SPEAKING OF LOVE〜MUSIC OF JOBIM-1 「ジャズ・ピアノの王者」エディ・ヒギンズが「ボサノヴァの王者」アントニオ・カルロス・ジョビンを演奏する。
 普通に考えたら『SPEAKING OF LOVE〜MUSIC OF JOBIM』(以下『愛の語らい〜ジョビン作品集』)はキワモノ企画ものの1枚である。

 しかし,原曲がボサノヴァであることを知らないジャズ・ピアノ・ファンが,いいや,原曲がアントニオ・カルロス・ジョビンであることを知っていたとしても『愛の語らい〜ジョビン作品集』は「王者」のジャズ・ピアノ・アルバムに仕上げられている。キワモノ感など一切感じられない。

 ジョビン・ナンバーはコード進行とハーモニーが美しいと評価されるが,これらがジャズの4ビートに合うとは思えない。特にボサノヴァジャズリズム・セクションではなく,サンバを奏でる本場ブラジルのリズム・セクションにはかなわない。
 にも関わらず,ジョビン・ナンバーがものの見事にジャズしている。あらかじめアントニオ・カルロス・ジョビンが4ビートを意識して書き上げたかのようである。

 この全てこそが“ヒギンズマジック”! エディ・ヒギンズが彼のキャリアの中でも最大限にアグレッシブにピアノを弾いている。
 それでも一音一音に気持ちが込められており,音色は重いがなぜか軽やかで,フレーズもスピーディーだと思ったら,ゆったりと奏で出したりと完全なるジャズ・ピアノ。音色は一つもつぶれていない。エディ・ヒギンズのスタイルはボサノヴァ・チューンを弾こうとも変わっていない。

 『愛の語らい〜ジョビン作品集』に対する管理人の興味はエディ・ヒギンズの「七変化」だったが,いつしか『愛の語らい〜ジョビン作品集』の主役はアントニオ・カルロス・ジョビンだと思うようになった。

 ズバリ『愛の語らい〜ジョビン作品集』のコンセプトは,エディ・ヒギンズが考えるジョビン・ナンバーの「美的センス」の再構築にある。

SPEAKING OF LOVE〜MUSIC OF JOBIM-2 この全てこそが“ヒギンズマジック”パート2! エディ・ヒギンズジャズ・ピアノは決して主旋律を壊すような編曲はしない。美メロを浮かび上がらせる優しくタッチが心に響く。

 『愛の語らい〜ジョビン作品集』には,いつも以上にエディ・ヒギンズの考える「美的センス」が捉えられていると思う。美しい主旋律を細部まで際立たせることのできるジャズ・ピアニスト。それがエディ・ヒギンズ“その人”なのである。

 ここまで到達するまでには相当熟練されてきたのだろう。エディ・ヒギンズに代わるジャズ・ピアニストはそう簡単には登場してこない。

  01. Favela
  02. Esperance Perdida (I Was Just One More For You)
  03. Brigas Nunca Mais (Fight Never More)
  04. Falando De Amor (Speaking Of Love)
  05. Two Kites
  06. Bonita
  07. Voce E Eu (You And I)
  08. Choro
  09. Felicidade
  10. So Tinha De Ser Com Voce (It Had To Be With You)
  11. Caminhos Cruzados
  12. Inutil Paisagem (Useless Landscape)

(ヴィーナス/VENUS 1999年発売/VHCD-4019)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/皸羶成)

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