MOBO CLUB-1 「事件は会議室で起きてるんじゃない! 現場で起きてるんだ!」( by 踊る大捜査線 )と渡辺香津美も考えたのだろう。
 “時代の遥か先を行く音楽”『MOBO』を遠い将来でも近い将来でもなく,今,この現場で鳴らしたい! アメリカではなくここ日本で鳴らしたい!

 そんな渡辺香津美の「日本で,今,この現場で」欲求に駆られて作り上げたのが“セッション三昧”するための「MOBOバンド」。
 そんな「MOBOバンド」の貴重なセッションの記録こそが『MOBO CLUB』(以下『MOBO倶楽部』)である。

 「MOBOバンド」とは『MOBO』の“売り”であったツイン・ベースツイン・ドラム編成を踏襲した,ベースグレッグ・リー渡辺建ドラム村上“ポンタ”秀一パーカッション仙波清彦による“凄腕”純国産での『MOBO』の発展バンド。

 いや〜,ロビー・シェイクスピアスライ・ダンバーのジャマイカ隊とマーカス・ミラーオマー・ハキムのニューヨーク隊も凄かったけど「MOBOバンド」の超重量級リズム隊ももの凄い! 自由闊達,変幻自在,縦 横無尽の超弩級のセッション大会に一発KO!

 個人的にはグレッグ・リーベース・ラインが最高で,このベース・ラインを追いかけていると,いつでもあの頃の「MOBOバンド」。そして「MOBO」にTRIPしてしまう!
 ノリノリで大暴れな“和製”ツイン・ベースの躍動感こそが『MOBO倶楽部』の肝であろう。

 しかし『MOBO倶楽部』を聴いていると『MOBO』以上にカズミ・バンドの『GANAESIA』からの影響を感じてしまう。
 これって“怪人”坂田明アルトサックスヴォイスというよりもラップのせい? 『MOBO』の完成された世界観以上に,混沌と整然が絶妙に同居する抽象性に『GANAESIA』からの影響を感じてしまう。

 ズバリ『MOBO倶楽部』における「MOBOバンド」の真髄とは,面白さと過激さを本気で追求したプログレ・フュージョン
 『MOBO倶楽部』における「MOBOバンド」とは,カズミ・バンドが演奏するキングクリムゾンである。渡辺香津美ギターシンセが,かなり挑戦的というか挑発的というか,アヴァンギャルドで“ぶっ飛んでしまっている”。

 シンプルなペンタトニックの,だけど,どこか壊れたメロディが,グギグギのディストーションで鳴り響く。ノリノリのスケール・オンから瞬間的にアウト・オブ・スケールの強烈なフレーズが攻めてくる。
 本気でヤンチャする渡辺香津美に「向かうところ敵なし」。渡辺香津美に「恐いものなし」。

MOBO CLUB-2 そう。渡辺香津美は『MOBO倶楽部』で完璧にプログレを消化したのだと思う。それが「今,現場で起きている」渡辺香津美のプログレ・フュージョンなのである。
 
 ただし『MOBO倶楽部』の「今」は一晩だけ楽しめる音楽などではない。ジャズを消化しフュージョンを消化しロックとプログレをも消化してきた渡辺香津美だから作ることのできた「連綿と続く構築された快楽」。

 『MOBO』が“時代の遥か先を行く音楽”であったならば『MOBO倶楽部』は“未来永劫鳴り続ける音楽”である。素晴らしい。

  01. 風連
  02. 予感
  03. つるかめひなタンゴ
  04. 危険がいっぱい
  05. 強制接吻
  06. サッちゃん
  07. CIRCADIAN RHYTHM
  08. Σ

(ポリドール/DOMO 1984年発売/UCCJ-4114)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/中原仁,石沢弘治)

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