DEEP BLUE-1 「東のボブ・ジェームス」「西のデイヴ・グルーシン」。これはフュージョン界におけるキーボード・プレイヤーの両雄を指す至言である。
 そして,ここに「日本のボブ・ジェームス」「日本のデイヴ・グルーシン」と呼ばれる一人の女性ジャズメンがいる。松居慶子である。

 そう。松居慶子こそが,ボブ・ジェームスデイヴ・グルーシンと同列に並び称される唯一のジャズメン。
 事実,全米ビルボード誌コンテンポラリー・ジャズ・チャートで1位を獲得。松居慶子は,ケニー・Gフォープレイと肩を並べるスムーズ・ジャズ界のスーパー・スター。アメリカにおける松居慶子の人気は“無敵”なのである。

 では,日本における松居慶子の人気はと言うと…。微妙です。そして管理人の評価も微妙です。
 ズバリ,松居慶子は「日本のボブ・ジェームス」「日本のデイヴ・グルーシン」ではなく,例えるなら「女・久石譲」であり「女・喜多郎」の方が良いと思う。

 そう。管理人には松居慶子の音楽はスムーズ・ジャズではなくイージー・リスニングに聞こえてしまう。フュージョン寄りではなく映画音楽や環境音楽寄りに聞こえてしまう。ゆえに久石譲にも喜多郎にも聞こえてしまう。

 『DEEP BLUE』(以下『ディープ・ブルー』)は,そんな「女・久石譲」であり「女・喜多郎」である松居慶子が,日本人では初めてビルボード誌のコンテンポラリー・ジャズ・チャート1位を獲得した面目躍如な大ヒット・アルバムである。

 どこまでも深く澄みわたる神秘的な深遠の碧の音楽がリスナーを幻想の世界に誘い込む。スムーズ・ジャズの文脈では場違いななほど,神々しいばかりの気品を漂わせた,瑞々しく透明で静かに響くクリスタルで神秘的な松居慶子ピアノ・ミュージックである。

 『ディープ・ブルー』は「上質なBGM」である。耳馴染みの良いメロディー,うんぬんと気軽に書けない,何とも抽象的でアンニュイな音世界が続いていく。

DEEP BLUE-2 松居慶子も自身でそのことを認めているのだと思う。なぜなら『ディープ・ブルー』の特典映像であるビデオ・クリップには「深い青」「海の青」をイメージした“環境ビデオ”を収録。きっと世界のどこかのダイビング・ショップのモニターで流れているはず?

 繰り返すが『ディープ・ブルー』は「イージー・リスニングであり,映画音楽であり,環境音楽である」。そう思って聞くと非常に気持ち良いBGM。
 間違っても大音量でガンガンかけるべき音楽ではない。この部分に松居慶子の音楽の“軸足”を感じ取る。

 以上,松居慶子について,後ろ向き,で書いてきた管理人だが松居慶子のことは決して否定していない。
 なぜなら松居慶子のことを「東のボブ・ジェームス」「西のデイヴ・グルーシン」の両雄が高く評価しているし,何より!あのマイルス・デイビスが自分のライブのオープニング・アクトに松居慶子を起用したという事実有り。

 管理人もいつの日か松居慶子に開眼できますように…。なんだかんだで現在も松居慶子のアルバムを5枚も買っては楽しんでいま〜す。

 
01. Deep Blue
02. Water for the Tribe
03. Across the Sun
04. Trees
05. Mediterranean Eyes
06. Rose in Morocco
07. Moonflower
08. Crescent Night Dreams
09. To the Indian Sea
10. Mystic Dance
11. Midnight Stone
12. Deep Blue
13. Extra video track

 
KEIKO MATSUI : Piano
DEREK NAKAMOTO : Synthesizer, Programming
KAZU MATSUI : Shakuhachi

(プラネットジョイレコード/PLANET JOY RECORDS 2001年発売/PJCD-1002)
(CD−EXTRA仕様)
(ライナーノーツ/松居慶子,松居和)

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