレージングなのだ。

 ここが最初に感じた“和”なのだろう。ワビサビの重ね塗りのごとく,デヴィッド・サンボーンも,湧き上がる感情を幾重にも重ね塗りした? 結果,表面的には“泣き”を通り越し,涙も枯れ果て“クール”に聴こえてしまうのだ。

 “泣き”でも“ブロー”でもない,デヴィッド・サンボーンの第3の魅力が,この“枯れ”である。まだ“枯れ”を知らないサンボーン・キッズの皆さん,是非ご一聴を…。

DAVID SANBORN : Alto Sax
MARCUS MILLER : Bass, Keybords, Guitar, Percussion Programming
RICKY PETERSON : Electric Piano
ANDY NEWMARK : Drums
JEFF MIRONOV : Acoustic Guitar
RICHARD TEE : Piano

デヴィッド・サンボーン / クローズ・アップ / SLAM5

 『CLOSE−UP』の1曲目は【SLAM】(以下【スラム】)。


 “タイトなビート”が聴き所である【スラム】こそ,NYフュージョンの象徴! このイントロが流れ出すと“条件反射”的に身体がビートに反応してしまう。

 デヴィッド・サンボーンサックスが“超豪華リズム陣”を乗りこなしていく。ノリノリの「堀越のり」をも越えている?
 【スラム】でのデヴィッド・サンボーンは,まるでロック・バンドのボーカリスト! 硬いトーンで“バリバリ”吹き鳴らし,歌いまくる。(泣きながら)吠えまくっている!

 4分6秒からの“ギャング・ボーカル”との掛け合いは,絶対にライブを意識した作り込み! ライブ! ライブでの大盛り上がり!
 「SELECT LIVE UNDER THE SKY ’92」でのマーカス・ミラー・プロジェクト・フィーチャリング・デヴィッド・サンボーンの“予告編”である。

DAVID SANBORN : Alto Sax
MARCUS MILLER : Bass, Keybords, Percussion Programming
ANDY NEWMARK : Drums, Drum Programming
HIRAM BULLOCK : Lead Guitar
NILE RODGERS : Rhythm Guitar
STEVE JORDAN : Drum Fills, Funky Breakdown Guitar
FRED MAHER : Electronic Drum Technician

Gang Vocals : TERRY BARDANI, CLIFF BRAITHWAITE, ADAM DORN, AVA GARDNER, BIBI GREEN, BILL JONES, MARCUS MILLER, DAVID SANBORN AND WAYMAN TISDALE

デヴィッド・サンボーン / クローズ・アップ5

CLOSE-UP-1 管理人は楽器はできないのだが,それでもどうしても手に入れたいものがあった。アルト・サックスのマウスピースで「デヴィッド・サンボーン・モデル」。確か2万円はしたはずだ。
 無駄に2万円も使ったわけであるが,それでも今でも満足に思っている。あのデュコフ(DUKOFF)製の“銀メタ”マウスピースが,オーディオ・ラックの最上段で“誇らしげに”輝いているのだ。

 (本当どうでもいい話ですが,エピソードを補足します。正確には何度も“銀メタ”マウスピースは使用しました。管理人が千葉在住時のことですが,アマチュア社会人ブラス・バンドに在籍していた友人がおりまして,彼女の30万円のアルト・サックスを時たま借りては吹いておりました。どっちみち“飾り物”には違いありませんが…)

 …と,完全に自己満足の世界に浸ってしまったが“銀メタ”マウスピースを見ているだけで“デレデレ”してしまう程,管理人にとってデヴィッド・サンボーンこそが,真のアイドル! まさしく“憧れ”の存在なのである。
 何と言っても,あの絶対的なフレージング=“サンボーン節”! デヴィッド・サンボーンの代名詞である“泣きのサックス”が大好きなのだ。

 尤も,この辺の話題は「語り出すと止まらなくなる」と思うので,今回はここまで…。
 続きは近所のアルト吹きにお尋ねください。恐らく3人に1人の割合で,手取り足取り+饒舌に,デヴィッド・サンボーンの魅力について語ってくださるのでは?

 そう。“サンボーン・キッズ”と呼ばれる“サンボーン命”のアルト奏者は五万といる。プロのミュージシャン,ジャズメンの中にも五万といる。
 きっと,みんな最初は「エア・サンボーン」。あの“小首をかしげ腰を沈めてブローする”お得意のポーズを真似してニンマリ。「形から入ろう」の世界である。

 そんな“サンボーン・キッズ”なら誰しも持っている?“伝家の宝刀”が『CLOSE−UP』(以下『クローズ・アップ』)。
 なぜならば『クローズ・アップ』はグラミー受賞作! それも驚くなかれ。「Best Pop Instrumental Performance」部門での受賞なのである。

 デヴィッド・サンボーンは,本来,フュージョンサックス・プレーヤーであるが“サンボーン・キッズ”は,ジャズ,ポップス,ロック・ファンにも大勢いる。
 理由はデヴィッド・サンボーンの“超一流”サイドメンとしての“横顔”にある。デヴィッド・サンボーンは,各ジャンルの数多くの大物たちとも共演を重ねてきた。その結果“サンボーン節”はフュージョンの垣根を越え,広く世界の音楽ファンに浸透しているのであろう。

CLOSE-UP-2 『クローズ・アップ』は,そんなデヴィッド・サンボーンの“総決算的”なアルバムである。デヴィッド・サンボーンの“裾野の広い音楽性”こそ,真のフュージョンである。
 ジャズ,ポップス,ロックのエッセンスが注入された“万人受け”するアルバムである。やはり“ポップス部門”のグラミー受賞は伊達ではない。

 『クローズ・アップ』の完成度の高さはプロデューサー,マーカス・ミラーの“天才ぶり”に負うところが大きい。しかしどんなにマーカス・ミラーが活躍しようとも『クローズ・アップ』の「主役」はデヴィッド・サンボーン。“サンボーン節”が流れ出すや否や,この極上のバックでさえ“静まりかえってしまう”のだから不思議である。

 そう。この圧倒的な存在感は,間違いなく“オンリー・ワンのナンバー・ワン”であろう。“サンボーン・キッズ”が増殖しているにもかかわらず,誰一人“ザ・デヴィッド・サンボーン”にはなりきれない。近づけない。恐らくは永遠に…。

 管理人はやっぱり今夜も「エア・サンボーン」。きっとみんなも「エア・サンボーン」。「エア・サンボーン」こそ“ザ・デヴィッド・サンボーン”なのである。

  01. SLAM
  02. J.T.
  03. LESLIE ANN
  04. GOODBYE
  05. SAME GIRL
  06. PYRAMID
  07. TOUGH
  08. SO FAR AWAY
  09. YOU ARE EVERYTHING
  10. CAMEL ISLAND

(ワーナー・パイオニア/REPRISE RECORDS 1988年発売/25XD-1077)
(ライナーノーツ/松下佳男)

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