SCENES FROM A DREAM-1 サイレント・ベースの名手たるもの,アコースティックベースの良さもエレクトリックベースの良さも知り尽くしているはずである。

 クリス・ミン・ドーキーが『SCENES FROM A DREAM』(以下『夢風景』)で選択したのは,得意の「エレアコ」ではなくウッドベース1本。
 『夢風景』の「ロマンティックで,ポエティックで,ときにちょっぴりメランコティックな儚さの美しさ」を表現するには,重厚で繊細なストリングスが必要である。そして重厚で繊細なストリングスと調和させる弦楽器は,ウッドベース“一択”が正解なのである。

 そう。『夢風景』におけるクリス・ミン・ドーキーの狙いは,ウッドベースの持つ“荘厳さ”であろう。
 リリカルにシンクロするウッドベースストリングスが織り成す『夢風景』でのスローバラードは,クリス・ミン・ドーキーの故郷である「北欧の冷たい空気感」を表現するに最適な組み合わせであろう。

 『夢風景』のハイライトは,クリス・ミン・ドーキーFEATURINGヴィンス・メンドーサ・WITH・ザ・メトロポール・オルケストによる“音の漆塗り”にこそある。

SCENES FROM A DREAM-2 クリス・ミン・ドーキーが,一音一音をいとおしむようにウッドベースを奏でれば,瞬時に呼応し,上塗りしてくるストリングスの美しい調べは「クリス・ミン・ドーキーのDNAの音」している。
 ズバリ,ストリングスの“柔らかくクリスタルな音色”には「クリス・ミン・ドーキーの魂の音」が宿っている。

 大編成のドラマーを務めさせたら,今や「世界一」であろうピーター・アースキンドラミングに説得されてしまう。
 普段はオルガニストであるラリー・ゴールディングスの“COOLな”ピアノにぶっ飛ぶのも,これまた一興である。

 クリス・ミン・ドーキーの見た北欧の『夢風景』とは,元禄文化の『夢風景』に見られた“原風景の叙情詩”なのである。

  01. THE COST OF LIVING
  02. ARTHOS II
  03. FRED HVILER OVER LAND OG BY
  04. RAIN
  05. ALL IS PEACE/RU CON MIEN BAC
  06. VIENNA WOULD
  07. I SKOVENS DYBE STILLE RO
  08. JULIO AND ROMIET
  09. DEAR MOM
  10. ROMANZA

(ビデオアーツ/RED DOT MUSIC 2010年発売/VACM-1422)
(ライナーノーツ/工藤由美)

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