NOSTALGIA-1 老練なジャズ・ファンから何度も教えられた。「史上最高のトランペッターとはマイルス・デイビスではない。クリフォード・ブラウンである」。しかし先輩方の教えはこれだけでは終わらない。
 続く言葉はこうである。「そのクリフォード・ブラウンに影響を与えたのがファッツ・ナバロである。つまりトランペッターについて語りたいのならファッツ・ナバロを聴け。ファッツ・ナバロは絶対に避けては通れない」。

 至言である。頑固なジャズ・ファンの教えは正しかった。管理人は『NOSTALGIA』(以下『ノスタルジア』)を聴いてそう思った。

 正直『ノスタルジア』の音造りは,聞いていて楽しいものではない。録音は古いし,フレージングの構成や組み立ても難しい。ビ・バップ特有のウネウネとした旋律が耳に残る。でもそれでも“歌っている”ように聞こえる。普通とは「モノが違う」ことぐらいは誰が聞いても分かることと思う。

 それくらいに『ノスタルジア』の主役はファッツ・ナバロトランペット一択。黄金のトランペットの音色が光り輝いている。一聴すると高音が飛び抜けた派手な演奏に思えるが,どうしてどうして…。

 ファッツ・ナバロが“天才”と称される最大の理由は摩天楼を見ているかのような総合芸術。一音一音にインスピレーションを感じさせるが,曲単位で描かれる広大な音世界の完成度は他の追随を許さない。
 ズバリ,ファッツ・ナバロトランペットはエンタメ系ではなくアート系なのだと思う。

NOSTALGIA-2 管理人の結論。『ノスタルジア批評

 『ノスタルジア』に記録されている,哀愁とブリリアントを同時に放つファッツ・ナバロトランペットは,無機質な演奏が多いビ・バップの可能性と幅を広げた名盤だといえよう。

 『ノスタルジア』でのファッツ・ナバロトランペットは,流麗で淀みなく美しい。こういう特質はクリフォード・ブラウンにも確実に受け継がれている。
 そう。ファッツ・ナバロこそがビ・バップからハード・バップへの架け橋を作ったトランペッター。確かにトランペッターファッツ・ナバロ抜きには語れない。

  01. NOSTALGIA
  02. BARRY'S BOP
  03. BE BOP ROMP
  04. FATS BLOWS
  05. DEXTIVITY
  06. DEXTRPSE
  07. DEXTERS MOOD
  08. INDEX
  09. STEALING TRASH
  10. HOLLERIN' & SCREAMIN'
  11. FRACTURE
  12. CALLING DR. JAZZ

(サヴォイ/SAVOY 1958年発売/COCY-9015)
(ライナーノーツ/アラン・ステイン,瀬川昌久)

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