アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

CD批評:矢野 沙織

矢野 沙織 / バブル・バブル・ビバップ4

BUBBLE BUBBLE BEBOP-1 矢野沙織の2年半ぶりとなる新作『BUBBLE BUBBLE BEBOP』(以下『バブル・バブル・ビバップ』)である。
 前作『ANSWER』がファン投票によるリクエスト・アルバムであったから,純粋なオリジナル・アルバムとしては実に5年振りのことである。

 あの勢いを,毎年毎年アルバムをリリースしていた頃の矢野沙織を知るファンとしては,本当に待ちくたびれてしまった。危うく矢野沙織の存在を忘れてしまうところであった。
 矢野沙織さんちの沙織さん,一体どうしてしまったのだろう?

 『バブル・バブル・ビバップ』を聴いて,その答えが分かった。矢野沙織には迷いがある。この5年もの間,自分の進むべき道の分岐点で立ち止まっていたのだろう。
 その分岐点とは,1つが『BEBOP』への道であり,もう1つが『BUBBLE BUBBLE BEBOP』への道であった。矢野沙織は今回『BUBBLE BUBBLE BEBOP』への道を選択した。
 果たしてこれから先『BEBOP』への道へ引き返す勇気を持ち合わせているのだろうか? “バッパー”としての矢野沙織愛するがゆえに心配に思っている。

 『バブル・バブル・ビバップ』は,間口の広いジャズ・アルバムに違いはないが,正しく“BUBBLE”である。泡として消え去るべき“一過性のジャズ”止まりであって“バブリーに弾けたビバップ”までは達し得ていない。
 だから『バブル・バブル・ビバップ』は,矢野沙織のアルバムとしては初めてヘビーローテーションにはならなかった。

BUBBLE BUBBLE BEBOP-2 『バブル・バブル・ビバップ』で繰り返し聴くのは3曲のみ! やっぱりお目当てはチャーリー・パーカーの【CONFIRMATION】!
 『YANO SAORI』での“衝撃の”【CONFIRMATION】と聴き比べると“ジャズメン”矢野沙織としての成長を実感する。

 好きな方はデビュー・アルバムの方の【CONFIRMATION】である。しかし『バブル・バブル・ビバップ』での【CONFIRMATION】も悪くはない。
 ノリとかスピード感では『YANO SAORI』での大名演に劣ってしまうが,演奏の質とか音の深みでは断然上である。大人な【CONFIRMATION】である。こういう【CONFIRMATION】も悪くはない。

 続いてはキャノンボール・アダレイの【MERCY,MERCY,MERCY】! こちらも「日本のキャノンボール・アダレイ」と呼ばれた矢野沙織の,少女時代では演奏できなかった,実にファンキーで実に豪華な【MERCY,MERCY,MERCY】に身を乗り出してしまう名演である。

 3曲目はスローでムーディーなフランス映画「ベティ・ブルー」のテーマ【BETTY ET ZORG】! 妖しいアルトサックスに妖艶な口笛がエモーション
 特にアルトサックスの音色一発にやられてしまう。矢野沙織の“音の個性”が強く感じられる。名演である。以上!

BUBBLE BUBBLE BEBOP-3 多重録音やらキューバンラテンやら詩の語りやらヴォーカルやら…。
 これ以上!は矢野沙織の興味の“てんこ盛り”風な演奏ばかりであって興味が湧かない。
 矢野沙織よ,早く迷路から抜け出して来い! ジャズ一本を貫け! 『BUBBLE BUBBLE BEBOP』ではなく『BEBOP』を選択せよ!

 いろいろとマイナスな感想を書き連ねてきましたが,それでも矢野沙織・ファンは辞められません。
 矢野沙織・ファンを辞める時=ジャズ・ファンを辞める時。地獄に落ちるその日まで矢野沙織を応援し続けたいと思います。

PS 「BUBBLE BUBBLE BEBOP-3」は販促用の特製アーティスト写真です。

  01. Blowin' The Blues Away
  02. Bluebird
  03. Puerto Rico〜砂とスカート
  04. Betty Et Zorg
  05. Mercy, Mercy, Mercy
  06. Bayou
  07. Avalon
  08. Bye Bye Babylon
  09. Confirmation

(サヴォイ/SAVOY 2015年発売/COCB-54166)
(ライナーノーツ/馬場雅之)

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矢野 沙織 / ANSWER4

ANSWER-1 矢野沙織の10周年! 10年後の矢野沙織は,こんなに素敵なコスプレイヤーになったとさ!?

 そう。ビリー・ホリディに触発され,チャーリー・パーカーに恋焦がれてデビューした16歳の天才少女。あのピュアでストレートなビ・バップ! 管理人はモー娘。よりも長澤まさみよりも矢野沙織が大好きでした。沙織ちゃん,ご結婚おめでとうございます。だ・か・ら・小林香織LOVEか山中千尋LOVEな気分なのです。

 10年後には日本を代表するジャズ・サックス・プレイヤーになっていると信じていたのに…。まぁ,ある意味では日本を代表するジャズ・サックス・プレイヤーにはなりました。ビジュアル系ですけどね…。

 女性は3日で変身する。10年後のビジョンなどあってないようなもの。でも,このコスプレはないでしょう。あ〜っ,バニーガールは嫌いではないのですが…。

 次に管理人が苦言を呈するのは『ANSWER』の選曲について。
 『ANSWER』=ファン投票によるリクエスト・アルバム。当然,有名スタンダード中心になることは織り込み済み。合計14曲なのも頑張ったと思います。でもでも…。

 管理人が投票したパーカー・ナンバー=【CONFIRMATION】が漏れている。『ANSWER』は矢野沙織の10周年記念盤。デビューCDの1曲目【CONFIRMATION】を持ってきてこそ「10周年。こんなに立派になりました」でしょ? それでこそファンへの感謝だと思っていたのにぃ。
 【CONFIRMATION】だけではありません。パーカー・ナンバーが軒並み選考外。これって有りなの?

 美人なのにコスプレでバッパーなのに脱バード。うーむ。
 『ANSWER』を今週参戦「大西順子・引退ツアー」の直後に聴き込んだからなのだろう。諸悪の根源?矢野沙織のアイドル路線はレコード会社主導。矢野沙織本人がビジュアル系にノリノリだから良いようなものの,管理人のような本格路線を待望するコアなファンのリクエストとは相容れない。商業主義がどうにも気に入らん。どうしよう。“推し変”しちゃおうかなぁ〜。

 あっ,そうだ。来月参戦「2012 ANSWER」の福岡ツアーで,沙織ちゃんへお仕置きだ。ライブで“お尻ペンペン”だ。バッパー路線へ回帰して〜。

ANSWER-2 だ〜って『ANSWER』での矢野沙織の演奏が凄いんだから。これぞ10周年の貫禄。コスプレ・ジャケットに目を閉じてアルト・サックスの動きに意識を集中すると,もはや初老のアルト・サックス? 矢野沙織よ,お前も年齢詐称なのかい?

 そもそも冷静になって考えるとファン投票によるリクエスト・アルバムの敷居は高い。無数のカバーやリアレンジが存在する有名スタンダードを演奏するということは,比較され批評される行為に甘んじるということ。相当な覚悟が必要だったはず。
 矢野沙織は10周年という節目の年に,自分自身に大プレッシャーをかけたのだ。

 出すべき音を丁寧に選び取りフレージングを磨き上げた矢野沙織の演奏はストイックなアプローチ。
 この硬派なる演奏姿勢こそ,ジャズ・サックス・プレイヤーとして10年間の鍛錬を続けてきた矢野沙織からの「答え」=『ANSWER』なのであろう。

 いろいろとマイナスな感想を書き連ねてきましたが,それでも矢野沙織・ファンは辞められません。
 矢野沙織・ファンを辞める時=ジャズ・ファンを辞める時。地獄に落ちるその日まで矢野沙織を応援し続けたいと思います。

  01. The Days of Wine and Roses
  02. All of Me
  03. Moon River
  04. 砂とスカート
  05. Moody's Mood for Love
  06. Theme from "TAXI DRIVER"
  07. A Night in Tunisia
  08. Sing Sing Sing〜It Don't Mean A Thing (If It Ain't Got
     That Swing)

  09. Answer
  10. Waltz for Debby
  11. La Vie en Rose
  12. You'd Be So Nice To Come Home To
  13. Left Alone
  14. ウイスキーが,お好きでしょ

(サヴォイ/SAVOY 2012年発売/COCB-54001)
(ライナーノーツ/矢野沙織,中野俊成)

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矢野 沙織 / BE BOP AT THE SAVOY5

BE BOP AT THE SAVOY-1 管理人の愛する「JAZZ QUEEN矢野沙織
 「アドリブログ」は矢野沙織を称賛するために始めたブログ
 そんな矢野沙織の大名盤BE BOP AT THE SAVOY批評

1)往年のバップ・ナンバーへの「いぶし銀の」選曲眼。
2)“パーカー派”矢野沙織復活。
3)『LITTLE TINY』でのオルガングルーヴ路線の復活。
4)「サヴォイ」のジャズメンとしての誇りと自覚。
5)キー・パーソン=ルー・ドナルドソン矢野沙織の接点。
6)3作品連続ボーナス・トラックのハズシへの怒り。
7)そして何より感じた矢野沙織の新境地…。

 軽〜く数えて上記7点。『BE BOP AT THE SAVOY批評で書きたいこと,いいや,書かなければならないことはごまんとある。
 しかし今回はCD批評は全カット。『BE BOP AT THE SAVOY批評については,あるドラマーのお話をしようと思う。

 その昔,管理人の職場に大学生の男の子がアルバイトでやってきた。かなり“しゅっとした”感じのイケメンで頭も良いし気が強い。でも深夜〜早朝の別のバイトと掛け持ちしている頑張り屋さんだった。聞けば日中はドラムの個人練習&バンド全員での練習時間。真面目にプロを目指していた。
 そんな彼がNYへ卒業旅行に行った。目的は観光ではない。NY旅行のメインはプロのドラマードラムの個人レッスンを受けること。先生の名前は田井中福司

BE BOP AT THE SAVOY-2 (管理人)「田井中福司? 聞いたことないなぁ」。(彼)「田井中さんは凄いドラマーなんですよ。セラビーさんがよく口にするデイヴ・ウェックルとも交流している方なんですよ」。
 そうは言われても,口には出さなかったが,見たことも聞いたこともない,名前さえ知らないドラマーにNYまで出掛けて師事するとは,正直「お金が勿体無い?」と思ってしまった。田井中福司の音源を探してみようとも思わなかった。

 彼は大学卒業後も就職するでもなくうちの職場でバイトしていたが,そのうち東京へと引っ越した。あるクラブでドラマーの仕事が決まったそうだ。フロア兼ドラマーの半プロ生活を送りながらメジャー・デビューを目指していた。アッパレな男である。

 その後,職場で彼についての話題も出なくなった。メジャー・デビューしたという噂も聞かない。自然と管理人の記憶の中からいなくなってしまった。
 しかし,あるアルバムのクレジットを見て,猛烈に彼と話したい,との衝動に襲われた。そう。ドラマー田井中福司。『BE BOP AT THE SAVOY』でドラムを叩いていたのだ。

 初めて聴いた田井中福司ドラミングの(正直,矢野沙織の極上のアルト・サックスに耳が惹かれてかなわないのだが)なんとしなやかなことか!
 矢野沙織が気持ちよくグルーヴしている。田井中福司が産み落とすスイングの波を泳いでいる。チャーリー・パーカー直系のルー・ドナルドソンのレギュラー・ドラマーは伊達ではない。

BE BOP AT THE SAVOY-3 矢野沙織のミディアム・テンポゆえの“フレージングの妙”! 自由自在にアルト・サックスを“転がし続けている”! 演奏に余裕とスケール感が表現されている! これぞ田井中効果=『BE BOP AT THE SAVOY』最大の聴き所であろう。
 こんなことならもっと田井中福司のことを聞いとけばよかった。

 いつの日か管理人は矢野沙織のニュー・アルバムのクレジットに「松原○○ ドラム」の文字を見ることを楽しみにしている。松原くん,東京で頑張っているんだろうなぁ(セミプロの有名人なのだから名字のみの露出は応援クリックの意)。

PS 「BE BOP AT THE SAVOY-3」は販促用のコースターです。アートワーク!

  01. The Kicker
  02. Sweet Cakes
  03. Blues Walk
  04. You'd Be So Nice to Come Home To
  05. S' Wonderful
  06. Lullaby of Birdland
  07. Olive Refractions
  08. Stardust
  09. Five Spot After Dark
  10. How High the Moon
  11. Laura Peacock〜太陽の船のテーマ

(サヴォイ/SAVOY 2010年発売/COCB-53903)
(ライナーノーツ/小川隆夫)

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矢野 沙織 / GLOOMY SUNDAY〜TRIBUTE TO BILLIE HOLIDAY4

GLOOMY SUNDAY〜TRIBUTE TO BILLIE HOLIDAY-1 「モノマネ。それはトリビュート」。
 この言葉が真実であるとするならば,矢野沙織ビリー・ホリディへのトリビュート作=『GLOOMY SUNDAY〜TRIBUTE TO BILLIE HOLIDAY』は,矢野沙織流・ビリー・ホリディの“大いなるモノマネ”である。

 そう。『GLOOMY SUNDAY〜TRIBUTE TO BILLIE HOLIDAY』での矢野沙織は“自分らしく”あろうなどと考えてはいない。潔いくらい「ビリー・ホリディだったらこのように吹く」のフレージング。ほんの少し崩れたフレージングに矢野沙織の個性が顔を出している。おちゃめっ!

 『GLOOMY SUNDAY〜TRIBUTE TO BILLIE HOLIDAY』は,敬愛するビリー・ホリディのレパートリー集。斎藤ネコのアレンジによる豪華なストリングス・オーケストラをバックに“ビリーばり”に歌い上げる矢野沙織初の「ウィズ・ストリングスCD
 「ウィズ・ストリングス」はジャズメン「夢のフォーマット」。そんな夢を22歳にしてかなえてしまう。そんな恐怖心から斎藤ネコへの丸投げ+オルガンの導入でお茶を濁したふてぶてしさ。うん。沙織ちゃんも22歳になったんだなぁ。

 さて,矢野沙織ビリー・ホリディ矢野沙織ジャズの世界に入るきっかけとなったジャズボーカリストビリー・ホリディ
 そしてデビュー後の矢野沙織の心の支えがビリー・ホリディ=くじけない。そう。ビリー・ホリディが「JAZZ QUEEN矢野沙織の育ての親。
 奇しくも2009年はビリー・ホリディの没後50年。『GLOOMY SUNDAY〜TRIBUTE TO BILLIE HOLIDAY』こそ,矢野沙織による「ビリー・ホリディの後継者宣言!」なのである。

 矢野沙織が「神様」と讃えるビリー・ホリディへの幸福なトリビュートジャケット写真での斎藤ネコつながりの「猫のコスプレ」は,矢野沙織本人ではなくビリー・ホリディへと“なりきる”ために必要な儀式?
 そんな矢野沙織改めビリー・ホリディ名義?による『GLOOMY SUNDAY〜TRIBUTE TO BILLIE HOLIDAY』で矢野沙織が自ら初めてライナーノーツを書いているのだが,その中で自分とビリー・ホリディの違いを明確に書き記している。
 矢野沙織はタダモノではなかった。矢野沙織の理解力に恐れ入ってしまった。ビリー・ホリディの不遇を承知の上での「ビリー・ホリディの後継者宣言!」は矢野沙織の幸福なジャズ・ライフの指標であろう。

 矢野沙織の幸福なジャズ・ライフが「人の肉声に最も近い楽器」アルト・サックスを通して見事に表現されている。本当に肉声で歌っているかのごとく一つ一つの音のあつかいが丁寧で,歌詞の意味さえ聴こえてきそうな演奏。深みを増した陰影の音色と天才的なアドリブに聴き惚れる〜。

GLOOMY SUNDAY〜TRIBUTE TO BILLIE HOLIDAY-2 管理人の結論。『GLOOMY SUNDAY〜TRIBUTE TO BILLIE HOLIDAY批評

 矢野沙織アルト・サックスと流麗なストリングスとのコントラストが最高に美しい。
 成功の理由は矢野沙織の「ウィズ・ストリングス」に迎合することのない“王道アルト”の存在感。あくまで主役はアルト・サックス矢野沙織アルト・サックスストリングスが“寄りそう”秀逸アレンジ。斎藤ネコ,いい仕事しています。
 ただし,いつも通りのプレイ・スタイルを貫き通したのは素晴らしいが,ワンホーンストリングスに絡みつくには,ちょっと線が細いというか,優等生的過ぎるというか,もっと図太さとか,八方破れなところがあったほうが企画盤としては面白かったかなぁ。

  01. Don't explain
  02. Yesterdays
  03. Lover Man
  04. Everything Happens To Me
  05. Night & Day
  06. Summertime
  07. Gloomy Sunday
  08. Strange Fruit
  09. Left Alone
  10. Lover Come Back To Me (SECRET TRACK)

(サヴォイ/SAVOY 2008年発売/COCB-53752)
(☆HQCD仕様)
(ライナーノーツ/矢野沙織,馬場啓一)

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矢野 沙織 / LITTLE TINY4

LITTLE TINY-1 矢野沙織ジャズ・サックスと向き合う時,彼女の若さなど意識することはない。仮に意識しようものなら「世界の中心で愛を叫」びたくなってしまうはず?(管理人は今でも長澤まさみが大好きです!)。

 しかし矢野沙織の7th『LITTLE TINY』を聴いた瞬間,いつもの圧倒的なテクニックに感動すると共に「等身大の」矢野沙織を強く意識させられてしまった。全ての演奏が「初老」のそれであるが,時折強烈な「若さ」を感じる瞬間が記録されているのだ。
 これは初めての感覚。過去のどの作品からも感じられなかった不思議な感覚。これぞ若さ溢れる躍動感の自然体。そう。『LITTLE TINY』で矢野沙織がまた1枚脱皮した。またしてもハートを鷲掴みされてしまった。一体どこまで登りつめるんだ〜。

 『LITTLE TINY』での年季の入った音色と若さはつらつのフレージング。矢野沙織アルト・サックスが躍動している。やっぱり矢野沙織は凄すぎる。超大物=ロニー・スミスの音圧をしっかり受け止め,動じない矢野沙織が男前。
管理人の心境こそが“揺れ動く女心”なのである。どうしよう。

 『LITTLE TINY』は,ベストCD矢野沙織BEST 〜ジャズ回帰〜』の大ヒットを受けて準備されたジャズ・オルガン界の大御所=ロニー・スミス,馴染みのギタリストピーター・バーンスタイン,大物ドラマールイス・ナッシュとのオルガン・トリオとのワンホーンで乗り込んだNY録音である。

 矢野沙織オルガンと来れば名盤SAKURA STAMP』であろうが『LITTLE TINY』は『SAKURA STAMP』の続編ではない。
 『SAKURA STAMP』が矢野沙織のオリジナル集だとすれば『LITTLE TINY』は矢野沙織スタンダード集。“矢野沙織の”との枕詞がミソであって『LITTLE TINY』にはジャズ・スタンダード以上に【クロース・トゥー・ユー】【ベルベット・イースター】【ダニー・ボーイ】での“らしい”解釈が際立つ選曲。矢野沙織の「グルーヴィーで歌心溢れる」演奏が素晴らしい。

 加えて,絶賛すべきは矢野沙織のオリジナル=【マイ・ベイビー・ショット・ミー・ダウン】【パードン・ルーシー】。
 チャーリー・パーカーホレス・シルヴァーマイルス・デイビスギル・エヴァンスと横一線に並べても遜色ないバップ・ナンバー。
 「21世紀のジャズ・スタンダード」と来ればハービー・ハンコックの『ザ・ニュー・スタンダード』を連想する管理人であるが,ハービー・ハンコックに代表される既存曲の発掘よりも矢野沙織のような書き下ろしに可能性大を実感してしまう。うん。

LITTLE TINY-2 思うに『LITTLE TINY』での矢野沙織の成長は,前々作『GROOVIN’ HIGH』でのジェームズ・ムーディーとの幸運な出会いが“花開いた”結果だと思う。

 テナー・サックスジェームズ・ムーディーアルト・サックス矢野沙織が師事した理由は,当然演奏力の向上もあろうが,それ以上に音楽性。いいや,ジャズメンとしての人間性にある。
 矢野沙織を弟子として娘のように,時に優しく時に厳しく,朝4時から晩8時まで寝食を共にした2週間に及ぶ自宅レッスン。ジャズの真髄に初めて触れた矢野沙織は「他の人を生かし自分を生かすジャズメン」へと成長した。

 そう。『LITTLE TINY』の音造りは「ロニー・スミストリオフィーチャリング矢野沙織」!
 矢野沙織アルト・サックスが実に自然に,オルガンギタードラムと調和して響いている。ゆえに全員のソロに,そのプレイヤーとしての個性が色濃く表われている。『LITTLE TINY』が矢野沙織と3回目のレコーディングとなったピーター・バーンスタインが“別人格の”アドリブを繰り出している。

 聞けば,今作のレコーディングはスタジオの機材にトラブルがあり4人ともブースは使わず,顔と顔を突き合わせたライブに近いレコーディング形式を取ったとのこと。そう。4人の名手が高次元でアンサンブル。4人が共通認識で通じ合っている。
 だからこそ,百戦錬磨のロニー・スミスにしてルー・ドナルドソンへ「矢野沙織の演奏を録音スタジオまで聴きに来い」と言わしめたそうでして…。か〜,ロニー・スミスピーター・バーンスタインルイス・ナッシュも,3人まとめて矢野沙織にKOされてしまっている。管理人がKOされたのも当然なのだ。

 ただ,それだけに『LITTLE TINY』への苦言を一言。
 惜しむべきは,SPECIAL TRIBUTE TRACKTAKE THE“A”TRAIN WIH HIBARI MISORA】の存在である。

 このトラックはなんなんだ。美空ひばりの個性が超・強烈過ぎて「JAZZ QUEEN矢野沙織の完璧なワンホーンカルテットが「ぶち壊し」。最後においしいところを全部持っていかれている。ああ〜。星5つのはずが星4つ。

LITTLE TINY-3 矢野沙織は“天才少女”に違いないのです。美空ひばり相手に善戦したと思います。アドリブの出来も最高だと思いますが,やはり組んだ相手がまずかった〜。美空ひばりは“超・天才少女”でした〜。

 管理人の結論! 読者の皆さんには『LITTLE TINY』を聴くなら9曲までで寸止めすることをお奨めいたします。

PS1 演奏は男前な矢野沙織だが,ビジュアルはついに艶かしいインナーで爆●&生脚披露のセクシー系の大解禁。『LITTLE TINY』で矢野沙織がついに女を武器にし始めました。うれしい。
PS2 「LITTLE TINY-3」は販促用のクリアファイルです。こちらは学生時代へと逆戻りです。かわいい。

  01. My Baby Shot Me Down
  02. Split Kick
  03. (They Long To Be) Close To You
  04. She Rote
  05. Velvet Easter
  06. Boplicity
  07. Pardon Lucy
  08. K.C. Blues
  09. Danny Boy
  10. Take The "A" Train

(サヴォイ/SAVOY 2007年発売/COCB-53685)
(ライナーノーツ/岩浪洋三)

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矢野 沙織 / I & I4

I & I-1 ベスト盤『矢野沙織BEST 〜ジャズ回帰〜』と同日発売のシングル盤『I & I』をW購入。

 【I & I】は『矢野沙織BEST 〜ジャズ回帰〜』にも収録されているし【I & I】のカップリング2曲=ベスト盤の補欠?【SWEET LOVE OF MINE】【EVERYTHING HAPPENS TO ME】(ナイス選曲!)も既に入手済。なのにどうして?

 購入理由はズバリ3つ。1)CD−EXTRA仕様:【ASIENCE CF メイキング映像】。途中のピアノ・ソロ,ドラム・ソロでは演奏を離れたオフ・ショット! うわ〜っ,素の矢野沙織のキャピキャピ映像がまぶしすぎる〜( 個人的には『矢野沙織BEST 〜ジャズ回帰〜』の特典DVDGREENISM】での爆●に生唾ゴックンです )。

I & I-2 2)同時購入特典=「ASIENCE」のサンプル品GET。「ASIENCE」を「これからも使い続けます」宣言。
 3)これは同時購入でなくても『矢野沙織BEST 〜ジャズ回帰〜』のみでも応募できたのかもしれないが「新星堂」のチケット・プレゼント。当選したかどうかはカテゴリ「LIVEレポート」をご覧ください。

I & I-3 なあんだ。普段,矢野沙織ジャズメンとして応援していると語っているくせに…。結局はルックス重視なのか〜い!?

  01. I & I
  02. Sweet Love Of Mine
  03. Everything Happens To Me

(サヴォイ/SAVOY 2007年発売/COCY-15999)
CD−EXTRA仕様:【ASIENCE CF メイキング映像】

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矢野 沙織 / 矢野沙織BEST 〜ジャズ回帰〜4

SAORI YANO BEST-1 16歳での“衝撃の”デビューから4年。20歳を迎えた矢野沙織初のベストCDが『矢野沙織BEST 〜ジャズ回帰〜』。

 この4年で矢野沙織を取り巻く環境は激変した。デビューからわずか4年にして,20歳にしてベストCDを出せるジャズメンなど滅多にお目にかかれるものではないが,この全ては矢野沙織が自ら勝ち取ったものである。

 矢野沙織有する“バッパー”としての才能と「報道ステーション」テーマ曲オープン・マインド】演奏の知名度。そして「JAZZ QUEEN」と称される美貌。そんな矢野沙織CM業界が放っておくはずもなく「花王・アジエンス」のCM出演。
 この機会に広く世間へ売り出そうと「アジアン・ビューティ」のタイアップ曲【I&I】を収録したベストCD矢野沙織BEST 〜ジャズ回帰〜』発売の流れ。

 「JAZZ QUEEN」と呼ばれようと「アジアン・ビューティ」と呼ばれようと矢野沙織はメディアに祭り上げられ作り上げられたアイドルなどでは断じてない。
 小学4年生で入部したブラスバンドのじゃんけんで負けて始めたアルト・サックス。小学5年生でチャーリー・パーカーと出会いジャズに傾倒。14歳にして自ら100軒以上のライブハウスに電話をかけまくって出演交渉。中学を卒業したらニューヨークに行くはずがトントン拍子でプロ活動スタート。16歳でCDデビュー。「ジャズ界の生き字引」でもある海外のジャズ・ジャイアントたちとの共演。この“夢のシンデレラ・ストーリー”実力一本で勝ち取った「現場たたき上げ」出身なのだ。

 惚れた。矢野沙織の演奏に惚れた。ルックスがいいのはご愛嬌。特典DVD沙織ちゃんがかわいい&セクシー。ジャズメンのプロモーション・ビデオ。なぜだか演奏シーンが皆無な沙織ちゃんのイメージ・ビデオが滑稽です。
 矢野沙織の抜群の音色とテクニック。何よりも“魂”を感じずにはいられないインプロヴィゼーション。もうルックスや若さなど微塵も感じさせない完成されたビ・バップが“古くて新しい”アルト・サックスが『ジャズ回帰』。
 そう。『矢野沙織BEST 〜ジャズ回帰〜』は「世に出るべくして出た」ベストCD

SAORI YANO BEST-2 矢野沙織にとって『矢野沙織BEST 〜ジャズ回帰〜』の発売は世界に羽ばたくための通過点。そう。矢野沙織は現在進行形の「JAZZ QUEEN」。これからますます魅力的なジャズメンになっていくと思う。

 “強い意思を持ち努力を怠らない”ジャズ・ビューティ! こんな称号こそが20代の矢野沙織にふさわしいと思っている。

  DISC 1 CD
  01. Donna Lee
  02. 砂とスカート
  03. Crazy He Calls Me
  04. Rizlla
  05. In A Sentimental Mood
  06. Manteca
  07. I & I
  08. Greenism
  09. My Ideal
  10. How To Make A Pearl
  11. Lover Man
  12. Tico Tico
  13. Open Mind

  DISC 2 DVD
  01. I & I (メイキングMOVIE)
  02. Greenism (PV)
  03. I Got Rhythm (PV)
  04. Rizlla (メイキングMOVIE)
  05. How To Make A Pearl (PV)

(サヴォイ/SAVOY 2007年発売/COZY-263-4)
(ライナーノーツ/島田奈央子,岩浪洋三)
★【初回限定盤】 CD+DVD

★第22回日本ゴールド・ディスク大賞【ジャズ・アルバム・オブ・ザ・イヤー】受賞

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矢野 沙織 / GROOVIN' HIGH4

GROOVIN' HIGH-1 『GROOVIN’ HIGH』で矢野沙織が路線変更。「JAZZ QUEEN矢野沙織・第2章の幕開けである。

 なぁに。バードのコピーやめてしまうの? ビ・バップやめてしまうの? “バッパー”矢野沙織・命の管理人は胸中複雑。矢野沙織がビ・バップを始めたのは「ビ・バップが一番かっこよかったから」とのインタビュー記事有り。なぁんだ,次はロックかよ〜。
 いえいえ,そんなことはありません。矢野沙織の次なるマイ・ブームはジェームズ・ムーディー。「運命のお師匠様」との出会いに影響を受けています。受けてしまっています。やはり若い女性には純白が似合います。

 矢野沙織・第2章のテーマはアンサンブル。大編成の分厚い生音とソロ廻し。このように書くと矢野沙織の魅力が薄まったように感じるかもしれないが,アンサンブルの中心は矢野沙織アルト・サックス矢野沙織アルト・サックスが中央に見事に鎮座している。

 とはいえ『GROOVIN’ HIGH』の真実は「ジェームズ・ムーディーフィーチャリング矢野沙織」。そう。矢野沙織は,リード・アルト・サックス奏者として参加している。
 自由奔放にスライド・ハンプトンの書く絶品アレンジに合わせて吹きまくっているのだが,でもどうしてもジェームズ・ムーディーの掌から飛び出すまでには至っていない。完全にジェームズ・ムーディーの“想定内での快演”なのである。

 ゆえに『GROOVIN’ HIGH』の評価は,何を評価の基軸とするかによって大きく異なる。
 純粋にジャズ・サックス・プレイヤー=矢野沙織に重きを置くと,文句なしに矢野沙織の「代表作」に違いない。ジェームズ・ムーディーに感化された「矢野沙織矢野沙織たるジャズ・サックス」が“威風堂々”にテーマを奏でていく。素晴らしい。

 しかし残念なのは矢野沙織アルト・サックスが吹き止んだ瞬間,共演した豪華ゲストに耳ダンボ。ジェームズ・ムーディーテナー・サックスフルートジミー・ヒーステナー・サックスランディ・ブレッカートランペットスライド・ハンプトントロンボーンゲイリー・スマリアンバリトン・サックスが流れ出した瞬間,矢野沙織アルト・サックスの存在感が消えている。

 管理人は矢野沙織・命である。矢野沙織を心底応援している。自分の中での矢野沙織キース・ジャレットパット・メセニーに並ぶ“宝物”のような存在である。
 それで,これは矢野沙織だけではなくキース・ジャレットパット・メセニーに対しても抱いている希望なのだが,管理人が3人に期待するは「目指せ!マイルス・デイビス!」である。

 この「目指せ! マイルス・デイビス!」の真意は「無音で表現するマイルス・デイビスの音」のこと。
 マイルス・デイビスのリーダー・アルバムは(特に電化マイルス時代を指して使われるが)共演者が誰であってもその全員が,さもマイルス・デイビスが吹いているかのような音を出す。ピアニストならマイルスピアノを弾いているかのように,ベーシストならマイルスベースを弾いているかのように…。
 そう。トランペットが鳴っていようが鳴っていまいが,そこにマイルスがいるのである。

 その意味で『GROOVIN’ HIGH』には全編ジェームズ・ムーディーがいる。共演者は皆,矢野沙織ではなくジェームズ・ムーディーの方を向いて演奏している。こうなるのは仕方がない。だって矢野沙織自身もジェームズ・ムーディーの方を向いて演奏しているのだから…。

GROOVIN' HIGH-2 矢野沙織には自分自身と向き合って“バッパー”だった頃の矢野沙織を取り戻して欲しい。自己主張をまげずにトンガリ続けて欲しい。
 『GROOVIN’ HIGH』での路線変更を非難しているのではない。『GROOVIN’ HIGH』は,相当に素晴らしいジャズCDに違いないし,事実マンスリーでヘビロした。第2章のアンサンブルもいいじゃないか!

 しかし“バッパー”矢野沙織目当てに購入した従来のファンからすると欲求不満が残ってしまう。アダルトな雰囲気だけのジャズ,聴きやすいだけのジャズなど要らない。矢野沙織に「完成度」は求めていない。永久に完成してしまっては困るのだ。→ ムーディー師匠,その辺は分かっていると思っています。
 表面はアレンジされたハーモニーであろうとも内面は沸き立つジャズスピリッツ矢野沙織には一生アドリブ一本で勝負し続ける気概を持ってほしい。

 矢野沙織よ,チャーリー・パーカーを越えろ! 矢野沙織よ,キャノンボール・アダレイを越えろ! 矢野沙織よ,目指せ!マイルス・デイビス

PS 『GROOVIN’ HIGH』のジャケット写真が美人で色っぽい。大人だよなぁ。管理人は小林香織を気軽に「かおりん」と呼べますが,矢野沙織を「沙織ちゃん」とはもう呼べません?

  01. Speak Low
  02. Manteca
  03. My Ideal
  04. Greenism
  05. Over The Rainbow
  06. Groovin' High
  07. Corcovado
  08. There Will Never Be Another You
  09. Billie's Bounce
  10. 浜辺の歌

(サヴォイ/SAVOY 2006年発売/COCB-53576)
(ライナーノーツ/岩浪洋三)

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矢野 沙織 / パーカーズ・ムード〜ライブ・イン・ニューヨーク4

PARKER'S MOOD〜LIVE IN NEW YORK-1 『PARKER’S MOOD〜LIVE IN NEW YORK』(以下『パーカーズ・ムード〜ライブ・イン・ニューヨーク』)は『SAKURA STAMP』のブルーノート・ツアーで共演したジャズ・ジャイアント,ジミー・コブが“引っ張り出した”ニューヨークは「SMOKE」におけるライブ盤。

 早めに結論を書いておくと,矢野沙織は“まだまだ”。スタジオ録音での“切り貼り”は本人も認める周知の事実が本当であった。やっぱりワンテイク一発で,あの“初老”の演奏はベテランでも難しいものである。

 『パーカーズ・ムード〜ライブ・イン・ニューヨーク』の原型となった『SAKURA STAMP』のブルーノート・ツアーを拝聴できたがライブは勢い! 良かった! きっと「SMOKE」の現場も生で聴いたら絶賛すべきライブ評だったのだろうが,後日冷静に聴き直すと「音程の粗が目立ってしまう」宿命。

 正直,管理人的には“ジミー・コブ・トリオあっての”矢野沙織の感有り。ジミー・コブ・トリオ矢野沙織の良さを引き出し足りない部分を補っている。ジミー・コブ・トリオ矢野沙織が舞わされている。
 しかし,そんなライブ盤を18歳にしてリリースできる“大物”が「日本のキャノンボール・アダレイ」=矢野沙織である。デビュー2年でライブ盤をリリースできる実力,リリースできる勇気に“あっぱれ”!

 『パーカーズ・ムード〜ライブ・イン・ニューヨーク』はライブ盤ゆえ1曲1曲の演奏時間が長い。収録わずか7曲にして演奏時間62分。CDでは“切り貼り”作業でカットされる長尺のアドリブ・パートも大収録。ビ・バップの熱気と伸びやかなプレイ。うわ〜!

 改めて『パーカーズ・ムード〜ライブ・イン・ニューヨーク』における矢野沙織アドリブを聴き込んでいくとジミー・コブの語る「サオリは日本のキャノンボールだ」に同意する。チャーリー・パーカーよりもキャノンボール・アダレイに“激似”である。
 ズバリ“激似”はノリである。キャノンボール・アダレイは大変器用で間口の広いアルト奏者。有名なのは“ファンキー”キャノンボールであろうが,ここで管理人が挙げているのは“バッパー”キャノンボールのことである。

PARKER'S MOOD〜LIVE IN NEW YORK-2 “バッパー”キャノンボールについては後日,キャノンボール・アダレイ批評の中で詳述することとするが,本気のキャノンボール・アダレイの演奏はチャーリー・パーカーの演奏に近い。そう。キャノンボール・アダレイ矢野沙織と同様,チャーリー・パーカーの崇拝者なのだ。

 チャーリー・パーカーソニー・スティットフィル・ウッズキャノンボール・アダレイ渡辺貞夫矢野沙織。これぞ“パーカー派”の主要系譜である。
 そう。21世紀の「パーカー・ショック」は矢野沙織アルト・サックスに宿っている。『パーカーズ・ムード〜ライブ・イン・ニューヨーク』の音に「21世紀のビ・バップ」がある。まぁ,そんな大袈裟に言うことでもないのかなぁ。

  01. I Got Rhythm
  02. The Days Of Wine And Roses
  03. Composition 101
  04. Don't Explain
  05. Parker's Mood
  06. Bohemia After Dark
  07. A Night In Tunisia

(サヴォイ/SAVOY 2005年発売/COCB-53434)
(ライナーノーツ/岩浪洋三)

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矢野 沙織 / SAKURA STAMP5

SAKURA STAMP-1 「HOP! STEP! JUMP!」。矢野沙織の一番の成長分野。それは精神面の充実であろう。
 矢野沙織の3rdCDSAKURA STAMP』を聴いてそう強く思った。

 (『02批評で書いた通り,人間幾つになっても成長するもの。年若いから成長するとは書かないが)矢野沙織の武器は人並み外れた成長のハイ・スピード。
 ジャズの神髄を「これでもか!」と感じさせてくれる勢いが心地良い。アルト・サックスの豊かな音色。こんなにも渋く温もりのある音色を好んで吹いている姿に感動すら覚える。そう。矢野沙織の音色とフレージングは,もはや“初老”の域に達している!

 テクニックが上達しているのは勿論なのだが『SAKURA STAMP』での矢野沙織アルト・サックスは“鳴り”が違う。
 『YANO SAORI』『02』とはワンランク上の存在感。今回のアルト・サックスの見事な“立ち振る舞い”は,話題先行アイドル評の雑音を圧巻の実力で黙らせた自信と余裕から来ている。音に張りとか腰が付いたと書いたらよいのだろうか…。

 この点は現場経験であるライブでの成功体験と矢野沙織チャーリー・パーカーと共に敬愛してやまないビリー・ホリディもどきな強心臓と積極性にある。
 ライブでの矢野沙織は,演奏を楽しむというよりも,いつも真剣に自分自身と対峙している様子に見えたが『SAKURA STAMP』での演奏は伸びやかでリラックスしている。もう既に「大物然」が漂いだしている。これこそ矢野沙織の一番の成長分野=精神面充実のポイントである。

 『SAKURA STAMP』での共演者=ハモンド・オルガンマイク・レドーンギターピーター・バーンスタインドラムジョー・ファーンズワースは年上のトップ・ジャズメン。ゲスト参加のトランペットニコラス・ペイトンテナー・サックスエリック・アレキサンダーは言わずもがな!
 しかし,矢野沙織が,実に堂々と楽しそうに演奏している。超格上サイドメンにも臆することなく,しっかりとリーダー・シップを取っている。リーダーとして自分の音楽を展開する矢野沙織は,その深みのある音色,抜群のスイング感で,ジャズの醍醐味を堪能させてくれる。素晴らしい。

 矢野沙織の『SAKURA STAMP』での新境地。キーワードは“ファンキー”である。
 『SAKURA STAMP』を語る時,ベースレスのハモンド・オルガンとの共演を忘れるわけにはいかない。そう。ピアノからオルガンへの変更で,俄然,リズム感が前面に出て来ている。
 例えば,ジミ・ヘンドリックの【RED HOUSE】は原曲崩しの,これぞ“ファンキー”な名演である。

 …そう言えば『SAKURA STAMP』のフォロー・ツアーで共演したジャズ・ジャイアント,ジミー・コブが形容した「矢野沙織は『日本のキャノンボール・アダレイ』」の称号。うんうん。管理人はジミー・コブの興奮がよ〜く分かります。

SAKURA STAMP-2 加えて,チャーリー・パーカーへのオマージュとして【DONNA LEE】の完全コピーを大収録。“パーカー派”矢野沙織の自慢で自信でご満悦な趣味の記録に驚愕する。
 一般にジャズメンたるもの「個性勝負」。没個性のコピー演奏を非とするはず。しかし矢野沙織チャーリー・パーカーに似ていることを喜びとしているのが実に愛らしい。ニコラス・ペイトンとの一糸乱れぬ高速ユニゾンの中にも矢野沙織の負けん気と歌心が強く感じられる。
 惜しむべきは『02批評でも書いたが【ドナ・リー】のアウトロでの音写りが極端にむごい。

 【SAKURA STAMP】は,矢野沙織が2年前に初めて作曲したオリジナル。1小節ごとにテンションをふんだんに含んだコードが半音ずつ上がっては下がっていく。アドリブで歌い上げるのが逆に難しいこんな佳曲を中学時代に作ったんだようなぁ。
 【SAKURA STAMP】の秀逸アレンジはこの2年間のライブで練り上げられた賜物であろう。

 『SAKURA STAMP』を1枚聴き通して感じるのは“チャーリー・パーカー研究家”としての矢野沙織である。
 『SAKURA STAMP』のハイライトである,チャーリー・パーカーのレパートリー【TICO TICO】が,矢野沙織アドリブで“現代に甦ってきた”感有り有り。
 チャーリー・パーカーアドリブは聴いていて多少疲れを感じるが,矢野沙織アドリブは聴いていてのめり込んでしまう。クリシェが次々と登場してくるし,軽くリズムをかいくぐるところがチャーリー・パーカーに激似である。
 現代版の洗練されたフレージングに“チャーリー・パーカー研究家”としての足跡が見えている。

  01. Donna Lee
  02. Sweet Love Of Mine
  03. Sakura Stamp
  04. Shawnuff
  05. Red House
  06. Crazy He Calls Me
  07. けむりの瞳
  08. Salt Penauts
  09. Tico Tico
  10. Sk8 Game
  11. 砂とスカート

(サヴォイ/SAVOY 2005年発売/COCB-53320)
(ライナーノーツ/岩浪洋三)

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矢野 沙織 / 025

02-1 ジャズ界には「2年目のジンクス」ならぬ「2枚目のジンクス」という言葉がある。

 「2枚目のジンクス」はジャズメンのデビューが比較的遅いことに起因している。そう。ジャズメンの多くは,長年陽の当たらない場所で活動を続け,本物と認められた実力者だけがデビューできる特異な環境の元に置かれている。そんな“遅咲きの”ジャズメンにとってはデビュー盤=「最初で最後」の可能性有。「長年待ち設けてやっと掴んだ大チャンス。2度と離してなるものか〜」的な意気込みでよく練られた内容の名盤が多いのだ。

 16歳での“衝撃の”デビュー矢野沙織の熱烈大ファンとしては「大事に育てたい。育ってほしい」と願うもの。矢野沙織が“伸るか反るか”の分かれ道。もっとも重要なセカンドCD02』のリリースに「2枚目のジンクス」の言葉がよぎった。
 しか〜し,心配御無用。“衝撃の”デビューCDYANO SAORI』以上の濃密な演奏。全ての不安を吹き飛ばすカウンター・パンチの返り討ち。素晴らしい。“遅咲きの天才”もいれば“早熟の天才”もいるものである。

 『02』で喰らったカウンター・パンチ。実は『02』の衝撃が今も管理人の脳を揺らし続けている。『02』のメガトン・パンチ以降,管理人は矢野沙織の年齢を思い出せないでいる(「JAZZ QUEEN矢野沙織様は1986年10月27日生まれです)。
 あの惚れ惚れする音色,フレージング,タンギング,リズム感,ホットな熱情とクールなニュアンス,そしてインプロヴィゼーションの冴え…。どう聴いても何回聴いても“ビ・バップ”であり“パーカー派”のアルトなのである。

 矢野沙織は巷で「16歳にしては,17歳にしては,10代にしては」という表現で批評されることが多い。しかし,そんなニワカ・ジャズ・ファンなど“クソ喰らえ”である。
 『02』でのアルト・サックスを聴かされて,冷静に矢野沙織の年齢のことなど考えられるはずがない。考えられるわけがない。そうできるのはその人がニワカだからである。

 『02』の再生中は,ただ固唾を呑んで矢野沙織アドリブと対峙するのみ。思考など停止して身体で単純に「パーカー・ショック」を浴び続けるのみ。全11曲の大名演に呼吸をするのはトラック終了後の無音部分のみなのだ。管理人久々の「酸欠ジャズ」なのだ。く〜っ,たまらなくう・れ・し・い。

 『02』が流れている間は何も出来ない。火事が来ようが地震が来ようが電話がかかってこようとも動けない。「パーカー・ショック」の金縛り。ゆえに今回の『02批評も書きたいことは沢山あったが,やはり『02』の同録レヴューはかなわなかった。

02-2 『02』の演奏は「素晴らしい」の一言に尽きる! 矢野沙織“運命の”2枚目は,成績不良でも,まあまあでも,横ばいでもなかった。ジンクスは打ち破られた。

 『02』は『YANO SAORI』の更なる拡大路線作。バックも基本『YANO SAORI』と同じハロルド・メイバーンナット・リーヴスジョー・ファーンズワースピアノ・トリオであって,綿密にアレンジを作り込んでいる。
 矢野沙織が『02』で“パーカー派”の最高位奪取へと向かい出した。管理人は矢野沙織の挑戦を最後まで見届ける気概でいる。矢野沙織よ,挑戦し続けるんだ。夢はかなう。

 『02』について他に記すことがあるとすれば『02』のマスター・テープが音写りを起こしているという事実。【ザイオン】【スクラップル・フロム・ジ・アップル】のイントロとアウトロは極端にむごい。【ワーク・ソング】ではジッターもある。
 超一流のアバター・スタジオとコロムビアには,未来の“パーカー派”の最高位=矢野沙織の音源を扱うに際しては,今後特に注意深く管理していただきたい。

  01. Laird Baird
  02. 砂とスカート
  03. Lover Man
  04. Rizlla
  05. The Days Of Wine And Roses
  06. Work Song
  07. Zion
  08. Scrapple From The Apple
  09. Everything Happens To Me
  10. Billie's Holiday
  11. Open Mind

(サヴォイ/SAVOY 2004年発売/COCB-53231)
(ライナーノーツ/岩浪洋三)

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矢野 沙織 / YANO SAORI / HOYDEN4

 『YANO SAORI』の9曲目は【HOYDEN】(以下【ハイデン】)。


 【ハイデン】は,サルサのリズムに引っ張られたハード・バップである。

 今泉正明ピアノ松島啓之トランペットが,矢野沙織アルト・サックスを奪い合う。
 二股状態?の矢野沙織が,どちらとも密着するものだから,このバトルも徐々にヒートアップ! 上村信大坂昌彦をも巻き込んだ,サルサともハード・バップとも異なる,ジャズ・ブレンド!

 これが新しいのに,どこかで聴いたような“郷愁感”たっぷり。【ハイデン】は,矢野沙織流“温故知新”であろう。

SAORI YANO : Alto Saxophone
KEIJI MATSUSHIMA : Trumpet
MASAAKI IMAIZUMI : Piano
SHIN KAMIMURA : Bass
MASAHIKO OSAKA : Drums
 

矢野 沙織 / YANO SAORI / MARMADUKE4

 『YANO SAORI』の8曲目は【MARMADUKE】(以下【マーマデューク】)。


 【マーマデューク】には,矢野沙織の“若さ”が記録されている。ハロルド・メイバーン・トリオのカウントと共に“高速”パーカー・ナンバーが疾駆し始めるのだが,この演奏はテクニックの前に“若さ爆発”! 時折音が外れようが不思議と気にならない。
 でもこれでいい。この演奏が記録されたことに価値がある。後数年で,この若さで押す爆発力が消えてなくなるのだから…。

 パーカー・ナンバーは概ね一曲の演奏時間が短くアドリブが多いため,決め所を抑え間違えると,支離滅裂の演奏に終始してしまう。
 【マーマデューク】は“手馴れ”のハロルド・メイバーン・トリオがナイス・サポート! 決め所&ヤマ場で矢野沙織アルト・サックスを優しく後押ししてくれている。
 矢野沙織の後見人(熱烈ファン)としては「ハラハラ・ドキドキ」の展開であったが,ラスト3分20秒で「スカッ」と着地が決まった瞬間「9.85」を確信した。銅メダル獲得おめでとう。

SAORI YANO : Alto Saxophone
HAROLD MABERN : Piano
NAT REEVES : Bass
JOE FARSWORTH : Drums
 

矢野 沙織 / YANO SAORI / IT COULD HAPPEN TO YOU5

 『YANO SAORI』の11曲目は【IT COULD HAPPEN TO YOU】(以下【イト・クドゥ・ハプン・トゥー・ユー】)。


 【イト・クドゥ・ハプン・トゥー・ユー】は,矢野沙織の“小粋な”名演として,いつまでも語り継がれるべき傑作である。

 管理人が矢野沙織にKOされたのは「バッパー」としての矢野沙織であったが,矢野沙織には「バッパー」以外の顔がある。それが「スインガー矢野沙織

 矢野沙織渡辺貞夫を超える日が,いずれやって来る! (ナベサダ・ファンなので胸中複雑であるが)近い将来,必ずやって来る! 「そんな日来ねぇよ」と,年季の入ったジャズ批評家たちに,それこそ鼻で笑われようが,嘲られようが取り下げるつもりは微塵もない。実際に“モノが違う”のだからしょうがない。

 さて,そんな“ナベサダ超え”を果たした日の矢野沙織を想像するに,恐らく「バッパー」としての評価に加えて「スインガー」としても高く評価されていることと思う。逆に「ザ・スインガー沙織」をアピールできないうちは“ナベサダ超え”はままならない。
 「スインガー矢野沙織の快進撃は【イト・クドゥ・ハプン・トゥー・ユー】と共に始まった。【イト・クドゥ・ハプン・トゥー・ユー】は,矢野沙織ブレイクの“隠し球”となり得る逸品なのである。

 テーマのバックで“ストッピング”のかかるピアノ・トリオに引っ張れることなく“悠々と伸びやか”に歌い上げる! 粋だなぁ〜。
 9秒から27秒と1分3秒から12秒までの,似ても似つかぬ「手綱捌き」のアイディアは,キャノンボール・アダレイを連想させられてしまう。果たして,これは管理人の独りよがりな「先物買いの青田買い」なのだろうか?

SAORI YANO : Alto Saxophone
MASAAKI IMAIZUMI : Piano
SHIN KAMIMURA : Bass
MASAHIKO OSAKA : Drums
 

矢野 沙織 / YANO SAORI / IN A SENTIMENTAL MOOD4

 『YANO SAORI』の10曲目は【IN A SENTIMENTAL MOOD】(以下【イン・ア・センティメンタル・ムード】)。


 矢野沙織が,真正面からジャズの王道に取り組んだ【イン・ア・センティメンタル・ムード】での“貫禄”ある演奏が好きだ。
 これは正攻法に見えて,矢野沙織にとってかなりの大チャレンジであろう。一切小細工無しの演奏は,自ら言い訳の“退路を断った”証し。そう。逃げも隠れもせず,しっかりと吹き込んでいく。「ドンと来い」の貫禄。

 【イン・ア・センティメンタル・ムード】の,バラードサックスは数多いゆえ,ひいき目に見て完璧とは言い難い。
 でもこのビブラート&ブレない演奏姿勢! この一音一音に魂を吹き込んでいく“静かに熱い”名演に感動させられる。

SAORI YANO : Alto Saxophone
MASAAKI IMAIZUMI : Piano
SHIN KAMIMURA : Bass
MASAHIKO OSAKA : Drums
 

矢野 沙織 / YANO SAORI / BOHEMIA AFTER DARK4

 『YANO SAORI』の7曲目は【BOHEMIA AFTER DARK】(以下【ボヘミア・アフター・ダーク】)。


 有名バップ・ナンバー【ボヘミア・アフター・ダーク】に“熱演”を期待してしまうと“肩すかし”を喰らってしまう。勿論,熱演ではあるのだが,このトラックの仕上がり具合は“クール”である。

 松島啓之トランペットとのユニゾン・テーマは,若干スロー・テンポでありフレーズが乾いている。クールに吹ききっている!
 1分29秒から始まる矢野沙織アルト・ソロは,一転ハイスピード! これぞ2003年型【ボヘミア・アフター・ダーク】である。

 ここで管理人の本音を記そう。クールな【ボヘミア・アフター・ダーク】は好きではない。やはり“キャノンボール・アダレイ風”高速大ブロー無しの【ボヘミア・アフター・ダーク】はつまらない。
 幸い,ライブでの演奏はハード・バップ“仕様”で盛り上がっていた。矢野沙織の【ボヘミア・アフター・ダーク】はCDよりライブである。

SAORI YANO : Alto Saxophone
KEIJI MATSUSHIMA : Trumpet
HAROLD MABERN : Piano
NAT REEVES : Bass
JOE FARSWORTH : Drums
 

矢野 沙織 / YANO SAORI / BLACK ORPHEUS4

 『YANO SAORI』の6曲目は【BLACK ORPHEUS】(以下【黒いオルフェ】)。


 【黒いオルフェ】の名演は多いが,このトラックは他の誰とも似ていない,矢野沙織流。この“雰囲気たっぷり”の解釈が16歳の女子高生によるものと世間の誰が思おうか…。

 1分34秒から始まるロング・ソロは,基本=静かで深くそしてダーク。しかし2分17秒からと2分42秒からのブローでヤマ場も作る。さすがである。
 そんな中,管理人の好みは3分20秒からの6秒間! 今泉正明ピアノ・ソロへとつなげる“フェード・アウト”の感じが実にキマッテイル。
 もう自分自身の演奏はおいといて,共演者と共に楽曲の出来を気にかける。実に“頼りになる”最年少・バンド・リーダーがここにいる!

SAORI YANO : Alto Saxophone
MASAAKI IMAIZUMI : Piano
SHIN KAMIMURA : Bass
MASAHIKO OSAKA : Drums
 

矢野 沙織 / YANO SAORI / MY LITTLE SUEDE SHOES4

 『YANO SAORI』の5曲目は【MY LITTLE SUEDE SHOES】(以下【マイ・リトル・スエード・シューズ】)。


 【マイ・リトル・スエード・シューズ】の“ゆったり流れる時間”が実に楽しい。
 矢野沙織松島啓之の“強力ツートップ”のはずが,のびのび&ほんわか調の“アンサンブル・マシーン”へと大変身! イメチェンの衝撃!
 16才の少女が【マイ・リトル・スエード・シューズ】を選曲したセンスが素晴らしい。これが矢野沙織の表現したかったジャズの本質だとしたら,末恐ろしい。

 52秒から始まる矢野沙織アドリブに心奪われてしまう。緩急も強弱もあるわ,リズム隊とのコンビネーションはあるわ,それこそ裏を吹くタイミング! 1分35秒からはカリプソさえも自在に操る,余裕のアルト・サックス

 “早熟の天才”と言う賛辞では表現し足りない! こんなに早く成長してしまっていいものだろうか? 他のジャズメンは一体何をやっているのか?

SAORI YANO : Alto Saxophone
KEIJI MATSUSHIMA : Trumpet
MASAAKI IMAIZUMI : Piano
SHIN KAMIMURA : Bass
MASAHIKO OSAKA : Drums
 

矢野 沙織 / YANO SAORI / HOW TO MAKE A PEARL4

 『YANO SAORI』の4曲目は【HOW TO MAKE A PEARL】(以下【ハウ・トゥー・メイク・ア・パール】)。


 【ハウ・トゥー・メイク・ア・パール】には,矢野沙織“らしさ”がギッシリと詰まっている。
 この“らしさ”を言葉で伝えるのは難しいが“バリバリと吹き倒す”でも“クセのあるフレーズ”でもなく“静と動のキレ”?
 つまりは“空間描写”で勝負するタイプ。う〜ん。これもしっくりこないのだが,今のところはそんな感じで…。
 そうだ! 矢野沙織の魅力は“ギャップ”! 音の高低や強弱のセンスとか,トラック中での起承転結,これにはテンションの上がり下がりだとか,定番コードが進行中に,突然“ファンタスティック”なメロディが降ってくるところだとか…。

 【ハウ・トゥー・メイク・ア・パール】でも,全体としては“伸びやかに歌う”矢野沙織がいる。しかし,しっかりと緊張感はキープ。これが計算ではなく自然体で表現できるところが,矢野沙織の“強み”である。
 “頭ではなく身体で”ジャズそのものを感じ取っている。“深みのある”アルト・サックスの音色と共に,オブラートなしで,ストレートに表現されているのだから,たまらない。

 そんな中,1分30秒からの“こぶし”回し。2分8秒での“ブツ切り”。4分0秒から3秒間の“ビブラート”。これらが全てナイスなアイディア! 矢野沙織の“大器の片鱗”の表われである。

SAORI YANO : Alto Saxophone
MASAAKI IMAIZUMI : Piano
SHIN KAMIMURA : Bass
MASAHIKO OSAKA : Drums
 

矢野 沙織 / YANO SAORI / WHEN YOU'RE SMILING4

 『YANO SAORI』の3曲目は【WHEN YOU’RE SMILING】(以下【ホエン・ユー・アー・スマイリング】)。


 【ホエン・ユー・アー・スマイリング】の魅力は,ジャズが放つ「軽やかさ」にある!
 矢野沙織の“伸びやかな”アルト・サックス今泉正明の“リズミカルな”ピアノが,何気にウキウキ気分にさせてくれる。「爽快だ〜」とは趣が違う,くすっとした含み笑いのような,思い出し笑いするような…。伝わるでしょうか?

 恐らく実際のジャズ・ファンの多くは“真剣勝負の醍醐味に惹かれて”と言うよりは,この種の“軽やかさ”に惹かれてジャズを愛しているのではないか,と思っている。
 年季の入ったジャズ・ファンの好みが“ハードな演奏”から“ソフトな演奏”へと徐々に移り変わっていくのが,その証拠であろう。

 【ホエン・ユー・アー・スマイリング】の聴き所であるが,矢野沙織のゆったりとしたプレイには,勘違いだろうか? ベテランが醸し出す“懐の深さ”さえ感じ取れる。素晴らしい!
 個人的には1分1秒から3秒までの“一息の伸び”が好きだ。今泉正明アドリブも4分0秒からのクダリがお気に入り。

 格別な名曲でも名演でもないかもしれないが,ほのぼの気分にさせてくれるので,また明日も聴きたいと思わせる,その何とかが,超魅力的!
 あなたはいつ「ハ・ニ・カ・ミ」ましたか? 【ホエン・ユー・アー・スマイリング】?

SAORI YANO : Alto Saxophone
MASAAKI IMAIZUMI : Piano
SHIN KAMIMURA : Bass
MASAHIKO OSAKA : Drums
 

矢野 沙織 / YANO SAORI / BLUE BOSSA4

 『YANO SAORI』の2曲目は【BLUE BOSSA】(以下【ブルー・ボッサ】)。


 【ブルー・ボッサ】の徐々にヒート・アップしていく展開がクセになる。大方のジャズ・ファンは,スロースタートなのがウソのような終盤の盛り上がりに,確実に心奪われてしまうことだろう。

 矢野沙織のトーンの変化に耳を這わせてみる。1分17秒からのアルト・ソロは抑揚が効いたもので,イントロから続く“無表情な”アルト・サックスへのフラストレーションが解消されてメチャ気持ちいい。

 後半,自然と耳を奪われるであろう,バックの程よい一体感はハロルド・メイバーンの成せる技!
 3分48秒からと4分10秒からの2段ロケット式のアドリブが一気にバンドを“興奮のるつぼ”へと誘う。ベースドラムもこんなにハッピーなピアノを間近で聴かされてはかなわない。勝手に身体がノッテしまったのだろう。

 【ブルー・ボッサ】にはジャズの“小さな?”楽しみが随所に散りばめられている。

SAORI YANO : Alto Saxophone
HAROLD MABERN : Piano
NAT REEVES : Bass
JOE FARSWORTH : Drums
 

矢野 沙織 / YANO SAORI / CONFIRMATION5

 『YANO SAORI』の1曲目は【CONFIRMATION】(以下【コンファメーション】)。


 “矢野沙織”の【コンファメーション】には,ここで管理人が絶賛するまでもなく,やがて全てのジャズ・ファンから賛辞が贈られることになるであろう。
 既に管理人の周りのジャズ・ファン,いや,普段ジャズに接することのなかった友人までもが熱を上げている。

 もう何分何秒がどうのこうのは関係ない。言葉が多ければかえって魅力が伝わらず,もしかしたら偽りっぽく感じてしまうだろう。このトラックの魅力を,永遠に語りたくなる衝動を抑えて…。

SAORI YANO : Alto Saxophone
HAROLD MABERN : Piano
NAT REEVES : Bass
JOE FARSWORTH : Drums
 

矢野 沙織 / YANO SAORI5

YANO SAORI-1 多くの人にとって,ジャズと言えば“ビ・バップ”であり“ハード・バップ”であろう。
 パーカーマイルスモンクロリンズコルトレーン…。彼らジャズ・ジャイアントの代表作を挙げるとすれば,必然的に“ビ・バップ&ハード・バップ”の名盤が並ぶ。正にジャズの黄金期である。

 残念ながら管理人はその時代のジャズを知らない。生まれてもいない。全ては後追いなのである。
 ではこの現代において,彼らジャズ・ジャイアントが発した“熱い”ジャズを聴くことはできないのだろうか? NO。ここに紹介する矢野沙織の存在である。

 矢野沙織デビューCDYANO SAORI』。何の予備知識もなく突然このCDと出くわしたとしたら,皆さんならどう感じただろうか? そしてその直後,この演奏が何と16歳の,しかも女子高生の作品だと聞かされたとしたら…。
 管理人にとって今のシチュエーションは正に現実となった。その衝撃たるや,カシオペアの比ではなく,マーカス・ミラーでもバド・パウエルでも,そしてウィントン・マルサリスの比でもない。
 それを寝起き眼でやられたからたまらない! そう。この全てを早朝のFMラジオで聴かされたのである。

 管理人はジャズ・マニアとして25年以上,多くのCDを聴き込んできたが,このような衝撃は初めてだった。
 朝,布団の中でそろそろ起きないと,というモウロウとした意識の中に,チャーリー・パーカーの【CONFIRMATION】=明瞭なビ・バップが飛び込んできた。
 その瞬間,体が自然と反応する。一体誰のCDだろう? 聞き耳を立てるべく飛び起きたが,この時はまだ新作だとは思わない。聞こえてきたのは50年代のジャズの音だったのだ。
 たまらずメモ帳とペンを用意する。後日すぐにチェックするためである。ラジオのナレーションが続く…。「ヤノサオリさんの…」。えっ,日本人? ヤノサオリ? 女性? 女子高生? 16歳? このラジオ,ウソ言ってる。
 冗談ではなく上記が管理人の正直な反応である。ラジオで自分の耳を疑ったのは,あの阪神大震災のニュースを聞いた時以来,人生において2度目である。

YANO SAORI-2 読者の皆さんにはちょっと大袈裟に思えた回顧録かもしれない。では一度『YANO SAORI』を実際に聴いてみてほしい。今読んできた“ほんのさわりの予備知識”なら,まだまだ衝撃は収まらないはず。「百聞は一見にしかず」である。

 『YANO SAORI』を全てのジャズ・ファンに自信を持ってお奨めする! 『YANO SAORI』こそ管理人の“愛聴盤”である。

  01. Confirmation
  02. Blue Bossa
  03. When You're Smiling
  04. How To Make A Pearl
  05. My Little Suede Shoes
  06. Black Orpheus
  07. Bohemia After Dark
  08. Mamaduke
  09. Hoyden
  10. In A Sentimental Mood
  11. It Could Happened To You

(サヴォイ/SAVOY 2003年発売/COCB-53061)
(ライナーノーツ/瀬川昌久)

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