ROCK'N ROCKED ROCK-1 「KEEP」の楽曲単位としての“最高傑作”が【SONATINE】であるなら,アルバム単位としての“最高傑作”が『ROCK’N ROCKED ROCK』(以下『ロックン・ロックド・ロック』)である。

 『ロックン・ロックド・ロック』は問答無用で素晴らしい。本職のロック・バンドではなくフュージョン・バンドの「KEEP」が提示するロックゆえに,色眼鏡で見られてしまうのも致し方なことだろうが,フュージョン・バンドが本気で演奏するロックとは「本家」を超えて,真のロック音楽が目指した「理想の高み」に達しているように思う。

 それくらいに深町純キーボードが,和田アキラギターが,富倉安生ベースが,山木秀夫ドラムが,狂ったようにロックン・ロールしまくっている。ギンギンに跳ねているのだ。

 【SONATINE】のような「美して激しいドラマティック・フュージョン」を聴きたくて『ロックン・ロックド・ロック』を購入した人間とすれば,非フュージョンへの音楽性の変化にガッカリするのかもしれないが『ロックン・ロックド・ロック』の“魂”を前にして,ただただ賛辞の言葉しかなかった。

 ズバリ『ロックン・ロックド・ロック』は,最初の一音から最後の一音まで,怒涛のロックン・ロール・ショー。和田アキラをして,バカテクの早弾きなのにロックギターの境界線に踏みとどまっており,決してプログレフュージョンしてはいない。

 深町純という音楽家はソロ・アルバムを追いかけたファンならお分かりかと思うが,発表するアルバム毎にコンセプトを変えてくるミュージシャンである。
 ただし,その変化はクロスオーヴァーとかフュージョンとか呼ばれるジャンルの中での変化であって,ここまでロックに振られたことは1度もなかった。

 思うに『ロックン・ロックド・ロック』の制作理由は,J−フュージョン黎明期をリードしてきた深町純が,ついに花開いた自分抜きの日本のフュージョン・ブームへの嫉妬かも?
 深町純が追い求めても手に入れられなかった,プリズムカシオペアザ・スクェアの大ヒットを目の当たりにして,それらを全て否定してみたくなった?

 自らが活躍すべく開拓してきたフォーマットだったのに,自分1人だけがフュージョン・ブームに乗り遅れた悲哀。これは自らの手でブチ壊さねば! いざ,ビルド・アンド・クラッシュ!

 そう。『ロックン・ロックド・ロック』の真実とは,軽快なフュージョンをブチ壊すために「KEEP」がフュージョン・シーンに放り込んだ“刺客”なのである。

 ズバリ『ロックン・ロックド・ロック』の音作りは,曲調こそロック的とは言え,メロディーやハーモニーが複雑で音楽の細部のバランスがバカテクの上に成り立っていればこそ!
 弾きまくり&叩きまくりにして,アドリブよりもアレンジで聴かせる展開力こそが,ギター・メインのロック野郎ではなく,複数の楽器で同時にユニゾンするあの快感を味わってきた“フュージョン目線な”ロック・サウンドのハイライトなのである。

ROCK'N ROCKED ROCK-2 お互いを完璧に支えあう主従の切り替え。時にユニゾン。暴走するアドリブの一瞬の隙を突いて切り込むオブリガード。リズム隊の一糸乱れぬフレームワークが最高に素晴らしい。

 『ロックン・ロックド・ロック』を聴いた直後に,軽快なフュージョンを聴くと,あの軽さに嫌悪感を抱いてしまうのでご注意を!
 フュージョン・バンドが本気で演奏するロックとは重い音楽なのである。歌詞不要の「怒涛の音圧」が全てなのである。

  01. Rock'n Rocked Rock
  02. Moonbeam
  03. Modja
  04. Aristocrat bachelor
  05. Ballad

(トリオ/TRIO 1982年発売/CRCD5053)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/深町純)

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