NIGHT TRAIN-1 思うに『NIGHT TRAIN』(以下『夜行列車』)こそが「THE EJT」の極みであろう。

 正直,いい演奏である。ヨーロピアン調の静かな雰囲気がチャーミングである。
 だけど決して脱線しそうなほどギリギリまでは攻めていかない。予定調和っぽいアドリブが模範演技っぽくて,教科書通りでジャズ・マニアとしては面白くはない。だけど全般にレベルは高いので一般の音楽ファンからは評価が非常に高い。ゆえに益々,熱烈なジャズ・マニアからの反感を買う。

 そんなヨーロピアン・ジャズ・トリオの賛否両論が『夜行列車』を聴く度に管理人の胸に去来する。いい演奏だと思う瞬間も多いが,これはちょっとと思う瞬間も多い。
 『夜行列車』は“アルバム単位で”ヨーロピアン・ジャズ・トリオにハマルかどうかの試金石としてちょうどよいと思うのだ。

 ヨーロピアン・ジャズ・トリオに関しては,この“アルバム単位で”というのがミソである。その実“曲単位で”ヨーロピアン・ジャズ・トリオは評価されることが多いと感じているからだ。
 ヨーロピアン・ジャズ・トリオのレパートリーは果てしない。しかもどんな曲でも見事に“ジャズ化”できてしまう。だから自分の好きな曲がEJTで演奏されていると思わず聴き入ってしまう。

 しかし,逆に自分の知らない曲をEJTが演奏している場合。EJTを純粋なピアノ・トリオとして接するなら「雨後の筍」の一つとして片付けることになる。

 その意味でヨーロピアン・ジャズ・トリオは幸運であった。まず名前が何と言っても“ヨーロピアン・ジャズ”トリオである。「ヨーロッパを代表するピアノ・トリオ」のネーミングには大物感があって,しょぼくないイメージ。
 ← 最近はアート・ファーマーチャーリー・マリアーノとの共演を通して,名前に実力が追いつきました。

 次に早くからスマッシュ・ヒットを飛ばしたことでヨーロピアン・ジャズ”トリオ=“売れっ子”ピアノ・トリオのイメージも付いた。恐らく生涯の一発屋「アレンジ芸人(仮称)」として喰いっぱぐれることはないことだろう…。

NIGHT TRAIN-2 そんな安定から来る冒険と,売り上げを意識した選曲の絶妙なバランス感覚が『夜行列車』から聴こえてくる。『夜行列車』は是非“曲単位”ではなく“アルバム単位”で聴いてほしい。悪くはないから…。
 その上で管理人の意見を読み返してみてほしい。当たっている(はずだ)から…。

  01. Night Train
  02. Autumn In Rome
  03. The Moon Of Wild Castle
  04. As Time Goes By
  05. You
  06. Michelle
  07. Night In Kyoto
  08. Never To Early
  09. Bassman San
  10. Don't Say Good-Bye
  11. El Gaucho

(ポニーキャニオン/AFTER BEAT 1992年発売/PCCY-30116)
(ライナーノーツ/今井正弘)

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