アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

CD批評:Saya

Saya / トワイライト4

TWILIGHT-1 『TWILIGHT』(以下『トワイライト』)は,Sayaお得意の“復活”R&B路線。

 しかし『トワイライト』は『UNITY』程“黒くはない”爽やかなピアノ・トリオ作。人気のR&Bの名曲が流行のクラブ・ジャズ・アレンジで心地良い刺激を与えてくれる。

 ポップな『トワイライト』を最後にSayaはメジャーでの活動を休止。やはりレコード会社の意向とSayaの目指す音楽性とのギャップに我慢ならなくなったのでは?
 こんなに才能溢れるジャズメンなのに勿体無い。世界のジャズ・ファンにとっての大損失。

TWILIGHT-2 【MY FUNNY VALENTAINE】のファンキーすぎた名演は,自身の新しい人生を歩みだした“ジャズ・ピアニストSayaからの置き土産である。

  01. My Funny Valentine
  02. Lately
  03. Flow
  04. Twilight
  05. Isn't She Lovely
  06. Day Dreamer
  07. Fields Of Gold
  08. Kiss Of Life
  09. Driving
  10. Both Sides Now

(ポニーキャニオン/LEAFAGE JAZZ 2006年発売/PCCY-60005)
(☆SACDハイブリッド盤仕様)
(ライナーノーツ/Saya)

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アジアの女神たち / WISH A WORLD4

WISH A WORLD-1 読者の皆さんは2005年の愛知万博「愛・地球博」へ行かれましたか? そしてテーマ・ソングを耳にしましたか? そう。ジャズのあの曲…。
 渡辺貞夫の【シェア・ザ・ワールド 〜こころつないで〜】と答えたあなたは大正解。やっぱり“世界のナベサダ”です。政府出展事業の総合監督です。名演でした。

 でも,もう一曲あるでしょう? ジャズのあの曲…。
 中京テレビで流れていた「愛・地球博」サポートソング【WISH A WORLD】が…。

 【WISH A WORLD】は“ジャズ・ピアニストSayaがプロデュースした,ピアノヘグム古箏ボーカルからなる4人組ユニット=「アジアの女神たち」名義による名演である。

 でも,正直「アジアの女神たち」はどうでもいい。管理人が関心を向けるは「アジアの女神」唯一人である。
 「アジアの女神たち」と来れば,韓国のヘグム奏者・コッピョルであり,中国の古箏奏者・謝雪梅であり,日本民謡の柿崎竹美であろう。しかし「アジアの女神」と来れば,一人称,日本が世界へ誇る“ジャズ・ピアニストSayaを指す。
 そう。「アジアの女神たち」名義によるオムニバスCD=『WISH A WORLD』は“Saya買い”に他ならない。

 『WISH A WORLD』には 1)Saya作曲・演奏の【WISH A WORLD(INSTRUMENTAL)】 2)Saya編曲・演奏の【】 3)Saya作曲・編曲・演奏の【BLOOM】 4)Saya作曲・編曲・演奏の【WISHING WELL】 5)Saya編曲・演奏の【赤とんば〜浜辺の歌】 6)Saya作曲・作詞・演奏の【WISH A WORLD(VOCAL VERSION)】と全10曲中全6曲収録の“Sayaづくし”!

 Saya自らがプロデュースまで行なった『WISH A WORLD』の位置づけは,安易なコンピレーションCDではなく,Sayaの準オリジナルCDだと思うのだが…。

WISH A WORLD-2 どうやらSaya本人は『WISH A WORLD』の出来に満足していないように思える。【WISH A WORLD】はライブのレパートリーからも外されているようだし,順当なら『TWILIGHT』に「ボーナス・トラック?」として収録のはずが未収録。う〜ん。

 そういうことで管理人も『WISH A WORLD』は10回聴いたくらいで放置プレイしていました。
 『WISH A WORLD』の聴き所は【】の1分45秒から始まるピアノ・ソロと【赤とんば〜浜辺の歌】の2分51秒から始まるピアノ・ソロ。
 本日は久々に上記のSayaアドリブに酔いしれました。明日からもたまには聴こう〜っと。

  01. Wish a World (Instrumental)
  02.
  03. Bloom
  04. Asian Moon
  05. 雪山春暁
  06. ションデコ (ひでこ節)
  07. アリラン
  08. Wishing Well
  09. 赤とんぼ〜浜辺の歌
  10. Wish a World (Vocal Version)

(ポニーキャニオン/LEAFAGE 2005年発売/PCCY-30071)

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Saya / BLOOM5

BLOOM-1 『BLOOM』は“可憐で清楚で優雅な”Sayaの魅力全開なCD
 ジャケット写真の雰囲気通り,暖かな日差しが降り注ぐ昼下がりのジャズ・ピアノ。耳に心地よいメロディが明るく優しい空間を生み出していく。

 『BLOOM』の象徴【HIGHER】でのSayaのいたずらっぽい笑顔が最高である。
 「天気のいい日曜日の昼下がり。男友達とどこかへ遊びに出かけた旦那の居ないリビング。気持ちいいんだけど,なんだか悲しくなってきて,時々ちょっとムカついて,でも許しちゃって…。不安になって泣きそうになりかけた夜遅く,たくさんのお土産を抱えて帰宅したご主人様の優しさに,鬱憤全てが吹き飛ぶハッピー・ライフ」。

BLOOM-2 『BLOOM』の全10トラックは,そんなSayaの一人遊びの音絵巻。
 シリアスな3曲【SHOOTING STAR】【EVERY DAY】【MIDNIGHT ROSE】は絶対名曲である。

  01. Shooting Star
  02. Flower Waltz
  03. Come Together
  04. Bloom
  05. Every Day
  06. Midnight Rose
  07. Samurai Funk
  08. Don't Know Why
  09. Higher
  10. Close to You (They long to be)

(ポニーキャニオン/LEAFAGE JAZZ 2004年発売/PCCY-30069)
(ライナーノーツ/Saya)

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Saya / BEAUTIFUL DAY5

BEAUTIFUL DAY-1 『BEAUTIFUL DAY』はSayaの本質を見事にとらえた大傑作! 「URBAN CONTEMPORARY JAZZ」の大傑作!

 『BEAUTIFUL DAY』でのSayaピアノに加えてフェンダー・ローズを弾いている。
 生ピアノの【INTO THE SKY】で爽やかな風が吹き込み【WISHING WELL】で心洗われる。
 ローズ・ピアノの【BEAUTIFUL DAY】でウキウキして【SNOBBY CAT】でワクワクする。
 そしてトドメの【MO BETTER BLUES】!

 Sayaの【MO BETTER BLUES】がブランフォード・マルサリステレンス・ブランチャードの【MO BETTER BLUES】を超えている。爽やかさと哀愁のブレンド。美メロに託されたSayaのナイーヴな表情がより鮮明に表現されている。

BEAUTIFUL DAY-2 「URBAN CONTEMPORARY JAZZ」の“顔”であるSayaの本質は「エレガントでブルース・フィーリング」なジャズ・ピアニストである。

  01. Into the Sky
  02. I Wish
  03. Eternity
  04. Beautiful Day
  05. Pavane
  06. Mo Better Blues
  07. Snobby Cat
  08. In a Sentimental Mood
  09. What's Going On
  10. Wishing Well

(ポニーキャニオン/LEAFAGE JAZZ 2003年発売/PCCY-30064)
(ライナーノーツ/Saya)

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Saya / ユニティ4

UNITY-1 管理人はしばし“ジャズ・ピアニストSayaの本質を勘違いしていた。
 管理人がSayaにハマッタきっかけとなった思い出の『UNITY』(以下『ユニティ』)。『ユニティ』は名盤である。スイングジャーナル誌選定【ゴールドディスク】受賞作である。『ユニティ』の出来は「折り紙つき」なのである。マジで愛聴したものだった。

 『ユニティ』は,Sayaお得意のR&B“ブラック全開な”ソウル・ジャズCD
 ドラムンベースである。【マーシー・マーシー・マーシー】&【ファンキー・ミラクル】である。ダイアナ・ロス,スティーヴィー・ワンダーロバータ・フラックである。どうだ。これでどうなんだ〜!
 『ユニティ』は,Sayaのデビュー当時,乱立していた女性ジャズ・ピアニスト界へ“殴り込み”の一枚となった。

 管理人は“名刺代わり”の『ユニティ』こそがSayaの本質だとずっと思っていた。
 なにせSayaは“黒人音楽の総帥”ネヴィル・ブラザーズ出身。グルーヴ・ミュージックには人一倍敏感なはずである。3作目にしてついに来た。そう思っていた。
 しかし『ユニティ』の中に“素顔の”Sayaはいない。まぁ,綺麗にお化粧したSaya本人もいるにはいるが『ユニティ』でのSayaは,売れ線狙いのレコード会社に作り上げられた“虚像”のSayaだったのだ。

 Sayaの全ディスコグラフィを眺めていくと『ユニティ』の異質ぶりが際立っている。
 例えば『ユニティ』の“ドッキドキな”ジャケット写真。昼間は“VENUS”しているSayaの“夜の顔”を見たようなジャケット写真。お嬢様の大変身はジャズとエロの蜜月の法則。レコード会社に“ぱっくり”背中を開けられて…。

 『SIMPLE POEM』『DANCE YOUR HEART』での「正統派ピアノ・トリオ」路線と『BEAUTIFUL DAY』『BLOOM』『TIMELESS』での「URBAN CONTEMPORARY JAZZ」路線。そして『UNITY』『TWILIGHT』でのR&Bなコマーシャル路線。

 『ユニティ』の売り=“コマーシャル仕掛け”なソウル・ジャズグルーヴ
 しかし『ユニティ』でのSayaは,売りであるリズムを,グルーヴを深追いしていない。Sayaが(自分の意思で)深追いするは,美しいアドリブなのである。
 マーク・ウィリアムズベースデゾーン・クレイボーンドラムが跳ねる中,Sayaはひたすらきれいにまとめている。そう。Sayaは“BEAUTY大好き”ジャズ・ピアニスト。つまりはメロディ重視である。

 リズム重視の『ユニティ』にあって,Sayaジャズ・ピアノが「ファンクの美メロ」を綴っていく。
 Sayaピアノは“クリスタル・タッチ”。しかし線は細くない。簡単には折れそうもない。芯の固いしっかりした音色を奏でている。どんなにリズムが跳ねようとも,瑞々しさを失わず,それでいて豊かな体験を映し込んだジャズ・ピアノが実にメロディアス。 
 ベースドラムが暴れることで,Sayaの“メロディアスな”ジャズ・ピアノが映える映える。そう。この対比のテクニックはインタープレイを特意とする,エヴァンス派の“セオリー”である。
 ただし『ユニティ』でのコントラストは「水を得た魚」になり得ていない。Sayaは基本“淡水魚”である。← 意味深トーク!?

UNITY-2 勿論『ユニティ』での“売れ線”ジャズ・ピアノ路線も悪ではない。
 そう。レコード会社の意向が働かなければ名盤ユニティ』が生まれることはなかったし,斉藤栄弥=美人=美しいジャズ・ピアノが定着することもなかったと思う。
 しかし悲しいかな。『ユニティ』のSayaは“虚像”のSaya。ずっと仮面をつけ続けるわけにはいかない。

 問題は「第二の『ユニティ』」への圧力である。もっと元ネヴィル・ブラザーズっぽく弾け。それから肌を露出しろ…。
 このレコード会社とのすれ違いが,現在の活動休止の原因なのでは? Sayaには「第二の『ユニティ』」を忘れて,本当に納得のいくCDだけを作ってほしい。結果,再びインディーズからの出発でもいい。「CLUB☆SAYA」のメンバー全員,Sayaさんの新作が届くことを祈り続けています。

PS 悪く書いてしまった『ユニティ』ですが,それはSayaの本質がゆがめられて伝えられることへの「やっかみ」です。『ユニティ』を単品で評価できれば文句なしの名盤です。でもSaya入門者の1枚目は『DANCE YOUR HEART』でお願いしま〜す。

  01. UNITY
  02. MERCY MERCY MERCY
  03. DO YOU KNOW WHERE YOU'RE GOING TO
  04. IN MY LIFE
  05. RIBBON IN THE SKY
  06. ETUDE OP.10 NO.3
  07. CORCOVADO
  08. BAG LADY
  09. CROSSWIND
  10. FEEL LIKE MAKING LOVE
  11. SOMETHING
  12. FUNKY MIRACLE

(ポニーキャニオン/LEAFAGE JAZZ 2002年発売/PCCY-30048)
(ライナーノーツ/佐藤英輔)

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Saya / ダンス・ユア・ハート5

DANCE YOUR HEART-1 実に清々しい。瑞々しい。(毎日聴いても何年聴いても)“真っ白な”ジャズ・ピアノ
 管理人はとうとう,Sayaの『DANCE YOUR HEART』(以下『ダンス・ユア・ハート』)に“魂を抜かれてしまった”思いがする。

 世間には音楽療法なるものがあるが,管理人はきっと『ダンス・ユア・ハート』で音楽療法を受けている。
 『ダンス・ユア・ハート』が流れると,無の自分に戻ることができる。明日の自分へリセットできる。この表現にウソ偽りはない。Sayaのエレガントなジャズ・ピアノは“真の癒し系”なのである。

 あっ,誤解のありませんように。Sayaの“癒し”はヒーリングではない。エステではなく針ツボ指向である。
 美しいものにはトゲがある。Sayaのエレガントなジャズ・ピアノにも,聴いて痛みを感じる瞬間がある。押してほしくないツボを押されたような…。
 恐らく,自分では無意識のうちにしまいこんだ,絶対に押されたくないツボ=幾重にもバリケートで囲い込んだ最悪な自分,が刺激される。“VENUSSayaの余りの美しさに羞恥心を感じてクリーンな自分を取り戻すことができるのだと思う( 我ながら冷静な自己分析。分かってるじゃん。でもどこかで外れているんだろうなぁ )。

 『ダンス・ユア・ハート』で,Sayaの指先が,管理人の深い部分にスーッと入ってくる。本当は抵抗したいはずなのに。優しく優しく撫でられるのが気持ちよい。こうなったら全てをさらけだしてしまおう。Sayaの指先に身を任せよう。指の次は口でしてもらおう。もう何度でも絶頂に達してしまう。ああ…。今夜もSayaに“魂を抜かれてしまいた〜い”!?

 『ダンス・ユア・ハート』は,全体に“ゆったりグルーヴ”。奇をてらう部分は一切ない。予定調和でスタンダードジャズ・ピアノが美しい。原曲のイメージを“崩しすぎない絶妙な崩し”がクセになるなる。
 Sayaアドリブは,ここぞという瞬間でスパークする,おいしいとこ取りのアドリブが構成美。この“白っぽい美しさ”でSayaも今後,耽美主義のエヴァンス派として鳴らすであろう。

 Sayaの個性は美しいアドリブだけではない。その1つが崩しの手法で感じる“ブルージなノリ”である。
 ソウルフルな【CHICKEN】や【WAITING IN VAIN】は勿論,ジャズ・スタンダードの【SUMMERTIME】がブルースしている。さすがは元ネヴィル・ブラザーズである。全てが「あっさり味」ではない。

 そしてもう1つ。Sayaの最大の魅力は“トータル・ミュージシャンの才”にある。
 例えばピアノのバッキング。Sayaの奏でる左手のコードのセンスが抜群である。【MY ONE AND ONLY LOVE】や【HOW MY HEART SINGS】での左指。ベーススタン・ギルバートドラムの“大御所”ハービー・メイソンの演奏をよく聴き分けた,的確なインタープレイが実に素晴らしい。

 ピアノの演奏だけではない。“トータル・ミュージシャン”Sayaの個性は,彼女の名作編曲家ぶりから窺い知れる。ハービー・ハンコックの大名曲【CHAN’S SONG(NEVER SAID)】のアレンジは,間違いなくSayaの【CHAN’S SONG(NEVER SAID)】がベストである。本家=ハービー・ハンコックを超えたSayaは世界最高峰のアレンジャーの一人だと思う。

 そしてミディアム・バラードの2曲のオリジナル。【DANCE YOUR HEART】【BELIEVE】の美メロにしばしば涙してしまう。管理人の大好きな「小さな日常の幸せ」を歌った感動系の逸品である。間違いない。

DANCE YOUR HEART-2 骨抜きにされ“魂を抜かれてしまう”程にメロメロな“Sayaの最高傑作”『ダンス・ユア・ハート』。上品な白無垢で身をまとった,清々しく瑞々しい『ダンス・ユア・ハート』。毎日「ピッカピカ」に輝いている『ダンス・ユア・ハート』。

 しかし『ダンス・ユア・ハート』の“真っ白な美しさ”は,純度100%の水ではない。異物がバリバリに混入している。Sayaの“ジャズ・ピアノへの情熱”が『ダンス・ユア・ハート』に混入した異物を全て溶解しろ過してしまった。
 『ダンス・ユア・ハート』は“美しいピアノ・トリオの典型”であるが,それだけではない。魅力的な美人にはどこか陰があるものだ。陰のない美人は3日で飽きるが,陰のある美人は男性を一生惹きつける。

 『ダンス・ユア・ハート』には陰がある。しかし今ではその跡形しか残っていない。Sayaが『ダンス・ユア・ハート』のレコーディングで何を燃やしたのか,今となっては想像することしかできない。Sayaジャズ・ピアノを聴いてあげることしかできない。
 『ダンス・ユア・ハート』の中に残された,極々わずかな負の陰影。これがはかなくも美しいクリスタル。

  01. SUMMERTIME
  02. FRAGILE
  03. MY ONE AND ONLY LOVE
  04. DANCE YOUR HEART
  05. NORWEGIAN WOOD
  06. CHAN'S SONG (NEVER SAID)
  07. HOW MY HEART SINGS
  08. BELEIVE
  09. CHICKEN
  10. WAITING IN VAIN

(ポニーキャニオン/LEAFAGE JAZZ 2001年発売/PCCY-30008)
(ライナーノーツ/高井信成)

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Saya / シンプル・ポエム5

SIMPLE POEM-1 自主制作→インディーズ→入手困難。ジャズフュージョンCDコレクターなら,いつかはこの壁にぶち当たる。
 ここに海外制作・現地限定発売という“しばり”がかかれば,ほぼ入手不可能間違いなし。ネットでの海外通販頼みに賭けるのみ。ああ,悩ましい。どうしても手に入れたい。チック・コリアポール・モチアンメデスキ,マーティン&ウッドソウライヴのファンなら海外通販の1度や2度,いや,二桁以上の経験がおありなのでは?

 そんなCDコレクターたちへのグッド・ニュース=日本国内発売盤のビッグ・ニュース。もう“狂喜乱舞”である。これでネット試聴ともおさらばできる。いや,全曲フルで聴き込める。
 しかし現実はそう甘くはない。国内盤になるインディーズ盤なんて極少数。管理人が希望していたSayaの本名「SAYA SAITO TRIO」名義の『SIMPLE POEM』(以下『シンプル・ポエム』)を手にするのはいつの日や…。

 祝! Sayaのニューオリンズ時代“幻のデビュー盤”である『シンプル・ポエム』が2005年に“日本国内正規盤”として再発されました。
 実に素晴らしい。JAZEEさん,ボウサイズさん,E−MUSICさん,本当にありがとうございます。皆さんのおかげで『シンプル・ポエム』が今,私の手元に届けられています。『シンプル・ポエム』の名盤ぶりは,一生の宝物の1つになると思っています。

 『シンプル・ポエム』は,ベースデビッド・プルファスドラムマルサリス・ファミリーの末弟,ジェイソン・マルサリスが参加した“シンプルかつゴリゴリ”なジャズ・ピアノCD

 待ちに待った『シンプル・ポエム』を一聴して,アルバムの完成度の高さに驚愕した! R&B,ソウル,ファンクをエッセンスに,Sayaオリジナルの美メロとハーモニーをブレンドした,ふくよかで繊細なジャズ・ピアノが完成している! この心地良い風,この透明感,これぞ,管理人の永遠の憧れ=Sayaスタイル全開!
 いや〜,この快作『シンプル・ポエム』が自主制作盤とは勿体無い。危うく真に“幻の名盤”と化するところ。いやいや,真の名盤は埋もれやしない。

SIMPLE POEM-2 『シンプル・ポエム』はまず,アメリカのブラック・ミュージックの雄=アーロン・ネヴィルに耳にとまった。その流れでSayaはネヴィル・ブラザーズのピアニストとして全米メジャー・デビューする。
 確かに『シンプル・ポエム』でのSayaピアノはブルージィ。【BLACK NILE】【A NEW DAY】での演奏は“メロディアスなブラック・フィーリング”で満ちている。

 『シンプル・ポエム』は次に,日本のポニーキャニオン(LEAFAGE JAZZ)のプロデューサーの耳にとまった。その流れでSayaは『DANCE YOUR HEART』にて日本メジャー・デビュー。
 確かに『シンプル・ポエム』でのSayaピアノは日本人以上に日本人っぽい音を出す。【SIMPLE POEM】【PRELUDE】での“ワビサビ+土の香り”の演奏が胸に染み入ってくる。
 『シンプル・ポエム』は,こうして管理人の耳にとまった。もはや管理人の心を掴んで離してくれない。大好き。

 『シンプル・ポエム』には“ジャズ・ピアニストSayaの原点がある。【ALICE IN WONDERLAND】【OVER THE RAINBOW】での,きどらないジャズ。しかし同時に熱い思いを伝えるジャズ。実にいい。
 『シンプル・ポエム』録音時のSayaは,アメリカでどのような道に進むべきかを迷っていたとのこと。そう。『シンプル・ポエム』は,これまでの音楽活動を通じて覚えたものを吐き出し,それを次のステップのための基にしようとする,そんなSayaの気概が鍵盤を通して伝わってくるように思う。
 「私のピアノ・スタイルはこうである」! 手探りと試行錯誤で確立した,Sayaピアノ・スタイルが形になった『シンプル・ポエム』! 『シンプル・ポエム』にSayaの原点がある。

m@yu さて,ここで管理人の『シンプル・ポエム』“推し”の真相を明かそう。
 『シンプル・ポエム』が,アーロン・ネヴィル〜LEAFAGE JAZZを通って管理人の耳に届く前に,実はもう一人の重要人物の耳に届けられている。「CLUB☆SAYA」の会長=m@yuちゃん。

 m@yuちゃんがいなければ管理人と斉藤栄弥さんはつながっていませんでした。斉藤栄弥さんのジャズ・ピアノを聴き続ける限り,m@yuちゃんへの思いが溢れ出てしまい困っています。
 是非,また一緒に斉藤栄弥さんを応援いたしましょう。副会長は今でも,新作は聴けなくとも,斉藤栄弥さんの応援を続けています。
 カムバック,m@yu! 私,セラビーはm@yuちゃんからの連絡だけを待ちわびています。この願いがm@yuちゃんの心まで届きますように。

  01. Simple Poem
  02. Black Nile
  03. Far Beyond
  04. Prelude
  05. A New Day
  06. Alice In Wonderland
  07. Words For Music Perhaps
  08. Over The Rainbow
  09. If I Fell For You

(JAZEE/JAZEE 1997年発売/JZCD-2001)
(ライナーノーツ/デイヴィッド・リッツ)

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Saya / TIMELESS / TIMELESS4

 『TIMELESS』の13曲目は【TIMELESS】(以下【タイムレス】)。


 時間を忘れて【タイムレス】。時代を超えて【タイムレス】。
 争いを忘れ,国境を越え肌の色を越え人種を越え言語を越え,大空へと響き渡る「祈り」にも似たピアノの音色…。Saya

SAYA : Piano

Saya / TIMELESS / ETUDE OP.10 NO.33

 『TIMELESS』の11曲目は【ETUDE OP.10 NO.3】(以下【別れの曲】)。


 ピアニストの「登竜門」であろうショパンの【別れの曲】は,ひたすら美しいテーマが“胸に突き刺さるかどうか”が肝である。

 管理人の結論=Sayaの【別れの曲】は,テーマとアドリブが完全分離の“二部構成”がいただけない。
 テーマ自体,アドリブ単体も悪くはない。ポイントは3分30秒から32秒。大西洋とインド洋が完全に分離しているダーバンの海のように,マーク・ウィリアムスベースの前後で(本来つながるべきであろう)テーマとアドリブのつながりがなっていない。

 Sayaとしては,ジャズ・アレンジで個性を表現したかったのであろうが【別れの曲】は,中途半端にいじってはいけない。
 Sayaの腕前を持ってすれば,普通に弾いてるつもりでも,無意識のうちにジャズになったであろうに…。

SAYA : Piano
MARK WILLIAMS : Bass
DESZON CLAIBOME : Drums

Saya / TIMELESS / PRELUDE4

 『TIMELESS』の10曲目は【PRELUDE】(以下【プレリュード】)。


 【プレリュード】は,悲しみにどっぷりと浸かった,ビル・エヴァンスのようだ。「ビル・エヴァンス好き」を公言しているSayaだけにあながち外れてはいないと思っている。

 ビル・エヴァンスというジャズ・ピアニストは,悲しいことを楽しげに,楽しいことを悲しげに表現する。時にビル・エヴァンスは,男の中の男であり,女の中の女でもある。
 ビル・エヴァンスを知らない人には,理解不能の表現でも,分かる人には分かるはず!? 拍手喝采の自画自賛である。かたじけない。

 【プレリュード】は,結婚式当日のSayaの胸の内! Sayaが本当に好きな人とは結ばれず,しかしSayaを心から愛してくれる人との結婚式。女性にとっては,愛するより愛される結婚の方が幸せになれる確立は高いのだろう。
 「しかし…。それで…。だから…。果たして…」。そう。この“心の葛藤”こそがビル・エヴァンスなのである。

 この幸せは永遠には続かない。Sayaはそのことを知っている。Sayaの【プレリュード】=藤沢周平の『蝉しぐれ』である。

SAYA : Piano

Saya / TIMELESS / PAVANE5

 『TIMELESS』の12曲目は【PAVANE】(以下【亡き王女のためのパヴァーヌ】)。


 【亡き王女のためのパヴァーヌ】を取り上げるジャズメンは皆一様に“繊細な美の追究”に向かう。百戦錬磨のジャズメンでさえ,ついつい創作意欲を駆り立てられるだから,ラヴェルの作曲能力はさすがである。
 
 Sayaも,しっとりと静かなトーンで,耳元でささやくかのように,ピアノで語りかけている。実にソフト・タッチ。正に女性ピアニスト特有のエッセンス! これが魅力的だ!
 管理人も一聴した後,てっきりSayaも“繊細な美の追究”にのめり込んでしまった,と思い込んでしまったものである。

 しかし【亡き王女のためのパヴァーヌ】のハイライトは,お馴染みのテーマを奏でた直後,2分30秒から突然始まるSayaアドリブ! ここでのアドリブがそれまでの曲の表情・雰囲気を一変させている!
 一瞬の“硬質な”ピアノ・タッチを持って,それまでの張りつめた空気感が引き裂かれる。一気に“ジャズ・ピアニストSayaとしての感情が吐露されている。同じフレーズの“あの手この手の表現”が,聴き手の感情さえも揺さぶってくる。
 そう。Sayaの真の狙いは「こっち」! “クール・ビューティ”とはカムフラージュの“ベリー・ホット”。ほらっ,優雅に泳ぐ白鳥も水面下ではバタ足している。一生懸命もがいている。荒川静香の“クール”な演技も屋台骨は“ベリー・ホット”なのである。

 アドリブを終え“正気に戻った”4分0秒からは,何事もなかったかのごとく“涼しい”顔して“繊細な美の追求”に突き進む。そこが見事なコントラスト! 完全なSayaワールド!

SAYA : Piano
JASON LEWIS : Drums
JOHN SHIFFLETT : Bass

Saya / TIMELESS / SIMPLE POEM4

 『TIMELESS』の9曲目は【SIMPLE POEM】(以下【シンプル・ポエム】)。


 “シンプルなピアノの詩”と言う意味の【シンプル・ポエム】だがポエムと言うよりは“ショート・ストーリー”! 印象的なクライマックスへと展開する,悲しい結末…。つかの間の幸福…。

 Sayaピアノ・タッチの特徴は“明瞭かつ豊かな響き”。この豊かな“残響”が【シンプル・ポエム】の内に秘める“悲しみ”を増幅させる。
 「優しく優しく」で始まるシュート・ストーリーも,1分53秒からの「山あり谷あり」〜2分46秒からの「絶頂期での悲劇」を迎えて,再び「優しく優しく」。
 【シンプル・ポエム】にはSayaの“人生観”が表現されている。

SAYA : Piano
JASON MARSALIS : Drums
DAVID PULPHUS : Bass

Saya / TIMELESS / BUTTERFLY4

 『TIMELESS』の8曲目は【BUTTERFLY】(以下【バタフライ】)。


 【バタフライ】を聴くと,いつも“どっぷりと”悲しみに沈み込んでしまう。こんなに“切ない気分”になるのはなぜなのだろう。今にも涙がこぼれ落ちてきそうで,この手の曲はどうも苦手である。

 原因は何となく分かっている。あの“ブツ切れ”のシンセサイザー。いい感じで上がってきてはブツ切れする。その繰り返し。そこへピアノが抑揚を付けて乗っかってくるから,たまったものではない。
 【バタフライ】を聴いているうちに,キース・ジャレットの名言を思い起こした。「私たちは生(誕生)と死の間を生きている」!

 【バタフライ】には,短くとも人生の喜びも表現されている。
 2分20秒から2分45秒までの“駆け足”のピアノは,Sayaの描く“喜びへの昇華”そのものである。

 ただし,すぐにまた,あの悲しみが襲ってくる。以前の何倍にも悲しみを増して…。ああ…。
 この一瞬の喜びのための悲しみなのか,それとも常につきまとう悲しみを乗り越えるための喜びなのか…。ああ…。

SAYA : Piano, Synthesizer

Saya / TIMELESS / CHOPIN IN CARIBBEAN (NOCTURNE OP.9 NO.2)4

 『TIMELESS』の7曲目は【CHOPIN IN CARIBBEAN (NOCTURNE OP.9 NO.2)】(以下【ショパン・イン・カリビアン / ノクターン 第2番 作品9−2】)。


 【ショパン・イン・カリビアン / ノクターン 第2番 作品9−2】は,タイトル通りの“カリビアン”。ショパンが格調高いヨーロッパから南国リゾートへ舞い降りてきた!

 と言っても,ショパンが“羽目を外して”大暴れなどするはずがない? タキシードから水着に着替えての日光浴。
 ショパンを優しく海辺に誘い出したのがSaya。【ノクターン】の原型はそのままに,カリビアンシンセギターを持ち出し“さわやかな風”を送り続ける。うん。そんな感じ。
 時計を気にせず,ゆったりとSayaピアノに身を任せる心地良さが『TIMELESS』である。

 Sayaピアノは,作曲者ショパンに【ノクターン】は“こうやって弾くものよ”と“手ほどき”できるほどの,流ちょうさ。
 4分19秒からのテーマの崩し方,アドリブの展開力こそ,ジャズ・ナンバーへと変貌を遂げた【ノクターン 第2番 作品9−2】の“アナザー・ストーリー”である。 

SAYA : Piano, Synthesizer
PAISLEY : Programming
DAVID PULPHUS : Guitar

Saya / TIMELESS / VIA SPRING3

 『TIMELESS』の6曲目は【VIA SPRING】(以下【ヴィア・スプリング】)。


 【ヴィア・スプリング】は,わずか49秒の小品であるが,何度も繰り返し“マザーグース”似のメロディが登場する。
 そのマザーグースとは【OLD MACDONALD HAD A FARM】(邦題【ゆかいな牧場】)。「一郎さんの牧場で,イーアイ・イーアイ・オー♪」と紹介した方が早いかも?
 一度そう思ってしまってからというもの,オーバーダビングで「一郎さんの牧場で…」が何度も鳴っているようで,もう頭から離れない。特に22秒からのフレーズが分かりやすいと思う。

 マザーグースの特徴が「覚えやすいメロディ,覚えやすいリズム,覚えやすい歌詞」にあるように【ヴィア・スプリング】の特徴も「覚えやすいメロディ,覚えやすいリズム」にある。
 そう。【ヴィア・スプリング】は,ジャズ初心者の耳にも“馴染みやすい”Sayaからの“マザーグース”である。

 あくまでもマザーグースの位置付けゆえ,ジャズ中級者,上級者の耳には?です。あしからず。

SAYA : Synthesizer

Saya / TIMELESS / CLAIR DE LUNE4

 『TIMELESS』の5曲目は【CLAIR DE LUNE】(以下【月の光】)。


 【月の光】は“大人”の気品溢れるジャズ! と言うのは,3人とも決して“自分が”前に出ようとはしていない。それどころか丁寧に,互いに音を重ね合っている。つまりはハーモニー重視,ピアノの“響き”重視の名演である。
 このストレートな狙いが,実に心地良い。“リズミカル”なドビュッシーの名曲が,ゆっくりと管理人の心の中で“時”を刻んでいく…。いい! ← でも,毎日だと物足りなくなるのかなぁ?

 そう述べると,アドリブ好きには“味気なく”思えるかも知れないが,Sayaピアノはいつも以上に大活躍! メイン・テーマ以外のほぼ全編でSaya一流のアドリブが散りばめられている。
 例えば,2分19秒から57秒までのピアノ・ソロは,完全な“Sayaフレーズ”であるが,印象としては“リズム”である。そう。ピアノとリズム隊が“トロトロ”に溶け合っている!
 Sayaアドリブベースドラムを生かすための“自己犠牲的な”アドリブである。

 Sayaのサポートを受けたベースドラムも,決して目立とうとしない。【月の光】からは,日本社会の「譲り合い精神」を感じてしまった。
 そう。【月の光】は,控え目で奥ゆかしい,3人のジャズメンによる“静かに燃えた”ジャズ! やはりSayaは(サンフランシスコに住んでいようと)日本を代表する女性ジャズ・ピアニストである。

SAYA : Piano
JASON LEWIS : Drums
JOHN SHIFFLETT : Bass

Saya / TIMELESS / GYMNOPEDIES NO.13

 『TIMELESS』の4曲目は【GYMNOPEDIE NO.1】(以下【ジムノペディ 第1番】)。


 【ジムノペディ 第1番】は,ご存じ「エリック・サティ」の超有名曲。ジャズ・スタンダードもそうであるが,永遠の名曲と呼ばれるものは,様々なジャンルの様々なアーティストから,ありとあらゆる手法でやり尽くされており,結果,そこで目新しさを発揮するのは並大抵のことではない。

 Sayaの【ジムノペディ 第1番】も,いつもの“軽快な”独自色が出し切れていない。完全に曲の魅力に負けている。
 思うに【ジムノペディ 第1番】に対する愛着が強すぎて,斬新なアレンジを無意識のうちに控えたのでないか? 言うなれば,美しいと思うものには手を触れにくく感じる,あの感覚。

 管理人の結論。ノーマルでフォーマルなプレイは“華麗”だが,ジャズではない。
 1分45秒から始まるピアノ・ソロが“きらびやか”であるだけに,もっともっとSayaワールドへ発展させてほしかった。

SAYA : Piano
JASON LEWIS : Drums
JOHN SHIFFLETT : Bass

Saya / TIMELESS / PIANO SONATA OP.8 NO.25

 『TIMELESS』の3曲目は【PIANO SONATA OP.8 NO.2】(以下【悲愴】)。


 【悲愴】に聴き覚えあり。ビリー・ジョエルの【ディス・ナイト】と思い込み,ライナーノーツに目を落とす。するとこんな解説が…。
 「【悲愴】は,ベートーベン三大ソナタの一つであり,耳が聞こえなくなってきた頃の作品」。この年になって,恥ずかしながら初めて知りました。ベートーベンって“天才”だったんですね。

 しかし管理人にとって,原曲がベートーベンだろうが,ビリー・ジョエルがカバーしていようが,それは全く関係ない。
 【悲愴】はSaya! Sayaのこのトラックが大定番! Sayaの優しいピアノ・タッチが原曲の美しさを最高に昇華させている。

 58秒から始まるピアノ・ソロがいい。流れの中での1分29秒から34秒までのフレーズに涙する。2分9秒からのトーンの変化はバックと溶け合うピアノ・トリオの魅力に溢れている。
 後半の甘く切ないメロディーで,感情を抑えた静かなプレイ。これがたまらなくいい。あそこで甘さを爆発してしまっていたら,ここまで心に残ることはなかったのではないか? あくまでも,しっとりと,しっくりと…。

SAYA : Piano
JASON LEWIS : Drums
JOHN SHIFFLETT : Bass

Saya / TIMELESS / FLOWER WALTZ5

 『TIMELESS』の2曲目は【FLOWER WALTZ】(以下【花のワルツ】)。


 【花のワルツ】は,ハートフォード生命のCMタイアップだったので,聴き覚えのある方もいらっしゃると思う。小林稔侍主演「年金の達人・ほのぼの家族篇」と言えば分かるだろうか?
 あの「ほのぼの」とした感じは,そっくりそのままSayaの音楽世界とつながっている。

 【花のワルツ】は,チャイコフスキー作「くるみ割り人形」の中の一曲。筋金入りの音楽オンチでもない限り,この【花のワルツ】を耳にしたことがあるはずだ。幾人もの名演奏家の幾つもの名トラックを聴いてきたはずなのである。

 それなのにイントロの2音,3音だけで,過去の名演では感じ得なかった“何か”が,今から始まる名演を期待させてくれる“何か”がある。ウキウキ,ワクワク,ルンルン,ランラン。 ← なにも春が近づき,頭がおかしくなったわけではありませんよ。Sayaピアノがそうさせるのです。

 実際,イントロのコロコロ&キラキラとした感じだけでなく,1番だけで説明すれば50秒,59秒,1分8秒,1分17秒と続く例のキメ! このキメがSayaらしい。かわいくも繊細なタッチで,身をとろとろにさせられてしまう。
 全体にはポップなラテンのノリであり,華やかなサウンド。2分8秒からのピアノ・ソロが全速力で一気に駆け上がる。
 とっても“チャーミングな”ジャズ・ピアノである。

SAYA : Piano
JASON LEWIS : Drums
JOHN SHIFFLETT : Bass
CHRIS CAMOZZI : Guitar
MIKE SPIRO : Percussion

Saya / TIMELESS / AIR4

 『TIMELESS』の1曲目は【AIR】(以下【G線上のアリア】)。


 数あるクラシックの名曲の中でも,最もジャズメンに愛されてきた?【G線上のアリア】であるが,Sayaの見事なアレンジにより【G線上のアリア】が“ジャズ・スタンダード”の仲間入りを果たす日が,にわかに現実味を帯びてきたように思う。
 超・硬派のジャズ批評家たちが,このトラックにどのような評価を下すのか,一度,意見してみたいところである。

 Sayaの絶妙な“崩し”はジャズだけが放ち得る緊張感で満ちている。「原曲がクラシックだから…」という理由だけで,素晴らしいアドリブの連続を聴き逃す手はない!
 ここは一旦,ジャズ・ファンとしてのプライドをかなぐり捨てていただきたいし(極上のアドリブを聴き逃したくないと思うのであれば)当然捨てるべきである。

 【G線上のアリア】の聴き所は,38秒からのピアノの入りと2分42秒からのメロディー・ライン。
 【G線上のアリア】で聴かせるSayaアドリブは,聴き手の心を熱くするチャーリー・パーカーソニー・ロリンズのそれではない。自然に身体に染み込んでくる“おとなしめ&控え目”なアドリブである。
 派手なインパクトは感じないが,最近,こうした“癒し系”のアドリブが,ジャズの魅力の一つとして語られてもいいかな,と思っている。

SAYA : Piano
JASON LEWIS : Drums
JOHN SHIFFLETT : Bass

Saya / TIMELESS4

TIMELESS-1 「逆輸入」という言葉がある。「MADE IN JAPAN」が海外で高く評価され,その人気ぶりから我が国でもブレイク,という図式。
 SONYの“WALKMAN”。TOSHIBAの“DynaBook”。TOYOTAの“レクサス”…。数え上げれば,枚挙にいとまがない。

 しかし「MADE IN JAPAN」の逆輸入は,なにも“ハード”に限定されたものではない。“ソフト”例えばミュージシャン!
 倖田來未も全米でまずブレイク。デビューCD【TAKE BACK】はビルボードの “ホットダンスミュージック・マキシシングル・セールスチャート”で堂々の初登場20位を記録している。
 倉木麻衣(Mai−K)の全米デビューCD【BABY I LIKE】も即日ソールドアウト!
 今をときめく歌姫二人も,きっかけは「逆輸入」だったのだ。

 そして,ここに一人の“ピアノの歌姫”がいる。Sayaである。
 Saya斉藤栄弥)も,まずアメリカで認められ,後に日本デビューを果たした「逆輸入」ジャズ・ピアニスト
 Sayaの奏でるジャズ・ピアノは日本人以上に日本人っぽい音を出す。ワビサビ+西洋かぶれ+ジャズ。そこがアメリカでも受け入れられた理由なのだろう。

 『TIMELESS』はSayaのルーツである,クラシックをジャズにアレンジした曲とクラシックの香り漂うオリジナルで固めた,新録音4曲を含むクラシック・ベスト盤! しかし『TIMELESS』のテイストは間違いなく“ジャズそのもの”である。

 昔からジャズとクラシックの融合を目指した多くの駄作が制作されては消えていったが『TIMELESS』はその数少ない成功例! それこそ“アレンジャー”Sayaの成せる技!
 軽やかな8ビートにエレガントなピアノを乗せた温かいタッチがメロディ・ラインの美しさを引き出している。Saya独自の解釈&ハーモニーが原曲を崩しすぎず,それでいてアドリブを随所に織り交ぜた“絶妙のバランス”で聴かせてくれている。

 管理人にとって,こんなに楽しくバッハやベートーベンを聴いたのは実に久しぶりの経験だった。『TIMELESS』と初めて接した時の“心地良さ”に興奮した日のことを今でも覚えている。Sayaの書き出すバッハやベートーベンの楽譜には,最高の一音が,時に加えられ,時に間引きされている。
 『TIMELESS』=PRICELESS!

 無い物ねだりで欲を言えば“ジャズ・ピアニスト”としてのSayaをもっと全面に押し出して,バックとのガチンコ・バトルを聴かせて欲しかったのだが…。

TIMELESS-2 しかし,それでは『TIMELESS』のコンセプトにはそぐわない。そう。『TIMELESS』の聴き所は“天才アレンジャー”としてのSayaにある。
 ここでのSayaはクラシックも弾く“ジャズ・ピアニスト”として“ポップ&キュートな”ジャズの表情で聴かせてくれる。ジャズとクラシック融合の“舵取り役”に徹している。

 野球で言えばキャッチャー。キャッチャーと言えば古田。今年の古田はプレイング・マネージャー。正に『TIMELESS』でのSayaの役所である。
 ん? 城島の方が近いかな? 単身アメリカへ渡った城島であるが,数年後にはSayaのように,ホークスへ「逆輸入」してもらいたいものである。ねっ,孫さん。

PS Sayaファンにとっての『TIMELESS』の真価は,本邦初登場の【VIA SPRING】【CHOPIN IN CARIBBEAN (NOCTURNE OP.9 NO.2)】【BUTTERFLY】収録にある。幻の『DESTINATION FARAWAY』から3曲も聴ける〜。

  01. Air
  02. Flower Walz
  03. Piano Sonata Op.8 No.2
  04. Gymnopedies No.1
  05. Clair de Lune
  06. Via Spring
  07. Chopin In Caribbean
  08. Butterfly
  09. Simple Poem
  10. Prelude
  11. Etude Op.10 No.3
  12. Pavane
  13. Timeless

(ポニーキャニオン/LEAFAGE JAZZ 2005年発売/PCCY-30072)
(ライナーノーツ/Saya)

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