CD批評:ズート・シムズ

2007年09月09日

ズート・シムズ / プレイズ・ソプラノ・サックス / WILLOW WEEP FOR ME4

アナログレコード

 『SOPRANO SAX』の5曲目は【WILLOW WEEP FOR ME】(以下【柳よ泣いておくれ】)。


 【柳よ泣いておくれ】の魅力は「熟練の味」! 安定した刺激を送り続けるピアノ・トリオの音の波を“スイスイ”かき分けながら,自分の泳ぎを披露するズート・シムズ
 決して速くはないが,質の高い泳ぎ方は,芸術点最高の“模範演技”であり,教則である。

 終始リラックスした雰囲気の中,ソプラノ・サックスの表情だけが移りゆく…。
 起伏の出にくいソプラノ・サックスを,強引に吹き鳴らすことなく「色付け」するには相当のテクニックが要求されることと思うが,ズート・シムズ独特のフレージングで,ビリー・ホリデーばりの【柳よ泣いておくれ】を歌い上げている。実に渋い名演である。

 一方で【柳よ泣いておくれ】の聴き所は,主役であるはずのズート・シムズが上記「いぶし銀」の名脇役に回ったものだから,本来の脇役であるレイ・ブライアントが,前面に押し出された「玉突き」カルテット,の構図とも読み取れる。
 3分7秒からの,レイ・ブライアントピアノ・ソロにも注目してほしい。普段着のレイ・ブライアントに似つかわしい“の木”が,ここでは“似ても似つかない”エレガントで華やかな“の木”へと変貌している。こんな“の木”も悪くはない。

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

ZOOT SIMS : Soprano Sax
RAY BRYANT : Piano
GEORGE MRAZ : Bass
GRADY TATE : Drums


Soprano Sax
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2006年12月14日

ズート・シムズ / プレイズ・ソプラノ・サックス / WRAP YOUR TROUBLES IN DREAMS ( AND DREAM YOUR TROUBLES AWAY )5

アナログレコード

 『SOPRANO SAX』の3曲目は【WRAP YOUR TROUBLES IN DREAMS ( AND DREAM YOUR TROUBLES AWAY )】(以下【苦しみを夢に隠して】)。


 【苦しみを夢に隠して】は,ノリノリのスインギー。タイトルの“苦しみ”とはどこへやら? やはりズート・シムズの“本性”は隠せない。“夢”に向かって突っ走る,圧倒的パワーで満ちている。
 こうも明るく前向きで元気モリモリ(←古い)の要因は,ズート・シムズが自分のプレイに専念できる,充実のサイドメンたちにある。
 この“円熟の”リズム・セクションは,ズート・シムズとの共演歴も長いので,互いに手の内を知り尽くしているかのような,独特の一体感がある。そう。ズート・シムズの激しい振幅の変化に,敏感に,しなやかに反応している。
 名うてのスインガーが,これで「ノラナきゃウソ」である! で,見事に“飛び跳ねた”ズート・シムズの“一丁”出来上がり!

 しかし何度聴いても,このソプラノ・サックスはいい! 他に類を見ないプレーヤーとの“相性”の良さを感じる。この独特の味わいは,例の何分何秒批評では伝わらないと思う。
 【苦しみを夢に隠して】は,一曲通して聴いてほしい。聴き終わった後で“ジワジワと効いてくる”あの何とも表現し難い満足感? いや,これは中毒症状?
 読者の皆さんにも,これら“B級ジャズ”以外では決して手に入れることができない,真のジャズ好きだけに許された“至福の世界”を,一度体験していただきたい。

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

ZOOT SIMS : Soprano Sax
RAY BRYANT : Piano
GEORGE MRAZ : Bass
GRADY TATE : Drums


Soprano Sax
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2006年04月05日

ズート・シムズ / プレイズ・ソプラノ・サックス / MOONLIGHT IN VERMONT5

アナログレコード

 『SOPRANO SAX』の2曲目は【MOONLIGHT IN VERMONT】(以下【ヴァーモントの月】)。


 【ヴァーモントの月】でのズート・シムズは“そっと優しく”ソプラノ・サックスを奏でる。
 テナー・サックスで時折聴かせてきた“ブロー”とは対極にあるジャズ・スタイル。

 この“そこはかとない心地良さ”は【ヴァーモントの月】自体がバラード名曲という理由もあるのだろうが,管理人に言わせればズート・シムズの“優しい”人間性がそのまま表現として“にじみでた”結果に思えてならない。
 正に“心が揺さぶられる”真の“癒し系”ナンバーである。

 1分11秒からのソプラノ・ソロでの,ごくわずかな強弱を聴き逃さないでほしい! メゾ・ピアノピアノの間を行き来するのが,ズート・シムズの内に宿る“ジャズメン魂”そのものであろう。
 これ以上はあえて解説しない。分かる人には分かると思う。分からない人は是非,分かるようになるまでCDを聴き込んでいただきたい。← 高飛車ですみません。どうぞお許しを。 

 2分23秒からのレイ・ブライアントピアノ・ソロが抜群の雰囲気を醸し出している。何か特殊な録音テクニックを使用したかに思える,キラキラと透き通るように昇華した“音色”にも大注目! 「アドリブログ」ナイス・サポート賞金賞受賞作!

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

ZOOT SIMS : Soprano Sax
RAY BRYANT : Piano
GEORGE MRAZ : Bass
GRADY TATE : Drums


Soprano Sax
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2006年04月03日

ズート・シムズ / プレイズ・ソプラノ・サックス4

アナログレコード

 春。4月。別れと出会い+引越し+新入生や新社会人…。
 連想ゲームはまだ続くが,管理人は“お上りさん”で溢れるこの時期の東京が大好きだった。管理人自身18歳で上京し,毎週毎週東京見物。エンジョイ東京ライフ!(正確には千葉県民でしたが)。ホームシックなどかかるはずもない。

 しかし,たった一度だけ長崎の田舎を思い出したことがあった。それがズート・シムズを聴き返した瞬間だった。
 ズートの“ほんわか”サウンドに“田舎の良さ”を感じたのだ。ここがミソ! ここがズート・シムズ最大の特徴であり,魅力であり,味なのである。
 思わず“昔は良かった。田舎は良かった”と口走りそうになる。都会人が失ってしまった何かが,現代ジャズが失ってしまった何かが,残されている。

 このように紹介するとズート・シムズは“相当の田舎者”に思えるかもしれないが,実はカリフォルニア州イングルウッド=「ブラック・ビバリーヒルズ」とも称される“都会派”の出身である。
 ではなぜ“やぼったい”のだろう? ズート・シムズのフレーズは,それがアドリブを吹く場合であっても“真面目にきちんと”がモットー。一言一言が明瞭で,変に自己主張しない音。この辺りの生真面目さが“やぼったさ”とつながっているのだろう。

 確かにズート・シムズは天才肌のテナー・マンではないかもしれないが,ズートの持ち味をこよなく愛する人にとっては,彼に代わるテナー・マンはいない。そう。ズート・シムズは肩肘張らないジャズ・ファンのアイドルなのだ。

 晩年,ズート・シムズテナーだけでなくソプラノアルトバリトンもプレイした。ズート・シムズテナー・マンであることを認めつつも,個人的に彼の音楽性と一番マッチするのはソプラノ・サックスだと思う。
 『SOPRANO SAX』(以下『プレイズ・ソプラノ・サックス』)がいい。全曲“癒し系”の選曲と相まってズート・シムズの持ち味が表現された一番のCDである。

 『プレイズ・ソプラノ・サックス』の別の聴き所は“音色”。ズート・シムズソプラノは,シドニー・ベシェのようにビブラートを多用したり,ジョン・コルトレーンのように表現の限界に挑むといった,ソプラノ・サックスが本来が持ち合わせている“美しい味わい”を損なうものではない。そう。ここにあるのは“自然で素直な音”。
 プレイヤーとしてのズート・シムズのテクニックは“超一流”なのである。

(1976年録音/VICJ-23598)

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