JOURNEY-1 フォープレイには問題作が2枚ある。その1枚がリー・リトナーからラリー・カールトンへの交代直後のクリスマス企画盤『スノーバウンド』であり,もう1枚が4人全員が“あばれはっちゃく”となった『JOURNEY』(以下『ジャーニー』)である。

 ただし,同じ問題作であるが『スノーバウンド』と『ジャーニー』では,管理人の評価は真逆である。
 『スノーバウンド』については,こんな演奏聞きたくなかった,とブチ切れた。多分,2度と『スノーバウンド』を買い直すことはない。一方の『ジャーニー』はと言うと,もっとこんなフォープレイを聴いてみたかった,というのが感想である。

 『ジャーニー』でのチャレンジとはフォープレイ初の「ノーゲスト盤」。フォープレイとはボブ・ジェームスネイサン・イーストハービー・メイソンラリー・カールトンの4人にして,実は大物ゲストとの共演が毎回アルバムの話題になっていたのも事実。
 そうして,確かに外野の批判も一理ある。4人だけの演奏ではマンネリ感が漂うのも事実。ゲストの封印はフォープレイにとってのチャレンジだったのだ。

 まっ,演奏面においてはフォープレイの4人だけでも不安など微塵もない。いつでも,どんなスタイルの演奏をさせてもフォープレイは世界最高峰のアンサンブル・ユニットである。酔っぱらおうとも,逆立ちしようとも,平常時と変わらぬレベルで演奏できることだろう。

 フォープレイは『ハートフェルト』でラリー・カールトンの個性を前面に押し出すことにした。これが実に爽快でカッコ良かった。
 ラリー・カールトンを自由に泳がせることができたのは,ボブ・ジェームスネイサン・イーストハービー・メイソンの3人がラリー・カールトンをしっかりと支えることができたからだ。

 『ジャーニー』でのソロイストは誰か? それはラリー・カールトンであり,ボブ・ジェームスであり,ネイサン・イーストであり,ハービー・メイソンである。
 そう。『ハートフェルト』ではラリー・カールトン1人だったソロイストが『ジャーニー』では一気に4人に増えた。

 アンサンブルがありユニゾンがありコーラスがありソロがある。このように書くといつものフォープレイと変わらないように感じるだろうが『ジャーニー』での実験とは,バックに回っても4人が4人とも“自分を主張する”ことにある。
 ボブ・ジェームスが暴れている。ネイサン・イーストが暴れている。ハービー・メイソンが暴れている。ラリー・カールトンが暴れている。

JOURNEY-2 これまでのフォープレイとは「自分を殺して」ではなく「自分を活かして他人も活かす」スーパー・グループだった。それが『ハートフェルト』ではではどうだろう。「他人の音を利用してまでも自分を活かす」スーパー・グループになった感じがする。

 バンドのDNAが「遺伝子操作」されたかのようで,こんなにもワイルドなフォープレイが聴けるのは『ジャーニー』が「最初で最後のアルバム」となった。
 楽曲も従来のフォープレイのイメージからは外れるであろうバラエティ豊かな楽曲ばかりが揃っている。聴けば聴くほど良くなってくる。例のスルメ盤であり,例のアレである。

 管理人の結論。『ジャーニー批評

 『ジャーニー』は今まで隠し続けてきた,燃えに燃える「本気のフォープレイ」が聴ける唯一のアルバムである。
 こんなにも下品なのに,でもやっぱり気品あふれる演奏に収まってしまうのが,悔しいかな,フォープレイフォープレイ足る所以でもある。
 そう。『ジャーニー』とはフォープレイの過去の20年の『旅』であり,またこれから先20年の『旅』なのである。

PS それにしても本日はまさか「嵐」が…。あの大野くんが…。お疲れ様です。「嵐」の5人にもフォープレイを,特に『ジャーニー』を聴かせてあげたいとタイムリーに思ってしまいました…。

  01. FIELDS OF GOLD
  02. PLAY AROUND IT
  03. FROM DAY ONE
  04. JOURNEY
  05. ROZIL
  06. COOL TRAIN
  07. AVALABOP
  08. THE FIREHOUSE CHILL
  09. DEPARTURE
  10. 147 4TH ST.

(ブルーバード/BLUEBIRD 2004年発売/BVCJ-31038)
(ライナーノーツ/工藤由美)

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