MIRAGE-1 『MIRAGE』(以下『ミラージュ』)は,いつものデビッド・ベノワピアノフュージョンとは違う。『ミラージュ』は,いつものラス・フリーマンギターフュージョンとは違う。

 「ザ・ベノワ=フリーマン・プロジェクト!」とは,デビッド・ベノワが「トータル・バランサーな」ラス・フリーマンに歩み寄り,ラス・フリーマンが「ハイセンスな」デビッド・ベノワに寄り添ったフュージョン・シーンのドリーム・プロジェクト
 「ザ・ベノワ=フリーマン・プロジェクト!」とは,相手の長所を利用して,ソロ・アルバム以上に自分の個性を,自分の全てをさらけ出すためのプロジェクト

 いつもと異なることは,予想通り,と言えば負け惜しみになる。『ミラージュ』は,管理人の想定の範囲を超えてきた。フュージョン・シーンのピアノのTOPとフュージョン・シーンのギターのTOPが組んだと来れば,勝手に「デイブ・グルーシンリー・リトナー」とか「ボブ・ジェームスアール・クルー」のようなアルバムをイメージしたものだから,結果,AOR寄りのコンテンポラリー路線が自分の好みではなかったことが残念でならない。

 デビッド・ベノワよ,ラス・フリーマンよ,どうしてケニー・ロギンスアース・ウインド&ファイアーなんだ〜。
 そう。「ザ・ベノワ=フリーマン・プロジェクト!」の『ミラージュ』は“売れ線”有りき! GRPの将来を担う大物2人のコラボレーションゆえ,とにかく売らなければならない使命感とプレッシャーが,2人のバランス感覚を狂わせたのかな〜。

 まぁ,言っても期待値が高すぎただけで実際には悪い内容ではない。特にアップ・テンポの楽曲は総じて出来が良いのだが,ミディアムとスロー・ナンバーの印象が悪すぎる。
 まだこれがキーボードエレキギターがメインなら「大物同士」のワクワク感もあると思うが,アコースティックピアノギターの出番が多くて(その意味では確かに「ボブ・ジェームスアール・クルー」のようなアルバムではあるのだが)キラキラ・フュージョンをガッツリ・イメージしていたファンとしては,えっ,ええっ〜 ( by サザエさんのマスオさん風 )。

 そう。『ミラージュ』は,引き算の無いPOPの上塗りであって,普段ならさり気なく弾いている美メロが前面に出過ぎてしまっている。ピアノギターを弾きすぎている。
 正直,楽しめたのは最初の数回だけだった。余りにも早く聴き飽きてしまった。

 リッピントンズの『MOONLIGHTING』で共演した【MIRAGE】が「ザ・ベノワ=フリーマン・プロジェクト!」名義のタイトル・チューンになっていることからしても,恐らくは両者が共同で音楽をクリエイトしたのは【リユニオン】1曲だけで,その他は例えば,デビッド・ベノワの持ち込みの場合,ラス・フリーマンはゲスト参加で,ラス・フリーマンの持ち込みの場合は,デビッド・ベノワがゲスト参加するようなスタンスではなかろうか?

MIRAGE-2 『ミラージュ』を聴いている時,無意識のうちに「フォープレイ」と比較している自分に気付いた。
 「ザ・ベノワ=フリーマン・プロジェクト!」にも「フォープレイ」にも,ベーシストネイザン・イーストが参加している影響だろうが,要は現代のモダン・ジャズ・カルテットを目指した「フォープレイ」と「ザ・ベノワ=フリーマン・プロジェクト!」との“質の違い”を感じてしまったんだよなぁ〜,これがっ!

 管理人の結論。『ミラージュ批評

 『ミラージュ』で,デビッド・ベノワラス・フリーマンの音を聴いている。ラス・フリーマンデビッド・ベノワの音を聴いている。
 ではデビッド・ベノワラス・フリーマンネイザン・イーストの音を聴いているのだろうか?

 デビッド・ベノワラス・フリーマンが『ミラージュ』で聴いているのは,ケニー・ロギンスアース・ウインド&ファイアーではなかろうか? 『ミラージュ』で聴いているのは,売れ線でありAORではなかろうか?

 
01. Reunion
02. When She Believed In Me
03. Mediterranean Nights
04. Swept Away
05. The End Of Our Season
06. After The Love Has Gone
07. Smartypants
08. It's The Thought That Counts
09. Mirage
10. That's All I Could Say

 
DAVID BENOIT : Piano
RUSS FREEMAN : Classical Guitar, Acoustic Guitar, Electric Guitar, Synthesizers, Additional Keyboards, Bass, Percussion
NATHAN EAST : Bass, Vocals
ABRAHAM LABORIEL : Bass
JOHN ROBINSON : Drums, Percussion
TONY MORALES : Drums
MIKE BAIRD : Drums
STEVE REID : Percussion
JERRY HEY : Fluglehorn, Trumpet, Trumpet Solo
GARY GRANT : Trumpet
DAN HIGGINS : Alto Saxophone
KENNY LOGGINS : Lead Vocal, Background Vocal
VESTA : Lead Vocal
PHIL PERRY : Lead Vocal, Background Vocal
ANJANI THOMAS : Background Vocal
STEVEN GEORGE : Background Vocal

(GRP/GRP 1994年発売/UCCR-9004)
(デジパック仕様)
(ライナーノーツ/松下佳男,富田雅之)

アドリグをログするブログ “アドリブログ”JAZZ/FUSION



テトス2章 若い人と年長の人への健全な教え
ポール・モチアン・トリオ 『サウンド・オブ・ラヴ