アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

CD批評:渡辺 貞夫

渡辺 貞夫 / ナチュラリー4

NATURALLY-1 『NATURALLY』(以下『ナチュラリー』)が泣ける。2重の意味で泣ける。

 1つ目の涙は「絶賛の涙」である。
 渡辺貞夫アルトサックスこそが「世界一」である。こんなにも「美しく・優しく・温かい」アルトサックスは世界中を探し回っても見つからない。

 個人的には渡辺貞夫の音楽があれば何があっても生きていける。本気でそう思う。これまでのナベサダのアルバムは全部好きだ。そんな思いを持って聴いた『ナチュラリー』。1曲目の【NATURALLY】を聴いただけで涙が溢れてくる。そしてアルバムを全部聴き終えるまで,ずっと涙が止まらない。

 では読者の皆さんに『ナチュラリー』を奨めたいか,と問われればそうでもない。恐らく,他の音楽ファンの涙腺はゆるくならないかもしれないから。
 管理人と同じ経験ができる人とは,これまでの人生をずっと渡辺貞夫と共に生きてきた人だけなのだと思う。ずっとナベサダと時を過ごしてきたから,一音聴いただけで感動してしまう。渡辺貞夫の“今”が聴こえてくるからだ…。

 まだまだナベサダの体調は良さそうだ。いつもと変わらぬナベサダの音色を確認できて安心する。その上で,今までとは違ったナベサダを打ち出そうとしている姿勢に泣けてくる。
 「貞夫さん,マイペースで大丈夫ですから。そんなに飛ばさなくて大丈夫ですから。もう十分に満足していますし,心から感動しています。感謝しています」。

 2つ目の涙は「悲しみの涙」である。こちらは実際に涙することはないが“心の涙”ということで…。
 渡辺貞夫の老いを初めて,証拠として目のあたりにしてしまった。初めて直視させられてしまった。親の老いた姿を見た時の思い出とと被ることがあって…。

 管理人の知る渡辺貞夫とはオリジナル曲の制作にこだわり続ける男である。勿論,カヴァー曲も演奏する。有名スタンダード曲を取り上げ,自分の感じたままに新鮮なアレンジを施す渡辺貞夫も大好きである。

 それがどうだろう。『ナチュラリー』の【WATER COLORS】と【SPRING】に驚いた。
 何と!【WATER COLORS】は,ほぼ【MY DEAR LIFE】。【SPRING】は,ほぼ【TIMES WE SHARED】。あれ程「オリジナルオリジナル」と連呼してきた渡辺貞夫もついに…。

NATURALLY-2 だから管理人は思う。全てのナベサダ・ファンは『ナチュラリー』を聴くべきだと強く思う。
 『ナチュラリー』には,若い頃のナベサダはいない。でも今のナベサダがいる。老いを自覚し始め「自分の音と懸命に闘っている」ナベサダアルトサックスが記録されている。

 こんなにも「美しく・優しく・温かい」アルトサックス渡辺貞夫の他にはない。渡辺貞夫は命を懸けて,自分の音楽を守っている。自分の音楽を更に発展させようとしてもがいている。

 渾身のバラードSMILE】に,心が震えて止まらない。感動が止まらない。

  01. Naturally
  02. Junto Com Voce
  03. After Years
  04. Bem Agora
  05. Water Colors
  06. Na Lapa
  07. Carinhoso
  08. Bird's Song
  09. Spring
  10. Smile

(ビクター/JVC 2015年発売/VICJ-61742)
(ライナーノーツ/斉藤嘉久)

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渡辺 貞夫 / カム・トゥデイ4

COME TODAY-1 『INTO TOMORROW』から『COME TODAY』(以下『カム・トゥデイ』)へ…。

 たかがアルバム・タイトルであるが,ここに渡辺貞夫の願いであり,祈りが込められている。そう。渡辺貞夫からのメッセージは「TOMORROW(明日)」ではなく「TODAY(今日)」である。

 明日に目を向けることは,今を見つめること以上に価値があると思っている。ただし,未来を見つめることと現実から目を背けることとは意味が違う。もっと言うと渡辺貞夫は,明日から今日を見つめている…。幸せな明日が待っているんだから,今日一日を何とか頑張んだ…。
 苦しみの真っ最中には考えられないかもしれないが,苦しみを乗り越えた先には,あんな日もあった,と笑って話せることだってある…。

 「冬の土の奥に
 芽生えのときを待つ生命があるように,
 悲しみや困難を乗り越えた先には
 希望があります。
 『痛みの度合いは 喜びの深さを知るためにある』
 これはチベットの格言ですが,
 僕のそうした想いを,このアルバムに
 感じてもらえればと願っています」。

 これは『カム・トゥデイ』のライナーノートの中に記されている渡辺貞夫の言葉である。
 ここに直接的な「頑張ろう」といった言葉はない。そうではなく渡辺貞夫は,自分のもう一つの言葉であるアルト・サックスを通じて,慰め,励まそうとしている。

 この姿勢こそが渡辺貞夫そのものだと思う。自分の音楽を通して,人々に笑顔を,人々に感動を,そしてこの度は慰めと励ましを…。
 そう。『カム・トゥデイ』とは渡辺貞夫から届けられた「東日本大震災」へのレクイエムである。渡辺貞夫自身も震災の前に,最愛の妻を亡くしたそうだ。そんな悲しみに暮れた渡辺貞夫だから“寄り添う”ことの出来たレクイエム…。

 さて,このように書くと『カム・トゥデイ』を,重いジャズ,と受け止められてしまいそうだがそうではない。
 『INTO TOMORROW』と同じく,ピアノジェラルド・クレイトンベースベン・ウィリアムスドラムジョナサン・ブレイクのNYの精鋭たちとのセッションにおいて,渡辺貞夫アルト・サックスを吹き鳴らしながら,踊り,跳びはねている。
 この“軽さ”こそが『カム・トゥデイ』の真髄だと思う。あらゆる困難を乗り越えた結果として,ついに手に入れた“軽さ”なのであろう。

COME TODAY-2 『カム・トゥデイ』の聴き所は“丁々発止とレクイエム”である。若手というより実力者の3人とのインタープレイである。
 ジェラルド・クレイトンベン・ウィリアムスジョナサン・ブレイクの演奏が『INTO TOMORROW』と比べて格段に良くなっている。

 この3人の成長の後ろに渡辺貞夫の存在あり。渡辺貞夫ジェラルド・クレイトンベン・ウィリアムスジョナサン・ブレイクの関係性が「凄腕の共演者たち」から「NYの3人の息子たち」へと変化している。
 だから渡辺貞夫アルト・サックスで徹底的に攻めているのに,穏やかな夕凪のような演奏に聴こえるのだろう。聞き流すことがもったいない“ハートフルな”ナベサダ・ミュージック。

 「TOMORROW(明日)」から見た「TODAY(今日)」は,決して悪いことばかりではないはずだ。将来から現在を見つめることができれば,つかの間の患難を忍耐できる。
 そうして忍耐して過ごした今日一日,気持ちが付いてこなくとも,明るい将来の希望を見つめ続けることができますように…。

  01. Come Today
  02. Warm Days Ahead
  03. Airy
  04. What I Should
  05. I Miss You When I Think of You
  06. Gemmation
  07. Vamos Juntos
  08. Simpatico
  09. She's Gone
  10. Lullaby

(ビクター/JVC 2011年発売/VICJ-61655)
(ライナーノーツ/渡辺貞夫,小沼純一)

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渡辺 貞夫 / SADAO WATANABE4

SADAO WATANABE-1 渡辺貞夫の2枚目の自己名義『SADAO WATANABE』は「NEW」渡辺貞夫ではなく,渡辺貞夫の「再デビュー」盤でもなく,これぞ「渡辺貞夫の音楽の完成形」である,との気概に満ちている。

 とはいえ『SADAO WATANABE』に,渡辺貞夫の気合いは感じられない。それどころか,かなりリラックスした演奏である。
 「素」の渡辺貞夫,「ナチュラル」な渡辺貞夫“そのまんま”なアルトサックスの記録なのである。

 2枚目の自己名義『SADAO WATANABE』は「渡辺貞夫の本格的なアフリカの第一弾」というのがファンの共通認識である。しかし管理人的には,アフリカではなく“もろ”日本,である。

 確かに『SADAO WATANABE』の中にアフリカが含まれている。それは『SADAO WATANABE』が放つ,自由で伸び伸びとした雰囲気の演奏にあると思う。

 『SADAO WATANABE』は,渡辺貞夫がアフリカから帰国して40日後に吹き込まれたアルバムである。アフリカ人の素直で素朴な人間性と広大な自然のこだましている野性味のあるリズムに接して,より一層,自由で伸び伸びとしたジャズを指向した成果なのだと思う。

 しかし,それって日本の音楽の特徴なのではなかろうか? 渡辺貞夫アルトサックスフルートソプラニーニョパーカッションが,楽し気に歌っている。
 福村博トロンボーンパーカッション板橋文夫ピアノエレクトリックピアノパーカッション高柳昌行ギターが,楽し気に訴えかけている。
 古野光昭ベース倉田在秀ドラムが,楽し気に踊っている。

 これって日本の祭りの特徴である。大都会でも片田舎でも共通して流れてくる祭りのBGM。日本古来の伝統音楽が有する,牧歌的で田園的なJ−ジャズの王道そのものである。なんの気取りもなく根源的で自然発生的なJ−ジャズの王道そのものなのである。

SADAO WATANABE-2 管理人の結論。『SADAO WATANABE批評

 『SADAO WATANABE』とは「渡辺貞夫の本格的なアフリカの第一弾」であり,J−ジャズの王道の1枚でもある。
 いいや『SADAO WATANABE』とは,ナベサダ“その人”の王道の1枚なのである。

PS その後の渡辺貞夫の「キーワード」は,ニューヨークでありロサンゼルスでありブラジルでありフュージョンです。多くの経験を経て,現在のナベサダの音楽は『SADAO WATANABE』からすれば“もっともっと”個性的なジャズフュージョンが流れ出しています。

  01. SASA
  02. MTOTO
  03. MTELENKO
  04. POROMOKO LA MAJI
  05. KIJIJI
  06. BARABARA
  07. MOMBASA
  08. UPEPO
  09. UMEME

(ソニー/SONY 1972年発売/SICP 20153)
(☆BLU−SPEC CD仕様)
(ライナーノーツ/岩浪洋三)

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渡辺 貞夫 / アイム・ウィズ・ユー5

I'M WITH YOU-1 『I’M WITH YOU』(以下『アイム・ウィズ・ユー』)を聴いて感じることは,みんなが渡辺貞夫のことを大好きだということだ。

 ステージの共演者だけではなく,裏方さんにしても,オーチャードホールに足を運んだ観客にしても『アイム・ウィズ・ユー』のレコーディングに関わった全員が渡辺貞夫を心の底から愛している。それ位に会場全体の温かい雰囲気がCDを通じて伝わってくる。感動である。

 この温かさの最たるものは,音のWARM。生身のブラスの音であるビッグバンドの存在である。
 『アイム・ウィズ・ユー』は,何と!渡辺貞夫60年のキャリアの中で初となるビッグバンドとの共演アルバム。なぜ今までなかったのか不思議なくらい。それ位に渡辺貞夫と総勢16人で構成されたビッグバンドが“しっくり”きている。

 主役である渡辺貞夫を「お膳立て」するのは当然の役回りである。ただし,ブラスの全員が渡辺貞夫の引立て役になろうとした結果ではない。そうではなく,渡辺貞夫との共演を自然と心から楽しんだ結果である。

 そう。メンバー全員が渡辺貞夫アルトサックスの大ファン。ゆえに渡辺貞夫アルトサックスの音色と被ることを避けているだけ。意識的というよりも本能的に身を引いただけである。
 だから,自分の演奏をしながら,自分の音以上に渡辺貞夫アルトサックスの音をよく聴いていると思える節がある。

I'M WITH YOU-2 村田陽一ボブ・ミンツァーラッセル・フェランテマイケル・ギブスの「ナベサダ・ファミリー」の手によるアレンジもよく練られている。
 最高の聴かせ所をわきまえ,かつグルーヴしている。渡辺貞夫アドリブにインスピレーションを与える“抜き差し”にうなってしまう。
 勝手知ったるナベサダの名曲群がオーケストレーションによって映える映える〜! 旧知のナベサダ・ワールドを82歳にして今また新しく表現している!

 『I’M WITH YOU』とは『I’M WITH SADAO』。渡辺貞夫ほど幸せなジャズメンもそうはいない。

  01. TOKYO DATING
  02. HIP WALK
  03. TREE TOPS
  04. EPISODE
  05. I'M WITH YOU
  06. EARLY SPRING
  07. EYE TOUCH
  08. WARM DAYS AHEAD
  09. AIRY
  10. TEMBEA
  11. NOT QUITE A SAMBA
  12. MY DEAR LIFE

(ビクター/JVC 2015年発売/VICJ-61736)
(ライナーノーツ/渡辺貞夫)

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渡辺 貞夫 / オウトラ・ヴェス −ふたたび−4

OUTRA VEZ-1 『OUTRA VEZ』(以下『オウトラ・ヴェス −ふたたび−』)は,渡辺貞夫の25年振りとなるブラジル録音。

 この事実さえ伝われば,他につべこべ言う必要はない。渡辺貞夫のブラジルと来れば“鉄板”の「名盤保証付き」。
 「サッカー王国」として名高いブラジルは,音楽の世界でも「王国」であって,世界的に有名なボサノヴァだけでなくミナスの例しかり。地方地方で独自の発展を遂げており,奥深い。

 『オウトラ・ヴェス −ふたたび−』で渡辺貞夫と共演したのは,ピアノファビオ・トーレスギタースワミJr.ベースパウロ・パウレッリドラムセルソ・ヂ・アルメイダパーカッションのクレーベル・アルメイダヴォーカルファビアーナ・コッツア

 ブラジルでは超一流どころなのだろうが,管理人的には“無名のタレント集団”のサイドメン。大物不在でちょっぴり残念だったのに,聴いて納得 → さすがは「王国ブラジル」 → さすがは渡辺貞夫セレクテット
 「渡辺貞夫の考えるブラジル」を自然体で見事に表現している。この力の抜け具合が最高である。ナベサダの“お耳”は実に素晴らしい。

 …とは言え,管理人が『オウトラ・ヴェス −ふたたび−』に感動するのは『オウトラ・ヴェス −ふたたび−』の中の“ブラジル色”ではなく“渡辺貞夫色”についてである。

 渡辺貞夫のブラジル録音。身体は25年振りかもしれないが,心は25年振りではない。この25年間,渡辺貞夫の心には常に“ブラジルの音楽魂”が宿っていた。ナベサダのDNAの中で鳴り続けていた“ブラジリアン・メロディー”があった。
 読者の皆さんもお気付きになっていますよね? アルバムの中に必らず(それがアフリカであっても)ブラジリアン・フレイバーが混じっていたことを…。

 そう。いつだって渡辺貞夫チャーリー・パーカーし続けてきたし,どこにいても渡辺貞夫はブラジルし続けてきた。だから東京でもNYでもLAでも渡辺貞夫アルトサックスを吹き鳴らせば,そこに“ブラジルの香り”が充満していた。
 極論を語れば『オウトラ・ヴェス −ふたたび−』では単純にその比重が増しただけなのだ。

OUTRA VEZ-2 渡辺貞夫は,ジャズを吹いても渡辺貞夫フュージョンを吹いても渡辺貞夫,ブラジルを吹いても渡辺貞夫“その人”である。

 『オウトラ・ヴェス −ふたたび−』を聴くという行為は「世界一美しい音色と口ずさみたくなる優しいメロディー」を持つ“世界のナベサダ”の音を聴くという行為。

 だからできれば『オウトラ・ヴェス −ふたたび−』は,拝聴をやめて“さらっと”聴き流してみてほしい。こんなにも“世界のナベサダ”の音をストレートに感じるアルバムは久しぶりなのだから…。

  01. OUTRA VEZ
  02. PELOURINHO
  03. REQUIEM FOR LOVE
  04. COLOR OF SPRING
  05. BON DIA 80
  06. CABO VERDE AMOR
  07. TEMA PARA E NOVO VENTO
  08. NATAKA MAJI
  09. SIMPATICO
  10. SOLITUDE

(ビクター/JVC 2013年発売/VICJ-61685)

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渡辺 貞夫 / イントゥ・トゥモロー5

INTO TOMORROW-1 『INTO TOMORROW』(以下『イントゥ・トゥモロー』)を聴いて渡辺貞夫のことが益々大好きになった。ナベサダを聴き続けてきて本当に良かったと思った。
 “ジャズメン”渡辺貞夫の音楽に触れて心の底から真に幸福を感じた。

 “世界のナベサダ”である。御年76歳である。通算70枚目である。6年ぶりの新録である。渡辺貞夫の素晴らしいキャリアをして,まだまだ衰えぬ創作意欲。 大ベテランなのだから気心知れたビッグ・ネームたちとジャズ・スタンダードでも吹き込んでも良さそうなのに…。

 2000年以降はカメルーンの“天才ベーシストリチャード・ボナとのコラボ3作。そして今回の『イントゥ・トゥモロー』では,ピアノジェラルド・クレイトンベースベン・ウィリアムスドラムジョナサン・ブレイクのNYの若手3名とのコラボである。テイストとしては『パーカーズ・ムード』リターンズなのである。

 『イントゥ・トゥモロー』で聴こえるナベサダのフレーズが若い。孫ほど年の離れた“旬の若手”に溶け込んでいる。ナベサダのチャレンジは今もフツフツと続いていたのだ。
 そう。『イントゥ・トゥモロー』には“現在進行形”の渡辺貞夫が記録されている。定位置に安住することを拒み続け常に高みを目指す“少年の心”が記録されている。

 『イントゥ・トゥモロー』は,ピュアなアコースティック・ジャズであり“静かな”4ビートが主役である。
 “静かな”4ビートと書いたのには3つの理由がある。その1つはジェラルド・クレイトンベン・ウィリアムスジョナサン・ブレイクの“若手らしからぬ”円熟の演奏力である。

 渡辺貞夫のやりたいことを理解して渡辺貞夫に“寄り添う”付かず離れずの演奏はベテラン顔負け? 何でも出来るテクニックであるはずなのに,超絶技巧をひけらかすことなく,しゃしゃり出ず「ナベサダ・ジャズ」を主役に据えている。
 パワーや勢いでグイグイ来るのではなく若手に似つかぬ“奇をてらわない”アドルブ。手数の少ない“いぶし銀な”アドルブ。そんな円熟の演奏力が相まって“歌心ある4ビート”が真っ直ぐに伝わってくる。いい演奏だと思う。この若手3人の演奏力に満足感や充実感を覚えてしまう。

 “静かな”4ビート。その2つ目の理由はジャケット写真。『イントゥ・トゥモロー』のジャケット写真にECMをイメージしてしまう。実に清らかなライト・ブルー。渡辺貞夫に「菩薩の霊」が乗り移る。シンプルだがセンスを感じるヨーロピアン・ジャズのようなジャケット写真。
 『イントゥ・トゥモロー』のジャケット写真に「音楽の桃源郷への招待状」を思い重ねる。

 “静かな”4ビート。その3つ目の理由は“やっぱり”ナベサダアルト・サックスの美しさ。どんなに哀しい曲であっても慰めを受ける。希望を抱ける“陽だまり”のような“ポカポカ”な世界一美しいアルトの音色。
 この美しい音色にヨーロピアン・ジャズをイメージするのかもしれないが,颯爽と吹き抜けるフレージングに渡辺貞夫の人柄を感じる。何があってもどんな時でも満面の笑み。“静かに”笑っていてくれるだけで救われる思いがする。

INTO TOMORROW-2 管理人は『イントゥ・トゥモロー』を初めて聴いた夜に涙した。何とも懐かしい子供の頃の思い出が去来したのだ。心の奥に抑えていた感情が沸き上がってきた。何とも幸せな夜だった。こんな幸福をずっと噛み締めていたい。

 (ソニー・ロリンズジョン・コルトレーンは別格として)矢野沙織が好きだ。本田雅人が好きだ。ウェイン・ショーターが好きだ。デヴィッド・サンボーンが好きだ。ケニー・ギャレットが好きだ。
 この5人と比べると渡辺貞夫は,正直,そうでもなかった。でも『イントゥ・トゥモロー』を聴いて強烈に次のことを意識した。管理人のソバにはいつでも渡辺貞夫がいた。うれしい時も悲しい時も,山あり谷あり,渡辺貞夫を聴いて育った。

 管理人の残りの人生のワン・シーンにもきっと渡辺貞夫がいてくれる。部屋の隅っこ,散らかった山積みCDの一番下からでも優しく見守っていてくれる。何の変化もない退屈な日常にも流れている。暮らしの音としての渡辺貞夫…。
 こんなジャズメンと出会えたなんて,何と素敵なことだろう…。何と幸せなことなのだろう…。音楽って素晴らしい…。

 『イントゥ・トゥモロー』は『パーカーズ・ムード』には及ばない。『エリス』の感動には到底及ばない。でもじんわり来る。他の何物にもなくじんわり来る。
 『イントゥ・トゥモロー』こそ,管理人指折りの愛聴盤である。

  01. Butterfly
  02. Tree Tops
  03. Study in Pit Inn
  04. If I Could
  05. Times Ago (For Tibetan People)
  06. What Second Line
  07. Not Quite a Samba
  08. Song of May
  09. Itapua (On the Beach)
  10. Train Samba
  11. Into Tomorrow

(ビクター/JVC 2009年発売/VICJ-61608)
(ライナーノーツ/渡辺貞夫)

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渡辺 貞夫 / ベイシーズ・アット・ナイト4

BASIE'S AT NIGHT-1 最高のハコで最高の仲間と最高の演奏。目の前には最高の観客がいる。渡辺貞夫にとって『BASIE’S AT NIGHT』(以下『ベイシーズ・アット・ナイト』)はそんな最高なCDであろう。

1)最高のハコ=理想のライブ・ハウス=日本一のジャズ喫茶ベイシー」。しかも勝手知った定期公演。信用しているオーナー・菅原正二氏の「完璧な段取り」がある。
2)最高の仲間=渡辺貞夫のレギュラー・クインテットピアノ小野塚晃ベース納浩一ドラム石川雅春パーカッションンジャセ・ニャン。長年連れ添った者同士の絶妙なコンビネーションがある。
3)最高の演奏=ナベサダのルーツを網羅するビ・バップ,ボサノバ,カリプソ,アフリカ,フュージョンスタンダードバラード。そのどれものが“ナベサダ”の代表曲である。アルト・サックスが“甘い音色でスイング”している。
4)最高の観客=ナベサダをフォローし続け,毎年「ベイシー」でのライブに足を運び続けるお客さんとスタッフたち。一音足りとも聴き逃すまいとする「拝聴」の姿勢にナベサダがいつも以上に乗せられている。

 ライブ・レコーディング日の「ベイシー」は“特別な空間”。渡辺貞夫が“聖地に立つ”〜。正しく『ベイシーズ・アット・ナイト』。
 アットホームなホームタウンでのライブであるにも関わらず,渡辺貞夫は決して手を抜いたりしない。それどころか渡辺貞夫の“気合テンコ盛りな”アルト・サックスのパルスがビシバシ飛んでいる。演奏を上手にまとめることを敢えてせず,音色やフレーズを含めた「いい音」をひたすら追い求めたナベサダ流“チャレンジ”のドキュメントなのである。
 カットなしのセットリスト全17曲収録なのがうれしすぎる〜。ミス・タッチも含めて発せられた全ての音が“JAZZ”なのだ〜。

 そんな“理想のライブCD”『ベイシーズ・アット・ナイト』なのだが,管理人の評価は星4つ。だって「最高のハコ+最高の仲間+最高の演奏+最高の観客」なはずなのに,肝心の感動が今一つ伝わってこないのだ。

 ライブCDが本当のライブに勝るなど,初めから思ってやいない。でも出来の良いライブ盤には本当のライブでは体験できない“サプライズ”がある。
 例えば,本当のライブでは聞こえないジャズメンの息遣いが聞こえる。本当のライブでは数十メートル先で演奏しているはずなのにまるで目の前で演奏しているかのような大迫力。本当のライブではドラムの音量が大きいのにバランスよく調整されたミキシング ETC。

 なのに『ベイシーズ・アット・ナイト』は,渡辺貞夫クインテットとの距離を感じてしまう。渡辺貞夫が遠く感じてしまう。ナベサダとの関係が希薄になった気がした。
 原因は多分レコーディングのせい。どうにも『ベイシーズ・アット・ナイト』の音質が耳に合わない。ズバリ,デッドすぎる。
 「臨場感」「解像度」「ダイナミックレンジ」「空間の表現」の4つを欲張って詰め込んで録音しているが,この4要素が上手く折り合っていないというか,残響が少ない分,聞こえなくても良いところまで聞こえてしまっている。結果,楽器の輪郭が貧弱で,渡辺貞夫の意図した“音空間”を上手に捉えきれていない。本当のところプレスされた『ベイシーズ・アット・ナイト』の音質を菅原正二氏が,どう感じているのか,気になるところである。

BASIE'S AT NIGHT-2 管理人の結論。『ベイシーズ・アット・ナイト批評

 聴いていて“入り込めない”ライブ盤ほど退屈なものはない。『ベイシーズ・アット・ナイト』では渡辺貞夫クインテットに共感できない。せっかくのCD2枚組が逆に憎らしく思えてしまう。

 管理人の『ベイシーズ・アット・ナイト』の楽しみと言えば,ピアノ小野塚晃ドラム石川雅春の「DIMENSION勢」の演奏力。特にナベサダ小野塚晃デュエットカリニューゾ】だけはヘビーローテーション。
 フュージョンではなく“JAZZYな”DIMENSIONを勝手にイメージして楽しんでいま〜す。

  DISC 1
  01. ONE FOR YOU
  02. PLUM ISLAND
  03. I'M OLD FASHIONED
  04. ALALAKE 〜 LOPIN'
  05. TEMBEA
  06. DEEP IN A DREAM
  07. MAJI

  DISC 2
  01. BYE BYE BABE
  02. BASIE'S AT NIGHT
  03. LIFE IS ALL LIKE THAT(FOR SNOOPY & HIS
     FRIENDS)

  04. SEE WHAT HAPPENS
  05. CALL ME
  06. MANHA DE CARNAVAL
  07. EPISODE
  08. KARIBU 〜 ORANGE EXPRESS
  09. HARAMBEE
  10. CARINHOSO

(ビクター/JVC 2007年発売/VICJ-61508-9)
(CD2枚組)
(ライナーノーツ/菅原正二,渡辺貞夫)

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渡辺 貞夫 / SADAO & CHARLIE AGAIN3

SADAO & CHARLIE AGAIN-1 渡辺貞夫チャーリー・マリアーノの40年振りの共演盤。そのように『SADAO & CHARLIE AGAIN』を紹介したい所であるのだが…。

 『SADAO & CHARLIE AGAIN』の真実は,渡辺貞夫チャーリー・マリアーノの共演盤ではなく,勿論競演盤であるはずもなく,渡辺貞夫が一歩引いた「渡辺貞夫フィーチャリングチャーリー・マリアーノ」である。

 そう。手間のかかる下地均らしは渡辺貞夫が一手に請負い,目立つパート&おいしいフレーズを全部チャーリー・マリアーノへ「渡している」。渡辺貞夫チャーリー・マリアーノへ「花を持たせている」。「まだまだ学ばせていただきます」とばかりに渡辺貞夫が低姿勢でチャーリー・マリアーノを「持ち上げている」。

 そんな名パサーと化した渡辺貞夫が“生き生きと”演奏している。渡辺貞夫にとって,友人にして恩師(バークリー音楽院時代の先生!)でもあるチャーリー・マリアーノと同じステージに立てるのであれば,例えば“名も無い”ブラス隊の一員でも良かったことだろう。
 チャーリー・マリアーノと一緒にアルト・サックスを奏でられる喜び。渡辺貞夫の嬉々とした喜びが伝わってくる。2本のアルトで同じ音を合わせる喜び。ハモッタ瞬間の快感。まるで2人の鼓動まで同期しているようである。

 ただし,渡辺貞夫チャーリー・マリアーノのユニゾンが聴けるのは極わずか。録音時,チャーリー・マリアーノは82歳。72歳の渡辺貞夫はまだまだいけるとしてもチャーリー・マリアーノはさすがに息が続かない。休み休みしながら,ここぞ,という場面で“全力疾走の”アドリブ一発。

 そう。『SADAO & CHARLIE AGAIN』での渡辺貞夫が名パサーならチャーリー・マリアーノはストライカー。ナベサダのピンポイント・クロスを受けてチャーリー・マリアーノがゴールを決めまくる。だからこそ「渡辺貞夫フィーチャリングチャーリー・マリアーノ」なのである。

SADAO & CHARLIE AGAIN-2 正直,渡辺貞夫チャーリー・マリアーノライブ盤『SADAO & CHARLIE AGAIN』を,渡辺貞夫リチャード・ボナとのライブ盤『“ONE FOR YOU” SADAO & BONA LIVE』の次作としてリリースするのはまずいと思った。
 “新しい”ジャズの創造に燃えていたはずの渡辺貞夫が“古い”ビ・バップに戻った印象を与えてしまうと思った。う〜む。

 思うにナベサダ自身も『SADAO & CHARLIE AGAIN』をリリースするつもりはなかったのではないか?
 そう。『SADAO & CHARLIE AGAIN』の本来の立ち位置はナベサダのプライベート録音。要するに40年振りの“再会”パーティーなのだから…。

  01. Tokyo Dating
  02. Plum Island
  03. Deep In A Dream
  04. Lopin'
  05. Memorias
  06. Call Me
  07. Christmas Song
  08. One For You
  09. Por Toda A Minha Vida

(ビクター/JVC 2006年発売/VICJ-61398)
(ライナーノーツ/中川ヨウ)

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渡辺 貞夫 / ワン・フォー・ユー5

“ONE FOR YOU” SADAO & BONA LIVE-1 アフリカに一方ならぬ愛着を持つ渡辺貞夫,一方,ナベサダの演奏を聴いて育ったリチャード・ボナ
 “出会うべくして出会った”渡辺貞夫リチャード・ボナが一体となって,同じメロディ&同じリズム,を創造していく“幸福な”ライブ

 そう。『“ONE FOR YOU” SADAO & BONA LIVE』(以下『ワン・フォー・ユー』)こそ「ナベサダ・アフリカン」な“ヒューマンジャズ”の頂点!
 『ワン・フォー・ユー』には渡辺貞夫が,ずっと探し求めていた「全てが生きた音楽」=アフリカン・ジャズの“理想系”がある。
 ブルースっぽいのでもなくアーシーっぽいのでもない。本物のアフリカン・ジャズがついに“具現化”されている。

 その意味でリチャード・ボナとの出会いは大きい。
 ただし,管理人がそう言うのはリチャード・ボナが“天才”だからではない。リチャード・ボナは“ナベサダ・チルドレン”。だからこそリチャード・ボナとの出会いは大きいのだ。

 『SADAO 2000』『WHEEL OF LIFE』の2作もそうだったが『ワン・フォー・ユー』も「アフリカ&アフリカ」しているわけではない。印象としてはむしろスマートで洗練された仕上がりに聴こえる。
 リチャード・ボナが“超絶”ベース・テクニックを披露しているとはいえ,リチャード・ボナの役割はベーシスト以上に「音楽監督」。
 全体を見渡し,必要な手数の分だけベースで“合いの手”を入れている。リチャード・ボナの特筆すべきバランス感覚。

 リチャード・ボナ渡辺貞夫との共演ライブで,大好きな渡辺貞夫を「フィーチャリング」すべく“ジャズのビートで”ボトムを支えている。例えば【BONA PENDA】でのシンセとのキメキメ・ユニゾンの途中で飛び出す【SUMMERTIME】のメロディ。
 そう。リチャード・ボナは,細かなジャンルの枠組みを超えて「ナベサダフュージョン」を最高の音楽として捉えている。

 やったね。“ナベサダ・チルドレン”のリチャード・ボナくん。ナベサダと同じステージに立てて夢がかなってよかったね。

 実に温かいステージング。実に質の高いステージング。リチャード・ボナ渡辺貞夫に“羨望の眼差し”を向ければ渡辺貞夫リチャード・ボナの驚愕の才能へ“嫉妬”して見せる。
 これぞ「互いへのリスペクト」を超えた「相思相愛」のトランス状態。かぁ〜,心が震えてくる〜。

 リチャード・ボナベースが小刻みに振動し,バンド全体を揺り動かしている。バンドが素晴らしくグルーヴしている。
 リチャード・ボナの“超絶”はやはり凄かった。正確無比なバッキングと切れ味鋭いフレーズで“聴かせるベース”を完璧コントロール。ギター・レスの編成ゆえか,メロディ・ラインのユニゾンにも随時参加し,差し詰め「ギタリスト」のような演奏である。

 一方のナベサダはどんなに吹こうとナベサダしている。ナベサダアルト・サックスがいつになく“艶かしい”。そうして放たれる異次元のアドリブ。一切の迷いなしに,あれ程追い続けていたアフリカン・ジャズのフレーズが見事に飛び出している。いい。

“ONE FOR YOU” SADAO & BONA LIVE-2 『ワン・フォー・ユー』のハイライトはラストの3曲。

 【BASIE’S AT NIGHT】でのリチャード・ボナの“突っ込み”グルーヴ。そしてエティエンヌ・スタッドウィックキーボードソロが半端ない。恐るべし才能。恐るべしカメルーン。
 【SEE WHAT HAPPEN】でのリチャード・ボナベーススキャットのパフォーマンスに跳び上がる! イスから跳び上がる! 部屋中駆け回る! そして「ボナは天才」と絶叫する〜!
 【CARINHOSO】。管理人の愛する“最高の”渡辺貞夫がこのトラックに凝縮されている。もはや多くを語るまい。

  01. ONE FOR YOU
  02. TEMBEA
  03. BONA PENDA
  04. I THOUGHT OF YOU
  05. WAITING SONG
  06. PONDA
  07. LIFE IS ALL LIKE THAT (FOR SNOOPY & HIS
     FRIENDS)

  08. BASIE’S AT NIGHT
  09. SEE WHAT HAPPEN
  10. CARINHOSO

(ビクター/JVC 2006年発売/VICJ-61361)
(ライナーノーツ/都並清史,渡辺貞夫)

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渡辺 貞夫 / ホイール・オブ・ライフ5

WHEEL OF LIFE-1 渡辺貞夫リチャード・ボナの初めてのコラボレーション『SADAO 2000』は,リチャード・ボナの“才能に惚れ込んだ”渡辺貞夫リチャード・ボナに“自由にやらせた”コラボレーションであった。
 そして,渡辺貞夫リチャード・ボナの2度目のコラボレーション『WHEEL OF LIFE』(以下『ホイール・オブ・ライフ』)は,リチャード・ボナの“才能に惚れ込んだ”渡辺貞夫リチャード・ボナに“縛りを与えた”コラボレーションである。

 そう。『ホイール・オブ・ライフ』での渡辺貞夫リチャード・ボナに「ベーシストの目線で」共同プロデュースに参加するよう“縛り”を与えている。

 このように書いても伝わりづらいかもしれない。でも「ベーシストの目線で」という言葉しか思い浮かばない。
 “ネイティブ・アフリカン”ならではのダイナミックで絶大なビート感にも関わらず渡辺貞夫と“完全同期”するベース・ライン。極論を言えば,リチャード・ボナベース・ラインを追いかけるだけで渡辺貞夫アルト・サックスが聞こえてくる思いがする。

 そう。『SADAO 2000』では封印された“スーパー・ベーシストリチャード・ボナの演奏力を作品の「核に据えた」がゆえの大名盤の誕生である。

 『ホイール・オブ・ライフ』を「ベーシストの目線で」味付けすると“スパイスのようにふりかけた”フィル・イン炸裂。安定したベース・ラインの“うねり”の中で垣間見せるフレージング。
 ベースソロなどないはずなのにリチャード・ボナベース抜きに『ホイール・オブ・ライフ』を語ることなどできやしない。リチャード・ボナの行なった“最高の仕事の一つ”に間違いなく『ホイール・オブ・ライフ』が上げられるべき“傑作”であると思う。

 そんなリチャード・ボナの全方位型ベースを“感じ取り音としてアウトプットした”渡辺貞夫もこれまた素晴らしい。
 リチャード・ボナベースが“主導する”メロディ・ラインが渡辺貞夫の肉体を通ることで,渡辺貞夫でもリチャード・ボナでもなく“渡辺貞夫リチャード・ボナ”のアルト・サックスとして鳴っているのだ。

WHEEL OF LIFE-2 大自然の奥から湧き出るような心地良いリズムをバックにナベサダの心温まる親しみやすいメロディーが次々と出てくる。“ナチュラル”で“ニュートラル”なナベサダ節・全開。自然で懐の深いナベサダのキャラクターが,そのまま音楽になったような『ホイール・オブ・ライフ』。

 特に【ONE FOR YOU】【TEMBEA】【WAITING SONG】の3トラックは“ナベサダ生涯のレパートリー”候補になり得る大名演である。ナベサダ“らしい”メロディ・ラインがたまらない。

 そんな中『MAISHA』好きの管理人の耳に止まるは【TIMES WE SHARED】の新ヴァージョン【SPRING − ALL BEAUTIFUL DAYS】。
 カルロス・リオスアルト・サックスな【TIMES WE SHARED】は“むせび泣ける”が,ホメロ・ルバンボフルートな【SPRING − ALL BEAUTIFUL DAYS】は涙がじんわり“こぼれ落ちる”。

  01. ONE FOR YOU
  02. TEMBEA
  03. BASIE'S AT NIGHT
  04. REQUIEM FOR LOVE
  05. WIND & TREES
  06. KOULAMANITE
  07. WAITING SONG
  08. ISABELLE
  09. JINDUNGO
  10. WHEEL OF LIFE
  11. SPRING - ALL BEAUTIFUL DAYS

(ヴァーヴ/VERVE 2003年発売/UCCJ-2026)
(ライナーノーツ/黒田恭一,渡辺貞夫,リチャード・ボナ)

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渡辺 貞夫 / グッド・タイム・フォー・ラヴ5

GOOD TIME FOR LOVE-1 「自分の気に入ったいい音と,いい物があれば人生は最高! 溢れる想いをメロディーに託し,メロウな作品や軽快なサウンドにナベサダサックスが舞う! 多数の日米コンボが参加した,渡辺貞夫のロマンチック・セイリング!」。

 『GOOD TIME FOR LOVE』(以下『グッド・タイム・フォー・ラヴ』)は,上記CD帯のコピー正しく,ナベサダ史上最多人数の共演者の揃い踏み。それなのに“ファジーな”自由空間でリラックス。好き勝手に好きな音を思い思いに重ねた感じ。
 この『グッド・タイム・フォー・ラヴ』の個性の秘訣にセルフ・プロデューサー=渡辺貞夫の存在がある。

 “ジャズ・サックス・プレイヤー”渡辺貞夫が気持ち良くアルト・サックスを奏でられるメンバー。そうであれば過去の実績も国籍も年齢も関係ない。
 ギターアール“チナ”スミスラドクリフ“ドギー”ブライアン土方隆行ジェフ・ミロノフボビー・ブルーム松木恒秀キーボードアンセル・コリンズ 野力奏一ロブ・マウンジーオナージ・アラン・ガムスベースバートラム“ランチー”マクリーン渡辺建ウィル・リービクター・ベイリー高水健司ドラムカールトン“サンタ”デイビス山木秀雄クリス・パーカープージー・ベル村上秀一パーカッションジミー・クリフシュー・エヴァンスミノ・シネルテナー・サックス渕野繁雄トロンボーン西山健治コーラスイヴらの面々をトラック毎に“適材適所”。
 思う存分「ナベサダフュージョン」が楽しめる。

 そう。『グッド・タイム・フォー・ラヴ』の真実は“ジャマイカ・テイストな”『マイシャ』の続編。ストレート・ア・ヘッドジャズCD2作『PARKER’S MOOD』と『TOKYO DATING』を飛び越えて,ポップでHAPPYな演奏路線に舞い戻ってきた。

 『グッド・タイム・フォー・ラヴ』の幸福感を高めるのがタイトル・トラック【GOOD TIME FOR LOVE】。「珈琲は音楽」UCCレギュラー・コーヒーのCM曲。
 あのCMを見て以降,コーヒーを飲む時には【GOOD TIME FOR LOVE】が頭の中で流れ続ける。「気分だね,僕のコーヒー」の名ゼリフと共に日焼けした渡辺貞夫の顔が同時にフラッシュバック。この現象が数年間は続くのだから何千日も【GOOD TIME FOR LOVE】を聞いたことになるのかも?

 ジャズとコーヒーの幸福な関係と来ればジャズ喫茶であろうが,管理人には【GOOD TIME FOR LOVE】がストライク。
 あっ,ちょっとこれは失言です。管理人も「ジャズ+コーヒー=ジャズ喫茶」が勝利の方程式と思います。はい。

GOOD TIME FOR LOVE-2 だから『グッド・タイム・フォー・ラヴ』を聞くと「ナベサダフュージョン」だけでなく,コーヒーの“豊かな香り”を感じる。くつろぎのリラックス・タイムの始まり始まり〜。

 2曲目はこちらも資生堂ブラバスの「マイ・ディア・ライフ」内のCM曲=【LOVE BIRDS WHISPER IN MY EAR】がいい。3曲目はスーパー・ベーシストにしてスーパー・ボーカリストウィル・リー主役の【WHEN WE MAKE A HOME】がいい。この時点でもう腰が重くなる。座席から,オーディオの前から離れなくなる。これぞ渡辺貞夫流“金縛り”。

 渡辺貞夫の“金縛り”から解放されるのは40分48秒後。『グッド・タイム・フォー・ラヴ』が8トラックで良かった。解放後の開放感がMAX。こんなにポップでHAPPYな演奏は『マイシャ』と『グッド・タイム・フォー・ラヴ』以外にそう多くはありません。

  01. GOOD TIME FOR LOVE
  02. LOVE BIRDS WHISPER IN MY EAR
  03. WHEN WE MAKE A HOME
  04. STEP OUT ON THE STREET
  05. I LOVE TO SAY YOUR NAME
  06. POGO
  07. ALL THE WAY
  08. LOVING YOU IS EASY

(エレクトラ/ELEKTRA 1986年発売/32XD-428)

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渡辺 貞夫 / SADAO 20005

SADAO 2000-1 ついに来た“大本命”! アフリカのナベサダ! いいアルバムだ! 『SADAO 2000』を聴いた時に単純にそう思った。後程,猛反省することになるとも露知らず〜。

 『SADAO 2000』の主役はリチャード・ボナ。しかし『SADAO 2000』を聴いた時点では,リチャード・ボナを“アフリカの至宝”とは認めつつも“世界の至宝”とは認識できていなかった。
 しかし,この事実に気付いたのはリチャード・ボナパット・メセニー・グループ入りを果たしてから。リチャード・ボナの快進撃は『SADAO 2000』から始まっていたのに管理人は現金です。

 リチャード・ボナの存在は(名声は)ザビヌル・シンジゲートで知っていた。でも噂で聞いていた程度。管理人にとって“初めてのリチャード・ボナ”が『SADAO 2000』だった。
 リチャード・ボナが“天才ベーシスト”であり“ジャコ・パストリアスの再来”と噂されていたため,確かに凄い,と認めつつも心のどこかで侮っていた。

 理由は『SADAO 2000』でのリチャード・ボナベーシストというよりもマルチ・プレイヤーでありプロデューサーだったから。バンバン,ベースを“弾き倒す”リチャード・ボナは『SADAO 2000』の中にはいなかったからだ。

 そう。真にリチャード・ボナは“ジャコ・パストリアスの再来”である。しかしそれは“天才ベーシスト”の意味ではない。
 ジャコ・パストリアスがスーパー・ベーシストの枠を超えた,天才コンポーザーであり天才アレンジャーであったのと同じように,リチャード・ボナもスーパー・ベーシストの枠を超えた,天才マルチ・プレイヤーであり天才プロデューサーなのだ。ジャズをもフュージョンをもインストをも超えた“世紀の音楽家”なのだ。
 後日『SADAO 2000』を幾度も聴き直して,管理人はそのような結論に到達した。マーカス“びいき”な管理人に“ジャコ・パストリアスの再来”を認めさせた事実にリチャード・ボナのス・ゴ・サが分かるはず〜?

 …って,すぐに分からなくても大丈夫。管理人がボナのス・ゴ・サに気付いたのは『SADAO 2000』から3年後。スーパー・ベーシストとして参加した『WHEEL OF LIFE』にKOされてから。『WHEEL OF LIFE』で分からなくても『“ONE FOR YOU” SADAO & BONA LIVE』でのボナソロが待っている。パチパチパチ。

 でも“本気の”ボナを知りたいのならザビヌル・シンジゲートです。ジャコ・パストリアスを体験した“あの”ジョー・ザビヌルリチャード・ボナに敬意を抱いちゃっています。今後,リチャード・ボナを超えるスーパー・ベーシストは現われそうにありません。でもでも管理人はマーカス命ですから〜。

 う〜ん。上記リチャード・ボナ“絶賛”をもって『SADAO 2000批評を終了しようと思ったが…。

 ズバリ『SADAO 2000』でのリチャード・ボナへの“称賛”の言葉は全て渡辺貞夫にこそ帰されるべきだと思う。
 リチャード・ボナを連れて来て,ジョー・ザビヌル以上にボナに自由を与えて,ボナの“トータル・ミュージシャン”としての全方位的な才能を見事に引き出している。
 加えてアルト・サックスでの“サポート”ぶりが素晴らしい。ジャズフュージョン,アフリカというリチャード・ボナのルーツを考慮した演奏であり楽曲である。『SADAO 2000』でのアルト・サックスには“懐の深い”イマジネーションがある。

SADAO 2000-2 そう。『SADAO 2000』のタイトル通り,渡辺貞夫ボナと共に21世紀のジャズフュージョンの扉を開いている。21世紀はアフリカをキーワードとする“ボーダレス”ミュージック。
 日本のサックス・プレイヤーとカメルーンのベーシストの“ボーダレス”なコラボレーション。リチャード・ボナのベーシックな音造りにナベサダにしか出来ない絶妙なニュアンス。
 あっ,意外にも切れていないマイク・スターン,ブラジル代表のカフェ名演もお忘れなく!

 こんな偶然の,いや必然の出会いがクロスする21世紀の“ボーダレス”ミュージック。かつてデイブ・グルーシンを相棒に「ナベサダフュージョン」を作り上げた渡辺貞夫が,今度はリチャード・ボナを新・相棒に「ナベサダ・アフリカン」とも呼ぶべき“ヒューマンジャズ”を作り上げている。

 そう。リチャード・ボナは,超絶技巧をまとった“根っからの”ジャズメン。『SADAO 2000』での渡辺貞夫リチャード・ボナ。新旧大物ジャズメンのコラボレーションを音楽の神様に感謝する。

  01. MATAHARI TERBENAM (SUNRISE)
  02. TE MISSEYA
  03. SA SO NGANDO (STEP IN AND DANCE)
  04. I THOUGHT OF YOU
  05. NOSTALGIA
  06. 花の島
  07. LIFE IS ALL LIKE THAT (FOR SNOOPY & HIS
     FRIENDS)

  08. BACK YARD SUITE
  09. ONE IN THE SAME
  10. POR TODA A MINHA VIDA

(ヴァーヴ/VERVE 2000年発売/POCJ-1480)

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渡辺 貞夫 / ヴィアジャンド4

VIAJANDO-1 『VIAJANDO』(以下『ヴィアジャンド』)は“都会のブラジル音楽”である。多分,出来はいいのだろう。事実,冒頭の4トラック【アフロジル】【ヴィアジャンド】【オン・サニー・ディ】【バタフライ】の展開は神!

 でも,それでも管理人には退屈である。理由は“大好きなブラジル”なのに“らしくない”。渡辺貞夫が上品すぎる。洗練された『ヴィアジャンド』はBGMであって“拝聴”の対象ではない。

 (いきなりの結論で申し訳ないが)管理人の結論。『ヴィアジャンド批評

 NY在住のブラジリアン・ジャズメンはブラジルに非ず。よって『ヴィアジャンド』はブラジルではない。セザール・カマルゴ・マリアーノはもはやニューヨーカー。流石のセザール・カマルゴ・マリアーノもNYに染まってしまっている。
 そう。『ヴィアジャンド』の真実は,セザール・カマルゴ・マリアーノの自宅の壁に掛かっている「故郷への窓」=リオの夜明けの海を撮った大判の写真なのだと思う。← 詳細な理由を知りたければ『IN TEMPO』のライナーノーツをご参照下さい。

 『ヴィアジャンド』は渡辺貞夫のブラジル路線の3作目。どんな映画でも「パート掘廚箸發覆譴弌い金をかけた大仕掛けの超大作となってくる。
 ギターホメロ・ルバンボベースニルソン・マッタドラムパウロ・ブラガパーカッションボーカルカフェ。どうですか? 『ヴィアジャンド』での渡辺貞夫も“盟友”セザール・カマルゴ・マリアーノを始めとする豪華な客演に囲まれている。

 例えるなら『ヴィアジャンド』はスペクタクルな超大作。デジタル・ハリウッド級のハイ・クオリティ仕上げ。多分,出来はいいのだろう。でも管理人には退屈である。『ヴィアジャンド』は“楽曲の豊かさ”の点で『エリス 3』にはならなかった。
 聴き応えは増しているのに愛着は薄くなってしまう。セザール・カマルゴ・マリアーノの感性が“本場のブラジル”から離れてしまっているようで…。

VIAJANDO-2 セザール・カマルゴ・マリアーノよ,次に渡辺貞夫と共演する際は,写真ではなく本物のリオの夜明けの海を見てきてからにしてほしい。
 『ヴィアジャンド』の敗因=セザール・カマルゴ・マリアーノ初めての失敗はインプットではなくアウトプットの問題だったと思っている。

 恒例のオーチャード・ホールでのクリスマス・ストリングスライブのテーマとしてのブラジル音楽=『MINHA SAUDADE』は例外として,いつの日か再び訪れる渡辺貞夫セザール・カマルゴ・マリアーノのコラボレーション。

 セザールさん,次は『エリス 4』でお願いしますよ〜。

  01. AFROZIL
  02. VIAJANDO
  03. ON SUNNY DAY
  04. BUTTERFLY
  05. BOEMIA
  06. LITTLE WALTZ FOR M
  07. FIREPLACE
  08. DOCE SEDUCAO (INSTRUMENTAL VERSION)
  09. DON'T WORRY 'BOUT ME
  10. COMO VAI !
  11. 空のコーラス
  12. DOCE SEDUCAO (VOCAL VERSION)

(ヴァーヴ/VERVE 1998年発売/POCJ-1410)
(ライナーノーツ/渡辺貞夫)

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渡辺 貞夫 / ゴー・ストレート・ア・ヘッド・アンド・メイク・ア・レフト4

GO STRAIGHT AHEAD 'N MAKE A LEFT-1 『GO STRAIGHT AHEAD ’N MAKE A LEFT』(以下『ゴー・ストレート・ア・ヘッド・アンド・メイク・ア・レフト』)は“一気に”聴き通せる名盤である。

 理由は1)曲間の無音が0秒。2)【NIGHTLY YOURS】【MAJI】【HARAMBEE】の代表曲収録。3)【SWING ME A STRIDE】でのウェザー・リポート収録のようなバラエティな楽曲群。

 そのような中で『ゴー・ストレート・ア・ヘッド・アンド・メイク・ア・レフト』)を“一気に”聴き通せる最大の理由は“昔ながらのライブ・レコーディング”。全員が一同に会しての「一発録り」!

 “昔ながらのライブ・レコーディング”を可能にした『ゴー・ストレート・ア・ヘッド・アンド・メイク・ア・レフト』のレコーディング・メンバーは,キーボード・プレイヤーにして今回のプロデューサー,バーナード・ライトのバンドの面々。
 ベーススティーヴン・ティールドラムマイク・フライスハッサン・フライスチャーリー・ドレイトン,そしてナベサダの10年来の盟友でもあるパーカッションスティーブ・ソーントン
 気心の知れたジャマイカ・クイーンズの精鋭たちによる“一糸乱れぬ”グルーヴエナジーが最初から最後まで続いている。

GO STRAIGHT AHEAD 'N MAKE A LEFT-2 そう。『ゴー・ストレート・ア・ヘッド・アンド・メイク・ア・レフト』の聴き所は,渡辺貞夫グルーヴの求心力。「一発録り」は渡辺貞夫ジャズメン魂。

 普段の端正なアルト・サックス。近作のスムーズ・ジャズ寄りの演奏。そんなイメージを打ち破る『ゴー・ストレート・ア・ヘッド・アンド・メイク・ア・レフト』は“世界のネベサダ”による“世界のジャズ・レーベル”ヴァーヴ移籍第1弾。
 バーナード・ライトに捧げられた【NARD’S TIME】の勢いそのまま,ナベサダナード組でマーカス・ミラーと共演してほしかった〜。

  01. Walk Around The Corner
  02. Maji
  03. Nightly Yours
  04. Episode
  05. First Flight (Planet X)
  06. Swing Me A Stride
  07. Nard's Time
  08. Harambee〜Maraika
  09. I'm With You

(ヴァーヴ/VERVE 1997年発売/POCJ-1373)
(ライナーノーツ/渡辺貞夫)

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渡辺 貞夫 / イン・テンポ4

IN TEMPO-1 短命だったファンハウス時代の渡辺貞夫はやりたい放題?
 渡辺貞夫本人の意向が強いのか? レコード会社の意向が強いのか? クリスマス・ライブの『A NIGHT WITH STRINGS』の2枚『VOL.2』『VOL.3』の売れ線・続編。そしてスタジオ録音の2枚『EARTH STEP』と『IN TEMPO』(以下『イン・テンポ』)の名盤・続編。

 名盤FRONT SEAT』の続編が『EARTH STEP』なら名盤ELIS』の続編が『イン・テンポ』。
 そう。『イン・テンポ』は渡辺貞夫のブラジリアン・リターンズ,あるいはセザール・カマルゴ・マリアーノ・リターンズ。渡辺貞夫が“生涯の友”と呼ぶ,セザール・カマルゴ・マリアーノとの“濃密な”コラボレーションが“爆発”している。

 このように書くと『イン・テンポ』は“ブラジル爆発”と思いきや,そうではない。セザール・カマルゴ・マリアーノはワールド・ワイドなスーパー・ミュージシャン。『イン・テンポ』の基本はジャズである。そこにサンバやサルサのエッセンス,ボーカルホーンのエッセンスがフュージョンされている。ここが,ただのブラジル,ではない理由。

 しかし,管理人の『イン・テンポ』への期待は『ELIS』リターンズ。その点で『イン・テンポ』には“期待外れ”の印象が強い。
 テストで90点以上取っている優等生なはずなのに,出来の良い兄がいつも100点取っていたばっかりに弟は劣等生扱いの不運。あぁ,出来の良い兄『ELIS』を持ってしまった弟『イン・テンポ』の不運。どうしても比較してしまうんだよなぁ。セザール・カマルゴ・マリアーノ,どうもすみません。

 『イン・テンポ』の“ブラジル不発”の同時期に“ブラジル爆発”がサッカーW杯。どうしても『イン・テンポ』を聴くとW杯ブラジル優勝を思い出す。いいや,ブラジルが爆発した優勝ではない。ロベルト・バッジョのPK失敗を思い出す。

 どうにもマイナスな印象のブラジルつながりの『イン・テンポ』。本当は星5つなのに星4つの『イン・テンポ』。『イン・テンポ』を最後に渡辺貞夫のファンハウス時代も終了した。おかげで次作『GO STRAIGHT AHEAD ’N MAKE A LEFT』までの3年間,ナベサダの新作が聴けなくなったじゃないですか〜!

IN TEMPO-2 管理人の結論。『イン・テンポ批評

 実力は“エース格”なのに,なにかとマイナスな印象の『イン・テンポ』。『イン・テンポ』は江川と西本の西本聖?
 そう。渡辺貞夫の“不運のエース”アルバム。それが『イン・テンポ』なのである。

PS1 『イン・テンポ』の不運があったからこそ「幸運を呼んだ」『GO STRAIGHT AHEAD ’N MAKE A LEFT』でのヴァーヴ移籍と思います。
PS2 『イン・テンポ』の不運の元凶が【PORTAS FECHADAS(ACOUSTIC VERSION)】のシークレット・トラック。出来が良いのに隠そうとするから…。
PS3 ブラジルつながりのサッカーつながりなのか知りませんが【O BELLMARE】はベルマーレ平塚の応援ソングだそうです。コンサドーレ札幌のT−スクェアの【KNIGHT’S SONG】より印象悪いのもマイナス要因。反省。

  01. A MESSAGE TO BAHIA
  02. EYE TOUCH
  03. FROM THE HEART
  04. IN JERSEY
  05. MEMORIAS
  06. PORTAS FECHADAS (Closed Door)
  07. IN TEMPO
  08. NEW YORK SCENE
  09. KARIBU
  10. O BELLMARE
  11. VITORIA 〜When We Feel The Wind〜
  12. PORTAS FECHADAS (Acoustic Version) [Secret
     Track]


(ファンハウス/FUNHOUSE 1994年発売/FHCF-2177)
(ライナーノーツ/R.B.)

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渡辺 貞夫 / アース・ステップ5

EARTH STEP-1 『EARTH STEP』(以下『アース・ステップ』)での“カッコイイ”ナベサダを是非聴いてみてほしい。
 ナベサダが思いっきり“スタイリッシュ”している。『アース・ステップ』こそ,渡辺貞夫ダンディズム。真に“お洒落”な音楽なのである。

 ズバリ『アース・ステップ』の真実は『フロント・シート』リターンズ! ボーカル曲が2曲で曲順が3曲目と5曲目。そう。『アース・ステップ』はNYでの『フロント・シート』なのである。

 『アース・ステップ』での“振り幅”はもはやスムーズ・ジャズ。バックの音造りが変わったとかレーベルを移籍したとか『アース・ステップ』での渡辺貞夫の変化は大きいが,一番の変化は渡辺貞夫サックス・フレーズ。
 渡辺貞夫ネルソン・ランジェルばりに,エリック・マリエンサルばりに,時にクールに時にパワフルに“イカシタ”サックスを吹いている。いや〜,これが最高に“カッコイイ”。

 フュージョンよりもアドリブが少ないスムーズ・ジャズ。ゆえにスムーズ・ジャズ路線で重要なのはサックスの“音色の美しさ”であろう。“世界一美しい”渡辺貞夫アルト・サックスがさらに“輝きまくっている”。

 『アース・ステップ』で一貫して感じるダンディズムは,若々しいのではなく若い。渡辺貞夫が年齢を忘れて燃え上がっている。『フロント・シート』リターンズに没頭している。
 果たして,勢い余って『フロント・シート』を少々踏み出してしまった。やりすぎの『フロント・シート』〜燃える『フロント・シート』。それが『アース・ステップ』の“個性”だと思う。

 (渡辺貞夫を全部聴いていないので説得力はあれなのだが)渡辺貞夫をずっと追いかけてきて『アース・ステップ』を聴き込んできた頃に,ふと感じたある思い。それは『アース・ステップ』の録音前後が渡辺貞夫の“充実期”だと思ったということ。

 『アース・ステップ』前後の渡辺貞夫は,何をやっても新鮮なアイディアが湧き出ていた。トンガッテルのに全てが受け入れやすいのだ。渡辺貞夫の若さと貫禄がチャレンジへと駆り立てていたと思えてならない。それ程『アース・ステップ』の“個性”を強烈に受け止めたものだった。

 なんだかんだでここまで書いて今気付いた。『フロント・シート』の“二番煎じ”なスムーズ・ジャズ路線なのに,そんなに高評価ではなかったはずなのに,管理人は『アース・ステップ』に一番愛着があるんだと思う。“隠れ”『アース・ステップ』ファンなの? ← もう自分では冷静に判断できない状態なので〜

EARTH STEP-2 管理人の結論(番外編)。渡辺貞夫の音楽指南。

 『フロント・シート』の次の一作は管理人が選んでやる。つべこべ言わずに『アース・ステップ』を聴け! こんなに“カッコイイ”ナベサダを聴き逃してほしくない。

  01. Love Will Make it Right
  02. Earth Step
  03. We'll Never Know
  04. Sangoma
  05. One Night in a Dream
  06. So Do I
  07. Love Song for Africa
  08. Windfall
  09. Lover's Walk
  10. What Do You Say
  11. Till We Meet Again

(ファンハウス/FUNHOUSE 1993年発売/FHCF-2092)

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渡辺 貞夫 / ナイト・ウィズ・ストリングス4

A NIGHT WITH STRINGS-1 並みのジャズメンなら過剰に気合入れすぎな「ウィズ・ストリングス」ものの『A NIGHT WITH STRINGS』(以下『ア・ナイト・ウィズ・ストリングス』)。

 『HOW’S EVERYTHING』で100名のオーケストラと共演した経験がなせる業なのか,それともクリスマス・ライブの雰囲気がそうさせたのか,渡辺貞夫の「ウィズ・ストリングス」は“さらり”。静かに深々と盛り上がる。うあ〜。これは聴いている途中ではなく,聴き終わってから一気にグッと来る。

 渡辺貞夫アルト・サックスが冬の冷たい空気を暖める。会場全体を暖めて行く。
 この日の渡辺貞夫は非ジャズ。アレンジに合わせて慎重に丁寧に楽譜を紡いでいる。この手の演奏は本来管理人の好みではない。しかし『ア・ナイト・ウィズ・ストリングス』は例外で良い。

 (拍手のタイミングがクラシックぽいのでそう感じるのだが)当日のライブ会場にいるかの如く全神経を音だけに集中させる。じっくりと聴き入る。『ア・ナイト・ウィズ・ストリングス』でのスモール・コンボが素晴らしい。まるでスタジオ録音のような完成度の高い演奏集。
 『ア・ナイト・ウィズ・ストリングス』成功の秘訣は2人のコンマス=ピアノ野力奏一ドラムピーター・アースキンの才能にある。共にビッグ・バンドとスモール・コンボの両方で活躍し,ソロ以上に全体のアンサンブルに気を配る“JAZZYな”リズム・セクション。そこにベースの奇才=マーク・ジョンソンが加わり“艶やかな”渡辺貞夫アルト・サックスを引き立てている。
 渡辺貞夫のスモール・コンボが完璧に機能するがゆえに,バックのストリングスとも高レベルで調和が図られているのだと思う。

A NIGHT WITH STRINGS-2 単純に年を喰ってきたせいだろうが,最近,控え目でクドクない“リッチなジャズ”を好むようになってきた。『ア・ナイト・ウィズ・ストリングス』のような“キレイ系”な「ウィズ・ストリングス」にハマルと“一音入魂”に“命を削る”アドリブへの興味が失せてくるように思う。

 だんだんとスロー系。『ア・ナイト・ウィズ・ストリングス』が流れるスロー・ライフ。管理人は『ア・ナイト・ウィズ・ストリングス』と一生お付き合いする予定である。

  01. I THOUGHT ABOUT YOU
  02. BEAUTIFUL LOVE
  03. THE CHRISTMAS SONG
  04. IN THE WEE SMALL HOURS OF THE MORNING
  05. TOKYO DATING
  06. STOLEN MOMENTS
  07. ECHO
  08. HERE THERE AND EVERYWHERE
  09. VIOLETS FOR YOUR FURS
  10. LOVE WALKED IN
  11. ONE FOR JOJO −Dedicated to Masayuki
     Takayanagi−


(エレクトラ/ELEKTRA 1993年発売/WPCP-5250)

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渡辺 貞夫 / フロント・シート5

FRONT SEAT-1 70年代の渡辺貞夫ジャズだった。80年代の渡辺貞夫フュージョンだった。
 そして1989年の渡辺貞夫は『FRONT SEAT』(以下『フロント・シート』)。『フロント・シート』は渡辺貞夫の未来をも指し示している。

 そう。『フロント・シート』は渡辺貞夫の過去と現在と,そして未来をも結ぶ集大成。
 ズバリ,渡辺貞夫は『フロント・シート』を造り上げるために音楽活動を続けてきたのだ。渡辺貞夫の全ての道は『フロント・シート』に通じている。間違いない。

 『フロント・シート』の渡辺貞夫ジャズでもフュージョンでもない。正に“ザ・渡辺貞夫”というカテゴリーで呼ぶにふさわしい“渡辺貞夫な”渡辺貞夫であり“渡辺貞夫中の”渡辺貞夫! そうとしか表現する言葉が見当たらない。

 『フロント・シート』でのアコースティックエレクトリックの絡み。ボーカルと伴奏の絡み。アルト・サックスソプラニーニョの絡み。緊張感とリラックスの絡み。メジャーとマイナーの絡み。日本とアメリカの絡み。
 繰り返す。『フロント・シート』の全てが“渡辺貞夫な”渡辺貞夫であり“渡辺貞夫中の”渡辺貞夫なのである。

 真に渡辺貞夫は格調が高い。日本人ジャズメンの誇りである。渡辺貞夫アルト・サックスには“和”を感じる。勿論,第一の“和”は大和魂のことであるが,第二の“和”は仲間である。

 『フロント・シート』の完璧なバランス。毛色の異なるプロデューサーが3人参加しているとはにわかに信じ難い統一感。リズム隊もフロントも個性豊かにメロディアス。
 渡辺貞夫サックスで“歌う”。パティ・オースティン以上に“歌っている”。ジョージ・デュークロビー・ブキャナンラッセル・フェランテの指示の元,渡辺貞夫サックスで“歌う”とパティ・オースティンは勿論のこと,ポール・ジャクソンJR.エイブラハム・ラボリエルジミー・ハスリップジェフ・ポーカロカルロス・ベガジョン・ロビンソンアレックス・アクーニャポリーニョ・ダ・コスタオスカー・カストロ・ネヴィスニール・スチューベンハウスたちもが歌い出す。
 もはや『フロント・シート』のサウンドは「チーム・ナベサダ」という“和”の結晶なのである。

FRONT SEAT-2 “和”の中心である渡辺貞夫のあの“世界最高の音色”に惹かれてのことか,あるいは渡辺貞夫の人柄に惹かれてのことだろうか,どちらにしても最初の一音で綺麗に全員が溶け合っていく。
 全てはナベサダの“人徳”に尽きる。人肌を感じる。温もりを感じる。優しい音で“身も心も”包まれていく。

 管理人も本当に幸福なことに『フロント・シート』の“和”の中に入ることができた。単純に『フロント・シート』のライブを体験できた。とにかく感動で心の震えが止まらなかった。
 あの「ザ・クラブ」でのライブから23年。『フロント・シート』が流れると,いつでもどこでも感動で心が震えてしまう。

 管理人の結論。『フロント・シート批評

 渡辺貞夫は『フロント・シート』に始まり『フロント・シート』に終わる。“最高傑作”『エリス』をも『フロント・シート』が包含する。そしてナベサダ未来の大傑作までをも…。

 管理人にとって『フロント・シート』こそ,男のロマンなのです。

  01. SAILING
  02. ONE MORE TIME
  03. ONLY IN MY MIND
  04. MILES APART
  05. ANY OTHER FOOL
  06. ON THE WAY
  07. ANGA LA JUA (Place In The Sun)
  08. WILD FLOWERS
  09. FRONT SEAT
  10. TAKIN' TIME

(エレクトラ/ELEKTRA 1989年発売/29P2-2785)

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渡辺 貞夫 / SELECTED5

SELECTED-1 渡辺貞夫の『SELECTED』。何とも素晴らしい渡辺貞夫のセルフ・セレクテッド

 管理人はベスト盤は買わない主義。理由はどこかの記事で書いたはずだが,要は全ディスコ・グラフィを集めたら不要品でしょ?
 だからベスト盤は未発表テイクがなければ買わない。でも1曲でも未発表テイクがあれば買ってしまう単純男。レコード会社の戦略にまんまと乗せられている自覚はあります。分かっちゃいるけど,悔しいのだけど,それでも買っちゃうファンのサガ。AKBファンの気持ち,よ〜く分かりますよっ。

 そんなアンチ・ベスト盤派な管理人が絶賛したい,渡辺貞夫の『SELECTED』。レコード会社の戦略は丸見えである。
 エレクトラ・レーベル移籍後だけのセレクション。ゆえに『BEST』ではなく『SELECTED』なのだろう。『BEST』にしたら渡辺貞夫本人もナベサダ・ファンも不買運動勃発の危機回避能力。この点はエレクトラへの品格を感じた。

 しかし,エレクトラの商魂は『SELECTED』全15曲中5曲の未発表テイクに表われている。
 渡辺貞夫の“定番”であろうフライング・ディスク時代の3トラック=【マイ・ディア・ライフ】【カリフォルニア・シャワー】【オレンジ・エクスプレス】。そのうち【マイ・ディア・ライフ】はスタジオ録音での【ヴォーカル・ヴァージョン】と【インストゥルメンタル・ヴァージョン】の2トラック収録。【カリフォルニア・シャワー】と【オレンジ・エクスプレス】はライヴ録音【ライヴ・ヴァージョン】の2トラック収録。【メイド・イン・コラソン】は【アンリリース・ヴァージョン】。王道戦略である。

 そして,これはエレクトラが意図したわけではないのだがエレクトラ時代の廃盤戦略。いつのまにかナベサダの旧譜が店頭から消えてしまった。そんで買うなら『SELECTED』セレクションになるのでしょう。

 …と,アンチ・ベスト盤派としてのネガティブな意見を書き連ねてみたが,結果『SELECTED』はありがたい。『SELECTED』無しではナベサダ・ファンは今日まで続かなかったかもしれないのだ。
 気付けば,管理人も廃盤地獄に陥ってしまっていた。『MAISHA』『PARKER’S MOOD』『ELIS』以外の『FILL UP THE NIGHT』『RENDEZVOUS』『TOKYO DATING』『BIRD OF PASSAGE』『MADE IN CORACAO』は未所有。全楽曲をFM東京「マイ・ディア・ライフ」でエア・チェックして聴いていたのでCDを購入せずに放置していたのが痛かった〜。

 そこで『SELECTED』! 管理人所有のベスト盤中,本来のベスト盤っぽく利用している数少ないベスト盤! 「あいててよかった」セブン・イレブン→セブン・イレブン「いい気分!」 ちなみに管理人はローソン派。理由は家から10mと無線LAN。ほぼ毎日通っている。

SELECTED-2 …と,アンチ・ベスト盤派を撤廃したかのようなポジティブ意見を書き連ねてみたが,結果『SELECTED』はありがたい。管理人の『SELECTED』は「購入費ゼロ円&ゴールドCD盤仕様&全国放送で小林克也に名前を呼んでいただいた」盤。

 ジャジャーン,管理人の『SELECTED』はFM東京「マイ・ディア・ライフ」での「ゴールドCD・プレゼント当選盤」なのであります。当選発表がラジオから流れた後で弟から「絶対応募していると思った」と言われてしまったのだが,別にいいじゃ〜ん。

 管理人の結論。『SELECTED批評

 ここまで肝心の音楽の中身について全く触れない記事も我ながら珍しい! それは『SELECTED』が「問答無用」の名曲揃いだ・か・ら! 新録も最高な星5つ!

  01. MY DEAR LIFE (Vocal Version)
  02. SAY WHEN
  03. RENDEZVOUS
  04. ROAD SONG
  05. TIP AWAY
  06. GOOD TIME FOR LOVE
  07. DESERT RIDE
  08. ROUND TRIP
  09. PASTORAL
  10. SALVADOR
  11. MADE IN CORACAO
  12. ELIS
  13. CALIFORNIA SHOWER (Live Version)
  14. ORANGE EXPRESS (Live Version)
  15. MY DEAR LIFE (Instrumental Version)

(エレクトラ/ELEKTRA 1988年発売/43P2-0015)
(☆ゴールドCD盤仕様)

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渡辺 貞夫 / エリス5

ELIS-1 『ELIS』(以下『エリス』)こそ渡辺貞夫最高のヒット作(アメリカ「ラジオ&レコード」誌ジャズ・チャート4週連続第1位! あくまでランキング上の最大ヒット。セールス枚数で語ったら『エリス』ではなく『カリフォルニア・シャワー』か『ランデブー』だったのでは?)。
 ズバリ,ヒットしたからというわけではないが,管理人の選ぶ渡辺貞夫“最高傑作”は『エリス』である。

 『エリス』は渡辺貞夫20年振りのブラジル・レコーディング。キーワードはエリス・レジーナである。
 『エリス』の真実は“ブラジルの歌姫”エリス・レジーナへの追悼盤。渡辺貞夫は1979年の「ライブ・アンダー・ザ・スカイ」でエリス・レジーナのステージに飛び入り参加するほどの大ファン。終演後のパーティーで一緒にアルバムを作る約束を交わしていたが,その16年後にエリス・レジーナの元夫=セザール・カマルゴ・マリアーノとの共演でエリスとの約束を果たすことに…。

 『エリス』のレコーディング・メンバーはキーボードセザール・カマルゴ・マリアーノギターエイトール・テイシェイラ・ペレイラベースニコン・アスンサゥンドラムパウリーニョ・ブラーガパーカッションパペーチ,そしてゲスト参加でギターボーカルの“大御所”トッキーニョ

 ヤバイ。トッキーニョ以外誰も知らない。ブラジルだから,まぁいいか〜。なんて気持ちで『エリス』を聴いてびっくらこいた。
 上手い。上手すぎる〜。期待度マイナスからのNY超え〜。NYの一流スタジオ・ミュージシャンのハイレベルをも凌駕している。サッカー王国ブラジルは音楽王国でもあったのだ。こんなに無名の凄腕ジャズメンが,未だ国内で活動しているとは大ショック。

 “音楽センスの塊”集団=王者ブラジル。管理人にとって『エリス』は,音楽王国ブラジルの底力,裾野の広がりや底辺の深さを感じるきっかけCD。アメリカでもチャート1位取るはずだわ。

 …と書くと演奏テクニックのことだと思われるかもしれないが,管理人が言いたいのはそういうことではない。歌なのだ。歌心なのだ。『エリス』を聴いていると涙が出てくる。悲しくなんてない。感動してしまう。心が震えて止まらない。

 バラードの【ELIS】だけではない。トッキーニョとの【O QUE PASSOU PASSOU】だけでもない。【PASSO DE DORIA】と【MANHATTAN PAULISTA】の極上リズムに腰をくねらせ泣いてしまう。どうしようもなく泣けてくる。

ELIS-2 管理人の結論。『エリス批評

 『エリス』の魅力は“愛”である。音ではなく愛が鳴っている確かな感覚がある。『エリス』を聴くたび渡辺貞夫の“大きな大きな愛”に優しく包まれてしまう。心の奥底がジンジン温かくなっていく。

 この渡辺貞夫の“ほっかり”感覚。やっぱり『エリス』の魅力は“ブラジルの渡辺貞夫”なんだよなぁ。管理人の大好きなパット・メセニーウェイン・ショーターもブラジルに行った。管理人もこれからブラジルに行こうと思います。

  01. QUILOMBO
  02. PASSO DE DORIA
  03. ELIS
  04. MANHATTAN PAULISTA
  05. O QUE PASSOU PASSOU
  06. PACIENCIA

(エレクトラ/ELEKTRA 1988年発売/WPCL-10647)

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渡辺 貞夫 / トーキョー・デイティング4

TOKYO DATING-1 ライブ盤=『パーカーズ・ムード』と同メンバーによる,同じくストレート・アヘッドなスタジオ録音盤。それが『TOKYO DATING』(以下『トーキョー・デイティング』)である。

 一般には『パーカーズ・ムード』と『トーキョー・デイティング』は姉妹盤であるが,管理人的には受け入れられない。同じメンバー,同じ音楽路線,しかも2日後の演奏なのに,ここまで違うものなのか?
 ズバリ,アンチ姉妹盤の根拠はナベサダの演奏である。ナベサダアルト・サックスが“軽い”のだ。

 『パーカーズ・ムード』と『トーキョー・デイティング』で“世界のナベサダ”と共演するのは,ジェームス・ウィリアムスピアノチャーネット・モフェットベースジェフ・ワッツドラム
 そう。当時“売り出し中”のNYの精鋭たちとの“世代間”セッションナベサダも年齢差など意識できないくらいの圧倒的な3人の演奏力。ナベサダが「最近の若手は凄い!」と“眼を白黒させながら”必死に先頭を突っ走っている。

 しかし,ナベサダアルト・サックスが“軽い”。若手に乗せられすぎたのか? あるいは張り切りすぎてしまったのか? “世界のナベサダ”の威厳を感じない。どちらかと言うとチャーネット・モフェットの“ぶっとい”ベースの方に貫禄を感じてしまう。

 この『パーカーズ・ムード』と『トーキョー・デイティング』の“差”はライブゆえの気迫の“差”なのだろう。重鎮らしい『パーカーズ・ムード』のアルト・サックスが『トーキョー・デイティング』の“軽い”アルト・サックスよりも100倍良い。

TOKYO DATING-2 最後にワーナーさんへの感謝と苦言を。

 ずっと廃盤となっていたエレクトラ時代の渡辺貞夫を再発していただき感謝いたします。ただし残念ながら『トーキョー・デイティング』はテープの音移りが激しいです。お目当ての【LOVE SONG】があれでは…。何とかもう一頑張りしてきれいに除去できなかったものかと…。
 真面目に『トーキョー・デイティング』の音移りがなかったら全作揃えるつもりでしたのに…。

  01. TOKYO DATING
  02. ECHO
  03. NIGHT PIECE
  04. HIP WALK
  05. PAGLIACCI
  06. A CHILD IS BORN
  07. DINDI
  08. SONG OF THE JET
  09. LOVE SONG

(エレクトラ/ELEKTRA 1985年発売/WPCL-10643)

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渡辺 貞夫 / マイシャ5

MAISHA-1 『MAISHA』(以下『マイシャ』)こそ,渡辺貞夫の“裏”名盤である。

 こんなにポップでHAPPYな演奏はそうはない。事実,管理人のナベサダコレクションのヘビーローテーション最右翼。どうしても無性に聴きたくなる日々が訪れる。

 そんな日々には批評はしない。ただただ楽しむために聴く。理屈好きのフュージョン好きとしては『マイシャ』を“爽やかフュージョン”的なBGM的括りで紹介するのは嫌いなのですが,自分がそのように楽しんでいるのだから今度ばかりはしょうがない。
 まずは骨の髄までしゃぶり尽くしてから,それから「『マイシャ』っていうアルバムはね」っと“『マイシャ』あるある”を語り明かしましょう。管理人でよければ朝までお付き合いいたします。

 ここからは『マイシャ』を朝まで語り明かすためのネタ帳です。
●【ホワッツ・ナウ】のベース・ラインはマイルス・デイビスの【TUTU】。ハービー・ハンコックエレピソロが秀逸。
●【ロード・ソング】は日産ローレルのCM曲(本人TVCM出演)。
●【グッド・ニュース】は【ハワイへ行きたい】のFM東京系「ソニー・デジタル・サウンド」に続く「ミュージック・オアシス?」のテーマ曲にしてNHK−FM「クロスオーバーイレブン」の刺客トラック。
●【タイムズ・ウィ・シェアード】と【ストレイ・バーズ】の名バラード
●【デザート・ライド】でのソプラニーニョと【マイシャ】でのフルート
●【メン・アンド・ウィメン】と【ティップ・アウェイ】でのブレンダ・ラッセル
●【グッド・ニュース】でのネイザン・イーストベーススキャットの超絶ユニゾン。
●とにかくカルロス・リオスギターソロだけを抜き出してのリピート盤。
ハービー・ハンコックエレピの音色がチープすぎ。これぞ85年の最新の音が古い時代の音。ただしブラス入りで薄くないのがお見事。
●完璧な1−9曲と10曲目【ペイサージュ】のハズシ。『ヘッド・ハンターズ』リターンズなハービー・ハンコック参加なのに。
●兄・デイブ・グルーシンを再び引っ張り出そうと弟・ドン・グルーシンソロ多し。しかし結果は“棚ボタな”ラッセル・フェランテとのコラボ始動。
ライブDVDLOVE SONG】が必見。

MAISHA-2 などなど…語り尽くせぬ『マイシャ』こそが,渡辺貞夫の“裏”名盤

 そう言えば『マイシャ』が渡辺貞夫の初セルフ・プロデュース盤。『マイシャ』は,渡辺貞夫がC型肝炎からの回復後に旅したサハラ砂漠の旅日記というコンセプトCD。なのでアルバムのジャケット写真も“カメラマン”渡辺貞夫の撮影作品。それにしてもべっぴんさん。

  01. WHAT'S NOW
  02. MEN AND WOMEN
  03. ROAD SONG
  04. TIMES WE SHARED
  05. GOOD NEWS
  06. DESERT RIDE
  07. TIP AWAY
  08. STRAY BIRDS
  09. MAISHA
  10. PAYSAGES

(エレクトラ/ELEKTRA 1985年発売/32XD-4)

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渡辺 貞夫 ライヴ・アット武道館 / ハウズ・エヴリシング3

HOW'S EVERYTHING-1 ピアノキーボード指揮者としての“アレンジャー”デイブ・グルーシンを筆頭に,キーボードリチャード・ティードラムスティーブ・ガットギターエリック・ゲイルジェフ・ミロノフベースアンソニー・ジャクソンパーカッションラルフ・マクドナルドトランペットジョン・ファディスの「オール・スターズ」に100人編成の東京フィルハーモーニックオーケストラが加わった,場所は何と日本武道館,それも3日間公演で3万人を動員したライブ
 しかもこの時の武道館ライブが,米大手メジャーCBSコロムビアからLP2枚組みとして発売され,日本のナベサダ・ファンのために日本へも逆輸入された。

 そう。渡辺貞夫の“栄光の歩み”を語る時『HOW’S EVERYTHING』(以下『ハウズ・エヴリシング』)は外せない。
 しかし『ハウズ・エヴリシング』は名盤ではなく“迷盤”である。こんな大編成での演奏は面白くない。100人以上のバック,しかも超一流のバック相手にアルト・サックス1本で勝てるわけがない。完全に主役は“アレンジャー”デイブ・グルーシンの世界。

 もっと言えば,1982年にデイブ・グルーシンも単独で日本武道館ライブを開いたが,その実験作であり前座である。
( ← お〜っと言い過ぎた。これは勢いでの失言です。本心でそう思ったりしていません。デイブ・グルーシン・ファンの皆さん,ごめんなさい。きっと昨晩「ダークナイト」を見たせいです )。

 こう皮肉りたくなる程,デイブ・グルーシンとバック・メンバーの演奏が素晴らしい。とにかくデイブ・グルーシンの書き譜通り,キッチリ,カッチリ,生真面目に演奏している。だ・か・ら・どうにも物足りない非ジャズ
 各メンバーのソロ・タイムでのアドリブでさえ書き譜のような完成度。非の打ち所のない名演が“迷盤”の元凶なのである。

 『ハウズ・エヴリシング』での「ナベサダフュージョン」は「ソフト&メロウ」指向。当時大流行したAORからの影響が感じられ,高度に洗練された分かりやすい演奏に仕上がっており“ジャズ・サックス・プレイヤー”渡辺貞夫はここにいない。

 入念なリハーサルを繰り返したことだろうし,同じ楽曲を3日間同じ場所で演奏すればジャム・セッション的な雰囲気もハプニング的な要素も消えてしまうことだろう。その副産物としての『ハウズ・エヴリシング』なのだから仕方ないのだが…。

HOW'S EVERYTHING-2 ケチのついでにもう一つ。『ハウズ・エヴリシング』での選曲が,このライブのための書き下ろし中心ではなく「ナベサダフュージョン」を確立した『カリフォルニア・シャワー』と『モーニング・アイランド』からの選曲中心であったなら大いに盛り上がったことと思う。

 『オータム・ブロー』での“成功の法則”は『ハウズ・エヴリシング』には通じなかった。
 せっかくの日本武道館での“晴れ姿”なのだから人気ナンバーのオンパレードなら良かったのに…。
 「ナベサダフュージョン」の総決算なら良かったのに…。

  01. UP COUNTRY
  02. MZURI
  03. TSUMAGOI
  04. ALL ABOUT LOVE
  05. NICE SHOT
  06. SEEING YOU
  07. NO PROBLEM
  08. BOA NOITE
  09. SUN DANCE
  10. M&M STUDIO
  11. MY DEAR LIFE

(ソニー・ミュージックエンタテインメント/SONY MUSIC ENTERTAINMENT 1980年発売/SRCS9590)
(ライナーノーツ/高井信成,野口久光,油井正一)

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渡辺 貞夫 / モーニング・アイランド5

MORNING ISLAND-1 「ナベサダフュージョン」の「頂点」。それが『MORNING ISLAND』(以下『モーニング・アイランド』)である。

 管理人の中で「ナベサダフュージョン」と「J−フュージョン」は同じではない(尤も,これは個人的な主観であって,世間では「ナベサダフュージョン」も「J−フュージョン」も同じです)。
 読者の皆さんも渡辺貞夫日野皓正の音楽を聴いた後に,DIMENSIONTRIXを聴いてみたらすぐに分かる。

 違いの理由は音楽性の構造の違い。渡辺貞夫日野皓正の第一世代が“基本ジャズの発展形”なのに対し,DIMENSIONTRIXの第三世代は“基本脱ジャズの発展形”。
 ズバリ,バックボーンとしてのジャズを,持つか否か,の違いである。

 そう。ジャズをバックボーンにPOPにクリエイトされた『モーニング・アイランド』。『モーニング・アイランド』は「J−フュージョン」第一世代の最後の名盤である。
 『モーニング・アイランド』は,軽く聞き流すことはできやしない。ジャズメンが作ったフュージョンのテイストが残っている。テーマは分かりやすいのだがアドリブが高度なままで少々難解なテイストが残っている。

 ナベサダ・ファンの大方は『マイ・ディア・ライフ』『カリフォルニア・シャワー』と『モーニング・アイランド』『オレンジ・エクスプレス』の2:2の間で線を引く人が多いと思う。理由は“南国リゾートな”LAと“都会の摩天楼な”NY。そう。ジェントル・ソウツスタッフのバックの違いであろう。バック・メンバーが違うのだからカラーの変化はある意味当然なこと。しかしトータル・サウンドとして聴いてみて欲しい。

 『モーニング・アイランド』で強く感じるのは,スタッフ色ではなくデイブ・グルーシン色。デイブ・グルーシンが『マイ・ディア・ライフ』『カリフォルニア・シャワー』でジェントル・ソウツの面々をまとめ上げたように『モーニング・アイランド』ではスタッフの面々をまとめ上げている。

 「ナベサダフュージョン」の場合,バックは,LAかNYか,ではなく,デイブ・グルーシンか否か,なのである。
 それでおせっかいを承知で「ナベサダフュージョン」の楽しみ方をレクチャーすると,デイブ・グルーシン目当てで「ナベサダフュージョン」を聴くのは有りだが,ジェントル・ソウツ目当て,スタッフ目当てで聴き漁るのなら,本来のジェントル・ソウツスタッフのイメージを掴み損ねますのでご注意を。

 お〜っと,かなり本論から脱線してしまっているが,管理人なら『マイ・ディア・ライフ』『カリフォルニア・シャワー』(皆さんお忘れですが『オータム・ブロー』)に『モーニング・アイランド』までをまとめて線を引くということ。2:2ではなく3:1。大好きな『オレンジ・エクスプレス』は第二世代の最初の名盤扱いでいいと思っている。

MORNING ISLAND-2 だから『モーニング・アイランド』が「ナベサダフュージョン」の「頂点」。『マイ・ディア・ライフ』〜(皆さんお忘れですが『オータム・ブロー』)〜『カリフォルニア・シャワー』の流れが全てにおいて『モーニング・アイランド』で結実している。

 渡辺貞夫はやっぱり渡辺貞夫だった。一つ一つの音の背後にナベサダらしい温かさを感じ取る。マイルドで,分かりやすく,心に響くアルト・サックスソプラニーニョフルート

 細かく聴けばスタッフデイブ・グルーシンになりデイブ・グルーシン渡辺貞夫になっている。
 そう。共演者の全員で“世界のナベサダ”のハーモニーを奏でている。

 渡辺貞夫のあの笑顔に,あのアルト・サックスの音色に皆が引き寄せられている。『モーニング・アイランド』で明らかになった渡辺貞夫の求心力! だ・か・ら・他のどんな「J−フュージョン」とも異なる“オンリー・ワン”な「ナベサダフュージョン」!
 “ザ・渡辺貞夫”は,共演者だけでなくリスナーをも心酔させる男であった。

  01. MORNING ISLAND
  02. DOWN EAST
  03. SERENADE
  04. WE ARE THE ONE
  05. HOME MEETING
  06. PETET VALSE POUR SADAO
  07. SAMBA DO MARCOS
  08. INNER EMBRACE

(フライング・ディスク/FLYING DISK 1979年発売/VICJ-61362)
(紙ジャケット仕様)

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渡辺 貞夫・ウィズ・ザ・グレイト・ジャズ・トリオ / バード・オブ・パラダイス5

BIRD OF PARADISE-1 『PARKER’S MOOD』『TOKYO DATING』の2枚で“ジャズナベサダ”の“洗礼”を受けたのが高校時代。それ以来「ナベサダジャズだ」と公言してきた。友人にも奨めてきた。

 そんな管理人が『BIRD OF PARADISE』(以下『バード・オブ・パラダイス』)を手にしたのは30代半ば。実に18年の空白。“ジャズナベサダ”を推薦しておきながらお恥ずかしい。
 ただし管理人の持論に間違いはなかった。「ナベサダフュージョンではない。ナベサダジャズだ」。『バード・オブ・パラダイス』の名演を聴いてその思いを強くした。

 『バード・オブ・パラダイス』は,ザ・グレイト・ジャズ・トリオをバックに快演を聴かせる,渡辺貞夫のビ・バップ盤。題して“チャーリー・パーカートリビュート”。
 渡辺貞夫アルトのブロウが炸裂し,ハンク・ジョーンズの“選び抜かれた”艶やかなピアノと“このリズム隊しかない”と思ってしまう,ロン・カーターベーストニー・ウィリアムスドラム
 大好きなパーカー・ナンバーが“化学変化”を起こしたカルテットで演奏されるとこういう音になってしまう。実に興味深い演奏集だと思う。

 渡辺貞夫の演る“チャーリー派”は,ソニー・スティットのような同時代性が無いせいか伸びやかで明るい。テーマを愛おしむのように吹き上げ,アドリブで歌い上げる。
 『バード・オブ・パラダイス』で聴かせるアルト・サックスチャーリー・パーカーのコピーを超えた渡辺貞夫のオリジナル。これが最高にカッコイイのに和んでしまうんだよなぁ。この感覚,管理人と同じ「ナベサダ好き」なら分かっていただけるものと思います。

 『バード・オブ・パラダイス』の聴き所は「渡辺貞夫 VS ザ・グレイト・ジャズ・トリオ」。気合の入ったナベサダが先か? ザ・グレイト・ジャズ・トリオナベサダが煽られたのか?
 特にトニー・ウィリアムスの“プッシュする”ドラミングに“縦横無尽に反応する”渡辺貞夫の気迫たるや凄まじい。心なしかアルト・サックスのトーンも普段以上に逞しく聴こえてしまう。

 そんな渡辺貞夫の全てを受け止め,がっちり丁寧にサポートするハンク・ジョーンズピアノが流石。控え目なのに小気味よいバッキング。次元が違うとはこのことであろう。ハンク・ジョーンズピアノがマジで泣けてくる。病気なのかな〜。
 ロン・カーターベースが攻めている。ロン・カーターを罵倒する批評家は,この名演をどう批評するつもりなのだろう。管理人は大好きなベース・ラインです。

BIRD OF PARADISE-2 余り知られていないが『バード・オブ・パラダイス』の発売は,大ヒットした『カリフォルニア・シャワー』の直後。普通なら“売れ線”フュージョンの連投であろうが,この事実に渡辺貞夫の“ジャズへの誇り”と“ジャズへの自信”が漲っている。「本当の渡辺貞夫を聴け。チャーリー・パーカーを聴け〜」。

 『カリフォルニア・シャワー』でナベサダを知ったファンは『バード・オブ・パラダイス』に眼を白黒させ,以前からのナベサダ・ファンは「やっぱりナベサダナベサダだった。チャーリー・パーカーの後継者だった」と溜飲を下げた『バード・オブ・パラダイス』。

 “ジャズ・サックス・プレイヤー”渡辺貞夫の“誇りと自信。それが『バード・オブ・パラダイス』から聴こえてくる。“ジャズナベサダ”が飛び出してくる。
 カッコイイ。…って,長年放置していた手前,偉そうには語れないけど…。カッコイイ。

  01. BIRD OF PARADISE
  02. DONNA LEE
  03. EMBRACEABLE YOU
  04. STAR EYES
  05. DEXTERITY
  06. IF I SHOULD LOSE YOU
  07. YARDBIRD SUITE
  08. K.C. BLUES

(フライング・ディスク/FLYING DISK 1978年発売/VICJ-61159)
(ライナーノーツ/油井正一)
(☆XRCD24盤仕様)

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渡辺 貞夫 / カリフォルニア・シャワー5

CALIFORNIA SHOWER-1 “世界のナベサダ渡辺貞夫主演ドラマの「相棒」は草刈正雄ではなくデイブ・グルーシンである。
 渡辺貞夫デイブ・グルーシンの「相棒・Season 1」が始まったのが『CALIFORNIA SHOWER』(以下『カリフォルニア・シャワー』)であった。
( 注:渡辺貞夫デイブ・グルーシンの初コラボ『MY DEAR LIFE』は「相棒・警視庁ふたりだけの特命係」の位置づけが大正解です )

 「相棒」がブレイクしたのは「Season 1」ではなかったが『カリフォルニア・シャワー』は「Season 1」で大ヒット。「相棒」が国民的人気番組になったのと同様『カリフォルニア・シャワー』も「日本のジャズフュージョン人気」を決定づけた超名盤

 あの時代,管理人はまだジャズフュージョンにハマる前の子供だったが渡辺貞夫と【カリフォルニア・シャワー】は知っていた。サックス奏者が知っているサックス奏者ではなく,サックスを吹かない人でも知っている渡辺貞夫は偉大なのです。

 『カリフォルニア・シャワー』大ヒットの理由は,明るく爽やかな楽曲とズバ抜けてハッピーな演奏力。打ち込みでは表現できない(普通の生演奏でも表現できない)“笑い声”が聞こえてくるような“活き活きとした”演奏力。西海岸の凄腕プレイヤーが,互いの音を聴き分けながら,適当にアドリブを交えつつ一体感を生み出していく。
 この良い意味での“いい加減さ”が,それまでもボサノヴァやアフリカン・ビートを自身のジャズにいち早く取り入れてきた渡辺貞夫の感性にマッチしている。

 電気楽器のデジタル臭さの抜けたジャズ・ベースのフュージョン・サウンドは,渡辺貞夫デイブ・グルーシンが“本気で”フュージョンと対峙しクリエイティブした結果なのだろう。
 『カリフォルニア・シャワー』での「成功したサウンド・メイキング」がジャズとポップスの垣根を取り払った“ザ・フュージョン”な名演中の名演なのである。

 ここで“キーマン”デイブ・グルーシンの登場である。
 キーボード・プレイヤーとしてのデイブ・グルーシンも素晴らしいが,それ以上にギターリー・リトナーベースチャック・レイニードラムハービー・メイソンパーカッションポリーニョ・ダ・コスタトランペットオスカー・プレッシャートロンボーンジョージ・ボハノンテナー・サックスアーニー・ワッツの名サイドメンと渡辺貞夫をつなぐ“橋渡し役”。そして仕上げに“大河の一滴”を加えてブレンドした匠の技が素晴らしい。

CALIFORNIA SHOWER-2 渡辺貞夫を知り尽くし,共演者を知り尽くした上で加えるデイブ・グルーシンの“大河の一滴”は麦焼酎である。
 カリフォルニアは麦であって芋でも米でもないのだ。実に“まろやかな都会風味の”焼酎味。陽気で,気楽で,ファンキーで,女性を意識した色気もある“洗練されたスマートな”焼酎味。

 そう。『カリフォルニア・シャワー』の真実とは『カリフォルニア・サワー』なのだ。デイブ・グルーシンが作るサワーはレモン搾りのようである。

 絶品サワーに仕上げる“ブレンダー”デイブ・グルーシン渡辺貞夫の「相棒」である。寺脇康文か及川光博のいない「相棒」が成立しないのと同様,デイブ・グルーシンなしの『カリフォルニア・シャワー』。
 もっと言えばデイブ・グルーシンなしの「ナベサダフュージョン」など成立しない。

  01. CALIFORNIA SHOWER
  02. DUO-CREATICS
  03. DESERT RIDE
  04. SEVENTH HIGH
  05. TURNING PAGES OF WIND
  06. NGOMA PARTY
  07. MY COUNTRY

(フライング・ディスク/FLYING DISK 1978年発売/VICJ-61363)
(ライナーノーツ/児山紀芳)
(紙ジャケット仕様)

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渡辺 貞夫・フィーチャリング・リー・リトナー & ヒズ・ジェントル・ソウツ / オータム・ブロー4

AUTUMN BLOW-1 渡辺貞夫の2枚の名盤マイ・ディア・ライフ』と『カリフォルニア・シャワー』の間をつなぐ“孤高の存在”『AUTUMN BLOW』(以下『オータム・ブロー』)。

 『オータム・ブロー』に『マイ・ディア・ライフ』の続編か『カリフォルニア・シャワー』の前編を期待しての購入であろうが『オータム・ブロー』は『オータム・ブロー』。『マイ・ディア・ライフ』でも『カリフォルニア・シャワー』でもない。

 理由は明白。『オータム・ブロー』は渡辺貞夫ソロにして「渡辺貞夫フィーチャリングリー・リトナー & ヒズ・ジェントル・ソウツ」の名義盤。
 『マイ・ディア・ライフ』が“おぼろげ”フュージョン。『カリフォルニア・シャワー』が“ごきげん”フュージョンを襲名する中で『オータム・ブロー』は“時代の寵児”ジェントル・ソウツとコラボして“ザ・クロスオーバー”してみせている。

 余談であるが,アドリブログの中では「クロスオーバー」という言葉はほとんど使っていない。使うとすればNHK−FMの名番組「クロスオーバー・イレブン」への言及時ぐらいなものか。
 理由は特にない。単純に管理人の性格柄,統一されていないと気がすまないのとSEO的にフュージョンの方が有利だと思うから。別にそうだと思えばフュージョンという言葉をクロスオーバーに置き換えても構わない主義。

 しかし上記はブログ運営上のお話であって,リアルな現実世界の管理人の中では「フュージョン」と「クロスオーバー」には明確な区別がある。その規準からして,どうしても『オータム・ブロー』はフュージョンとは呼べない。
 そう。『オータム・ブロー』で渡辺貞夫が目指したのは「クロスオーバー」であって「フュージョン」ではない。音楽の成り立ちと発展の仕方がフュージョン志向ではないし,勿論“新しい”ジャズでもない。

 管理人の幼稚な文章力で表わすのは限界があって申し訳ないのだが,この辺の微妙なニュアンスは,実際にCDを聴いていただかないと伝えらない。でも『マイ・ディア・ライフ』『オータム・ブロー』『カリフォルニア・シャワー』の3枚を聴き比べていただければ,管理人の言いたいことはすぐに伝わることと思う。“似て非なる”3枚の個性はバラバラである。

 『オータム・ブロー』の個性。それは渡辺貞夫が「リー・リトナー & ヒズ・ジェントル・ソウツ」の一部として機能している音楽だということ。
 つまるところ『オータム・ブロー』の個性とは「ジェントル・ソウツプレイズ渡辺貞夫」。

AUTUMN BLOW-2 渡辺貞夫の予想以上にジェントル・ソウツは凄かった。渡辺貞夫がまだアメリカにいた頃にはジェントル・ソウツのような若者はいなかった。渡辺貞夫ジェントル・ソウツに「カツアゲされてノットラレタ」感漂う〜。

 しかし,この感じがフュージョンではなくてクロスオーバーなんだよなぁ。全員が全力で盛り上がっているのに軽いんだよなぁ。
 「カツアゲされてノットラレタ」から吹けるフルートソプラニーニョがある。ジェントル・ソウツに「ギンギンに煽られた」から吹けるアルト・サックスがある。
 “大将”リー・リトナーと【ある日郊外で】でタイマンを張った瞬間の密着度。もはや渡辺貞夫はバンドの一員であり,アーニー・ワッツを差し置いてジェントル・ソウツの“顔”である。ナベサダが一番カッコエェ〜。

 『オータム・ブロー』でのタッキングがあったからこその“歴史的名盤”『カリフォルニア・シャワー』の誕生であり「ナベサダフュージョン」の誕生なのである。

 2枚の“超名盤”『マイ・ディア・ライフ』と『カリフォルニア・シャワー』の間に“埋もれた”『オータム・ブロー』を愛聴する瞬間にナベサダ愛が爆発してしまう。星四つのマニアック・ラブ。

  01. JUST CRUSIN'
  02. THE CHASER
  03. SOMEDAY IN SUBURBS
  04. RAPTURE
  05. INNER EMBRACE
  06. ORANGE BYPASS

(フライング・ディスク/FLYING DISK 1977年発売/VICJ-61364)
(紙ジャケット仕様)

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渡辺 貞夫 / マイ・ディア・ライフ4

MY DEAR LIFE-1 世間では「ナベサダフュージョン」の原点と称される『MY DEAR LIFE』(以下『マイ・ディア・ライフ』)。
 確かにアルバム全体を聴き通すと“おぼろげ”フュージョンしていると思う。

 ゲイリー・マクファーランドの影響を渡辺貞夫が全開で表現した初めてのアルバムであろうし,何しろ共演者の錚々たる面々。ギターリー・リトナーキーボードデイブ・グルーシンベースチャック・レイニードラムハービー・メイソンパーカッションスティーヴ・フォアマンの,ほぼジェントル・ソウツ
 確かにアルバム全体を聴き通すと“バック”がフュージョンしていると思う。

 しかし,管理人の中では「ナベサダフュージョン」の原点とは『オータム・ブロー』までスルーして『カリフォルニア・シャワー』からと決まっている。
 「ナベサダフュージョン」の立役者はデイブ・グルーシンであってリー・リトナーではない。だから『マイ・ディア・ライフ』はフュージョンの“走り”で決まりなのだ。

 そう。『マイ・ディア・ライフ』の真実は“フュージョン寄りのジャズ”である。ジェントル・ソウツが“次世代のフュージョン”していても,渡辺貞夫は“次世代のジャズ”の雰囲気である。

 しかし『マイ・ディア・ライフ』の“次世代のジャズ”が,結果,大変素晴らしかった。【マイ・ディア・ライフ】こそが渡辺貞夫“生涯の”代表曲にして代表的名演に違いない。
( 渡辺貞夫=【マイ・ディア・ライフ】の図式は,FM東京系「渡辺貞夫マイ・ディア・ライフ」の番組名にあることは承知の上での宣言です )

 リー・リトナーの“ブルージーな”ギターに紹介されて登場する,渡辺貞夫の“ダークな”アルト・サックスのあのトーン。『マイ・ディア・ライフ』の中で唯一聴かせるジャズ・サックスが,幸か不幸か,渡辺貞夫のトレードマーク。それまでの軽快なアルト・サックスフルートの印象を一掃している。
( 【マイ・ディア・ライフ】=“ダークな”アルト・サックスの図式は,FM東京系「渡辺貞夫マイ・ディア・ライフ」のナレーター=小林克也の低音ヴォイスにあることは承知の上での宣言です )

MY DEAR LIFE-2 最後に“迷える”管理人の『マイ・ディア・ライフ』についてのグチを一言。

 『マイ・ディア・ライフ』を聴く時にはいつでも,1−7トラックのフュージョン路線で止めておくか,名演の8トラック目だけを聴くか,それとも全曲聴くかを迷ってしまう。

 そして大体は8トラック目(【マイ・ディア・ライフ】)だけを聴くのだが,そのうち「渡辺貞夫マイ・ディア・ライフ」での小林克也のナレーションを聴きたくなる。そうしてその昔にエア・チェックしたカセット・テープを引っ張り出して聴くようになる。

 せっかく高音質の「K2HDリマスタリング紙ジャケット盤に買い直した意味ないなぁ。

  01. Massai Talk
  02. Safari
  03. Hunting World
  04. L.A. Sunset
  05. Samba Em Praia
  06. Music Break
  07. Malaika
  08. My Dear Life

(フライング・ディスク/FLYING DISK 1977年発売/VICJ-61366)
(紙ジャケット仕様)

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渡辺 貞夫・ライヴ・アット・ブラバス・クラブ・'85 / パーカーズ・ムード / BEAUTIFUL LOVE4

 『PARKER’S MOOD』の8曲目は【BEAUTIFUL LOVE】(以下【ビューティフル・ラヴ】)。


 渡辺貞夫の【ビューティフル・ラヴ】は,聴衆の手拍子にせきたてられたミディアム調での弾きまくりトラック! リラックスした雰囲気が産み落とす“センスの良いアドリブ”が連発している。

 長尺のアドリブがいい。起承転結を考えつつも,周りの音につい反応して完成する想定外のアドリブは,演奏しているメンバーだけの楽しみであろう。徐々に本気モードになっていく。他人のアドリブに夢中になっていく4人の様子が録音から伝わってくる。 

 思うに,きっと演奏前までは,ムーディな【ビューティフル・ラヴ】をイメージしていたことと思う。しかし,この夜のトビキリの熱演が観客をホットに仕立て上げた。もう完全なる興奮状態! 喰いつき気味の聴衆が4人をアオル&リードする! やっぱりライブ一番のハプニング=オーディエンスである。

SADAO WATANABE : Alto Sax
JAMES WILLIAMS : Piano
CHARNETT MOFFETT : Bass
JEFF WATTS : Drums

渡辺 貞夫・ライヴ・アット・ブラバス・クラブ・'85 / パーカーズ・ムード / BIRD OF PARADISE4

 『PARKER’S MOOD』の7曲目は【BIRD OF PARADISE】(以下【バード・オブ・パラダイス】)。


 【バード・オブ・パラダイス】は,渡辺貞夫の愛奏曲! “明るく軽快に”ナベサダお気に入りのイケメンたちと,大好きなパーカー節を吹き上げる! そう。【バード・オブ・パラダイス】は,聴衆のための演奏ではなく,ナベサダ自身の「ノビノビ&リラックス・プライム・タイム」である。

 渡辺貞夫アドリブは,チャーリー・パーカーの“完コピ”なのかもしれないが,それでもコピーを越えた感動がある! コピー“できる”その喜びに溢れた演奏である。きっと観客たちも“全てを承知で”渡辺貞夫の「チャーリー・パーカー・リサイタル」を暖かく見守ったことだろう。

 渡辺貞夫の喜びが,会場全体に伝染していく。4分13秒からのジェームス・ウィリアムスアドリブが「陽」7分18秒からのチャーネット・モフェットアドリブも「陽」。生のパーカー節を知る者と知らざる者,相互の“強み”が交錯している。

SADAO WATANABE : Alto Sax
JAMES WILLIAMS : Piano
CHARNETT MOFFETT : Bass
JEFF WATTS : Drums

渡辺 貞夫・ライヴ・アット・ブラバス・クラブ・'85 / パーカーズ・ムード / PARKER'S MOOD4

 『PARKER’S MOOD』の6曲目は【PARKER’S MOOD】(以下【パーカーズ・ムード】)。


 【パーカーズ・ムード】は,密度の濃い濃い,だけどスロー・ブルース。4ビートのピアノ・トリオが“グイグイ”来る!
 チャーネット・モフェットは弾き過ぎだろう。ジェフ・ワッツも叩き過ぎだろう。でもでもナベサダ相手にはちょうど良い。渡辺貞夫が気合いを入れて“ビ・バップ”している!

 【パーカーズ・ムード】は,ある意味,ナベサダの代表曲。書きたいことは山ほどある。しかし【パーカーズ・ムード】の本質は,3分32秒での「オヤジの掛け声」に凝縮されている! 管理人もライブ会場にいたら同じ瞬間に声を上げていたであろう。感動を共有できた事実がこれまた感動もの。読者の皆さんとも同じ感動が共有できれば…。

SADAO WATANABE : Alto Sax
JAMES WILLIAMS : Piano
CHARNETT MOFFETT : Bass
JEFF WATTS : Drums

渡辺 貞夫・ライヴ・アット・ブラバス・クラブ・'85 / パーカーズ・ムード / I THOUGHT ABOUT YOU4

 『PARKER’S MOOD』の5曲目は【I THOUGHT ABOUT YOU】(以下【君のことばかり】)。


 【君のことばかり】は,管理人にとっては【ジェフ・ワッツのことばかり】である。どうしてもジェフ・ワッツドラミングばかりを追いかけてしまう。

 本来の主役は,大甘メロディを奏でる渡辺貞夫ジュームス・ウイリアムスの美しいアドリブであろう。しかしこの“美しさ”は,ジェフ・ワッツの“ハプニング・ドラム”があってこそ!
 【君のことばかり】は,ジェフ・ワッツによる手品である。聴衆の注意をアルト・サックスピアノに向けさせておいて,アッと言わせる&ハッと思わせるフレーズを,上手に出し入れさせている。

 例えば3分12秒,4分2秒でのフィル・インは,視線を渡辺貞夫に向けさせたまま,聴衆の心に「カツ!」を入れている。ブラシスティックさばきが,おもしろいように決まりまくっている。
 表面上はクールバラードであるが,秘められた感情は激しく燃えている。そう。【君のことばかり】は“手品師”ジェフ・ワッツによるマジック! ナベサダ・ファンの多くは,まだ“タネ”に気付いていない。

SADAO WATANABE : Alto Sax
JAMES WILLIAMS : Piano
CHARNETT MOFFETT : Bass
JEFF WATTS : Drums

渡辺 貞夫・ライヴ・アット・ブラバス・クラブ・'85 / パーカーズ・ムード / EVERY THING HAPPENS TO ME5

 『PARKER’S MOOD』の2曲目は【EVERYTHING HAPPENS TO ME】(以下【エヴリシング・ハプンズ・トゥ・ミー】)。


 【エヴリシング・ハプンズ・トゥ・ミー】は,泣きたいくらいに“センチメンタル”。鈴木宗男じゃあるまいが,ものの30秒で目頭が熱くなってしまうのだ。
 これだけは自分ではどうにもコントロールできない。もはや“病気”である。

 おっと,正確にはジェームス・ウィリアムスの,それはそれは静かなムーディ・ピアノ渡辺貞夫が乗っかってくる,47秒での一吹きにある。
 このピアノに,このアルト・サックス! 加えてベースドラムも時を刻み始める。全てがこの一瞬のためにある!
 
 後は渡辺貞夫の描き出す,最高のジャズ・バラードに身をゆだねるだけ…。
 “同じ日本人だから”というのが理由であるとしか思えない程,管理人の心が“共鳴”してしまう。このアルト・サックスの音色こそ,管理人だけの“宝物”である。管理人以外は“不感症であってほしい”と切に願うくらいに美しい。美しすぎる!
 流れるようなアルト・ソロの中で,一瞬だけ,4分38秒でフレーズに力が入っている。ナベサダ自身もここでグッと来たんだろうなぁ。このトラックをナベサダも愛してやまないのであろう…。

 ついに5分9秒を迎える。ジェームス・ウィリアムスピアノ・ソロが始まると同時に,涙腺が我慢の限界を越えてしまう。
 男泣きである…。もうこれ以上語り合うのはやめましょう…。

SADAO WATANABE : Alto Sax
JAMES WILLIAMS : Piano
CHARNETT MOFFETT : Bass
JEFF WATTS : Drums

渡辺 貞夫・ライヴ・アット・ブラバス・クラブ・'85 / パーカーズ・ムード / BILLY'S BOUNCE4

 『PARKER’S MOOD』の4曲目は【BILLY’S BOUNCE】(以下【ビリーズ・バウンス】)。


 【ビリーズ・バウンス】の聴き所はたくさんあるが,主役はチャーネット・モフェット! “ブイブイ”言わせる“地を這う”ベースが,観客のボルテージを,否が応でも盛り上げる!

 3分11秒からのロング・ベース・ソロは,いかにもNYで大受けしそうな,キレ+ノリ+パンチが効いた“正統派”の力技である。
 終盤で聴かせる早弾きはウッド・ベースとしては驚異的! 人気ベーシストチャーネット・モフェットは,相当のテクニシャンである。
 特に5分19秒からの26秒までのフレーズが“エレキ・ベースっぽくて”お気に入りである。

 ラスト8分22秒からの3フレーズがバッチリ決まっていて,これには「どうだ,参ったか?」的なポーズ付の画が浮かんでしまう。カッコイイんだろうなぁ。ベーシストっていいよなぁ。

SADAO WATANABE : Alto Sax
JAMES WILLIAMS : Piano
CHARNETT MOFFETT : Bass
JEFF WATTS : Drums

渡辺 貞夫・ライヴ・アット・ブラバス・クラブ・'85 / パーカーズ・ムード / LAMENT5

 『PARKER’S MOOD』の3曲目は【LAMENT】(以下【ラメント】)。


 【ラメント】は,ナベサダの快演が先か,バックの快演が先か,互いに一気に盛り上がる! ミディアムなのに“熱すぎる”名演である。あんなに哀しかったのに,こんなに豪快にぶつかり合ってもいいのだろうか?

 イントロは完璧な“バラード”の入りである。カルテット全員でバラードをプレイする“つもり”で曲が進行していく。
 しかし2分7秒のジェフ・ワッツのハイハットを合図に,チャーネット・モフェットの“ゴリゴリ”ベースが“ズンズン”とプッシュを開始する。このリズムの変化に“呼応した”渡辺貞夫アルト・サックスが,徐々に“ビ・バップ”していく。
 このサックスのトーンの変化が導火線となり,ジェフ・ワッツの「2段ロケット=ジャズドラマー・魂」に火をつけたのか,もう止まらない! あっという間に“ハード・バップ”のノリと化す! スケールの大きな“ザ・ジャズ・ドラム”の世界へと全員が引きずり込まれてゆく!

 やっぱり渡辺貞夫は偉大だ。【ラメント】で見せる表情=音色の変化が,どれもいい。
 アンチ・ナベサダ派は,その常套句=マンネリ批判を口にするつもりなら,この【ラメント】での快演を聴いてからにしてほしい。どうせケナスにしても,バラエティに富んだ,ちょっとはマシな“批評”を展開するのに役立つはずである。
 管理人は“正攻法”でいきたい。マンネリはマンネリでもこんなに“偉大な”マンネリは希有である。聴けば聴く程,耳に馴染めば馴染む程,なんとも言えない“心地良さ”が増加する。

SADAO WATANABE : Alto Sax
JAMES WILLIAMS : Piano
CHARNETT MOFFETT : Bass
JEFF WATTS : Drums

渡辺 貞夫・ライヴ・アット・ブラバス・クラブ・'85 / パーカーズ・ムード / STELLA BY STARLIGHT5

 『PARKER’S MOOD』の1曲目は【STELLA BY STARLIGHT】(以下【星影のステラ】)。


 【星影のステラ】の名演は多いが,キース・ジャレットチック・コリアの代名詞的ナンバーなので,ピアノによる“静かな”プレイ向きという印象を持っている。
 しかし【星影のステラ】には,パーカーマイルスミンガスといった“ハード・バップ”の“ホットな”名演が残されていることも忘れるわけにはいかない。 

 さて,渡辺貞夫である。ナベサダ流の【星影のステラ】は断然後者! イントロの“スーッ”とした印象はご愛敬。すぐにバックを引っ張る(バックにあおられ?)熱気を帯びてくる。そう。メンバー全員馴染みの曲なのだろう。よく歌っている。
 3分35秒からのジェームス・ウィリアムスピアノ・ソロは非常にダイナミック! 6分25秒からのチャーネット・モフェットベース・ソロもハイ・テクニックでメロディーを奏でていく。

 しかし,このトラックの主役は“格上”渡辺貞夫である。【星影のステラ】の持つロマンティックな響きを“あの”渡辺貞夫アルト・サックスの音色が飾り付けしていく。“世界一”のアルト・サックスの音色に“グッと”きてしまい,あれだけのバックの好演も耳には残らない。
 そう。【星影のステラ】は,渡辺貞夫の「次元を超えた名演」である。

SADAO WATANABE : Alto Sax
JAMES WILLIAMS : Piano
CHARNETT MOFFETT : Bass
JEFF WATTS : Drums

渡辺 貞夫・ライヴ・アット・ブラバス・クラブ・'85 / パーカーズ・ムード5

PARKER'S MOOD-1 “ナベサダ”こと渡辺貞夫はJ−ジャズの枠を越えた,世界のジャズ・ジャイアントの一人である。
 …と,紹介しようとも,読者の皆さんに渡辺貞夫の“偉大さ”はストレートに伝わらないのではないか?
 管理人がそうだった。渡辺貞夫と来れば草刈政雄と豪快に笑う「ブラバス」のCM。どこにでもいそうな“気のいいおっさん”でしかなかった。

 しかしあるCDとの出会いにより,それまで“色眼鏡”でナベサダを見ていたことを心から悔いた。CDから聴こえてきたのは“パーカー派”のアドリブインプロヴィゼーション。フレーズの節々にパーカーカバーしてきた面影が色濃く残っていたのだ。

 その“パーカー派”としての渡辺貞夫との出会いが『PARKER’S MOOD』〈以下『パーカーズ・ムード』〉!
 この時期の渡辺貞夫は「ナベサダフュージョン」の大連発! フュージョンナベサダが大好きだったので,当時高校生だった管理人にはきつかったが,発売されるCDは全部買っていた。

 『パーカーズ・ムード』もその流れで買ったものだったが,いつもとは違う空気感に心を“鷲づかみ”されてしまった。「もう元には戻れない」と感じてしまう何かが…。
 そう。脱フュージョンジャズへの目覚め! 管理人のジャズ好きは,ズバリ『パーカーズ・ムード』から始まった!

 『パーカーズ・ムード』は“蜜月関係”資生堂提供「BRAVAS CLUB」のライブ盤。渡辺貞夫が目と鼻の先にいる聴衆に全力でぶつかっていく。
 そんなストレートなジャズ・スタイルであるからこそ『パーカーズ・ムード』には,他のナベサダフュージョンでは聴くことができない“命がけのアドリブ”が持つ圧倒的な存在感がある。“命を削る”演奏とは,正に『パーカーズ・ムード』のことを指す!

PARKER'S MOOD-2 実は冒頭に述べた経験をしたのは,正確には数年後のこと。渡辺貞夫を追いかけてパーカーと出会い,そのパーカーとの出会いからアドリブのイロハを学ぶことができた。
 一皮一皮脱皮し,ジャズ好きとして成長するにつれ『パーカーズ・ムード』から“パーカー派”の渡辺貞夫を聴き取れるようになった。

 相当練習したんだろうなぁ。ナベサダが子供の頃は,王,長嶋ではなく,チャーリー・パーカーが“ヒーロー”だったんだろうなぁ。アルト・サックスをキラキラと輝く瞳で見つめている貞夫少年の姿を想像すると,知り合いでもないのに今夜も目頭が熱くなってしまう。

 あ〜あっ。やっぱり読者の皆さんに渡辺貞夫の“偉大さ”を伝えることはできなかった。是非『パーカーズ・ムード』を聴いていただきたい。言葉で伝えられるのは,ただそれっぽっち…。

  01. STELLA BY STARLIGHT
  02. EVERYTHING HAPPENS TO ME
  03. LAMENT
  04. BILL'S BOUNCE
  05. I THOUGHT ABOUT YOU
  06. PARKER'S MOOD
  07. BIRD OF PARADISE
  08. BEAUTIFUL LOVE

(エレクトラ/ELEKTRA 1985年発売/WPCL-10643)

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2009/02/24 追記しました。続きもご覧ください。

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