アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

CD批評:チック・コリア

チック・コリア / ポートレイト5

SOLO PIANO:PORTRAITS-1 『SOLO PIANO:PORTRAITS』(以下『ポートレイト』)は,チック・コリアのユニークな性格そのもののソロ・ピアノで描かれた『ポートレイト』=「音楽の肖像画」で間違いない。

 ジャズスタンダード,クラシック,チック・コリアのオリジナルを,チック・コリアの“らしさ溢れる”ピアノで演奏する。
 こんなにも多岐に渡った演目集なのに,どこをどう切り取っても『THIS IS CHICK COREA』な「ソロ・ピアノの決定盤」の大登場である。

 チック・コリアが,演奏前にこれから弾く音楽についてコメントする。そしてその語たったところの真意をピアノで実演する流れ。
 チック・コリアのコメント内容はライナーノーツの対訳を読んで確認するしかないのだが,何となく演奏を聴けば語らんとしていることは伝わってくるように思う。
 言葉では伝えきれないニュアンスを,ピアノ1台で表現していく。今更ながら,チック・コリアって“凄すぎる”ミュージシャンである。

 その意味で『ポートレイト』は,チック・コリアが自分自身のルーツを探る,偉大なる挑戦,のように思う。
 「DISC 1」はジャズ・サイドで「DISC 2」はクラシック・サイドに編集されているのだが,この2枚を聴き通して初めて浮かび上がる“チック・コリアの肖像画”の何とも偉大な音楽家然!

 こんなにもスケール大きな音楽を創造してきた事実を目の当たりにして『ポートレイト』こそが,チック・コリアの“ソロ・ピアノの集大成”と位置付ける。
 やはりソロ・ピアノというフォーマットは,そのピアニストの本質を炙り出すに最適なフォーマットであった。チック・コリアソロ・ピアノを聴くと,そのどれもがアーティスティックであり,冒険的であり,温かく,限りないロマンを秘めている。
 そう。『ポートレイト』には,メロディにしてもリズムにしても音の強弱にしても,チック・コリアの音選びのセンス全てが見事に投影されていると強く思う。

 特に観客をモデルに即興演奏された,ラスト10トラックの「音楽の肖像画」は,その場の雰囲気や空気感でガラッと音楽性が変わる“カメレオン”チック・コリアの面目躍如。
 その人の名前や服装からその人の人生をイメージして,ただ感じるがままに音で探りを入れていただけだったのに,中盤からアイディアがどんどん湧き出し,最後には見事にテーマと合体してカチッとまとめ上げてしまうのが紛れもない“天才”の証し。

 延々と自分1人で弾き倒すのではなく,その土地の風景やその土地の観客を楽曲作りのモチーフとする即興演奏スタイル。あれっ,これってもしかして…。

SOLO PIANO:PORTRAITS-2 管理人の結論。『ポートレイト批評

 『ポートレイト』でチック・コリアが語ったのは,ビル・エヴァンススティーヴィー・ワンダーセロニアス・モンクバド・パウエルパコ・デ・ルシアアレクサンドル・スクリャービンバルトーク・ベーラであるが,本当にチック・コリアが語りたかったのは「ソロ・ピアノの代名詞」キース・ジャレットの“天才”についてだったのかも…。

 チック・コリアの心の中にはいつだって「マルチな活動への憧れ」であるマイルス・デイビスと「一芸を極めた憧れ」であるキース・ジャレットが存在している。それこそが純粋な“チック・コリアの肖像画”=『ポートレイト』なのだと思う。

  DISC 1
  01. Chick Talks: About Solo Piano
  02. Improv #1 / How Deep Is The Ocean?
  03. Chick Talks: About Bill Evans
  04. Waltz For Debby
  05. Chick Talks: About Stevie Wonder
  06. Pastime Paradise
  07. Chick Talks: About Thelonious Monk
  08. 'Round Midnight
  09. Pannonica
  10. Blue Monk
  11. Chick Talks: About Bud Powell
  12. Dusk In Sandi
  13. Oblivion
  14. Chick Talks: About Paco De Lucia
  15. The Yellow Nimbus

  DISC 2
  01. Chick Talks: About Scriabin
  02. Prelude #2 (Op.11)
  03. Prelude #4 (Op.11)
  04. Chick Talks: About Bartok
  05. Bagatelle #1
  06. Bagatelle #2
  07. Bagatelle #3
  08. Bagatelle #4
  09. Chick Talks: About The Children's Songs
  10. Children's Song #1
  11. Children's Song #2
  12. Children's Song #3
  13. Children's Song #4
  14. Children's Song #5
  15. Children's Song #9
  16. Children's Song #10
  17. Children's Song #11
  18. Children's Song #12
  19. Chick Talks: About Portraits
  20. Portraits #1 - Krakow
  21. Portraits #2 - Krakow
  22. Portraits #1 - Casablanca
  23. Portraits #2 - Casablanca
  24. Portraits #1 - Easton, Maryland
  25. Portraits #2 - Easton, Maryland
  26. Portraits #3 - Easton, Maryland
  27. Portraits #4 - Easton, Maryland
  28. Portraits #1 - Vilnius
  29. Portraits #2 - Vilnius

(ストレッチ・レコード/STRETCH RECORDS 2014年発売/UCCO-1143/4)
(☆SHM−CD仕様)
(CD2枚組)
(ライナーノーツ/チック・コリア,岡崎正通)

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チック・コリア・トリオ / トリロジー5

TRILOGY-1 ピアノチック・コリアベースクリスチャン・マクブライドドラムブライアン・ブレイドによる,チック・コリアの何代目かの新ピアノ・トリオによるライブ盤『TRILOGY』(以下『トリロジー』)が真に素晴らしい。

 リスナーのすぐ目の前でチック・コリアクリスチャン・マクブライドブライアン・ブレイドのビッグネームの3人が“最高の音楽の会話”を交わしているかのような臨場感に圧倒されてしまう。

 「CD3枚組」の圧倒的ボリューム。そのほとんどが10分を超える長尺集。“最高の音楽の会話”が止まらないのだ。ジャズ界の最高峰に君臨する3人だからこそ,分かりあえる&語り合える“最高の音楽の会話”が詰まっている。
 だから「総収録時間3時間20分以上」とCD帯に謳われているにも関わらず,躍動感に溢れたタイトな演奏に引き込まれ,ふと聴き始めたが最後。一気に3時間20分の長丁場を完走してしまった。
 そう。『トリロジー』の真実とは,長時間聴いても聴き飽きないピアノ・トリオ。それどころかまだまだ聴きたくなる。

 ズバリ『トリロジー』の真実とは,自由に演ってもきれいにまとまり,濃密なインタープレイが想像以上にスイングする,もはや「未来永劫,チックのこのピアノ・トリオを超えることができるのか?」的な,ウルトラ・オーソドックス・ピアノ・トリオ

 ここまでジャズスタンダードが,刺激的でワクワクする“ピッカピカ仕様”に仕上がったのも,新チック・コリアトリオの“剛腕”あるのみ。
 演奏者の個性の組み合わせで「化学反応」してしまう,ジャズの醍醐味を再認識させられてしまった。音の粒立ちが尋常ではない。

 チック・コリアピアノは,切れ味だけではなく,深味も渋みも重量感も備わっている。チック・コリア久方ぶりの生ピアノによる快演が続いている。
 このチック・コリアの快演に瞬時に反応する“フレキシブルな”ベースドラムクリスチャン・マクブライドブライアン・ブレイドの“時代の最先端”を行くベースドラム名演が続く。

 チック・コリアの,伸びやかで,躍動感に富み,グルーヴィーで,歌心のあるテクニカルなベースが完璧。
 ブライアン・ブレイドドラムの音のダイナミクス! 小さい音は極限に小さく大きい音は耳ではなく,体に直接刺さるささるドラミングは,気合いの云々の問題ではなく,単純にドラムを響かせるスーパー・テクニシャンとしての本領発揮なのであろう。

 超が付くほど音楽的な反射神経が高いクリスチャン・マクブライドブライアン・ブレイドによるジャズ界最高峰のリズム隊は,チック・コリアピアノが「パーン」と跳ねたら,ベースドラムが「ポーン」と受ける“至極のインタープレイ”!

TRILOGY-2 さて『トリロジー』が,チック・コリア本人えり抜きのベスト・テイク集なのだからグラミー受賞は当然として,気になるのはこのツアーの没テイク。
 きっと没テイク集の『トリロジー 2』なるものが発売されたら『トリロジー 2』がその年のグラミー受賞最有力。『トリロジー 3』であってもノミネートまでは楽勝だと思う。

 そこでチック・コリア様への提言です。
 いっそのこと『COMPLETE TRILOGY LIVE』なるボックス・セットを制作されませんか? チック・コリア・ファンは皆,今から発売予定のない未発表音源集を待ち焦がれているのです!

  Disc 1
  01. You're My Everything
  02. Recorda Me
  03. The Song Is You
  04. Work
  05. My Foolish Heart
  06. Fingerprints
  07. Spain

  Disc 2
  01. This Is New
  02. Alice in Wonderland
  03. It Could Happen to You
  04. Blue Monk
  05. Armando's Rhumba
  06. Op.11, No.9
  07. How Deep Is the Ocean?

  Disc 3
  01. Homage
  02. Piano Sonata:The Moon
  03. Someday My Prince Will Come

(ストレッチ・レコード/STRETCH RECORDS 2013年発売/UCCJ-3031/3)
(☆SHM−CD仕様)
(CD3枚組)
(ライナーノーツ/チック・コリア,漆崎丈)

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チック・コリア & ゲイリー・バートン / ホット・ハウス5

HOT HOUSE-1 ピアノチック・コリアヴィヴラフォンゲイリー・バートンによる15年振りとなるスタジオ録音の大名盤が『HOT HOUSE』(以下『ホット・ハウス』)。
 『ホット・ハウス』がこれまた素晴らしい。何年間隔が空こうとも,何年間隔が詰まっていようと,何ら影響のない“安心で安定の大傑作”のリリースである。

 過去の2人の大名盤の5枚と比較して『ホット・ハウス』の“目新しさ”を語るとすれば,それは「有名スタンダードカヴァー集」ということになるのだが,ハッキリ言って,選曲は違えど演っていることはいつも通りで“目新しさ”など感じない。

 しかし,この「変化しないという男気」こそが,チック・コリアゲイリー・バートンデュエットについて“ジャズの伝統芸能”と称される所以であって,いつまでも「異次元のデュエット」を守り続けることに専ら価値を見い出すというもの。

 逆説的に説明するなら『クリスタル・サイレンス』〜『デュエット』〜『イン・コンサート』〜『ネイティヴ・センス』〜『ライク・マインズ』〜『ランデヴー・イン・ニューヨーク』〜『ニュー・クリスタル・サイレンス』がリリースされてきた約40年という歳月の間に,チック・コリアゲイリー・バートンデュエットを越えるデュエットが登場することはなかった,という事実。
 そう。40年経とうともチック・コリアゲイリー・バートンデュエットが「ジャズデュエットの金字塔」に変わりがなかったのだ。

 このライバル不在の現状が,チック・コリアゲイリー・バートンにとっては,大きな壁となり,大きなチャレンジとなってきたと思う。
 毎回「手を替え品を替えて」ファンを飽きさせないよう努めるのではなく,正面突破の同じ手法でアプローチするのに飽きさせない。特に1作目『クリスタル・サイレンス』が“世紀の大名盤”のスタートだったのだから,前作を越え続けるのは並大抵の仕事ではなかったことだろう。

 ファースト・インプレッションが素晴らしければ素晴らしいほど,次に与えるインパクトは弱くなる。驚きは後退するのである。ただ,それでもその驚きの先に,チック・コリアゲイリー・バートンデュエットがあるのだと信じている。

 例えば,生まれて初めて蒸気機関車を見た。富士山を見た。東京タワーを見た。きっとその時は感動したはずなのに,今ではその感動を思い出せない。
 ではこれが虹だったならどうだろうか? 何回見ても,何年経っても虹に興奮していまう。あんな虹やこんな虹に【TOUCH THE RAINBOW】。今眺めている虹を見ながら,前回見た「七色の虹」のシチュエーションを思い出したりしてしまう。永遠に色褪せない感動であり,思い出がますます美化されていく。

 そう。チック・コリアゲイリー・バートンデュエットは,蒸気機関車や富士山や東京タワーとは異なる「七色の虹」のようなジャズなのだと思う。

HOT HOUSE-2 1973年の『クリスタル・サイレンス』のレインボー〜1979年の『デュエット』のレインボー〜1980年の『イン・コンサート』のレインボー〜1997年の『ネイティヴ・センス』のレインボー〜1998年の『ライク・マインズ』のレインボー〜2003年の『ランデヴー・イン・ニューヨーク』のレインボー〜2008年の『ニュー・クリスタル・サイレンス』のレインボーは,その全てが美しかった。

 そして2012年の『ホット・ハウス』の「七色の虹」も素晴らしい。特に【MOZART GOES DANCING】におけるハーレム・ストリング・カルテットの瑞々しくも重厚感のある「弦楽四重奏」が加わった大名演が素晴らしい。

 やがて時間と共に『ホット・ハウス』に対する感動も薄くなることだろう。驚きは後退するであろう。ただ,それでもその驚きの先に,チック・コリアゲイリー・バートンデュエットがある。
 『ホット・ハウス』には,チック・コリアゲイリー・バートンの強い信念が感じられる。

  01. Can't We Be Friends
  02. Eleanor Rigby
  03. Chega de Saudade
  04. Time Remembered
  05. Hot House
  06. Strange Meadow Lark
  07. Light Blue
  08. Once I Loved
  09. My Ship
  10. Mozart Goes Dancing

(コンコード/CONCORD 2012年発売/UCCO-1116)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/原田和典)

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チック・コリア & ステファノ・ボラーニ / オルヴィエート4

ORVIETO-1 デュエットの名手,チック・コリアの『ORVIETO』(以下『オルヴィエート』)におけるデュエット相手は,ピアニストステファノ・ボラーニ

 『オルヴィエート』におけるステファノ・ボラーニの大きな喜びと大きなプレッシャーはいかばかりであろう。必然的にステファノ・ボラーニのライバルは,過去にチック・コリアデュエットを務めた,ハービー・ハンコック上原ひろみの「GRAMMY WINNER」の猛者たちであろう。

 そんな過去のチック・コリアデュエット・アルバム,特に同じピアニスト2人とのデュエット・アルバムとの比較で聴き始めた『オルヴィエート』だが,上記の文脈で聴くべきではないことをすぐに感じ取った。
 そう。『オルヴィエート』は,過去のチック・コリアデュエットの範疇では評価できない,全く新しいデュエット・アルバムの誕生なのである。

 ハービー・ハンコック上原ひろみの場合は,チック・コリアと己を“研ぎ合い”,自分1人だけでは登頂できない異次元の高みを目指すデュエットであったと思う。
 一方,ステファノ・ボラーニの場合は,チック・コリアと対峙するのではなく,チック・コリアと“一体化”することを望んでいる。つまり2人が同期し1人で4本の指を同時に操る感覚…。2台のピアノが1台のピアノのごとくシンクロしていく感覚…。

 『オルヴィエート』における“1人4本指”は,常にチック・コリアが「頭脳」役というわけではない。ステファノ・ボラーニが「頭脳」となってチック・コリアが「手足」役に回る場面もしばしばある。
 そのことを強く意識させられるのはチック・コリアステファノ・ボラーニソロ・パートでの演奏である。デュエット中は2人が対等に1つの音楽を創造していることが伝わってくる。それはそれでよい。

 問題なのは,曲名もテーマもない,自然発生的なインプロビゼーションを弾いている途中で,短いながらも訪れるチック・コリアステファノ・ボラーニソロ・パートが“没個性”。デュエットの延長線上にあるアドリブばかりが続いていく。
 『オルヴィエート』を聴いていると「なんでこうなるのっ!」と思ってしまう瞬間に出くわす確率が高い。

 【ORIVIETO IMPROVISATION NO.1】【ORIVIETO IMPROVISATION NO.2】では,2人の個性が“ぐじゃぐじゃと入り交じって”おり,難関さを覚えてしまう。耳馴染みのあるチック・コリアにもステファノ・ボラーニにも聴こえないのだ。
 ポピュラー寄りではなく芸術寄りな演奏である。かなり神経の研ぎ澄まされた演奏である。チック・コリアが頭の中でイメージした音が,瞬時にステファノ・ボラーニの指から奏でられているかのようなレスポンスの高さに,ただただ“唸らされて”しまう。

ORVIETO-2 だ・か・ら『オルヴィエート』は“新基軸の”デュエット・アルバム。過去の自分を封印して新しい人格を共有するデュエット・アルバム。

 “殿堂入り”のゲイリー・バートンは別格として,チック・コリアが指名した無数の音楽パートナーの中で,ステファノ・ボラーニこそが“素のチック・コリア”に一番肉薄できたように思う。
 同じピアニストに限って語れば,ステファノ・ボラーニとのデュエットは,音楽性の共有という意味ではハービー・ハンコック上原ひろみを越えたと思う。

 ただし,正直『オルヴィエート』は,チック・コリアステファノ・ボラーニの「2人だけの濃密な音世界」でクローズドされてしまっている。
 2人の演りたいことが全部出来ていて,究極の完成度の1枚に仕上がっていることは認めるが『オルヴィエート』における,チック・コリアステファノ・ボラーニの2人の世界に,第三者が割って入る余地はない。2人の演奏にリスナーが加わることが許されていない。
 チック・コリアステファノ・ボラーニが「恋人同士」のように聴こえて,お邪魔しちゃ悪いのかなぁ,って感じてしまう。

 管理人が『オルヴィエート』を次に聴くのは,一体いつのことになるのでしょうか…。
 どなたか『オルヴィエート』の楽しみ方を教えていただけたら…。

  01. ORVIETO IMPROVISATION NO.1
  02. RETRATO EM BRANCO E PRETO
  03. IF I SHOULD LOSE YOU
  04. DORALICE
  05. JITTERBUG WALTZ
  06. A VALSA DA PAULA
  07. ORVIETO IMPROVISATION NO.2
  08. ESTE SEU OLHAR
  09. DARN THAT DREAM
  10. TIRITITRAN
  11. ARMANDO'S RHUMBA
  12. BLUES IN F

(ECM/ECM 2011年発売/UCCE-1128)
(☆スリップ・ケース仕様)
(ライナーノーツ/チック・コリア,ステファノ・ボラーニ,原田和典)

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チック・コリア/エディ・ゴメス/ポール・モチアン / ファーザー・エクスプロレイションズ〜ビル・エヴァンスに捧ぐ4

FURTHER EXPLORATIONS-1 思えば,チック・コリアがリスペクトするジャズ・ピアニストとして,ビル・エヴァンスについて語るようになったのは,ごく最近のことと記憶する。
 管理人の認識では,チック・コリアが影響を受けたジャズ・ピアニストは,バド・パウエルセロニアス・モンクというビ・バップ期を代表する2大ピアニストだけだったと思う。

 それがここへきての“ビル・エヴァンス押し”が凄まじく,ある種の戸惑いを覚えてしまう。
 そんなチック・コリアの“ビル・エヴァンス押し”の最たるものである『FURTHER EXPLORATIONS』(以下『ファーザー・エクスプロレイションズ〜ビル・エヴァンスに捧ぐ』)を耳にして,戸惑いが吹っ切れた。

 『ファーザー・エクスプロレイションズ〜ビル・エヴァンスに捧ぐ』の中にビル・エヴァンスはいなかった。ここにいるのは,そのまんまのチック・コリア,だった。チック・コリアが“どうあがいても”ビル・エヴァンスになれやしない。
 そういう訳で,管理人は『ファーザー・エクスプロレイションズ〜ビル・エヴァンスに捧ぐ』をチック・コリアの新しいピアノ・トリオの1枚という位置付けで聴いている。

 チック・コリアからビル・エヴァンスを切り離して聴き始めると『ファーザー・エクスプロレイションズ〜ビル・エヴァンスに捧ぐ』が,俄然,面白い!
 エディ・ゴメスベースポール・モチアンドラムと組んだ,チック・コリアの新しいピアノ・トリオは,過去に例がないくらいに,チック・コリアピアノだけが“浮いてしまっている”。

 原因は,完全にビル・エヴァンスを演じきれない“戸惑い”がそうさせているのだろう。まとまらないから,つい音数が多くなってしまったのだろう。“饒舌な”ピアノチック・コリアの“手癖”がワンサカと記録されてしまっている。

 いいや,つい音数が多くなってしまったのはポール・モチアンの「ドッタンバッタン」なドラムにして「ファジー」なドラムのせいであろう。
 ポール・モチアンが“ブラシで撫でれば”チック・コリアが音を出し,ポール・モチアンが“スティックで叩けば”エディ・ゴメスが音を出す。ポール・モチアン自身は,時に無言になり無音で音空間を広げている。流石ですねぇ。

FURTHER EXPLORATIONS-2 ズバリ『ファーザー・エクスプロレイションズ〜ビル・エヴァンスに捧ぐ』の聴き所は,ポール・モチアン“最強の証し”!
 チック・コリアをもってしても“最強”ポール・モチアンには敵わなかった。ビル・エヴァンスポール・モチアンを長く手放さなかった理由を再確認できたというところである。

 『ファーザー・エクスプロレイションズ〜ビル・エヴァンスに捧ぐ』が「チック・コリア/エディ・ゴメス/ポール・モチアン」名義だから星4つなのだが『ファーザー・エクスプロレイションズ〜ビル・エヴァンスに捧ぐ』が「ポール・モチアン WITH エディ・ゴメス FEATURING チック・コリア」名義なら星5つ〜。

 それにしても,最初から最後までエヴァンス風で弾き通す「ビル・エヴァンストリビュート」が氾濫する中,あくまでもチック・コリア流を貫き通しつつ,全力でポール・モチアンにぶち当たったチック・コリアは嫌いではありません。

  CD 1
  01. Peri's Scope
  02. Gloria's Step
  03. They Say That Falling In Love Is Wonderful
  04. Alice In Wonderland
  05. Song No.1
  06. Diane
  07. Off The Cuff
  08. Laurie
  09. Bill Evans
  10. Little Rootie Tootie

  CD 2
  01. Hot House
  02. Mode VI
  03. Another Tango
  04. Turn Out The Stars
  05. Rhapsody
  06. Very Early
  07. But Beautiful - Part 1
  08. But Beautiful - Part 2
  09. Puccini's Walk

(ユニバーサル・ジャズ/UNIVERSAL JAZZ 2011年発売/UCCJ-3027/8)
(CD2枚組)
(ライナーノーツ/ボブ・ベルデン,チック・コリア,ポール・モチアン,エディ・ゴメス)

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チック・コリア&ジョン・マクラフリン / ファイヴ・ピース・バンド・ライヴ5

FIVE PEACE BAND LIVE-1 実は2000年辺りからのチック・コリアのリリース・ラッシュに,実は微妙な思いを持っていた。
 数カ月に1枚のリリース間隔も異例なら,そのほとんどが2枚組(中には6枚組)。何だか「音楽の大量生産品」→「大量消費」のようであって,そんなチック・コリアのスタンスが嫌いだった。
 出せば売れると分かっていても,自分で納得が行かないものを決して世に出そうとしないキース・ジャレットを見倣え〜。

 それでも買い続けてしまったのは,やはりチック・コリアが“天才”だったわけで,過去の焼き直しの企画物にはげんなりしつつも,最後には称賛してしまう。並みのジャズメンなら「生涯の代表作」と呼ばれるようなハイレベルなアルバムを数カ月おきにリリースするのだからチック・コリアは“怪物”であった。
 チック・コリアさん,こうなったら何でも買うからどんどんリリースしてくださ〜い。

 これは最近になって思うようになったのだが,チック・コリアの幅広い“カメレオンな”音楽性って,スタイルを次々と変えていった“帝王”マイルス・デイビスの手法と同じかも〜。
 違うのはマイルス・デイビスの場合は,出したら終わり&やめたら終わりで,決して焼き直しはしなかったこと。チック・コリアの場合は,過去の傑作を磨き続けたくなる修正能力に長けていることであろう。

 う〜む。何だか批判するつもりが称賛してしまったのだが,それは管理人の気分が上がっているから!
 今夜は『FIVE PEACE BAND LIVE』(以下『ファイヴ・ピース・バンド・ライヴ』)批評なのです。チック・コリアジョン・マクラフリンのスーパー・ライブ盤なのです。

 怒涛のリリース・ラッシュの中,ついにチック・コリアが本音でアルバムをリリースしてくれた思いがしたのだコレ! 管理人のハートが“鷲掴み”されたのがコレ!
 管理人も『ファイヴ・ピース・バンド・ライヴ』のような「真新しいイチからの新作」を待っていたんですよ〜。

 “オール・スター・スーパー・バンド”「ファイヴ・ピース・バンド」のライブ盤を聴いて,腰を抜かしそうになった。何なんだ,このダイナミズム。「生きの良いバンド・サウンド」ではないかっ。
 チック・コリアピアノキーボードジョン・マクラフリンギターの音の何とも瑞々しいこと! 70代のレジェンド2人が20代の頃のようなパワフルな高速フレーズで空間を埋め尽くしていく! 凄んごい! 最高にカッコいい!
 『ビッチェズ・ブリューセッションの再現を聴いているかのような大興奮&ガッツポーズ状態。特に1曲目【RAJU】が流れ出すと同時に放出されるアドレナリンが丸1ケ月は分泌されていた記憶がある。

 そうして本題はここからである。『ファイヴ・ピース・バンド・ライヴ』の大興奮が少し落ち着いた頃,2度目の『ファイヴ・ピース・バンド・ライヴ』熱に襲われた。
 今度はケニー・ギャレットアルトサックスであった。『ファイヴ・ピース・バンド・ライヴ』を聴き込んでいくにつれ,このセッション全てはケニー・ギャレットのために企画されている,と感じるようになったのだ。

 ケニー・ギャレットソロになってからも大好きだけど,管理人のお気に入りはマイルス・バンド時代のケニー・ギャレットである。
 ゆえに“電化マイルスっぽい”「ファイヴ・ピース・バンド」は相性チリバツ! ケニー・ギャレットアルトを吹けば,チック・コリアジョン・マクラフリンケニー・ギャレット・バンドのサイドメンに成り下がってしまったかのように感じてしまった。
 マイルス・デイビスが“睨みをきかせていた”当時のマイルス・バンドの雰囲気が「ファイヴ・ピース・バンド」から漂い出ている。

FIVE PEACE BAND LIVE-2 「ファイヴ・ピース・バンド」の強烈なリズムの波間を“自由に泳ぎまくる”ケニー・ギャレットが神!
 正しく「ジョン・コルトレーンウェイン・ショーターを足して2で割ったような」アルトサックスの吹きっぷりは“エレクトリックジャズ”!

 チック・コリアの“待望の新企画”『ファイヴ・ピース・バンド・ライヴ』の聴き所は,巷で語られているような,チック・コリアジョン・マクラフリンの40年振りの共演だとか,思い出の【IN A SILENT WAY〜IT’S ABOUT THAT TIME】とか,ハービー・ハンコックの飛び入りなどではない。

 『ファイヴ・ピース・バンド・ライヴ』のハイライトは“コマーシャリズムを越えた”エレクトリックジャズ”!
 チック・コリアジョン・マクラフリンが,ケニー・ギャレット在籍時のマイルス・バンドにサイドメンとして40年振りに参加した「ファイヴ・ピース・バンド」が最高にクリエイティブ!

  DISC 1
  01. RAJU
  02. THE DISGUISE
  03. NEW BLUES, OLD BRUISE
  04. HYMN TO ANDROMEDA

  DISC 2
  01. DR. JACKLE
  02. SENOR C.S.
  03. IN A SILENT WAY〜IT'S ABOUT THAT TIME
  04. SOMEDAY MY PRINCE WILL COME

(ユニバーサル・ジャズ/UNIVERSAL JAZZ 2009年発売/UCCJ-3021/2)
(CD2枚組)
(ライナーノーツ/チック・コリア,ジョン・マクラフリン,工藤由美)

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チック・コリア & ゲイリー・バートン / ニュー・クリスタル・サイレンス5

THE NEW CRYSTAL SILENCE-1 チック・コリアゲイリー・バートンによる『THE NEW CRYSTAL SILENCE』(以下『ニュー・クリスタル・サイレンス』)なる2枚組のライブ盤が発売される。このリリース情報を目にした瞬間,ココロ・トキメイテシマッタ!

 世紀の大名盤CRYSTAL SILENCE』のリリース後も,チック・コリアゲイリー・バートンによる“ジャズの伝統芸能”は『DUET』『IN CONCERT,ZURICH,OCTOBER 28,1979』『NATIVE SENSE』と続いたわけだが,ニュー・アルバムの発売の度に誰しもが思い浮かべたであろう『ニュー・クリスタル・サイレンス』のアルバム・タイトルは封印され続けてきた。
 そのどれもが『ニュー・クリスタル・サイレンス』を名乗ってもおかしくない素晴らしい内容であったのに…。

 そう。『ニュー・クリスタル・サイレンス』なるアルバム・タイトルは,チック・コリア名義であっても,ゲイリー・バートン名義であっても,そう簡単にネーミングできない,ジャズ界の“永久欠番”!
 そんなジャズ界の“永久欠番”『ニュー・クリスタル・サイレンス』のアルバム・タイトルをついに冠した,チック・コリアゲイリー・バートンの新デュエットCDの登場に,喜び以前の“胸騒ぎ”を感じてしまった。
 これってセールス至上主義では? なんともゴマ臭い?

 しかし,と言うべきか,やっぱり,と言うべきか。どんなにハードルが上がったとしても,チック・コリアゲイリー・バートンの名コンビは,その全てのプレッシャーを軽々と乗り越えてくる。
 そう。『ニュー・クリスタル・サイレンス』のアルバム・タイトルは『ニュー・クリスタル・サイレンス』のためのものであった。
 結果として『DUET』『IN CONCERT,ZURICH,OCTOBER 28,1979』『NATIVE SENSE』に『ニュー・クリスタル・サイレンス』のアルバム・タイトルは荷が重かったように思う。

 ジャズ界の“永久欠番”と思われた『ニュー・クリスタル・サイレンス』が,ジャズ界の“新・永久定番”!
 『ニュー・クリスタル・サイレンス』の『THE NEW』の部分は,2枚組ライブ盤&オーケストラとの共演から聴こえてくる,現代ジャズの「温故知新」そのものであった。

 1973年の『クリスタル・サイレンス』1枚と2008年の『ニュー・クリスタル・サイレンス』の2枚の合計3枚組。35年間かけてついに完成した「SILENCE」で「CRYSTAL」なジャズ
 “COOL”な発熱反応はそのままに,成熟というか,円熟というか,枯れた感じを漂わせながらも,じわじわと盛り上がってくる無上の喜び。あ〜,何回聴いても幸せを感じる!

THE NEW CRYSTAL SILENCE-2 CD1でのシドニー交響楽団の荘厳なアンサンブルに負けないチック・コリアゲイリー・バートンの存在感にメ〜ロメロ!
 クラシック調でスタートするが,徐々に音風景がジャズへと変わり,最後には,チック・コリアゲイリー・バートンの音世界,だけが抜きん出て響き渡っている。スペクタクルなオーケストレーションの高揚感が素晴らしい。

 CD2のデュオライブでは,チック・コリアゲイリー・バートンの「十八番」だけではなく,ビル・エヴァンスの【WALTZ FOR DEBBY】やらセロニアス・モンクの【SWEET AND LOVELY】やらジョージ・ガーシュインの【I LOVE YOU POGGY】やらを,チック・コリアゲイリー・バートンの音世界で聴きたいと思っていたファンとしては,その願いがついに叶ってお涙もの〜。

 『ニュー・クリスタル・サイレンス』のハイライトは,CD1とCD2ともに最後に収録されている2つの異なる【LA FIESTA】であろう。
 演奏を重ねれば重ねるほどチック・コリアの手を離れ,有名ジャズスタンダードの貫録を放っているように思う。どちらも素晴らしい大名演である。

  CD1 Duet with Sydney Symphony
  01. Duende
  02. Love Castle
  03. Brasilia
  04. Crystal Silence
  05. La Fiesta

  CD2 The Duet
  01. Bud Powell
  02. Waltz for Debby
  03. Alegria
  04. No Mystery
  05. Senor Mouse
  06. Sweet and Lovely
  07. I Love You Porgy
  08. La Fiesta

(コンコード/CONCORD 2008年発売/UCCO-1043/4)
(ライナーノーツ/パット・メセニー,ゲイリー・バートン,チック・コリア,小川隆夫)
(CD2枚組)
(デジパック仕様)

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チック・コリア & 上原 ひろみ / デュエット4

DUET-1 チック・コリアゲイリー・バートンが“以心伝心で通じ合う”デュエットだとしたら,チック・コリア上原ひろみは“アイコンタクトで通じ合う”デュエットである。

 そのように結論できたのは,音源ではなく映像から入った影響なのだが,チック・コリアゲイリー・バートンの場合は,生ライブを見て,そしてチック・コリア上原ひろみの場合は『DUET』(以下『デュエット』)のボーナスDVDを見た結果である。

 正直『デュエット』の音源だけを聴いていたなら,チック・コリア上原ひろみの“音数の多すぎる”デュエットが,あんなにも笑顔でアットホームなものだったとは信じ難かったことだろう。“超絶技巧な”音源の印象と映像の印象が一致しないのだ。

 逆に映像を見た後に音源を聴き直したから感じることもあって,管理人なんかは「今のフレーズはチック・コリア? それとも上原ひろみ?」の判別不能状態の秘密を覗き見たようで,ホッとできたりして…。
 「ソロを取り,被せ合い,乗り合い,引けば突っ込み,押せば引き」の長いラリーが続くのに,トリッキーなキラーパスにも余裕で反応できている。やはり鍵盤を見ていては成立できない。
 いいや,鍵盤を見る暇もない「音楽芸術の交歓」に没頭し続けた“超絶技巧で音数の多すぎた”ライブ盤であった。

 『デュエット』のハイライトは,チック・コリア上原ひろみの“珠玉のコンビネーション”! チック・コリア上原ひろみが,時には同期し,時には離れる,変幻自在のピアノ2台の“イリュージョン”!
 何もデュエットだからといってハモリ続ける必要などない。逆に名手2人のピアノが揃えばピアノ3台分の演奏ができるはずではないか! そんな「1+1=3」のようなスケール豊かなピアノの“掛け合い”が最高に素晴らしい。

 ズバリ,個人的に『デュエット』は,1台のピアノによる「多重録音」のようなものだと思っている。映像証拠があるにも関わらず,そう思わないとやってられない。
 だ〜って,ボーナスDVDを見ていて「今,正に上原ひろみピアノを弾いた。しかし,出てきた音は紛れもないチック・コリアの音」という瞬間があった。映像として見る事で余計に翻弄されてしまう不思議な感覚に襲われたのである。

 そう。『デュエット』は,チック・コリアチック・コリアのフォロワーである上原ひろみとの共演なのだから,キャラクターの違いを聴き分けるのは至難の業。
 『デュエット』の中には“ごった煮”のチック・コリアが全トラックに存在している。あたかも「ウォーリーをさがせ!」改め「上原ひろみをさがせ!」のようであって,本物のチック・コリアチック・コリアのフォロワーである“ウォーリー・HIROMI”が登場している。

DUET-2 だ・か・ら・管理人はチック・コリア・サイドから『デュエット』を奨めることはしていない。『デュエット』の真髄とは,チック・コリアのフォロワーである上原ひろみにとって「夢の実現」であり,それは同時に上原ひろみを支持するファンにとっての「夢の実現」なのである。

 やったね,HIROMI! 自作曲【古城,川のほとり,深い森の中】をチック・コリアHIROMIの隣りで弾いてくれている!
 やったね,HIROMI! 【アランフェス協奏曲/スペイン】をチック・コリアHIROMIの目の前で弾いてくれている!
 やったね,HIROMI! ジャズスタンダードにも初挑戦!
 そう。HIROMI! 『デュエット』は,HIROMIチック・コリアと肩を並べた記録なんだよ〜!

 “ごった煮”のチック・コリアの中から“ウォーリー・HIROMI”を探し出せた時の幸福感が「夢の実現」!

  CD 1
  01. Very Early
  02. How Insensitive
  03. Deja Vu
  04. Fool on the Hill
  05. Humpty Dumpty
  06. Bolivar Blues

  CD 2
  01. Windows
  02. Old Castle, by the river, in the middle of a forest
  03. Summertime
  04. Place To Be
  05. Do Mo (Children's Song #12)
  06. Concierto de Aranjuez / Spain

  DVD
  01. Fool on the Hill
  02. Concierto de Aranjuez / Spain

(ストレッチ・レコード/STRETCH RECORDS 2008年発売/UCCO-9181)
(ライナーノーツ/チック・コリア,上原ひろみ,小川隆夫)
★【初回限定盤】 2CD+DVD
★ボーナスDVD:【フール・オン・ザ・ヒル】【スペイン】のライヴ映像収録

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チック・コリア / ファイヴ・トリオBOX5

FIVE TRIOS-1 チック・コリアによる,4人のベーシストと5人のドラマーによる異なる5組のピアノ・トリオ+1枚から成る「6枚組BOXセット」が『FIVE TRIOS』(以下『ファイヴ・トリオBOX』)。

 とは言え,その真実の中身とは,既発の4枚『DR.JOE』(以下『ドクター・ジョー〜ジョー・ヘンダーソンに捧ぐ』)+『FROM MILES』(以下『マイルストーンズ〜マイルス・デイヴィスに捧ぐ』)+『CHILLIN’ IN CHELAN』(以下『モンクス・ムード〜セロニアス・モンクに捧ぐ』)+『THE BOSTON THREE PARTY』(以下『ワルツ・フォー・デビイ〜ビル・エヴァンスに捧ぐ』)+「6枚組BOXセット」でしか聴くことのできない未発表の2枚となっている。

 つまり,事実上,チック・コリアのフォロワーにとって『ファイヴ・トリオBOX』を購入する意義とは,5枚目の『BROOKLYN,PARIS TO CLEARWATER』(以下『ブルックリン・パリ・トゥ・クリアウォーター』)と6枚目の『FIVE TRIOS ADDITIONAL TRACKS』(以下『ファイヴ・トリオBOX 特典盤』)の2枚目当て!

 管理人の結論。『ファイヴ・トリオBOX批評

 未発表の2枚のためだけでも『ファイヴ・トリオBOX』は買う価値がある。仮に既発の4枚のうち,まだコレクションできていないCDが1枚でもあるのなら,なおのことである。
 『ファイヴ・トリオBOX』の6枚は,その1枚ずつが五つ星の大名盤。そんな6枚が「BOXセット」になったのだから星10個を進呈したい。“天才”チック・コリアの「大量名盤群」の頂点を成すのが「6枚組BOXセット」なのである。

 そう。『ファイヴ・トリオBOX』こそ,チック・コリアのフォロワーたちにとって「音楽生活40周年を過ぎて」ついに登場した“究極のマスト・アイテム”である。定価¥12000なんて安い&安い〜。仮に¥20000でも安い&安い〜。

FIVE TRIOS-2 管理人が『ファイヴ・トリオBOX』を聴いて,まず思ったのは,このリズム・セクションの組み合わせはこれしかないだろう!という内容だということ。

 異なる5人のベーシストと5人のドラマーの組み合わせは何パターンもあるのだが『ファイヴ・トリオBOX』を聴いて,例えば1枚目の『ドクター・ジョー〜ジョー・ヘンダーソンに捧ぐ』のジョン・パティトゥッチベースに合うのは,ジャック・デジョネットでもジェフ・バラードでもアイアート・モレイラでもリッチー・バーシェイでもなくてアントニオ・サンチェスドラムしかない! この5組の最高の組み合わせを選んだチック・コリアが凄すぎる〜!

 この記事は『ファイヴ・トリオBOX批評であって,単発4枚の個別レヴューではないので,1枚1枚への言及は来たる「トラック批評」に任せることとする。

 以下に『ドクター・ジョー〜ジョー・ヘンダーソンに捧ぐ』『マイルストーンズ〜マイルス・デイヴィスに捧ぐ』『モンクス・ムード〜セロニアス・モンクに捧ぐ』『ワルツ・フォー・デビイ〜ビル・エヴァンスに捧ぐ』『ブルックリン・パリ・トゥ・クリアウォーター』『ファイヴ・トリオBOX 特典盤』の各々についてのプチ・レヴューを記すこととする。

DR. JOE-1 『ドクター・ジョー〜ジョー・ヘンダーソンに捧ぐ』のピアノ・トリオは,ピアノキーボードチック・コリアエレクトリックベースアコースティックベースジョン・パティトゥッチドラムアントニオ・サンチェス

 チック・コリアピアノの魅力は,朗々と歌って聴かせるというより,詩のようにリズムで聴かせる“メロディック・リリシズム”。基調となるメロディー・ラインを瞬時に解釈し,共演者とのインプロビゼーションを展開する中で,新たな曲想を加えていく。
 チック・コリアジャズ・ピアノの深さと豊穣さが『ファイヴ・トリオBOX』の中に色濃く表現されている。

 ジョン・パティトゥッチベースアントニオ・サンチェスドラムによる“タイトでファンタジックな”リズムにチック・コリアが乗りまくっている。

DR. JOE-2 『ドクター・ジョー〜ジョー・ヘンダーソンに捧ぐ』の聴き所はアントニオ・サンチェスドラムであろう。
 アントニオ・サンチェスドラムは“御存じ”パット・メセニー絡みで耳馴染みのドラムなのだが,いや〜,どうしてどうして,パット・メセニーとの共演のイメージからはかなり離れたドラミングであって,ジャズ寄りというか,正確にはチック・コリア寄りのスーパー・ドラミング

 『ドクター・ジョー〜ジョー・ヘンダーソンに捧ぐ』は,モード奏法と変則的な間が特徴のジョー・ヘンダーソンへのトリビュート。ゆえにビートというよりはクリエイトされたリズムが伴わなければ,あのジョー・ヘンダーソンの雰囲気を醸し出すのは難しいのだが,アントニオ・サンチェスドラミングは,決して単調にならずそれでいて奇をてらわない,リム・ショットを含めジャズらしいスポンティニアスに抑揚の効いた“正統派の”スーパー・ドラミング

FROM MILES-1 『マイルストーンズ〜マイルス・デイヴィスに捧ぐ』のピアノ・トリオは,ピアノチック・コリアアコースティックベースエディ・ゴメスドラムジャック・デジョネット

 チック・コリアピアノの魅力は,朗々と歌って聴かせるというより,詩のようにリズムで聴かせる“メロディック・リリシズム”。基調となるメロディー・ラインを瞬時に解釈し,共演者とのインプロビゼーションを展開する中で,新たな曲想を加えていく。
 チック・コリアジャズ・ピアノの深さと豊穣さが『ファイヴ・トリオBOX』の中に色濃く表現されている。

 エディ・ゴメスベースジャック・デジョネットドラムによる“縦横無尽に暴れまくる猛獣の野太い”リズムにチック・コリアが乗りまくっている。

FROM MILES-2 『マイルストーンズ〜マイルス・デイヴィスに捧ぐ』の聴き所はジャック・デジョネットドラムであろう。
 ジャック・デジョネットドラムは“御存じ”キース・ジャレット絡みで耳馴染みのドラムなのだが,いや〜,どうしてどうして,キース・ジャレットとの共演のイメージからはかなり離れたドラミングであって,自由奔放に弾きまくるチック・コリアピアノを支え,活かすようなスーパー・ドラミング

 『マイルストーンズ〜マイルス・デイヴィスに捧ぐ』は,世界中のジャズメンから演奏され尽くしてきたマイルス・デイヴィスへのトリビュート
 5曲全てを「原曲をここまで崩しまくるか!」というくらいに,攻撃的に崩しまくっているのだが,よく聴くと原曲のモチーフをしっかりと押さえた“粋で鯔背な”フリージャズ。最高である。

CHILLIN' IN CHELAN-1 『モンクス・ムード〜セロニアス・モンクに捧ぐ』のピアノ・トリオは,ピアノチック・コリアアコースティックベースクリスチャン・マクブライドドラムジェフ・バラード

 チック・コリアピアノの魅力は,朗々と歌って聴かせるというより,詩のようにリズムで聴かせる“メロディック・リリシズム”。基調となるメロディー・ラインを瞬時に解釈し,共演者とのインプロビゼーションを展開する中で,新たな曲想を加えていく。
 チック・コリアジャズ・ピアノの深さと豊穣さが『ファイヴ・トリオBOX』の中に色濃く表現されている。

 クリスチャン・マクブライドベースジェフ・バラードドラムによる“カチッとハマッタJAZZYな”リズムにチック・コリアが乗りまくっている。

CHILLIN' IN CHELAN-2 『モンクス・ムード〜セロニアス・モンクに捧ぐ』の聴き所はクリスチャン・マクブライドベースであろう。
 ピアノチック・コリアドラムジェフ・バラードが組んだ「チック・コリア・ニュー・トリオ」のベーシストからアヴィシャイ・コーエンの代わりに組んだクリスチャン・マクブライドベースの存在感!

 チック・コリア絡みのクリスチャン・マクブライド名演と来れば『SUPER TRIO』での“スーパー・ベース”にKOされたのだったが『モンクス・ムード〜セロニアス・モンクに捧ぐ』のベースはそれ以上!

 クリスチャン・マクブライドが,スタンリー・クラークジョン・パティトゥッチアヴィシャイ・コーエンと肩を並べたのが『モンクス・ムード〜セロニアス・モンクに捧ぐ』であった。

THE BOSTON THREE PARTY-1 『ワルツ・フォー・デビイ〜ビル・エヴァンスに捧ぐ』のピアノ・トリオは,ピアノキーボードチック・コリアアコースティックベースエディ・ゴメスドラムアイアート・モレイラ

 チック・コリアピアノの魅力は,朗々と歌って聴かせるというより,詩のようにリズムで聴かせる“メロディック・リリシズム”。基調となるメロディー・ラインを瞬時に解釈し,共演者とのインプロビゼーションを展開する中で,新たな曲想を加えていく。
 チック・コリアジャズ・ピアノの深さと豊穣さが『ファイヴ・トリオBOX』の中に色濃く表現されている。

 エディ・ゴメスベースアイアート・モレイラドラムによる“ゴリゴリのジャズ・サンバの”リズムにチック・コリアが乗りまくっている。

THE BOSTON THREE PARTY-2 『ワルツ・フォー・デビイ〜ビル・エヴァンスに捧ぐ』の聴き所はアイアート・モレイラドラムであろう。
 アイアート・モレイラの“浮遊する”ドラムが鳴れば,ブラジリアンの不思議な空気が場を支配する。初期リターン・トゥ・フォーエヴァーのレパートリーやアントニオ・カルロス・ジョビンのレパートリーにはズバリであるが,なぜだか最高なのが【WALTZ FOR DEBBY】である。

 とにもかくにも,アイアート・モレイラの変幻自在なドラミングが「チック・コリアの中のビル・エヴァンス」を,表と裏に廻ってバランス良く引き出している。実に素晴らしい。何だか,この手の演奏を聴いていると胸の中が熱くなって決まって郷愁に誘われる。こんなライブが好きなんだよなぁ。

BROOKLYN, PARIS TO CLEARWATER-1 『ブルックリン・パリ・トゥ・クリアウォーター』のピアノ・トリオは,ピアノチック・コリアエレクトリックベースアドリアン・フェロードラムリッチー・バーシェイ

 チック・コリアピアノの魅力は,朗々と歌って聴かせるというより,詩のようにリズムで聴かせる“メロディック・リリシズム”。基調となるメロディー・ラインを瞬時に解釈し,共演者とのインプロビゼーションを展開する中で,新たな曲想を加えていく。
 チック・コリアジャズ・ピアノの深さと豊穣さが『ファイヴ・トリオBOX』の中に色濃く表現されている。

 アドリアン・フェローベースリッチー・バーシェイドラムによる“一瞬先は闇の如く,一体何が出て来るか分からない新感覚の”リズムにチック・コリアが乗りまくっている。

BROOKLYN, PARIS TO CLEARWATER-2 『ブルックリン・パリ・トゥ・クリアウォーター』の聴き所は“無名のニュースター”の2人である。
 アドリアン・フェローベースリッチー・バーシェイドラムには,それぞれジョン・パティトゥッチデイブ・ウェックルデビュー時を想起させるものがある。

 アドリアン・フェローリッチー・バーシェイと組んだチック・コリアのサウンドが激変している。これはいつかは「チック・コリア・エレクトリック・バンド掘廚侶訐に動くのか?
 チック・コリアの“音の実験熱”が再び湧き上がってきたかのような,エレクトリック・サイドからの様々なアプローチがチック・コリア・マニアとしては非常に興味深い演奏が続いている。

 個人的には,既に名前の売れたメンバーと録音した4枚以上に“無名のニュースター”2人との『ブルックリン・パリ・トゥ・クリアウォーター』を単体で優先リリースしてほしかった!

FIVE TRIOS ADDITIONAL TRACKS-1 『ファイヴ・トリオBOX 特典盤』のピアノ・トリオは『ワルツ・フォー・デビイ〜ビル・エヴァンスに捧ぐセッションからの2トラック+『ドクター・ジョー〜ジョー・ヘンダーソンに捧ぐ』からの1トラック+『モンクス・ムード〜セロニアス・モンクに捧ぐ』からの3トラック。

 決して「お蔵の残り物」などでも「本テイクに選ばれなかった別テイク集」などでもなく,単純に収録時間の関係で漏れただけの「名演集」である。
 ユニバーサルさんへお尋ねします。まだまだ「お蔵の残り物」が隠されている? まだまだ「本テイクに選ばれなかった別テイク集」が隠されている?

 ユニバーサルさんへお願いです。『ファイヴ・トリオBOX 特典盤』の隠された『特典盤』の商品化を〜! 『ファイヴ・トリオBOX』の「6枚組BOXセット」だけでは,まだまだチック・コリアが足りませ〜ん!

FIVE TRIOS ADDITIONAL TRACKS-2 『ファイヴ・トリオBOX 特典盤』の聴き所は,最後の最後に登場する【SPAIN】の2トラックであろう。

 『ファイヴ・トリオBOX』の5枚合計48トラックの中で【SPAIN】が収録されているのは『ファイヴ・トリオBOX 特典盤』ONLY。

 中には「正直【SPAIN】はもうたくさん」と思っているチック・コリア・マニアがいるかもしれないが,その認識は甘いのでは?
 そう。【SPAIN】が流れ始めた瞬間に,無意識の内に「ガッツポーズをしてしまっている」自分に気付き【SPAIN】をまだまだ欲している自分に気付くものなのです!

  CD 1 <Dr. JOE
  01. Illusion
  02. Doctor Joe
  03. Mystic River
  04. Zig Zag
  05. Blues For Dail
  06. Crepuscule With Nellie
  07. 1% Manteca
  08. Promise
  09. M.M.
  10. Fourteen

  CD 2 <From Miles
  01. Solar
  02. So Near So Far
  03. Milestones
  04. But Beautiful
  05. Walkin'

  CD 3 <Chillin' in Chelan
  01. Summer Night
  02. Think of One
  03. Sophisticated Lady
  04. Windows
  05. Monk's Mood
  06. Fingerprints
  07. Dusk in Sandi
  08. Walkin'
  09. Drums

  CD 4 <The Boston Three Party
  01. With a Song in My Heart
  02. 500 Miles High
  03. Waltz for Debby
  04. Desafinado (Intro)
  05. Desafinado
  06. Sweet and Lovely
  07. Sometime Ago−La Fiesta (Intro)
  08. Sometime Ago−La Fiesta (Part 1)
  09. Sometime Ago−La Fiesta (Part 2)

  CD 5 <Brooklyn, Paris to Clearwater
  01. Final Frontier
  02. Aftertouch
  03. Island Tune
  04. Dr. Jackle
  05. Creedmore's Unexpected Visitor
  06. Dedication
  07. Marimba Drum Song
  08. Con Aqua
  09. 3:30am Raga

  CD 6 <Additional Tracks
  01. Gloria's Step
  02. You're Everything
  03. 50% Manteca
  04. Bud Powell
  05. Spain in the Main
  06. Spain Drumdendum

(ストレッチ・レコード/STRETCH RECORDS 2007年発売/UCCJ-9089/94)
(ライナーノーツ/チック・コリア,小川隆夫)
(CD6枚組)

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チック・コリア・アンド・トロンハイム・ジャズ・オーケストラ / リターン・トゥ・フォーエヴァー〜ライヴ・イン・モルデ5

LIVE IN MOLDE-1 いや〜,分かる。無名のジャズ・オーケストラとの共演であっても,チック・コリアCD化したくなった気持ちがよ〜く分かる。

 チック・コリアジャズ・オーケストラの共演って,なんで今までなかったのだろう? とにかく,チック・コリアトロンハイム・ジャズ・オーケストラによるライブ盤=『LIVE IN MOLDE』(以下『リターン・トゥ・フォーエヴァー〜ライヴ・イン・モルデ』)が,最高にハッピーで素晴らしい演奏なのだ。

 とにかく,ステージも客席も“ダンシング”である! もう黙って席に着いているなんて失礼極まりない“スイング大会”である!
 『リターン・トゥ・フォーエヴァー〜ライヴ・イン・モルデ』を,踊り出したくなるのを我慢して冷静に分析してみると,実は一番ノッテいるのがチック・コリア“御大”ではなかろうか?

 『リターン・トゥ・フォーエヴァー〜ライヴ・イン・モルデ』では,ジャズ・オーケストラの指揮とアレンジを,チック・コリア同じピアニストアールンド・スコムスヴォールに委ね,チック・コリア自身は“客演ピアニスト”として演奏だけに注力する構成である。

 “ジャズ・ピアニスト”一本に注力したチック・コリアが凄すぎる! 分厚いジャズ・オーケストラをバックにチック・コリアの“天才”が大爆発している!
 恐らくは,アールンド・スコムスヴォールの書いた譜面が用意されていたのだろう。勝手知ったる自作曲なのに,自分の頭の中にはなかった新鮮なアプローチに,チック・コリアの歓びと驚きがMAX! 自分の行きたいようには行けないアレンジの縛りが,却ってチック・コリアの“天才”を覚醒させている! チック・コリアの“ダンシング”!

 チック・コリアのバックを務めたトロンハイム・ジャズ・オーケストラの演奏であるが,所謂,ジャズビッグ・バンドではなく,チューバホルンまで加わったクラシックやアヴァンギャルド系を意識した,これぞ“ヨーロピアン”なアンサンブルを鳴らしている。

 もたつく部分が少しもない“超絶技巧系”のジャズ・オーケストラであって,洗練された雰囲気に仕上がっている。特に【WINDOWS】【ARMANDO’S RHUMBA】【BUD POWELL】における「変態ブラス隊」の響きを追いかけ続けるのが聴いていて最高に気持ち良かった。

LIVE IN MOLDE-2 それにしてもチック・コリアの自作曲って,こんなにジャズ・オーケストラに合うものなんだ。まるで最初からジャズ・オーケストラのために書き下ろしていたかのよう…。
 遅まきながら,チック・コリアの「ジャズフュージョン」界における名コンポーザーとしての“天才”を『リターン・トゥ・フォーエヴァー〜ライヴ・イン・モルデ』で実感させられたのであった。チック・コリア「有難や〜」。

 『リターン・トゥ・フォーエヴァー〜ライヴ・イン・モルデ』のハイライトは(管理人の知る限り)チック・コリア初めての再演となる【RETURN TO FOREVER】であろう。
 【RETURN TO FOREVER】だけはエレピ。もうこれはこうなるしかないのだろう。出来上がりとしては??なのだが,とにかく著しく敷居の高い【RETURN TO FOREVER】の再演だけに,ファンとしては「有難や〜,あ〜,有難や〜」。

  01. CRYSTAL SILENCE
  02. WINDOWS
  03. MATRIX
  04. DUENDE
  05. ARMANDO'S RHUMBA
  06. RETURN TO FOREVER
  07. BUD POWELL
  08. SPAIN

(MNJ/MNJ 2006年発売/UCCJ-3016)
(ライナーノーツ/小川隆夫)

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チック・コリア / アルティメット・アドヴェンチャー5

THE ULTIMATE ADVENTURE-1 キターッ!! チック・コリア久々のコンテンポラリー路線の“大傑作”『THE ULTIMATE ADVENTURE』(以下『アルティメット・アドヴェンチャー』)に“ドハマリ”した。

 「エレクトリック・バンド」解散後の「アコースティックの追求の旅」は,相当なハイ・レベルだった。「オリジン」〜「ニュー・トリオ」の「呆れるほどに完璧な演奏」は,相当に素晴らしかった。だからそれはそれで非常に満足していた。

 ただその一方で,管理人がチック・コリアの音楽に求めているのは,エンターテインメント性である。つまりチック・コリアには,自身の内面を掘り下げるアーティスティックでリリシズムなジャズではなく,外向的で大衆路線のフュージョン系で彩られた「今の音楽」を存分に楽しませてほしいと思う。
 ズバリ,チック・コリアの「ジャズフュージョン」は,一聴して分かりやすいアルバムほど出来が良い。BGMとして聞き流しながら談笑していても,会話がままならなくなるくらいに耳に食い込んでくるパワーが秘められている。

 そんな管理人好みの快作が『アルティメット・アドヴェンチャー』である。管理人が“待ちに待った”チック・コリアフュージョン系の“王道”である。
 『アルティメット・アドヴェンチャー』は,それくらい“ドハマリ”した大名盤(事実『アルティメット・アドヴェンチャー』は2006年度のグラミー賞をダブル受賞)であって,個人的には非常に思い入れ深いものがある。

 正直に告白すると『アルティメット・アドヴェンチャー』の熱狂の裏には,過去のアルバム群へ寄せる思いがあってのもの。
 そう。『アルティメット・アドヴェンチャー』の真髄とは“アップデートされた”チック・コリアの“王道”であって,全くの新作の類には数えられない。過去の積み重ねが『アルティメット・アドヴェンチャー』で“花開いた”と表現する方が“しっくりくる”。

 その中でも特に,スティーヴ・ガッドヴィニー・カリウタアイアート・モレイラホッサム・ラムジールベン・ダンタストム・ブレック・ラインの重量級のエレクトリックドラマー陣とオーキシ・フェルナンデスホルヘ・パルドカルレス・ベナベンドパコ・デ・ルシア所縁のスペイン勢と来れば“チック・コリアの1枚”として推し続けている『タッチストーン』に『アルティメット・アドヴェンチャー』の原型を見るというものだ。

 う〜む。聴けば聴くほど『アルティメット・アドヴェンチャー』は『タッチストーン』の“アップデート盤”だと思えてくる。一度『アルティメット・アドヴェンチャー』=『タッチストーン』の法則が刷り込まれたが最期。
 『タッチストーン』を「70年代チック・コリアソロ名義の最重要盤」とする管理人としては,あたかも王家の後ろ盾を得たかのようでうれしくなってしまうのだ〜。

THE ULTIMATE ADVENTURE-2 『アルティメット・アドヴェンチャー』とは,元来「L・ロン・ハバードのSF小説にインスパイアされたコンセプト・アルバム」であるのだが,チック・コリアの他のL・ロン・ハバード絡みのアルバムの中では,最もL・ロン・ハバードの手から遠く離れた,チック・コリア自身の「音楽組曲」の印象が強い。

 そう。L・ロン・ハバードからインスパイアを受けたアイディアが,チック・コリア本来の音楽性と絶妙に重なり,大きな山場が続く「音楽組曲」な展開こそが『アルティメット・アドヴェンチャー』(「究極の冒険」の意)。これぞチック・コリアの「究極の冒険」である。

 チック・コリアの“エレクトリックピアノの大山”は世界一であるのだが,最新のテクノロジーをこれ見よがしに盛り込むのではなく,フレーズと曲の雰囲気にあわせた実に音楽的な使い方をしている。

 その意味で『アルティメット・アドヴェンチャー』を『タッチストーン』と並ぶ「重要度の高いソロ名義」の1枚に指名する。
 エレクトリックパーカッションに“ドハマリ”した時のチック・コリアが,世界一のエレクトリックピアニスト

  01. Three Ghouls - Part 1
  02. Three Ghouls - Part 2
  03. Three Ghouls - Part 3
  04. City Of Brass
  05. Queen Tedmur
  06. El Stephen - Part 1
  07. El Stephen - Part 2
  08. King & Queen
  09. Moseb The Executioner - Part 1
  10. Moseb The Executioner - Part 2
  11. Moseb The Executioner - Part 3
  12. North Africa
  13. Flight From Karoof - Part 1
  14. Flight From Karoof - Part 2
  15. Planes Of Existence - Part 1
  16. Arabian Nights - Part 1
  17. Arabian Nights - Part 2
  18. Gods & Devils
  19. Planes Of Existence - Part 2
  20. Captain Marvel

(ストレッチ・レコード/STRETCH RECORDS 2006年発売/UCCJ-3015)
(ライナーノーツ/チック・コリア,小川隆夫)

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チック・コリア/スティーヴ・ガッド/クリスチャン・マクブライド / スーパー・トリオ4

SUPER TRIO-1 ピアノチック・コリアドラムスティーヴ・ガッドベースクリスチャン・マクブライドからなる『SUPER TRIO』(以下『スーパー・トリオ』)。この超重量級のネーム・バリューを目にしただけで“買い”である。

 【HUMPTY DUMPTY】【THE ONE STEP】【WINDOWS】【MATRIX】【QUARTET #2 PT.1】【SICILY】【SPAIN】。このチック・コリアの代表曲がズラリと並んだ収録曲を目にしただけで“買い”である。

 名曲が最高の演奏で奏でられることが二重の意味で保証された『スーパー・トリオ』。こんな名盤が,なぜだか「日本限定発売」の曰くつき〜。
 聴いてみて,ハハーンである。『スーパー・トリオ』の真実とは,チック・コリアの“マニアックなコレクター盤”。正直,世界発売をする内容ではなかった。

 当然ながら,チック・コリアピアノスティーヴ・ガッドドラムクリスチャン・マクブライドベースうち,たった1人でも加わればマジックが起きてしまうのだから,そんな名手が3人揃ったライブ盤が悪いはずがない。

 『スーパー・トリオ』には,事実,チック・コリアの弾いた,オーソドックスなアプローチからのフリーな展開をフュージョンっぽく響かせる即興“マジック”演奏の瞬間が記録されている。
 事実,スティーヴ・ガッドが叩いた,4ビートと8ビートと16ビートのシャッフル即興“マジック”演奏の瞬間が記録されている。
 事実,クリスチャン・マクブライドが弾いた,野太いベースによる即興“マジック”演奏の瞬間が記録されている。

 ただし,この3人が同時に揃うのであれば「神レベル」のピアノ・トリオを身勝手ながら想像してしまう。未体験のピアノ・トリオを予想するだけで,涎が垂れてくる。
 リスナーが納得しない&満足しない理由は『スーパー・トリオ』が「神レベル」に達していないからであって,普通に聴けば“極上の”ピアノ・トリオライブ盤に違いない。その意味で名盤スーパー・トリオ』は“買い”で間違いない。

 管理人が『スーパー・トリオ』に,ハハーン,の不満を感じるのは演奏面でのことではない。
 ズバリ,ラストに【SPAIN】を入れた編集姿勢に対してである。人気の【SPAIN】を入れたのは「日本向け営業」の最たるものである。【SPAIN】の,特に引っ掛かりのない演奏を,ただアルバムを“売りたいがために”フェードアウトさせてまで入れている。

SUPER TRIO-2 ハズレの【SPAIN】だったから,純粋にファン・サービスの“おまけ”として入れたというよりも“客寄せパンダ”として入れたとしか思えない。
 チック・コリアスティーヴ・ガッドクリスチャン・マクブライドによる水準以上の名演が6曲続くも,最後の最後で落とされたようで毎回興醒めしてしまう。何なんだ〜,この営業至上主義のダメダメ編集〜。

 そんな“眉唾物”の『スーパー・トリオ』が「スイングジャーナル」誌主催2006年度のジャズ・ディスク大賞金賞】受賞って何なんだ〜,この営業至上主義のジャズ・ディスク大賞〜。

 日本だったら売れる。ネーム・バリューだけで売れる。収録曲だけで売れる。「スイングジャーナル」誌も売るのを手伝ってくれる…。そんな「日本限定発売」の『スーパー・トリオ』だが,管理人は出せば世界でも売れると思っている。
 だってチック・コリア・マニアなら,このメンバーにしてこの選曲,絶対に聴いてみたくなるんだもん!

  01. Humpty Dumpty
  02. The One Step
  03. Windows
  04. Matrix
  05. Quartet #2 Pt.1
  06. Sicily
  07. Spain

(ストレッチ・レコード/STRETCH RECORDS 2006年発売/UCCJ-3014)
(ライナーノーツ/小川隆夫)

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チック・コリア / ランデヴー・イン・ニューヨーク5

RENDEZVOUS IN NEW YORK-1 『RENDEZVOUS IN NEW YORK』(以下『ランデヴー・イン・ニューヨーク』)は,チック・コリアの音楽生活40周年を記念して,2001年12月にニューヨークブルーノートで行なわれた3週間連続公演のハイライトを記録した「超豪華」2枚組みスペシャル・ライブ盤。

 プログラムは収録順に,ボビー・マクファーリンとのデュオミロスラフ・ヴィトウスロイ・ヘインズとによるナウ・ヒー・シングス・ナウ・ヒー・ソブストリオロイ・ヘインズクリスチャン・マクブライドジョシア・レッドマンテレンス・ブランチャードとによるリメンバリング・バド・パウエルバンドゲイリー・バートンとのデュオジョン・パティトゥッチデイブ・ウェックルとによるアコースティック・バンドアヴィシャイ・コーエンジェフ・バラードスティーヴ・ウィルソンスティーヴ・デイヴィスティム・ガーランドとによるオリジンゴンサロ・ルバルカバとのデュオアヴィシャイ・コーエンジェフ・バラードとによるニュー・トリオマイケル・ブレッカースティーヴ・ガッドエディ・ゴメスとによるスリー・カルテッツバンド。(日本盤ボーナス・トラックとしてチャカ・カーンをゲストに迎えたニュー・トリオの演奏も収録)。

 チック・コリアは,当初「過去を振り返るようなリユニオンはやりたくない」とこの企画を断った,とライナーノーツに書かれているが『ランデヴー・イン・ニューヨーク』を聴く限り,他の誰よりもチック・コリアが一番この演奏を楽しんでいる!
 全ての主演者,関係者,観客からの祝福を受けたチック・コリアさん,音楽生活40周年おめでとうございます!

 チック・コリアが『ランデヴー・イン・ニューヨーク』でのスペシャル・ライブを楽しんだ最大の理由は,それぞれの経験を糧にしたフレンズたちとの「新感覚のコミュニケーション」にあると思う。
 それぞれのユニット毎に,そのユニットでの代表曲を演奏しているのだが,単なる過去の焼き直しでは終わらない,斬新なアレンジで歌い上げるチック・コリアの極上のピアノが響いている。

 『ランデヴー・イン・ニューヨーク』は,スペシャル・ライブの性質上,チック・コリアの“音楽性の広さ”を堪能するためのプロジェクトであるが,どの演奏にもグッと来てしまう“音楽性の深いつながり”も感じられる。
 やっぱりチック・コリアこそが「ジャズフュージョン」界の“スーパー・スター”であった。

 『ランデヴー・イン・ニューヨーク』を聴いていると,何だか『ランデヴー・イン・ニューヨーク』がダイジェスト盤のように感じてくる。この後に発売される「本編プロモーションのための予告編」のように思えてくる。
 そう。『ランデヴー・イン・ニューヨーク』における「チック・コリア・オールスターズ」の“演り逃げ”を聴かされては,到底満足などできやしない。2枚組では足りないのだ。1ユニット1曲か2曲では欲求不満を覚えてしまう。あの3週間連続公演のコンプリート盤を渇望してしまう。

RENDEZVOUS IN NEW YORK-2 いいや,そもそも『ランデヴー・イン・ニューヨーク』は,チック・コリアの40年のキャリアを総括する,真のコンプリート盤には成り得ない。
 今回のプロジェクトから,リターン・トゥ・フォーエヴァーエレクトリック・バンドの「チック・コリアの2本柱」が抜け落ちている。

 そう。『ランデヴー・イン・ニューヨーク』は「超豪華」盤に違いないけれども『ランデヴー・イン・ニューヨーク』のCD帯にある「史上最強夢のアルバム!!」のキャッチ・コピーは早過ぎた。
 チック・コリアなら『ランデヴー・イン・ニューヨーク』より“もっと広く”『ランデヴー・イン・ニューヨーク』より“もっと深い”スペシャル・ライブが実現できる。

 「ジャズフュージョン」界で「史上最強夢のアルバム!!」を制作できる,有資格者はチック・コリアだけなのですから…。

  DISC 1
  <CHICK COREA & BOBBY McFERRIN DUET>
  01. ARMANDO'S RHUMBA
  02. BLUE MONK
  03. CONCIERTO DE ARANJUEZ / SPAIN
  <NOW HE SINGS, NOW HE SOBS TRIO (CHICK
  COREA, ROY HAYNES & MIROSLAV VITOUS)
>
  04. MATRIX
  <REMEMBERING BUD POWELL BAND (CHICK
  COREA, ROY HAYNES, JOSHUA REDMAN,
  TERENCE BLANCHARD & CHRISTIAN McBRIDE)
>
  05. GLASS ENCLOSURE / TEMPUS FUGIT
  <CHICK COREA & GARY BURTON DUET>
  06. CRYSTAL SILENCE
  <CHICK COREA AKOUSTIC BAND (CHICK COREA,
  DAVE WECKL & JOHN PATITUCCI)
>
  07. BESSIE'S BLUES

  DISC 2
  <CHICK COREA AKOUSTIC BAND (CHICK COREA,
  DAVE WECKL & JOHN PATITUCCI)
>
  01. AUTUMN LEAVES
  <ORIGIN (CHICK COREA, AVISHAI COHEN, JEFF
  BALLARD, STEVE WILSON, STEVE DAVIS & TIM
  GARLAND)
>
  02. ARMANDO'S TANGO
  <CHICK COREA & GONZALO RUBALCABA DUET>
  03. CONCIERTO DE ARANJUEZ / SPAIN
  <CHICK COREA NEW TRIO (CHICK COREA, AVISHAI
  COHEN & JEFF BALLARD)
>
  04. LIFELINE
  <THREE QUARTETS BAND (CHICK COREA, MICHAEL
  BRECKER, EDDIE GOMEZ & STEVE GADD)
>
  05. QUARTE NO. 2, PART I
  <CHICK COREA NEW TRIO (CHICK COREA, AVISHAI
  COHEN & JEFF BALLARD WITH SPECIAL GUEST
  CHAKA KHAN)
>
  06. HIGH WIRE

(ストレッチ・レコード/STRETCH RECORDS 2003年発売/UCGU-7008/9)
(☆SACDハイブリッド盤仕様)
(CD2枚組)
(ライナーノーツ/チック・コリア,ドン・ヘックマン,小川隆夫)

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チック・コリア・ニュー・トリオ / 過去,現在,未来4

PAST, PRESENT & FUTURES-1 「ジャズとは本来こうあるべきである。ピアノ・トリオとは本来こうあるべきである」。
 『PAST,PRESENT & FUTURES』(以下『過去,現在,未来』)の第一印象がこうであった。それ以来,何度も聴き返しているがその印象は未だに変わらない。

 『過去,現在,未来』は,伝統と現代,即興と編曲という永遠の命題に対するチック・コリアからの明確な解答である。チック・コリアの「アコースティックの追求の旅」は,ついに『過去,現在,未来』で,1つのゴールに到達したのだと思う。
 そう。『過去,現在,未来』は,よくある「実験作」の1枚ではない。「アコースティックの追求の旅」を終えるにあたり,チック・コリアが「こうすればこうなる」ことを事前に予想して録音された,精緻にして高集積,恐ろしく手が込んだピアノ・トリオの“集大成”なのである。

 複雑なビートに取り囲まれ,あれよあれよと言う間に有機的に絡み合った「音の洪水」に流されてしまうような感じ。不思議と典型的な4ビートが後ろに引っ込んでしまい,複雑に絡み合って進んで行くピアノ・トリオが「スライム状に」広がっていく。

PAST, PRESENT & FUTURES-2 チック・コリアの明確な意思の下にコントロールされたピアノ・トリオが,ベースアヴィシャイ・コーエンドラムジェフ・バラードと組んだ,その名も「チック・コリア・ニュー・トリオ」である。

 個人的には「ニュー・トリオ」のネーミングに,チック・コリアの“思いの強さ”が感じられる。
 『過去,現在,未来』は,チック・コリアの過去のキャリアを総括した“集大成”に違いない。つまりは『過去』である。
 その『過去』を『現在』の活動の母体である「オリジン」のリズム隊と組んだ,メインストリートなピアノ・トリオ。つまりは『現在』である。

 ではチック・コリア」が提示したピアノ・トリオの『未来』とは何のなのか? チック・コリアからの解答は「完全武装」であった。
 「チック・コリア・ニュー・トリオ」は,ジャズ本来の音楽,ピアノ・トリオ本来の音楽を具現化した“完全無欠”なジャズ・ピアノ

PAST, PRESENT & FUTURES-3 『過去,現在,未来』は,もはや一般のリスナーを寄せ付けない“横綱相撲”である。とにかく凄い。凄まじい。圧倒的なエネルギーで満ち満ちた「チック・コリア・ニュー・トリオ」。

 だから来る。「チック・コリア・ニュー・トリオ」はとにかく来る。お腹にズッシリと溜まって来る。
 管理人は『過去,現在,未来』のような硬派なピアノ・トリオが,ジャズ本来のピアノ・トリオと信じているが,中には『過去,現在,未来』を聴いて,これはジャズではない,と主張する人がいても不思議ではないとも想像する。

 『過去,現在,未来』には,一般的なジャズの楽しさを超えた厳しい演奏がみっちりと続いている。『過去,現在,未来』を聴く時の思いは「ニュー・トリオ」と対峙するような趣きを感じる。「スライム」が広がっていく様子を捉えられるかどうか,が勝負所なのである。
 つまり,軽い気持ちでBGM風に聞き流すわけにはいかない種類のジャズ・ピアノ。とても初心者には操ることができない“ジャズ・ピアノの怪物マシン”だと思う。“ピアノ・トリオのモンスター”なのである。

PAST, PRESENT & FUTURES-4 『過去,現在,未来』の圧倒的な演奏を前にして,ジャズ・ピアノに,これ以上の進歩を求めてもよいのだろう? お腹一杯である。満腹感に襲われて『過去,現在,未来』を聴いた日は他のジャズ・ピアノなど聴けなくなってしまう。

 だから『過去,現在,未来』を聴いていると『未来』への閉塞感を感じてしまって嫌になる。呆れるほどに完璧な演奏『過去,現在,未来』に“早過ぎた名盤”の称号を与えたい。

  01. Fingerprints
  02. Jitterbug Waltz
  03. Cloud Candy
  04. Dignity
  05. Rhumba Flamenco
  06. Anna's Tango
  07. The Chelsea Shuffle
  08. Nostalgia
  09. The Revolving Door
  10. Past, Present & Futures
  11. Life Line
  12. 500 Miles High

(ストレッチ・レコード/STRETCH RECORDS 2001年発売/UCCJ-3008)
(ライナーノーツ/チック・コリア,小川隆夫)
(☆スリップ・ケース仕様)

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チック・コリア / ソロ・ピアノ パート2〜スタンダード4

SOLO PIANO - STANDARDS-1 『SOLO PIANO−ORIGINALS』と同時購入した『SOLO PIANO−STANDARDS』(以下『ソロ・ピアノ パート2〜スタンダード』)。

 『EXPRESSION』で“つまずいた身”としては『ソロ・ピアノ パート2〜スタンダード』の方が敷居が高い。こちらとしても【SPAIN】【WHAT GAME SHALL WE PLAY TODAY】のように気楽に聴くわけにはいかない。
 だから批判の多かった『オリジナル』と『スタンダード』の「2枚組ではなく別売り」は個人的には望むところであった。

 『パート1〜オリジナル』以上に気合いを入れて向き合った『パート2〜スタンダード』の結論は,当たりであった。

 『EXPRESSION』と『スタンダード』の比較になるが『EXPRESSION』はチック・コリアの「アコースティックジャズへの回帰」を提示した“焼き直し”のアルバムであったが『ソロ・ピアノ パート2〜スタンダード』は「ジャズスタンダードの未来」を提示する“新解釈”のアルバムである。

 そう。『ソロ・ピアノ パート2〜スタンダード』は“新解釈”のビ・バップが目白押し。スタンダード・ナンバーからのインスピレーションをテーマとしたアドリブが中心であって「解体と再構築」風のアプローチは採っていない。原曲の精髄はそのままに自らの音楽に昇華すべく意を砕いている。
 バド・パウエルセロニアス・モンクからの影響を感じさせるセオリーに沿ったアドリブが,却って「THIS IS CHICK COREA」を強烈に感じさせる演奏に仕上がっている。

SOLO PIANO - STANDARDS-2 チック・コリアの“イマジネーションの広がり”が伝わってくる。チック・コリアの“独特なリズム感覚”が伝わってくる。
 既存の様式から解放されたペダルの使い方,音の切り方,そして音の残像と余韻,イマジネーション…。そのどれをとってもチック・コリアらしい創造性に溢れたジャズ・ピアノであり,ソロ・ピアノである。

 そう。『パート1〜オリジナル』以上に,チック・コリアオリジナリティを感じるのが『パート2〜スタンダード』。

 きっとチック・コリアは,ジャンルにこだわらない全方位型の“天才”ピアニストではないのだと思う。チック・コリアは“根っからの”ジャズの人なのだと思う。 ← 『SOLO PIANO−ORIGINALS批評との矛盾。

  01. Monk's Dream
  02. But Beautiful
  03. Blue Monk
  04. Ask Me Now
  05. Thinking Of You
  06. Yesterdays
  07. Dusk In Sandi
  08. It Could Happen To You
  09. 'Round Midnight
  10. So In Love
  11. How Deep Is The Ocean
  12. Oblivion
  13. Brazil
  14. Trinkle Tinkle

(ストレッチ・レコード/STRETCH RECORDS 2000年発売/MVCL-24024)
(ライナーノーツ/チック・コリア,小川隆夫)

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チック・コリア / ソロ・ピアノ パート1〜オリジナル3

SOLO PIANO - ORIGINALS-1 『EXPRESSION』で“懲りてしまった”チック・コリアソロ・ピアノ
 しかし,もう一度だけチック・コリアを信じてみたくなった。

 その理由はいろいろあるが,一番の理由は小曽根真の『BREAKOUT』である。チック・コリア小曽根真って,テクニカルでクラシカルな共通点があるものでして,チック・コリアに『BREAKOUT』のようなアルバムを勝手に求めてしまった。

 さて,結論から言えば『SOLO PIANO−ORIGINALS』(以下『ソロ・ピアノ パート1〜オリジナル』)は,ハズレであった。
 正確には悪くはないのだが『BREAKOUT』を聴いて感動した時の“エモーション”が伝わってこないのでハズレとする。

 多分,管理人はチック・コリアとはシンクロできない。チック・コリアゲイリー・バートンのような関係性にはなれそうもない。
 大概のチック・コリアのアルバムを聴き続け,チック・コリアの音楽は,ウソ偽りなしに好みなのだけど,でも親友を前にして語りあう感じにはなれない。心のドコかで,自分とは違う人だ,と感じてしまう部分がある。その最大の原因がチック・コリアの一連のソロ・ピアノ集なのだと思う。

 対照的に小曽根真キース・ジャレットの場合は,ピアノトリオではそこまで感じないのに,これがソロ・ピアノとなると熱狂してしまう。全身全霊を傾けて聴いてしまう何かがある。
 「見えない壁を感じてしまう」チック・コリアと「ズブズブの」小曽根真キース・ジャレットとの差。

SOLO PIANO - ORIGINALS-2 要は『ソロ・ピアノ パート1〜オリジナル』にはのめり込めなかった。それだけのこと。1枚通して聴き通すのが辛く感じたということ。早く終わってくれと思ってしまったこと。

 きっとチック・コリアは“根っからの”ジャズの人ではないのだと思う。チック・コリアは,ジャンルにこだわらない全方位型の“天才”ピアニストなのだと思う。 ← 『SOLO PIANO−STANDARDS批評との矛盾。

  01. Brasilia
  02. Yellow Nimbus
  03. Prelude #4, Opus 11
  04. Prelude #2, Opus 11
  05. Children's Song #6
  06. Children's Song #10
  07. Armando's Rhumba
  08. April Snow
  09. The Chase
  10. The Falcon
  11. Swedish Landscape
  12. Spain
  13. What Game Shall We Play Today
  14. Children's Song #12

(ストレッチ・レコード/STRETCH RECORDS 2000年発売/MVCL-24023)
(ライナーノーツ/チック・コリア,小川隆夫)

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チック・コリア & ゲイリー・バートン / ネイティヴ・センス5

NATIVE SENSE-1 “ジャズの伝統芸能”チック・コリアゲイリー・バートンによるデュエット
 その17年振りとなるアルバムが(『NATIVE SENSE』(以下『ネイティヴ・センス』)である。

 『ネイティヴ・センス』までの“空白の17年間”が,チック・コリアゲイリー・バートンの“鉄壁のコンビネーション”にどう影響しているか? 完全に悪影響を想像しながら聴き始めた管理人。しかし,すぐにぶっ飛んだ! ぶっ飛ばされてしまった!

 『ネイティヴ・センス』の“鉄壁のコンビネーション”を聴かされては“空白の17年間”などなかったも同然。あるとすれば“熟成の17年間”である。
 チック・コリアゲイリー・バートンにとっては『イン・コンサート』を録音したのが,まるで昨日のことのような感触があったように思う。

 そう。一音交えれば,互いに相手の考えが分かってしまう。分かってしまうのだからどうしようもない。合わせようとしなくても自然と合ってしまうのだからしょうがない。
 ピアノチック・コリアヴィヴラフォンゲイリー・バートンの「天性の相性」が,ジャズ特有のファンキーでブルージーなノリと決別し,硬質でクラシカルな響きを前面に押し出し,ストイックに現代音楽の様なアブストラクトな面を少し覗かせながら,メロディアスで流麗な音楽を創造していく。その様が実は「ジャズの中のジャズ」している。

 管理人は『ネイティヴ・センス』を聴いていて,パートナーを超えたパートナー,との運命的な出会いに17年振りに立ち会った感覚に襲われてしまった。ある意味『ネイティヴ・センス』は『クリスタル・サイレンス』の衝撃を超えてしまったと思う。
 “燃えに燃えまくった”チック・コリアゲイリー・バートンの熱演はある意味『デュエット』の衝撃を超えてしまったと思う。

 そう。新たなる感動の波が押し寄せてくる。涙が止まらない。個人的にチック・コリアゲイリー・バートンを人に奨めるのならば『イン・コンサート』で良いと思うが,自分一人で楽しむのなら『ネイティヴ・センス』が一番かなぁ。
 勿論,チック・コリアゲイリー・バートンデュエットは,その全てが大名盤であるし,体調とか天候とかで,その日の1枚は変わるものだが,それでも『ネイティヴ・センス』を選ぶ確率が一番高い。

 昔を懐かしむでもなく,未来に思いをはせるでもない。現在進行形の“ジャズの伝統芸能”チック・コリアゲイリー・バートンの『ネイティヴ・センス』は,事の結末,ストーリーが分かっているのに聴き飽きない。

NATIVE SENSE-2 全曲素晴らしいのだが,ミーハーな管理人としては,1曲目から5曲目までの“馴染みの曲”がド頭から連続で流れ出してくるところが『ネイティヴ・センス』最大のお気に入り。チック・コリアの有名レパートリーをゲイリー・バートンデュエットでどう表現するかが最大の関心事であったが,全く期待を裏切らない素晴らしい演奏ばかりである。

 特に【LOVE CASTLE】におけるゲイル・モランスキャットをなぞったゲイリー・バートンの“ルンルンすぎる”ヴィヴラフォンが最高に可憐でキュート!

 “空白の17年間”の呪縛が解けたのか,次のリリースは感覚が狭まり『ライク・マインズ』『ランデヴー・イン・ニューヨーク』『ニュー・クリスタル・サイレンス』『ホット・ハウス』と,やや乱発気味?にリリースが続くこととなる。
 でも,もっともっと! まだまだ聴きたい! 聴き足りない! チック・コリアゲイリー・バートンによるデュエットなら商業主義の乱発であっても大歓迎なのである。

  01. Native Sense
  02. Love Castle
  03. Duende
  04. No Mystery
  05. Armando's Rhumba
  06. Bagatelle #6
  07. Post Script
  08. Bagatelle #2
  09. Tango '92
  10. Rhumbata
  11. Four in One
  12. I Love You Porgy

(ストレッチ・レコード/STRETCH RECORDS 1997年発売/MVCL-24003)
(ライナーノーツ/大村幸則)

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チック・コリア・アンド・フレンズ / バド・パウエルへの追想4

REMEMBERING BUD POWELL-1 “ジャズ・ジャイアントチック・コリアの初めてのトリビュート・アルバム。対象は同じピアノの“ジャズ・ジャイアントバド・パウエルへのトリビュートREMEMBERING BUD POWELL』(以下『バド・パウエルへの追想』)。

 バド・パウエルへのトリビュートを制作するにあたり,チック・コリアバド・パウエルと同じピアニストとしての土俵には上がらず,アレンジャーとしてのアプローチを重視している。
 そう。『バド・パウエルへの追想』のアイディアの決め手は,チック・コリアの個人名義を名乗らないという決断であろう。

 『バド・パウエルへの追想』を「チック・コリア・アンド・フレンズ名義」とすることで,チック・コリアピアノは“引き気味”のリズム・セクションの1つとして参加している。
 前に出るのはのスーパー・スター軍団の面々。トラック毎にロイ・ヘインズドラムクリスチャン・マクブライドベースケニー・ギャレットアルトサックスジョシュア・レッドマンテナーサックスウォレス・ルーニートランペットチック・コリアの“イマジネーション通りに”前に出ている。

REMEMBERING BUD POWELL-2 老練の“大御所”ロイ・ヘインズと若年寄の“大御所”クリスチャン・マクブライドのリズム隊と“同列に機能する”チック・コリアピアノがリズミック。
 メロディアスを一手に引き受けたのが,伝統派に属するジョシュア・レッドマンウォレス・ルーニーの気持ちの入ったアドリブと,ケニー・ギャレットのアバンギャルドなアドリブである。単発であっても曲全体とのハーモニーが感じられる。

 実に素晴らしい3管ブラス隊の名演である。この3人のソリストが一堂に会する機会もまたとない。これぞチック・コリアが“狙った”バド・パウエルへのトリビュート効果!
 バド・パウエルの曲を演奏するとなると,ジョシュア・レッドマンウォレス・ルーニーの温度が上がっていく! 目の前で吹き鳴らされているかのような大迫力! やっぱり情熱とスケールのケニー・ギャレット〜!

 この3管ブラス隊の一目惚れしてしまいそうな美しいアンサンブルこそが“アレンジャー”チック・コリアの大仕事であった。

REMEMBERING BUD POWELL-3 正直,管理人はこれまでチック・コリアピアノバド・パウエルからの影響を感じたことはなかったが,今回の『バド・パウエルへの追想』を聴き通してみた感想も同じであった。

 そもそもチック・コリアバド・パウエルはタイプとしては対極に位置している。その「異質な存在感」が殊の外,バド・パウエルへの興味をかきたてるのだろう。

 そう。『バド・パウエルへの追想』の真実とは“ジャズ・ピアニスト”としてのバド・パウエルを排除した「元ネタとしてのバド・パウエルの作品集」であって,チック・コリアの完全オリジナル・タッチで仕上げられている。

 ズバリ『バド・パウエルへの追想』とは,チック・コリアが,バド・パウエルを「空想」し「追想」した“フィクション”上のトリビュート
 ゆえに,実在のバド・パウエルの世界がチック・コリア流に“歪曲”されているのだが,出来上がりを眺めてみると,これこそがバド・パウエルの「亡霊」であって「追想」だと,チック・コリア唯一のオリジナル【BUD POWELL】で確信する。

REMEMBERING BUD POWELL-4 そう。バド・パウエルの曲ではない【BUD POWELL】こそが,真実のバド・パウエルの世界である!

 ただし『バド・パウエルへの追想』は,チック・コリアが「バド・パウエル研究」の成果を披露するためのアルバムであって「他のバド・パウエル研究家」との決定的な差をアピールしたかったように思える。

 世界的な権威として「バド・パウエルと来ればチック・コリア!」との名声を高めたかったんだろうなぁ…。

  01. Bouncin' With Bud
  02. Mediocre
  03. Willow Grove
  04. Dusk In Sandi
  05. Oblivion
  06. Cleopatra's Dream
  07. Bud Powell
  08. I'll Keep Loving You
  09. Glass Enclosure
  10. Tempus Fugit
  11. Celia

(ストレッチ・レコード/STRETCH RECORDS 1997年発売/MVCR-247)
(ライナーノーツ/岩浪洋三)

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チック・コリア・カルテット / タイム・ワープ4

TIME WARP-1 コンセプト・アルバム好きのチック・コリアであるが,その多くはチック・コリアが敬愛するL・ロン・ハバードの作品をインスピレーションの源としている。
 なんと!コンセプト・アルバムではない『EXPRESSION』でのソロ・ピアノでさえ,L・ロン・ハバードからの影響を公言する信者である。

 そんなチック・コリアが,L・ロン・ハバードではない“自力の”コンセプト・アルバムを作ったことがある。
 それがソプラノサックステナーサックスボブ・バーグウッドベースジョン・パティトゥッチドラムゲイリー・ノヴァックとのカルテット編成でレコーディングされた『TIME WARP』(以下『タイム・ワープ』)である。

 チック・コリアカルテット編成ということで『タイム・ワープ』を『フレンズ』や『スリー・クァルテッツ』と比較する輩が多いが,そんなジャズ批評家の記述は無視して構わない(まっ,管理人の意見を鵜呑みにするのもお奨めできませんけど…)。
 仮に百歩譲って『タイム・ワープ』をチック・コリアの過去の緒作と比べるとするならば,カルテット編成だからではなく,コンセプト・アルバムとしての「ファンタジー三部作」とかリターン・トゥ・フォーエヴァーの緒作と比べるのが自然な流れだと思っている。

 特に『タイム・ワープ批評の定番である『スリー・クァルテッツ』との対比は,ボブ・バーグとライバル関係にあったマイケル・ブレッカーとの比較として語られているが“見当違い”も甚だしい。
 ゆえに『タイム・ワープ批評における「マイケル・ブレッカー VS ボブ・バーグ」の論調は全てスルーさせていただきたい。あしからず。

 そう。『タイム・ワープ』の聴き所は,L・ロン・ハバード絡みではない,チック・コリア! コンポーザーでありアレンジャーであり“サウンド・クリエイター”である「裏方」としてのチック・コリアと「演者」としての“ジャズ・ピアニストチック・コリアの「プレイング・マネージャー」ぶりが最大の聴き所!
 ただし,個人的にはアーティスティックなチック・コリアは好きではないし,何よりチック・コリアの“頭の中が透けて見える”かのような「微妙なアルバム」の最右翼だとも思っている。

 さて,チック・コリアは『タイム・ワープ』と題するオリジナルの寓話を創作するに当たり「組曲」のスタイルを選択した。
 好きか嫌いかは別にして,チック・コリアは「組曲」の聴かせどころを心得ている。構成の上手さと充実したグループ・サウンド,そこへ彩りを差し込むリリカルに響くピアノがドラマティックに展開していく。
 多作であるチック・コリアのアルバム群の中にあって『タイム・ワープ』ほど全体の統一感があるアルバムは多くはない。

 それでいて『タイム・ワープ』は,ボブ・バーグのアルバムのようでもあり,ジョン・パティトゥッチのアルバムのようでもあり,ゲイリー・ノヴァックのアルバムのようでもある。
 これこそが「プレイング・マネージャー」チック・コリアとしての成功であり『タイム・ワープ』を「不思議の国のアリス」を題材とした『THE MAD HATTER』や【HUMPTY DUMPTY】の世界へと通ずる,チック・コリア版“マザー・グース”の1つと称するにふさわしいレベルにまで押し上げる原動力となっている。

TIME WARP-2 特にチック・コリア“らしさ”を感じる,難解さと美しさを行き来するメロディー・ライン。そして「組曲」と「組曲」の空間を埋める4人のソロとのバランスが素晴らしい。

 例えば,ゲイリー・ノヴァックドラムソロでラストを締める【テレイン】と【ニュー・ライフ】が,とにかく耳を傾けてみたくなる音楽的なドラミングが最高である。
 1つの独立した曲となっているボブ・バーグの【テナー・カデンツァ】に,ジョン・パティトゥッチの【ベース・イントロ・トゥ・ディスカヴァリー】に,チック・コリアの【ピアノ・イントロ・トゥ・ニュー・ライフ】がこれまた素晴らしい。全てのセクションが『タイム・ワープ』という寓話の主題と連動している。

 この卓越したバランス感覚こそが「プレイング・マネージャー」チック・コリアの“天才”の証し。個人的には『タイム・ワープ』が流れ出すと,アコースティックジャズを聴いているというよりも,古い映画を見せられているような感覚に襲われてしまう。

 だ・か・ら,いつまでたっても『タイム・ワープ』は,チック・コリア版“マザー・グース”止まりなんだよなぁ…。

  01. ONE WORLD OVER (PROLOGUE)
  02. TIME WARP
  03. THE WISH
  04. TENOR CADENZA
  05. TERRAIN
  06. ARNDOK'S GRAVE
  07. BASS INTRO TO DISCOVERY
  08. DISCOVERY
  09. PIANO INTRO TO NEW LIFE
  10. NEW LIFE
  11. ONE WORLD OVER

(ストレッチ・レコード/STRETCH RECORDS 1995年発売/MVCR-219)
(ライナーノーツ/チック・コリア,山下邦彦)

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チック・コリア / 星影のステラ3

EXPRESSIONS-1 『EXPRESSION』(以下『星影のステラ』)は「チック・コリア・エレクトリック・バンド」と「チック・コリア・アコースティック・バンド」をインテグレートした「チック・コリア・エレクトリック・バンド」を解散して“裸一貫”で取り組んだ,チック・コリアソロ・ピアノである。

 事実,チック・コリアが「エレクトリック・バンド」以降,再びキーボードを手にするのは『TO THE STARS』での「エレクトリック・バンド」の再結成において。
 その間の10年間は(アルバム制作においては)生ピアノ一台での勝負に徹したわけで,その意味でも『星影のステラ』は,チック・コリアほどのビッグネームといえども,今後の運命を左右する重要作と成り得る。相当な覚悟でソロ・ピアノに取り組んだことが容易に理解し得よう。

 さて,管理人が「自作自演で自己完結」するソロ・ピアノに求めるのは,ジャズメンの個性,ただそれだけである。
 その意味で“運命の大勝負”盤『星影のステラ』に期待したのは,チック・コリアジャズメンとしての資質だけである。
 チック・コリアだけが弾くことのできる,HAPPYで楽しげで軽やか,明るくキュートでスパニッシュで,それでいて斬新で真面目で端正で,変幻自在で予想不可能なソロ・ピアノ…。

 しか〜し『星影のステラ』から聴こえてきたのは,どこかで以前に聞いたかのような,あの喫茶店のBGMで流れているかのような“普通の”ジャズ・ピアノ…。
 管理人の知っている「超・個性派」チック・コリアジャズ・ピアノではなかったのだ。

 『星影のステラ』に「THIS IS CHICK COREA」を感じたかった。今か今と期待して最後まで聴き続けたが“お目当てのチック・コリア”はついに現われじまい。
 「えっ,チック・コリアソロ・ピアノってこんな感じ?」。(管理人はECM盤『PIANO IMPROVISATIONS VOL.1』『PIANO IMPROVISATIONS VOL.2』は未聴なものでして)。

 もしや,ずらりと並んだジャズスタンダードを前にしてヒネリを加えるべきと考えたのか? “手垢にまみれた”ムーディーでロマンティックな演奏を意識的に控えた結果,曲本来の“旨味”さえ消してしまったかのような“ドライでクラシカル”な演奏に終始している。

 『星影のステラ』で目指したのは,感情の起伏のない「クールジャズ」? 決定的にダメなのが【STELLA BY STARLIGHT】での大サビを避けた演奏。ガックシ。残念。無念。肩透かし。

EXPRESSIONS-2 管理人の結論。『星影のステラ批評

 『星影のステラ』は“ジャズっぽいクラシック”にカテゴライズされるべきソロ・ピアノジャズの有名スタンダードを,ジャズの文脈ではなくクラシックの文脈から真面目にアレンジした「書き譜」演奏集である。

 ソロ・ピアノの“土俵”でキース・ジャレットに差をつけられるは,キーボードを捨てての“運命の大勝負”に負けてしまうわ…。
 駄盤の少ないチック・コリアにしては珍しい「即お蔵」な1枚…。

  01. Lush Life
  02. This Nearly Was Mine
  03. It Could Happen to You
  04. My Ship
  05. I Didn't Know What Time It Was
  06. Monk's Mood
  07. Oblivion
  08. Pannonica
  09. Someone to Watch Over Me
  10. Armando's Rhumba
  11. Blues For Art
  12. Stella by Starlight
  13. Anna
  14. I Want to Be Happy
  15. Smile

(GRP/GRP 1994年発売/MVCR-181)
(ライナーノーツ/チック・コリア,油井正一)

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チック・コリア・トリオ / ライヴ・イン・ヨーロッパ〜夜も昼も5

TRIO MUSIC, LIVE IN EUROPE-1 流行に敏感に反応してしまうチック・コリア…。キース・ジャレットが気になってしょうがないチック・コリア…。
 『TRIO MUSIC,LIVE IN EUROPE』(以下『ライヴ・イン・ヨーロッパ〜夜も昼も』)は,そんなチック・コリアの“性分”から産ま落とされた名盤である。

 キース・ジャレットの『STANDARDS,VOL.1』がリリースされたのが1983年。『ライヴ・イン・ヨーロッパ〜夜も昼も』の録音が1984年のチック・コリア初のスタンダード集。つまりはそういうことなのである。

 個人的には,この辺りがチック・コリアの“節操のなさ”を表わすようで,チック・コリアに肩入れできない状態だったのだが,ただ音楽自体は別物!
 “後出しジャンケン”的な『ライヴ・イン・ヨーロッパ〜夜も昼も』が,あのキース・ジャレットの「スタンダーズ」を凌駕している!
 とにかく凄い&とにかく素晴らしい。キース・ジャレット大好き人間の管理人をして,チック・コリアに「最大級の賛辞」を贈りたい。

 キース・ジャレットの「スタンダーズトリオ」を凌駕したチック・コリアの,通称「ナウ・ヒー・シングス・ナウ・ヒー・ソブストリオ」。
 そう。チック・コリアキース・ジャレットに対抗するに必要としたのは,かつて「ジャズ・ピアノの新しい扉」を共に抉じ開けたベースミロスラフ・ヴィトウスドラムロイ・ヘインズ

 管理人としては,このうがった見方に確信があるのだが,もしかしたら『ライヴ・イン・ヨーロッパ〜夜も昼も』の制作意欲は『NOW HE SINGS,NOW HE SOBS』の更なる発展を目指したものかもしれない。
 その意味では『ライヴ・イン・ヨーロッパ〜夜も昼も』はキース・ジャレットスタンダーズ」の“2番煎じ”ではないとも言える。
 事実,ライブ録音という“くくり”で語れば『星影のステラ』よりも早いわけだし…。

 明らかに「スタンダーズトリオ」を意識した「ナウ・ヒー・シングス・ナウ・ヒー・ソブストリオ」の演奏は,敢えてキース・ジャレットの筆をなぞったようなコード進行で勝負している。

 憂いを含んだメロディーをラブソディックに熱した所で,ベースに渡す展開は,意識しているというより「オレ達だってスタンダーズみたいに演ろうと思いさえすればいつだってできる」という主張を証明したがっているような演奏に聴こえる瞬間で満ちている。

TRIO MUSIC, LIVE IN EUROPE-2 管理人の結論。『ライヴ・イン・ヨーロッパ〜夜も昼も批評

 『ライヴ・イン・ヨーロッパ〜夜も昼も』は,キース・ジャレットの「スタンダーズ」の3枚=『STANDARDS,VOL.1』『STANDARDS,VOL.2』『CHANGES』に対するチック・コリアからの回答である。
 キース・ジャレットの3枚に対してチック・コリアの1枚。十分すぎる模範解答である。

 それにしても『ライヴ・イン・ヨーロッパ〜夜も昼も』の制作はECMなんです。またしてもマンフレート・アイヒャーなのです。
 ゆえに『ライヴ・イン・ヨーロッパ〜夜も昼も』の特徴は「抑制美」ということになるのでしょう。完全にチック・コリアに統御された美しい音のきらめきが零れ落ちるような演奏。あぁ,ため息が漏れ出てしまう(by ロマンティック管理人)。

  01. THE LOOP
  02. I HEAR A RHAPSODY
  03. SUMMER NIGHT-NIGHT AND DAY
  04. PRELUDE NO.2-MOCK UP
  05. TRANSFORMATIONS
  06. HITTIN' IT
  07. MIROVISIONS

(ECM/ECM 1986年発売/POCJ-2019)
(ライナーノーツ/小川隆夫)

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チック・コリア / チルドレンズ・ソングズ4

CHILDREN'S SONGS-1 有名なクラシックの作曲家たちが「子供のための〜」と題する組曲を書いているが『CHILDREN’S SONGS』(以下『チルドレンズ・ソングズ』)は,チック・コリア・プレゼンツ「子供のための〜」のソロ・ピアノ集。

 『チルドレンズ・ソングズ』の全20曲は「書き譜」だと思う。その意味で『チルドレンズ・ソングズ』はジャズ・ピアノではない。ではクラシックかというとそうでもない。

 耳に優しいメロディーに誘われるショートストーリー。1曲2分間の至福のひととき…。
 管理人のようなオヤジが聴けば「子供時代の郷愁を思い出す」仕掛け。リアルな子供時代に『チルドレンズ・ソングズ』に出会っていたら,どんな感想を抱いたのだろう。そんな考えがふと頭に浮かんでしまうような小品集。← なんのこっちゃ?

 ところで,オリジナル盤『チルドレンズ・ソングズ』は全19曲のチック・コリアソロ・ピアノ集。それがCD発売時にボーナス・トラックとしてピアノヴァイオリンチェロによる室内楽=【アデンダム】が追加された。

 どうしても,あのECMらしからぬ,この改変が個人的に受け入れられずに長らく『チルドレンズ・ソングズ』は未聴だったのであるが,高音質マニアの心をくすぐるSHM−CD盤の発売に合わせて目出度く購入。

 『チルドレンズ・ソングズ』を買って良かった。理由は【アデンダム】が聴けたから!
 個人的には『チルドレンズ・ソングズ』の19曲のソロ・ピアノは聴いていない。『チルドレンズ・ソングズ』で聴くべきは【アデンダム】の1曲のみ! あっ,だから追加収録になったんだ!

CHILDREN'S SONGS-2 管理人の結論。『チルドレンズ・ソングズ批評

 『チルドレンズ・ソングズ』とは「コレクターズ・アイテム」。
 「子供のための〜」の「コレクターズ・アイテム」であり「ピアノ好きのための〜」の「コレクターズ・アイテム」でもあり「チック・コリア好きのための〜」の「コレクターズ・アイテム」である。

  01. No. 1
  02. No. 2
  03. No. 3
  04. No. 4
  05. No. 5
  06. No. 6
  07. No. 7
  08. No. 8
  09. No. 9
  10. No. 10
  11. No. 11
  12. No. 12
  13. No. 13
  14. No. 14
  15. No. 15
  16. No. 16+17
  17. No. 18
  18. No. 19
  19. No. 20
  20. Addendum for Violin, Cello, and Piano

(ECM/ECM 1984年発売/UCCE-9174)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/野口久光)

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チック・コリア / タッチストーン4

TOUCHSTONE-1 リターン・トゥ・フォーエヴァーを解散し,エレクトリック・バンドを結成するまでの1970年代後半から80年代前半におけるチック・コリアソロ活動。

 チック・コリアソロ活動を1枚に集約するのは無理なのだが,無理にでもその最右翼を挙げよと言われたなら,管理人は『TOUCHSTONE』(以下『タッチストーン』)を指名する。
 一般に重要作と捉えられる機会の少ない『タッチストーン』であるが,管理人は『タッチストーン』抜きにチック・コリアの多種多様なソロ活動を語ることはできないと思う。

 理由は3つある。その1つは『タッチストーン』が,チック・コリアが生涯追い続ける「スパニッシュ路線」に位置するからである。
 もう1つは『タッチストーン』が,チック・コリアバンド活動である,リターン・トゥ・フォーエヴァーからエレクトリック・バンドへの過渡期に位置するからである。
 そして3番目の理由。これが個人的には大きいのが『タッチストーン』での経験があったからこそ「エレクトリック・バンド」の『EYE OF THE BEHOLDER』が誕生したと思うからである。

 まず『タッチストーン』の「スパニッシュ路線」であるが『MY SPANISH HEART』とは異なる“フラメンコ・ギター”でのアプローチが“鮮烈”である。
 『MY SPANISH HEART』で多用したヴァイオリンを『タッチストーン』ではギターでアレンジ。やはりスパニッシュな音作りに弦楽器は欠かせない。
 【タッチストーン】【ザ・イエロー・ニンバス】では,アコースティックギターパコ・デ・ルシア。【コンパドレス】では,エレクトリックギターアル・ディ・メオラが,自分なりの“フラメンコ・ギター”でチック・コリアとタップしている。

 次に『タッチストーン』における「バンド・サウンドへの回帰」であるが,ズバリ,オリジナル・メンバーでの「第2期」リターン・トゥ・フォーエヴァーの再結成に尽きる。
 わずか1曲だけの再結成であるが,このインパクトが絶大で,チック・コリアエレクトリック・バンドの結成を「急がせるに足りる」名演だと思う。解散後にも関わらず“個性的なバンド・サウンド”が響いている。

 ゆえに「エレクトリック・バンド」の原型は『タッチストーン』にある。1枚だけ異質な『EYE OF THE BEHOLDER』の原型は『タッチストーン』にある。

 『タッチストーン』の全6トラックにアルバムとしての統一感はない。なんたってリー・コニッツまで参加した「スパニッシュ」であるがゆえ「名盤ならぬ迷盤」呼ばわりされる理由も分からないではない。管理人の評価も星4つである。

TOUCHSTONE-2 しかし,それでもどうしても,チック・コリアのファンを公言するつもりなら『タッチストーン』は押さえておいてほしい。6トラック全てがバラバラの寄せ集めなはずなのに,その全てにチック・コリアの“心の高鳴り”を感じるのだ。

 「ファンタジー三部作」にはなかった。『フレンズセッションにも『スリー・クァルテッツセッションにもなかった“個性的なバンド・サウンド”を耳にしたチック・コリアの“心の高鳴り”。

 双子のような最高のシンクル・パートナーであるゲイリー・バートンのそれとは異なっている。ライバルにしてスター同士だかる分かり合えるハービー・ハンコックのそれとも異なっている。“アイドル”パコ・デ・ルシアスパニッシュを目の前にしたチック・コリアの“心の高鳴り”。

 いつものチック・コリアならば,ここからヒネリを加えて,名盤へと仕上げていくのであろうが,個人的にどうしても欲しかった“音源コレクター”と化したチック・コリアの「はしゃぎっぷり」が“制作過程”を強く感じさせる『タッチストーン』。

 そう。『タッチストーン』は,これまでの「コンセプト有き」ではない,その場の“心象風景”をモチーフに制作された「ザ・チック・コリア」なコンセプトが逆に濃厚すぎる。

  01. TOUCHSTONE
      PROCESSION
      CEREMONY
      DEPARTURE

  02. THE YELLOW NIMBUS
  03. DUENDE
  04. COMPADRES
  05. ESTANCIA
  06. DANCE OF CHANCE

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1982年発売/MVCR-124)
(ライナーノーツ/小川隆夫)

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チック・コリア / スリー・クァルテッツ5

THREE QUARTETS-1 『THREE QUARTETS』(以下『スリー・クァルテッツ』)の由緒正しい紹介方法,それは,ピアノチック・コリアベースエディ・ゴメスドラムスティーヴ・ガッドの3人が揃った【妖精の夢】〜【ハンプティ・ダンプティ】〜『フレンズ』の再会セッションというのが筋であろう。

 しかし,マイケル・ブレッカーテナーサックスを前にすれば,世界的な名手=エディ・ゴメススティーヴ・ガッドは“脇役”に成り下がっている。
 そう。チック・コリアが,マイケル・ブレッカー以外は“眼中にない”感じでピアノを弾き倒している。「鬼気迫るピアノ」とはこんな感じを指すのだろう。

 エディ・ゴメスベースソロが素晴らしい。スティーヴ・ガッドのタイトなのに跳ねるビートが素晴らしい。
 しかし,それってチック・コリアマイケル・ブレッカーの“手に汗握るインタープレイ”の「息抜き」あるいは「ブレイク・タイム」。完全なる「蚊帳の外」での名演であって,次に来るチック・コリアマイケル・ブレッカーインプロビゼーションのお膳立てに終始している。

 全体にクラシックの香りが漂う,息苦しい展開を“豪快にブチ破る”マイケル・ブレッカーテナーサックスが絶唱する。
 正確なピッチで“雄叫び”を上げるマイケル・ブレッカーが,無表情な「組曲」を彩っていく。このテクニカルなブローが唯一無二の「マイケル節」。フレージングのアプローチが「新世代のサックス」していて「マイケル節」が耳から離れてくれなくなる。
 管理人の周りには『スリー・クァルテッツ』と来れば,チック・コリア買いではなくマイケル・ブレッカー買い,が多いという事実。

 マイケル・ブレッカーに“触発された”チック・コリアの“ジャズ・ピアニスト”としての個性が爆発している。こんなに“本気度の高い”チック・コリアは『スリー・クァルテッツ』以外では聴くことができない。
 ジョン・コルトレーンをアイドル視するマイケル・ブレッカー流「シーツ・オブ・サウンド」に対峙するため,チック・コリアのテクニカルなピアノの“ゴリ押し”が圧巻。和音を垂直にガンガン叩き降ろすようなバッキングを執拗に重ねていく。

 それなのにチック・コリアのテクニカルなピアノが,エディ・ゴメスベーススティーヴ・ガッドドラムと調和するのは当然として,マイケル・ブレッカーテナーサックスとも調和する神業の披露。
 チック・コリアは,メジャーでキャッチャーな印象的な美メロ弾きにして,バッキングだけでもメロディーを奏でることのできる“ジャズ・ピアニスト”であった。
 そう。『スリー・クァルテッツ』で語られるべきは,チック・コリアマイケル・ブレッカーとの“運命の出会い”である。

THREE QUARTETS-2 ズバリ『スリー・クァルテッツ』の試みとは,変幻自在なリズム・チェンジを駆使したストレート・ア・ヘッドな4ビートによる「組曲」集。
 「組曲」ゆえに,本来の性質は繰り返し聴き込むべきアルバムだと思うが,張りつめたテンションで演奏されるインプロビゼーションによる「組曲」であって,聴き終えるとぐったり。余りのエネルギー消費に,もう1度最初から聴き直す気がおきなくなる…。硬派すぎるのだ…。ハードすぎるのだ…。

 だ・か・ら管理人は『スリー・クァルテッツ』を,本編の4トラック【QUARTET NO.1】【QUARTET NO.3】【QUARTET NO.2−PART 1】【QUARTET NO.2−PART 2】を飛ばしてボーナス・トラックから聴き始める。

 チック・コリアマイケル・ブレッカーとのデュオ=【CONFIRMATION】が特に良い。チック・コリアピアノではなくドラムジャムっている。ほどよく力の抜けた雰囲気。
 マイケル・ブレッカーは7コーラスも吹いてドラムと4バース・チェイスが1コーラス。6分間連続で吹き続けているのだが,そのどこを切ってもコード進行をきっちりと感じさせる素晴らしいフレーズの連続である。

 これが管理人の『スリー・クァルテッツ』攻略法。ただし,まだ最終ステージまでは攻略できていない。

  01. QUARTET NO.1
  02. QUARTET NO.3
  03. QUARTET NO.2 - PART 1 (dedicated to Duke
     Ellington)

  04. QUARTET NO.2 - PART 2 (dedicated to John
     Coltrane)

  05. FOLK SONG
  06. HAIRY CANARY
  07. SLIPPERY WHEN WET
  08. CONFIRMATION

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1981年発売/UCCU-6220)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/岡崎正通)

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チック・コリア&ゲイリー・バートン / イン・コンサート5

IN CONCERT, ZURICH, OCTOBER 28, 1979-1 “ジャズの伝統芸能”チック・コリアゲイリー・バートンデュエットのミラクルについて記録。

 『CRYSTAL SILENCE』は“COOL”。『DUET』は“HOT”。
 そうして「ジャズデュエットの金字塔」な1枚『IN CONCERT,ZURICH,OCTOBER 28,1979』(以下『イン・コンサート』)は“VERY HOT”! いいや,時折,スタジオ録音を思わせるくらいに“VERY COOL”!

 最高の舞台を得て“シンクロしまくる”チック・コリアゲイリー・バートンが,どこまでもどこまでも昇りつめる! ここまで合いまくるパートナーを目の前にして,思うがままに自由に跳ねまくる!

 もう何を演っても,どう演っても合ってしまう。どうしようもなく合ってしまう。シンクロするつもりがないのに“シンクロしてしまう”。真に恐ろしいライブ録音である。

 1979年10月28日のチューリッヒの夜。チック・コリアゲイリー・バートンには,信頼関係と音楽的な合意が存在していた。
 2人の頭脳に全く同じイメージが浮かび上がり,全く同じイメージでアウトプットしている。出ている音に違いがあるのはピアノヴィヴラフォンという楽器特性の違いである。

IN CONCERT, ZURICH, OCTOBER 28, 1979-2 歴史的名盤である『イン・コンサート』。『イン・コンサート』については,語られるべきことがたくさんある。
 ただしそれは「美辞麗句」が連なる「最高の賛辞」を有した世界中のジャズ評論家たちによって,すでに徹底的な検証作業がなされてきた…。

 管理人が『イン・コンサート』について語ることができるのは,チック・コリアゲイリー・バートンは,あの夜“双子”のようであった,ということだけである。天国での再会を先取りしていた,ということだけである。

 『イン・コンサート』について凡人が語れることはただそれだけである。次元が違いすぎる「歴史的な超・超・名盤」。

  01. SENOR MOUSE
  02. BUD POWELL
  03. CRYSTAL SILENCE
  04. TWEAK
  05. FALLING GRACE
  06. MIRROR, MIRROR
  07. SONG TO GAYLE
  08. ENDLESS TROUBLE, ENDLESS PLEASURE

(ECM/ECM 1980年発売/POCJ-2021)
(ライナーノーツ/本多俊夫)

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チック・コリア&ゲイリー・バートン / デュエット5

DUET-1 チック・コリアゲイリー・バートンデュエットに対するイメージは,最初に『クリスタル・サイレンス』と『デュエット』のどちらを聴くかによって,受ける印象は多分に異なることであろう。

 …というのも,デュエットの第2弾『DUET』(以下『デュエット』)で,チック・コリアゲイリー・バートンは成功を収めた『クリスタル・サイレンス』での人気スタイルを一変してきた。
 「水晶の青い炎の空気」に包まれたかのような“COOL”なデュエットから,熱いインプロビゼーションを基盤とする“HOT”なデュエットに音軸を振ってきたのだ。

 通常であれば,大ヒットした『クリスタル・サイレンス』の“COOL”路線を推し進めた続編を制作するものなのだろうが,チック・コリアゲイリー・バートンは『クリスタル・サイレンス』が「失敗作であるかのように」または「納得がいかなかったかのような」あるいは「飽き足らなかったかのように」正反対の表情を出してきた。

 このスタイルの変化は中途半端なものではない。管理人などは,チック・コリアゲイリー・バートンデュエットとは知りつつも「このピアノって本当にチック・コリアなの?」って疑ってしまいたくなる感じ…。
 いや〜,何度も繰り返し聴き直す度に改めて感じることであるが,チック・コリアゲイリー・バートンデュエットは,実に間口が広い。

 だからこそ“HOT”な『デュエット』を聴いてみて“COOL”な『クリスタル・サイレンス』を再評価できた。『クリスタル・サイレンス』に滲むチック・コリアゲイリー・バートンの熱演を“炙り出す”ことが可能になった。
 その意味でもチック・コリアゲイリー・バートンデュエットは“ジャズの伝統芸能”であり,もはや“芸術作品”と呼んでもよいだろう。

 特筆すべきは,狙いを絞り込んだ作風に合ったマンフレート・アイヒャーの類まれなる選曲眼。
 『クリスタル・サイレンス』の続編は“COOL”ではなく“HOT”で行くことに決まったにしても,大ヒット確実なスタンダード集に流れるのではなく,チック・コリアゲイリー・バートンデュエットにふさわしい佳曲だけを選んでいるように思う。

DUET-2 チック・コリア・サイドからは“最高傑作”『リターン・トゥ・フォーエヴァー』からのセレクト。
 『クリスタル・サイレンス』が『リターン・トゥ・フォーエヴァー』からの【CRYSTAL SILENCE】なら『デュエット』は『リターン・トゥ・フォーエヴァー』からの【LA FIESTA】。

 ゲイリー・バートン・サイドからはスティーヴ・スワローの【RADIO】と【NEVER】をセレクト。
 まるでチック・コリアゲイリー・バートンデュエットを想定して書かれていたかのような“COOL”で“HOT”な展開が最高に盛り上がる〜。もってこ〜い。

 マンフレート・アイヒャーが6年間の熟慮の末に仕掛けてきたデュオ第2弾の『デュエット』。『クリスタル・サイレンス』の表現手法を拡大すると『デュエット』に行き着く。
 そう。『デュエット』は『クリスタル・サイレンス』で伝え損なった「水晶の赤い炎のアドリブ」を補う役割を担っている。

 “筋肉ムキムキ”な演奏に変貌した『デュエット』だからこそ,嫌うのでも避けるのでもなく『クリスタル・サイレンス』の大ファンにこそ聴き込んでほしい,と切に願う。

  01. DUET SUITE
  02. CHILDREN'S SONG 15
  03. CHILDREN'S SONG 2
  04. CHILDREN'S SONG 5
  05. CHILDREN'S SONG 6
  06. RADIO
  07. SONG TO GAYLE
  08. NEVER
  09. LA FIESTA

(ECM/ECM 1979年発売/POCJ-2020)
(ライナーノーツ/油井正一)

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チック・コリア/ハービー・ハンコック / デュオ・ライヴ5

AN EVENING WITH CHICK COREA AND HERBIE HANCOCK-1 ハービー・ハンコックマイルス・デイビスの「黄金のクインテット」のピアニストチック・コリアマイルス・デイビスの「ロスト・クインテット」のピアニスト
 ハービー・ハンコックは「ヘッド・ハンターズ」のリーダー。チック・コリアは「リターン・トゥ・フォーエヴァー」のリーダー。

 そう。ハービー・ハンコックチック・コリアは,同じマイルス・スクールの卒業生として,ジャズの新たな未来を切り開いてきた良き「ライバル」である。

 そんなピアニストとしてもコンポーザーとしても良き「ライバル」であるハービー・ハンコックチック・コリアが,ついに面と向かって「音楽で会話」したのが『AN EVENING WITH CHICK COREA AND HERBIE HANCOCK』(以下『デュオ・ライヴ』)。

 『デュオ・ライヴ』は,ハービー・ハンコックチック・コリアにとっては「画期的な転換点」と呼べるほどに,後々振り返る時,重要な意味を持つ名盤の1枚だと思う。
 なぜなら同じピアニスト,同じスターとしての立場という共通点を持つ共演相手として考えられるは,ハービー・ハンコックにとってはチック・コリアただ一人であり,チック・コリアにとってはハービー・ハンコックただ一人であったことだろう。

 『デュオ・ライヴ』における,ハービー・ハンコックチック・コリアの“歓び”が格別である。
 それは音楽的には良き「ライバル」であり続けたハービー・ハンコックチック・コリアだが,実はこの2人にしか分かり合えない感情を理解することのできる“唯一の盟友”であったことが証明された瞬間だった。ついに“運命の人”と巡り会うことのできた“歓び”が爆発している。

 『デュオ・ライヴ』には,ピアノ・デュオに期待される連弾のくだりはない。
 予想通り?ハービー・ハンコックチック・コリアのフレーズは全くシンクロしていない。それぞれが自分のスタイルを最後まで貫き通している。

 切磋琢磨の繰り返しにより,互いのジャズ・ピアノ度が高まっている。そして時に2台のピアノが1台のピアノに“合体”する時の美しさ…。聴いてこれ程“面白い”ピアノ・デュオはそう多くない。これぞ“プロ中のプロの音遊び”であろう。

 『デュオ・ライヴ』の聴き所は“ジャズ・ピアニスト”としてのハービー・ハンコックでありチック・コリアであろう。
 「ヘッド・ハンターズ」と「リターン・トゥ・フォーエヴァー」で,エレクトリックピアノにハマッテしまった2人がアコースティックピアノ1台で,よくもまああれだけしゃべれることができるものだ!

 この全ては,互いに相手を倒してやろうとか,優位に立とうとするのではなく,相手を刺激することで自分も刺激されることが分かる“ジャズの語法”が用いられている。
 2人の発する音の,もの凄い立ち上がり,が驚異的! 相手の発する音の意味を聞き分けて,自分のフィルターをかけて打ち返す。そのリターンに更なる変化を加えて打ち返す。長いラリーのようであって,一音一音が即興で連綿とつながっている! 即興のループで2人して絶頂の高みに昇りつめていく!

 特に互いの名曲を,作曲した本人と共にデュエットするのが,楽しくてしょうがない様子が音の表情に表われている。
 これらのトラックを聴くにつれ,普段はピアニストとしてもコンポーザーとしても良き「ライバル」である2人が,互いにジャズメンとして最大の敬意を抱いていることが良く分かる。素晴らしい。

 なお,今回の『デュオ・ライヴ』は「チック・コリア名義のポリドール盤」であるが,同内容の「ハービー・ハンコック名義のCBS盤」2枚組の『イン・コンサート』の変則同時リリース。レコード会社の壁を越えた“夢の共同プロジェクト”である。

 仮想3枚組みのCDは,内容からジャケット写真&ブックレットに至るまでデュエットの精神が貫かれた作りとなっている。
 選曲はラストの2曲の大ヒット・ナンバー【処女航海】【ラ・フィエスタ】以外はクロスすることのない親切設計。チャンネルもレフトがハービー・ハンコック,ライトがチック・コリアと統一されたのが大殊勲!

AN EVENING WITH CHICK COREA AND HERBIE HANCOCK-2 管理人の結論=『デュオ・ライヴ批評

 名盤デュオ・ライヴ』成功の秘訣は,ライブ・レコーディングにある。『デュオ・ライヴ』は,ハービー・ハンコックチック・コリア2人きりのデュエットに違いないのだが,実は隠された大勢の共演者が存在する。

 そう。ピアノ・デュオの極意を知るオーディエンスが,耳を澄ませば,時に聞き入り,時に拍手喝さいを送っている。その聴衆の反応がハービー・ハンコックチック・コリアアドリブをさえ導いている。完全なる“触媒役”を果たしている。
 仮に『デュオ・ライヴ』が,同じ選曲でスタジオで録音されたとしても,ここまでエキサイティングなピアノ・デュオとはならなかったことと思う。

 『デュオ・ライヴ』の真意は,演奏者と演奏者のデュエットであると同時に,演奏者と観客とのデュエットでもあった。
 一心同体と化した2人のピアニストが観客と一体となってデュエットする。この“2重構造”がハービー・ハンコックチック・コリアの『デュオ・ライヴ』である。

  01. HOMECOMING
  02. OSTINATO
  03. THE HOOK
  04. BOUQUET
  05. MAIDEN VOYAGE
  06. LA FIESTA

(ポリドール/POLYDOR 1979年発売/POCJ-2702)
(ライナーノーツ/久保田高司)

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チック・コリア / フレンズ5

FRIENDS-1 「リターン・トゥ・フォーエヴァー」を解散し,コンセプトものの「ファンタジー三部作」を完結させたチック・コリアが,本格的なソロ活動のスタートとして選んだのが,腕達者な友人4人とのセッション・アルバム=『FRIENDS』(以下『フレンズ』)である。

 『フレンズ』でのチック・コリアは,前作まで続いた「クリエイティブな音楽実験」から解放されて,何にも考えずに鍵盤の前に座った感じがする。
 ゆえにチック・コリアの“ジャズ・ピアニスト”としての「本能丸出し」で「ストレート・アヘッド」なローズ・ピアノに“天才の凄み”のようなものをいつも以上に感じてしまう。
 チック・コリアが「フィーチャリングエレクトリックピアノ」のスタンスでジャズのフィールドに帰ってきた!

 しかしそうではない。そんな能書きを垂れてはならない。『フレンズ』の本質はそれとは真逆な部分にある。『フレンズ』について語るべきは,もっと抽象的な部分である。『フレンズ』には,何とも言い得ぬ“味わい”がある。

 曲の良さ,アドリブの良さ,以上に,ほのぼのとして,温かみがあって,チック・コリアベストフレンズの4人が自然と笑みをこぼして,音楽で会話できているような雰囲気が全体を支配している。聴いているこちらまでが笑顔になってしまうような…。
 そう。『フレンズ』こそ,音を楽しむと書いて「音楽」と読む,の代表格。音楽を聴く歓びをいつ聴いても何度聴いても味わえるスルメ盤。管理人が魅了されてやまない愛聴の1枚なのである。

 『フレンズ』に心地良く酔いしれる度に「音楽ってコミュニケーションなんだよなぁ」を実感する。
 『フレンズ』はバンド・サウンドではないのだが『フレンズ』が『フレンズ』として成立するのは,不動の4人,チック・コリアジョー・ファレルエディ・ゴメススティーヴ・ガッドの誰一人として欠けてはならなかったと思う。

 4人の濃密なコミュニケーションが生み出した絶妙のブレンド。1人では出せず2人でも出せず…この音色では出せずこのリズムでは出せず…。
 4人が“チーム・ブレンダー”として,ジャズの焙煎&蒸らし時間について,百戦錬磨の豊富なアイディアを持ち寄り,いっせーのせ,でディスカッション!

 互いに信頼を寄せ合うメンバーが,引き出しを出し合ってまとめた最高のパターン! テイクを重ねれば重ねるごとに,一発録りを凌駕するアプローチが次から次へと誕生する! 演れど演れどもアイディアが止まらない! テンションが上がって上がってしょうがない! 音楽でクリエイトするのが楽しくってしょうがない!

 チック・コリアは優れたバンド・リーダーである。自身のキーボードは,洗練された聴き応えたっぷりのフレーズを“軽く一丁弾き飛ばす”ことで「ジャム・セッションっぽい風通しの良さ」を演出している。
 ジョー・ファレル以上のサックス奏者がごまんといる中,チック・コリアの選択はジョー・ファレル一択。ズバリ,ジョー・ファレルが構築した“明確なリテール”と“爽やかな後ノリ”が『フレンズ』最大の成功要因であろう。
 エディ・ゴメスウッドベースが本当に「ハートフル」。スティーヴ・ガッドドラミングは「若気の至り」。ゴメスガッドのリズム隊が“ピョンピョン”跳ねまくっている。フロントを揺り動かしながら「猪突猛進」している。

FRIENDS-2 チック・コリアの大量の名盤群のなかにあって『フレンズ』は本当にヘビロテしたアルバムである。いつでもハッピーな気分になれるし聴き飽きたりしない。

 その理由は『フレンズ』の“ゆったり&ピリカラ”の二本仕立て。【THE ONE STEP】【FRIENDS】の「表・楽園ユートピア路線」と【SAMBA SONG】【CAPPUCINO】の「裏・ゴリゴリ・バッパー爆発路線」。
 この“ゆったり&ピリカラ”の二本仕立てが,どんな気分にも合う合う! この“ゆったり&ピリカラ”の二本仕立てが,多面的で実に様々な表情を見せてくれる!

 『妖精』収録の【妖精の夢】で意気投合し『マッド・ハッター』収録の【ハンプティ・ダンプティ】で大輪の花を咲かせた,チック・コリアジョー・ファレルエディ・ゴメススティーヴ・ガッドカルテットが,息つく暇もなくレコーディングした『フレンズ』。

 この3回のレコーディングを続けて聴き通す時,ベストフレンズの4人が徐々に機能的なバンド・サウンドに近づいていくインタープレイの変化の過程が実に面白い。
 “濃密なコミュニケーション”の産物=『フレンズ』の何とも言い得ぬ“味わい”に舌鼓を打つ。チック・コリアの友人引き立て役を買って出た“懐の深さ”に感嘆する。

  01. THE ONE STEP
  02. WALTSE FOR DAVE
  03. CHILDREN'S SONG #5
  04. SAMBA SONG
  05. FRIENDS
  06. SICILY
  07. CHILDREN'S SONG #15
  08. CAPPUCINO

(ポリドール/POLYDOR 1978年発売/POCJ-1981)
(ライナーノーツ/チック・コリア,熊谷美広)

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チック・コリア / マッド・ハッター5

MAD HATTER-1 管理人のジャズフュージョン・ファン歴30年を振り返る時,今となっては本当に勿体ないことをした,と思うことが幾つかある。今日はその中でも最大級に自分自身への後悔の念を吐露する回となる予定である。

 な・に・を・懺悔するのですか? それはチック・コリアについてである。長らく管理人はチック・コリアを「凄い」とは思うが「好き」とは思わなかった。
 チック・コリアの新作を発売日当日に購入し,胸ときめかせながらヘッドフォンで聴き込んでいく。これが管理人にとっての「好き」な人への儀式なのだが,チック・コリアが儀式の対象となったのは,ここ10年ぐらいなものである。真に勿体なかった!

 なぜか? その直接の原因が『THE LEPRECHAUN』(以下『妖精』)『MY SPANISH HEART』(以下(『マイ・スパニッシュ・ハート』)『THE MAD HATTER』(以下『マッド・ハッター』)から成る「ファンタジー三部作」の存在である。

 今振り返れば,チック・コリアのアルバムはその半数近くが何らかの「コンセプト・アルバム」である。ゆえに「ファンタジー三部作」だけを目くじら立てて煙たがるのもどうかと思う。
 しかし,どうしてもダメだった。これは,俗に女性がよく口にする「生理的にダメ」というものと同じような感覚? 管理人にとってチック・コリアの“少女漫画のおめめきらきらロマンティック”全開の「ファンタジー三部作」は完全なる「イロモノ」→完全に「アウト」であって,この手の精神世界は全てご遠慮いただいていた。

 特に今夜紹介する「ファンタジー三部作」の3作目『マッド・ハッター』のアルバム・ジャケットがマジ最悪。『不思議の国のアリス』に登場する,そのものズバリの「狂った帽子屋」の半端ないコスプレ臭がプンプン。アキバ系オタクの開祖のようなポートレイト。うわわ…。恐すぎる…。手に取ることすらはばかられる…。

 あれから20年。管理人も歳を取った。おじさんとなった今ならチック・コリアの「ファンタジー三部作」を受け止めることができるはずである。
 時は2009年。『ニュー・クリスタル・サイレンス』のグラミー受賞で,チック・コリアの“隠れファン”を卒業宣言した管理人が,ついに『妖精』『マイ・スパニッシュ・ハート』『マッド・ハッター』を買ってみた。そしてヘッドフォンで聴き込んでみた。

 事の結論はこうである! 「音楽的には最高である! 絶頂である! 駄盤しらずのチック・コリアの全生涯を通じても,あふれんばかりの創造性のピークを迎えている!」。
 「音楽を演奏すると言うよりは“物語を紡ぎ出す”と言う方がしっくりくる! チック・コリアが『MUSIC MAGIC』(先のリターン・トゥ・フォーエヴァーでのアルバム・タイトル)をかけている!」。

 「ファンタジー三部作」の第三弾は『マッド・ハッター』。『マッド・ハッター』のコンセプトは「不思議の国のアリス」であって,ディズニー・アニメとは違う切り口にして(サウンドトラックに関しては)ウォルト・ディズニーを圧倒的に凌駕する“音絵巻のストーリー”が展開されていく。

 『マッド・ハッター』の聴き所は,チック・コリア一連のコンセプト・アルバムの最終作にして完結作の“ファンタジー”フュージョンの完成度! ついにキターッ!
 『妖精』『マイ・スパニッシュ・ハート』のソロ名義「ファンタジー三部作」の2作に加えて,リターン・トゥ・フォーエヴァー名義の『浪漫の騎士』『ミュージックマジック』を経由して,チック・コリアが「試しに試し,練りに練り上げた」コンセプト・アルバムとしての完成度! チック・コリアの“ファンタジー”フュージョン,ここに究めたり〜!

MAD HATTER-2 自分の頭の中にある「不思議の国のアリス」のサウンド・イメージを具現化すべく,手持ちの全ての楽器と交友関係を総動員してジャズ・アルバムへと仕立てあげるチック・コリアのフィーリングが,真に天才的!

 一連の“ストーリー・テラー”としての枠組みの中に,ハイ・テンションなアドリブが違和感なく組み込まれている。事前に書き込まれたコンセプト部分とその場の即興部分のバランスが秀逸。アルバム単位で見渡してもトラック単位で見渡しても,かなり洗練された設計図が確認できる。
 そう。『マッド・ハッター』は『MY SPANISH HEART』なチック・コリアが建設中の“音楽のサクラダファミリア”なのであろう。

 4ビートも8ビートも難なくこなすトリオ,あるいはカルテットを中心に,ホーンストリングスの味付け,シンセサイザーのマルチ録音によるオーケストラ的なサウンド,フローラ・プリムでは出せないゲイル・モランスキャットボーカルを導入して,ジャズをベースに,ロック,クラシック,オペラ,映画音楽の要素をも呑み込んだ,前人未到の“ファンタジー”フュージョン

 ソロとバンドの“二足の草鞋”を履き替えながら,浮かんだアイディアを即アルバム化してしまう,チック・コリア流“クラッシュ・アンド・ビルド”は『マッド・ハッター』を最後に一応の落ち着きを見せる。
 もしや“音楽のサクラダファミリア”『マッド・ハッター』の建設に100%で取り掛かるためにチック・コリアリターン・トゥ・フォーエヴァーを手放したのかもしれない。

 片手間でも思いつきでもく,あのリターン・トゥ・フォーエヴァーを解散させてまで作り込んだ『マッド・ハッター』に対するチック・コリアの熱き思い。
 『マッド・ハッター』に対するチック・コリアの絶対的な自信は,自宅を改装したスタジオを「マッド・ハッター・スタジオ」と命名しかことからも窺い知ることができる。

 『マッド・ハッター』は,チック・コリアの大量の名盤群のなかでも音楽的には最高レベル! あんなアルバム・ジャケットにしたのに星5つ! 普通のアルバム・ジャケットであれば星6つ?

  01. THE WOODS
  02. TWEEDLE DEE
  03. THE TRIAL
  04. HUMPTY DUMPTY
  05. PRELUDE TO FALLING ALICE
  06. FALLING ALICE
  07. TWEEDLE DUM
  08. DEAR ALICE
  09. THE MAD HATTER RHAPSODY

(ポリドール/POLYDOR 1978年発売/UCCM-3060)
(ライナーノーツ/藤本史昭)

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チック・コリア / マイ・スパニッシュ・ハート4

MY SPANISH HEART-1 管理人のジャズフュージョン・ファン歴30年を振り返る時,今となっては本当に勿体ないことをした,と思うことが幾つかある。今日はその中でも最大級に自分自身への後悔の念を吐露する回となる予定である。

 な・に・を・懺悔するのですか? それはチック・コリアについてである。長らく管理人はチック・コリアを「凄い」とは思うが「好き」とは思わなかった。
 チック・コリアの新作を発売日当日に購入し,胸ときめかせながらヘッドフォンで聴き込んでいく。これが管理人にとっての「好き」な人への儀式なのだが,チック・コリアが儀式の対象となったのは,ここ10年ぐらいなものである。真に勿体なかった!

 なぜか? その直接の原因が『THE LEPRECHAUN』(以下『妖精』)『MY SPANISH HEART』(以下(『マイ・スパニッシュ・ハート』)『THE MAD HATTER』(以下『マッド・ハッター』)から成る「ファンタジー三部作」の存在である。

 今振り返れば,チック・コリアのアルバムはその半数近くが何らかの「コンセプト・アルバム」である。ゆえに「ファンタジー三部作」だけを目くじら立てて煙たがるのもどうかと思う。
 しかし,どうしてもダメだった。これは,俗に女性がよく口にする「生理的にダメ」というものと同じような感覚? 管理人にとってチック・コリアの“少女漫画のおめめきらきらロマンティック”全開の「ファンタジー三部作」は完全なる「イロモノ」→完全に「アウト」であって,この手の精神世界は全てご遠慮いただいていた。

 特に今夜紹介する「ファンタジー三部作」の2作目『マイ・スパニッシュ・ハート』のアルバム・ジャケットがマジ最悪。本人はスペイン貴族で貴公子気取りのつもり? 闘牛士のつもり? 管理人が連想したのは,多くの奇行や逸話が「スペインの恥じ伝説」として語られるサルバドール・ダリである。うわわ…。恐すぎる…。手に取ることすらはばかられる…。

 あれから20年。管理人も歳を取った。おじさんとなった今ならチック・コリアの「ファンタジー三部作」を受け止めることができるはずである。
 時は2009年。『ニュー・クリスタル・サイレンス』のグラミー受賞で,チック・コリアの“隠れファン”を卒業宣言した管理人が,ついに『妖精』『マイ・スパニッシュ・ハート』『マッド・ハッター』を買ってみた。そしてヘッドフォンで聴き込んでみた。

 事の結論はこうである! 「音楽的には最高である! 絶頂である! 駄盤しらずのチック・コリアの全生涯を通じても,あふれんばかりの創造性のピークを迎えている!」。
 「音楽を演奏すると言うよりは“物語を紡ぎ出す”と言う方がしっくりくる! チック・コリアが『MUSIC MAGIC』(後のリターン・トゥ・フォーエヴァーでのアルバム・タイトル)をかけている!」。

 「ファンタジー三部作」の第二弾は『マイ・スパニッシュ・ハート』。『マイ・スパニッシュ・ハート』のコンセプトは「スペイン魂」であって,アルバム全体を貫く「ラテンの血」が“音絵巻のストーリー”として展開されていく。

MY SPANISH HEART-2 『マイ・スパニッシュ・ハート』の聴き所は,チック・コリアスペインへの恋焦がれるかのような“憧れの音”。
 リターン・トゥ・フォーエヴァーの大名曲【LA FIESTA】や【SPAIN】のような,ストレートにスペインのエッセンスを取り入れたフュージョンではなく,スペインを思い浮かべながら描いた紛れもないチック・コリア流“ファンタジー”フュージョン

 恋焦がれるかのような“憧れの音”なはずなのに,理性や知性で綿密に構成が練られている。
 そう。『マイ・スパニッシュ・ハート』は「チック・コリアスペインに対する音楽でのラヴ・レター」なのである。

 “スパニッシュなテイスト”を前面に押し出した『マイ・スパニッシュ・ハート』の音楽的なコンセプトは,ブラジリアンのジョー・ファレルアイアート・モレイラフローラ・プリムをフューチャーした「第一期リターン・トゥ・フォーエヴァー」の延長線上に位置する傑作だと思う。

 しかし類似のコンセプトを有するにしても,ECMポリドールにおける音造りの違いは大きく『リターン・トゥ・フォーエヴァー』が,澄み渡る空気感・透明感の“不思議な浮遊体験サウンド”であるとするならば『マイ・スパニッシュ・ハート』は,お酒飲んで踊り出したくなるくらいに“情熱的で明るく陽気なサウンド”である。
 『マイ・スパニッシュ・ハート』には,かなりお茶目なチック・コリアの“お人柄”が音の個性として現われている。

 繰り返すが『マイ・スパニッシュ・ハート』は,チック・コリアの大量の名盤群のなかでも音楽的には最高レベル! でもやっぱり星は4つ! 惜しまれるべきは,なぜあんなアルバム・ジャケットにしたのだろうか?

  01. Love Castle
  02. The Gardens
  03. Day Danse
  04. My Spanish Heart
  05. Night Streets
  06. The Hilltop
  07. Wind Danse
  08. Armando's Rhumba
  09. Prelude To El Bozo
  10. Bozo, Part I
  11. Bozo, Part II
  12. Bozo, Part III
  13. Spanish Fantasy, Part I
  14. Spanish Fantasy, Part II
  15. Spanish Fantasy, Part III
  16. Spanish Fantasy, Part IV

(ポリドール/POLYDOR 1976年発売/POCJ-1980)
(ライナーノーツ/寒川光一郎)

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チック・コリア / 妖精4

THE LEPRECHAUN-1 管理人のジャズフュージョン・ファン歴30年を振り返る時,今となっては本当に勿体ないことをした,と思うことが幾つかある。今日はその中でも最大級に自分自身への後悔の念を吐露する回となる予定である。

 な・に・を・懺悔するのですか? それはチック・コリアについてである。長らく管理人はチック・コリアを「凄い」とは思うが「好き」とは思わなかった。
 チック・コリアの新作を発売日当日に購入し,胸ときめかせながらヘッドフォンで聴き込んでいく。これが管理人にとっての「好き」な人への儀式なのだが,チック・コリアが儀式の対象となったのは,ここ10年ぐらいなものである。真に勿体なかった!

 なぜか? その直接の原因が『THE LEPRECHAUN』(以下『妖精』)『MY SPANISH HEART』(以下(『マイ・スパニッシュ・ハート』)『THE MAD HATTER』(以下『マッド・ハッター』)から成る「ファンタジー三部作」の存在である。

 今振り返れば,チック・コリアのアルバムはその半数近くが何らかの「コンセプト・アルバム」である。ゆえに「ファンタジー三部作」だけを目くじら立てて煙たがるのもどうかと思う。
 しかし,どうしてもダメだった。これは,俗に女性がよく口にする「生理的にダメ」というものと同じような感覚? 管理人にとってチック・コリアの“少女漫画のおめめきらきらロマンティック”全開の「ファンタジー三部作」は完全なる「イロモノ」→完全に「アウト」であって,この手の精神世界は全てご遠慮いただいていた。

 特に今夜紹介する「ファンタジー三部作」の1作目『妖精』のアルバム・ジャケットがマジ最悪。ハレンチ男で有り得ない。半端ないコスプレ臭がプンプン。どこから見ても志茂田景樹の世界であり,とんねるずのホモオダホモオを連想してしまう。うわわ…。恐すぎる…。手に取ることすらはばかられる…。

 あれから20年。管理人も歳を取った。おじさんとなった今ならチック・コリアの「ファンタジー三部作」を受け止めることができるはずである。
 時は2009年。『ニュー・クリスタル・サイレンス』のグラミー受賞で,チック・コリアの“隠れファン”を卒業宣言した管理人が,ついに『妖精』『マイ・スパニッシュ・ハート』『マッド・ハッター』を買ってみた。そしてヘッドフォンで聴き込んでみた。

 事の結論はこうである! 「音楽的には最高である! 絶頂である! 駄盤しらずのチック・コリアの全生涯を通じても,あふれんばかりの創造性のピークを迎えている!」。
 「音楽を演奏すると言うよりは“物語を紡ぎ出す”と言う方がしっくりくる! チック・コリアが『MUSIC MAGIC』(後のリターン・トゥ・フォーエヴァーでのアルバム・タイトル)をかけている!」。

 「ファンタジー三部作」の第一弾は『妖精』。『妖精』のコンセプトは「妖精」であって,アルバム全体を貫く「妖精」と出会い触れ合う“音絵巻のストーリー”が展開されていく。

 『妖精』の聴き所は,チック・コリアベースを弾くとしたら,チック・コリアドラムを叩くとしたら的な,全編チック・コリア“がかった”(神掛かった)演奏にある。
 チック・コリアマイルス・スクールの卒業生。いい感じにマイルスっぽい!

THE LEPRECHAUN-2 この点が同時期に“二足の草鞋”として活動していた「リターン・トゥ・フォーエヴァー」との差別化であって“俄然”面白い。『浪漫の騎士』も一種のコンセプト・アルバム的な音作りがなされているが,やはりバンド名義の演奏は4人の個性が色濃く出されているが,こちらのソロ名義の演奏は没個性。完全なるチック・コリアソロ・アルバム仕様に仕上げられている。

 “一人多重録音”でもいけそうなのに,そうしなかったのが“コンポーザー兼バンド・リーダー”としてのチック・コリアの“天才”の証し!
 チック・コリアのメンバーとの共有力,共感力,つまりは統率力が素晴らしいと思う。

 それぞれがソロイストとしても大活躍の,あのジョー・ファレルが,あのエディ・ゴメスが,あのアンソニー・ジャクソンが,あのスティーブ・ガッドが,自分の我を張らずに,チック・コリアの頭の中の音を鳴らしていく!

 この全てこそが“アレンジャー兼キーボード・プレイヤー”としてのチック・コリアの“天才”の証し!
 「妖精」というコンセプトを考えながら,1曲毎にそれぞれの場面に適したソロを配置する。それを1枚のアルバムとしてそれぞれの場面に適した曲順で配置する。結果「妖精」というコンセプトが具現化している。

 当然ながら,演奏面におけるチック・コリアの縦横無尽で大車輪の働きぶりが凄い! チック・コリアシンセサイザーから放たれる,あの音色とフレージングは当代随一! ヴォーカルブラスストリングスを起用した理由が分かるくらいに,シンセサイザーの「過剰ではなく適度な使用」が音が「妖精」コンセプトのダイナミクスにつながっている。

 繰り返すが『妖精』は,チック・コリアの大量の名盤群のなかでも音楽的には最高レベル! でもやっぱり星は4つ! 惜しまれるべきは,なぜあんなアルバム・ジャケットにしたのだろうか?

  01. IMP'S WELCOME
  02. LENORE
  03. REVERIE
  04. LOOKING AT THE WORLD
  05. NIGHT SPRITE
  06. SOFT AND GENTLE
  07. PIXILAND RAG
  08. LEPRECHAUN'S DREAM

(ポリドール/POLYDOR 1976年発売/POCJ-2189)
(ライナーノーツ/ジョン・エフランド,チック・コリア)

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チック・コリア / インナー・スペイス5

INNER SPACE-1 ジャズフュージョンの既成概念を覆した『NOW HE SINGS,NOW HE SOBS』〜『RETURN TO FOREVER』〜『CRYSTAL SILENCE』と続いた,チック・コリア“衝撃”のデビュー三部作!

 しか〜し,ここで“いわくつき”『INNER SPACE』(以下『インナー・スペイス』)の投入! その結果,チック・コリア“衝撃”のデビュー三部作はデビュー四部作へとトランスファー!

 なぜ『インナー・スペイス』は“いわくつき”なのか? 『インナー・スペイス』の真実とは,チック・コリアファースト・リーダー作『TONES FOR JOAN’S BONES』(以下『トーンズ・フォー・ジョーンズ・ボーンズ』)の曲順を入れ替えた全4トラックとその未発表2トラックに,チック・コリアが作曲し,フルート奏者のヒューバート・ローズと共演した『LAWS CAUSE』収録の2トラックを加えたコンパイル盤。
 要は『RETURN TO FOREVER』の大ヒットにあやかり,幻のデビューCDトーンズ・フォー・ジョーンズ・ボーンズ』をも売ろうとした,チック・コリア人気を利用した“便乗商品”なのである。

 しか〜し,リターンズ! この“いわくつき”『インナー・スペイス』の演奏が凄いのだ。管理人なんかは一発でKOされてしまった。チック・コリア,凄すぎ〜!
 ズバリ『インナー・スペイス』におけるチック・コリアが“知的”すぎる。雰囲気としては,新主流派をベースにフリージャズ的なアプローチの,真に唯一無二なジャズクインテット。熱い演奏なのに“COOL”なのだ。“斬新な風”が終始吹きまくっているのだ。爽やかで,瑞々しく,力強い演奏。賛辞の言葉が並ぶしかない。

INNER SPACE-2 “いわくつき”の『インナー・スペイス』ですが,チック・コリアのフォロワーであれば,毛嫌いせずに,一聴することをお奨めします。
 気持ちは分かります。事実,管理人も内容への期待というよりも「紙ジャケットSHM−CD」に惹かれて「コレクターズ・アイテム」として数年前に購入した口だからです。
 でもでも,これが40年以上前の演奏とはとても思えないくらい,新鮮なチック・コリア流のクインテットに大満足〜。絶対に後悔させません。

 というか『インナー・スペイス』を聴かずして,デビュー直後のチック・コリアについて語ってもらいたくはないのです。この理解があれば「御三家」である,キース・ジャレットハービー・ハンコックとの評価の比較にも影響があるはずです。キッパリ。

 若き日のジョー・ファレルウディ・ショウスティーブ・スワロウジョー・チェンバースヒューバート・ローズロン・カータークラディ・テイトカール・ポーターの演奏も聴けますし,あの名曲【WINDOWS】の再演も聴けますから〜。

 ここまで無理でも最後に喰い付け! 【TRIO FOR FLUTE,BASSOON AND PIANO】では,チック・コリアのバックボーンである「ジュリアード音楽院」が絶対に感じられますよっ。

  01. STRAIGHT UP AND DOWN
  02. THIS IS NEW
  03. TONES FOR JOAN'S BONES
  04. LITHA
  05. INNER SPACE
  06. WINDOWS
  07. GUIJIRA
  08. TRIO FOR FLUTE, BASSOON AND PIANO

(アトランティック・ジャズ/ATLANTIC JAZZ 1973年発売/WPCR-13194)
(紙ジャケット仕様)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/大村幸則)

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チック・コリア〜ゲイリー・バートン / クリスタル・サイレンス5

CRYSTAL SILENCE-1 ジャズフュージョンの既成概念を覆した『ナウ・ヒー・シングス・ナウ・ヒー・ソブス』〜『リターン・トゥ・フォーエヴァー』に続く,チック・コリア“衝撃”の3連発の締めは『CRYSTAL SILENCE』(以下『クリスタル・サイレンス』)。

 この3連発の中でも,ピアノ・トリオの革新作『ナウ・ヒー・シングス・ナウ・ヒー・ソブス』とフュージョンの革新作『リターン・トゥ・フォーエヴァー』と異なり“新規開拓”の『クリスタル・サイレンス』が,以後のジャズフュージョン・シーンへ及ぼした影響は計り知れない。

 互いの音が被らないように注意しつつ,フロントとバッキングを交互に務めるデュエットというフォーマットは難度が高い。互いが互いを引き立て合いながらも,臨機応変なアドリブを繰り出さなければならない。2人の音楽性とテクニックが露わになるデュエットというフォーマットは敷居が高い。
 しかし『クリスタル・サイレンス』には,そのような難しさを微塵も感じない。いとも簡単に演奏しているように聞こえてしまう。

 チック・コリアピアノゲイリー・バートンヴィヴラフォンによるデュエットという,同じ打楽器にして鉄弦と鉄琴の異なる響きを活かした「2人だけの感覚」の調和を第一に音造りがなされている。ここが“COOL”であり“HOT”なデュエットの“伝統芸能”たる所以であろう。

 『クリスタル・サイレンス』は,自然界に存在した天然物の音楽ではない。マンフレート・アイヒャーがスタジオで発見した,最高の組み合わせの「人工物」であり「化合物」である。
 「人工物」であり「化合物」である『クリスタル・サイレンス』とは,時に水晶のように輝く音楽であり,時に雪の結晶のようにきらめく音楽である。ひたすら透明で純度の高い“芸術音楽”なのである。

 マンフレート・アイヒャー以外の一体誰がチック・コリアゲイリー・バートンによる「独特の化学反応」を予想できたであろうか? 恐らく,当の本人,チック・コリアゲイリー・バートンでさえ予想だに出来なかった組み合わせなのであろう。

 『クリスタル・サイレンス』は,チック・コリアゲイリー・バートンの組み合わせだから成立する「ケミストリー中のケミストリー」。
 他の追随を許さない「青い炎」の美しさへと変化している。ECMの特徴である豊かな残響音に,遠く北欧の地まで連れ去られた思いが去来する。

 管理人にとって『クリスタル・サイレンス』を聴くという行為は,音楽から離れ,新鮮な空気を深呼吸しているようなものである。『クリスタル・サイレンス』が流れてくると,体感温度さえ下がったように感じてしまう。ハイ・テンションとリラックスのウォームアップとクールダウン。実にすがすがしい音楽なのである。

CRYSTAL SILENCE-2 ただし『クリスタル・サイレンス』について忘れてはならないのは,マンフレート・アイヒャーは“芸術音楽”という趣味だけではなく“商業音楽”としても両立する「化学実験」を行なったという事実。

 『リターン・トゥ・フォーエヴァー』の大ヒットゆえの【CRYSTAL SILENCE】【WHAT GAME SHALL WE PLAY TODAY】【CHILDREN’S SONG】の選曲であろう。だってだってこの選曲なら絶対に聴きたくなるんだもん!?

 “商業音楽”としてのチック・コリアゲイリー・バートンの組み合わせが産み落とす副作用。それは重度の中毒性である。これってメントールのような爽やかさ? もはやうだるような暑さには『クリスタル・サイレンス』なしでは生活できない管理人がいる。

 そうして『クリスタル・サイレンス』の続編である『デュエット』『イン・コンサート』『ネイティヴ・センス』『ニュー・クリスタル・サイレンス』『ホット・ハウス』を片っ端から手に取るようになる…。
 『ライク・マインズ』と『ランデヴー・イン・ニューヨーク』も待ち構えている…。
 マンフレート・アイヒャーは確信犯である…。

  01. SENOR MOUSE
  02. ARISE, HER EYES
  03. I'M YOUR PAL
  04. DESERT AIR
  05. CRYSTAL SILENCE
  06. FALLING GRACE
  07. FEELINGS AND THINGS
  08. CHILDREN'S SONG
  09. WHAT GAME SHALL WE PLAY TODAY

(ポリドール/POLYDOR 1973年発売/POCJ-2011)
(ライナーノーツ/久保田高司)

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チック・コリア / ナウ・ヒー・シングス・ナウ・ヒー・ソブス5

NOW HE SINGS, NOW HE SOBS-1 『RETURN TO FOREVER』で「フュージョンの扉」を抉じ開けたことで名高いチック・コリア
 しかしこちらは『RETURN TO FOREVER』程,名が通ってはいないが,その衝撃たるもの『RETURN TO FOREVER』を超えている。

 そう。チック・コリアは『RETURN TO FOREVER』のわずか4年前に『NOW HE SINGS,NOW HE SOBS』(以下『ナウ・ヒー・シングス・ナウ・ヒー・ソブス』)で「ジャズ・ピアノの新しい扉」を抉じ開けていたのだ。

 『ナウ・ヒー・シングス・ナウ・ヒー・ソブス』の“斬新な”ジャズ・ピアノたるや,2014年の今の耳にも新しく響く,これぞモダン・ジャズ・ピアノの“革新性”!
 とても60年代の発想とは思えない“尖がった”ジャズ・ピアノが真に荒々しい。それでいて全編を支配する壮大なコンセプション。隙のない完璧な演奏にただただ圧倒されてしまう。

 チック・コリアが奏でる,乾いた無機質な現代音楽的要素のジャズ・ピアノ,は過去に前例がなかった。チック・コリアが「ジャズ・ピアノの新しい流れ」を作り出したのだ。

 ベースミロスラフ・ヴィトウスドラムロイ・ヘインズとの“研ぎ澄まされた会話”は,フリー・ジャズにも通ずる激しいタッチと無機質的なフレージングのアドリブ・ラインがメロディアスすぎる。モーダルでメカニカルなフレーズの洪水は,本当に鳥肌が立つほどに素晴らしい。

 『ナウ・ヒー・シングス・ナウ・ヒー・ソブス』のタイトル通り,チック・コリアジャズ・ピアノが「歌い,鳴いている」。チック・コリアの個性であるエキゾチックな叙情性が“隠し味的”に繰り返し登場している。
 「やっぱり,チック・コリアだよなぁ」的な安心感が感じられるのも事実である。

NOW HE SINGS, NOW HE SOBS-2 管理人はチック・コリアの“天才”を認めつつも,チック・コリアの問題作が発売される度に,正直“冷めてしまう”瞬間が多々あるのだが,それでもチック・コリアから離れられないばかりか“一目置いてしまう”のは『ナウ・ヒー・シングス・ナウ・ヒー・ソブス』の存在が大きい。
 チック・コリアが本気を出せばトンデモナイモノがいつでも作れるに違いない。多少の問題作にも耳を傾けざるを得ない。決して侮ってはならないのだ。

 ズバリ,超・名盤ナウ・ヒー・シングス・ナウ・ヒー・ソブス』こそ“ジャズ・ピアノの最高峰”の1枚である。
 『ナウ・ヒー・シングス・ナウ・ヒー・ソブス』の衝撃は『RETURN TO FOREVER』の衝撃を超えている。

PS 『RETURN TO FOREVER』繋がりで語ると【STEPS−WHAT WAS】が【SOMETIME AGO】の原型であろう。

  01. STEPS-WHAT WAS
  02. MATRIX
  03. NOW HE SINGS-NOW HE SOBS
  04. NOW HE BEATS THE DRUM-NOW HE STOPS
  05. THE LAW OF FALLING AND CATCHING UP

(ソリッドステート/SOLID STATE 1968年発売/TOCJ-5959)
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