アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

CD批評:マーカス・ミラー

マーカス・ミラー / シルヴァー・レイン / OUTRO DUCTION4


 『SILVER RAIN』の14曲目は【OUTRO DUCTION】(以下【アウトロ・ダクション】)。


 【アウトロ・ダクション】は【イントロ・ダクション】を上回る,マーカス・ミラーからの“誘い水”!
 『シルヴァー・レイン』の最後に,こんな“超絶チョッパー”を聴かされたら,身体が火照ってしょうがない。ゆえに【アウトロ・ダクション】は次回作へ【イントロ・ダクション】である。

 この全てはマーカス・ミラーの“仕掛け”である。
 10秒から20秒までの10秒間だけキーボードが鳴っている。これが【アウトロ・ダクション】の,アウトロではなくイントロで流れるのがミソ!
 通常ならば,後半でキーボードが乗っかり盛り上がるのがセオリーのはず。だが【アウトロ・ダクション】では,逆にそれまで暴れていたキーボードが脇へと捌けていく。必然的にチョッパー・ベースの“一人舞台”の完成である。

 リスナーの耳が“超絶チョッパー・ソロ”へと向けられたその時,すでにマーカス・ミラーはトップ・ギアで走行中。皆が感嘆するのも当然である。マーカス・ミラーの次回作が待ち遠しい。

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

MARCUS MILLER : Bass Guitar, Fender Rhodes, Keyboards, Beat Box, Udu, DJ Scratches

マーカス・ミラー / シルヴァー・レイン / SOPHISTICATED LADY5


 『SILVER RAIN』の12曲目は【SOPHISTICATED LADY】(以下【ソフィスティケイテッド・レディ】)。


 【ソフィスティケイテッド・レディ】のハイライトは,1分15秒から1分49秒までと3分36秒4分9秒までの“フレットレス・ベース”であろう。ここでのベース・プレイが何とも美しく,たまらなくいい。

 【ソフィスティケイテッド・レディ】は,マーカス・ミラーによる一人多重録音。原曲はデューク・エリントンの作であり,聞き覚えはあったが,すぐにそれとは分からなかった。
 全く別の曲に聴かせてくれたマーカス・ミラーの“アレンジ能力”にも脱帽である。

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

MARCUS MILLER : Bass Clarinet, Fretless Bass, Keyboards, Synth Strings

マーカス・ミラー / シルヴァー・レイン / POWER OF SOUL4


 『SILVER RAIN』の13曲目は【POWER OF SOUL】(以下【パワー・オブ・ソウル】)。


 【パワー・オブ・ソウル】は,ジミヘンの有名曲とのこと。恥ずかしながら管理人は,ジミヘンの【パワー・オブ・ソウル】を聞いたことがない。でもマーカス・ミラーの【パワー・オブ・ソウル】を聴いて,想像力がカキタテラレタ!
 ディーン・ブラウンギター・ソロは勿論,マーカス・ミラーチョッパー・パートもジミヘンが演ってたんだろうな。例えば,28秒から30秒までのメロディ・ラインと31秒から33秒までのベース・ライン。前半のメロディ・ラインは本来ギター・パートか? 間違えてててもいいの。独りで楽しんでいるんだもん。

 それにしても【パワー・オブ・ソウル】の完成度の高さには舌を巻いてしまう。
 3分29秒からのマーカス・ミラーベース・ソロが凄い! 流れるようなフレーズでガンガンに盛り上がる! 4分49秒から6分1秒までのディーン・ブラウンの“火を噴く”ギター・ソロも凄い! ジミヘンばりに弾こうと思えばいつでも弾ける実力者だが,普段は抑えめのギタリストが大プッシュ!
 でもそれでも,ここまで凄いベースギターが突出することがない。ブラスはソロもユニゾンもいいし,キーボードエフェクトが音の狭間に見事にハマッテイル。

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MARCUS MILLER : Bass Guitar
POOGIE BELL : Drums
DEAN BROWN : Guitar
BRUCE FLOWERS : Organ, Fender Rhodes, Bass Synth
PATCHES STEWART : Trumpet Solo
ROGER BYAM : Tenor Sax
MOCEAN WORKER : DJ Efxt
BERNARD WRIGHT : Additional Keyboards

マーカス・ミラー / シルヴァー・レイン / MAKE UP MY MIND4

アナログレコード

 『SILVER RAIN』の10曲目は【MAKE UP MY MIND】(以下【メイク・アップ・マイ・マインド】)。


 【メイク・アップ・マイ・マインド】は,マーカス・ミラー“お得意”のバス・クラリネットバラード! バス・クラリネットの美しい“しゃがれ声”だから表現できる情感が溢れ出している。

 全てはマーカス・ミラーの“計算通り”であろうが,録音時はそんなことも忘れて“バス・クラリネット・プレイヤー”としての大熱演! 果たしてマーカス・ミラーは,何をそして誰を,思い浮かべながら演奏したのだろうか…。

 ところで【メイク・アップ・マイ・マインド】のクレジットを見ると,マーカス・ミラーの楽器群の中に“アコースティック”ベース・ギターの文字が…。
 過去のCDライナーを読み返してみたが,恐らく初登場の「アコースティック・ベース」って,ウッド・ベースのこと? だとしたらビッグ・ニュースである。
 読者の皆さんで詳細をご存知の方は,是非ご一報を。レクチャーお願いできればうれしく思います。

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MARCUS MILLER : Bass Clarinet, Acoustic Bass Guitar, Fender Rhodes, Drums, Moog Synth, Woodwinds
GREGOIRE MARET : Harmonica


SILVER RAIN
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マーカス・ミラー / シルヴァー・レイン / GIRLS AND BOYS4

アナログレコード

 『SILVER RAIN』の11曲目は【GIRLS AND BOYS】(以下【ガールズ・アンド・ボーイズ】)。


 「ボーイズ・アンド・ガールズ」ではなく【ガールズ・アンド・ボーイズ】なのがミソ! そう。ガールズメイシー・グレイアンド・ボーイズマーカス・ミラー・スーパー・バンドの順番であって,よくある“フィーチャリング”とは趣きが異なる。

 管理人にとってメイシー・グレイは【ガールズ・アンド・ボーイズ】が初体験。最初に聞いた時には,子供の声? 楽器っぽい? 唯一無二の歌声に「女性版・アル・ジャロウ」をイメージした。
 1分47秒から1分58秒までの「アゥアゥ」がいい! 「鶴の一声」ならぬ「メイシー・グレイの一声」で,あのマーカス・ミラー・スーパー・バンドが“喰われてしまう”。末恐ろしいボーカリストが登場してきたものである。

 そのメイシー・グレイが,唯一ソロイストとして認めた証し? 3分45秒で“サクソフォン”とアナウンスされるケニー・ギャレットアルト・サックスが素晴らしい! ケニー・ギャレットアドリブも,メイシー・グレイに負けず劣らず「一声」で“場の空気”を支配している。

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MACY GRAY : Vocals
MARCUS MILLER : Bass Guitar, Organ, Guitar, Bass Clarinet, Fender Rhodes
KENNY GARRETT : Alto Sax Solo
RONALD BRUNER : Drums
DEAN BROWN : Guitar
PATCHES STEWART : Trumpet
ROGER BYAM : Tenor Sax


SILVER RAIN
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マーカス・ミラー / シルヴァー・レイン / SILVER RAIN FEATURING JOEY KIBBLE OF TAKE 64

アナログレコード

 『SILVER RAIN』の16曲目は【SILVER RAIN FEATURING JOEY KIBBLE OF TAKE 6】(以下【シルヴァー・レイン〔フィーチャリング・ジョーイ・キブル〕】)。


 【シルヴァー・レイン〔フィーチャリング・ジョーイ・キブル〕】が,【シルヴァー・レイン】の“本妻”である。管理人の評価も断然,このジョーイ・キブル・バージョンがいい。

 エリック・クラプトンには悪いが,ボーカリストの“格”としては,ジョーイ・キブルが上であろう。さすがはテイク6! 艶やか!
 マーカス・ミラーベース・ソロも,心なしか9曲目よりもノリがいい。フロントが替わるとリズムまで変わる“好例”である。

 ただし【シルヴァー・レイン〔フィーチャリング・ジョーイ・キブル〕】の真の主役は,ケニー・ギャレット! 4分59秒からのソロは『SILVER RAIN』で,唯一ケニー・ギャレット“らしい”プレイが聴ける! このファンキー&アウトこそ,ケニー・ギャレットの真骨頂!
 やはりケニー・ギャレットこそ,掛け値なしで“史上最強”のアルト奏者だと思ってしまう。

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JOEY KIBBLE : Lead Vocals
MARCUS MILLER : Bass Guitar, Guitar, Piano, Keyboards, Background Vocals
KENNY GARRETT : Alto Sax Solo
POOGIE BELL : Drums
DEAN BROWN : Guitar
BRUCE FLOWERS : Fender Rhodes
PATCHES STEWART : Trumpet
ROGER BYAM : Tenor Sax
JOEY KIBBLE : Background Vocals
MARK KIBBLE : Background Vocals
JESSICA CELIOUS : Background Vocals


SILVER RAIN
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マーカス・ミラー / シルヴァー・レイン / IT'LL COME BACK TO YOU4

アナログレコード

 『SILVER RAIN』の15曲目は【IT’LL COME BACK TO YOU】(以下【イットル・カム・バック・トゥ・ユー】)。


 【イットル・カム・バック・トゥ・ユー】は,マーカス・ミラーの“歌もの”の中でも指折りの名曲である。このトラックが,ヨーロッパ盤では削られている,のは理解できない。ヨーロッパ人はマーカスの聴き所がわかっちゃいない?

 【イットル・カム・バック・トゥ・ユー】でのマーカス・ミラーの「多芸ぶり」に舌を巻く! 兼業楽器である,ボーカリストとしてもキーボード・プレイヤーとしても,超一流の域に到達したと言える。
 てっきり(クレジットを見るまでは)本職のゲスト参加だと思ったものだ。この管理人を騙すとは? マーカス・ミラー恐るべし。

 ベーシストマーカス・ミラーを知る者としては【イットル・カム・バック・トゥ・ユー】でも,やっぱりベースが主役に違いない! 安定感も有れば,メロディの“表も裏も”弾きまくる。ボーカルの“隠し味”程度の短いベース・ソロでは“前へ前へ”と出る!
 この辺りのトータルなバランス感覚がマルチ・プレイヤー=マーカス・ミラーの“凄さ”であろう。

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MARCUS MILLER : Vocals, Bass Guitar, Fender Rhodes, Beat Box, Synth Strings
LALAH HATHAWAY : Drums


SILVER RAIN
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マーカス・ミラー / シルヴァー・レイン / SILVER RAIN FEATURING ERIC CLAPTON3

アナログレコード

 『SILVER RAIN』の9曲目は【SILVER RAIN FEATURING ERIC CLAPTON】(以下【シルヴァー・レイン〔フィーチャリング・エリック・クラプトン〕】)。


 【シルヴァー・レイン〔フィーチャリング・エリック・クラプトン〕】はマーカス・ミラーエリック・クラプトンの共作とあって,マーカスベースクラプトンのボーカルが全面に押し出されている。
 曲の出来が“クラプトン寄り”で,正直管理人の好みではない。演奏の質も“ポップス風”であってフュージョンとも呼べない。パワー不足は否めない。

 ただしマーカス・ミラーの“テケテケ”としたチョッパー・ベースに乗せられた,後半のソロ回しには一聴の価値がある。
 特に3分52秒からの,パッチェス・スチュワートトランペットケニー・ギャレットアルト・サックス! 二人の聴いてすぐに“それ”と分かる“独特の音”が唯一のアクセント! かろうじて正気に戻される“ザ・フュージョン・タイム”である。

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

ERIC CLAPTON : Lead Vocals
MARCUS MILLER : Bass Guitar, Guitar, Piano, Keyboards, Background Vocals
KENNY GARRETT : Alto Sax Solo
POOGIE BELL : Drums
DEAN BROWN : Guitar
BRUCE FLOWERS : Fender Rhodes
PATCHES STEWART : Trumpet
ROGER BYAM : Tenor Sax
JOEY KIBBLE : Background Vocals
MARK KIBBLE : Background Vocals
JESSICA CELIOUS : Background Vocals


SILVER RAIN
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マーカス・ミラー / シルヴァー・レイン / BOOGIE ON REGGAE WOMAN4

アナログレコード

 『SILVER RAIN』の7曲目は【BOOGIE ON REGGAE WOMAN】(以下【レゲ・ウーマン】)。


 【レゲ・ウーマン】は,スティーヴィー・ワンダー作=イントロのベース・ラインに“いたく感動した”マーカス・ミラーが「僕のベース・ギターでやりたかった」と語った通り,スティーヴィー・ワンダーの名曲を“ベース・ソング”へと変貌させている。

 イントロだけではない。アウトロでもバッチリ,あのベース・ラインを演っている! いやいや,そんなみみっちい話ではない。ほぼ全編にわたるオーヴァー・ダビングで,ベース・ラインの“上の下も”弾きまくっている。そう。“一人スティーヴィー・ワンダー状態”である。
 リズムはプージー・ベルとのコラボ。メロディはカーク・ウェーラムとのコラボに違いないが,やっぱり何度聴いても“一人スティーヴィー・ワンダー”! 全てがマーカス・ミラーチョッパー・ベースのために“お膳立て”されている。

 こう書くと,ベーシストマーカス・ミラーを連想するかもしれないが,そうではない。【レゲ・ウーマン】は“ベース・ソング”である。そう。プロデューサー兼アレンジャー=マーカス・ミラーの面目躍如である。
 分厚いベースが“サラッと”聴けてしまう。スティーヴィー・ワンダーの“歌心”がマーカス・ミラーベースを通して聴こえてくる。このトータルなバランス感覚にマーカス・ミラーの“凄さ”がある。

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MARCUS MILLER : Bass Guitars, Fender Rhodes, Synth Chords
KIRK WHALUM : Tenor Sax Solo
POOGIE BELL : Drums
MOCEAN WORKER : DJ Efx


SILVER RAIN
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マーカス・ミラー / シルヴァー・レイン / MOONLIGHT SONATA4

アナログレコード

 『SILVER RAIN』の6曲目は【MOONLIGHT SONATA】(以下【ムーンライト・ソナタ】)。


 【ムーンライト・ソナタ】は,説明不要のクラシックの有名曲である。そう。ベートーベン作,通称“月光”である。
 しかしマーカス・ミラー“大アレンジ”の,このトラックに関しては少々説明が必要かも知れない。なぜなら,完全にジャズフュージョンのテイストに“ハマッテいる”からだ。

 いやぁ。マーカス・ミラーのこの“解釈”はどこから湧き出てきたのだろう。ユニゾンについては原曲がそうだし驚きはしないが,あのアルペジオをローズ・ピアノで奏で,あのメイン・テーマをベースで奏でるアイディアには感服しないわけにはいかない。
 楽器の“響き”もいい! ユニゾンを奏でるテナー・サックストランペットも,クラシックの代表楽器としてではなく,ジャズの代表楽器としての“鳴り”で共鳴している。
 4分46秒からのバス・クラリネットエレキ・ギターも加わった「大合唱」では,フュージョン色に染め上げられた“月光”の荘厳な雰囲気を見事に醸し出している。

 3分26秒から始まるマーカス・ミラーベース・ソロも実にエモーション! 特に4分21秒からの“泣きの連打”は,本家ベートーベンも真っ青,いや想像以上の仕上がりだろう。
 ジャズフュージョンの天才・マーカス・ミラーが,クラシックの天才・ベートーベン越えを果たした瞬間である。

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

MARCUS MILLER : Bass Guitar, Fender Rhodes, Bass Clarinet, Keyboards, Synth Dream Chords
ROGER BYAM : Tenor Sax Solo
LUCKY PETERSON : Guitar
POOGIE BELL : Drums
DEAN BROWN : Guitar
PATCHES STEWART : Trumpet
BERNARD WRIGHT : Additional Keyboards


SILVER RAIN
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マーカス・ミラー / シルヴァー・レイン / FRANKENSTEIN3

アナログレコード

 『SILVER RAIN』の5曲目は【FRANKENSTEIN】(以下【フランケンシュタイン】)。


 【フランケンシュタイン】は,1972年の全米NO.1ヒット曲。ゆえにロック・テイスト・フレーバーなのであるが“ギンギンのロック”とは異なる“レトロなフュージョン”に仕上がっている。

 ディーン・ブラウンギターモーシャン・ワーカーのDJ・エフェクトが“キメ”の部分で耳に残るので,印象としては“デジタル”であるが,実はかなり“アナログ”寄りの“音造り”をしている。
 ソロもマーカス・ミラー以外には,パチェス・スチュワートトランペットカーク・ウェーラムテナー・サックスのみであり,2人のソロのバックではオルガンも鳴っている。ゆったりと響く“JAZZYでブルージーな”ソロが心地良い。

 しかし,この“アナログ”寄りの“音造り”が成功しているかと言えば,そうでもない。
 暖かさや温もりの前に,どうも“古さ”をイメージしてしまう。やはり【フランケンシュタイン】は,しょせん72年の流行歌。“流行廃れ”の宿命にあった。
 アレンジ勝負に出た,マーカス・ミラーベースは,相変わらず上手いのだが,ちと盛り上がりに欠けている。一方,プージー・ベルドラミングはハイ・テンションで“スゴスギル”。特に5分47秒からのアタックは“やり過ぎ”だろう。
 このリズム隊の意識の“ズレ”が,互いの中間地点であったなら…。

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

MARCUS MILLER : Bass Guitar, Clavinet, Fender Rhodes, Tambourine
KIRK WHALUM : Tenor Sax Solo
POOGIE BELL : Drums
DEAN BROWN : Guitar
BRUCE FLOWERS : Organ
PATCHES STEWART : Trumpet
ROGER BYAM : Tenor Sax
MOCEAN WORKER : DJ Efx


SILVER RAIN
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マーカス・ミラー / シルヴァー・レイン / BEHIND THE SMILE4

アナログレコード

 『SILVER RAIN』の4曲目は【BEHIND THE SMILE】(以下【ビハインド・ザ・スマイル】)。


 【ビハインド・ザ・スマイル】は,マーカス・ミラー“お得意”のフレットレス・ベースバラード! このメロディ・ラインにはフレットレス・ベースがよく似合う。そう。マーカス・ミラーが「フレットレスの国」から連れ出してきたのだから…。

 ただし今回のフレットレス・ベースは,グレゴリー・マレットハーモニカ仕様! 人間味のあるハーモニカとのユニゾンでは,敢えて硬質の音色で,グレゴリー・マレットに伸び伸びとソロをとらせている。
 硬質音色のフレットレス・ベースだからこそ完成したであろう,3分14秒からのアドリブがいい。

 “天才”マーカス・ミラーの「フレットレスの国」には(ハーモニカ仕様以外にも)優秀な人材が,出番を「今か今か」と待ち構えている。今後もマーカス・ミラー以外にはチャレンジできない,フレットレス・ベースの新たな可能性を切り開いてほしい。

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

MARCUS MILLER : Bass Guitar, Fender Rhodes, Moog Synthesizer, Rhythm Box, Percussion
POOGIE BELL : Drums
GREGOIRE MARET : Harmonica
DEAN BROWN : Acoustic Guitar
MUNYUNGO JACKSON : Percussion


SILVER RAIN
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マーカス・ミラー / シルヴァー・レイン / LA VILLETTE4

アナログレコード

 『SILVER RAIN』の3曲目は【LA VILLETTE】(以下【ラ・ヴィレット】)。


 【ラ・ヴィレット】は,ロマンティックなラブ・ソング! アコースティック・ギターの音色に誘われる“軽い”タッチの静かな展開であるが,実際は情感ほとばしる“重い”演奏でもある。

 真意は分からない。これは管理人の想像に過ぎないが,短期間でも密度の濃い,激しい恋。一生に一度の恋がテーマなのでは? とにかく“重い”振幅の激しい演奏である。
 全体のトーンを決めたのがケン・ヒックスコーラスである。オペラ歌手であるケン・ヒックスが,本場ヨーロッパのラブ・ソングを手ほどきしてくれる。実にファンタスティック!
 そして主役はレイラ・ハサウェイ! マーカス・ミラー“お抱え”ボーカリストであるレイラこそ“天才”R&B+ジャズ・シンガー! そう。【ラ・ヴィレット】は,2人の完璧なコラボレーションから産み落とされた,R&B+ジャズ+オペラのフュージョン・サウンド。

 もう1人のソロイスト,ベースで歌うマーカス・ミラーも,マイナー調アドリブのオンパレード! 2分15秒からの早弾きにも必然性を感じてしまう,まず“曲ありき”のアドリブである。
 ロマンティックなラブ・ソングは,ついにエレクトリックへ持ち替えたディーン・ブラウンの登場でクライマックスを迎える! 4分27秒からの“泣き”のギターが“おいしい”役所である。

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

MARCUS MILLER : Bass Guitar, Beat Box, Piano, Synth Orchestra
LALAH HATHAWAY : Lead Vocals
KENN HICKS : Operatic Tenor
DEAN BROWN : Acoustic and Electric Guitars
POOGIE BELL : Brush Snare Drums
BERNARD WRIGHT : Additional Keyboards
CRAIG J "THE COUNT" : Percussion


SILVER RAIN
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マーカス・ミラー / シルヴァー・レイン / BRUCE LEE3

アナログレコード

 『SILVER RAIN』の2曲目は【BRUCE LEE】(以下【ブルース・リー】)。


 【ブルース・リー】でも,メイン・テーマを奏でるのは“当然”マーカス・ミラーベースなのだが,全体の印象としては,3分50秒から4分37秒までのアルト・サックス・ソロがハイライト!
 2分0秒から始まるマーカス・ミラーベース・ソロも,全体の曲調に合わせた“バックと解け合う”もので,今ひとつだ。

 ブルース・リーの“奇声”をイメージさせるためであろう,ギターや種々のサンプリングがキメの部分で入ってくるが,正直,マーカス・ミラーには自慢のベースで「アチョーっ!」と叫びまくってほしかった。残念。

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

MARCUS MILLER : Bass Guitar, Keyboards, Beat Box, Guitar with Talk Box, Fender Rhodes, Hi Hat, DJ Scratches
GERALD ALBRIGHT : Alto Sax
BERNARD WRIGHT : Additional Keyboards
LALAH HATHAWAY : Vocals Sample
PATCHES STEWART : Trumpet


SILVER RAIN

マーカス・ミラー / シルヴァー・レイン / INTRO DUCTION3

アナログレコード

 『SILVER RAIN』の1曲目は【INTRO DUCTION】(以下【イントロ・ダクション】)。


 【イントロ・ダクション】での,マーカス・ミラーチョッパー・プレイは,CD全体への“誘い水”。

 “ベーシストマーカス・ミラーを初めて聴く人にとっては“驚愕のチョッパー”なのかもしれないが,これはマーカス・ミラーにとって“ほんの肩慣らし”! いや,マーカス・ミラーからリスナーへ向けた気遣いあふれたプレゼント!
 「今から始まるショーに向けて,このトラックでもって,肩慣らししてくださいねっ」。
 そんなメッセージが,あ・な・たにも聞こえてきませんか?

 正に【イントロ・ダクション】! 朝飯前の29秒!

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

MARCUS MILLER : Bass Guitar, Fender Rhodes, Keyboards, Beat Box, Udu, DJ Scratches
EARTHA KITT : Vocals


SILVER RAIN
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マーカス・ミラー / シルヴァー・レイン4

アナログレコード

 人付き合いにおいて“第一印象”が重要であるように,あるアーティストの“第一印象”,つまり最初に出会ったCD,もっと言えば最初の一曲,これまた重要である。
 もちろん,長く付き合ってみれば“第一印象”の善し悪しなど吹き飛んでしまうものだが“食わず嫌い”なる言葉があるように,それ以降,箸を付けてもらえなくなるとも限らない。大げさであることは承知で述べるが,アーティストとの最初の出会いはそれこそ,一生の付き合いをも左右しかねない一大事なのである。
 もっともその逆もまた真実で,管理人の場合は,一度“お気に入り”としてインプットされたアーティストについては「どうせまた駄作なんだろうな」と思いつつも「今度こそは!」の繰り返し。数多くの駄作を掴まされている口である。

 さて,マーカス・ミラーである。管理人にとってマーカス・ミラー程,CDリリース毎に印象の異なるアーティストはいない。つまるところ“天才”なのであろう。本当に多くの切り口を持っているもので「よくもまあ」と関心させられてばかりである。
 マイルス・デイビスから入るとジャズディヴィット・サンボーンから入るとフュージョンジャマイカ・ボーイズレゲェ…。ベース小僧なら『THE SUN DON’T LIE』あたりか?
 まだまだ! 人気者のプロデュース業から入る道もある。うーん。何か良い解決策はないだろうか?…暫し考えてみる。

 YES! 『SILVER RAIN』(以下『シルヴァー・レイン』)! このCDにはマーカス・ミラーの魅力がバランス良く収められている。ジャズ,フュージョン,ポップス,ファンク,ボーカルものまであるではないか…。
 恐らく一度二度聴いたぐらいでは,マーカス・ミラーのイメージを掴むことなどできないであろう。本当に様々なジャンルのエッセンスが入り混じっている。『シルヴァー・レイン』の中に全体を貫く一つのテーマを見いだすのは至難の業だろう。そう。ここにあるのはマーカス・ミュージックそのものなのだから…。

 このCDの中に数曲,自分が今まで抱いていたマーカス・ミラーの曲がある。自分にとってはイメージ通り! しかし人によっては別の曲がマーカス・ミラーのイメージそのもの,という場合もあることだろう。そう。そのどちらも正解である。人によってマーカス・ミラーのイメージは異なる。マーカス・ミラーなら至極当然のことだろう。
 それで“ジャズ”の,“フュージョン”の,“ファンク”のマーカス・ミラーと言う固定観念を捨てて見る…。するとどうだろう。ついに一本一本の糸,一曲一曲のイメージが“マーカス・ミュージック”という,大きな“より糸”と化して迫ってくる!
 “カメレオン”マーカスの“七変化”に圧倒されたいなら,迷わず『シルヴァー・レイン』である!

(2005年録音/VICJ-61266)

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