アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

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CD批評:ジャッキー・マクリーン

ジャッキー・マクリーン / 4, 5 & 6 / ABSTRACTION4


 『4, 5 AND 6』の6曲目は【ABSTRACTION】(以下【アブストラクション】)。


 『4, 5 & 6』のである。しかも「バップ・トランペッタードナルド・バード入りである。…なのに【アブストラクション】である。バラードである。

 【アブストラクション】は,世評的には名演なのであろう。確かにジャッキー・マクリーンの“枯れた”アルト・サックスが淡々と語りかける様がセンチメンタルである。
 しかし管理人は【アブストラクション】では,感動までには至らない。この全ては過剰演出である。ジャッキー・マクリーン以外のソロイストたちは,自分を捨て“ジャッキー・マクリーンっぽく”アドリブを取っている。このトランペットなら,何もドナルド・バードに吹かせなくても良かったのに…。

 ジャッキー・マクリーンの魅力は“熱”であって,クールな演奏には(その出来が良ければなおのこと)いたたまれない思いが付きまとってしまう。

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

JACKIE McLEAN SEXTET
JACKIE McLEAN : Alto Sax
DONALD BYRD : Trumpet
HANK MOBLEY : Tenor Sax
MAL WALDRON : Piano
DOUG WATKINS : Bass
ARTHUR TAYLOR : Drums

ジャッキー・マクリーン / 4, 5 & 6 / WHEN I FALL IN LOVE4


 『4, 5 AND 6』の5曲目は【WHEN I FALL IN LOVE】(以下【ホエン・アイ・フォール・イン・ラヴ】)。


 【ホエン・アイ・フォール・イン・ラヴ】と来れば,名バラードと答えるはずである。しかし,ジャッキー・マクリーンの耳には【ホエン・アイ・フォール・イン・ラヴ】も,ハードバップ・チューンに聞こえるらしい。予測不能の絶妙アレンジが“違和感なく”名バラードをアップテンポの「イケイケの恋」へと仕立て直している。

 【ホエン・アイ・フォール・イン・ラヴ】の名演を幾つも聴いてきた管理人であるが『4, 5 AND 6』バージョンでは,4分41秒以降のテーマが登場して初めて【ホエン・アイ・フォール・イン・ラヴ】であると認識することができた。実に大胆な“崩しっぷり”である。
 しかしこれが悪くない。いや,ビクター・ヤングは初めからアップテンポを意識して【ホエン・アイ・フォール・イン・ラヴ】を書き上げていた!? こんな仮説を語りたくなるくらい決まっている。このアレンジの才は単純に“根っからのバッパー”の一言では片付けることはできない。名編曲者=ジャッキー・マクリーンここにあり,である。

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JACKIE McLEAN QUINTET
JACKIE McLEAN : Alto Sax
DONALD BYRD : Trumpet
MAL WALDRON : Piano
DOUG WATKINS : Bass
ARTHUR TAYLOR : Drums

ジャッキー・マクリーン / 4, 5 & 6 / CONFIRMATION5

アナログレコード

 『4, 5 AND 6』の4曲目は【CONFIRMATION】(以下【コンファメーション】)。


 ジャッキー・マクリーン・セクステットの【コンファメーション】は,典型的なハード・ブローイング! チャーリー・パーカーの代表曲を,この“考え得る理想的な面子”で録音してくれていたとは…。
 これはもう,たまらない! 神に感謝の“最強B級ジャズ”!

 聴き所満載! 全員が全員,まず熱い! 次に,ほんわか+メロディアス! 大音量で聴いた時のカタルシス!
 スーパー・テクニックなどないのだから,まずはお酒をお共に,安心してこの雰囲気を楽しみましょう。
 ねっ,一緒に楽しみましょうよっ。ほら,自然と身体が揺れてくるでしょ? 

 アドリブ・タイムは,ジャッキー・マクリーンドナルド・バードハンク・モブレーマル・ウォルドロンへのタスキ渡し。
 『4, 5 AND 6』の『6』なのだから,4とも5とも違う『6』ならではの“絡み”を聴きたいと思うが願い叶わず…。タスキの受け渡しに時間がかかってしまい,凡庸なアドリブが結構続くが,それもB級ならではの“ご愛敬”!

 イントロとアウトロだけで聴こえる“ユニゾン大合唱”で熱狂できさえすれば,あなたも立派な“B級グルメ”の一員である。 

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JACKIE McLEAN SEXTET
JACKIE McLEAN : Alto Sax
DONALD BYRD : Trumpet
HANK MOBLEY : Tenor Sax
MAL WALDRON : Piano
DOUG WATKINS : Bass
ARTHUR TAYLOR : Drums


4, 5 and 6
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ジャッキー・マクリーン / 4, 5 & 6 / CONTOUR4

アナログレコード

 『4, 5 AND 6』の3曲目は【CONTOUR】(以下【コントゥアー】)。


 【コントゥアー】は,メロディ&ハーモニー重視! ジャッキー・マクリーンとしては,良く言えば“ソフト”。悪く言えば“気合不足”。
 管理人の評価は○であるが,聴き手によって評価は分かれるのかもしれない。

 ジャッキー・マクリーンアドリブ自体はいい。伸びやかな“ハスキー・アルト”は“らしさ”を感じさせてくれる。しかし,すぐに“らしい”演奏が消え失せてしまう。

 原因はトランペッタードバルド・バードの“端正な”演奏にある。【コントゥアー】でのドナルド・バードは,なぜか,いつも以上にキッチリとフレーズを吹く。
 思うに,ドナルド・バードは【コントゥアー】のメロディが好きなのだろう。アウトすることのない“正攻法”のアドリブが,曲の魅力をストレートに表現する。
 この迷いのない演奏がジャッキー・マクリーンの演奏にまで“伝染”してまったのではなかろうか?

 4分13秒からのユニゾンを聴いてほしい。ジャッキー・マクリーンドナルド・バードにリードされるがまま“ソフトに”音を合わせていく。
 録音前のリハーサル演奏から,徐々に影響されてしまったのであろうが,音の変化は継続している。イントロからのユニゾンと聴き比べてみると,バード色に“染められてしまった”アルト・サックスの“変貌ぶり”に気付かずにはいられない。

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JACKIE McLEAN QUINTET
JACKIE McLEAN : Alto Sax
DONALD BYRD : Trumpet
MAL WALDRON : Piano
DOUG WATKINS : Bass
ARTHUR TAYLOR : Drums


4, 5 and 6
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ジャッキー・マクリーン / 4, 5 & 6 / WHY WAS I BORN?4

アナログレコード

 『4, 5 AND 6』の2曲目は【WHY WAS I BORN?】(以下【ホワイ・ワズ・アイ・ボーン?】)。


 ちまたの通説通り『4, 5 AND 6』でのジャッキー・マクリーンは,チャーリー・パーカーの影響が色濃く出ている。
 しかしワン・トラックだけは異なる。【ホワイ・ワズ・アイ・ボーン?】でのジャッキー・マクリーンは,ソニー・ロリンズであって,チャーリー・パーカーではない。まずはそこを押さえてから,聴き込んでいただきたい。

 勿論,マクリーンマクリーンである。例の“マクリーン節”が連発している。ここで管理人が言いたいのは“姿勢に置いて”ロリンズ,と言う意味である。
 ソニー・ロリンズチャーリー・パーカージャズ史における名インプロヴァイザーのツー・トップ! ただしアドリブに対するアプローチは明確に異なっている。ズバリ! ロリンズは「歌」であり,パーカーは「リズム」であろう。
 そう。【ホワイ・ワズ・アイ・ボーン?】でのマクリーンアドリブは「歌心に満ち溢れた」原曲に“優しい”アドリブなのである。

 そうは言っても念を押す。【ホワイ・ワズ・アイ・ボーン?】が,素直に演奏されるとは思うなかれ。
 スロー・バラード名曲ビ・バップしている! ロリンズ混じりの“マクリーン節”が,乱れ飛んでいる! 名演である。

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JACKIE McLEAN QUARTET
JACKIE McLEAN : Alto Sax
MAL WALDRON : Piano
DOUG WATKINS : Bass
ARTHUR TAYLOR : Drums


4, 5 and 6
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ジャッキー・マクリーン / 4, 5 & 6 / SENTIMENTAL JOURNEY5

アナログレコード

 『4, 5 AND 6』の1曲目は【SENTIMENTAL JOURNEY】(以下【センチメンタル・ジャーニー】)。


 【センチメンタル・ジャーニー】は,ほのぼのとした「牧歌」であり,ジャッキー・マクリーンの「鼻歌」である。

 【センチメンタル・ジャーニー】からは,笑顔でセッションを楽しんでいる“風情”を感じる。ニコニコではなく“ニヤリ”の笑顔!
 失恋を癒やす&感傷に浸る“一人旅”と言う趣はない。これは完全に“吹っ切れた”直後の出直し旅行! 数人の仲間と“ワイワイ・ガヤガヤ”とは違う“ペチャクチャ”雑談ばかりの小旅行! “気ままにふらっと”プランなど立てずに,右へ左へ…。
 そう。ジャッキー・マクリーン御一行様の【感傷旅行】は,後ろ向きで「内省的」なジャズではなく,前向きで「希望に満ちた」ジャズなのである。

 ジャッキー・マクリーンアルト・サックスに始まり,ダグ・ワトキンスベースマル・ウォルドロンピアノに至るまで,3人のソロが見事に“スイング”している。
 メイン・テーマは“どこで切り取っても”ピカイチのノリであるが,特にジャッキー・マクリーンマル・ウォルドロンの“お涙頂戴コンビ”が実にウイット。茶目っ気タップリの【センチメンタル・ジャーニー】に仕立てて上げている。

 3分10秒から15秒までの大ブローもあれば,特に9分13秒から全開の“マクリーン節”も楽しめる。
 “【センチメンタル・ジャーニー】さえ聴き込めば,ジャッキー・マクリーンの全てが分かる”と豪語した,あの大物ジャズ批評家の論評に納得できなくもない。何となく認めたくないだけ? 確かに快演である。
 自称・ジャズ批評家である管理人が選ぶ,このトラックのベストは,6分36秒から7分37秒までのマル・ウォルドロンの全アドリブ! これこそ,正に“絶品”バップピアノである。

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JACKIE McLEAN QUARTET
JACKIE McLEAN : Alto Sax
MAL WALDRON : Piano
DOUG WATKINS : Bass
ARTHUR TAYLOR : Drums


4, 5 and 6
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ジャッキー・マクリーン / 4, 5 & 65

アナログレコード

 またも「どこかに在りそうで,でもどこにも見つからない」自作格言シリーズを…。
 「言葉だけでは感動しない。言葉で伝えようとする“必死な思い”が,言葉に“魂を吹き込み”感動させるのだ」。
 そう。「熱意こそ話の命」なのである。同じ言葉を話そうとも,熱意のない話し手の言葉に感銘を受けることはない。それがどんなに洗練された,選びに選び抜かれた言葉であったとしても…。

 音楽も同様である。殊にジャズ。全く同じトラック,同じフレーズを耳にした時,感動することもあれば,そうでないこともある。伝わってくる音もあれば,そうでない音もあるのである。
 たとえ泥臭くとも“これだけはどうしても伝えたい”とする“たどたどしい”アドリブには,感動を与えるエネルギーがある。
 一方,美辞麗句を並べあげた超高速・スーパーテクのアドリブでも,そこに“魂”が欠けているなら,単なる騒音でしかない。
 そう。「熱意こそジャズの命」は至言だと思っている。

 管理人は,そんな“汗だく”ジャズメンが大好きだ。そして“汗だく”ジャズメンの代表格と言えば,ジャッキー・マクリーンである。
 ジャッキー・マクリーンは歴としたジャズ・ジャイアントの一人であるが,正直,スーパー・スターとは呼べない。冷静に彼のアドリブを分析すると,世評通り「B級」の烙印を押してしまうはずだ。

 しかし,しかしである。ジャッキー・マクリーンアドリブには,具体的に数字化できない“+α”がある。
 この“+α”とは“実直さ”! 決して語り口は饒舌ではないのだが,自分の感情をストレートにぶつけてくるのだ。
 それを何度も何度もクドイくらいにぶつけてくる。その一つ一つは弱くとも,正に「雨垂れ石を穿つ」である。ついにはジャッキー・マクリーンの“熱意”あるいは“信念”に押し倒され,感動の扉がこじ開けられてしまうのだ。
 この“信念に根ざす実直さ”が「下手の横好き」→「好きこそ物の上手なれ」を経由して,ジャッキー・マクリーンジャズ・ジャイアントへと押し上げていった原動力であろう。

 さて,ジャッキー・マクリーンアドリブからは「真にジャズ好きなんだなぁ」と分かるフレーズが飛び出してくる。何の脈略も無いところから,突然,噴火してくる辺りが,所謂「B級」の証しなのであるが,ここで言う「B級」とは“誉め言葉”である。
 有名シェフが調理する,高級食材盛りだくさんのレストランは当然おいしい。誰が食べてもおいしいに決まっている。これはA級グルメ!
 しかしマニアなグルメたちは,路地裏にある“隠れ家”的な名店を“こよなく愛する”のではなかろうか? その店の味を評価するのは,常連のマニアだけかもしれないが,高級レストランでは味わえない“旨味+特有のクセ”を求めて,つい足が向いてしまうのである。そう。“止められない止まらない”B級グルメの魅力!

 『4, 5 AND 6』(以下『4, 5 & 6』)は,ジャッキー・マクリーンの“B級の旨味”が“たっぷり詰まった”名盤である。
 タイトルの『4, 5 & 6』は,それぞれ「カルテットクインテットセクステット」を表わしている。このCDは,3つの異なる編成と相対したがゆえに,ジャッキー・マクリーンの個性が“埋もれるどころか逆に浮き彫りにされていて”彼の本質を掴みやすい。
 天才なら“簡単に”吹ききってしまうであろうアドリブを,ジャッキー・マクリーンは,たとえ口が重かろうとも“ハスキーボイス”に魂を込めて,一生懸命絞り出す! “重み”漂う一言なのである!
 そう。『4, 5 & 6』には,自分の言葉で“必死に”語ろうとするジャッキー・マクリーンの魂=「彼そのもの」が実物大で記録されている。

 全てのジャズ・ファンに『4, 5 & 6』を,時間をかけて“聴き込む”ことをお奨めしたい。
 この“マクリーン節”を楽しめるようになりさえすれば,他の「B級」ジャズメン“特有の味”をも愛せるようになるのだから…。

(1956年録音/VICJ-23514)

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