CD批評:小曽根 真
2008年01月15日
小曽根 真 / ファースト・ディケイド / LA STANZA DELLE MERAVIGLIE - ANDANTE SCHERZANDO
『FIRST DECADE』の7曲目は【LA STANZA DELLE MERAVIGLIE SCHERZANDO】(以下【組曲「夜の子供部屋」第1楽章】)。
作家の井上ひさしがタイトルをつけた【組曲「夜の子供部屋」第1楽章】は,小曽根真・ザ・トリオとクラシックの弦楽四重奏とのコラボレーション!
【組曲「夜の子供部屋」第1楽章】は,小曽根真が思い描く,ジャズとクラシックの“ユーモラスな融合”である。こんなに“メルヘンチックな”ジャズ・ピアノを聴かせてくれようとは,正直,デビュー当時の“テクニカルな”小曽根真からは想像できなかった。
そう。【組曲「夜の子供部屋」第1楽章】は,ピアノ小僧=小曽根真の成長の証し。円熟に向かって音楽性が拡大している。
予定調和を意図的に外した不協和音がアクセント! 実際は高度で難解な組曲なのかもしれない。
しかしそんなことはどうでもいい。とにかく分かりやすい! 楽しい! 気持ちいい! そう。【組曲「夜の子供部屋」第1楽章】は,自由度100%の“子供の城”なのである。
ここは2段ベッドの布団の中。親はもう寝付いたと思っている。枕元には宝箱。そ〜っと宝箱を開けてみる。「親には絶対内緒だよ」と,大好きな沙織ちゃんと約束した秘密の宝物が…。
じゃらじゃらと箱の中身を出してみる。意味もなく元通りにしまってみる。3回繰り返した時,クスクスと笑い声が聞こえてきた。な〜んだ,全部バレテイタ。そう。【組曲「夜の子供部屋」第1楽章】は,自由度100%の“子供の城”なのである。
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THE TRIO
MAKOTO OZONE : Piano
JAMES GENUS : Bass
CLARENCE PENN : Drums, Percussion
STRING QUARTET
JESSE MILES : Violin
DANIEL CARLSON : Violin
MAX MANDEL : Viola
RUBIN KODHELI : Cello

FIRST DECADE
2007年12月12日
小曽根 真 / ファースト・ディケイド / PANDORA
『FIRST DECADE』の6曲目は【PANDORA】(以下【パンドラ】)。
【パンドラ】は“良くも悪くも”ブランフォード・マルサリス! ブランフォード・マルサリスのソプラノ・サックスが東儀秀樹と化している! そう。【パンドラ】は,小曽根真の考える“雅楽”である。
管理人は正直【パンドラ】は駄作だと思っている。それゆえ『ファースト・ディケイド』にまさか選曲されるとは思わなかった。この選曲に戸惑った。なぜの嵐??
そう思っている人はたぶん少ないのだろう。何と言っても【パンドラ】は,スイングジャーナル選定【ゴールドディスク】=『パンドラ』の看板トラックなのだから…。
餅は餅屋。雅楽は雅楽に任せたら良いのに…。この扱いでは,超正統派ジャズメン=ブランフォード・マルサリスが,勿体ない&かわいそうである。ジャズはジャズの文脈でこそ輝く!
小曽根さん,貴殿の頭の良さはみんな分かっていますよっ。安心して“普通の”ジャズ・ピアノを…。
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THE TRIO
MAKOTO OZONE : Piano
JAMES GENUS : Bass
CLARENCE PENN : Drums, Percussion
Special Guest
BRANFORD MARSALIS : Soprano Saxophone

FIRST DECADE
2007年10月13日
小曽根 真 / ファースト・ディケイド / THREE THE HARD WAY
『FIRST DECADE』の4曲目は【THREE THE HARD WAY】(以下【スリー・ザ・ハード・ウェイ】)。
【スリー・ザ・ハード・ウェイ】は,静かだが“高密度”のジャズ・ピアノが聴き所! 真夜中に間接照明と共に流れるジャズ・ピアノの“筆頭格”である。
全編に漂う緊張感はジェームス・ジーナスのベースにある。空間を振動させる重厚な一音一音が,濃密な闇夜を切り裂いていく。骨太なウッド・ベースが【スリー・ザ・ハード・ウェイ】の“硬質の魅力”と呼応している。
前半のアコースティックなのにエレクトリックのような“細かく光り輝く”生ピアノが実に素晴らしい。この“豊かな残響音”は小曽根真のハイ・テクニックの成せる技!
3分5秒の音と3分15秒の音触感の違いを確かめてみてほしい。きっと管理人の主張に同意いただけることと思う。
3分57秒の“高音アタック”以降が,小曽根ドラマのハイライト! これぞ小曽根真のジャズ世界! 「ストレートに洗練された」といった一見矛盾した表現がピッタリ似合う,現代のピアノ・トリオの“息吹”を感じてしまう。
そう。【スリー・ザ・ハード・ウェイ】は,小曽根真版,映画『氷の微笑』のサウンド・トラックである。このサウンド・トラックには,都会の良い意味での“冷たさ”が収められている。夜明けを待つまでの間,一人ひそかに楽しみたい逸品である。
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THE TRIO
MAKOTO OZONE : Piano
JAMES GENUS : Bass
CLARENCE PENN : Drums, Percussion

FIRST DECADE
2007年08月07日
小曽根 真 / ファースト・ディケイド / DRAEMON NO UTA
『FIRST DECADE』の8曲目は【DRAEMON NO UTA】(以下【ドラえもんの歌】)。
小曽根真は,真剣にジャズと向き合う,J−ジャズの巨人である。しかしジャズを離れた「素」の彼は,実にユニークな男! 例えばJ−WAVEでのラジオ番組。「この人真面目にやっているのかなあ」が第一印象であった。饒舌なのはピアノだけではない。
そんな小曽根真のユニークな一面を,言葉ではなくジャズを通して感じられるのが【ドラえもんの歌】。
純粋に,歌を口ずさむこともできるが,このアレンジはかなり斬新。「こう来たかっ」で,ニヤケテしまう。
ただしやりすぎかなぁ。【ドラえもんの歌】が,ジャズしているのは,おもしろいとは認めるが,このアレンジは好みではない。
管理人の【ドラえもんの歌】への評価は,ライブで楽しむ“おまけ”のアンコール曲! それ以上でもそれ以下でもない。
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THE TRIO
MAKOTO OZONE : Piano
JAMES GENUS : Bass
CLARENCE PENN : Drums, Percussion

FIRST DECADE
2007年05月09日
小曽根 真 / ファースト・ディケイド / THREE WISHES
『FIRST DECADE』の3曲目は【THREE WISHES】(以下【スリー・ウィッシズ】)。
【スリー・ウィッシズ】は,ジャズ・ピアニスト=小曽根真が,ピアノではなく“サックスをいかに鳴らすか”をテーマに書き上げた,スリリングなグレート・ジャズ!
そして,ここまで見事に仕上げたことから推測すると,作曲時に単なる“サックス”ではなく“マイケル・ブレッカーのテナー・サックス”を具体的にイメージした,と言い切ってもいい!
【スリー・ウィッシズ】は,マイケル・ブレッカー・カルテットの音である! 主役は間違いなく,マイケル・ブレッカーのテナー・サックス! 1分48秒からの“熱唱”は,現代の「テナー・タイタン」そのものであろう。
今回は裏方に回った小曽根真のサポートが実に素晴らしい。とても初共演とは思えない“絶妙な絡み具合”である。見事にマイケルの音色に“厚みと変化”を加えている。
これには秘密がある。キーマン=ジェームス・ジーナスの存在である。そう。ジェームス・ジーナスは,元ブレッカー・ブラザーズのベーシスト! 小曽根真の個性もマイケル・ブレッカーの個性も知り尽くしている“彼だからこそできた”見事な橋渡し!
ベースで会話し,二人のアドリブを同じ方向にリードしている。
最後にこれだけは言い添えておくが,小曽根真のアドリブが凄い! 3分12秒からの“キレまくった”ピアノは,そうめったに聴けるものではない“上物”である。
聴き初めは“テナーの大迫力”ばかりに耳が行く【スリー・ウィッシズ】であるが,聴き込むうちに小曽根真のピアノに惹かれるようになる。そう。自分の内で生じる「感動バロメーターの変化,好みの変化」を実感できるのが,たまらない! 快感! 次は,読者の皆さんも…。
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THE TRIO
MAKOTO OZONE : Piano
JAMES GENUS : Bass
CLARENCE PENN : Drums, Percussion
Special Guest
MICHAEL BRECKER : Tenor Saxophone

FIRST DECADE
2006年12月08日
小曽根 真 / ファースト・ディケイド / AGUA DE LA MUSICA
『FIRST DECADE』の5曲目は【AGUA DE LA MUSICA】(以下【アグア・デ・ラ・ムジカ】)。
【アグア・デ・ラ・ムジカ】の新録音バージョンは,繊細かつダイナミックな演奏で,聴き所が一層UPの増量中! これぞザ・トリオの全て,と言っても過言ではない! いい!
イントロから始まる,静かで“粒立ち”の良いプレイは,チック・コリアの世界に通じる緊張感。クラシック調のソロ・ピアノで。掴みはOK。“グっと”来る!
北川潔ではない,ジェームス・ジーナス・バージョンの【アグア・デ・ラ・ムジカ】を感じるのが,1分33秒からの躍動感!
3人の“しなやかな”連動感は,他のピアノ・トリオにはない「THE TRIO」オリジナルの“味”である。
2分5秒からのジェームス・ジーナスのベース・ソロも,叙情性を感じさせる“さすが”の出来で素晴らしい。
4分10秒からの“例の”ザ・トリオの象徴的“ヤマ場”が一層強烈! クラレンス・ペン“渾身の”ドラミングには(音楽素人であろうと)誰しも魅了されることであろう。全世界からの絶賛の嵐も至極当然&「お見事!」の一言に尽きる。
で,聴き逃してならないのは,その直前と直後の,小曽根真のピアノ・ソロである。ここでの盛り上がりなしに“例のヤマ場”は成立しない! “世界の小曽根”が超・最高!
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THE TRIO
MAKOTO OZONE : Piano
JAMES GENUS : Bass
CLARENCE PENN : Drums, Percussion

FIRST DECADE
2006年09月05日
小曽根 真 / ファースト・ディケイド / BIENVENIDOS AL MUNDO
『FIRST DECADE』の2曲目は【BIENVENIDOS AL MUNDO】(以下【ビエンヴェニードス・アル・ムンド】)。
【ビエンヴェニードス・アル・ムンド】は,小曽根流「トムとジェリー」 (「噂の刑事トミーとマツ」でも可)! ドタバタ劇の“追いかけっこ”を楽しめる。
と言うのも,小曽根真の“ドライブ全開”のアドリブもあれば,童謡〜ジャズ〜ラテン〜バロックと目まぐるしく変化していく曲想! 何よりも“チャーミング”なテーマ! そう。【ビエンヴェニードス・アル・ムンド】は,小曽根真の“ユーモア”という個性が,ジャズ・ピアノと見事にフィットした名演である。
イントロから流れ出すテーマは,遠い昔に“きっとどこかで耳にした”童謡メロディ…。9秒や36秒のピアノのアタック音は,合図に合わせて“半身で振り返る”ピンク・パンサー!?
主人の様子を“こそっと”伺う安堵感が,愛くるしいペットへの思いで溢れ出す。
1分55秒からのピアノ・ソロと共に「トムとジェリー」の大登場! 一気に“追いかけっこ”開始となり,2分29秒からは第4コーナーを猛スピードで駆け抜けていく。
【ビエンヴェニードス・アル・ムンド】は,小曽根真のピアノに“楽しくじゃれ合う”ジェームス・ジーナスとクラレンス・ペンからの“愛情表現”! ムツゴロウ王国の世界観! “バロック風”ラテン・ジャズ・ビートが“たまらない”!
いやぁ。この“爽快感”の体感者としては「アサヒ・黒生」のCMイメージ・ソングは【ビエンヴェニードス・アル・ムンド】の方が良かったのでは? と,酒場で勝手に論争を引き起こす毎日である。
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THE TRIO
MAKOTO OZONE : Piano
JAMES GENUS : Bass
CLARENCE PENN : Drums, Percussion

FIRST DECADE
2006年09月04日
小曽根 真 / ファースト・ディケイド / THE NEW BEGINNING
『FIRST DECADE』の1曲目は【THE NEW BEGINNING】(以下【ザ・ニュー・ビギニング】)。
【ザ・ニュー・ビギニング】は「THE TRIO」のデビュー・トラック【ザ・ビギニング】の“焼き直し”。 10年間の試行錯誤を重ねた結果“こんなになりました”的な,NEW【ザ・ビギニング】である。
余分なぜい肉が削ぎ落とされ“シンプル”な演奏に聴こえるがリズム・セクションの反応は“より複雑に”進化している。いい!
これぞ“小曽根ワールド”の一つの完成形! 「THE TRIO」の金字塔である!
と言うのは,3人各自のソロも進化しているが,3人のインタープレイが,実にグルーヴィー! 「THE TRIO」がトリオとして完全に機能している。
このメンバー間の“信頼感”や“絆”が10年を経て,揺るぎない強固なものへと成長したのだろう。
そう。「THE TRIO」は完全に成熟しきった,現代の最高級ピアノ・トリオの一つ,と言い切っても過言ではないだろう。
1分32秒からフィルインしてくる,小曽根真のアドリブが実にダイナミック! ピアノという楽器を“鳴らしきる”低音〜高音のフルレンジは見事である。
クラレンス・ペンは,手数の多さで叩ききるタイプのドラマーであるが【ザ・ニュー・ビギニング】での“間”の取り方,音の出し入れテクニックは,もう“芸術”の域に達している。
ただしこれが“芸術”へと昇華するには,ピアノとベースの名サポートが欠かせない。そう。【ザ・ニュー・ビギニング】のハイライトは,クラレンス・ペンの魅力を最大限に引き出した“大物黒子”2人の“いぶし銀”の活躍にこそある。
ますます“磨き”がかかった【ザ・ビギニング】→【ザ・ニュー・ビギニング】! 次の10年後【ザ・ニュー・NEW・ビギニング】を早く聴いてみたい。
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THE TRIO
MAKOTO OZONE : Piano
JAMES GENUS : Bass
CLARENCE PENN : Drums, Percussion

FIRST DECADE
2006年09月03日
小曽根 真 / ファースト・ディケイド
NYを拠点に全世界を駆け回る小曽根真こそ,J−ジャズのオピニオン・リーダー!近年のJ−ジャズ界におけるタレントの充実ぶりには目を見張るべきものがあるが,その中でも小曽根真は“頭一つ抜け出た”存在となった。
どのメディアを見ても“ビッグな小曽根”として詳述されているのだが,どんなにメディアが絶賛しようと,ここで管理人がどんなに持ち上げようとも,その評価の正しさを証明するためには,実際に“小曽根のピアノ”を聴いていただく他はない。
そこで『FIRST DECADE』(以下『ファースト・ディケイド』)! 『ファースト・ディケイド』は,小曽根真の活動の中心である「THE TRIO」10周年のベスト盤。ベスト盤と言っても“いつもの例の企画物”と思い込むと大恥をかく!
なぜなら,『ファースト・ディケイド』には「THE TRIO」の初代ベーシスト,北川潔在籍時の楽曲を,現ベーシスト,ジェームス・ジーナス・バージョンへと“差し替えた”ニュー・アレンジでの新録音が収録されているからだ。
そう。正確には「THE TRIO」10周年ではなく,現「THE TRIO」7年間の集大成! 選曲も歴とした“小曽根真・責任編集盤”であり,往年の小曽根ファンにも,これから小曽根を堪能しようとする入門者にも,心おきなくお奨めできる“名盤”である。
やはりこうして1枚聴き通してみると,小曽根真の“男性ピアニストらしからぬ”繊細で柔らかなタッチがいい。さすがは“ピーターソン派”だけあって“綺麗なドライブ”テクニックは折紙付き! バークリー首席卒業もダテではない。
今や“世界の小曽根”と呼ばれるグレートな称号は,ハッタリのハリボテなどではない。
ところで…,だ。最後に正直に告白する。実はこれ以上,小曽根真についてのペンが進まない。
そう。小曽根真が“超一流”のジャズメンであることは認めるが「マイ・フェイバリット」のジャズメンではないからだ。批判の言葉は特にない。嫌いであるはずもない。
理由はうまく書けないが,管理人にとっての小曽根真の位置付けは,チック・コリアやオスカー・ピーターソンと同じラインに立っている。こう書けば,これ以上語らなくとも,分かる人には分かるはず?
相性の問題で片づけるつもりはないが,平均的でグッと迫り来るインパクトが薄いのだ。何かが物足りない。ゴメンナサイ。
(2000-2006年録音/UCCJ-2051)
























