アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

CD批評:ビル・エヴァンス

チック・コリア,小曽根 真,大西 順子,山中 千尋,ハクエイ・キム / PIANIST〜ワルツ・フォー・ビル・エヴァンス5

PIANIST 〜WALTZ FOR BILL EVANS-1 『PIANIST〜WALTZ FOR BILL EVANS』(以下『PIANIST〜ワルツ・フォー・ビル・エヴァンス』)は,ジャズ・ピアノの金字塔であるビル・エヴァンスの『WALTZ FOR DEBBY』50周年を記念したオムニバス・アルバム。
 『PIANIST〜ワルツ・フォー・ビル・エヴァンス』を,そんじょそこらのオムニバスと思うなかれ! 参加メンバーがとにかく凄い!  

 世界的に活躍するユニバーサル・ジャズ所属の5名のピアニストチック・コリア小曽根真大西順子山中千尋ハクエイ・キムのビッグネームが,1人2曲ずつ新録音なり未発表音源なりを持ち寄ってきた(既発トラックはチック・コリア上原ひろみと共演した1曲のみ! ユニバーサル・ジャズはどうしてもこのラインナップに上原ひろみを入れたかった!?)。

 超豪華メンバーの一員なのに,ドリーム・チームの5人が5人とも,他の共演者の出方など気にも留めない“ビル・エヴァンスの世界観”が最高すぎる。
 やっつけではない「1曲入魂」の大熱演。みんながみんな,自分にとってのビル・エヴァンスの愛想曲を愛情を込めて,慈しみを持って奏でている。

 全10曲の1曲1曲全てがハイライト! “最大の目玉”であろう,チック・コリア/エディ・ゴメス/ポール・モチアンによる【WALTZ FOR DEBBY】は『ファーザー・エクスプロレイションズ〜ビル・エヴァンスに捧ぐ』未収録音源。なんのことはない。没テイクなどではない。『PIANIST〜ワルツ・フォー・ビル・エヴァンス』のための取り分けていたとしか思えない『ファーザー・エクスプロレイションズ〜ビル・エヴァンスに捧ぐ』の中で最高の演奏である。

 小曽根真のこんなにも繊細なソロ・ピアノは久々である。一方,同じソロ・ピアノでも山中千尋の奏でるビル・エヴァンスはスインギー。両者の「静と動」の対比が非常に興味深い。
 今回の5人のメンバーの中では大西順子の強烈なタッチが一番ビル・エヴァンスらしく聴こえたのが意外や意外…。

 そしてハクエイ・キムである。実は管理人。ハクエイ・キムというピアニストを『PIANIST〜ワルツ・フォー・ビル・エヴァンス』で初めて聴いた。
 一人「格落ち」のような気がして心配していたハクエイ・キムだったが「心配無用」のハイ・クオリティ。ピアノ・トリオの白熱のインタープレイと疾走感は間違いなく“エヴァンス派”でした。

PIANIST 〜WALTZ FOR BILL EVANS-2 管理人の結論。『PIANIST〜ワルツ・フォー・ビル・エヴァンス批評

 『PIANIST〜ワルツ・フォー・ビル・エヴァンス』とはチック・コリアのアルバムである。あるいは小曽根真のアルバムである。この2人の“天才”がやはり頭一つ飛び抜けていると思う。ジャズ・マニア必聴の4トラックが輝いている。

 しかし「勝負に勝って試合に負けた」のが大西順子である。ビル・エヴァンストリビュートの真の勝者は大西順子だと思う。

 それにしてもユニバーサル・ジャズさん(現在は契約切れのようですが)なんで木住野佳子さんを呼ばなかったのですか?

  01. HOW MY HEART SINGS
  02. WALTZ FOR DEBBY
  03. ISRAEL
  04. HERE'S THAT RAINY DAY
  05. NEVER LET ME GO
  06. NARDIS
  07. VERY EARLY
  08. YOU AND THE NIGHT AND THE MUSIC
  09. WHAT IS THIS THING CALLED LOVE?
  10. I SHOULD CARE

(ユニバーサル・ジャズ/UNIVERSAL JAZZ 2011年発売/UCCJ-2087)
(ライナーノーツ/原田和典)

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ビル・エヴァンス / ビル・エヴァンス・トリオ・ウィズ・シンフォニー・オーケストラ5

BILL EVANS TRIO WITH SYMPHONY ORCHESTRA-1 リリカルなビル・エヴァンスのバックにシンフォニーオーケストラ。この組み合わせが悪いはずがない。
 ただし,ビル・エヴァンスピアノはかなりの強面ゆえに,このアイディアを実際に具現化するのは思いの外,容易ではない。

 “天才アレンジャー”クラウス・オガーマンの選択肢は,ピアノを前面に押し出して鳴らすべきか? それともオーケストラピアノと対立,あるいは共存させるべきか?

 かくして完成された『BILL EVANS TRIO WITH SYMPHONY ORCHESTRA』(以下『ビル・エヴァンス・トリオ・ウィズ・シンフォニー・オーケストラ』)が何ともスッキリ!

 リリカルなビル・エヴァンスが大好きであれば,ド・ストライクなシンフォニーオーケストラとの共演盤。『ビル・エヴァンス・トリオ・ウィズ・シンフォニー・オーケストラ』を聴かずして,ビル・エヴァンスを語ってはいけない“極上”レベルの共演盤。

 有名クラシック曲の選曲と控えめながら音楽の躍動感を意識させる名アレンジに耳がくすぐられる…。
 ゆえに『ビル・エヴァンス・トリオ・ウィズ・シンフォニー・オーケストラ』の成功の主役はクラウス・オガーマンと思われがちだが,絶対にそうではない。この全てはビル・エヴァンス側の“大仕事”の結果である。

 ズバリ『ビル・エヴァンス・トリオ・ウィズ・シンフォニー・オーケストラ』の構図とは,ビル・エヴァンスクラウス・オガーマンの編曲を“聴き分けた”大名盤である。

  思えばピアノ・トリオの印象が強いビル・エヴァンスであるが,ヴァーヴへの吹き込みは冒険作の方が多く,ヴァーヴビル・エヴァンスと来ればピアニストというよりもジャズメンと呼ぶにふさわしい活動のピークの時期。
 サックスフルートの特徴を引き出すことに成功させていたビル・エヴァンスが,シンフォニーオーケストラが有する“カラフルな甘さ”を見事に引き出している。

 オーケストラの音色をサックスフルートなど,1つの共演楽器に見立てた感じで,いつも通りに“ジャズの言語で”ピアノのバランスを合わせていく。
 ビル・エヴァンスとしては,相手が大物オーケストラであろうと気に留めてやいない。よく聴くとピアノシンフォニーオーケストラがバラバラな時間が随所にある。

BILL EVANS TRIO WITH SYMPHONY ORCHESTRA-2 これを偶然と取るか,必然と取るかは聴き手の判断次第であろうが,交わりそうで交わらない両者が絶妙にシンクロした瞬間が『ビル・エヴァンス・トリオ・ウィズ・シンフォニー・オーケストラ』のハイライト!

 ビル・エヴァンスには自分の個性を薄めて「伴奏役」に徹する気などさらさらない。爽やかなストリングズに溶け込むわけでもなく,対立するわけでもなく,ただシンフォニーオーケストラと同じ時間,同じ場所で,互いの考えを共有しながら,同時に音を発しているだけ…。

 そう。『ビル・エヴァンス・トリオ・ウィズ・シンフォニー・オーケストラ』でのビル・エヴァンスは,いつも通りのビル・エヴァンスである。いつも通りにビル・エヴァンスが超然としている。

 シンフォニーオーケストラと共演しようとも,有名クラシック曲を演奏しようとも,やはりビル・エヴァンスビル・エヴァンスであった。ビル・エヴァンスをなめてはならない。

  01. GRANADAS
  02. VALSE
  03. PRELUDE
  04. TIME REMEMBERED
  05. PAVANE
  06. ELEGIA (ELEGY)
  07. MY BELLS
  08. BLUE INTERLUDE

(ヴァーヴ/VERVE 1966年発売/UCCU-9285)
(ライナーノーツ/ビル・エヴァンス,ルイス・フリードマン,藤本史昭,中山康樹)

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トニー・ベネット & ビル・エヴァンス / コンプリート・レコーディングス5

THE COMPLETE TONY BENNETT/BILL EVANS RECORDINGS-1 アメリカ最高の男性ヴォーカリストの筆頭格=トニー・ベネットの伴奏を務めるとはビル・エヴァンスは幸運な男だ。これが世間の感想であろう。
 しかし管理人から言わせれば,ジャズ・ピアノの巨人=ビル・エヴァンスに伴奏してもらえるとはトニー・ベネットは幸運な男である。

 トニー・ベネットビル・エヴァンスが共演した2枚のアルバム『THE TONY BENNETT/BILL EVANS ALBUM』(以下『トニー・ベネット & ビル・エヴァンス』)と『TOGETHER AGAIN』(以下『トゥゲザー・アゲイン』)の聴き所は,間違いなくビル・エヴァンスピアノである。

 あのトニー・ベネットをしてビル・エヴァンスピアノに負けている。トニー・ベネット以上にビル・エヴァンスが“歌っている”。内省的なビル・エヴァンストニー・ベネット以上に“伝えてくる”。ピアノで語るメッセージが聞き手の心に訴えかける。
 正直,管理人は『トニー・ベネット & ビル・エヴァンス』と『トゥゲザー・アゲイン』の演奏を通してビル・エヴァンスの“歌心”を初めて理解できたように思っている。
 トニー・ベネットの伴奏者としてのビル・エヴァンスが“ビンビン”来ているのだ。

 『トニー・ベネット & ビル・エヴァンス』と『トゥゲザー・アゲイン』の全41トラックが収録された『THE COMPLETE TONY BENNETT/BILL EVANS RECORDINGS』(以下『コンプリート・レコーディングス』)は,トニー・ベネットビル・エヴァンスが2人して曲を作り上げたいく過程のドキュメントを聴くことができる。リハーサルの没テイクこそが“お宝”なのである。

 構成は決まっている。ビル・エヴァンスの短いイントロ〜テーマにトニー・ベネットの歌〜ビル・エヴァンスピアノ・ソロトニー・ベネットの歌というパターン。
 ビル・エヴァンスソロ終わりに,トニー・ベネットがどこから入るかは事前に決められてあった。ゆえにビル・エヴァンスソロは,その曲の構成に沿って盛り上がり“山場”を作っていく。これが完璧なのだ。

THE COMPLETE TONY BENNETT/BILL EVANS RECORDINGS-2  ビル・エヴァンスの伴奏は,ルバート的に弾く場面とキッチリとタイム・キープをする場面に分けられる。ビル・エヴァンス独特の突っ込み気味のタイム感と独特なフレーズで完全に自分の世界を造ってしまう。ここまで自己主張のあるジャズアドリブを「伴奏」でやってしまうビル・エヴァンス

 さらに唸らされるのは,トニー・ベネットとのコンビネーションで聴かせる“変幻自在の”ピアノ・ワーク。トニー・ベネットの歌声に切り替わる直前に「さぁ,どうぞ」と言わんばかりに,全速力のアドリブからごく自然な形で「歌がスタートした時のテンポ」に戻してくる。
 例えるならシフトダウンとアクセル・ワークを巧みに操ってスムーズに減速したような感覚。だから「ああ,ここで歌が入ってくるぞ」と思わせてくれる。実に素晴らしい。

 だからトニー・ベネットは幸運な男。読者の皆さんにも『コンプリート・レコーディングス』を聴いてほしい。史上最強の伴奏者と化したビル・エヴァンスの“上げ膳据え膳”の妙を聴いてほしい。ビル・エヴァンスは相当に“懐の深い”ジャズ・ピアニストである。

  DISC ONE
  ≪THE TONY BENNETT/BILL EVANS ALBUM
  01. YOUNG AND FOOLISH
  02. THE TOUCH OF YOUR LIPS
  03. SOME OTHER TIME
  04. WHEN IN ROME
  05. WE'LL BE TOGETHER AGAIN
  06. MY FOOLISH HEART
  07. WALTZ FOR DEBBY
  08. BUT BEAUTIFUL
  09. THE DAYS OF WINE AND ROSES
  ≪TOGETHER AGAIN
  10. THE BAD AND THE BEAUTIFUL
  11. LUCKY TO BE ME
  12. MAKE SOMEONE HAPPY
  13. YOU'RE NEARER
  14. A CHHILD IS BORN
  15. THE TWO LONELY PEOPLE
  16. YOU DON'T KNOW WHAT LOVE IS
  17. MAYBE SEPTEMBER
  18. LONELY GIRL
  19. YOU MUST BELIEVE IN SPRING
  ≪BONUS TRACKS FROM THE 1976 TOGETHER
  AGAIN SESSIONS

  20. WHO CAN I TURN TO?
  21. DREAM DANCING

  DISC TWO
  ≪ALTERNATE TAKES FROM THE 1975 THE TONY
  BENNETT/BILL EVANS ALBUM SESSIONS

  01. YOUNG AND FOOLISH (alternate, take 4)
  02. THE TOUCH OF YOUR LIPS (alternate, take 1)
  03. SOME OTHER TIME (alternate, take 7)
  04. WHEN IN ROMA (alternate, take 11)
  05. WALTZ FOR DEBBY (alternate, take 8)
  ≪ALTERNATE TAKES FROM THE 1976 TOGETHER
  AGAIN SESSIONS

  06. THE BAD AND THE BEAUTIFUL (alternate, take 1)
  07. THE BAD AND THE BEAUTIFUL (alternate, take 2)
  08. MAKE SOMEONE HAPPY (alternate, take 5)
  09. YOU'RE NEARER (alternate, take 9)
  10. A CHILD IS BORN (alternate, take 2)
  11. A CHILD IS BORN (alternate, take 7)
  12. THE TWO LONELY PEOPLE (alternate, take 5)
  13. YOU DON'T KNOW WHAT LOVE IS (alternate, take
     16)

  14. YOU DON'T KNOW WHAT LOVE IS (alternate, take
     18)

  15. MAYBE SEPTEMBER (alternate, take 5)
  16. MAYBE SEPTEMBER (alternate, take 8)
  17. LONELY GIRL (alternate, take 1)
  18. YOU MUST BELIEVE IN SPRING (alternate, take 1)
  19. YOU MUST BELIEVE IN SPRING (alternate, take 4)
  20. WHO CAN I TURN TO? (alternate, take 6)

(ファンタジー/FANTASY 2009年発売/UCCO-4052/3)
(CD2枚組)
(ライナーノーツ/ウィル・フリードウォルド)

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ビル・エヴァンス / ビル・エヴァンス・トリオ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード〜8. 18, 19674

BILL EVANS TRIO AT THE VILLAGE VANGUARD - AUGUST 18, 1967-1 どこで読んだのか覚えていないが,ビル・エヴァンスのお気に入りのドラマーフィリー・ジョー・ジョーンズだと書いてあったのを覚えている。
 なぜ覚えているのかというと「絶対に有り得ない」と瞬間的に思ったからだ。理論家のビル・エヴァンスが野生児のフィリー・ジョー・ジョーンズを求めているとは到底思えなかったから…。

 ビル・エヴァンストリオの歴代のドラマーの中には,確かにマーティ・モレルジョー・ラバーベラのような“暴れん坊”がいるのだが,フィリー・ジョー・ジョーンズは“暴れん坊”の質が違う。フィリー・ジョー・ジョーンズドラムではビル・エヴァンスがリリシズムを語ることはできないに違いない。

 論より証拠! 管理人はついに証拠を掴んだ! 『BILL EVANS TRIO AT THE VILLAGE VANGUARD−AUGUST 18,1967』(以下『ビル・エヴァンス・トリオ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード〜8. 18, 1967』)である! 聴いてみよ! 嬉々として楽しそうにピアノをドライブさせるビル・エヴァンスを!

 『ビル・エヴァンス・トリオ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード〜8. 18, 1967』にリリシズムはない。ハード・バップである。“バッパー”ビル・エヴァンスの降臨ライブである。この第一原因こそフィリー・ジョー・ジョーンズにある。

 名ドラマーフィリー・ジョー・ジョーンズが“バッパー”ビル・エヴァンスのツボを押し当てる。ギンギンなビル・エヴァンスが快調に飛ばす。ビル・エヴァンスが“ウィントン・ケリーのように”リズミカルに跳ねている。スインギーな名演だと思う。

 あっ,もしや本当にビル・エヴァンスフィリー・ジョー・ジョーンズがお気に入りだったのかもしれない…。
 しかしフィリー・ジョー・ジョーンズビル・エヴァンストリオのレギュラー・ドラマーに鎮座していたとするならば,最高に甘美な【マイ・フーリッシュ・ハート】〜【ワルツ・フォー・デビイ】への流れは完成しなかったわけであり…。

BILL EVANS TRIO AT THE VILLAGE VANGUARD - AUGUST 18, 1967-2 「何事もホドホドが丁度いい。何事もバランスが大事」。ビル・エヴァンスにとっての“ガス抜き”ドラマー=それがフィリー・ジョー・ジョーンズだったと思っている。

PS 「何事もホドホドが丁度いい。何事もバランスが大事」PART2。『ビル・エヴァンス・トリオ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード〜8. 18, 1967』のバランサーがベースエディ・ゴメス。いつもは弾きすぎるきらいのあるエディ・ゴメスが,ビル・エヴァンスのオン・ビートとフィリー・ジョー・ジョーンズのオフ・ビートの仲を取り持つ,真にベーシストらしい大仕事をしています。エディ・ゴメスの違った一面がモロに出ています。エディ・ゴメス・ファンにこそ『ビル・エヴァンス・トリオ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード〜8. 18, 1967』を聴いていただきたいと思います。

  DISC 1
  <1st Set>
  01. In a Sentimental Mood
  02. California, Here I Come
  03. You're Gonna Hear From Me
  04. Alfie
  05. Gone With the Wind
  06. Emily
  07. G Waltz
  08. Wrap Your Troubles in Dreams

  DISC 2
  <2nd Set>
  01. In a Sentimental Mood
  02. California, Here I Come
  03. You're Gonna Hear From Me
  04. Alfie
  05. Gone With the Wind
  06. Emily
  07. G Waltz
  08. Wrap Your Troubles in Dreams
  09. On Green Dolphin Street

  <3rd Set>
  10. G Waltz
  11. You're Gonna Hear From Me
  12. Wrap Your Troubles in Dreams
  13. Gone With the Wind
  14. Emily
  15. G Waltz

(ヴァーヴ/VERVE 2004年発売/UCCV-4113/4)
(CD2枚組)
(ライナーノーツ/杉田宏樹,ピーター・キープニュース)

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ビル・エヴァンス / ビル・エヴァンス・プレイズ・ビル・エヴァンス4

BILL EVANS PLAYS BILL EVANS-1 『BILL EANS PLAYS BILL EVANS』(以下『ビル・エヴァンス・プレイズ・ビル・エヴァンス』)は,ビル・エヴァンスの没後20周年に企画されたヴァーヴ時代のオリジナル・ベスト編集盤である。

 ビル・エヴァンスは多作家ではない。レパートリーの多くも有名スタンダードを生涯をかけて演奏し続けたものが多い。その意味で“作曲家”ビル・エヴァンスをテーマとした『ビル・エヴァンス・プレイズ・ビル・エヴァンス』は「企画賞」ものだと思う。
 
 ヴァーヴ限定だと分かってはいても,全曲オリジナルの『ビル・エヴァンス・プレイズ・ビル・エヴァンス』を通して聴くとビル・エヴァンスのインスピレーションの“迸り”が見えるような気がする。

 ビル・エヴァンスは演奏家としては内省的なプレイが特徴的だが,作曲は「外へ外へ」と向かっていく。一人思索にふけるというよりも誰かとの共演をイメージしたような作曲が多い。
 きっと新しいベーシストドラマーが自身のトリオに加入するたびに,その新メンバーの特質を念頭に置いて作曲したのではないか? あるいは亡きスコット・ラファロを思い浮かべながら…。

BILL EVANS PLAYS BILL EVANS-2 管理人の結論。『ビル・エヴァンス・プレイズ・ビル・エヴァンス批評

 ビル・エヴァンスは共演者に大いに影響されるタイプのピアニストにして,共演者に大いに影響されるタイプの作曲家である。新発見&再認識。

  01. ONE FOE HELEN
  02. FUNKALLERO
  03. ONLY CHILD
  04. ORBIT (UNLESS IT'S YOU)
  05. MY BELLS
  06. FUNNY MAN
  07. VERY EARLY
  08. WALKIN' UP
  09. N.Y.C.'S NO LARK
  10. G WALTZ
  11. TIME OUT FOR CHRIS
  12. THESE THINGS CALLED CHANGES
  13. A SIMPLE MATTER OF CONVICTION
  14. TIME REMEMBERED
  15. SOLO - IN MEMORY OF HIS FATHER, HARRY L.
     EVANS, 1891-1966; PROLOGUE・IMPROVISATION
     ON TWO THEMES・STORY LINE・TURN OUT THE
     STARS・EPILOGUE


(ヴァーヴ/VERVE 2000年発売/UCCV-4001)
(ライナーノーツ/杉田宏樹)

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ビル・エヴァンス / パリ・コンサート 25

THE PARIS CONCERT EDITION TWO-1 ビル・エヴァンスラスト・トリオとは「攻める」ビル・エヴァンスと「受ける」マーク・ジョンソンと「流す」ジョー・ラバーベラのことである。

 『THE PARIS CONCERT EDITION TWO』(以下『パリ・コンサート 2』)の主役は,いつにも増してアグレッシブなビル・エヴァンスジャズ・ピアノ
 ピアノの音色がクリアーに澄み切っており,何か「悟り」にも似たものを感じてしまう。「もう迷うことはない。力いっぱいやるだけだ」。死への決意を固めたかピアノが天国へ向かって飛翔する。

 そう。ビル・エヴァンスラスト・トリオで,ついに理想の音楽へと辿り着いたのだと思う。『パリ・コンサート 2』における“ためらいのない”ピアノ・タッチが澄み切った音色に表われている。「迷いのない」アドリブに表われている。
 ゆえに『パリ・コンサート 2』を聴き終えると,いつでも爽やかになる。ビル・エヴァンスジャズ・ピアノが管理人の邪念を全て洗い流してくれる思いがするのだ。

 ビル・エヴァンスと来るとスタジオ録音でのムッツリ・スケベな印象が強いのだが,管理人はビル・エヴァンスを聴き始めた友人に,マイルス・デイビスと同様,スタジオ盤とライブ盤は別物として切り分けて聴いてみることを奨めている。
 ビル・エヴァンスライブ盤はどれもスケベ丸出しの本性丸出し! 特に晩年は本能だけで演奏している雰囲気が有る!

 『パリ・コンサート 2』のハイライト=【NARDIS】を聴いてみてほしい。【NARDIS】もビル・エヴァンス“生涯の愛奏曲”の一つであり,初演の『EXPLORATIONS』からどんどん演奏時間が長くなっていたのだが『パリ・コンサート 2』ではついに17分の超長尺! しかもテンポが早回しと来ている! もはや【NARDIS】特有の陰影などかき消された“バップ調”【NARDIS】の白眉なこと!

 ピアノソロで始まり,徐々に緊張感がエスカレートする激しく自由奔放な表現の後に顔を出す,三者一体となってのテーマが提示される瞬間の高揚感!その後始まる“饒舌な”ベースソロと“豪快な”ドラムソロビル・エヴァンスピアノソロへのアンサー・フレーズがイッちゃっている! この異常な盛り上がりはピアノ・トリオの演奏レベルを凌駕した「気合注入型」の破壊力! 相当に凄い&迫力満点な“KO”【NARDIS】!

THE PARIS CONCERT EDITION TWO-2 苦しみながらも自己の音楽を磨くことを怠らなかったビル・エヴァンス。いいや,苦しみから逃れるためにピアノに向かわずにはいられなかったビル・エヴァンスビル・エヴァンスが最晩年に残したメッセージは深く美しい。

 ビル・エヴァンスにとってアドリブとは何だったか? 幻想的なのに一切の抽象性を排除したアドリブ。そう。ビル・エヴァンスにとってアドリブだけが「生きている証し」だったのだと思う。

 ビル・エヴァンスのメッセージを「的確に受け,的確に流した」マーク・ジョンソンジョー・ラバーベラ擁するラスト・トリオ。こんなに深い部分でビル・エヴァンスと共鳴できたベーシストドラマーは他にいない。
 管理人は『パリ・コンサート 1』と『パリ・コンサート 2』に特別な位置を与えている。ビル・エヴァンスがそうであったように…。

 『THE PARIS CONCERT』録音の10ヶ月後,ビル・エヴァンスは永眠する。死因は「肝硬変,気管支炎,出血性潰瘍」だったとされているが,果たして直接の死因は「歴史上一番時間をかけた自殺」である。

  01. Re: Person I Knew
  02. Gary's Theme
  03. Letter To Evan
  04. 34 Skidoo
  05. Laurie
  06. Nardis

(エレクトラ/ELEKTRA 1984年発売/WPCR-75517)
(ライナーノーツ/杉田宏樹)

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ビル・エヴァンス / パリ・コンサート 15

THE PARIS CONCERT EDITION ONE-1 ピアノビル・エヴァンスベースマーク・ジョンソンドラムジョー・ラバーベラによる,文字通り最後のビル・エヴァンストリオラスト・トリオ

 ラスト・トリオラスト・トリオたる所以。それこそビル・エヴァンスの死である。死を目前に控えたステージだからこそ,ここまで我武者羅な演奏になったのだろう。こんな演奏をもっともっと聴きたい。でもそれだとこんな熱演にはなっていない。
 そう。ラスト・トリオの本質は“幸運と不運が同居した”複雑なテキスチャーなのである。

 結論から書こう。ラスト・トリオは,これまでの“栄光の”ビル・エヴァンストリオのどれとも異なっている。従来の延長線上では語れない,管理人的には「新種の」ビル・エヴァンストリオの大登場に聴こえる。
 『THE PARIS CONCERT EDITION ONE』(以下『パリ・コンサート 1』)に耳を傾けてみてほしい。こんなに創造的なピアノ・トリオはなかなか聴けやしないと思う。“どう猛さと気品高さ”が混在しているのだ。

 『パリ・コンサート 1』は,静かなバラード3連投で幕を開ける。いかにもCDジャケットのイメージ通りの演奏である。
 しかし,4曲目の【MY ROMANCE】が静寂をブチ破る。ラスト・トリオの“本性丸出し”のステージが始まった。もう誰もラスト・トリオの突進を止めることなどできない。
 ラスト・トリオスイングしながらワルツを舞う…。この強力な推進力に宇宙の果てまで運ばれてしまう…。素晴らしく密度の高いインタープレイだけが聴こえてくる…。

 いいや,聴こえてくるのはビル・エヴァンスの圧倒的な自信である。『パリ・コンサート 1』は,基本ビル・エヴァンスの独壇場。
 ビル・エヴァンスが思うがままにピアノを打ち鳴らし,そのタッチにしなやかに反応するベースドラムの名人芸という構図。

 『パリ・コンサート 1』におけるビル・エヴァンスは,自分自身のジャズ・ピアノを心底楽しんでいる。こんなビル・エヴァンストリオは過去に例がない。
 従来,ビル・エヴァンスは真剣にベースドラムの音を聴いてきたピアニストであった。
 しかしラスト・トリオでのビル・エヴァンスピアノベースドラムの手に“委ねている”。
 そう。自身の音楽の理解者としてマーク・ジョンソンジョー・ラバーベラを絶対的に信頼しているのだ。繊細さも力強さをも…。

THE PARIS CONCERT EDITION ONE-2 マーク・ジョンソンジョー・ラバーベラビル・エヴァンスピアノにつける「新種のアンサンブル」が評価されない不運。

 原因は『YOU MUST BELIEVE IN SPRING』でピアノトリオを究めたことから来る『WE WILL MEET AGAIN』での“とばっちり”にある。どうしてビル・エヴァンスの生前にラスト・トリオのアルバムがリリースされなかったのか?
 加えて,リスナーの耳が「斬新なアンサンブル」に慣れていないという不運が重なる。『パリ・コンサート 1』のインタープレイは超高度。益々モダンなアプローチであり,テンポとダイナミクスの振り幅が激しい。
 さらにはビル・エヴァンスに“叩き上げられ”急成長したマーク・ジョンソンジョー・ラバーベラとは反対に人生の下り坂に突入しているビル・エヴァンスの体内時計の不運。
 この三重苦がラスト・トリオの不運。

 しかし「新種のアンサンブル」がビル・エヴァンスの死と共に消え去るかと思われたタイミングでリリース・ラッシュされたビル・エヴァンスの「追悼盤」。特にブートまがいのライブ盤のリリース・ラッシュがラスト・トリオの音源をエヴァンス・マニアの耳に届けることになる。
 そのタイミングでビル・エヴァンスによるラスト・トリオは「スコット・ラファロポール・モチアンとの時代に比肩しうるピアノトリオ」発言が広まって…。
 これがラスト・トリオの幸運。いいや,実力である。

 紆余曲折。“幸運と不運が同居した”複雑なテキスチャーの『パリ・コンサート 1』に愛着を感じる私…。

  01. I Do It For Your Love
  02. Quiet Now
  03. Noelle's Theme
  04. My Romance
  05. I Loves You Porgy
  06. Up With The Lark
  07. All Mine (Minha)
  08. Beautiful Love
  09. Excerpts OF A Conversation Between Bill And
     Harry Evans


(エレクトラ/ELEKTRA 1983年発売/WPCR-75516)
(ライナーノーツ/杉田宏樹)

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ビル・エヴァンス / リ・パーソン・アイ・ニュー4

RE:PERSON I KNEW-1 ビル・エヴァンスの死後,追悼盤としてリリースされた『RE:PERSON I KNEW』(以下『リ・パーソン・アイ・ニュー』)は既発公式盤=『シンス・ウィ・メット』と対を成す1974年1月に行なわれた“聖地”「ヴィレッジ・ヴァンガード」におけるライブ盤。

 そう。『シンス・ウィ・メット』と『リ・パーソン・アイ・ニュー』は1974年盤『サンディ・アット・ザ・ビレッジ・バンガード』と『ワルツ・フォー・デビイ』と言い切ってもよい。
 「ヴィレッジ・ヴァンガード」という同じ舞台でスコット・ラファロポール・モチアン相手に繰り広げられたインタープレイが,今度はエディ・ゴメスマーティ・モレル相手に繰り広げられている。
 『シンス・ウィ・メット』と『リ・パーソン・アイ・ニュー』への低評価は「時代錯誤」なだけであろう。

 『サンディ・アット・ザ・ビレッジ・バンガード』と『ワルツ・フォー・デビイ』がスコット・ラファロポール・モチアンラストライブであったと同じように『シンス・ウィ・メット』と『リ・パーソン・アイ・ニュー』もエディ・ゴメスマーティ・モレルラストライブ
 つまり,その時代のビル・エヴァンストリオの“完成形”が鳴っている。トリオとして「何をすばきか,何をすべきでないか」の約束事が熟成されている。それでいて3人が対等。久しぶりにメンバーの力関係が拮抗したトリオで聴き応えがある。

 『シンス・ウィ・メット』は“叙情派”としてのビル・エヴァンスの個性が色濃く表われたセットリストであったが『リ・パーソン・アイ・ニュー』は“エディ・ゴメスマーティ・モレル”の個性が色濃く表われたセットリストである。
 エディ・ゴメスも個性的な名演を繰り広げているが(エディ・ゴメスは在籍期間が長いという理由で)管理人は『リ・パーソン・アイ・ニュー』の主役にマーティ・モレルドラムを指名する。

 基本,マーティ・モレルドラムはやたらと鼻に突く。せっかちで出しゃばりすぎるきらいがある。しかしそれはスタジオ盤でのお話。ライブにおけるマーティ・モレルドラムは神!
 ポール・モチアンとは“真逆のアプローチ”でビル・エヴァンスの演奏を後押ししている。ドラムでイマジネーションを示している。
 強烈なシンバルと繊細なブラシ。神の手によるシンバル・ワークが並はずれて多弁なテクニシャン=エディ・ゴメスとシンクロした瞬間の快感はライブならではの醍醐味だと思う。

RE:PERSON I KNEW-2 ただし管理人はベタボメはできない。『リ・パーソン・アイ・ニュー』におけるビル・エヴァンストリオは「テクニック的に」は最高レベルだが「ビル・エヴァンス的に」どうかというと“らしさ”の薄い“第三次トリオ”と表現するしかないのかなぁ。

 エディ・ゴメスマーティ・モレルは2人とも「フォルテ」「フォルテシモ」であり,ビル・エヴァンスが「フォルテ」「フォルテシモ」の場合はスコット・ラファロポール・モチアンと同格であるが,ビル・エヴァンスは「ピアノ」「メゾピアノ」の達人でもあるわけだし…。

 とはいえ『シンス・ウィ・メット』と『リ・パーソン・アイ・ニュー』を『サンディ・アット・ザ・ビレッジ・バンガード』と『ワルツ・フォー・デビイ』より上だと主張するエヴァンス・ファンがいたとしても異論はない。高度なピアノトリオを演っている。単純に好みの問題だと思う。

  01. RE: PERSON I KNEW
  02. SUGAR PLUM
  03. ALFIE
  04. T. T. T.
  05. Except from DOLPHIN DANCE〜VERY EARLY
  06. 34 SKIDOO
  07. EMILY
  08. ARE YOU ALL THE THINGS

(ファンタジー/FANTASY 1981年発売/VICJ-60175)
(ライナーノーツ/佐藤秀樹)

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ビル・エヴァンス / ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング5

YOU MUST BELIEVE IN SPRING-1 「歴史上一番時間をかけた自殺」を遂げたビル・エヴァンスによる“死への3部作”=『I WILL SAY GOODBYE』『YOU MUST BELIEVE IN SPRING』『WE WILL MEET AGAIN』。

 『I WILL SAY GOODBYE』では,棺桶に片足突っ込んでいたビル・エヴァンスが『YOU MUST BELIEVE IN SPRING』(以下『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』)で死んでしまった。ビル・エヴァンスが“灰”になってしまった。
 そう。『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』におけるビル・エヴァンスのイメージは,矢吹丈に勝利した直後リング上で死を遂げた力石徹。「真っ白な灰になる」まで演奏しピアノと共に“燃え尽きてしまった”。

 芸術とは真に残酷なものだと思う。『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』のレコーディングにおけるビル・エヴァンスの「精神的・地獄の苦しみ」があればこそ,稀にみる美しさにつながっている。“一切の邪念を超越した者だけだ醸し出せる美しさ”がここにある。凛としたピアノなのだ。

 ビル・エヴァンスの「命と引き換えに」残された『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』に色はない。あるのは濃淡のみ。白と黒を“無限に散りばめ”全ての音世界が表現されている。そう。「水墨画」なのである。アルバム・ジャケットのように…。

 『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』におけるビル・エヴァンスの筆使い=指使いは「一筆書き」である。つまりは出来上がりをイメージしながら濃淡のみでデザインする。跳ねや止めでの失敗をも受け入れ,ひたすら前へ前へと筆を進ませる。

 要は「一筆書き」のリズムである。ビル・エヴァンスピアノはリズムなのである。エディ・ゴメスベースビル・エヴァンスが乗り移り,エリオット・ジグモンドドラムビル・エヴァンスが乗り移っている。
 ビル・エヴァンスを聴いてキース・ジャレットを感じることはないのだが『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』ばかりはキース・ジャレットが乗り移っているようにも聞こえるから不思議だ。

 自分でも『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』だけに,なぜこれ程の愛情を抱いてしまうのかが分からないのだが,理由はきっと単純に「ビル・エヴァンスキース・ジャレットのように聴こえる」からなのだろう。
 そう。『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』は,ピアノベースドラムも“ワンマンな”ビル・エヴァンスプレイズ

 すでに気持ちは離れ離れになっていたピアノビル・エヴァンスベースエディ・ゴメスドラムエリオット・ジグムンドによる“レギュラー”トリオの3人だったが,この時ばかりは“潜在意識で語り合う”様が感動を誘う。ただただ川の流れのような3人の自然体な白と黒だけの会話がエモーショナル。

 音数は少なく力強さも感じられない。一音一音がまるで現生との別れを惜しむかのように響いている。ビル・エヴァンスにより,愛おしむように弾き放たれたピアノは今やスピリチュアルの世界に存在している。形あるものに違いないのに「無」なのである。感じるままにまどろんでいる。アルバム・ジャケットのように…。

YOU MUST BELIEVE IN SPRING-2 真のビル・エヴァンス・マニアは『ワルツ・フォー・デビイ』とは言わないはずである。
 ビル・エヴァンスの“最高傑作”は『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』である。

 管理人は,常日頃『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』を聴くことはない。
 ビル・エヴァンスを聴くという行為,それはすなわち【PEACE PIECE】を聴くことであり「リバーサイド4部作」を聴くことであるのだから…。

 しかし,いつの日か必ず訪れる死の最期の瞬間に聴きたいビル・エヴァンス。それは【PEACE PIECE】でも「リバーサイド4部作」でもなく『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』しか有り得ない。『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』は,聴き終わった後,次になんにも聴けなくなってしまうのだから…。

 生への執着も力尽き,家族の今後だけを心配しながら,自分の力ではどうしようもできない絶望の瞬間。管理人もビル・エヴァンスに,そして『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』に“すがりつこう”と思っている。

 人生の真冬の時期にあって「春の訪れを信じる」=完全に仮死した状態のまま,遺灰で「水墨画」を描いたビル・エヴァンスの復活の希望=『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』!

  01. B Minor Waltz (For Ellaine)
  02. You Must Believe In Spring
  03. Gary's Theme
  04. We Will Meet Again (For Harry)
  05. The Peacocks
  06. Sometime Ago
  07. Theme From M*A*S*H* (aka Suicide Is Painless)
  08. Without A Song
  09. Freddie Freeloader
  10. All Of You

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1981年発売/WPCR-13176)
(ライナーノーツ/中山康樹)
(☆SHM−CD仕様)
(紙ジャケット仕様)

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ビル・エヴァンス / ウィ・ウィル・ミート・アゲイン4

WE WILL MEET AGAIN-1 「歴史上一番時間をかけた自殺」を遂げたビル・エヴァンスによる“死への3部作”=『I WILL SAY GOODBYE』『YOU MUST BELIEVE IN SPRING』『WE WILL MEET AGAIN』。

 録音順から行けば『I WILL SAY GOODBYE』『YOU MUST BELIEVE IN SPRING』『WE WILL MEET AGAIN』の順であるが,リリースされたは『I WILL SAY GOODBYE』『WE WILL MEET AGAIN』『YOU MUST BELIEVE IN SPRING』の順となる。
 そう。『WE WILL MEET AGAIN』(以下『ウィ・ウィル・ミート・アゲイン』)こそが,ビル・エヴァンス「生涯最期のスタジオ録音盤」なのである。

 『ウィ・ウィル・ミート・アゲイン』は,ビル・エヴァンストリオ+2管のクインテット編成。余りにも有名なベースマーク・ジョンソンドラムジョー・ラバーベラを擁する通称“ラスト・トリオ”によるスタジオ録音は残されていない。

 なぜビル・エヴァンスラスト・トリオでのスタジオ録音を吹き込まなかったのか? その理由こそラスト・トリオだからこそ,となるであろう。
 ビル・エヴァンスラスト・トリオに絶対の自信があったがゆえに,敢えて“人生の宿題”であったクインテット編成での名盤を残そうと考えたように思う。

 ビル・エヴァンスの名立たる名盤は全てソロデュオトリオ・フォーマット。クインテット盤は『INTERPLAY』があるくらいだが『INTERPLAY』は「水準レベルな異色盤」にすぎなかった。
 ビル・エヴァンスの胸の内でも,前作『YOU MUST BELIEVE IN SPRING』に確かな手応えを感じていたのかもしれない。
 ラスト・トリオを以てしても,恐らくは『YOU MUST BELIEVE IN SPRING』は超えられない。ビル・エヴァンス“栄光の”ピアノ・トリオは『YOU MUST BELIEVE IN SPRING』で終着駅へと辿り着いた。『YOU MUST BELIEVE IN SPRING』でビル・エヴァンスピアノ・トリオは“灰”となったのだ。

 “死への3部作”の最終作=『ウィ・ウィル・ミート・アゲイン』は,廃人と化したビル・エヴァンスが,最期のエネルギーを爆発させて死へ向かう“ろうそくの炎”そのものである。消え去る前のほんの一瞬,ワッと燃え盛る“死の直前の輝き”である。

 『YOU MUST BELIEVE IN SPRING』が「水墨画」であるならば『ウィ・ウィル・ミート・アゲイン』は「カラー写真」である。ビル・エヴァンスの「生命力」をどうにもこうにも感じてしまうのである。大袈裟に言えば,このクインテットが発散するエネルギーは,全エヴァンス作品中“最強レベル”に達している。ビル・エヴァンスが“躍動的な創造力”を完全に取り戻している。

WE WILL MEET AGAIN-2 ゆえに『ウィ・ウィル・ミート・アゲイン』におけるビル・エヴァンスが“ノリノリ”である。とにかく軽快でバリバリなハード・バップ。死を目前にして人生の最期を“謳歌”してみせている。ビル・エヴァンスの人生は最後の最後まで“チャレンジ”であった。

 海と空を臨む青の遺跡風のジャケットは,門の向こう側が清浄な天国で手前側が現生のようである。ビル・エヴァンスの天国へのチャレンジは『ウィ・ウィル・ミート・アゲイン』で完了した。
 「私はソロデュオトリオだけのピアニストではないよ。クインテットもいいものがあるんだよ」。そう言い残してビル・エヴァンスは「天国への門」を越えてしまうのであった…。

 しかし,しかしビル・エヴァンスさん,忘れ物がありますよ〜。『WE WILL MEET AGAIN』の真実は残念ながら『INTERPLAY 2』でした。
 今すぐ出でよ!表われよ! ビル・エヴァンスの生まれ変わりであるエヴァンス派の猛者たちよ! 『WE WILL MEET AGAIN 2』を制作せよ!

  01. COMRADE CONRAD
  02. LAURIE
  03. BILL'S HIT TUNE
  04. FOR ALL WE KNOW (WE MAY NEVER MEET
     AGAIN)

  05. FIVE
  06. ONLY CHILD
  07. PERI'S SCOPE
  08. WE WILL MEET AGAIN

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1980年発売/WPCR-13178)
(ライナーノーツ/杉田宏樹)
(☆SHM−CD仕様)
(紙ジャケット仕様)

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ビル・エヴァンス / アイ・ウィル・セイ・グッドバイ5

I WILL SAY GOODBYE-1 「歴史上一番時間をかけた自殺」を遂げたビル・エヴァンスによる“死への3部作”=『I WILL SAY GOODBYE』『YOU MUST BELIEVE IN SPRING』『WE WILL MEET AGAIN』。

 『I WILL SAY GOODBYE』(以下『アイ・ウィル・セイ・グッドバイ』)の“GOODBYE”が,果たして誰に向けられた言葉なのかは定かでないが『アイ・ウィル・セイ・グッドバイ』は,死を明確に意識したビル・エヴァンスからのダイニング・メッセージである。そう管理人が強く思う理由がある。

 CD時代以後『アイ・ウィル・セイ・グッドバイ』を聴いたビル・エヴァンス・ファンには分からないかもしれないが,管理人は『アイ・ウィル・セイ・グッドバイ』を最初にLPで買った。
 昨今の発掘音源時代であれば特に珍しくもない別テイクであるが,非常に珍しいこととして『アイ・ウィル・セイ・グッドバイ』にはA面の1曲目に【I WILL SAY GOODBYE】が,そしてB面の1曲目に【I WILL SAY GOODBYE】の【TAKE 2】が入っていた。そう。敢えて【TAKE 2】もオリジナル音源の一部としての発表であった。

 管理人は2つの【I WILL SAY GOODBYE】の存在に,ビル・エヴァンスからのダイニング・メッセージを強く意識する。
 なぜなら『アイ・ウィル・セイ・グッドバイ』のA面をかけてもB面をかけても,リスナーは必ず【I WILL SAY GOODBYE】に耳を傾ける“仕掛け”になっている。
 つまり,ビル・エヴァンスが『アイ・ウィル・セイ・グッドバイ』で伝えたかった“魂の言葉”は2つの【I WILL SAY GOODBYE】の演奏の中に込められていると思うのだ。

 【I WILL SAY GOODBYE】で響くビル・エヴァンスピアノが“孤独”である。事実,長年の女房役であったエディ・ゴメスとの“すき間風”を感じさせる。
 それ位【I WILL SAY GOODBYE】におけるビル・エヴァンスは今まで以上に“内省的なピアノ”を弾きまくる。

 そう。ビル・エヴァンスからの真のダイニング・メッセージは,アルバム・タイトル=『アイ・ウィル・セイ・グッドバイ』でも,トラック名=【I WILL SAY GOODBYE】でもない。全ては言葉ではない。ビル・エヴァンスジャズ・ピアノの“孤高の美しさ”といったら…。
 『アイ・ウィル・セイ・グッドバイ』の底流に流れる淋しさや,触れれば壊れてしまいそうな“繊細な響き”が“孤独”なのである。ビル・エヴァンスはそんなどうしようもない“孤独感”から逃避するために鍵盤に向かっている。そんな趣きを感じるのである。

I WILL SAY GOODBYE-2 そう。ビル・エヴァンスピアノから牙が抜かれている。いつもの勝ち気で男勝りで攻撃的な硬質のピアノ・タッチが全て“丸味”を帯びている。粗が削られ角バリが取られている。

 ビル・エヴァンスピアノが最高度に美しい。こんな皮肉な結果があってよいものだろうか? 『アイ・ウィル・セイ・グッドバイ』の全ては,生へのやるせなからピアノに向かうしかなかったビル・エヴァンスの“孤独”な演奏に尽きる。

 ビル・エヴァンスさん,あなたの居場所は,誰にも邪魔されない居場所はピアノのレギュラー・シートでした。ピアノだけは決してあなたを裏切ったりしない。だから…。

  01. I WILL SAY GOODBYE
  02. DOLPHIN DANCE
  03. SEASCAPE
  04. PEAU DOUCE
  05. NOBODY ELSE BUT ME
  06. I WILL SAY GOODBYE (TAKE 2)
  07. THE OPENER
  08. QUIET LIGHT
  09. A HOUSE IS NOT A HOME
  10. ORSON'S THEME

(ファンタジー/FANTASY 1980年発売/UCCO-90131)
(ライナーノーツ/岡崎正通)
(☆SHM−CD仕様)
(紙ジャケット仕様)

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ビル・エヴァンス / アフィニティ5

AFFINITY-1 ピアノビル・エヴァンスハーモニカトゥーツ・シールマンスベースマーク・ジョンソンドラムエリオット・ジグムンドサックスフルートラリー・シュナイダーの5人が様々な編成で演奏した『AFFINITY』(以下『アフィニティ』)であるが,印象としてはピアノハーモニカによる“デュエット”のようである。

 それくらい,ビル・エヴァンストゥーツ・シールマンスインタープレイが突出している。叙情性や情感溢れる素朴な音楽イメージを吹き飛ばす,硬いピアノと疾走するハーモニカによる“男の美学”。聞き流してもよし&聴き込んでもよし=「聴き所の玉手箱」!
 そう。『アフィニティ』はジャズの全史を見渡しても稀にみる“異色盤”にして大名盤なのである。

 『アフィニティ』の成功の理由は「1にシールマンス,2にエヴァンス」である。トゥーツ・シールマンスハーモニカビル・エヴァンス“お得意の”リリシズムをかっさらう! 筆舌に尽くし難い哀愁を伴ったハーモニカが紡ぎ出すリリシズムが本家との共演で深みを帯びている。

 対する“お株を奪われた形”のビル・エヴァンスが一歩も引いていない。いいや,いつも以上のリリシズム! ビル・エヴァンスの内に宿る秘められていたリリシズムが,トゥーツ・シールマンスの個性によって外界へと引き出されている。
 ビル・エヴァンストゥーツ・シールマンスの「ロマン主義」が“爆発した”インタープレイがここにある。事実,他の3人の演奏も素晴らしいものだが,先に述べた通り記憶には残らない。ラリー・シュナイダーの【酒バラ】だけは存在感があるかなぁ。

 それにしても「トゥーツ・シールマンス効果」は絶大である。基本ビル・エヴァンスはBGMにはならないのに『アフィニティ』だけはウィスキーをひっかけながら聞いても様になる。ボーッと聞き流してもグッと来る。緩く気楽なジャズ・アルバムの最高峰。

 『アフィニティ』の真骨頂は“癒し”であり「涙」である。ボーッと無防備にBGMとして流していると,いつしか様々な思い出が浮かび上がって「涙」が無意識のうちに“零れ落ちて”しまう。目からの「涙」ではない。心から「涙」が零れ落ちてくる。ワ〜っではなく“1粒だけがポロリ”な感じ。
 『アフィニティ』を聴き終える頃には,いろいろな心のしがらみがすっかり洗い流されている。聴いて良かった。このジンワリと温かな感覚はそう滅多に体験できるものではない。“ジャズを超えた”ジャズ・アルバムの最高峰。

 思うに,ビル・エヴァンスも管理人と同様,トゥーツ・シールマンスハーモニカを聞き流しての録音だったように思う。無心でピアノを弾いたのだと思う。メロディーがゆったりと響く雄大でロマンティックなピアノを弾いている。
 当然タッチは超強烈なのだがいつものピアノ・トリオとは何かが違う。これがトゥーツ・シールマンスハーモニカに癒された“素の”ビル・エヴァンスなのかもしれない。

AFFINITY-2 そう。『アフィニティ』に録音された“素の”ビル・エヴァンス
 ボーッと聞き流せてしまうしても,ビル・エヴァンスエレピを弾いているとしても『アフィニティ』は,巷で語られているようなフュージョン・アルバムなどでは断じてない。

 『アフィニティ』にジャズを感じないファンは,ビル・エヴァンスピアノを聴かずに,よく知られたポップ・チューンのメロディーを聴いているからであろう。
 ズバリ『アフィニティ』の官能の美メロの聴き所は,メジャーとマイナーを行き来する瞬間の“間”にありますから〜。
 トゥーツ・シールマンスの「覚醒を産み出す」クリエイトした大仕事が超最高〜。一音で世界旅行〜。一音でタイム・トリップ〜。

  01. I Do It For Your Love
  02. Sno' Peas
  03. This Is All I Ask
  04. The Days Of Wine And Roses
  05. Jesus' Last Ballad
  06. Tomato Kiss
  07. The Other Side Of Midnight (Noelle's Theme)
  08. Body & Soul

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1979年発売/WPCR-13177)
(紙ジャケット仕様)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/中山康樹)

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ビル・エヴァンス / アローン(アゲイン)5

ALONE(AGAIN)-1 ビル・エヴァンスと来ればピアノ・トリオ・フォーマットである。
 しかしビル・エヴァンスの特徴である“内省的なハーモニー”を高く評価するファンとしては,ビル・エヴァンスの持ち味が最大限生かされるソロ・ピアノ・フォーマットを聴いてみたい。そんな願いが自然と湧き上がるのである。

 エヴァンスからの答えは存在する。『アローン』ではない。『ALONE AGAIN』(以下『アローン(アゲイン)』)を聴け! このこぼれ落ちそうなリリシズム!
 これこそがビル・エヴァンスの個性。ピアノ・トリオで聴こえるビル・エヴァンスソロ・ピアノでも聴こえてくる。ついに念願の大満足なソロ・ピアノ作が完成したのだ。

 駄盤『アローン』から名盤アローン(アゲイン)』までに7年。この7年間でビル・エヴァンスピアノが変化している。キーワードは『対話』である。『自己との対話』である。

 ビル・エヴァンス名盤を産み落とす時には,いつでもインタープレイ=音楽で対話が出来た時である。つまりビル・エヴァンスピアノでのメッセージを受け止めてくれる共演者,ビル・エヴァンスが全幅の信頼を置いて身を委ねることができる共演者が必要であった。
 ソロ・ピアノでは話相手がいない。『アローン』でのビル・エヴァンスは人ではなくピアノに語りかけていた。そして『アローン(アゲイン)』ではピアノではなく“もう一人の自分”に語りかけている。だから『自己との対話』なのである。

 ビル・エヴァンスにとって『自己との対話』はアルバム『自己との対話』で経験済。
 そう。真の意味で『自己との対話』が完成したのはアルバム『自己との対話』ではなく『アローン(アゲイン)』だと思う。ビル・エヴァンスは『アローン(アゲイン)』でピアノを「客観視しつつも直視する術」を獲得したのだと思う。

ALONE(AGAIN)-2 思い起こせばビル・エヴァンスの最高傑作は「リバーサイド4部作」ではなく『エヴリバディ・ディグズ・ビル・エヴァンス』収録の【PEACE PIECE】である。
 あの,はっきりとは告げられぬ,形のない,なまめかしい,当時のビル・エヴァンスの病的な美しさ,官能的なリリシズムの極致を,あやうくピンでとめることに成功した決定的名演ビル・エヴァンス本人をして“再演不能”と言われている。

 『アローン(アゲイン)』の儚さは【PEACE PIECE】の儚さに通じている。『アローン(アゲイン)』の儚さはビル・エヴァンスの悲しみである。
 共演者との「対話」もなしに,偶然ではなく意識的に自己完結する術を身に着けてしまった悲しみである。音楽を創造する喜びを共有できる相手がいないことの悲しみである。
 『アローン(アゲイン)』が,時に丸く温かいフレージングで満ちているのはその反動なのであろう。

 偶然ではなく意識的に【PEACE PIECE】が形を変えて再演されてしまった。そう。『アローン(アゲイン)』によって…。
 『アローン(アゲイン)』を聴け! このこぼれ落ちそうなリリシズムを聴け! お願いだから聴いてくれ!

  01. THE TOUCH OF YOUR LIPS
  02. IN YOUR OWN SWEET WAY
  03. MAKE SOMEONE HAPPY
  04. WHAT KIND OF FOOL AM I
  05. PEOPLE
  06. ALL OF YOU
  07. SINCE WE MET
  08. MEDLEY:
    BUT NOT FOR ME〜ISN'T IT ROMANTIC〜THE
    OPENER


(ファンタジー/FANTASY 1977年発売/VICJ-60179)
(ライナーノーツ/青木和富)

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ビル・エヴァンス / アローン3

ALONE-1 ビル・エヴァンスが好きだ。しかし熱狂的という訳ではない。どこかで冷めたもう一人の自分がいる。無意識に距離を置いてしまうもう一人の自分がいる。
 理由は分かっている。『ALONE』(以下『アローン』)である。『アローン(アゲイン)』は大好きなのに『アローン』が全くなのだ。

 これは管理人の欠点だと自覚している。それはピアニストの優劣をピアノ・ソロで判別してしまうクセ。ダメなことだと分かっているのだが,もうすでに自分の中でのピアニストの試金石=判断基準となっている。もはや取り除くことも動かすこともできないのだからどうしようもない。

 ビル・エヴァンスにとって不運だったのは,生涯中にピアノ・ソロを3枚しか制作しなかったことだ。しかもその内の1枚『EASY TO LOVE』は寄せ集めの録音集ゆえ実質2枚=『アローン』と『アローン(アゲイン)』。
 そして管理人は『アローン』を最初に聴いた。名盤アローン(アゲイン)』が先だったら良かったと思う。『アローン』にガッカリして『アローン(アゲイン)』には長らく興味を失ったままだった。

 駄盤の『アローン』。世評的にもビル・エヴァンスソロ・ピアノと来れば完全ピアノ・ソロのよりも一人多重録音とかエレピを指して用いられる。
 お〜っと,何だかズタボロに書いてしまっているが『アローン』の出来は水準以上。かのグラミー賞まで受賞している。

 しか〜し,思い返せばこのグラミー受賞=戦犯のキーワード。
 『アローン』の演奏曲目は,ジャズスタンダードというよりポップな有名既存曲ばかり。ビル・エヴァンスソロ・ピアノに難解なところはない。
 そう。『アローン』は,ビル・エヴァンス一流の弾きこなし&調理法が受けたのだ。所謂,リリシズムのイマジネーション満開である。だから大衆に受け入れられたのだ。

 しかし,どんなに大衆に受け入れられようとも,管理人が求めるピアノ・ソロは『アローン』の中にはみつからなかった。管理人が求めるビル・エヴァンスは『アローン』の中にはいなかった。

 一言でいえば『アローン』のピアノ・ソロの世界観に入り込むことができなかった。音の濃度がクリアーすぎてダイレクトすぎる“非ジャズ”に嫌悪感を抱いてしまった。
 これはビル・エヴァンスの意図とは無関係に録音のせいかもしれない。『アローン』のピアノの残響音は「木端微塵なドライ音」。

ALONE-2 そう。生涯のメロディ弾きのビル・エヴァンスに,勝手にキース・ジャレットやらチック・コリアやらの「インプロビゼーションの開祖」に期待を膨らませすぎた分,ガッカリ度が高かった。

 駄盤の『アローン』。それは管理人の大きな勘違い。ただそれだけ。だけど刷り込みがインプット完了なので駄盤。ただそれだけ。頭真っ白にして聴いた『アローン』の続編『アローン(アゲイン)』は大好きなのだから,期待が裏切られた時のショックの大きさだけなのだろう。

 でも,もはや『アローン』への悪感情は修復不能。不運である。管理人は『アローン』を“ビル・エヴァンスの不運”と呼んでいる。なんのこっちゃ〜。

  01. HERE'S THAT RAINY DAY
  02. A TIME FOR LOVE
  03. MIDNIGHT MOOD
  04. ON A CLEAR DAY (YOU CAN SEE FOREVER)
  05. NEVER LET ME GO
  06. ALL THE THINGS YOU ARE / MIDNIGHT MOOD
  07. A TIME FOR LOVE (Alternate take)

(ヴァーヴ/VERVE 1969年発売/UCCU-5021)
(ライナーノーツ/杉田宏樹,岩浪洋三)

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ビル・エヴァンス / モントゥルー II5

MONTREUX II-1 モントゥルー・ジャズ・フェスティヴァルが「世界一のジャズフェス」に育ったのは,全ては『モントゥルー・ジャズ・フェスティヴァルのビル・エヴァンス』の大ヒットがあったから。
 その後は“猫も杓子も”モントゥルーモントゥルーでのライブと冠が付けば売れる神話。永遠と続くリリース・ラッシュ。

 そこで再びビル・エヴァンストリオにお呼びがかかった。そのライブ盤が『MONTREUX 』(以下『モントゥルー 』)である。

 もはや圧倒的なライブ・パフォーマンス。格の違いが漂う名演。聴衆の期待に応えている。前回にも増してビル・エヴァンストリオが熱い。
 完全に『モントゥルー 』=『モントゥルー・ジャズ・フェスティヴァルのビル・エヴァンス』を超えてきた。そう思った。1回目は。

 ライブ盤なのだから1回目に聴いた印象が全てだとは思うのだが,繰り返し聴き込むにつれ印象が変化した。「あれ? こんなだったっけ?」。聴き込むとアラが出る。うーむ。

 だ・か・ら『モントゥルー 』は一気に楽しんでください。ビールを飲みながら雰囲気で聞くビル・エヴァンスのワイルドな演奏が超・色っぽいのです。男の色気漂う【ALFIE】が最高です。【ALFIE】1曲の存在で『モントゥルー 』は星5つ〜。

 【ALFIE】以外のミディアム・ナンバーも以前の録音と比べてアップテンポのハイ・ピッチ。あのマイナー・ブルース=【ISRAEL】がこうも攻撃的に演奏されようとは「意表を突かれてしまった」気分。ビル・エヴァンストリオモントゥルーのステージを「風のように駆け抜けていく」気分。

MONTREUX II-2 果たしてビル・エヴァンストリオの『モントゥルー 』の“残り香”はリリシズム。
 ビル・エヴァンスは真に音楽職人ですね。本当にいい仕事をしてくれています。セットリストからして最高の選曲=愛奏曲。

 『モントゥルー 』に限らずモントゥルーライブ盤は一発勝負です。盛り上がっちゃって〜! ビールあびるように飲んじゃって〜! 酔いつぶれちゃって〜! 官能の快楽〜!

  01. INTRODUCTION−VERY EARLY
  02. ALFIE
  03. 34 SKIDOO
  04. HOW MY HEART SINGS
  05. ISRAEL
  06. I HEAR A RHAPSODY
  07. PERI'S SCOPE

(CTI/CTI 1971年発売/KICJ-98506)
(ライナーノーツ/悠雅彦)
(☆SHM−CD仕様)

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ビル・エヴァンス / モントゥルー・ジャズ・フェスティヴァルのビル・エヴァンス5

BILL EVANS AT THE MONTREUX JAZZ FESTIVAL-1 “お城のエヴァンス”と親しみを込めて語られる「グラミー受賞」の大名盤BILL EVANS AT THE MONTREUX JAZZ FESTIVAL』(以下『モントゥルー・ジャズ・フェスティヴァルのビル・エヴァンス』)。

 “お城のエヴァンス”のモデルはスイス・レマン湖のほとりに佇むシロン城。いや〜,実に優雅な中世の古城である。このジャケット写真は秀逸である。ヴァーヴに数枚存在する「ブルーノート超え」である。
 ビル・エヴァンスを「ジャケ買い」するならもってこい。これからビル・エヴァンスを聞き始めようとする“初心者がイメージするビル・エヴァンス”の雰囲気にピッタリだと思う。

 しか〜し「ジャケ買い」破れたり! 『モントゥルー・ジャズ・フェスティヴァルのビル・エヴァンス』は,ビル・エヴァンス随一の“暴れん坊”! ヨーロッパへのセンセーション!
 ジャック・デジョネットドラムである。エディ・ゴメスベースである。そして共演者の資質にもろ左右されるタイプのジャズ・ピアニストの“御大”ビル・エヴァンスである。もう一つ言えば会場がカジノ内にあるナイト・クラブ。これでビル・エヴァンスが“大暴れしないはずがない”!

 『モントゥルー・ジャズ・フェスティヴァルのビル・エヴァンス』でのビル・エヴァンスジャズ・ピアノは力業! ジャック・デジョネットドラムエディ・ゴメスベースに“ぶつかり合い”スリリングでダイナミックな展開力!

 ジャズの言語的には“多弁”かつ“うるさい系”のジャック・デジョネットエディ・ゴメスと比べると,ビル・エヴァンスは“寡黙”に属する。やはりビル・エヴァンスはリリカルなピアニストだ。
 しかしビル・エヴァンスの一音一音がエネルギッシュ。ワイワイガヤガヤの音の隙間にズドンと一音の力業〜!。効く〜!
 ただし何度もジャック・デジョネットエディ・ゴメスの返り討ちにあうのだが…。ジャック・デジョネット…。

 そう。「キース・ジャレット命」の管理人としては『モントゥルー・ジャズ・フェスティヴァルのビル・エヴァンス』は,ジャック・デジョネットを聴くためにある( エヴァンス・マニアの読者の皆さん,邪道で申し訳ありません。ビル・エヴァンスの好きなのですがキース・ジャレットはその100倍は好きなものでして… )。

BILL EVANS AT THE MONTREUX JAZZ FESTIVAL-2 若き日のジャック・デジョネットドラミングに“色彩感”を感じてしまう。
 キース・ジャレットトリオでは“後ろに回ってロックン・ロール”が信条だが,ビル・エヴァンスとの共演では“前へ前へ”の猛プッシュ。エディ・ゴメスがいるから猛プッシュ。
 激しいアタックと素早いレスポンスのドラミングであるが,管理人がジャック・デジョネットを凄いと思うのは,センスというかアイディアというか,これはテクニックの問題ではなくジャック・デジョネットの音楽理念というかコンセプトというか…。

 『モントゥルー・ジャズ・フェスティヴァルのビル・エヴァンス』で聴こえるジャック・デジョネットドラミングはスネアはロックしているがシンバルジャズ。実にきめ細かい動きの強弱で「音のシャワー」を降らせている。だから“色彩感”であり,パステル・カラーでありレインボー。素晴らしいと思う。

 最後にエディ・ゴメスベースについて。
 バッチンバッチン,弦を弾く馬力=トルク押し。と同時に速弾き。録音の問題であろうがピークオーヴァーのビビリ。エディ・ゴメスもいいベーシストだよなぁ。も・っ・と・エディ・ゴメス〜!

 紙面割けなくて申し訳ないくらいの圧倒的なベースです。管理人はたまたまジャック・デジョネットドラム・メインで聴きますが数としてはエディ・ゴメスベース・メインのファンが多いように思います。流れるようなベース・ラインは「王様」のベース

  01. One For Helen
  02. A Sleepin' Bee
  03. Mother Of Earl
  04. Nardis
  05. I Loves You Porgy
  06. The Touch Of Your Lips
  07. Embraceable You
  08. Someday My Prince Will Come
  09. Walkin' Up

(ヴァーヴ/VERVE 1968年発売/UCGU-7033)
(☆SACDハイブリッド盤仕様)
(ライナーノーツ/ジーン・リーズ,オノ・セイゲン)

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ビル・エヴァンス / ビル・エヴァンス・アット・タウン・ホール5

BILL EVANS AT TOWN HALL-1 ビル・エヴァンスと来ればリバーサイドであろうが,ヴァーヴで一枚挙げろと言われれば,管理人は躊躇なく『BILL EVANS AT TOWN HALL』(以下『ビル・エヴァンス・アット・タウン・ホール』)を推す。

 『ビル・エヴァンス・アット・タウン・ホール』に登壇したビル・エヴァンスは大スターである。
 ビレッジ・バンガードなどのクラブでの演奏とは趣が違い,キャパ1500人の雰囲気がビル・エヴァンスに“格調高い”演奏へと向かわせている。
 そう。場所はニューヨークのコンサート・ホール=「タウン・ホール」。一曲ごとの拍手が名演の雰囲気を大いに盛り上げている。

 ビル・エヴァンス“初のリサイタル”にふさわしく『ビル・エヴァンス・アット・タウン・ホール』でのビル・エヴァンストリオビル・エヴァンス「and more」(ベースチャック・イスラエルさん,ドラムアーノルド・ワイズさん,ごめんなさい。お二人の名サポートがあってこそのビル・エヴァンスの晴れ舞台でした)。

 内省的な演奏はいつも通りなのだろうが,大スター=ビル・エヴァンスピアノホールの隅々にまで響き渡る堂々とした鳴りっぷり。ホール全体が知的でエレガントな雰囲気に満ちていく。ビル・エヴァンスピアノ一色に染め上げられていく。ビル・エヴァンスピアノに優しく包み込まれていく。もはや呼吸することさえも愛おしく感じられたに違いない。

 ビル・エヴァンスピアノが儚い。美しさの頂点を迎えている。そう。ビル・エヴァンスの“円熟”である。
 「ピアノのロマンティスト」=ビル・エヴァンスの“真骨頂”が,大袈裟に言えば「リサイタルのハイライトにして人生のハイライト」=【ソロ:父,L.エヴァンス(1891〜1966)に捧ぐ】であろう。

 全5トラックが連動している。【アイ・シュッド・ケア】→【スプリング・イズ・ヒア】→(大好きな)【フー・キャン・アイ・ターン・トゥ】→【メイク・サムワン・ハッピー】の前座4トラックが【ソロ:父,L.エヴァンス(1891〜1966)に捧ぐ】へとバトンを渡す。

 世間では【ソロ:父,L.エヴァンス(1891〜1966)に捧ぐ】での演奏は,リサイタルの直前に亡くなった父,ハリー・L・エヴァンスに捧げたレクイエムのように扱われている。しかし,管理人の耳にはそうは聴こえない。
 楽曲自体は4部構成の組曲であるが,情感の薄いテーマをモチーフとしたビル・エヴァンスインプロビゼーション・ショーである。結果,美しいピアノの音色が広い会場全体に“淡々と”響き渡ってゆく。
 そう。【ソロ:父,L.エヴァンス(1891〜1966)に捧ぐ】でのビル・エヴァンスは,ベースドラムとのインタープレイから離れ,亡き父への感傷からも離れ“己の晴れ舞台”のハイライトとして1台のピアノと真正面から向き合っている。

 13分43秒もの長尺のソロ・ピアノに無駄な瞬間など1秒足りとも無い。ビル・エヴァンスの“一心不乱”の集中力を感じる。繊細にして甘美なインプロビゼーション・ショーにも関わらず,ピアノのポテンシャルを100%引き出している。
 そう。方法論としては完全なジャズなのだが,能力100%のピアノの音は完全にクラシックしている。構築美→構造美→格調→品格なのである。

BILL EVANS AT TOWN HALL-2 奇抜ではない。一足飛びでもない。モチーフである既存曲のテーマを残しつつ別のテーマを選んでいる。この音使いの妙。これが「THIS IS BILL EVANS」であり「ピアノのロマンティスト」なのだ。

 感傷的ではなく理知的でしかも手馴れの即興演奏。自身の100%の演奏で亡き父を静かに送り出す。
 『ビル・エヴァンス・アット・タウン・ホール』は“ジャズ・ピアニストビル・エヴァンスのアルバムではない。“ジャズ・ジャイアント”ビル・エヴァンスのアルバムである。

PS 『ビル・エヴァンス・アット・タウン・ホール』の正式名称は『BILL EVANS AT TOWN HALL VOLUME ONE』。『VOLUME TWO』発売予定があったのでしょうが,後日別テイクとして3曲追加収録で終了。永久欠番これでよし。

  01. I Should Care
  02. Spring Is Here
  03. Who Can I Turn To
  04. Make Someone Happy
  05. Solo-In Memory of His Father, Harry L. Evans, 1891-
    1966

    Prologue
    Improvisation on Two Themes
     Story Line
     Turn Out The Stars
    Epilogue

(ヴァーヴ/VERVE 1966年発売/UCCV-9341)
(ライナーノーツ/小川隆夫)
(紙ジャケット仕様)

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ビル・エヴァンス / トリオ '655

TRIO '65-1 ここだけの話ですよっ。管理人は朝にも昼にも夜にも『TRIO ’65』(以下『トリオ ’65』)を聴いています。

 ヘッドフォンをしてビル・エヴァンストリオと対峙する時には「リバーサイド四部作」で間違いありません。しかし日常生活で,例えば読書のBGMとしてスピーカーで鳴らすビル・エヴァンスと来れば,俄然『トリオ ’65』なんです。
 そう。『トリオ ’65』こそ,ビル・エヴァンスの“隠れ名盤”にして管理人のビル・エヴァンス“随一の”愛聴盤なのです。

 とにかく気持ち良い。爽快なビル・エヴァンストリオの決定盤です。「小気味よく趣味のよい小品集」なのです。
 『トリオ ’65』の演奏はビル・エヴァンス本人のピアノのようではない。“エヴァンス派”に属するピアニストの演奏として,似てはいるが別人のように「コロコロ」としたピアノがスキップする。

 あれ? 「『トリオ ’65』? 何それ?」と述べるビル・エヴァンス・ファンも多いはず?
 そう。世間の『トリオ ’65』に対する評価はないも同然。ベースチャック・イスラエルだし,ドラムラリー・バンカーだし=“小粒な”ビル・エヴァンストリオだし。

 でもいいんです。『トリオ ’65』には今のまま無名であり続けてほしいのです。そう。できることなら『トリオ ’65』を独り占めしたい。管理人だけの『トリオ ’65』であってほしい。ビル・エヴァンスと管理人だけの“宝物”であってほしいのです。

 いや,待てよ。これだけの名盤であるのに,未だ無名のままなのは,多くのビル・エヴァンス・ファンが管理人と同じ心理状態のせい?
 そうかっ,みんなこっそりと“自分だけのビル・エヴァンス”を楽しみたいんだ。人には教えたくないんだ。きっとそうに違いない。ビル・エヴァンスの全ディスコグラフィの中で,こんなにも出来が良いのに評価の低いアルバムは他にないのだから…。

TRIO '65-2 だ・か・ら・管理人も『トリオ ’65』の魅力を書き連ねたくはありません。
 がっ,せっかくなのでちょこっとだけ教えます。ここだけの話ですよっ,パート供

 有名スタンダード・オンパレードの選曲が良い。それがほぼビル・エヴァンス過去の再演なのが良い。ただし今回は原曲のイメージ通りに弾いているのが良い。アップ・テンポなのが良い。
 過去最高にネクラだった【ISRAEL】【ELSA】【HOW MY HEART SINGS】が最高のネアカへと大変身したベスト・トラック! ベスト・オブ・ベストは【WHO CAN I TURN TO?】!

 しまった。しゃべりすぎた〜。とにかく『トリオ ’65』は「小気味よく趣味のよい小品集」! ここに尽きる! つまりはC1000タケダ。スーッと。本田翼ちゃん。

 読者の皆さんは『トリオ ’65』を絶対に聴かないでください! 絶対に買わないでください!

  01. ISRAEL
  02. ELSA
  03. 'ROUND MIDNIGHT
  04. LOVE IS HERE TO STAY
  05. HOW MY HEART SINGS
  06. WHO CAN I TURN TO?
  07. COME RAIN OR COME SHINE
  08. IF YOU COULD SEE ME NOW

(ヴァーヴ/VERVE 1965年発売/POCJ-2577)
(ライナーノーツ/中野宏昭)

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ビル・エヴァンス / インタープレイ4

INTERPLAY-1 “ジャズ・ピアニストビル・エヴァンスの代名詞の一つが「インタープレイ」。
 ゆえにビル・エヴァンスの代表作と勘違いして?ビル・エヴァンスの総本山であるピアノ・トリオを聴く前に,アルバム・タイトル『INTERPLAY』(以下『インタープレイ』)を聴いてみたという友人が管理人の周りには数人いる。もしや読者の皆さんの中にも?

 まず最初に断言しておこう。『インタープレイ』の聴き所は「インタープレイ」ではない。「インタープレイ」よりもアドリブを聴くためのアルバムである。
 『インタープレイ』はピアノ・トリオトランペットギターが絡んだクインテット編成の異色盤。クインテットを“調和良く鳴らす”ビル・エヴァンスの“ジャズメン魂”が最大の聴き所なのである。

 「インタープレイ」とは,共演者の発するシンパシーを聴くことであり,感じることが出発点である。ゆえにあらかじめ(それが綿密ではないとしても&スリリングなアドリブで満ちているとしても)事前のパート分けを行なった時点で“互いの音で触発し合う”『インタープイ』ではない。
 そう。ビル・エヴァンス一流の「インタープレイ」の“支配力”はピアノ・トリオ止まり。クインテット編成仕様までは手が“行き届いていない”。

 そんな中,管理人の目を引くはギタージム・ホールの存在である。ビル・エヴァンスジム・ホールの「インタープレイ」と来れば,ほんの2か月前に吹き込まれた大名盤アンダーカレント』。
 もしやビル・エヴァンスの頭の中には『アンダーカレント』の「二匹目のドジョウ?」があったのでは? クインテットの立ち位置はビル・エヴァンスジム・ホールデュオフレディ・ハバードパーシー・ヒースフィリー・ジョー・ジョーンズだったのでは?

 そのビル・エヴァンスの目論見が崩れたのが“客演”のつもりで呼んだフレディ・ハバードの快演であり,パーシー・ヒースフィリー・ジョー・ジョーンズの“黒い”ノリであった。
 フレディ・ハバードがとにかく凄い。超絶技巧のトランペットビル・エヴァンスジム・ホールギターを聞かせていない。
 そしてパーシー・ヒースベースフィリー・ジョー・ジョーンズドラムビル・エヴァンスをプッシュし続けている。

 もはや攻められっぱなしのビル・エヴァンスは“静”のジム・ホールに合わせるのではなく,フレディ・ハバードのフレッシュなフレージングとパーシー・ヒースフィリー・ジョー・ジョーンズの“動”の黒ノリの乗せられ“バッパー気質丸出しな”高速フレーズでピアノを弾きまくっている。

 事実【I’LL NEVER SMILE AGAIN】の2トラックのクレジットを見ると【テイク7】と【テイク6】。何度も試行錯誤を重ねてのレコーディングである。もうこうなると新鮮味も薄れ,主に感覚でプレイすることを求められる「インタープレイ」は成立しない。熟練のコンビネーション・チリバツ・ナンバー。

INTERPLAY-2 明るく歯切れの良いジャズ・ピアノビル・エヴァンスらしさがない。いつもの叙情的で耽美的なピアノはなりを潜んでいる。でもスコット・ラファロと出会う前のビル・エヴァンスはこんなもの…。
 らしいのやら,らしくないのやら…。だからビル・エヴァンスはやめられない…。『インタープレイ』は外せない…。

  管理人の結論。『インタープレイ批評

 『インタープレイ』は「インタープレイ」を抜きにした,普通にハード・バップ名盤である。演奏もまとまりとしてはビル・エヴァンスの“手からこぼれる落ちる感じ”なのだが,その分5人の自由度が高くアドリブも勢いもあり申し分ないハード・バップ
 でも,でも,これがビル・エヴァンスかと問われると…。

  01. YOU AND THE NIGHT AND THE MUSIC
  02. WHEN YOU WISH UPON A STAR
  03. I'LL NEVER SMILE AGAIN (take 7)
  04. INTERPLAY
  05. YOU GOT TO MY HEAD
  06. WRAP YOUR TROUBLES IN DREAMES
  07. EV'RYTHING I LOVE
  08. SHOW-TYPE TUNE
  09. I'LL NEVER SMILE AGAIN (take 6)

(リバーサイド/RIVERSIDE 1962年発売/VICJ-60029)
(ライナーノーツ/オリン・キープニュース)

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ビル・エヴァンス / ハウ・マイ・ハート・シングス5

HOW MY HEART SINGS!-1 『HOW MY HEART SINGS!』(以下『ハウ・マイ・ハート・シングス』)は,ビル・エヴァンス随一の「スイング・アルバム」である。間違いない。

 バラード集の『ムーンビームス』と同日セッションの姉妹盤=アップテンポ集の『ハウ・マイ・ハート・シングス』が放つ個性はビル・エヴァンスの「ノリ」である。しかも「根暗な人が無理して踊ったかのようなノリ」。おっと,これは悪口ではない。

 『ハウ・マイ・ハート・シングス』での“たまらない”スイング感こそ,新ベーシストチャック・イスラエルの「地味で堅実タイプな」インタープレイにある。

 一つにはチャック・イスラエルの音色の渋さ。スコット・ラファロの音色が鮮やか系だったので余計にそう感じるのだろうが,気を抜くとベースラインを見失ってしまいそうな,いかにもベースらしいダーク系の重低音。低音が一群の音の塊となって襲ってくるモノラル録音っぽい音色ゆえ目立たない。

 もう一つがチャック・イスラエルのリズム感。チャック・イスラエルの弾くベースラインは「先乗り」のスコット・ラファロと異なり,音符を先取りせず,根底に流れるリズムに対してジャストのタイミングで波を打つ。
 それでいてその時々に必要な音程を複雑なビートで,しかし音楽全体の流れを損なわないように,押さえるべきところは押さえつつ,暴れるべきところでさりげなく暴れてみせる。冷静沈着な大人のテクニック・スインガー

 ビル・エヴァンスの代名詞はインタープレイ。つまりビル・エヴァンスチャック・イスラエルの弾くベースラインに反応する。チャック・イスラエルの“ナイーブな歌心”が,心楽しげにビル・エヴァンススイングさせてしまうのだろう。
 『ハウ・マイ・ハート・シングス』で聴くビル・エヴァンスピアノは,再び名ベーシストに巡り会えた喜びをストレートに写し出している。

 “阿吽の呼吸”のパートナー=スコット・ラファロの死に面し,意気消沈し無気力になり,もはや再起不能とまで思われていた1年前のビル・エヴァンス
 そんなビル・エヴァンスが1年間のブランクを経て,待望の名ベーシストチャック・イスラエルのジャストで複雑なリズムに触発された結果,閉ざされ,ふさぎ込まれた心を軽やかに開き,喜びに満ち溢れたトーンで爽やかに歌い上げている!
 これぞエヴァンス流「スイングしなけりゃ意味がない♪」状態!

HOW MY HEART SINGS!-2 管理人の結論。『ハウ・マイ・ハート・シングス批評

 “内に内に”向かう内省的なビル・エヴァンスが『ハウ・マイ・ハート・シングス』だけは“外に外に”エネルギーを発散している。
 ただしこのトーンが暗いんだよなぁ。だからビル・エヴァンスなんだよなぁ。だから大好きなんだよなぁ。

 『ハウ・マイ・ハート・シングス』の発する,絶大な「暗さとノリ」のスインガー。このエネルギーってビル・エヴァンスの「歴史上一番時間をかけた自殺」への「音玉」?

 管理人は『ハウ・マイ・ハート・シングス』での【WALKING UP】と【34 SKIDOO」のリフレインが,ビル・エヴァンスを自ら死へと駆り立てた行進曲に思えてなりません。どうしてもそう思えてなりません。こんなに楽しそうにピアノを弾くビル・エヴァンスを聴く度に,もう泣けて泣けてどうしようもありません。

 ビル・エヴァンスの死の棺に『ハウ・マイ・ハート・シングス』を添えてあげたかった…。
 天国にいるビル・エヴァンスさん,ポール・モチアンさん,チャック・イスラエルさんとの「インタープレイの続き」を楽しんでおられますか?

  01. HOW MY HEART SINGS
  02. I SHOULD CARE
  03. IN YOUR OWN SWEET WAY (take 1)
  04. WALKING UP
  05. SUMMERTIME
  06. 34 SKIDOO
  07. EV'RYTHING I LOVE
  08. SHOW-TYPE TUNE
  09. IN YOUR OWN SWEET WAY (take 2)

(リバーサイド/RIVERSIDE 1962年発売/VICJ-60373)
(ライナーノーツ/オリン・キープニュース,小西啓一)
(☆XRCD仕様)
(サンプル盤)

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ビル・エヴァンス / ムーンビームス4

MOON BEAMS-1 管理人は新ベーシストとしてチャック・イスラエルを迎えた,新生ビル・エヴァンストリオの2枚の姉妹盤『MOON BEAMS』(以下『ムーンビームス』)と『HOW MY HEART SINGS!』(以下『ハウ・マイ・ハート・シングス』)を同時期には聴かなかった。

 先に買ったのは『ハウ・マイ・ハート・シングス』。『ハウ・マイ・ハート・シングス』の“酸いも甘いも”に関しては,後日UP『ハウ・マイ・ハート・シングス批評で語ることにするが,アップテンポ集の『ハウ・マイ・ハート・シングス』は大注目のチャック・イスラエルインタープレイを中心に聴き漁り,多くのジャズ本を読み漁ったものだ。
 新ベーシストの結論としては,世評に違わず「スコット・ラファロ命」を実感するのだが,ではチャック・イスラエルがダメかというとトンデモナイ。チャック・イスラエルがいたからこそエヴァンスは新たな表現手法に足を踏み入れることが可能となったのだ。うん。

 そのように管理人の『ハウ・マイ・ハート・シングス』の評価が定着した頃に時間差で入手した,姉妹盤のバラード集=『ムーンビームス』。『ムーンビームス』を聴いて,管理人のチャック・イスラエル熱が燃え上がった。ビル・エヴァンスが“嬉々として”スコット・ラファロの死で途絶えたピアノ・トリオを再スタートさせたのも分かる気がした。
 『ムーンビームス』を聴き漁っていた頃の管理人は「スコット・ラファロ命」→「チャック・イスラエル命」へと“推し変”していた甘い思い出(ただし,現在は再び「スコット・ラファロ命」です!)。

 そう。『ムーンビームス』でのビル・エヴァンスピアノは,低重心で落ち着きのあるチャック・イスラエルの“名伴奏”を得て,真に内省的な自己との対話を表現するようになったと思う。
 事実『ムーンビームス』を聴いていると,ベーシストラファロなのか,イスラエルなのか,などどうでもよくなってくる。チャック・イスラエル名演ビル・エヴァンススコット・ラファロへの郷愁を忘れさせてしまっている。

 スコット・ラファロへの思いを断ち切ったビル・エヴァンスピアノ・タッチが鮮烈に変化している。脱硬派である。『ムーンビームス』全編フィーチャー=高音怒涛のキラキラ感。一瞬,エレピかと思う瞬間が幾度となくある。
 そしてスコット・ラファロを亡くしたのはポール・モチアンも同じ。ポール・モチアンブラッシングによるチャック・イスラエルへの賛歌がこれまたいいんだっ!

MOON BEAMS-2 管理人の結論。『ムーンビームス批評

 『ムーンビームス』をビル・エヴァンスの入門者に薦めてはいけない。ましてBGMなど論外である。
 バラード集にして,相当に甘口な『ムーンビームス』は曲を聴いてはならない。メロディを追いかけてはならない。これが管理人の『ムーンビームス』を楽しむための極意にして“正しいテーブルマナー”だと思っている。

 『ムーンビームス』は,ただただビル・エヴァンスの個性に意識を集中して聴くべきアルバムの最右翼。そうすれば繊細で豊かなビル・エヴァンスだけが有するハーモニーの世界が味わえる。
 『ムーンビームス』は,手間暇を惜しんでは楽しめない,実は骨が折れるアルバムなのである。

  01. RE:PERSON I KNEW
  02. POLKA DOTS AND MOONBEAMS
  03. I FALL IN LOVE TOO EASILY
  04. STAIRWAY TO THE STARS
  05. IF YOU COULD SEE ME NOW
  06. IT MIGHT AS WELL BE SPRING
  07. IN LOVE IN VAIN
  08. VERY EARLY

(リバーサイド/RIVERSIDE 1962年発売/VICJ-60214)
(ライナーノーツ/オリン・キープニュース,小西啓一)
(☆XRCD仕様)

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ビル・エヴァンス & ジム・ホール / アンダーカレント5

UNDERCURRENT-1 ピアノギターによるデュエット・アルバムの「永遠の金字塔」! それがビル・エヴァンスジム・ホールによる『UNDERCURRENT』(以下『アンダーカレント』)である。

 ジャズにおいてデュエット・アルバムは数あれど,ピアノギターデュエットものは滅法少ない。なぜだろう?
 一般的に論じられている主流の理由は楽器の特性=ピアノギターも「コード楽器だから説」。ともすれば互いが互いを打ち消し合うようなデュエットになってしまう。しかしこれは個人的には違うと思っている。

 なぜならピアノギターデュエットは,同じコード楽器としてやり難さは残るだろう。しかしピアノギターメロディー弾きのリード楽器&リズム楽器としての側面も有している。
 要は,互いが互いを打ち消し合うこともできれば,互いが互いを引き立て合うこともできるコード楽器の共演である。ピアノギターデュエットものに難しさを感じるとすれば,それは楽器の相性を超えた“ジャズメンとしての資質”の問題であろう。

 ピアニストギタリストが口にしない,ピアノギターデュエットものが滅法少ない本当の理由がある。それが『アンダーカレント』の存在だと思う。
 もはや意識しなくとも潜在意識として刷り込まれちゃっている圧倒的な大名演。『アンダーカレント』がピアノギターデュエットの録音に二の足を踏ませる“楔”になっているのだと思う。
 どうしても比較される? どうあがいても越えられない?

 『アンダーカレント』を「永遠の金字塔」たらしめている最大の理由。それは『アンダーカレント』がビル・エヴァンスジム・ホールによる“実験作”だという事実にある。ビル・エヴァンスジム・ホールがアグレッシブに攻めている。ピアノギターデュエットの限界に挑戦しているのだ。

 そしてこの実験が“まさかの”完璧な成功を収めてしまった。『アンダーカレント』の印象は“優雅”という表現に尽きると思う。
 本当のビル・エヴァンスジム・ホールは『アンダーカレント』のジャケットに暗示されているように水面下でもがいているのに,水面上を漂っている死体?のようにしか聴こえない。ソフトでまろやかで寛いだ雰囲気が漂っている。上手い!そして美しい!
 互いの演奏にインスパイアされた素晴らしいインタープレイの最中であっても,相手をリスペクトする音が溶け合い調和が図られている。上手い!そして美しい!

UNDERCURRENT-2 アグレッシブに攻めているのにメロウで優雅で美しい。ホットな演奏なのにクールな音楽。『アンダーカレント』の奇跡的な超ハイレベルを勝手知ればこそ,一流のピアニストギタリストピアノギターデュエットに“ためらい”を感じるのだろう。
 全体を貫く知的なクールネスこそが,ビル・エヴァンスジム・ホール双方のアプローチに共通する『アンダーカレント』(底流の意味)なのである。

 その意味で「平成のアンダーカレント」に挑戦した渡辺香津美小曽根真と「21世紀のアンダーカレント」に挑戦したパット・メセニーブラッド・メルドーに惜しみない賛辞を贈りたい!

 果たしてその結果は,やっぱり『アンダーカレント』! やっぱりビル・エヴァンスジム・ホール! 50年以上の時を経て益々美しさの輝きを増していく!

  01. MY FUNNY VALENTINE
  02. I HEAR A RHAPSODY
  03. DREAM GYPSY
  04. ROMAIN
  05. SKATING IN CENTRAL PARK
  06. DARN THAT DREAM

(ユナイテッド・アーティスツ/UNITED ARTISTS 1956年発売/TOCJ-5972)
(ライナーノーツ/小川隆夫,皸羶成)

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ビル・エヴァンス / THE COMPLETE LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD 19615

THE COMPLETE LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD 1961-1 ビル・エヴァンスは100枚以上の公式アルバムを残しており,そのどれもが興味深い演奏ばかりであるのだが,いつでも真っ先に取り出したくなるのが『サンディ・アット・ザ・ビレッジ・バンガード』+『ワルツ・フォー・デビイ』+アンドモア=『THE COMPLETE LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD』BOXセット〜!

 あらゆる好条件が揃って産み落とされた歴史的名盤である。コンスタントに記録を残すスポーツ界の名選手であっても毎回世界記録が出せないのと同じように,高水準のアルバムを連発するジャズ・ジャイアントであったとしても,最高の即興演奏を毎回レコーディングできるものではない。
 その意味で『THE COMPLETE LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD』は音楽の神様が与えてくださった「奇跡の結晶」であろう。
 (ただしこの気負いのなさ。ビル・エヴァンスにとっては日常のヒトコマの記録であった? やっぱり幸運! だから神様!)

THE COMPLETE LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD 1961-2 ピアノビル・エヴァンスベーススコット・ラファロドラムポール・モチアンからなるビル・エヴァンストリオ

 かってポール・モチアンが,当時の黄金トリオを振り返って「何か新しい可能性を感じた。これだ!って演奏中に何度思ったかしれやしない。今日はどこまでこのトリオで行けるんだろうって演奏する前は当事者の自分たちがワクワクしていたほどさ。それくらいあのトリオは音楽的に充実していたし,互いを分かりあえていた。こんな気持ちで演奏ができたことは後にも先にもないからね。特別な場所に特別な人たちがものの見事にはまったっていううことかな。やっている自分たちの方が怖いものを感じた」と述べている。

 これがマイルス・デイビスの死後,長らく空位となっていた「ジャズの帝王」の座に鎮座したポール・モチアンの言葉である。
 あのポール・モチアンをして,唯一無二の時間を過ごしたと言わしめた“創造の絶頂期”。それがビル・エヴァンスの黄金トリオによるビレッジ・バンガードでのライブであった。

THE COMPLETE LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD 1961-3 『サンディ・アット・ザ・ビレッジ・バンガード』と『ワルツ・フォー・デビイ』の2枚のアルバムでビレッジ・バンガードでのライブを通過してきたエヴァンス・ファンにとって新鮮な理解の感動に圧倒されてしまう。

 時系列順にあの夜の演奏を聴き続けるという行為に意味があるとすれば,このBOXセットを聴いた後に『サンディ・アット・ザ・ビレッジ・バンガード』と『ワルツ・フォー・デビイ』を聴き返した瞬間に感じる快楽と後悔であろう。全てを知った瞬間に背負う重荷も存在するのだ。
 それは概ね「編集の恐ろしさ」という言葉に尽きると思う。化粧を落としたビル・エヴァンストリオの素顔を見てマニアは一体何を思うことだろう?

THE COMPLETE LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD 1961-4 管理人は『THE COMPLETE LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD』BOXセットを聴いて,2つの点を強く意識できるようになった。

 その1つは『サンディ・アット・ザ・ビレッジ・バンガード』でのフィーチャリングを凌ぐベーススコット・ラファロの“天才”であり,もう1つは客の不入りとグラス・ノイズに代表されるビル・エヴァンスの“不遇”である。

THE COMPLETE LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD 1961-5 マックス・ローチクリフォード・ブラウンを自動車事故で失った時に,しばらく仕事をしたくない,と語ったが,スコット・ラファロをこれまた同じ自動車事故で亡くしたビル・エヴァンスが語っている。

 ジャズメンは,実に多くの演奏家と共演を繰り返しているが,真に“魂の共鳴する”相手に巡り逢うのは稀有なことである。ビル・エヴァンスとってのスコット・ラファロが正にそうであった。
 ビル・エヴァンスにとってスコット・ラファロは生涯に一度しか出会うことのない唯一無二の共演者であり,スコット・ラファロベースによる啓発によってビル・エヴァンスが“覚醒”されていく過程のドキュメンタリーになり得ていると思う。

THE COMPLETE LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD 1961-6 そしてコンプリート盤ゆえの聴き所であろう“ゴミ”の存在である。元々観客が少ないことは明らかであったが,この演奏前後の場の空気を通じて真剣に演奏が聴かれていないことが一層浮き彫りにされている(何と勿体ない!)。

 ビル・エヴァンスの“不遇”。それは食事中の客,談笑する客,電話中の客に向けて演奏しなければならなかったという事実。お願いです。あの夜のクラブ客の中に熱心なジャズ・ファンが一人でもいてください。ウソでもいいから一人でもいたと信じさせてください。
 そうでないとビル・エヴァンスが浮かばれません。あの夜,ビル・エヴァンスは一体誰に向かって美しいピアノを奏でていたのでしょう。不憫でなりません。

THE COMPLETE LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD 1961-7 『THE COMPLETE LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD』BOXセットの真実。それは『サンディ・アット・ザ・ビレッジ・バンガード』と『ワルツ・フォー・デビイ』の“剥き出しの”演奏集。

 1961年7月25日に行なわれた全5ステージのノーカット演奏。一晩で22曲ものインタープレイを演奏したのだから疲れに疲れたに違いないが,演奏はその逆である。アドレナリン出まくりで神懸り的に突き抜けていく。
 ビル・エヴァンスよ,ドラッグなしでもハイになれるじゃないか!

THE COMPLETE LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD 1961-8 ステージが進むにつれ,ビル・エヴァンスの,スコット・ラファロの,ポール・モチアンの感動が音の表情から伝わってくる。「何て素晴らしい演奏なんだろう。もっと…長く…いつまでも…演奏し続けていたい」。
 このライブこそが“伝説”である。このライブこそが“夢”である。

 『THE COMPLETE LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD』はマニア向けの日本独自企画盤ゆえ『サンディ・アット・ザ・ビレッジ・バンガード』と『ワルツ・フォー・デビイ』の2枚を所有していれば音楽的には十分であろう。しかしそれ以上!を求めるのであれば絶対購入BOXセット3枚組!
 ビル・エヴァンスが見た夢の続きを共に見ようではないか! 共に伝説に参加しようではないか! そして,あぁ,ラファロよ!

  DISC 1
  Afternoon Set 1
  01. spoken introduction
  02. GLORIA'S STEP (take 1-interupted)
  03. ALICE IN WONDERLAND (take 1)
  04. MY FOOLISH HEART
  05. ALL OF YOU (take 1)
  06. announcement and intermission
  Afternoon Set 2
  07. MY ROMANCE (take 1)
  08. SOME OTHER TIME
  09. SOLAR

  DISC 2
  Evening Set 1
  01. GLORIA'S STEP (take 2)
  02. MY MAN'S GONE NOW
  03. ALL OF YOU (take 2)
  04. DETOUR AHEAD (take 1)
  Evening Set 2
  05. discussing repertoire
  06. WALTZ FOR DEBBY (take 1)
  07. ALICE IN WONDERLAND (take 2)
  08. PORGY (I LOVES YOU, PORGY)
  09. MY ROMANCE (take 2)
  10. MILESTONES

  DISC 3
  Evening Set 3
  01. DETOUR AHEAD (take 2)
  02. GLORIA'S STEP (take 3)
  03. WALTZ FOR DEBBY (take 2)
  04. ALL OF YOU (take 3)
  05. JADE VISIONS (take 1)
  06. JADE VISIONS (take 2)
  07. ...a few final bars

(リバーサイド/RIVERSIDE 2002年発売/VICJ-60951-3)
(ライナーノーツ/岩浪洋三)
(CD3枚組)

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ビル・エヴァンス / ワルツ・フォー・デビイ5

WALTZ FOR DEBBY-1 ジャズ・ピアノの,いや,モダン・ジャズの永遠の金字塔=『WALTZ FOR DEBBY』(以下『ワルツ・フォー・デビイ』)。
 この圧倒的な演奏を前にして何を語ればよいのだろう。とにかく絶賛の嵐なのであるが,どれ程言葉を多くしても足りないと思っている。これは恋と同じである。管理人は今の今でも『ワルツ・フォー・デビイ』に恋焦がれてしまっている。

 事実,管理人が『ワルツ・フォー・デビイ』を買うのは,現在の所有物=DSDマスタリングのSHM−CD盤が5枚目であって,都合4回も買い換えたCDは,未来永劫『ワルツ・フォー・デビイ』のみであろう(しかしビル・エヴァンスの“最高傑作”は『ワルツ・フォー・デビイ』ではなく『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』である)。
 100行の文章で説明するより『ワルツ・フォー・デビイ』を5枚目も買った。この事実が100行分を雄弁に代弁してくれている。

 『ワルツ・フォー・デビイ』について理性的に長文レビューを書き連ねようと思っていたが『ワルツ・フォー・デビイ』を聴いていると,いつでも擬音しか口から出てこないのだ。
 ピアノビル・エヴァンスベーススコット・ラファロドラムポール・モチアンの黄金トリオインタープレイ! 何をやっても上手くいく。何をやっても無敵だった瞬間のドキュメンタリー!

WALTZ FOR DEBBY-2 管理人の結論。『ワルツ・フォー・デビイ批評

 『ワルツ・フォー・デビイ』はジャズ界の「美人薄命」盤。
 【マイ・フーリッシュ・ハート】〜【ワルツ・フォー・デビイ】へと流れる瞬間の美しさ! 分かっている。分かりきっている。それでも「うっとり」してしまう。

PS “硬派な”「『ワルツ・フォー・デビイ批評は,後日UPの『THE COMPLETE LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD 1961』で取り上げる予定です。

  01. My Foolish Heart
  02. Waltz for Debby (take 2)
  03. Detour Ahead (take 2)
  04. My Romance (take 1)
  05. Some Other Time
  06. Milestones
  07. Waltz for Debby (take 1)
  08. Detour Ahead (Take 1)
  09. My Romance (take 2)
  10. Porgy (I Loves You, Porgy)

(リバーサイド/RIVERSIDE 1961年発売/UCCO-9551)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/植草甚一,岩浪洋三)

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ビル・エヴァンス / エクスプロレイションズ4

EXPLORATIONS-1 先日,熱きブログ仲間のやまchanさんから「Bill Evans溺愛説の否定」なる名フレーズのコメントを頂きました。このフレーズがやけに気に入ったのですが,やまchanさん,すみません。本日は「Bill Evans溺愛説の否定」の“否定”から入らせていただこうと思います。

 管理人は「リバーサイド4部作」のビル・エヴァンスだけは(おやっ,いかんいかん,ビル・エヴァンスの“最高傑作”である『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』やら『アンダーカレント』やら『トリオ’65』やらチャック・イスラエル絡みも好きだという感情が湧き上がってきた!)「溺愛」しちゃっています。

 ということで,ベーススコット・ラファロドラムポール・モチアンを擁する黄金トリオのスタジオ録音第2作『EXPLORATIONS』(以下『エクスプロレイションズ』も好き。
 ただしこの好きは『ポートレイト・イン・ジャズ』に対する好きとは異なる。う〜ん。結局のところ管理人は「リバーサイド4部作」ではなくて『ポートレイト・イン・ジャズ』と『ワルツ・ファー・デビイ』が好きなのだ。
 ブログ書いていて初めて気付いた己のエヴァンス“嗜好”!

 管理人は『ポートレイト・イン・ジャズ』と『ワルツ・ファー・デビイ』が好きなのであって『エクスプロレイションズ』と『サンディ・アット・ザ・ビレッジ・バンガード』はそうでもない。やまchanさん「Bill Evans溺愛説の否定」カモーン!?

 ではなぜ『エクスプロレイションズ』は「溺愛」しないのだろう? やっぱり暗い。暗いビル・エヴァンスにはいいのがない。
 実際の『エクスプロレイションズ』はそんなに暗いわけではないのかもしれない。しかし相対的に受ける印象は“陽”の『ポートレイト・イン・ジャズ』と“陰”の『エクスプロレイションズ』。正確には”張り切りすぎ”の『ポートレイト・イン・ジャズ』と“落ち着きすぎ”の『エクスプロレイションズ』というところだろう。

 もう一つある。それは『エクスプロレイションズ批評に目立つ特徴であるトラック第一主義である。「リバーサイド4部作」の中で『エクスプロレイションズ』だけはアルバム単位の完成度ではなくトラック単位で語られることの多い“損な”性格を有している。

 【イスラエル】【エルザ】【ナーディス】。どうですか,この曲名を聴くだけでたじろいでしまうでしょ? 圧倒的な名演の3曲。そこに【魅せられし心】【ビューティフル・ラヴ】【ハウ・ディープ・イズ・ジ・オーシャン】【アイ・ウィッシュ・アイ・ニュー】【スウィート・アンド・ラヴリー】【ザ・ボーイ・ネクスト・ドア】が絡んでいく。

 これは裏を返せば1曲1曲が強烈な個性を帯びている証しであろう。落ち着いた雰囲気の『エクスプロレイションズ』なのに構えてしまう。どうにも力が入ってリラックスできない。
 この時期のビル・エヴァンスの演奏はストイックすぎる。どこのどいつだ,ジャズを聴き始めるならビル・エヴァンスからがいい,と語っているのは? そうではないでしょ。ジャズを聴き始めるならビル・エヴァンスの『ポートレイト・イン・ジャズ』と『ワルツ・ファー・デビイ』からがいいの間違いでしょ? 誤って『エクスプロレイションズ』から入ったら大変なことになるんですよ〜。

EXPLORATIONS-2 そう。『エクスプロレイションズ』のインパクトはビル・エヴァンス史上最大級。読者の皆さんで,まだ『エクスプロレイションズ』を聴いたことのないあなたはラッキー・ガール。
 世評に惑わされてはなりません。「リバーサイド4部作」を先に全部聴いてはいけないのです。『ポートレイト・イン・ジャズ』と『ワルツ・ファー・デビイ』と『サンディ・アット・ザ・ビレッジ・バンガード』の3枚は是非とも,今すぐにでも聴いてください。

 でも『エクスプロレイションズ』だけは,可能な限りギリギリまで踏ん張ってでも最後の最後までとっておいてください。きっと“とっておきの”感動があなたを待ち受けていることと思います。

 ビル・エヴァンス史上最大級の美のレーザービームを放つ『エクスプロレイションズ』! そんなに好きではなかったはずなのにやっぱり褒めちゃいました! これって潜在意識!?

  01. ISRAEL
  02. HAUNTED HEART
  03. BEAUTIFUL LOVE (take 2)
  04. ELSA
  05. NARDIS
  06. HOW DEEP IS THE OCEAN?
  07. I WISH I KNEW
  08. SWEET AND LOVELY
  09. BEAUTIFUL LOVE (take 1)
  10. THE BOY NEXT DOOR

(リバーサイド/RIVERSIDE 1961年発売/VICJ-61324)
(ライナーノーツ/オリン・キープニュース,小西啓一)
(紙ジャケット仕様)

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ビル・エヴァンス / グリーン・ドルフィン・ストリート4

GREEN DOLPHIN STREET-1 管理人の好きな「リバーサイド4部作」へと至るビル・エヴァンスの快進撃は『GREEN DOLPHINE STREET』(以下『グリーン・ドルフィン・ストリート』)から始まった!

 『グリーン・ドルフィン・ストリート』での,ベースポール・チェンバースドラムフィリー・ジョー・ジョーンズとのトリオは,ベーススコット・ラファロドラムポール・モチアンとの黄金トリオ演奏には遠く及ばない。
 そう。『グリーン・ドルフィン・ストリート』はビル・エヴァンスの「インタープレイ目前」!

 というかビル・エヴァンスは完全に仕上がっている。ポール・チェンバースフィリー・ジョー・ジョーンズの演奏をよく聴きながらピアノを転がしている。
 ポール・チェンバースフィリー・ジョー・ジョーンズが悪いのでも時代について行けないのもない。インタープレイが画期的であった。ビル・エヴァンスが時代の先端を走っていた。ただそれだけのことなのである。

 一つ触れておかなければならない点がある。『グリーン・ドルフィン・ストリート』は『エヴリバディ・ディグズ・ビル・エヴァンス』と共に1977年に発売された発掘音源。つまりは1958年当時の判断としては“お蔵入り”〜。
 ポール・チェンバースフィリー・ジョー・ジョーンズだけでなく,あのオリン・キープニュースさえも,この時点ではビル・エヴァンスの新しいジャズインタープレイについてこれていない。
 この『グリーン・ドルフィン・ストリート』での“お蔵”の経験があればこそ,自分の音楽性を理解した最良のパートナー=スコット・ラファロを失ったビル・エヴァンスの深い悲しみが増幅したようにも思う。

 さて,世間にも身内にも未だ浸透途上だった“完成形の”ビル・エヴァンス“一人名演集”『グリーン・ドルフィン・ストリート』!
 そう。天才は死後評価される? 名盤グリーン・ドルフィン・ストリート』には,後年,世間受けするキラー・チューンが2トラック収録されている。
 それが『インタープレイ』の初演としても有名な【あなたと夜と音楽と】とTFM系「JAZZ PIANO BEST SELECTION」のナレーションBGM曲,つまりは「THIS IS JAZZ PIANO」の代名詞に選ばれた?【グリーン・ドルフィン・ストリート】である。

GREEN DOLPHIN STREET-2  《 ジャズにおいてピアノを究めた者はいまだかつて現れていない。
 トランペットマイルス・デイビスによって,アルト・サックスチャーリー・パーカーによって,テナー・サックスジョン・コルトレーンによって,それぞれ究められてしまった。
 最大音域の自由と平均律の呪縛を併せもつこの楽器とアーティストたちの感性と創造性との果てしない闘争は,やがて熟成された空気となって満ちてくる。 》

 毎度なんだかんだと言っているがビル・エヴァンスはどうしようもなく暗い。しかしこの暗さがなければジャズ・ピアノらしさがない。その意味で「ジャズ・ピアノビル・エヴァンスによって究められた」と明言してもよい。

 ただし誤解のないように! 管理人はビル・エヴァンスをそこまで好きではありません! ビル・エヴァンスは外せませんが本命にはなりません!(最近,ビル・エヴァンスについての問い合わせが多いのですが,そこのところをやんわりと〜)

  01. YOU AND THE NIGHT AND THE MUSIC
  02. MY HEART STOOD STILL
  03. GREEN DOLPHIN STREET
  04. HOW AM I TO KNOW?
  05. WOODY'N YOU (take 1)
  06. WOODY'N YOU (take 2)
  07. LOOSE BLOOSE

(リバーサイド/RIVERSIDE 1977年発売/VICJ-60372)
(ライナーノーツ/オリン・キープニュース,小西啓一)
(☆XRCD仕様)

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ビル・エヴァンス / エヴリバディ・ディグズ・ビル・エヴァンス4

EVERYBODY DIGS BILL EVANS-1  ・「ビル・エヴァンスからはたしかに多くのことを学んだ。彼はピアノが演奏されるべきやり方でピアノを演奏する」(マイルス・デイビス
 ・「ビル・エヴァンスはここ数年でいちばん気持ちのよいピアニストだ」(ジョージ・シアリング
 ・「ビル・エヴァンスは屈指の存在の一人だと思う」(アーマッド・ジャマル
 ・「ビル・エヴァンスには類い稀なオリジナリティとテイストがあるが,さらにすごいのは曲に対する構想を練る力で,彼が演奏すると,それがその曲の最終形と思わせるものがある」(ジュリアン・キャノンボール・アダレイ

 この超大物4人からの褒め言葉は,ビル・エヴァンスの2年振りのリーダー作『EVERYBODY DIGS BILL EVANS』(以下『エヴリバディ・ディグズ・ビル・エヴァンス』)掲載の“推薦文”である。
 なぁんだ,レア物のCD帯のコピーじゃないか,と思うなかれ。この“推薦文”はリバーサイドからの公式発表としてCDジャケットを埋め尽くす“全面広告”になっている。CDタイトルからして「みんながビル・エヴァンスに注目している」の意味なのだから…。

 今でこそ,泣く子も黙る“ジャズ・ピアノの巨匠”ビル・エヴァンスであるが『エヴリバディ・ディグズ・ビル・エヴァンス』がオリジナルCD2年振りの録音であることから窺い知れるように,当時のビル・エヴァンスは「知る人ぞ知る」存在にとどまっていた。
 そう。リバーサイドとしては,もっともっとマイルス・デイビスキャノンボール・アダレイジョン・コルトレーンのように売り出したかった。「ミュージシャンズ・ミュージシャン」のビル・エヴァンスを世間にアピールするために『エヴリバディ・ディグズ・ビル・エヴァンス』は吹き込まれた。

 果たしてその出来であるが,管理人は『エヴリバディ・ディグズ・ビル・エヴァンス』を駄盤とする。ビル・エヴァンスの個性の開花はまだまだ。師と仰ぐレニー・トリスターノの影響が窺え自己形成への過渡期の記録とぶった切る。
 ただしビル・エヴァンス“生涯の一曲”【PEACE PIECE】を除いて…。

 ズバリ【PEACE PIECE】一曲で『エヴリバディ・ディグズ・ビル・エヴァンス』は価値がある。『エヴリバディ・ディグズ・ビル・エヴァンス』は【PEACE PIECE】一曲のために買う価値がある。読者の皆さんにも是非是非是非【PEACE PIECE】だけは聴いてほしい。

 ここで暴言お許しを。管理人の元を通りすぎる多くのビル・エヴァンス・ファンの中に【PEACE PIECE】を知らないというファンがいる。別にその人には何も言ったりしないのだがビル・エヴァンスの話題はそれ以上盛り上げない。
 何も管理人の意見に迎合する必要はない。【PEACE PIECE】が嫌いでもいいと思う。しかし【PEACE PIECE】抜きにビル・エヴァンスを語ってほしくないのだ。

 …とここまで煽っておきながら,この記事は『エヴリバディ・ディグズ・ビル・エヴァンス批評なので【PEACE PIECE】については,次期【PEACE PIECE批評をお待ちくださいねっ。

EVERYBODY DIGS BILL EVANS-2 そんなこんなで【PEACE PIECE】が突出し【PEACE PIECE】の別アレンジ【SOME OTHER TIME】が引っ張る“COOL”な『エヴリバディ・ディグズ・ビル・エヴァンス』。

 冒頭で推薦人名簿に名を連ねたマイルス・デイビスビル・エヴァンスについて,別の機会に次のように語っている。
 「ビルの演奏には,いかにもピアノという感じの,静かな炎のようなものがあった」。

 この“静かで白い炎”がECMに通じている。ビル・エヴァンスのCとFの永遠の反復が管理人の心の琴線をくすぐってくる。
 ピアノに乗りこんだビル・エヴァンスが『エヴリバディ・ディグズ・ビル・エヴァンス』で新たな地平線を目指して出帆している。

  01. MINORITY
  02. YOUNG AND FOOLISH
  03. LUCKY TO BE ME
  04. NIGHT AND DAY
  05. EPILOGUE
  06. TENDERLY
  07. PEACE PIECE
  08. WHAT IS THERE TO SAY?
  09. OLEO
  10. EPILOGUE
  11. SOME OTHER TIME

(リバーサイド/RIVERSIDE 1977年発売/VICJ-61329)
(ライナーノーツ/オリン・キープニュース,青木和富)
(紙ジャケット仕様)

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ビル・エヴァンス / ニュー・ジャズ・コンセプションズ4

NEW JAZZ CONCEPTIONS-1 ビル・エヴァンスの“地味な”デビューCDNEW JAZZ CONCEPTIONS』(以下『ニュー・ジャズ・コンセプションズ』)は,瑞々しくも斬新なコンセプトで練り上げられた,正に『ニュー・ジャズ・コンセプションズ』なピアノ・トリオが響いている。

 『ニュー・ジャズ・コンセプションズ』を聴いて,まず沸き上がってくる感情の第一声は「ビル・エヴァンスよ,よくぞ独自路線に踏みとどまってくれました」の思いである。
 事実『ニュー・ジャズ・コンセプションズ』でのビル・エヴァンスは「この先,どっちに転ぶか分からない」アイデンティティのジャズ・ピアノを弾いている。
 そう。『ニュー・ジャズ・コンセプションズ』の印象は“新世代のバップ・ピアニスト”のデビュー盤。「バップなピアノが新しくなったなぁ〜」程度の印象であって,今後,ジャズ・ピアノに革命を起こす最重要人物のデビュー盤とは予想できないのであるが…。

 ズバリ『ニュー・ジャズ・コンセプションズ』の聴き所は,後にビル・エヴァンス生涯のレパートリーとなる【ワルツ・フォー・デビイ】と【マイロマンス】でのソロ・ピアノ
 ほんの1分17秒で終わった(終わざるを得なかった)【ワルツ・フォー・デビイ】&ほんの1分58秒で終わった(終わざるを得なかった)【ワルツ・フォー・デビイ】。しかし,テーマの弾き加減は“秀逸”である。メロディアスなロマン主義〜。

 つまりはこういうことだ。『ニュー・ジャズ・コンセプションズ』時点でのビル・エヴァンスは,この2トラックのテーマ部以外は思案中。まだテーマをハイライトとしてイントロやBメロ聴かせる才能は発展途上。ピアノソロで聴かせるには2分弱が限界だった?

 そう。ビル・エヴァンスの個性とは単純に「テーマ弾き」であると思うのだが,この「テーマ弾き」を侮るなかれ。ビル・エヴァンスというジャズ・ピアニストは,そんじょそこらの「テーマ弾き」にはない“強烈なパワー・プレイ”が音を立てずに襲ってくる。← この音楽なのに「音を立てずに」という矛盾がミソ。

 ビル・エヴァンスというピアニストは,単なる優美さや繊細さだけで語られる存在ではなく,確固とした強靭さをも併せ持っている。きっぱりとして凛としている。「メチャメチャ我が強い」のが透けて見える。柔らかい印象の外見に似合わず,熱いハートの“ジャズメン魂”に突き動かされた「真に生真面目な暴れん坊」なのである。
 そんな創造のマグマが内に向かっているのがいいんだよなぁ。噴火しても安心な活火山なんだよなぁ。

NEW JAZZ CONCEPTIONS-2 ゆえに,すでに曲として完成されていた【アイ・ラヴ・ユー】や【スピーク・ロウ】ではベーステディ・コティックドラムポール・モチアンとのピアノ・トリオは歌えている。
 「テーマ弾き」としてのスタンスを崩さずに“新世代のバップ・ピアニスト”らしいアドリブ・ラインがリズミック。このバップなノリと曲の構成を分析しトータル・コーディネートのアクセントしてのアドリブ。この波長が調和するから美しいんだよなぁ。

 ケチをつけるつもりで書き始めたのに,結局は好きなんだよなぁ。『ニュー・ジャズ・コンセプションズ』が“地味に”好きなんだよなぁ。

  01. I LOVE YOU
  02. FIVE
  03. I GOT IT BAD AND THAT AIN'T GOOD
  04. CONCEPTION
  05. EASY LIVING
  06. DISPLACEMENT
  07. SPEAK LOW
  08. WALTZ FOR DEBBY
  09. OUR DELIGHT
  10. MY ROMANCE
  11. NO COVER, NO MINIMUM (take 2)
  12. NO COVER, NO MINIMUM (take 1)

(リバーサイド/RIVERSIDE 1956年発売/VICJ-60350)
(ライナーノーツ/オリン・キープニュース,小西啓一)
(紙ジャケット仕様)

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ビル・エヴァンス / ポートレイト・イン・ジャズ / BLUE IN GREEN (TAKE 2)5

 『PORTRAIT IN JAZZ』の11曲目は【BLUE IN GREEN(TAKE 2)】(以下【ブルー・イン・グリーン(テイク2)】)。


 【ブルー・イン・グリーン】について語る時“避けて通れない”のが,マイルス・デイビスカインド・オブ・ブルー』での大名演
 あの怪物CDカインド・オブ・ブルー』の中にあって【ブルー・イン・グリーン】は,一際輝く“白眉”の名演であった。
 「マイルス・デイビスがいい。ジョン・コルトレーンがいい。でも,やっぱりビル・エヴァンスが最高!」なのだ。

 【ブルー・イン・グリーン(テイク2)】でのビル・エヴァンスは『カインド・オブ・ブルー』での“あれ”を超えている! 
 リーダー奏者としてのマイルスコルトレーンも良かったが,こうしてエヴァンスのプレイを聴き返してみると,あの時何が欠けていたのかが良く分かる。そう。『カインド・オブ・ブルー』の名演にはビル・エヴァンスが本作で導入した「インタープレイ」的要素が欠けていた。

 【ブルー・イン・グリーン(テイク2)】でのビル・エヴァンスは,ベースドラムに積極的に絡みつき“ピアノ・トリオ”としての名演を目指している。全員が主役であり全員が脇役になりきっている。
 3人の無意識の連帯感が,原曲の“ソフト・ムード”を倍加させた,不思議な美しさに包まれた“動的な”演奏である。

BILL EVANS : Piano
SCOTT LaFARO : Bass
PAUL MOTIAN : Drums
 

ビル・エヴァンス / ポートレイト・イン・ジャズ / BLUE IN GREEN (TAKE 3)5

 『PORTRAIT IN JAZZ』の10曲目は【BLUE IN GREEN(TAKE 3)】(以下【ブルー・イン・グリーン(テイク3)】)。


 【ブルー・イン・グリーン(テイク3)】の“叙情性”に,ビル・エヴァンス“らしさ”が溢れている。
 活字で伝えるのは難しいビル・エヴァンスの“らしさ”とは,ソフトな曲調であればあるほどマッチする,あのハリのある強靱なピアノ・タッチ! 一音必殺=ビビットなのに淡い色彩!

 そう。ビル・エヴァンスの奏でる“線”は,くっきりと極太で描かれているのだが,その色選びが常に薄めの寒色系=“幸薄そうな”雰囲気のブルー&マイナー! やはり“叙情性”と表現するのが簡潔で一番であろう。
 管理人にとって“酒場で聴く”ジャズメンの代表格こそ,ビル・エヴァンス“その人”なのだ。

 2分42秒から3分23秒までの“グイグイ”感情を押してくるピアノの中にビル・エヴァンス“らしさ”がある!

BILL EVANS : Piano
SCOTT LaFARO : Bass
PAUL MOTIAN : Drums
 

ビル・エヴァンス / ポートレイト・イン・ジャズ / SOMEDAY MY PRINCE WILL COME5

 『PORTRAIT IN JAZZ』の9曲目は【SOMEDAY MY PRINCE WILL COME】(以下【いつか王子様が】)。


 ご存知,ディズニー「白雪姫」の挿入歌【いつか王子様が】である。ただし原型はとどめていない。テーマ以外はアドリブが持続している。
 誰もが知っている名曲なので,ジャズ初心者でも楽しめる。しかし実際はかなりの“ジャズ通”向け! 「敷居の高い」上級者向けの一曲なのである。

 と言うのは,管理人の実体験から…。
 ジャズを聴き始めた頃は,自分の知っている曲がスイングしているのが“面白かった”。このデフォルメが,いかにもジャズっぽい。雰囲気だけで聴いていた。
 しかし,いつ頃からだろう。雰囲気だけでは楽しめなくなった。毎回耳が“釘付け”になってしまう。ビル・エヴァンスの,いいや,ビル・エヴァンス・“トリオ”のインタープレイに,耳が這い蹲ってしまうのである。聴けば聴く程,これが“即興”であるとは信じられなくなる ← 勿論,リハーサル済みでした。

 一通りテーマを弾き終えた,37秒からの第2章の開始と同時に“いきなり”スコット・ラファロが“下へ下へ”と潜っていく。と同時にポール・モチアンがブラシでプッシュ! このグルーヴに,ビル・エヴァンスが“たまらず”白眉のアドリブで応えていく!
 初心者にとっては難解な,1分4秒から3分10秒までのインタープレイが【いつか王子様が】のハイライト! 真の聴き所なのである。特にポール・モチアンの“仕事ぶり”がいい。

 ビル・エヴァンス・トリオの【いつか王子様が】は子供向けなどではない。R−18指定,大人のジャズ・マニア限定の「ひそかな」楽しみである。

BILL EVANS : Piano
SCOTT LaFARO : Bass
PAUL MOTIAN : Drums
 

ビル・エヴァンス / ポートレイト・イン・ジャズ / SPRING IS HERE5

 『PORTRAIT IN JAZZ』の8曲目は【SPRING IS HERE】(以下【スプリング・イズ・ヒア】)。


 クラシックの名曲【ノクターン】が始まったかと思う,静かな静かなイントロで幕開ける【スプリング・イズ・ヒア】は,深〜く深〜く落ちていく“内省エヴァンス”の名演である。
 管理人は18秒からの3フレーズ目で,ピアノの音程を下げた瞬間から,ビル・エヴァンストリオのオリジナル演奏が始まったと解釈している。

 『ポートレイト・イン・ジャズ』は,強面=ホードボイルドな,真実のビル・エヴァンスを聴くためのCDであるが【スプリング・イズ・ヒア】の美しさは,そんな“強面色”をわずか1トラックで吹き飛ばす快演! ビル・エヴァンスは,正しく“耽美主義者”である!

 何の前触れもなく訪れるハイライト,4分0秒から4分18秒までのフレーズが大好きである。
 いやっ【スプリング・イズ・ヒア】では全く吠えないスコット・ラファロベースが,最後の最後に繰り出した,4分54秒からの“必殺”フレーズが好き。永遠の美を封じ込めた“神業”であろう。

BILL EVANS : Piano
SCOTT LaFARO : Bass
PAUL MOTIAN : Drums
 

ビル・エヴァンス / ポートレイト・イン・ジャズ / WHAT IS THIS THING CALLED LOVE?4

 『PORTRAIT IN JAZZ』の7曲目は【WHAT IS THIS THING CALLED LOVE?】(以下【恋とは何でしょう】)。


 【恋とは何でしょう】のビル・エヴァンスは硬軟自在! 鬼のように激しく鍵盤を叩きつけていくかと思えば,ほんの一瞬,定番の繊細な音もしっかり入れ込んでくる!
 “ジャズ・ピアニストビル・エヴァンスとしての“確かな力量”が感じ取れるトラックである。

 イントロから始まる3人のインタープレイが実に素晴らしい! そのせいだろう。あまりの出来の良さに乗せられた?ビル・エヴァンスピアノが,2分24秒から完全に一人で“疾走”してしまっている。エヴァンスも“人の子”であった。

 この強烈なアタックは“あの”スコット・ラファロさえ沈黙させてしまうほど…。
 耳慣れないうちは,2分49秒からのベースソロが始まると同時に「ああ,ビル・エヴァンストリオの演奏だった」と,正気に戻されたものである。

 力業が続いた後だけに,もろメゾピアノ?の,4分24秒からのフレーズがメチャ効いている。

BILL EVANS : Piano
SCOTT LaFARO : Bass
PAUL MOTIAN : Drums
 

ビル・エヴァンス / ポートレイト・イン・ジャズ / PERI'S SCOPE4

 『PORTRAIT IN JAZZ』の6曲目は【PERI’S SCOPE】(以下【ペリズ・スコープ】)。


 【ペリズ・スコープ】は,親しみやすい“メジャー”テーマとジャズ・ピアノの“強さ”を兼ね備えた,エヴァンス・ファンにはお馴染みの名トラック!

 イントロから“ノリノリ”のビル・エヴァンストリオの演奏が“軽快&快調”に進みゆく。16秒から20秒までの,小声で静かな“ピアノピアノ”がアクセント!
 29秒から,ビル・エヴァンスアドリブが始まると,そこはすっかり“ジャズピアノの世界”。ビル・エヴァンスの左手が名サポーターとなり大活躍。右手は相変わらず雄弁だ。ず〜っと聴き所が持続する。
 2分38秒からのテーマは,ワン・オクターブ上の“弾んだ”音色で語り出す。ビル・エヴァンスの高揚感が感じられて,愛おしい。
 
BILL EVANS : Piano
SCOTT LaFARO : Bass
PAUL MOTIAN : Drums
 

ビル・エヴァンス / ポートレイト・イン・ジャズ / WHEN I FALL IN LOVE4

 『PORTRAIT IN JAZZ』の5曲目は【WHEN I FALL IN LOVE】(以下【ホエン・アイ・フォール・イン・ラヴ】)。


 【ホエン・アイ・フォール・イン・ラヴ】のビル・エヴァンストリオは,実に“端正”で落ち着いた演奏。これこそピアノ・トリオの“お手本的な”名演である。

 普段ほとんどジャズを聴かない人たちが,それはもう勝手に抱いている“ジャズの流れるシチュエーション”として,お洒落なバーでブランデー片手に,という映像がある。管理人がジャズ好きだということが知られると,大抵,お奨めのジャズ・バーについて尋ねられてしまうからだ。
 あまり外で飲む習慣はないので,答えに窮していつも困るのであるが,その質問のイメージ自体はよ〜く分かる。

 管理人がジャズを聴くスタイルは「CDプレイヤー+ヘッドホン+正座」である(あっ,正座は冗談です。でも背筋を伸ばして聴いています)。あまり“ながら聴き”はしないたちである。
 しかし,それはCD1,2枚が限度。そのうちリクライニング・シートに移動し“ボーっと無心で”間接照明&ウイスキー。
 “ジャズ&ブランデー”という世間一般のイメージは管理人に関する限り“真実”なのである。

 そんな時“酒のつまみ”によく聴くのが,この【ホエン・アイ・フォール・イン・ラヴ】だったりする。この“端正”な演奏が実に心地よい瞬間があるからだ。

 今夜は真面目に?その秘訣を探るべく正座して聴いてみた。まず,このよく知られたテーマに“ホッと”させられる。覚えにくいメロディだとこうはいかない。
 次に2分24秒から2分32秒までの一瞬の盛り上がり! ここが絶妙の“スパイス”となっている。その後はすぐにクール・ダウン。この“緩急自在の大人の演奏”が“ほろ酔い”加減にちょうどいい。
 そう。【ホエン・アイ・フォール・イン・ラヴ】の“中の上”あたりを狙った(と思われる?),ピアノ・トリオの模範的な演奏から来る,安定感! そこに今夜も癒やされている。

BILL EVANS : Piano
SCOTT LaFARO : Bass
PAUL MOTIAN : Drums
 

ビル・エヴァンス / ポートレイト・イン・ジャズ / WITCHCRAFT5

 『PORTRAIT IN JAZZ』の4曲目は【WITCHCRAFT】(以下【ウィッチクラフト】)。


 【ウィッチクラフト】は名トラックである。読者の皆さんには,まずこの点をしっかりと押さえておいていただきたい。
 管理人の“ジャズ批評家”としてのプライドをかけてここに提言するが,世間の下す【ウィッチクラフト】への評価は余りにも低すぎる!

 『ポートレイト・イン・ジャズ』と言えば,世間では【枯葉】【降っても晴れても】【いつか王子様が】【スプリング・イズ・ヒア】【ブルー・イン・グリーン】の名が挙がる。この結果は至極当然のこと。さして異論はない。
 残念なのが【ウィッチクラフト】についての評価を尋ねた場合。ほとんどの場合,ハテナ?あるいは“ああ,そう言えば”的な反応に終始する…。

 NO.1に挙げろ,とまでは言わない。ただ,もっと評価のしようがあるだろうに,と思ってしまう。真にガッカリである。いや,この低評価に憤りさえ感じてしまう。全てのジャズ・ファンに,もう一度“評価の見直し”をお願いしたいほどなのだ。
 なぜならば,管理人的には『ポートレイト・イン・ジャズ』の中で,エヴァンス“らしさ”を色濃く感じるのが,何を隠そう【ウィッチクラフト】だからである。

 このエヴァンス“らしさ”を説明するのは難しいのだが,互いに剣を交えることで剣を“研ぎ合う”的なこと。勝つ負けるの勝負ではなく,腕を上げるための“手抜きなし”の腕試し的な…。そう。ここは命懸けの寸止めの世界。ここに“美”が宿っている。

 【ウィッチクラフト】の構図はこう。( エヴァンスの左手 < リズム隊 < エヴァンスの右手 )+ 耽美主義!

 序盤は左手一本でリズム隊の頭を押さえつけていたビル・エヴァンスピアノであるが,スコット・ラファロベースが暴れだすと,もはや押さえが効かなくなる。
 なんとなく「暴動を制圧にかかる政府」の描写のようであるが,ビル・エヴァンスジャズ・ジャイアントであることを忘れてはならない。
 ビル・エヴァンスは暴動を力業ではなく自分の右手で,それはそれは美しいフレーズを奏でて制圧にかかる。スコット・ラファロポール・モチアンも納得の,最高のアドリブで静まりかえったのである。

 NO.1とは言わないが…。by 「アドリブログ」+【ウィッチクラフト】評価向上委員会。

BILL EVANS : Piano
SCOTT LaFARO : Bass
PAUL MOTIAN : Drums
 

ビル・エヴァンス / ポートレイト・イン・ジャズ / AUTUMN LEAVES (TAKE 2)5

 『PORTRAIT IN JAZZ』の3曲目は【AUTUMN LEAVES(TAKE 2)】(以下【枯葉(テイク2)】)。


 【枯葉(テイク2)】はモノラル録音。モノラルゆえ一音一音の粒立ちには欠けるが,全体のまとまりはステレオ以上である。

 これ以降はオーディオ論になってしまうのだが,スピーカーは2WAYより3WAY,3WAYより4WAYの方が音がいい,と勘違いしている人が多いのでは?
 確かにマルチウェイは特定の音域だけを扱うので有利な面を持つことは事実だが,アンプからの出力がダイレクトにボイスコイルに流れ込むフルレンジ1発の方が音質的には断然いい(無論,フルレンジの質がいい場合に限った話)。

 この理論の延長線上に,アナログレコードCDがある。最近はSACDも登場し,一概にどちらがいいとは言い切れないのであるが,管理人の中では,最高に調整されたプレーヤーで聴く“あの”アナログレコードの音をCDはまだ完全に越え切れていないと思う…。アナログ万歳!!

 【枯葉(テイク2)】のレビューから逸脱してしまったが,要は“まとまりの良さ”では【枯葉(テイク2)】! ピアノ・トリオの“品の良さ”が素直に伝わってくる。
 一方,ビル・エヴァンスにしてもスコット・ラファロにしても“アドリブの冴え”では【枯葉(テイク1)】か? うーん。どちらを取るか。この判定は難しい。

 2トラックとも曲の流れに大差はないが,瞬間瞬間に訪れる,そのテイク特有の微妙な違いを聴き逃さないでいただきたい。ただし,そこばかり追いかけると“木を見て森を見ず”の落とし穴にはまってしまう。
 そう。『ポートレイト・イン・ジャズ』での【枯葉】の魅力は“奇跡の3人”と呼ばれたビル・エヴァンス・トリオ3人のインタープレイにある! この大枠だけはしっかりと押さえていてほしい。

BILL EVANS : Piano
SCOTT LaFARO : Bass
PAUL MOTIAN : Drums
 

ビル・エヴァンス / ポートレイト・イン・ジャズ / AUTUMN LEAVES (TAKE 1)5

 『PORTRAIT IN JAZZ』の2曲目は【AUTUMN LEAVES(TAKE 1)】(以下【枯葉(テイク1)】)。


 決定的名演があるスタンダード・ナンバーで“元祖”が確立したイメージを打ち破るのは難しい。
 【枯葉】と言えば,キャノンボール・アダレイマイルス・デイビスによる“スロー&ムーディー”が定番だが【枯葉(テイク1)】は,アップテンポのエヴァンス流! ビル・エヴァンスのこのアイディア,そして実行力が素晴らしい!

 イントロのかっ飛ばし方がすごいので,あの哀愁漂う【枯葉】をイメージしていると,面食らってしまうだろう。
 実は管理人もこのトラックを初めて耳にした時「なんかどこかで聴いた曲だなぁ〜」としか思わなかった。原型だけが残された全くの別物。衝撃の変貌ぶりである。
 
 ここまで新旧【枯葉】対決を軸にレビューしてみたが『ポートレイト・イン・ジャズ』の【枯葉(テイク1)】は,ビル・エヴァンスマイルス・デイビスではなく,ビル・エヴァンススコット・ラファロの対決が機軸を為している!
 まるでマイルス・デイビスなど眼中にないかのように…。

 例えば,45秒から2分2秒までのベースソロ終わりでの主導権争い! メロディを奏でようとするビル・エヴァンスと,そうはさせじとメロディカルなリズムを押し出すスコット・ラファロとの綱引き。これぞインタープレイである。

BILL EVANS : Piano
SCOTT LaFARO : Bass
PAUL MOTIAN : Drums
 

ビル・エヴァンス / ポートレイト・イン・ジャズ / COME RAIN OR COME SHINE4

 『PORTRAIT IN JAZZ』の1曲目は【COME RAIN OR COME SHINE】(以下【降っても晴れても】)。


 【降っても晴れても】のビル・エヴァンスピアノ・タッチが実に硬い。超・硬質の音! ハードボイルド!

 普段は音色うんぬんより,アドリブの出来に自然と注意が集中するのだが【降っても晴れても】に関しては,どうしても“硬質なタッチ”に耳が奪われてしまうのだ。
 ベースドラムの“よりダークな”音色も加わって,この辺りをどう評価するかで,好き嫌いが分かれるかもしれない。

 この【降っても晴れても】の「音色偏重説?」にはもう一つ,確たる理由がある。それこそビル・エヴァンス流のアドリブ! 原曲の崩しすぎだ。
 ビル・エヴァンスとしては【降っても晴れても】をプレイしているつもりだろうが,聴き手はほとんど「この曲何だっけ?」状態。何事も“やり過ぎ”はよろしくない。

 さて,管理人の評価であるが,なんだかんだケチをつけてみたが【降っても晴れても】は,本音の部分でチョー好み。“強面”のビル・エヴァンスも案外悪くない。

BILL EVANS : Piano
SCOTT LaFARO : Bass
PAUL MOTIAN : Drums
 

ビル・エヴァンス / ポートレイト・イン・ジャズ5

PORTRAIT IN JAZZ-1 『釣りはフナに始まりフナに終わる』。
 フナ釣りは一見簡単そうに思える。実際,初心者でも釣り堀に行けば簡単に楽しめてしまう。しかし,いざ本格的にフナ釣りに取り組むと非常に奥深い。それで釣りの達人たちは様々な釣りを経て,結局はフナ釣りへ原点回帰する…。

 『ジャズエヴァンスに始まりエヴァンスに終わる』。
 そう。ジャズにおけるフナ釣り,それがビル・エヴァンスである。

 ビル・エヴァンスの音は何とも耳あたりがよい! 管理人はこれからジャズに接する人への一枚目として,まずはビル・エヴァンスをお奨めすることにしている(厳密にはその人の好みをヒアリングしてからお奨めしています。自分は違うものを奨められたからと言って怒らないでくださいねっ)。
 ジャズの良さを知る前に,チャーリー・パーカーセロニアス・モンクジョン・コルトレーンオーネット・コールマンなどの爆弾(問題作)と“うかつにも”出会ったが最期,その人はジャズ・アレルギーを覚え,もう二度とジャズの世界へ足を踏み入れようとはしないだろう。何とももったいない。

 それはアレルギーを覚えたその当人が悪いのではない。爆弾を奨めた友人,逆に言えば“ビル・エヴァンスを奨めなかった”その友人の功罪なのだ。とにかくエヴァンス嫌いは少ないので,ベストではなくともベターな選択ではあると思っている。
 
 あれ? 管理人がジャズの一枚目としてビル・エヴァンスを奨めるのは,爆弾を踏ませないための単なる“逃げ”ではなかろうか? いや,断じて違う。ビル・エヴァンスは“攻め”である。

 『ジャズエヴァンスに始まりエヴァンスに終わる』。

 この格言を思い起こしていただきたい。ジャズの初心者から中級者,そして上級者への階段を昇るにつれ,真のジャズ・ファンならば,必ずビル・エヴァンスに戻ってくる! そう。最初の一枚が最後の一枚にも成り得るのだ。

 ビル・エヴァンスの音楽は,ソフトな第一印象とは異なり,フナ釣りのように奥深い。取っつきやすいが上達するのは難しいのである。分かっていたようで,実はおいしいところを聴き逃していた,ということが何度もある。壁にもぶち当たるが力がつけばつく程楽しめる。
 フナ釣りというよりも“大人”になって帰ってくる『鮭の川上り』の例えが適切なのかもしれない…。それがビル・エヴァンスジャズ・ピアノなのである。

PORTRAIT IN JAZZ-2 さて,ビル・エヴァンスの数多くの名盤の中でも“まずは一押し”『PORTRAIT IN JAZZ』(以下『ポートレイト・イン・ジャズ』)を聴いてみてほしい。

 伝え聞くところによると『ポートレイト・イン・ジャズ』で,ビル・エヴァンスはどうしてもソロ名義ではなく「TRIO」名義を名乗りたかったらしい。
 ここにエヴァンス自身の『ポートレイト・イン・ジャズ』への“こだわり”を窺い知ることができよう。『ポートレイト・イン・ジャズ』でのビル・エヴァンストリオこそが「THIS IS THE PIANO TRIO」であるという自負!
 確かに「ピアノベースドラムの三者が対等なインタープレイ」の完成度が抜群に素晴らしい! 聴き込めば聴き込む程“新鮮味”を増してくる名盤である。

 皆さんも『ポートレイト・イン・ジャズ』で,ビル・エヴァンスの耽美な世界へと,ついでジャズの大海原へと旅立ってみてほしい! そして立派な『鮭』となり『エヴァンスジャズの川上り』を!

 「ワンパクでもいい! たくましく育ってほしい!」 by 丸大ハム & セラビー

  01. COME RAIN OR COME SHINE
  02. AUTUMN LEAVES (take 1)
  03. AUTUMN LEAVES (take 2)
  04. WITCHCRAFT
  05. WHEN I FALL IN LOVE
  06. PERI'S SCOPE
  07. WHAT IS THIS THING CALLED LOVE?
  08. SPRING IS HERE
  09. SOMEDAY MY PRINCE WILL COME
  10. BLUE IN GREEN (take 3)
  11. BLUE IN GREEN (take 2)

(リバーサイド/RIVERSIDE 1960年発売/VICJ-23516)
(ライナーノーツ/オリン・キープニュース,粟村政昭)

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