アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

CD批評:ズート・シムズ

ズート・シムズ / プレイズ・ソプラノ・サックス / WILLOW WEEP FOR ME5


 『SOPRANO SAX』の5曲目は【WILLOW WEEP FOR ME】(以下【柳よ泣いておくれ】)。


 【柳よ泣いておくれ】の魅力は「熟練の味」! 安定した刺激を送り続けるピアノ・トリオの音の波を“スイスイ”かき分けながら,自分の泳ぎを披露するズート・シムズ
 決して速くはないが,質の高い泳ぎ方は,芸術点最高の“模範演技”であり,教則である。

 終始リラックスした雰囲気の中,ソプラノ・サックスの表情だけが移りゆく…。
 起伏の出にくいソプラノ・サックスを,強引に吹き鳴らすことなく「色付け」するには相当のテクニックが要求されることと思うが,ズート・シムズ独特のフレージングで,ビリー・ホリデーばりの【柳よ泣いておくれ】を歌い上げている。実に渋い名演である。

 一方で【柳よ泣いておくれ】の聴き所は,主役であるはずのズート・シムズが上記「いぶし銀」の名脇役に回ったものだから,本来の脇役であるレイ・ブライアントが,前面に押し出された「玉突き」カルテット,の構図とも読み取れる。
 3分7秒からの,レイ・ブライアントピアノ・ソロにも注目してほしい。普段着のレイ・ブライアントに似つかわしい“の木”が,ここでは“似ても似つかない”エレガントで華やかな“の木”へと変貌している。こんな“の木”も悪くはない。
 レイ・ブライアントピアノには,柳の下で“二匹目のドジョウ”を発見した時の驚きがある。

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

ZOOT SIMS : Soprano Sax
RAY BRYANT : Piano
GEORGE MRAZ : Bass
GRADY TATE : Drums

ズート・シムズ / プレイズ・ソプラノ・サックス / BLOOS FOR LOUISE4


 『SOPRANO SAX』の4曲目は【BLOOS FOR LOUISE】(以下【ブルーズ・フォー・ルイーズ】)。


 【ブルーズ・フォー・ルイーズ】は「ズート・シムズ・プレゼンツ,レイ・ブライアントジョージ・ムラーツ」である。

 なんせ自分のオリジナルなのに,イントロからの3分11秒間は,レイ・ブライアント・トリオの名演である。思うにズート・シムズは,レイ・ブライアントの“アフター・アワー的な”アドリブを“狙って”弾かせている。

 4分46秒から6分10秒までのジョージ・ムラーツベース・ソロが“唸らせる”! 思うにズート・シムズは,ジョージ・ムラーツの“ツボを押さえた重低音の”アドリブを“狙って”弾かせている。
  
 そんな“職人大好き”ズート・シムズソプラノ・サックスがこれまた渋い。バックとつかず離れずの絶妙の絡み具合である。

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

ZOOT SIMS : Soprano Sax
RAY BRYANT : Piano
GEORGE MRAZ : Bass
GRADY TATE : Drums

ズート・シムズ / プレイズ・ソプラノ・サックス / SOMEDAY SWEETHEART4


 『SOPRANO SAX』の1曲目は【SOMEDAY SWEETHEART】(以下【サムディ・スウィートハート】)。


 【サムディ・スウィートハート】こそ,ズート・シムズソプラノ・サックスを持たせた真価の証明トラックである。

 この“小唄”が最高である。どこまでもリラックスしたズート・シムズが,ソプラノ・サックスという楽器を心底楽しんでいる! ズート・シムズアドリブの意識はないが,そこは生粋のジャズメン。無意識にアドリブが飛び出している。ここがまた最高なのである。

 全編ビブラートのかかったズート・シムズソプラノ・サックスが歌っている。レイ・ブライアントピアノも歌っている。もう仕事を忘れた2人の“趣味の世界”である。
 そこへ“職人”ジョージ・ムラーツの登場! 3分32秒からのベース・ソロは感傷に流されることのない,楽曲の世界に忠実な(ただし結果は大甘な)ビートがズンズン来ている! 3者のコンビネーションの妙であろう。実にいいものを聴かせてもったぁ〜。

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

ZOOT SIMS : Soprano Sax
RAY BRYANT : Piano
GEORGE MRAZ : Bass
GRADY TATE : Drums

ズート・シムズ / プレイズ・ソプラノ・サックス / WRAP YOUR TROUBLES IN DREAMS ( AND DREAM YOUR TROUBLES AWAY )5

アナログレコード

 『SOPRANO SAX』の3曲目は【WRAP YOUR TROUBLES IN DREAMS ( AND DREAM YOUR TROUBLES AWAY )】(以下【苦しみを夢に隠して】)。


 【苦しみを夢に隠して】は,ノリノリのスインギー。タイトルの“苦しみ”とはどこへやら? やはりズート・シムズの“本性”は隠せない。“夢”に向かって突っ走る,圧倒的パワーで満ちている。
 こうも明るく前向きで元気モリモリ(←古い)の要因は,ズート・シムズが自分のプレイに専念できる,充実のサイドメンたちにある。
 この“円熟の”リズム・セクションは,ズート・シムズとの共演歴も長いので,互いに手の内を知り尽くしているかのような,独特の一体感がある。そう。ズート・シムズの激しい振幅の変化に,敏感に,しなやかに反応している。
 名うてのスインガーが,これで「ノラナきゃウソ」である! で,見事に“飛び跳ねた”ズート・シムズの“一丁”出来上がり!

 しかし何度聴いても,このソプラノ・サックスはいい! 他に類を見ないプレーヤーとの“相性”の良さを感じる。この独特の味わいは,例の何分何秒批評では伝わらないと思う。
 【苦しみを夢に隠して】は,一曲通して聴いてほしい。聴き終わった後で“ジワジワと効いてくる”あの何とも表現し難い満足感? いや,これは中毒症状?
 読者の皆さんにも,これら“B級ジャズ”以外では決して手に入れることができない,真のジャズ好きだけに許された“至福の世界”を,一度体験していただきたい。

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

ZOOT SIMS : Soprano Sax
RAY BRYANT : Piano
GEORGE MRAZ : Bass
GRADY TATE : Drums


Soprano Sax
ランキングを見てみよう!

ズート・シムズ / プレイズ・ソプラノ・サックス / MOONLIGHT IN VERMONT5


 『SOPRANO SAX』の2曲目は【MOONLIGHT IN VERMONT】(以下【ヴァーモントの月】)。


 【ヴァーモントの月】でのズート・シムズは“そっと優しく”ソプラノ・サックスを奏でる。
 テナー・サックスで時折聴かせてきた“ブロー”とは対極にあるジャズ・スタイル。

 この“そこはかとない心地良さ”は【ヴァーモントの月】自体がバラード名曲という理由もあるのだろうが,管理人に言わせればズート・シムズの“優しい”人間性がそのまま表現として“にじみでた”結果に思えてならない。
 正に“心が揺さぶられる”真の“癒し系”ナンバーである。

 1分11秒からのソプラノ・ソロでの,ごくわずかな強弱を聴き逃さないでほしい! メゾ・ピアノピアノの間を行き来するのが,ズート・シムズの内に宿る“ジャズメン魂”そのものであろう。
 これ以上はあえて解説しない。分かる人には分かると思う。分からない人は是非,分かるようになるまでCDを聴き込んでいただきたい。← 高飛車ですみません。どうぞお許しを。 

 2分23秒からのレイ・ブライアントピアノ・ソロが抜群の雰囲気を醸し出している。何か特殊な録音テクニックを使用したかに思える,キラキラと透き通るように昇華した“音色”にも大注目! 「アドリブログ」ナイス・サポート賞金賞受賞作!

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

ZOOT SIMS : Soprano Sax
RAY BRYANT : Piano
GEORGE MRAZ : Bass
GRADY TATE : Drums

ズート・シムズ / プレイズ・ソプラノ・サックス4

アナログレコード

 春。4月。別れと出会い+引越し+新入生や新社会人…。
 連想ゲームはまだ続くが,管理人は“お上りさん”で溢れるこの時期の東京が大好きだった。管理人自身18歳で上京し,毎週毎週東京見物。エンジョイ東京ライフ!(正確には千葉県民でしたが)。ホームシックなどかかるはずもない。

 しかし,たった一度だけ長崎の田舎を思い出したことがあった。それがズート・シムズを聴き返した瞬間だった。
 ズートの“ほんわか”サウンドに“田舎の良さ”を感じたのだ。ここがミソ! ここがズート・シムズ最大の特徴であり,魅力であり,味なのである。
 思わず“昔は良かった。田舎は良かった”と口走りそうになる。都会人が失ってしまった何かが,現代ジャズが失ってしまった何かが,残されている。

 このように紹介するとズート・シムズは“相当の田舎者”に思えるかもしれないが,実はカリフォルニア州イングルウッド=「ブラック・ビバリーヒルズ」とも称される“都会派”の出身である。
 ではなぜ“やぼったい”のだろう? ズート・シムズのフレーズは,それがアドリブを吹く場合であっても“真面目にきちんと”がモットー。一言一言が明瞭で,変に自己主張しない音。この辺りの生真面目さが“やぼったさ”とつながっているのだろう。

 確かにズート・シムズは天才肌のテナー・マンではないかもしれないが,ズートの持ち味をこよなく愛する人にとっては,彼に代わるテナー・マンはいない。そう。ズート・シムズは肩肘張らないジャズ・ファンのアイドルなのだ。

 晩年,ズート・シムズテナーだけでなくソプラノアルトバリトンもプレイした。ズート・シムズテナー・マンであることを認めつつも,個人的に彼の音楽性と一番マッチするのはソプラノ・サックスだと思う。
 『SOPRANO SAX』(以下『プレイズ・ソプラノ・サックス』)がいい。全曲“癒し系”の選曲と相まってズート・シムズの持ち味が表現された一番のCDである。

 『プレイズ・ソプラノ・サックス』の別の聴き所は“音色”。ズート・シムズソプラノは,シドニー・ベシェのようにビブラートを多用したり,ジョン・コルトレーンのように表現の限界に挑むといった,ソプラノ・サックスが本来が持ち合わせている“美しい味わい”を損なうものではない。そう。ここにあるのは“自然で素直な音”。
 プレイヤーとしてのズート・シムズのテクニックは“超一流”なのである。

(1976年録音/VICJ-23598)

ランキングを見てみよう!
livedoor プロフィール
記事検索
Categories
Keith Jarrett Gallery

キース・ジャレット(真田馨子) おんがく日めくり(c) keiko sanada
Pat Metheny Gallery

パット・メセニー(野々口和仁)
(c) Kazuhito Nonoguchi
ジャズ・アフィリエイト
セラビー厳選CD

パリ・コンサートパリ・コンサート
キース・ジャレット

THE WAY UPTHE WAY UP
パット・メセニー・グループ

イン・ア・サイレント・ウェイイン・ア・サイレント・ウェイ
マイルス・デイビス

HEAVY WEATHERHEAVY WEATHER
ウェザー・リポート

BRAINCOOL STRUTTIN'
ソニー・クラーク

MINT JAMSMINT JAMS
カシオペア

HUMANHUMAN
T-スクェア

フル・ハウスフル・ハウス
ウェス・モンゴメリー

ザ・シーン・チェンジズザ・シーン・チェンジズ
バド・パウエル

セロニアス・モンク・トリオセロニアス・モンク・トリオ
セロニアス・モンク

枯葉枯葉
チェット・ベイカー

MOANIN'MOANIN'
アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ

BLOWIN' THE BLUES AWAYBLOWIN' THE BLUES AWAY
ホレス・シルヴァー

ウィントン・マルサリスの肖像ウイントン・マルサリスの肖像
ウイントン・マルサリス

メイティング・コールMATING CALL
タッド・ダメロン

Blu-spec CD ジャコ・パストリアスの肖像ジャコ・パストリアスの肖像
ジャコ・パストリアス

ザ・キング・イズ・ゴーンザ・キング・イズ・ゴーン
マーカス・ミラー

FIRST MEETINGファースト・ミーティング
テザード・ムーン

スペシャル・エディションSPECIAL EDITION
ジャック・デジョネット

ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリングYOU MUST BELIEVE IN SPRING
ビル・エヴァンス

STEP BY STEPSTEP BY STEP
ステップス

2424
DIMENSION

GANAESIAガネシア
渡辺香津美
カズミ・バンド

コンプリート・ピック・ヒッツ・ライヴPICK HITS
ジョン・スコフィールド

ニューポートの追想V.S.O.P.
ハービー・ハンコック

アス・スリーUS THREE
ホレス・パーラン

Manhattan StoryBLUE'S MOODS
ブルー・ミッチェル

AFRICAN PIANOOFF TO THE RACES
ドナルド・バード

AFRICAN PIANOAFRICAN PIANO
ダラー・ブランド

Manhattan StoryMANHATTAN STORY
アキコ・グレース

SPELLBOUNDSPELLBOUND
ジョー・サンプル

ランデヴーRENDEZ-VOUS
木住野佳子

RETURN TO FOREVERRETURN TO FOREVER
チック・コリア

BRAINBRAIN
上原ひろみ

イン・ラインIN LINE
ビル・フリゼール

ザ・サウンド・オブ・サマー・ランニングザ・サウンド・オブ・サマー・ランニング
マーク・ジョンソン

スインギン・マケドニアスインギン・マケドニア
ダスコ・ゴイコビッチ

タイム・スレッドTME THREAD
小曽根真 & ゲイリー・バートン

フルーツケーキFRUITCAKE
フルーツケーキ

THE DROPPERTHE DROPPER
メデスキ,マーチン&ウッド

Doin' SomethingDOIN' SOMETHING
ソウライヴ

SALT IISALT II
塩谷哲

Dance Your HeartDANCE YOUR HEART
Saya

地球は愛で浮かんでいる地球は愛で浮かんでいる
松永貴志
アンケートボードA

★当ブログについて望むことは?
アルバム単位で批評してほしい
同じ曲をテイク別に批評してほしい
多くのジャズメンを幅広く批評してほしい
一人のジャズメンを掘り下げて批評してほしい
超有名曲をもらさず批評してほしい
発売直後の新作を批評してほしい
初心者を意識したほんわかサイトにしてほしい
マニアを意識したニッチなサイトにしてほしい
オーディオについて批評してほしい



-Mini Vote-
アンケートボードB
How Much Is Your Blog Worth?

My blog is worth
$38,953.26

How much is your
blog worth?

最新コメント
Copyright (C) 2005-2017 アドリブログ All Rights Reserved.