DVD批評
2008年06月29日
T−スクェア / ライヴ “ナチュラル”
T−スクェアのライブが好きだ。終演時には気持ちが“晴れ晴れ”する。無論,演奏は凄い。しかしこれ見よがしにテクニックで圧倒されることがない。上手く表現できないが,音楽少年に特有の“人柄の良さ”を感じるのである。
ライブに行って良かった。T−スクェアと出会えて良かった。ライブの感動が後から後から込み上げてくる。これは上質な映画を見終わった後に感じる心地良さ。自分が“気高く”なったかのような錯覚を感じて帰宅する。
そんな管理人が選ぶ“品の良い”T−スクェアのライブDVDが『LIVE “NATURAL”』(以下『ライヴ“ナチュラル”』)である。
『ライヴ“ナチュラル”』は『ナチュラル』を“地”で行く,北海道・旭川での特設野外ライブ! 演奏の合間に映し出される雄大な自然の美しさとベスト・マッチング!
この開放感を“野外ならでは”と感じるのが普通なのでしょうがそれは間違いである! この感じはホールでのライブと同じ。スクェアはスクェア。どこで演ろうともT−スクェア100%。この“ほのぼの感”こそがT−スクェア特有のライブの“味”なのである。
そう。北海道なのにアロハ・シャツ! ストさんは遅刻する! そんな“気取らず飾らず”な彼らが汗だくになって熱演する! 観客は皆,笑顔&笑顔のピクニック気分! 心なしかバックのウシさんも和んでいます。
(どちらかと言えば)本田雅人派の管理人ですが,やっぱり伊東たけしはいい! 伊東たけしは『ナチュラル』を最後にT−スクェアを退団してしまったので『ライヴ“ナチュラル”』を見ていると,余計に伊東たけしの存在の大きさが実感できる。「伝説の5人」と讃えられる,安藤まさひろ+伊東たけし+和泉宏隆+則竹裕之+須藤満でのT−スクェアがバンドの黄金期だったに違いありません。
そんなT−スクェアの演奏は真に絶好調! 『ナチュラル』はスクェアの数ある名盤の中では人気薄だと思いますが,管理人は大好きです。特徴は何たって(本田雅人派のファンなら分かっていただけると思いますが)“あの”ラス・フリーマン仕込みの「分厚い音」=「全米発売の音」! あの音を“軽々と”野外ライブで響かせまくっている〜。
全体として一番調子良いのは和泉宏隆! 一人だけ正装して野外ライブに臨んだ気合い勝ち! 【DAISY FIELD】でのピアノ・ソロでは観客全員が美メロのアドリブに引き込まれてしまっています。則竹裕之と須藤満のドラムン・ベース・デュオは完成の域に達している。則竹と言えば【WHITE MAN】での“シェイカー姿”はお宝映像でしょう。しかし最大のお宝は“地蔵ギター”の安藤まさひろの足が軽くステップしている! ロック調8ビートが安藤まさひろを変革中の衝撃映像にニンマリである。
ライブの最後で伊東たけしが「また会おうね」を連呼していたが次のライブで伊東たけしに会えたのは10年後の真実! 今となっては笑い話ですが,本田雅人時代,宮崎隆睦時代には,伊東たけし時代の『ライヴ“ナチュラル”』を見て涙していたことを覚えている。しばらくお蔵入りでした。そして今,管理人のお蔵リストには『ライヴ“ナチュラル”』に代わって本田雅人時代のDVDが収められている。泣。
(1990年発売/SRBL1213)
2008年05月08日
キース・ジャレット / アート・オブ・インプロヴィゼーション〜キース・ジャレット・ザ・ドキュメンタリー
『THE ART OF IMPROVISATION』(以下『アート・オブ・インプロヴィゼーション〜キース・ジャレット・ザ・ドキュメンタリー』は“生けるアドリブ芸術”キース・ジャレット初にして(恐らく)最後のドキュメンタリーDVDである。正直,管理人は,この内容には満足していない。『アート・オブ・インプロヴィゼーション〜キース・ジャレット・ザ・ドキュメンタリー』は,断片的資料を継ぎ接ぎしたドキュメンタリーなので,キース・ジャレット特有の“一貫したストーリー性”が欠如している。そう。『アート・オブ・インプロヴィゼーション〜キース・ジャレット・ザ・ドキュメンタリー』は,ジャズ・ピアニスト=キース・ジャレット“歴史資料集”なのであって,感動ものではない。
しかし『アート・オブ・インプロヴィゼーション〜キース・ジャレット・ザ・ドキュメンタリー』は,キース・ファンにとっては“かけがえのない夢のような宝物”である。内容不足を補って余りある“貴重品”なのである。
管理人はこのDVDの完成を創造の神に感謝している。加えて,キース・ジャレットの「心の鍵」を開けてくれた,真摯なスタッフの努力に感謝している。このDVDには“人間”キース・ジャレットのありのままの姿が記録されているからだ。
キース・ジャレットは,決して妥協を許さない,完璧主義者の芸術家である。だからこそ“前人未踏”の偉大な仕事を数多く成し遂げてきた。そんなキース・ジャレットのポリシーの一つが「プロモーションのためには決して演奏しない」こと。そう。キース・ジャレットというジャズメンは,決してお金では動かない。いや,動けない人なのである。
過去において『アート・オブ・インプロヴィゼーション〜キース・ジャレット・ザ・ドキュメンタリー』と同様のフィルム企画が多数持ち込まれていたそうだが,その全てをキース・ジャレットは断わってきた。彼の信念がそれを許さなかった。そう。キース・ジャレットは「その仕事を真にやるべき価値があり,その仕事の完成を共に喜びあえる仲間とでなければ」決して仕事をしないのである。
それゆえ,とにもかくにも,一本のドキュメンタリー作品が完成し,手元に存在しているこの事実に心から感謝している。あの気難しいキース・ジャレットからの信頼を勝ち得,出演交渉で“くどき落とす”ことなど,女優に濡れ場を演じさせること以上に困難極まりなかったに違いない。スタッフが費やした多くの時間と労力に感謝するばかりである。
さて,そんな誠実なスタッフたちの努力の結晶である『アート・オブ・インプロヴィゼーション〜キース・ジャレット・ザ・ドキュメンタリー』は,日独英共同制作。3カ国所有の“お宝映像”が多面的に編集されている。貴重な映像資料群ゆえ(本論の流れを無視し)詰め込み過ぎた印象が残る。まぁ,散漫になるのは致し方のないことなのだろう。
それよりも管理人の目に留まったのは,時系列を無視した編集にある。チャールス・ロイド・カルテット〜マイルス・デイビス・グループと来れば,次はソロ・ピアノか,アメリカン・カルテットなのであろうが,ヨーロピアン〜クラシック〜『スピリッツ』が先に来たので,ヤン・ガルバレクよりデューイ・レッドマンの方が印象に残ってしまった。おかげで『アート・オブ・インプロヴィゼーション〜キース・ジャレット・ザ・ドキュメンタリー』を見終わった瞬間から,アメリカン・カルテット,とりわけローズアンのハートを射止めた『フォート・ヤウ』のヘビー・ローテーションが始まっています。はい。
ここまで『アート・オブ・インプロヴィゼーション〜キース・ジャレット・ザ・ドキュメンタリー』の内容不足について毒づいてしまったが,唯一,慢性疲労症候群と闘っていた時のエピソードは真に感動的である。
“生けるアドリブ芸術”キース・ジャレットは,健康を犠牲にしてまで音楽の創造に没頭してきた。その代償として支払われたのが「身体をエイリアンに乗っ取られた」と語った慢性疲労症候群による衰弱。ピアノも見れない。蓋を開ける力もない。3分以上は話しさえできない。そんなどん底のキース・ジャレットを,家族や友人みんなで慰め,励まし続けたのだ。
そんな闘病生活の末,産み落とされた傑作が『メロディ・アット・ナイト,ウィズ・ユー』。ローズアンへのクリスマス・プレゼントである『メロディ・アット・ナイト,ウィズ・ユー』は,わずか1,2分しか演奏できない状態の中でのソロ・ピアノである。プレゼント用DATにはリボンがかけられていたそうであるが,回想しつつも感動で言葉が詰まるローズアンへのインタビューには心を打たれた。
「病気は教師。今は作曲活動は行なっていない。演奏できるのは奇跡。演奏以外の形で音楽に関わるのは違うと思った。演奏できる奇跡だけでいい」とキース・ジャレットは語っている。
これがインプロヴァイザーとしてだけでなく作曲家としても名を馳せた,ジャズ・ピアニスト=キース・ジャレットの“真実”であろう。
近年,キース・ジャレットは『レイディアンス』『カーネギー・ホール・コンサート』と,即興演奏を披露できるほど体力が回復している。キース・ジャレット・トリオの最新作『マイ・フーリッシュ・ハート』が凄すぎる。
2008年5月,キース・ジャレットが再び日本上陸する。管理人も大阪まで乗り込む予定である。
(2005年発売/VABJ-1163)
2007年10月14日
山中 千尋 / リーニング・フォワード
自称“独身貴族”の管理人ですから「お見合い」などしたこともなければ,金輪際することもないでしょう。ただし夢の世界,空想の世界,バーチャルの世界では「お見合いし放題」です。だってTVをつければ,次々とかわいい女の子が登場して来るではありませんかっ。まっ,永遠に“一方通行”ですけどね。でも正確にはTV「お見合い」など「お見合い」などではない。やはり「お見合い」なるもの“写真でしか見たことのない人と”会食するものであろう。そう。静止画から動画へのドキドキ感! 写真の彼女が動いている! ( この後も管理人の妄想話は延々続くのでありますが,今回はここまで…。お・し・ま・い )
さて,山中千尋である。写真で見る山中千尋は“キレカワ系”。あっ,管理人が山中千尋を好きなのは“あくまでも”音楽性。容姿は二の次です。本命はプロのジャズ・ライター「島田奈央子」さんですから…。ねっ,クマクレアさん!?(内輪ネタです)
でもやっぱり「ちーたん」(山中千尋)も気になる! それで「お見合い」してみました。静止画から動画の「DVDお見合い」です。そう。『LEANING FORWARD』(以下『リーニング・フォワード』)で,初めて“動く”山中千尋嬢を拝見したのです。
LIVE評でよくある“生で見てガッカリ”という反応。残念ながら管理人の『リーニング・フォワード』評も“その口”です。
きっと“お嬢様でお人形”を勝手に期待しすぎた反動なのでしょう。それともあの超一流のピアノの音に“超絶技巧”を期待してしまったのかもしれません。NO。犯人は上原ひろみ嬢かもしれません。山中千尋と「お見合い」する前に,上原ひろみの,あの圧倒的パフォーマンスを見せられてしまったから…。
そう。山中千尋はちっとも悪くありません。いつでもニコニコ。笑顔でピアノを弾いています。
澤野工房のDVDはこの一枚しか所有していないので,澤野工房作DVDが全て『リーニング・フォワード』と同じ作りかは不明ですが,ハッキリ言ってこの映像は新しい! クレーンが飛び交い「上下左右&前後」+レール上をカメラが駆け抜け「クローズ・アップ」! 文字通り,山中千尋を“激写”しまくっています。
そしてここが『リーニング・フォワード』最大の“売り”であろう,大きなガラス越しに映される“大阪の町並み”と山中千尋のピアノとのコラボレーション!
LIVEが進むにつれ,夕暮れから夜景へと変化するバック・ステージ。時間と共に刻一刻とその表情を変えていく町並みがアクセント! “指揮者”山中千尋のピアノに呼応する“人と車の流れ”がお見事である。真っ赤なネオンさえピアノを照らすスポット・ライトへと変化していく! そんな都会の雑踏とドラマティックなライティングを味方につけた山中千尋の“快演”が交差する最高の瞬間! そう。静かに流れる“極上の時間”が記録された「山中千尋 IN 大阪物語」なのである。
『リーニング・フォワード』は「TWILIGHT SET」&「EVENING SET」の2ステージに「BONUS TRACKS」を加えた3部構成。セット毎に衣装のお色直しも楽しめる。そう。一度に3回も「お見合い」できてしまうお得盤である。
ピアノを演奏している“動く”山中千尋は「顔に似合わぬ」筋肉質であった。あの華奢な体で“男性顔負け”の力強いフレーズを繰り出す秘訣が垣間見えた。あの“ピアノ・サイボーグ”ばりの鍛え上げられた二の腕に“納得”です。
そして次に目がいってしまうのは,山中千尋の“愛くるしい”笑顔でしょう。ほのぼのと楽しそうにピアノを弾き続ける姿に胸が“キューン”。バラードでは一転,眉間にしわ寄せ苦しそうな表情を浮かべる姿に,またしても“キューン”。
なんだかんだ言って結構楽しんでいる管理人。冒頭の“ガッカリ&期待外れ”は何処へ行ったのでしょうね? いかに期待と妄想が桁外れに膨らんでいたのかが良〜く分かります。今度は等身大の期待を抱いて,LIVE会場で「一方通行お見合い」でもしてみようと思っています。 ← おお,危険人物?
それにしても未だ『リーニング・フォワード』だけに収録されている【MELO】と【SEJO】は秀逸! いつになったらCDへも吹き込んでくれるのでしょうね。アンチ“映像物”の皆さんにも,この2曲だけは買って聴く(見る)価値があると思っています。「ちーたん」ファンなら,このDVDは必見ですよっ。
(2003年発売/SDV002)
2007年09月13日
パット・メセニー・グループ / ザ・ウェイ・アップ 〜 ライヴ
生涯に一度“立ち会えるか”どうかの奇跡のライブ! そのライブを偶然収録することができた奇跡のDVD! それこそ“我らが”パット・メセニー・グループの『THE WAY UP − LIVE』(以下『ザ・ウェイ・アップ 〜 ライヴ』)である。『ザ・ウェイ・アップ 〜 ライヴ』のおかげで,管理人も上記「奇跡の二重奏」の“目撃証人”となることができた。いずれ読者の皆さんも…。
むろん,正確には『ザ・ウェイ・アップ 〜 ライヴ』は「奇跡の二重奏」などではない。恐らくライブの出来に関しては,パット・メセニー・グループというもの,ツアー中も更なる向上を目指すことで知られるバンドであるがゆえ,最終公演近くの“練りに練り上げられ,成熟された演奏”がベストだったと思うし,収録日に関しては,現地韓国スタッフが入念な準備のもと,いわばライブの開演を“手ぐすね引いて待ち構えていた”状態だったとも思う。
そんなの分かりきっている。百も承知である。でも,それでも管理人は『ザ・ウェイ・アップ 〜 ライヴ』を,敢えて「奇跡」と呼ぶのである! ← 「セラビー,カッコイイ」! この掛け声はオリエンタルラジオ風でお願いしま〜す。
それはなぜか? 理由は『ザ・ウェイ・アップ』という楽曲のインパクトに尽きる! 『ザ・ウェイ・アップ』を(例えば1年後などと)時間を空けて,このクオリティで再演することなど,それが天才集団=パット・メセニー・グループの現メンバーたちであったとしても不可能に違いない,と思うからだ。
『ザ・ウェイ・アップ』の解説は次期CD批評に委ねることとし,ここでは詳細は述べない。ただ一言。『ザ・ウェイ・アップ』こそ音楽家=パット・メセニーの全て。間違いなく彼の最高傑作であろう。
そう。『ザ・ウェイ・アップ』は,どこをどう切っても,メセニー節のオンパレード! 68分にも及ぶ超大作を暗譜するのも大変だろうが,パット・メセニーの音符を弾ききることはもっと大変。一回一回の演奏が大チャレンジの場と化している。
管理人が上記の結論に達したのは,ふと目にした「特典映像」にヒントがあった…。
これまで何度,この『ザ・ウェイ・アップ 〜 ライヴ』を視聴したことだろう。骨の有りすぎるDVDであるだけに何度も繰り返し視聴してみたが,自分の言葉でDVD批評を執筆できるレベルまでは達しない。これほど“凄い&手強い”DVDは初めてである。
読者の皆さんも,一度や二度は体験済みだと思いますが,演奏鑑賞中に手が止まってしまう。もはや批評どころではなくなってしまう。トリップさせられてしまう。例のアレのことです。
それで特に興味があったわけでもなく“筆休め”のつもりで見た“おまけ”=「パット・メセニー・インタビュー」の中に『ザ・ウェイ・アップ 〜 ライヴ』の秘密を解き明かす答えがあった!
自宅には年に10日程しかいない,世界一の音楽バカ?=パット・メセニーをして「今回のツアーは特別」だと語っている。『ザ・ウェイ・アップ』については「スタジオの利点を生かして制作しようと思った。ライブのことは念頭になかった。“ライブで演奏するのは大変だ”と,過去の自分に文句を言いたい…」とも語っている。
そう。スタジオ・ワークと位置づけていた『ザ・ウェイ・アップ』の再演が,今回のツアーの一番の見所。いつもの新鮮なアドリブへの探求心など微塵も感じられない。
毎回会場も異なればオーディエンスも異なる。レコーディングからツアー・メンバーも変わっている。再演不能の理由なら幾らでも挙げることができるだろう。しかしそんな障害など何も無かったかのごとく,パット・メセニー・グループは『ザ・ウェイ・アップ』の再演を目指す! 過去の偉大な自分たちへ近づくため,いや,過去の偉大な自分たちを越えるために,新生パット・メセニー・グループが“命を削っていく”のである。
ただし,これはチャレンジであって苦行ではない。演奏中のメンバーの表情を見ていると,全員が超難曲『ザ・ウェイ・アップ』の演奏にハマッている。とりこになっている。この楽曲の深みへと誘われている。そんな超難曲と真剣に向きあい,幾つものギターを“弾きまくる”パット・メセニーの表情にグッとくる。
『ザ・ウェイ・アップ』のCDもそうだが『ザ・ウェイ・アップ 〜 ライヴ』のDVDも,そう何度も視聴できるものではない。何せ1曲68分(ボーナス・トラック入り日本盤CDは更に驚異の74分!)の「プロテスト・ミュージック」! 所有していても,そう易々と視聴できるものでもない。リスナー側にも「時間・体力・集中力」が要求されている。
しかし注ぎ込んだその努力は必ず報われる。準備すれば準備するほど,得られる感動は倍加する。努力と喜びは『ザ・ウェイ・アップ 〜 ライヴ』に関する限り比例する。この全てに関して管理人が全責任を担おう。そう。管理人のジャズ/フュージョン批評家人生をかけて「五ツ星」を保証する。
(2006年発売/VABG-1216)
2007年05月07日
セロニアス・モンク / セロニアス・モンクの肖像
管理人は,好きなジャズメンを“徹底的に掘る”のが好きだ。読者の皆さんが,管理人と同じ“コレクター”であるならば,その醍醐味については説明不要であろう。ただしこれがエスカレートしてくると,集める楽しさを通り越し「全部集めないと気が済まない」といった“脅迫観念”に襲われるのでほどほどに…。
さて,そんな“コレクター”気質をお持ちの読者の皆さんなら,リーダー・アルバムを完全制覇 → サイドメンもの → 映像ものへとシフトしていくはず?
さらにもっと症状が悪化すると,ジャズメンの生い立ちなど,音楽以外のバックボーンをも追い続けることとなる。
本末転倒OKじゃないですか。それでこそ,一人前のジャズ・マニア!? いえいえ。「大人の」ジャズ・マニアは,純粋に音楽,アドリブだけを聴き続ける。この本末転倒は,さなぎから成虫への脱皮,大人への登竜門なのである。
と,のっけから高飛車トークで「ドン引き」させたかもしれませんが,これは管理人の実体験。自戒の念が込められています。
実話。管理人が脱線したジャズメンの一人がセロニアス・モンク! 「モンクス・ミュージック」の真髄に接せねば,とDVD『AMERICAN COMPOSER』(以下『セロニアス・モンクの肖像』)を愛聴したものだった。
『セロニアス・モンクの肖像』は,独創的な「モンクス・ミュージック」の魅力を克明に捉えた音楽ドキュメンタリー!
セロニアス・モンクの音楽ルーツを,身近な友人たちのインタビューを交え紐解いていく。
特にピアニスト仲間のランディ・ウエストンとバリー・ハリス,プロデューサーのオリン・キープニュース,息子のセロニアス・モンク・ジュニアによる“証言”が興味深い。重みがある。
勿論,動くセロニアス・モンクも拝めるし,オフィシャルものとしては“本邦初登場”バド・パウエルの“お宝映像”も収録されている。正真正銘,モンク・ファン“必携”のDVDである。
やはりセロニアス・モンクは苦闘していた。売れない“日陰の時代”が長かった。世間がやっとモンクの感性に追いつき“陽の当たる場所”に立てるようになった。
しかしその瞬間モンクは先を走っている。モンクの中で広がるギャップ〜ますます悪化する演奏環境〜ついに絶望に耐えきれず引退。なんという損失。
『セロニアス・モンクの肖像』は,セロニアス・モンクの絶頂期には余り触れていない。そう。「モンクス・ミュージック」は,不遇時代に確立されたジャズ! 若き下積み時代に充満する,創造のためのエネルギー! 誰も真似できない,誰も到達できない孤高のジャズ・ピアノ・スタイルは,一人自宅の練習中に誕生したのである。
「モンクス・ミュージック」に近づきたければ“急がば回れ”! CDを10回聴き込むよりも,DVD『セロニアス・モンクの肖像』を一聴した方が理解が深まる。これも管理人の実体験である。
(1999年発売/COBY-90057)
2006年07月05日
カシオペア / カシオペア・アゲイン
フュージョンの「スゴ腕たち」のスーパー・プレイには聴く者たちを圧倒的する“力”がある。目が点&お口あんぐり状態。「これ,どうやって弾いているの」。そこで決定的な衝撃! 予想もしない結末! 映像を見て仰天してしまう。椅子に腰掛け,ただ弾くだけでも大変だと言うのに,なんとなんと“振付で”踊りながら弾きまくっている!
あり得ない。ウソでしょう? いいえ。ウソではありませぬ。管理人は自分の目で何十回も確かめた。読者の皆さんにも自分の目で確かめてほしい。証拠は現に存在する。そう。DVD『CASIOPEA AGAIN』(以下『カシオペア・アゲイン』)!
このDVDは過去のカシオペア映像作品の集大成! 管理人が昔欲しかったLDからの抜粋が超お得なシロモノである。
管理人は“生”カシオペアを,一体何回目にしたのだろう。だからここで断言できるのだが,カシオペアのLIVEは超エンターテイメント! ただの一度もガッカリして家路に着いたことなどない。毎回絶対に楽しめる。
『カシオペア・アゲイン』は,そんなカシオペアのLIVE総集編なのだから“はずれ”がないのは当たり前! 全ての楽器野郎,全てのフュージョン・ファンのみならず,全ての音楽好きに自信を持ってお奨めできる。
さて,カシオペアの“名誉”のために補足しておくと,この映像が必ずしも彼らのベスト・パフォーマンスとは限らない。この映像が“たまたま記録されていただけ”のことであって,経験上,もっとグレートなステージはたくさんあった。ファンとしては,これがカシオペアの“全て”とは思ってほしくないのだ。
しかしそれでも『カシオペア・アゲイン』には,デビュー当時の秘蔵映像から“絶頂期”に至るまでの歩み,歴史が収められている。“懐古趣味”を楽しめる。そう。管理人にとっては貴重な青春の1ページ,かけがえのない映像記録なのだ。
カシオペア=青春ではない人たちにはCD『ミント・ジャムス』を聴いた後に,DVD「ドミノ・ライン」の“ドミノ倒し”を見てもらいたい。まさかこれが“ドミノ倒し”の真実だとは?
答えは見てのお楽しみ…。“あっと驚くタメ五郎”な展開に,つい“ニンマリ”してしまうはず。
そう。カシオペアはやっぱりLIVE! カシオペアこそ,真のライブ・バンド! ダンシング・ファンキー・フュージョン・バンド!
『カシオペア・アゲイン』を見て,聴いて,心ゆくまで楽しんでください。
(2000年発売/SRBL1078)

