MEMORIAL ALBUM-1 『MEMORIAL ALBUM』(以下『メモリアル・アルバム』)が,なぜ『ERIC DOLPHY AT THE FIVE SPOT,VOL.3』のタイトルにならなかったのかはヤボなので説明しないが,正真正銘『アット・ザ・ファイブ・スポット』シリーズの第3弾として崇められるべき名盤である。

 エリック・ドルフィーブッカー・リトルの双頭コンボの爆発力は,長尺2曲の『メモリアル・アルバム』でこそ発揮される。
 エリック・ドルフィーブッカー・リトルのアブストラクトでアバンギャルドで自由度の高い“双頭ブロー”が最高に素晴らしい。

 とは言え,アルトサックスフルートバスクラリネットエリック・ドルフィートランペットブッカー・リトルピアノマル・ウォルドロンベースリチャード・デイビスドラムエド・ブラックウェルのレギュラー・カルテットはファイブ・スポットの時点では未だ未完成。

 『メモリアル・アルバム』というか『アット・ザ・ファイブ・スポット』シリーズは「海の物とも山の物ともつかない」「伸るか反るか」の一発勝負。
 エリック・ドルフィーブッカー・リトルの双頭コンボが,何かをつかもうと必死にもがく一途な気持ちが感じられるが,その一方で未完成ゆえのもろさ,誰かがちょっとバランスを崩しただけで全体が崩壊してしまいそうな危うさが同居している。

 ただし,エリック・ドルフィーブッカー・リトルも,好きなように演奏しているようで実はバップのフォーマットを意識している。
 ズバリ,エリック・ドルフィーブッカー・リトルの双頭コンボの爆発力は,バップ・フォーマットの枠内という“縛り”があったからである。

 例えば,クラシックの演奏家は皆同じ楽譜で演奏したとしても,同じ演奏のはならない。作曲家はソナタ形式という決まりごとの中でもどこまでも自由を膨らませられる。枠の大きさとその中でやれることの自由度とは比例しない。決まりごとがあると自由にはできないということではない。
 そう。エリック・ドルフィーブッカー・リトルの双頭コンボは,外部から全く新しいものを創造したのではなく,既存のフォーマットの内部に残された可能性を解放するコンボなのである。

MEMORIAL ALBUM-2 普段はエリック・ドルフィーブッカー・リトルばかりを追いかけている管理人であるが【ナンバー・エイト】の主役は,ピアノマル・ウォルドロンドラムエド・ブラックウェルである。だから『メモリアル・アルバム』!

 マル・ウォルドロンの打楽器としてのピアノの連打に先導されたエド・ブラックウェルドラム・ソロ
 曲中でフィーチャリングされる長尺のドラム・ソロだが,曲の雰囲気をまったく壊すことなく,演奏の中に必然的に溶け込んでいるように感じるのは,マル・ウォルドロンのリフっぽいバッキングが脳に染み付いている状態の中で展開されるドラム・ソロだからだろう。

 実際にはピアノの音は鳴っていないにも関わらず,ピアノのバッキングにあわせてドラムが叩かれているかのような錯覚に陥る。荒っぽくも腰の高いドラミングがアブストラクトでアバンギャルドなエリック・ドルフィーブッカー・リトルを煽っていく。

  01. NUMBER EIGHT (POTSA LOTSA)
  02. BOOKER'S WALTZ

(プレスティッジ/PRESTIGE 1965年発売/VICJ-60012)
(ライナーノーツ/ロバート・レヴィン,青木和富)

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