MUSICAL FROM CHAOS-1 『REPORT FROM IRON MOUNTAIN』は,1曲を除いてスッキリした楽曲ばかりで結構好きだったのだが,菊地成孔が第二期「DCPRG」が目指すスタイルとして選んだのは,その嫌いな1曲にして超難曲の【CATCH 22】スタイルであった。

 『MUSIC FROM CHAOS』は,第一期「DCPRG」の2枚組ベストライブ集であるのだが,実にそのうちの1枚丸々が【CATCH 22】の5別テイクと来た。
 恐ろしい。誰がこんなアルバム買うのだろうかと思いきや,そう思った管理人の方が実は少数派であって,友人たちはこぞって購入済。そしてヘビロテしているとのこと。どうやらタイトル通りのカオスな音の大洪水。「電化マイルス」好きを公言している管理人としては後に引けずに友人に追随する〜。

 いやはやとんでもなく素晴らしいぞ! 管理人は「DCPRG」を楽しむ準備のために,今までずっとジャズを聞いてきたんだ。管理人のジャズ人生の1つのゴールが「DCPRG」に違いない。そんな思いが心から湧き出てきた。

 【CATCH 22】が好みではない,その第一印象は間違いではない。聞けば【CATCH 22】は単なる素材だということが分かった。ものの見事にアレンジ違いという表現では片づけることのできない激変ぶりである。難曲という性質上,ことライブで演奏すると印象が豹変する。菊地成孔にまんまとやられてしまった。

 【CATCH 22】の5テイク全てに5通りの楽しみ方が詰まっている。【CATCH 22】は,メンバー全員がバラバラのリズムを演奏する怒濤のポリリズム・ファンク・ナンバーゆえに,ライブのたびにテンポやリズム・パターンが現在進行形で変わっていく。
 【CATCH 22】は“変態集団”「DCPRG」にとって格好の素材であって,聴く度に理解は深まり新鮮さが増していく。全員で異なるループ演奏を施すマルチ・ビート1曲の5テイク集なのだが,これが1×5ではなく1×10のようなパワーに圧倒されてしまう。真に実験的な演奏集の記録である。

 …とこのように余裕で【CATCH 22】を見直すことができたのは「DISC2 IRON MOUNTAIN MENU」の存在が大きい。これで「DISC2 IRON MOUNTAIN MENU」がコケテいたら【CATCH 22】の再評価はなかった気がする。
 正直,無類の【】好きとしてはDISC1の【CATCH 22】の5連発が【】の5連発だったらよかったのにとも思うのだが,DISC2に【】が入っているので帳消しにした。

 DISC2は【】以外にもアグレッシヴだがPOPな美メロに引っ張られてライブだけど惹かれる演奏集になっている。流石に同じ曲のテイク違いだけではセールス的に勝負できないと考えたのかも?

MUSICAL FROM CHAOS-2 『MUSIC FROM CHAOS』の発売当時も【】ばかりを聴いていたが,ある時からマイルス・デイビスの【SPANISH KEY】からのビージーズの【STAIN ALIVE】という『ビッチェズ・ブリュー』からのディスコ・チューンの流れが【】と合っていることに気付いた。そうしたら【ホー・チ・ミン市のミラーボール】と【】も合っていることに気付いた。

 そもそも「DCPRG」とは「電化マイルス」の『ON THE CORNER』だった訳だし『MUSIC FROM CHAOS』とはライブ盤なのだから,ただただ音を浴びるように聴いて気持ちのよい瞬間を感じられればそれでよい。じわじわと興奮が高まればなおよい。「考えるな,感じろ〜」。

 【SPANISH KEY】〜【STAIN ALIVE】〜【】〜【ホー・チ・ミン市のミラーボール】への怒涛のごった煮ファンクの,しかし計算されたリフ回しがカッコイイと思える瞬間がポツポツ。

 『MUSIC FROM CHAOS』に星5つは上げられない。でも管理人は『MUSIC FROM CHAOS』をこよなく愛している。
 ラジオでは絶対にかかることのない「DCPRG」の長尺のライブ盤である。これらの音源に出会うためにはCDを購入し続けるしかない。
 60分のアルバム1枚に数分間「脳天勝ち割られる」聴き所があればそれで十分なのである。

 
Disc 1 Catch 22
01. CATCH 22
02. CATCH 22
03. CATCH 22
04. CATCH 22
05. CATCH 22

Disc 2 Iron Mountain Menu
01. PLAYMATE AT HANOI
02. SPANISH KEY
03. STAIN ALIVE
04. CIRCLE/LINE〜HARD CORE PEACE
05. S
06. ホー・チ・ミン市のミラーボール

 
DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN
NARUYOSHI KIKUCHI : Conductor, CD-J, Keyboard
YOSHIHIDE OTOMO : Guitar
KOHKI TAKAI : Guitar
YASUHIRO YOSIGAKI : Drums
NOBUO FUJII : Drums
MASAKI KURIHARA : Bass
KENTA TSUGAMI : Soprano Saxophone
GOSEKKY : Tenor Saxophone
MASAYASU TZBOGUCHI : Synthesizers, Electric
GEN OGIMI : Percussion
MASAKI YOSHIMI : Tabla

DATE COURSE PENTAGON ROYAL Hi-bras
TAKEO SEKIJIMA : Tuba
TAISEI AOKI : Trombone
SHIRO SASAKI : Trumpet
KUNIMATSU KOHATA : Trumpet
KOHJI NISHIMURA : Trumpet

(Pヴァイン/P-VINE 2003年発売/PCD-18506/7)
(CD2枚組)

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