アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

CD批評:エリック・ドルフィー

エリック・ドルフィー&ハービー・ハンコック / 伝説のイリノイ・コンサート4

THE ILLINOIS CONCERT-1 『THE ILLINIOIS CONCERT』(以下『伝説のイリノイ・コンサート』)は,あの“発掘王”マイケル・カスクーナが掘り当てた,あのエリック・ドルフィーとあのハービー・ハンコックとの『伝説のコンサート』音源である。

 録音当時の最重要人物=エリック・ドルフィーと新世代の重要人物=ハービー・ハンコックとの「幻の共演ライブ盤」ゆえ,発売前から情報が洩れては,その演奏内容が評判になったものだ。
 何故それほど評判になったのかは,冒頭の20分を超える【朝日のようにさわやかに】を聴けば納得&理解できる。

 【朝日のようにさわやかに】は,エリック・ドルフィーバスクラリネットに内臓をひっくり返されて,ハービー・ハンコックの端正なピアノで我に返る。あたかもジェットコースターに乗せられているような演奏である。
 エリック・ドルフィーの情念とハービー・ハンコックの理性の対比が名演を生んでいる。

 エリック・ドルフィーハービー・ハンコックの【朝日のようにさわやかに】には,あの美しいテーマは出て来ない。
 ハービー・ハンコックのきめ細かく繰り返されるバッキングに乗って,いつもよりフレーズとフレーズの間を大きめに空け,思索的なプレイを繰り広げている。

 エリック・ドルフィーが繰り出す短いフレージングは,その瞬間&瞬間においては素っ頓狂に聴こえるかもしれない。しかし,これらの集積が時間の経過とともに少しずつ意味をなしてゆくのだ。
 将棋で語れば,何十手も前に打った歩兵が,突然効いてくるかのように,エリック・ドルフィーは長尺演奏のフォーマットを最大限に活かし,未来への布石を一手,一手着実に打ち込むかのようなアドリブを積み重ねている。素晴らしい。

 そうして迎えたクライマックスが,エリック・ドルフィー渾身の“馬のいななき”と称されるバスクラリネットのカデンツァである。こんなにもスリルを覚える演奏にはそう滅多にお耳にかかれない。
 ここにエリック・ドルフィーハービー・ハンコックの共演の意味と価値を聴いている。エリック・ドルフィーハービー・ハンコックが真剣に自ら主張する音でぶつかり合って調和している。

THE ILLINOIS CONCERT-2 以前にも書いたが,エリック・ドルフィーは傑出したソロイストであるし,セッションに参加すれば「道場破り」のような演奏をする。
 一方,エリック・ドルフィーは自分のリーダー・バンドの演奏では,バックには王道の演奏を楽しんでもらい,自分はそんなバンドとの不協和音を1人楽しんでいるように思える節がある。
 そして不協和音を残したまま,意思の疎通を図ったハーモニーを全員で追求していく。

 『伝説のイリノイ・コンサート』でのハービー・ハンコックとの掛け合いを聴いてその思いを強くする。
 ハービー・ハンコックが響かせるモードフリーが同居したようなピアノのバッキングが作ったスペースを利用し,エリック・ドルフィーが時に不協和音を響かせる。敢えての歪みが実にエリック・ドルフィーらしい。

  01. SOFTLY AS IN A MORNING SUNRISE
  02. SOMETHING SWEET, SOMETHING TENDER
  03. GOD BLESS THE CHILD
  04. SOUTH STREET EXIT
  05. IRON MAN
  06. RED PLANET
  07. G.W.

(ブルーノート/BLUE NOTE 1999年発売/TOCJ-66066)
(ライナーノーツ/ウラジミール・シモスコ,ロン・カーター,藤本史昭)

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ドナルド・ハリソン & テレンス・ブランチャード / エリック・ドルフィー & ブッカー・リトル・リメンバード・ライブ・アット・スイート・ベイジル4

ERIC DOLPHY & BOOKER LITTLE REMEMBERED LIVE AT SWEET BASIL-1 『ERIC DOLPHY & BOOKER LITTLE REMEMBERD LIVE AT SWEET BASIL』(以下『エリック・ドルフィー & ブッカー・リトル・リメンバード・ライブ・アット・スイート・ベイジル』)とは,エリック・ドルフィーブッカー・リトルの双頭コンボの現代版の再演ライブ集である。

 場所はスイート・ベイジルでのライブ。メンバーはアルトサックスバスクラリネットドナルド・ハリソントランペットテレンス・ブランチャードピアノマル・ウォルドロンベースリチャード・デイビスドラムエド・ブラックウェルである。

 そう。“本家”エリック・ドルフィーブッカー・リトルの双頭コンボのリズム・セクションそのまんまに,新進気鋭のドナルド・ハリソンエリック・ドルフィー役を,トランペットテレンス・ブランチャードブッカー・リトル役を務めたリメイク集なのである。

 『アット・ザ・ファイブ・スポット』シリーズの25年振りのリメイク・ライブなのだから,単なる完コピでも単なる焼き直しでもあろうはずがない。
 しかし,管理人は『エリック・ドルフィー & ブッカー・リトル・リメンバード・ライブ・アット・スイート・ベイジル』の出来上がりには満足した。よくある有名映画のハイウッドのリメイク集のような「中身空っぽ」ではないからだ。

 『エリック・ドルフィー & ブッカー・リトル・リメンバード・ライブ・アット・スイート・ベイジル』におけるドナルド・ハリソンテレンス・ブランチャードエリック・ドルフィーブッカー・リトルの「意思」を受け継ぎつつも,自分なりのアプローチで「聴かせる」演奏をしている。

 エリック・ドルフィーの独特の音圧,独特のスピード感,独特の高低差を用いながらも,ドナルド・ハリソンは25年後のエリック・ドルフィーを想定しながら内容のあるアドリブを吹いていく。
 ブッカー・リトルの感情に流されず,それでいて興奮を忘れない語法を用いながらも,テレンス・ブランチャードが25年後のブッカー・リトルを想定しながら内容のあるアドリブを吹いていく。
 あのエリック・ドルフィーの役回りとあのブッカー・リトルの役回りの大役を見事に務め上げている。

 ドナルド・ハリソンテレンス・ブランチャードがプレッシャーなど微塵も感じさせない快演を披露できたのにはわけがある。それこそがピアノマル・ウォルドロンベースリチャード・デイビスドラムエド・ブラックウェルのリズム隊の存在である。

 管理人はこれまでエリック・ドルフィーブッカー・リトルの双頭コンボの音源は,エリック・ドルフィーアルトサックスバスクラリネットブッカー・リトルトランペットばかりを聴いていた自負があった。
 しかしそれは事実ではなかった。アルトサックストランペットを集中して聴いていた“つもり”であった。

ERIC DOLPHY & BOOKER LITTLE REMEMBERED LIVE AT SWEET BASIL-2 『エリック・ドルフィー & ブッカー・リトル・リメンバード・ライブ・アット・スイート・ベイジル』を聴いて始めて『アット・ザ・ファイブ・スポット』シリーズは,このリズム隊の存在なくしては生まれなかった名演であったことが分かった。

 そう。『エリック・ドルフィー & ブッカー・リトル・リメンバード・ライブ・アット・スイート・ベイジル』に感じる『アット・ザ・ファイブ・スポット』シリーズの雰囲気こそが,このリズム隊の雰囲気であった。

 どんなにエリック・ドルフィーの演奏が熱く革新的で,ブッカー・リトルの演奏が叙情性豊かで時代の半歩先を行ったものであろうとも,それを引き立てるマル・ウォルドロンの和音の反復を繰り返す重たいピアノリチャード・デイビスの攻撃的なベースエド・ブラックウェルのパーカッシヴで拡散的なドラムがあればこそ!

 『エリック・ドルフィー & ブッカー・リトル・リメンバード・ライブ・アット・スイート・ベイジル』には,追憶と復活,確認と伝承,今日と明日について語っている。
 過去を振り返ると同時に未来を見つめてきた,マル・ウォルドロンリチャード・デイビスエド・ブラックウェルの25年間の音楽が詰まっている。

  01. THE PROPHET
  02. AGGRESSION
  03. BOOKER'S WALTZ

(パドルホイール/PADDLE WHEEL 1987年発売/K32Y 6145)
(ライナーノーツ/アイラ・ギトラー)

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エリック・ドルフィー / メモリアル・アルバム5

MEMORIAL ALBUM-1 『MEMORIAL ALBUM』(以下『メモリアル・アルバム』)が,なぜ『ERIC DOLPHY AT THE FIVE SPOT,VOL.3』のタイトルにならなかったのかはヤボなので説明しないが,正真正銘『アット・ザ・ファイブ・スポット』シリーズの第3弾として崇められるべき名盤である。

 エリック・ドルフィーブッカー・リトルの双頭コンボの爆発力は,長尺2曲の『メモリアル・アルバム』でこそ発揮される。
 エリック・ドルフィーブッカー・リトルのアブストラクトでアバンギャルドで自由度の高い“双頭ブロー”が最高に素晴らしい。

 とは言え,アルトサックスフルートバスクラリネットエリック・ドルフィートランペットブッカー・リトルピアノマル・ウォルドロンベースリチャード・デイビスドラムエド・ブラックウェルのレギュラー・カルテットはファイブ・スポットの時点では未だ未完成。

 『メモリアル・アルバム』というか『アット・ザ・ファイブ・スポット』シリーズは「海の物とも山の物ともつかない」「伸るか反るか」の一発勝負。
 エリック・ドルフィーブッカー・リトルの双頭コンボが,何かをつかもうと必死にもがく一途な気持ちが感じられるが,その一方で未完成ゆえのもろさ,誰かがちょっとバランスを崩しただけで全体が崩壊してしまいそうな危うさが同居している。

 ただし,エリック・ドルフィーブッカー・リトルも,好きなように演奏しているようで実はバップのフォーマットを意識している。
 ズバリ,エリック・ドルフィーブッカー・リトルの双頭コンボの爆発力は,バップ・フォーマットの枠内という“縛り”があったからである。

 例えば,クラシックの演奏家は皆同じ楽譜で演奏したとしても,同じ演奏のはならない。作曲家はソナタ形式という決まりごとの中でもどこまでも自由を膨らませられる。枠の大きさとその中でやれることの自由度とは比例しない。決まりごとがあると自由にはできないということではない。
 そう。エリック・ドルフィーブッカー・リトルの双頭コンボは,外部から全く新しいものを創造したのではなく,既存のフォーマットの内部に残された可能性を解放するコンボなのである。

MEMORIAL ALBUM-2 普段はエリック・ドルフィーブッカー・リトルばかりを追いかけている管理人であるが【ナンバー・エイト】の主役は,ピアノマル・ウォルドロンドラムエド・ブラックウェルである。だから『メモリアル・アルバム』!

 マル・ウォルドロンの打楽器としてのピアノの連打に先導されたエド・ブラックウェルドラム・ソロ
 曲中でフィーチャリングされる長尺のドラム・ソロだが,曲の雰囲気をまったく壊すことなく,演奏の中に必然的に溶け込んでいるように感じるのは,マル・ウォルドロンのリフっぽいバッキングが脳に染み付いている状態の中で展開されるドラム・ソロだからだろう。

 実際にはピアノの音は鳴っていないにも関わらず,ピアノのバッキングにあわせてドラムが叩かれているかのような錯覚に陥る。荒っぽくも腰の高いドラミングがアブストラクトでアバンギャルドなエリック・ドルフィーブッカー・リトルを煽っていく。

  01. NUMBER EIGHT (POTSA LOTSA)
  02. BOOKER'S WALTZ

(プレスティッジ/PRESTIGE 1965年発売/VICJ-60012)
(ライナーノーツ/ロバート・レヴィン,青木和富)

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エリック・ドルフィー / ラスト・デイト5

LAST DATE-1 長らくエリック・ドルフィーの「遺作」として知られた『LAST DATE』(以下『ラスト・デイト』)を管理人は「遺作」だとは思っていない。

 それって遅れてやってきた『LAST RECORDING』に遺作の立場を乗っ取られたという意味ではなくて『ラスト・デイト』の演奏内容が素晴らしすぎるからである。
 『ラスト・デイト』で最高に躍動しているエリック・ドルフィーが,死の病魔に侵されているなど微塵も感じさせない,熱のこもった演奏が繰り広げられている。
 (改変できるものならば)アルバム・タイトルは『ラスト・デイト』ではなく『ファースト・デイト』の方が似合っている。

 そう。『ラスト・デイト』のエリック・ドルフィーアルトサックスが,フルートが,バスクラリネットには「生命力が漲っている」。
 こちらは世評も正しく,エリック・ドルフィーの吹き上げた音が翼を着けて,今にも空中に羽ばたき舞い回るように感じられる。
 ん? 例の死の直前の輝きなのかっ? あれれっ? 矛盾?

 『ラスト・デイト』のエリック・ドルフィーが特別なのは,エリック・ドルフィー1人が突出したセッションではなく,エリック・ドルフィーが生涯恵まれることのなかった,エリック・ドルフィー・レギュラー・コンボの音になっていることが大きい。 
 『アット・ザ・ファイブ・スポット』がそうであるように,エリック・ドルフィーアドリブの人であると同時に,本当はセッションではなくコンボの方がハマル人だと思っている。

 『ラスト・デイト』のメンバーは,ワンホーンのエリック・ドルフィーピアノミッシャ・メンゲルベルクベースジャック・ショールスドラムハン・ベニンク
 そう。全員が名立たるヨーロピアン・ジャズの実力者であって,単なるサイドメンとしての参加ではないし『ラスト・デイト』でのテンションはエリック・ドルフィーとの共演に触発されてか,ヨーロピアンの白人のノリがエリック・ドルフィーの「軽いノリ」と絶妙なマッチングを聴かせてくれる。

 そんなお気に入りの自分のコンボをバックに従え(事実,エリック・ドルフィーはこのメンバーでコンボ結成の話を進めていた!)エリック・ドルフィーの奇抜なアドリブが大いに冴えわたる。
 一聴,調子っぱずれと聴こえてしまう特クネクネと飛躍する異なジャンピング・フレージングが理知的に構築されていく。長尺のソロを聴いても,定型を避けよう,常に違う地平へ,違う次元へ向かおうとする気概が伝わってくる。

LAST DATE-2 伝統的なコード進行を崩すことなく即興の新しい可能性を探求する『ラスト・デイト』の演奏内容に「遺作」の言葉は似合わない。
 『ラスト・デイト』のラストに「音楽は演奏と共に空に消え去ってしまい,2度とそれを取り戻すことはできない」と語るエリック・ドルフィーの肉声が収録されている。

 しかし空に消え去ってしまったのはエリック・ドルフィーの方であって,エリック・ドルフィーの音楽は,永遠に耳を傾ける者の心を揺さぶり続けている。
 音楽の99%はライブ演奏などメディアに記録されることなく消え去ってしまう儚さを指して語られたものだろうが,ほんの1フレーズであっても最高のアドリブ芸術は人々の心の書き板に刻まれ色褪せることはない。
 エリック・ドルフィーの最高のアドリブは永遠に消え去ることはない。

  01. HAT AND BEARD
  02. SOMETHING SWEET, SOMETHING TENDER
  03. GAZZELLONI
  04. OUT TO LUNCH
  05. STRAIGHT UP AND DOWN

(フォンタナ/FONTANA 1964年発売/UCCU-5034)
(ライナーノーツ/成田正,児山紀芳)

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エリック・ドルフィー / アウト・トゥ・ランチ4

OUT TO LUNCH-1 エリック・ドルフィー唯一のブルーノート盤『OUT TO LUNCH』(以下『アウト・トゥ・ランチ』)を世評とは異なり管理人は評価していない。

 こう書くと駄盤だと思われるといけない。『アウト・トゥ・ランチ』の演奏は素晴らしいし,リハーサルをこなしたセクステット編成が細部までが練り上げられている。ブルーノートらしい音だと思う。
 しかし,そのカチッとした構成ゆえに音楽のレベルが高いのを認めるとしても,聴いて楽しいとは思えない。だから好きとは公言できない。

 管理人はエリック・ドルフィーはメロディーの人ではなくアドリブの人だと思っている。『アウト・トゥ・ランチ』のアドリブはそれほどではない。アドリブなら『アット・ザ・ファイブ・スポット』を聴くべきだろう。

 要するに『アウト・トゥ・ランチ』は,美味しいところがなくなった芸術作品であり,エリック・ドルフィーが「こじんまりとまとまっている」。アブノーマルな「お行儀の良さ」が鼻につく。
 そのせいか『アウト・トゥ・ランチ』でのエリック・ドルフィーって,結構,理知的なアドリブを吹いている。単なる激情の人ではなかったのだ。

 ゆえに『アウト・トゥ・ランチ』でのエリック・ドルフィーの演奏は新主流派のクインテットに迎えられた客演のようだ。サイドメン的な異色のアルトサックスが一音鳴れば,新主流派が“ひっくり返る”感じがする。

 暴言を吐けば『アウト・トゥ・ランチ』の音楽性の主役はボビー・ハッチャーソンの硬質で幾何学的なヴァイブであろう。ボビー・ハッチャーソン「世紀の大名演」の1枚として推薦したい。

OUT TO LUNCH-2 管理人の結論。『アウト・トゥ・ランチ批評

 『アウト・トゥ・ランチ』は,アウトローのエリック・ドルフィー最大の優良盤が裏目のアウトロー。
 まったく隙のない内容なのに,メロディーどころかハーモニー,リズムに至るまでその全てがことごとくアウトしまくりで,聴いてるこっちが吐きそうになるくらいのアブストラクト感。

 フリージャズ〜新主流派の名手たちが,こぞってエリック・ドルフィーの特異な音を共鳴させている。なんだか嗚咽が聴こえてくる気分になる。

  01. HAT AND BEARD
  02. SOMETHING SWEET, SOMETHING TENDER
  03. GAZZELLONI
  04. OUT TO LUNCH
  05. STRAIGHT UP AND DOWN

(ブルーノート/BLUE NOTE 1964年発売/UCCQ-9228)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/A.B.スペルマン,原田和典)

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エリック・ドルフィー / アット・ザ・ファイブ・スポット Vol.25

ERIC DOLPHY AT THE FIVE SPOT, VOL.2-1 エリック・ドルフィーのメインの楽器はアルトサックスなのだが,世間的にはフルート奏者,あるいはバスクラリネット奏者のイメージが強いように感じる。

 そんなフルート奏者のエリック・ドルフィーバスクラリネット奏者のエリック・ドルフィーの強烈なイメージ形成は『ERIC DOLPHY AT THE FIVE SPOT,VOL.2』(以下『アット・ザ・ファイブ・スポット VOL.2』)によるところが大きい。

 『アット・ザ・ファイブ・スポット VOL.2』でのエリック・ドルフィーは本職のアルトサックスを吹いていない。
 【アグレッション】ではバスクラリネットを吹き【ライク・サム・イン・ラヴ】ではフルートを吹いている。このアルトサックスからの持ち替えで名盤を作ったエリック・ドルフィーの凄さが伝わるだろうか?

 エリック・ドルフィーの吹くフルートバスクラリネットがまぁ凄い。怪物の登場のようである。ドスンと重いフレージングが軽やかに流れ続ける。何度聴き返しても本職のフルート奏者,バスクラリネット奏者以上の演奏力に驚愕してしまう。

 いいや,やっぱり聴き返すと,フルートバスクラリネットの細かな表現力はそれほどでもない。ただし,エリック・ドルフィーの伝える力,発信しているメッセージがメガトン級に重いのだ。

 どうしても耳から頭から離れないエリック・ドルフィーの驚異のフレージング。管理人はエリック・ドルフィーの吹くフルートバスクラリネットの奇抜なフレージングがどうやっても忘れられない。

 【アグレッション】の何分何秒とか【ライク・サム・イン・ラヴ】の何分何秒と言うわけではない。『アット・ザ・ファイブ・スポット VOL.2』はイメージとしてミニマル・ミュージックっぽいのだ。

 そう。エリック・ドルフィーは1曲1曲を大きなキャンバスに見立てて,そこへ木管楽器を筆として画を描いていくような芸術家に思う。エリック・ドルフィーの筆遣いは早い。瞬間的なタンギングが斬れ斬れで,サッササッサと筆を運んでいく。
 でも出来上がりを見てみれば,完璧な1枚の画が書き上げられている。右と左。上と下。前と後ろが非対称のようで調和しているのだった。常人には決してできない芸当であろう。

ERIC DOLPHY AT THE FIVE SPOT, VOL.2-2 管理人の結論。『アット・ザ・ファイブ・スポット VOL.2批評

 『アット・ザ・ファイブ・スポットVOL.2』のエリック・ドルフィーの魅力は,持ち替えのエリック・ドルフィーである。
 つまりアルトサックス奏者としては見せることのできなかった別の一面が解き放たれている。そしてそれこそが実は本当のエリック・ドルフィーなのではないか?と思わせるくらいに重く軽く強烈。決して脳裏から離れることのない衝撃波を放っている。

 エリック・ドルフィーアルトサックス奏者である。しかし,エリック・ドルフィーという名前を聞いて鮮明に思い浮かべてしまうのはフルート奏者のエリック・ドルフィーの方であり,バスクラリネット奏者のエリック・ドルフィーの方なのである。

  01. AGGRESSION
  02. LIKE SOMEONE IN LOVE

(プレスティッジ/PRESTIGE 1961年発売/VICJ-23512)
(ライナーノーツ/ロバート・レヴィン,悠雅彦)

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エリック・ドルフィー / アット・ザ・ファイブ・スポット Vol.1 / FIRE WALTZ5

 『ERIC DOLPHY AT THE FIVE SPOT,VOL.1』の1曲目は【FIRE WALTZ】(以下【ファイアー・ワルツ】)。

 
 歴史的名演として名高い【ファイアー・ワルツ】は,エリック・ドルフィーの“神業”について語られることが多いが,ブッカー・リトルマル・ウォルドロンアドリブも負けず劣らず超強烈!
 3人の“果たし合い”的なアドリブの応酬合戦にとりこにされてしまう。

 【ファイアー・ワルツ】の代名詞であるエリック・ドルフィーの“驚愕の”アドリブは,終始全速力! 一瞬たりとも聴き逃せないがマニアとしては2分38秒から41秒の“夢の”フレーズを推す!

 5分17秒からのブッカー・リトルの白熱のトランペットや,9分29秒からのマル・ウォルドロンの力業のピアノは【ファイアー・ワルツ】以外では,なかなかお耳にかかれないのでは? そういう意味でも真に歴史的な名演であろう。

 3人が最高のアドリブを繰り出すと,こうも激しいジャズが完成するものなのか? NO! 微妙な配合がなければ,こうはいかない。この“絶妙のシャッフル具合”を奇跡と呼ぼう!

ERIC DOLPHY : Alto Saxophone
BOOKER LITTLE : Trumpet
MAL WALDRON : Piano
RICHARD DAVIS : Bass
ED BLACKWELL : Drums

エリック・ドルフィー / アット・ザ・ファイブ・スポット Vol.1 / THE PROPHET4

 『ERIC DOLPHY AT THE FIVE SPOT,VOL.1』の3曲目は【THE PROPHET】(以下【ザ・プロフェット】)。


 【ザ・プロフェット】は,テーマの異様さにアドリブの連発が加わって,初めてジャズに接する人にはお奨めできない。難解さゆえ,拒絶反応を示すかも知れない。
 しかしひとたびジャズの魅力に“取り憑かれた”人たちには,心おきなく推薦できる。そんな“マニア向け”のトラックである。

 【ザ・プロフェット】の聴き所は,文句なしにエリック・ドルフィーアドリブである。ここでのアルトソロは約7分間のロングトーン。じっくりと堪能させてくれる。
 管理人のお気に入りは5分24秒から6分41秒。ちょっぴり長めの紹介となったが,これでも頑張って絞り込んでみたつもり(3分の中程あたりからはずっと聴き所が続いている)。

 「初心者NG」と言うレッテルを貼っておきながらあれだが,エリック・ドルフィー独特の世界を掴もうと思うなら,この部分を繰り返し聴くと良いだろう。
 “本物のジャズ”が何足るかが音で理解できるはずである。

ERIC DOLPHY : Alto Saxophone
BOOKER LITTLE : Trumpet
MAL WALDRON : Piano
RICHARD DAVIS : Bass
ED BLACKWELL : Drums

エリック・ドルフィー / アット・ザ・ファイブ・スポット Vol.1 / BEE VAMP4

 『ERIC DOLPHY AT THE FIVE SPOT,VOL.1』の2曲目は【BEE VAMP】(以下【ビー・バンプ】)。


 【ビー・バンプ】で,エリック・ドルフィーバス・クラリネットを吹いているが,アルト・サックスと何ら遜色なく吹きこなしている。ゆえに楽器の違いではなく,エリック・ドルフィー特有のフレーズを際立たせる結果となっている点が興味深い。

 が,ここではせっかくなので,バス・クラリネットの特長を生かした“バスクラ吹き”としてのエリック・ドルフィーの“味”を楽しんでほしい。
 特に4分7秒から4分49秒までの“音の高低差”は,エリック・ドルフィーの狙い通り,アルト・サックスでは出せないシロモノ。バス・クラリネットでの連続大ブローは“圧巻”である。

 さて紹介が遅くなってしまったが,このクインテットはエリック・ドルフィーの初めての自己名義,エリック・ドルフィー=ブッカー・リトル・クインテットによるものである。

 見方を変えれば『ERIC DOLPHY AT THE FIVE SPOT』は,もう一人のリーダー,ブッカー・リトルを聴くためにある,と言い切っても何ら差し支えない。
 それで【ビー・バンプ】は,ブッカー・リトルの作曲でもあり,彼のアドリブに注目することで,この夜の演奏全体への理解も深まると言うものだ。

 ブッカー・リトルは,ブロー炸裂タイプのトランペッターではなく,マイナー調の“表現力”が持ち味のトランペッターである。
 そんなブッカー・リトルの魅力が“溢れ出る”前半のトランペットソロが【ビー・バンプ】のハイライトだ!

ERIC DOLPHY : Bass Clarinet
BOOKER LITTLE : Trumpet
MAL WALDRON : Piano
RICHARD DAVIS : Bass
ED BLACKWELL : Drums

エリック・ドルフィー / アット・ザ・ファイブ・スポット Vol.15

ERIC DOLPHY AT THE FIVE SPOT, VOL.1-1 ジャズは音楽,ジャズは芸術であるのだから,ジャズにおいて“奇抜”という評価はナンセンスだ。
 しかしナンセンスを承知の上で宣言する。エリック・ドルフィーは“奇抜”である。

 これは何もエリック・ドルフィーの為すことやること,その手法,アプローチの仕方についての評価ではない。エリック・ドルフィーのフレーズである。フレーズが“ただものではない”のである。

 初めてエリック・ドルフィーソロを耳にした時に感じた奇抜さは忘れられない。ほんの数秒間でエリック・ドルフィー独特の世界を構築してしまう。起承転結の読めないアドリブの展開力に,一気に持っていかれてしまった。

 こう書くと,エリック・ドルフィーフリージャズの旗印とする信奉者に肩入れしているように受け取られかねないので,ここでハッキリと否定しておく。
 エリック・ドルフィージョン・コルトレーンオーネット・コールマンとも共演したし,確かに前衛の影響は受けただろう。しかし管理人に言わせれば“ハード・バップ”や“モード”の枠内での変化と解釈すべきだ。よってエリック・ドルフィーフリーと定義することには反対である。

 おっと,横路にそれてしまって申し訳ない。とどのつまりエリック・ドルフィーのフレーズは時代を超越した“オンリー・ワン”( by SMAP )だった。
 実際,エリック・ドルフィーの死後,彼を真似した“ドルフィー派”が多数台頭したものだが,ビッグになった“ドルフィー派”を管理人は知らない。
 そう。エリック・ドルフィーのオリジナリティは真似しようにも真似できないもの,要は“奇抜”なのだ。

 そのエリック・ドルフィーの“奇抜さ”を最高に楽しめるのが『ERIC DOLPHY AT THE FIVE SPOT』(以下『アット・ザ・ファイブ・スポット』)シリーズである。
 このシリーズは正確には4枚の組みCDなのだが『アット・ザ・ファイブ・スポット』を名乗るのは『アット・ザ・ファイブ・スポット VOL.1』と『アット・ザ・ファイブ・スポット VOL.2』の2枚である。

ERIC DOLPHY AT THE FIVE SPOT, VOL.1-2 管理人の結論。『アット・ザ・ファイブ・スポット VOL.1批評

 『アット・ザ・ファイブ・スポットVOL.1』には3トラック収められているが,ソロの凄みはもとより,メンバー間のインタープレイとは呼べない“何か”,しかしそうとしか呼びようがない“何か”がスパークして止まらない。
 この得体の知れない“何か”こそが,モダン・ジャズ史における1つの金字塔だと言わざるを得ない。

 『アット・ザ・ファイブ・スポット VOL.1』も真の凄さは数回聴いたぐらいでは分からない。まずはエリック・ドルフィーの“奇抜さ”が耳から抜けるまで聴き込むことだ。
 あるレベルを突き抜けたところにジャズ・マニアだけが辿り着く最高の世界がある。繰り返し聴けば聴くほど“味”が出る,例のアレである。

  01. FIRE WALTZ
  02. BEE VAMP
  03. THE PROPHET

(プレスティッジ/PRESTIGE 1961年発売/VICJ-23511)
(ライナーノーツ/ジョー・ゴールドバーグ,悠雅彦)

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