ピアノ一丁!-1 国府弘子の次の新作を早く聴いてみたい。
 これが8年間,楽しみに待ち続けた『ピアノ一丁!』を聴き終わったばかりの管理人の感想である。

 フォローでも何でもなく『ピアノ一丁!』はいいアルバムだと思う。国府弘子ソロ・ピアノの一音一音が上品で美しい。真に芳醇なピアノである。アルバム単体として評価できるのなら,文句なしの「名演集」であろう。
 しかし『ピアノ一丁!』は国府弘子名義のアルバムである。国府弘子名盤群の中に入れてみると,どうにも異質である。管理人の愛する“弘子さま”が感じられないのだ。

 ズバリ,自分の感情を素直に告白すると『ピアノ一丁!』で,国府弘子が随分遠くへ行ってしまったように感じてしまった。何だかサバサバした感じの歌い方であって,メロディーが少し憂いを帯びている。
 元来,国府弘子は,ジャズ・ピアニストでも,フュージョンピアニストでもなかったのだが『ピアノ一丁!』では,意識的にヒーリング系を演じているように思う。

 そう。『ピアノ一丁!』のテーマは“癒し”であろう。国府弘子自身が乳がんとの闘病生活を送っている間に,近しい調律師の小沼則仁さん,敬愛する松岡直也さん,大好きな寅さんの訃報も聞いて過ごした( ← この3人については『ピアノ一丁!』で楽曲を選び各人へのレクイエムとして演奏している )。
 3部からなる組曲「ピアノテラピー」は,そのものズバリの,不調期の自分を癒すための作品だそうだ。

 だから『ピアノ一丁!』からは,国府弘子の憂いや悲しみ,そして慈愛が聴こえてくるようで,じっくりと聴いていられなくなる。一番聴きたかった【サクセス・ムーン・ダンス】でさえ,慰められているような気がして物悲しくなってしまう。
 いつもの元気調子なのは【ピアノ一丁!のテーマ】だけだったなぁ。

ピアノ一丁!-2 そう言えばキース・ジャレットにも同じようなアルバムがあった。慢性疲労症候群からの回復途上に録音された『THE MELODY AT NIGHT,WITH YOU』も,個人的には過大評価だと思っている。
 あれって本当にキース・ジャレットの最高を知っているなら評価できない“最右翼の迷盤”であろう。

 真にキース・ジャレットの実力を知り(自称)真に国府弘子の実力を知る者(自称)としては『ピアノ一丁!』を評価はできない。
 元気でそれでいてオセンチな“弘子さま”が戻ってきた時,盛大に国府弘子の快気祝いをしたいと思っている。

  01. Theme from Piano Iccho!
  02. You Tune My Heart
  03. So In Love
  04. Somewhere
  05. I. Time On My Own (SUITE "PIANO THERAPY")
  06. II. The Forest In My Dreams (SUITE "PIANO THERAPY")
  07. III. Meditation (SUITE "PIANO THERAPY")
  08. Success Moon Dance
  09. Goldern Slumbers
  10. Rhapsody In Blue
  11. Blood Circulation
  12. Starland
  13. Happy
  14. Cosmos Avenue
  15. Otoko Wa Tsuraiyo

(ビクター/JVC 2015年発売/VICJ-61708)
(ライナーノーツ/国府弘子)

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