BETWEEN THE SHEETS-1 鉄壁のバンド・アンサンブルを誇るフォープレイの理念が,早くも『BETWEEN THE SHEETS』(以下『ビトゥイーン・ザ・シーツ』)具現化されている。

 4人が意気投合したボブ・ジェームスの『グランド・ピアノ・キャニオン』の香り漂う,フュージョン・タッチのデビュー・アルバム『FOURPLAY』が大好きなのだが“ウルトラ・スーパー・グループ”フォープレイの本質としては『ビトゥイーン・ザ・シーツ』の方に聴き所がある。

 3枚目の『エリクシール』も含めて,三つ巴のリー・リトナー期の名盤の中で,現在の“スムーズ・ジャズの雄”フォープレイのスタイルに一番近いのが『ビトゥイーン・ザ・シーツ』である。

 『ビトゥイーン・ザ・シーツ』から押し寄せてくる快感。それは「際立つグルーヴと深いアンサンブルの妙」。
 『ビトゥイーン・ザ・シーツ』こそがフォープレイの枕詞である「拝聴してもよし。BGMとしてもよし」の最右翼だと断言できる。

 キーボードボブ・ジェームスギターリー・リトナーベースネイサン・イーストドラムハービー・メイソンが,我を殺してメンバーの音に合わせているにも関わらず4人の個性はそのまんま!

 ここがフォープレイの凄業! 4人で機織り改め「音を織りなす」という表現がピッタリするような極上の音絵巻! 互いを傷付けることなく同じイメージを描き,音階・音量・リズムを共有して完璧なアンサンブルを鳴らしている。
 バカテクな演奏や派手で判り易い旋律とは全く無縁。淀み迷いの微塵も無い。ある意味“凄み”を感じさせる演奏だと思う。

BETWEEN THE SHEETS-2 スローな曲にはウットリさせられるし,アップ・テンポなジャンプ・チューンには心踊らされる。フォープレイは大人なのだ。フォープレイはアダルト・コンテンポラリーなのだ。
 『ビトゥイーン・ザ・シーツ』のフォープレイフュージョンではなく,スムーズ・ジャズでもなく,この時点ではAORなのだと思う。

 ネイサン・イーストヴォーカルが心地良い。ヴォーカルと4つの楽器の絡み具合がこの上ない。幻想的な浮遊感が音場を支配している。

 『ビトゥイーン・ザ・シーツ』には,美しく流れるように洗練されたグルーヴがある。どれもが味わい深く気品あふれるグルーヴがある。エンタテイメント性を充足させ,アートの域まで達したグルーヴがある。

  01. Chant
  02. Monterey
  03. Between The Sheets
  04. Li'l Darlin'
  05. Flying East
  06. Once In The A.M.
  07. Gulliver
  08. Amoroso
  09. A Summer Child
  10. Anthem
  11. Song For Somalia
  12. Tokyo Rain

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1993年発売/WPCP-5506)
(ライナーノーツ/熊谷美広)

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